説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】耐圧とオン抵抗とのトレードオフ関係を改善する。
【解決手段】ゲート絶縁膜及びLOCOS領域の下、及びドレイン領域を囲むようにドレイン領域に接してオフセット領域を設け、オフセット領域を、第1オフセット領域と、第1オフセット領域の上にドレイン領域を囲み且つLOCOS酸化膜の下に形成される第2オフセット領域と、前記オフセット領域のソース領域側の端部からLOCOSのソース領域側の端部までの間のみに形成される第3オフセット領域とで形成し、第2オフセット領域の不純物濃度を、第1オフセット領域及び第3オフセット領域よりも高くする。高濃度の第2オフセット領域を設けることによりオン抵抗の低減を図り且つ高濃度の第2オフセット領域を低濃度のオフセット領域で挟むことにより、第2オフセット領域の深さ方向の空乏化を促進し電界の緩和を図り耐圧の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、より詳しくは、横型絶縁ゲート電界効果トランジスタ用半導体基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高耐圧、低オン抵抗の横型電界効果トランジスタの分野では、耐圧と単位面積当たりのオン抵抗とのトレードオフ関係の改善を図るため、様々な取り組みがなされている。
例えば、特許文献1には、耐圧を上昇させるために、ドレインドリフト領域を形成するPオフセット領域を、ソース側に張り出させて形成する方法が提案されている。
図11は、その構成を示したものであって、図中106は、不純物濃度の低いpオフセット領域である。図11に示すように、ゲート酸化膜107の下にソース側に張り出させて不純物濃度の低いpオフセット領域106を設けているため、この領域に空乏層が広がりやすくなり、その結果、電界が緩和されることによって耐圧を向上させている。
なお、図11において、103はpソース領域、104はpドレイン領域、108はゲート電極、109は電界緩和用のLOCOS、110はpオフセット領域106よりも不純物濃度の高い第二pオフセット領域である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−260651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、ソース側に張り出させてpオフセット領域106を形成すると、チャネル領域に不純物濃度の低濃度領域の抵抗が存在することになり、オン抵抗が上昇することになる。
また、ソース側に張り出したpオフセット領域106が存在するため、ある程度のゲート長Lga(ゲート電極108−LOCOS109間の距離)が必要となり、セルピッチが大きくなってしまう。つまり、ゲート長を短くすると、pオフセット領域106がチャネルを形成するn型領域と重なることになり、実効的なn型不純物濃度を低下させてしまう。そのため、n型領域の空乏層が広がりやすくなり、ソース領域103及びドレイン領域104間のパンチスルー耐圧が低下してしまう。その結果、ゲート長Lgaを、ある程度確保する必要がある。
【0005】
また、p型基板101の表面層にnウェル層102を形成し、このnウェル層102にボロンのイオン注入を行ってpオフセット領域106を形成した後、酸化雰囲気中で熱処理を行って、厚い酸化膜のLOCOS(SiO2)109を形成している。
このLOCOS109を形成する際に、イオン注入を行ったボロンが、LOCOS109中に吸われてしまい、LOCOS109付近のボロン濃度、すなわちp型オフセット濃度が低下する。つまり、ボロンの偏析が生じることになる。そのため、LOCOS106付近のボロン濃度にバラツキが生じ、その結果、オン抵抗が上昇すると共に、また、オン抵抗のバラツキが生じることになる。
