説明

半導体装置

【課題】内部回路を静電破壊から保護するための静電気保護素子を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】保護トランジスタQn1及び保護トランジスタQn2各々は、ドレイン端子がパッドへと接続され、ゲート端子及びソース端子がVSSへと接続される。一方、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4は、ゲート端子及びソース端子がVSSへと接続され、ドレイン端子は各々抵抗素子R3及び抵抗素子R4を介してVSSへと接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に内部回路を静電破壊から保護するための静電気保護素子を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置においては、外部から加わる静電気ストレスによる内部回路の破壊を防止するため、パッドと接地(VSS)の間に、内部回路を保護する静電気保護素子(以下、保護素子)を設けている。保護素子としては、ダイオード、MOSトランジスタ、サイリスタ等が使用されている。その中でも、MOSトランジスタは、構造が単純であり、応答速度が速く、放電能力が大きい等の理由から、保護素子として広く使用されている。
【0003】
MOSトランジスタを保護素子として使用する場合、大きな静電気耐圧を確保するため、トランジスタの寸法(チャネル幅)を大きくすることが考えられる。しかし、これでは、保護素子が接続されるパッドの端子容量が増加する、また、保護素子の占有面積が増大するという問題が生じる。
【0004】
そのため、実際の製品設計においては、保護素子に隣接して、予備の保護素子を設けておく。そして、静電気耐圧と端子容量の関係を測定により求めた後、予備の保護素子を接続するか否かを決定し、必要あれば予備の保護素子をパッドへと接続して最終的な保護素子を製品に適用するといった調整が行われている。
また、端子容量に関しては、半導体チップが封止されるパッケージ内における、該当端子が接続される電気配線の形状によっても変わり得るものである。そのため、各端子の容量値を揃える目的で、予備の保護素子により容量値の調整が行われることもある。
【0005】
図6は、従来の半導体装置における、保護素子及び予備の保護素子の接続を示す回路図である。図6において、パッドとVSSの間には、保護素子としてNチャネル型MOSトランジスタ(保護トランジスタQn1、保護トランジスタQn2とする)、予備の保護素子としてNチャネル型MOSトランジスタ(予備トランジスタQn3、予備トランジスタQn4とする)が設けられている。
【0006】
保護トランジスタQn1及び保護トランジスタQn2は、パッドに接続された保護素子であり、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4は、パッドには接続されない予備の保護素子である。なお、説明の都合上、保護トランジスタ及び予備トランジスタを、各々2つのトランジスタで構成している。
【0007】
保護トランジスタQn1及び保護トランジスタQn2各々は、ドレイン端子がパッドへと接続され、ゲート端子及びソース端子がVSSへと接続されている。一方、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4は、ドレイン端子、ゲート端子及びソース端子が全てVSSへ接続されている。
【0008】
図7は、図6に示した回路図に対応するレイアウト図であり、従来の静電気保護素子のレイアウトを示している。図7において、保護トランジスタQn1は、4本のゲートGP(ゲートポリシリコン)で構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、保護トランジスタQn1は、4つのトランジスタを並列接続して構成されている。4つのトランジスタとは、N型拡散層S1をソース、N型拡散層D1をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S2をソース、N型拡散層D1をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S2をソース、N型拡散層D2をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S3をソース、N型拡散層D2をドレインとするトランジスタである。
【0009】
同様に、保護トランジスタQn2は、2本のゲートGPで構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、保護トランジスタQn2は、2つのトランジスタを並列接続して構成されている。2つのトランジスタは、N型拡散層S3をソース、N型拡散層D3をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S4をソース、N型拡散層D3をドレインとするトランジスタである。
