説明

半導体装置

【課題】 Cu配線から低誘電率材料(Low−k材料)絶縁膜へのCuの拡散を防止することができるとともに、Cu配線の抵抗の増大を防止することができる半導体装置を提供すること。
【解決手段】 半導体装置1では、SiOCからなる層間絶縁膜5には、配線溝8が形成されている。配線溝8の内面(ビアホール6の側面6Bおよびトレンチ7の側面7B)には、SiO2からなる第1バリア膜9が形成されている。配線溝8の内面(第1バリア膜9の表面、トレンチ7の底面7Aおよび第1Cu配線2の露出面)には、第2バリア膜10が形成されている。配線溝8には、Cu配線部19が埋設されている。Cu配線部19の配線溝8との対向面(Cu配線11の底面11Aおよび側面11B、ならびに接続ビア18の底面18Aおよび側面18B)は、第2バリア膜10で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、Cu(銅)を主成分とするCu配線を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化に伴い、配線のさらなる微細化が要求されてきている。配線の微細化による配線抵抗の増大を抑えるため、配線材料として、従来から用いられてきたAl(アルミニウム)に代えて、より導電性の高いCu(銅)を適用することが検討されている。
Cu配線は、Cuがドライエッチングなどによる微細なパターニングが困難であることから、いわゆるダマシン法によって形成される。このダマシン法では、まず、SiO2(酸化シリコン)からなる絶縁膜に、所定の配線パターンに対応した微細な配線溝が形成される。Cu膜は、配線溝を埋め尽くし、絶縁膜の表面全域を覆うような厚さに形成される。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、Cu膜が研磨される。このCu膜の研磨は、Cu膜の配線溝外の部分がすべて除去され、配線溝外の絶縁膜の表面が露出するまで続けられる。これにより、配線溝内にのみCu膜が残存し、配線溝内に埋設されたCu配線が得られる。
【0003】
ところが、Cuは、Alに比べて、絶縁膜への拡散性が高い。このため、絶縁膜上にCu配線(Cu膜)が直に形成されると、絶縁膜中にCuが拡散し、配線間の短絡などを生じるおそれがある。そのため、絶縁膜とCu配線との間には、Cuの絶縁膜への拡散を防止するためのバリア膜が必要となる。
このバリア膜を形成する手法として、たとえば、Cu膜の形成に先立ち、配線溝が形成された絶縁膜上にCuとMn(マンガン)との合金からなるCuMn合金膜を形成し、Cu膜の形成後に熱処理を行なうことにより、合金膜中のMnを絶縁膜との界面に拡散させて、その界面にMnxSiyz(x,y,z:零よりも大きい数)からなるバリア膜を形成する手法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、配線の微細化にともなって、配線間距離が短くなるため、近接する配線間の電気容量(配線間容量)が大きくなるという問題を生じる。この問題は、比誘電率の小さい、いわゆるLow−k材料(たとえば、SiOC、SiOFなど)を絶縁膜材料として用いることにより解決することができる。
【特許文献1】特開2005−277390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、Low−k材料からなる絶縁膜は、その内部に多数の空孔(ポア)が存在するので膜密度が小さいため、絶縁膜上にCuMn合金膜を形成すると、CuMn合金が絶縁膜中に容易に浸み込んでしまうという別の問題を生じる。また、配線溝の形成時に、空孔の一部が曝露することにより配線溝の内面に凹部が形成される場合がある。さらに、Low−k材料からなる絶縁膜は、SiO2からなる絶縁膜に比べてO(酸素)濃度が小さいため、MnxSiyzからなるバリア膜が形成されにくいという問題もある。
【0006】
これらの問題を解決するために、CuMn合金膜を厚く形成することが考えられる。しかし、CuMn合金膜の膜厚が厚くされると、MnxSiyzバリア膜の形成に必要なMn以上の余剰MnがCu配線中に拡散してしまい、Cu配線の配線抵抗が増大してしまう。
そこで、この発明の目的は、Cu配線から低誘電率材料(Low−k材料)絶縁膜へのCuの拡散を防止することができるとともに、Cu配線の抵抗の増大を防止することができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、SiO2より比誘電率の小さい低誘電率材料からなる絶縁膜と、前記絶縁膜に形成された配線溝と、前記配線溝の少なくとも側面上に形成され、SiO2またはSiCOからなる第1バリア膜と、前記配線溝に埋設されたCuを主成分とするCu配線と、前記Cu配線の前記配線溝との対向面を被覆し、Si、Oおよび所定の金属元素を含む化合物からなる第2バリア膜と、を含む、半導体装置である。
