説明

半導体装置

【課題】出力ドライバのスイング能力を変化させた場合に生じるリードデータのスキューをキャンセルする。
【解決手段】リードデータDQを外部に出力する出力ドライバ90と、出力ドライバ90のスイング能力を設定するモードレジスタ53とを備える。出力ドライバ90によって駆動されるリードデータDQの遷移開始タイミングは、モードレジスタ53に設定された出力ドライバ90のスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には相対的に早められ、モードレジスタ53に設定された出力ドライバ90のスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には相対的に遅らせる。これにより、出力ドライバ90のスイング能力に関わらず、リードデータDQがしきい値レベルを超えるタイミングを所望のタイミングに一致させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、スイング能力が可変である出力ドライバを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータなどのメインメモリとして、クロックに同期した動作を行うシンクロナスメモリが広く使用されている。中でも、DDR(Double Data Rate)型のシンクロナスメモリでは、入出力データを外部クロック信号に対して正確に同期させる必要があることから、外部クロック信号に同期した内部クロック信号を生成するためのDLL回路が必須である(特許文献1参照)。
【0003】
DLL回路には出力ドライバのレプリカであるレプリカドライバが含まれており、レプリカドライバから出力されるレプリカクロック信号の位相をモニタすることによって、出力ドライバから出力されるリードデータの位相を外部クロック信号の位相と一致させる役割を果たす。
【0004】
出力ドライバから出力されるリードデータは、シンクロナスメモリとは別のチップであるメモリコントローラに供給される。このため、出力ドライバは、シンクロナスメモリとメモリコントローラとを接続する伝送線路が有する負荷を駆動する必要がある。しかしながら、伝送線路の負荷はシステムによって異なるばかりでなく、同じシステム内においても必ずしも均一ではない。このため、例えばDDR3型のシンクロナスメモリでは、モードレジスタへの設定値変更によって出力ドライバのスイング能力を可変とし、これによってデータのスルーレートをほぼ一定に保つことが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−116574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、出力ドライバのスイング能力を変化させると、リードデータの遷移開始タイミングから、リードデータがしきい値レベル(ハイレベルとローレベルの境界レベル)に達するまでの時間も変化してしまう。つまり、出力ドライバのスイング能力を高めた場合、出力されるリードデータのスルーレートも高くなる(リードデータの立ち上がり又は立ち下がりが急峻になる)ため、リードデータの遷移開始タイミングからしきい値レベルに達するまでの時間は短くなる。逆に、出力ドライバのスイング能力を低くした場合、出力されるリードデータのスルーレートも低くなる(リードデータの立ち上がり又は立ち下がりが緩やかになる)ため、リードデータの遷移開始タイミングからしきい値レベルに達するまでの時間は長くなる。
【0007】
その一方で、従来の半導体装置においてはレプリカドライバのスイング能力は一定であることから、出力ドライバのスイング能力を変化させると、リードデータにスキューが生じるという問題があった。具体的には、リードデータがしきい値レベルを超えるタイミングは、出力ドライバのスイング能力を高めると所望のタイミングよりも早くなってしまい、逆に、出力ドライバのスイング能力を低くすると所望のタイミングよりも遅くなってしまうという問題があった。
【0008】
特許文献1には、出力ドライバのインピーダンスを調整するキャリブレーション動作の結果に基づいて、レプリカクロック信号の遅延量を可変とする技術が開示されている。しかしながら、モードレジスタへの設定値変更によって出力ドライバのスイング能力が切り替えられた場合の対策については開示されていない。しかも、キャリブレーション動作に基づいたインピーダンス調整は、温度変化や電圧変動などをキャンセルするための微調整動作であることから、出力ドライバのスイング能力が切り替えられた場合のように出力特性が大きく変化したケースに対しては、特許文献1に記載された方法では対処することは困難である。さらには、特許文献1に記載された方法は、レプリカクロック信号が伝搬するクロックツリーに可変遅延回路を挿入する必要があることから、DLL回路から出力ドライバに至るクロックツリー(正規ツリー)の遅延量と、DLL回路からレプリカドライバに至るクロックツリー(レプリカツリー)の遅延量との対称性を確保することが難しくなってしまう。
