説明

半導体装置

【課題】スイッチング素子による高温の悪影響を回避して、誤点弧を防止する回路をスイッチング素子と同一の基板上に配置した半導体装置を提供する。
【解決手段】基板5上の導電体パターン51,52上にNチャネル型のMOSFET10、及びNチャネル型で半導体材料が炭化珪素からなるJFET30を各別に近接して配置し、MOSFET10のゲート電極13とJFET30のドレイン電極31とをリード線61で接続する。MOSFET10をオン/オフに制御する外部からの駆動信号がJFET30のソース電極32及びドレイン電極31間を伝播するときに、ソース電極32及びゲート電極33間のゲート電圧の低/高に応じてJFET30のチャネル抵抗を大/小に変更することにより、MOSFET10のドレイン電極11及びソース電極12間のスイッチング波形の前縁を、後縁に比較して緩やかな傾斜にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に絶縁ゲート型のスイッチング素子と半導体回路とを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安定化された直流電源を必要とする電子機器にDC/DCコンバータが幅広く用いられている。降圧型のDC/DCコンバータでは、一次側の直流電圧をスイッチング素子でオン/オフし、発生させたパルスをLCフィルタで平滑化して安定化された電圧を得ている。また、スイッチング素子がオフしている期間に環流する電流を、ダイオードに代わる第2のスイッチング素子に導通させて同期式のDC/DCコンバータとすることにより、電源の利用効率をアップさせることが行われている。
【0003】
ところで、同期式のDC/DCコンバータでは一次側の直流電圧をスイッチングする第1のスイッチング素子がオンした時に、第2のスイッチング素子の端子電圧が急激に上昇し、寄生容量の影響で制御電極の電圧が上昇して第2のスイッチング素子が誤点弧(セルフターンオン)に至ることがある。
【0004】
図12は、従来のスイッチング素子の駆動回路を示す回路図である。上述の誤点弧に対し、例えば図12に示すように、第1のスイッチング素子10aがオンする速度を低下させるための抵抗器R9と、オフする速度を低下させないためのショットキバリアダイオード(SBD)D2aとを並列に接続した回路を、第1のスイッチング素子の制御電極13aに対して直列に接続する技術が用いられている。通常このような並列回路では、標準的な抵抗体からなる抵抗器と、シリコンからなるSBDとが用いられる。スイッチングの高速化のためには、制御電極に接続される回路にまつわる配線長を出来るだけ短くしてインダクタンスを小さくすることが望ましいのは言うまでもない。
【0005】
更に、特許文献1では、第2のスイッチング素子を駆動する信号の駆動回路で負電圧を発生させ、第2のスイッチング素子がオフしている期間に制御電極に負電圧を印加することにより、第2のスイッチング素子の誤点弧を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−22106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した抵抗器及びSBDの並列回路を用いる方法では、抵抗体及びシリコンが高温の環境下で劣化する虞があるため、スイッチングに伴って高温となる場合がある第1のスイッチング素子と同一の基板上に並列回路を配置することができず、駆動回路から制御電極に至る配線長が延びてインダクタンスの影響が無視出来なくなる問題がある。この問題に加えて、特許文献1に開示された技術では、スイッチング素子の駆動回路が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スイッチング素子による高温の悪影響を回避して、誤点弧を防止する回路をスイッチング素子と同一の基板上に配置した半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、絶縁ゲート型のスイッチング素子と、該スイッチング素子のオン/オフを制御する制御信号が伝播する半導体回路とを基板上に備える半導体装置において、前記半導体回路は、シリコンよりバンドギャップが大きい半導体からなる1又は複数の半導体素子を含み、該半導体素子は、前記制御信号が伝播するときの抵抗の大/小を可変に構成してあることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、制御信号が半導体素子を伝播するときの抵抗の大/小を可変にすることにより、スイッチング素子をオン/オフに制御するときのゲート電流を小/大に変更できるため、スイッチング素子に生じるスイッチング波形の前縁が、後縁に比較して緩やかな傾斜となる。また、半導体素子がワイドバンドギャップ半導体からなるため、同一基板上に配されたスイッチング素子の発熱の影響を間近に受けて半導体素子の温度が上昇した場合であっても、半導体素子が劣化することなく確実に動作する。
