半導体装置
【課題】抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性をなくす。
【解決手段】基板領域(25A,25B)上に互いに直列に接続される抵抗素子(R1、R2)において、抵抗素子の基板領域と対応の抵抗素子の間の平均電位が逆極性でかつ大きさが等しくなるように、抵抗素子端部と対応の基板領域とをバイアス配線(27A,27B)で接続する。
【解決手段】基板領域(25A,25B)上に互いに直列に接続される抵抗素子(R1、R2)において、抵抗素子の基板領域と対応の抵抗素子の間の平均電位が逆極性でかつ大きさが等しくなるように、抵抗素子端部と対応の基板領域とをバイアス配線(27A,27B)で接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関し、特に、ポリシリコン抵抗などの抵抗素子を利用する半導体装置に関する。より特定的には、この発明は、ポリシリコン抵抗などの抵抗素子の基板電圧依存性を抑制する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路装置において、種々の部分において抵抗素子が利用される。抵抗素子は、回路の所望の動作特性を実現するために、その抵抗値を正確に維持することが要求される。通常、抵抗素子として、不純物層(拡散層)の抵抗を利用する拡散抵抗を用いた場合、この拡散抵抗が形成されるウェル領域との間の電位差により、空乏層の大きさが異なり、応じて拡散抵抗の抵抗値が変動する。
【0003】
このような拡散抵抗の基板電圧依存性を抑制することを図る構成が、特開2001−168651号公報(特許文献1)に示されている。この特許文献1に示される構成においては、エピタキシャル層上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜上に、ポリシリコンなどで構成される抵抗素子を配置する。抵抗素子上層に、他の配線などからのノイズを防止するためのシールド膜が配置される。抵抗素子が直列に接続される場合、すなわち、たとえばオペアンプ(演算増幅器)の入力抵抗および帰還抵抗として抵抗素子が利用される場合、シールド層と抵抗素子の間の電圧極性が、これらの抵抗素子において同一となるようにシールド層を抵抗素子の一端に接続する。エピタキシャル層は、フローティング状態とされる。
【0004】
この特許文献1においては、シールド層と抵抗素子との間の電圧極性を、オペアンプの入力抵抗および帰還抵抗で等しくすることにより、入力抵抗の抵抗値および帰還抵抗の抵抗値の変動を同じとする。この抵抗比を一定値に維持することにより、オペアンプの増幅率を一定にすることを図る。また、エピタキシャル層には、基板バイアス電圧を印加しない構成とすることにより、基板バイアス印加用の領域および配線を不要として、配線の簡略化および抵抗回路の小型化を実現することを図る。
【特許文献1】特開2001−168651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ポリシリコン抵抗を抵抗素子として利用する場合、拡散抵抗に比べてその抵抗値の基板電圧依存性は小さいものの、依然存在する。したがって、このようなポリシリコン抵抗素子の抵抗値が基板電圧依存性を有する場合、抵抗両端間に印加される電圧が変化する場合、基板領域と抵抗素子との間の電圧が変化し、抵抗素子の抵抗値が変化し、また、この抵抗素子を利用する半導体装置の動作特性が変動する。特に、オペアンプに利用した場合、その増幅率が、その抵抗値の基板電圧依存性に応じて変動し、出力信号波形は、理想応答特性の波形からずれ、増幅器の出力信号に歪が生じる。特に、近年のように、画像または音声処理などの高精度が要求される用途においては、この歪成分は、大きな問題となる。
【0006】
上述の特許文献1に示される構成においては、エピタキシャル層上に絶縁膜を介してポリシリコン抵抗を配置し、このポリシリコン抵抗の一端を、ポリシリコン抵抗を覆うように配置されるシールド層に接続する。直列接続される抵抗素子において、このシールド層と抵抗素子の間の電圧極性は同一とされ、シールド層と抵抗素子との間の電圧差に起因する抵抗値の変動を、抵抗素子列全体として相殺することを図る。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に示される構成においては、絶縁膜下部に形成されるエピタキシャル層に対しては、バイアス電圧は印加されず、フローティング状態とされる。したがって、この基板領域のエピタキシャル層の電位が不安定となり、ノイズなどにより、エピタキシャル層の電位が変動した場合、電位変動が絶縁膜を介して抵抗素子に伝達され、この抵抗素子が構成する回路の特性が不安定となる。この特許文献1は、このエピタキシャル層の電位を固定する場合の構成については何ら考察していない。また、このシールド層を抵抗素子の一端に接続した場合、このシールド層の電位は、入力信号に応じて変化し、固定されていないため、このシールド層の電位変動が、別の回路に対するノイズ源として作用する可能性がある。
【0008】
それゆえ、この発明の目的は、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性の影響を確実に抑制することのできる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る半導体装置は、それぞれが、基板領域上に形成され、抵抗値が基板領域の電圧に対し依存性を有する複数の互いに直列接続される抵抗素子を含む。これらの複数の抵抗素子の直列に接続される一対の抵抗素子において、抵抗素子と基板領域との間の電圧極性が逆となるように、各抵抗素子の一端を対応の基板領域に接続する。
【発明の効果】
【0010】
直列に接続される抵抗素子において、基板領域と抵抗素子の間の電圧極性が逆である。従って、直列に接続される抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性が抑制または相殺され、等価的に、直列接続される抵抗素子全体の抵抗値の基板電圧依存性をなくすことができる。
【0011】
したがって、オペアンプなどの入力抵抗および/または帰還抵抗にこの抵抗素子を適用することにより、オペアンプの抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性に起因する信号歪を抑制でき、高精度の増幅回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は、この発明において利用される抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図1において、抵抗素子を構成する矩形形状のポリシリコン抵抗体1は、素子分離膜2上に配置される。この素子分離膜2は、たとえばシャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)膜である。素子分離膜2周辺に基板領域(図1には示さず)表面に、高濃度不純物領域3が設けられる。この高濃度不純物領域3は、一例として、P型不純物が高濃度に注入された高濃度P型不純物層である。この高濃度不純物領域3を介して、この下部に形成されるウェル領域(基板領域)に対し基板バイアス電圧が供給される(基板に対する電圧供給地用については後に詳細に説明する)。P型不純物領域3が利用されるのは、抵抗体1のポリシリコンは、その抵抗値を調整するために、P型不純物が注入されたP型ポリシリコンであるためである。また、抵抗素子の基板領域を構成するウェルは、P型ウェルである。
【0013】
素子分離膜2上に抵抗素子を形成するポリシリコン抵抗体1を配置することにより、拡散抵抗の場合と異なり、基板電位の影響を抑制する。ポリシリコン抵抗体1の両端に、コンタクト4aおよび4bが設けられ、それぞれ低抵抗の配線を介して他の素子または抵抗体と接続される。
【0014】
図2は、図1に示す線L2−L2に沿った断面構造を概略的に示す図である。図2において、Pウェル5表面に、素子分離膜2が形成され、この素子分離膜2の両側に、高濃度不純物領域3aおよび3bが配置される。高濃度不純物領域3aおよび3bは、図1に示す高濃度不純物領域3に対応する。素子分離膜2上に、ポリシリコン抵抗体1が配置される。Pウェル5には、高濃度不純物領域3(3a,3b)を介して電圧が供給される。
【0015】
図3は、図1に示す線L3−L3に沿った断面構造を概略的に示す図である。図3に示すように、ポリシリコン抵抗体1の長さ方向においても、素子分離膜2がPウェル5表面に形成され、素子分離膜2両端に、高濃度不純物領域3cおよび3dが設けられる。これらの高濃度不純物領域3cおよび3dは、図1に示す高濃度不純物領域3に対応する。抵抗体1の両端にコンタクト4aおよび4bが配置され、これらのコンタクトにより配線と抵抗体とが電気的に接続される。
【0016】
これらの図2および図3に示すように、素子分離膜2の周辺に、高濃度不純物領域3(3a−3d)を配置し、下部に形成されるPウェル5に電圧を供給する。ポリシリコン抵抗体1が形成される場合、通常の半導体集積回路装置においては、MOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)のゲート電極形成工程と同一工程で、このポリシリコン抵抗体1が形成される。MOSトランジスタは、半導体基板領域に形成され、また、抵抗体1も基板領域(ウェル)上に形成される。
【0017】
半導体集積回路装置において微細化が進むと、この素子分離膜(STI膜)2の膜厚も薄くされ、ポリシリコン抵抗体1とPウェル5の間に、ポリシリコン抵抗体1に供給される電圧に応じて電圧差が生じる。ポリシリコン抵抗体1とPウェル5の間の電圧差に応じて、この素子分離膜2において電圧が印加される。この素子分離膜2に電界が形成され、ポリシリコン抵抗体1と素子分離膜界面において形成される電界が、抵抗体1に印加される電圧に応じて変化し、応じてポリシリコン抵抗体1の抵抗値が異なると予想される(抵抗体1における空乏層または垂直方向電界の変動による)。
【0018】
図4は、このポリシリコン抵抗体1を利用する抵抗素子10の基板電圧依存性を測定する接続構成の一例を示す図である。図10において、抵抗素子10は一端NAに、電源V1の正電圧が供給され、抵抗素子10の他方端NBが接地ノードに結合される。この抵抗素子10の基板領域(Pウェル)には、可変電源V2の電圧が供給される。ここで、抵抗10を三端子素子としてモデル化して、基板電圧V2に対する抵抗値の変化を測定して、抵抗10の抵抗値の基板電位依存性を測定する。
【0019】
図5は、図4に示す回路における抵抗素子10の抵抗値と基板電位との関係を示す図である。この図5において横軸に基板電圧(V2)を示し、縦軸に、抵抗素子10の抵抗比R/R0を示す。ここで、抵抗値R0は、基板電圧V2が0Vの場合の抵抗素子10の抵抗値である。
【0020】
この図5に示すように、基板電圧が−VAから+VAに従って変化するにつれ、その抵抗比R/R0は、0.9999から1.0001までほぼ直線的に変化する。この場合、抵抗素子10の抵抗値Rは、一次近似で、次式で表わすことができる:
R=R0(1+k・Vx)、
k:基板電圧依存性の一次係数、
Vxは、基板(Pウェル)からの抵抗素子の両端ノードに対する平均電位を示し、次式で表わされる:
Vx=(V(NA)+V(NB))/2−V2、
V(NA)およびV(NB)は、それぞれ、図4に示すノードNAおよびNBの電位を示す。
【0021】
抵抗素子10の三端子モデルにおいて、抵抗値Rの基板電圧依存性は小さいため、高次の基板電圧依存係数は無視することができる。
【0022】
この図5に示すように、抵抗素子10の抵抗値Rは、その度合いは小さいものの、基板電圧V2に対し依存性を有している。したがって、この抵抗素子の抵抗値が動作特性に影響を及ぼすような回路においては、この基板電圧依存性により歪が生じ、高精度を要求される回路装置において適用すれば、この歪は、無視することのできない歪となり、回路装置の信頼性が低下する。
【0023】
図6は、この発明の実施の形態1に従う抵抗回路の構成を概略的に示す図である。図6において、ノードAおよびCの間に、抵抗素子R1およびR2が直列に接続される。これらの抵抗素子R1およびR2は、抵抗値は互いに等しくRであり、同一材料で形成され、同じ基板電圧依存性を有する。今、ノードA、ノードCの電圧をそれぞれ、VaおよびVcとする。この場合、抵抗素子R1およびR2の接続ノードBの電圧Vbは、次式で表わされる:
Vb=(Va+Vc)/2
抵抗素子R1においては、その基板領域(ウェル)が、ノードAに電気的に接続され、基板電圧は、電圧Vaに設定される。一方、抵抗素子R2については、その基板領域が、ノードCに接続され、その基板電圧が、電圧Vcに設定される。
【0024】
この場合、ノードAおよびB間の基板からの平均電位Vx(AB)は、次式で表わされる:
Vx(AB)=(Va+Vb)/2−Va
=(−Va+Vc)/4
一方、ノードBおよびC間の基板からの平均電位Vx(BC)は、次式で表わされる:
Vx(BC)=(Vb+Vc)/2−Vc
=−(−Va+Vc)/4
したがって、この抵抗素子R1およびR2の基板からの平均電位Vx(AB)およびVx(BC)は、その絶対値が等しく符号が反対である。
【0025】
したがって、図7に示すように、ノードAB間の基板からの平均電位Vx(AB)とノードBC間の基板からの平均電位Vx(BC)に対して、その抵抗比の変化は、それぞれ、値は等しく、符号は反対となる。すなわち、前述の抵抗素子の抵抗値Rの基板電圧依存を示す式に代入すると、抵抗素子R1およびR2については、次式が成立する:
R1=R0(1+k・Vx(AB))
=R0(1+k・Vx(AB))
=R0(1+k・((−Va+Vc)/4))、
R2=R0(1+k・Vx(BC))
=R0(1−k((−Va+Vc)/4))
上式から、これらの抵抗素子R1およびR2の基板電圧依存性は互いに大きさが等しく、変化方向の符号が逆である。したがって、抵抗素子R1およびR2で形成される合成抵抗R1+R2は、基板電圧依存性が相殺され、上述の式から、R1+R2=2・R0となり、基板電圧に依存しない一定の値を有する抵抗が実現される。
【0026】
図8は、図6に示す抵抗素子R1およびR2の平面レイアウトを概略的に示す図である。図8において、抵抗素子R1およびR2は、それぞれ別々に設けられるPウェル25Aおよび25B内に形成される。Pウェル25A表面に、高濃度P型不純物領域23Aが形成される。この高濃度不純物領域23Aに囲まれるように矩形形状の素子分離膜(STI膜)22Aが形成され、この素子分離膜22A上にたとえばポリシリコンで形成される抵抗体21Aが配置される。抵抗体21Aは、コンタクト24aを介して例えば第1メタル配線で形成される接続配線26Aに電気的に接続される。この接続配線26Aにより抵抗素子の一端がノードAに接続される。
【0027】
素子分離膜22AのノードA側の外部において、第1メタル配線で形成されるバイアス配線27Aが配置され、このバイアス配線27Aが、接続配線26Aと接続される(連結される)。バイアス配線27Aは、コンタクト28Aを介して下層の高濃度P型不純物領域23Aに接続される。バイアス配線27Aにより、抵抗素子R1の基板電圧が、ノードAに応じた電圧レベルに設定される。
【0028】
一方、Pウェル25Bにおいて、矩形形状の素子分離膜22Bが、その表面に形成され、高濃度P型不純物領域23Bが、素子分離膜22Bを囲むようにPウェル25B表面に配置される。素子分離膜22B上に、たとえばポリシリコンで形成される抵抗体21Bが配置される。抵抗体21Aおよび21Bは、その形状およびサイズが同一とされ、基板電圧非印加時の抵抗値が互いに等しくされる。抵抗体21Bは、第1メタル配線で形成される接続配線26Cとコンタクト24cを介して電気的に接続され、抵抗素子R2の一端がノードCに接続される。
【0029】
素子分離膜22BのノードC側の外部に第1メタル配線で形成されるバイアス配線27Bが配置され、接続配線26Cおよびバイアス配線27Bが連結される。このバイアス配線27Bは、また、コンタクト28Bを介して下層の高濃度P型不純物領域23Bに電気的に接続される。このバイアス配線27Bにより、ノードCの電圧レベルに、基板領域(Pウェル25B)の電圧レベルが設定され、抵抗素子R2の基板電圧が設定される。
【0030】
これらの抵抗体21Aおよび22Bは、また、コンタクト24bおよび24dそれぞれを介して第1メタル配線で構成される接続配線26Bに電気的に接続され、抵抗体21Aおよび21BがノードAおよびCの間に直列に接続される。
【0031】
高濃度不純物領域23Aおよび23Bとバイアス配線27Aおよび27Bとをそれぞれ電気的に接続することにより、抵抗素子R1およびR2の基板領域をそれぞれ構成するPウェル25Aおよび25Bの電圧が、ノードAおよびノードCの電圧レベルに設定される。また、抵抗素子R1およびR2の基板電圧は異なる電圧レベルであり、Pウェル25Aおよび25Bを互いに分離して配置することにより、それぞれノードAおよびノードCの異なる電圧レベルに抵抗素子R1およびR2の基板電圧を設定することができる。
【0032】
また、バイアス配線27Aおよび27Bを抵抗体と並行に、長い矩形形状に形成することにより、基板領域(ウェル)25Aおよび25Bに対して安定に電圧を供給することができ、基板領域(ウェル)においてウェルの抵抗により電圧分布が生じるのを回避することができ、ウェル全体にわたって同一電圧レベルにウェル電圧を設定することができる。
【0033】
図9は、図8に示す線L9−L9に沿った断面構造を概略的に示す図である。図9において、P型基板30上に、Nウェル29が形成される。このNウェル29表面に、Pウェル25Aおよび25Bが、それぞれ、離れて配置される。Nウェル29によりPウェル25Aおよび25Bが分離され、それぞれの電圧レベルを個々に設定することができる。
【0034】
Pウェル25A表面に、素子分離膜22Aが形成され、また、素子分離膜22Aを囲むように、高濃度P型不純物領域23A(23Aa,23Ab)が形成される。高濃度P型不純物領域22Aは、その一方側の不純物領域22Aaにおいて、コンタクト28Aを介してバイアス配線27Aに電気的に接続される。このバイアス配線27Aは、また第1メタル配線26Aと電気的に接続される(同一配線層の配線であり、互いに連結される)。接続配線26Aは、また、素子分離膜22A表面に形成される抵抗体21Aに、コンタクト24Aを介して電気的に接続される。
【0035】
一方、Pウェル25B表面に高濃度P型不純物領域23B(23Ba,23Bb)が、素子分離膜22Bを囲むように配置される。この素子分離膜22B上にたとえばポリシリコンで形成される抵抗体21Bが配置される。抵抗体21Bは、第1メタル配線で形成される接続配線26Cとコンタクト24cを介して電気的に接続される。高濃度P型不純物領域23Bは、その一方側の領域23Bbにおいて、コンタクト28Bを介してバイアス配線27Bに電気的に接続される。このバイアス配線27Bは接続配線26Bと同一配線層の第1メタルで構成され、互いに連結される。
【0036】
図9に示すように、PウェルおよびNウェルのトリプルウェル構造を利用して、抵抗素子R1およびR2を配置することにより、抵抗素子R1およびR2の基板領域を個々に分離して配置することができ、それぞれの基板電圧を個々に設定することができる。
【0037】
なお、図9においては、抵抗素子R1およびR2の基板領域を形成するPウェル25Aおよび25Bを、トリプルウェル構造を利用して互いに分離している。しかしながら、このPウェル25Aおよび25Bそれぞれの下層にボトムNウェルを設け、また、Pウェル25Aおよび25Bそれぞれの側壁を囲むようにサイドN型層またはトレンチ分離膜を形成して、これらのPウェル25Aおよび25Bを分離する構成が利用されてもよい。
【0038】
以上のように、この発明の実施の形態1に従えば、互いに直列に接続ノードを介して接続される抵抗素子の基板領域を、それぞれ接続ノードと対向する非接続ノードに接続している。これにより、直列に接続される抵抗素子の基板領域と抵抗素子との間の平均電圧差を、互いに符合が異なるとともに同じ大きさに設定することができる。これにより、抵抗素子の抵抗変化を、入力信号の電位に関わらず、互いに相殺することができ、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性をなくすことができる。
【0039】
[実施の形態2]
図10は、この発明の実施の形態2に従う抵抗素子の接続を示す図である。図10において、抵抗素子R1およびR2は、ノードAおよびC間に直列に接続される。抵抗素子R1およびR2の間の接続ノードBは、これらの抵抗素子R1およびR2の基板領域に電気的に接続される。抵抗素子R1およびR2は、互いに等しい抵抗値Rを有する。
【0040】
この図10に示す抵抗素子R1およびR2の基板電圧供給態様においては、この抵抗素子R1およびR2の基板領域からの平均電位Vx(AB)およびVx(BC)は、それぞれ、次式で表わされる。
【0041】
ノードAB間の基板からの平均電位:
Vx(AB)=(Va+Vb)/2−Vb
=−(−Va+Vc)/4、
ノードBC間の基板からの平均電位:
Vx(BC)=(Vb+Vc)/−Vb
=(−Va+Vc)/4
したがって、この図10に示す抵抗素子の基板領域の接続態様においては、図11に示すように、ノードBC間の基板からの平均電位Vx(BC)とノードAB間の基板からの平均電位Vx(AB)は、実施の形態1と逆の態様であるものの、その絶対値が等しく、符号が逆である。従って、抵抗素子R1およびR2は、基板電圧非印加時の抵抗値が等しいため、抵抗比の変化率が、応じて、符号が反対で大きさが同じとなる。したがって、図10に示す接続態様においても、抵抗素子R1およびR2の合成抵抗2・Rは、その基板電圧依存性を相殺することができ、ノードAおよびC間の抵抗値を、安定に基板電圧に依存しない一定値に保持することができる。
【0042】
図12は、図10に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図12において、抵抗素子R1およびR2に共通に、Pウェル35およびP型高濃度不純物領域33が設けられる。Pウェル35表面に互いに間をおいて、同じ矩形形状の素子分離膜22Aおよび22Bが配置される。これらの素子分離膜(STI膜)22Aおよび22Bは、高濃度不純物領域33によりそれぞれ囲まれる。
【0043】
素子分離膜22Aおよび22B上に、ポリシリコンで構成される矩形形状の抵抗体21Aおよび21Bがそれぞれ配置される。抵抗体21Aは、コンタクト24aを介して接続配線26Aに電気的に接続され、また抵抗体21Bが、コンタクト24dを介して接続配線26Cに電気的に接続される。抵抗体21Aおよび21Bは、それぞれ、コンタクト24bおよび24cを介して接続配線26Bに電気的に接続され、これにより、抵抗素子R1およびR2が直列に接続される。
【0044】
素子分離膜22Aおよび22Bの間の領域において抵抗体21Aおよび21Bと並行に、矩形形状のバイアス配線37が配置される。このバイアス配線37は、例えば第1メタル配線で構成され、第1メタル配線で構成される接続配線26Bと連結される。このバイアス配線37は、コンタクト38を介して高濃度不純物領域33に電気的に接続される。抵抗素子R1およびR2を形成する素子分離膜22Aおよび22Bの間に、バイアス配線37を配置することにより、抵抗素子R1およびR2の接続ノードBの電位を、これらの抵抗素子R1およびR2の基板電圧に設定することができる。
【0045】
バイアス配線としては、抵抗素子R1およびR2に共通に1本配置されるだけであり、これらの抵抗素子R1およびR2で構成される抵抗回路のレイアウト面積を低減することができる。また、ウェルも、抵抗素子R1およびR2に共通に配置され、ウェル分離の領域が不要となり、抵抗素子R1およびR2の全体のレイアウト面積を低減することができる。
【0046】
図13は、図12に示す線L13−L13に沿った断面構造を概略的に示す図である。この図13において、P型基板30表面にN型ウェル29が形成され、このNウェル29表面にPウェル35が配置される。Pウェル35表面に、素子分離膜22Aおよび22Bが、互いに間をおいて配置される。これらの素子分離膜22Aおよび22B各々を取囲むように、Pウェル35表面に高濃度P型不純物領域33が形成される。
【0047】
素子分離膜22Aおよび22B上にポリシリコンで構成される抵抗体21Aおよび21Bがそれぞれ配置される。抵抗体21Aおよび21Bは、それぞれ、コンタクト24bおよび24cを介して接続配線26Bに電気的に接続される。一方、接続配線26Bは、素子分離膜22Aおよび22Bの間の領域においてバイアス配線37に連結される。バイアス配線37が、下部に配置される高濃度不純物領域33に、コンタクト38を介して電気的に接続される。
【0048】
この図13に示す構成の場合、抵抗体21Aおよび21Bそれぞれに対してPウェルを分離する必要はなく、ウェル分離領域は不要となり、また、バイアス配線も1本である。したがって、抵抗素子の全体のレイアウト面積を、より低減することができ、小占有面積で全体として基板電圧依存性の見えない抵抗素子を実現することができる。
【0049】
以上のように、この発明の実施の形態2に従えば、直列接続される抵抗素子の接続ノードの電位を基板電圧として利用している。したがって、直列接続される抵抗素子それぞれに、バイアス配線を配置する必要がなく、また、基板領域(Pウェル)を分離する必要がなく、レイアウト面積が低減される。また、実施の形態1と同様、直列接続される抵抗素子の全体としての抵抗値の基板電圧依存性をなくすことができる。
【0050】
[実施の形態3]
図14は、この発明の実施の形態3に従う抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図14において、抵抗素子R1およびR2が、実施の形態2と同様、ノードAおよびCの間に直列に接続され、抵抗素子R1およびR2の接続ノードBの電位が、高濃度不純物領域42を介してPウェル45に伝達される。抵抗素子R1およびR2の平面レイアウトは、図12に示す平面レイアウトにおいて接続配線26Aおよび26Cが、図の縦方向に延在する点を除いて同じである。図14において、これらの抵抗素子R1およびR2の図12に示す平面レイアウトと対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0051】
図14に示す平面レイアウトにおいては、さらに、素子分離膜22Aの外部に、Pウェル表面に素子分離膜42Aおよび42Bが配置され、また、素子分離膜22B外部に、Pウェル表面に素子分離膜42Cおよび42Dが配置される。これらの素子分離膜42A−Dと素子分離膜22Aおよび22Bは、抵抗素子を構成する素子分離膜22Aおよび22Bと同一ピッチでかつ同一形状で配置され、また、同一材料で形成される。これらの素子分離膜42A−42D上に、ポリシリコンで形成される抵抗体41A−41Dがそれぞれ配置される。これらの抵抗体41A−41Dの、抵抗体21Aおよび21Bと同じ形状を有し、かつ同一材料で形成される。
【0052】
抵抗体42Aおよび42B各々が、コンタクト44aおよび44bを介して第1メタル配線で構成されるダミー接続配線46Aにそれぞれの一端が接続され、また、コンタクト44cおよび44dを介してそれぞれの他端がダミー接続配線46Bに接続される。これらのダミー接続配線46Aおよび46Bは、たとえば第1メタル配線で構成される配線47Aに共通に接続され、ノードDを介して接地ノードに結合される。
【0053】
抵抗体41Cおよび41Dは、それぞれの一方側端部においてコンタクト44eおよび44fを介してそれぞれ共通に、ダミー接続配線46Cに接続され、また、他方側端部において、コンタクト44gおよび44hを介してダミー接続配線46Dに共通に接続される。これらのダミー接続配線46Cおよび46Dは、各々第1メタル配線で構成され、第1メタル配線で形成されるダミー配線47Bに共通に連結される。接続配線47Bは、ノードEを介して接地ノードに結合される。ダミー接続配線46Aおよび46Cと接続配線26Bは、同一材料で同じ形状に形成され、等間隔に互いに分離される。
【0054】
この図14に示す配置の場合、抵抗体41Aおよび41B、41Cおよび41Dは、それぞれ両端が接地電圧に固定され、ダミー素子として利用される。このダミー素子を、抵抗素子R1およびR2と同じパターンおよびピッチで配置する。このダミー素子の配置によるパターンの繰返しにより、製造工程時におけるマスクずれおよび周辺部でのパターニング歪などの影響を抑制して、高精度で、抵抗素子R1およびR2をパターニングする。抵抗素子R1およびR2の抵抗体および素子分離膜の正確なパターニングにより、所望の抵抗値を有する抵抗素子を正確に実現することができる。
【0055】
この図14に示す抵抗素子R1およびR2の抵抗値の基板電圧依存性は、実施の形態2に示す構成の場合と同じであり、その詳細説明は省略する。
【0056】
以上のように、この発明の実施の形態3に従えば、抵抗素子の直列体の配置領域外部に隣接して、抵抗素子の直列体と同じパターンのダミー素子を配置している。これにより、抵抗素子のパターニングに対するパターンの規則性が維持され、正確に抵抗素子R1およびR2をパターニングして高精度で所望の抵抗値を有する抵抗素子を実現することができる。
【0057】
[実施の形態4]