【0009】
尚、上述した種々の問題は、シンクロナスメモリなどのメモリデバイスに特有の問題ではなく、スイング能力が可変な出力ドライバを有する半導体装置に共通の問題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面による半導体装置は、第1のクロック信号に対して位相制御された第2のクロック信号を生成するDLL回路と、前記第2のクロック信号に同期してデータを出力する出力ドライバと、前記出力ドライバのスイング能力を設定するモードレジスタと、を備え、前記DLL回路は、前記第1のクロック信号を遅延させることによって前記第2のクロック信号を生成するディレイラインと、前記出力ドライバのレプリカであり、前記第2のクロック信号を受けて第3のクロック信号を生成するレプリカドライバと、前記第1のクロック信号と前記第3のクロック信号の位相を比較する位相判定回路と、前記位相判定回路による判定結果に基づいて、前記ディレイラインの遅延量を調整する制御回路と、を有し、前記レプリカドライバのスイング能力は、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力に基づいて可変であることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の側面による半導体装置は、位相制御された内部クロック信号を生成するDLL回路と、前記内部クロック信号に同期してデータを出力する出力ドライバと、前記出力ドライバのスイング能力を設定するモードレジスタと、を備え、前記DLL回路は、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には、前記内部クロック信号の位相を相対的に早め、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には、前記内部クロック信号の位相を相対的に遅らせることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の側面による半導体装置は、データを外部に出力する出力ドライバと、前記出力ドライバのスイング能力を設定するモードレジスタと、を備え、前記出力ドライバによって駆動される前記データの遷移開始タイミングは、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には相対的に早められ、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には相対的に遅らせることを特徴とする。
【0013】
本発明において出力ドライバの「スイング能力」とは、いわゆるドライバストレングス(Driver Strength)を含む。ドライバストレングスとは、JEDECに規定されたDDR3規格において、モードレジスタMR1のA1ビット及びA5ビットに設定される出力ドライバインピーダンスコントロール(Output Driver Impedance Control)により指定される、出力ドライバの電流供給能力を指す。但し、本発明において出力ドライバの「スイング能力」が上記のドライバストレングスに限定されるものではなく、出力されるデータのスルーレートを変化させうる全てのパラメータを含む。したがって、モードレジスタへの設定値変更によって可変である限り、出力ドライバの「スイング能力」がスルーレート自体であっても構わない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モードレジスタに設定された出力ドライバのスイング能力に応じてデータの遷移開始タイミングが変化することから、出力ドライバのスイング能力に関わらず、出力データがしきい値レベルを超えるタイミングを所望のタイミングに一致させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施形態による半導体装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】DLL回路100の構成を示すブロック図である。
【図3】データ入出力回路80の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】レプリカドライバ120の構成を示すブロック図である。
【図5】モードレジスタ53の主要部の構成を示すブロック図である。
【図6】出力ドライバ90のスイング能力とリードデータDQがしきい値レベルを超えるタイミングとの関係を説明するためのタイミング図である。
【図7】出力ドライバ90のスイング能力とリードデータDQがしきい値レベルを超えるタイミングとの関係を説明するための別のタイミング図である。