【0008】
この半導体装置では、SiO2より比誘電率の小さい低誘電率材料からなる絶縁膜には、配線溝が形成されている。配線溝の少なくとも側面上には、SiO2またはSiCOからなる第1バリア膜が形成されている。配線溝には、Cuを主成分とするCu配線が埋設されている。そして、Cu配線の配線溝との対向面を被覆するように、第2バリア膜が形成されている。
【0009】
第2バリア膜は、たとえば、所定の金属元素を含む金属膜(たとえば、CuMn合金膜)が配線溝内に形成され、所定の金属元素と絶縁膜または第1バリア膜中のSi、Oとが結合することにより形成される。このとき、配線溝の少なくとも側面上に、低誘電率材料より膜密度の大きいSiO2またはSiCOからなる第1バリア膜が形成されているため、金属膜の構成成分(たとえば、CuMn合金)が絶縁膜中に浸み込むことを防止することができる。そのため、金属膜の膜厚を薄くしても、第2バリア膜を構成するのに十分な量の金属膜の構成成分を確保することができる。
【0010】
なお、膜密度とは、絶縁膜および第1バリア膜の一定体積中において、膜の構成成分が占める体積のことである。すなわち、同じ体積の第1バリア膜および絶縁膜を比較した場合、膜密度の大きい第1バリア膜内には、空孔(ポア)などの空間部分が少ないことを意味する。
また、配線溝の内面(たとえば、側面)に凹部が形成されている場合であっても、その凹部が第1バリア膜で塞がれる構成にすることにより、金属膜が形成される面を平坦化させることができる。そのため、凹部を塞いで配線溝の内面を平坦化するために金属膜の膜厚を厚くする必要がない。すなわち、金属膜の膜厚を薄くすることができる。
【0011】
このように、金属膜の膜厚を薄くすることができるため、金属膜にCu配線の配線抵抗を増大させる抵抗成分(たとえば、Mn)が含まれている場合でも、当該抵抗成分は、第2バリア膜の構成成分として余ることなく使用される。そのため、MnのCu配線への拡散がない。その結果、Cu配線の配線抵抗が増大することを防止することができる。
また、Cu配線は、その配線溝との対向面が第2バリア膜で被覆されているので、Cu配線から絶縁膜へのCuの拡散を防止することができる。
【0012】
請求項2に記載されているように、前記所定の金属元素は、Mnであってもよい。この場合、Cu配線の配線溝との対向面を被覆する第2バリア膜は、MnxSiyz(x,y,z:零よりも大きい数)からなる。このとき、絶縁膜よりO(酸素)の含有量が多い膜を第1バリア膜とすれば、配線溝内に形成される金属膜中のMnを容易にOと反応させることができるので、効率よく第2バリア膜(MnxSiyz)を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を説明するための図解的な断面図であって、図1(a)は、半導体装置の配線構造の要部拡大図である。図1(b)は、図1(a)における円Aで囲まれる部分の拡大図である。
この半導体装置1は、ダマシン配線構造による多層配線を有する半導体装置であって、半導体基板(図示せず)上にダマシン法で形成された第1Cu配線2を備えている。
【0014】
第1Cu配線2は、Cu(銅)を主成分とするCu合金からなる。Cu合金としては、Cuと、たとえば、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)などの金属との合金が挙げられ、これら金属が2種以上併用されたCu合金でもよい。
第1Cu配線2上には、たとえば、SiC(炭化シリコン)からなる第1拡散防止膜3が積層されている。
【0015】
第1拡散防止膜3は、第1Cu配線2に含まれるCuが、後述する層間絶縁膜5に拡散することを防止するための膜である。第1拡散防止膜3には、その表面から膜厚方向に貫通する貫通孔4が形成されている。貫通孔4の形成により、第1Cu配線2は、その一部が第1拡散防止膜3から露出している。
第1拡散防止膜3の上には、層間絶縁膜5(絶縁膜)が積層されている。
【0016】
層間絶縁膜5は、SiO2(酸化シリコン 比誘電率k=4.0〜4.2)より比誘電率の小さい低誘電率材料(Low−k材料)からなる。このようなLow−k材料としては、たとえば、SiOC(炭素添加酸化シリコン、比誘電率k=3以下)、SiOF(フッソ添加酸化シリコン、比誘電率k=3以下)などが挙げられる。なお、この実施形態では、層間絶縁膜5は、SiOCからなる。
