説明

半導体記憶装置及びその製造方法

【課題】誘電体膜のクラック発生が抑制され、リーク電流特性に優れたキャパシタを有する半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置の製造方法は、半導体基板上に窒化チタン膜を有する立体構造の下部電極を形成した後、下部電極の表面に誘電体膜を形成する。誘電体膜の表面に、誘電体膜が結晶成長しない温度で第一の上部電極を形成した後、誘電体膜が結晶成長する温度で熱処理し、誘電体膜の少なくとも一部を多結晶状態に変換する。この後、第一の上部電極表面に第二の上部電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置及びその製造方法に関わり、特に、高誘電率、低リーク電流特性を備えたキャパシタを有するDRAM(Dynamic Random Access Memory)に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター及び他の電子機器において、高速動作が可能な半導体記憶装置としてDRAM(Dynamic Random Access Memory)が用いられている。DRAMは、メモリセルアレイと、それを駆動するための周辺回路とで主に構成される。メモリセルアレイは、マトリックス状に複数配列された、一つのスイッチングトランジスタと一つのキャパシタを単位構成要素として構成されている。
【0003】
他の半導体装置と同様に、DRAMにおいても高集積化の要求を満たすために、個々のセルの微細化が進められている。その結果、キャパシタを形成するために許容される平面面積が縮小され、記憶装置として必要な容量を確保することが困難となってきた。この問題の対策として、電極構造の立体化、上下部電極の金属材料化(MIM構造)、容量絶縁膜の高誘電率化などの検討が進められてきた。この結果、技術レベルの標準指標として用いられる最小加工寸法(F値)が70nm以下となる領域のDRAMでは、電極構造の立体化は必須構成となっており、また、上下部電極の金属材料化は既に実用化に至っている。したがって、これらの技術開発に基づくキャパシタのさらなる特性向上は期待が薄くなっている。今後のさらなる微細化に対しては、最後に残された容量絶縁膜の高誘電率化によって、キャパシタの特性を向上させる検討が主流となっている。
【0004】
半導体記憶装置としてキャパシタに要求される特性には、(1)大きな容量が得られること、すなわち誘電率が高いこと(後述するEOTが小さいこと)、(2)容量絶縁膜のリーク電流が小さいこと、が挙げられる。しかし、一般的に言えることであるが、大きな誘電率を有する高誘電体膜は絶縁破壊耐性が小さく、リーク電流が大きい特性を示す。すなわち、高誘電率化と低リーク電流化はトレードオフの関係にある。より微細化されたメモリセルを実現するためには、高誘電体膜を用いてもリーク電流が増大せず、信頼性に優れたキャパシタ構造及びその製造技術の開発が望まれている。
【0005】
特許文献1には高誘電体膜として、STO(ストロンチウムチタニウムオキサイド)膜を用い、上下部電極としてTiN(窒化チタン)を用いる構成において、リーク電流を防止する方策が開示されている。具体的には、下部電極と誘電体及び誘電体と上部電極の間に、例えばTiSiN(チタニウムシリコンナイトライド)などの非晶質導電体からなるバッファー電極層を介在させる平坦キャパシタの構成が記載されている。バッファー電極層に非晶質導電体を用いて下部電極を覆うことにより、下部電極表面の凹凸を減少させてリーク電流を低減する効果があるとされている。
【0006】
DRAMはキャパシタ形成後に、不可避な工程として450℃〜500℃程度の熱処理が存在するが、このとき、酸化ジルコニウム膜単体の誘電体膜では充分な熱安定性が得られず、熱処理後にリーク電流が増大するなどの問題が発生する。
【0007】
そこで、熱安定性を付加するさまざまな試みが成されており、誘電体膜の多層化、例えば、ZAZ構造(ZrO2/Al23/ZrO2、ZAZのZはZrO2層、AはAl23層をそれぞれ意味する。)や、Al23とZrO2の膜を交互に複数回積層した構造を有するもの等がある。
【0008】
これらの構造は、誘電率の高い酸化ジルコニウム(ZrO2)と、誘電率は高くないが熱安定性に優れる酸化アルミニウム(Al23)を組み合わせることで、所望の特性を得ようとするものである。
【0009】
例えば、特許文献2には、F70nm以下のDRAM用として、AZ構造、ZA構造、ZAZ構造や、ZrO2薄膜とAl23薄膜を交互に積層した多重誘電膜の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/090979号
【特許文献2】特開2006−135339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1の図8に第一実施例として記載された平坦キャパシタは、TiN膜からなる第一電極層83aおよびTiSiN膜からなる第二電極層83bを有する下部電極層83と、SiN膜からなる第一の誘電体層84a、STO膜からなる第二の誘電体層84bおよびSiN膜からなる第三の誘電体層84cを有する誘電体層84と、TiSiN膜からなる第三電極層85aおよびTiN膜からなる第四電極層85bを有する上部電極85を備える構成となっている。
【0012】
上記構成において、第二電極層83bおよび第三電極層85aとなるTiSiNは、スパッタ法、あるいは熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法で堆積しても良いとされている。熱CVD法の場合には、原料としてTiCl4、NH3、SiH4を用い、堆積温度は約520℃で良いとされている。
【0013】
しかし、スパッタ法では平坦キャパシタに用いる場合は問題ないが、段差被覆性が悪いために、立体構造キャパシタへの適用は困難となる問題がある。また、熱CVD法では3種類の原料ガスを用いていることから、立体構造における深い孔の底に至るまで、膜厚均一性や組成均一性の確保が困難となることが危惧される。
【0014】
一方、特許文献1では高誘電体膜となるSTO膜の上下にシリコン窒化膜(SiN膜)を形成しており、その膜厚は各々2nmで良いとされている。SiN膜は非晶質であるため表面の平坦性を維持することができるので、SiN膜/STO膜/SiN膜からなる容量絶縁膜のリーク電流の増大は抑制されると考えられる。
【0015】
しかし、SiN膜の誘電率はシリコン酸化膜の誘電率の高々2倍であり、容量絶縁膜全体としては高誘電率のSTO膜を用いる効果は皆無に近い結果となる。すなわち、特許文献1に記載されている、厚さ2nmのSiN膜/厚さ4nmのSTO膜/厚さ2nmのSiN膜からなる容量絶縁膜では、SiN膜の誘電率が8、STO膜の誘電率が100であることを考慮するとEOT(Equivalent Oxide Thickness:SiOの誘電率4で等価換算した膜厚)は、1nm+0.16nm+1nmで2.16nmとなる。
【0016】
STO膜が単層膜であればEOTは0.16nmとなって大きな容量を得ることができるが、上下部に位置する物理膜厚が4nmのSiN膜が積層された途端にEOTは13.5倍に厚くなってしまい、容量は1桁以上小さな値となってしまう。
【0017】
このようなキャパシタ構造では、リーク電流は抑制でき、信頼性も確保できると推定されるが、大きな容量を得ることはできず、EOTで0.9nmより小さい値が要求されるF値が40nm以下の高集積記憶装置への適用は困難となる問題がある。
【0018】
また、上記特許文献1の図12に第二実施例として記載された平坦キャパシタは、上記第一実施例の構成に対して、第一の誘電体層84a(SiN)と第三の誘電体層84c(SiN)を有していない点のみが異なっている。すなわち、第二の誘電体84b(STO)が、TiSiNからなる第三の電極層85aに直接、接触している構成となっている。この構成では、高誘電体膜であるSTO膜のみで誘電体膜84を構成しているので、EOTは小さくなり、大きな容量を得ることができる。しかし、上述のように、TiSiNをCVD法で形成する温度は520℃とされており、段落[0036]に記載されているように、STO膜の結晶化アニール温度400〜600℃に該当している。すなわち、第三の電極層85aが成膜される直前の予備加熱ステップにおいてSTO膜は結晶化しており、結晶化したSTO上に第三の電極層85aが形成されることを意味している。
【0019】
このことは、段落[0038]に「STO膜の表面モフォロジーが悪化する場合があり」と記載されているようにリーク電流が増大する問題がある。第一実施例ではSTOの表面モフォロジーが悪化してもその上に誘電体膜のSiNが表面モフォロジーを改善するように形成され、さらにその上に電極が形成されるのでリーク電流は増大しない。しかし、第二実施例では、表面モフォロジーが悪化したSTO膜の上に直接電極が形成されることとなるので、リーク電流の増大を回避することは困難となる。
【0020】
一方、特許文献2で説明したZAZ構造は、リーク電流を抑制できる、優れたキャパシタ構造である。
【0021】
しかし、DRAMキャパシタのリーク電流密度の許容を1Vのバイアス下で1E−7(A/cm2)とすると、ZAZ構造のキャパシタのEOTは0.9nmが限界であった。
【0022】
