説明

半導体製造装置の洗浄装置

【課題】使用済みスチームを拡散させることなく効率よく回収することができる半導体製造装置の洗浄装置を提供する。
【解決手段】純水スチーム生成容器12と、スチーム供給管17及びスチーム回収管18からなる洗浄ノズル16を有する半導体製造装置の洗浄装置10のスチーム供給管17の先端部に、スチーム供給口19から噴射され、洗浄対象物30に衝突した使用済み純水スチームが、スチーム供給管17の先端部の外形表面に沿った流れを形成するような凸状の湾曲面17aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を処理して半導体装置を製造する半導体製造装置のチャンバ内を洗浄する半導体製造装置の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜装置、エッチング装置をはじめとする半導体製造装置においては、処理対象基板である半導体ウエハに所定の処理を施す際、処理室(チャンバ)内が堆積物やパーティクルによって汚染されることがある。このため、定期的又は必要に応じてチャンバ内構成部材の洗浄が行われている。
【0003】
このような半導体製造装置のチャンバ内構成部材を洗浄する技術として、例えば、構成部材をチャンバから取り出し、有機溶剤を用いた化学洗浄を行い、次いでブラスト装置を用いた物理洗浄を行い、その後、純水を用いた超音波洗浄を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、このような洗浄技術は、チャンバから容易に取り外すことができない構成部材に適用することができず、容易に取り出すことができない構成部材についてはワイパー(ウエス)を用いて拭き取り洗浄するか、又は洗浄しないでそのまま長期間使用することが行われていた。
【0005】
ところで、ワイパーによる拭き取り洗浄を採用するにしても、チャンバ内には、ワイパーが届き難い部分があり、かかる部分の構成部材を洗浄することはできない。また、ワイパーによっては、その製造過程又は保管過程で金属等が付着して汚染したものがあり、汚染したワイパーを用いることによって、ワイパーに付着した金属等によって却ってチャンバ内構成部材を汚染させる虞がある。例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロース等からなるワイパーが、例えば、製造過程で使用される薬剤から混入する銅(Cu)、保管過程で付着するナトリウム(Na)等によって汚染されているというデータがあり、このようなワイパーを用いて拭き取り洗浄を行うと、二次汚染の原因ともなる。
【0006】
そこで、近年、ワイパーを使用することなく、且つチャンバから取り外すことなくチャンバ内構成部材を洗浄することができるスチーム洗浄装置が開発されている。
【0007】
図7は、このようなスチーム洗浄装置の洗浄ノズル先端部を示す模式図である。
【0008】
図7において、この洗浄ノズル70は、スチーム供給ノズル71と、該スチーム供給ノズル71の外周部に、同心状に吸引ノズル72を設けて二重管構造としたものである。スチーム供給ノズル71の先端部から噴射され、洗浄対象物としての、例えば静電チャック73に衝突し、デポ等の堆積物75を剥離した使用済みスチーム74は、剥離した堆積物75及び雰囲気ガス76と共に、吸引ノズル72によって吸引、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−273078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来のスチーム洗浄装置には、使用済みスチーム74及びデポ等の堆積物75の回収効率が低く、これらがチャンバ内に残留するという問題がある。また、使用済みスチーム74及びデポ等の堆積物75の回収率を向上させるために、洗浄ノズル70の先端部を洗浄対象物73に近づけすぎると、洗浄ノズル70の先端部が洗浄対象物73に衝突し、これによって、洗浄対象物73に傷がつくという問題もある。
【0011】
本発明の目的は、使用済みスチームを拡散させることなく効率よく回収することができる半導体製造装置の洗浄装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、洗浄対象物に傷をつけることがない半導体製造装置の洗浄装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の別の目的は、洗浄対象物に固着している汚れであっても剥離させて回収することができる半導体製造装置の洗浄装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明のさらに別の目的は、洗浄時間を短縮できる半導体製造装置の