説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】層間絶縁膜が剥離しにくい半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法において、複数のデバイス領域がスクライブライン領域によって区画された半導体ウェーハ上に、層間絶縁膜内に配線及びビアが設けられた多層配線膜を形成する工程と、前記スクライブライン領域内に設定されたダイシング領域の一部に配置された前記多層配線膜及び前記半導体ウェーハを除去することにより、前記多層配線膜及び前記半導体ウェーハを前記デバイス領域毎に切り分ける工程と、を設ける。そして、前記多層配線膜を形成する工程において、前記スクライブライン領域における前記ダイシング領域を除く領域には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成し、前記ダイシング領域における前記層間絶縁膜の少なくとも上部には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、半導体基板上に多層配線膜が設けられた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン基板上に多層配線膜が設けられた半導体装置においては、配線及び配線間隔の微細化に伴い、層間絶縁膜に低誘電率膜(Low−k膜)が使用されるようになっている。しかしながら、一般に、低誘電率膜はメタル配線との密着性が低く、ダイシング工程におけるチッピングの衝撃や、その後に受ける熱応力により、層間絶縁膜がシリコン基板から剥離してしまうという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、チップの周辺領域に配線及びビアからなるダミーパターンを設ける技術が提案されている。ダミーパターンとは、層間絶縁膜内において、配線及びビアを上下方向に連結した構造体である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、層間絶縁膜が剥離しにくい半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜内に設けられた配線と、前記層間絶縁膜内に設けられたビアと、を備え、デバイス領域の周囲の周辺領域における前記層間絶縁膜の内部には、前記配線及び前記ビアが上下方向に連結されたダミーパターンが形成されており、前記周辺領域の周囲に配置され外縁部を構成する端縁領域における前記層間絶縁膜の少なくとも上部には、前記配線及び前記ビアが上下方向に連結されたダミーパターンが形成されていないことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0007】
本発明の他の一態様によれば、複数のデバイス領域がスクライブライン領域によって区画された半導体ウェーハ上に、層間絶縁膜内に配線及びビアが設けられた多層配線膜を形成する工程と、前記スクライブライン領域内に設定されたダイシング領域の一部に配置された前記多層配線膜及び前記半導体ウェーハを除去することにより、前記多層配線膜及び前記半導体ウェーハを前記デバイス領域毎に切り分ける工程と、を備え、前記多層配線膜を形成する工程において、前記スクライブライン領域における前記ダイシング領域を除く領域には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成し、前記ダイシング領域における前記層間絶縁膜の少なくとも上部には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成しないことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、層間絶縁膜が剥離しにくい半導体装置及びその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置を例示する平面図である。
【図2】図1に示すA−A’線による断面図である。
【図3】1本のダミーパターンを例示する断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する斜視図である。
【図5】第1の実施形態におけるウェーハ積層体を例示する平面図である。
【図6】図5に示すB−B’線による断面図である。
【図7】第2の実施形態におけるウェーハ積層体を例示する平面図である。
【図8】図7に示すB−B’線による断面図である。
【図9】比較例におけるウェーハ積層体を例示する平面図である。
【図10】図9に示すB−B’線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を例示する平面図であり、
図2は、図1に示すA−A’線による断面図であり、
図3は、1本のダミーパターンを例示する断面図である。
なお、図1〜図3は半導体装置を模式的に示している。例えば、図1及び図2において、ダミーパターンは実際よりも大きく且つ少なく描かれている。また、図1においては、リング及びダミーパターンを模式的に示し、層間絶縁膜におけるリング及びダミーパターンよりも上方の部分、並びに集積回路は省略している。後述する類似の図についても同様である。