図15は、この発明の実施の形態4に従う抵抗の接続態様を示す図である。図15において、ノードAおよびノードBの間に抵抗素子Z1およびZ2が直列に接続され、また、ノードBおよびCの間に、抵抗素子Z3およびZ4が直列に接続される。抵抗素子Z1およびZ2の基板領域は、ノードAと電気的に接続され、抵抗素子Z3およびZ4の基板領域は、ノードCに電気的に接続される。抵抗素子Z1−Z4は、抵抗値Rを有する。
【0058】
この図15に示す抵抗の接続態様は、ノードAおよびBの間に接続される抵抗素子R1を、抵抗素子Z1およびZ2に分割し、また、ノードBおよびCに接続される抵抗素子R2を、抵抗素子Z3およびZ4に分割した構成と等価である。抵抗素子Z1、Z2、Z3およびZ4のそれぞれの基板領域からの平均電位Vx(Z1)、Vx(Z2)、Vx(Z3)およびVx(Z4)は、ノードA、BおよびCの電圧をVa、Vb、およびVcとし、抵抗素子Z1−Z3の抵抗値をRとすると、次式で表わされる:
Vx(Z1)=(−Va+Vb)/4、
Vx(Z2)=3(−Va+Vb)/4、
Vx(Z3)=3(Vb−Vc)/4、
Vx(Z4)=(Vb−Vc)/4。
【0059】
ノードBの電圧Vbは、(Va+Vc)/2であり、これを代入すると、上式に示される平均電位Vx(Z1)−Vx(Z4)は、次式に変換される:
Vx(Z1)=(−Va+Vc)/8、
Vx(Z2)=3(−Va+Vc)/8、
Vx(Z3)=−3(Va+Vc)/8、
Vx(Z4)=−(Va+Vc)/8。
【0060】
上式から、抵抗素子Z1およびZ4の基板電圧からの平均電位は、符号が逆でその大きさは同じであり、また、抵抗素子Z2およびZ3は、それぞれの基板電位からの平均電位が、符号が逆でかつその大きさが同じである。
【0061】
したがって、抵抗素子Z1−Z4の抵抗値が一次近似式で表わされる場合、抵抗素子Z1−Z4の直列体において、抵抗素子Z1およびZ4の基板電圧依存性が相殺され、また、抵抗素子Z2およびZ3の基板電圧依存性が互いに相殺される。したがって、抵抗素子Z1−Z4が直列に接続される抵抗回路において、これらの抵抗素子Z1−Z4の抵抗値の基板電圧依存性が相殺され、その合成抵抗値は基板領域からの平均電圧が0、すなわち基板電圧非印加時の抵抗値に維持される。
【0062】
図16は、図15に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図16において、抵抗素子Z1およびZ2は、Pウェル50A上に形成され、抵抗素子Z3およびZ4は、Pウェル50B上に形成される。これらのPウェル50Aおよび50Bは、互いに分離して配置される。このウェル分離の構造としては、一例として、先の実施の形態1と同様の構成が利用される。
【0063】
Pウェル50A表面に、互いに間をおいて矩形形状の素子分離膜52Aaおよび52Abが配置され、これらの素子分離膜52Aaおよび52Ab上に、それぞれ、ポリシリコンで構成される矩形形状の抵抗体53Aaおよび53Abが配置される。これらの抵抗体53Aaおよび53Abは、その一端において第1メタル配線で構成される接続配線54Aにより相互接続される。抵抗体53Aaの図の上側の他方端は、内部接続配線56Aを介して第1メタル配線で構成される接続配線57Aに接続される。接続配線57AがノードAに接続される。
【0064】
素子分離膜52Aaの接続配線57A側の外部において、接続配線57Aに連結するように、第1メタル配線で構成される接続バイアス配線58Aが矩形形状に形成される。このバイアス配線58Aは、Pウェル50A表面に、素子分離膜を囲むように形成される高濃度不純物領域51Aにコンタクトを介して電気的に接続される。これにより、抵抗素子Z1およびZ2の基板領域を構成するPウェル50Aの電位が、ノードAの電圧レベルに設定される。
【0065】
Pウェル50Aにおいて、また、素子分離膜52Aaおよび52Abならびに抵抗体53Aaおよび53Abと同一パターン(形状、サイズ、材料)を有する素子分離膜60Aaおよび60Abならびに抵抗体61Aaおよび61Abが配置される。これらの抵抗体61Aaおよび61Abは、互いに平行に配置されるダミー接続配線62Aaおよび62Abにより、それぞれの両端部において相互接続される。ダミー接続配線62Aaおよび62Abは、それぞれ、内部接続配線56Aおよび54Aと整列して配置される。これらのダミー接続配線62Aaおよび62Abは、ダミー接続配線63Aに結合される。このダミー接続配線63Aは、接地ノードに結合される。
【0066】
Pウェル50Bにおいても、Pウェル50Aにおける抵抗素子Z1およびZ2の配置と同様、矩形形状の素子分離膜52Baおよび52Bbが互いに分離して配置され、また、素子分離膜52Baおよび52Bb上に矩形形状の抵抗体53Baおよび53Bbが配置される。抵抗体53Baは、接続配線55を介して抵抗体53Abに接続される。抵抗体53Baおよび53Bbは、図の下側端部において、また、接続配線54Bにより相互接続され、これらの抵抗素子Z3およびZ4が、直列に接続される。
【0067】
抵抗体53Bbの他方端(図の上側端部)は、それぞれ第1メタル配線で構成される接続配線56Bを介して接続配線57Bに接続される。この接続配線57Bに連結するように、バイアス配線58Bが、第1メタル配線で形成される。このバイアス配線58Bは、コンタクトを介して下部に形成される高濃度P型不純物領域51Bに電気的に接続され、基板領域のPウェル50Bが、ノードCの電圧レベルに設定される。
【0068】
素子分離膜52Baおよび52Bbならびに抵抗体53Baおよび53Bbと同一パターンおよび材料で、また、素子分離膜60Baおよび60Bbならびに抵抗体61Baおよび61Bbが配置される。抵抗体61Baおよび61Bbは、対向端部(図の上側端部および図の下側端部)において、ダミー接続配線62Baおよび62Bbにより、互いに電気的に接続される。これらのダミー接続配線62Baおよび62Bbは、またダミー接続配線63Bに電気的に接続される。このダミー接続配線63Bは、接地ノードに結合される。ダミー接続配線62Baおよび62Bbは、それぞれ内部接続配線56Bおよび54Aと整列して配置される。
【0069】
抵抗体53Abおよび53Baが、図の上側端部において第1メタル配線で構成される接続配線55により相互接続される。
【0070】
この図16に示す平面レイアウトにおいては、素子分離膜60Aaおよび60Ab上に形成される抵抗体61Aaおよび61Abと素子分離膜60Baおよび60Bbと抵抗体61Baおよび61Bbにより、パターンの規則性を維持するダミー素子がいわゆる形状ダミー素子として配置される。Pウェル50Aおよび50B内において、いわゆる形状ダミー素子を配置し、抵抗素子Z1−Z4のパターンずれを抑制し、正確な抵抗値を実現することを図る。
【0071】
この図16に示すように、抵抗素子を、その抵抗値が小さい抵抗素子に細分化する場合においても、1つの抵抗に対応する細分化された抵抗素子を同じウェル内に形成して、これらの細分化された抵抗素子の基板領域の電圧を共通に設定することにより、これらの細分化抵抗がすべて直列に接続される場合、合成抵抗の基板電圧依存性を相殺することができ(基板電圧依存性が逆特性の細分化抵抗の数が互いに等しい場合)、基板電圧依存性のない抵抗値を有する抵抗素子を実現することができる。
【0072】
[実施の形態5]
図17は、この発明の実施の形態5に従う抵抗素子の接続態様を示す図である。図17において、ノードAおよびBの間に抵抗素子Z1およびZ2が直列に接続され、ノードBおよびCの間に抵抗素子Z3およびZ4が直列に接続される。これらの抵抗素子Z1およびZ2の基板領域は、ノードBに電気的に接続され、抵抗素子Z3およびZ4の基板領域は、ノードBと電気的に接続される。これらの抵抗素子Z1−Z4の抵抗値は、互いに等しく、Rである。
【0073】
今、ノードA、BおよびCの電圧をVa、Vb、およびVcとする。この場合、電圧Vbは、(Va+Vc)/2に等しい。抵抗素子Z1−Z4それぞれの基板領域からの平均電位Vx(Z1)−Vx(Z4)は、それぞれ、次式で表わされる:
Vx(Z1)=3・(Va−Vc)/8、
Vx(Z2)=(Va−Vc)/8、
Vx(Z3)=−(Va−Vc)/8、
Vx(Z4)=(−3)・(Va−Vc)/8。
【0074】
したがって、抵抗素子Z1およびZ4の基板からの平均電位は大きさが同じで符号が逆であり、また、抵抗素子Z2およびZ3の基板からの平均電位は、大きさが同じでかつその符号が逆である。したがって、抵抗素子Z1およびZ2の抵抗値の基板電圧依存性は、それぞれ、抵抗素子Z3およびZ4の抵抗値の基板電圧依存性により相殺され、したがってこの図17に示す接続の場合においても、抵抗素子Z1−Z4で構成される抵抗回路の合成抵抗値の基板電圧依存性は相殺される。
【0075】
図18は、図17に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図18に示す平面レイアウトは、以下の点で、図16に示す抵抗素子の平面レイアウトとその配置が異なる。すなわち、抵抗素子Z1−Z4に対し共通にPウェル50および高濃度不純物領域51が配置される。抵抗素子Z2およびZ3それぞれに対応する素子分離膜52Abおよび52Ba上に形成される抵抗体53Abおよび53Baが、第1メタル配線で形成される接続配線70により、その一端において相互接続される。この接続配線70に連結して、また、第1メタル配線で形成されるバイアス配線71が、これらの素子分離膜53Abおよび53Baの間に配置される。このバイアス配線71が、コンタクトを介して下層に配置される高濃度不純物領域51に電気的に接続される。
【0076】
また、抵抗素子Z1およびZ4のそれぞれの一端は、ノードAおよびノードCにそれぞれ接続する第1メタル配線で形成される接続配線72および73に接続される。これらの接続配線72および73は、それぞれ、コンタクトを介して抵抗体52Aaおよび52Bbに電気的に接続される。
【0077】
この図18に示す抵抗素子の配置の他の構成は、図16に示す抵抗素子の配置と同じであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0078】
図18に示すように、バイアス配線71が、抵抗素子Z2およびZ3を形成する領域の間に配置され、また、抵抗素子Z1−Z4ならびに形状ダミー素子が共通のPウェル50に配置される。したがって、この配置においても、先の実施の形態2と同様、Pウェル50のレイアウト面積を低減することができる。また、抵抗素子を抵抗値の小さな抵抗素子へ細分化し、それらの細分化された抵抗素子Z1−Z4を複数個(偶数個)直列に接続することにより、所望の抵抗値を有する基板電圧依存性が十分に隠された抵抗回路を実現することができる。
【0079】
また、細分化された抵抗素子を単位抵抗として利用することにより、必要とされる抵抗値を有する抵抗素子を、実現することができる。1つの抵抗素子を構成する細分化抵抗素子の数は2に限定されない。基板電圧依存性が互いに逆となる細分化抵抗素子の数が互いに等しければよい。
【0080】
[実施の形態6]
図19は、この発明に従う抵抗素子を含む抵抗回路が適用されるオーディオ用ΔΣアナログ/デジタル変換回路の構成を概略的に示すブロック図である。図19において、このΔΣアナログ/デジタル変換回路は、アナログ入力信号AINLおよびAINRそれぞれに対して設けられるシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rと、これらのシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rに対して設けられるΔΣ変調器102Lおよび102Rと、これらのΔΣ変調器102Lおよび102Rの出力信号をフィルタ処理してデジタル信号DOUTを生成するデジタルフィルタ104を含む。
【0081】
アナログ入力信号AINLおよびAINRは、それぞれ、シングルエンドのLおよびRチャネルのアナログ入力信号である。このシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rで、シングルエンドのアナログ入力信号を差動信号に変換することにより、その入力信号の振幅を増大させるとともに、電源ノイズなどの同相ノイズを相殺して信号品質を改善する。
【0082】
ΔΣ変調器102Lおよび102Rは、それぞれ、与えられた差動信号に対しΔΣ変調を行ない、デジタル信号を生成する。ΔΣ変調器102Lおよび102Rは、アナログ入力信号と、前のサイクルにおいて量子化された出力信号と差分を求め、その差動信号を積分処理した後再び量子化する処理を行ない、アナログ入力信号をデジタル信号に変換する。ΔΣ変調器102Lおよび102Rは、サンプリングレートが高くされたオーバサンプリングを行って、ノイズシェーピングを行って、ノイズ成分を高周波領域に移動させる。
【0083】
このΔΣ変調器102Lおよび102Rは、1ビット出力データ列を生成してもよく、多ビットデジタルデータ列を生成してもよい。なお、このΔΣ変調器102Lおよび102Rの次数は、用途に応じて適宜定められる。
【0084】
デジタルフィルタ104は、これらのからのデータ列の低域成分を通過させ、高周波ノイズを除去し、また、デシメーション処理を行って、ΔΣ変調器102Lおよび102Rからの出力信号の間引きを行ってサンプリングレートを低下させて、デジタル信号を生成する。
【0085】
このデジタルフィルタ104およびΔΣ変調器102Lおよび102Rへは、クロック制御回路106からのクロック信号が与えられる。このクロック制御回路106は、システムクロックSYSCLKに従って必要なクロック信号を生成する。クロック制御回路106からの内部クロック信号に従って、ΔΣ変調器102Lおよび102Rが、量子化ノイズ成分を抑圧するために、必要とされるサンプリングレートより高いサンプリングレートでΔΣ変調操作を行ない、デジタルフィルタ104が、この高域成分側にシフトしたノイズ成分(ノイズシェービング)を除去するとともにサンプリングレートを低下させる。
【0086】
通常、高精度でΔΣ変調を行なうために、差動信号が利用され、シングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rにおいては、差動増幅器が利用される。
【0087】
図20は、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rの構成の一例を概略的に示す図である。図20において、シングルエンド/差動信号変換器100(100Lまたは100R)は、2つの縦続接続される反転増幅器(オペアンプ:演算増幅器)110および112を含む。オペアンプ110は、その負入力に抵抗素子RR1を介してアナログ入力信号AIN(AINLまたはAINR)を受け、その出力が、抵抗素子RR2を介してその負入力に結合される。オペアンプ110の正入力は、基準電圧源(バイアス電圧源:図20においては、基準電圧源として接地を示す)に結合される。
【0088】
オペアンプ112は、その負入力に、抵抗素子RR3を介してオペアンプ110の出力信号を受け、また、その出力および負入力が、抵抗素子RR4を介して相互接続される。オペアンプ112の正入力は、基準電圧源に結合される。
【0089】
抵抗素子RR1−RR4の抵抗値は、同じである。オペアンプ110から、アナログ入力信号AINと逆相の内部アナログ信号Vout_nが生成され、オペアンプ112から、アナログ入力信号AINと同相の内部アナログ信号Vout_pが生成される。
【0090】
オペアンプ110および112は、与えられた入力信号を反転増幅する反転増幅動作を実行する。この場合、差動信号Vout_nおよびVout_pが、その増幅率(振幅)が等しくなるように、オペアンプ110および112の増幅率は、正確に−1に設定する必要がある。この場合、オペアンプ110および112の増幅率Aは、−(RR2/RR1)および−(RR4/RR3)でそれぞれ与えられる。
【0091】
図21は、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rの他の構成を概略的に示す図である。この図21に示すシングルエンド/差動信号変換器100(100L,100R)は、以下の点で図20に示すシングルエンド/差動信号変換器100とその構成が異なる。すなわち、初段のオペアンプ114が、その負入力と出力が配線により結合され、オペアンプ112の構成は、図24に示すオペアンプ112と同じである。
【0092】
オペアンプ114は、負入力および出力が配線により相互接続され、正入力にアナログ入力信号AINを受ける。このオペアンプ114は、いわゆるボロフォテージフォロワとして動作し、アナログ入力信号AINに応じた内部アナログ信号Vout_pを生成する。したがって、図21に示す構成の場合、オペアンプ112からの出力信号は、図24に示す構成と異なり、アナログ入力信号AINと同相の内部アナログ信号Vout_nとなる。
【0093】
この場合においても、オペアンプ112は、差動信号Vout_pおよびVout_nの振幅を等しくするため、その増幅率を正確に1に設定する必要がある。
【0094】
図22は、反転増幅器の抵抗素子RR1−RR4の基板電圧依存性を概略的に示す図である。図22において、横軸に、基板領域からの抵抗素子に対する平均電位を示し、縦軸に抵抗比を示す。基板からの平均電位が+ΔV高くなった場合、抵抗比は、+Δrだけ増大する。一方、この平均電位Vxが−ΔV変化すると、抵抗比も同様−Δr変化する。
【0095】
したがって、たとえば図20に示すオペアンプ110および112各々において、抵抗値に基板電圧依存性が存在する場合には、以下のように、増幅率が変化する。
【0096】
入力信号が基準電圧源の電圧よりも高い場合、入力抵抗の基板電位からの平均電位が性となり、また、帰還抵抗において基板領域からの平均電位が負となる。従って、増幅率(ゲイン)が−(R(0)−Δr)/(R(0)+Δr)となる。ここで、R(0)は、抵抗素子の基板からの平均電位がゼロの時、すなわち基板電圧非印加時の抵抗値を示す。
【0097】
一方、入力信号が基準電圧源の電圧よりも低い場合、入力抵抗の基板からの平均電位が負となり、帰還抵抗の基板からの平均電位が、正となる。従って、増幅率は、−(R(0)+Δr)/(R(0)−Δr)となる。
【0098】
したがって、この基板電圧依存性が抵抗素子RR1−RR4に存在する場合、増幅率を正確に−1に維持することができず、正確な差動信号を生成できず、ΔΣ変調において歪が生じるという問題が生じる。そこで、シングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rに含まれる反転増幅器(差動増幅器)の入力抵抗RR1、RR2および帰還抵抗RR3、RR4に対し、これまでの実施の形態1から5の抵抗素子の接続を適用する。
【0099】
図23は、この発明の実施の形態6に従うオペアンプの抵抗素子の接続態様を概略的に示す図である。この図23において、オペアンプ120の負入力には、抵抗素子R1を介してアナログ入力信号Vinが与えられ、また、その出力が抵抗素子R2を介して負入力に結合される。このオペアンプ120は、図20および図21に示すオペアンプ110または112のいずれかである。抵抗素子R1およびR2は、図20および21に示すオペアンプ110または112の入力抵抗および帰還抵抗である。
【0100】
抵抗素子R1およびR2それぞれに対し、これまでに説明した実施の形態1から5のいずれかの抵抗素子の接続態様を適用する。これにより、抵抗素子R1およびR2それぞれの抵抗値の基板電圧依存性は隠され、増幅率−(R2/R1)が規定値の“−1”となり、その増幅率の基板電圧依存性をなくすことができる。これにより、ΔΣ変調を高精度で行なうことができ、歪の少ないアナログ/デジタル変換を行なうΔΣ変調型アナログ/デジタル変換器を実現することができる。
【0101】
なお、図23に示す反転増幅器の構成は、この図19に示すオーディオ用ΔΣ変調型アナログ/デジタル変換器への適用に限定されない。一般の反転増幅器に対しても、適用することができる。
【0102】
[実施の形態7]
図24は、この発明の実施の形態7に従う増幅回路の接続の構成を概略的に示す図である。図24において、オペアンプ120の負入力へは、入力信号Vinが抵抗素子ZR1およびZR2の直列体を介して与えられる。オペアンプ120の出力は、抵抗素子ZR4およびZR3の直列体を介して負入力に結合され、その正入力は、基準電圧源に結合される。すなわち、入力抵抗が抵抗素子ZR1およびZR2の直列体で構成され、帰還抵抗が、抵抗素子ZR3およびZR4の直列体で構成される。
【0103】
抵抗素子ZR1の基板領域へは、入力信号Vinが供給される。抵抗素子ZR2の基板領域へは、オペアンプ120の負入力ノードの電位が供給される。
【0104】
一方、抵抗素子ZR4は、その基板領域へは、出力信号Voutが供給され、抵抗素子ZR3の基板領域は、オペアンプ120の負入力に結合される。
【0105】
この図24に示す配置において、抵抗素子ZR1およびZR2は、各々、抵抗値Raを有し、抵抗素子ZR3およびZR4は、各々、抵抗値Rbを有する。この場合、オペアンプ120は、反転増幅器として動作し、その増幅率Avは、−(Rb/Ra)である。
【0106】
図24に示す抵抗素子ZR1−ZR4の接続において、抵抗素子ZR1およびZR2は抵抗値が互いに等しく、また、抵抗素子ZR3およびZR4も互いに抵抗値が等しいため、入力抵抗を構成する抵抗素子ZR1およびZR2は、各々の抵抗値の基板電圧依存性は逆方向でかつ大きさが同じであり、また、帰還抵抗を構成する抵抗素子ZR3およびZR4も、それぞれの抵抗値の基板電圧依存性は逆方向でかつ大きさが同じである。したがって、入力信号Vinおよび出力信号Voutの電位レベルが変動しても、抵抗素子ZR1およびZR2の直列体で構成される入力抵抗および抵抗素子ZR3およびZR4の直列体で構成される帰還抵抗各々においては、その抵抗値RaおよびRb各々の基板電圧依存性が見えなくされる。これにより、オペアンプ120の利得(増幅率)の基板電圧依存性がなくなり、歪の少ない増幅動作を行なうことができる。
【0107】
[変更例1]
図25は、この発明の実施の形態7の変更例の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図25において、オペアンプ120の負入力は、抵抗素子ZR5およびZR6の直列体を介して入力信号Vinを受け、その出力が、抵抗素子ZR8およびZR7の直列体を介して負入力に結合される。オペアンプ120の正入力は、基準電圧源に結合される。抵抗素子ZR5およびZR6の直列体が入力抵抗を構成し、抵抗素子ZR7およZR8の直列体が帰還抵抗を構成し、オペアンプ120は、反転増幅器として動作する。
【0108】
抵抗素子ZR5およびZR6の基板領域は、抵抗素子ZR5およびZR6の接続ノードに結合される。抵抗素子ZR7およびZR8の基板領域は、これらの抵抗素子ZR7およびZR8の接続ノードに結合される。抵抗素子ZR5およびZR6は抵抗値Raを有し、抵抗素子ZR7およびZR8は抵抗値Rbを有する。
【0109】
この図25に示す抵抗素子ZR5−ZR8の接続構成の場合、入力信号Vinが変化し、応じて出力信号Voutが変化しても、抵抗素子ZR5およびZR6の抵抗値の基板電圧依存性は相殺され、また、抵抗素子ZR7およびZR8の抵抗値の基板電圧依存性は互いに相殺される。したがって、この図25に示す接続構成においても、オペアンプ120の増幅率は、−(Rb/Ra)の基板電圧に依存しない一定値に維持することができる。
【0110】
[変更例2]
図26は、この発明の実施の形態7の変更例2に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。図26において、オペアンプ120は、その負入力に、抵抗素子ZR10を介して入力信号Vinを受け、また、その出力が、抵抗素子ZR11を介して負入力に結合される。抵抗素子ZR10は、その基板領域がオペアンプ120の負入力に結合され、抵抗素子ZR11の基板領域は、オペアンプ120の出力ノードに結合される。抵抗素子ZR10およびZR11は、抵抗値Rを有する。
【0111】
この図26に示す構成においては、オペアンプ120は、反転増幅器として動作し、入力信号Vinと出力信号Voutは逆相の信号であり、抵抗素子ZR10およびZR11の抵抗値の基板電圧依存性は同一方向に生じる。したがって、オペアンプ120の増幅率は、−(R(0)+Δr)/(R(0)+Δr)または−(R(0)−Δr)/(R(0)−Δr)であり、基板電圧依存性による抵抗変動成分Δrの影響が相殺され、オペアンプ120の増幅率は−1に基板電圧にかかわらず一定に維持される。なお、R(0)は、基板電圧非印加時、すなわち、基板からの平均電位が0の時の抵抗素子ZR10およびZR11の抵抗値を示す。
【0112】
[変更例3]
図27は、この発明の実施の形態7の変更例3の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図27において、全差動アンプ130は、正および負の入力ならびに正および負の出力を有する。全差動アンプ130の負入力は、抵抗素子ZZ1およびZZ2の直列体を介して入力信号を受け、また、その正出力が、抵抗素子ZZ6およびZZ5の直列体を介して負入力に結合される。全差動アンプ130の正入力は、抵抗素子ZZ4およびZZ3の直列体を介して基準電圧源に結合され、またその負出力が抵抗素子ZZ8およびZZ7の直列体を介して正入力に結合される。抵抗素子ZZ1−ZZ4は、各々、抵抗値Raを有し、抵抗素子ZZ5−ZZ8は、抵抗値Rbを有する。
【0113】
抵抗素子ZZ1の基板領域は、信号入力のノードに結合され、抵抗素子ZZ2の基板領域は、全差動アンプ130の負入力に結合される。抵抗素子ZZ3の基板領域は、基準電圧源に結合され、抵抗素子ZZ4の基板領域は、全差動アンプ130の正入力に結合される。抵抗素子ZZ5の基板領域は、全差動アンプ130の負入力に結合され、抵抗素子ZZ6の基板領域は、この全差動アンプ130の正入力に結合される。抵抗素子ZZ7の基板領域は、全差動アンプ130の正入力に結合され、抵抗素子ZZ8の基板領域は、全差動アンプ130の負出力に結合される。
【0114】
この図27に示す構成の場合、抵抗素子ZZ1およびZZ2の直列体、抵抗素子ZZ3およびZZ4の直列体、抵抗素子ZZ5およびZZ6の直列体、および抵抗素子ZZ7およびZZ8の直列体各々において、抵抗素子の基板領域は、その抵抗値の基板電圧依存性が抵抗素子の直列体において相殺されるように接続されている。したがって、この全差動アンプ130においても、正および負の出力からの信号に対する増幅率(利得)は、−(Rb/Ra)の基板電圧に依存しない値に設定することができる。
【0115】
この図27に示す全差動アンプの場合、出力信号は、基準電圧源を接地とすると、次式で与えられる:
Vout_p−Vout_n=(Rb/Ra)Vin、
Vout_p=(1/2)・Vin・(Rb/Ra)、および
Vout_n=−(1/2)・Vin・(Rb/Ra)
上式から明らかなように、入力抵抗および帰還抵抗の各々の抵抗値RaおよびRbの基板電圧依存性が隠され、利得を基板電圧に依存することなく一定に維持することができ、正確に入力信号から差動信号を生成することができる。
【0116】
なお、この図27に示す構成において、入力信号Vinとして、オーディオ用ΔΣアナログ/デジタル変換器に対するアナログ入力信号AINLおよびAINRが一例として示される。したがって、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器内のシングルエンド/差動信号変換を行なう差動アンプとして、この図27に示す差動アンプが利用されてもよい。
【0117】
[変更例4]
図28は、この発明の実施の形態7の変更例4の増幅回路の構成を概略的に示す図である。この図28に示す増幅回路においては、図27に示す抵抗素子ZZ10−ZZ17に代えて、抵抗素子ZZ1−ZZ8が利用される。抵抗素子ZZ10−ZZ17の基板領域の接続を除いて、全差動アンプ130に対する接続は、図27に示す全差動アンプの構成と同じである。
【0118】
抵抗素子ZZ10およびZZ11の基板領域は、これらの抵抗素子ZZ10およびZZ11の間の接続ノードに結合され、抵抗素子ZZ12およびZZ13の基板領域は、これらの抵抗素子ZZ12およびZZ13の間の接続ノードに結合される。抵抗素子ZZ14およびZZ15の基板領域は、抵抗素子ZZ14およびZZ15の間の接続ノードに結合される。抵抗素子ZZ16およびZZ17の基板領域は、これらの抵抗素子ZZ16およびZZ17の接続ノードに結合される。抵抗素子ZZ10−ZZ13の抵抗値はRaであり、抵抗素子ZZ14−ZZ17の抵抗値はRbである。
【0119】
この図28に示す接続構成においても、抵抗素子ZZ10およびZ11の直列体、抵抗素子ZZ12およびZZ13の直列体、抵抗素子ZZ14およびZZ15の直列体、およびZZ16およびZZ17の直列体の各直列体において、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性が相殺されるように、基板領域が接続される。したがって、全差動アンプ130の増幅率において、図27に示す構成と同様、基板電圧の影響を受けることなく、Vout_p−Vout_n=−(Rb/Ra)の一定値に維持することができる。
【0120】
