半導体装置
【課題】オン抵抗の低減や耐圧の向上が図れる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1の絶縁層と、第1の絶縁層の上に設けられた半導体層と、半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、第1の半導体領域に対して離間して半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、半導体層の上に設けられた第2の絶縁層と、半導体層における第1の半導体領域と第2の半導体領域との間の部分の上方の第2の絶縁層中に設けられた第1の導電材と、第1の導電材に対向する部分の半導体層に設けられたトレンチ内に設けられ、第1の導電材に接し、かつ前記第1の絶縁層に達する第2の導電材とを備えている。
【解決手段】第1の絶縁層と、第1の絶縁層の上に設けられた半導体層と、半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、第1の半導体領域に対して離間して半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、半導体層の上に設けられた第2の絶縁層と、半導体層における第1の半導体領域と第2の半導体領域との間の部分の上方の第2の絶縁層中に設けられた第1の導電材と、第1の導電材に対向する部分の半導体層に設けられたトレンチ内に設けられ、第1の導電材に接し、かつ前記第1の絶縁層に達する第2の導電材とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧向上を図らんとするべく、半導体層の表面側に絶縁層を介して対向するフィールドプレート電極を設けた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、フィールドプレート電極の一部を、ベース領域に対向させてゲート電極として用いることも開示されている。
【0003】
さらなる耐圧の向上やオン抵抗の低減を図るために、フィールドプレート電極やゲート電極を半導体層の裏面側にも対向させて設けることが理論上は考えられるが、その構造の場合、裏面側に設けた電極の引き出し構造が複雑になることなどから、現状、そのような構造を安定して得ることは難しく、新たな素子デザインの開発が求められている。
【特許文献1】特許第3207615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、オン抵抗の低減や耐圧の向上が図れる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の上に設けられた半導体層と、前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、前記半導体層の上に設けられた第2の絶縁層と、前記半導体層における前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の部分の上方の前記第2の絶縁層中に設けられた第1の導電材と、前記第1の導電材に対向する部分の前記半導体層に設けられたトレンチ内に設けられ、前記第1の導電材に接し、かつ前記第1の絶縁層に達する第2の導電材と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられた半導体層と、前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、前記絶縁層内における少なくとも前記半導体層に対向しない部分に選択的に設けられた導電材と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オン抵抗の低減や耐圧の向上が図れる半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面で同じ構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0009】
[第1の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばSOI(Silicon On Insulator)層に形成されたダイオードを例に挙げ、図1を参照して説明する。すなわち、本実施形態に係る半導体装置においては、図1(b)に表すように、半導体基板11の上に第1の絶縁層12を介して半導体層13が設けられ、その半導体層13に、PN接合構造が形成されている。半導体基板11及び半導体層13は、例えばシリコンからなる。第1の絶縁層12は、例えば、半導体基板11の上に埋め込まれた酸化シリコンからなる。
【0010】
半導体層13は例えばN−型シリコンからなり、その半導体層13に、例えばP+型シリコンからなる第1の半導体領域21と、例えばN+型シリコンからなる第2の半導体領域22とが、それぞれ選択的に形成されている。
【0011】
第1の半導体領域21は、図1(a)に表すように、例えば環状に形成され、その内側に第1の半導体領域21に対して離間して第2の半導体領域22が形成されている。第1の半導体領域21と第2の半導体領域22との間には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域23が環状に形成されている。ドリフト領域23の外周側部分と、第1の半導体領域21の内周側部分とがPN接合している。
【0012】
図1(b)に表すように、半導体層13の上には、例えば酸化シリコンからなる第2の絶縁層14が設けられている。第2の絶縁層14の上には、第1の主電極31と第2の主電極32が選択的に設けられている。第1の主電極31は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第1の半導体領域21の表面に接している。第2の主電極32は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第2の半導体領域22の表面に接している。第1の主電極31と第2の主電極32との間に順方向電圧が印加されると、第1の半導体領域21、ドリフト領域23および第2の半導体領域22を介して、それら両電極31、32間に電流が流れる。すなわち、本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板11の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0013】
ドリフト領域23の上の第2の絶縁層14中には、第1の導電材(フィールドプレート部)15が設けられている。第1の導電材15は、図1(a)に表すように、渦巻き状に形成されている。第1の導電材15は、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など、第1の主電極31、第2の主電極32に用いられる例えば金属材料よりも抵抗が高い材料からなる。
【0014】
第1の導電材15の一端は、図1(b)に表すように、第1の主電極31に接続されている。第1の導電材15の他端は、図1(a)におけるB−B線断面である図1(c)に表すように、第2の主電極32に接続されている。第1の導電材15は、渦巻き状に十分長く形成することにより、第1の主電極31と第2の主電極32との間のリーク電流を実用上問題ない程度に低く抑えられる。フィールドプレート電極として機能する第1の導電材15は、選択する材質により、渦巻き状の他、ベタな層状等、その他平面パターンが可能である。
【0015】
第1の導電材15の下には、ドリフト領域23を貫通して複数のトレンチTが設けられ、そのトレンチT内に第2の導電材が充填されている。トレンチTは、第1の導電材15が延在する方向に沿って間欠的に設けられ、図1(d)は、図1(a)においてトレンチが形成されていない部分の断面であるC−C線断面を表し、図1(e)は、図1(a)においてトレンチが形成された部分の断面であるD−D断面を表す。
【0016】
図1(e)に表すように、トレンチTはドリフト領域23を貫通し、第1の絶縁層12の表面(上面)よりも下方にまで至って形成されている。トレンチTを形成した後、その内壁面(側面及び底面)を酸化して得られるシリコン酸化膜等の絶縁膜17を形成した上で、トレンチT内に第2の導電材16が充填される。第2の導電材16としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、SIPOS(semi-insulated polycrystalline silicon)、金属などを用いることができる。トレンチT内に充填された第2の導電材16の上端部は、第1の導電材15に接している。あるいは、第2の導電材16と第1の導電材15とを同材料にて一体に形成してもよい。いずれにしても、第1の導電材15と第2の導電材16とは電気的に接続される。トレンチT及び第2の導電材16の底部は、ドリフト領域23と第1の絶縁層12との境界面よりも図1(e)において下方の第1の絶縁層12側に位置し、本実施形態では、トレンチT及び第2の導電材16の底部は第1の絶縁層12の表層部近傍に位置する。
【0017】
図1(a)、(e)におけるE−E線断面図である図1(f)に表すように、トレンチT及びその内部に充填された第2の導電材16は、第1の導電材15の延在する方向に沿って間欠的に複数設けられている。
【0018】
第1の導電材15の両端は、それぞれ、第1の主電極31と第2の主電極32とに接続されているため、第1の主電極31と第2の主電極32との間に逆バイアスが印加されたオフ時、第1の導電材15の一端は第1の半導体領域21と略同電位にされ、他端は第2の半導体領域22と略同電位にされ、第1の導電材15の両端以外の部分は、両端からの経路長に応じた電位にされる。
【0019】
すなわち、第1の半導体領域21と第2の半導体領域22とをつなぐ方向に見て、第1の導電材15の電位がゆるやかに分布し、この第1の導電材15からの電界によって、半導体層13においても高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにできる。この結果、半導体層13における電界集中を抑制して耐圧を向上できる。
【0020】
前述した第1の導電材15は、この第1の導電材15が第2の絶縁層14を介して対向する半導体層13の第1の主面側における電界集中を抑えるのに有効である。そして、本実施形態では、図1(e)に表すように、半導体層13を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、半導体層13の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、第1の導電材15の電界を作用させることができる。
【0021】
複雑で困難なプロセスで半導体層13の第2の主面に対向する部分に第1の導電材15を設けなくても、本実施形態によれば、半導体層13を貫通して設けられ上端部が第1の導電材15に接続された第2の導電材16からの電界(すなわち第1の導電材15の電界)を半導体層13の第2の主面側にまわりこませるように作用させることができる。そのため、半導体層13の第2の主面側においても電位分布をゆるやかにでき、電界集中を抑制できる。また、基板11の電位が、半導体層13へ与える影響を少なくすることができ、そのことで、第1の絶縁層(埋め込み絶縁層)12を薄くすることが可能になる。
【0022】
すなわち、本実施形態に係る半導体装置(ダイオード)によれば、逆バイアスが印加されるオフ時において、両端が第1の主電極31と第2の主電極32に接続され、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となる第1の導電材15からの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができる。例えば半導体基板11の反りを抑制するべく第1の絶縁層12を薄く形成しても、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0023】
近年、ロジック回路やメモリ等のVLSI(very large scale integrated circuit)だけでなく、パワーデバイス等のディスクリートデバイスにおいても、薄膜SOI構造を用いた高性能化が図られている。しかし、VLSIなどの低耐圧素子(素子耐圧数ボルト)で使用されている素子デザインを、数十から数千ボルトの高耐圧が必要なパワーデバイスの素子デザインへそのまま使うことはできず、両者を1チップに集積化することは難しかった。
【0024】
これに対して本実施形態によれば、最先端のマイクロプロセッサなどで使用される例えば0.1(μm)の薄膜SOI層でも、数十から千ボルトを超える耐圧を持つダイオードやMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を実現することが可能となり、VLSIと、高耐圧パワーデバイスとの1チップ化が可能となる。この結果、例えば、1チップ上での低耐圧回路と高耐圧回路間の確実な電気的なアイソレーションや、パワーデバイスをVLSIでデジタル制御することなどによる高付加価値化の実現が期待できる。さらに、電子デバイスと、例えば光の波長の1/2〜1(100nm〜1μm)程度の幅や厚さの導波路を有する光デバイスとの容易な1チップ化も期待できる。
【0025】
図1(e)に表すトレンチTの形成にあたっては、ドリフト領域23におけるトレンチTを形成すべき部分のみを選択的にエッチング除去することで、ドリフト領域23を貫通する複数のトレンチTを形成することができる。
【0026】
あるいは、トレンチTとなるべき部分だけでなく、トレンチTの周囲のドリフト領域23も選択的に除去して例えばスリット状のトレンチを形成し、そのトレンチ内に導電材16となるべき材料を埋め込んだ後、その材料を選択的にエッチング除去して柱状に第2の導電材16が残るようにし、それら第2の導電材16間に、図2に表すように絶縁層(例えば酸化シリコンからなる)12aを埋め込んでもよい。この場合、第1の半導体領域21と第2の半導体領域22との間を結ぶ方向に沿って形成された複数の第2の導電材16間に絶縁層12aが介在された構造となる。第2の導電材16が設けられていない部分にはドリフト領域23が残され、そのドリフト領域23を介して第1の半導体領域21と第2の半導体領域22との間の導通は確保される。
【0027】
[第2の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばSOI層に形成されたMOSFETを例に挙げ、図3を参照して説明する。
【0028】
本実施形態では、例えばN−型シリコンからなる半導体層13に、例えばP+型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)44が環状に形成され、その内側に第3の半導体領域44に対して離間して、例えばN+型シリコンからなる第2の半導体領域(ドレイン領域)42が形成されている。第3の半導体領域44の表層部には、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(ソース領域)41が環状に形成されている。第3の半導体領域44と第2の半導体領域42との間には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43が、両領域44、42に接して環状に形成されている。
【0029】
半導体層13の上には、例えば酸化シリコンからなる第2の絶縁層14が設けられ、第2の絶縁層14の上には、第1の主電極48と第2の主電極49が選択的に設けられている。第1の主電極48は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第1の半導体領域41及び第3の半導体領域44の表面に接している。第2の主電極49は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第2の半導体領域42の表面に接している。
【0030】
ドリフト領域43の上の第2の絶縁層14中には、フィールドプレート部45bが設けられ、第3の半導体領域44の上の第2の絶縁層14中には、制御電極部45aが設けられている。制御電極部45aとフィールドプレート部45bとは、図3(a)に表すように、ひとつながりにされ、渦巻き状に形成されている。制御電極部45aと、フィールドプレート部45bは、本実施形態における第1の導電材を構成する。
【0031】
フィールドプレート部45bは、前述した第1の実施形態と同様、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコンなどからなる。フィールドプレート部45bの一端は、図3(a)に表すように、制御電極部45aに接続されている。あるいは、フィールドプレート部45bの一端を第1の主電極48に接続させてもよい。フィールドプレート部45bの他端は、図1(c)を参照して説明した第1の実施形態と同様、第2の主電極49に接続されている。フィールドプレート部45bは、渦巻き状に十分長く形成することにより、制御電極部45aと第2の主電極49との間のリーク電流を実用上問題ない程度に低く抑えられる。
【0032】
第3の半導体領域44及びその表層部に選択的に形成された第1の半導体領域41は、ドリフト領域43を囲むように環状に形成されている。
【0033】
制御電極部45aは、第3の半導体領域44における第1の半導体領域41とドリフト領域43との間の部分の上で、フィールドプレート部45bの外側を囲むように環状に形成されている。
【0034】
本実施形態では、第1の主電極48に対して第2の主電極49側を高電位とする電圧が両電極48、49間に印加された状態で、所望の制御電圧を制御電極部45aに印加すると、その制御電極部45aが対向している第3の半導体領域44にチャネルが形成され、第1の半導体領域41、チャネル、ドリフト領域43および第2の半導体領域42を介して、両電極48、49間に電流が流れる。本実施形態に係る半導体装置も、半導体基板11の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0035】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、ドリフト領域43においてフィールドプレート部45bの下方に対応する部分には、図3(c)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。
【0036】
さらに、本実施形態では、第3の半導体領域44において制御電極部45aの下方に対応する部分にも、図3(c)及びその図3(c)におけるH−H線断面図である図3(d)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。第2の導電材16としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、金属などを用いることができる。
【0037】
フィールドプレート部45bの下方に形成されたトレンチTはドリフト領域43を貫通し、第1の絶縁層12の表面よりも下方にまで至って形成されている。制御電極部45aの下方に形成されたトレンチTは第3の半導体領域44を貫通し、第1の絶縁層12の表面よりも下方にまで至って形成されている。
【0038】
フィールドプレート部45b下方のトレンチT内に充填された第2の導電材16の上端部は、フィールドプレート部45bに接してフィールドプレート部45bと電気的に接続されている。制御電極部45a下方のトレンチT内に充填された第2の導電材16の上端部は、制御電極部45aに接して制御電極部45aと電気的に接続されている。
【0039】
フィールドプレート部45b下方のトレンチT及び第2の導電材16の底部は、ドリフト領域43と第1の絶縁層12との境界面よりも図3(c)において下方の第1の絶縁層12側に位置している。制御電極部45a下方のトレンチT及び第2の導電材16の底部は、第3の半導体領域44と第1の絶縁層12との境界面よりも図3(c)において下方の第1の絶縁層12側に位置している。
