説明

半導体製造方法

【課題】ガラス上に高効率な薄膜多結晶シリコン(Si)太陽電池を実現することを目的とした半導体製造方法。
【解決手段】半導体励起(ダイオード励起)された固体連続波レーザーを利用して(110)と(111)に配向制御した大粒径多結晶シリコン(Si)薄膜をガラス上に形成し、このSi膜を種(シード)結晶として多結晶Si層を直接成長する。
その後、本薄膜に対してSi層が溶融しない条件でエネルギービームを照射してSiの固相成長を行うことを特徴とした太陽電池用半導体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造方法に関し、特にガラス上に形成された高効率薄膜シリコン(Si)系太陽電池を実現するための半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時では、ガラス上の高効率Si系薄膜太陽電池が注目されている。現在のガラス上の薄膜Si系太陽電池は、非晶質あるいは微結晶からなる薄膜Si系材料が主流となっている。
【0003】
しかし、非晶質あるいは微結晶からなる薄膜Si系太陽電池は変換効率が低いという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス上の薄膜Si系太陽電池、特に非晶質あるいは微結晶からなる薄膜Si系太陽電池は、バルク単結晶Si太陽電池あるいはバルク多結晶Si太陽電池に比較して変換効率が悪い。これは、非晶質Siあるいは微結晶Siの結晶品質が単結晶Siやバルク多結晶Siに比較して劣っていることに起因する。
【0005】
従って、ガラス上に高品質の多結晶Siを形成することができれば、ガラス上の薄膜Si系太陽電池の変換効率に大きなブレークスルーをもたらすと期待される。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、ガラス基板上に高効率薄膜Si系太陽電池を形成するために、薄膜Siでありながら、大粒径を有する多結晶Si薄膜を形成するための半導体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0008】
半導体励起(ダイオード励起)された固体連続波レーザーを利用して(110)と(111)に配向制御した大粒径多結晶Si薄膜を形成し、このSi膜を種(シード)結晶として多結晶Si層を直接成長する。最後に、本薄膜に対して、Si層が溶融しない条件でエネルギービームを再度照射して、Siの固相成長を行う。
【0009】
本発明によれば、ガラス上に大粒径の多結晶Siを形成することが可能になり、現在実用化されている非晶質Siや微結晶Siからなる薄膜Si系太陽電池よりも高効率の薄膜Si系太陽電池をガラス上に安価に実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ガラス基板上に高い変換効率を有する薄膜Si系太陽電池を安価に実現するための半導体製造方法が提案される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳述する。本実施例では、半導体励起(ダイオード励起)された固体連続波レーザーとして、Nd:YVOの第2高調波である波長532nmを利用して(110)と(111)に配向制御した大粒径多結晶Si薄膜を形成し、本Si膜の表面を水素終端して表面を安定化させたのち、該Si薄膜を種(シード)結晶として、プラズマCVDにて多結晶Si層を直接成長する。さらに、本多結晶Si薄膜に対して、上記と同一の半導体励起(ダイオード励起)固体連続波レーザーを利用してレーザー固相成長を実現した。
【0012】
図1は、本実施形態によって形成された薄膜Si系太陽電池の概略構造図である。
【0013】
図2〜図4は、Si薄膜の製造方法を工程順に示す概略模式図である。
先ず、図2(a)に示すように、ガラス基板上1にプラズマCVDにより不純物をドーピングした非晶質Si薄膜2を200nm成長する。該非晶質Si薄膜は、シランガスとドーピングガスを混合させることにより形成される。
【0014】
続いて、図2(b)に示すように、波長532nmを有する半導体励起固体CWレーザー(Nd:YVO,波長532nm)を利用し、パワー4.0ワットに設定し、レーザースキャン速度40cm/sでスキャンすることにより、(110)あるいは(111)に配向制御された低抵抗の大粒径多結晶Si層3を形成する。この時の結晶粒径は3μmx20μmである。
【0015】
発明者が行った過去の研究によると、Si層の厚さが薄くなると、結晶粒は(110)や(111)方向に配向することが知られている。
【0016】
引き続いて、(110)あるいは(111)表面をウェット処理により水素終端化したSi層4(図3(a))を形成する。(110)面や(111)面は水素により綺麗に終端化が可能な面であることが知られている。これにより、次に続くシード層を利用したPECVDによるエピ成長を安定化し、再現性よく行うことができる。