前記のように、最小加工寸法F値が40nm以下に縮小されるDRAMにおいては、EOTを0.9nmより小さくして、単位電極面積当たりの容量を大きくすることが要求されている。
【0023】
ZAZ構造でEOTを小さくしにくい理由は、比誘電率の低い(ε=8.9)酸化アルミニウム(Al23)を誘電体の一部に用いているのが一因であるが、これまでのところ、結晶化した酸化ジルコニウム単層を誘電体膜としたキャパシタは、EOTは小さくできるものの、リーク電流が大きく、実用化は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記問題に鑑み、本発明は、上下部電極に窒化チタン膜を用いるMIM構造で、容量絶縁膜に高誘電体膜を用いるキャパシタにおいて、高誘電率でリーク電流が抑制された信頼性の高いキャパシタを備える半導体記憶装置、及びその製造方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態は、
半導体基板上に、
窒化チタン膜からなる下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜上に窒化チタン膜を含む上部電極を形成する工程と、
を含むキャパシタの形成工程を備えた半導体記憶装置の製造方法であって、
前記誘電体膜の少なくとも上部電極と接する膜を、原子層堆積(ALD)法で成膜し、
該成膜された膜上に、該膜の前記ALD法の成膜温度を70℃以上超える温度を付加することなく、第一の窒化チタン膜を成膜し、
前記上部電極の形成工程が、前記第一の窒化チタン膜を熱処理によって第一の多結晶窒化チタンを含む第一の上部電極にする工程と、
前記第一の上部電極表面に多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極を形成する工程と、
を含む半導体記憶装置の製造方法に関する。
【0026】
本発明の他の実施形態は、
半導体基板上に、
窒化チタン膜からなる下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜上に窒化チタン膜を含む上部電極を形成する工程と、
を含むキャパシタの形成工程を備えた半導体記憶装置の製造方法であって、
前記誘電体膜の少なくとも上部電極と接する膜を、原子層堆積(ALD)法で成膜し、
該成膜された膜上に、熱処理を経ることなく、第一の窒化チタン膜をALD法で成膜し、
前記上部電極の形成工程が、前記第一の窒化チタン膜を熱処理によって第一の多結晶窒化チタン膜を含む第一の上部電極にする工程と、
前記第一の上部電極表面に多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極を形成する工程と、
を含む半導体記憶装置の製造方法に関する。
【0027】
本発明の他の実施形態は、
半導体基板上に、
前記半導体基板に接続される下部電極と、
前記下部電極に接して前記下部電極を覆う誘電体膜と、
前記誘電体膜に接して前記誘電体膜を覆う上部電極と
を有するキャパシタを含む半導体記憶装置であって、
前記上部電極は、前記誘電体膜に接する多結晶窒化チタン膜を含む第一の上部電極と、前記第一の上部電極上に積層される多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極とを含んで構成される半導体記憶装置に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、上部電極と接する誘電体膜を少なくとも原子層堆積法で成膜し、該誘電体膜に対してクラック等のダメージを与えることなく、保護膜として窒化チタン膜を形成し、その後加熱により窒化チタン膜を多結晶窒化チタンからなる導電性の第一の上部電極とすることで、誘電体膜のクラック発生が抑制され、リーク電流特性に優れたキャパシタを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のキャパシタ構造を示す概略断面図である。
【図2】従来のキャパシタのリーク電流特性を示すグラフである。
【図3】従来のキャパシタのリーク電流特性の誘電体膜厚依存性を示すグラフである。
【図4】ZrO膜の結晶状態を模式的に示したイメージ図であり、(a)は膜厚が4nm、(b)は6nm、(c)は8nmを示す。
【図5】上部電極形成時に発生するクラックがリーク電流の増大をもたらす理由を説明するための模式図であり、(a)は上部電極を室温PVD−TiNで形成した場合、(b)は誘電体膜を加熱処理してから室温PVD−TiN上部電極を形成した場合、(c)は上部電極をCVD−TiNで形成した場合を示す。
【図6】第一実施例の半導体記憶装置を構成するキャパシタの模式的断面図である。
【図7】図6と従来のキャパシタのリーク電流特性を示すグラフである。
【図8】図6に示すキャパシタ構造において、保護膜としての第一の上部電極の効果を説明するためのリーク電流特性を示すグラフである。
【図9】図6に示すキャパシタ構造のリーク電流特性の誘電体膜厚依存性を示すグラフである。
【図10】図6に示すキャパシタ構造において、第一の上部電極の膜厚がリーク電流特性に及ぼす影響を示すグラフである。
【図11】第二実施例の半導体記憶装置を構成するキャパシタの模式的断面図である。
【図12】図6と11のキャパシタ構造におけるリーク電流特性の第一の誘電体膜の膜厚依存性を示すグラフである。
【図13】図11のキャパシタ構造において、保護膜としての第一の上部電極の効果を説明するためのリーク電流特性を示すグラフである。
【図14】図14(a)は第三実施例の半導体記憶装置を構成するキャパシタの模式的断面図であり、図14(b)は図14(a)のキャパシタ構造の形成工程のフローシートである。
【図15】図11と14(a)のキャパシタ構造における、リーク電流特性を示すグラフである。
【図16】ポストアニールのリーク電流特性に及ぼす効果について説明するグラフである。
【図17】種々のキャパシタにおける、EOTと+1Vにおけるリーク電流との関係を示すグラフである。
【図18】第五実施例に係る半導体記憶装置となるDRAMの全体構成の概略を示す断面模式図である。
【図19】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図20】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図21】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図22】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図23】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図24】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図25】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図26】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図27】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図28】第五実施例に係る半導体記憶装置の製造方法の一工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
キャパシタの誘電体膜としては、立体構造への適用性、成膜の容易性、高誘電率化の観点で酸化ジルコニウム(ZrO2:以下、「ZrO」と記す)膜が有望である。しかし、背景技術で説明したように、ZrO単層膜ではリーク電流の抑制において問題がある。
【0031】
以下に、本発明者らが行った、ZrO単層膜におけるリーク電流特性の検討結果の一例について図1から図5を用いて説明する。
【0032】
(実験例1)
図1は、シリコン単結晶半導体基板101上に、窒化チタン膜(TiN膜)からなる下部電極102と、同じくTiN膜からなる上部電極104と、上下部電極に挟まれたZrO膜からなる誘電体膜103を有する平坦キャパシタの構造を示している。
【0033】
TiN膜からなる下部電極102は、立体構造への適用を考慮して、四塩化チタン(TiCl4)とアンモニア(NH3)を反応ガスとするCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成した。堆積温度は450℃、膜厚は10nmとした。以下、CVD法により形成したTiN膜をCVD−TiN膜と記す。
【0034】
また、ZrO膜103は、有機金属錯体であるTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム:Zr[N(CH3)CH2CH34)をZr原料ガスとし、オゾン(O3)を反応ガスとするALD(Atomic Layer Deposition)法により形成した。成膜温度は250℃、膜厚は6nmとした。ALD法では、具体的には下記(1)〜(4)のプロセスからなる基本シーケンスを所望の膜厚となるまで繰返すことにより、ZrO膜を成膜する。
(1)半導体基板が設置された反応室にZr原料ガスを導入して下部電極表面に原子層を吸着させるステップ、
(2)気相に残留する原料ガスを窒素パージするステップ、
(3)オゾンを導入して下部電極表面に吸着したZr原料を酸化するステップ、
(4)気相に残留するオゾンを窒素パージするステップ。
【0035】