【0040】
本実施形態においては、制御電極部45aもしくは第1の主電極48に接続されたフィールドプレート部45bの一端は、第2の主電極49に接続された他端よりも低電位にされ、逆に言えば、フィールドプレート部45bの他端は一端よりも高電位にされる。フィールドプレート部45bの両端以外の部分は、両端からの経路長に応じた電位にされる。
【0041】
すなわち、本実施形態においても、第1の半導体領域41と第2の半導体領域42とをつなぐ方向に見て、フィールドプレート部45bの電位がゆるやかに分布し、このフィールドプレート部45bからの電界によって、半導体層13においても高電位側(本実施形態においては第2の主電極49側)と低電位側(本実施形態においては第1の主電極48側)との間の電位分布をゆるやかにできる。この結果、半導体層13における電界集中を抑制して耐圧を向上できる。
【0042】
フィールドプレート部45bは、このフィールドプレート部45bが第2の絶縁層14を介して対向する半導体層13の第1の主面側における電界集中を抑えるのに特に有効である。そして、本実施形態においても、図3(c)に表すように、半導体層13を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、半導体層13の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、フィールドプレート部45bの電界を作用させることができ、半導体層13の第2の主面側においても電位分布をゆるやかにでき、電界集中を抑制できる。
【0043】
すなわち、本実施形態においても、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、例えば半導体基板11の反りを抑制するべく第1の絶縁層12を薄く形成しても、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0044】
さらに本実施形態では、スイッチングオン時、第3の半導体領域44を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域44の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域44の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0045】
[第3の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を例に挙げ、図4を参照して説明する。なお、前述した第1、第2の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、例えばN−型シリコンからなる半導体層13に、例えばP+型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)44が環状に形成され、その内側に第3の半導体領域44に対して離間して、例えばN型シリコンからなるバッファ領域53が形成されている。第3の半導体領域44の表層部には、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)41が環状に形成されている。第3の半導体領域44とバッファ領域53との間には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43が、両領域44、53に接して環状に形成されている。バッファ領域53の内側には、例えばP型シリコンからなる第2の半導体領域(コレクタ領域)52が形成されている。
【0047】
第1の半導体領域41は第1の主電極48に接続され、第2の半導体領域52は第2の主電極49に接続されている。ドリフト領域43の上の第2の絶縁層14中には、フィールドプレート部45bが設けられ、第3の半導体領域44の上の第2の絶縁層14中には制御電極部45aが設けられている。制御電極部45aとフィールドプレート部45bとは、ひとつながりにされ、渦巻き状に形成されている。
【0048】
本実施形態に係る半導体装置(IGBT)において、制御電極部45aに所望の制御電圧(ゲート電圧)を印加すると、第2の絶縁層14を介して制御電極部45aに対向する第3の半導体領域44にnチャネルが形成され、第1の主電極48と第2の主電極49との間(エミッタ・コレクタ間)がオン状態となる。IGBTにおいては、エミッタから電子が、コレクタから正孔が注入され、ドリフト領域43にキャリアが蓄積し、伝導度変調が起こるので、オン抵抗を小さくできる。
【0049】
また、本実施形態においても、第3の半導体領域44を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域44の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域44の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0050】
さらに、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0051】
[第4の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えば、注入促進型絶縁ゲートトランジスタ(IEGT:Injection Enhanced Gate Transistor)を例に挙げ、図5を参照して説明する。なお、前述した各実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施形態では、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43の外側に、例えばP型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)62が環状に形成されている。ドリフト領域43と第3の半導体領域62とはPN接合している。第3の半導体領域62の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、図5(b)に表すように、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図5(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されて形成されている。第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとはPN接合している。第1の半導体領域61aと第3の半導体領域62とはPN接合している。
図5(b)に表すように、第3の半導体領域62には、周期的にトレンチT及びこれに充填された第2の導電材16が設けられている。トレンチT及び第2の導電材16は、例えば、第1の半導体領域61aに隣接する部分(チャネルが形成される部分)を挟むように、ベースコンタクト領域61bに隣接する部分に設けられている。したがって、第2の導電材16の電位(ゲート電位)を、2方向からチャネル形成部にまわりこませて作用させることができ、低オン抵抗化しやすい。
【0053】
第1の半導体領域61a及びベースコンタクト領域61bは、第1の主電極63に接している。ベースコンタクト領域61bは第3の半導体領域62に接しており、これにより、オフ状態において第3の半導体領域62の電位を第1の主電極63の電位(エミッタ電位)に固定し、オフ状態やスイッチング時の寄生バイポーラ効果を抑制しトランジスタの耐圧を向上できる。
【0054】
第3の半導体領域62の上には絶縁層66が設けられ、その絶縁層66中に制御電極65が設けられている。制御電極65は、絶縁層66を介して第3の半導体領域62に対向している。
【0055】
半導体層13及び絶縁層66の上には第2の絶縁層14が設けられており、ドリフト領域43の上の第2の絶縁層14中には、フィールドプレート部45bが形成されている。フィールドプレート部45bの一端は、制御電極部65の上に対応する部分に設けられ、フィールドプレート部45bの一端は、制御電極部65もしくは第1の主電極63に接続されている。フィールドプレート部45bの他端は、第2の主電極49に接続されている。
【0056】
本実施形態では、前述した第3の実施形態に係る半導体装置(IGBT)よりも、第3の半導体領域(ベース領域)62の厚みを狭めており、第2の半導体領域(コレクタ領域)52から注入された正孔の第3の半導体領域62への流れ込み(すなわち、第1の主電極63側への流出)が減少し、相対的に電子の注入量が促進され低オン抵抗を実現できる。
【0057】
また、本実施形態においても、スイッチングオン時、図5(c)に表されるように、第3の半導体領域62を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域62の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極65の電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域62の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるバックゲート構造を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0058】
さらに、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0059】
[第5の実施形態]
本実施形態では、図6に表すように、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43の外側に、例えばP型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)62が環状に形成されている。ドリフト領域43と第3の半導体領域62とはPN接合している。第3の半導体領域62の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、上記第4の実施形態と同様、図5(b)に表すように、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図6(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されて形成されている。第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとはPN接合している。第1の半導体領域61aと第3の半導体領域62とはPN接合している。
【0060】
ドリフト領域43の外側に、例えばN+型シリコンからなるN型バッファ領域73が形成され、そのN型バッファ領域73の外側に半導体領域72が形成されている。半導体領域72は、図5(b)に表す半導体領域61と同様に、例えばN型シリコンからなるコンタクト領域と、そのコンタクト領域に対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなる第2の半導体領域とからなり、それぞれ複数の第2の半導体領域とコンタクト領域とが、図6(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されてPN接合している。第2の半導体領域及びコンタクト領域は、第2の主電極74に接している。
【0061】
N型バッファ領域73の上には絶縁層66が設けられ、その絶縁層66中に制御電極部71が設けられている。制御電極部71は、絶縁層66を介してN型バッファ領域73に対向している。
【0062】
図6(a)におけるK−K線断面図である図6(b)に表すように、N型バッファ領域73を貫通してトレンチTが形成され、そのトレンチTの内部に制御電極部71に接続された第2の導電材16が充填されている。これにより、その第2の導電材16を介して、N型バッファ領域73の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部71の電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、N型バッファ領域73の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第3の半導体領域62の厚みを狭めることで正孔の第1の主電極63への流出を抑制し、さらにN型バッファ領域73の厚みを狭めることで電子の第2の主電極74への流出を抑制し、結果として、ドリフト領域43中のキャリア蓄積量を増大させて、オン抵抗の低減が図れる。
【0064】
[第6の実施形態]
本実施形態では、図7に表すように、半導体基板11の上に第1の絶縁層12を介して、前述した各実施形態における半導体層13よりも薄い半導体層83が設けられている。
【0065】
半導体層83には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43が環状に形成され、そのドリフト領域43の外側に、例えばP型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)62が環状に形成されている。ドリフト領域43と第3の半導体領域62とはPN接合している。第3の半導体領域62の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、図5(b)に表すように、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図7(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されてPN接合している。
【0066】
ドリフト領域43の内側には、例えばN+型シリコンからなるN型バッファ領域73が環状に形成されている。N型バッファ領域73の外側には、半導体領域72が環状に形成されている。半導体領域72は、図5(b)に表す半導体領域61と同様、例えばN型シリコンからなるコンタクト領域と、このコンタクト領域に対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなる第2の半導体領域とからなる。それぞれ複数の第2の半導体領域とコンタクト領域とが、図7(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されてPN接合している。
【0067】
第1の半導体領域61a及びベースコンタクト領域61bは第1の主電極63に接している。第2の半導体領域及びコンタクト領域は第2の主電極74に接している。
【0068】
半導体層83の上に設けられた第2の絶縁層14中において、ドリフト領域43の上にフィールドプレート部45bが設けられ、第3の半導体領域62及びN型バッファ領域73のそれぞれの上に制御電極部45aが設けられている。フィールドプレート部45bの一端は制御電極部45aもしくは第1の主電極63に接続され、他端は第2の主電極74に接続されている。
【0069】
ドリフト領域43においてフィールドプレート部45bの下方に対応する部分には、図7(d)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜等の絶縁膜17を介して導電材16が充填されている。
【0070】
また、第3の半導体領域62において制御電極部45aの下方に対応する部分にも、図7(b)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。さらに、N型バッファ領域73において制御電極部45aの下方に対応する部分にも、図7(c)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。
【0071】
本実施形態においても、スイッチングオン時、第3の半導体領域62、N型バッファ領域73を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域62及びN型バッファ領域73の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域62及びN型バッファ領域73の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0072】
さらに、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0073】
[第7の実施形態]
本実施形態に係る半導体装置は、図9に表されるように、前述した図3に示す実施形態の構造においてフィールドプレート部45bを設けずに、制御電極部45aのみを第1の導電材として設けた構造である。
【0074】
本実施形態においても、第2の導電材16を介して、第3の半導体領域44の裏面側にも制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域44の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0075】
[第8の実施形態]
上記第7の実施形態の構造の半導体層13において、ソース側の構造を前述した第4の実施形態のようにしてもよい。
【0076】
すなわち、図10に示すように、第3の半導体領域44の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、図10(e)に表すように、例えばN+型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図10(b)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されて形成されている。第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとはPN接合している。第1の半導体領域61aと第3の半導体領域44とはPN接合している。
図10(e)に表すように、第3の半導体領域44には、周期的にトレンチT及びこれに充填された第2の導電材16が設けられている。トレンチT及び第2の導電材16は、例えば、第1の半導体領域61aに隣接する部分(チャネルが形成される部分)を挟むように、ベースコンタクト領域61bに隣接する部分に設けられている。したがって、第2の導電材16の電位(ゲート電位)を、2方向からチャネル形成部にまわりこませて作用させることができ、低オン抵抗化しやすい。
【0077】
第1の半導体領域61a及びベースコンタクト領域61bは、第1の主電極48に接している。ベースコンタクト領域61bは第3の半導体領域44に接しており、これにより、オフ状態において第3の半導体領域44の電位を第1の主電極48の電位(エミッタ電位)に固定し、オフ状態やスイッチング時の寄生バイポーラ効果を抑制しトランジスタの耐圧を向上できる。
【0078】
[第9の実施形態]
本実施形態では、図11(b)に表すように、前述した図3に示した実施形態の構造におけるフィールドプレート部45bを、スイッチ(トランジスタ)90を介して、第2の主電極(ドレイン電極)49に対して接続させている。図11(b)中、Rは、第1の導電材を構成するフィールドプレート部45bにおける抵抗成分と、フィールドプレート部45bと制御電極部45aとの間の抵抗成分を表す。
【0079】
スイッチ90は、素子導通状態でオフにされ、第2の主電極49と制御電極部45a間の短絡が防止される。さらに、フィールドプレート部45bには、抵抗Rを介して制御電極部45aと同じ電位が印加されるため、ドリフト層43のフィールドプレート部45b近傍にも制御電極部45a近傍と同じMOSチャネル(もしくは、キャリアの蓄積)が形成され、素子のオン抵抗を下げる。素子のオフ状態では、スイッチ90はオンにされ、上記各実施形態で説明したようにフィールドプレート部45bの電位がゆるやかに分布し、半導体層13における電界集中を抑制して耐圧を向上できる。