【0010】
また、予備トランジスタQn3は、2本のゲートGPで構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、予備トランジスタQn3は、2つのトランジスタを並列接続して構成されている。2つのトランジスタは、N型拡散層S4をソース、N型拡散層D4をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S5をソース、N型拡散層D4をドレインとするトランジスタである。また、予備トランジスタQn4も、2本のゲートGPで構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、予備トランジスタQn4は、2つのトランジスタを並列接続して構成されている。2つのトランジスタは、N型拡散層S5をソース、N型拡散層D5をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S6をソース、N型拡散層D5をドレインとするトランジスタである。
【0011】
そして、図7に示した全てのゲートGP及びN型拡散層S1〜S6は、コンタクトホールCT及びメタル配線を介して、同層のメタル配線M2(VSSへと接続されるメタル配線)へと接続されている。
また、N型拡散層D1〜D3は、コンタクトホールCT及びメタル配線を介して、同層のメタル配線M1(パッドへ接続されるメタル配線)へ接続される。一方、N型拡散層D4〜D5は、コンタクトホールCTを介してメタル配線へ接続されるが、このメタル配線は、C1部でそれぞれN型拡散層S5〜S6からのメタル配線と短絡され、メタル配線M2へ接続される。
【0012】
保護トランジスタQn1、保護トランジスタQn2、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4のドレイン端子、ゲート端子、ソース端子は、上記の様にメタル配線M1又はM2と接続される。そして、これらのトランジスタのN型拡散層を取り囲むように、半導体基板の表面に素子分離領域が設けられ、その周囲にP型拡散層PDが設けられる。また、P型拡散層PDは、コンタクトホールCT及びメタル配線を介して、メタル配線M2へと接続されている。
【0013】
このように構成された従来の静電気保護素子においては、パッドに静電気サージが印加されると、パッドに接続されたN型拡散層とP型半導体基板との間でブレークダウンが発生し、静電気サージは、上記P型拡散層PDを介して接地配線(上記メタル配線M2)へと逃がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−167049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、このように予備の保護素子を設ける構成をとる場合、予備の保護素子をパッドと接続していなくとも、隣接する保護素子を破壊して静電気耐圧を低下させる場合がある。すなわち、図7に示したレイアウトの場合、保護トランジスタQn2における2つのトランジスタのうち、予備トランジスタQn3に隣接するトランジスタの放電電流が、保護トランジスタQn1を構成する各トランジスタの放電電流より増加して、保護トランジスタQn2が破壊するという問題があった。以下、この問題について、図8を用いて説明する。
【0016】
図8は製造プロセス工程を終了した後の断面図であり、図7のA−A’間に相当する断面図である。図7に対応する部分には、同一の符号を付している。なお、説明の都合上、保護トランジスタQn1のN型拡散層S1、N型拡散層S2及びN型拡散層S3と、N型拡散層S1に隣接するP型拡散層PDにおけるコンタクトは、図8において省略している。また、図8において、NPNバイポーラB1〜B5は、図7におけるN型拡散層のうちの一つをコレクタ、他の一つをエミッタ、P型半導体基板Psubをベースとする寄生ラテラルバイポーラトランジスタである。
【0017】
保護トランジスタQn1のドレイン、すなわちパッドに正電位が加わると、例えばN型拡散層D1のゲートとの境界部で電界が大きくなり、まずN型拡散層D1からP型半導体基板Psubに向かってブレークダウンする。そして、N型拡散層D1から流れ込んだ電流により、P型半導体基板Psubの基板電位が浮き上がり、N型拡散層D1をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層S1をエミッタとするNPNバイポーラB1と、N型拡散層D1をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層S2をエミッタとするNPNバイポーラB2のいずれもが導通状態となり、コンタクトホールCT及びメタル配線M2を介してVSSへ電流が流れる。