【0011】
本発明に係る半導体装置は、前記半導体素子は、ドレイン電極又はソース電極の電位を基準とするゲート電極の電圧の低/高(又は高/低)に応じてチャネルの抵抗が大/小に変化するNチャネル(又はPチャネル)型のFETであることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、Nチャネル(又はPチャネル)型のFETのドレイン及びソースに略対象性があることから、スイッチング素子をオン/オフに制御する制御信号が与えられるFETのソース電極又はドレイン電極の電位を基準とするゲート電極の電圧を、低/高(又は高/低)に変化させた場合は、スイッチング素子をオン/オフに制御するときのFETのチャネル抵抗を大/小に変更できる。
【0013】
本発明に係る半導体装置は、前記FETはJFET又はデプレッション型のMOSFETであることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、FETがJFET又はデプレッション型のMOSFETであるため、FETのソース電極及びゲート電極間にバイアス電圧を与えない場合であってもチャネルが導通する。従って、FETの駆動回路の構成が簡単になる。
【0015】
本発明に係る半導体装置は、前記スイッチング素子は、Nチャネル(又はPチャネル)型であり、前記半導体素子は、逆並列に接続されたショットキバリアダイオードであり、前記スイッチング素子に対する順方向(又は逆方向)の抵抗を逆方向(又は順方向)の抵抗より大きくしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、スイッチング素子がNチャネル(又はPチャネル)型であるため、スイッチング素子をオン/オフに制御するときのゲート電流が、スイッチング素子に対して順/逆方向(又は逆/順方向)に流れる。また、半導体素子として用いたショットキバリアダイオードが逆並列に接続されており、スイッチング素子に対する半導体素子の順方向の抵抗が逆方向の抵抗より大きく(又は小さく)なる。
従って、スイッチング素子をオン/オフに制御するときのゲート電流を、ショットキバリアダイオードの抵抗によって小/大に変更できる。
【0017】
本発明に係る半導体装置は、前記半導体素子は、半導体材料が炭化珪素からなることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、半導体素子が炭化珪素からなるため、半導体素子の温度が400℃近辺まで上昇した場合であっても、確実な動作が期待される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワイドバンドギャップ半導体からなる半導体素子を制御信号が伝播するときの抵抗を可変にして、スイッチング素子をオン/オフに制御するときのゲート電流を小/大に変更できるため、スイッチング素子に生じるスイッチング波形の前縁が、後縁に比較して緩やかな傾斜となる。また、同一基板上に配されたスイッチング素子の発熱の影響を間近に受けて半導体素子の温度が上昇した場合であっても、半導体素子が劣化することなく確実に動作する。
従って、スイッチング素子による高温の悪影響を回避して誤点弧を防止する回路をスイッチング素子と同一の基板上に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の回路図である。
【図2】標準的なNチャネル型のJFETのチャネル抵抗がゲート電圧に応じて変化する様子を模式的に示す説明図である。
【図3】半導体装置の模式的な平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の変形例の回路図である。
【図5】JFETのチャネルを伝播する駆動信号によってMOSFETをオン/オフさせるときの、JFETのゲート電圧を例示する図表である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の回路図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る他の半導体装置の回路図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の回路図である。