TiN膜からなる上部電極104については、面積が既知のマスクスパッタ法を用いて形成した。マスクスパッタ法は、ZrO膜上面に平板マスクをセットし、その上からスパッタ法(以下、「PVD法」と記載する)によりTiN膜を堆積し、ドット形状の上部電極を形成するものである。堆積温度は室温、膜厚は10nmとした。
【0036】
図2の符号Bで示される特性は、上記構成のキャパシタにおいて、上部電極104に−3Vから+3Vの電圧を印加した場合のリーク電流特性を示している。指標となる1E−7(A/cm2)レベル(図2中に点線で示した)の電流密度となる印加電圧が+2.3V、−2.2Vとなっていることがわかる。半導体記憶装置として使用可能なリーク電流基準が、上記電流密度レベルで正負共に1V以上であることを考慮すると、上記構成のキャパシタは充分なマージンのあるリーク電流特性を示している。
【0037】
一方、図2に示した符号Aの特性は、上部電極として、PVD法で形成したTiN膜(以下、「PVD−TiN膜」と記載する)に代えて、下部電極と同じCVD法で形成したTiN膜(以下、「CVD−TiN膜」と記載する)を用いた場合の結果を示している。図2から明らかなように、上部電極にCVD−TiN膜を用いた場合のリーク電流は、PVD−TiN膜の場合に比べて7桁も増加しており、キャパシタに情報を保持することは困難であり使用可能な状態にはない。
【0038】
前述のように、立体構造のキャパシタに適用するためには上部電極も下部電極と同様に、段差被覆性が良好なCVD法を用いて形成する必要がある。しかし、符号Aに示された特性ではリーク電流が著しく大きく半導体記憶装置として機能させることができない。
【0039】
本発明者は、上記の上部電極形成法の違い、すなわちPVD法とCVD法の各々の条件の内、どの条件が誘電体膜となるZrO膜のリーク電流を激変させる原因となっているかを種々、検討した。その結果、リーク電流を激変させる主たる原因が成膜温度にあると推定した。すなわち、PVD法では室温で形成しており、CVD法では450℃で形成していることに主たる原因があると考えた。
【0040】
また、図3は、検討結果の一例として、図1に示したキャパシタ構造で、ZrO膜の膜厚を4nm(符号C)、6nm(符号D)、8nm(符号E)と変化させ、堆積温度450℃のCVD−TiN膜を上部電極とした場合のリーク電流特性の比較を示した。通常、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜、あるいは酸化アルミニウム膜などのように非晶質の誘電体膜では、膜厚が厚くなるほど膜中の電界強度が弱くなり、リーク電流は低減する。しかし、図3に示したZrO膜の場合は、このような傾向を示しておらず、膜厚の薄い4nm(符号C)で最もリーク電流が少なく、膜厚が6nm(符号D)、8nm(符号E)と厚くなるほどリーク電流が増大する傾向を示している。
【0041】
図3の結果は、ZrO膜の結晶化過程との関連を強く示唆していると考えられた。そこで、本発明者は、透過電子顕微鏡像の観察やX線回折ピーク強度の測定を実施し、以下の知見を得た。
【0042】
ZrO膜は250℃で成膜した直後の段階で微結晶からなる多結晶状態となっている。このZrO膜を成膜温度より高い温度で熱処理すると2次的な結晶粒成長が生じる。2次的な結晶粒成長には膜厚依存性があり、同じ熱処理条件では膜厚が厚いほど大きな粒径を有する多結晶構造に変化する。ここで、「2次的な結晶粒成長」とは、成膜中に形成される結晶の成長を1次的な結晶粒成長と呼ぶのに対し、成膜後の熱処理等によって、構成原子の再配置、結晶粒界の再形成によって、より大きな結晶粒に変化することをさしている。
【0043】
図4に、上記の結果を模式的に示した結晶状態のイメージを示した。(a)はZrO膜の膜厚が4nm、(b)は6nm、(c)は8nmの場合で、各々、CVD−TiN膜の堆積温度となる450℃で熱処理した後のイメージである。膜厚4nm(a)では結晶粒の成長は認められるが、小さい結晶粒105aの集合からなる多結晶状態である。膜厚6nm(b)では相対的に大きな結晶粒105bが生じ、小さな結晶粒105aとが混在する多結晶状態となる。膜厚8nm(c)では、小さな結晶粒は消滅し、結晶粒105bよりもさらに大きな結晶粒105cの集合となり、明確な粒界105d(太線)を有する多結晶状態となる。(c)の多結晶状態では結晶化の進展に伴う原子の再配置および膜中不純物の揮発により体積収縮が生じ、粒界にはクラックが発生していると考えられる。
【0044】
図5は、上記上部電極形成時に発生するクラックの発生がリーク電流の増大をもたらす理由を説明するための模式図である。
【0045】
図5(a)は、TiN膜からなる下部電極107上に原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法によりZrO膜からなる誘電体膜110aを形成した後、上部電極109として室温形成のPVD−TiN膜109を形成した構成である。この場合、微結晶ZrO膜110aには成膜温度以上の熱処理が加わらないので2次的な結晶粒成長は起こらず、クラックは発生しない。その結果、リーク電流は図2の符号Bの特性となる。
【0046】
図5(b)は、図5(a)の構成において、微結晶ZrO膜110aに、意識的に450℃程度の熱処理を加えて2次的な結晶粒成長を促し、クラック111が発生した多結晶ZrO膜110bからなる誘電体膜に変化させた状態で、上部電極109として室温形成のPVD−TiN膜を形成した構成である。PVD−TiN膜は段差被覆性が悪いため、クラック111内部へは膜が形成されない。したがって、この場合もリーク電流は図2の符号Bの特性とほぼ同等の特性となる。
【0047】
図5(c)は、TiN膜からなる下部電極107上にALD法によりZrO膜からなる誘電体膜110aを形成した後、誘電体膜の上に上部電極112として450℃で堆積するCVD−TiN膜を形成した構成である。この場合も微結晶ZrO膜110aは多結晶ZrO膜110bに変換され、この2次的な結晶粒成長によるクラック111が発生する。CVD−TiN膜は立体構造電極の形成に適用し得る良好な段差被覆性を有しているため、クラック111内部へもCVD−TiN膜112が入り込んで形成される。したがって、この場合のリーク電流は図2の符号Aのように劣化した特性となる。
【0048】
上記図5(a)〜(c)に示したように、成膜装置においては、成膜装置に半導体基板をセットしても、すぐには所定の温度に達しないため、成膜が開始されるまでの間、所定の温度で安定するまで一定時間、予備加熱状態となる。したがって、この予備加熱状態において微結晶ZrO膜が熱処理され、2次的な結晶粒成長をすることによってクラックが発生する。クラックが発生した後、連続してCVD−TiN膜の成膜が開始されるのでクラック内部はCVD−TiN膜で充填されてしまう。
【0049】
その結果、クラック111の底部では、上部電極となるCVD−TiN膜112と下部電極107とは極めて薄い誘電体膜110bを介して対向することとなり、リーク電流が増大する結果となる。極端な場合には短絡状態となる。また、ZrO膜の膜厚が薄く2次的な結晶粒成長が遅れる場合であっても局所的にクラックが発生しており、リーク電流を増加させる原因となっていると考えられる。更に、明確なクラック発生に至らなくても、2次的な結晶粒成長に伴う表面原子移動により、表面の凹凸が増大して相対的に膜厚の薄い部分が生じるとリーク電流の増加をもたらすこととなる。図2に示したようなリーク電流特性が7桁も変化する劇的な劣化は、このようにクラック発生に起因しているものと推察される。
【0050】
以上、説明したように、図2において、上部電極にPVD−TiN膜を用いた場合にはリーク電流が少なく、熱処理を伴うCVD−TiN膜を用いた場合にリーク電流が増大する原因は、CVD−TiN膜を成膜する直前の450℃の予備加熱状態において、ZrO膜が大きな結晶粒からなる多結晶状態となって粒界にクラックが発生し、そのクラック内部へ段差被覆性の良いCVD−TiN膜が成膜されてしまうことにあるものと推定される。PVD−TiN膜を上部電極とすればクラックの影響を回避できるが、段差被覆性が悪く立体構造には適用できない問題がある。
【0051】
(第一実施例)
上記の結果より、本発明者はZrO膜の2次的な結晶粒成長に伴うクラック発生を防止するためには、ZrO膜の2次的な結晶粒成長を伴わない温度でZrO膜表面を保護膜で被覆し、その後、上部電極としてのCVD−TiN膜を形成すれば良いと考えた。また、保護膜として種々検討した結果、上部電極として用いる窒化チタン(TiN)膜が有望であることを見出した。すなわち、保護膜となる第一の上部電極として、ZrO膜の結晶成長を伴わない温度で形成するTiN膜をZrO膜表面に形成した後、第二の上部電極としてZrO膜の結晶成長を伴う温度で形成するTiN膜を第一の上部電極表面に形成する。
【0052】
以下、誘電体膜となるZrO膜の表面に第一の上部電極としてTiN膜が接しているキャパシタについて説明する。
【0053】
図6は、シリコン単結晶半導体基板101上に、TiN膜からなる下部電極102と、厚さ6nmの多結晶ZrO膜からなる誘電体膜115と、厚さ1nmのTiN膜からなる第一の上部電極116aと、TiN膜からなる第二の上部電極116bをこの順に備えたキャパシタ構造を示している。なお、本実施例のキャパシタ構造は、後述する立体構造の半導体記憶装置ではなく、製造が容易で、特性を評価できる構造とするために、平坦キャパシタとした。
