説明

半導体装置の設計方法

【課題】信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供することを課題の一とする。又は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供することを課題の一とする。又は、酸化物半導体を用いた半導体装置の評価方法を提供することを課題の一とする。
【解決手段】基板に酸化珪素膜と有機膜を積層して設け、当該有機膜に重水を含ませた後、有機膜に接して導電膜を成膜する。次いで、酸化珪素膜中の重水素の存在量を測定することにより、重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定して半導体装置を設計すればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能する半導体素子を含む装置全般を指し、半導体回路、電気光学装置、表示装置および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を備える基板上にアモルファスシリコン、多結晶シリコン、若しくは転載した単結晶シリコンなどの半導体材料を用いてトランジスタを形成する技術が知られている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が低いものの、面積が大きいガラス基板に形成することが容易である。多結晶シリコンを用いたトランジスタは、比較的電界効果移動度が高いもののレーザアニールなどの結晶化工程が必要であり、面積が大きいガラス基板に形成することは必ずしも容易ではない。また、単結晶シリコンを用いたトランジスタも面積が大きい基板に形成することは必ずしも容易ではない。
【0004】
これに対し、半導体材料として酸化物半導体を用いたトランジスタが注目されている。例えば、半導体材料として酸化亜鉛や、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、画像表示装置のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【0005】
酸化物半導体をチャネル形成領域(チャネル領域ともいう)に用いるトランジスタは、アモルファスシリコンを用いたトランジスタよりも高い電界効果移動度が得られている。また、酸化物半導体膜はスパッタリング法などによって面積が大きいガラス基板に形成することが容易であり、また300℃以下の温度で膜形成が可能であることから、多結晶シリコンを用いたトランジスタよりも製造工程が簡単である。
【0006】
上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、例えば表示装置の画素部に設けるスイッチング素子や駆動回路部を構成するトランジスタに適用することができる。なお、表示装置の駆動回路は例えばシフトレジスタ回路、バッファー回路、などにより構成され、さらに、シフトレジスタ回路及びバッファー回路は論理回路により構成される。よって駆動回路を構成する論理回路に、酸化物半導体を用いたトランジスタを適用することにより、アモルファスシリコンを用いたトランジスタを適用する場合に比べて、駆動回路を高速に駆動できる。
【0007】
また、上記論理回路は全て同じ導電型であるトランジスタにより構成できる。全て同一の導電型のトランジスタを用いて論理回路を作製することにより工程を簡略にすることができる。
【0008】
このような酸化物半導体を用いたトランジスタが形成されたガラス基板やプラスチック基板を用いて、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELディスプレイともいう)または電子ペーパなどの表示装置を提供する検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型(ノーマリーオフ型ともいう)のトランジスタが、使用に伴いデプレッション型(ノーマリーオン型ともいう)に変化してしまうという問題がある。特に、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、当該第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置において、当該酸化物半導体を用いたトランジスタが経時的にデプレッション型に変化し、当該半導体装置の信頼性が損なわれてしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、その目的は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供することを課題の一とする。又は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供することを課題の一とする。又は、酸化物半導体を用いた半導体装置に用いる導電膜の評価方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、酸化物半導体を用いた半導体装置に含まれる水素原子を含む不純物と、当該不純物を還元して水素イオン又は水素分子を発する活性な物質に着眼した。具体的には、酸化物半導体上に形成される導電膜に着眼した。
【0013】
酸化物半導体を用いた半導体装置に、水素原子を含む不純物は残存および/又は系外から浸入する。特に、半導体装置から水分を完全に除去すること、および/又は大気からの水分の浸入を完全に防ぐことは困難である。従って、半導体素子又は半導体装置内に水分を還元する活性な金属が存在していると、残存および/又は系外から浸入する水分と反応して水素イオン又は水素分子が発生し、生じた水素イオン又は水素分子が半導体素子又は半導体装置内に拡散してしまう。拡散により酸化物半導体に到達した水素イオン又は水素分子が、酸化物半導体のキャリア濃度を高めるため、酸化物半導体を用いたトランジスタの特性が変動してしまうと考えた。
【0014】
上述の課題を解決するには、水素を含む不純物、具体的には水等と反応して水素イオン又は水素分子を発生し難い不活性な導電材料を用いて、酸化物半導体を有する半導体装置を設計すればよい。具体的には、基板に酸化珪素膜と有機膜を積層して設け、当該有機膜に重水を含ませた後、有機膜に接して導電膜を成膜する。次いで、酸化珪素膜中の重水素の存在量を測定することにより、重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定して半導体装置を設計すればよい。
【0015】
すなわち、本発明の一態様は、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、前記第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の設計方法であって、基板の一方の面に酸化珪素膜を形成し、前記酸化珪素膜を覆って有機膜を形成し、前記有機膜に重水を塗布し、前記有機膜に接して導電膜を成膜し、前記酸化珪素膜中の重水素原子の濃度を測定し、前記重水素原子が1×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定し、選定した前記導電材料を前記第2の電極に適用する半導体装置の設計方法である。
【0016】
上記本発明の一態様によれば、天然に分布する濃度より高い濃度の重水素原子を含む重水を用いるため、水の還元についての導電膜の活性を評価できる。これにより、水と反応して水素イオン又は水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定することができ、酸化物半導体のキャリア濃度を高める水素イオン又は水素分子の発生が抑制された信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供できる。又は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供できる。又は、酸化物半導体を用いた半導体装置に用いる導電膜の評価方法を提供できる。
【0017】
また、本発明の一態様は、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、前記第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の設計方法であって、基板の絶縁表面に、チャネル形成領域に設計用酸化物半導体を用いたエンハンスメント型の設計用トランジスタを形成し、前記設計用トランジスタを覆う設計用酸化物絶縁層を形成し、前記設計用トランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続する設計用第1の電極を形成し、前記設計用第1の電極に重水を塗布し、前記設計用第1の電極に接して導電膜を成膜し、前記設計用酸化物半導体中の重水素原子の濃度を測定し、前記重水素原子が5×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定し、選定した前記導電材料を前記第2の電極に適用する半導体装置の設計方法である。
【0018】
上記本発明の一態様によれば、天然に分布する濃度より高い濃度の重水素原子を含む重水を用いるため、水の還元についての導電膜の活性を評価できる。これにより、水と反応して水素イオン又は水素分子を実質的に発生し難い不活性な導電材料を選定することができ、酸化物半導体のキャリア濃度を高める水素イオン又は水素分子の発生が抑制された信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供できる。又は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供できる。又は、酸化物半導体を用いた半導体装置に用いる導電膜の評価方法を提供できる。
【0019】
なお、本明細書中において、ゲート電極に印加されるゲート電圧が0V、及びソース−ドレイン間に印加される電圧が少なくとも1Vの場合に、ドレイン電流が流れていないと見なすことができるトランジスタをノーマリーオフのトランジスタと定義する。また、ゲート電極に印加されるゲート電圧が0V、及びソース−ドレイン間に印加される電圧が少なくとも1Vの場合に、ドレイン電流が流れていると見なすことができるトランジスタをノーマリーオンと定義する。
【0020】
あるいは、本明細書中において、nチャネル型トランジスタにおいて、閾値電圧の値が正であるトランジスタをノーマリーオフのトランジスタと定義し、閾値電圧の値が負であるトランジスタをノーマリーオンのトランジスタと定義する。また、pチャネル型トランジスタにおいて、閾値電圧の値が負であるトランジスタをノーマリーオフのトランジスタと定義し、閾値電圧の値が正であるトランジスタをノーマリーオンのトランジスタと定義する。
【0021】
より具体的には、本明細書中において、nチャネル型トランジスタにおいてドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、ドレイン電流が1×10−12Aのときのゲート電圧が正であるトランジスタをノーマリーオフのトランジスタと定義する。また、nチャネル型トランジスタにおいて、ドレイン電流−ゲート電圧特性を測定し、ドレイン電流が1×10−12Aのときのゲート電圧が負であるトランジスタをノーマリーオンのトランジスタと定義する。
【0022】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、一対の電極間に挟まれた発光物質を含む発光層はEL層の一態様である。
【0023】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0024】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供できる。また、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供できる。又は、酸化物半導体を用いた半導体装置に用いる導電膜の評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係わる半導体装置の設計方法を説明する図。
【図2】実施の形態に係わるトランジスタの作製工程を説明する図。
【図3】実施の形態に係わる半導体装置の設計方法を説明する図。
【図4】実施の形態に係わる半導体装置に適用する発光素子の構成を説明する図。
【図5】実施の形態に係わる画素の構成を説明する等価回路図。
【図6】実施の形態に係わる画素の構成を説明する断面図。
【図7】実施の形態に係わる表示装置の構成を説明する図。
【図8】実施例に係わる半導体装置の設計方法を説明する図。
【図9】実施例に係わる酸化珪素膜中の水素濃度の二次イオン質量分析の結果を説明する図。
【図10】実施例に係わる発光素子の構成を説明する図。
【図11】実施例に係わる半導体装置の表示状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、基板に酸化珪素膜と有機膜を積層して設け、当該有機膜に重水を塗布した後、有機膜に接して導電膜を成膜し、次いで、酸化珪素膜中の重水素の存在量を測定することにより、重水と反応して重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定する。次いで、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の第2の電極に、上述の方法で選定した導電材料からなる導電膜を適用する半導体装置の設計方法について、図1を参照して説明する。
【0029】
本実施の形態で例示する半導体装置の設計方法について、図1に示す。本発明の一態様の半導体装置の設計方法は、基板405の一方の面に酸化珪素膜416を形成する第1のステップと、前記酸化珪素膜416を覆う有機膜417を形成する第2のステップと、前記有機膜417に重水を塗布する第3のステップと、前記有機膜417に接して導電膜402を成膜する第4のステップと、前記酸化珪素膜416中の重水素原子の濃度を測定する第5のステップと、前記重水素原子が1×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定する第6のステップを有する。また、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタ1410のソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極1401と、前記第1の電極1401に重畳する第2の電極1402の間に発光物質を含む有機層1403を備える半導体装置の前記第2の電極1402に、第6のステップで選定した導電材料からなる導電膜を適用する第7のステップを備える半導体装置の設計方法である。それぞれのステップについて、以下に説明する。