【0017】
SiOCの元素含有量は、たとえば、O(酸素)の含有量が38原子%〜46原子%、C(炭素)の含有量が23原子%〜37原子%である。また、SiOFの元素含有量は、たとえば、Oの含有量が55原子%〜57原子%、F(フッ素)の含有量が10原子%〜12原子%である。層間絶縁膜5をSiOCで形成することにより、たとえば、第1Cu配線2と第2Cu配線11(後述)との間の比誘電率を下げることができるので、第1Cu配線2および第2Cu配線11間の配線間容量の増大を防止することができる。
【0018】
層間絶縁膜5には、その表面から膜厚方向に貫通する配線溝8が形成されている。
配線溝8は、層間絶縁膜5の表層部に所定のパターン(配線パターン)で形成されたトレンチ7と、このトレンチ7の底面7Aにおける貫通孔4の直上の位置から、貫通孔4に達するビアホール6とを備えている。前述したように、層間絶縁膜5はSiOCからなるので、層間絶縁膜5の内部には、多数の空孔(ポア)が存在する。そのため、図1(b)に示すように、配線溝8の内面(この実施形態では、トレンチ7の側面7Bおよびビアホール6の側面6B)には、配線溝8の形成時にそれらの空孔の一部が曝露することにより、複数の凹部14が存在する場合がある。
【0019】
配線溝8の内面(この実施形態では、トレンチ7の側面7Bおよびビアホール6の側面6B)には、第1バリア膜9が形成されている。そのため、配線溝8の内面に凹部14が存在する場合であっても、この凹部14は、第1バリア膜9の一部で塞がれている(図1(b)参照)。
第1バリア膜9は、SiO2またはSiCO(酸素添加炭化シリコン)からなる。SiO2とは、SiOCに比べてO(酸素)含有量が多い材料である。また、SiO2からなる第1バリア膜9は、SiOCからなる層間絶縁膜5に比べて、その膜密度が大きい。なお、膜密度とは、第1バリア膜9および層間絶縁膜5の一定体積中において、膜の構成成分が占める体積のことである。すなわち、同じ体積の第1バリア膜9および層間絶縁膜5を比較した場合、膜密度の大きい第1バリア膜9内には、空孔(ポア)などの空間部分が少ないことを意味する。
【0020】
一方、SiCOとは、SiOCと元素組成が同じで、構成する元素の元素含有量が異なる材料である。より具体的には、SiCOの元素含有量は、たとえば、Cの含有量が50原子%〜70原子%、Oの含有量が4原子%〜11原子%である。また、SiCOからなる第1バリア膜9は、SiOCからなる層間絶縁膜5に比べて、その膜密度が大きい。なお、SiCOからなる絶縁膜として、SiOCからなる絶縁膜より、膜密度が大きく、且つ、Oの含有量が多い絶縁膜を形成することも可能であり、第1バリア膜9としては、このような絶縁膜であることが好ましい。
【0021】
第1バリア膜9上の領域を含む配線溝8の内面、より具体的には、第1バリア膜9の表面、トレンチ7の底面7Aおよび第1Cu配線2の露出面上には、第2バリア膜10が形成されている。
第2バリア膜10は、たとえば、MnxSiyz(x,y,z:零よりも大きい数)からなる。第2バリア膜10の膜厚は、トレンチ7の幅W1(平面視で長手方向と直交する方向の幅)およびビアホール6の幅(直径)W2によって異なるが、たとえば、トレンチ7の幅W1が100nm〜1000nm、ビアホール6の幅W2が100nm〜300nmの場合には、1.5nm〜25nmである。
【0022】
そして、第2バリア膜10が形成された配線溝8には、Cu配線部19が埋設されている。すなわち、Cu配線部19の配線溝8との対向面(この実施形態では、Cu配線11(後述)の底面11Aおよび側面11B、ならびに接続ビア18(後述)の底面18Aおよび側面18B)は、第2バリア膜10で被覆されている。
Cu配線部19は、第1Cu配線2と同様にCuを主成分とするCu合金からなり、トレンチ7に埋設されている第2Cu配線11と、ビアホール6に埋設されている接続ビア18とを一体的に備えている。Cu配線部19が配線溝8に埋設されていることにより、第2Cu配線11の配線構造は、ダマシン配線構造となっている。
【0023】
そして、Cu配線部19(第2Cu配線11)および層間絶縁膜5上には、前述の第1拡散防止膜3および層間絶縁膜5と同様に、SiCからなる第2拡散防止膜12およびSiOCからなる層間絶縁膜13が、この順に積層されている。第2拡散防止膜12および層間絶縁膜13には、図示されていないが、第2Cu配線11と同様のCu配線が形成されており、このCu配線は、接続ビア(図示せず)を介して第2Cu配線11と電気的に接続されている。