また、この抵抗値RaおよびRbが互いに等しい場合には、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器内のシングルエンド/差動信号変換を行なう差動アンプとして、この図27に示す差動アンプを利用することができる。図28において、このシングルエンド/差動信号変換への適用を示すために、入力信号として、アナログ入力信号AINL、AINRを示す。
【0121】
[変更例5]
図29は、この発明の実施の形態7の変更例5の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図29において、オペアンプ140は、負入力が抵抗回路RK1を介して基準電圧源に結合され、その出力が負入力に抵抗回路RK2を介して結合される。抵抗回路RK1およびRK2は、偶数個の抵抗素子(R1、R2;R3、R4)の直列体で各々構成され、各抵抗素子の基板領域の接続として、実施の形態1から5のいずれかに示した構成を利用する。これにより、抵抗回路RK1およびRK2各々において、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性を相殺して、抵抗値RaおよびRbの基板電圧依存性を無くす。
【0122】
オペアンプ140は、正入力に入力信号Vinを受ける。抵抗回路RK1およびRK2の抵抗値は、それぞれRaおよびRbである。この図29に示すオペアンプの接続形態においては、このオペアンプ140は非反転増幅動作を行ない、その増幅率Abは、(1+Rb/Ra)で表わされる。
【0123】
したがって、この非反転増幅動作を行なうオペアンプ140の接続においても、入力抵抗を構成する抵抗回路RK1および帰還抵抗を構成する抵抗回路RK2各々において、実施の形態1から5のいずれかの構成を適用してその入力抵抗の抵抗値Raおよび帰還抵抗の抵抗値Rb各々の基板電圧依存性を見えなくすることにより、アンプ140の増幅率の基板電圧依存性を隠すことができ、正確な歪の少ない増幅信号Voutを得ることができる。
【0124】
以上のように、この発明の実施の形態7に従えば、オペアンプの入力抵抗および帰還抵抗各々において、その抵抗値の基板電圧依存性が相殺されるように基板領域の接続を行なっており、歪の少ない増幅動作を行なう差動増幅回路を得ることができる。
【0125】
また、これらの増幅器を、例えばオーディオ用のA/D変換回路のシングルエンド/差動信号変換部に対して適用することにより、歪の少ないアナログ差動信号を生成することができる。
【0126】
[実施の形態8]
図30は、この発明の実施の形態8に従う抵抗素子が適用される高精度オーディオ用ΔΣデジタル/アナログ変換回路の全体の構成を概略的に示す図である。図30において、ΔΣデジタル/アナログ変換回路は、入力デジタル信号DINのサンプリング周波数を等価的に増加させるインタポレーションフィルタ200と、このインタポレーションフィルタ200からのLおよびRチャネルに対応するデータに対しそれぞれΔΣ変調を行なうΔΣ変調器202Lおよび202Rと、これらのΔΣ変調器202Lおよび202Rの出力信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を電流信号の形態で出力する電流DAC(デジタル/アナログ変換器)204Lおよび204Rと、これらの電流DAC204Lおよび204Rからの電流信号を電圧信号に変換するI/V(電流/電圧)変換器206Lおよび206Rを含む。I/V変換器206Lおよび206Rから、それぞれLチャネル用のアナログ出力信号AOUTLおよびRチャネル用の出力アナログ信号AOUTRが生成される。
【0127】
インタポレーションフィルタ200、ΔΣ変調器202L,202Rおよび電流DAC204Lおよび204Rの動作タイミングは、クロック(CLK)制御回路208からの内部クロック信号により制御される。このクロック制御回路208は、システムクロック信号SYSCLKに従って内部タイミングクロック信号を生成する。
【0128】
インタポレーションフィルタ200へは、デジタル入力信号DINとして、Lチャネル信号およびRチャネル信号が時系列的に与えられ、これらのデジタル入力信号DINに対しサンプリング値をインタポレーション(補間)を行なってそのサンプリング周波数を等価的に増加させた後低域成分を通過させる。このインタポレーションフィルタ200によるインタポレーションにより、量子化ノイズ等のノイズ成分を、高周波領域にシフトさせるノイズシェーピングを行ない、その後の低域成分通過処理により、ノイズ成分を除去する。
【0129】
ΔΣ変調器202Lおよび202Rは、このインタポレーションフィルタ200から与えられるLチャネル信号およびRチャネル信号それぞれに対し、ΔΣ変調を行なう。このとき、インタポレーションフィルタ200からは、Lチャネル信号およびRチャネル信号がそれぞれ並列に出力される。デジタル入力信号DINとして、Lチャネル信号およびRチャネル信号が時系列的に与えられ、その時系列信号が、Lチャネル信号Rチャネル信号に分離されて出力されるため、これらのΔΣ変調器202Lおよび202Rは、1サンプリング期間遅延等の遅延信号を相互に送受して、Lチャネル信号およびRチャネル信号に対するΔΣ変調をそれぞれ実行する。
【0130】
電流DAC204Lおよび204Rは、このΔΣ変調器202Lおよび202Rからそれぞれ与えられるデジタル信号を電流信号に変換して出力する。したがって、この電流DAC204Lおよび204Rからは、ΔΣ変調されたデジタル信号を電流信号に変換したアナログ信号が生成される。
【0131】
この電流信号を生成することにより、高速で、ΔΣ変調された信号をアナログ信号に変換し、また電流加算により容易にΔΣ変調された信号に対応する大きさのアナログ電流信号を生成する。この電流DAC204Lおよび204Rの構成としては、デルタシグマ変調されたデジタル信号に対応する電流を供給する構成であれば、任意の構成を利用することができる。
【0132】
I/V変換器206Lおよび206Rは、電流DAC204Lおよび204Rから与えられたアナログ電流信号をアナログ電圧信号に変換し、それぞれアナログLチャネル信号AOUTLおよびアナログRチャネル信号AOUTRを生成する。
【0133】
このインタポレーションフィルタ200によるインタポレーションを行ない、また電流DAC204Lおよび204Rにより電流信号を生成することにより、高精度でデジタル/アナログ変換を行なうことができる。
【0134】
この構成の場合、最終的にI/V変換器206Lおよび206Rにおいては、オペアンプを利用して、電流/電圧変換が行なわれる。この電流/電圧変換においては、電流信号に応じた電圧信号を生成して歪の少ない信号を生成するために、I/V変換操作に精度が要求される。
【0135】
図31は、I/V変換器206Lおよび206Rの構成の一例を概略的に示す図である。これらのI/V変換器206Lおよび206Rは、同一構成を有するため、図31においては、I/V変換器206で、これらのI/V変換器206Rおよび206Lを示す。
【0136】
図31において、I/V変換器206(206L,206R)は、前段の電流DAC204(204L,204R)の電流源214から供給されるアナログ入力電流Iinを負入力に受けるオペアンプ210を含む。このオペアンプ210の出力および負入力は、抵抗素子Zを介して相互接続され、その正入力は、基準電圧源Vrに結合される。
【0137】
電流DAC204に含まれる電流源214は、ΔΣ変調されたデジタル信号に対応する電流を供給する。従って、この電流源214は、ΔΣ変調されたデジタル信号に応じて供給電流量が調整される可変電流源で構成されるが、図31においては、単にアナログ電流信号を供給するように示す。
【0138】
オペアンプ210は、入力インピーダンスは高く、この電流源214からのアナログ電流信号Iinは、抵抗値Rを有する抵抗素子Zを介して出力ノードに伝達される。したがって、出力信号Voutは、Vr−R・Iinで表わされる。但し、電流Iinは、オペアンプ210の負入力から出力に向かって流れる方向を正の電流とする。
【0139】
出力信号Voutは、抵抗素子Zの抵抗値Rに依存するため、入力電流Iinに応じた電圧信号が、出力信号Voutとして生成される。この出力電圧信号Voutは、正確に入力電流信号Iinに対応する電圧レベルであることが要求される。高精度で、電流・電圧変換を行うために、抵抗素子Zとして、これまでの実施の形態1から5において説明した抵抗素子の直列体の構成を利用する。
【0140】
図32は、図31に示すI/V変換回路に含まれる抵抗素子Zの具体的配置の一例を示す図である。図32において、抵抗素子Zは、サブ抵抗素子ZS1およびZS2の直列体を含む。サブ抵抗素子ZS1の基板領域は、オペアンプ210の負入力に結合され、サブ抵抗素子ZS2の基板領域は、オペアンプ210の出力に結合される。これらのサブ抵抗素子ZS1およびZS2の抵抗値は、互いに等しく、Rである。
【0141】
電流DAC204の電流源214からのアナログ電流信号Iinは、符号を有する信号である。したがって、サブ抵抗素子ZS1およびZS2に印加される電圧は、このアナログ入力信号Iinの符号に応じて、その極性が異なる。しかしながら、いずれの場合においても、これらのサブ抵抗素子ZS1およびZS2の基板領域からの平均電位は、逆方向であり、かつその大きさは等しい。したがって、サブ抵抗素子ZS1およびZS2の合成抵抗2・Rは、基板電圧の影響を受けることなく一定値を維持し、出力信号Voutとして、正確に、アナログ入力信号Iinに応じた電圧信号を生成することができる。
【0142】
図33は、図31に示す抵抗素子Zの他の構成を概略的に示す図である。図33において、抵抗素子Zは、図32に示す構成と同様、サブ抵抗素子ZS3およびZS4の直列体を含む。これらのサブ抵抗素子ZS3およびZS4の基板領域は、これらの抵抗素子ZS3およびZS4の間の接続ノードに結合される。サブ抵抗素子ZS3およびZS4の抵抗値は、ともに、Rである。
【0143】
この図33に示す抵抗素子Zのサブ抵抗素子ZS3およびZS4の基板領域の接続態様においても、電流源214からの入力信号Iinにより電圧変化が生じる場合、基板領域からの各サブ抵抗素子ZS3およびZS4に対する平均電位は、その大きさが等しく符号が逆となる。したがって、アナログ電流信号Iinの符号にかかわらず、サブ抵抗素子ZS3およびZS4の抵抗値の基板電圧依存性は相殺され、出力信号Voutとして、基板電圧の影響を受けることなく、アナログ入力信号Iinとサブ抵抗素子ZS3およびZS4の合成抵抗(2・R)の積に応じた信号が生成される。
【0144】
以上のように、この発明の実施の形態8に従えば、高精度ΔΣデジタル/アナログ変換回路の電流/電圧変換器の増幅器に利用される抵抗素子に対し、その基板領域を、抵抗素子の直列体の基板電圧依存性が相殺されるように接続している。したがって、基板電圧の影響を受けることなく、直列体の抵抗素子の合成抵抗に応じた出力信号を生成することができ、歪の少ないアナログ電圧信号を生成することができる。これにより、歪成分の少ないオーディオ信号を再生することのできるオーディオ用デジタル/アナログ変換回路を実現することができる。
【0145】
[実施の形態9]
図34は、この発明の実施の形態9に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。図34において、オペアンプ250の負入力に対し、入力抵抗として、抵抗素子Z20およびZ21の直列体が接続され、帰還抵抗として、オペアンプ250の出力と負入力との間に抵抗素子Z23およびZ24の直列体が接続される。このオペアンプ250の正入力は基準電圧源に結合される。
【0146】
抵抗素子Z20およびZ21は、その基板領域が、それぞれ信号入力ノードおよびオペアンプ250の負入力ノードに結合される。抵抗素子Z23およびZ24の基板領域は、それぞれ、オペアンプ250の負入力および出力に結合される。抵抗素子Z20およびZ21は、それぞれ抵抗値RaおよびRcを有し、その抵抗比は、Ra:Rc=α:(1−α)である。一方、抵抗素子Z23およびZ24は、同じ抵抗値Rbを有する。
【0147】
図35は、図34に示すオペアンプ250の最終出力段の構成の一例を概略的に示す図である。図35において、オペアンプの出力段は、出力ノードに電流を供給するPチャネルMOSトランジスタPQと、出力ノードからの電流を接地ノードへ放出するNチャネルMOSトランジスタMOSトランジスタNQを含む。PチャネルMOSトランジスタPQはゲートにバイアス電圧Vbiasを受け、NチャネルMOSトランジスタNQが、そのゲートに、内部信号INを受ける。
【0148】
MOSトランジスタPQは、バイアス電圧Vbiasに従って一定の電流Isを供給する。一方、MOSトランジスタNQは、出力信号Voutの極性に応じて、出力ノードへ電流を供給するかまたは出力ノードから電流を引抜く。したがって、この出力信号Voutに従って、出力ノードからMOSトランジスタNQへ流入する電流Ioの大きさが異なると、MOSトランジスタNQのトランスコンダクタンスgmの値が変化し、その入出力特性に歪が生じる。この場合、出力ノードからの電流Ioの変動の影響を受けることなく、MOSトランジスタNQのトランスコンダクタンスgmを一定とするためには、このMOSトランジスタPQが供給する電流Isを大きくして、出力ノードからの電流Ioの変動を無視することができるようにする必要がある(Is>>Io)。しかしながら、この場合、MOSトランジスタPQのレイアウト面積が増大し、また、消費電流も増大する。従って、MOSトランジスタPQのサイズ(ゲート幅とゲート長との比)を大きくすることができない。このMOSトランジスタPQが供給する電流量は、バイアス電圧Vbiasにより決定される。したがって、この流入電流Ioの影響の度合いは、バイアス電圧Vbiasに依存し、出力ノードからMOSトランジスタNQへ流入する電流Ioの影響によるオペアンプの入出力特性の歪が、バイアス電圧依存性を有する状態が生じる。但し、上記の歪の原因は、アンプの歪の原因の一つであり、他のプロセス起因で起こる歪は存在する。
【0149】
図36は、図34に示すオペアンプ250の入出力特性をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。この場合、入出力特性においては、入力抵抗および帰還抵抗の抵抗値の変化は無いと仮定する。入出力特性は、エンドポイント法により測定され、横軸に、入力信号の中心値からのずれを示し、縦軸に、出力信号の理想特性(線形応答特性)からのずれを示す。ここで、エンドポイント法は、オペアンプ250の入出力特性曲線の動作範囲の両端を結ぶ直線からの実際の入出力特性のずれを示し、この出力の偏差が、図36に示す出力偏差ΔVoutに対応する。
【0150】
図36において、入出力応答特性として、曲線CA、CB、CC1およびCC2で示される特性が認められる。特性曲線CAは、上に凸の入出力特性を示し、線形応答を示す直線よりも出力信号が高くなる傾向を示す。一方、特性曲線CBは、下に凸の入出力特性を示し、この場合、出力信号としては理想応答(線形応答)よりも出力信号が低くなる特性を示す。特性曲線CC1およびCC2は、それぞれS字型の入出力特性を示しおり、入力信号の中心値からの変化に従って、その出力信号のレベルが線形応答に対して高い状態および低い状態が存在する。
【0151】
この入出力応答特性としては、出力偏差ΔVoutが、全領域において0となる状態が最も歪が少ない状態である。
【0152】
図34に示すように、入力抵抗を構成する抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値RaおよびRcを、抵抗比α:(1−α)に設定する。入力抵抗に基板電圧依存性を持たせることにより、オペアンプ250の増幅率に抵抗値の基板電圧依存性を反映させ、その入出力応答特性を理想状態に設定する。ここで、補正対象となる入出力特性は、図36の曲線CAで表わされる。
【0153】
図37は、図34に示すオペアンプ250の入出力特性の入力抵抗依存性を示す図である。この図37においては、オペアンプ250は理想アンプであり、バイアス電圧依存性は、その入出力特性に存在しないと想定している。また、抵抗比αは、0から0.5の間の値である。また、抵抗素子Z20およびZ21の基板電圧依存性係数kが、負の値である。この入出力応答特性は、エンドポイント法により求められる。
【0154】
この図37に示すように、入力抵抗素子の抵抗比αに従って、オペアンプ210の入出力特性が下に凸の入出力特性となる。抵抗比αが小さくなるにつれて、特性曲線は、曲線S1、S2およびS3と、出力偏差が大きくなる。この出力偏差の入力抵抗値依存性については、後に説明する。
【0155】
したがって、図37に示す入出力特性調整して、図36に示す特性曲線CAで表わされる入出力特性と組合せることにより、オペアンプの入出力特性の、入力抵抗の基板電圧依存性による入力抵抗依存性とバイアス電圧依存性とを相殺することができ、図38に示すようなオペアンプの入出力特性CFを得ることができる。
【0156】
ここで、図38において、曲線CAは、入力抵抗および帰還抵抗の基板電圧依存性がない場合のオペアンプ250の入出力特性のバイアス電圧依存性を示し、曲線SRは、オペアンプのバイアス電圧依存性がない場合の入力抵抗の基板電圧依存性による入出力特性を示す。これらの曲線CAおよびSRにより表わされる入出力特性を合成することにより、最終的な入出力特性CFが得られる。この曲線CFで表わされる入出力特性が、全入力偏差領域において出力電圧偏差ΔVoutが0となるように、抵抗比αの値を設定する。
【0157】
ここで、図37に示す入出力応答特性が生じる理由について、図34の構成を参照して、以下に簡単に説明する。図34に示す入力抵抗を構成する抵抗素子Z20およびZ21の基板からの平均電位Vx(A)およびVx(C)は、それぞれ、次式で表わされる:
Vx(A)=−α・VIN/2、
Vx(C)=(1−α)・VIN/2
ここで、VINは、抵抗素子Z20およびZ21全体にわたって印加される電圧であり、入力信号Vinと正入力の基準電源電圧(Vss)との和、すなわちVin+Vssで与えられる。
【0158】
したがって、抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値RaおよびRcおよびその合成抵抗Ra+Rcは、それぞれ、次式で与えられる:
Ra=α・R0(1+k・(−α・Vin/2))、
Rc=(1−α)・R0・(1+k・(1−α)・VIN/2)、
Ra+Rc
=R0+k・R0・(1−2・α)・VIN/2、
=R0{1+k(1−2・α)・VIN/2}
ここで、R0は、抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値RaおよびRcを形成する際の単位抵抗値を示す。
【0159】
抵抗比αは、0<α<1/2であり、基板電圧依存性係数kが負であるため、基板電圧VINの依存性により、基板電圧VINが正の領域では合成抵抗Ra+Rcは小さくなり、負の領域では、合成抵抗Ra+Rcは、大きくなる。オペアンプは反転増幅器であり、増幅率は、−2・Rb/(Ra+Rc)で与えられる。したがって、基板電圧VINが正の領域において合成抵抗Ra+Rcが小さくなると、出力信号が負方向へ大きくされ(増幅率の絶対値が大きくなるため)、基板電圧VINが負の領域で合成抵抗が大きくなると、出力信号の振幅が小さくなる(正極性の出力信号のレベルが低くなる)。したがって、入出力特性が理想特性より負の方向に変位し、図37に示すような下に凸の入出力応答特性が得られる。
【0160】
抵抗比αが、1>α>1/2の場合には、基板電圧依存性係数kが負の場合、上に凸の入出力応答特性が得られる。また、基板電圧依存性係数kが正であれば、図37に示すような下に凸の入出力応答特性曲線は、抵抗比の係数αが1/2と1の間で生じ、上に凸の入出力応答特性は、抵抗比αが0から1/2の間の場合に生じる。
【0161】
したがって、基板電圧依存性係数kの値を、予めパラメータとして、測定して決定されて既知の値とすると、抵抗比αを適切な値に設定することにより、図38に示すような、オペアンプのバイアス電圧依存性を、入力抵抗の抵抗値の基板電圧依存性により相殺することができ、出力歪の少ない増幅器を実現することができる。
【0162】
図39は、この発明の実施の形態9に従う反転増幅器の入力抵抗270の抵抗比の具体例を示す図である。図39において、入力抵抗270を構成する抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値がそれぞれ1・Rおよび3・Rに設定される。この場合、抵抗比αは、1/4である。帰還抵抗を構成する抵抗素子Z23およびZ24の抵抗値は、互いに等しくRbである。この構成において、入力抵抗270を構成する抵抗素子Z20およびZ21は、それぞれを構成する単位抵抗の数が異なるため、そのレイアウトが異なる。
【0163】
図40は、図39に示す入力抵抗270の平面レイアウトを概略的に示す図である。図40において、抵抗素子Z20は、Pウェル300上に形成される。Pウェル300表面に、矩形形状の素子分離膜304が形成され、この素子分離膜304周辺に、Pウェル300表面に高濃度P型不純物領域302が配置される。素子分離膜304表面に、例えばポリシリコンで構成される矩形形状の抵抗体306が配置される。抵抗体306の抵抗値が、Rである。
【0164】
ポリシリコン抵抗体306の一端は、コンタクト309aを介して接続配線307に形成され、抵抗体306の他端は、コンタクト309bを介して第1メタル配線で形成される接続配線320に接続される。この接続配線307に連結して、第1メタル配線で構成されるバイアス配線308が素子分離膜304外部に抵抗体306と平行に配置される。バイアス配線308は、コンタクト309cを介して下層の高濃度不純物領域302に電気的に接続される。接続配線307により、ノードA(入力ノード)に対する接続経路が形成される。
【0165】
抵抗素子Z21は、Pウェル300と離れて配置されるPウェル310内に形成される。このPウェル310表面に、矩形形状の素子分離膜314A、314Bおよび314Cが、それぞれ間をおいて同一ピッチで配置される。これらの素子分離膜314A、314Bおよび314Cを囲むように、Pウェル310上に高濃度P型不純物領域312が形成される。素子分離膜314A、314Bおよび314C上に、ポリシリコンで形成される矩形形状の抵抗体316Aおよび316Bおよび316Cがそれぞれ形成される。これらの抵抗体316Aおよび316Bおよび316Cは、抵抗体306と同様、抵抗値Rを有する。
【0166】
抵抗体316Aは、その一端が、コンタクト319Abを介して第1メタル配線で形成される接続配線320に接続され、その他端が、コンタクト319Aaを介して第1メタル配線で形成される接続配線315Aに電気的に接続される。この接続配線315Aは、抵抗体316Bの一端にコンタクト319Baを介して電気的に接続される。抵抗体316Bの他方端は、コンタクト319Bbを介して第1メタル配線で形成される接続配線315Bに接続される。
【0167】
この接続配線315bの他端は、コンタクト319Cbを介して抵抗体316Cに電気的に接続され、この抵抗体316Cの他方端は、コンタクト319Caを介して第1メタル配線で形成される接続配線317に電気的に接続される。この接続配線317と同一の配線、すなわち第1メタル配線で形成されるバイアス配線318が、素子分離膜314のノードC側の外部に抵抗体と平行に配置され、接続配線317と連結される。このバイアス配線318は、コンタクト319cを介して下層の高濃度不純物領域312に電気的に接続される。
【0168】
抵抗素子Z21において抵抗体316A、316Bおよび316Cは、それぞれ抵抗値Rを有し、それぞれの対向端部を接続配線315A、315Bにより電気的に接続する。これにより、蛇行状に抵抗体316A、316Bおよび316Cが接続され、抵抗値3・Rの抵抗素子が実現される。
【0169】
なお、接続配線317は、ノードCに結合され、接続配線320が、抵抗素子Z20およびZ21の間の接続ノードBに対応する。
【0170】
したがって、抵抗値が異なる抵抗素子を直列に接続する場合、それぞれ、抵抗値Rの単位抵抗を、複数個直列に配置することにより、所望の抵抗値を有する抵抗素子を実現することができる。また、このとき、各抵抗素子において、基板領域に対しバイアス配線308および318により、互いの基板電圧依存性を相殺する方向に接続することにより、抵抗素子の直列体の抵抗値の基板電圧依存性を、抵抗素子の抵抗比に応じて所望の特性に設定することができる。
【0171】
[変更例]
図41は、この発明の実施の形態9に従う増幅回路の変更例の構成を概略的に示す図である。この図41に示す増幅回路の構成は、以下の点で、図39に示す増幅回路の構成と異なる。すなわち、入力抵抗270を構成する抵抗素子Z31およびZ32の基板領域が、抵抗素子Z31およびZ32の間の接続ノードBに結合される。また、帰還抵抗を構成する抵抗素子Z33およびZ34の基板領域が、これらの抵抗素子Z33およびZ34の間の接続ノードに結合される。この図41に示す増幅器の他の構成および抵抗の接続態様は、図39に示す増幅回路の構成と同様である。
【0172】
抵抗素子Z31およびZ32の抵抗値は、α:(1−α)に設定される。抵抗素子Z33およびZ34の抵抗値は、互いに等しく、Rbである。この図41に示す増幅回路の構成においても、入力抵抗270と帰還抵抗(抵抗素子Z33およびZ34)とにより反転増幅動作が実現される。
【0173】
図41に示す構成において、抵抗素子Z31およびZ32それぞれの基板領域からの平均電位Vx(AB)およびVx(BC)は、それぞれ、次式で表わされる:
Vx(AB)=α・VIN/2、
Vx(BC)=−(1−α)・VIN/2
ここで、VINは、ノードAC間に印加される電圧を示す。
【0174】
抵抗素子Z31およびZ32の合成抵抗Ra+Rbは、次式で表わされる:
Ra+Rb
=R0+R0・k・(2・α−1)・VIN/2
=R0{1−k・(1−2・α)・VIN/2}
この上式に示す合成抵抗の基板電圧依存性は、前述の図39に示す入力抵抗の抵抗素子の合成抵抗の基板電圧依存性と極性が逆方向となる。したがって、基板電圧依存性係数kが負の場合、抵抗比αが0から1/2の間の場合には上に凸の入出力応答曲線が与えられ、抵抗比αが1/2から1の場合、図37に示すように下に凸の入出力応答曲線が得られる。また、基板電圧依存性係数kが、正の場合、先の図39に示す入力抵抗の接続態様と同様、抵抗比αが、0から1/2のときには、図37に示す下に凸の入出力応答特性が得られ、抵抗比αが1/2から1の間のときには、上に凸の入出力応答曲線が得られる。
【0175】
図42は、この図41に示す入力抵抗270の平面レイアウトを概略的に示す図である。図41においては、抵抗素子Z31およびZ32は、それぞれ抵抗値1・Rおよび3・Rを有し、抵抗比αが、1/4の場合の平面レイアウトを概略的に示す。
【0176】
図42において、入力抵抗を構成する抵抗素子Z31およびZ32に対し共通にPウェル330および高濃度P型不純物領域332が形成される。Pウェル330の表面に、互いに間をおいて同じ矩形形状の素子分離膜334A、334B、334C、および334Dが配置される。これらの素子分離膜334A−334D上に、ポリシリコンでたとえば構成される矩形形状の抵抗体336A、336B、336Cおよび336Dが配置される。これらの抵抗体336A−336Dの各々は、抵抗値Rを有する。
【0177】
抵抗体336Aは、一端がコンタクト341Aaを介して第1メタル配線で形成される接続配線338Aに接続され、他端が、コンタクト341Abを介して同じ第1メタル配線で形成される内部接続配線337Aに接続される。この内部接続配線337Aは、抵抗体336Bにコンタクト341Bbを介して電気的に接続される。抵抗体336Bの他方端部は、コンタクト341Baを介して内部接続配線337Bに電気的に接続される。
【0178】
抵抗体336Cは、その上側端部において、コンタクト341Caを介して内部接続配線333Bに電気的に接続され、その他方側端部においてコンタクト341Cbを介して内部接続配線333Cに電気的に接続される。抵抗体336Dは、その下側端部においてコンタクト341Dbを介して内部接続配線337Cに電気的に接続され、その上側端部において、コンタクト341Daを介して接続配線338Bに電気的に接続される。
【0179】
接続配線338AはノードAに電気的に接続され、接続配線338Bは、内部ノードCに電気的に接続される。
【0180】
素子分離膜334Aおよび334Bの間の領域において、内部接続配線337Aに連結して、抵抗体と平行に矩形形状のバイアス配線340が配置される。このバイアス配線340は、コンタクト342を介して下層に形成される高濃度不純物領域332に電気的に接続される。
【0181】
抵抗体334A−334Dが、対抗端部が順次接続され、信号伝達経路が蛇行状に形成され、これらの抵抗体334A−334Dが直列に接続される。ノードBにおいてバイアス配線340が配置されており、図41に示す入力抵抗270を構成する抵抗素子Z31およびZ32に対して、抵抗比αを1/4に設定する構成が実現される。
【0182】
なお、この図42に示す配置において、バイアス配線340は、この両端において、高濃度不純物領域332に沿って延在して配置され、この高濃度不純物領域332の周辺端部においてコンタクトにより電気的に接続されてもよい。この場合、確実に、Pウェル330の電圧分布を制限することができる。