【0080】
前述した各実施形態に係る半導体装置は、図12に例示されるフォトリレーのスイッチ101、102として用いることができる。
【0081】
スイッチング制御信号が入力される入力端子IN1、IN2間に、そのスイッチング制御信号に応答して発光する発光素子(発光ダイオード)103が接続されている。この発光素子103が発する光を受光して、直流電圧を発生するフォトダイオードアレイ104(直列接続された複数のフォトダイオードからなる)が設けられている。スイッチ101、102のゲートG11、G12には、フォトダイオードアレイ104から出力された直流電圧が制御回路105を介して供給される。スイッチ101のドレインD1は出力端子OUT1に接続され、スイッチ102のドレインD2は出力端子OUT2に接続されている。
【0082】
スイッチ101、102のゲートG11、G12に、制御回路105からの制御電圧が印加されると、スイッチ101、102はオン状態にされ、これにより出力端子OUT1、OUT2間は導通状態になる。入力端子IN1、IN2に入力されるスイッチング制御信号がゼロになると、発光素子103は発光を止め、これによってフォトダイオードアレイ104の両端子間に発生していた直流電圧も消滅し、スイッチ101、102はオフ状態に切り替えられる。
【0083】
制御回路105は、スイッチ101、102のゲートG11、G12と、ソースS1、S2との間に接続される放電回路106を有する。この放電回路106は、スイッチ101、102がオン状態からオフ状態に切り替えられるとき、ゲート−ソース間に充電されている電荷を迅速に放電するための回路である。
【0084】
前述した各実施形態における半導体基板11、半導体層13、83としては、シリコン以外にも、例えば、窒化ガリウム、炭化シリコンなどの化合物半導体、ゲルマニウムなどを用いてもよい。
【0085】
フィールドプレート部の下方でドリフト層を貫通して形成されたトレンチT内に充填された第2の導電材16は、第1の絶縁層12内に入り込んでいなくてもよく、図8に表すように、トレンチTを、半導体層13を貫通して第1の絶縁層12の表面に達するまでにとどめ、あるいは、トレンチTの底部を第1の絶縁層12より少し上の半導体層13中にとどめ、そのトレンチT内壁面(側面及び底面)に例えば酸化シリコンなどの絶縁膜17を形成して、第2の導電材16を充填させてもよい。この場合でも、第2の導電材16を介して、半導体層13の表面側に対向して設けられたフィールドプレート部の電界を半導体層13の裏面側にまわりこませて作用させることができる。ただし、第2の導電材16が第1の絶縁層12中にまで入り込んでいる方が、半導体層13の裏面側への上記電界作用を促進させやすい。
【0086】
また、図13に示すように、トレンチT及び第2の導電材16の底部が第1の絶縁層12もしくは半導体層13の主面に対して略平行な横方向に少しはみ出すように設けられてもよく、この場合には、半導体層13の裏面側に対して、より上記電界作用を促進させやすい。
【0087】
トレンチ及びこれに充填された第2の導電材は、半導体層における電位分布をゆるやかにする観点から所定の間隔で複数設けることが望ましい。そして、それら複数の第2の導電材は、互いに抵抗性の第1の導電材で接続されることが望ましい。
【0088】
制御電極部、フィールドプレート部、第1の導電材、第1の主電極、第2の主電極、第2の導電材は、同材料から構成してもよいし、互いに異なる材料から構成してもよい。
【0089】
[第10の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばダイオードを例に挙げ、図14を参照して説明する。
【0090】
本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板25の上に絶縁層26を介して半導体層27が設けられたSOI(Silicon On Insulator)構造を有する。半導体基板25及び半導体層27としては、例えばシリコンを用いることができる。絶縁層26は、例えば半導体基板25上に埋め込み形成された酸化シリコンである。
【0091】
半導体層27は、絶縁層26上で、ピラー、フィン、もしくは細線状に形成されている。図14は一つの半導体層27が設けられた部分を示しているが、図15の模式平面図に示すように、複数本の半導体層27が絶縁層26上にストライプ状に設けられている。なお、図14(b)は図14(a)におけるA−A断面を示し、図14(c)は図14(b)におけるB−B断面を示す。
【0092】
図14(c)に示すように、半導体層27には、P+型の第1の半導体領域54と、N+型の第2の半導体領域55と、N−型のドリフト領域56とが形成されている。第1の半導体領域54と第2の半導体領域55は、半導体層27の長手方向の両端部に選択的に形成され、これら第1の半導体領域54と第2の半導体領域55との間にドリフト領域56が形成されている。第1の半導体領域54とドリフト領域56とはPN接合している。
【0093】
絶縁層上26には、第1の半導体領域54を囲むようにして第1の主電極33が設けられている。同じく絶縁層26上には、第2の半導体領域55を囲むようにして第2の主電極34が設けられている。第1の主電極33は、第1の半導体領域54の上面及び側面に接している。第2の主電極34は、第2の半導体領域55の上面及び側面に接している。
【0094】
第1の主電極33と第2の主電極34との間に順方向電圧が印加されると、第1の半導体領域54、ドリフト領域56および第2の半導体領域55を介して、それら両電極33、34間に電流が流れる。すなわち、本実施形態に係る半導体装置も、半導体基板25の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0095】
絶縁層26内には導電材75が埋め込まれている。導電材75は、絶縁層26において、上に半導体層27が設けられず半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内に設けられている。導電材75は、半導体層27の長手方向に対して略平行に延在して絶縁層26内に埋め込まれている。一つの半導体層27あたり、その短手方向の両側から半導体層27を挟む位置関係で一対の導電材75が設けられている。
【0096】
導電材75の長手方向の両端部はそれぞれ接続部76a、76bに接続されている。接続部76a、76bは、導電材75の両端部から絶縁層26表面上へと延びるピラー状に絶縁層26内に形成されている。接続部76a、76bの上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に、第1の主電極33と第2の主電極34がそれぞれ接している。
【0097】
導電材75は、例えば図16に示す方法にて、絶縁層26内に形成することができる。
【0098】
図16(a)は、半導体基板25上に絶縁層26を形成し、その絶縁層26上に半導体層27を形成した状態を示す。なお、半導体層27は、図15を参照して前述したようにストライプ状に絶縁層26上に形成される。
【0099】
図16(a)の構造が得られた後、半導体層27上に図示しないマスクを形成して絶縁層26をエッチングし、図16(b)に示すように絶縁層26にトレンチTを形成する。絶縁層26は、半導体層27の下の部分はエッチングされず、その側方の部分がエッチングされる。トレンチTの底部は半導体基板25までは達せず、トレンチTと半導体基板25との間に絶縁層26の一部が残される。
【0100】
そして、トレンチT内には導電材75が埋め込まれる。導電材75はトレンチT内をすべて埋め込まれた後、エッチバックされ、図16(c)に示すように、トレンチTの底部側の一部分だけが残される。
【0101】
この後、導電材75の上のトレンチT内を絶縁層で埋め込んだ後、その絶縁層の一部(図14(a)に示す接続部76a、76bの形成箇所)に、絶縁層表面側から導電材75に達するトレンチを形成し、そのトレンチ内に導電材75と同材料もしくは導電材75よりも低抵抗な材料を埋め込む。これにより、導電材75の一端部と第1の主電極33とを接続する接続部76aと、導電材75の他端部と第2の主電極34とを接続する接続部76bが形成される。
【0102】
導電材75の材料としては、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など、第1の主電極33、第2の主電極34に用いられる例えば金属材料よりも抵抗が高い材料が用いられる。接続部76a、76bの材料としては導電材75と同材料もしくは導電材75よりも低抵抗な材料が用いられる。
【0103】
導電材75の一端部は接続部76aを介して第1の主電極33に接続され、導電材75の他端部は接続部76bを介して第2の主電極34に接続されているが、導電材75は、比較的高抵抗な材料から形成されているため、第1の主電極33と第2の主電極34との間のリーク電流を実用上問題ない程度に抑えられる。
【0104】
導電材75の長手方向の両端部はそれぞれ第1の主電極33と第2の主電極34に接続されているため、第1の主電極33と第2の主電極34との間に逆バイアスが印加されたオフ時、導電材75の一端部は逆バイアス時に低電位側となる第1の主電極33の電位もしくはそれに近い電位になり、他端部は逆バイアス時に高電位側となる第2の主電極34の電位もしくはそれに近い電位になる。導電材75における両端部以外の部分は、両端部からの距離に応じた電位分布となる。すなわち、導電材75において、第1の主電極33と第2の主電極34とをつなぐ長手方向に、ゆるやかに変化する電位分布が得られる。
【0105】
導電材75は絶縁層26に埋め込まれている。このため、逆バイアスが印加されるオフ時における上記導電材75からの電界を、半導体層27の裏面(半導体層27における絶縁層26に接する面)側に作用させ、オフ時における半導体層27の裏面側の電位を制御することができる。
【0106】
導電材75は、半導体層27における高電位側と低電位側とをむすぶ長手方向に延在し、その導電材75には、前述したように長手方向にゆるやかな電位分布が生じるので、オフ時に半導体層27の裏面側に長手方向に空乏層を伸展させることができ、電界の局所的な集中を抑制して高耐圧を得ることができる。
【0107】
一般に、SOI構造において、半導体層の表面側は、その半導体層の上に絶縁層を介してフィールドプレート電極を設けることで電位を容易に制御することができる。一方、半導体層の裏面側は、基板電位(例えばグランド電位)の影響を受けるため裏面電位の制御が難しい。基板と半導体層との間に設ける絶縁層の厚さを厚くすれば、半導体層の裏面側に対する基板電位の影響を抑えることができるが、絶縁層が厚くなると基板に反りが生じやすくなる。また、半導体層の裏面に対向する部分の絶縁層内にフィールドプレート電極を設けて半導体層の裏面側の電位を制御することが考えられるが、その場合フィールドプレート電極を他の電極に接続させるための引き出し構造が複雑になり、その構造を得るためのプロセスも難しくなる。
【0108】
これに対して、本実施形態では、絶縁層26において、半導体層27の側方であって半導体層27が設けられていない部分にトレンチを形成して導電材75を埋め込むという簡単なプロセスで導電材75を絶縁層26内に埋め込み、その導電材75からの電界を半導体層27の裏面側にまわりこませて作用させることができる。特に短手方向の幅が微細な細線状の半導体層27においては、その半導体層27を短手方向から挟む位置関係で埋め込まれた一対の導電材75間の距離が小さくなり、半導体層27の裏面に対向する位置に導電材がなくても、半導体層27の側方に埋め込まれた導電材75からの電界を半導体層27の裏面全体に作用させやすい。
【0109】
絶縁層26に埋め込まれた導電材75によって半導体層27裏面側の電位を制御することで、半導体層27に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0110】
[第11の実施形態]
図17は、本発明の第11の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図である。本実施形態に係る半導体装置は、上記第10の実施形態と同様なダイオードであり、第10の実施形態に係る半導体装置と共通する部分には同じ符号を付している。
【0111】
本実施形態でも、絶縁層26において、上に半導体層27が設けられず半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内に、導電材91、92、93が設けられている。
【0112】
各々の導電材91、92、93は、絶縁層26の内部から絶縁層26の表面上へと延びるピラー状に設けられている。
【0113】
導電材91は、第1の半導体領域54の側方の絶縁層26内に埋め込まれている。その導電材91の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に、第1の主電極33が接している。
【0114】
導電材92は、第2の半導体領域55の側方の絶縁層26内に埋め込まれている。その導電材92の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に、第2の主電極34が接している。
【0115】
導電材91と導電材92との間の絶縁層26内には、複数の導電材93が半導体層27の長手方向に並んで設けられている。各導電材91、92、93は、絶縁層26の内部では互いにつながっておらず、絶縁層26の表面上に設けた抵抗性材料(例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など)によって互いに接続されている。
【0116】
第1の主電極33と第2の主電極34との間に逆バイアスが印加されたオフ時、導電材91は逆バイアス時に低電位側となる第1の主電極33の電位もしくはそれに近い電位になり、導電材92は逆バイアス時に高電位側となる第2の主電極34の電位もしくはそれに近い電位になる。導電材91と導電材92との間の導電材93は、導電材91と導電材92からの距離に応じた電位分布となる。すなわち、導電材91〜93において、第1の主電極33と第2の主電極34とをつなぐ長手方向に方向に、ゆるやかに変化する電位分布が得られる。
【0117】
導電材91〜93は絶縁層26に埋め込まれている。したがって、本実施形態においても、逆バイアスが印加されるオフ時における上記導電材91〜93からの電界を、半導体層27の裏面側に作用させ、半導体層27の裏面側に長手方向に空乏層を伸展させることができ、電界の局所的な集中を抑制して高耐圧を得ることができる。
【0118】
すなわち、本実施形態においても、絶縁層26において、半導体層27の側方であって半導体層27が設けられていない部分にトレンチを形成して導電材91〜93を埋め込むという簡単なプロセスで導電材91〜93を絶縁層26内に埋め込み、その導電材91〜93からの電界を半導体層27の裏面側にまわりこませて作用させることができる。
【0119】
絶縁層26に埋め込まれた導電材91〜93によって半導体層27裏面側の電位を制御することで、半導体層27に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0120】
[第12の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばMOSFETを例に挙げ、図18を参照して説明する。
【0121】
本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板25の上に絶縁層26を介して半導体層27が設けられたSOI(Silicon On Insulator)構造を有する。半導体基板25及び半導体層27としては、例えばシリコンを用いることができる。絶縁層26は、例えば半導体基板25上に埋め込み形成された酸化シリコンである。
【0122】
半導体層27は、絶縁層26上で、ピラー、フィン、もしくは細線状に形成されている。図18は一つの半導体層27が設けられた部分を示しているが、図15の模式平面図に示すように、複数本の半導体層27が絶縁層26上にストライプ状に設けられている。なお、図18(b)は図18(a)において制御電極30が設けられた部分の断面を示し、図18(c)は図18(b)におけるA−A断面を示す。
【0123】
図18(c)に示すように、半導体層27には、N+型の第1の半導体領域57と、N+型の第2の半導体領域58と、P型の第3の半導体領域59と、N−型のドリフト領域60とが形成されている。第1の半導体領域57は半導体層27の長手方向の一端部に形成され、第2の半導体領域58は半導体層27の長手方向の他端部に形成されている。第1の半導体領域57と第3の半導体領域59とはPN接合している。ドリフト領域60は、第3の半導体領域59と第2の半導体領域58との間に形成され、第3の半導体領域59に対してPN接合している。
【0124】
絶縁層上26には、第1の半導体領域57を囲むようにして第1の主電極28が設けられている。同じく絶縁層26上には、第2の半導体領域58を囲むようにして第2の主電極29が設けられている。第1の主電極28は、第1の半導体領域57の上面及び側面に接している。第2の主電極29は、第2の半導体領域58の上面及び側面に接している。また、図示しないが第3の半導体領域59は第1の主電極57に接続している。
【0125】
さらに、絶縁層26上には、第3の半導体領域59を囲むようにして制御電極30が設けられている。制御電極30は、図18(b)に示すように、ゲート絶縁膜(例えばシリコン酸化膜)35を介して、第3の半導体領域59の上面及び側面に対向している。
【0126】
本実施形態では、第1の主電極28に対して第2の主電極29側を高電位とする電圧が両主電極28、29間に印加された状態で、所望の制御電圧を制御電極30に印加すると、その制御電極30が対向している第3の半導体領域59の上面及び側面にチャネルが形成され、第1の半導体領域57、チャネル、ドリフト領域60および第2の半導体領域58を介して、両主電極28、29間に電流が流れる。本実施形態に係る半導体装置も、半導体基板25の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0127】
半導体層27を絶縁層26上でピラー、フィン、もしくは細線状に形成することで、第3の半導体領域59の上面だけでなく側面にもチャネルを形成することができ、オン抵抗の低減が図れる。また、特に半導体層27を細線状に形成した場合には、ソースゲート間容量、ドレインゲート間容量が小さくなり、スイッチングの高速化が図れる。
【0128】
さらに、本実施形態では、絶縁層26内に埋め込まれた導電材として制御電極部77が設けられている。制御電極部77は、絶縁層26において、上に半導体層27が設けられず半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内にピラー状に設けられている。
【0129】
制御電極30は第3の半導体領域59を囲むように絶縁層26上に設けられている。その制御電極30において半導体層27の側方で絶縁層26上に位置する部分の下の絶縁層26内に、制御電極部77が埋め込まれている。
【0130】
一つの半導体層27あたり、その短手方向の両側から半導体層27を挟む位置関係で一対の制御電極部77が設けられている。制御電極部77の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に制御電極30が接している。制御電極部77の材料としては、制御電極30と同じ例えば多結晶シリコン、金属材料などが用いられる。
【0131】
制御電極30と、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77とは電気的に接続されている。そのため、制御電極30に所定の制御電圧が印加されるスイッチングオン時、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77からの電界を、第3の半導体領域59の裏面(第3の半導体領域59における絶縁層26に接する面)側に作用させることができる。この結果、第3の半導体領域59の裏面側にもチャネルを形成することができ、オン抵抗をより低減できる。すなわち、本実施形態では、図18(b)に示すように、第3の半導体領域59の上面、側面および裏面に反転層(もしくは蓄積層)70を形成することができ、オン抵抗をより低減できる。