【0011】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置1においては、シリコン基板11が設けられており、シリコン基板11上の全面に多層配線膜12が設けられている。多層配線膜12においては、絶縁材料からなる層間絶縁膜13中に、金属材料からなる配線14及びビア15が多段に形成されている。例えば、半導体装置1は、SoC(システム・オン・チップ)製品であり、周波数が数ギガヘルツの高周波信号を扱う無線デバイスである。多層配線膜12は例えば7層構造であり、配線14が7段に積層されている。各段の配線14の下方には、ビア15が設けられている。そして、例えば、最上層の配線14によってインダクタ(図示せず)が形成されている。
【0012】
層間絶縁膜13においては、下層側から順に、TEOS層21、SiCN層22、SiH層23、TEOS層24及びTEOS層25が積層されている。TEOS層21、24及び25は、TEOS(tetra ethyl ortho silicate)を原料としたCVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)法によって堆積されたシリコン酸化物(SiO)からなる層である。SiCN層22はシリコン炭窒化物(SiCN)によって形成された層であり、低誘電率膜(Low−k膜)の一種である。低誘電率膜とは、比誘電率がシリコン酸化物(SiO)の比誘電率(約3.8)よりも低い材料からなる膜である。SiH層23は、モノシラン(SiH)を原料としたCVD法によって堆積されたシリコン酸化物(SiO)からなる層である。なお、SiH層23の代わりに、フッ素含有シリケートガラス(FSG)からなる層を設けてもよい。
【0013】
また、最下層のビア15は例えばタングステン(W)からなり、最下層の配線14は例えば銅(Cu)からなり、これらはTEOS層21中に設けられている。下から2層目から5層目までのビア15及び配線14は、例えば銅(Cu)からなり、SiCN層22中に設けられている。下から6層目のビア15及び配線14は、例えば銅からなり、SiH層23中に設けられている。下から7層目、すなわち、最上層のビア15及び配線14は、例えば銅からなり、TEOS層24中に設けられている。TEOS層25中にはビア15及び配線14は設けられていない。なお、図1及び後述する図5においては、TEOS層25は図示を省略されている。
【0014】
上方から見て、半導体装置1の形状は矩形である。また、上方から見て、半導体装置1の中央部にはデバイス領域Rdが設定されている。デバイス領域Rdは、演算処理及びデータ記憶等の半導体装置1の本来の機能を実現する領域である。デバイス領域Rdにおいては、多層配線膜12内に形成された配線14及びビア15、並びにシリコン基板11の上面に形成された拡散領域及び素子分離膜等(図示せず)により、集積回路16が形成されている。デバイス領域Rdの外縁には、この外縁に沿ってリング31が形成されている。リング31は、下から1層目から7層目までの配線14及びビア15が上下方向及びデバイス領域Rdの外縁が延びる方向に沿って連結されることによって形成された枠状の構造物である。リング31は集積回路16を囲んでいる。
【0015】
上方から見て、デバイス領域Rdの周囲には、周辺領域Rcが設定されている。周辺領域Rcはデバイス領域Rdを保護する領域であり、その形状はデバイス領域Rdを囲む枠状である。周辺領域Rcには、複数本のダミーパターン32が形成されている。ダミーパターン32は、全層、すなわち、下から1層目から7層目までの配線14及びビア15が上下方向に沿って連結されることによって形成された構造物であり、その形状は上下方向に延びる棒状である。また、上方から見て、ダミーパターン32の形状は矩形である。ダミーパターン32は集積回路16の一部としては機能しないが、層間絶縁膜13をシリコン基板11に対して固定するアンカーとして機能する。
【0016】
上方から見て、周辺領域Rcの周囲には、端縁領域Reが設定されている。端縁領域Reは、半導体装置1の外縁部を構成しており、その形状は周辺領域Rcを囲む枠状である。端縁領域Reには、ダミーパターンは設けられていない。また、ダミーパターンを構成しない配線14及びビア15も設けられていない。但し、端縁領域Reには、層間絶縁膜13は設けられている。また、マーク構造体33(図5参照)の一部分が残留している場合がある。
【0017】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図4(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する斜視図であり、
図5は、本実施形態におけるウェーハ積層体を例示する平面図であり、
図6は、図5に示すB−B’線による断面図である。
【0018】
先ず、図4(a)、図5及び図6に示すように、シリコンウェーハ61を準備する。シリコンウェーハ61においては、複数のデバイス領域Rdが設定されている。複数のデバイス領域Rdは例えばマトリクス状に配列されており、格子状のスクライブライン領域Rscによって区画されている。スクライブライン領域Rscの各直線部分における幅方向中央部には、ダイシング領域Rdcが設定されている。すなわち、ダイシング領域Rdcはスクライブライン領域Rscの内部に位置し、ダイシング領域Rdcの形状は、各直線部分の幅がスクライブライン領域Rscの各直線部分の幅よりも細い格子状である。スクライブライン領域Rscにおけるダイシング領域Rdcを除く領域は、非ダイシング領域Rndとなっている。
【0019】
