説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】温度変化に起因したパッシベーションクラックを適切に防止することができる半導体装置の提供。
【解決手段】本発明による半導体装置1は、絶縁膜11と、絶縁膜11上に形成されるバリア層16と、バリア層16上に配されるアルミ配線12と、アルミ配線12の上部に設けられるキャップメタル18又は防腐処理部21と、アルミ配線12の側部に設けられるサイドウォール17と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ配線を備える半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に第1の層間絶縁膜を介してアルミニウム配線層が形成されると共に、前記アルミニウム配線層上に第2の層間絶縁膜を介して水素遮断用膜が形成されてなる半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−17788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、アルミ配線を備える半導体装置におけるパッシベーション構造は、上記の特許文献1に記載されるように、アルミ配線上に、バリア層からの応力緩和層(SiO,PSG等)と、バリア層(SiN,SiON)とを形成して構成される。また、バリア層の上には、更にパッケージからの応力を緩和するための応力緩和層(ポリイミドやPBOの有機塗布膜)が形成される。
【0005】
しかしながら、かかる一般的なパッシベーション構造では、チップ面積が大きく、アルミ配線の膜厚が比較的厚い(例えば2μm以上)場合、パッケージに組み立て後の温度変化が発生すると、パッシベーション膜(バリア層等)にクラックが発生しやすくなり、外部からの水分や可動イオンに対するバリア機能が損なわれるという問題が生ずる。より具体的には、図1に模式的に示すように、温度変化が生ずると、パッケージからの横方向の応力とアルミ配線自身の熱収縮による応力が発生し、アルミ配線上部の角に応力が集中してクラックが生じる。アルミ配線が厚いほど及びチップ面積が大きいほどパッシベーション膜への応力が増大するので、このようなクラックが発生しやすくなる。
【0006】
そこで、本発明は、温度変化に起因したパッシベーションクラックを適切に防止することができる半導体装置及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されるバリア層と、
前記バリア層上に配されるアルミ配線と、
前記アルミ配線の上部に設けられるキャップメタル又は防腐処理部と、
前記アルミ配線の側部に設けられるサイドウォールと、を備えることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度変化に起因したパッシベーションクラックを適切に防止することができる半導体装置及びその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】クラック発生のメカニズムを模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による半導体装置1の一実施例を示す断面図である。
【図3】一般的なパッシベーション構造を有する比較例による半導体装置の断面図である。
【図4】本発明のその他の実施例による半導体装置2を示す断面図である。
【図5】本発明のその他の実施例による半導体装置3を示す断面図である。
【図6】本発明のその他の実施例による半導体装置4を示す断面図である。
【図7】本発明による半導体装置の製造方法の要部の一例の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図2は、本発明による半導体装置1の一実施例を示す断面図である。半導体装置1は、好適には、パワーMOSFETを含む制御ICで使用される。この半導体装置1は、図示しないパッケージに収容される。尚、この半導体装置1を実装する制御ICの用途は、広範であり、特に用途は限定されない。
【0012】
本実施例の半導体装置1の要部断面は、層間絶縁膜11と、最上層アルミ配線12と、有機塗布膜15と、層間バリア層16と、サイドウォール17と、キャップメタル18とを備える。
【0013】
最上層アルミ配線12は、層間バリア層16上に配される。最上層アルミ配線12は、好ましくは、パワーMOSFETを含む制御ICでのON抵抗を低減するため、2μm以上のアルミ膜厚で形成される。
【0014】
層間バリア層16は、層間絶縁膜11上に形成される。層間バリア層16は、最上層アルミ配線12以外の領域に、外部からの水分や可動イオンが進入しないように保護するためのバリア機能を有する。図示の例では、層間バリア層16は、層間絶縁膜11上の全面に亘って形成される。層間バリア層16は、外部からの水分や可動イオンの進入防止機能を実現できる適切な材料から形成され、好ましくは、SiN,SiON等のような材料から形成される。