【0054】
以下、図6に示したキャパシタの製造方法について説明する。
【0055】
まず、半導体基板101上に、下部電極102となるTiN膜は、上記実験例1に記載したように立体構造への適用を考慮して、TiCl4とNH3を反応ガスとするCVD法により形成した。成膜温度は380〜600℃とすることができ、好ましい温度として本実施例では450℃とした。厚さは、10nmとした。このTiN膜は成膜段階で多結晶状態となっている。
【0056】
次に、誘電体膜115となるZrO膜を、上記実験例1に記載したように、TEMAZとオゾンを用いた250℃のALD法により、厚さ6nmで形成した。ALD法で成膜した段階のZrO膜は微結晶状態となっている。Zr原料ガスとしてTEMAZを用いたが、これに限定されるものではない。反応ガスとしてオゾンを用いたが、これに限定されるものではなく、H2Oを用いても良い。さらに成膜温度は210〜280℃の範囲であることが好ましい。210℃より低い場合は反応が進まなくなる場合があり、280℃より高くなると気相中でのZr原料ガスの分解反応が生じ、ALD成膜が困難となる場合がある。また、210〜280℃の範囲であれば、誘電体膜115であるZrO膜の成膜温度250℃とほとんど変わらないので、ZrO膜の2次的な結晶粒成長は起こらず、ZrO膜は微結晶状態のままとなる。
【0057】
次に、第一の上部電極116aとなるTiN膜を形成した。このTiN膜は成膜時に微結晶状態又は非晶質状態になっている。四塩化チタン(TiCl4)をTi原料ガスとし、アンモニア(NH3)を反応ガスとして、温度250℃のALD法により、厚さ1nmで形成した。アンモニアはプラズマ化した状態で供給した。ALD法による具体的成膜ステップは、下記のとおりとした。
(1)半導体基板が設置された反応室にTi原料ガスを導入して誘電体115の表面に原子層レベルでTi原料ガスを吸着させるステップと、
(2)気相に残留するTi原料ガスを窒素パージするステップと、
(3)プラズマ化したアンモニアを導入して、誘電体115に吸着しているTi原料ガスを窒化するステップと、
(4)気相に残留するアンモニアを窒素パージするステップ
とした。
【0058】
上記4つのステップからなる基本シーケンスを1nmの膜厚となるまで繰返すことにより成膜した。ALD法による成膜では、表面吸着反応を利用しているので、段差被覆性に優れ立体構造への適用が容易となる利点がある。アンモニアをプラズマ化することにより、エネルギー準位の高い窒素ラジカルが生成され反応性が向上するので250℃の低温でも窒化反応を促進することができる。
【0059】
また、ここではTi原料ガスとしてTiCl4を用いたが、これに限定されるものではない。TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン:Ti〔N(CH324)やTDEAT(テトラキスジエチルアミノチタン:Ti〔N(C2524)を用いることができる。これらのTi原料ガスを単独もしくは混合状態で使用することができる。
【0060】
また、反応ガスとしてアンモニアを用いたが、これに限定されるものではなく、N2、N2+NH3、N2+H2などを用いても良い。TDMATやTDEATをTi原料ガスとして用いる場合も反応ガスはプラズマ化した状態で供給する。
【0061】
次に、第二の上部電極116bとなるTiN膜を形成した。第二の上部電極116bとなるTiN膜は、上記下部電極102と同様に、立体構造への適用を考慮して380〜600℃、好ましくは450℃のCVD法により、厚さ10nmで形成した。
【0062】
さらに、面積が既知のマスク材料(図示していない)を第二の上部電極116b上に形成し、マスク材料をマスクとして上部電極をエッチング除去し、図6に示すキャパシタ構造を形成した。
【0063】
本実施例においては、第二の上部電極116bを450℃で形成しているので、既に形成されている誘電体115は微結晶ZrO膜から多結晶ZrO膜に変換される。また、第一の上部電極116aは、微結晶又は非晶質TiN膜から多結晶TiN膜に変換される。その結果、本実施例のキャパシタは、多結晶TiNからなる下部電極102と、多結晶ZrO膜からなる誘電体膜115と、多結晶TiN膜からなる第一の上部電極116aと、同じく多結晶TiN膜からなる第二の上部電極116bを有する。すなわち、半導体基板101に接続される下部電極102と、下部電極102に接して下部電極102を覆う誘電体膜115と、誘電体膜115に接して誘電体膜115上に形成された上部電極を有し、上部電極は、多結晶TiN膜を含み誘電体膜に接する第一の上部電極116aと、多結晶TiN膜を含み第一の上部電極上に積層される第二の上部電極116bとを含んで構成されている。
【0064】
図7は、図6に示したキャパシタのリーク電流特性を示している。横軸は、上部電極に印加される電圧を、縦軸は印加電圧に対応する単位面積当りのリーク電流値を示している。符号Dで示される特性は、図3の符号Dで示したZrO膜厚6nmの場合のリーク電流特性である。これに対して符号Fは、厚さ1nmのTiN膜からなる第一の上部電極116aを有する、本実施例のキャパシタのリーク電流特性を示している。+1Vの印加電圧における両者のリーク電流を比較すると、第一の上部電極116aがない場合(符号D)には2E−2(A/cm2)であり、第一の上部電極116aがある場合(符号F)には7E−8(A/cm2)となっている。
【0065】
図7の特性比較から明らかなように、厚さ1nmの多結晶TiN膜からなる第一の上部電極116aを有するキャパシタ(F)では、第一の上部電極116aがない場合(符号D)に比べて5桁もリーク電流は低減されており、劇的な改善が見られている。符号Fの特性を示すキャパシタではEOTで0.70nmの値が得られた。なお、EOTは、容量−電圧特性から得られる容量値Cを基に、比誘電率εrに酸化シリコンの3.85を用い、EOT=εo*εr*S/Cの式から求めた。εoは真空の誘電率、Sは上部電極の面積である。
【0066】
上記の結果は、450℃の温度で第二の上部電極116bが成膜される工程において、第一の上部電極116aが誘電体膜115の結晶化におけるクラックの発生を有効に防止する保護膜の役割を果たしていることを示唆している。この示唆をさらに検証するために、第一の上部電極116aを形成する前に、微結晶状態のZrO膜からなる誘電体膜に熱処理が加わるとリーク電流特性がどのように変化するか調べた。すなわち、図6に示したキャパシタの形成方法と同様に、温度250℃のALD法により、下部電極102上に、厚さを6nmとする微結晶ZrO膜からなる誘電体膜115を形成した。この後、窒素雰囲気中で、450℃、10分の熱処理を施した。
【0067】
誘電体膜115はこの熱処理時点で多結晶状態となっている。その後、250℃のALD法により、厚さを1nmのTiN膜からなる第一の上部電極116aを熱処理された誘電体膜115上に形成した。さらに、450℃のCVD法により、厚さを10nmとする多結晶状態のTiNからなる第二の上部電極116bを形成し、図6と同様に電極パターンを形成してキャパシタを構成した。
【0068】
このキャパシタのリーク電流特性を図8の符号Kに示した。同図の符号Fは、図7の符号Fと同じである。図8から明らかなように、第一の上部電極116aを形成する前に、誘電体膜115に熱処理が加わると、リーク電流が増大している。+1Vの印加電圧で2E−2(A/cm2)のレベルであり、半導体記憶装置に使用可能な1E−7(A/cm2)以下のレベルを維持することはできない。
【0069】
なお、ここでは、450℃で熱処理した場合の結果を示したが、350℃でもリーク電流の増大が確認されている。しかし、300℃で熱処理した場合にはリーク電流の変化は認められなかった。つまり、誘電体膜のALD法の成膜温度(250℃)に対して、50℃高い300℃では、2次的な結晶粒成長は少なく、実用上、問題のないレベルであることが確認された。さらに、検討した結果、誘電体膜のALD法の成膜温度より70℃以上、超える高い温度が付加されなければ、実用上問題がないことが分かった。上記微結晶ZrO膜115のALD法の温度範囲(210℃〜280℃)と、TiN膜からなる第一の上部電極116aのALD法の温度範囲(210℃〜280℃)とは同等であることから、その範囲内であれば温度差70℃の範囲内に収まることになる。もちろん、上記微結晶ZrO膜115の成膜と第一の上部電極116aの成膜の間には不要な熱処理が加わらないことが好ましい。
【0070】
上記のように、TiN膜からなる第一の上部電極116aを形成する前に、ZrO膜をその成膜温度より70℃以上、超える温度で熱処理してしまうと、その後にTiN膜からなる第一の上部電極116aを形成しても、保護膜としての効果は得られないことが明らかである。つまり、図5の模式図に示したように、熱処理によって誘電体膜115にクラックが発生してしまった後に保護膜となる第一の上部電極を形成してもリーク電流の増大を防止することはできない。つまり、実用できるキャパシタは得られない。
【0071】
したがって、リーク電流の増大を防止するためには、誘電体膜115に2次的な結晶粒成長が少ない温度、好ましくは2次的な結晶粒成長がほとんど生じない温度で、微結晶ZrO膜115の表面を覆うように、保護膜となる第一の上部電極116aを形成してしまうことが肝要である。微結晶ZrO膜115の成膜温度と、第一の上部電極116aの成膜温度が同じかあるいは第一の上部電極116aの成膜温度の方が低ければ、2次的な結晶粒成長は生じない。