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の半導体製造装置の洗浄装置は、純水スチームを半導体製造装置の洗浄対象物に供給するスチーム供給管と、該スチーム供給管の先端部に設けられ、前記純水スチームを前記洗浄対象物に向けて噴射するスチーム供給口と、前記スチーム供給管とは二重管構造を形成し、前記スチーム供給管の外周部に形成される断面環状の流路によって使用済みの純水スチームを回収するスチーム回収管と、該スチーム回収管の先端部に設けられ、前記スチーム供給口の外周部に開口するスチーム回収口と、を有し、前記スチーム供給管の先端部は、前記スチーム供給口から噴射され、前記洗浄対象物に衝突した前記使用済み純水スチームが該スチーム供給管の先端部の外形表面に沿った流れを形成するような凸状の湾曲面を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記湾曲面における曲率半径Rは、5〜100mmであることを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1又は2記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記湾曲面の曲率が変化する変曲部は、前記スチーム回収管に覆われていることを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記スチーム回収口の内側に、前記使用済み純水スチームの前記スチーム供給管先端部の前記湾曲面に沿った流れを助長するガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記スチーム供給管の先端部、及び前記スチーム回収管の先端部は、耐熱性樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項6記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項5記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする。
【0021】
請求項7記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記スチーム回収管の先端部と、前記洗浄対象物の表面との間に所定の隙間を形成するための突起が設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記スチーム供給管の先端部構造を、該スチーム供給管の先端部が前記洗浄対象物に対して近接及び離間するような可動構造としたことを特徴とする。
【0023】
請求項9記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項8記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記スチーム供給管の先端部に前記洗浄対象物に当接して汚れを掻き落とすエッジが設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項10記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記スチーム供給口及び前記スチーム回収口を有するスチーム洗浄ノズルが複数並設された広域洗浄面を有することを特徴とする。
【0025】
請求項11記載の半導体製造装置の洗浄装置は、請求項10記載の半導体製造装置の洗浄装置において、前記広域洗浄面は、前記半導体製造装置における特定の洗浄対象物の露出表面を全てカバーすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、スチーム供給管の先端部は、スチーム供給口から噴射され、洗浄対象物に衝突した使用済み純水スチームが該スチーム供給管先端部の外形表面に沿った流れを形成するような凸状の湾曲面を有するので、使用済み純水スチームがコアンダ効果によって、拡散することなく凸状の湾曲面の外径表面に沿って流れてスチーム回収管に流入する。従って、使用済み純水スチームを効率よく回収することができる。
【0027】
請求項2記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、湾曲面における曲率半径Rは、5〜100mmであるので、使用済み純水スチームが湾曲面の外形表面に沿って流れるコアンダ効果がより大きくなり、使用済み純水スチームを効率よく回収することができる。
【0028】
請求項3記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、湾曲面の曲率が変化する変曲部は、スチーム回収管に覆われているので、変曲部において湾曲面から剥離する使用済み純水スチームの拡散を防止して効率よく回収することができる。