【図9】ショットキバリアダイオードの構成を模式的に示す縦断面図である。
【図10】ショットキバリアダイオードのオン抵抗がn−層の比抵抗及び/又は厚みに応じて変化する様子を模式的に示す説明図である。
【図11】半導体装置の模式的な平面図である。
【図12】従来のスイッチング素子の駆動回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。但し、以下に示す実施の形態は、本発明を具体化するための半導体装置を例示するものであって、本発明は、半導体装置を以下の装置には限定しない。更に、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態に記載される部材に限定するものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の回路図である。図中1は半導体装置であり、半導体装置1は、炭化珪素等のいわゆるワイドバンドギャップ半導体又はシリコンを半導体材料とするスイッチング素子であるNチャネル型のMOSFET10と、半導体材料が炭化珪素からなりMOSFET10のゲート電極13にドレイン電極31が接続された半導体素子であるNチャネル型のJFET30とを備える。JFET30のソース電極32と、MOSFET10のソース電極12との間には、外部の駆動回路2からMOSFET10をオン/オフさせる駆動信号が与えられる。MOSFET10のドレイン電極11及びソース電極12には、外部の図示しない負荷及び電源が接続されている。
【0022】
駆動回路2は、前記駆動信号をソース電極32及びソース電極12間に与える信号源S1と、該信号源S1が出力する電圧を分圧する抵抗器R1,R2の直列回路とを備える。抵抗器R1,R2の接続点及び抵抗器R1の他端は、夫々JFET30のゲート電極33及びソース電極32に接続されている。
【0023】
上述した構成において、信号源S1が出力する駆動信号がH(ハイ)レベルの場合、Hレベルの電圧が抵抗器R1,R2で分圧され、抵抗器R1に分圧された電圧がゲート電極33及びソース電極32間に印加される。この結果、ソース電極32の電位を基準とするゲート電極33の電圧(以下、単にゲート電圧という)は負の電圧となる。一方、信号源S1が出力する駆動信号がL(ロウ)レベルの場合、抵抗器R1に分圧される電圧は略ゼロであるから、ゲート電圧は略0となる。
【0024】
次に、JFET30のゲート電圧とチャネル抵抗との関係について説明する。
図2は、標準的なNチャネル型のJFETのチャネル抵抗がゲート電圧に応じて変化する様子を模式的に示す説明図である。図中横軸はソース電極の電位を基準とするドレイン電極の電圧(以下、単にドレイン電圧という)Vds(V)を表し、縦軸はドレイン電極に流入する電流(以下、単にドレイン電流という)Id(A)を表す。図2では、5通りのゲート電圧Vgs(0V、−1V、−2V、−3V及び−4V)をパラメータにして、ドレイン電圧Vdsに対するドレイン電流Idの変化を実線で示す。各曲線の傾きの逆数がチャネル抵抗に相当する。
尚、JFETのソース電極及びドレイン電極には略対象性があるため、横軸にドレイン電極の電位を基準とするソース電極の電圧をとり、縦軸にソース電極に流入する電流をとって、ドレイン電極の電位に対するゲート電極の電圧をパラメータにした場合であっても、図2と同様の曲線が示される。
【0025】
図2に示すように、ドレイン電圧Vdsを正の一定電圧にしてゲート電圧Vgsを変化させた場合、ゲート電圧Vgsの低/高に応じてドレイン電流Idが小/大に変化し、チャネル抵抗が大/小に変化する様子が読み取れる。ゲート電圧Vgsが一定の場合はチャネル抵抗が略一定であるため、ドレイン電圧Vdsに略比例するドレイン電流Idが流れる。但し、いわゆる飽和領域では、ドレイン電流Idが略一定となる。
一方、ドレイン電圧Vdsを負の電圧にして漸次低下させた場合、ドレイン電圧Vdsがゲート電圧Vgsよりも低下したときにゲート電極及びドレイン電極間が導通してゲート電流がドレイン電極から流出するため、負のドレイン電流が急激に増大する。このような現象は、負のゲート電圧Vgsの絶対値が小さい領域で発生し易い。
尚、半導体素子は、JFETに限定されず、デプレッション型のMOSFETであってもよい。半導体素子がデプレッション型のMOSFETの場合、ドレイン電圧Vdsがゲート電圧Vgsよりも低下したとしても、ゲート電極及びドレイン電極間が導通することがなく、ドレイン電圧Vdsが負の電圧のときに負のドレイン電流Idが急激に増大することはない。