【0030】
<第1のステップ:酸化珪素膜の形成>
酸化珪素膜416を基板405上に成膜する。基板405は水蒸気および水素ガスに対するガスバリア性を備えればよく、後の工程で加熱処理を行う場合は、少なくともその温度に耐えうる耐熱性を有している必要がある。例えばバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスを含む金属基板又は半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。プラスチックなどの可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐えうるのであれば用いることが可能である。なお、基板405の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいてもよい。また、基板405上に半導体素子、又は半導体回路が形成されていてもよく、当該半導体素子、又は半導体回路上に酸化珪素膜を成膜してもよい。
【0031】
なお、基板405にガスバリア性を付与する方法として、基板405と酸化珪素膜416との間にバリア層を設けても良い。当該バリア層は、不純物元素が基板405から酸化珪素膜416に拡散する現象を防止できる。バリア層としては、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などから選ばれた一または複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0032】
本実施の形態では絶縁表面を有する基板405としてガラス基板を用いる。
【0033】
本実施の形態では、酸化珪素膜416として膜厚200nmの酸化珪素膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。例えば、シリコンターゲットを用いて、酸素を含む雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素膜を形成することができる。
【0034】
<第2のステップ:有機膜の形成>
次いで、有機膜417を酸化珪素膜416上に形成する(図1(A)参照)。有機膜417としては、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、有機膜417を形成してもよい。
【0035】
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。
【0036】
有機膜417の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー法、液滴吐出法(インクジェット法)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0037】
<第3のステップ:重水の塗布>
次いで、重水を有機膜417上に塗布する。一定の時間(例えば10分)室温下で保持した後、重水を取り除く。重水を取り除く方法としては、例えば乾燥空気を吹き付けてもよい。なお、塗布した重水の一部は有機膜417の表面に吸着する。図1(B)には有機膜417の表面に重水の分子が吸着した様子を模式的に示している。
【0038】
重水を塗布する範囲は、少なくとも後のステップで導電膜を成膜する範囲とする。重水の塗布法は特に限定されず、スピンコート、ディップ、スプレー法、液滴吐出法(インクジェット法)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、アプリケータ等を用いることができる。
【0039】
なお、有機膜417を形成した基板405に吸着した水分を除去するステップを、重水を塗布する前に設ける方法が好ましい。有機膜417を備える基板405に重水以外の水分が多量に吸着していると、重水から重水素イオン又は重水素分子が生成する反応をより高い感度で検知することが困難になるからである。基板405に吸着した水分を除去する方法としては、例えば10−4Pa以下の真空中で、30分の間150℃で加熱すればよい。
【0040】
<第4のステップ:導電膜の成膜>
次いで、導電膜402を重水が吸着した有機膜417の表面に成膜する(図1(C)参照)。なお図1(C)には、活性な金属を含む導電膜402が、有機膜417の表面に吸着した重水を還元し、発生した重水素イオン又は重水素分子が酸化珪素膜416内に拡散する様子を模式的に示している。
【0041】
導電膜402としては、金属膜や、導電性の酸化物膜等から選択して用いる。例えばイオン化傾向が水素より小さい金属や、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料をその例に挙げることができる。
【0042】
導電膜402の形成法は特に限定されず、その材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング等を用いることができる。
【0043】
なお、導電膜402を成膜することなく第3のステップまでの工程を施した試料を比較試料として用意してもよい。導電膜402を成膜した試料の酸化珪素膜416に含まれる重水素原子の濃度と、導電膜402を成膜しない比較試料の酸化珪素膜416に含まれる重水素原子の濃度を比較して、水素イオン又は水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定することもできる。
【0044】
<第5のステップ:重水素原子の濃度測定>
次いで、二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)により重水素原子を検出して、酸化珪素膜416に含まれる濃度を測定する。なお、SIMS測定の方向としては特に限定されず、導電膜402から基板405に向かう方向に測定しても良く、基板405の導電膜402を形成していない側から、二次イオン質量分析をする方法(Substrate Side Depth Profile Secondary Ion Mass Spectrometry:SSDP−SIMS)であってもよい。
【0045】
なお、図1(D)の基板405の一方の面が凹状態に変形しているのは、SSDP−SIMSにより切削される様子を示している。
【0046】
<第6のステップ:導電材料の選定>
次いで、上述の二次イオン質量分析の結果、酸化珪素膜416の膜厚方向の中央に含まれる重水素原子が1×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定する。または、導電膜402を成膜した試料の酸化珪素膜416に含まれる重水素原子の濃度が、導電膜402を成膜しない比較試料の酸化珪素膜416に含まれる重水素原子と実質的に等しくなる導電材料を選定すればよい。
【0047】
<第7のステップ:選定した導電膜の第2の電極への適用>
次いで、基板1405の絶縁表面上に、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタ1410を備え、当該トランジスタ1410のソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極1401上に、発光物質を含む有機層1403を形成し、発光物質を含む有機層1403に接して第2の電極1402を成膜する。ここで第2の電極としては、上述の重水と反応して水素イオン又は水素分子を発生し難い不活性な導電材料を適用する(図1(E)参照)。
【0048】
なお、第1の電極1401を形成した基板1405に吸着した水分を除去するステップを、第1の電極1401上に発光物質を含む有機層1403を形成する前に設ける方法が好ましい。第1の電極1401を備える基板1405に水分が多量に吸着していると、第1の電極と第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備えた発光素子の信頼性が低下し、半導体装置全体の信頼性が損なわれてしまうからである。また、たとえ不活性な導電膜を第2の電極に用いる場合であっても、長期間の使用に伴い微量の水素イオン又は水素分子が発生する可能性を限りなく少なくするために、基板に吸着した水分を除去するステップを設ける方法が好ましい。基板に吸着した水分を除去する方法としては、例えば10−4Pa以下の真空中で、30分の間150℃で加熱すればよい。
【0049】
重水は酸化珪素膜416に実質的に浸透しないため、第3のステップで塗布した重水は有機膜417の表面に吸着、及び有機膜417の内部に拡散して留まる。次いで、活性な金属を含む導電膜402が有機膜417上に成膜されると、有機膜417の表面に吸着した重水、及び有機膜417の内部から拡散する重水が導電膜402により還元され、重水素イオン又は重水素分子が発生する。重水素イオン又は重水素分子は有機膜417中を拡散し、酸化珪素膜416の内部に到達できる。
【0050】
従って、天然に分布する濃度より高い濃度の重水素原子を含む重水を用いる本実施の形態によれば、酸化珪素膜416において1×1017atoms/cmを越える濃度の重水素が観測される場合、導電膜402が有機膜417に吸着した重水を分解すること、すなわち水の還元反応において活性であることを評価できる。この方法により、水と反応して水素イオン又は水素分子を実質的に発生し難い不活性な導電材料を選定することができ、酸化物半導体のキャリア濃度を高める水素イオン又は水素分子の発生が抑制された信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供できる。又は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供できる。
【0051】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態では、酸化物半導体を用いた逆スタガ型のトランジスタの構成、その作製方法、並びに半導体装置の設計方法の一例について、図2及び図3を用いて説明する。具体的には、基板の絶縁表面にチャネル形成領域に設計用酸化物半導体を用いたエンハンスメント型の設計用トランジスタを形成し、当該トランジスタを覆う設計用酸化物絶縁層を形成し、設計用酸化物絶縁層を覆う設計用有機膜を形成し、設計用有機膜上に当該トランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された設計用第1の電極を形成し、設計用第1の電極に重水を塗布し、設計用第1の電極に接して導電膜を成膜し、設計用酸化物半導体中の重水素原子の濃度を測定し、重水素原子が5×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定する。次いで、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の第2の電極に、上述の方法で選定した導電材料からなる導電膜を適用する半導体装置の設計方法について説明する。
【0053】
なお、実施の形態1で説明した半導体装置の設計方法に、本実施の形態で説明するトランジスタを適用することができる。
【0054】
<第1のステップ:トランジスタの形成>
図2(A)乃至(E)に酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタの断面構造の一例を示す。図2(A)乃至(E)に示すトランジスタは、ボトムゲート構造の逆スタガ型トランジスタである。なお、本実施の形態で説明する半導体装置の設計方法において、当該トランジスタは設計用トランジスタとして用いることができる。また、当該トランジスタはそのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置にも用いることもできる。なお、本明細書では便宜上設計用トランジスタ、設計用酸化物半導体、設計用酸化物絶縁層、設計用有機膜、乃至設計用第1の電極を用いるが、設計用であるか否かはその構成の特性を何ら規定するものではない。
【0055】
本実施の形態の半導体層に用いる酸化物半導体は、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することによりI型(真性)の酸化物半導体、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体としたものである。
【0056】
なお、高純度化された酸化物半導体中ではキャリアが極めて少なく、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満となる。また、このようにキャリアが少ないことで、オフ状態における電流(オフ電流)は十分に小さくなる。
【0057】
具体的には、上述の酸化物半導体層を具備するトランジスタでは、オフ状態でのソースとドレイン間のチャネル幅1μmあたりのリーク電流密度(オフ電流密度)は、ソースとドレイン間の電圧が3.5V、使用時の温度条件下(例えば、25℃)において、100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、もしくは10zA/μm(1×10−20A/μm)以下、さらには1zA/μm(1×10−21A/μm)以下とすることができる。
【0058】
また、高純度化された酸化物半導体層を具備するトランジスタは、オン電流の温度依存性がほとんど見られず、高温状態においてもオフ電流は非常に小さいままである。
【0059】
以下、図2(A)乃至(E)を用い、基板505上に酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを作製する工程を説明する。
【0060】
<1−1.絶縁表面を有する基板>
まず、絶縁表面を有する基板505上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層511を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0061】