【0183】
[変更例2]
図43は、この発明の実施の形態9に従う増幅回路の入力抵抗の他の平面配置を概略的に示す図である。図43に示す入力抵抗は、図41に示す入力抵抗270と同様の配置構成を有し、抵抗素子Z31およびZ32の基板領域が、これらの抵抗素子Z31およびZ32の間の接続ノードBに結合される。
【0184】
この図43に示す平面レイアウトにおいて、抵抗素子Z31およびZ32およびノードAおよびノードCにそれぞれ接続する接続配線350Aおよび350Bが、この図の縦方向に延在し(抵抗体と平行な方向)、コンタクト351Aおよび351Bを介して抵抗体336Aおよび336Bに結合される。抵抗素子Z31およびZ32の他の構成は、図42に示す平面レイアウトと同じレイアウトであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0185】
図43に示す配置において、Pウェル330表面に、抵抗素子Z31(素子分離膜334Aおよび抵抗体336A)の外部に、素子分離膜360Aおよび360Bが互いに分離して配置される。これらの素子分離膜360Aおよび360Bは、抵抗素子Z31およびZ32に対して設けられる素子分離膜334A−334Dと同一形状に形成される。これらの素子分離膜360Aおよび360B上に、ポリシリコンでたとえば構成される矩形形状の抵抗体362Aおよび362Bが配置される。これらの抵抗体362Aおよび362Bの各々の一端が、コンタクト365aを介して第1メタルで構成される接続配線364Aに共通に接続され、それぞれの他方端部が、コンタクト365bを介して接続配線364Bに共通に接続される。
【0186】
これらの接続配線364Aおよび364Bは、それぞれ抵抗体と平行に延在して配置される接続配線366Aに連結される。この接続配線366Aは、第1メタル配線で構成され、接地ノードに結合される。
【0187】
また、抵抗素子Z32の形成領域のノードC側の外部において、素子分離膜334Bに隣接して、素子分離膜360Cおよび360Dが、互いに間をおいて配置される。これらの素子分離膜360Cおよび360Dの上に、ポリシリコンで構成される抵抗体362Cおよび362Bが配置される。素子分離膜362Cおよび362Dは、素子分離膜334A−334Dと同一形状にかつ同一材料で形成される。とこれらの抵抗体362Cおよび362Dは、抵抗素子Z31およびZ32を構成する抵抗体336A−336Dと同じ形状およびサイズを有する。
【0188】
抵抗体362Cおよび362Dは、それぞれの一端(上側端部)において、コンタクト365cを介して第1メタル配線で形成される内部接続配線364Cに接続され、それぞれの他方端(下側端部)においてコンタクト366cを介して第1メタル配線で形成される内部接続配線360Dに結合される。これらの内部接続配線364Cおよび364Dは、抵抗体362Dと平行に配置される接続配線366Bに連結される。この接続配線366Bは、第1メタル配線で形成され、接地ノードに結合される。
【0189】
この素子分離膜360A−360Dおよび抵抗体362A−362Dを、抵抗素子Z31およびZ32を形成する領域の外部に、形状ダミー素子として同一パターンおよび形状で配置することにより、抵抗素子Z31およびZ32のパターニングを正確に行なうことができ、正確に、入力抵抗の抵抗素子の抵抗比αを設定することができる。
【0190】
また、図43に示す配置において、抵抗素子Z31およびZ32は、内部接続配線337Bを形成する領域に関して線対称に抵抗体および素子分離膜が配置されている。これは、バイアス配線340が、素子分離膜334Aおよび334Bの間に配置されており、この間の距離が、素子分離膜334Bおよび334Cの間の距離よりも長くなるため、この配線抵抗(接続配線337Aおよび337C)を互いに等しくするためである。
【0191】
また、この図43に示す配置においても、バイアス配線340は、この高濃度P型不純物領域332の上下周辺に沿って延在して配置され、P型不純物領域332の外周部に沿ってバイアス配線340と基板領域のPウェル330との電気的接続がとられてもよい。
【0192】
[変更例3]
図44は、この発明の実施の形態9の第3の変更例に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。図44において、オペアンプ250の負入力に、入力抵抗として、直列に抵抗素子Z41およびZ42が接続される。これらの抵抗素子Z41およびZ42は、それぞれ抵抗値Rを有する。これらの抵抗素子Z41およびZ42の基板領域は、それぞれ、信号入力ノードおよびオペアンプ250の負入力ノードに結合される。
【0193】
オペアンプ250の負入力と出力ノードの間に帰還抵抗370が接続される。この帰還抵抗370は、抵抗素子Z43およびZ44の直列体で構成される。抵抗素子Z43の基板領域は、オペアンプ250の負入力ノードに接続され、抵抗素子Z44の基板領域は、オペアンプ250の出力ノードに結合される。この抵抗素子Z43およびZ44の抵抗比は、α:(1−α)である。オペアンプ250の正入力は基準電圧源に結合される。
【0194】
図44に示す帰還抵抗370において、抵抗素子Z43およびZ44の抵抗値の基板電圧依存性が、その合成抵抗値において生じる。この場合、先の図39に示す入力抵抗270の抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値の基板電圧依存性と同じ依存性が生じる。オペアンプ250は、反転増幅動作を行なっており、帰還抵抗370の抵抗値が大きくなると、その増幅率の絶対値が大きくなる。したがって、この図44に示す増幅回路の構成の場合、図39に示す増幅回路の入出力特性と逆に、上に凸の入出力応答特性が得られる(基板電圧依存性係数kが負でありかつ抵抗比αが0から1/2のとき)。一方、基板電圧依存性係数kが負であり、抵抗比αが1/2から1の間のときには、図37に示すように下に凸の入出力応答特性が得られる。基板電圧依存係数kが正のときには、上述の入出力特性が逆となる。オペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性に応じて、基板電圧依存性係数kおよび抵抗比αを、適切に選択してその値を設定する。
【0195】
従って、図44に示すように帰還抵抗370の抵抗値に基板電圧依存性をもたせる場合においても、オペアンプ250の入出力特性のバイアス電圧依存性を、帰還抵抗の抵抗値の基板電圧依存性により相殺することができる。
【0196】
[変更例4]
図45は、この発明の実施の形態9の第4の変更例の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図45において、オペアンプ250の入力抵抗は、抵抗素子Z45およびZ46の直列体により構成され、帰還抵抗370が、抵抗素子Z47およびZ48の直列体により構成される。抵抗素子Z45およびZ46の基板領域は、これらの抵抗素子Z45およびZ46の間の接続ノードに結合される。抵抗素子Z45およびZ46の抵抗値は互いに等しくRである。一方、帰還抵抗370を構成する抵抗素子Z47およびZ48の基板領域は、これらの抵抗素子Z47およびZ48の間の接続ノードに結合される。オペアンプ250の正入力は基準電圧源に結合される。
【0197】
図45に示す増幅回路においては、オペアンプ250は反転増幅を行なっており、抵抗素子Z45−Z48各々の印加電圧の極性関係は、図41に示す増幅回路の抵抗素子Z31−Z34における電圧印加態様と同じである。したがって、この図45に示す接続構成の場合、帰還抵抗370の抵抗値が基板電圧依存性を有しており、図41に示すオペアンプの入出力応答特性の基板電圧依存性と逆となる。この場合においても、オペアンプ250の入出力特性の抵抗素子の基板電圧依存性を利用して、オペアンプ250の入出力特性のバイアス電圧依存性を相殺することができる。
【0198】
なお、入力抵抗および帰還抵抗両者においてその抵抗値に基板電圧依存性を持たせて、オペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性が相殺されてもよい。
【0199】
[変更例5]
図46は、この発明の実施の形態9の第5の変更例の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図46において、オペアンプ400の正入力に、入力信号Vinが与えられる。このオペアンプ400の出力ノードと負入力ノードの間に帰還抵抗402が接続され、また、この負入力と基準電圧源の間にバイアス抵抗404が設けられる。帰還抵抗402は、抵抗素子RZ2およびRZ3の直列体で構成され、バイアス抵抗404は、抵抗素子RZ0およびRZ1の直列体で構成される。これらの抵抗素子RZ0−RZ3は、その基板電圧との接続のための端子を有し、いわゆる3端子素子として、図46において示す。
【0200】
帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の一方または双方において、抵抗比αの調整および基板ノードの接続を行なうことにより、その抵抗値に基板電圧依存性を持たせる。帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の抵抗素子の接続態様が、図39、図41、図44および図45に示す帰還抵抗(370)および入力抵抗(270)の接続態様と同様に設定する。
【0201】
図46に示す増幅回路において、オペアンプ400は、非反転増幅動作を行ない、その増幅率Avは、次式で表わされる:
Av=(1+(RZ2+RZ3)/(RZ0+RZ1))
上式から、非反転増幅動作時においても、帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の抵抗比により、その増幅率が異なる。したがって、オペアンプ400の入出力特性にバイアス電圧依存性が存在する場合においても、帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の抵抗値に基板電圧依存性を持たせることにより、実施の形態9においてこれまで説明したように、オペアンプ400の入出力特性のバイアス電圧依存性を、帰還抵抗/バイアス抵抗の抵抗値の基板電圧依存性により相殺することができる。
【0202】
なお、図46に示すオペアンプ400が非反転増幅動作を行なっており、図39から図45に示す非反転増幅回路の入出力特性の基板電圧依存性と、その逆の基板電圧依存性が、図46に示す非反転増幅回路においては生成される。
【0203】
この実施の形態9の増幅回路は、先のオーディオ用のADCまたはDACに対して適用されてもよく、また、通常の増幅動作が必要な部分において用いられてもよい。
【0204】
以上のように、この発明の実施の形態9に従えば、オペアンプの入力抵抗および帰還抵抗またバイアス抵抗の少なくとも1つにおいて、その抵抗値に基板電圧依存性を持たせるように抵抗値を設定している。これにより、オペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性と入出力特性の抵抗素子を介した基板電圧依存性を相殺させることができ、歪の少ない高精度の増幅回路を実現することができる。
【0205】
[実施の形態10]
図47は、この発明の実施の形態10にしたがう抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図47においては、抵抗素子の配置を示す。図47において、Pウェル500表面に、素子分離膜504が形成される。この素子分離膜504を囲むように、Pウェル500表面に、高濃度P型不純物領域502が形成される。
【0206】
この素子分離膜504上に、たとえばポリシリコンで構成される抵抗体506A−506Dが、それぞれ互いに間をおいて同一形状で配置される。これらの抵抗体506A−506Dは、それぞれの対向端部が順次、内部接続配線508A、508Bおよび508Cにより相互接続される。抵抗体506Aの上側端部は、接続配線510Aに接続され、抵抗体506Bの上側端部は、コンタクトを介して接続配線510Bに接続される。この接続配線501Aは、またバイアス配線512が連結され、このバイアス配線512がコンタクトを介して高濃度P型不純物領域502に電気的に接続される。
【0207】
この図47に示す構成の場合、抵抗体506A−506Dに対し個々に素子分離膜を設けるのではなく、共通に素子分離膜504が設けられる。この場合においても、Pウェル500の電位は、バイアス配線512により設定され、同様、Pウェルと抵抗体506A−506Dの間の素子分離膜を介して印加される電界の影響は、同程度に生じる。したがって、これまでの実施の形態1から9において説明した構成と同様の効果を得ることができる。抵抗体506A−506Dは、たとえば単位抵抗素子として利用して、これらを複数個(偶数個)接続して、必要とされる抵抗値を有する抵抗素子を実現する。または、抵抗体506A−506D各々を所望の抵抗値を有する抵抗素子として利用する。
【0208】
なお、図47に示す構成においても、このバイアス配線912は、素子分離膜504を囲むようにコの字型に形成され、この高濃度P型不純物領域502周辺に沿って電気的に接続されて、Pウェル500の電位の安定化が図られてもよい。
【0209】
この図47に示す構成の場合、素子分離膜を抵抗体個々に分離する必要がなく、抵抗体のピッチを小さくすることができ、抵抗素子のレイアウト面積を低減することができる。但し、素子分離膜を抵抗体毎に分離して配置することにより、各抵抗素子は、その抵抗体および素子分離膜の配置が同一となり、均一に形成することとができる。
【0210】
なお、この図47に示す構成において、抵抗体506A−506Dの直列体により、1つの基板電位が調整される抵抗素子が実現される。したがって、この図47に示す構成と同様の配置を有する抵抗素子がこの図47に示す抵抗素子と直列に接続され、それぞれの基板電圧依存性が相殺されるようにされる。この図47に示す抵抗素子の配置は、これまでの実施の形態1から9の抵抗素子に対して適用することができる。
【0211】
なお、上述の説明においては、抵抗素子は、ポリシリコンで構成されるとして説明している。抵抗素子としては、メタル抵抗であってもよく、基板電位の影響により、その抵抗値が変化する抵抗素子であればよい(基板と抵抗素子の間に形成される電界により抵抗値が有意な影響を受ける素子であればよい)。また、上述の説明においては、基板電圧依存性を相殺する場合、1つの抵抗が、2個の抵抗素子で構成される。しかしながら、この1つの抵抗を構成する抵抗素子の数は、直列接続される抵抗素子の基板電圧依存性が相殺される数であればよく、依存性が逆極性の抵抗素子の数が等しければよい。
【産業上の利用可能性】
【0212】
この発明は、一般に、抵抗素子の直列体を含む半導体装置に適用することにより、高精度で必要とされる内部信号を生成することができる。特に、演算増幅器(オペアンプ)の増幅動作を実現するための抵抗素子に対し適用することにより、歪の少ない高精度の増幅動作を行なう増幅器を得ることができる。
【0213】
特に、オーディオ用途などの精度が要求される増幅器(演算増幅器)に対して適用することにより、高精度の歪の少ない出力信号を得ることができる。携帯電話内の音声処理用LSIなどに対して適用することにより、高精度の音声処理を行なう回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】この発明の実施の形態1に従う抵抗素子の単位抵抗の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図2】図1に示す線L2−L2に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図3】図1に示すL3−L3に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図4】この発明において利用される抵抗素子の基板電圧依存性を測定するための構成の一例を示す図である。
【図5】図4に示す測定回路により測定した抵抗素子の基板電圧依存性を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図7】図6に示す抵抗素子の基板電圧依存性を示す図である。
【図8】図6に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図9】図8に示す線L9−L9に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図11】図10に示す抵抗素子の基板電圧依存性特性を示す図である。
【図12】図10に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図13】図12に示す線L13−L13に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図14】この発明の実施の形態3に従う抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図15】この発明の実施の形態4に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図16】図15に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図17】この発明の実施の形態5に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図18】図14に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図19】この発明に従う抵抗素子が適用されるΔΣアナログ/デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。
【図20】図19に示すシングルエンド/差動信号変換器の構成の一例を示す図である。
【図21】図19に示すシングルエンド/差動信号変換器の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図22】図20および図21に示す入力抵抗および帰還抵抗の基板電圧依存性を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態6に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。
【図24】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の構成を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第1の変更例を示す図である。
【図26】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第2の変更例を示す図である。
【図27】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第3の変更例を示す図である。
【図28】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第4の変更例を示す図である。
【図29】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第5の変更例を示す図である。
【図30】この発明の実施の形態8に従う抵抗素子が適用される高精度ΔΣデジタル/アナログ変換回路の構成を概略的に示す図である。
【図31】図30に示すI/V変換器の構成の一例を概略的に示す図である。
【図32】図31に示すI/V変換器の具体的構成の一例を示す図である。
【図33】図31に示すI/V変換器の第1の変更例を示す図である。
【図34】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。
【図35】図34に示すオペアンプの出力段の構成の一例を概略的に示す図である。
【図36】図34に示すオペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性を示す図である。
【図37】図35に示すオペアンプの入出力特性の抵抗素子基板電圧依存性を示す図である。
【図38】この発明の実施の形態9において実現されるオペアンプの入出力特性を示す図である。
【図39】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の具体的構成の一例を示す図である。
【図40】図39に示す入力抵抗の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図41】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第1の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図42】図41に示す入力抵抗の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図43】図41に示す入力抵抗の変更例の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図44】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第2の変更例の構成を示す図である。
【図45】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第3の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図46】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第4の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図47】この発明の実施の形態10における抵抗素子の平面レイアウトの変更例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0215】
1 抵抗体、2 素子分離膜、3 高濃度不純物領域、R1,R2 抵抗素子、21A,21B 抵抗体、22A,22B 素子分離膜、23A,23B 高濃度不純物領域、25A,25B Pウェル(基板領域)、26A,26B,26C 配線、28A、28B バイアス配線、33 高濃度不純物領域、35 Pウェル、37 バイアス配線、41A−41D 抵抗体、42A−42D 素子分離膜、46A−46D 内部接続配線、47A,47B 接続配線、Z1−Z4 抵抗素子、50A,50B Pウェル、51A,51B 高濃度不純物領域、52Aa,52Ab,52Ba,52Bb,60Aa,60Ab、60Ba,60Bb 素子分離膜、53Aa,53Ab,53Ba,53Bb,61Aa,61Ab,61Ba,61Bb 抵抗体、58A,58B バイアス配線、50 Pウェル、51 高濃度不純物領域、RR1,RR2 抵抗素子、110,112 オペアンプ、120 オペアンプ、ZR1−ZR4 抵抗素子、ZR5−ZR8,ZR10,ZR11,ZZ1−ZZ8,ZZ10−ZZ17 抵抗素子、RR3,RR4 抵抗素子、206 I/V変換器、210 オペアンプ、214 電流源、Z 抵抗素子、ZS1−ZS4,Z20−Z24,Z20−Z24 抵抗素子、300,310 Pウェル、302,312 高濃度不純物領域、304,314A−314C 素子分離膜、306,316A−316C 抵抗体、308,318 バイアス配線、270 入力抵抗、Z31−Z34 抵抗素子、330 Pウェル、332 高濃度不純物領域、334A−334D 素子分離膜、336A−336D 抵抗体、340 バイアス配線、360A−360D 素子分離膜、362A−362D 抵抗体、Z41−Z44 抵抗素子、250 オペアンプ、370 帰還抵抗、Z45−Z48,RZ0−RZ3 抵抗素子、400 オペアンプ、402 帰還抵抗、404 バイアス抵抗、500 Pウェル、502 高濃度不純物領域、504 素子分離膜、506A−506D 抵抗体、512 バイアス配線。
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関し、特に、ポリシリコン抵抗などの抵抗素子を利用する半導体装置に関する。より特定的には、この発明は、ポリシリコン抵抗などの抵抗素子の基板電圧依存性を抑制する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路装置において、種々の部分において抵抗素子が利用される。抵抗素子は、回路の所望の動作特性を実現するために、その抵抗値を正確に維持することが要求される。通常、抵抗素子として、不純物層(拡散層)の抵抗を利用する拡散抵抗を用いた場合、この拡散抵抗が形成されるウェル領域との間の電位差により、空乏層の大きさが異なり、応じて拡散抵抗の抵抗値が変動する。
【0003】
このような拡散抵抗の基板電圧依存性を抑制することを図る構成が、特開2001−168651号公報(特許文献1)に示されている。この特許文献1に示される構成においては、エピタキシャル層上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜上に、ポリシリコンなどで構成される抵抗素子を配置する。抵抗素子上層に、他の配線などからのノイズを防止するためのシールド膜が配置される。抵抗素子が直列に接続される場合、すなわち、たとえばオペアンプ(演算増幅器)の入力抵抗および帰還抵抗として抵抗素子が利用される場合、シールド層と抵抗素子の間の電圧極性が、これらの抵抗素子において同一となるようにシールド層を抵抗素子の一端に接続する。エピタキシャル層は、フローティング状態とされる。
【0004】
この特許文献1においては、シールド層と抵抗素子との間の電圧極性を、オペアンプの入力抵抗および帰還抵抗で等しくすることにより、入力抵抗の抵抗値および帰還抵抗の抵抗値の変動を同じとする。この抵抗比を一定値に維持することにより、オペアンプの増幅率を一定にすることを図る。また、エピタキシャル層には、基板バイアス電圧を印加しない構成とすることにより、基板バイアス印加用の領域および配線を不要として、配線の簡略化および抵抗回路の小型化を実現することを図る。
【特許文献1】特開2001−168651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ポリシリコン抵抗を抵抗素子として利用する場合、拡散抵抗に比べてその抵抗値の基板電圧依存性は小さいものの、依然存在する。したがって、このようなポリシリコン抵抗素子の抵抗値が基板電圧依存性を有する場合、抵抗両端間に印加される電圧が変化する場合、基板領域と抵抗素子との間の電圧が変化し、抵抗素子の抵抗値が変化し、また、この抵抗素子を利用する半導体装置の動作特性が変動する。特に、オペアンプに利用した場合、その増幅率が、その抵抗値の基板電圧依存性に応じて変動し、出力信号波形は、理想応答特性の波形からずれ、増幅器の出力信号に歪が生じる。特に、近年のように、画像または音声処理などの高精度が要求される用途においては、この歪成分は、大きな問題となる。
【0006】
上述の特許文献1に示される構成においては、エピタキシャル層上に絶縁膜を介してポリシリコン抵抗を配置し、このポリシリコン抵抗の一端を、ポリシリコン抵抗を覆うように配置されるシールド層に接続する。直列接続される抵抗素子において、このシールド層と抵抗素子の間の電圧極性は同一とされ、シールド層と抵抗素子との間の電圧差に起因する抵抗値の変動を、抵抗素子列全体として相殺することを図る。
【0007】
しかしながら、この特許文献1に示される構成においては、絶縁膜下部に形成されるエピタキシャル層に対しては、バイアス電圧は印加されず、フローティング状態とされる。したがって、この基板領域のエピタキシャル層の電位が不安定となり、ノイズなどにより、エピタキシャル層の電位が変動した場合、電位変動が絶縁膜を介して抵抗素子に伝達され、この抵抗素子が構成する回路の特性が不安定となる。この特許文献1は、このエピタキシャル層の電位を固定する場合の構成については何ら考察していない。また、このシールド層を抵抗素子の一端に接続した場合、このシールド層の電位は、入力信号に応じて変化し、固定されていないため、このシールド層の電位変動が、別の回路に対するノイズ源として作用する可能性がある。
【0008】
それゆえ、この発明の目的は、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性の影響を確実に抑制することのできる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る半導体装置は、それぞれが、基板領域上に形成され、抵抗値が基板領域の電圧に対し依存性を有する複数の互いに直列接続される抵抗素子を含む。これらの複数の抵抗素子の直列に接続される一対の抵抗素子において、抵抗素子と基板領域との間の電圧極性が逆となるように、各抵抗素子の一端を対応の基板領域に接続する。
【発明の効果】
【0010】
直列に接続される抵抗素子において、基板領域と抵抗素子の間の電圧極性が逆である。従って、直列に接続される抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性が抑制または相殺され、等価的に、直列接続される抵抗素子全体の抵抗値の基板電圧依存性をなくすことができる。