【0018】
一方、予備トランジスタQn3に隣接する保護トランジスタQn2においても、保護トランジスタQn1と同じく、N型拡散層D3をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層S3をエミッタとするNPNバイポーラB3と、N型拡散層D3をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層S4をエミッタとするNPNバイポーラB4のいずれもが導通状態となり、コンタクトホールCT及びメタル配線M2を介してVSSへ電流が流れる。
【0019】
ここで、予備トランジスタQn3のN型拡散層D4は、コンタクトホールCT及びメタル配線M2を介してVSSへと接続されているから、N型拡散層D3をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層D4をエミッタとするNPNバイポーラB5が形成されている。
すなわち、N型拡散層D3とVSSの間に、NPNバイポーラB4と、NPNバイポーラB4に比べてベース長の長いNPNバイポーラB5が、並列接続された状態になっている。このNPNバイポーラB5に電流が流れると、NPNバイポーラB4のベース電位は更に浮き上がり、コレクタ電流、すなわちN型拡散層D3からVSSへ流れる電流が増大する。
【0020】
これにより、保護トランジスタQn2のトランジスタのうち、予備トランジスタQn3に隣接するトランジスタの放電電流が、保護トランジスタQn1を構成する各トランジスタの放電電流より増加し、保護トランジスタQn2の破壊や、コンタクト部(N型拡散層D3上のコンタクトホールCT)の発熱による破壊が発生する。
すなわち、従来の半導体装置においては、予備の保護素子をパッドと接続していない場合であっても、予備の保護素子に隣接する保護素子において、予備の保護素子を経由した新たな放電経路に起因して破壊が発生し、静電気耐圧を低下させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、保護素子をパッドと接地との間に前記保護素子の端子を介して接続し、前記保護素子に隣接して予備の保護素子を配置した半導体装置であって、前記予備の保護素子を前記パッドへ接続する場合の端子は、非接続の場合において抵抗素子を介して前記接地へと接続されていることを特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の半導体装置によれば、予備の保護素子をパッドと接続していない場合、予備の保護素子に隣接する保護素子を流れる電流の一部を、抵抗素子を介して接地へと流れるようにし、予備の保護素子に隣接しない保護素子と同じ電流を流すようにできる。従って、予備の保護素子に隣接する保護素子において、予備の保護素子を経由した新たな放電経路に起因する破壊が発生せず、静電気耐圧を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の半導体装置における静電保護素子の回路図である。
【図2】図1の静電保護素子のレイアウト図である。
【図3】図2の静電保護素子の断面図である。
【図4】本発明の半導体装置における静電保護素子のレイアウト図である。
【図5】図4の静電保護素子の断面図である。
【図6】従来の半導体装置における静電保護素子の回路図である。
【図7】図6の静電保護素子のレイアウト図である。
【図8】図7の静電保護素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の半導体装置における、保護素子及び予備の保護素子の接続を示す回路図である。図1において、図6と同一の部分には同一の符号を付している。
図1において、パッドとVSS(接地)の間には、保護素子としてNチャネル型MOSトランジスタ(保護トランジスタQn1、保護トランジスタQn2とする)、予備の保護素子としてNチャネル型MOSトランジスタ(予備トランジスタQn3、予備トランジスタQn4とする)が設けられている。なお、図1におけるパッドは、半導体装置の動作時において半導体装置外部から信号が入力され、入力された信号は図1に示す抵抗素子R0を介して内部回路へ入力される。
【0025】
図1に示した保護トランジスタQn1及び保護トランジスタQn2は、パッドに接続された保護素子であり、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4は、パッドには接続されない予備の保護素子である。なお、保護トランジスタ及び予備トランジスタを、各々2つのトランジスタで構成しているが、この数に限定されるものではない。