【図8】半導体装置10の動作を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置10の構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態による半導体装置10はシンクロナス型のDRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、外部端子として、クロック端子11、コマンド端子12a〜12d、アドレス端子13及びデータ入出力端子14を備えている。その他、データストローブ端子や電源端子なども備えられているが、これらについては図示を省略してある。
【0019】
クロック端子11は、それぞれ外部クロック信号CKが供給される端子であり、供給された外部クロック信号CKは、クロック入力回路21に供給される。クロック入力回路21は、外部クロック信号CKを受けて内部クロック信号ICLK(第1のクロック信号)を生成し、これをDLL回路100に供給する。DLL回路100は、内部クロック信号ICLKに基づいて位相制御された内部クロック信号LCLK(第2のクロック信号)を生成し、これをデータ入出力回路80に供給する役割を果たす。データ入出力回路80及びDLL回路100の回路構成については後述する。
【0020】
コマンド端子12a〜12dは、それぞれロウアドレスストローブ信号RAS、カラムアドレスストローブ信号CAS、ライトイネーブル信号WE、チップセレクト信号CS等のコマンド信号CMDが供給される端子である。これらのコマンド信号CMDは、コマンド入力回路31に供給される。コマンド入力回路31に供給されたこれらコマンド信号CMDは、コマンドデコーダ32に供給される。コマンドデコーダ32は、コマンド信号の保持、デコード及びカウントなどを行うことによって、各種内部コマンドICMDを生成する回路である。生成された内部コマンドICMDは、ロウ系制御回路51、カラム系制御回路52及びモードレジスタ53に供給される。
【0021】
モードレジスタ53は、半導体装置10の動作パラメータ(バースト長、CASレイテンシなど)が設定されるレジスタである。モードレジスタ53に設定されるパラメータの一つとして、出力ドライバインピーダンスコントロール(Output Driver Impedance Control)と呼ばれるパラメータがある。このパラメータは、データ入出力回路80に含まれる出力ドライバのスイング能力を指定するパラメータであり、その値に基づいて制御信号DICが生成される。制御信号DICは、図1に示すようにデータ入出力回路80のみならず、DLL回路100にも供給される。
【0022】
アドレス端子13は、アドレス信号ADDが供給される端子であり、供給されたアドレス信号ADDは、アドレス入力回路41に供給される。アドレス入力回路41の出力は、アドレスラッチ回路42に供給される。アドレスラッチ回路42にラッチされたアドレス信号ADDのうち、ロウアドレスについてはロウ系制御回路51に供給され、カラムアドレスについてはカラム系制御回路52に供給される。また、コマンド信号CMDに基づいてモードレジスタセットにエントリしている場合には、アドレス信号ADDはモードレジスタ53に供給され、これによってモードレジスタ53の内容が更新される。
【0023】
ロウ系制御回路51の出力は、ロウデコーダ61に供給される。ロウデコーダ61は、メモリセルアレイ70に含まれるいずれかのワード線WLを選択する回路である。メモリセルアレイ70内においては、複数のワード線WLと複数のビット線BLが交差しており、その交点にはメモリセルMCが配置されている(図1では、1本のワード線WL、1本のビット線BL及び1個のメモリセルMCのみを示している)。ビット線BLは、センス回路63内の対応するセンスアンプSAに接続されている。
【0024】
また、カラム系制御回路52の出力は、カラムデコーダ62に供給される。カラムデコーダ62は、センス回路63に含まれるいずれかのセンスアンプSAを選択する回路である。カラムデコーダ62によって選択されたセンスアンプSAは、データアンプ64に接続される。データアンプ64は、リード動作時においてはセンスアンプSAによって増幅されたリードデータをさらに増幅し、リードライトバスRWBSを介してこれをデータ入出力回路80に供給する。一方、ライト動作時においては、リードライトバスRWBSを介してデータ入出力回路80から供給されるライトデータを増幅し、これをセンスアンプSAに供給する。
【0025】
データ入出力端子14は、リードデータDQの出力及びライトデータDQの入力を行うための端子であり、データ入出力回路80に接続されている。データ入出力回路80には内部クロックLCLKが供給されており、リード動作時においては内部クロックLCLKに同期してリードデータを出力する。
【0026】
図2は、DLL回路100の構成を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すように、DLL回路100は、ディレイライン110と、レプリカドライバ120と、位相判定回路130と、制御回路140とを備えている。