そこで、この発明は上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、耐圧とオン抵抗とのトレードオフ関係を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、当該半導体基板の表面層に形成された第2導電型ウェル領域と、前記第2導電型ウェル領域内に互いに分離して形成される前記第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、前記ドレイン領域に接して設けられたオフセット領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体基板表面上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、前記オフセット領域の表面層に形成され且つ一端が前記ドレイン領域に接し、他端が前記ゲート電極と重なるLOCOS酸化膜と、前記ソース領域の表面に接して設けられたソース電極と、前記ドレイン領域の表面に接して設けられたドレイン電極と、を備え、前記オフセット領域は、前記オフセット領域の表面層に前記LOCOS酸化膜の前記ソース領域側の端部から前記ソース領域側に張り出して形成される上部オフセット領域と、当該上部オフセット領域の下に形成され且つ前記LOCOS酸化膜及び前記ドレイン領域と接する中間オフセット領域と、当該中間オフセット領域の下に形成される下部オフセット領域と、からなり、且つ前記オフセット領域の前記ソース領域側の端部に、前記上部オフセット領域と前記中間オフセット領域と前記下部オフセット領域とが重なる3層構造を有し、前記中間オフセット領域は、前記上部オフセット領域及び前記下部オフセット領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる半導体装置は、前記上部オフセット領域は、前記下部オフセット領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする。
さらに、請求項3にかかる半導体装置は、前記中間オフセット領域の深さ方向の幅は、前記上部オフセット領域及び前記下部オフセット領域の空乏化に伴い、前記中間オフセット領域の、前記上部オフセット領域と重なる同等領域の深さ方向へ空乏化が進んで、当該領域が完全空乏化する値に設定されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項4にかかる半導体装置の製造方法は、第1導電型の半導体基板に形成された第2導電型ウェル領域内に互いに分離して形成される前記第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、前記ドレイン領域に接して設けられたオフセット領域と、前記オフセット領域の表面層に形成され且つ一端が前記ドレイン領域に接し、他端が前記ソース領域側に伸びるLOCOS酸化膜と、を備え、前記オフセット領域が、前記オフセット領域の表面層に前記LOCOS酸化膜の前記ソース領域側の端部から前記ソース領域側に張り出して形成される上部オフセット領域と、当該上部オフセット領域の下に形成され且つ前記LOCOS酸化膜及び前記ドレイン領域と接する中間オフセット領域と、当該中間オフセット領域の下に形成される下部オフセット領域と、からなり、且つ前記オフセット領域の前記ソース領域側の端部に、前記上部オフセット領域と前記中間オフセット領域と前記下部オフセット領域とが重なる3層構造を有する半導体装置の製造方法であって、前記下部オフセット領域の形成領域にイオン注入を行う第1のイオン注入工程と、前記第1のイオン注入工程後に、熱酸化処理を行って前記LOCOS酸化膜を形成すると共に、前記下部オフセット領域の形成領域に注入されたイオンを拡散させる酸化工程と、前記LOCOS酸化膜を含む全面に酸化膜を形成した後、前記中間オフセット領域の形成領域を除く部分にレジストを形成し、当該レジストをイオン注入用のマスクとして、前記中間オフセット領域の形成領域に前記中間オフセット領域形成のためのイオン注入を行う第2のイオン注入工程と、当該第2のイオン注入工程後に、前記レジストをイオン注入用のマスクとして、当該マスクが形成されていない領域に前記上部オフセット領域形成のためのイオン注入を行う第3のイオン注入工程と、を有し、前記第3のイオン注入工程では、前記第2のイオン注入工程におけるイオン種よりも質量の重いイオン種を用い且つより低い加速エネルギでイオン注入を行うことを特徴とする。