【0026】
図1に戻って、信号源S1が出力する駆動信号がL(ロウ)レベルからH(ハイ)レベルとなり、JFET30のゲート電圧Vgsが負の電圧に低下した場合、図2の説明よりJFET30のチャネル抵抗が小から大に変化する。これにより、ゲート電極13へ流入するゲート電流を抑制してMOSFET10を緩やかにオンさせることができ、ドレイン電極11及びソース電極12間のスイッチング波形の前縁(本実施の形態1では立ち下がり)が緩やかな傾斜となる。またこの場合、ソース電極32の電位が速やかにHレベルに上昇するのに対し、MOSFET10のゲート電極13に接続されたドレイン電極31では、ゲート電極13の浮遊容量の影響によって電位の上昇が遅れるため、JFET30のドレイン電圧Vdsが負の電圧となる。但し、JFET30のチャネル抵抗を小から大に変化させたときは、負のゲート電圧Vgsの絶対値が十分に大きく保たれるため、JFET30のドレイン電圧Vdsがゲート電圧Vgsよりも低下する逆転現象は発生し難い。仮にそのような逆転現象が発生したとしても、JFET30のドレイン電極31から流出する電流によってゲート電極13の電位が上昇するため、上述した逆転現象は速やかに解消する。
【0027】
次に、信号源S1が出力する駆動信号がHレベルからLレベルとなり、JFET30のゲート電圧Vgsが負の電圧から略ゼロまで上昇した場合、図2の説明よりJFET30のチャネル抵抗が大から小に変化する。これにより、低抵抗でゲート電極13からゲート電流を引き出してMOSFET10を速やかにオフさせることができ、ドレイン電極11及びソース電極12間のスイッチング波形の後縁(本実施の形態1では立ち上がり)が急峻な傾斜となる。またこの場合、ソース電極32の電位が速やかにLレベルに下降するのに対し、MOSFET10のゲート電極13に接続されたドレイン電極31では、ゲート電極13の浮遊容量の影響によって電位の下降が多少遅れるため、JFET30のドレイン電圧Vdsが正の電圧となり、上述した逆転現象は生じない。
【0028】
次に、同一基板上にMOSFET10及びJFET30を搭載した半導体装置1の実装例について説明する。
図3は、半導体装置1の模式的な平面図である。半導体装置1は、セラミックからなる基板5を備え、該基板5上の導電体パターン51,52上に縦型のMOSFET10及び横型のJFET30が各別に近接して配されている。MOSFET10のドレイン電極11と導電体パターン51、及びJFET30のサブストレートと導電体パターン52は、夫々高温ハンダ及び/又は導電性の接着剤で接続されている。ゲート電極13及びドレイン電極31間は、リード線61で接続されており、ソース電極12、ゲート電極33及びソース電極32の夫々は、基板5上の導電体パターン53,54,55にリード線62,63,64で各別に接続されている。
尚、JFET30は縦型でもよく、縦型の場合は、基板5側に向けたドレイン電極31と導電体パターン52を高温ハンダで接続し、ゲート電極13及び導電体パターン52間をリード線61で接続すればよい。
【0029】
図3では、JFET30が、MOSFET10に近接して配されているため、MOSFET10のスイッチングによる発熱の影響を間近に受けるが、半導体材料が炭化珪素からなるため、400℃程度の高温であっても劣化の虞がなく、FETとして確実に動作する。
【0030】
以上のように本実施の形態1によれば、MOSFETの駆動信号がJFETを伝播するときのチャネル抵抗の大/小を可変にすることにより、MOSFETをオン/オフに制御するときのゲート電流を小/大に変更できるため、MOSFETのドレイン電極及びソース電極間のスイッチング波形の前縁が、後縁に比較して緩やかな傾斜となる。また、JFETがワイドバンドギャップ半導体からなるため、同一基板上に配されたMOSFETの発熱の影響を間近に受けてJFETの温度が上昇した場合であっても、JFETが劣化することなく確実に動作する。
従って、スイッチング素子による高温の悪影響を回避して誤点弧を防止する回路をスイッチング素子と同一の基板上に配置することが可能となる。
【0031】
また、半導体素子がJFET又はデプレッション型のMOSFETであるため、FETのゲート電圧Vgsとして特段のバイアス電圧を与えない場合であってもチャネルが導通する。従って、FETの駆動回路を簡単に構成することが可能となる。
【0032】