次に、図4(b)、図5及び図6に示すように、シリコンウェーハ61の上面に拡散領域及び素子分離膜等(図示せず)を形成する。次に、シリコンウェーハ61上の全面に、多層配線膜12を形成する。多層配線膜12は、層間絶縁膜13内に配線14及びビア15を設けることによって形成する。シリコンウェーハ61及び多層配線膜12により、ウェーハ積層体62が作製される。
【0020】
このとき、各デバイス領域Rd内においては、シリコンウェーハ61の上面に形成された拡散領域及び素子分離膜、並びに多層配線膜12の配線14及びビア15により、集積回路16を形成する。また、各デバイス領域Rdの外縁に沿って、リング31を形成する。リング31は、多層配線膜12の全層、すなわち、下から1層目から7層目までの配線14及びビア15を、上下方向及びデバイス領域Rdの外縁が延びる方向に沿って連結することによって形成する。
【0021】
更に、スクライブライン領域Rscにおけるダイシング領域Rdcを除く非ダイシング領域Rndにおいては、配線14及びビア15からなるダミーパターン32を形成する。ダミーパターン32は、多層配線膜12の全層、すなわち、下から1層目から7層目までの配線14及びビア15を上下方向に連結させることによって形成する。一方、ダイシング領域Rdcには、配線14及びビア15を形成せず、従って、ダミーパターン32も形成しない。但し、ダイシング領域Rdcには、各工程において位置合わせに使用するマーク構造体33及び評価用のサンプルであるTEG(test element group)(図示せず)を形成する。
【0022】
次に、図4(c)、図5及び図6に示すように、ウェーハ積層体62をダイシングして、複数個の半導体装置1に切り分ける。具体的には、ダイシングブレード(図示せず)により、ダイシング領域Rdcの各直線部分の幅方向中央部に配置された多層配線膜12及びシリコンウェーハ61を切削して除去する。これにより、シリコンウェーハ61がデバイス領域Rd毎に複数枚のシリコン基板11に切り分けられると共に、多層配線膜12がシリコン基板11毎に切り分けられる。このとき、ダイシング領域Rdcの各直線部分の幅方向中央部は消失するが、幅方向両端部は残留し、半導体装置1の端縁領域Reとなる。また、スクライブライン領域Rscの非ダイシング領域Rndは、半導体装置1の周辺領域Rcとなる。
【0023】
以下、各部の寸法について、一例を挙げて説明する。
シリコンウェーハ61におけるスクライブライン領域Rscの各直線部分の幅は95μmとし、そのうち、ダイシング領域Rdcの幅は75μmとする。ダイシング領域Rdcの各直線部分は、スクライブライン領域Rscの各直線部分の幅方向中央部に配置されているため、非ダイシング領域Rndはスクライブライン領域Rscの各直線部分の幅方向両端部に配置され、その幅はそれぞれ10μmとなる。従って、ダイシング後の半導体装置1において、周辺領域Rcの幅は10μmとなる。また、上方から見て、ダミーパターン32の形状は、一辺の長さが1μmの正方形とする。この場合、非ダイシング領域Rnd(周辺領域Rc)の幅は10μmであるから、非ダイシング領域Rndにはダミーパターン32を6列程度配列させることができる。
【0024】
また、ダイシング領域Rdcのうち、実際にダイシングブレードが通過する領域の幅は30〜35μmであり、従って、ダイシング領域Rdcの残部、すなわち、ダイシング後の半導体装置1における端縁領域Reの幅は、平均して20μm程度となる。ダイシングブレードはダイシング領域Rdcの中央部を狙ってウェーハ積層体62に接触させるが、実際には中央部からずれる場合もあり、その場合には、端縁領域Reの幅が変動する。
【0025】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態においては、スクライブライン領域Rscにおける非ダイシング領域Rndにダミーパターン32を設けているため、このダミーパターン32がストッパー(壁)の役割を果たし、層間絶縁膜13と配線14の剥離の起点を作らないという効果を発揮する。このため、ウェーハ積層体62を半導体装置1に切り分ける際のダイシングの衝撃によって層間絶縁膜13が剥離することを防止できる。また、半導体装置1をモールド樹脂によって封止して実装するときに、モールド樹脂と層間絶縁膜13との間に発生する熱応力により、層間絶縁膜13が剥離することを防止できる。
【0026】
また、スクライブライン領域Rscのうち、ダイシング領域Rdcにはダミーパターン32を形成していないため、ダイシングの際にダイシングブレードが切削する金属材料は、例えばマーク構造体33及びTEGを形成する金属材料だけであり、切削する金属材料の総量が少ない。これにより、ダイシングブレードに金属材料が被着することが少なく、ダイシングブレードの目詰まりが生じにくい。このため、ダイシングブレードを良好な状態で長期間にわたって使用することができる。この結果、ダイシングブレードの劣化に起因するチッピングが生じにくく、また、チッピングに起因して層間絶縁膜13が剥がれることが少ない。更に、ダイシングブレードの耐用期間が伸びると共に、半導体装置1の歩留まりが向上するため、半導体装置1の製造コストの低減及びスループットの向上が期待できる。
【0027】