【0029】
請求項4記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、スチーム回収口の内側に、使用済み純水スチームの湾曲面に沿った流れを助長するガイド部が設けられているので、使用済みスチームの拡散を防止して効率よく回収することができる。
【0030】
請求項5記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、スチーム供給管の先端部、及びスチーム回収管の先端部は、耐熱性樹脂で形成されているので、スチーム供給管の先端部又はスチーム回収管の先端部が洗浄対象物に接触しても洗浄対象物の損傷を回避することができる。
【0031】
請求項7記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、スチーム回収管の先端部と、洗浄対象物の表面との間に所定の隙間を形成するための突起が設けられているので、スチーム回収管の先端部が洗浄対象物に接触することによる洗浄対象物の損傷を防止することができる。
【0032】
請求項8記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、スチーム供給管の先端部構造を、該スチーム供給管の先端部が洗浄対象物に対して近接及び離間するような可動構造としたので、例えば、純水スチームをパルス的に供給することによってスチーム供給管の先端部が洗浄対象物に対して近接、離間を繰り返す。このとき、スチーム供給管先端部に汚れを掻き取るエッジを設けることにより、該エッジが洗浄対象物表面をタッピングし、これによって洗浄対象物に固着している汚れを剥離することができる。
【0033】
請求項10記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、スチーム供給口及びスチーム回収口を有するスチーム洗浄ノズルが複数並設された広域洗浄面を有するので、洗浄効率が向上して洗浄時間を短縮することができる。
【0034】
請求項11記載の半導体製造装置の洗浄装置によれば、広域洗浄面は、半導体製造装置における特定の洗浄対象物の露出表面を全てカバーするので、特定の洗浄対象物の露出表面を、洗浄ノズルを移動することなく効率よく洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体製造装置の洗浄装置の概略構成を示す図である。
【図2】洗浄ノズルの先端部と洗浄対象物との位置関係を示す断面図である。
【図3】本実施の形態の変形例に係る半導体製造装置の洗浄装置の要部を示す断面図である。
【図4】本実施の形態の他の変形例に係る半導体製造装置の洗浄装置の要部を示す断面図である。
【図5】本実施の形態の別の変形例に係る半導体製造装置の洗浄装置の要部を示す断面図である。
【図6】図5における洗浄面を示す底面図である。
【図7】従来のスチーム洗浄装置の洗浄ノズル先端部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体製造装置の洗浄装置の概略構成を示す図である。
【0038】
図1において、半導体製造装置の洗浄装置10は、ケース11と、該ケース11内に設けられた純水スチーム生成容器12と、該純水スチーム生成容器12に連結された純水タンク13と、使用済み純水スチームを回収する回収容器14と、該回収容器14に連結されたバキュームクリーナ15と、純水スチーム生成容器12で生成された純水スチームを洗浄対象物の洗浄対象部位(以下、単に「洗浄対象物」という。)に供給し、使用済み純水スチームを回収容器14に回収する洗浄ノズル16と、ケース11の上部に配置され、各構成要素の動作を制御する制御ユニット21とから主として構成されている。
【0039】
純水タンク13は、純水スチームの生成源となる純水を貯留するためのタンクであり、純水を純水スチーム生成容器12に供給する。
【0040】
純水スチーム生成容器12は、高温、高圧の純水スチームを生成、収容するため、例えばステンレス鋼等の金属で構成されており、純水又は純水スチームが接触する内壁面は、例えば耐熱性樹脂によってコーティングされている。耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)等が好適に使用される。なお、樹脂コーティングに代えて電解研磨又は化学研磨処理を施しても良い。
【0041】
純水スチーム生成容器12内には、図示省略した電熱ヒータが設けられている。電熱ヒータは、純水スチーム生成容器12内の下半分に位置するように、底部近傍に設けられている。電熱ヒータに給電するための給電部は、純水スチーム生成容器12の上部から外部に導出されている。純水スチーム生成容器12は、純水タンク13から導入された純水を電熱ヒータで、例えば150℃程度まで加熱して純水スチームを生成する。