【0011】
したがって、オペアンプなどの入力抵抗および/または帰還抵抗にこの抵抗素子を適用することにより、オペアンプの抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性に起因する信号歪を抑制でき、高精度の増幅回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は、この発明において利用される抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図1において、抵抗素子を構成する矩形形状のポリシリコン抵抗体1は、素子分離膜2上に配置される。この素子分離膜2は、たとえばシャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)膜である。素子分離膜2周辺に基板領域(図1には示さず)表面に、高濃度不純物領域3が設けられる。この高濃度不純物領域3は、一例として、P型不純物が高濃度に注入された高濃度P型不純物層である。この高濃度不純物領域3を介して、この下部に形成されるウェル領域(基板領域)に対し基板バイアス電圧が供給される(基板に対する電圧供給地用については後に詳細に説明する)。P型不純物領域3が利用されるのは、抵抗体1のポリシリコンは、その抵抗値を調整するために、P型不純物が注入されたP型ポリシリコンであるためである。また、抵抗素子の基板領域を構成するウェルは、P型ウェルである。
【0013】
素子分離膜2上に抵抗素子を形成するポリシリコン抵抗体1を配置することにより、拡散抵抗の場合と異なり、基板電位の影響を抑制する。ポリシリコン抵抗体1の両端に、コンタクト4aおよび4bが設けられ、それぞれ低抵抗の配線を介して他の素子または抵抗体と接続される。
【0014】
図2は、図1に示す線L2−L2に沿った断面構造を概略的に示す図である。図2において、Pウェル5表面に、素子分離膜2が形成され、この素子分離膜2の両側に、高濃度不純物領域3aおよび3bが配置される。高濃度不純物領域3aおよび3bは、図1に示す高濃度不純物領域3に対応する。素子分離膜2上に、ポリシリコン抵抗体1が配置される。Pウェル5には、高濃度不純物領域3(3a,3b)を介して電圧が供給される。
【0015】
図3は、図1に示す線L3−L3に沿った断面構造を概略的に示す図である。図3に示すように、ポリシリコン抵抗体1の長さ方向においても、素子分離膜2がPウェル5表面に形成され、素子分離膜2両端に、高濃度不純物領域3cおよび3dが設けられる。これらの高濃度不純物領域3cおよび3dは、図1に示す高濃度不純物領域3に対応する。抵抗体1の両端にコンタクト4aおよび4bが配置され、これらのコンタクトにより配線と抵抗体とが電気的に接続される。
【0016】
これらの図2および図3に示すように、素子分離膜2の周辺に、高濃度不純物領域3(3a−3d)を配置し、下部に形成されるPウェル5に電圧を供給する。ポリシリコン抵抗体1が形成される場合、通常の半導体集積回路装置においては、MOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)のゲート電極形成工程と同一工程で、このポリシリコン抵抗体1が形成される。MOSトランジスタは、半導体基板領域に形成され、また、抵抗体1も基板領域(ウェル)上に形成される。
【0017】
半導体集積回路装置において微細化が進むと、この素子分離膜(STI膜)2の膜厚も薄くされ、ポリシリコン抵抗体1とPウェル5の間に、ポリシリコン抵抗体1に供給される電圧に応じて電圧差が生じる。ポリシリコン抵抗体1とPウェル5の間の電圧差に応じて、この素子分離膜2において電圧が印加される。この素子分離膜2に電界が形成され、ポリシリコン抵抗体1と素子分離膜界面において形成される電界が、抵抗体1に印加される電圧に応じて変化し、応じてポリシリコン抵抗体1の抵抗値が異なると予想される(抵抗体1における空乏層または垂直方向電界の変動による)。
【0018】
図4は、このポリシリコン抵抗体1を利用する抵抗素子10の基板電圧依存性を測定する接続構成の一例を示す図である。図10において、抵抗素子10は一端NAに、電源V1の正電圧が供給され、抵抗素子10の他方端NBが接地ノードに結合される。この抵抗素子10の基板領域(Pウェル)には、可変電源V2の電圧が供給される。ここで、抵抗10を三端子素子としてモデル化して、基板電圧V2に対する抵抗値の変化を測定して、抵抗10の抵抗値の基板電位依存性を測定する。
【0019】
図5は、図4に示す回路における抵抗素子10の抵抗値と基板電位との関係を示す図である。この図5において横軸に基板電圧(V2)を示し、縦軸に、抵抗素子10の抵抗比R/R0を示す。ここで、抵抗値R0は、基板電圧V2が0Vの場合の抵抗素子10の抵抗値である。
【0020】
この図5に示すように、基板電圧が−VAから+VAに従って変化するにつれ、その抵抗比R/R0は、0.9999から1.0001までほぼ直線的に変化する。この場合、抵抗素子10の抵抗値Rは、一次近似で、次式で表わすことができる:
R=R0(1+k・Vx)、
k:基板電圧依存性の一次係数、
Vxは、基板(Pウェル)からの抵抗素子の両端ノードに対する平均電位を示し、次式で表わされる:
Vx=(V(NA)+V(NB))/2−V2、
V(NA)およびV(NB)は、それぞれ、図4に示すノードNAおよびNBの電位を示す。
【0021】
抵抗素子10の三端子モデルにおいて、抵抗値Rの基板電圧依存性は小さいため、高次の基板電圧依存係数は無視することができる。
【0022】
この図5に示すように、抵抗素子10の抵抗値Rは、その度合いは小さいものの、基板電圧V2に対し依存性を有している。したがって、この抵抗素子の抵抗値が動作特性に影響を及ぼすような回路においては、この基板電圧依存性により歪が生じ、高精度を要求される回路装置において適用すれば、この歪は、無視することのできない歪となり、回路装置の信頼性が低下する。
【0023】
図6は、この発明の実施の形態1に従う抵抗回路の構成を概略的に示す図である。図6において、ノードAおよびCの間に、抵抗素子R1およびR2が直列に接続される。これらの抵抗素子R1およびR2は、抵抗値は互いに等しくRであり、同一材料で形成され、同じ基板電圧依存性を有する。今、ノードA、ノードCの電圧をそれぞれ、VaおよびVcとする。この場合、抵抗素子R1およびR2の接続ノードBの電圧Vbは、次式で表わされる:
Vb=(Va+Vc)/2
抵抗素子R1においては、その基板領域(ウェル)が、ノードAに電気的に接続され、基板電圧は、電圧Vaに設定される。一方、抵抗素子R2については、その基板領域が、ノードCに接続され、その基板電圧が、電圧Vcに設定される。
【0024】
この場合、ノードAおよびB間の基板からの平均電位Vx(AB)は、次式で表わされる:
Vx(AB)=(Va+Vb)/2−Va
=(−Va+Vc)/4
一方、ノードBおよびC間の基板からの平均電位Vx(BC)は、次式で表わされる:
Vx(BC)=(Vb+Vc)/2−Vc
=−(−Va+Vc)/4
したがって、この抵抗素子R1およびR2の基板からの平均電位Vx(AB)およびVx(BC)は、その絶対値が等しく符号が反対である。
【0025】
したがって、図7に示すように、ノードAB間の基板からの平均電位Vx(AB)とノードBC間の基板からの平均電位Vx(BC)に対して、その抵抗比の変化は、それぞれ、値は等しく、符号は反対となる。すなわち、前述の抵抗素子の抵抗値Rの基板電圧依存を示す式に代入すると、抵抗素子R1およびR2については、次式が成立する:
R1=R0(1+k・Vx(AB))
=R0(1+k・Vx(AB))
=R0(1+k・((−Va+Vc)/4))、
R2=R0(1+k・Vx(BC))
=R0(1−k((−Va+Vc)/4))
上式から、これらの抵抗素子R1およびR2の基板電圧依存性は互いに大きさが等しく、変化方向の符号が逆である。したがって、抵抗素子R1およびR2で形成される合成抵抗R1+R2は、基板電圧依存性が相殺され、上述の式から、R1+R2=2・R0となり、基板電圧に依存しない一定の値を有する抵抗が実現される。
【0026】
図8は、図6に示す抵抗素子R1およびR2の平面レイアウトを概略的に示す図である。図8において、抵抗素子R1およびR2は、それぞれ別々に設けられるPウェル25Aおよび25B内に形成される。Pウェル25A表面に、高濃度P型不純物領域23Aが形成される。この高濃度不純物領域23Aに囲まれるように矩形形状の素子分離膜(STI膜)22Aが形成され、この素子分離膜22A上にたとえばポリシリコンで形成される抵抗体21Aが配置される。抵抗体21Aは、コンタクト24aを介して例えば第1メタル配線で形成される接続配線26Aに電気的に接続される。この接続配線26Aにより抵抗素子の一端がノードAに接続される。
【0027】
素子分離膜22AのノードA側の外部において、第1メタル配線で形成されるバイアス配線27Aが配置され、このバイアス配線27Aが、接続配線26Aと接続される(連結される)。バイアス配線27Aは、コンタクト28Aを介して下層の高濃度P型不純物領域23Aに接続される。バイアス配線27Aにより、抵抗素子R1の基板電圧が、ノードAに応じた電圧レベルに設定される。
【0028】
一方、Pウェル25Bにおいて、矩形形状の素子分離膜22Bが、その表面に形成され、高濃度P型不純物領域23Bが、素子分離膜22Bを囲むようにPウェル25B表面に配置される。素子分離膜22B上に、たとえばポリシリコンで形成される抵抗体21Bが配置される。抵抗体21Aおよび21Bは、その形状およびサイズが同一とされ、基板電圧非印加時の抵抗値が互いに等しくされる。抵抗体21Bは、第1メタル配線で形成される接続配線26Cとコンタクト24cを介して電気的に接続され、抵抗素子R2の一端がノードCに接続される。
【0029】
素子分離膜22BのノードC側の外部に第1メタル配線で形成されるバイアス配線27Bが配置され、接続配線26Cおよびバイアス配線27Bが連結される。このバイアス配線27Bは、また、コンタクト28Bを介して下層の高濃度P型不純物領域23Bに電気的に接続される。このバイアス配線27Bにより、ノードCの電圧レベルに、基板領域(Pウェル25B)の電圧レベルが設定され、抵抗素子R2の基板電圧が設定される。
【0030】
これらの抵抗体21Aおよび22Bは、また、コンタクト24bおよび24dそれぞれを介して第1メタル配線で構成される接続配線26Bに電気的に接続され、抵抗体21Aおよび21BがノードAおよびCの間に直列に接続される。
【0031】
高濃度不純物領域23Aおよび23Bとバイアス配線27Aおよび27Bとをそれぞれ電気的に接続することにより、抵抗素子R1およびR2の基板領域をそれぞれ構成するPウェル25Aおよび25Bの電圧が、ノードAおよびノードCの電圧レベルに設定される。また、抵抗素子R1およびR2の基板電圧は異なる電圧レベルであり、Pウェル25Aおよび25Bを互いに分離して配置することにより、それぞれノードAおよびノードCの異なる電圧レベルに抵抗素子R1およびR2の基板電圧を設定することができる。
【0032】
また、バイアス配線27Aおよび27Bを抵抗体と並行に、長い矩形形状に形成することにより、基板領域(ウェル)25Aおよび25Bに対して安定に電圧を供給することができ、基板領域(ウェル)においてウェルの抵抗により電圧分布が生じるのを回避することができ、ウェル全体にわたって同一電圧レベルにウェル電圧を設定することができる。
【0033】
図9は、図8に示す線L9−L9に沿った断面構造を概略的に示す図である。図9において、P型基板30上に、Nウェル29が形成される。このNウェル29表面に、Pウェル25Aおよび25Bが、それぞれ、離れて配置される。Nウェル29によりPウェル25Aおよび25Bが分離され、それぞれの電圧レベルを個々に設定することができる。
【0034】
Pウェル25A表面に、素子分離膜22Aが形成され、また、素子分離膜22Aを囲むように、高濃度P型不純物領域23A(23Aa,23Ab)が形成される。高濃度P型不純物領域22Aは、その一方側の不純物領域22Aaにおいて、コンタクト28Aを介してバイアス配線27Aに電気的に接続される。このバイアス配線27Aは、また第1メタル配線26Aと電気的に接続される(同一配線層の配線であり、互いに連結される)。接続配線26Aは、また、素子分離膜22A表面に形成される抵抗体21Aに、コンタクト24Aを介して電気的に接続される。
【0035】
一方、Pウェル25B表面に高濃度P型不純物領域23B(23Ba,23Bb)が、素子分離膜22Bを囲むように配置される。この素子分離膜22B上にたとえばポリシリコンで形成される抵抗体21Bが配置される。抵抗体21Bは、第1メタル配線で形成される接続配線26Cとコンタクト24cを介して電気的に接続される。高濃度P型不純物領域23Bは、その一方側の領域23Bbにおいて、コンタクト28Bを介してバイアス配線27Bに電気的に接続される。このバイアス配線27Bは接続配線26Bと同一配線層の第1メタルで構成され、互いに連結される。
【0036】
図9に示すように、PウェルおよびNウェルのトリプルウェル構造を利用して、抵抗素子R1およびR2を配置することにより、抵抗素子R1およびR2の基板領域を個々に分離して配置することができ、それぞれの基板電圧を個々に設定することができる。
【0037】
なお、図9においては、抵抗素子R1およびR2の基板領域を形成するPウェル25Aおよび25Bを、トリプルウェル構造を利用して互いに分離している。しかしながら、このPウェル25Aおよび25Bそれぞれの下層にボトムNウェルを設け、また、Pウェル25Aおよび25Bそれぞれの側壁を囲むようにサイドN型層またはトレンチ分離膜を形成して、これらのPウェル25Aおよび25Bを分離する構成が利用されてもよい。
【0038】
以上のように、この発明の実施の形態1に従えば、互いに直列に接続ノードを介して接続される抵抗素子の基板領域を、それぞれ接続ノードと対向する非接続ノードに接続している。これにより、直列に接続される抵抗素子の基板領域と抵抗素子との間の平均電圧差を、互いに符合が異なるとともに同じ大きさに設定することができる。これにより、抵抗素子の抵抗変化を、入力信号の電位に関わらず、互いに相殺することができ、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性をなくすことができる。
【0039】
[実施の形態2]
図10は、この発明の実施の形態2に従う抵抗素子の接続を示す図である。図10において、抵抗素子R1およびR2は、ノードAおよびC間に直列に接続される。抵抗素子R1およびR2の間の接続ノードBは、これらの抵抗素子R1およびR2の基板領域に電気的に接続される。抵抗素子R1およびR2は、互いに等しい抵抗値Rを有する。
【0040】
この図10に示す抵抗素子R1およびR2の基板電圧供給態様においては、この抵抗素子R1およびR2の基板領域からの平均電位Vx(AB)およびVx(BC)は、それぞれ、次式で表わされる。
【0041】
ノードAB間の基板からの平均電位:
Vx(AB)=(Va+Vb)/2−Vb
=−(−Va+Vc)/4、
ノードBC間の基板からの平均電位:
Vx(BC)=(Vb+Vc)/−Vb
=(−Va+Vc)/4
したがって、この図10に示す抵抗素子の基板領域の接続態様においては、図11に示すように、ノードBC間の基板からの平均電位Vx(BC)とノードAB間の基板からの平均電位Vx(AB)は、実施の形態1と逆の態様であるものの、その絶対値が等しく、符号が逆である。従って、抵抗素子R1およびR2は、基板電圧非印加時の抵抗値が等しいため、抵抗比の変化率が、応じて、符号が反対で大きさが同じとなる。したがって、図10に示す接続態様においても、抵抗素子R1およびR2の合成抵抗2・Rは、その基板電圧依存性を相殺することができ、ノードAおよびC間の抵抗値を、安定に基板電圧に依存しない一定値に保持することができる。
【0042】
図12は、図10に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図12において、抵抗素子R1およびR2に共通に、Pウェル35およびP型高濃度不純物領域33が設けられる。Pウェル35表面に互いに間をおいて、同じ矩形形状の素子分離膜22Aおよび22Bが配置される。これらの素子分離膜(STI膜)22Aおよび22Bは、高濃度不純物領域33によりそれぞれ囲まれる。
【0043】
素子分離膜22Aおよび22B上に、ポリシリコンで構成される矩形形状の抵抗体21Aおよび21Bがそれぞれ配置される。抵抗体21Aは、コンタクト24aを介して接続配線26Aに電気的に接続され、また抵抗体21Bが、コンタクト24dを介して接続配線26Cに電気的に接続される。抵抗体21Aおよび21Bは、それぞれ、コンタクト24bおよび24cを介して接続配線26Bに電気的に接続され、これにより、抵抗素子R1およびR2が直列に接続される。
【0044】
素子分離膜22Aおよび22Bの間の領域において抵抗体21Aおよび21Bと並行に、矩形形状のバイアス配線37が配置される。このバイアス配線37は、例えば第1メタル配線で構成され、第1メタル配線で構成される接続配線26Bと連結される。このバイアス配線37は、コンタクト38を介して高濃度不純物領域33に電気的に接続される。抵抗素子R1およびR2を形成する素子分離膜22Aおよび22Bの間に、バイアス配線37を配置することにより、抵抗素子R1およびR2の接続ノードBの電位を、これらの抵抗素子R1およびR2の基板電圧に設定することができる。
【0045】
バイアス配線としては、抵抗素子R1およびR2に共通に1本配置されるだけであり、これらの抵抗素子R1およびR2で構成される抵抗回路のレイアウト面積を低減することができる。また、ウェルも、抵抗素子R1およびR2に共通に配置され、ウェル分離の領域が不要となり、抵抗素子R1およびR2の全体のレイアウト面積を低減することができる。
【0046】
図13は、図12に示す線L13−L13に沿った断面構造を概略的に示す図である。この図13において、P型基板30表面にN型ウェル29が形成され、このNウェル29表面にPウェル35が配置される。Pウェル35表面に、素子分離膜22Aおよび22Bが、互いに間をおいて配置される。これらの素子分離膜22Aおよび22B各々を取囲むように、Pウェル35表面に高濃度P型不純物領域33が形成される。
【0047】
素子分離膜22Aおよび22B上にポリシリコンで構成される抵抗体21Aおよび21Bがそれぞれ配置される。抵抗体21Aおよび21Bは、それぞれ、コンタクト24bおよび24cを介して接続配線26Bに電気的に接続される。一方、接続配線26Bは、素子分離膜22Aおよび22Bの間の領域においてバイアス配線37に連結される。バイアス配線37が、下部に配置される高濃度不純物領域33に、コンタクト38を介して電気的に接続される。
【0048】
この図13に示す構成の場合、抵抗体21Aおよび21Bそれぞれに対してPウェルを分離する必要はなく、ウェル分離領域は不要となり、また、バイアス配線も1本である。したがって、抵抗素子の全体のレイアウト面積を、より低減することができ、小占有面積で全体として基板電圧依存性の見えない抵抗素子を実現することができる。
【0049】
以上のように、この発明の実施の形態2に従えば、直列接続される抵抗素子の接続ノードの電位を基板電圧として利用している。したがって、直列接続される抵抗素子それぞれに、バイアス配線を配置する必要がなく、また、基板領域(Pウェル)を分離する必要がなく、レイアウト面積が低減される。また、実施の形態1と同様、直列接続される抵抗素子の全体としての抵抗値の基板電圧依存性をなくすことができる。
【0050】
[実施の形態3]
図14は、この発明の実施の形態3に従う抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図14において、抵抗素子R1およびR2が、実施の形態2と同様、ノードAおよびCの間に直列に接続され、抵抗素子R1およびR2の接続ノードBの電位が、高濃度不純物領域42を介してPウェル45に伝達される。抵抗素子R1およびR2の平面レイアウトは、図12に示す平面レイアウトにおいて接続配線26Aおよび26Cが、図の縦方向に延在する点を除いて同じである。図14において、これらの抵抗素子R1およびR2の図12に示す平面レイアウトと対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0051】
図14に示す平面レイアウトにおいては、さらに、素子分離膜22Aの外部に、Pウェル表面に素子分離膜42Aおよび42Bが配置され、また、素子分離膜22B外部に、Pウェル表面に素子分離膜42Cおよび42Dが配置される。これらの素子分離膜42A−Dと素子分離膜22Aおよび22Bは、抵抗素子を構成する素子分離膜22Aおよび22Bと同一ピッチでかつ同一形状で配置され、また、同一材料で形成される。これらの素子分離膜42A−42D上に、ポリシリコンで形成される抵抗体41A−41Dがそれぞれ配置される。これらの抵抗体41A−41Dの、抵抗体21Aおよび21Bと同じ形状を有し、かつ同一材料で形成される。
【0052】
抵抗体42Aおよび42B各々が、コンタクト44aおよび44bを介して第1メタル配線で構成されるダミー接続配線46Aにそれぞれの一端が接続され、また、コンタクト44cおよび44dを介してそれぞれの他端がダミー接続配線46Bに接続される。これらのダミー接続配線46Aおよび46Bは、たとえば第1メタル配線で構成される配線47Aに共通に接続され、ノードDを介して接地ノードに結合される。
【0053】
抵抗体41Cおよび41Dは、それぞれの一方側端部においてコンタクト44eおよび44fを介してそれぞれ共通に、ダミー接続配線46Cに接続され、また、他方側端部において、コンタクト44gおよび44hを介してダミー接続配線46Dに共通に接続される。これらのダミー接続配線46Cおよび46Dは、各々第1メタル配線で構成され、第1メタル配線で形成されるダミー配線47Bに共通に連結される。接続配線47Bは、ノードEを介して接地ノードに結合される。ダミー接続配線46Aおよび46Cと接続配線26Bは、同一材料で同じ形状に形成され、等間隔に互いに分離される。
【0054】
この図14に示す配置の場合、抵抗体41Aおよび41B、41Cおよび41Dは、それぞれ両端が接地電圧に固定され、ダミー素子として利用される。このダミー素子を、抵抗素子R1およびR2と同じパターンおよびピッチで配置する。このダミー素子の配置によるパターンの繰返しにより、製造工程時におけるマスクずれおよび周辺部でのパターニング歪などの影響を抑制して、高精度で、抵抗素子R1およびR2をパターニングする。抵抗素子R1およびR2の抵抗体および素子分離膜の正確なパターニングにより、所望の抵抗値を有する抵抗素子を正確に実現することができる。
【0055】
この図14に示す抵抗素子R1およびR2の抵抗値の基板電圧依存性は、実施の形態2に示す構成の場合と同じであり、その詳細説明は省略する。
【0056】
以上のように、この発明の実施の形態3に従えば、抵抗素子の直列体の配置領域外部に隣接して、抵抗素子の直列体と同じパターンのダミー素子を配置している。これにより、抵抗素子のパターニングに対するパターンの規則性が維持され、正確に抵抗素子R1およびR2をパターニングして高精度で所望の抵抗値を有する抵抗素子を実現することができる。
【0057】
[実施の形態4]
図15は、この発明の実施の形態4に従う抵抗の接続態様を示す図である。図15において、ノードAおよびノードBの間に抵抗素子Z1およびZ2が直列に接続され、また、ノードBおよびCの間に、抵抗素子Z3およびZ4が直列に接続される。抵抗素子Z1およびZ2の基板領域は、ノードAと電気的に接続され、抵抗素子Z3およびZ4の基板領域は、ノードCに電気的に接続される。抵抗素子Z1−Z4は、抵抗値Rを有する。
【0058】
この図15に示す抵抗の接続態様は、ノードAおよびBの間に接続される抵抗素子R1を、抵抗素子Z1およびZ2に分割し、また、ノードBおよびCに接続される抵抗素子R2を、抵抗素子Z3およびZ4に分割した構成と等価である。抵抗素子Z1、Z2、Z3およびZ4のそれぞれの基板領域からの平均電位Vx(Z1)、Vx(Z2)、Vx(Z3)およびVx(Z4)は、ノードA、BおよびCの電圧をVa、Vb、およびVcとし、抵抗素子Z1−Z3の抵抗値をRとすると、次式で表わされる:
Vx(Z1)=(−Va+Vb)/4、
Vx(Z2)=3(−Va+Vb)/4、
Vx(Z3)=3(Vb−Vc)/4、
Vx(Z4)=(Vb−Vc)/4。
【0059】
ノードBの電圧Vbは、(Va+Vc)/2であり、これを代入すると、上式に示される平均電位Vx(Z1)−Vx(Z4)は、次式に変換される:
Vx(Z1)=(−Va+Vc)/8、
Vx(Z2)=3(−Va+Vc)/8、
Vx(Z3)=−3(Va+Vc)/8、
Vx(Z4)=−(Va+Vc)/8。
【0060】
上式から、抵抗素子Z1およびZ4の基板電圧からの平均電位は、符号が逆でその大きさは同じであり、また、抵抗素子Z2およびZ3は、それぞれの基板電位からの平均電位が、符号が逆でかつその大きさが同じである。
【0061】
したがって、抵抗素子Z1−Z4の抵抗値が一次近似式で表わされる場合、抵抗素子Z1−Z4の直列体において、抵抗素子Z1およびZ4の基板電圧依存性が相殺され、また、抵抗素子Z2およびZ3の基板電圧依存性が互いに相殺される。したがって、抵抗素子Z1−Z4が直列に接続される抵抗回路において、これらの抵抗素子Z1−Z4の抵抗値の基板電圧依存性が相殺され、その合成抵抗値は基板領域からの平均電圧が0、すなわち基板電圧非印加時の抵抗値に維持される。
【0062】
図16は、図15に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図16において、抵抗素子Z1およびZ2は、Pウェル50A上に形成され、抵抗素子Z3およびZ4は、Pウェル50B上に形成される。これらのPウェル50Aおよび50Bは、互いに分離して配置される。このウェル分離の構造としては、一例として、先の実施の形態1と同様の構成が利用される。
【0063】
Pウェル50A表面に、互いに間をおいて矩形形状の素子分離膜52Aaおよび52Abが配置され、これらの素子分離膜52Aaおよび52Ab上に、それぞれ、ポリシリコンで構成される矩形形状の抵抗体53Aaおよび53Abが配置される。これらの抵抗体53Aaおよび53Abは、その一端において第1メタル配線で構成される接続配線54Aにより相互接続される。抵抗体53Aaの図の上側の他方端は、内部接続配線56Aを介して第1メタル配線で構成される接続配線57Aに接続される。接続配線57AがノードAに接続される。
【0064】
素子分離膜52Aaの接続配線57A側の外部において、接続配線57Aに連結するように、第1メタル配線で構成される接続バイアス配線58Aが矩形形状に形成される。このバイアス配線58Aは、Pウェル50A表面に、素子分離膜を囲むように形成される高濃度不純物領域51Aにコンタクトを介して電気的に接続される。これにより、抵抗素子Z1およびZ2の基板領域を構成するPウェル50Aの電位が、ノードAの電圧レベルに設定される。
【0065】
Pウェル50Aにおいて、また、素子分離膜52Aaおよび52Abならびに抵抗体53Aaおよび53Abと同一パターン(形状、サイズ、材料)を有する素子分離膜60Aaおよび60Abならびに抵抗体61Aaおよび61Abが配置される。これらの抵抗体61Aaおよび61Abは、互いに平行に配置されるダミー接続配線62Aaおよび62Abにより、それぞれの両端部において相互接続される。ダミー接続配線62Aaおよび62Abは、それぞれ、内部接続配線56Aおよび54Aと整列して配置される。これらのダミー接続配線62Aaおよび62Abは、ダミー接続配線63Aに結合される。このダミー接続配線63Aは、接地ノードに結合される。
【0066】
Pウェル50Bにおいても、Pウェル50Aにおける抵抗素子Z1およびZ2の配置と同様、矩形形状の素子分離膜52Baおよび52Bbが互いに分離して配置され、また、素子分離膜52Baおよび52Bb上に矩形形状の抵抗体53Baおよび53Bbが配置される。抵抗体53Baは、接続配線55を介して抵抗体53Abに接続される。抵抗体53Baおよび53Bbは、図の下側端部において、また、接続配線54Bにより相互接続され、これらの抵抗素子Z3およびZ4が、直列に接続される。
【0067】
抵抗体53Bbの他方端(図の上側端部)は、それぞれ第1メタル配線で構成される接続配線56Bを介して接続配線57Bに接続される。この接続配線57Bに連結するように、バイアス配線58Bが、第1メタル配線で形成される。このバイアス配線58Bは、コンタクトを介して下部に形成される高濃度P型不純物領域51Bに電気的に接続され、基板領域のPウェル50Bが、ノードCの電圧レベルに設定される。
【0068】
素子分離膜52Baおよび52Bbならびに抵抗体53Baおよび53Bbと同一パターンおよび材料で、また、素子分離膜60Baおよび60Bbならびに抵抗体61Baおよび61Bbが配置される。抵抗体61Baおよび61Bbは、対向端部(図の上側端部および図の下側端部)において、ダミー接続配線62Baおよび62Bbにより、互いに電気的に接続される。これらのダミー接続配線62Baおよび62Bbは、またダミー接続配線63Bに電気的に接続される。このダミー接続配線63Bは、接地ノードに結合される。ダミー接続配線62Baおよび62Bbは、それぞれ内部接続配線56Bおよび54Aと整列して配置される。