【0026】
保護トランジスタQn1及び保護トランジスタQn2各々は、ドレイン端子がパッドへと接続され、ゲート端子及びソース端子がVSSへと接続されている。一方、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4は、ゲート端子及びソース端子がVSSへと接続され、ドレイン端子は各々抵抗素子R3及び抵抗素子R4を介してVSSへと接続されている。すなわち、上述の従来の半導体装置と相違し、予備の保護素子のドレイン端子は抵抗素子を介して接地されている。
【0027】
図2は、図1に示した回路図に対応するレイアウト図であり、本発明の半導体装置における保護素子のレイアウトを示している。図2において、図7と同一の部分には同一の符号を付している。図2において、保護トランジスタQn1は、4本のゲートGP(ゲートポリシリコン)で構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。
【0028】
すなわち、保護トランジスタQn1は、4つのトランジスタを並列接続して構成されている。4つのトランジスタとは、N型拡散層S1をソース、N型拡散層D1をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S2をソース、N型拡散層D1をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S2をソース、N型拡散層D2をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S3をソース、N型拡散層D2をドレインとするトランジスタである。
【0029】
同様に、保護トランジスタQn2は、2本のゲートGPで構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、保護トランジスタQn2は、2つのトランジスタを並列接続して構成されている。2つのトランジスタは、N型拡散層S3をソース、N型拡散層D3をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S4をソース、N型拡散層D3をドレインとするトランジスタである。
【0030】
また、予備トランジスタQn3は、2本のゲートGPで構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、予備トランジスタQn3は、2つのトランジスタを並列接続して構成されている。2つのトランジスタは、N型拡散層S4をソース、N型拡散層D4をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S5をソース、N型拡散層D4をドレインとするトランジスタである。また、予備トランジスタQn4も、2本のゲートGPで構成されており、それぞれの両脇において半導体基板の表面にN型拡散層が形成されている。すなわち、予備トランジスタQn4は、2つのトランジスタを並列接続して構成されている。2つのトランジスタは、N型拡散層S5をソース、N型拡散層D5をドレインとするトランジスタと、N型拡散層S6をソース、N型拡散層D5をドレインとするトランジスタである。
【0031】
そして、図2に示した全てのゲートGP及びN型拡散層S1〜S6は、コンタクトホールCT及びメタル配線を介して、同層のメタル配線M2(VSSへと接続されるメタル配線)へと接続されている。
また、N型拡散層D1〜D3は、コンタクトホールCT及びメタル配線を介して、同層のメタル配線M1(パッドへ接続されるメタル配線)へ接続される。一方、N型拡散層D4〜D5は、コンタクトホールCTを介してメタル配線M3へ接続されるが、このメタル配線M3は、図中コンタクトホールCT1を介して抵抗素子RTの一端へと接続される。
【0032】
ここで、図2における抵抗素子RTは、トランジスタのゲートと同層のポリシリコンで構成される抵抗素子である。また、図2において、図1における抵抗素子R3,R4を、抵抗部の面積削減のため、N型拡散層D4〜D5で一つの抵抗素子RTを兼用する構成としている。なお、抵抗素子はゲートと同層でなく、他の配線層や、或いは拡散層を用いて構成してもよい。
また、抵抗素子RTの他端は、コンタクトホールCT2及びメタル配線を介して上記メタル配線M2へと接続される。すなわち、上述の従来の半導体装置と相違し、N型拡散層D4〜D5は、抵抗素子RTを介して接地される。
【0033】
保護トランジスタQn1、保護トランジスタQn2、予備トランジスタQn3及び予備トランジスタQn4は、上記の様にメタル配線M1又はM2と接続される。そして、これらのトランジスタのN型拡散層を取り囲むように、半導体基板の表面に素子分離領域が設けられ、その周囲にP型拡散層PDが設けられる。また、P型拡散層PDは、コンタクトホールCT及びメタル配線を介して、メタル配線M2へと接続されている。