【0028】
ディレイライン110は、内部クロック信号ICLK(第1のクロック信号)を遅延させることによって内部クロック信号LCLK(第2のクロック信号)を生成する回路である。特に限定されるものではないが、ディレイライン110には、相対的に粗い調整ピッチで外部クロック信号を遅延させるコースディレイラインと、相対的に細かい調整ピッチで外部クロック信号を遅延させるファインディレイラインを含んでいることが好ましい。
【0029】
内部クロック信号LCLKは、図1に示したデータ入出力回路80に供給されるとともに、図2に示すようにレプリカドライバ120に供給される。レプリカドライバ120は、データ入出力回路80に含まれる出力ドライバのレプリカ回路であり、内部クロック信号LCLKを受けてレプリカクロック信号RepCLK(第3のクロック信号)を生成する。
【0030】
位相判定回路130は、内部クロック信号ICLKとレプリカクロック信号RepCLKとの位相を検出する回路である。レプリカクロック信号RepCLKの位相は、リードデータDQの位相と一致するようディレイライン110によって調整されるが、電圧や温度などディレイライン110の遅延量に影響を与えるパラメータの変動や、外部クロック信号CK自体の周波数変動などによって、両者の位相は刻々と変化する。位相判定回路130はこのような変化を検出し、内部クロック信号ICLKに対してレプリカクロック信号RepCLKが進んでいるか或いは遅れているかを判定する。特に限定されるものではないが、判定は内部クロック信号ICLKの毎周期ごとに行われ、その結果は位相判定信号PDとして制御回路140に供給される。
【0031】
制御回路140は、ディレイライン110の遅延量を設定する回路である。カウント値を増加させるか又は減少させるかは、位相判定回路130から供給される位相判定信号PDに基づいて定められる。具体的には、レプリカクロック信号RepCLKの位相が内部クロック信号ICLKに対して進んでいることを位相判定信号PDが示している場合には、制御回路140はそのカウント値をアップカウントし、これによりディレイライン110の遅延量を増大させる。逆に、レプリカクロック信号RepCLKの位相が内部クロック信号ICLKに対して遅れていることを位相判定信号PDが示している場合には、制御回路140はそのカウント値をアップダウンし、これによりディレイライン110の遅延量を減少させる。特に限定されるものではないが、カウント値の更新は、内部クロック信号ICLKの複数周期(例えば16周期)ごとに行われる。
【0032】
これにより、DLL回路100は、内部クロック信号ICLKとレプリカクロック信号RepCLKの位相が一致するよう動作を行うことから、結果的に、内部クロック信号ICLK(≒外部クロック信号CK)とリードデータDQの位相が一致することになる。
【0033】
図3は、データ入出力回路80の主要部の構成を示すブロック図である。
【0034】
図3に示すように、データ入出力回路80には出力ドライバ90が含まれている。出力ドライバ90は複数の単位出力ドライバ91〜9nからなり、これら複数の単位出力ドライバ91〜9nがデータ入出力端子14に共通接続された構成を有している。各単位出力ドライバ91〜9nは互いに同じ出力インピーダンスを有しており、タイミング信号として内部クロック信号LCLKが共通に供給されている。
【0035】
各単位出力ドライバ91〜9nに対する入力信号は、それぞれ対応する選択回路201〜20nを介して供給される。これら選択回路201〜20nは、内部リードデータRDをそれぞれ対応する単位出力ドライバ91〜9nに供給するか否かを選択する回路であり、その選択はモードレジスタ53より供給される制御信号DICに基づいて行われる。つまり、制御信号DICはそれぞれ選択回路201〜20nに対応するビットDIC1〜DICnによって構成されており、対応するビットDIC1〜DICnが活性化している選択回路201〜20nについては、内部リードデータRDを対応する単位出力ドライバ91〜9nに供給する一方、対応するビットDIC1〜DICnが活性化していない選択回路201〜20nについては、内部リードデータRDに関わらず対応する単位出力ドライバ91〜9nを非活性状態(ハイインピーダンス状態)とする。
【0036】
かかる構成により、制御信号DICに基づいて、活性化される単位出力ドライバ91〜9nの数を指定することができる。換言すれば、制御信号DICに基づいて出力ドライバのスイング能力を切り替えることが可能となる。具体的には、出力ドライバ90を構成する単位出力ドライバ91〜9nの数をn個とすれば、出力ドライバのスイング能力をn段階に切り替えることが可能となる。
【0037】
図4は、レプリカドライバ120の構成を示すブロック図である。
【0038】