【0017】
引き続いて、PECVDを利用して、水素希釈条件(SiH:H=5:95)で2μmのシリコン層5を350℃にてエピ成長させる(図3(b))。本シリコン薄膜層は不純物をドープせずにイントリック層とした。なお、水素希釈量は本実施例に限定されたものではなく、シランガスと水素ガスの混合ガスであり、水素ガス量がシランガス量よりも多ければ良い。
【0018】
引き続いて、上記成長したSi薄膜上に真空を破らずに、好ましくはイントリンシックSi層を形成したチャンバーと異なるチャンバーを利用して、不純物がドーピングされたSi層6を200nm成長する(図4)。本工程でドーピングする不純物は、種(シード)結晶層にドーピングされた不純物と異なるタイプの不純物をドーピングする。ここで、異なるタイプの不純物とは、種(シード)結晶がn型でれば本薄膜層はp型、逆に、種(シード)結晶層がp型であれば本薄膜層はn型とする。
【0019】
引き続いて、上記成長が終了した薄膜Si層に対して、Si層が溶融しないように設定した低いパワーでレーザー照射を行いSi薄膜(図5)を完成させる。本実施例では、2.0Wのレーザーパワーを利用し、レーザースキャン速度40cm/sでスキャンすることによりSi固相成長を実現した。ここで形成されたSi層55、66層は、レーザー照射による固相成長が行われるため、レーザー照射前のSi層5,6より、良質の結晶が形成される。
【0020】
最終的な形態を図1に示す。ガラス上に太陽電池用の大粒径の多結晶Siを形成することができる。
【0021】
本実施例では、レーザーを利用した固相成長の前に、水素だしの熱処理を450℃60分を行っている。
【0022】
また、レーザーを利用した固相成長後に、水素化処理400℃60分を行っている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態による半導体製造方法を工程順に示す概略図である。
【図3】図2に引き続き、本発明の実施形態による半導体製造方法を工程順に示す概略図である。
【図4】図3に引き続き、本発明の実施形態による半導体製造方法を工程順に示す概略図である。
【図5】図4に引き続き、本発明の実施形態による半導体製造方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ガラス基板
2 不純物をドープされた非晶質Si薄膜
3 レーザー結晶化による(110)あるいは(111)配向の大粒径シリコン多結晶薄膜
4 水素終端化された多結晶Si薄膜
5 シリコン薄膜(イントリンシック層)
6 不純物をドープされた多結晶Si層
55 レーザー照射により固相成長されたイントリンシックSi層
66 レーザー照射により固相成長された不純物をドープされたSi層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体励起(ダイオード励起)された固体連続波レーザーを利用して(110)と(111)に配向制御した大粒径多結晶シリコン(Si)薄膜をガラス上に形成し、このSi膜を種(シード)結晶として多結晶Si層を直接成長する。
その後、本薄膜に対してSi層が溶融しない条件でエネルギービームを照射してSiの固相成長を行うことを特徴とした太陽電池用半導体製造方法。
【請求項2】
半導体励起(ダイオード励起)された固体連続波レーザーを利用して形成された(110)と(111)に配向制御した大粒径多結晶Si薄膜は、厚さが300nm以下であることを特徴とする請求項1項。
【請求項3】
波長300から600nmの波長を有する半導体励起(ダイオード励起)固体連続波レーザーを利用することを特徴とした請求項1項。
【請求項4】
最終段階で行うSi固相成長用のエネルギービーム照射として、連続波レーザー、パルスレーザー、ランプアニール、加熱ガスビームなどのエネルギービームを利用することを特徴とする請求項1項。
【請求項5】
Si層が溶融しない条件でエネルギービーム固相成長することを特徴とした請求項1項
【請求項6】
大粒径からなる配向制御された種(シード)結晶層に多結晶Siを直接成長するに際し、Si表面を水素終端することを特徴とした請求項1項。
【請求項7】
必要に応じて接合を形成するために、各層に対してドーピングを行うことを特徴とした請求項1項。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−199524(P2010−199524A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63516(P2009−63516)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(508005358)
【Fターム(参考)】