さらに、本発明の請求項5にかかる半導体装置の製造方法は、前記第3のイオン注入工程は、前記上部オフセット領域の形成領域にイオンを注入し且つ前記LOCOS酸化膜の中に不純物濃度のピーク位置が位置するように前記イオン注入を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体装置によれば、オフセット領域のソース領域側の端部を、不純物濃度の高い中間オフセット領域を、不純物濃度が中間オフセット領域よりも低い上部オフセット領域及び下部オフセット領域で挟む構成としたため、上部オフセット領域及び下部オフセット領域の空乏化により中間オフセット領域の深さ方向への空乏化を促進することにより、オフセット領域の深さ方向全体の空乏化を可能として電界緩和を図り結果的に耐圧を向上させることができる。また、不純物濃度の高い中間オフセット領域をLOCOS酸化膜の下に形成することによりLOCOS酸化膜下の抵抗を低減し、ドリフト抵抗を効果的に低減することによってオン抵抗を低減することができる。したがって、耐圧の向上とオン抵抗の低減とを図ることができる。
【0010】
また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、下部オフセット領域にイオン注入した後、LOCOS酸化膜を形成し、LOCOS酸化膜を形成した後、中間オフセット領域及び上部オフセット領域形成のためのイオン注入を行うようにしたため、LOCOS酸化膜形成時に、LOCOS酸化膜の下にこのLOCOS膜と接して形成される中間オフセット領域のイオンが、LOCOS酸化膜中に吸われることはなく、すなわち、LOCOS酸化膜付近の不純物濃度にバラツキが生じこれによりオン抵抗にバラツキが生じることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図3】P+型ドレイン領域に電圧を印加した場合のドレインドリフト領域の空乏層の様子を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】図4の製造工程の続きを示す断面図である。
【図6】図5の製造工程の続きを示す断面図である。
【図7】図6の製造工程の続きを示す断面図である。
【図8】図7の製造工程の続きを示す断面図である。
【図9】図8の製造工程の続きを示す断面図である。
【図10】図9の製造工程の続きを示す断面図である。
【図11】従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図12】従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明者は、鋭意検討の結果、ソース側にオフセット領域としての不純物低濃度領域を張り出さずに耐圧を上昇させ、且つボロン濃度のバラツキを抑制する方法を見出した。
(本発明における半導体装置の構成)
図1は、本発明における半導体装置の主要部の断面図であって、図1の半導体装置は、横型電界効果P型MOSトランジスタである。
図1に示すように、この半導体装置は、シリコン基板からなるP型基板1の表面層に、N型ウェル2が形成され、このN型ウェル2領域内に、P+型ソース領域3およびP+型ドレイン領域4が互いに分離して形成されている。
【0013】
P+型ソース領域3とP+型ドレイン領域4との間の基板表面上にはゲート酸化膜5が形成され、さらにこのゲート酸化膜5とP+型ドレイン領域4との間に厚い酸化膜からなるLOCOS6が形成されている。
前記ゲート酸化膜5の上に、ゲート電極である導電性ポリシリコン層7が形成されている。このとき、導電性ポリシリコン層7のソース側の端部は、ゲート酸化膜5のソース側の端部と重なるように形成され、ドレイン側の端部は、LOCOS6の上に重ねて形成されている。
【0014】
さらに、ゲート酸化膜5の一部、LOCOS6及びP+型ドレイン領域4の下層には、ドレインドリフト領域10が形成されている。
そして、P+型ソース領域3およびP+型ドレイン領域4の上に層間絶縁膜15が形成され、この層間絶縁膜15に、P+型ソース領域3、P+型ドレイン領域4に通じるコンタクトホールが設けられて、ソース電極16及びドレイン電極17が形成されている。
【0015】
(横型電界MODトランジスタのドレインドリフト領域の説明)
次に、図1のドレインドリフト領域10について説明する。