図4に示すように、レプリカドライバ120の構成は、図3に示したデータ入出力回路80の主要部の構成と同じである。すなわち、レプリカドライバ120は、並列接続された複数の単位レプリカドライバ121〜12nからなる。これら複数の単位レプリカドライバ121〜12nの出力は、レプリカクロック信号RepCLKとして用いられる。各単位レプリカドライバ121〜12nは互いに同じ出力インピーダンスを有しており、タイミング信号として内部クロック信号LCLKが共通に供給されている。単位レプリカドライバ121〜12nの出力インピーダンスは、単位出力ドライバ91〜9nの出力インピーダンスと同じである。
【0039】
各単位レプリカドライバ121〜12nに対する入力信号は、それぞれ対応する選択回路211〜21nを介して供給される。これら選択回路211〜21nは、それぞれ対応する単位レプリカドライバ121〜12nを活性化させるか否かを選択する回路であり、その選択はモードレジスタ53より供給される制御信号DICに基づいて行われる。つまり、制御信号DICを構成するビットDIC1〜DICnはそれぞれ選択回路211〜21nに対応しており、対応するビットDIC1〜DICnが活性化している選択回路211〜21nについては、対応する単位レプリカドライバ121〜12nを活性化させる一方、対応するビットDIC1〜DICnが活性化していない選択回路211〜21nについては、対応する単位レプリカドライバ121〜12nを非活性状態(ハイインピーダンス状態)とする。
【0040】
かかる構成により、活性化される単位レプリカドライバ121〜12nの数は、活性化される単位出力ドライバ91〜9nの数と一致することになり、レプリカドライバ120のスイング能力は、出力ドライバのスイング能力と一致することになる。
【0041】
図5は、モードレジスタ53の主要部の構成を示すブロック図である。
【0042】
図5に示すように、モードレジスタ53は複数のビットからなり、このうち、A1ビット及びA5ビットに設定される値が制御信号生成回路54に供給される。A1ビット及びA5ビットに設定される値は、出力ドライバインピーダンスコントロール(Output Driver Impedance Control)の設定値であり、出力ドライバの電流供給能力調整に用いられる。制御信号生成回路54は、モードレジスタ53のA1ビット及びA5ビットに設定された値を受け、これらに基づいて制御信号DICを生成する。具体的には、出力ドライバインピーダンスコントロールの設定値がより強いドライバストレングスを示している場合には、制御信号DICを構成するビットDIC1〜DICnのうちより多くのビットを活性化させる。これにより、出力ドライバインピーダンスコントロールの設定値に基づいて、活性化される単位出力ドライバ91〜9nの数を変化させることが可能となる。上述の通り、活性化される単位出力ドライバ91〜9nの数が変化すると、これに連動して、活性化される単位レプリカドライバ121〜12nの数も変化する。
【0043】
図6は、出力ドライバ90のスイング能力とリードデータDQがしきい値レベルを超えるタイミングとの関係を説明するためのタイミング図である。
【0044】
図6において、波形A1は、出力ドライバのスイング能力が相対的に大きい場合に得られるリードデータDQの波形を示し、波形B1は、出力ドライバのスイング能力が相対的に小さい場合に得られるリードデータDQの波形を示している。図6に示すように、波形A1,B1とも時刻t0で遷移を開始した場合を考えると、しきい値レベルTH(ハイレベルとローレベルの境界レベル)を超えるタイミングは、波形A1においては時刻t1となり、波形B1においては時刻t1よりも遅い時刻t2となる。
【0045】
したがって、スルーレートが波形B1となるよう、出力ドライバ90のスイング能力を小さく設定する場合において、リードデータDQがしきい値レベルTHを超えるタイミングを時刻t1に合わせる必要がある場合には、波形C1に示すように、時刻t0よりも早い時刻t0aで遷移を開始させる必要がある。つまり、リードデータDQの遷移開始タイミングを早める必要がある。
【0046】
図7は、出力ドライバ90のスイング能力とリードデータDQがしきい値レベルを超えるタイミングとの関係を説明するための別のタイミング図である。
【0047】
図7において、波形A2は、出力ドライバのスイング能力が相対的に大きい場合に得られるリードデータDQの波形を示し、波形B2は、出力ドライバのスイング能力が相対的に小さい場合に得られるリードデータDQの波形を示している。したがって、図6に示した例と同様、波形A2,B2とも時刻t0で遷移を開始した場合を考えると、しきい値レベルTH(ハイレベルとローレベルの境界レベル)を超えるタイミングは、波形A2においては時刻t1となり、波形B2においては時刻t1よりも遅い時刻t2となる。
【0048】
したがって、スルーレートが波形A2となるよう、出力ドライバ90のスイング能力を大きく設定する場合において、リードデータDQがしきい値レベルTHを超えるタイミングを時刻t2に合わせる必要がある場合には、波形C2に示すように、時刻t0よりも遅い時刻t0bで遷移を開始させる必要がある。つまり、リードデータDQの遷移開始タイミングを遅らせる必要がある。