更にまた、半導体素子としてのJFETが炭化珪素からなるため、JFETの温度が400℃近辺まで上昇した場合であっても、可変抵抗素子として確実に動作させることが可能となる。
【0033】
(変形例1)
図1では、信号源S1が出力する駆動信号の電圧を抵抗器R1,R2からなる分圧器で分圧し、抵抗器R1に分圧された電圧をJFET30のゲート電圧Vgsとしているが、JFET30のゲート電圧Vgsに対するチャネル抵抗の変化特性に合わせて前記駆動信号の電圧を適当に調整することとした場合は、分圧器を省略してもよい。以下では、分圧器を用いない変形例について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置1の変形例の回路図である。信号源S1が出力する駆動信号が、JFET30のソース電極32と、MOSFET10のソース電極12との間に与えられるのは、図1と同様であり、前記駆動信号の電圧がそのままゲート電極33及びソース電極32間に印加される点が図1と異なる。半導体装置1の回路は図1と同様であるので、その説明を省略する。
【0034】
上述した構成において、信号源S1が出力する駆動信号がHレベルの場合、JFET30のゲート電圧Vgsは、絶対値がHレベルの電圧値に等しい負の電圧となる。信号源S1が出力する駆動信号がLレベルの場合、ゲート電圧Vgsが略0となるのは図1と同様である。ここでは、信号源S1の駆動信号がHレベルとなったときの負のゲート電圧Vgsによって、JFET30のチャネル抵抗が所望の大きい値となるように、前記駆動信号のHレベルの波高値を調整してある。逆に、JFET30のゲート電圧Vgsに対するチャネル抵抗の変化特性を、前記駆動信号のHレベルの波高値に合わせて調整するようにしてもよい。このように調整することにより、駆動回路2の抵抗器R1,R2を省略することが可能となる。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態1は、MOSFET10及びJFET30のチャネル型(Nチャネル型/Pチャネル型)を共にNチャネル型とする形態であるのに対し、実施の形態2は、MOSFET及びJFETのチャネル型を相異ならせる形態、及び共にPチャネル型とする形態である。
【0036】
図5は、JFETのチャネルを伝播する駆動信号によってMOSFETをオン/オフさせるときの、JFETのゲート電圧を例示する図表である。JFETがデプレッション型のMOSFETであっても同様である。図表中の各行及び各列は、夫々JFET及びMOSFETのチャネル型を表す。図5には、H/Lレベルの駆動信号によってMOSFETをオン/オフ、又はオフ/オンさせるときゲート電圧が示されている。
尚、図5は、JFETのソース電極にMOSFETの駆動信号を与えるときのJFETのゲート電圧を例示するものであるが、JFETのソース電極及びドレイン電極には略対象性があるため、ドレイン電極にMOSFETの駆動信号を与えるときの(ドレイン電極の電位に対する)ゲート電圧を例示した場合についても、図5と同様のものが示される。
【0037】
例えば、実施の形態1の図1,4の回路図で、Nチャネル型のJFET30のチャネルを伝播する駆動信号によってNチャネル型のMOSFET10をオン/オフさせる場合、駆動信号がHレベルのときは、ゲート電圧Vgsが負電圧となり、駆動信号がLレベルのときは、ゲート電圧Vgsがゼロ電圧となる。つまり、MOSFET10をオン/オフに制御するH/Lレベルの駆動信号に対して、ゲート電圧Vgsを低/高に変化させることにより、JFET30のチャネル抵抗を大/小に変更する。
以下では、Pチャネル型のJFET及びNチャネル型のMOSFETを組み合わせた場合と、Pチャネル型のJFET及びPチャネル型のMOSFETを組み合わせた場合とについて説明する。Nチャネル型のJFET及びPチャネル型のMOSFETを組み合わせた場合の回路図については、他の組み合わせの場合の回路図から容易に想到されるため、具体的な例示を省略する。
【0038】
先ず、Pチャネル型のJFET及びNチャネル型のMOSFETを組み合わせた場合について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の回路図である。図中1aは半導体装置であり、半導体装置1aは、Nチャネル型のMOSFET10と、半導体材料が炭化珪素からなりMOSFET10のゲート電極13にドレイン電極41が接続されたPチャネル型のJFET40とを備える。JFET40のソース電極42と、MOSFET10のソース電極12との間には、外部の駆動回路2aからMOSFET10をオン/オフさせる駆動信号が与えられる。MOSFET10のドレイン電極11及びソース電極12には、外部の図示しない負荷及び電源が接続されている。