【0015】
サイドウォール17は、層間バリア層16上で、最上層アルミ配線12の横方向(配線長手方向に垂直な方向)の両側部に形成される。サイドウォール17は、層間バリア層16との間で高い密着性を維持し、アルミスライドを防止する機能を有する。サイドウォール17は、かかる機能を実現できる適切な材料から形成され、好ましくは、SiN,SiOのような比較的硬質なシリコン化合物材料から形成される。
【0016】
キャップメタル18は、最上層アルミ配線12の上部(上面)に形成される。キャップメタル18は、最上層アルミ配線12への水分の進入及びそれに伴うアルミ腐食を防止する機能を有する。キャップメタル18は、かかる機能を実現でき、且つ、最上層アルミ配線12の応力を有機塗布膜15に開放できるような材料から形成され、好ましくは、TiNのような材料から形成される。その他、キャップメタル18は、最上層アルミ配線12の上部に形成される酸化アルミで置換されてもよいし、その他の軟質な材料(シリコン化合物のような硬い材料でない)から形成されてもよい。
【0017】
有機塗布膜15は、半導体装置1の最上層を形成するように、層間絶縁膜11、サイドウォール17及びキャップメタル18上に形成される。有機塗布膜15は、ポリイミドやPBO等の有機塗布膜であり、弾性を有する。
【0018】
ここで、本実施例の半導体装置1に対する比較例について、図3を参照して説明する。
【0019】
図3は、一般的なパッシベーション構造を有する比較例による半導体装置の断面図である。
【0020】
この比較例の半導体装置の要部断面は、層間絶縁膜11と、最上層アルミ配線12と、バリア層14から応力を緩和するための応力緩和層13と、バリア層14と、有機塗布膜15とを備える。
【0021】
この比較例では、バリア層14からの応力により最上層アルミ配線12にクラックが生ずるのを防止するために、最上層アルミ配線12とバリア層14との間に、応力緩和層13が設けられる。しかしながら、上述の如く、かかる比較例による構造では、チップ面積が大きく、アルミ配線の膜厚が比較的厚い(例えば2μm以上)場合、温度変化により生ずる応力に起因して、バリア層14等にクラック(パッシベーションクラック)が生ずるという問題がある(図1参照)。
【0022】
これに対して、本実施例の半導体装置1によれば、とりわけ、次のような作用効果が奏される。
【0023】
最上層アルミ配線12の上部に、比較例のバリア層14に相当するバリア層が配置されないので、温度変化により最上層アルミ配線12に生ずる応力は、最上層アルミ配線12の上部の有機塗布膜15へ直接的に開放される。これにより、チップ面積が大きく、アルミ配線の膜厚が比較的厚い(例えば2μm以上)場合であっても、パッシベーションクラックの発生を防止することができる。
【0024】
また、最上層アルミ配線12の上部に、比較例のバリア層14に相当するバリア層が配置されないので、かかるバリア層からの応力が無くなり、比較例の応力緩和層13に相当する応力緩和層を形成する必要性を無くすことができる。尚、本実施例では、最上層アルミ配線12の下部に層間バリア層16を配置しているが、最上層アルミ配線12の上部は、弾性のある有機塗布膜15であるため、層間バリア層16からの応力が有機塗布膜15へと開放され、応力緩和層は不要である。
【0025】
また、最上層アルミ配線12は、側壁部分がサイドウォール17で覆われると共に、上部がキャップメタル18で覆われるので、最上層アルミ配線12への水分の進入が防止され、アルミ腐食が発生しない。
【0026】
また、温度変化に起因したパッケージからの横方向の応力に対して、層間バリア層16と密着性の高いサイドウォール17を配線側壁に形成することで、アルミスライドを抑止することができる。
【0027】
図4は、本発明のその他の実施例による半導体装置2を示す断面図である。本実施例の半導体装置2は、最上層アルミ配線12の下部の層間バリア層16を無くした点が、図2に示した実施例の半導体装置1と異なる。かかる構造によれば、図2に示した実施例の半導体装置1に対して製造プロセスの面で不利であるものの(例えば、層間バリア層16の一部を除去する工程が必要となる)、層間バリア層16と最上層アルミ配線12との間で応力が発生しないので、構造上有利となる。
【0028】
図5は、本発明のその他の実施例による半導体装置3を示す断面図である。本実施例の半導体装置3は、下層アルミ配線19及びコンタクト20を有する点が、図2に示した実施例の半導体装置1と異なる。尚、実際には、図5に示す半導体装置3は、図2に示した実施例の半導体装置1における実際の下層の構造(図2では省略していた部分)を含む構成を図示したものである。但し、図2に示した実施例の半導体装置1(図4に示した半導体装置2についても同様)は、単層のアルミ配線構造として実現することも可能である。この場合、層間絶縁膜11の下層に基板(シリコン基板やガラス基板)が設けられる。そして、用語の形式的な読み替えとして、層間バリア層16は、“層間”ではないバリア層16となり、“最上層アルミ配線12”は、アルミ配線12となる。