【0072】
第一の上部電極116aを形成することによりリーク電流の増大を防止できる理由は、以下のように考えられる。誘電体膜115の2次的な結晶粒成長が少ない温度、好ましくは2次的な結晶粒成長がほとんど生じない温度で、第一の上部電極116aを形成することにより、誘電体膜115表面の平坦性を維持したまま、第一の上部電極116aが形成される。誘電体膜115表面に形成された第一の上部電極116aは、誘電体膜115の表面を構成する分子若しくは原子を固定化する。そのため、通常、微結晶ZrO膜115の2次的な結晶粒成長によりクラックが生じる熱処理が加わっても、表面を構成する分子若しくは原子は移動することができず表面形状の変化をもたらさない。その結果、多結晶化した誘電体膜115表面の平坦性が維持される。したがって、第一の上部電極116aが形成された後、微結晶ZrO膜115の2次的な結晶粒成長が生じる熱処理が加わった場合、誘電体膜115の内部には、膜中応力を緩和するように2次的な結晶粒成長は生じるが、その表面では平坦性が維持され、クラックが発生することはない。クラックの発生を回避できるので、クラック内部に上部電極が形成されてリーク電流が増大する現象が発生しない。
【0073】
上述のように、本実施例では、誘電体膜をALD法により形成した後、成膜された誘電体膜に不要な熱処理を施すことなく保護膜となる第一の上部電極をALD法で形成し、誘電体膜表面を被覆してしまうことが必要である。
【0074】
次に、図6に示した構造において、誘電体膜115となるZrO膜の膜厚を変化させた場合のリーク電流特性について、図9を用いて説明する。
【0075】
符号HはZrO膜厚が7nm、符号Fは6nm、符号Iは5.5nm、符号Jは5nm、符号Kは4.5nmの場合の結果を示している。なお、符号Cは、図3に示した符号Cと同じであり、ZrO膜厚が4nmで、第一の上電極116a、すなわち保護膜となるTiN膜がない場合の結果である。
【0076】
図9から明らかなように、ZrO膜厚が4.5nmの符号Kでは、保護膜となるTiN膜がない場合のZrO膜厚4nmと同等のリーク電流特性を示している。すなわち、ZrO膜の膜厚が4.5nm以下の領域では、第一の上部電極116aを形成しても、保護膜としての効果は得られないことがわかる。一方、5nm以上の領域では膜厚の増加にしたがって、単調にリーク電流は減少しており、TiN膜からなる第一の上部電極116aが保護膜として機能していることがわかる。TiN膜からなる第一の上部電極116aがない場合には、ZrO膜にクラックが発生することによってZrO膜厚が厚くなるほどリーク電流が増大していた図3の結果とは全く逆の傾向を示している。この結果は、第一の上部電極116aとなるTiN膜がZrO膜のクラック発生を防止するのに有効な保護膜として機能していることを示している。
【0077】
一方、図9に示した各サンプルのEOTは、ZrO膜厚5nmで0.52nm、ZrO膜厚5.5nmで0.63nm、ZrO膜厚6nmで0.7nm、ZrO膜厚7nmで0.83nmの値を示した。ZrO膜厚を8nmとさらに厚くすると、リーク電流はさらに下がる傾向を示すが、EOTは0.95nmとなってしまい、本発明において目標とするEOT0.9nm以下の値を確保することができない。したがって、本発明の目標に適切な適用可能なZrO膜の膜厚範囲は、リーク電流改善の観点から5nm以上であることが好ましく、EOT確保の観点から7nm以下であることが好ましい。なお、本実施例では、膜厚が5nm及び5.5nmの場合には、半導体記憶装置として実用的な指標となる1Vのバイアス下で1E−7(A/cm2)以下を満足できてきていないが、後述する実施例に示すように、下部電極に接する誘電体膜としてTiO膜の適用、更なる誘電体膜の緻密化などにより、これらの膜厚でも1E−7(A/cm2)以下を満足することが可能となる。
【0078】
次に、第一の上部電極116aとして用いるTiN膜の膜厚がリーク電流特性に及ぼす影響について図10を用いて説明する。
【0079】
図10は、図6に示した構造のキャパシタにおいて、第一の上部電極116aとして用いるTiN膜の膜厚を変化させた場合のリーク電流特性の比較を示している。他の構成は図6と同じである。符号Dは0nm、符号Oは5nm、符号Nは0.5nm、符号Mは3nm、符号Fは1nm、符号Lは2nmの場合の結果を示している。
【0080】
これらの結果から以下のことが明らかである。
(1)TiN膜を形成しない0nm(符号D)の場合、最もリーク電流が大きい。
(2)TiN膜を5nm(符号O)とした場合も極めてリーク電流は大きい。
(3)TiN膜を3nm(符号M)とした場合、リーク電流に大きな改善が見られる。しかし、実使用に耐えうる特性としては不十分である。
(4)TiN膜を1〜2nmとした場合には、顕著な効果があり、実使用に耐えうる特性を示している。2nmの場合に最もリーク電流が小さくなっている。
(5)TiN膜をさらに薄くして0.5nmとした場合には、逆にリーク電流は増大しており、この膜厚では保護膜としての効果が得られないことを示している。
【0081】
上記の結果から、TiN膜を厚く形成しても、また薄く形成しすぎてもリーク電流の低減効果はなく、リーク電流を低減しうるTiN膜厚には最適範囲が存在することがわかった。上記(1)〜(5)の結果より、誘電体膜のクラック発生を抑制してリーク電流を低減するために好ましいTiN膜の膜厚範囲は、1〜2nmである。1nmより薄いと誘電体膜のクラック発生を防止する効果がなくなる場合がある。また、2nmより厚くなると上部電極形成時の熱処理によってTiN膜自体のストレスが増大し始め保護膜としての機能を消失する場合がある。TiN膜に生じるストレスにより誘電体の構造が歪むことに起因していると推察される。
【0082】
(第二実施例)
第一実施例で説明したように、ZrO膜を誘電体とするキャパシタにおいて、第二の上部電極となるTiN膜は380〜600℃の温度範囲で成膜される。この場合、ZrO膜の2次的な結晶粒成長に伴うクラックの発生を回避するためには、第二の上部電極を成膜する前に微結晶ZrO膜表面をTiN膜からなる保護膜で覆った状態としておくことが必要である。
【0083】
本実施例では、さらにリーク電流特性を改良するため、上記の構成に加えて、下部電極となるTiN膜と誘電体となるZrO膜の間にTiO膜を形成したキャパシタの特性について、図11から図13を用いて説明する。なお、本実施例のキャパシタでは、第二の上部電極となるTiN膜116b/第一の上部電極となるTiN膜116a/第二の誘電体膜となる多結晶ZrO膜115b/第一の誘電体膜となるTiO膜115a/下部電極となるTiN膜102の構造となる。この、TiN膜/TiN膜/ZrO膜/TiO膜/TiN膜構造においては、第一の上部電極となるTiN膜と第二の誘電体膜となるZrO膜と第一の誘電体膜となるTiO膜が組み合わされているのでTZT構造と略称する。
【0084】
図11は、本実施例のキャパシタ構造を示している。シリコン単結晶半導体基板101上に、多結晶TiN膜からなる下部電極102と、TiO膜からなる第一の誘電体膜115aと、多結晶ZrO膜からなる第二の誘電体膜115bと、上部電極として多結晶TiN膜からなる第一の上部電極116aと、多結晶TiN膜からなる第二の上部電極116bを備えたキャパシタ構造を示している。
【0085】
本実施例のキャパシタは、誘電体膜が、TiO膜からなる第一の誘電体膜115aと、ZrO膜からなる第二の誘電体膜115bとで構成されている点が第二実施例と異なっている。なお、本実施例のキャパシタでは、第一の誘電体膜115aとなるTiO膜は、後述するように、厚さが0.8nm以下では非晶質であり、厚さが1nm以上では多結晶となるので、図11には結晶性の区別を記載していない。
【0086】
以下、図11に示したキャパシタの製造方法について説明する。まず、半導体基板101上に、下部電極102となる多結晶TiN膜を形成した。第一実施例に記載したように立体構造への適用を考慮して、TiCl4とNH3を反応ガスとするCVD法によりTiN膜を形成した。成膜温度は380〜600℃とすることができ、好ましい温度として本実施例では450℃とした。厚さは、厚さ10nmとした。このTiN膜は成膜段階で多結晶状態となっている。
【0087】
次に、第一の誘電体膜115aとなるTiO膜を形成した。Ti原料ガスをTTIP(チタンテトライソプロポキシド:Ti(OCHMe24)とし、オゾンを反応ガスとして、温度250℃のALD法により形成した。
【0088】
ALD法による具体的成膜ステップは、
(1)半導体基板が設置された反応室にTi原料ガスを導入して、下部電極102の表面に原子層レベルで吸着させるステップと、
(2)気相に残留するTi原料ガスを窒素パージするステップと、
(3)オゾンを導入して吸着しているTi原料を酸化するステップと、
(4)気相に残留するオゾンを窒素パージするステップ
とした。
【0089】