【0039】
駆動回路2aは、前記駆動信号をソース電極42及びソース電極12間に与える信号源S1と、図示しないプラス電源の電圧及び信号源S1が出力する電圧の差分を分圧する抵抗器R3,R4の直列回路とを備える。抵抗器R3,R4の接続点及び抵抗器R3の他端は、夫々JFET40のゲート電極43及びソース電極42に接続されている。前記プラス電源の電圧は、前記駆動信号のHレベルの電圧より高くなるようにしてある。駆動回路2aは、また、ベース抵抗としての抵抗器R5を介してベース及びエミッタが信号源S1に接続されたNPN型のトランジスタQ1と、トランジスタQ1のコレクタ及びエミッタの夫々にベース及びエミッタが接続されたNPN型のトランジスタQ2とを備える。トランジスタQ1のコレクタは、抵抗器R6を介して前記プラス電源に接続されており、トランジスタQ2のコレクタは、ゲート電極43に接続されている。
【0040】
上述した構成において、トランジスタQ1のコレクタには、信号源S1が出力する駆動信号のH/Lレベルを反転させた反転信号が出力され、トランジスタQ2のコレクタには、前記反転信号のL/Hレベルを反転させたH/Lレベルの信号が出力される。つまり、信号源S1が出力する駆動信号がHレベルの場合、トランジスタQ2のコレクタが出力する信号はHレベル(オープンコレクタ)となる。この場合、前記プラス電源の電圧とHレベルの電圧との差分が抵抗器R3,R4で分圧され、抵抗器R3に分圧された電圧がゲート電極43及びソース電極42間に印加されて、ゲート電圧Vgsが正の電圧となる。一方、信号源S1が出力する駆動信号がLレベルの場合、トランジスタQ2のコレクタがLレベルとなるため、ソース電極42及びゲート電極43が何れもLレベルとなり、JFET40のゲート電圧Vgsは略ゼロとなる。
【0041】
換言すれば、Pチャネル型のJFET40のチャネルを伝播する駆動信号によってNチャネル型のMOSFET10をオン/オフさせる場合、駆動信号がHレベルのときは、JFET40のゲート電圧Vgsが正電圧となり、駆動信号がLレベルのときは、ゲート電圧Vgsがゼロ電圧となる。つまり、図5に示すように、MOSFET10をオン/オフに制御するH/Lレベルの駆動信号に対して、ゲート電圧Vgsを高/低に変化させることにより、JFET40のチャネル抵抗を大/小に変更することができる。
【0042】
続いて、Pチャネル型のJFET及びPチャネル型のMOSFETを組み合わせた場合について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る他の半導体装置の回路図である。図中1bは半導体装置であり、半導体装置1bは、Pチャネル型のMOSFET20と、半導体材料が炭化珪素からなりMOSFET20のゲート電極23にドレイン電極41が接続されたPチャネル型のJFET40とを備える。JFET40のソース電極42と、MOSFET20のソース電極22との間には、外部の駆動回路2bからMOSFET20をオン/オフさせる駆動信号が与えられる。MOSFET20のドレイン電極21及びソース電極22には、外部の図示しない負荷及び電源が接続されている。
【0043】
駆動回路2bは、前記駆動信号をソース電極42及びソース電極22間に与える信号源S2と、該信号源S2が出力する電圧を分圧する抵抗器R7,R8の直列回路とを備える。抵抗器R7,R8の接続点及び抵抗器R7の他端は、夫々JFET40のゲート電極43及びソース電極42に接続されている。
【0044】
上述した構成において、信号源S2が出力する駆動信号がLレベルの場合、Lレベルの電圧が抵抗器R7,R8で分圧され、抵抗器R7に分圧された電圧がゲート電極43及びソース電極42間に印加されて、ゲート電圧Vgsは正の電圧となる。一方、信号源S2が出力する駆動信号がHレベルの場合、抵抗器R7に分圧される電圧は略ゼロであるから、ゲート電圧Vgsは略0となる。
【0045】
換言すれば、Pチャネル型のJFET40のチャネルを伝播する駆動信号によってPチャネル型のMOSFET20をオン/オフさせる場合、駆動信号がLレベルのときは、JFET40のゲート電圧Vgsが正電圧となり、駆動信号がHレベルのときは、ゲート電圧Vgsがゼロ電圧となる。つまり、図5に示すように、MOSFET20をオン/オフに制御するL/Hレベルの駆動信号に対して、ゲート電圧Vgsを高/低に変化させることにより、JFET40のチャネル抵抗を大/小に変更することができる。