【0029】
図6は、本発明のその他の実施例による半導体装置4を示す断面図である。本実施例の半導体装置4は、下層アルミ配線19及びコンタクト20を有する点、及び、キャップメタル18に代えて防腐処理部21が最上層アルミ配線12の上部に形成される点が、図2に示した実施例の半導体装置1と異なる。
【0030】
防腐処理部21は、例えば最上層アルミ配線12の上部表面にフッ素注入などの防腐処理を行うことで形成されてもよい。
【0031】
図7は、本発明による半導体装置の製造方法の要部の一例の流れを示す図である。ここでは、図5に示した半導体装置3の製造方法を代表して説明する。他の半導体装置1,2,4については、同様若しくは当業者にとって容易に応用・変更できるので、説明を省略する。
【0032】
ステップ700では、下層アルミ配線19の段差を平坦化した層間絶縁膜11を形成する。この層間絶縁膜11は、プラズマCVDによりSiO膜として700nmの膜厚で形成する。
【0033】
ステップ702では、層間絶縁膜11上にプラズマCVDによりSiN膜を300nmの膜厚で形成する。これにより、層間バリア層16が形成される。
【0034】
ステップ704では、コンタクト20をタングステンプラグで形成する。
【0035】
ステップ706では、最上層アルミ配線12を膜厚4μmで形成すると共に、キャップメタル18をTiNにより膜厚50nmで形成する。
【0036】
ステップ708では、プラズマCVDによるSiN膜で700nm成長させた後、異方性エッチングを行うことにより、サイドウォール17を形成する。
【0037】
ステップ710では、最上層アルミ配線12上のパッケージ緩衝膜としての有機塗布膜15をポリイミドにより10μmの厚さで形成する。
【0038】
以上説明した本発明による各種実施例によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0039】
上述の各種実施例によれば、パッケージ組立後の基板実装時の熱工程や市場での温度変化に起因したパッシベーションクラック及びアルミスライドを防止することができる。また、高湿度下でも最上層アルミ配線12の耐腐食性があり、高い信頼性を確保することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0041】
例えば、図5及び図6に示した実施例の構成は、図4に示した実施例の構成にも適用可能である。即ち、図4に示した半導体装置2においても、下層アルミ配線19及びコンタクト20を有してもよく、また、キャップメタル18に代えて防腐処理部21が最上層アルミ配線12の上部に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1−4 半導体装置
11 層間絶縁膜
12 最上層アルミ配線
13 応力緩和層
14 バリア層
15 有機塗布膜
16 層間バリア層
17 サイドウォール
18 キャップメタル
19 下層アルミ配線
20 コンタクト
21 防腐処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されるバリア層と、
前記バリア層上又は前記絶縁膜上に設けられるアルミ配線と、
前記アルミ配線の上部に設けられるキャップメタル又は防腐処理部と、
前記アルミ配線の側部に設けられるサイドウォールと、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記アルミ配線は、前記アルミ配線と前記絶縁膜の間に前記バリア層が介在しないように、前記絶縁膜における前記バリア層が存在しない領域に設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
絶縁膜上にバリア層を形成するステップと、
前記バリア層上又は前記絶縁膜上にアルミ配線を形成するステップと、
前記アルミ配線の上部にキャップメタル又は防腐処理部を形成するステップと、
前記アルミ配線の側部にサイドウォールを形成するステップとを備える、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−114008(P2011−114008A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266239(P2009−266239)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】