更に、本実施形態においては、デバイス領域Rdの外縁に沿って集積回路16を囲むリング31を形成しているため、ダイシングによって半導体装置1の端部に印加されたストレスが、デバイス領域Rd内に配置された層間絶縁膜13に及ぼす影響を抑えることができる。また、半導体装置1の端部から層間絶縁膜13内の界面に剥離が生じても、この剥離がデバイス領域Rdまで進入することを防止できる。なお、図1及び図2には、リング31は1本しか示されていないが、リング31の本数は1本には限定されない。例えば、リング31は2〜7本形成することができる。
【0028】
更にまた、本実施形態に係る半導体装置1においては、多層配線膜12の端面において配線14及びビア15が露出していないため、組立の際に発生するダストが少ない。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態におけるウェーハ積層体を例示する平面図であり、
図8は、図7に示すB−B’線による断面図である。
なお、図7においては、TEOS層25は図示を省略されている。
【0030】
図7及び図8に示すように、本実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、ダイシング領域Rdcにおける層間絶縁膜13の下部にも、ダミーパターンを形成する点が異なっている。具体的には、ウェーハ積層体63において、ダイシング領域Rdcにおける層間絶縁膜13の下部、すなわち、TEOS層21及びSiCN層22の内部に、下から1層目から5層目までの配線14及びビア15を形成し、これらを上下方向に連結させて、ダミーパターン34を形成する。一方、ダイシング領域Rdcにおける層間絶縁膜13の上部、すなわち、SiH層23、TEOS層24及びTEOS層25の内部には、ダミーパターンを形成しない。
【0031】
従って、ダミーパターン34はダミーパターン32よりも短く、ダミーパターン34の下端はダミーパターン32と同様にシリコンウェーハ61に接しているが、ダミーパターン34の上端はダミーパターン32の上端よりも低い位置にある。これにより、ダイシング後の半導体装置においては、端縁領域Reにおける層間絶縁膜13の下部、すなわち、TEOS層21及びSiCN層22にはダミーパターン34が残留し、TEOS層21及びSiCN層22の端面において露出する。
【0032】
本実施形態における上記以外の構成及び製造方法は、前述の第1の実施形態と同様である。例えば、本実施形態においても、非ダイシング領域Rndにはダミーパターン32を形成する。これにより、ダイシング後の半導体装置において、周辺領域Rcにはダミーパターン32が残留する。
【0033】
本実施形態によれば、ダイシング後の半導体装置において、低誘電率膜であるSiCN層22の端面にダミーパターン34が露出するため、その分、SiCN層22の露出面積が低減し、SiCN層22の吸湿を抑制することができる。また、ダミーパターン32に加えてダミーパターン34を設けることにより、ストッパーの効果がより向上し、ダイシングのためのマージンを広げることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、ダイシングブレードによる切削領域にダミーパターン34が介在するため、一部のダミーパターン34は、ダイシングブレードによって切削される。しかし、ダミーパターン34は層間絶縁膜13の上部には設けられておらず、特に、最も厚い最上層の配線14はダミーパターン34に含まれていないため、切削される金属材料の総量は少ない。このため、ダミーパターン34を設けても、ダイシングブレードの目詰まりはそれほど進行しない。
【0035】
特に、本実施形態に係る半導体装置が高周波信号を扱う装置である場合には、多層配線膜12の最上層において配線14によりインダクタを形成する場合が多い。この場合、インダクタの抵抗を低減するために、最上層の配線14を例えば3μm程度と厚くするが、そうすると、ダミーパターン32を構成する最上層の配線14の厚さも厚くなってしまう。しかし、本実施形態においては、ダイシング領域Rdcに形成されるダミーパターン34には最上層の配線14は含まれていないため、ダミーパターン34を設けても、切削される金属材料の総量が大きく増加することがない。従って、ダミーパターン34を切削しても、ダイシングブレードが急速に劣化することはない。本実施形態における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0036】
なお、本実施形態においては、ダイシング領域Rdcにおいて、TEOS層21及びSiCN層22にダミーパターン34を形成する例を示したが、本発明はこれには限定されない。例えば、ダイシング領域RdcのTEOS層21のみにダミーパターンを形成してもよく、TEOS層21、SiCN層22及びSiH層23にダミーパターンを形成してもよい。但し、ダイシング領域Rdcにおいては、最上層の配線層であるTEOS層24にはダミーパターンを形成しない。
【0037】
次に、比較例について説明する。
図9は、本比較例におけるウェーハ積層体を例示する平面図であり、
図10は、図9に示すB−B’線による断面図である。
なお、図9においては、TEOS層25は図示を省略されている。
【0038】
図9及び図10に示すように、本比較例においては、ダイシング領域Rdcにもダミーパターン32を形成する。すなわち、ウェーハ積層体102のスクライブライン領域Rscの全体において、TEOS層21、SiCN層22、SiH層23、TEOS層24及びTEOS層25の内部に、全層の配線14及びビア15、すなわち、下から1層目から7層目までの配線14及びビア15を上下方向に連結させて、ダミーパターン32を形成する。これにより、ダイシング後の半導体装置においては、周辺領域Rcだけでなく、端縁領域Reにもダミーパターン32が残留する。また、本比較例に係る半導体装置においては、デバイス領域Rdにリング31(図1参照)が設けられていない。