【0049】
本実施形態では、このような出力データの遷移開始タイミングの調整がレプリカドライバ120のスイング能力の変化によって自動的に行われる。以下、これについて説明する。
【0050】
図8は、本実施形態による半導体装置10の動作を説明するためのタイミング図である。
【0051】
図8に示すように、リードデータDQ及びレプリカクロック信号RepCLKの位相は、DLL回路100の動作により、内部クロック信号ICLK(≒外部クロック信号CK)の位相と正確に一致する。より具体的に説明すると、DLL回路100は、クロックツリーを経由することにより生じる遅延や、レプリカドライバ120の動作遅延を考慮して内部クロック信号LCLKのディレイ量を調整し、これにより、リードデータDQ及びレプリカクロック信号RepCLKの位相と内部クロック信号ICLKの位相が一致する。
【0052】
ここで、モードレジスタ53の設定値を変更することによって出力ドライバ90のスイング能力が高められた場合を考えると、スルーレートの増大により、リードデータDQがしきい値レベルを超えるタイミングが早くなる(図8に示す矢印1参照)。このようなケースにおいて、従来の半導体装置のようにレプリカドライバ120のスイング能力が一定であると、レプリカクロック信号RepCLKの波形は変化しないことから、内部クロック信号LCLKの位相も変化せず、結果的に、リードデータDQと内部クロック信号ICLKとの間にスキューが生じることになる。
【0053】
これに対し、本実施形態では、出力ドライバ90のスイング能力に連動してレプリカドライバ120のスイング能力も変化することから、レプリカクロック信号RepCLKの位相も早められる(図8に示す矢印2参照)。かかる位相の変化は、図2に示した位相判定回路130によって検出され、これにより制御回路140はディレイライン110のディレイ量を増加させる(図8に示す矢印3参照)。その結果、リードデータDQ及びレプリカクロック信号RepCLKの遷移開始タイミングが遅れ、内部クロック信号ICLKの位相と一致することになる(図8に示す矢印4,5参照)。
【0054】
出力ドライバ90のスイング能力が下げられた場合も同様であり、リードデータDQ及びレプリカクロック信号RepCLKの遷移開始タイミングが早められる。これにより、リードデータDQ及びレプリカクロック信号RepCLKの位相は、内部クロック信号ICLKの位相と一致する。
【0055】
このように、本実施形態によれば、モードレジスタ53の設定値を変更することによって出力ドライバ90のスイング能力を変化させると、これに連動してレプリカドライバ120のスイング能力も変化することから、出力ドライバ90のスイング能力を変化させてもリードデータDQにスキューが生じない。これにより、出力ドライバ90のスイング能力に関わらず、高い信号品質を確保することが可能となる。
【0056】
しかも、レプリカドライバ120のスイング能力は、モードレジスタ53の設定値を変更することによって自動的に変化することから、ユーザによる特別の操作なども不要である。さらに、レプリカクロック信号RepCLKが伝搬するクロックツリーに可変遅延回路などを介在させる必要もないことから、内部クロック信号LCLKが伝搬する正規のクロックツリーとの対称性を高めることも可能となる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0058】
例えば、上記実施形態では、本発明をシンクロナスメモリに適用した場合を例に説明したが、本発明の適用対象がこれに限定されるものではなく、メモリデバイス以外の半導体装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 半導体装置
11 クロック端子
12a〜12d コマンド端子
13 アドレス端子
14 データ入出力端子
21 クロック入力回路
31 コマンド入力回路
32 コマンドデコーダ
41 アドレス入力回路
42 アドレスラッチ回路
51 ロウ系制御回路
52 カラム系制御回路
53 モードレジスタ
54 制御信号生成回路
61 ロウデコーダ
62 カラムデコーダ
63 センス回路
64 データアンプ
70 メモリセルアレイ
80 データ入出力回路
90 出力ドライバ
91〜9n 単位出力ドライバ
100 DLL回路
110 ディレイライン
120 レプリカドライバ
121〜12n 単位レプリカドライバ
130 位相判定回路
140 制御回路
201〜20n,211〜21n 選択回路
CK 外部クロック信号
DIC 制御信号
ICLK 内部クロック信号(第1のクロック信号)
LCLK 内部クロック信号(第2のクロック信号)
RepCLK レプリカクロック信号(第3のクロック信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック信号に対して位相制御された第2のクロック信号を生成するDLL回路と、