【0034】
図3は、製造プロセス工程を終了した後の断面図であり、図2のA−A’間に相当する断面図である。図8に対応する部分には、同一の符号を付している。なお、説明の都合上、保護トランジスタQn1のN型拡散層S1、N型拡散層S2及びN型拡散層S3のコンタクトホールCT、保護トランジスタQn2と予備トランジスタQn3で共有するN型拡散層S4のコンタクトホールCT、予備トランジスタQn4のN型拡散層S5、N型拡散層S6のコンタクトホールCT及びP型拡散層PDのコンタクトホールCTは、図3において省略している。
【0035】
また、メタル配線M3及びメタル配線M3と抵抗素子RTとの間のコンタクトホールCT1は、図2のA−A’間にはないが、図3において発明の理解を容易にするため、メタル配線M3及びコンタクトホールCT1を図示している。なお、図3におけるNPNバイポーラB1〜B5は、図2におけるN型拡散層のうちの一つをコレクタ、他の一つをエミッタ、P型半導体基板Psubをベースとする寄生ラテラルバイポーラトランジスタである。
【0036】
ここで、抵抗素子RTの抵抗値は、以下に説明する観点から設定される。すなわち、図3における保護トランジスタQn2のN型拡散層D3の放電先を考えると、まずゲートGPを挟んで隣接するN型拡散層S3及びN型拡散層S4があり、これらはいずれもVSSへと接続されている。すなわち、ほとんどの電流は、この経路(N型拡散層D3をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層S3をエミッタとするNPNバイポーラB3と、N型拡散層D3をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層S4をエミッタとするNPNバイポーラB4)を介して流れる。
【0037】
しかし、N型拡散層D3からの次の放電経路として、ゲートGPを3本挟んだ先の、VSSへと接続されているN型拡散層S2とN型拡散層S5への経路がある。ところで、この経路は、ゲートGPが同一のピッチ(幅及び間隔)で配置されている場合、予備トランジスタに隣接されていない保護トランジスタQn1のN型拡散層D1から、そこからゲートを3本挟んだ先の、VSSへと接続されているN型拡散層S3への経路と同じである。なぜなら、NPNバイポーラB5が形成されるN型拡散層D3からN型拡散層D4への経路は、保護トランジスタQn1のN型拡散層D1からN型拡散層D2への経路(N型拡散層D1をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層D2をエミッタとする図示しないNPNバイポーラによる経路)に相当する。また、N型拡散層D4からN型拡散層S5への経路は、N型拡散層D2からN型拡散層S3への経路に相当する。すなわち、保護トランジスタQn2のN型拡散層D3からN型拡散層S5への経路は、保護トランジスタQn1のN型拡散層D1からN型拡散層S3への経路に相当する。
【0038】
従って、保護トランジスタQn2のN型拡散層D3から、予備トランジスタQn3のN型拡散層D4へ放電するときの導通抵抗(N型拡散層D3をコレクタ、P型半導体基板Psubをベース、N型拡散層D4をエミッタとするNPNバイポーラB5の導通抵抗)が、上記N型拡散層S2又はN型拡散層S5まで放電するときの導通抵抗以上であれば、予備トランジスタに隣接されていない保護トランジスタQn1と殆ど同じ放電状態にできると考えられる。
【0039】
すなわち、N型拡散層D3からN型拡散層S2又はN型拡散層S5へ放電するときの導通抵抗と、N型拡散層D3からN型拡散層D4へ放電するときの導通抵抗との差を求め、その差を、付加する抵抗素子RTの抵抗値と決定すればよい。すなわち、抵抗素子RTの抵抗値は、MOSトランジスタの拡散層間隔(N型拡散層D4とN型拡散層S5との間隔)をL、MOSトランジスタのチャネル幅をWとして、(P型半導体基板Psubの比抵抗)×L/Wで算出される。なお、N型拡散層D3からN型拡散層D4の経路(NPNバイポーラB5)に殆ど電流を流さないようにするため、例えば、決定された上記抵抗値の5〜6倍以上の値を、抵抗素子RTの抵抗値としてもよい。
【0040】
このように、本実施形態による半導体装置は、保護素子(保護トランジスタQn1及びQn2)をパッドと接地(VSS)との間に保護素子の端子(ドレイン端子であるN型拡散層D1、N型拡散層D2及びN型拡散層D3)を介して接続し、保護素子に隣接して予備の保護素子(予備トランジスタQn3及びQn4)を配置した半導体装置であって、予備の保護素子(予備トランジスタQn3及びQn4)をパッドへ接続する場合の端子(ドレイン端子であるN型拡散層D4及びN型拡散層D5)は、非接続の場合において抵抗素子(抵抗素子RT)を介して接地(VSS)へと接続されていることを特徴とする半導体装置である。