基板505は絶縁表面と水蒸気および水素ガスに対するガスバリア性を有すればよく、大きな制限はないが、後の工程で加熱処理を行う場合は、少なくともその温度に耐えうる耐熱性を有している必要がある。例えばバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板等を用いることができる。また、ステンレスを含む金属基板又は半導体基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。プラスチックなどの可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一般的に上記基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐えうるのであれば用いることが可能である。なお、基板505の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいてもよい。
【0062】
本実施の形態では絶縁表面を有する基板505としてガラス基板を用いる。
【0063】
なお、下地となる絶縁層を基板505とゲート電極層511との間に設けてもよい。当該絶縁層には、基板505からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などから選ばれた一または複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0064】
<1−2.ゲート電極層>
また、ゲート電極層511の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。なお、後の工程において行われる加熱処理の温度に耐えうるのであれば、上記金属材料としてアルミニウム、銅を用いることもできる。アルミニウムまたは銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム等を用いることができる。
【0065】
<1−3.ゲート絶縁層>
次いで、ゲート電極層511上にゲート絶縁層507を形成する。ゲート絶縁層507は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。またゲート絶縁層507は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化タンタル膜、または酸化ガリウム膜などから選ばれた一または複数の膜により単層、または積層して形成することができる。
【0066】
本実施の形態の酸化物半導体は、不純物を除去され、I型化又は実質的にI型化された酸化物半導体(高純度化された酸化物半導体)を用いる。このような高純度化された酸化物半導体は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、酸化物半導体層とゲート絶縁層との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物半導体に接するゲート絶縁層は、高品質化が要求される。
【0067】
例えば、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0068】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁層の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁層であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0069】
なお、ゲート絶縁層507は後に形成される酸化物半導体層と接する。酸化物半導体は、水素が含有されると特性に悪影響を及ぼすので、ゲート絶縁層507は水素、水酸基および水分が含まれないことが望ましい。ゲート絶縁層507、酸化物半導体膜530に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜530の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層511が形成された基板505、又はゲート絶縁層507までが形成された基板505を予備加熱し、基板505に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、絶縁層516の成膜前に、ソース電極層515a及びドレイン電極層515bまで形成した基板505にも同様に行ってもよい。
【0070】
<1−4.酸化物半導体層>
次いで、ゲート絶縁層507上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体膜530を形成する(図2(A)参照。)。
【0071】
酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
【0072】
なお、酸化物半導体膜530をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層507の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することが好ましい。逆スパッタとは、アルゴン雰囲気下で基板にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0073】
酸化物半導体膜530に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体層に酸化珪素を含ませてもよい。酸化物半導体層に結晶化を阻害する酸化珪素(SiO(X>0))を含ませることで、製造プロセス中において酸化物半導体層の形成後に加熱処理した場合に、結晶化してしまうのを抑制することができる。なお、酸化物半導体層は非晶質な状態であることが好ましく、一部結晶化していてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その組成比はとくに問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0074】
また、酸化物半導体膜530には、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0075】
酸化物半導体は、好ましくはInを含有する酸化物半導体、さらに好ましくは、In、及びGaを含有する酸化物半導体である。酸化物半導体層をI型(真性)とするため、脱水化または脱水素化は有効である。本実施の形態では、酸化物半導体膜530としてIn−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。この段階での断面図が図2(A)に相当する。
【0076】
酸化物半導体膜530をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn−O膜を成膜する。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]、又はIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有する酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0077】
また、酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0078】
酸化物半導体膜530を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0079】
減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板505上に酸化物半導体膜530を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0080】
スパッタリング法を行う雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、または希ガスと酸素の混合雰囲気とすればよい。
【0081】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ごみともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0082】
なお、酸化物半導体層中に含まれる、Li、Naなどのアルカリ金属、及びCaなどのアルカリ土類金属などの不純物は低減されていることが好ましい。具体的には、SIMSにより検出されるLiが5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下、Kは5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下であることが好ましい。
【0083】
アルカリ金属、及びアルカリ土類金属は酸化物半導体にとっては悪性の不純物であり、少ないほうがよい。特にアルカリ金属のうち、Naは酸化物半導体に接する絶縁膜が酸化物であった場合、その中に拡散し、Naとなる。また、酸化物半導体内において、金属と酸素の結合を分断し、あるいは結合中に割り込む。その結果、トランジスタ特性の劣化(例えば、ノーマリーオン化(しきい値の負へのシフト)、移動度の低下等)をもたらす。加えて、特性のばらつきの原因ともなる。このような問題は、特に酸化物半導体中の水素の濃度が十分に低い場合において顕著となる。したがって、酸化物半導体中の水素の濃度が5×1019cm−3以下、特に5×1018cm−3以下である場合には、アルカリ金属の濃度を上記の値にすることが強く求められる。
【0084】
次いで、酸化物半導体膜530を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。また、島状の酸化物半導体層を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0085】
また、ゲート絶縁層507にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体膜530の加工時に同時に行うことができる。
【0086】
なお、ここでの酸化物半導体膜530のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体膜530のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0087】
また、ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0088】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0089】
次いで、酸化物半導体層に第1の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の加熱処理の温度は、250℃以上750℃以下、または400℃以上基板の歪み点未満とする。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行ってもよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪み点を超える温度でも処理することができる。
【0090】
ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぎ、酸化物半導体層531を得る(図2(B)参照。)。
【0091】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0092】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0093】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0094】
また、第1の加熱処理で酸化物半導体層を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度のNOガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたはNOガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する酸素ガスまたはNOガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたはNOガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又はNOガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体層を高純度化及び電気的にI型(真性)化する。
【0095】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜530に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱処理装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0096】
なお、第1の加熱処理は、上記以外にも、酸化物半導体層成膜後であれば、酸化物半導体層上にソース電極層及びドレイン電極層を積層させた後、あるいは、ソース電極層及びドレイン電極層上に絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0097】
また、ゲート絶縁層507にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体膜530に第1の加熱処理を行う前でも行った後に行ってもよい。
【0098】
以上の工程により、島状の酸化物半導体層中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加熱処理で、キャリア密度が極端に少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体膜を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することができ、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体膜を用いることで、耐圧性が高く、オフ電流の著しく低いトランジスタを作製することができる。上記加熱処理は、酸化物半導体層の成膜以降であれば、いつでも行うことができる。
【0099】
また、酸化物半導体層を2回に分けて成膜し、2回に分けて加熱処理を行うことで、下地部材の材料が、酸化物、窒化物、金属など材料を問わず、膜厚の厚い結晶領域(単結晶領域)、即ち、膜表面に垂直にc軸配向した結晶領域を有する酸化物半導体層を形成してもよい。例えば、3nm以上15nm以下の第1の酸化物半導体膜を成膜し、窒素、酸素、希ガス、または乾燥空気の雰囲気下で450℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上750℃以下の第1の加熱処理を行い、表面を含む領域に結晶領域(板状結晶を含む)を有する第1の酸化物半導体膜を形成する。そして、第1の酸化物半導体膜よりも厚い第2の酸化物半導体膜を形成し、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下の第2の加熱処理を行い、第1の酸化物半導体膜を結晶成長の種として、上方に結晶成長させ、第2の酸化物半導体膜の全体を結晶化させ、結果として膜厚の厚い結晶領域を有する酸化物半導体層を形成してもよい。