【0042】
純水スチーム生成容器12の上部には、後述するスチーム回収管18とで二重管構造の洗浄ノズル16を構成するスチーム供給管17の一端が接続されている。スチーム供給管17の他端には、純水スチームを洗浄対象物に向けて噴射するスチーム供給口19が設けられている(後述する図2参照)。スチーム供給管17は、可撓性部材、例えば、PFAで構成されており、その内部空間を純水スチームが流通する。純水スチームに金属イオン等の不純物が混入するのを避けるために、スチーム供給管17の内壁面には、例えば、上述した純水スチーム生成容器12の内壁面と同様の樹脂がコーティングされている。なお、樹脂がコーティングされた内壁面の外側には導電性部材からなる導電層が設けられており、この導電層は接地電位に接続されている。これによって、スチーム供給管17内を流通する純水スチームの帯電を防止し、制御ユニット21の誤作動等の事故を未然に防止することができる。
【0043】
スチーム供給管17の外周部には、スチーム回収管18が設けられており、スチーム供給管17とスチーム回収管18とで二重管構造の洗浄ノズル16が形成される。スチーム回収管18の一端は回収容器14に接続されており、他端は、スチーム供給管17のスチーム供給口19の周囲に開口し、使用済みスチームを回収するスチーム回収口20となっている(後述する図2参照)。
【0044】
スチーム回収管18は、スチーム供給管17と同様、可撓性材料で構成されており、二重管構造の洗浄ノズル16としてフレキシブルに屈曲可能に形成されている。使用済み純水スチーム回収工程においても静電気の蓄積をなくすために、スチーム回収管18は、導電材料によって形成することが好ましい。
【0045】
図2は、洗浄ノズル16の先端部と洗浄対象物30との位置関係を示す断面図である。
【0046】
図2において、洗浄ノズル16はスチーム供給管17と、該スチーム供給管17の外周部に同心状に設けられたスチーム回収管18とで構成されている。スチーム供給管17のスチーム流路は、その先端部において、例えば3方に分岐しており、スチーム供給管17の先端部には、3つのスチーム供給口19が開口している。スチーム供給口19が開口するスチーム供給管17の先端部は、凸状の湾曲面17aを有している。湾曲面17aの曲率半径Rは、例えば10mmである。
【0047】
湾曲面17aの曲率が変化する変曲部17bは、スチーム回収管18で覆われている。
【0048】
スチーム回収管18の先端部であるスチーム回収口20の内壁面には、ガイド部18aが形成されている。ガイド部18aは、スチーム回収口20の内壁面の端部を凸状に盛り上げて形成されている。
【0049】
スチーム供給管17は、純水スチーム生成容器12で生成された純水スチームを流通させ、例えば3つのスチーム供給口19から洗浄対象物30に向けて噴射する。スチーム回収管18は、スチーム供給管17のスチーム供給口19から噴射され、洗浄対象物30に衝突してその表面に付着した汚れを剥離させた使用済み純水スチームをスチーム回収口20から吸引し、回収容器14に回収する。
【0050】
回収容器14は、回収された使用済み純水スチームを凝縮して水に戻して貯留する。バキュームクリーナ15は、回収容器14を介して使用済み純水スチームを回収するための吸引源となる。
【0051】
バキュームクリーナ15の入り口には、入り口側フィルタ22が設けられている。入り口側フィルタ22は洗浄対象物30から剥離し、回収されたパーティクル等がバキュームクリーナ15内に侵入するのを防止する。バキュームクリーナ15の出口には、出口側フィルタ23が設けられている。出口側フィルタ23は、回収されたパーティクル等がクリンルーム内に侵入することを防止する。バキュームクリーナ15の出口側の排気口24は、図示省略したクリンルームの排気経路に接続可能に構成されている。
【0052】
以下に、このような構成の半導体製造装置の洗浄装置10の動作について説明する。
【0053】
この洗浄装置10を用いて半導体製造装置の、例えばチャンバ内構成部材を洗浄する際は、先ず、純水タンク13から純水スチーム生成容器12に純水を供給し、図示省略した電熱ヒータで純水を、例えば150℃まで加熱して純水スチームを生成して貯留する。
【0054】
次に、スチーム供給管17のスチーム供給口19が開口する洗浄ノズル16の先端部を洗浄対象物30の洗浄面に近接させる。このとき、洗浄ノズル16の先端部と洗浄対象物30の表面との間隔は、例えば5mm以下とする。この状態で、スチーム供給管17を介して純水スチームを供給し、スチーム供給口19から洗浄対象物30に向けて噴射する。
【0055】