ドレインドリフト領域10は、不純物濃度の異なる第一Pオフセット領域11と、第二Pオフセット領域12と第三Pオフセット領域13とで構成される。第三Pオフセット領域13は、LOCOS6の端部よりもP+型ソース領域3側に張り出してゲート酸化膜5の下に形成され、この第三Pオフセット領域13、LOCOS6及びP+型ドレイン領域4の下層の領域に、P+型ドレイン領域4を囲むように第二Pオフセット領域12が形成され、この第二Pオフセット領域12の下の、当該第二Pオフセット領域と同等領域に第一Pオフセット領域11が形成される。このとき、第一Pオフセット領域11、第二Pオフセット領域12及び第三Pオフセット領域13のソース側の端部は、略同一位置となるように形成される。
【0016】
具体的には、例えば、第一Pオフセット領域11は、深さ:0.4〜1〔μm〕の範囲に、ピーク濃度:約6E16〔cm-3〕で形成され、第二Pオフセット領域12は、深さ:0.2〜0.4〔μm〕の範囲に、ピーク濃度:約2E17〔cm-3〕で形成され、第三Pオフセット領域13は、深さ:0〜0.2〔μm〕の範囲に、ピーク濃度:約8E16〔cm-3〕で形成されている。
なお、深さは、P型基板1と絶縁層間膜との界面からのy方向(図1において垂直方向)距離を表す。
【0017】
その結果、図2に示すように、これらオフセット領域11〜13は、P型基板1と絶縁層間膜との界面から深さ1〔μm〕の領域に形成され、且つ、深さ方向に、第一Pオフセット領域11は0.6〔μm〕、第二Pオフセット領域12は0.2〔μm〕、第三Pオフセット領域13は0.2〔μm〕の幅で形成される。
また、図2に示すように、第一Pオフセット領域11、第二Pオフセット領域12、第三Pオフセット領域13は、LOCOS6よりも約0.4〔μm〕程度、P+型ソース領域3側に張り出した位置に形成される。また、ゲート長(ゲート電極7−LOCOS6間の距離)Lgaは、約1.3〔μm〕である。
【0018】
(本願発明の半導体装置においてオン抵抗を低減できる理由)
図1に示すように、本願発明における半導体装置においては、ドレインドリフト領域10を構成する、第一Pオフセット領域11、第二Pオフセット領域12及び第三Pオフセット領域13のソース側の端部は、略同一位置となるように形成され、不純物濃度が最大である第二Pオフセット領域12を、これよりも不純物濃度の低い第一Pオフセット領域11及び第三Pオフセット領域13で挟んだサンドイッチ構造としている。
このサンドイッチ構造のオフセット領域により、ゲート電極7の下層の、LOCOS6のソース側の端部近傍における電界を緩和している。
【0019】
図3は、図1においてP+型ドレイン領域4に電圧を印加した場合の、ドレインドリフト領域10に生じる空乏層14の様子を示したものであって、図1のドレインドリフト領域10部分を拡大したものである。
図3に示すように、低濃度領域である第一Pオフセット領域11及び第三Pオフセット領域13から広がった空乏層は、高濃度領域である第二Pオフセット領域12を挟み込み、第二Pオフセット領域12のy方向の上部及び下部から空乏化が促進され、空乏層が広がることで、ドレインドリフト領域10の、第一Pオフセット領域11、第二Pオフセット領域12、第三Pオフセット領域13が積層された領域全体が深さ方向に完全空乏化される。そのため、電界は緩和され、電界集中箇所とはならない。
【0020】
したがって、サンドイッチ構造とすることにより、電界を緩和することができるため、ソース側に張り出した低濃度のPオフセット領域を設ける必要はない。このため、低濃度のPオフセット領域をソース側に張り出して設けることにより生じるオン抵抗を低減することができる。また、Pオフセット領域を張り出させる必要がないためその分、ゲート電極を短くすることができ、すなわちセルピッチを小さくすることができる。
また、チャネルからP+ドレイン領域4までの距離は、LOCOS6直下を通る経路が最短となる。
ここで、このLOCOS6直下の抵抗を低減すると、ドリフト抵抗を効果的に低減することができ、すなわちオン抵抗を低減することができる。
そこで、本願発明では、図1に示すように、LOCOS6直下の領域に、不純物濃度が高濃度の第二Pオフセット領域12を形成している。
【0021】
さらに、ゲート電極7の下層のLOCOS6の端部の領域、すなわち第三Pオフセット領域13が形成された領域は、チャネルからP+型ドレイン領域4に移動するホールにとっては、ドレインドリフト領域10に入り込むための入り口に当たる。このドレインドリフト領域10の不純物濃度が低いと空乏層が伸びやすいため、JFET(接合型電界効果トランジスタ)効果によって、入り口が狭められオン抵抗が増大してしまう。