【0100】
<1−5.ソース電極層及びドレイン電極層>
次いで、ゲート絶縁層507、及び酸化物半導体層531上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする合金、または金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、W、Cr、Ta、Nd、Sc、Yなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。
【0101】
また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。
【0102】
また、導電膜は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ合金、酸化インジウム酸化亜鉛合金または前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0103】
なお、導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0104】
続いて、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層515a、ドレイン電極層515bを形成した後、レジストマスクを除去する(図2(C)参照)。
【0105】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。酸化物半導体層531上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化できる。
【0106】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層531がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体層531を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体層531は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0107】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用い、酸化物半導体層531にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いたので、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。エッチャントとしてアンモニア過水を用いることにより選択的に導電膜をエッチングすることができる。
【0108】
<1−6.第1の絶縁層>
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる絶縁層516を形成する。
【0109】
絶縁層516は、水分や、水素、酸素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。また絶縁層516は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、絶縁層516に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁層516に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、又は水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、が生じ酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁層516はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0110】
また、絶縁層516には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜、または酸化ガリウム膜などを用いることができる。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、島状の酸化物半導体層内、ゲート絶縁層内、或いは、島状の酸化物半導体層と他の絶縁層の界面とその近傍に、水分または水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。
【0111】
たとえば、スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化ガリウム膜上に、スパッタ法で形成された膜厚100nmの酸化アルミニウム膜を積層させた構造を有する、絶縁膜を形成してもよい。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよい。また、絶縁膜は酸素を多く含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このように絶縁膜が過剰な酸素を有することにより、島状の酸化物半導体膜の界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0112】
本実施の形態では、絶縁層516として膜厚200nmの酸化シリコン膜をスパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化シリコン膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。例えば、シリコンターゲットを用いて、酸素を含む雰囲気下でスパッタ法により酸化シリコン膜を形成することができる。酸化物半導体層に接して形成する絶縁層516は、水分や、水素イオンや、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0113】
酸化物半導体膜530の成膜時と同様に、絶縁層516の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁層516に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁層516の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0114】
絶縁層516を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0115】
なお、絶縁層516を形成した後に、第2の加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下であることが望ましい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、第1の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含む絶縁層516が設けられた後に加熱処理が施されることによって、第1の加熱処理により、島状の酸化物半導体層に酸素欠損が発生していたとしても、絶縁層516から島状の酸化物半導体層に酸素が供与される。そして、島状の酸化物半導体層に酸素が供与されることで、島状の酸化物半導体層において、ドナーとなる酸素欠損を低減し、島状の酸化物半導体層には化学量論比を超える量の酸素が含まれていることが好ましい。その結果、島状の酸化物半導体層をi型に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができる。この第2の加熱処理を行うタイミングは、絶縁層516の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透光性を有する導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、島状の酸化物半導体層をi型に近づけることができる。
【0116】
また、酸素雰囲気下で島状の酸化物半導体層に加熱処理を施すことで、酸化物半導体に酸素を添加し、島状の酸化物半導体層中においてドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。加熱処理の温度は、例えば100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0117】
本実施の形態では、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が絶縁層516と接した状態で加熱される。
【0118】
以上の工程を経ることによって、酸化物半導体膜に対して第1の加熱処理を行って水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体層より意図的に排除し、かつ不純物の排除工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を供給することができる。よって、酸化物半導体層は高純度化及び電気的にI型(真性)化する。
【0119】
以上の工程でトランジスタが形成される(図2(D)参照)。トランジスタは、ゲート電極層511と、ゲート電極層511上のゲート絶縁層507と、ゲート絶縁層507上においてゲート電極層511と重なる島状の酸化物半導体層531と、島状の酸化物半導体層531上に形成された一対のソース電極層515a及びドレイン電極層515bとを有する、チャネルエッチ構造である。
【0120】
また、絶縁層516に欠陥を多く含む酸化シリコン層を用いると、酸化シリコン層形成後の加熱処理によって酸化物半導体層中に含まれる水素、水分、水酸基又は水素化物などの不純物を酸化物絶縁層に拡散させ、酸化物半導体層中に含まれる該不純物をより低減させる効果を奏する。
【0121】
また、絶縁層516に酸素を過剰に含む酸化シリコン層を用いると、絶縁層516形成後の加熱処理によって絶縁層516中の酸素が酸化物半導体層531に移動し、酸化物半導体層531の酸素濃度を向上させ、高純度化する効果を奏する。
【0122】
絶縁層516上にさらに保護絶縁層506を積層してもよい。保護絶縁層506は、例えば、RFスパッタ法を用いて窒化シリコン膜を形成する。RFスパッタ法は、量産性がよいため、保護絶縁層の成膜方法として好ましい。保護絶縁層は、水分などの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを用いる。本実施の形態では、窒化シリコン膜を用いて保護絶縁層506を形成する(図2(E)参照。)。
【0123】
本実施の形態では、保護絶縁層506として、絶縁層516まで形成された基板505を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入しシリコン半導体のターゲットを用いて窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、絶縁層516と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層506を成膜することが好ましい。
【0124】
保護絶縁層の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。
【0125】
また、酸素ドープ処理を酸化物半導体膜530、及び/又はゲート絶縁層507に酸素プラズマドープ処理を施してもよい。「酸素ドープ」とは、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)をバルクに添加することを言う。なお、当該「バルク」の用語は、酸素を、薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、「酸素ドープ」には、プラズマ化した酸素をバルクに添加する「酸素プラズマドープ」が含まれる。
【0126】
酸素プラズマドープ処理は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式を用いてプラズマ化した酸素を添加する方法であっても、周波数が1GHz以上のμ波(例えば周波数2.45GHz)を用いてプラズマ化した酸素を添加する方法であってもよい。
【0127】
<1−7.第2の絶縁層>
絶縁層516(保護絶縁層506を積層した場合は保護絶縁層506)上に平坦化のための第2の絶縁層517を設けることができる。第2の絶縁層517としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂材料を用いることができる。また上記樹脂材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、第2の絶縁層517を形成してもよい。第2の絶縁層517の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー法、液滴吐出法(インクジェット法)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0128】
<第2のステップ:第1の電極の形成>
次いで、ソース電極層515a又はドレイン電極層515bに達する開口部518を絶縁層516(保護絶縁層506を形成した場合は保護絶縁層506)、及び第2の絶縁層517に形成する。絶縁層516上に導電膜を形成し、パターニングして第1の電極601を形成する。第1の電極は開口部518を介してソース電極層515a又はドレイン電極層515bと接続する(図3(A)参照)。第1の電極601としては、ゲート電極層511に用いることができる導電膜、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いることができる導電膜、並びに可視光を透過する導電膜等を用いることができる。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの導電性材料をその例に挙げることができる。
【0129】