上記4つのステップからなる基本シーケンスを所望の膜厚となるまで繰返すことにより成膜した。ALD法による成膜では、表面吸着反応を利用しているので、段差被覆性に優れ立体構造への適用が容易となる利点がある。ALD法で成膜した段階のTiO膜は非晶質状態となっている。ここではTi原料ガスとしてTTIPを用いたが、これに限定されるものではない。また、反応ガスとしてオゾンを用いたが、これに限定されるものではなく、H2Oなどを用いても良い。さらに成膜温度は250℃としたが、210〜280℃の範囲であれば好ましい。210℃より低いと反応が進まなくなる場合があり、280℃より高くなると気相中でのTi原料ガスの分解反応が生じ、ALD成膜が困難となる場合がある。本実施例では第一の誘電体膜115aとなるTiO膜の膜厚は特に限定されないが、0.4〜2nmの範囲であれば好ましい。0.4nmより薄くなるとリーク電流低減効果を示さなくなる場合があり、2nmを超えるとEOTが大きくなり、得られる容量が小さくなる場合がある。
【0090】
次に、第二の誘電体膜115bとなるZrO膜を、参考例に記載したように、TEMAZとオゾンを用いた250℃のALD法により、厚さ6nmで形成した。ALD法で成膜した段階のZrO膜は微結晶状態となっている。Zr原料ガスとしてはTEMAZを用いたが、これに限定されるものではない。反応ガスとしてオゾンを用いたが、これに限定されるものではなく、H2Oを用いても良い。さらに成膜温度は210〜280℃の範囲であることが好ましい。210℃より低い場合は反応が進まなくなる場合があり、280℃より高くなると気相中でのZr原料ガスの分解反応が生じ、ALD成膜が困難となる場合がある。
【0091】
次に、温度250℃のALD法により、第一の上部電極116aとなるTiN膜を形成した。このTiN膜は成膜時に微結晶状態又は非晶質状態になっている。この際、Ti原料ガスとしては、四塩化チタン(TiCl4)、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン:Ti〔N(CH324)、TDEAT(テトラキスジエチルアミノチタン:Ti〔N(C2524)を用いることができる。これらのTi原料ガスを単独もしくは混合状態で使用することができる。反応ガスとしてはプラズマ化した状態で供給し、アンモニア、N2、N2+NH3、N2+H2などを用いることができる。さらに成膜温度は250℃としたが、210〜280℃の範囲であれば好ましい。
【0092】
次に、第二の上部電極116bとなるTiN膜を形成した。第二の上部電極116bとなるTiN膜は、上記下部電極102と同様に、立体構造への適用を考慮して380〜600℃、好ましくは450℃のCVD法により、厚さ10nmで形成した。このTiN膜は成膜段階で多結晶状態となっている。その後、第一実施例と同様にして、上部電極を加工してキャパシタを形成した。
【0093】
図12は、上記のキャパシタにおけるリーク電流特性を示している。なお、図12には第一の誘電体膜115aとなるTiO膜の膜厚を変化させて形成したキャパシタの特性を併せて示している。すなわち、図中、符号Pは膜厚0.5nm、符号Qは1nm、符号Rは2nmの場合を示している。なお、符号Fは図7、8、9、10に示した、第一の誘電体膜115aがない場合の特性である。
【0094】
図12から明らかなように、第一の誘電体膜115aは低電界領域(−2Vから2Vの範囲)におけるリーク電流を低減する効果のあることがわかる。+1Vの印加電圧で比較すると、第一の誘電体膜115aがない符号Fでは8E−8(A/cm2)、膜厚0.5nmの符号Pでは1E−8(A/cm2)、膜厚1nmの符号Qでは7E−9(A/cm2)、膜厚2nmの符号Rでは7E−9(A/cm2)、となっており、膜厚増加にしたがってリーク電流は低減する傾向を示している。しかし、膜厚2nm(符号R)ではリーク電流低減効果が飽和する傾向を示しており、これより膜厚を増加させてもリーク電流低減の効果は期待できないと推察される。
【0095】
一方、−1Vの印加電圧で比較すると、符号Fでは6E−8(A/cm2)、符号Pでは2E−8(A/cm2)、符号Qでは1E−8(A/cm2)、符号Rでは1E−8(A/cm2)、となっており、膜厚増加にしたがってリーク電流は低減する傾向を示している。しかし、+1Vの印加電圧におけるリーク電流と同様に、膜厚2nm(符号R)ではリーク電流低減効果が飽和する傾向を示している。
【0096】
図12には示していないが、第一の誘電体膜115aの膜厚を0.3nmまで薄くすると、−1Vから1Vの範囲では第一の誘電体膜115aを形成しない場合(符号F)と同等の値となる。したがって、0.3nmより膜厚を薄くするとリーク電流低減の効果は期待できない。上記の結果より、リーク電流の低減に効果のある第一の誘電体115aとしてのTiO膜の膜厚は0.4nm以上となる。
【0097】
また、上記各々のキャパシタにおけるEOTは、第一の誘電体115aを形成しない符号Fで0.70nm、膜厚0.5nm(符号P)で0.74nm、膜厚1.0nm(符号Q)で0.82nm、膜厚2.0nm(符号R)で0.89nmとなっており、第一の誘電体115aとなるTiO膜の膜厚増加にしたがって単調に増加する結果が得られている。膜厚が2.0nmを超えるとEOTは0.9nmを超えてしまい、EOTで0.9nmより小さい値が要求されるF値が40nm以下の高集積記憶装置への適用は困難となる。したがって、本発明における、第一の誘電体115aとなるTiO膜の好ましい範囲は、リーク電流低減の観点から0.4nm以上であり、EOT確保の観点から2.0nm以下となる。
【0098】
上記の第一の誘電体膜115aとなるTiO膜の膜厚増加にしたがってEOTが単調に増加する結果は、TiO膜が誘電体として機能していることを示している。本実施例においても、第一の誘電体膜115aとなるTiO膜は、膜厚が1nm以上では多結晶状態に変化しているが、膜厚が0.8nm以下では非晶質状態が保持されており結晶化していない。
【0099】
したがって、第一の誘電体膜115aの膜厚が0.8nm以下の範囲では、第二の上部電極116bを形成する熱処理において、第二の誘電体膜115bとなるZrO膜と第一の上部電極116aとなるTiN膜とが多結晶状態に変換され、第一の誘電体膜115aは結晶化しない。一方、第一の誘電体膜115aの膜厚が1nm以上の範囲では、第二の上部電極116bを形成する熱処理において、第一の誘電体膜115aとなるTiO膜と、第二の誘電体膜115bとなるZrO膜と、第一の上部電極116aとなるTiN膜とが多結晶状態に変換される。なお、第一の誘電体膜115aの膜厚が0.8nmと1nmとの間では非晶質状態のTiO膜と多結晶状態のTiO膜が混在した状態を示す。
【0100】
本実施例においては、第二の上部電極116bを450℃で形成することにより、既に形成されている第二の誘電体膜115bは微結晶ZrO膜から多結晶ZrO膜に変換され、第一の上部電極116aは微結晶又は非晶質TiN膜から多結晶TiN膜に変換されている。また、第一の誘電体膜115aは、膜厚が0.4〜0.8nmの範囲では非晶質TiO膜であり、膜厚が1〜2nmの範囲では非晶質TiO膜から多結晶TiO膜に変換されている。
【0101】
その結果、本実施例において、第一の誘電体膜115a(TiO膜)の膜厚が0.4〜0.8nmの範囲で構成されるキャパシタは、多結晶TiNからなる下部電極102と、非晶質TiO膜からなる第一の誘電体膜115aと、多結晶ZrO膜からなる第二の誘電体膜115bと、多結晶TiN膜からなる第一の上部電極116aと、多結晶TiN膜からなる第二の上部電極116bを有している。また、第一の誘電体膜115aの(TiO膜)の膜厚が1〜2nmの範囲で構成されるキャパシタは、多結晶TiNからなる下部電極102と、多結晶TiO膜からなる第一の誘電体膜115aと、多結晶ZrO膜からなる第二の誘電体膜115bと、多結晶TiN膜からなる第一の上部電極116aと、多結晶TiN膜からなる第二の上部電極116bを有している。
【0102】
すなわち、半導体基板101に接続される下部電極102と、下部電極102に接して下部電極102を覆うように設けられた第一の誘電体膜115aと、第一の誘電体膜115aに接して第一の誘電体膜115aを覆うように設けられた第二の誘電体膜115bと、第二の誘電体膜115bに接して第二の誘電体膜115bを覆うように設けられた上部電極を有し、上部電極は、多結晶窒化チタン膜を含み誘電体膜に接する第一の上部電極116aと、多結晶窒化チタン膜を含み第一の上部電極116aに積層して設けられた第二の上部電極116bとを含んで構成されている。
【0103】
図13は、本実施例における第一の上部電極116の効果を説明するための図である。第一の誘電体膜115aとなるTiO膜の膜厚を0.5nmとするキャパシタを作成し、第一の上部電極116aとなるTiN膜を形成する前に、450℃の窒素雰囲気で10分間、熱処理した場合のリーク電流特性を示している。その結果を符号Sに示している。符号Pは図12に示した符号Pと同じであり、第一の上部電極116aとなるTiN膜を形成した後、第二の上部電極116bの形成時に熱処理した結果である。図から明らかなように、第一の上部電極116aとなるTiN膜を形成する前に熱処理した符号Sでは、符号Pに比べてリーク電流が増大しており、第二の誘電体膜115bとなるZrO膜にクラックが発生し始めていることを示唆している。
【0104】
なお、図13には、450℃で熱処理した場合の結果を示したが、本実施例においても第一実施例と同様に、350℃でもリーク電流の増大が確認されている。しかし、300℃で熱処理した場合にはリーク電流の変化は認められなかった。したがって、本実施例のキャパシタの構成でも、誘電体膜となる微結晶状態のZrO膜を形成した後、保護膜となる第一の上部電極すなわちTiN膜の形成が終了するまでプロセス温度を微結晶ZrO膜のALD法での成膜温度を70℃以上、超えない温度、好ましくは300℃以下に保持することが重要である。