そのため、本願発明では、第三Pオフセット領域13の不純物濃度を、第一Pオフセット領域11の不純物濃度よりも高くし、空乏層をより伸びにくくしてJFET効果を抑制することで、オン抵抗の増大を防いでいる。
【0022】
なお、本明細書では、第一Pオフセット領域11及び第三Pオフセット領域13から広がった空乏層が、高濃度領域である第二Pオフセット領域12のy方向の上部及び下部から空乏化を促進し、その結果第二Pオフセット領域12においてy方向の上部及び下部から空乏層が広がり、第二Pオフセット領域12の、第三Pオフセット領域13と重なる領域と同等領域が空乏化されることを、「第一Pオフセット領域11及び第三Pオフセット領域13の空乏化に伴い、第二Pオフセット領域12に深さ方向の空乏化が生じること」として定義している。
【0023】
(本願発明の半導体装置において耐圧が向上する理由)
P+型ドレイン領域4に電圧を印加すると、不純物濃度が低い第一Pオフセット領域11と第三Pオフセット領域13では空乏層が広がりやすい。
一方、第二Pオフセット領域12は、不純物濃度が最も高いため、x方向(図1において水平方向)には空乏層が広がりにくいが、y方向距離は0.2〔μm〕程度と薄いため、y方向からは完全に空乏化しやすい。
【0024】
ここで、第一Pオフセット領域11とN型ウェル2とで形成されるPN接合から伸びる空乏層は、比較的容易に第二Pオフセット領域12に達し、第二Pオフセット領域12に対し、y方向からの空乏化を促進する。これにより、第二Pオフセット領域12の空乏化が進み、結果的に、図3に示すように、ドレインドリフト領域10のP+型ソース領域3側の端部を、深さ方向全体にわたって空乏化することが可能となる。そのため電界を緩和して耐圧を向上させることができる。
【0025】
(本願発明の半導体装置の製造方法)
次に、本発明における半導体装置の製造方法を、図4から図10を伴って説明する。
まず、図4に示すように、抵抗率5〜10〔Ω・cm〕程度のシリコン基板からなるP型基板21の表面に、900〜1000〔℃〕程度の温度環境下でのスチーム酸化により、膜厚100〜200〔nm〕の酸化膜(SiO2膜)22を形成する。さらに、酸化膜22の上に、減圧CVD法により全面に膜厚110〜120〔nm〕程度のSi34膜23を形成する。これにより、P型基板21の上に酸化膜22及びSi34膜23がこの順に積層された構造となる。
【0026】
次に、図5に示すように、公知のフォトリソグラフィ技術により素子分離層(LOCOS)の形成領域に開口を有するフォトレジスト24を形成する。その後、フォトレジスト24をマスクとして公知のエッチング方法、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)により、アクティブ領域となる領域上のみにSi34膜23を残すようにSi34膜23を除去する。そして、フォトレジスト24を除去する。
【0027】
次に、N型ウェル形成領域に開口を有する、イオン注入用のフォトレジストを新たに形成し、このフォトレジストをマスクとしてイオン注入を行い、リン(P)を5×1012〜1×1013/cm2程度、導入する。
続いてイオン注入用のフォトレジストを除去した後、1100〜1300〔℃〕程度の温度環境下で熱処理を行ってN型ウェル25を形成する(図6)。
【0028】
次に、図7に示すように、Pオフセット領域(ドレインドリフト領域)の形成領域に開口を有するフォトレジスト26を形成し、フォトレジスト26をマスクとしてイオン注入を行い、ボロン(B)を、加速エネルギ350〔keV〕、ドーズ量5×1012cm2の条件下でイオン注入し、Pオフセット不純物注入領域27を形成する。イオン注入直後のボロンの不純物濃度のピーク位置は、P型基板21の表面からの深さが800〔nm〕の位置となる。また、導入された不純物は、P型基板21の表面から深さ700〜900〔nm〕程度の範囲に分布している。
【0029】
次に、フォトレジスト26を除去した後、950〜1000〔℃〕程度の温度環境下でスチーム酸化を行い、膜厚400〜500〔nm〕程度の酸化膜からなるLOCOS28を形成する。