スチーム供給口19から噴射され、洗浄対象物30に衝突した純水スチームは、洗浄対象物30の表面に付着したデポ等の堆積物(以下、「汚れ」という。)を剥離する。デポ等の汚れを剥離させた使用済み純水スチームは剥離した汚れを伴い、拡散することなく、コアンダ効果によって、スチーム供給管17の先端部の湾曲面17aの外形表面に沿って流通し、スチーム回収口20を経てスチーム回収管18に流入して回収される。
【0056】
使用済み純水スチーム及び洗浄対象物30から剥離した汚れは、スチーム回収管18を流通して回収容器14に回収される。回収容器14に回収された使用済みスチームは、ここで、例えば80℃まで冷却されて凝縮水となり、回収容器14内に貯留される。
【0057】
本実施の形態によれば、洗浄ノズル16を構成するスチーム供給管17の先端部に凸状の湾曲面17aを設けたので、スチーム供給口19から噴射され、洗浄対象物30に衝突してその表面に付着した汚れを剥離した使用済みスチームは、コアンダ効果によって湾曲面17aの外形表面に沿って流通するようになる。これによって、使用済みスチームを拡散させることなく、スチーム回収管18によって洗浄対象物30から剥離した汚れと共に、その大部分を効率よく回収することができる。
【0058】
本実施の形態によれば、スチーム供給管17先端部の凸状の湾曲面17aの曲率半径を10mmとしたので、使用済みスチームが湾曲面17aの外形表面に沿って流通するコアンダ効果が十分に得られる。従って、使用済みスチームを拡散させることなく効率よく回収することができる。
【0059】
すなわち、本実施の形態において、純水スチームの供給圧は、例えば0.1MPa〜0.5MPaである。この場合、湾曲面17aの曲率半径は、5〜100mmであることが好ましい。曲率半径が100mmより大きくても5mmより小さくてもスチームの回収効率は低下する。曲率半径が、5〜100mmの範囲内であれば、十分なコアンダ効果が得られ、使用済みスチームを効率よく回収することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、湾曲面17aの変曲部17bがスチーム回収管18で覆われているので、湾曲面17aの外形表面に沿って流通した後、湾曲面17aの外形表面から離れて拡散しようとする使用済みスチームは、スチーム回収管18内に拡散するにとどまる。これによっても使用済みスチームを効率よく回数することができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、スチーム回収口20の内側にガイド部18aを設けたので、使用済みスチームの湾曲面17aの外形表面に沿った流れを助長することができ、これによって、使用済みスチームの拡散を抑えて効率よく回収することができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、スチーム供給管17の先端部のスチーム供給口部分及びスチーム回収管18の先端部のスチーム回収口18部分を耐熱性樹脂で形成したので、洗浄操作中に、スチーム供給管17の先端部又はスチーム回収管18の先端部が洗浄対象物30の表面に衝突したとしても洗浄対象物30の損傷を防止することができる。
【0063】
耐熱性樹脂としては、チャンバ内構成部材の構成材料である、例えばアルミナ、石英、シリコン等又は構成部材表面に形成されたアルミナ溶射膜又はイットリア溶射膜よりも柔らかい全芳香族ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が好適に使用される。これらの樹脂は、耐熱性及び耐摩耗性にすぐれており、例えば280℃での連続使用、480℃での断続使用が可能である。
【0064】
本実施の形態において、スチーム供給管17におけるスチーム流路を3つに分岐し、スチーム供給口19を3つ設けた洗浄ノズルについて説明したが、スチーム流路の分割数は、3つに限定されるものではなく、2つ、4つ、又はそれ以外であってもよい。また、分割することなく、1つのスチーム供給管17に1つのスチーム供給口19を設けたものであってもよい。
【0065】
本実施の形態において、スチーム供給管17及びスチーム回収管18からなる洗浄ノズル16の外径は、例えば5mm程度とすることが好ましい。5mm程度であれば、必要なスチーム圧力の確保が容易で、且つ取り扱いも容易である。
【0066】
本実施の形態において、凸状の湾曲面17aを断面円弧状の湾曲面として説明したが、湾曲部17aは、使用済みスチームにコアンダ効果が得られるものであればよく、凸部全体として略湾曲面を形成するもの、例えば、断面図上、直線を繋ぎ合わせた凸状の湾曲面であってもよい。
【0067】
本実施の形態において、洗浄媒体として純水スチームを適用する場合について説明したが、純水スチーム以外の洗浄媒体を適用することもできる。純水スチーム以外の洗浄媒体としては、例えば、デポ除去効果の高い薬液としての過酸化水素水、COブラストに適用されるドライアイス含有CO等を挙げることができる。また、COブラストとスチーム洗浄とを組合せて、COブラストを施した後、スチームで仕上げ洗浄を施すようにしてもよい。