なお、該導電膜をパターニングして島状の酸化物半導体層と重なる位置にバックゲート電極を形成しても良い。バックゲート電極を形成した場合は、バックゲート電極を覆うように絶縁層を形成するのが望ましい。バックゲート電極は、ゲート電極層、或いはソース電極層及びドレイン電極層と同様の材料、構造を用いて形成することが可能である。
【0130】
バックゲート電極の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。例えば、チタン膜、アルミニウム膜、チタン膜が積層された構造を有する導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ法などによりレジストマスクを形成し、エッチングにより不要な部分を除去して、該導電膜を所望の形状に加工(パターニング)することで、バックゲート電極を形成すると良い。バックゲート電極は遮光膜として機能させることによってトランジスタの光劣化、例えば光負バイアス劣化を低減でき、信頼性を向上できる。
【0131】
以上のステップを実施して、ソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極を備え、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタを作製できる。
【0132】
<第3ステップ:重水の塗布>
上述の方法により作製した、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタを設計用トランジスタ510として用いる。本実施の形態では、設計用トランジスタ510のソース電極層又はドレイン電極層に電気的に接続された第1の電極を、設計用第1の電極601とする。
【0133】
次いで、重水を設計用第1の電極601上に塗布する。一定の時間(例えば10分)室温下で保持した後、重水を取り除く。重水を取り除く方法としては、例えば乾燥空気を吹き付けてもよい。なお、塗布した重水の一部は設計用第1の電極601の表面に吸着する。図3(A)には設計用第1の電極601の表面に重水の分子が吸着した様子を模式的に示している。
【0134】
重水を塗布する範囲は、少なくとも後のステップで導電膜を成膜する範囲とする。重水の塗布法は特に限定されず、スピンコート、ディップ、スプレー法、液滴吐出法(インクジェット法)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、アプリケータ等を用いることができる。
【0135】
<第4のステップ:導電膜の成膜>
次いで、重水が吸着した設計用第1の電極601の表面に導電膜502を成膜する。なお図3(B)には、活性な金属を含む導電膜502が、設計用第1の電極601の表面に吸着した重水を還元し、生じた重水素イオン又は重水素分子が設計用トランジスタ510内を拡散し、酸化物半導体層531内に到達する様子を模式的に示している。
【0136】
導電膜502としては、例えば金属膜や、導電性の酸化物膜等を用いることができる。具体的には、イオン化傾向が水素より小さい金属や、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの導電性材料をその例に挙げることができる。
【0137】
導電膜502の形成法は特に限定されず、その材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング等を用いることができる。
【0138】
なお、導電膜502を成膜することなく第3のステップまでの工程を施した試料を比較試料として用意してもよい。導電膜502を成膜した試料と導電膜502を成膜しない比較試料に含まれる重水素原子の濃度を比較して、水素イオン又は水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定することもできる。
【0139】
<第5のステップ:重水素原子の濃度測定>
次いで、二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)により重水素原子を検出して、酸化物半導体層531の膜厚方向の中央に含まれる濃度を測定する。なお、SIMS測定の方向としては特に限定されず、導電膜502から基板505に向かう方向に測定しても良く、基板505の導電膜502を形成していない側から、二次イオン質量分析する方法(Substrate Side Depth Profile Secondary Ion Mass Spectrometry:SSDP−SIMS)であってもよい。
【0140】
なお、図3(C)の基板505の一方の面が凹状態に変形しているのは、SSDP−SIMSにより切削される様子を示している。
【0141】
<第6のステップ:導電材料の選定>
次いで、上述の二次イオン質量分析の結果、酸化物半導体層531に含まれる重水素原子が5×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定する。または、導電膜502を成膜した試料の酸化物半導体層531に含まれる重水素原子の濃度が、導電膜502を成膜しない比較試料の酸化物半導体層531に含まれる重水素原子と、実質的に等しくなる導電材料を選定すればよい。
【0142】
<第7のステップ:選定した導電材料からなる導電膜を第2の電極に適用>
本実施の形態の第1のステップを実施して、基板1505の絶縁表面上にチャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタ1510を形成し、次いで第2のステップを実施してトランジスタ1510のソース電極層又はドレイン電極層の一方に接続する第1の電極1601を形成する。その後、第1の電極1601上に、発光物質を含む有機層1603を形成し、当該有機層1603に接して第2の電極1602を成膜する。ここで第2の電極としては、第6のステップで選定された不活性な導電材料を適用する(図3(D)参照)。
【0143】
本実施の形態で説明した半導体装置の設計方法によれば、設計用トランジスタ510が備える絶縁層516(保護絶縁層506を形成した場合は保護絶縁層506)、及び第2の絶縁層517は重水の浸透を阻むため、第3のステップで塗布した重水は酸化物半導体層531に到達することはない。しかし、活性な金属を含む導電膜502が設計用第1の電極601に成膜されると、設計用第1の電極601の表面に吸着した重水が還元され、重水素イオン又は重水素分子が発生する。生じた重水素イオン又は重水素分子は、絶縁層516(保護絶縁層506を形成した場合は保護絶縁層506)、及び第2の絶縁層517中を拡散し、酸化物半導体層531に到達する。
【0144】
従って、天然に分布する濃度より高い濃度の重水素原子を含む重水を用いる本実施の形態によれば、酸化物半導体層531において1×1017atoms/cmを越える濃度の重水素が観測される場合、導電膜502が設計用第1の電極601に吸着した重水を分解すること、すなわち水の還元反応において活性であることを評価できる。依って、本実施の形態に例示する方法により、水と反応して水素イオン又は水素分子を実質的に発生し難い不活性な導電材料を選定することができ、酸化物半導体のキャリア濃度を高める水素イオン又は水素分子の発生が抑制された信頼性の優れた酸化物半導体を用いた半導体装置の設計方法を提供できる。又は、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置の設計方法を提供できる。
【0145】
また、本実施の形態で例示したトランジスタは、高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、表示装置の画素部に酸化物半導体層を含むトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、酸化物半導体層を含むトランジスタによって、同一基板上に駆動回路部または画素部を作り分けて作製することができるため、表示装置の部品点数を削減することができる。
【0146】
本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0147】
(実施の形態3)
本実施の形態では、重水と反応して重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を、その仕事関数の大小に関わらず第2の電極に適用できる発光素子の構成について説明する。具体的には、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続可能な、第1の電極と第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備えた発光素子の構成、およびその作製方法の一例について、図4を用いて説明する。
【0148】
なお、本実施の形態で例示する発光素子の構成は、第1の電極を陽極とし、第2の電極を陰極とすることができる。また、第1の電極を陰極とし第2の電極を陽極とすることもできる。なお、第1の電極と第2の電極の間に設けるEL層は、第1の電極と第2の電極の極性、及び材質に合わせて適宜構成を選択すればよい。
【0149】
図4に、本実施の形態で例示する発光装置に用いることができる発光素子の構成の一例を示す。図4に示す発光素子は、陽極1101と陰極1102の電極の間に発光物質を含む有機層1103が挟んで設けられている。陰極1102と発光物質を含む有機層1103との間には、第1の電荷発生領域1106、電子リレー層1105、及び電子注入バッファー1104が陰極1102側から順次積層された構造を有する。
【0150】
第1の電荷発生領域1106において、正孔(ホール)と電子が発生し、正孔は陰極1102へ移動し、電子は電子リレー層1105へ移動する。電子リレー層1105は電子輸送性が高く、第1の電荷発生領域1106で生じた電子を電子注入バッファー1104に速やかに受け渡す。電子注入バッファー1104は発光物質を含む有機層1103に電子を注入する障壁を緩和し、発光物質を含む有機層1103への電子注入効率を高める。従って、第1の電荷発生領域1106で発生した電子は、電子リレー層1105と電子注入バッファー1104を経て、発光物質を含む有機層1103のLUMO準位に注入される。
【0151】
なお、電子リレー層1105に用いる物質のLUMO準位は、第1の電荷発生領域1106におけるアクセプター性物質のアクセプター準位と、発光物質を含む有機層1103のLUMO準位との間に位置する。具体的には、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下とするのが好ましい。また、電子リレー層1105は、第1の電荷発生領域1106を構成する物質と電子注入バッファー1104を構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしまう等の相互作用を防ぐことができる。
【0152】
次に、上述した発光素子に用いることができる材料について、具体的に説明する。
【0153】
<陽極の構成>
陽極1101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上が好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。
【0154】
これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛膜は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
【0155】
この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン等)、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の導電性ポリマーを用いても良い。
【0156】
但し、陽極1101と接して第2の電荷発生領域を設ける場合には、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極1101に用いることができる。具体的には、仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。第2の電荷発生領域を構成する材料については、第1の電荷発生領域と共に後述する。
【0157】
<陰極の構成>
陰極1102に接して第1の電荷発生領域1106を、発光物質を含む有機層1103との間に設ける場合、陰極1102は仕事関数の大小に関わらず様々な導電性材料を用いることができる。
【0158】
なお、陰極1102および陽極1101のうち、少なくとも一方が可視光を透過する導電膜を用いて形成する。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などを挙げることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm〜30nm程度)の金属薄膜を用いることもできる。
【0159】
<発光物質を含む有機層の構成>
発光物質を含む有機層1103は、少なくとも発光層を含んで形成されていればよく、発光層以外の層が形成された積層構造であっても良い。発光層以外には、例えば正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質または電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。具体的には、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子輸送層、電子注入層等が挙げられ、これらを陽極側から適宜積層して用いることができる。
【0160】
上述した発光物質を含む有機層1103に含まれる各層を構成する材料について、以下に具体例を示す。
【0161】
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0162】
なお、第2の電荷発生領域を用いて正孔注入層を形成してもよい。正孔注入層に第2の電荷発生領域を用いると、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極1101に用いることができるのは前述の通りである。第2の電荷発生領域を構成する材料については第1の電荷発生領域と共に後述する。
【0163】
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等が挙げられる。その他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)等のカルバゾール誘導体、等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0164】