この酸化工程の熱で、Pオフセット不純物注入領域27にイオン注入されたボロンは拡散し、Pオフセット領域29を形成する。このとき、ボロンは、イオン注入により充分深い位置に注入されているため、酸化膜からなるLOCOS28及びP型基板21の界面まではボロンは拡散しない。つまり、LOCOS形成時にSiO2からなるLOCOS28へのボロンの偏析は起こらない。
【0030】
そのため、ドレインドリフト領域におけるLOCOS28付近のボロン濃度低下やバラツキを抑制することができ、結果的に、オン抵抗の増加やバラツキを抑制することができる。
その後、ホットリン酸によりSi34膜23を除去し、続いて、フッ酸(HF)系薬液を用いて酸化膜(SiO2膜)22を除去する。これにより、図8に示す構造となる。
【0031】
続いて、図9に示すように、900〜1000〔℃〕の温度環境下でスチーム酸化を行って、N型ウェル層25表面に膜厚200〜300〔nm〕の酸化膜(SiO2膜)30を形成する。
次に、図9に示すように、第二Pオフセットの形成領域に開口を有するフォトレジスト31を形成し、フォトレジスト31をイオン注入用のマスクとして、ボロン(B)を、加速エネルギ100〜150〔keV〕、ドーズ量1×1012〜1×1013/cm2程度の条件下でイオン注入する。
【0032】
これにより、ボロン(B)が、酸化膜30、LOCOS28を介して、第二Pオフセット領域の形成領域に注入されて、第二Pオフセット領域32が形成される。
さらに、同一のフォトレジスト31をイオン注入用のマスクとして、二フッ化ボロン(BF2)を、加速エネルギ50〜100〔keV〕、ドーズ量1×1012〜1×1013/cm2程度の条件下で、第三Pオフセット領域33形成のためのイオン注入を行う。
【0033】
これにより、ボロン(B)が、酸化膜30、LOCOS28を介して、注入される。ここで、第三Pオフセット領域33形成のためのイオン注入は、第二Pオフセット領域32形成のためのイオン注入よりもエネルギの低い、加速エネルギ50〜100〔keV〕で行う。これは、第三Pオフセット領域33のイオン注入直後の不純物濃度のピーク位置をLOCOS28中に位置させるためであり、イオン注入のイオン種として、質量の重い“BF2+”を用い、また、比較的低い加速エネルギでイオン注入を行う。
【0034】
これによって、ボロン(B)が、酸化膜30、LOCOS28を介して注入され且つ、比較的低い加速エネルギでイオン注入がなされるため、ボロン(B)は、P型基板1と酸化膜30との界面から比較的浅い領域までしか到達せず、その結果、第三Pオフセット領域33の形成領域にイオン注入が行われると共に、LOCOS28中に不純物濃度のピーク位置が位置することになる。このため、第二Pオフセット領域32のボロン濃度プロファイルに影響を与えずに、開口部のP型基板21表面のみ、すなわち第三Pオフセット領域33の形成領域に選択的に不純物を導入することができる。この手法により、同一のフォトレジスト31で異なる不純物濃度の第二Pオフセット領域32と第三Pオフセット領域33とをそれぞれ形成することが可能となる。
【0035】
また、LOCOS28形成工程の後にイオン注入を行っている。ここで、従来のように、イオン注入した後、このイオン注入領域にLOCOSを形成するようにした場合には、LOCOS付近のボロン濃度の低下やバラツキが生じる可能性がある。しかしながら、本願発明では、上述のように、イオン注入を行うときには、LOCOS28はすでに形成されているため、ボロン濃度の低下やバラツキの発生を抑制することができ、結果的に、オン抵抗の劣化やバラツキを抑制することができる。
続いて、フォトレジスト31を除去し、フッ酸(HF)系薬液を用いて酸化膜(SiO2膜)30を除去する。
【0036】
さらに、800〜900〔℃〕の温度環境下で熱酸化を行って、図10に示すように、N型ウェル層25表面に、ゲート酸化膜34を形成する。
次に、CVD法により膜厚350〜400〔nm〕程度の導電性ポリシリコン層35を全面に形成する。その後、公知のフォトリソグラフィ技術によりゲート形成領域にフォトレジストを形成し、フォトレジストをマスクとし、公知のエッチング方法によりゲート形成領域以外の導電性ポリシリコン層35を除去し、フォトレジストを除去する。
【0037】
そして、公知のフォトリソグラフィ技術によりP+型ソース及びP+型ドレイン形成領域に開口を有する、不純物注入領域形成用のフォトレジストを形成し、P+型ソース、P+型ドレイン形成領域に、ドーズ量1×1015〜1×1016/cm2程度のボロン(B)をイオン注入する。これにより、P+型ソース不純物注入領域とP+型ドレイン不純物注入領域が形成される。