【0105】
(第三実施例)
本実施例では、誘電体膜の形成方法として、ZrO膜を2ステップに分けて形成したキャパシタの特性について、図14および図15を用いて説明する。まず、第一の微結晶ZrO膜を形成して、熱処理を施し、多結晶化させた後、その上に第二の微結晶ZrO膜を形成した状態で、第一の上部電極となるTiN膜を積層形成し、第二の上部電極形成時の熱処理により、第二の微結晶ZrO膜および第一の上部電極となる微結晶又は非晶質TiN膜を多結晶に変換する方法を用いる。
【0106】
図14(a)は本実施例のキャパシタの構造を示している。シリコン単結晶半導体基板101上に、多結晶TiN膜からなる下部電極102と、厚さ0.5nmの非晶質TiO膜からなる第一の誘電体膜115aと、厚さ5nmの多結晶ZrO膜からなる第二の誘電体膜115bと、厚さ1nmの多結晶ZrO膜からなる第三の誘電体膜115cと、第三の誘電体膜115cの上に形成された厚さ1nmの多結晶TiN膜からなる第一の上部電極116aと、第一の上部電極116aの上に形成された多結晶TiN膜からなる第二の上部電極116bを備えたキャパシタ構造を示している。
【0107】
本実施例のキャパシタは、誘電体膜が、第一の誘電体膜115aと、第二の誘電体膜115bと、第三の誘電体膜115cの3層膜で構成されている点が、第一および第二実施例とは異なっている。第三の誘電体膜115cには、第二の誘電体膜115bと同じ材料であるZrO膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜や酸化タンタル膜のような第二の誘電体膜115bとは異なる材料を用いることもできる。同じ材料であるZrO膜で構成した場合には、第二の誘電体膜115bと第三の誘電体膜115cは一体化した構成となるので、図11に示した第二実施例の構成と実質的に同じとなる。
【0108】
以下、図14(a)に示したキャパシタの形成方法について、図14(b)を用いて説明する。
【0109】
(1)下部電極形成ステップ
まず、半導体基板101をTiN膜形成装置内にセットし、半導体基板101上に、下部電極102となる多結晶TiN膜を形成した。立体構造への適用を考慮して、TiCl4とNH3を反応ガスとするCVD法により形成した。成膜温度は450℃とした。厚さは、10nmとした。このTiN膜は成膜段階で多結晶となっている。TiN膜の形成後、TiN膜形成装置から取り出した。
【0110】
(2)第一の誘電体膜となるTiO膜形成ステップ
第二実施例と同様の方法により、第一の誘電体膜となるTiO膜115aを形成した。
【0111】
(3)第二の誘電体膜となるZrO膜形成ステップ
第二実施例と同様の方法により、第二の誘電体膜となるZrO膜115bを形成した。
【0112】
(4)熱処理ステップ
所定数のサイクルを繰り返して厚さ5nmのZrO膜からなる第二の誘電体膜115bを形成した後、同一のALD成膜装置内に保持したまま、温度を380℃まで昇温し、酸素雰囲気下で10分間、熱処理をした。その後、温度を450℃まで昇温し、窒素雰囲気下で10分間、さらに熱処理した。この段階で、第二の誘電体膜115bとなるZrO膜は多結晶化し、図5に示したようにクラックが発生している。第一の誘電体膜115aとなるTiO膜は非晶質状態が維持される。
【0113】
(5)第三の誘電体膜となるZrO膜形成ステップ
上記熱処理を行なった後、温度を250℃まで降温し、クラックが発生している第二の誘電体膜表面に第三の誘電体膜115cとなるZrO膜を形成した。TEMAZをZr原料ガスとし、オゾンを反応ガスとして、温度250℃のALD法により、厚さ1nmで形成した。ALD法で成膜した段階のZrO膜115cは微結晶状態となっている。
【0114】
(6)第一の上部電極となるTiN膜の形成ステップ
第三の誘電体膜115cとなるZrO膜を形成した後、同一のALD成膜装置内に保持したまま、第一の上部電極116aとなるTiN膜を形成した。Ti原料ガスとしては、TiCl4、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン:Ti〔N(CH324)、TDEAT(テトラキスジエチルアミノチタン:Ti〔N(C2524)を用いることができる。反応ガスとしてオゾンを用い、温度250℃のALD法により、厚さ1nmで形成した。ALD法で成膜した段階のTiN膜116aは非晶質状態となっている。
【0115】
(7)第二の上部電極形成ステップ
第二実施例と同様の方法により、第二の上部電極となるTiN膜を形成した。
【0116】
図15の符合Tは、上記方法により形成したキャパシタのリーク電流特性を示している。なお、同図の符号Pは、図12に示した符号Pと同じである。上記のように、第二の誘電体膜115bとなる第一の微結晶ZrO膜を形成して、熱処理を施し、多結晶化させた後、その上に第三の誘電体膜115cとなる第二の微結晶ZrO膜を形成する。この状態で、第一の上部電極となるTiN膜を積層形成し、第二の上部電極形成時の熱処理で、第二の微結晶ZrO膜および第一の上部電極となる非晶質TiN膜を多結晶に変換する方法を用いたキャパシタでは、符号Pと同等の極めてリーク電流の少ない特性が得られている。
【0117】
本実施例では第二の誘電体膜115bとなる第一のZrO膜を形成した後、380℃の酸素雰囲気で10分の熱処理に加え、450℃の窒素雰囲気で10分の熱処理を行なっている。図15には示していないが、450℃の窒素雰囲気で10分の熱処理だけを行なった場合も同等の結果が得られている。
【0118】
図13に一例を示したように、本実施例の構造であっても、第一の上部電極116aを形成する前に450℃の窒素雰囲気で10分間熱処理を施すとリーク電流が増大している。しかし、本実施例のように、第二の誘電体膜115bとなる第一の微結晶ZrO膜を熱処理して結晶化させた後、第三の誘電体膜115cとなる第二の微結晶ZrO膜を形成することによりリーク電流の増大を回避できることを示している。本実施例では、第一の微結晶ZrO膜の膜厚を5nm、第二の微結晶ZrO膜の膜厚を1nmとしている。上述のように、膜厚が6nmの単層膜からなるZrO膜に450℃の熱処理が加わった後、上部電極が形成されると図3のDに示したように、著しくリーク電流は増大する。そして、リーク電流が増大する原因を図4に示した結晶成長に伴うクラックの発生によるものと推定した。
【0119】
本実施例では、第一の微結晶ZrO膜を形成した後、450℃の熱処理を施すことにより、第二の誘電体膜となる第一の多結晶ZrO膜にクラックを発生させている。しかし、その後、第一の多結晶ZrO膜上に第二の微結晶ZrO膜を形成することにより、第二の微結晶ZrO膜が第一の多結晶ZrO膜に生じているクラックを埋設してクラックを消滅させる。また、第二の微結晶ZrO膜115cと第一の上部電極116aを形成した後、第二の上部電極116bを450℃で形成している。したがって、第一の上部電極116aは第二の微結晶ZrO膜115cに対して保護膜として機能し、第二の上部電極116bを450℃で形成した段階で、第三の誘電体膜115cとなる第二のZrO膜に新たなクラックが発生することを抑止する効果を有している。
【0120】
次に、本実施例のキャパシタで得られるEOTについて説明する。本実施例のキャパシタでは、第二の誘電体膜115bとなる第一の微結晶ZrO膜を形成した後、380℃の酸素雰囲気で10分間の熱処理に加え、450℃の窒素雰囲気で10分間の熱処理を行なっている。このキャパシタはEOT0.67nmであった。
【0121】
また、図15には示していないが、450℃の窒素雰囲気で10分間の熱処理だけを行なったサンプルは、リーク電流が符号Tと同等で、EOTは0.71nmであった。一方、第一の微結晶ZrO膜形成と第二の微結晶ZrO膜形成の間に熱処理を施さないで形成したサンプルのEOTは0.74nmであった。さらに、図15の符号Pで示したZrO膜が6nm単層で構成されるキャパシタはEOT0.73nmであった。すなわち、ZrO膜に対しては、上部電極形成時の熱処理を加える前に予め熱処理を加える方が、EOTの薄膜化の観点で得策である。特に、酸化性雰囲気での熱処理がより効果的である。この理由は、酸化性雰囲気での熱処理では、ZrO膜中に含有される不純物の脱離効果を促進させて、誘電率が向上するものと考えられる。ただし、酸化性雰囲気での熱処理は、温度が高すぎると酸化剤の拡散によって下部電極を酸化させる問題が生じるので、熱処理温度は350〜380℃の範囲とすることが望ましい。350℃より低い温度では上記の熱処理効果が得られなくなる場合がある。
【0122】
上記のように、第二の誘電体膜115bとなる膜厚が5nmの第一の微結晶ZrO膜を形成した後、一旦、熱処理を施す。これにより、第一の微結晶ZrO膜は多結晶化しクラックが発生するものの、クラック以外の部分では緻密化され、誘電率が向上する。この状態の第一の多結晶ZrO膜表面に第三の誘電体膜115cとなる膜厚が1nmの第二の微結晶ZrO膜を形成することにより、第二の微結晶ZrO膜が、第二の誘電体膜115bである第一の多結晶ZrO膜に生じているクラックを埋設して消滅させる。次に、第三の誘電体膜115cと第一の上部電極116aが形成された後、第二の上部電極116bが450℃で形成される。したがって、第一の上部電極116aは、第三の誘電体115cとなる第二の微結晶ZrO膜に対して保護膜として機能し、第二の上部電極116bを450℃で形成した段階で、第三の誘電体膜115cである第二のZrO膜に新たなクラックが発生することを抑止することができる。その結果、本実施例の方法によれば、低リーク電流レベルを維持すると共に、EOTを低減させる効果を有する。また、後述するように、本実施例の方法では、第二の上部電極116bとなるTiN膜を形成した後、誘電体膜115に加わる比較的長時間の熱処理におけるリーク電流特性の劣化を抑制できる効果もある。