これ以外にも、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物を正孔輸送層に用いることができる。
【0165】
発光層は、発光物質を含む層である。発光物質としては、以下に示す蛍光性化合物を用いることができる。例えば、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、SD1(商品名;SFC Co., Ltd製)などが挙げられる。
【0166】
また、発光物質としては、以下に示す燐光性化合物を用いることもできる。例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))、))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))などが挙げられる。
【0167】
なお、これらの発光物質は、ホスト材料に分散させて用いるのが好ましい。ホスト材料としては、例えば、NPB(略称)、TPD(略称)、TCTA(略称)、TDATA(略称)、MTDATA(略称)、BSPB(略称)などの芳香族アミン化合物、PCzPCA1(略称)、PCzPCA2(略称)、PCzPCN1(略称)、CBP(略称)、TCPB(略称)、CzPA(略称)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)などのカルバゾール誘導体、PVK(略称)、PVTPA(略称)、PTPDMA(略称)、Poly−TPD(略称)などの高分子化合物を含む正孔輸送性の高い物質や、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体、さらに、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(略称:CO11)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの電子輸送性の高い物質を用いることができる。
【0168】
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、Alq(略称)、Almq(略称)、BeBq(略称)、BAlq(略称)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他Zn(BOX)(略称)、Zn(BTZ)(略称)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBD(略称)や、OXD−7(略称)、CO11(略称)、TAZ(略称)、BPhen(略称)、BCP(略称)、2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:DBTBIm−II)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層を二層以上積層したものを用いてもよい。
【0169】
また、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)
【0170】
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入性の高い物質としては、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物が挙げられる。また、電子輸送性を有する物質中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることもできる。この様な構造とすることにより、陰極1102からの電子注入効率をより高めることができる。
【0171】
なお、これらの層を適宜組み合わせて積層することにより、発光物質を含む有機層1103を形成することができる。また、発光物質を含む有機層1103の形成方法としては、用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾式法や湿式法等)を適宜選択することができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法などを用いることができる。また、各層で異なる方法を用いて形成してもよい。
【0172】
また、陰極1102と発光物質を含む有機層1103との間には、電子注入バッファー1104、電子リレー層1105および第1の電荷発生領域1106が設けられている。陰極1102と接して形成されるのは第1の電荷発生領域1106であり、第1の電荷発生領域1106と接して形成されるのは、電子リレー層1105であり、電子リレー層1105と発光物質を含む有機層1103の間に接して形成されるのは、電子注入バッファー1104である。
【0173】
<電荷発生領域の構成>
第1の電荷発生領域1106、及び第2の電荷発生領域は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む領域である。なお、電荷発生領域は、同一膜中に正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含有する場合だけでなく、正孔輸送性の高い物質を含む層とアクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。但し、陰極側に設ける積層構造の第1の電荷発生領域の場合には、正孔輸送性の高い物質を含む層が陰極1102と接する構造となり、陽極側に設ける積層構造の第2の電荷発生領域の場合には、アクセプター性物質を含む層が陽極1101と接する構造となる。
【0174】
なお、電荷発生領域において、正孔輸送性の高い物質に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率でアクセプター性物質を添加することが好ましい。
【0175】
電荷発生領域に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリブデンが特に好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している。
【0176】
また、電荷発生領域に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0177】
<電子リレー層の構成>
電子リレー層1105は、第1の電荷発生領域1106においてアクセプター性物質がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層1105には、電子輸送性の高い物質を含む層であり、またそのLUMO準位は、第1の電荷発生領域1106におけるアクセプターのアクセプター準位と、発光物質を含む有機層1103のLUMO準位との間の準位を占めるように形成する。具体的には、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下のLUMO準位とするのが好ましい。電子リレー層1105に用いる物質としては、例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層1105に用いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層1105における電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
【0178】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0179】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0180】
その他にも、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8,ペンタデカフルオロオクチル−1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を電子リレー層1105に用いることができる。
【0181】
<電子注入バッファーの構成>
電子注入バッファー1104は、第1の電荷発生領域1106から発光物質を含む有機層1103への電子の注入を容易にする層である。電子注入バッファー1104を第1の電荷発生領域1106と発光物質を含む有機層1103の間に設けることにより、両者の注入障壁を緩和することができる。
【0182】
電子注入バッファー1104には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0183】
また、電子注入バッファー1104が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した発光物質を含む有機層1103の一部に形成することができる電子輸送層の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0184】
以上のような材料を組み合わせることにより、本実施の形態に示す発光素子を作製することができる。この発光素子からは、上述した発光物質からの発光が得られ、その発光色は発光物質の種類を変えることにより選択できる。また、発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、発光スペクトルの幅を拡げて、例えば白色発光を得ることもできる。なお、白色発光を得る場合には、互いに補色となる発光色を呈する発光物質を用いればよく、例えば補色となる発光色を呈する異なる層を備える構成等を用いることができる。具体的な補色の関係としては、例えば青色と黄色、あるいは青緑色と赤色等が挙げられる。
【0185】
基板の絶縁表面上に、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタを備え、当該トランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、実施の形態1、又は実施の形態2に例示する方法により選択された、水と反応して水素イオン又は水素分子を実質的に発生し難い不活性な導電材料からなる第2の電極を用いて、本実施の形態に例示する発光素子を形成することができる。
【0186】
また、本実施の形態に示す発光素子の作製方法としては、ドライプロセス(例えば、真空蒸着法等)、ウェットプロセス(例えば、インクジェット法、スピンコート法等)を問わず、種々の方法を用いて形成することができる。
【0187】
本実施の形態に例示する発光素子の構成を適用すれば、重水と反応して重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を、その仕事関数の大小に関わらず第2の電極に適用できる。そして、本実施の形態で例示した発光素子の第1の電極を、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続すれば、信頼性の優れた酸化物半導体を用いた発光装置を設計できる。
【0188】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0189】
(実施の形態4)
本実施の形態では、重水と反応して重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を第2の電極に適用した発光素子を備える発光表示装置の構成を説明する。具体的には、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたエンハンスメント型の逆スタガ型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、重水と反応して重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料が適用された第2の電極の間に発光物質を含む層を備えたエレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を備える発光表示装置を示す。なお、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0190】
有機EL素子は、一対の電極の間に発光物質を含む有機層を備える。一対の電極間に電圧を印加すると、一方の電極から電子が、他方の電極から正孔が発光物質を含む有機層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光物質が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0191】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、本実施の形態では、発光素子として有機EL素子を用いる場合について説明するが、発光素子として無機EL素子を適用することも可能である。
【0192】
<画素の構成>
図5は、本実施の形態で例示する発光表示装置が備える画素の構成を示す等価回路図である。なお、当該画素はデジタル時間階調駆動、又はアナログ階調駆動のいずれの駆動方法も適用できる。
【0193】
本実施の形態で例示する画素は、酸化物半導体層をチャネル形成領域に用いるnチャネル型のトランジスタを1つの画素に2つ備える。画素6400は、スイッチング用トランジスタ6401、発光素子駆動用トランジスタ6402、発光素子6404及び容量素子6403を有している。スイッチング用トランジスタ6401はゲートが走査線6406に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一方)が信号線6405に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が発光素子駆動用トランジスタ6402のゲートに接続されている。発光素子駆動用トランジスタ6402は、ゲートが容量素子6403を介して電源線6407に接続され、第1電極が電源線6407に接続され、第2電極が発光素子6404の第1の電極(画素電極)に接続されている。発光素子6404の第2の電極は共通電極6408に相当する。共通電極6408は、同一基板上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0194】
なお、発光素子6404の第2の電極(共通電極6408)には低電源電位が設定されている。なお、低電源電位とは、電源線6407に設定される高電源電位に比べて低い電位であり、低電源電位としては例えばGND、0Vなどが設定されていても良い。発光素子6404の発光開始電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子6404に印加して電流を流し、そして発光させる。なお、共通電極6408に高電源電位、電源線6407に低電源電位が設定されていても良い。その場合、発光素子6404に流れる電流が逆になるため、発光素子6404の構成を適宜変更してもよい。