【0046】
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0047】
以上のように本実施の形態2によれば、Nチャネル(又はPチャネル)型のJFETのドレイン及びソースに略対象性があることから、MOSFETをオン/オフに制御する駆動信号が与えられるJFETのソース電極又はドレイン電極の電位を基準とするゲート電圧を、低/高(又は高/低)に変化させた場合は、MOSFETをオン/オフに制御するときのFETチャネル抵抗を大/小に変更することが可能となる。
【0048】
(実施の形態3)
実施の形態1が、半導体素子としてJFET30を用いる形態であるのに対し、実施の形態3は、半導体素子として逆並列に接続されたショットキバリアダイオードを用いる形態である。
図8は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の回路図である。図中1cは半導体装置であり、半導体装置1cは、Nチャネル型のMOSFET10と、半導体材料が炭化珪素からなり逆並列に接続されたショットキバリアダイオードD1,D2とを備える。ショットキバリアダイオードD1,D2は、夫々カソード及びアノードがMOSFET10のゲート電極13に接続されている。ショットキバリアダイオードD1,D2夫々のアノード及びカソードと、MOSFET10のソース電極12との間には、外部の信号源S1からMOSFET10をオン/オフさせる駆動信号が与えられる。MOSFET10のドレイン電極11及びソース電極12には、外部の図示しない負荷及び電源が接続されている。
【0049】
上述した構成において、信号源S1が出力する駆動信号がLレベルからHレベルになった場合、オン抵抗が比較的大きいショットキバリアダイオードD1が導通することにより、ゲート電極13へ流入するゲート電流を抑制してMOSFET10を緩やかにオンさせる。また、信号源S1が出力する駆動信号がHレベルからLレベルとなった場合、オン抵抗が比較的小さいショットキバリアダイオードD2が導通することにより、低抵抗でゲート電極13からゲート電流を引き出してMOSFET10を速やかにオフさせる。
尚、MOSFET10がPチャネル型の場合は、ショットキバリアダイオードD1のオン抵抗を比較的小さくし、ショットキバリアダイオードD2のオン抵抗を比較的大きくすることにより、上記と同様の効果を奏する。
【0050】
次に、ショットキバリアダイオードD1,D2のオン抵抗について説明する。
図9は、ショットキバリアダイオードD1,D2の構成を模式的に示す縦断面図である。図中71はn+型半導体層であり、該n+型半導体層71の上面にはn−型半導体層72が積層されている。n+型半導体層71の下面はカソードとなる裏面金属電極層70に覆われており、n−型半導体層72の上面の中央部には、アノードとなる金属電極膜73が形成されている。n−型半導体層72の上面のその他の部分は、珪素酸化物からなる絶縁膜74に覆われている。
【0051】
n+型半導体層71及びn−型半導体層72の夫々は、金属電極膜73から裏面金属電極層70に導通するオン電流に対し、n+層抵抗81及びn−層抵抗82によって表される等価抵抗を有している。また、裏面金属電極層70及び金属電極膜73の夫々は、裏面金属電極層抵抗80及び金属電極膜抵抗83によって表される等価抵抗を有している。これらの等価抵抗は、オン電流に対して直列に接続されたオン抵抗とみなされる。ショットキバリアダイオードD1,D2のオン抵抗は、製造時にn−型半導体層(以下、n−層という)72の比抵抗及び/又は厚みを調整することにより、抵抗値を変化させることができる。
【0052】
図10は、ショットキバリアダイオードD1,D2のオン抵抗がn−層72の比抵抗及び/又は厚みに応じて変化する様子を模式的に示す説明図である。図の横軸は順電圧VF(V)を表し、縦軸は順電流IF(A)を表す。図10において、実線はn−層72の比抵抗及び/又は厚みが比較的小さい場合を示し、破線はn−層72の比抵抗及び/又は厚みが比較的大きい場合を示す。実線及び破線の傾きの逆数がオン抵抗に相当する。つまり、n−層72の比抵抗及び/又は厚みが小から大に変化するに応じて、順電圧VFに対する順電流IFの傾きが大から小に変化し、オン抵抗が小から大に変化する様子が読み取れる。
【0053】
次に、同一基板上にMOSFET10及びショットキバリアダイオードD1,D2を搭載した半導体装置1cの実装例について説明する。