続いて、不純物注入領域形成用のフォトレジストを除去後、800〜900〔℃〕程度の温度環境下で熱処理を行って、P+型ソース不純物注入領域およびP+型ドレイン不純物注入領域中のボロンを拡散させて、P+型ソース領域、P+型ドレイン領域を形成する。さらに、CVD法により600〜700〔nm〕程度の層間絶縁膜(SiO2膜)を全面に堆積させる。
【0038】
その後、公知のフォトリソグラフィ技術により層間絶縁膜(SiO2膜)のソース、ゲート、ドレインの各電極形成領域に開口を有する、電極形成用のフォトレジストを形成し、フォトレジストをマスクとして公知のエッチング方法、例えばRIEにより層間絶縁膜のエッチングを行う。そして、電極形成用のフォトレジストを除去した後、層間絶縁膜に形成された各電極形成用の開口にTi/TiNまたはAL等、バリアメタル層を含む配線金属層を蒸着させる。
【0039】
さらに、公知のフォトリソグラフィ技術およびRIEにより配線金属層のパターニングを行い、ソース電極及びドレイン電極を形成する。これにより、図1に示すような構造の本願発明の半導体装置が得られる。
このようにして作製した、半導体装置について、耐圧及びオン抵抗を測定したところ、耐圧:40〔V〕、オン抵抗(RonA):0.10〔Ω・mm2〕となることが確認できた。また、このときの、ゲート長Lgaは、約1.3〔μm〕である。
【0040】
これに対し、図11に示す従来の横型電界効果トランジスタの場合には、耐圧:30〔V〕、オン抵抗(RonA):0.25〔Ω・mm2〕である。また、図12に示すように、不純物濃度が低いpオフセット領域306を素子全面に形成し、第二pオフセット領域310をLOCOS309の下方のみに形成し、接合型FET効果によってドレインドリフト抵抗が増大することを防止するようにした場合には、耐圧:34〔V〕、オン抵抗(RonA):0.17〔Ω・mm2〕である。また、このときのゲート長Lgaは、約2〔μm〕である。
【0041】
したがって、上述の本願発明の半導体装置の構成とすることにより、耐圧とオン抵抗とのトレードオフの改善が図られることが確認できた。
また、このトレードオフの改善と共に、ゲート長Lgaの短縮が可能となることが確認できた。
また、上記実施の形態に記載の手順で半導体装置を作製することにより、原理上、LOCOS6作製時のボロンの偏析は生じない。したがって、ボロンの偏析に起因するオン抵抗のバラツキは生じない。
【0042】
なお、上記実施の形態においては、P型基板1に横型電界MOSトランジスタを形成した場合について説明したが、これに限らず、N型基板に形成する場合であっても適用することができる。
ここで、上記実施の形態において、P型基板1が半導体基板に対応し、N型ウェル2が第2導電型ウェル領域に対応し、P+型ソース領域3及びP+型ドレイン領域4が第1導電型のソース領域及びドレイン領域に対応し、オフセット領域10がオフセット領域に対応し、LOCOS6がLOCOS酸化膜に対応し、第一Pオフセット領域11が下部オフセット領域に対応し、第二Pオフセット領域12が中間オフセット領域に対応し、第三Pオフセット領域13が上部オフセット領域に対応している。
【符号の説明】
【0043】
1 P型基板
2 N型ウェル
3 P+型ソース領域
4 P+型ドレイン領域
5 ゲート酸化膜
6 LOCOS
7 導電性ポリシリコン層(ゲート電極)
10 ドレインドリフト領域
11 第一Pオフセット領域
12 第二Pオフセット領域
13 第三Pオフセット領域
14 空乏層
15 層間絶縁膜
16 ソース電極
17 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
当該半導体基板の表面層に形成された第2導電型ウェル領域と、
前記第2導電型ウェル領域内に互いに分離して形成される前記第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、
前記ドレイン領域に接して設けられたオフセット領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体基板表面上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記オフセット領域の表面層に形成され且つ一端が前記ドレイン領域に接し、他端が前記ゲート電極と重なるLOCOS酸化膜と、