【0132】
制御電極部77を絶縁層26内に形成するにあたっては、絶縁層26において半導体層27に対向していない部分の表面側からエッチングによりトレンチを形成し、そのトレンチ内に導電材を埋め込むという簡単なプロセスで制御電極部77を形成することができる。特に短手方向の幅が微細な細線状の半導体層27においては、その半導体層27を短手方向から挟む位置関係で埋め込まれた一対の制御電極部77間の距離が小さくなり、第3の半導体領域59の裏面に対向する位置に導電材がなくても、第3の半導体領域59の側方に埋め込まれた制御電極部77からの電界を第3の半導体領域59の裏面全体に作用させやすい。
【0133】
また、絶縁層26に埋め込まれた制御電極部77によって第3の半導体領域59の裏面側の電位を制御することで、第3の半導体領域59に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0134】
[第13の実施形態]
図19は、本発明の第13の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図である。本実施形態に係る半導体装置は、上記第12の実施形態と同様なMOSFETであり、第12の実施形態に係る半導体装置と共通する部分には同じ符号を付している。
【0135】
本実施形態では、絶縁層26内に埋め込まれた導電材は、制御電極部77とフィールドプレート部78とを有する。制御電極部77は、絶縁層26において、半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内にピラー状に設けられている。
【0136】
制御電極30は第3の半導体領域59を囲むように絶縁層26上に設けられている。その制御電極30において半導体層27の側方で絶縁層26上に位置する部分の下の絶縁層26内に、制御電極部77が埋め込まれている。制御電極部77の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に制御電極30が接している。
【0137】
制御電極30と、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77とは電気的に接続されている。そのため、制御電極30に所定の制御電圧が印加されるスイッチングオン時、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77からの電界を、第3の半導体領域59の裏面(第3の半導体領域59における絶縁層26に接する面)側に作用させることができる。この結果、第3の半導体領域59の裏面側にもチャネルを形成することができ、オン抵抗をより低減できる。
【0138】
フィールドプレート部78も、絶縁層26において、半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内に設けられている。フィールドプレート部78は、半導体層27の長手方向に対して略平行に延在して絶縁層26内に埋め込まれている。
【0139】
フィールドプレート部78の長手方向の一端部は制御電極部77に接続され、他端部は接続部79に接続されている。接続部79は、フィールドプレート部78の他端部から絶縁層26表面上へと延びるピラー状に絶縁層26内に形成されている。接続部79の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に第2の主電極29が接している。
【0140】
フィールドプレート部78は、図16を参照して前述した導電材75の形成方法と同様な方法にて形成することができる。
【0141】
フィールドプレート部78の材料としては、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など、第1の主電極28、第2の主電極29に用いられる例えば金属材料よりも抵抗が高い材料が用いられる。
【0142】
フィールドプレート部78の一端部は制御電極部77を介して制御電極30に接続され、フィールドプレート部78の他端部は接続部79を介して第2の主電極29に接続されているが、フィールドプレート部78は、比較的高抵抗な材料から形成されているため、制御電極30と第2の主電極29との間のリーク電流を実用上問題ない程度に抑えられる。
【0143】
フィールドプレート部78の長手方向の両端部は、それぞれ、低電位側の制御電極30と高電位側の第2の主電極29に接続されているため、制御電極30のスイッチングオフ時、フィールドプレート部78の一端部は低電位となり、他端部は高電位となる。フィールドプレート部78における両端部以外の部分は、両端部からの距離に応じた電位分布となる。すなわち、フィールドプレート部78において、制御電極30と第2の主電極29とをつなぐ長手方向に方向に、ゆるやかに変化する電位分布が得られる。なお、フィールドプレート部78の一端部は、第2の主電極29よりも低電位となる電極に接続させればよく、制御電極30に限らず、第1の主電極28に接続させてもかまわない。
【0144】
フィールドプレート部78は絶縁層26に埋め込まれている。このため、フィールドプレート部78からの上記電界を、半導体層27(特にドリフト領域60)の裏面側に作用させ、スイッチングオフ時における半導体層27の裏面側の電位を制御することができる。
【0145】
フィールドプレート部78は、半導体層27における高電位側と低電位側とをむすぶ長手方向に延在し、そのフィールドプレート部78には、前述したように長手方向にゆるやかな電位分布が生じるので、スイッチングオフ時に半導体層27の裏面側に長手方向に空乏層を伸展させることができ、電界の局所的な集中を抑制して高耐圧を得ることができる。
【0146】
本実施形態では、絶縁層26において、半導体層27の側方であって半導体層27が設けられていない部分にトレンチを形成してフィールドプレート部78を埋め込むという簡単なプロセスでフィールドプレート部78を絶縁層26内に埋め込み、そのフィールドプレート部78からの電界を半導体層27の裏面側にまわりこませて作用させることができる。特に短手方向の幅が微細な細線状の半導体層27においては、その半導体層27を短手方向から挟む位置関係で埋め込まれた一対のフィールドプレート部78間の距離が小さくなり、半導体層27の裏面に対向する位置に導電材がなくても、半導体層27の側方に埋め込まれたフィールドプレート部78からの電界を半導体層27の裏面全体に作用させやすい。
【0147】
絶縁層26に埋め込まれた制御電極部77やフィールドプレート部78によって半導体層27裏面側の電位を制御することで、半導体層27に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0148】
[第14の実施形態]
上記第12の実施形態、第13の実施形態ではMOSFETを説明したが、図20に示すようなIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0149】
IGBTでは、高電位側の第2の主電極29に接続された第2の半導体領域67がP+型であり、その第2の半導体領域67とドリフト領域60との間にN+型のバッファ領域68が形成されている。第2の半導体領域67とバッファ領域68とはPN接合している。
【0150】
このIGBTにおいて、制御電極30に所定の制御電圧が印加されたスイッチングオン時、第1の半導体領域57から電子が、第2の半導体領域67から正孔が注入され、ドリフト領域60にキャリアが蓄積し、伝導度変調が起こるので、オン抵抗を小さくできる。
【0151】
[第15の実施形態]
また、IGBTにおいて、図21に示すように、N型のバッファ領域69に対して絶縁膜を介して対向する制御電極40を設けてもよい。スイッチングオン時に、制御電極40からの制御電圧によってバッファ領域69にP型チャネルを形成して、第2の半導体領域67からドリフト領域60への正孔の注入を促進できる。
【0152】
この構造において、制御電極40に接続する導電材を絶縁層26内に設けることで、その導電材によってバッファ領域69の裏面側にも制御電極40の制御電圧を作用させることができ、バッファ領域69の裏面側にもチャネルを形成してオン抵抗の低減が図れる。
【0153】
その他、注入促進型絶縁ゲートトランジスタ(IEGT:Injection Enhanced Gate Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などにも本発明は適用可能である。さらには、光導波路、発光ダイオード、半導体レーザーなどの光学素子にも本発明は適用可能である。これら光学素子に、本発明の実施形態に例示される仮想バックゲート構造を適用した場合、半導体層の裏面側に発生する反転層、蓄積層、フリーキャリア、電界等を利用して、半導体層中の発光、光吸収、偏光、その他光学的特性を効果的に変調(制御)可能である。また、それら光学素子に、本発明の実施形態に例示される仮想フィールドプレート構造を適用した場合、光学素子に効果的に高い電圧を印加することが可能であり、また、光学素子以外の部分の電位(基板電位や制御回路部分の電位など)と上記光学素子部分との間の電位差によって生じる上記変調を阻止または緩和することができる。
【0154】
[第16の実施形態]
図22は、半導体材料として例えばシリコンを使った発光素子の構造を模式的に示す。
【0155】
半導体基板25の上に絶縁層26を介して半導体層が設けられ、その半導体層には、P+型の第1の半導体領域81と、N+型の第2の半導体領域82が形成され、これら半導体領域のPN接合面を含むその近傍はLOCOS(local oxidation of silicon)プロセスにより薄くされている。この薄くされたシリコン層(p型領域84及びn型領域85)におけるpnホモ接合部は発光特性を持つようになる。これは、極薄いシリコン層がシリコン酸化膜86とシリコン酸化膜26とに挟まれ、キャリアの量子閉じ込めが行われることによる効果である。
【0156】
ここで、図23(a)は、前述した図14(a)に対応する図である。図23(b)は図23(a)におけるA−A断面図である。図23に示す構造では、絶縁層26内に埋め込まれた導電材75が、半導体層27の裏面に対向する部分にまではみ出している。
【0157】
例えば、絶縁層26にトレンチを形成する図16(b)の工程において、等方性エッチングを行うことで半導体層27の下にも広がるトレンチを形成することができ、そのトレンチ内に導電材75を埋め込むことで図23に示す構造が可能である。
【0158】
この構造の場合、半導体層27の裏面に対向する部分にも導電材75が埋め込まれているため、半導体層27の裏面全体に対して、導電材75からの電界を作用させやすい。また、図23(c)に示すように、半導体層27の下全体に導電材75が埋め込まれていてもよい。
【0159】
また、図24は図18(b)に対応する図である。図24に示す構造では、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77が、第3の半導体領域59の裏面に対向する部分にまではみ出しており、第3の半導体領域59の裏面全体に対して、制御電極部77からの電界を作用させやすい。また、第3の半導体領域59の下全体に制御電極部77が埋め込まれていてもよい。第3の半導体領域59の裏面と制御電極部77との間には絶縁膜が設けられる。あるいは、制御電極部77がSIPOS(semi-insulated polycrystalline silicon)などの高抵抗材料の場合、第3の半導体領域59の裏面と制御電極部77との間の絶縁膜を省略することも可能である。
【0160】
前述した各実施形態では、絶縁層の全領域にわたって導電材が埋め込まれているのではなく、必要な部分のみにトレンチが形成され選択的に導電材が埋め込まれている。したがって、半導体層の裏面側において必要な部分のみを局所的に電位コントロールすることができ、必要のない部分に導電材からの電界が作用することによる悪影響を回避できる。
【0161】
図14(b)、図18(b)に示すように、埋め込み層(導電材)の深さをd、半導体層を挟む位置関係で埋め込まれた一対の埋め込み層間の間隔をWとすると、d≧Wが望ましい。dが深く、Wが短いほど、埋め込み層の電位が等しく半導体層27と絶縁層26との界面に作用する。また、dが深く、Wが短いほど、基板電位の遮断効果も大きい。
【0162】
表面側の制御電極に接続された埋め込み層は、仮想的な裏面ゲートとして機能し、半導体層の裏面側に反転層や蓄積層を生じさせる。
【0163】
これに対して、フィールドプレートとして設けられた埋め込み層は、半導体層に対する基板電位の影響を遮断する。これにより、基板電位(例えばグランド電位)と半導体層の高電位側との間の電位差で生じる半導体層中の反転層もしくは蓄積層が抑制され、耐圧が高まる。
【0164】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0165】
SOI構造における半導体層はSiに限らず、GaN、SiCなどの化合物半導体、Geなどであってもよい。
【0166】
搬送や取り扱い性に支障がなければ、半導体基板を設けない、もしくは一部を除去した構成であってもよい。
【0167】
半導体部分の主電極に阻止状態の電圧を印加した場合における、半導体層を流れるリーク電流Idsに対するフィールドプレートを流れる電流Irの設計の一例を以下に示す。これは、仮想フィールドプレート構造を有する実施形態すべてに適用可能である。
静耐圧印加時のリーク電流を少なくすることが必要な場合、Ir=0、Ir≪Ids、Ir<Ids、または、IrとIdsとがほぼ同じ程度、になるように仮想フィールドプレートの構造や材質を設計するのが望ましい。
半導体素子の動特性(逆回復特性、スイッチング特性、スイッチング損失、スイッチングスピード他)や、埋め込み絶縁層の厚さ(より薄い埋め込み酸化膜構造での安定動作など)を重視する場合は、IrとIdsとがほぼ同じ程度、Ir=Ids、Ir>Ids、または、Ir≫Ids、とする設計でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図2】同第1の実施形態においてトレンチ及び導電材形成部分の他の具体例を表す模式断面図。
【図3】第2の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図4】第3の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図5】第4の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図6】第5の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図7】第6の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図8】実施形態に係る半導体装置においてトレンチ及び導電材が第1の絶縁層の内部に達していない構造を表す模式断面図。
【図9】第7の実施形態に係る半導体措置における要部構造を表す模式図。
【図10】第8の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図11】第9の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図12】実施形態に係る半導体装置をスイッチとして用いたフォトリレーの回路を表す模式図。
【図13】実施形態に係る半導体装置においてトレンチ及び導電材が第1の絶縁層の横方向に延びて形成された構造を表す模式断面図。
【図14】第10の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図15】絶縁層上にストライプ状に形成された半導体層の平面レイアウトを示す模式図。
【図16】第10の実施形態に係る半導体装置における導電材の形成方法の一例を示す模式図。
【図17】第11の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図18】第12の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図19】第13の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図20】第14の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図21】第15の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図22】第16の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図23】第10の実施形態に係る半導体装置における導電材の変形例を示す模式図。
【図24】第12の実施形態に係る半導体装置における導電材の変形例を示す模式図。
【符号の説明】
【0169】
12…第1の絶縁層、13…半導体層、14…第2の絶縁層、15…第1の導電材(フィールドプレート部)、16…第2の導電材、17…絶縁膜、21…第1の半導体領域、22…第2の半導体領域、26…絶縁層、27…半導体層、28…第1の主電極、29…第2の主電極、30…制御電極、31…第1の主電極、32…第2の主電極、33…第1の主電極、34…第2の主電極、41…第1の半導体領域、42…第2の半導体領域、44…第3の半導体領域、45a…制御電極部、45b…フィールドプレート部、48…第1の主電極、49…第2の主電極、54…第1の半導体領域、55…第2の半導体領域、57…第1の半導体領域、58…第2の半導体領域、59…第3の半導体領域、75…導電材、77…導電材(制御電極部)、78…導電材(フィールドプレート部)、91〜93…導電材
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐圧向上を図らんとするべく、半導体層の表面側に絶縁層を介して対向するフィールドプレート電極を設けた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、フィールドプレート電極の一部を、ベース領域に対向させてゲート電極として用いることも開示されている。
【0003】
さらなる耐圧の向上やオン抵抗の低減を図るために、フィールドプレート電極やゲート電極を半導体層の裏面側にも対向させて設けることが理論上は考えられるが、その構造の場合、裏面側に設けた電極の引き出し構造が複雑になることなどから、現状、そのような構造を安定して得ることは難しく、新たな素子デザインの開発が求められている。
【特許文献1】特許第3207615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、オン抵抗の低減や耐圧の向上が図れる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の上に設けられた半導体層と、前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、前記半導体層の上に設けられた第2の絶縁層と、前記半導体層における前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の部分の上方の前記第2の絶縁層中に設けられた第1の導電材と、前記第1の導電材に対向する部分の前記半導体層に設けられたトレンチ内に設けられ、前記第1の導電材に接し、かつ前記第1の絶縁層に達する第2の導電材と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられた半導体層と、前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、前記絶縁層内における少なくとも前記半導体層に対向しない部分に選択的に設けられた導電材と、を備えたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オン抵抗の低減や耐圧の向上が図れる半導体装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面で同じ構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0009】