【0041】
本発明の半導体装置によれば、予備の保護素子(予備トランジスタQn3)をパッドと接続していない場合、予備の保護素子に隣接する保護素子(保護トランジスタQn2)を流れる電流の一部を、抵抗素子(抵抗素子RT)を介して接地へと流れるようにし、予備の保護素子に隣接しない保護素子(保護トランジスタQn1)と同じ電流を流すようにできる。従って、予備の保護素子に隣接する保護素子(保護トランジスタQn2)において、予備の保護素子(予備トランジスタQn3)を経由した新たな放電経路(NPNバイポーラB5)に起因する破壊が発生せず、静電気耐圧を向上させるという効果を奏する。
【0042】
次に、添付図面(図4及び図5)を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。
図4は、図1に示した回路図に対応するレイアウト図であり、本発明の半導体装置における静電気保護素子のレイアウトを示している。図4において、図2と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図4において、図2と相違する点は、図2における抵抗素子RTを、P型半導体基板抵抗を用いてレイアウトした点である。
【0043】
図4において、N型拡散層D4〜D5は、コンタクトホールCTを介してメタル配線M3へ接続されるが、このメタル配線M3は、図中コンタクトホールCT3を介してP型拡散層PD2へと接続される。
すなわち、上述の第1の実施形態と相違して、N型拡散層D4〜D5は、P型拡散層PD2とP型拡散層PDの間で形成されるP型半導体基板抵抗を介して接地される。なお、この抵抗の抵抗幅は、図4におけるW2であり、保護トランジスタ及び予備の保護トランジスタを形成するトランジスタのチャネル幅(W1)と同一の幅である。一方、抵抗長は、P型拡散層PD2とP型拡散層PDの間の距離L2(図5において示す)である。
【0044】
図5は、製造プロセス工程を終了した後の断面図であり、図4のA−A’間に相当する断面図である。図3に対応する部分には、同一の符号を付し、説明を省略する。なお、図5において、図3と同様にコンタクトホールCTを一部省略し、図3におけるコンタクトホールCT1の替りにコンタクトホールCT3を図示している。
上述の通り、図5において図3と相違する点は、図3におけるゲートGPと同層で形成される抵抗素子RTが、P型半導体基板抵抗となった点である。
【0045】
すなわち、図3における抵抗素子用ゲートGPの替りに、P型拡散層PD2が新たに設けられている。また、N型拡散層D4〜D5は、メタル配線M3及びコンタクトホールCT3を介して、このP型拡散層PD2に接続されている。
P型拡散層PD2は、P型拡散層PDとL2の間隔をもって形成される。また、N型拡散層D4とN型拡散層S5の間隔を、図においてL1としている。なお、全てのN型拡散層の間隔(素子分離幅)もL1であるものとする。
【0046】
ここで、抵抗素子RTの抵抗値(抵抗幅W2、抵抗長L2)は、以下に説明する観点から設定される。
すなわち、抵抗素子RTの抵抗値の目安となる放電時の導通抵抗は、第1の実施形態において説明したとおり、N型拡散層D3からN型拡散層S5へ放電する時の導通抵抗と、N型拡散層D3からN型拡散層D4へ放電する時の導通抵抗との差である。
【0047】
ここで、この導通抵抗の差は、N型拡散層D4とN型拡散層S5との間の導通抵抗となり、その抵抗長はL1、抵抗幅はW1である。従って、付加する抵抗素子RTの抵抗幅W2はW1と等しいから、抵抗長L2を、L1と決定することができる。すなわち、抵抗素子RTの抵抗値は、(P型半導体基板Psubの比抵抗)×(MOSトランジスタの拡散層間隔L1)/(MOSトランジスタのチャネル幅W1)で算出される。
なお、N型拡散層D3からN型拡散層D4の経路(NPNバイポーラB5)に殆ど電流を流さないようにするため、例えば、決定された上記抵抗長L2の5〜6倍以上の値を、抵抗素子RTの抵抗長としてもよい。
【0048】
このように、本実施形態による半導体装置は、保護素子(保護トランジスタQn1及びQn2)をパッドと接地(VSS)との間に保護素子の端子(ドレイン端子であるN型拡散層D1、N型拡散層D2及びN型拡散層D3)を介して接続し、保護素子に隣接して予備の保護素子(予備トランジスタQn3及びQn4)を配置した半導体装置であって、予備の保護素子(予備トランジスタQn3及びQn4)をパッドへ接続する場合の端子(ドレイン端子であるN型拡散層D4及びN型拡散層D5)は、非接続の場合において抵抗素子(抵抗素子RT)を介して接地(VSS)へと接続されていることを特徴とする半導体装置である。
【0049】
また、上記保護素子(保護トランジスタQn1及びQn2)、上記予備の保護素子(予備トランジスタQn3及びQn4)はMOSトランジスタ(Nチャネル型MOSトランジスタ)であることを特徴とする。