【0069】
抵抗体53Abおよび53Baが、図の上側端部において第1メタル配線で構成される接続配線55により相互接続される。
【0070】
この図16に示す平面レイアウトにおいては、素子分離膜60Aaおよび60Ab上に形成される抵抗体61Aaおよび61Abと素子分離膜60Baおよび60Bbと抵抗体61Baおよび61Bbにより、パターンの規則性を維持するダミー素子がいわゆる形状ダミー素子として配置される。Pウェル50Aおよび50B内において、いわゆる形状ダミー素子を配置し、抵抗素子Z1−Z4のパターンずれを抑制し、正確な抵抗値を実現することを図る。
【0071】
この図16に示すように、抵抗素子を、その抵抗値が小さい抵抗素子に細分化する場合においても、1つの抵抗に対応する細分化された抵抗素子を同じウェル内に形成して、これらの細分化された抵抗素子の基板領域の電圧を共通に設定することにより、これらの細分化抵抗がすべて直列に接続される場合、合成抵抗の基板電圧依存性を相殺することができ(基板電圧依存性が逆特性の細分化抵抗の数が互いに等しい場合)、基板電圧依存性のない抵抗値を有する抵抗素子を実現することができる。
【0072】
[実施の形態5]
図17は、この発明の実施の形態5に従う抵抗素子の接続態様を示す図である。図17において、ノードAおよびBの間に抵抗素子Z1およびZ2が直列に接続され、ノードBおよびCの間に抵抗素子Z3およびZ4が直列に接続される。これらの抵抗素子Z1およびZ2の基板領域は、ノードBに電気的に接続され、抵抗素子Z3およびZ4の基板領域は、ノードBと電気的に接続される。これらの抵抗素子Z1−Z4の抵抗値は、互いに等しく、Rである。
【0073】
今、ノードA、BおよびCの電圧をVa、Vb、およびVcとする。この場合、電圧Vbは、(Va+Vc)/2に等しい。抵抗素子Z1−Z4それぞれの基板領域からの平均電位Vx(Z1)−Vx(Z4)は、それぞれ、次式で表わされる:
Vx(Z1)=3・(Va−Vc)/8、
Vx(Z2)=(Va−Vc)/8、
Vx(Z3)=−(Va−Vc)/8、
Vx(Z4)=(−3)・(Va−Vc)/8。
【0074】
したがって、抵抗素子Z1およびZ4の基板からの平均電位は大きさが同じで符号が逆であり、また、抵抗素子Z2およびZ3の基板からの平均電位は、大きさが同じでかつその符号が逆である。したがって、抵抗素子Z1およびZ2の抵抗値の基板電圧依存性は、それぞれ、抵抗素子Z3およびZ4の抵抗値の基板電圧依存性により相殺され、したがってこの図17に示す接続の場合においても、抵抗素子Z1−Z4で構成される抵抗回路の合成抵抗値の基板電圧依存性は相殺される。
【0075】
図18は、図17に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図18に示す平面レイアウトは、以下の点で、図16に示す抵抗素子の平面レイアウトとその配置が異なる。すなわち、抵抗素子Z1−Z4に対し共通にPウェル50および高濃度不純物領域51が配置される。抵抗素子Z2およびZ3それぞれに対応する素子分離膜52Abおよび52Ba上に形成される抵抗体53Abおよび53Baが、第1メタル配線で形成される接続配線70により、その一端において相互接続される。この接続配線70に連結して、また、第1メタル配線で形成されるバイアス配線71が、これらの素子分離膜53Abおよび53Baの間に配置される。このバイアス配線71が、コンタクトを介して下層に配置される高濃度不純物領域51に電気的に接続される。
【0076】
また、抵抗素子Z1およびZ4のそれぞれの一端は、ノードAおよびノードCにそれぞれ接続する第1メタル配線で形成される接続配線72および73に接続される。これらの接続配線72および73は、それぞれ、コンタクトを介して抵抗体52Aaおよび52Bbに電気的に接続される。
【0077】
この図18に示す抵抗素子の配置の他の構成は、図16に示す抵抗素子の配置と同じであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0078】
図18に示すように、バイアス配線71が、抵抗素子Z2およびZ3を形成する領域の間に配置され、また、抵抗素子Z1−Z4ならびに形状ダミー素子が共通のPウェル50に配置される。したがって、この配置においても、先の実施の形態2と同様、Pウェル50のレイアウト面積を低減することができる。また、抵抗素子を抵抗値の小さな抵抗素子へ細分化し、それらの細分化された抵抗素子Z1−Z4を複数個(偶数個)直列に接続することにより、所望の抵抗値を有する基板電圧依存性が十分に隠された抵抗回路を実現することができる。
【0079】
また、細分化された抵抗素子を単位抵抗として利用することにより、必要とされる抵抗値を有する抵抗素子を、実現することができる。1つの抵抗素子を構成する細分化抵抗素子の数は2に限定されない。基板電圧依存性が互いに逆となる細分化抵抗素子の数が互いに等しければよい。
【0080】
[実施の形態6]
図19は、この発明に従う抵抗素子を含む抵抗回路が適用されるオーディオ用ΔΣアナログ/デジタル変換回路の構成を概略的に示すブロック図である。図19において、このΔΣアナログ/デジタル変換回路は、アナログ入力信号AINLおよびAINRそれぞれに対して設けられるシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rと、これらのシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rに対して設けられるΔΣ変調器102Lおよび102Rと、これらのΔΣ変調器102Lおよび102Rの出力信号をフィルタ処理してデジタル信号DOUTを生成するデジタルフィルタ104を含む。
【0081】
アナログ入力信号AINLおよびAINRは、それぞれ、シングルエンドのLおよびRチャネルのアナログ入力信号である。このシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rで、シングルエンドのアナログ入力信号を差動信号に変換することにより、その入力信号の振幅を増大させるとともに、電源ノイズなどの同相ノイズを相殺して信号品質を改善する。
【0082】
ΔΣ変調器102Lおよび102Rは、それぞれ、与えられた差動信号に対しΔΣ変調を行ない、デジタル信号を生成する。ΔΣ変調器102Lおよび102Rは、アナログ入力信号と、前のサイクルにおいて量子化された出力信号と差分を求め、その差動信号を積分処理した後再び量子化する処理を行ない、アナログ入力信号をデジタル信号に変換する。ΔΣ変調器102Lおよび102Rは、サンプリングレートが高くされたオーバサンプリングを行って、ノイズシェーピングを行って、ノイズ成分を高周波領域に移動させる。
【0083】
このΔΣ変調器102Lおよび102Rは、1ビット出力データ列を生成してもよく、多ビットデジタルデータ列を生成してもよい。なお、このΔΣ変調器102Lおよび102Rの次数は、用途に応じて適宜定められる。
【0084】
デジタルフィルタ104は、これらのからのデータ列の低域成分を通過させ、高周波ノイズを除去し、また、デシメーション処理を行って、ΔΣ変調器102Lおよび102Rからの出力信号の間引きを行ってサンプリングレートを低下させて、デジタル信号を生成する。
【0085】
このデジタルフィルタ104およびΔΣ変調器102Lおよび102Rへは、クロック制御回路106からのクロック信号が与えられる。このクロック制御回路106は、システムクロックSYSCLKに従って必要なクロック信号を生成する。クロック制御回路106からの内部クロック信号に従って、ΔΣ変調器102Lおよび102Rが、量子化ノイズ成分を抑圧するために、必要とされるサンプリングレートより高いサンプリングレートでΔΣ変調操作を行ない、デジタルフィルタ104が、この高域成分側にシフトしたノイズ成分(ノイズシェービング)を除去するとともにサンプリングレートを低下させる。
【0086】
通常、高精度でΔΣ変調を行なうために、差動信号が利用され、シングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rにおいては、差動増幅器が利用される。
【0087】
図20は、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rの構成の一例を概略的に示す図である。図20において、シングルエンド/差動信号変換器100(100Lまたは100R)は、2つの縦続接続される反転増幅器(オペアンプ:演算増幅器)110および112を含む。オペアンプ110は、その負入力に抵抗素子RR1を介してアナログ入力信号AIN(AINLまたはAINR)を受け、その出力が、抵抗素子RR2を介してその負入力に結合される。オペアンプ110の正入力は、基準電圧源(バイアス電圧源:図20においては、基準電圧源として接地を示す)に結合される。
【0088】
オペアンプ112は、その負入力に、抵抗素子RR3を介してオペアンプ110の出力信号を受け、また、その出力および負入力が、抵抗素子RR4を介して相互接続される。オペアンプ112の正入力は、基準電圧源に結合される。
【0089】
抵抗素子RR1−RR4の抵抗値は、同じである。オペアンプ110から、アナログ入力信号AINと逆相の内部アナログ信号Vout_nが生成され、オペアンプ112から、アナログ入力信号AINと同相の内部アナログ信号Vout_pが生成される。
【0090】
オペアンプ110および112は、与えられた入力信号を反転増幅する反転増幅動作を実行する。この場合、差動信号Vout_nおよびVout_pが、その増幅率(振幅)が等しくなるように、オペアンプ110および112の増幅率は、正確に−1に設定する必要がある。この場合、オペアンプ110および112の増幅率Aは、−(RR2/RR1)および−(RR4/RR3)でそれぞれ与えられる。
【0091】
図21は、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rの他の構成を概略的に示す図である。この図21に示すシングルエンド/差動信号変換器100(100L,100R)は、以下の点で図20に示すシングルエンド/差動信号変換器100とその構成が異なる。すなわち、初段のオペアンプ114が、その負入力と出力が配線により結合され、オペアンプ112の構成は、図24に示すオペアンプ112と同じである。
【0092】
オペアンプ114は、負入力および出力が配線により相互接続され、正入力にアナログ入力信号AINを受ける。このオペアンプ114は、いわゆるボロフォテージフォロワとして動作し、アナログ入力信号AINに応じた内部アナログ信号Vout_pを生成する。したがって、図21に示す構成の場合、オペアンプ112からの出力信号は、図24に示す構成と異なり、アナログ入力信号AINと同相の内部アナログ信号Vout_nとなる。
【0093】
この場合においても、オペアンプ112は、差動信号Vout_pおよびVout_nの振幅を等しくするため、その増幅率を正確に1に設定する必要がある。
【0094】
図22は、反転増幅器の抵抗素子RR1−RR4の基板電圧依存性を概略的に示す図である。図22において、横軸に、基板領域からの抵抗素子に対する平均電位を示し、縦軸に抵抗比を示す。基板からの平均電位が+ΔV高くなった場合、抵抗比は、+Δrだけ増大する。一方、この平均電位Vxが−ΔV変化すると、抵抗比も同様−Δr変化する。
【0095】
したがって、たとえば図20に示すオペアンプ110および112各々において、抵抗値に基板電圧依存性が存在する場合には、以下のように、増幅率が変化する。
【0096】
入力信号が基準電圧源の電圧よりも高い場合、入力抵抗の基板電位からの平均電位が性となり、また、帰還抵抗において基板領域からの平均電位が負となる。従って、増幅率(ゲイン)が−(R(0)−Δr)/(R(0)+Δr)となる。ここで、R(0)は、抵抗素子の基板からの平均電位がゼロの時、すなわち基板電圧非印加時の抵抗値を示す。
【0097】
一方、入力信号が基準電圧源の電圧よりも低い場合、入力抵抗の基板からの平均電位が負となり、帰還抵抗の基板からの平均電位が、正となる。従って、増幅率は、−(R(0)+Δr)/(R(0)−Δr)となる。
【0098】
したがって、この基板電圧依存性が抵抗素子RR1−RR4に存在する場合、増幅率を正確に−1に維持することができず、正確な差動信号を生成できず、ΔΣ変調において歪が生じるという問題が生じる。そこで、シングルエンド/差動信号変換器100Lおよび100Rに含まれる反転増幅器(差動増幅器)の入力抵抗RR1、RR2および帰還抵抗RR3、RR4に対し、これまでの実施の形態1から5の抵抗素子の接続を適用する。
【0099】
図23は、この発明の実施の形態6に従うオペアンプの抵抗素子の接続態様を概略的に示す図である。この図23において、オペアンプ120の負入力には、抵抗素子R1を介してアナログ入力信号Vinが与えられ、また、その出力が抵抗素子R2を介して負入力に結合される。このオペアンプ120は、図20および図21に示すオペアンプ110または112のいずれかである。抵抗素子R1およびR2は、図20および21に示すオペアンプ110または112の入力抵抗および帰還抵抗である。
【0100】
抵抗素子R1およびR2それぞれに対し、これまでに説明した実施の形態1から5のいずれかの抵抗素子の接続態様を適用する。これにより、抵抗素子R1およびR2それぞれの抵抗値の基板電圧依存性は隠され、増幅率−(R2/R1)が規定値の“−1”となり、その増幅率の基板電圧依存性をなくすことができる。これにより、ΔΣ変調を高精度で行なうことができ、歪の少ないアナログ/デジタル変換を行なうΔΣ変調型アナログ/デジタル変換器を実現することができる。
【0101】
なお、図23に示す反転増幅器の構成は、この図19に示すオーディオ用ΔΣ変調型アナログ/デジタル変換器への適用に限定されない。一般の反転増幅器に対しても、適用することができる。
【0102】
[実施の形態7]
図24は、この発明の実施の形態7に従う増幅回路の接続の構成を概略的に示す図である。図24において、オペアンプ120の負入力へは、入力信号Vinが抵抗素子ZR1およびZR2の直列体を介して与えられる。オペアンプ120の出力は、抵抗素子ZR4およびZR3の直列体を介して負入力に結合され、その正入力は、基準電圧源に結合される。すなわち、入力抵抗が抵抗素子ZR1およびZR2の直列体で構成され、帰還抵抗が、抵抗素子ZR3およびZR4の直列体で構成される。
【0103】
抵抗素子ZR1の基板領域へは、入力信号Vinが供給される。抵抗素子ZR2の基板領域へは、オペアンプ120の負入力ノードの電位が供給される。
【0104】
一方、抵抗素子ZR4は、その基板領域へは、出力信号Voutが供給され、抵抗素子ZR3の基板領域は、オペアンプ120の負入力に結合される。
【0105】
この図24に示す配置において、抵抗素子ZR1およびZR2は、各々、抵抗値Raを有し、抵抗素子ZR3およびZR4は、各々、抵抗値Rbを有する。この場合、オペアンプ120は、反転増幅器として動作し、その増幅率Avは、−(Rb/Ra)である。
【0106】
図24に示す抵抗素子ZR1−ZR4の接続において、抵抗素子ZR1およびZR2は抵抗値が互いに等しく、また、抵抗素子ZR3およびZR4も互いに抵抗値が等しいため、入力抵抗を構成する抵抗素子ZR1およびZR2は、各々の抵抗値の基板電圧依存性は逆方向でかつ大きさが同じであり、また、帰還抵抗を構成する抵抗素子ZR3およびZR4も、それぞれの抵抗値の基板電圧依存性は逆方向でかつ大きさが同じである。したがって、入力信号Vinおよび出力信号Voutの電位レベルが変動しても、抵抗素子ZR1およびZR2の直列体で構成される入力抵抗および抵抗素子ZR3およびZR4の直列体で構成される帰還抵抗各々においては、その抵抗値RaおよびRb各々の基板電圧依存性が見えなくされる。これにより、オペアンプ120の利得(増幅率)の基板電圧依存性がなくなり、歪の少ない増幅動作を行なうことができる。
【0107】
[変更例1]
図25は、この発明の実施の形態7の変更例の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図25において、オペアンプ120の負入力は、抵抗素子ZR5およびZR6の直列体を介して入力信号Vinを受け、その出力が、抵抗素子ZR8およびZR7の直列体を介して負入力に結合される。オペアンプ120の正入力は、基準電圧源に結合される。抵抗素子ZR5およびZR6の直列体が入力抵抗を構成し、抵抗素子ZR7およZR8の直列体が帰還抵抗を構成し、オペアンプ120は、反転増幅器として動作する。
【0108】
抵抗素子ZR5およびZR6の基板領域は、抵抗素子ZR5およびZR6の接続ノードに結合される。抵抗素子ZR7およびZR8の基板領域は、これらの抵抗素子ZR7およびZR8の接続ノードに結合される。抵抗素子ZR5およびZR6は抵抗値Raを有し、抵抗素子ZR7およびZR8は抵抗値Rbを有する。
【0109】
この図25に示す抵抗素子ZR5−ZR8の接続構成の場合、入力信号Vinが変化し、応じて出力信号Voutが変化しても、抵抗素子ZR5およびZR6の抵抗値の基板電圧依存性は相殺され、また、抵抗素子ZR7およびZR8の抵抗値の基板電圧依存性は互いに相殺される。したがって、この図25に示す接続構成においても、オペアンプ120の増幅率は、−(Rb/Ra)の基板電圧に依存しない一定値に維持することができる。
【0110】
[変更例2]
図26は、この発明の実施の形態7の変更例2に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。図26において、オペアンプ120は、その負入力に、抵抗素子ZR10を介して入力信号Vinを受け、また、その出力が、抵抗素子ZR11を介して負入力に結合される。抵抗素子ZR10は、その基板領域がオペアンプ120の負入力に結合され、抵抗素子ZR11の基板領域は、オペアンプ120の出力ノードに結合される。抵抗素子ZR10およびZR11は、抵抗値Rを有する。
【0111】
この図26に示す構成においては、オペアンプ120は、反転増幅器として動作し、入力信号Vinと出力信号Voutは逆相の信号であり、抵抗素子ZR10およびZR11の抵抗値の基板電圧依存性は同一方向に生じる。したがって、オペアンプ120の増幅率は、−(R(0)+Δr)/(R(0)+Δr)または−(R(0)−Δr)/(R(0)−Δr)であり、基板電圧依存性による抵抗変動成分Δrの影響が相殺され、オペアンプ120の増幅率は−1に基板電圧にかかわらず一定に維持される。なお、R(0)は、基板電圧非印加時、すなわち、基板からの平均電位が0の時の抵抗素子ZR10およびZR11の抵抗値を示す。
【0112】
[変更例3]
図27は、この発明の実施の形態7の変更例3の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図27において、全差動アンプ130は、正および負の入力ならびに正および負の出力を有する。全差動アンプ130の負入力は、抵抗素子ZZ1およびZZ2の直列体を介して入力信号を受け、また、その正出力が、抵抗素子ZZ6およびZZ5の直列体を介して負入力に結合される。全差動アンプ130の正入力は、抵抗素子ZZ4およびZZ3の直列体を介して基準電圧源に結合され、またその負出力が抵抗素子ZZ8およびZZ7の直列体を介して正入力に結合される。抵抗素子ZZ1−ZZ4は、各々、抵抗値Raを有し、抵抗素子ZZ5−ZZ8は、抵抗値Rbを有する。
【0113】
抵抗素子ZZ1の基板領域は、信号入力のノードに結合され、抵抗素子ZZ2の基板領域は、全差動アンプ130の負入力に結合される。抵抗素子ZZ3の基板領域は、基準電圧源に結合され、抵抗素子ZZ4の基板領域は、全差動アンプ130の正入力に結合される。抵抗素子ZZ5の基板領域は、全差動アンプ130の負入力に結合され、抵抗素子ZZ6の基板領域は、この全差動アンプ130の正入力に結合される。抵抗素子ZZ7の基板領域は、全差動アンプ130の正入力に結合され、抵抗素子ZZ8の基板領域は、全差動アンプ130の負出力に結合される。
【0114】
この図27に示す構成の場合、抵抗素子ZZ1およびZZ2の直列体、抵抗素子ZZ3およびZZ4の直列体、抵抗素子ZZ5およびZZ6の直列体、および抵抗素子ZZ7およびZZ8の直列体各々において、抵抗素子の基板領域は、その抵抗値の基板電圧依存性が抵抗素子の直列体において相殺されるように接続されている。したがって、この全差動アンプ130においても、正および負の出力からの信号に対する増幅率(利得)は、−(Rb/Ra)の基板電圧に依存しない値に設定することができる。
【0115】
この図27に示す全差動アンプの場合、出力信号は、基準電圧源を接地とすると、次式で与えられる:
Vout_p−Vout_n=(Rb/Ra)Vin、
Vout_p=(1/2)・Vin・(Rb/Ra)、および
Vout_n=−(1/2)・Vin・(Rb/Ra)
上式から明らかなように、入力抵抗および帰還抵抗の各々の抵抗値RaおよびRbの基板電圧依存性が隠され、利得を基板電圧に依存することなく一定に維持することができ、正確に入力信号から差動信号を生成することができる。
【0116】
なお、この図27に示す構成において、入力信号Vinとして、オーディオ用ΔΣアナログ/デジタル変換器に対するアナログ入力信号AINLおよびAINRが一例として示される。したがって、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器内のシングルエンド/差動信号変換を行なう差動アンプとして、この図27に示す差動アンプが利用されてもよい。
【0117】
[変更例4]
図28は、この発明の実施の形態7の変更例4の増幅回路の構成を概略的に示す図である。この図28に示す増幅回路においては、図27に示す抵抗素子ZZ10−ZZ17に代えて、抵抗素子ZZ1−ZZ8が利用される。抵抗素子ZZ10−ZZ17の基板領域の接続を除いて、全差動アンプ130に対する接続は、図27に示す全差動アンプの構成と同じである。
【0118】
抵抗素子ZZ10およびZZ11の基板領域は、これらの抵抗素子ZZ10およびZZ11の間の接続ノードに結合され、抵抗素子ZZ12およびZZ13の基板領域は、これらの抵抗素子ZZ12およびZZ13の間の接続ノードに結合される。抵抗素子ZZ14およびZZ15の基板領域は、抵抗素子ZZ14およびZZ15の間の接続ノードに結合される。抵抗素子ZZ16およびZZ17の基板領域は、これらの抵抗素子ZZ16およびZZ17の接続ノードに結合される。抵抗素子ZZ10−ZZ13の抵抗値はRaであり、抵抗素子ZZ14−ZZ17の抵抗値はRbである。
【0119】
この図28に示す接続構成においても、抵抗素子ZZ10およびZ11の直列体、抵抗素子ZZ12およびZZ13の直列体、抵抗素子ZZ14およびZZ15の直列体、およびZZ16およびZZ17の直列体の各直列体において、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性が相殺されるように、基板領域が接続される。したがって、全差動アンプ130の増幅率において、図27に示す構成と同様、基板電圧の影響を受けることなく、Vout_p−Vout_n=−(Rb/Ra)の一定値に維持することができる。
【0120】
また、この抵抗値RaおよびRbが互いに等しい場合には、図19に示すシングルエンド/差動信号変換器内のシングルエンド/差動信号変換を行なう差動アンプとして、この図27に示す差動アンプを利用することができる。図28において、このシングルエンド/差動信号変換への適用を示すために、入力信号として、アナログ入力信号AINL、AINRを示す。
【0121】
[変更例5]
図29は、この発明の実施の形態7の変更例5の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図29において、オペアンプ140は、負入力が抵抗回路RK1を介して基準電圧源に結合され、その出力が負入力に抵抗回路RK2を介して結合される。抵抗回路RK1およびRK2は、偶数個の抵抗素子(R1、R2;R3、R4)の直列体で各々構成され、各抵抗素子の基板領域の接続として、実施の形態1から5のいずれかに示した構成を利用する。これにより、抵抗回路RK1およびRK2各々において、抵抗素子の抵抗値の基板電圧依存性を相殺して、抵抗値RaおよびRbの基板電圧依存性を無くす。
【0122】
オペアンプ140は、正入力に入力信号Vinを受ける。抵抗回路RK1およびRK2の抵抗値は、それぞれRaおよびRbである。この図29に示すオペアンプの接続形態においては、このオペアンプ140は非反転増幅動作を行ない、その増幅率Abは、(1+Rb/Ra)で表わされる。
【0123】
したがって、この非反転増幅動作を行なうオペアンプ140の接続においても、入力抵抗を構成する抵抗回路RK1および帰還抵抗を構成する抵抗回路RK2各々において、実施の形態1から5のいずれかの構成を適用してその入力抵抗の抵抗値Raおよび帰還抵抗の抵抗値Rb各々の基板電圧依存性を見えなくすることにより、アンプ140の増幅率の基板電圧依存性を隠すことができ、正確な歪の少ない増幅信号Voutを得ることができる。
【0124】
以上のように、この発明の実施の形態7に従えば、オペアンプの入力抵抗および帰還抵抗各々において、その抵抗値の基板電圧依存性が相殺されるように基板領域の接続を行なっており、歪の少ない増幅動作を行なう差動増幅回路を得ることができる。
【0125】
また、これらの増幅器を、例えばオーディオ用のA/D変換回路のシングルエンド/差動信号変換部に対して適用することにより、歪の少ないアナログ差動信号を生成することができる。
【0126】
[実施の形態8]
図30は、この発明の実施の形態8に従う抵抗素子が適用される高精度オーディオ用ΔΣデジタル/アナログ変換回路の全体の構成を概略的に示す図である。図30において、ΔΣデジタル/アナログ変換回路は、入力デジタル信号DINのサンプリング周波数を等価的に増加させるインタポレーションフィルタ200と、このインタポレーションフィルタ200からのLおよびRチャネルに対応するデータに対しそれぞれΔΣ変調を行なうΔΣ変調器202Lおよび202Rと、これらのΔΣ変調器202Lおよび202Rの出力信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を電流信号の形態で出力する電流DAC(デジタル/アナログ変換器)204Lおよび204Rと、これらの電流DAC204Lおよび204Rからの電流信号を電圧信号に変換するI/V(電流/電圧)変換器206Lおよび206Rを含む。I/V変換器206Lおよび206Rから、それぞれLチャネル用のアナログ出力信号AOUTLおよびRチャネル用の出力アナログ信号AOUTRが生成される。
【0127】
インタポレーションフィルタ200、ΔΣ変調器202L,202Rおよび電流DAC204Lおよび204Rの動作タイミングは、クロック(CLK)制御回路208からの内部クロック信号により制御される。このクロック制御回路208は、システムクロック信号SYSCLKに従って内部タイミングクロック信号を生成する。
【0128】
インタポレーションフィルタ200へは、デジタル入力信号DINとして、Lチャネル信号およびRチャネル信号が時系列的に与えられ、これらのデジタル入力信号DINに対しサンプリング値をインタポレーション(補間)を行なってそのサンプリング周波数を等価的に増加させた後低域成分を通過させる。このインタポレーションフィルタ200によるインタポレーションにより、量子化ノイズ等のノイズ成分を、高周波領域にシフトさせるノイズシェーピングを行ない、その後の低域成分通過処理により、ノイズ成分を除去する。
【0129】
ΔΣ変調器202Lおよび202Rは、このインタポレーションフィルタ200から与えられるLチャネル信号およびRチャネル信号それぞれに対し、ΔΣ変調を行なう。このとき、インタポレーションフィルタ200からは、Lチャネル信号およびRチャネル信号がそれぞれ並列に出力される。デジタル入力信号DINとして、Lチャネル信号およびRチャネル信号が時系列的に与えられ、その時系列信号が、Lチャネル信号Rチャネル信号に分離されて出力されるため、これらのΔΣ変調器202Lおよび202Rは、1サンプリング期間遅延等の遅延信号を相互に送受して、Lチャネル信号およびRチャネル信号に対するΔΣ変調をそれぞれ実行する。
【0130】
電流DAC204Lおよび204Rは、このΔΣ変調器202Lおよび202Rからそれぞれ与えられるデジタル信号を電流信号に変換して出力する。したがって、この電流DAC204Lおよび204Rからは、ΔΣ変調されたデジタル信号を電流信号に変換したアナログ信号が生成される。
【0131】
この電流信号を生成することにより、高速で、ΔΣ変調された信号をアナログ信号に変換し、また電流加算により容易にΔΣ変調された信号に対応する大きさのアナログ電流信号を生成する。この電流DAC204Lおよび204Rの構成としては、デルタシグマ変調されたデジタル信号に対応する電流を供給する構成であれば、任意の構成を利用することができる。
【0132】
I/V変換器206Lおよび206Rは、電流DAC204Lおよび204Rから与えられたアナログ電流信号をアナログ電圧信号に変換し、それぞれアナログLチャネル信号AOUTLおよびアナログRチャネル信号AOUTRを生成する。
【0133】