[第1の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばSOI(Silicon On Insulator)層に形成されたダイオードを例に挙げ、図1を参照して説明する。すなわち、本実施形態に係る半導体装置においては、図1(b)に表すように、半導体基板11の上に第1の絶縁層12を介して半導体層13が設けられ、その半導体層13に、PN接合構造が形成されている。半導体基板11及び半導体層13は、例えばシリコンからなる。第1の絶縁層12は、例えば、半導体基板11の上に埋め込まれた酸化シリコンからなる。
【0010】
半導体層13は例えばN−型シリコンからなり、その半導体層13に、例えばP+型シリコンからなる第1の半導体領域21と、例えばN+型シリコンからなる第2の半導体領域22とが、それぞれ選択的に形成されている。
【0011】
第1の半導体領域21は、図1(a)に表すように、例えば環状に形成され、その内側に第1の半導体領域21に対して離間して第2の半導体領域22が形成されている。第1の半導体領域21と第2の半導体領域22との間には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域23が環状に形成されている。ドリフト領域23の外周側部分と、第1の半導体領域21の内周側部分とがPN接合している。
【0012】
図1(b)に表すように、半導体層13の上には、例えば酸化シリコンからなる第2の絶縁層14が設けられている。第2の絶縁層14の上には、第1の主電極31と第2の主電極32が選択的に設けられている。第1の主電極31は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第1の半導体領域21の表面に接している。第2の主電極32は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第2の半導体領域22の表面に接している。第1の主電極31と第2の主電極32との間に順方向電圧が印加されると、第1の半導体領域21、ドリフト領域23および第2の半導体領域22を介して、それら両電極31、32間に電流が流れる。すなわち、本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板11の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0013】
ドリフト領域23の上の第2の絶縁層14中には、第1の導電材(フィールドプレート部)15が設けられている。第1の導電材15は、図1(a)に表すように、渦巻き状に形成されている。第1の導電材15は、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など、第1の主電極31、第2の主電極32に用いられる例えば金属材料よりも抵抗が高い材料からなる。
【0014】
第1の導電材15の一端は、図1(b)に表すように、第1の主電極31に接続されている。第1の導電材15の他端は、図1(a)におけるB−B線断面である図1(c)に表すように、第2の主電極32に接続されている。第1の導電材15は、渦巻き状に十分長く形成することにより、第1の主電極31と第2の主電極32との間のリーク電流を実用上問題ない程度に低く抑えられる。フィールドプレート電極として機能する第1の導電材15は、選択する材質により、渦巻き状の他、ベタな層状等、その他平面パターンが可能である。
【0015】
第1の導電材15の下には、ドリフト領域23を貫通して複数のトレンチTが設けられ、そのトレンチT内に第2の導電材が充填されている。トレンチTは、第1の導電材15が延在する方向に沿って間欠的に設けられ、図1(d)は、図1(a)においてトレンチが形成されていない部分の断面であるC−C線断面を表し、図1(e)は、図1(a)においてトレンチが形成された部分の断面であるD−D断面を表す。
【0016】
図1(e)に表すように、トレンチTはドリフト領域23を貫通し、第1の絶縁層12の表面(上面)よりも下方にまで至って形成されている。トレンチTを形成した後、その内壁面(側面及び底面)を酸化して得られるシリコン酸化膜等の絶縁膜17を形成した上で、トレンチT内に第2の導電材16が充填される。第2の導電材16としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、SIPOS(semi-insulated polycrystalline silicon)、金属などを用いることができる。トレンチT内に充填された第2の導電材16の上端部は、第1の導電材15に接している。あるいは、第2の導電材16と第1の導電材15とを同材料にて一体に形成してもよい。いずれにしても、第1の導電材15と第2の導電材16とは電気的に接続される。トレンチT及び第2の導電材16の底部は、ドリフト領域23と第1の絶縁層12との境界面よりも図1(e)において下方の第1の絶縁層12側に位置し、本実施形態では、トレンチT及び第2の導電材16の底部は第1の絶縁層12の表層部近傍に位置する。
【0017】
図1(a)、(e)におけるE−E線断面図である図1(f)に表すように、トレンチT及びその内部に充填された第2の導電材16は、第1の導電材15の延在する方向に沿って間欠的に複数設けられている。
【0018】
第1の導電材15の両端は、それぞれ、第1の主電極31と第2の主電極32とに接続されているため、第1の主電極31と第2の主電極32との間に逆バイアスが印加されたオフ時、第1の導電材15の一端は第1の半導体領域21と略同電位にされ、他端は第2の半導体領域22と略同電位にされ、第1の導電材15の両端以外の部分は、両端からの経路長に応じた電位にされる。
【0019】
すなわち、第1の半導体領域21と第2の半導体領域22とをつなぐ方向に見て、第1の導電材15の電位がゆるやかに分布し、この第1の導電材15からの電界によって、半導体層13においても高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにできる。この結果、半導体層13における電界集中を抑制して耐圧を向上できる。
【0020】
前述した第1の導電材15は、この第1の導電材15が第2の絶縁層14を介して対向する半導体層13の第1の主面側における電界集中を抑えるのに有効である。そして、本実施形態では、図1(e)に表すように、半導体層13を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、半導体層13の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、第1の導電材15の電界を作用させることができる。
【0021】
複雑で困難なプロセスで半導体層13の第2の主面に対向する部分に第1の導電材15を設けなくても、本実施形態によれば、半導体層13を貫通して設けられ上端部が第1の導電材15に接続された第2の導電材16からの電界(すなわち第1の導電材15の電界)を半導体層13の第2の主面側にまわりこませるように作用させることができる。そのため、半導体層13の第2の主面側においても電位分布をゆるやかにでき、電界集中を抑制できる。また、基板11の電位が、半導体層13へ与える影響を少なくすることができ、そのことで、第1の絶縁層(埋め込み絶縁層)12を薄くすることが可能になる。
【0022】
すなわち、本実施形態に係る半導体装置(ダイオード)によれば、逆バイアスが印加されるオフ時において、両端が第1の主電極31と第2の主電極32に接続され、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となる第1の導電材15からの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができる。例えば半導体基板11の反りを抑制するべく第1の絶縁層12を薄く形成しても、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0023】
近年、ロジック回路やメモリ等のVLSI(very large scale integrated circuit)だけでなく、パワーデバイス等のディスクリートデバイスにおいても、薄膜SOI構造を用いた高性能化が図られている。しかし、VLSIなどの低耐圧素子(素子耐圧数ボルト)で使用されている素子デザインを、数十から数千ボルトの高耐圧が必要なパワーデバイスの素子デザインへそのまま使うことはできず、両者を1チップに集積化することは難しかった。
【0024】
これに対して本実施形態によれば、最先端のマイクロプロセッサなどで使用される例えば0.1(μm)の薄膜SOI層でも、数十から千ボルトを超える耐圧を持つダイオードやMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を実現することが可能となり、VLSIと、高耐圧パワーデバイスとの1チップ化が可能となる。この結果、例えば、1チップ上での低耐圧回路と高耐圧回路間の確実な電気的なアイソレーションや、パワーデバイスをVLSIでデジタル制御することなどによる高付加価値化の実現が期待できる。さらに、電子デバイスと、例えば光の波長の1/2〜1(100nm〜1μm)程度の幅や厚さの導波路を有する光デバイスとの容易な1チップ化も期待できる。
【0025】
図1(e)に表すトレンチTの形成にあたっては、ドリフト領域23におけるトレンチTを形成すべき部分のみを選択的にエッチング除去することで、ドリフト領域23を貫通する複数のトレンチTを形成することができる。
【0026】
あるいは、トレンチTとなるべき部分だけでなく、トレンチTの周囲のドリフト領域23も選択的に除去して例えばスリット状のトレンチを形成し、そのトレンチ内に導電材16となるべき材料を埋め込んだ後、その材料を選択的にエッチング除去して柱状に第2の導電材16が残るようにし、それら第2の導電材16間に、図2に表すように絶縁層(例えば酸化シリコンからなる)12aを埋め込んでもよい。この場合、第1の半導体領域21と第2の半導体領域22との間を結ぶ方向に沿って形成された複数の第2の導電材16間に絶縁層12aが介在された構造となる。第2の導電材16が設けられていない部分にはドリフト領域23が残され、そのドリフト領域23を介して第1の半導体領域21と第2の半導体領域22との間の導通は確保される。
【0027】
[第2の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばSOI層に形成されたMOSFETを例に挙げ、図3を参照して説明する。
【0028】
本実施形態では、例えばN−型シリコンからなる半導体層13に、例えばP+型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)44が環状に形成され、その内側に第3の半導体領域44に対して離間して、例えばN+型シリコンからなる第2の半導体領域(ドレイン領域)42が形成されている。第3の半導体領域44の表層部には、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(ソース領域)41が環状に形成されている。第3の半導体領域44と第2の半導体領域42との間には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43が、両領域44、42に接して環状に形成されている。
【0029】
半導体層13の上には、例えば酸化シリコンからなる第2の絶縁層14が設けられ、第2の絶縁層14の上には、第1の主電極48と第2の主電極49が選択的に設けられている。第1の主電極48は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第1の半導体領域41及び第3の半導体領域44の表面に接している。第2の主電極49は、第2の絶縁層14を貫通して形成されたビアを介して、第2の半導体領域42の表面に接している。
【0030】
ドリフト領域43の上の第2の絶縁層14中には、フィールドプレート部45bが設けられ、第3の半導体領域44の上の第2の絶縁層14中には、制御電極部45aが設けられている。制御電極部45aとフィールドプレート部45bとは、図3(a)に表すように、ひとつながりにされ、渦巻き状に形成されている。制御電極部45aと、フィールドプレート部45bは、本実施形態における第1の導電材を構成する。
【0031】
フィールドプレート部45bは、前述した第1の実施形態と同様、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコンなどからなる。フィールドプレート部45bの一端は、図3(a)に表すように、制御電極部45aに接続されている。あるいは、フィールドプレート部45bの一端を第1の主電極48に接続させてもよい。フィールドプレート部45bの他端は、図1(c)を参照して説明した第1の実施形態と同様、第2の主電極49に接続されている。フィールドプレート部45bは、渦巻き状に十分長く形成することにより、制御電極部45aと第2の主電極49との間のリーク電流を実用上問題ない程度に低く抑えられる。
【0032】
第3の半導体領域44及びその表層部に選択的に形成された第1の半導体領域41は、ドリフト領域43を囲むように環状に形成されている。
【0033】
制御電極部45aは、第3の半導体領域44における第1の半導体領域41とドリフト領域43との間の部分の上で、フィールドプレート部45bの外側を囲むように環状に形成されている。
【0034】
本実施形態では、第1の主電極48に対して第2の主電極49側を高電位とする電圧が両電極48、49間に印加された状態で、所望の制御電圧を制御電極部45aに印加すると、その制御電極部45aが対向している第3の半導体領域44にチャネルが形成され、第1の半導体領域41、チャネル、ドリフト領域43および第2の半導体領域42を介して、両電極48、49間に電流が流れる。本実施形態に係る半導体装置も、半導体基板11の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0035】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、ドリフト領域43においてフィールドプレート部45bの下方に対応する部分には、図3(c)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。
【0036】
さらに、本実施形態では、第3の半導体領域44において制御電極部45aの下方に対応する部分にも、図3(c)及びその図3(c)におけるH−H線断面図である図3(d)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。第2の導電材16としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、金属などを用いることができる。
【0037】
フィールドプレート部45bの下方に形成されたトレンチTはドリフト領域43を貫通し、第1の絶縁層12の表面よりも下方にまで至って形成されている。制御電極部45aの下方に形成されたトレンチTは第3の半導体領域44を貫通し、第1の絶縁層12の表面よりも下方にまで至って形成されている。
【0038】
フィールドプレート部45b下方のトレンチT内に充填された第2の導電材16の上端部は、フィールドプレート部45bに接してフィールドプレート部45bと電気的に接続されている。制御電極部45a下方のトレンチT内に充填された第2の導電材16の上端部は、制御電極部45aに接して制御電極部45aと電気的に接続されている。
【0039】
フィールドプレート部45b下方のトレンチT及び第2の導電材16の底部は、ドリフト領域43と第1の絶縁層12との境界面よりも図3(c)において下方の第1の絶縁層12側に位置している。制御電極部45a下方のトレンチT及び第2の導電材16の底部は、第3の半導体領域44と第1の絶縁層12との境界面よりも図3(c)において下方の第1の絶縁層12側に位置している。
【0040】
本実施形態においては、制御電極部45aもしくは第1の主電極48に接続されたフィールドプレート部45bの一端は、第2の主電極49に接続された他端よりも低電位にされ、逆に言えば、フィールドプレート部45bの他端は一端よりも高電位にされる。フィールドプレート部45bの両端以外の部分は、両端からの経路長に応じた電位にされる。
【0041】
すなわち、本実施形態においても、第1の半導体領域41と第2の半導体領域42とをつなぐ方向に見て、フィールドプレート部45bの電位がゆるやかに分布し、このフィールドプレート部45bからの電界によって、半導体層13においても高電位側(本実施形態においては第2の主電極49側)と低電位側(本実施形態においては第1の主電極48側)との間の電位分布をゆるやかにできる。この結果、半導体層13における電界集中を抑制して耐圧を向上できる。
【0042】
フィールドプレート部45bは、このフィールドプレート部45bが第2の絶縁層14を介して対向する半導体層13の第1の主面側における電界集中を抑えるのに特に有効である。そして、本実施形態においても、図3(c)に表すように、半導体層13を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、半導体層13の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、フィールドプレート部45bの電界を作用させることができ、半導体層13の第2の主面側においても電位分布をゆるやかにでき、電界集中を抑制できる。
【0043】
すなわち、本実施形態においても、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、例えば半導体基板11の反りを抑制するべく第1の絶縁層12を薄く形成しても、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0044】
さらに本実施形態では、スイッチングオン時、第3の半導体領域44を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域44の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域44の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0045】
[第3の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を例に挙げ、図4を参照して説明する。なお、前述した第1、第2の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、例えばN−型シリコンからなる半導体層13に、例えばP+型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)44が環状に形成され、その内側に第3の半導体領域44に対して離間して、例えばN型シリコンからなるバッファ領域53が形成されている。第3の半導体領域44の表層部には、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)41が環状に形成されている。第3の半導体領域44とバッファ領域53との間には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43が、両領域44、53に接して環状に形成されている。バッファ領域53の内側には、例えばP型シリコンからなる第2の半導体領域(コレクタ領域)52が形成されている。