【0195】
なお、容量素子6403は発光素子駆動用トランジスタ6402のゲート容量を代用して省略することも可能である。発光素子駆動用トランジスタ6402のゲート容量は、チャネル領域とゲート電極との間で容量が形成されていてもよい。また、スイッチング用トランジスタ6401にオフ電流が低減されたトランジスタが適用されている場合も、容量素子6403は省略可能である。オフ電流が低減されたトランジスタとしては、酸化物半導体層をチャネル形成領域に用いたトランジスタをその例に挙げることができる。
【0196】
図5の等価回路で表される画素にデジタル時間階調駆動を適用する場合の動作について説明する。電圧入力電圧駆動方式の場合には、発光素子駆動用トランジスタ6402のゲートには、発光素子駆動用トランジスタ6402が十分にオンするか、オフするかの二つの状態となるようなビデオ信号を入力する。つまり、発光素子駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させる。発光素子駆動用トランジスタ6402は線形領域で動作させるため、電源線6407の電圧よりも高い電圧を発光素子駆動用トランジスタ6402のゲートにかける。なお、信号線6405には、(電源線電圧+発光素子駆動用トランジスタ6402のVth)以上の電圧をかける。
【0197】
また、図5の等価回路で表される画素は、信号の入力を異ならせることでデジタル時間階調駆動に代えてアナログ階調駆動を適用できる。
【0198】
図5の等価回路で表される画素にアナログ階調駆動を適用する場合、発光素子駆動用トランジスタ6402のゲートに発光素子6404の順方向電圧に発光素子駆動用トランジスタ6402の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。発光素子6404の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも発光開始電圧を越える。なお、発光素子駆動用トランジスタ6402が飽和領域で動作するようなビデオ信号を入力することで、発光素子6404に電流を流すことができる。発光素子駆動用トランジスタ6402を飽和領域で動作させるため、電源線6407の電位は、発光素子駆動用トランジスタ6402のゲート電位よりも高くする。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子6404にビデオ信号に応じた電流を流し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0199】
なお、図5に示す画素構成は、これに限定されない。例えば、図5に示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ又は論理回路などを追加してもよい。また、発光素子駆動用トランジスタと発光素子との間に電流制御用TFTを接続する構成であってもよい。
【0200】
<発光素子の構成>
発光素子の構成について、図6に示す画素の断面構造を用いて説明する。
【0201】
発光素子の第1の電極又は第2の電極の少なくとも一方は可視光を透過する導電膜を用いて形成し、発光素子から発光を取り出す。発光を取り出す構造としては、発光素子が形成された基板を介することなく、当該発光素子が形成された側に発光する上面射出構造、発光素子が形成された基板を介し、当該発光素子が形成されていない側に発光する下面射出構造、並びに基板の発光素子が形成された側及び基板を介して基板の他方の側に発光を取り出す両面射出構造がある。いずれの射出構造の発光素子も上述の画素構成に組み合わせて用いることができる。
【0202】
上面射出構造の発光素子について、図6(A)を用いて説明する。上面射出構造の発光素子は、図6(A)に矢印で示す方向に光を発する。
【0203】
図6(A)に断面図を例示する発光装置は、発光素子駆動用トランジスタ7401aと、発光素子7000aを有する。発光素子7000aは第1の電極7001aと、可視光を透過する第2の電極7002aと、第1の電極7001aと第2の電極7002aとの間の発光物質を含む有機層7003aを備え、第1の電極7001aはトランジスタ7401aのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続されている。
【0204】
第1の電極7001aは発光物質を含む有機層7003aが発する光を効率よく反射する材料が好ましい。なぜなら光の取り出し効率を向上できるためである。なお、第1の電極7001aを積層構造としてもよい。例えば、発光物質を含む有機層7003aに接する側に可視光を透過する導電膜を用い、他方に光を遮光する膜を積層して用いることもできる。光を遮光する膜としては、発光物質を含む有機層が発する光を効率よく反射する金属膜等が好ましいが、例えば黒の顔料を添加した樹脂等を用いることもできる。
【0205】
第2の電極7002aは可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、例えば酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などを挙げることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、5nm〜30nm程度)の金属薄膜を用いることもできる。例えば20nmの膜厚を有するアルミニウム膜を第2の電極7002aとして用いることができる。
【0206】
なお、第1の電極7001a、又は第2の電極7002aのいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0207】
発光物質を含む有機層7003aは単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。複数の層で構成されている構成としては、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、並びに電子注入層が積層された構成を例に挙げることができる。なお、発光層を除くこれらの層は発光物質を含む有機層7003a中に必ずしも全て設ける必要はない。また、これらの層は重複して設けることもできる。具体的には、発光物質を含む有機層7003a中に複数の発光層を重ねて設けてもよく、電子注入層に重ねて正孔注入層を設けてもよい。また、中間層として電荷発生層の他、電子リレー層など他の構成を適宜加えることができる。
【0208】
また、発光素子7000aは第1の電極7001aと、隣接する画素の第1の電極7021aの端部を覆う隔壁7009aを備える。隔壁7009aは、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂膜の他、無機絶縁膜または有機ポリシロキサン膜を適用できる。特に、隔壁7009aの側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように、感光性の樹脂材料を用いて形成することが好ましい。隔壁7009aに感光性の樹脂材料を用いる場合、レジストマスクを形成する工程を省略することができる。また、隔壁を無機絶縁膜で形成することもできる。無機絶縁膜を隔壁に用いることで、隔壁に含まれる水分量を低減できる。たとえ不活性な導電膜を第2の電極に用いる場合であっても、長期間の使用に伴い微量の水素イオン又は水素分子が発生する可能性を限りなく少なくするために、隔壁中の水分量を低減する構成が好ましい。
【0209】
次に、下面射出構造の発光素子について、図6(B)を用いて説明する。下面射出構造の発光素子は、図6(B)に矢印で示す方向に光を発する。
【0210】
図6(B)に断面図を例示する発光装置は、発光素子駆動用トランジスタ7401bと、発光素子7000bを有する。発光素子7000bは可視光を透過する第1の電極7001bと、第2の電極7002bと、第1の電極7001bと第2の電極7002bとの間に発光物質を含む有機層7003bを備え、第1の電極7001bはトランジスタ7401bのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続されている。
【0211】
第1の電極7001bは可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、図6(A)の第2の電極7002aに用いることができる材料を適用することができる。
【0212】
第2の電極7002bは発光物質を含む有機層7003bが発する光を効率よく反射する材料が好ましく、図6(A)の第1の電極7001aに用いることができる材料を適用することができる。
【0213】
なお、第1の電極7001b、又は第2の電極7002bのいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0214】
発光物質を含む有機層7003bは単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。発光物質を含む有機層7003bとしては、図6(A)の発光物質を含む有機層7003aに用いることができる構成、及び材料を適用することができる。
【0215】
また、発光素子7000bは第1の電極7001bと、隣接する画素の第1の電極7021bの端部を覆う隔壁7009bを備える。隔壁7009bは、図6(A)の隔壁7009aに用いることができる構成、及び材料を適用することができる。
【0216】
次に、両面射出構造の発光素子について、図6(C)を用いて説明する。両面射出構造の発光素子は、図6(C)に矢印で示す方向に光を発する。
【0217】
図6(C)に断面図を例示する発光装置は、発光素子駆動用トランジスタ7401cと、発光素子7000cを有する。発光素子7000cは可視光を透過する第1の電極7001cと、可視光を透過する第2の電極7002cと、第1の電極7001cと第2の電極7002cの間の発光物質を含む有機層7003cを備え、第1の電極7001cはトランジスタ7401cのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続されている。
【0218】
第1の電極7001c、及び第2の電極7002cは可視光を透過する導電膜を用いる。可視光を透過する導電膜としては、図6(A)の第2の電極7002aに用いることができる材料を適用することができる。
【0219】
なお、第1の電極7001c、又は第2の電極7002cのいずれか一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。陽極として機能する電極には、仕事関数の大きな物質が好ましく、陰極として機能する電極には仕事関数の小さな物質が好ましい。
【0220】
発光物質を含む有機層7003cは単数の層で構成されていても、複数の層が積層されていても良い。発光物質を含む有機層7003cとしては、図6(A)の発光物質を含む有機層7003aに用いることができる構成、及び材料を適用することができる。
【0221】
また、発光素子7000cは第1の電極7001cと、隣接する画素の第1の電極7021cの端部を覆う隔壁7009cを備える。隔壁7009cは、図6(A)の隔壁7009aに用いることができる構成、及び材料を適用することができる。
【0222】
なお半導体装置は、図6に示した構成に限定されるものではなく、本明細書に開示する技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0223】
<発光パネルの構成>
次に、半導体装置の一例としてエレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を備える発光表示パネル(発光パネルともいう)の外観及び断面について、図7を用いて説明する。図7(A)は、第1の基板上に形成された薄膜トランジスタ及び発光素子を、シール材を用いて貼り合わせた第1の基板と第2の基板の間に封止した発光表示パネルの平面図である。また、図7(B)は図7(A)のH−Iにおける断面図に相当する。
【0224】
第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bを囲むようにして、シール材4505が設けられている。また画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bの上に第2の基板4506が設けられている。
【0225】
画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、充填材4507と共に、第1の基板4501とシール材4505と第2の基板4506によって密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0226】
また、充填材4507としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができる。充填材に用いることができる樹脂の例として、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を挙げることができる。
【0227】
また第1の基板4501上に設けられた画素部4502、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bは、トランジスタを複数有しており、図7(B)では、画素部4502に含まれるトランジスタ4510と、信号線駆動回路4503aに含まれるトランジスタ4509とを例示している。
【0228】
駆動回路用のトランジスタ4509の酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置の絶縁層4544上に、バックゲート電極4540が設けられている。バックゲート電極4540を酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、バイアス−熱ストレス試験(BT試験)前後におけるトランジスタ4509のしきい値電圧の変化を低減することができる。また、バックゲート電極4540は、電位がトランジスタ4509のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、バックゲート電極4540の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0229】