【0039】
本比較例においては、ダイシング領域Rdcにもダミーパターン32が形成されているため、ダイシング時にダイシングブレードによって切削される金属材料の総量が多い。このため、同じダイシングブレードを使用してダイシングを続けると、ダイシングブレードに金属材料が被着して目詰まりし、チッピングが生じやすくなる。この結果、ダイシング時に多層配線膜12が剥離しやすくなる。また、ダイシング時には剥離しなくても、ダイシング時に受けたストレスに起因して、多層配線膜12内の界面が脆弱になる。これにより、半導体装置の実装時において、半導体装置を封止するモールド樹脂が熱収縮して、シリコン基板に反りを生じさせるような応力が多層配線膜12に印加されると、剥離しやすくなる。これを防止するためには、ダイシングブレードを頻繁に交換する必要があるが、そうすると半導体装置の生産性が低下すると共に、製造コストが増加してしまう。
【0040】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体装置、11 シリコン基板、12 多層配線膜、13 層間絶縁膜、14 配線、15 ビア、16 集積回路、21 TEOS層、22 SiCN層、23 SiH層、24 TEOS層、25 TEOS層、31 リング、32 ダミーパターン、33 マーク構造体、34 ダミーパターン、61 シリコンウェーハ、62 ウェーハ積層体、63 ウェーハ積層体、102 ウェーハ積層体、Rc 周辺領域、Rd デバイス領域、Rdc ダイシング領域、Re 端縁領域、Rnd 非ダイシング領域、Rsc スクライブライン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜内に設けられた配線と、
前記層間絶縁膜内に設けられたビアと、
を備え、
デバイス領域の周囲の周辺領域における前記層間絶縁膜の内部には、前記配線及び前記ビアが上下方向に連結されたダミーパターンが形成されており、
前記周辺領域の周囲に配置され外縁部を構成する端縁領域における前記層間絶縁膜の少なくとも上部には、前記配線及び前記ビアが上下方向に連結されたダミーパターンが形成されていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記端縁領域における前記層間絶縁膜の下部には、前記配線及び前記ビアが上下方向に連結されたダミーパターンが形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記端縁領域における前記層間絶縁膜の下部には、前記配線及び前記ビアが上下方向に連結されたダミーパターンが形成されていないことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記層間絶縁膜の下部は、低誘電率膜によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記デバイス領域の外縁には、前記配線及び前記ビアが上下方向及び前記デバイス領域の外縁が延びる方向に連結されたリングが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
複数のデバイス領域がスクライブライン領域によって区画された半導体ウェーハ上に、層間絶縁膜内に配線及びビアが設けられた多層配線膜を形成する工程と、
前記スクライブライン領域内に設定されたダイシング領域の一部に配置された前記多層配線膜及び前記半導体ウェーハを除去することにより、前記多層配線膜及び前記半導体ウェーハを前記デバイス領域毎に切り分ける工程と、
を備え、
前記多層配線膜を形成する工程において、前記スクライブライン領域における前記ダイシング領域を除く領域には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成し、前記ダイシング領域における前記層間絶縁膜の少なくとも上部には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記多層配線膜を形成する工程において、前記ダイシング領域における前記層間絶縁膜の下部には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成することを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記多層配線膜を形成する工程において、前記ダイシング領域における前記層間絶縁膜の下部には、前記配線及び前記ビアを上下方向に連結させたダミーパターンを形成しないことを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記多層配線膜を形成する工程において、前記層間絶縁膜の下部を低誘電率膜によって形成することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−216648(P2011−216648A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82963(P2010−82963)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】