図11は、半導体装置1cの模式的な平面図である。半導体装置1cは、セラミックからなる基板5aを備え、該基板5a上の導電体パターン51,56,57上に縦型のMOSFET10及びショットキバリアダイオードD1,D2が各別に近接して配されている。MOSFET10のドレイン電極11と導電体パターン51、及びショットキバリアダイオードD1,D2の裏面金属電極層70,70と導電体パターン56,57は、夫々高温ハンダで接続されている。
【0054】
ソース電極12及びゲート電極13は、夫々リード線62,65で基板5a上の導電体パターン53,58に接続されている。導電体パターン56,58間はリード線66で接続されており、導電体パターン58及びショットキバリアダイオードD2の金属電極膜73間は、リード線67で接続されている。また、ショットキバリアダイオードD1の金属電極膜73と、基板5a上の導電体パターン59とがリード線68で接続されており、更に導電体パターン57,59間がリード線69で接続されている。
【0055】
ショットキバリアダイオードD1,D2は、MOSFET10に近接して配されているため、MOSFET10のスイッチングによる発熱の影響を間近に受けるが、ショットキバリアダイオードD1,D2の半導体材料が炭化珪素からなるため、400℃程度の高温であっても劣化の虞がなく、オン抵抗が相異なるダイオードとして確実に動作する。
【0056】
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0057】
以上のように本実施の形態3によれば、MOSFETがNチャネル(又はPチャネル)型であるため、MOSFETをオン/オフに制御するときのゲート電流が、MOSFETに対して順/逆方向(又は逆/順方向)に流れる。また、ショットキバリアダイオードが逆並列に接続されており、MOSFETに対して順方向の抵抗が逆方向の抵抗より大きく(又は小さく)なる。
従って、MOSFETをオン/オフに制御するときのゲート電流を、ショットキバリアダイオードの抵抗によって小/大に変更することが可能となる。
【0058】
尚、実施の形態1から3にあっては、スイッチング素子にMOSFET10又は20を用いたが、これに限定されるものではなく、IGBT等の絶縁ゲートを有するバイポーラ素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b、1c 半導体装置
5、5a 基板
10、20 MOSFET(スイッチング素子)
13、23 ゲート電極(絶縁ゲート)
30、40 JFET(半導体素子)
31、41 ドレイン電極
32、42 ソース電極
33、43 ゲート電極
D1、D2 ショットキバリアダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ゲート型のスイッチング素子と、該スイッチング素子のオン/オフを制御する制御信号が伝播する半導体回路とを基板上に備える半導体装置において、
前記半導体回路は、シリコンよりバンドギャップが大きい半導体からなる1又は複数の半導体素子を含み、
該半導体素子は、前記制御信号が伝播するときの抵抗の大/小を可変に構成してあること
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子は、ドレイン電極又はソース電極の電位を基準とするゲート電極の電圧の低/高(又は高/低)に応じてチャネルの抵抗が大/小に変化するNチャネル(又はPチャネル)型のFETであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記FETはJFET又はデプレッション型のMOSFETであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、Nチャネル(又はPチャネル)型であり、
前記半導体素子は、逆並列に接続されたショットキバリアダイオードであり、前記スイッチング素子に対する順方向(又は逆方向)の抵抗を逆方向(又は順方向)の抵抗より大きくしてあること
を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子は、半導体材料が炭化珪素からなることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−199178(P2011−199178A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66708(P2010−66708)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】