トランジスタの表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁層4544で覆う構成となっている。
【0230】
また4511は発光素子に相当し、発光素子4511が有する画素電極である第1の電極4517は、トランジスタ4510のソース電極層またはドレイン電極層と電気的に接続されている。なお発光素子4511の構成は、第1の電極4517、発光物質を含む有機層4512、第2の電極4513を備える。
【0231】
隔壁4520は、有機樹脂膜、無機絶縁膜または有機ポリシロキサンを用いて形成する。特に感光性の材料を用い、第1の電極4517上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0232】
発光物質を含む有機層4512は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0233】
発光素子4511に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極4513及び隔壁4520上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、DLC膜等を形成することができる。
【0234】
また、信号線駆動回路4503a、4503b、走査線駆動回路4504a、4504b、および画素部4502に与えられる各種信号及び電位は、FPC4518a、4518bから供給されている。
【0235】
接続端子電極4515は、発光素子4511が有する第1の電極4517と同じ導電膜から形成され、端子電極4516は、トランジスタ4509が有するソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜から形成されている。
【0236】
接続端子電極4515は、FPC4518aが有する端子と、異方性導電膜4519を介して電気的に接続されている。
【0237】
発光素子4511が上面射出構造、又は両面射出構造の発光素子である場合は、光の取り出し方向に位置する第2の基板4506として可視光を透過する基板を用いる。例えば、ガラス板、プラスチック板、ポリエステルフィルムまたはアクリルフィルムを用いることができる。
【0238】
また、発光素子4511の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0239】
なお、信号線駆動回路4503a、4503b、及び走査線駆動回路4504a、4504bを、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜によって形成された駆動回路を用いて実装してもよい。また、信号線駆動回路のみ、或いは一部、又は走査線駆動回路のみ、或いは一部のみを別途形成して実装しても良く、図7の構成に限定されない。
【0240】
以上の工程により、半導体装置として信頼性の高い発光表示装置(表示パネル)を作製することができる。
【0241】
本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0242】
本実施例では、基板上に酸化珪素膜と有機膜を積層して設け、当該有機膜に重水を塗布した後、有機膜に接して導電膜を成膜し、次いで、酸化珪素膜中の重水素の存在量を測定することにより、重水と反応して重水素イオン又は重水素分子を発生し難い不活性な導電材料を選定した。特に、本実施例では導電膜として銀(Ag)を用いた試料と、アルミニウム(Al)を用いた試料、計二種類の試料を作製、評価して不活性な導電材料を選定した。
【0243】
さらに、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、前記第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の第2の電極に、上述の方法で選定した材料からなる導電膜を適用して半導体装置を作製した。
【0244】
上述の半導体装置の設計方法の詳細について、図8、及び図9を参照して説明する。なお本実施例では、第2の電極用の材料を選定するために半導体素子があらかじめ形成された基板を2枚使用した。2枚の基板は第4のステップを除いて、第1のステップから第6のステップまで同様の処理を施した。また、第7のステップでは第2の電極に適した導電膜を適用した発光表示装置を作製した。また、比較のために第2の電極に適していない導電膜を適用した比較表示装置も作製した。
【0245】
<第1のステップ:酸化珪素膜の形成>
チャネル形成領域にIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いたトランジスタ710が形成された基板705上に、酸化珪素膜716を形成した。本実施例ではスパッタリング法を用いて厚さを300nmの酸化珪素膜716を形成した。なお、トランジスタ710は実施の形態2で説明した方法を用いて形成した。
【0246】
<第2のステップ:有機膜の形成>
酸化珪素膜716上に有機膜717を形成した。本実施例では厚さ1.5μmのアクリル系の有機膜717を形成した。
【0247】
<第3のステップ:重水の塗布>
基板705に設けた有機膜717の100mm×100mmの範囲に5mLの重水を塗布した。基板705は、重水を塗布してから10分間保持した後、乾燥空気を吹き付けて乾燥した(図8(A)参照)。
【0248】
<第4のステップ:導電膜の成膜>
次いで、基板705を蒸着装置に搬入し、有機膜717に接して導電膜702を形成した。導電膜702が活性な導電材料、具体的には水等と反応して水素イオン又は水素分子を発生する材料であれば、有機膜717に吸着もしくは拡散した重水と反応し、重水素イオン又は重水素分子を発生することになる(図8(B)参照)。
【0249】
本実施例では、2枚の基板705の一方に導電膜702として銀(Ag)を100nm成膜して試料1を作製し、他方にアルミニウム(Al)200nm成膜した試料2を作製した。なお、いずれの導電膜702も5×10−5Paの真空中で抵抗加熱法を用いて成膜した。
【0250】
<第5のステップ:重水素原子の濃度測定>
次いで、第2の電極が成膜された2枚の基板705(試料1、及び試料2)を蒸着装置から取り出し、それぞれの導電膜702側から基板705に向けて二次イオン質量分析(SIMS)を行った(図8(C)参照)。二次イオン質量分析の結果を図9に示す。
【0251】
図9の横軸は深さを、縦軸は水素イオンの濃度を表す。横軸は有機膜717と酸化珪素膜716の界面を深さ0とし、酸化珪素膜側を正の深さとした。縦軸は観測された水素イオン強度を、酸化珪素膜をマトリクスとする場合の水素イオン濃度に換算して表示した。
【0252】
図9から、導電膜として銀(Ag)を成膜した試料1では、酸化珪素膜716において重水素原子が1×1017atoms/cm観測された。また、導電膜としてアルミニウム(Al)を成膜した試料2では、酸化珪素膜716において重水素原子が1×1018atoms/cm観測された。
【0253】
<第6のステップ:導電膜の選定>
上述の二次イオン質量分析の結果、試料1の酸化珪素膜716の膜厚方向の中央、すなわち界面から150nmの部分に含まれる重水素原子が1×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となることから、試料1に用いた銀(Ag)は、有機膜717に吸着もしくは拡散した重水と反応し難い不活性な導電材料と判断できた。依って本実施例では発光表示装置の第2の電極として銀薄膜を選定した。なお、アルミニウム(Al)は比較表示装置の第2の電極の作製に選定した。
【0254】
<第7のステップ:選定した導電膜の第2の電極への適用>
基板1705は、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1720と、当該トランジスタ1720のソース電極層、又はドレイン電極層に開口部1718を介して接続された第1の電極1701を備える。本実施例では、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物を用いて第1の電極1701を形成し、下面射出構造の発光素子とした。
【0255】
本実施例で作製した発光表示装置、及び比較表示装置の発光素子の構造を図10、及び表1に示す。発光素子は基板1705に設けた第1の電極1701と、第2の電極1702の間に発光物質を含む有機層1703を挟む構成を備える。なお、第2の電極1702は第6のステップで選定した銀電極を用い、発光物質を含む有機層1703は、正孔注入層1711、正孔輸送層1712、第1の発光層1713a、第2の発光層1713b、電子輸送層1714、並びに電子注入層1715が順次積層された構造を有する。
【0256】
【表1】

【0257】
なお、発光素子の材料としては、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、酸化モリブデン、9−フェニル−9’−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−3,3’−ビ(9H−カルバゾール)(略称:PCCPA)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)を用いた。
【0258】
以上により得られた発光表示装置、及び比較表示装置を大気に曝さないように窒素雰囲気のグローブボックス内において封止した。
【0259】
(評価結果)
第2の電極に銀(Ag)を用いた発光表示装置と、第2の電極にアルミニウム(Al)を用いた比較表示装置を80℃の環境下、20分保存した。20分の保存終了後、それぞれの表示装置に市松(チェッカーともいう)模様の表示をおこなう信号を入力して表示を試みた結果を図11に示す。第2の電極に銀(Ag)を用いた発光表示装置は正常に動作した(図11(A)参照)。しかし、第2の電極にアルミニウム(Al)を用いた比較表示装置は正常に動作しなかった(図11(B)参照)。
【符号の説明】
【0260】
101 電極
102 電極
103 有機層
402 導電膜
405 基板
410 トランジスタ
416 酸化珪素膜
417 有機膜
450 窒素雰囲気下
502 導電膜
505 基板
506 保護絶縁層
507 ゲート絶縁層
510 設計用トランジスタ
511 ゲート電極層
515a ソース電極層
515b ドレイン電極層
516 絶縁層
517 絶縁層
518 開口部
530 酸化物半導体膜
531 酸化物半導体層
601 電極
702 導電膜
705 基板
710 トランジスタ
716 酸化珪素膜
717 有機膜
1101 陽極
1102 陰極
1103 有機層
1104 電子注入バッファー
1105 電子リレー層
1106 電荷発生領域
1401 電極
1402 電極
1403 有機層
1405 基板
1410 トランジスタ
1505 基板
1510 トランジスタ
1601 電極
1602 電極
1603 有機層
1701 電極
1702 電極
1703 有機層
1705 基板
1711 正孔注入層
1712 正孔輸送層
1713a 発光層
1713b 発光層
1714 電子輸送層
1715 電子注入層
1718 開口部
1720 トランジスタ
4501 基板
4502 画素部
4503a、4503b 信号線駆動回路
4504a、4504b 走査線駆動回路
4505 シール材
4506 基板
4507 充填材
4509 トランジスタ
4510 トランジスタ
4511 発光素子
4512 有機層
4513 電極
4515 接続端子電極
4516 端子電極
4517 電極
4518a、4518b FPC
4519 異方性導電膜
4520 隔壁
4540 バックゲート電極
4544 絶縁層
6400 画素
6401 スイッチング用トランジスタ
6402 発光素子駆動用トランジスタ
6403 容量素子
6404 発光素子
6405 信号線
6406 走査線
6407 電源線
6408 共通電極
7000a 発光素子
7000b 発光素子
7000c 発光素子
7001a 電極
7001b 電極
7001c 電極
7002a 電極
7002b 電極
7002c 電極
7003a 有機層
7003b 有機層
7003c 有機層
7009a 隔壁
7009b 隔壁
7009c 隔壁
7021a 電極
7021b 電極
7021c 電極
7401a トランジスタ
7401b トランジスタ
7401c トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、前記第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の設計方法であって、
基板の一方の面に酸化珪素膜を形成し、
前記酸化珪素膜を覆って有機膜を形成し、
前記有機膜に重水を塗布し、
前記有機膜に接して導電膜を成膜し、
前記酸化珪素膜中の重水素原子の濃度を測定し、
前記重水素原子が1×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定し、
選定した前記導電材料を前記第2の電極に適用する半導体装置の設計方法。
【請求項2】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたエンハンスメント型のトランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続された第1の電極と、前記第1の電極に重畳する第2の電極の間に発光物質を含む有機層を備える半導体装置の設計方法であって、
基板の絶縁表面に、チャネル形成領域に設計用酸化物半導体を用いたエンハンスメント型の設計用トランジスタを形成し、
前記設計用トランジスタを覆う設計用酸化物絶縁層を形成し、
前記設計用トランジスタのソース電極層又はドレイン電極層と電気的に接続する設計用第1の電極を形成し、
前記設計用第1の電極に重水を塗布し、
前記設計用第1の電極に接して導電膜を成膜し、
前記設計用酸化物半導体中の重水素原子の濃度を測定し、
前記重水素原子が5×1015atoms/cm以上1×1017atoms/cm以下の濃度となる導電材料を選定し、
選定した前記導電材料を前記第2の電極に適用する半導体装置の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−69519(P2012−69519A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183697(P2011−183697)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】