このインタポレーションフィルタ200によるインタポレーションを行ない、また電流DAC204Lおよび204Rにより電流信号を生成することにより、高精度でデジタル/アナログ変換を行なうことができる。
【0134】
この構成の場合、最終的にI/V変換器206Lおよび206Rにおいては、オペアンプを利用して、電流/電圧変換が行なわれる。この電流/電圧変換においては、電流信号に応じた電圧信号を生成して歪の少ない信号を生成するために、I/V変換操作に精度が要求される。
【0135】
図31は、I/V変換器206Lおよび206Rの構成の一例を概略的に示す図である。これらのI/V変換器206Lおよび206Rは、同一構成を有するため、図31においては、I/V変換器206で、これらのI/V変換器206Rおよび206Lを示す。
【0136】
図31において、I/V変換器206(206L,206R)は、前段の電流DAC204(204L,204R)の電流源214から供給されるアナログ入力電流Iinを負入力に受けるオペアンプ210を含む。このオペアンプ210の出力および負入力は、抵抗素子Zを介して相互接続され、その正入力は、基準電圧源Vrに結合される。
【0137】
電流DAC204に含まれる電流源214は、ΔΣ変調されたデジタル信号に対応する電流を供給する。従って、この電流源214は、ΔΣ変調されたデジタル信号に応じて供給電流量が調整される可変電流源で構成されるが、図31においては、単にアナログ電流信号を供給するように示す。
【0138】
オペアンプ210は、入力インピーダンスは高く、この電流源214からのアナログ電流信号Iinは、抵抗値Rを有する抵抗素子Zを介して出力ノードに伝達される。したがって、出力信号Voutは、Vr−R・Iinで表わされる。但し、電流Iinは、オペアンプ210の負入力から出力に向かって流れる方向を正の電流とする。
【0139】
出力信号Voutは、抵抗素子Zの抵抗値Rに依存するため、入力電流Iinに応じた電圧信号が、出力信号Voutとして生成される。この出力電圧信号Voutは、正確に入力電流信号Iinに対応する電圧レベルであることが要求される。高精度で、電流・電圧変換を行うために、抵抗素子Zとして、これまでの実施の形態1から5において説明した抵抗素子の直列体の構成を利用する。
【0140】
図32は、図31に示すI/V変換回路に含まれる抵抗素子Zの具体的配置の一例を示す図である。図32において、抵抗素子Zは、サブ抵抗素子ZS1およびZS2の直列体を含む。サブ抵抗素子ZS1の基板領域は、オペアンプ210の負入力に結合され、サブ抵抗素子ZS2の基板領域は、オペアンプ210の出力に結合される。これらのサブ抵抗素子ZS1およびZS2の抵抗値は、互いに等しく、Rである。
【0141】
電流DAC204の電流源214からのアナログ電流信号Iinは、符号を有する信号である。したがって、サブ抵抗素子ZS1およびZS2に印加される電圧は、このアナログ入力信号Iinの符号に応じて、その極性が異なる。しかしながら、いずれの場合においても、これらのサブ抵抗素子ZS1およびZS2の基板領域からの平均電位は、逆方向であり、かつその大きさは等しい。したがって、サブ抵抗素子ZS1およびZS2の合成抵抗2・Rは、基板電圧の影響を受けることなく一定値を維持し、出力信号Voutとして、正確に、アナログ入力信号Iinに応じた電圧信号を生成することができる。
【0142】
図33は、図31に示す抵抗素子Zの他の構成を概略的に示す図である。図33において、抵抗素子Zは、図32に示す構成と同様、サブ抵抗素子ZS3およびZS4の直列体を含む。これらのサブ抵抗素子ZS3およびZS4の基板領域は、これらの抵抗素子ZS3およびZS4の間の接続ノードに結合される。サブ抵抗素子ZS3およびZS4の抵抗値は、ともに、Rである。
【0143】
この図33に示す抵抗素子Zのサブ抵抗素子ZS3およびZS4の基板領域の接続態様においても、電流源214からの入力信号Iinにより電圧変化が生じる場合、基板領域からの各サブ抵抗素子ZS3およびZS4に対する平均電位は、その大きさが等しく符号が逆となる。したがって、アナログ電流信号Iinの符号にかかわらず、サブ抵抗素子ZS3およびZS4の抵抗値の基板電圧依存性は相殺され、出力信号Voutとして、基板電圧の影響を受けることなく、アナログ入力信号Iinとサブ抵抗素子ZS3およびZS4の合成抵抗(2・R)の積に応じた信号が生成される。
【0144】
以上のように、この発明の実施の形態8に従えば、高精度ΔΣデジタル/アナログ変換回路の電流/電圧変換器の増幅器に利用される抵抗素子に対し、その基板領域を、抵抗素子の直列体の基板電圧依存性が相殺されるように接続している。したがって、基板電圧の影響を受けることなく、直列体の抵抗素子の合成抵抗に応じた出力信号を生成することができ、歪の少ないアナログ電圧信号を生成することができる。これにより、歪成分の少ないオーディオ信号を再生することのできるオーディオ用デジタル/アナログ変換回路を実現することができる。
【0145】
[実施の形態9]
図34は、この発明の実施の形態9に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。図34において、オペアンプ250の負入力に対し、入力抵抗として、抵抗素子Z20およびZ21の直列体が接続され、帰還抵抗として、オペアンプ250の出力と負入力との間に抵抗素子Z23およびZ24の直列体が接続される。このオペアンプ250の正入力は基準電圧源に結合される。
【0146】
抵抗素子Z20およびZ21は、その基板領域が、それぞれ信号入力ノードおよびオペアンプ250の負入力ノードに結合される。抵抗素子Z23およびZ24の基板領域は、それぞれ、オペアンプ250の負入力および出力に結合される。抵抗素子Z20およびZ21は、それぞれ抵抗値RaおよびRcを有し、その抵抗比は、Ra:Rc=α:(1−α)である。一方、抵抗素子Z23およびZ24は、同じ抵抗値Rbを有する。
【0147】
図35は、図34に示すオペアンプ250の最終出力段の構成の一例を概略的に示す図である。図35において、オペアンプの出力段は、出力ノードに電流を供給するPチャネルMOSトランジスタPQと、出力ノードからの電流を接地ノードへ放出するNチャネルMOSトランジスタMOSトランジスタNQを含む。PチャネルMOSトランジスタPQはゲートにバイアス電圧Vbiasを受け、NチャネルMOSトランジスタNQが、そのゲートに、内部信号INを受ける。
【0148】
MOSトランジスタPQは、バイアス電圧Vbiasに従って一定の電流Isを供給する。一方、MOSトランジスタNQは、出力信号Voutの極性に応じて、出力ノードへ電流を供給するかまたは出力ノードから電流を引抜く。したがって、この出力信号Voutに従って、出力ノードからMOSトランジスタNQへ流入する電流Ioの大きさが異なると、MOSトランジスタNQのトランスコンダクタンスgmの値が変化し、その入出力特性に歪が生じる。この場合、出力ノードからの電流Ioの変動の影響を受けることなく、MOSトランジスタNQのトランスコンダクタンスgmを一定とするためには、このMOSトランジスタPQが供給する電流Isを大きくして、出力ノードからの電流Ioの変動を無視することができるようにする必要がある(Is>>Io)。しかしながら、この場合、MOSトランジスタPQのレイアウト面積が増大し、また、消費電流も増大する。従って、MOSトランジスタPQのサイズ(ゲート幅とゲート長との比)を大きくすることができない。このMOSトランジスタPQが供給する電流量は、バイアス電圧Vbiasにより決定される。したがって、この流入電流Ioの影響の度合いは、バイアス電圧Vbiasに依存し、出力ノードからMOSトランジスタNQへ流入する電流Ioの影響によるオペアンプの入出力特性の歪が、バイアス電圧依存性を有する状態が生じる。但し、上記の歪の原因は、アンプの歪の原因の一つであり、他のプロセス起因で起こる歪は存在する。
【0149】
図36は、図34に示すオペアンプ250の入出力特性をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。この場合、入出力特性においては、入力抵抗および帰還抵抗の抵抗値の変化は無いと仮定する。入出力特性は、エンドポイント法により測定され、横軸に、入力信号の中心値からのずれを示し、縦軸に、出力信号の理想特性(線形応答特性)からのずれを示す。ここで、エンドポイント法は、オペアンプ250の入出力特性曲線の動作範囲の両端を結ぶ直線からの実際の入出力特性のずれを示し、この出力の偏差が、図36に示す出力偏差ΔVoutに対応する。
【0150】
図36において、入出力応答特性として、曲線CA、CB、CC1およびCC2で示される特性が認められる。特性曲線CAは、上に凸の入出力特性を示し、線形応答を示す直線よりも出力信号が高くなる傾向を示す。一方、特性曲線CBは、下に凸の入出力特性を示し、この場合、出力信号としては理想応答(線形応答)よりも出力信号が低くなる特性を示す。特性曲線CC1およびCC2は、それぞれS字型の入出力特性を示しおり、入力信号の中心値からの変化に従って、その出力信号のレベルが線形応答に対して高い状態および低い状態が存在する。
【0151】
この入出力応答特性としては、出力偏差ΔVoutが、全領域において0となる状態が最も歪が少ない状態である。
【0152】
図34に示すように、入力抵抗を構成する抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値RaおよびRcを、抵抗比α:(1−α)に設定する。入力抵抗に基板電圧依存性を持たせることにより、オペアンプ250の増幅率に抵抗値の基板電圧依存性を反映させ、その入出力応答特性を理想状態に設定する。ここで、補正対象となる入出力特性は、図36の曲線CAで表わされる。
【0153】
図37は、図34に示すオペアンプ250の入出力特性の入力抵抗依存性を示す図である。この図37においては、オペアンプ250は理想アンプであり、バイアス電圧依存性は、その入出力特性に存在しないと想定している。また、抵抗比αは、0から0.5の間の値である。また、抵抗素子Z20およびZ21の基板電圧依存性係数kが、負の値である。この入出力応答特性は、エンドポイント法により求められる。
【0154】
この図37に示すように、入力抵抗素子の抵抗比αに従って、オペアンプ210の入出力特性が下に凸の入出力特性となる。抵抗比αが小さくなるにつれて、特性曲線は、曲線S1、S2およびS3と、出力偏差が大きくなる。この出力偏差の入力抵抗値依存性については、後に説明する。
【0155】
したがって、図37に示す入出力特性調整して、図36に示す特性曲線CAで表わされる入出力特性と組合せることにより、オペアンプの入出力特性の、入力抵抗の基板電圧依存性による入力抵抗依存性とバイアス電圧依存性とを相殺することができ、図38に示すようなオペアンプの入出力特性CFを得ることができる。
【0156】
ここで、図38において、曲線CAは、入力抵抗および帰還抵抗の基板電圧依存性がない場合のオペアンプ250の入出力特性のバイアス電圧依存性を示し、曲線SRは、オペアンプのバイアス電圧依存性がない場合の入力抵抗の基板電圧依存性による入出力特性を示す。これらの曲線CAおよびSRにより表わされる入出力特性を合成することにより、最終的な入出力特性CFが得られる。この曲線CFで表わされる入出力特性が、全入力偏差領域において出力電圧偏差ΔVoutが0となるように、抵抗比αの値を設定する。
【0157】
ここで、図37に示す入出力応答特性が生じる理由について、図34の構成を参照して、以下に簡単に説明する。図34に示す入力抵抗を構成する抵抗素子Z20およびZ21の基板からの平均電位Vx(A)およびVx(C)は、それぞれ、次式で表わされる:
Vx(A)=−α・VIN/2、
Vx(C)=(1−α)・VIN/2
ここで、VINは、抵抗素子Z20およびZ21全体にわたって印加される電圧であり、入力信号Vinと正入力の基準電源電圧(Vss)との和、すなわちVin+Vssで与えられる。
【0158】
したがって、抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値RaおよびRcおよびその合成抵抗Ra+Rcは、それぞれ、次式で与えられる:
Ra=α・R0(1+k・(−α・Vin/2))、
Rc=(1−α)・R0・(1+k・(1−α)・VIN/2)、
Ra+Rc
=R0+k・R0・(1−2・α)・VIN/2、
=R0{1+k(1−2・α)・VIN/2}
ここで、R0は、抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値RaおよびRcを形成する際の単位抵抗値を示す。
【0159】
抵抗比αは、0<α<1/2であり、基板電圧依存性係数kが負であるため、基板電圧VINの依存性により、基板電圧VINが正の領域では合成抵抗Ra+Rcは小さくなり、負の領域では、合成抵抗Ra+Rcは、大きくなる。オペアンプは反転増幅器であり、増幅率は、−2・Rb/(Ra+Rc)で与えられる。したがって、基板電圧VINが正の領域において合成抵抗Ra+Rcが小さくなると、出力信号が負方向へ大きくされ(増幅率の絶対値が大きくなるため)、基板電圧VINが負の領域で合成抵抗が大きくなると、出力信号の振幅が小さくなる(正極性の出力信号のレベルが低くなる)。したがって、入出力特性が理想特性より負の方向に変位し、図37に示すような下に凸の入出力応答特性が得られる。
【0160】
抵抗比αが、1>α>1/2の場合には、基板電圧依存性係数kが負の場合、上に凸の入出力応答特性が得られる。また、基板電圧依存性係数kが正であれば、図37に示すような下に凸の入出力応答特性曲線は、抵抗比の係数αが1/2と1の間で生じ、上に凸の入出力応答特性は、抵抗比αが0から1/2の間の場合に生じる。
【0161】
したがって、基板電圧依存性係数kの値を、予めパラメータとして、測定して決定されて既知の値とすると、抵抗比αを適切な値に設定することにより、図38に示すような、オペアンプのバイアス電圧依存性を、入力抵抗の抵抗値の基板電圧依存性により相殺することができ、出力歪の少ない増幅器を実現することができる。
【0162】
図39は、この発明の実施の形態9に従う反転増幅器の入力抵抗270の抵抗比の具体例を示す図である。図39において、入力抵抗270を構成する抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値がそれぞれ1・Rおよび3・Rに設定される。この場合、抵抗比αは、1/4である。帰還抵抗を構成する抵抗素子Z23およびZ24の抵抗値は、互いに等しくRbである。この構成において、入力抵抗270を構成する抵抗素子Z20およびZ21は、それぞれを構成する単位抵抗の数が異なるため、そのレイアウトが異なる。
【0163】
図40は、図39に示す入力抵抗270の平面レイアウトを概略的に示す図である。図40において、抵抗素子Z20は、Pウェル300上に形成される。Pウェル300表面に、矩形形状の素子分離膜304が形成され、この素子分離膜304周辺に、Pウェル300表面に高濃度P型不純物領域302が配置される。素子分離膜304表面に、例えばポリシリコンで構成される矩形形状の抵抗体306が配置される。抵抗体306の抵抗値が、Rである。
【0164】
ポリシリコン抵抗体306の一端は、コンタクト309aを介して接続配線307に形成され、抵抗体306の他端は、コンタクト309bを介して第1メタル配線で形成される接続配線320に接続される。この接続配線307に連結して、第1メタル配線で構成されるバイアス配線308が素子分離膜304外部に抵抗体306と平行に配置される。バイアス配線308は、コンタクト309cを介して下層の高濃度不純物領域302に電気的に接続される。接続配線307により、ノードA(入力ノード)に対する接続経路が形成される。
【0165】
抵抗素子Z21は、Pウェル300と離れて配置されるPウェル310内に形成される。このPウェル310表面に、矩形形状の素子分離膜314A、314Bおよび314Cが、それぞれ間をおいて同一ピッチで配置される。これらの素子分離膜314A、314Bおよび314Cを囲むように、Pウェル310上に高濃度P型不純物領域312が形成される。素子分離膜314A、314Bおよび314C上に、ポリシリコンで形成される矩形形状の抵抗体316Aおよび316Bおよび316Cがそれぞれ形成される。これらの抵抗体316Aおよび316Bおよび316Cは、抵抗体306と同様、抵抗値Rを有する。
【0166】
抵抗体316Aは、その一端が、コンタクト319Abを介して第1メタル配線で形成される接続配線320に接続され、その他端が、コンタクト319Aaを介して第1メタル配線で形成される接続配線315Aに電気的に接続される。この接続配線315Aは、抵抗体316Bの一端にコンタクト319Baを介して電気的に接続される。抵抗体316Bの他方端は、コンタクト319Bbを介して第1メタル配線で形成される接続配線315Bに接続される。
【0167】
この接続配線315bの他端は、コンタクト319Cbを介して抵抗体316Cに電気的に接続され、この抵抗体316Cの他方端は、コンタクト319Caを介して第1メタル配線で形成される接続配線317に電気的に接続される。この接続配線317と同一の配線、すなわち第1メタル配線で形成されるバイアス配線318が、素子分離膜314のノードC側の外部に抵抗体と平行に配置され、接続配線317と連結される。このバイアス配線318は、コンタクト319cを介して下層の高濃度不純物領域312に電気的に接続される。
【0168】
抵抗素子Z21において抵抗体316A、316Bおよび316Cは、それぞれ抵抗値Rを有し、それぞれの対向端部を接続配線315A、315Bにより電気的に接続する。これにより、蛇行状に抵抗体316A、316Bおよび316Cが接続され、抵抗値3・Rの抵抗素子が実現される。
【0169】
なお、接続配線317は、ノードCに結合され、接続配線320が、抵抗素子Z20およびZ21の間の接続ノードBに対応する。
【0170】
したがって、抵抗値が異なる抵抗素子を直列に接続する場合、それぞれ、抵抗値Rの単位抵抗を、複数個直列に配置することにより、所望の抵抗値を有する抵抗素子を実現することができる。また、このとき、各抵抗素子において、基板領域に対しバイアス配線308および318により、互いの基板電圧依存性を相殺する方向に接続することにより、抵抗素子の直列体の抵抗値の基板電圧依存性を、抵抗素子の抵抗比に応じて所望の特性に設定することができる。
【0171】
[変更例]
図41は、この発明の実施の形態9に従う増幅回路の変更例の構成を概略的に示す図である。この図41に示す増幅回路の構成は、以下の点で、図39に示す増幅回路の構成と異なる。すなわち、入力抵抗270を構成する抵抗素子Z31およびZ32の基板領域が、抵抗素子Z31およびZ32の間の接続ノードBに結合される。また、帰還抵抗を構成する抵抗素子Z33およびZ34の基板領域が、これらの抵抗素子Z33およびZ34の間の接続ノードに結合される。この図41に示す増幅器の他の構成および抵抗の接続態様は、図39に示す増幅回路の構成と同様である。
【0172】
抵抗素子Z31およびZ32の抵抗値は、α:(1−α)に設定される。抵抗素子Z33およびZ34の抵抗値は、互いに等しく、Rbである。この図41に示す増幅回路の構成においても、入力抵抗270と帰還抵抗(抵抗素子Z33およびZ34)とにより反転増幅動作が実現される。
【0173】
図41に示す構成において、抵抗素子Z31およびZ32それぞれの基板領域からの平均電位Vx(AB)およびVx(BC)は、それぞれ、次式で表わされる:
Vx(AB)=α・VIN/2、
Vx(BC)=−(1−α)・VIN/2
ここで、VINは、ノードAC間に印加される電圧を示す。
【0174】
抵抗素子Z31およびZ32の合成抵抗Ra+Rbは、次式で表わされる:
Ra+Rb
=R0+R0・k・(2・α−1)・VIN/2
=R0{1−k・(1−2・α)・VIN/2}
この上式に示す合成抵抗の基板電圧依存性は、前述の図39に示す入力抵抗の抵抗素子の合成抵抗の基板電圧依存性と極性が逆方向となる。したがって、基板電圧依存性係数kが負の場合、抵抗比αが0から1/2の間の場合には上に凸の入出力応答曲線が与えられ、抵抗比αが1/2から1の場合、図37に示すように下に凸の入出力応答曲線が得られる。また、基板電圧依存性係数kが、正の場合、先の図39に示す入力抵抗の接続態様と同様、抵抗比αが、0から1/2のときには、図37に示す下に凸の入出力応答特性が得られ、抵抗比αが1/2から1の間のときには、上に凸の入出力応答曲線が得られる。
【0175】
図42は、この図41に示す入力抵抗270の平面レイアウトを概略的に示す図である。図41においては、抵抗素子Z31およびZ32は、それぞれ抵抗値1・Rおよび3・Rを有し、抵抗比αが、1/4の場合の平面レイアウトを概略的に示す。
【0176】
図42において、入力抵抗を構成する抵抗素子Z31およびZ32に対し共通にPウェル330および高濃度P型不純物領域332が形成される。Pウェル330の表面に、互いに間をおいて同じ矩形形状の素子分離膜334A、334B、334C、および334Dが配置される。これらの素子分離膜334A−334D上に、ポリシリコンでたとえば構成される矩形形状の抵抗体336A、336B、336Cおよび336Dが配置される。これらの抵抗体336A−336Dの各々は、抵抗値Rを有する。
【0177】
抵抗体336Aは、一端がコンタクト341Aaを介して第1メタル配線で形成される接続配線338Aに接続され、他端が、コンタクト341Abを介して同じ第1メタル配線で形成される内部接続配線337Aに接続される。この内部接続配線337Aは、抵抗体336Bにコンタクト341Bbを介して電気的に接続される。抵抗体336Bの他方端部は、コンタクト341Baを介して内部接続配線337Bに電気的に接続される。
【0178】
抵抗体336Cは、その上側端部において、コンタクト341Caを介して内部接続配線333Bに電気的に接続され、その他方側端部においてコンタクト341Cbを介して内部接続配線333Cに電気的に接続される。抵抗体336Dは、その下側端部においてコンタクト341Dbを介して内部接続配線337Cに電気的に接続され、その上側端部において、コンタクト341Daを介して接続配線338Bに電気的に接続される。
【0179】
接続配線338AはノードAに電気的に接続され、接続配線338Bは、内部ノードCに電気的に接続される。
【0180】
素子分離膜334Aおよび334Bの間の領域において、内部接続配線337Aに連結して、抵抗体と平行に矩形形状のバイアス配線340が配置される。このバイアス配線340は、コンタクト342を介して下層に形成される高濃度不純物領域332に電気的に接続される。
【0181】
抵抗体334A−334Dが、対抗端部が順次接続され、信号伝達経路が蛇行状に形成され、これらの抵抗体334A−334Dが直列に接続される。ノードBにおいてバイアス配線340が配置されており、図41に示す入力抵抗270を構成する抵抗素子Z31およびZ32に対して、抵抗比αを1/4に設定する構成が実現される。
【0182】
なお、この図42に示す配置において、バイアス配線340は、この両端において、高濃度不純物領域332に沿って延在して配置され、この高濃度不純物領域332の周辺端部においてコンタクトにより電気的に接続されてもよい。この場合、確実に、Pウェル330の電圧分布を制限することができる。
【0183】
[変更例2]
図43は、この発明の実施の形態9に従う増幅回路の入力抵抗の他の平面配置を概略的に示す図である。図43に示す入力抵抗は、図41に示す入力抵抗270と同様の配置構成を有し、抵抗素子Z31およびZ32の基板領域が、これらの抵抗素子Z31およびZ32の間の接続ノードBに結合される。
【0184】
この図43に示す平面レイアウトにおいて、抵抗素子Z31およびZ32およびノードAおよびノードCにそれぞれ接続する接続配線350Aおよび350Bが、この図の縦方向に延在し(抵抗体と平行な方向)、コンタクト351Aおよび351Bを介して抵抗体336Aおよび336Bに結合される。抵抗素子Z31およびZ32の他の構成は、図42に示す平面レイアウトと同じレイアウトであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。
【0185】
図43に示す配置において、Pウェル330表面に、抵抗素子Z31(素子分離膜334Aおよび抵抗体336A)の外部に、素子分離膜360Aおよび360Bが互いに分離して配置される。これらの素子分離膜360Aおよび360Bは、抵抗素子Z31およびZ32に対して設けられる素子分離膜334A−334Dと同一形状に形成される。これらの素子分離膜360Aおよび360B上に、ポリシリコンでたとえば構成される矩形形状の抵抗体362Aおよび362Bが配置される。これらの抵抗体362Aおよび362Bの各々の一端が、コンタクト365aを介して第1メタルで構成される接続配線364Aに共通に接続され、それぞれの他方端部が、コンタクト365bを介して接続配線364Bに共通に接続される。
【0186】
これらの接続配線364Aおよび364Bは、それぞれ抵抗体と平行に延在して配置される接続配線366Aに連結される。この接続配線366Aは、第1メタル配線で構成され、接地ノードに結合される。
【0187】
また、抵抗素子Z32の形成領域のノードC側の外部において、素子分離膜334Bに隣接して、素子分離膜360Cおよび360Dが、互いに間をおいて配置される。これらの素子分離膜360Cおよび360Dの上に、ポリシリコンで構成される抵抗体362Cおよび362Bが配置される。素子分離膜362Cおよび362Dは、素子分離膜334A−334Dと同一形状にかつ同一材料で形成される。とこれらの抵抗体362Cおよび362Dは、抵抗素子Z31およびZ32を構成する抵抗体336A−336Dと同じ形状およびサイズを有する。
【0188】
抵抗体362Cおよび362Dは、それぞれの一端(上側端部)において、コンタクト365cを介して第1メタル配線で形成される内部接続配線364Cに接続され、それぞれの他方端(下側端部)においてコンタクト366cを介して第1メタル配線で形成される内部接続配線360Dに結合される。これらの内部接続配線364Cおよび364Dは、抵抗体362Dと平行に配置される接続配線366Bに連結される。この接続配線366Bは、第1メタル配線で形成され、接地ノードに結合される。
【0189】
この素子分離膜360A−360Dおよび抵抗体362A−362Dを、抵抗素子Z31およびZ32を形成する領域の外部に、形状ダミー素子として同一パターンおよび形状で配置することにより、抵抗素子Z31およびZ32のパターニングを正確に行なうことができ、正確に、入力抵抗の抵抗素子の抵抗比αを設定することができる。
【0190】
また、図43に示す配置において、抵抗素子Z31およびZ32は、内部接続配線337Bを形成する領域に関して線対称に抵抗体および素子分離膜が配置されている。これは、バイアス配線340が、素子分離膜334Aおよび334Bの間に配置されており、この間の距離が、素子分離膜334Bおよび334Cの間の距離よりも長くなるため、この配線抵抗(接続配線337Aおよび337C)を互いに等しくするためである。
【0191】
また、この図43に示す配置においても、バイアス配線340は、この高濃度P型不純物領域332の上下周辺に沿って延在して配置され、P型不純物領域332の外周部に沿ってバイアス配線340と基板領域のPウェル330との電気的接続がとられてもよい。
【0192】
[変更例3]
図44は、この発明の実施の形態9の第3の変更例に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。図44において、オペアンプ250の負入力に、入力抵抗として、直列に抵抗素子Z41およびZ42が接続される。これらの抵抗素子Z41およびZ42は、それぞれ抵抗値Rを有する。これらの抵抗素子Z41およびZ42の基板領域は、それぞれ、信号入力ノードおよびオペアンプ250の負入力ノードに結合される。
【0193】
オペアンプ250の負入力と出力ノードの間に帰還抵抗370が接続される。この帰還抵抗370は、抵抗素子Z43およびZ44の直列体で構成される。抵抗素子Z43の基板領域は、オペアンプ250の負入力ノードに接続され、抵抗素子Z44の基板領域は、オペアンプ250の出力ノードに結合される。この抵抗素子Z43およびZ44の抵抗比は、α:(1−α)である。オペアンプ250の正入力は基準電圧源に結合される。
【0194】
図44に示す帰還抵抗370において、抵抗素子Z43およびZ44の抵抗値の基板電圧依存性が、その合成抵抗値において生じる。この場合、先の図39に示す入力抵抗270の抵抗素子Z20およびZ21の抵抗値の基板電圧依存性と同じ依存性が生じる。オペアンプ250は、反転増幅動作を行なっており、帰還抵抗370の抵抗値が大きくなると、その増幅率の絶対値が大きくなる。したがって、この図44に示す増幅回路の構成の場合、図39に示す増幅回路の入出力特性と逆に、上に凸の入出力応答特性が得られる(基板電圧依存性係数kが負でありかつ抵抗比αが0から1/2のとき)。一方、基板電圧依存性係数kが負であり、抵抗比αが1/2から1の間のときには、図37に示すように下に凸の入出力応答特性が得られる。基板電圧依存係数kが正のときには、上述の入出力特性が逆となる。オペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性に応じて、基板電圧依存性係数kおよび抵抗比αを、適切に選択してその値を設定する。