【0047】
第1の半導体領域41は第1の主電極48に接続され、第2の半導体領域52は第2の主電極49に接続されている。ドリフト領域43の上の第2の絶縁層14中には、フィールドプレート部45bが設けられ、第3の半導体領域44の上の第2の絶縁層14中には制御電極部45aが設けられている。制御電極部45aとフィールドプレート部45bとは、ひとつながりにされ、渦巻き状に形成されている。
【0048】
本実施形態に係る半導体装置(IGBT)において、制御電極部45aに所望の制御電圧(ゲート電圧)を印加すると、第2の絶縁層14を介して制御電極部45aに対向する第3の半導体領域44にnチャネルが形成され、第1の主電極48と第2の主電極49との間(エミッタ・コレクタ間)がオン状態となる。IGBTにおいては、エミッタから電子が、コレクタから正孔が注入され、ドリフト領域43にキャリアが蓄積し、伝導度変調が起こるので、オン抵抗を小さくできる。
【0049】
また、本実施形態においても、第3の半導体領域44を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域44の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域44の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0050】
さらに、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0051】
[第4の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えば、注入促進型絶縁ゲートトランジスタ(IEGT:Injection Enhanced Gate Transistor)を例に挙げ、図5を参照して説明する。なお、前述した各実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施形態では、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43の外側に、例えばP型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)62が環状に形成されている。ドリフト領域43と第3の半導体領域62とはPN接合している。第3の半導体領域62の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、図5(b)に表すように、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図5(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されて形成されている。第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとはPN接合している。第1の半導体領域61aと第3の半導体領域62とはPN接合している。
図5(b)に表すように、第3の半導体領域62には、周期的にトレンチT及びこれに充填された第2の導電材16が設けられている。トレンチT及び第2の導電材16は、例えば、第1の半導体領域61aに隣接する部分(チャネルが形成される部分)を挟むように、ベースコンタクト領域61bに隣接する部分に設けられている。したがって、第2の導電材16の電位(ゲート電位)を、2方向からチャネル形成部にまわりこませて作用させることができ、低オン抵抗化しやすい。
【0053】
第1の半導体領域61a及びベースコンタクト領域61bは、第1の主電極63に接している。ベースコンタクト領域61bは第3の半導体領域62に接しており、これにより、オフ状態において第3の半導体領域62の電位を第1の主電極63の電位(エミッタ電位)に固定し、オフ状態やスイッチング時の寄生バイポーラ効果を抑制しトランジスタの耐圧を向上できる。
【0054】
第3の半導体領域62の上には絶縁層66が設けられ、その絶縁層66中に制御電極65が設けられている。制御電極65は、絶縁層66を介して第3の半導体領域62に対向している。
【0055】
半導体層13及び絶縁層66の上には第2の絶縁層14が設けられており、ドリフト領域43の上の第2の絶縁層14中には、フィールドプレート部45bが形成されている。フィールドプレート部45bの一端は、制御電極部65の上に対応する部分に設けられ、フィールドプレート部45bの一端は、制御電極部65もしくは第1の主電極63に接続されている。フィールドプレート部45bの他端は、第2の主電極49に接続されている。
【0056】
本実施形態では、前述した第3の実施形態に係る半導体装置(IGBT)よりも、第3の半導体領域(ベース領域)62の厚みを狭めており、第2の半導体領域(コレクタ領域)52から注入された正孔の第3の半導体領域62への流れ込み(すなわち、第1の主電極63側への流出)が減少し、相対的に電子の注入量が促進され低オン抵抗を実現できる。
【0057】
また、本実施形態においても、スイッチングオン時、図5(c)に表されるように、第3の半導体領域62を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域62の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極65の電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域62の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるバックゲート構造を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0058】
さらに、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0059】
[第5の実施形態]
本実施形態では、図6に表すように、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43の外側に、例えばP型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)62が環状に形成されている。ドリフト領域43と第3の半導体領域62とはPN接合している。第3の半導体領域62の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、上記第4の実施形態と同様、図5(b)に表すように、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図6(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されて形成されている。第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとはPN接合している。第1の半導体領域61aと第3の半導体領域62とはPN接合している。
【0060】
ドリフト領域43の外側に、例えばN+型シリコンからなるN型バッファ領域73が形成され、そのN型バッファ領域73の外側に半導体領域72が形成されている。半導体領域72は、図5(b)に表す半導体領域61と同様に、例えばN型シリコンからなるコンタクト領域と、そのコンタクト領域に対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなる第2の半導体領域とからなり、それぞれ複数の第2の半導体領域とコンタクト領域とが、図6(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されてPN接合している。第2の半導体領域及びコンタクト領域は、第2の主電極74に接している。
【0061】
N型バッファ領域73の上には絶縁層66が設けられ、その絶縁層66中に制御電極部71が設けられている。制御電極部71は、絶縁層66を介してN型バッファ領域73に対向している。
【0062】
図6(a)におけるK−K線断面図である図6(b)に表すように、N型バッファ領域73を貫通してトレンチTが形成され、そのトレンチTの内部に制御電極部71に接続された第2の導電材16が充填されている。これにより、その第2の導電材16を介して、N型バッファ領域73の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部71の電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、N型バッファ領域73の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第3の半導体領域62の厚みを狭めることで正孔の第1の主電極63への流出を抑制し、さらにN型バッファ領域73の厚みを狭めることで電子の第2の主電極74への流出を抑制し、結果として、ドリフト領域43中のキャリア蓄積量を増大させて、オン抵抗の低減が図れる。
【0064】
[第6の実施形態]
本実施形態では、図7に表すように、半導体基板11の上に第1の絶縁層12を介して、前述した各実施形態における半導体層13よりも薄い半導体層83が設けられている。
【0065】
半導体層83には、例えばN−型シリコンからなるドリフト領域43が環状に形成され、そのドリフト領域43の外側に、例えばP型シリコンからなる第3の半導体領域(ベース領域)62が環状に形成されている。ドリフト領域43と第3の半導体領域62とはPN接合している。第3の半導体領域62の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、図5(b)に表すように、例えばN型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図7(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されてPN接合している。
【0066】
ドリフト領域43の内側には、例えばN+型シリコンからなるN型バッファ領域73が環状に形成されている。N型バッファ領域73の外側には、半導体領域72が環状に形成されている。半導体領域72は、図5(b)に表す半導体領域61と同様、例えばN型シリコンからなるコンタクト領域と、このコンタクト領域に対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなる第2の半導体領域とからなる。それぞれ複数の第2の半導体領域とコンタクト領域とが、図7(a)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されてPN接合している。
【0067】
第1の半導体領域61a及びベースコンタクト領域61bは第1の主電極63に接している。第2の半導体領域及びコンタクト領域は第2の主電極74に接している。
【0068】
半導体層83の上に設けられた第2の絶縁層14中において、ドリフト領域43の上にフィールドプレート部45bが設けられ、第3の半導体領域62及びN型バッファ領域73のそれぞれの上に制御電極部45aが設けられている。フィールドプレート部45bの一端は制御電極部45aもしくは第1の主電極63に接続され、他端は第2の主電極74に接続されている。
【0069】
ドリフト領域43においてフィールドプレート部45bの下方に対応する部分には、図7(d)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜等の絶縁膜17を介して導電材16が充填されている。
【0070】
また、第3の半導体領域62において制御電極部45aの下方に対応する部分にも、図7(b)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。さらに、N型バッファ領域73において制御電極部45aの下方に対応する部分にも、図7(c)に表すように、選択的に複数のトレンチTが形成され、そのトレンチT内にシリコン酸化膜17を介して第2の導電材16が充填されている。
【0071】
本実施形態においても、スイッチングオン時、第3の半導体領域62、N型バッファ領域73を貫通するトレンチTの内部に充填された第2の導電材16を介して、第3の半導体領域62及びN型バッファ領域73の第2の主面側(第1の絶縁層12と接している裏面側)にも、制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域62及びN型バッファ領域73の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0072】
さらに、スイッチングオフ時、経路長に沿ってゆるやかな電位分布となるフィールドプレート部45bからの電界を、半導体層13の第1の主面側からだけでなく第2の主面側からも作用させることができ、半導体基板11の電位(例えばグランド電位)が半導体層13に影響するのを抑えて、半導体層13における高電位側と低電位側との間の電位分布をゆるやかにして電界集中を抑制できる。この結果、材料(例えばシリコン)本来の特性で決まる耐圧の実現が期待できる。
【0073】
[第7の実施形態]
本実施形態に係る半導体装置は、図9に表されるように、前述した図3に示す実施形態の構造においてフィールドプレート部45bを設けずに、制御電極部45aのみを第1の導電材として設けた構造である。
【0074】
本実施形態においても、第2の導電材16を介して、第3の半導体領域44の裏面側にも制御電極部45aの電界をまわりこませるようにして作用させることができる。すなわち、第3の半導体領域44の表裏両面側にチャネルが形成されるいわゆるダブルゲート構造に近い効果を複雑なプロセスを経ることなく実現でき、オン抵抗の低減が図れる。
【0075】
[第8の実施形態]
上記第7の実施形態の構造の半導体層13において、ソース側の構造を前述した第4の実施形態のようにしてもよい。
【0076】
すなわち、図10に示すように、第3の半導体領域44の外側には、半導体領域61が環状に形成されている。半導体領域61は、図10(e)に表すように、例えばN+型シリコンからなる第1の半導体領域(エミッタ領域)61aと、この第1の半導体領域61aに対して隣接して形成された例えばP+型シリコンからなるベースコンタクト領域61bとからなる。それぞれ複数の第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとが、図10(b)において紙面を貫く方向に交互に繰り返されて形成されている。第1の半導体領域61aとベースコンタクト領域61bとはPN接合している。第1の半導体領域61aと第3の半導体領域44とはPN接合している。
図10(e)に表すように、第3の半導体領域44には、周期的にトレンチT及びこれに充填された第2の導電材16が設けられている。トレンチT及び第2の導電材16は、例えば、第1の半導体領域61aに隣接する部分(チャネルが形成される部分)を挟むように、ベースコンタクト領域61bに隣接する部分に設けられている。したがって、第2の導電材16の電位(ゲート電位)を、2方向からチャネル形成部にまわりこませて作用させることができ、低オン抵抗化しやすい。
【0077】
第1の半導体領域61a及びベースコンタクト領域61bは、第1の主電極48に接している。ベースコンタクト領域61bは第3の半導体領域44に接しており、これにより、オフ状態において第3の半導体領域44の電位を第1の主電極48の電位(エミッタ電位)に固定し、オフ状態やスイッチング時の寄生バイポーラ効果を抑制しトランジスタの耐圧を向上できる。
【0078】
[第9の実施形態]
本実施形態では、図11(b)に表すように、前述した図3に示した実施形態の構造におけるフィールドプレート部45bを、スイッチ(トランジスタ)90を介して、第2の主電極(ドレイン電極)49に対して接続させている。図11(b)中、Rは、第1の導電材を構成するフィールドプレート部45bにおける抵抗成分と、フィールドプレート部45bと制御電極部45aとの間の抵抗成分を表す。
【0079】
スイッチ90は、素子導通状態でオフにされ、第2の主電極49と制御電極部45a間の短絡が防止される。さらに、フィールドプレート部45bには、抵抗Rを介して制御電極部45aと同じ電位が印加されるため、ドリフト層43のフィールドプレート部45b近傍にも制御電極部45a近傍と同じMOSチャネル(もしくは、キャリアの蓄積)が形成され、素子のオン抵抗を下げる。素子のオフ状態では、スイッチ90はオンにされ、上記各実施形態で説明したようにフィールドプレート部45bの電位がゆるやかに分布し、半導体層13における電界集中を抑制して耐圧を向上できる。
【0080】
前述した各実施形態に係る半導体装置は、図12に例示されるフォトリレーのスイッチ101、102として用いることができる。
【0081】
スイッチング制御信号が入力される入力端子IN1、IN2間に、そのスイッチング制御信号に応答して発光する発光素子(発光ダイオード)103が接続されている。この発光素子103が発する光を受光して、直流電圧を発生するフォトダイオードアレイ104(直列接続された複数のフォトダイオードからなる)が設けられている。スイッチ101、102のゲートG11、G12には、フォトダイオードアレイ104から出力された直流電圧が制御回路105を介して供給される。スイッチ101のドレインD1は出力端子OUT1に接続され、スイッチ102のドレインD2は出力端子OUT2に接続されている。
【0082】
スイッチ101、102のゲートG11、G12に、制御回路105からの制御電圧が印加されると、スイッチ101、102はオン状態にされ、これにより出力端子OUT1、OUT2間は導通状態になる。入力端子IN1、IN2に入力されるスイッチング制御信号がゼロになると、発光素子103は発光を止め、これによってフォトダイオードアレイ104の両端子間に発生していた直流電圧も消滅し、スイッチ101、102はオフ状態に切り替えられる。
【0083】
制御回路105は、スイッチ101、102のゲートG11、G12と、ソースS1、S2との間に接続される放電回路106を有する。この放電回路106は、スイッチ101、102がオン状態からオフ状態に切り替えられるとき、ゲート−ソース間に充電されている電荷を迅速に放電するための回路である。
【0084】
前述した各実施形態における半導体基板11、半導体層13、83としては、シリコン以外にも、例えば、窒化ガリウム、炭化シリコンなどの化合物半導体、ゲルマニウムなどを用いてもよい。
【0085】
フィールドプレート部の下方でドリフト層を貫通して形成されたトレンチT内に充填された第2の導電材16は、第1の絶縁層12内に入り込んでいなくてもよく、図8に表すように、トレンチTを、半導体層13を貫通して第1の絶縁層12の表面に達するまでにとどめ、あるいは、トレンチTの底部を第1の絶縁層12より少し上の半導体層13中にとどめ、そのトレンチT内壁面(側面及び底面)に例えば酸化シリコンなどの絶縁膜17を形成して、第2の導電材16を充填させてもよい。この場合でも、第2の導電材16を介して、半導体層13の表面側に対向して設けられたフィールドプレート部の電界を半導体層13の裏面側にまわりこませて作用させることができる。ただし、第2の導電材16が第1の絶縁層12中にまで入り込んでいる方が、半導体層13の裏面側への上記電界作用を促進させやすい。
【0086】
また、図13に示すように、トレンチT及び第2の導電材16の底部が第1の絶縁層12もしくは半導体層13の主面に対して略平行な横方向に少しはみ出すように設けられてもよく、この場合には、半導体層13の裏面側に対して、より上記電界作用を促進させやすい。
【0087】
トレンチ及びこれに充填された第2の導電材は、半導体層における電位分布をゆるやかにする観点から所定の間隔で複数設けることが望ましい。そして、それら複数の第2の導電材は、互いに抵抗性の第1の導電材で接続されることが望ましい。