前記ソース領域の表面に接して設けられたソース電極と、
前記ドレイン領域の表面に接して設けられたドレイン電極と、を備え、
前記オフセット領域は、
前記オフセット領域の表面層に前記LOCOS酸化膜の前記ソース領域側の端部から前記ソース領域側に張り出して形成される上部オフセット領域と、
当該上部オフセット領域の下に形成され且つ前記LOCOS酸化膜及び前記ドレイン領域と接する中間オフセット領域と、
当該中間オフセット領域の下に形成される下部オフセット領域と、からなり、
且つ前記オフセット領域の前記ソース領域側の端部に、前記上部オフセット領域と前記中間オフセット領域と前記下部オフセット領域とが重なる3層構造を有し、
前記中間オフセット領域は、前記上部オフセット領域及び前記下部オフセット領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記上部オフセット領域は、前記下部オフセット領域よりも不純物濃度が高いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記中間オフセット領域の深さ方向の幅は、前記上部オフセット領域及び前記下部オフセット領域の空乏化に伴い、前記中間オフセット領域の、前記上部オフセット領域と重なる同等領域の深さ方向へ空乏化が進んで、当該領域が完全空乏化する値に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
第1導電型の半導体基板に形成された第2導電型ウェル領域内に互いに分離して形成される前記第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、
前記ドレイン領域に接して設けられたオフセット領域と、
前記オフセット領域の表面層に形成され且つ一端が前記ドレイン領域に接し、他端が前記ソース領域側に伸びるLOCOS酸化膜と、を備え、
前記オフセット領域が、
前記オフセット領域の表面層に前記LOCOS酸化膜の前記ソース領域側の端部から前記ソース領域側に張り出して形成される上部オフセット領域と、
当該上部オフセット領域の下に形成され且つ前記LOCOS酸化膜及び前記ドレイン領域と接する中間オフセット領域と、
当該中間オフセット領域の下に形成される下部オフセット領域と、からなり、
且つ前記オフセット領域の前記ソース領域側の端部に、前記上部オフセット領域と前記中間オフセット領域と前記下部オフセット領域とが重なる3層構造を有する半導体装置の製造方法であって、
前記下部オフセット領域の形成領域にイオン注入を行う第1のイオン注入工程と、
前記第1のイオン注入工程後に、熱酸化処理を行って前記LOCOS酸化膜を形成すると共に、前記下部オフセット領域の形成領域に注入されたイオンを拡散させる酸化工程と、
前記LOCOS酸化膜を含む全面に酸化膜を形成した後、前記中間オフセット領域の形成領域を除く部分にレジストを形成し、当該レジストをイオン注入用のマスクとして、前記中間オフセット領域の形成領域に前記中間オフセット領域形成のためのイオン注入を行う第2のイオン注入工程と、
当該第2のイオン注入工程後に、前記レジストをイオン注入用のマスクとして、当該マスクが形成されていない領域に前記上部オフセット領域形成のためのイオン注入を行う第3のイオン注入工程と、を有し、
前記第3のイオン注入工程では、前記第2のイオン注入工程におけるイオン種よりも質量の重いイオン種を用い且つより低い加速エネルギでイオン注入を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3のイオン注入工程は、
前記上部オフセット領域の形成領域にイオンを注入し且つ前記LOCOS酸化膜の中に不純物濃度のピーク位置が位置するように前記イオン注入を行うことを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−204998(P2011−204998A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72645(P2010−72645)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】