【0195】
従って、図44に示すように帰還抵抗370の抵抗値に基板電圧依存性をもたせる場合においても、オペアンプ250の入出力特性のバイアス電圧依存性を、帰還抵抗の抵抗値の基板電圧依存性により相殺することができる。
【0196】
[変更例4]
図45は、この発明の実施の形態9の第4の変更例の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図45において、オペアンプ250の入力抵抗は、抵抗素子Z45およびZ46の直列体により構成され、帰還抵抗370が、抵抗素子Z47およびZ48の直列体により構成される。抵抗素子Z45およびZ46の基板領域は、これらの抵抗素子Z45およびZ46の間の接続ノードに結合される。抵抗素子Z45およびZ46の抵抗値は互いに等しくRである。一方、帰還抵抗370を構成する抵抗素子Z47およびZ48の基板領域は、これらの抵抗素子Z47およびZ48の間の接続ノードに結合される。オペアンプ250の正入力は基準電圧源に結合される。
【0197】
図45に示す増幅回路においては、オペアンプ250は反転増幅を行なっており、抵抗素子Z45−Z48各々の印加電圧の極性関係は、図41に示す増幅回路の抵抗素子Z31−Z34における電圧印加態様と同じである。したがって、この図45に示す接続構成の場合、帰還抵抗370の抵抗値が基板電圧依存性を有しており、図41に示すオペアンプの入出力応答特性の基板電圧依存性と逆となる。この場合においても、オペアンプ250の入出力特性の抵抗素子の基板電圧依存性を利用して、オペアンプ250の入出力特性のバイアス電圧依存性を相殺することができる。
【0198】
なお、入力抵抗および帰還抵抗両者においてその抵抗値に基板電圧依存性を持たせて、オペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性が相殺されてもよい。
【0199】
[変更例5]
図46は、この発明の実施の形態9の第5の変更例の増幅回路の構成を概略的に示す図である。図46において、オペアンプ400の正入力に、入力信号Vinが与えられる。このオペアンプ400の出力ノードと負入力ノードの間に帰還抵抗402が接続され、また、この負入力と基準電圧源の間にバイアス抵抗404が設けられる。帰還抵抗402は、抵抗素子RZ2およびRZ3の直列体で構成され、バイアス抵抗404は、抵抗素子RZ0およびRZ1の直列体で構成される。これらの抵抗素子RZ0−RZ3は、その基板電圧との接続のための端子を有し、いわゆる3端子素子として、図46において示す。
【0200】
帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の一方または双方において、抵抗比αの調整および基板ノードの接続を行なうことにより、その抵抗値に基板電圧依存性を持たせる。帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の抵抗素子の接続態様が、図39、図41、図44および図45に示す帰還抵抗(370)および入力抵抗(270)の接続態様と同様に設定する。
【0201】
図46に示す増幅回路において、オペアンプ400は、非反転増幅動作を行ない、その増幅率Avは、次式で表わされる:
Av=(1+(RZ2+RZ3)/(RZ0+RZ1))
上式から、非反転増幅動作時においても、帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の抵抗比により、その増幅率が異なる。したがって、オペアンプ400の入出力特性にバイアス電圧依存性が存在する場合においても、帰還抵抗402およびバイアス抵抗404の抵抗値に基板電圧依存性を持たせることにより、実施の形態9においてこれまで説明したように、オペアンプ400の入出力特性のバイアス電圧依存性を、帰還抵抗/バイアス抵抗の抵抗値の基板電圧依存性により相殺することができる。
【0202】
なお、図46に示すオペアンプ400が非反転増幅動作を行なっており、図39から図45に示す非反転増幅回路の入出力特性の基板電圧依存性と、その逆の基板電圧依存性が、図46に示す非反転増幅回路においては生成される。
【0203】
この実施の形態9の増幅回路は、先のオーディオ用のADCまたはDACに対して適用されてもよく、また、通常の増幅動作が必要な部分において用いられてもよい。
【0204】
以上のように、この発明の実施の形態9に従えば、オペアンプの入力抵抗および帰還抵抗またバイアス抵抗の少なくとも1つにおいて、その抵抗値に基板電圧依存性を持たせるように抵抗値を設定している。これにより、オペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性と入出力特性の抵抗素子を介した基板電圧依存性を相殺させることができ、歪の少ない高精度の増幅回路を実現することができる。
【0205】
[実施の形態10]
図47は、この発明の実施の形態10にしたがう抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。図47においては、抵抗素子の配置を示す。図47において、Pウェル500表面に、素子分離膜504が形成される。この素子分離膜504を囲むように、Pウェル500表面に、高濃度P型不純物領域502が形成される。
【0206】
この素子分離膜504上に、たとえばポリシリコンで構成される抵抗体506A−506Dが、それぞれ互いに間をおいて同一形状で配置される。これらの抵抗体506A−506Dは、それぞれの対向端部が順次、内部接続配線508A、508Bおよび508Cにより相互接続される。抵抗体506Aの上側端部は、接続配線510Aに接続され、抵抗体506Bの上側端部は、コンタクトを介して接続配線510Bに接続される。この接続配線501Aは、またバイアス配線512が連結され、このバイアス配線512がコンタクトを介して高濃度P型不純物領域502に電気的に接続される。
【0207】
この図47に示す構成の場合、抵抗体506A−506Dに対し個々に素子分離膜を設けるのではなく、共通に素子分離膜504が設けられる。この場合においても、Pウェル500の電位は、バイアス配線512により設定され、同様、Pウェルと抵抗体506A−506Dの間の素子分離膜を介して印加される電界の影響は、同程度に生じる。したがって、これまでの実施の形態1から9において説明した構成と同様の効果を得ることができる。抵抗体506A−506Dは、たとえば単位抵抗素子として利用して、これらを複数個(偶数個)接続して、必要とされる抵抗値を有する抵抗素子を実現する。または、抵抗体506A−506D各々を所望の抵抗値を有する抵抗素子として利用する。
【0208】
なお、図47に示す構成においても、このバイアス配線912は、素子分離膜504を囲むようにコの字型に形成され、この高濃度P型不純物領域502周辺に沿って電気的に接続されて、Pウェル500の電位の安定化が図られてもよい。
【0209】
この図47に示す構成の場合、素子分離膜を抵抗体個々に分離する必要がなく、抵抗体のピッチを小さくすることができ、抵抗素子のレイアウト面積を低減することができる。但し、素子分離膜を抵抗体毎に分離して配置することにより、各抵抗素子は、その抵抗体および素子分離膜の配置が同一となり、均一に形成することとができる。
【0210】
なお、この図47に示す構成において、抵抗体506A−506Dの直列体により、1つの基板電位が調整される抵抗素子が実現される。したがって、この図47に示す構成と同様の配置を有する抵抗素子がこの図47に示す抵抗素子と直列に接続され、それぞれの基板電圧依存性が相殺されるようにされる。この図47に示す抵抗素子の配置は、これまでの実施の形態1から9の抵抗素子に対して適用することができる。
【0211】
なお、上述の説明においては、抵抗素子は、ポリシリコンで構成されるとして説明している。抵抗素子としては、メタル抵抗であってもよく、基板電位の影響により、その抵抗値が変化する抵抗素子であればよい(基板と抵抗素子の間に形成される電界により抵抗値が有意な影響を受ける素子であればよい)。また、上述の説明においては、基板電圧依存性を相殺する場合、1つの抵抗が、2個の抵抗素子で構成される。しかしながら、この1つの抵抗を構成する抵抗素子の数は、直列接続される抵抗素子の基板電圧依存性が相殺される数であればよく、依存性が逆極性の抵抗素子の数が等しければよい。
【産業上の利用可能性】
【0212】
この発明は、一般に、抵抗素子の直列体を含む半導体装置に適用することにより、高精度で必要とされる内部信号を生成することができる。特に、演算増幅器(オペアンプ)の増幅動作を実現するための抵抗素子に対し適用することにより、歪の少ない高精度の増幅動作を行なう増幅器を得ることができる。
【0213】
特に、オーディオ用途などの精度が要求される増幅器(演算増幅器)に対して適用することにより、高精度の歪の少ない出力信号を得ることができる。携帯電話内の音声処理用LSIなどに対して適用することにより、高精度の音声処理を行なう回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1】この発明の実施の形態1に従う抵抗素子の単位抵抗の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図2】図1に示す線L2−L2に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図3】図1に示すL3−L3に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図4】この発明において利用される抵抗素子の基板電圧依存性を測定するための構成の一例を示す図である。
【図5】図4に示す測定回路により測定した抵抗素子の基板電圧依存性を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図7】図6に示す抵抗素子の基板電圧依存性を示す図である。
【図8】図6に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図9】図8に示す線L9−L9に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図11】図10に示す抵抗素子の基板電圧依存性特性を示す図である。
【図12】図10に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図13】図12に示す線L13−L13に沿った断面構造を概略的に示す図である。
【図14】この発明の実施の形態3に従う抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図15】この発明の実施の形態4に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図16】図15に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図17】この発明の実施の形態5に従う抵抗素子の基板接続態様を概略的に示す図である。
【図18】図14に示す抵抗素子の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図19】この発明に従う抵抗素子が適用されるΔΣアナログ/デジタル変換回路の構成を示すブロック図である。
【図20】図19に示すシングルエンド/差動信号変換器の構成の一例を示す図である。
【図21】図19に示すシングルエンド/差動信号変換器の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図22】図20および図21に示す入力抵抗および帰還抵抗の基板電圧依存性を示す図である。
【図23】この発明の実施の形態6に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。
【図24】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の構成を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第1の変更例を示す図である。
【図26】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第2の変更例を示す図である。
【図27】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第3の変更例を示す図である。
【図28】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第4の変更例を示す図である。
【図29】この発明の実施の形態7に従う増幅回路の第5の変更例を示す図である。
【図30】この発明の実施の形態8に従う抵抗素子が適用される高精度ΔΣデジタル/アナログ変換回路の構成を概略的に示す図である。
【図31】図30に示すI/V変換器の構成の一例を概略的に示す図である。
【図32】図31に示すI/V変換器の具体的構成の一例を示す図である。
【図33】図31に示すI/V変換器の第1の変更例を示す図である。
【図34】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の構成を概略的に示す図である。
【図35】図34に示すオペアンプの出力段の構成の一例を概略的に示す図である。
【図36】図34に示すオペアンプの入出力特性のバイアス電圧依存性を示す図である。
【図37】図35に示すオペアンプの入出力特性の抵抗素子基板電圧依存性を示す図である。
【図38】この発明の実施の形態9において実現されるオペアンプの入出力特性を示す図である。
【図39】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の具体的構成の一例を示す図である。
【図40】図39に示す入力抵抗の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図41】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第1の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図42】図41に示す入力抵抗の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図43】図41に示す入力抵抗の変更例の平面レイアウトを概略的に示す図である。
【図44】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第2の変更例の構成を示す図である。
【図45】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第3の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図46】この発明の実施の形態9に従う増幅回路の第4の変更例の構成を概略的に示す図である。
【図47】この発明の実施の形態10における抵抗素子の平面レイアウトの変更例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0215】
1 抵抗体、2 素子分離膜、3 高濃度不純物領域、R1,R2 抵抗素子、21A,21B 抵抗体、22A,22B 素子分離膜、23A,23B 高濃度不純物領域、25A,25B Pウェル(基板領域)、26A,26B,26C 配線、28A、28B バイアス配線、33 高濃度不純物領域、35 Pウェル、37 バイアス配線、41A−41D 抵抗体、42A−42D 素子分離膜、46A−46D 内部接続配線、47A,47B 接続配線、Z1−Z4 抵抗素子、50A,50B Pウェル、51A,51B 高濃度不純物領域、52Aa,52Ab,52Ba,52Bb,60Aa,60Ab、60Ba,60Bb 素子分離膜、53Aa,53Ab,53Ba,53Bb,61Aa,61Ab,61Ba,61Bb 抵抗体、58A,58B バイアス配線、50 Pウェル、51 高濃度不純物領域、RR1,RR2 抵抗素子、110,112 オペアンプ、120 オペアンプ、ZR1−ZR4 抵抗素子、ZR5−ZR8,ZR10,ZR11,ZZ1−ZZ8,ZZ10−ZZ17 抵抗素子、RR3,RR4 抵抗素子、206 I/V変換器、210 オペアンプ、214 電流源、Z 抵抗素子、ZS1−ZS4,Z20−Z24,Z20−Z24 抵抗素子、300,310 Pウェル、302,312 高濃度不純物領域、304,314A−314C 素子分離膜、306,316A−316C 抵抗体、308,318 バイアス配線、270 入力抵抗、Z31−Z34 抵抗素子、330 Pウェル、332 高濃度不純物領域、334A−334D 素子分離膜、336A−336D 抵抗体、340 バイアス配線、360A−360D 素子分離膜、362A−362D 抵抗体、Z41−Z44 抵抗素子、250 オペアンプ、370 帰還抵抗、Z45−Z48,RZ0−RZ3 抵抗素子、400 オペアンプ、402 帰還抵抗、404 バイアス抵抗、500 Pウェル、502 高濃度不純物領域、504 素子分離膜、506A−506D 抵抗体、512 バイアス配線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が基板領域上に絶縁膜を介して形成され、互いに直列に接続される複数の抵抗素子、および
前記基板領域と前記複数の抵抗素子の各々の一端を電気的に結合する少なくとも1つのバイアス配線を備え、前記バイアス配線は、前記複数の抵抗素子の一対の互いに直列接続される抵抗素子とそれぞれの対応の基板領域との間の電圧極性が互いに逆となるように配置される、半導体装置。
【請求項2】
前記複数の抵抗素子は、偶数個の抵抗素子を備え、
前記バイアス配線は、対応の抵抗素子と対応の基板領域の間の平均電圧の極性について、正極性の抵抗素子と負極性の素子とが同数となるように配置される、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の抵抗素子は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、
前記基板領域は、前記第1および第2の抵抗素子それぞれに対応して互いに分離して配置される複数のウェル領域を備え、
前記バイアス配線は、前記第1および第2の抵抗素子の接続ノードと異なる端部において前記第1および第2の抵抗素子を対応のウェル領域に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の抵抗素子は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、
前記基板領域は、前記第1および第2の抵抗素子に共通に設けられるウェル領域を備え、
前記バイアス配線は、前記第1および第2の抵抗素子の間の接続ノードを前記ウェル領域に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1および第2の抵抗素子は、各々が、互いに直列に接続される複数のサブ抵抗素子を備える、請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1および第2の抵抗素子各々に隣接してかつ前記第1および第2の抵抗素子の基板領域にそれぞれが形成され、前記第1および第2の抵抗素子と同一形状を有しかつ両端が固定電源に結合される第1および第2のダミー抵抗素子をさらに備える、請求項3または4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の抵抗素子は、互いに直列に接続されるとともに抵抗値が異なる第1および第2の抵抗素子を備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
与えられた電流信号を電圧信号に変換する演算増幅器をさらに備え、
前記複数の抵抗素子は、前記演算増幅器の出力を入力に帰還する帰還抵抗を構成する抵抗素子を備える、請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
入力信号を伝達される第1の入力と、固定電位が伝達される第2の入力と、第1および第2の出力とを有し、前記入力信号を増幅して前記第1および第2の出力に相補信号を生成する全差動増幅器をさらに備え、
前記複数の抵抗素子は、
前記入力信号を前記第1の入力に伝達する入力抵抗と、
前記第1の出力からの信号を前記第1の入力に帰還される第1の帰還抵抗と、
前記第2の出力からの信号を前記第2の入力に帰還させる第2の帰還抵抗とを備え、
前記入力抵抗、第1および第2の帰還抵抗の少なくとも1つの抵抗が、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、前記バイアス配線が前記第1および第2の抵抗素子各々と対応の基板領域との電圧極性が逆と成るように配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
与えられた信号を増幅する演算増幅器と、
前記与えられた信号を前記演算増幅器の入力に伝達する入力抵抗と、
前記演算増幅器の出力の信号を前記入力に帰還する帰還抵抗とを備え、
前記複数の抵抗素子は、入力抵抗と前記帰還抵抗とをそれぞれ構成する抵抗素子を備え、前記バイアス配線が、前記入力抵抗を構成する抵抗素子の直列体および帰還抵抗を構成する抵抗素子の直列体に対してそれぞれ設けられる、請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記入力抵抗と前記帰還抵抗の抵抗値は、前記基板領域の電圧非印加時には同じ値である、請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記入力抵抗と前記帰還抵抗の抵抗値は、前記基板領域の電圧非印加時においても互いに異なる、請求項10記載の半導体装置。
【請求項13】
前記入力抵抗および前記帰還抵抗の少なくとも一方は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、前記第1および第2の抵抗素子の基板電圧非印加時の抵抗値は同じである、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記入力抵抗および前記帰還抵抗の少なくとも一方は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、前記第1および第2の抵抗素子の基板電圧非印加時の抵抗値は互いに異なる、請求項10記載の半導体装置。
【請求項15】
入力信号を受ける第1の入力と、第2の入力と、出力とを有する演算増幅器をさらに備え、
前記複数の抵抗素子は、前記第2の入力と基準電源との間に接続されるバイアス抵抗を構成する抵抗素子と、前記出力と前記第2の入力との間に接続される帰還抵抗を構成する抵抗素子とを備え、前記バイアス抵抗および前記帰還抵抗の各々は、互いに直列に接続される一対の抵抗素子を備える、請求項1記載の半導体装置。
【請求項1】
各々が基板領域上に絶縁膜を介して形成され、互いに直列に接続される複数の抵抗素子、および
前記基板領域と前記複数の抵抗素子の各々の一端を電気的に結合する少なくとも1つのバイアス配線を備え、前記バイアス配線は、前記複数の抵抗素子の一対の互いに直列接続される抵抗素子とそれぞれの対応の基板領域との間の電圧極性が互いに逆となるように配置される、半導体装置。
【請求項2】
前記複数の抵抗素子は、偶数個の抵抗素子を備え、
前記バイアス配線は、対応の抵抗素子と対応の基板領域の間の平均電圧の極性について、正極性の抵抗素子と負極性の素子とが同数となるように配置される、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の抵抗素子は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、
前記基板領域は、前記第1および第2の抵抗素子それぞれに対応して互いに分離して配置される複数のウェル領域を備え、
前記バイアス配線は、前記第1および第2の抵抗素子の接続ノードと異なる端部において前記第1および第2の抵抗素子を対応のウェル領域に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の抵抗素子は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、
前記基板領域は、前記第1および第2の抵抗素子に共通に設けられるウェル領域を備え、
前記バイアス配線は、前記第1および第2の抵抗素子の間の接続ノードを前記ウェル領域に接続する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1および第2の抵抗素子は、各々が、互いに直列に接続される複数のサブ抵抗素子を備える、請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1および第2の抵抗素子各々に隣接してかつ前記第1および第2の抵抗素子の基板領域にそれぞれが形成され、前記第1および第2の抵抗素子と同一形状を有しかつ両端が固定電源に結合される第1および第2のダミー抵抗素子をさらに備える、請求項3または4記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の抵抗素子は、互いに直列に接続されるとともに抵抗値が異なる第1および第2の抵抗素子を備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
与えられた電流信号を電圧信号に変換する演算増幅器をさらに備え、
前記複数の抵抗素子は、前記演算増幅器の出力を入力に帰還する帰還抵抗を構成する抵抗素子を備える、請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
入力信号を伝達される第1の入力と、固定電位が伝達される第2の入力と、第1および第2の出力とを有し、前記入力信号を増幅して前記第1および第2の出力に相補信号を生成する全差動増幅器をさらに備え、
前記複数の抵抗素子は、
前記入力信号を前記第1の入力に伝達する入力抵抗と、
前記第1の出力からの信号を前記第1の入力に帰還される第1の帰還抵抗と、
前記第2の出力からの信号を前記第2の入力に帰還させる第2の帰還抵抗とを備え、
前記入力抵抗、第1および第2の帰還抵抗の少なくとも1つの抵抗が、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、前記バイアス配線が前記第1および第2の抵抗素子各々と対応の基板領域との電圧極性が逆と成るように配置される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
与えられた信号を増幅する演算増幅器と、
前記与えられた信号を前記演算増幅器の入力に伝達する入力抵抗と、
前記演算増幅器の出力の信号を前記入力に帰還する帰還抵抗とを備え、
前記複数の抵抗素子は、入力抵抗と前記帰還抵抗とをそれぞれ構成する抵抗素子を備え、前記バイアス配線が、前記入力抵抗を構成する抵抗素子の直列体および帰還抵抗を構成する抵抗素子の直列体に対してそれぞれ設けられる、請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記入力抵抗と前記帰還抵抗の抵抗値は、前記基板領域の電圧非印加時には同じ値である、請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記入力抵抗と前記帰還抵抗の抵抗値は、前記基板領域の電圧非印加時においても互いに異なる、請求項10記載の半導体装置。
【請求項13】
前記入力抵抗および前記帰還抵抗の少なくとも一方は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、前記第1および第2の抵抗素子の基板電圧非印加時の抵抗値は同じである、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記入力抵抗および前記帰還抵抗の少なくとも一方は、互いに直列に接続される第1および第2の抵抗素子を備え、前記第1および第2の抵抗素子の基板電圧非印加時の抵抗値は互いに異なる、請求項10記載の半導体装置。
【請求項15】
入力信号を受ける第1の入力と、第2の入力と、出力とを有する演算増幅器をさらに備え、
前記複数の抵抗素子は、前記第2の入力と基準電源との間に接続されるバイアス抵抗を構成する抵抗素子と、前記出力と前記第2の入力との間に接続される帰還抵抗を構成する抵抗素子とを備え、前記バイアス抵抗および前記帰還抵抗の各々は、互いに直列に接続される一対の抵抗素子を備える、請求項1記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【公開番号】特開2010−109233(P2010−109233A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281160(P2008−281160)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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