【0088】
制御電極部、フィールドプレート部、第1の導電材、第1の主電極、第2の主電極、第2の導電材は、同材料から構成してもよいし、互いに異なる材料から構成してもよい。
【0089】
[第10の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばダイオードを例に挙げ、図14を参照して説明する。
【0090】
本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板25の上に絶縁層26を介して半導体層27が設けられたSOI(Silicon On Insulator)構造を有する。半導体基板25及び半導体層27としては、例えばシリコンを用いることができる。絶縁層26は、例えば半導体基板25上に埋め込み形成された酸化シリコンである。
【0091】
半導体層27は、絶縁層26上で、ピラー、フィン、もしくは細線状に形成されている。図14は一つの半導体層27が設けられた部分を示しているが、図15の模式平面図に示すように、複数本の半導体層27が絶縁層26上にストライプ状に設けられている。なお、図14(b)は図14(a)におけるA−A断面を示し、図14(c)は図14(b)におけるB−B断面を示す。
【0092】
図14(c)に示すように、半導体層27には、P+型の第1の半導体領域54と、N+型の第2の半導体領域55と、N−型のドリフト領域56とが形成されている。第1の半導体領域54と第2の半導体領域55は、半導体層27の長手方向の両端部に選択的に形成され、これら第1の半導体領域54と第2の半導体領域55との間にドリフト領域56が形成されている。第1の半導体領域54とドリフト領域56とはPN接合している。
【0093】
絶縁層上26には、第1の半導体領域54を囲むようにして第1の主電極33が設けられている。同じく絶縁層26上には、第2の半導体領域55を囲むようにして第2の主電極34が設けられている。第1の主電極33は、第1の半導体領域54の上面及び側面に接している。第2の主電極34は、第2の半導体領域55の上面及び側面に接している。
【0094】
第1の主電極33と第2の主電極34との間に順方向電圧が印加されると、第1の半導体領域54、ドリフト領域56および第2の半導体領域55を介して、それら両電極33、34間に電流が流れる。すなわち、本実施形態に係る半導体装置も、半導体基板25の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0095】
絶縁層26内には導電材75が埋め込まれている。導電材75は、絶縁層26において、上に半導体層27が設けられず半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内に設けられている。導電材75は、半導体層27の長手方向に対して略平行に延在して絶縁層26内に埋め込まれている。一つの半導体層27あたり、その短手方向の両側から半導体層27を挟む位置関係で一対の導電材75が設けられている。
【0096】
導電材75の長手方向の両端部はそれぞれ接続部76a、76bに接続されている。接続部76a、76bは、導電材75の両端部から絶縁層26表面上へと延びるピラー状に絶縁層26内に形成されている。接続部76a、76bの上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に、第1の主電極33と第2の主電極34がそれぞれ接している。
【0097】
導電材75は、例えば図16に示す方法にて、絶縁層26内に形成することができる。
【0098】
図16(a)は、半導体基板25上に絶縁層26を形成し、その絶縁層26上に半導体層27を形成した状態を示す。なお、半導体層27は、図15を参照して前述したようにストライプ状に絶縁層26上に形成される。
【0099】
図16(a)の構造が得られた後、半導体層27上に図示しないマスクを形成して絶縁層26をエッチングし、図16(b)に示すように絶縁層26にトレンチTを形成する。絶縁層26は、半導体層27の下の部分はエッチングされず、その側方の部分がエッチングされる。トレンチTの底部は半導体基板25までは達せず、トレンチTと半導体基板25との間に絶縁層26の一部が残される。
【0100】
そして、トレンチT内には導電材75が埋め込まれる。導電材75はトレンチT内をすべて埋め込まれた後、エッチバックされ、図16(c)に示すように、トレンチTの底部側の一部分だけが残される。
【0101】
この後、導電材75の上のトレンチT内を絶縁層で埋め込んだ後、その絶縁層の一部(図14(a)に示す接続部76a、76bの形成箇所)に、絶縁層表面側から導電材75に達するトレンチを形成し、そのトレンチ内に導電材75と同材料もしくは導電材75よりも低抵抗な材料を埋め込む。これにより、導電材75の一端部と第1の主電極33とを接続する接続部76aと、導電材75の他端部と第2の主電極34とを接続する接続部76bが形成される。
【0102】
導電材75の材料としては、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など、第1の主電極33、第2の主電極34に用いられる例えば金属材料よりも抵抗が高い材料が用いられる。接続部76a、76bの材料としては導電材75と同材料もしくは導電材75よりも低抵抗な材料が用いられる。
【0103】
導電材75の一端部は接続部76aを介して第1の主電極33に接続され、導電材75の他端部は接続部76bを介して第2の主電極34に接続されているが、導電材75は、比較的高抵抗な材料から形成されているため、第1の主電極33と第2の主電極34との間のリーク電流を実用上問題ない程度に抑えられる。
【0104】
導電材75の長手方向の両端部はそれぞれ第1の主電極33と第2の主電極34に接続されているため、第1の主電極33と第2の主電極34との間に逆バイアスが印加されたオフ時、導電材75の一端部は逆バイアス時に低電位側となる第1の主電極33の電位もしくはそれに近い電位になり、他端部は逆バイアス時に高電位側となる第2の主電極34の電位もしくはそれに近い電位になる。導電材75における両端部以外の部分は、両端部からの距離に応じた電位分布となる。すなわち、導電材75において、第1の主電極33と第2の主電極34とをつなぐ長手方向に、ゆるやかに変化する電位分布が得られる。
【0105】
導電材75は絶縁層26に埋め込まれている。このため、逆バイアスが印加されるオフ時における上記導電材75からの電界を、半導体層27の裏面(半導体層27における絶縁層26に接する面)側に作用させ、オフ時における半導体層27の裏面側の電位を制御することができる。
【0106】
導電材75は、半導体層27における高電位側と低電位側とをむすぶ長手方向に延在し、その導電材75には、前述したように長手方向にゆるやかな電位分布が生じるので、オフ時に半導体層27の裏面側に長手方向に空乏層を伸展させることができ、電界の局所的な集中を抑制して高耐圧を得ることができる。
【0107】
一般に、SOI構造において、半導体層の表面側は、その半導体層の上に絶縁層を介してフィールドプレート電極を設けることで電位を容易に制御することができる。一方、半導体層の裏面側は、基板電位(例えばグランド電位)の影響を受けるため裏面電位の制御が難しい。基板と半導体層との間に設ける絶縁層の厚さを厚くすれば、半導体層の裏面側に対する基板電位の影響を抑えることができるが、絶縁層が厚くなると基板に反りが生じやすくなる。また、半導体層の裏面に対向する部分の絶縁層内にフィールドプレート電極を設けて半導体層の裏面側の電位を制御することが考えられるが、その場合フィールドプレート電極を他の電極に接続させるための引き出し構造が複雑になり、その構造を得るためのプロセスも難しくなる。
【0108】
これに対して、本実施形態では、絶縁層26において、半導体層27の側方であって半導体層27が設けられていない部分にトレンチを形成して導電材75を埋め込むという簡単なプロセスで導電材75を絶縁層26内に埋め込み、その導電材75からの電界を半導体層27の裏面側にまわりこませて作用させることができる。特に短手方向の幅が微細な細線状の半導体層27においては、その半導体層27を短手方向から挟む位置関係で埋め込まれた一対の導電材75間の距離が小さくなり、半導体層27の裏面に対向する位置に導電材がなくても、半導体層27の側方に埋め込まれた導電材75からの電界を半導体層27の裏面全体に作用させやすい。
【0109】
絶縁層26に埋め込まれた導電材75によって半導体層27裏面側の電位を制御することで、半導体層27に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0110】
[第11の実施形態]
図17は、本発明の第11の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図である。本実施形態に係る半導体装置は、上記第10の実施形態と同様なダイオードであり、第10の実施形態に係る半導体装置と共通する部分には同じ符号を付している。
【0111】
本実施形態でも、絶縁層26において、上に半導体層27が設けられず半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内に、導電材91、92、93が設けられている。
【0112】
各々の導電材91、92、93は、絶縁層26の内部から絶縁層26の表面上へと延びるピラー状に設けられている。
【0113】
導電材91は、第1の半導体領域54の側方の絶縁層26内に埋め込まれている。その導電材91の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に、第1の主電極33が接している。
【0114】
導電材92は、第2の半導体領域55の側方の絶縁層26内に埋め込まれている。その導電材92の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に、第2の主電極34が接している。
【0115】
導電材91と導電材92との間の絶縁層26内には、複数の導電材93が半導体層27の長手方向に並んで設けられている。各導電材91、92、93は、絶縁層26の内部では互いにつながっておらず、絶縁層26の表面上に設けた抵抗性材料(例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など)によって互いに接続されている。
【0116】
第1の主電極33と第2の主電極34との間に逆バイアスが印加されたオフ時、導電材91は逆バイアス時に低電位側となる第1の主電極33の電位もしくはそれに近い電位になり、導電材92は逆バイアス時に高電位側となる第2の主電極34の電位もしくはそれに近い電位になる。導電材91と導電材92との間の導電材93は、導電材91と導電材92からの距離に応じた電位分布となる。すなわち、導電材91〜93において、第1の主電極33と第2の主電極34とをつなぐ長手方向に方向に、ゆるやかに変化する電位分布が得られる。
【0117】
導電材91〜93は絶縁層26に埋め込まれている。したがって、本実施形態においても、逆バイアスが印加されるオフ時における上記導電材91〜93からの電界を、半導体層27の裏面側に作用させ、半導体層27の裏面側に長手方向に空乏層を伸展させることができ、電界の局所的な集中を抑制して高耐圧を得ることができる。
【0118】
すなわち、本実施形態においても、絶縁層26において、半導体層27の側方であって半導体層27が設けられていない部分にトレンチを形成して導電材91〜93を埋め込むという簡単なプロセスで導電材91〜93を絶縁層26内に埋め込み、その導電材91〜93からの電界を半導体層27の裏面側にまわりこませて作用させることができる。
【0119】
絶縁層26に埋め込まれた導電材91〜93によって半導体層27裏面側の電位を制御することで、半導体層27に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0120】
[第12の実施形態]
本実施形態では、半導体装置として、例えばMOSFETを例に挙げ、図18を参照して説明する。
【0121】
本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板25の上に絶縁層26を介して半導体層27が設けられたSOI(Silicon On Insulator)構造を有する。半導体基板25及び半導体層27としては、例えばシリコンを用いることができる。絶縁層26は、例えば半導体基板25上に埋め込み形成された酸化シリコンである。
【0122】
半導体層27は、絶縁層26上で、ピラー、フィン、もしくは細線状に形成されている。図18は一つの半導体層27が設けられた部分を示しているが、図15の模式平面図に示すように、複数本の半導体層27が絶縁層26上にストライプ状に設けられている。なお、図18(b)は図18(a)において制御電極30が設けられた部分の断面を示し、図18(c)は図18(b)におけるA−A断面を示す。
【0123】
図18(c)に示すように、半導体層27には、N+型の第1の半導体領域57と、N+型の第2の半導体領域58と、P型の第3の半導体領域59と、N−型のドリフト領域60とが形成されている。第1の半導体領域57は半導体層27の長手方向の一端部に形成され、第2の半導体領域58は半導体層27の長手方向の他端部に形成されている。第1の半導体領域57と第3の半導体領域59とはPN接合している。ドリフト領域60は、第3の半導体領域59と第2の半導体領域58との間に形成され、第3の半導体領域59に対してPN接合している。
【0124】
絶縁層上26には、第1の半導体領域57を囲むようにして第1の主電極28が設けられている。同じく絶縁層26上には、第2の半導体領域58を囲むようにして第2の主電極29が設けられている。第1の主電極28は、第1の半導体領域57の上面及び側面に接している。第2の主電極29は、第2の半導体領域58の上面及び側面に接している。また、図示しないが第3の半導体領域59は第1の主電極57に接続している。
【0125】
さらに、絶縁層26上には、第3の半導体領域59を囲むようにして制御電極30が設けられている。制御電極30は、図18(b)に示すように、ゲート絶縁膜(例えばシリコン酸化膜)35を介して、第3の半導体領域59の上面及び側面に対向している。
【0126】
本実施形態では、第1の主電極28に対して第2の主電極29側を高電位とする電圧が両主電極28、29間に印加された状態で、所望の制御電圧を制御電極30に印加すると、その制御電極30が対向している第3の半導体領域59の上面及び側面にチャネルが形成され、第1の半導体領域57、チャネル、ドリフト領域60および第2の半導体領域58を介して、両主電極28、29間に電流が流れる。本実施形態に係る半導体装置も、半導体基板25の主面に対して略平行な方向に電流が流れるいわゆる横型の半導体装置である。
【0127】
半導体層27を絶縁層26上でピラー、フィン、もしくは細線状に形成することで、第3の半導体領域59の上面だけでなく側面にもチャネルを形成することができ、オン抵抗の低減が図れる。また、特に半導体層27を細線状に形成した場合には、ソースゲート間容量、ドレインゲート間容量が小さくなり、スイッチングの高速化が図れる。
【0128】
さらに、本実施形態では、絶縁層26内に埋め込まれた導電材として制御電極部77が設けられている。制御電極部77は、絶縁層26において、上に半導体層27が設けられず半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内にピラー状に設けられている。
【0129】
制御電極30は第3の半導体領域59を囲むように絶縁層26上に設けられている。その制御電極30において半導体層27の側方で絶縁層26上に位置する部分の下の絶縁層26内に、制御電極部77が埋め込まれている。
【0130】
一つの半導体層27あたり、その短手方向の両側から半導体層27を挟む位置関係で一対の制御電極部77が設けられている。制御電極部77の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に制御電極30が接している。制御電極部77の材料としては、制御電極30と同じ例えば多結晶シリコン、金属材料などが用いられる。
【0131】
制御電極30と、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77とは電気的に接続されている。そのため、制御電極30に所定の制御電圧が印加されるスイッチングオン時、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77からの電界を、第3の半導体領域59の裏面(第3の半導体領域59における絶縁層26に接する面)側に作用させることができる。この結果、第3の半導体領域59の裏面側にもチャネルを形成することができ、オン抵抗をより低減できる。すなわち、本実施形態では、図18(b)に示すように、第3の半導体領域59の上面、側面および裏面に反転層(もしくは蓄積層)70を形成することができ、オン抵抗をより低減できる。
【0132】
制御電極部77を絶縁層26内に形成するにあたっては、絶縁層26において半導体層27に対向していない部分の表面側からエッチングによりトレンチを形成し、そのトレンチ内に導電材を埋め込むという簡単なプロセスで制御電極部77を形成することができる。特に短手方向の幅が微細な細線状の半導体層27においては、その半導体層27を短手方向から挟む位置関係で埋め込まれた一対の制御電極部77間の距離が小さくなり、第3の半導体領域59の裏面に対向する位置に導電材がなくても、第3の半導体領域59の側方に埋め込まれた制御電極部77からの電界を第3の半導体領域59の裏面全体に作用させやすい。
【0133】
また、絶縁層26に埋め込まれた制御電極部77によって第3の半導体領域59の裏面側の電位を制御することで、第3の半導体領域59に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0134】
[第13の実施形態]
図19は、本発明の第13の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図である。本実施形態に係る半導体装置は、上記第12の実施形態と同様なMOSFETであり、第12の実施形態に係る半導体装置と共通する部分には同じ符号を付している。
【0135】
本実施形態では、絶縁層26内に埋め込まれた導電材は、制御電極部77とフィールドプレート部78とを有する。制御電極部77は、絶縁層26において、半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内にピラー状に設けられている。
【0136】
制御電極30は第3の半導体領域59を囲むように絶縁層26上に設けられている。その制御電極30において半導体層27の側方で絶縁層26上に位置する部分の下の絶縁層26内に、制御電極部77が埋め込まれている。制御電極部77の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に制御電極30が接している。
【0137】
制御電極30と、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77とは電気的に接続されている。そのため、制御電極30に所定の制御電圧が印加されるスイッチングオン時、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77からの電界を、第3の半導体領域59の裏面(第3の半導体領域59における絶縁層26に接する面)側に作用させることができる。この結果、第3の半導体領域59の裏面側にもチャネルを形成することができ、オン抵抗をより低減できる。
【0138】
フィールドプレート部78も、絶縁層26において、半導体層27に対向しない部分、すなわちストライプ状の半導体層27と半導体層27との間の部分の絶縁層26内に設けられている。フィールドプレート部78は、半導体層27の長手方向に対して略平行に延在して絶縁層26内に埋め込まれている。