【0068】
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
【0069】
図3は、本実施の形態の変形例に係る半導体製造装置の洗浄装置の要部を示す断面図である。
【0070】
図3において、この洗浄ノズルが、図2の洗浄ノズルと異なるところは、スチーム回収管18の先端部に、該スチーム回収管18の先端部と洗浄対象物30の表面との間に所定の間隙を形成するための突起31が設けられている点である。
【0071】
本実施の形態の変形例によれば、スチーム回収管18の先端部に所定高さの突起31を設けたので、スチーム回収管18の先端部が洗浄対象物30の表面に衝突することによる洗浄対象物30の損傷を防止することができる。
【0072】
本実施の形態の変形例において、スチーム回収管18の先端部と洗浄対象物30の表面との間のクリアランスは、小さければ小さい程好ましいが、実用上、例えば1〜5mmとする。従って、突起31のスチーム回収管18の先端部からの突出高さは、1〜5mm、好ましくは2〜4mmである。突起31の突出高さが1mmよりも低いとスチーム回収管18の先端部が洗浄対象物30の表面に衝突して傷つける虞があり、5mmを超えると、純水スチームの温度又は圧力が低下して洗浄効率が低下する虞がある。突起31のスチーム回収管18の先端部からの突出高さが、1〜5mmの範囲内であれば、洗浄対象物30を傷付けることなく、良好に洗浄することができる。突起31の数は、特に限定されるものではなく、例えば、スチーム回収管18の先端部の円周方向に沿って、等間隔に、例えば2〜6個設けられる。
【0073】
次に、本実施の形態の他の変形例について説明する。
【0074】
図4は、本実施の形態の他の変形例に係る半導体製造装置の洗浄装置の要部を示す断面図である。
【0075】
図4において、この洗浄ノズル先端部が、図2の洗浄ノズル先端部と異なるところは、スチーム供給管17の先端部の凸状の湾曲面17aに、洗浄対象物30の表面に付着した汚れを剥離するためのエッジ(刃先)32が設けられている点である。本実施の形態の他の変形例において、スチーム供給管17の先端部を洗浄対象物30に対して近接及び離間可能な可動構造にすることが好ましい。
【0076】
本実施の形態の他の変形例によれば、スチーム供給管17の先端部の凸状の湾曲面17aに、エッジ32を設けると共に、スチーム供給管17の先端部を洗浄対象物30に対して近接及び離間可能な可動構造としたので、スチーム供給管17による純水スチームの供給を間歇的又はパルス的に行うことにより、純水スチームの供給時にコアンダ効果による浮力がスチーム供給管17の先端部に作用し、純水スチームの非供給時に自重がスチーム供給管17の先端部に作用する。これによって、純水スチーム供給時にエッジ32が洗浄対象物30の表面に当接し、純水スチームの非供給時にエッジ32が洗浄対象物から離間するようになる。従って、洗浄操作中、エッジ32が洗浄対象物30の表面にタッピングしながら接触して洗浄対象物30の表面に付着した汚れを効果的に掻き落して回収することができる。また、洗浄効率が向上し、洗浄時間を短縮することもできる。
【0077】
本実施の形態の他の変形例において、エッジ32は、耐熱性樹脂で構成されている。耐熱性樹脂としては、上述のスチーム供給管17及びスチーム回収管18の先端部に使用した耐熱性樹脂と同様のものが好適に使用される。これによって、エッジ32によって洗浄対象物30に傷をつけることなく、固着した汚れを剥離して回収することができる。
【0078】
本実施の形態において、エッジ32のスチーム供給管17の端部からの突出高さは、例えば1〜100mmである。突出高さが1mmより低いと、ノズルが洗浄対象に衝突してしまい、100mmよりも高いと、スチーム温度又は圧力が低下して洗浄効率の低下を招く虞がある。
【0079】
本実施の形態において、スチーム供給管17の先端部の洗浄対象物30に対する近接及び離間可能な可動構造としては、例えば、エアサスペンションや磁気シールなどを用いることができる。
【0080】
次に、本実施の形態の別の変形例について説明する。
【0081】
図5は、本実施の形態の別の変形例に係る半導体製造装置の洗浄装置の要部を示す断面図、図6は、図5における洗浄面を示す底面図である。
【0082】
図5及び図6において、この半導体製造装置の洗浄装置における洗浄ノズル50は、スチーム供給口59と、該スチーム供給口59の外周部に開口するスチーム回収口60を、それぞれ1つずつ備えた洗浄ノズルを同一平面上に複数並設した広域洗浄面51を有するものである。広域洗浄面51は、洗浄対象物30である、例えば静電チャックの露出表面全体をカバーする。