前記第2のクロック信号に同期してデータを出力する出力ドライバと、
前記出力ドライバのスイング能力を設定するモードレジスタと、を備え、
前記DLL回路は、
前記第1のクロック信号を遅延させることによって前記第2のクロック信号を生成するディレイラインと、
前記出力ドライバのレプリカであり、前記第2のクロック信号を受けて第3のクロック信号を生成するレプリカドライバと、
前記第1のクロック信号と前記第3のクロック信号の位相を比較する位相判定回路と、
前記位相判定回路による判定結果に基づいて、前記ディレイラインの遅延量を調整する制御回路と、を有し、
前記レプリカドライバのスイング能力は、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力に基づいて可変であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には、前記レプリカドライバのスイング能力は相対的に大きく、
前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には、前記レプリカドライバのスイング能力は相対的に小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記出力ドライバは複数の単位出力ドライバが並列接続された構成を有しており、
前記レプリカドライバは複数の単位レプリカドライバが並列接続された構成を有しており、
前記出力ドライバのスイング能力は、前記複数の単位出力ドライバのうち活性化させる単位出力ドライバの数を変化させることによって可変であり、
前記レプリカドライバのスイング能力は、前記複数の単位レプリカドライバのうち活性化させる単位レプリカドライバの数を変化させることによって可変であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
位相制御された内部クロック信号を生成するDLL回路と、
前記内部クロック信号に同期してデータを出力する出力ドライバと、
前記出力ドライバのスイング能力を設定するモードレジスタと、を備え、
前記DLL回路は、
前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には、前記内部クロック信号の位相を相対的に早め、
前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には、前記内部クロック信号の位相を相対的に遅らせることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記DLL回路は、
外部クロック信号を遅延させることによって前記内部クロック信号を生成するディレイラインを含み、
前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には、前記ディレイラインの遅延量を相対的に小さくし、
前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には、前記ディレイラインの遅延量を相対的に大きくすることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記出力ドライバは複数の単位出力ドライバが並列接続された構成を有しており、
前記出力ドライバのスイング能力は、前記複数の単位出力ドライバのうち活性化させる単位出力ドライバの数を変化させることによって可変であることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
データを外部に出力する出力ドライバと、
前記出力ドライバのスイング能力を設定するモードレジスタと、を備え、
前記出力ドライバによって駆動される前記データの遷移開始タイミングは、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に大きく設定されている場合には相対的に早められ、前記モードレジスタに設定された前記出力ドライバのスイング能力が相対的に小さく設定されている場合には相対的に遅らせることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記出力ドライバは複数の単位出力ドライバが並列接続された構成を有しており、
前記出力ドライバのスイング能力は、前記複数の単位出力ドライバのうち活性化させる単位出力ドライバの数を変化させることによって可変であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142566(P2011−142566A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2973(P2010−2973)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】