【0024】
なお、この半導体装置1には、図示および説明を省略するが、たとえば、外部との電気接続のための電極パッドなどが備えられている。
図2は、図1に示す半導体装置の製造方法を工程順に示す図解的な断面図である。
半導体装置1の製造に際しては、まず、半導体基板(図示せず)上に、第1Cu配線2がダマシン法で形成される。次に、図2(a)に示すように、第1Cu配線2上に、たとえば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、第1拡散防止膜3および層間絶縁膜5が順に形成される。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、層間絶縁膜5に、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により、配線溝8(ビアホール6およびトレンチ7)が形成される。これにより、第1拡散防止膜3の一部がビアホール6から露出する。
配線溝8が形成された後には、図2(c)に示すように、層間絶縁膜5の表面(配線溝8の内面を含む)および第1拡散防止膜3の露出面を覆うように、SiO2またはSiCOからなる酸化膜15が、たとえば、プラズマCVD法により形成される。酸化膜15が形成されることにより、配線溝8の内面に凹部14(図1(b)参照)が形成されていても、その凹部14は、酸化膜15によって塞がれる。
【0026】
次いで、図2(d)に示すように、酸化膜15および第1拡散防止膜3が、第1拡散防止膜3の膜厚方向にエッチングされる。これらの膜のエッチングは、たとえば、ドライエッチングにより達成される。これにより、層間絶縁膜5およびトレンチ7上の酸化膜15は除去されて、残存した酸化膜15がビアホール6の側面6Bおよびトレンチ7の側面7Bを覆う第1バリア膜9になる。また、第1Cu配線2上の第1拡散防止膜3が除去されて、第1Cu配線2の上面が露出する。
【0027】
続いて、図2(e)に示すように、たとえば、スパッタ法により、配線溝8の内面(第1バリア膜9の表面、トレンチ7の底面7Aおよび第1Cu配線2の露出面)を含む層間絶縁膜5の表面全域に、たとえば、CuとMnとの合金からなる合金膜16が被着される。この合金膜16には、たとえば、1原子%〜5原子%のMnが含まれている。また、合金膜16は、たとえば、トレンチ7の幅W1が100nm〜1000nm、ビアホール6の幅W2が100nm〜300nmの場合には、60nm〜100nmの膜厚となるように形成される。
【0028】
次に、図2(f)に示すように、たとえば、めっき法により、合金膜16(層間絶縁膜5)上に、Cu膜17が形成される。このCu膜17は、配線溝8を埋め尽くし、合金膜16の表面全域を覆う厚みで形成される。
その後、層間絶縁膜5、第1バリア膜9、合金膜16、Cu膜17などを含む構造物がアニール炉(図示せず)に搬入され、N2(窒素)雰囲気下において、たとえば、400℃の温度条件で30分間にわたる熱処理(アニール処理)が行なわれる。この熱処理によって、図2(g)に示すように、合金膜16中のMnが、層間絶縁膜5および第1バリア膜9中のSiおよびOと結合し、合金膜16と層間絶縁膜5および第1バリア膜9との界面に、MnxSiyz(x,y,z:零よりも大きい数)からなる合金膜16が形成される。
【0029】
次いで、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、Cu膜17および合金膜16が研磨される。この研磨処理は、図2(h)に示すように、Cu膜17および合金膜16の配線溝8外に形成されている不要部分がすべて除去される。つまり、配線溝8外の層間絶縁膜5の表面が露出し、その層間絶縁膜5の表面と配線溝8内のCu膜17の表面とが面一になるまで続けられる。これにより、配線溝8内にのみ、Cu膜17および合金膜16が残存し、配線溝8内に残存するCu膜17は、Cu配線部19となる。また、配線溝8内に残存する合金膜16は、Cu配線部19の配線溝8との対向面(Cu配線11の底面11Aおよび側面11B、ならびに接続ビア18の底面18Aおよび側面18B)を被覆する第2バリア膜10となる。
【0030】
続いて、図2(i)に示すように、第1拡散防止膜3および層間絶縁膜5と同様の方法により、第2拡散防止膜12および層間絶縁膜13が形成されて、半導体装置1が得られる。