【0139】
フィールドプレート部78の長手方向の一端部は制御電極部77に接続され、他端部は接続部79に接続されている。接続部79は、フィールドプレート部78の他端部から絶縁層26表面上へと延びるピラー状に絶縁層26内に形成されている。接続部79の上端部表面は絶縁層26の表面上に露出し、その露出した部分に第2の主電極29が接している。
【0140】
フィールドプレート部78は、図16を参照して前述した導電材75の形成方法と同様な方法にて形成することができる。
【0141】
フィールドプレート部78の材料としては、例えば、多結晶シリコン、半絶縁性多結晶シリコン(SIPOS:semi-insulated polycrystalline silicon)など、第1の主電極28、第2の主電極29に用いられる例えば金属材料よりも抵抗が高い材料が用いられる。
【0142】
フィールドプレート部78の一端部は制御電極部77を介して制御電極30に接続され、フィールドプレート部78の他端部は接続部79を介して第2の主電極29に接続されているが、フィールドプレート部78は、比較的高抵抗な材料から形成されているため、制御電極30と第2の主電極29との間のリーク電流を実用上問題ない程度に抑えられる。
【0143】
フィールドプレート部78の長手方向の両端部は、それぞれ、低電位側の制御電極30と高電位側の第2の主電極29に接続されているため、制御電極30のスイッチングオフ時、フィールドプレート部78の一端部は低電位となり、他端部は高電位となる。フィールドプレート部78における両端部以外の部分は、両端部からの距離に応じた電位分布となる。すなわち、フィールドプレート部78において、制御電極30と第2の主電極29とをつなぐ長手方向に方向に、ゆるやかに変化する電位分布が得られる。なお、フィールドプレート部78の一端部は、第2の主電極29よりも低電位となる電極に接続させればよく、制御電極30に限らず、第1の主電極28に接続させてもかまわない。
【0144】
フィールドプレート部78は絶縁層26に埋め込まれている。このため、フィールドプレート部78からの上記電界を、半導体層27(特にドリフト領域60)の裏面側に作用させ、スイッチングオフ時における半導体層27の裏面側の電位を制御することができる。
【0145】
フィールドプレート部78は、半導体層27における高電位側と低電位側とをむすぶ長手方向に延在し、そのフィールドプレート部78には、前述したように長手方向にゆるやかな電位分布が生じるので、スイッチングオフ時に半導体層27の裏面側に長手方向に空乏層を伸展させることができ、電界の局所的な集中を抑制して高耐圧を得ることができる。
【0146】
本実施形態では、絶縁層26において、半導体層27の側方であって半導体層27が設けられていない部分にトレンチを形成してフィールドプレート部78を埋め込むという簡単なプロセスでフィールドプレート部78を絶縁層26内に埋め込み、そのフィールドプレート部78からの電界を半導体層27の裏面側にまわりこませて作用させることができる。特に短手方向の幅が微細な細線状の半導体層27においては、その半導体層27を短手方向から挟む位置関係で埋め込まれた一対のフィールドプレート部78間の距離が小さくなり、半導体層27の裏面に対向する位置に導電材がなくても、半導体層27の側方に埋め込まれたフィールドプレート部78からの電界を半導体層27の裏面全体に作用させやすい。
【0147】
絶縁層26に埋め込まれた制御電極部77やフィールドプレート部78によって半導体層27裏面側の電位を制御することで、半導体層27に対する半導体基板25の電位の影響を抑えることができる。そのことで、絶縁層26の薄膜化が図れ、反りを防止することができる。
【0148】
[第14の実施形態]
上記第12の実施形態、第13の実施形態ではMOSFETを説明したが、図20に示すようなIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0149】
IGBTでは、高電位側の第2の主電極29に接続された第2の半導体領域67がP+型であり、その第2の半導体領域67とドリフト領域60との間にN+型のバッファ領域68が形成されている。第2の半導体領域67とバッファ領域68とはPN接合している。
【0150】
このIGBTにおいて、制御電極30に所定の制御電圧が印加されたスイッチングオン時、第1の半導体領域57から電子が、第2の半導体領域67から正孔が注入され、ドリフト領域60にキャリアが蓄積し、伝導度変調が起こるので、オン抵抗を小さくできる。
【0151】
[第15の実施形態]
また、IGBTにおいて、図21に示すように、N型のバッファ領域69に対して絶縁膜を介して対向する制御電極40を設けてもよい。スイッチングオン時に、制御電極40からの制御電圧によってバッファ領域69にP型チャネルを形成して、第2の半導体領域67からドリフト領域60への正孔の注入を促進できる。
【0152】
この構造において、制御電極40に接続する導電材を絶縁層26内に設けることで、その導電材によってバッファ領域69の裏面側にも制御電極40の制御電圧を作用させることができ、バッファ領域69の裏面側にもチャネルを形成してオン抵抗の低減が図れる。
【0153】
その他、注入促進型絶縁ゲートトランジスタ(IEGT:Injection Enhanced Gate Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などにも本発明は適用可能である。さらには、光導波路、発光ダイオード、半導体レーザーなどの光学素子にも本発明は適用可能である。これら光学素子に、本発明の実施形態に例示される仮想バックゲート構造を適用した場合、半導体層の裏面側に発生する反転層、蓄積層、フリーキャリア、電界等を利用して、半導体層中の発光、光吸収、偏光、その他光学的特性を効果的に変調(制御)可能である。また、それら光学素子に、本発明の実施形態に例示される仮想フィールドプレート構造を適用した場合、光学素子に効果的に高い電圧を印加することが可能であり、また、光学素子以外の部分の電位(基板電位や制御回路部分の電位など)と上記光学素子部分との間の電位差によって生じる上記変調を阻止または緩和することができる。
【0154】
[第16の実施形態]
図22は、半導体材料として例えばシリコンを使った発光素子の構造を模式的に示す。
【0155】
半導体基板25の上に絶縁層26を介して半導体層が設けられ、その半導体層には、P+型の第1の半導体領域81と、N+型の第2の半導体領域82が形成され、これら半導体領域のPN接合面を含むその近傍はLOCOS(local oxidation of silicon)プロセスにより薄くされている。この薄くされたシリコン層(p型領域84及びn型領域85)におけるpnホモ接合部は発光特性を持つようになる。これは、極薄いシリコン層がシリコン酸化膜86とシリコン酸化膜26とに挟まれ、キャリアの量子閉じ込めが行われることによる効果である。
【0156】
ここで、図23(a)は、前述した図14(a)に対応する図である。図23(b)は図23(a)におけるA−A断面図である。図23に示す構造では、絶縁層26内に埋め込まれた導電材75が、半導体層27の裏面に対向する部分にまではみ出している。
【0157】
例えば、絶縁層26にトレンチを形成する図16(b)の工程において、等方性エッチングを行うことで半導体層27の下にも広がるトレンチを形成することができ、そのトレンチ内に導電材75を埋め込むことで図23に示す構造が可能である。
【0158】
この構造の場合、半導体層27の裏面に対向する部分にも導電材75が埋め込まれているため、半導体層27の裏面全体に対して、導電材75からの電界を作用させやすい。また、図23(c)に示すように、半導体層27の下全体に導電材75が埋め込まれていてもよい。
【0159】
また、図24は図18(b)に対応する図である。図24に示す構造では、絶縁層26内に埋め込まれた制御電極部77が、第3の半導体領域59の裏面に対向する部分にまではみ出しており、第3の半導体領域59の裏面全体に対して、制御電極部77からの電界を作用させやすい。また、第3の半導体領域59の下全体に制御電極部77が埋め込まれていてもよい。第3の半導体領域59の裏面と制御電極部77との間には絶縁膜が設けられる。あるいは、制御電極部77がSIPOS(semi-insulated polycrystalline silicon)などの高抵抗材料の場合、第3の半導体領域59の裏面と制御電極部77との間の絶縁膜を省略することも可能である。
【0160】
前述した各実施形態では、絶縁層の全領域にわたって導電材が埋め込まれているのではなく、必要な部分のみにトレンチが形成され選択的に導電材が埋め込まれている。したがって、半導体層の裏面側において必要な部分のみを局所的に電位コントロールすることができ、必要のない部分に導電材からの電界が作用することによる悪影響を回避できる。
【0161】
図14(b)、図18(b)に示すように、埋め込み層(導電材)の深さをd、半導体層を挟む位置関係で埋め込まれた一対の埋め込み層間の間隔をWとすると、d≧Wが望ましい。dが深く、Wが短いほど、埋め込み層の電位が等しく半導体層27と絶縁層26との界面に作用する。また、dが深く、Wが短いほど、基板電位の遮断効果も大きい。
【0162】
表面側の制御電極に接続された埋め込み層は、仮想的な裏面ゲートとして機能し、半導体層の裏面側に反転層や蓄積層を生じさせる。
【0163】
これに対して、フィールドプレートとして設けられた埋め込み層は、半導体層に対する基板電位の影響を遮断する。これにより、基板電位(例えばグランド電位)と半導体層の高電位側との間の電位差で生じる半導体層中の反転層もしくは蓄積層が抑制され、耐圧が高まる。
【0164】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0165】
SOI構造における半導体層はSiに限らず、GaN、SiCなどの化合物半導体、Geなどであってもよい。
【0166】
搬送や取り扱い性に支障がなければ、半導体基板を設けない、もしくは一部を除去した構成であってもよい。
【0167】
半導体部分の主電極に阻止状態の電圧を印加した場合における、半導体層を流れるリーク電流Idsに対するフィールドプレートを流れる電流Irの設計の一例を以下に示す。これは、仮想フィールドプレート構造を有する実施形態すべてに適用可能である。
静耐圧印加時のリーク電流を少なくすることが必要な場合、Ir=0、Ir≪Ids、Ir<Ids、または、IrとIdsとがほぼ同じ程度、になるように仮想フィールドプレートの構造や材質を設計するのが望ましい。
半導体素子の動特性(逆回復特性、スイッチング特性、スイッチング損失、スイッチングスピード他)や、埋め込み絶縁層の厚さ(より薄い埋め込み酸化膜構造での安定動作など)を重視する場合は、IrとIdsとがほぼ同じ程度、Ir=Ids、Ir>Ids、または、Ir≫Ids、とする設計でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図2】同第1の実施形態においてトレンチ及び導電材形成部分の他の具体例を表す模式断面図。
【図3】第2の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図4】第3の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図5】第4の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図6】第5の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図7】第6の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図8】実施形態に係る半導体装置においてトレンチ及び導電材が第1の絶縁層の内部に達していない構造を表す模式断面図。
【図9】第7の実施形態に係る半導体措置における要部構造を表す模式図。
【図10】第8の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図11】第9の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図12】実施形態に係る半導体装置をスイッチとして用いたフォトリレーの回路を表す模式図。
【図13】実施形態に係る半導体装置においてトレンチ及び導電材が第1の絶縁層の横方向に延びて形成された構造を表す模式断面図。
【図14】第10の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図15】絶縁層上にストライプ状に形成された半導体層の平面レイアウトを示す模式図。
【図16】第10の実施形態に係る半導体装置における導電材の形成方法の一例を示す模式図。
【図17】第11の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図18】第12の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図19】第13の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図20】第14の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図21】第15の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図22】第16の実施形態に係る半導体装置における要部構造を表す模式図。
【図23】第10の実施形態に係る半導体装置における導電材の変形例を示す模式図。
【図24】第12の実施形態に係る半導体装置における導電材の変形例を示す模式図。
【符号の説明】
【0169】
12…第1の絶縁層、13…半導体層、14…第2の絶縁層、15…第1の導電材(フィールドプレート部)、16…第2の導電材、17…絶縁膜、21…第1の半導体領域、22…第2の半導体領域、26…絶縁層、27…半導体層、28…第1の主電極、29…第2の主電極、30…制御電極、31…第1の主電極、32…第2の主電極、33…第1の主電極、34…第2の主電極、41…第1の半導体領域、42…第2の半導体領域、44…第3の半導体領域、45a…制御電極部、45b…フィールドプレート部、48…第1の主電極、49…第2の主電極、54…第1の半導体領域、55…第2の半導体領域、57…第1の半導体領域、58…第2の半導体領域、59…第3の半導体領域、75…導電材、77…導電材(制御電極部)、78…導電材(フィールドプレート部)、91〜93…導電材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上に設けられた半導体層と、
前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、
前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、
前記半導体層の上に設けられた第2の絶縁層と、
前記半導体層における前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の部分の上方の前記第2の絶縁層中に設けられた第1の導電材と、
前記第1の導電材に対向する部分の前記半導体層に設けられたトレンチ内に設けられ、前記第1の導電材に接し、かつ前記第1の絶縁層に達する第2の導電材と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の導電材は、一端が前記第1の主電極に接続され、他端が前記第2の主電極に接続されたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の半導体領域に接して前記半導体層に設けられ、前記第1の半導体領域とは逆導電型の第3の半導体領域をさらに備え、
前記第1の導電材は、前記第3の半導体領域の上方に設けられた制御電極部を有し、
前記第2の導電材は、前記制御電極部に対向する部分の前記第3の半導体領域に設けられたトレンチ内に設けられ、かつ前記第2の導電材の底部が前記第1の絶縁層側にあることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の導電材は、一端が前記制御電極部に接続され、他端が前記第2の主電極に接続されたフィールドプレート部をさらに有することを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられた半導体層と、
前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、
前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、
前記絶縁層内における少なくとも前記半導体層に対向しない部分に選択的に設けられた導電材と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の上に設けられた半導体層と、
前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、
前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、
前記半導体層の上に設けられた第2の絶縁層と、
前記半導体層における前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の部分の上方の前記第2の絶縁層中に設けられた第1の導電材と、
前記第1の導電材に対向する部分の前記半導体層に設けられたトレンチ内に設けられ、前記第1の導電材に接し、かつ前記第1の絶縁層に達する第2の導電材と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の導電材は、一端が前記第1の主電極に接続され、他端が前記第2の主電極に接続されたことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の半導体領域に接して前記半導体層に設けられ、前記第1の半導体領域とは逆導電型の第3の半導体領域をさらに備え、
前記第1の導電材は、前記第3の半導体領域の上方に設けられた制御電極部を有し、
前記第2の導電材は、前記制御電極部に対向する部分の前記第3の半導体領域に設けられたトレンチ内に設けられ、かつ前記第2の導電材の底部が前記第1の絶縁層側にあることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の導電材は、一端が前記制御電極部に接続され、他端が前記第2の主電極に接続されたフィールドプレート部をさらに有することを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられた半導体層と、
前記半導体層に選択的に設けられた第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に対して離間して、前記半導体層に選択的に設けられた第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域に接して設けられた第1の主電極と、
前記第2の半導体領域に接して設けられた第2の主電極と、
前記絶縁層内における少なくとも前記半導体層に対向しない部分に選択的に設けられた導電材と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−227474(P2008−227474A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29716(P2008−29716)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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