【0083】
本実施の形態の別の変形例によれば、洗浄ノズルが、洗浄対象物30の全露出表面をカバーする広域洗浄面51を有するので、洗浄対象物30に対する洗浄ノズル位置を変更することなく、全表面を洗浄することができる。これによって、洗浄効率が向上し、洗浄時間を短縮することができる。
【0084】
本実施の形態の別の変形例において、チャンバの大気開放時に、チャンバ内に設置した、例えば静電チャックを取り外すことなく、そのまま洗浄することもできる。また、広域洗浄面51をもう少し小さくして洗浄対象物30の露出表面を複数回に分けて洗浄するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 半導体製造装置の洗浄装置
12 純水スチーム生成容器
14 回収容器
16 洗浄ノズル
17 スチーム供給管
17a 湾曲面
17b 変曲部
18 スチーム回収管
18a ガイド部
19 スチーム供給口
20 スチーム回収口
31 突起
32 エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水スチームを半導体製造装置の洗浄対象物に供給するスチーム供給管と、
該スチーム供給管の先端部に設けられ、前記純水スチームを前記洗浄対象物に向けて噴射するスチーム供給口と、
前記スチーム供給管とは二重管構造を形成し、前記スチーム供給管の外周部に形成される断面環状の流路によって使用済みの純水スチームを回収するスチーム回収管と、
該スチーム回収管の先端部に設けられ、前記スチーム供給口の外周部に開口するスチーム回収口と、を有し、
前記スチーム供給管の先端部は、前記スチーム供給口から噴射され、前記洗浄対象物に衝突した前記使用済み純水スチームが該スチーム供給管の先端部の外形表面に沿った流れを形成するような凸状の湾曲面を有することを特徴とする半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項2】
前記湾曲面における曲率半径Rは、5〜100mmであることを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項3】
前記湾曲面の曲率が変化する変曲部は、前記スチーム回収管に覆われていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項4】
前記スチーム回収口の内側に、前記使用済み純水スチームの前記スチーム供給管先端部の前記湾曲面に沿った流れを助長するガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項5】
前記スチーム供給管の先端部、及び前記スチーム回収管の先端部は、耐熱性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項6】
前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることを特徴とする請求項5記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項7】
前記スチーム回収管の先端部と、前記洗浄対象物の表面との間に所定の隙間を形成するための突起が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項8】
前記スチーム供給管の先端部構造を、該スチーム供給管の先端部が前記洗浄対象物に対して近接及び離間するような可動構造としたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項9】
前記スチーム供給管の先端部に前記洗浄対象物に当接して汚れを掻き落とすエッジが設けられていることを特徴とする請求項8記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項10】
前記スチーム供給口及び前記スチーム回収口を有するスチーム洗浄ノズルが複数並設された広域洗浄面を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体製造装置の洗浄装置。
【請求項11】
前記広域洗浄面は、前記半導体製造装置における特定の洗浄対象物の露出表面を全てカバーすることを特徴とする請求項10記載の半導体製造装置の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77131(P2011−77131A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224667(P2009−224667)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】