また、上記抵抗素子(抵抗素子RT)は、上記MOSトランジスタが形成される半導体基板(P型半導体基板Psub)により形成されていることを特徴とする。
また、上記抵抗素子の抵抗幅(W2)は上記MOSトランジスタのチャネル幅(W12)と同一の値であり、上記抵抗素子のチャネル長(L2)は上記MOSトランジスタの素子分離幅(L1)以上の値であることを特徴とする。
【0050】
これにより、抵抗幅W2をW1と合わせ、抵抗長L2をL1と同じ、或いはそれ以上の値に設計できるので、第1の実施形態の効果と同じ効果を得ることができる。
また、第1の実施形態における付加すべき抵抗素子はゲートGPの抵抗の影響を受けるため、その抵抗長は、並行配置されたトランジスタのチャネル幅(上記W1に相当する)と同じ長さ、或いはその整数倍になるとは限らない。本実施形態においては、保護トランジスタの形状、すなわち幅W1に応じて、付加抵抗の幅を設定できるので、付加抵抗を容易にレイアウト設計できる効果を奏する。
【0051】
また、N型拡散層D3からN型拡散層S5へ放電する時の導通抵抗と、N型拡散層D3からN型拡散層D4へ放電する時の導通抵抗は、その経路がP型半導体基板Psubであるため、P型半導体基板抵抗と密接に関係する。すなわち、P型半導体基板抵抗の増減により、上記導通抵抗も増減する。従って、P型半導体基板抵抗を抵抗素子として使用することで、決定すべき抵抗値は、P型半導体基板抵抗が変動した場合の影響に応じたものとなる。そのため、付加すべき抵抗素子がゲートGPで構成される第1の実施形態に比べて、設計の精度が向上する効果も奏する。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を、実施形態に基づき説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。本実施形態においては、半導体装置外部からの入力信号が入力される入力端子に接続された保護素子について説明したが、MOSトランジスタをバッファに用いた出力回路に接続される出力端子へ上記説明の保護素子を適用してもよい。また、保護素子としてバイポーラトランジスタを使用した半導体装置に対しても、本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
Qn1,Qn2…保護トランジスタ、Qn3,Qn4…予備トランジスタ、GP…ゲート、CT,CT1,CT2,CT3…コンタクトホール、S1,S2,S3,S4,S5,S6,D1,D2,D3,D4,D5…N型拡散層、M1,M2,M3…メタル配線、PD,PD2…P型拡散層、B1,B2,B3,B4,B5…NPNバイポーラ、R0,R3,R4,RT…抵抗素子、Psub…P型半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護素子をパッドと接地との間に前記保護素子の端子を介して接続し、前記保護素子に隣接して予備の保護素子を配置した半導体装置であって、前記予備の保護素子を前記パッドへ接続する場合の端子は、非接続の場合において抵抗素子を介して前記接地へと接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記保護素子、前記予備の保護素子はMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記抵抗素子は、前記MOSトランジスタのゲート電極と同層の配線により形成されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記抵抗素子の抵抗値は、(前記MOSトランジスタが形成される半導体基板の比抵抗)×(前記MOSトランジスタの拡散層間隔)/(前記MOSトランジスタのチャネル幅)で算出される値以上であることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記抵抗素子は、前記MOSトランジスタが形成される半導体基板により形成されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記抵抗素子の抵抗幅は、前記MOSトランジスタのチャネル幅と同一の値であり、前記抵抗素子のチャネル長は、前記MOSトランジスタの素子分離幅以上の値であることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−9289(P2011−9289A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148854(P2009−148854)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】