以上のように、配線溝8の内面(トレンチ7の側面7Bおよびビアホール6の側面6B)には、SiOCより膜密度の大きいSiO2またはSiCOからなる第1バリア膜9が形成されている。そのため、第2バリア膜10を形成する際に配線溝8の内面に被着されたCuMn合金(合金膜16)が層間絶縁膜5中に浸み込むことを防止することができる。そのため、合金膜16の膜厚を薄くしても、第2バリア膜10を構成するのに十分な量のMnを確保することができる。
【0031】
また、配線溝8の内面(トレンチ7の側面7Bおよびビアホール6の側面6B)の一部に凹部14が存在する場合であっても、その凹部14は第1バリア膜9で塞がれるので、合金膜16が形成される面を平坦化させることができる。そのため、凹部14を塞いで配線溝8の内面を平坦化するために合金膜16の膜厚を厚くする必要がない。すなわち、合金膜16の膜厚を薄くすることができる。
【0032】
このように、合金膜16の膜厚を薄くすることができるため、合金膜16中のMnは、第2バリア膜10を形成する際に第2バリア膜10の構成成分として余ることなく、SiおよびOと結合する。そのため、Mnの第2Cu配線11への拡散がない。その結果、第2Cu配線11の配線抵抗が増大することを防止することができる。
また、Cu配線部19は、その配線溝8との対向面(Cu配線11の底面11Aおよび側面11B、ならびに接続ビア18の底面18Aおよび側面18B)が、第2バリア膜10で被覆されている。そのため、Cu配線部19から層間絶縁膜5へのCuの拡散を防止することができる。
【0033】
さらに、同一体積中における、第1バリア膜9(SiO2またはSiCO)のOの含有量と層間絶縁膜5(SiOC)のOの含有量とを比較すると、第1バリア膜のOの含有量の方が多い。そのため、合金膜16中のMnを容易にOと反応させることができるので、効率よく第2バリア膜10(MnxSiyz)を形成することができる。
以上、この発明の一実施形態を説明したが、この発明は他の実施形態で実施することもできる。
【0034】
たとえば、前述の実施形態では、第1バリア膜9は、ビアホール6の側面6Bおよびトレンチ7の側面7Bに形成されているとしたが、図3に示すように、第1バリア膜9は、配線溝8の内面全面(ビアホール6の側面6B、トレンチ7の側面7Bおよびトレンチ7の底面7A)に形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、層間絶縁膜5は、SiOCからなるとしたが、層間絶縁膜5は、SiOFで形成されていてもよい。
【0035】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を説明するための図解的な断面図であって、図1(a)は、配線構造の要部拡大図である。図1(b)は、図1(a)における円Aで囲まれる部分の拡大図である。
【図2】図1に示す半導体装置の製造方法を工程順に示す図解的な断面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造を説明するための図解的な断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 半導体装置
5 層間絶縁膜
6 ビアホール
6B 側面
7 トレンチ
7A 底面
7B 側面
8 配線溝
9 第1バリア膜
10 第2バリア膜
11 第2Cu配線
11A 底面
11B 側面
15 酸化膜
16 合金膜
17 Cu膜
18 接続ビア
18A 底面
18B 側面
19 Cu配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2より比誘電率の小さい低誘電率材料からなる絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成された配線溝と、
前記配線溝の少なくとも側面上に形成され、SiO2またはSiCOからなる第1バリア膜と、
前記配線溝に埋設されたCuを主成分とするCu配線と、
前記Cu配線の前記配線溝との対向面を被覆し、Si、Oおよび所定の金属元素を含む化合物からなる第2バリア膜と、を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記所定の金属元素は、Mnである、請求項1に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−294040(P2008−294040A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135160(P2007−135160)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】