【0123】
本実施例では、第二の誘電体膜115bとなる第一の微結晶ZrO膜の膜厚を5nm、第三の誘電体膜115cとなる第二の微結晶ZrO膜の膜厚は1nmとしたが、これに限るものではない。ZrO膜の緻密化を図るためには第一のZrO膜の膜厚を厚くして、第二のZrO膜の膜厚を薄くすることが望ましい。しかし、第二のZrO膜が第一のZrO膜に生じているクラックを埋設して消滅させるためには、少なくとも1nmは必要である。また、前述のように、EOTを0.9nm以下に維持するためには、全体のZrO膜厚を7nm以下とすることが望ましい。したがって、本実施例のキャパシタにおいては、第一の上部電極116aの膜厚を1〜2nmとした上で、第一の誘電体膜115aとなるTiO膜の膜厚を0.4〜0.8nm、第三の誘電体膜115cとなるZrO膜の膜厚を1〜1.5nmとして、全体のZrO膜厚が5〜7nmの範囲となるように第二の誘電体膜115bとなるZrO膜の膜厚を選択すればよい。
【0124】
本実施例では、
半導体基板上に窒化チタン膜からなる下部電極を形成する工程と、
前記下部電極の表面に第一の誘電体膜となる第二の非晶質酸化チタン膜を形成する工程と、
第二の非晶質酸化チタン膜表面に第一の微結晶酸化ジルコニウム膜を形成する工程と、
熱処理して、少なくとも前記第一の微結晶酸化ジルコニウム膜を多結晶酸化ジルコニウム膜からなる第二の誘電体膜に変換する工程と、
前記第二の誘電体膜表面に微結晶状態の第三の誘電体膜を形成する工程と、
前記微結晶状態の第三の誘電体膜の表面に、該第三の誘電体膜の2次的な結晶粒成長を伴わない温度で第一の窒化チタン膜を形成する工程と、
前記第一の窒化チタン膜を形成した後、熱処理によって、前記第一の窒化チタン膜を多結晶窒化チタンを含む第一の上部電極にすると共に、前記第三の誘電体膜を多結晶の第三の誘電体膜に変換する工程と、
前記第一の上部電極表面に多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極を形成する工程と、
を含んで構成されている。
【0125】
(第四実施例)
本実施例では、第三実施例の方法を用いて形成したキャパシタについて、ポストアニール(PA)を施した結果について、図16を用いて説明する。
【0126】
前述のように、半導体記憶装置の集積度向上に伴い、個々のメモリセルが縮小されてくると、キャパシタを立体的に製造する必要が生ずる。この場合には立体構造に特有の工程が必要となる。例えば、第一〜三実施例までに述べた第二の上部電極116bの上に、さらに第三の上部電極を形成する工程である。この工程では、例えば、最大500℃で6時間程度の熱負荷が発生する場合がある。この場合、前述の第一〜三実施例で形成したキャパシタに、さらに上記熱処理が施されることとなる。したがって、第三の上部電極を必要とする立体構造のキャパシタでは上記熱処理に対する耐性を有することが求められる。
【0127】
図16の符号Tは図15の符号Tと同じでありPAがない場合の結果を表す。符号Uは、450℃の窒素雰囲気で6時間の熱処理を行なった場合の結果を表す。符号Vは、500℃の窒素雰囲気で6時間の熱処理を行なった場合の結果を表す。なお、各々のサンプルについて、窒素雰囲気での熱処理に加えて、450℃の水素雰囲気で2時間の熱処理を追加したサンプルについても評価したが、図16の結果と差がなく、窒素雰囲気の熱処理が特性変動を支配していることがわかっている。
【0128】
図16から明らかなように、450℃で熱処理した符号Uでは低電界でのリーク電流がわずかに増加しているものの、−1Vから1Vの範囲では大きな変化は見られない。このサンプルのEOTは0.68nmであり、符号UのEOT0.67nmと大差はない。したがって、450℃のPAに対しては充分耐性がある。図16には示していないが、この耐性は、第三実施例に示した単層ZrO膜のキャパシタにおいても示されており、TZT構造は450℃のPAに対して耐性を有している。一方、500℃で熱処理した符号Vは、PAを行なっていない符号Tに比べて明らかにリーク電流の増加が見られている。しかし、この場合であっても、±1Vにおけるリーク電流は1E−7(A/cm2)であり、充分使用に耐えられるレベルにある。なお、このサンプルのEOTは0.75nmであった。
【0129】
第三実施例では、第二の誘電体膜115bとなる第一の微結晶ZrO膜に対して450℃を最高温度とする熱処理しか行なっていないので、450℃のPAに対してはZrO膜の緻密性が充分であるが、500℃のPAに対しては緻密性が不十分になっているものと推察される。したがって、第一の微結晶ZrO膜に対して予め500℃の熱処理を加えておけば緻密性がさらに向上し、500℃のPAに対してもリーク電流の増加を抑制する充分な耐性を示すものと推察される。
【0130】
上記のように、第二の誘電体膜115bとなる第一の微結晶ZrO膜を形成した後、第一の微結晶ZrO膜に対して予め熱処理を施して多結晶化し、その後、第一の多結晶ZrO膜の表面に第三の誘電体膜115cとなる第二の微結晶ZrO膜と第一の上部電極116aとなる微結晶又は非晶質TiN膜を形成し、さらに第二の上部電極116bとなるTiN膜を450℃で形成する方法を用いることにより、低リーク電流レベルを維持すると共にEOTを低減させる効果に加えてPAに対しても充分な耐性を有する効果がある。PA耐性を有するキャパシタは、一般的に信頼性にも優れており、第三実施例の方法により形成したキャパシタは高信頼性が要求される半導体記憶装置の構成要素として寄与することができる。
【0131】
なお、本実施例では、TZT構造(第一の上部電極116aの多結晶TiN膜/第三の誘電体膜115cの多結晶ZrO膜/第二の誘電体膜115bの多結晶ZrO膜/第一の誘電体膜114の非晶質又は多結晶TiO膜)にPAを施した例を示したが、その他の第一〜第三実施例に示した構造においても同様に、第一の上部電極116aを設けていることでPA耐性が得られるものである。
【0132】
図17は、上述の各実施例で得られた種々のキャパシタにおける、EOTと+1Vにおけるリーク電流との関係について比較したものである。黒塗りの四角は第一の上部電極となるTiN膜がない場合の単層ZrO膜からなる誘電体膜を備えたキャパシタである。黒塗りの円は第一の上部電極となるTiN膜と、単層ZrO膜からなる誘電体膜を備えた構造のキャパシタである。また、菱形は第一の上部電極となるTiN膜と、第二もしくは第二と第三の誘電体膜となるZrO膜と、第一の誘電体膜となるTiO膜からなる構造のキャパシタである。さらに、2重丸は、TZT構造において500℃の窒素雰囲気で6時間のPAを施した結果(第四実施例)である。
【0133】
図17から明らかなように、第一の上部電極となるTiN膜がないキャパシタでは、EOTは許容レベルにあるが、リーク電流は極めて大きく半導体記憶装置として使用できる状態にはないことが明らかである。一方、ZrO膜のクラック発生を防止する保護膜として機能する第一の上部電極となるTiN膜を備えたTZ構造およびTZT構造では、少なくとも第一の上部電極となるTiN膜を有することにより0.9nm以下のEOTを維持しつつ、リーク電流を+1Vにおいて1E−7(A/cm2)以下まで激減できる効果のあることが明らかである。
【0134】
(第五実施例)
本実施例では、第一〜第四実施例に記載したキャパシタを有する半導体記憶装置について、図18〜28を用いて説明する。
【0135】
初めに、半導体記憶装置となるDRAMの全体構成の概略について図18の断面模式図を用いて説明する。p型シリコン基板201にnウエル202が形成され、その内部に第一のpウエル203が形成されている。また、nウエル202以外の領域に第二のpウエル204が形成され、素子分離領域205で第一のpウエル203と分離されている。第一のpウエル203は複数のメモリセルが配置されるメモリセル領域Iを、第二のpウエル204は周辺回路領域IIを各々、便宜的に示している。
【0136】
第一のpウエル203には個々のメモリセルの構成要素でワード線となるゲート電極を備えたスイッチングトランジスタ206及び207が形成されている。トランジスタ206は、ドレイン208、ソース209とゲート絶縁膜210を介してゲート電極211で構成されている。ゲート電極211は、多結晶シリコン上にタングステンシリサイドを積層したポリサイド構造もしくはタングステンを積層したポリメタル構造からなっている。トランジスタ207は、ソース209を共通としドレイン212、ゲート絶縁膜210を介してゲート電極211で各々、構成されている。トランジスタは第一の層間絶縁膜213で被覆されている。
【0137】
ソース209に接続するように第一の層間絶縁膜213の所定の領域に設けられたコンタクト孔を多結晶シリコン214で充填している。多結晶シリコン214の表面には、金属シリサイド215が設けられている。金属シリサイド215に接続するように窒化タングステンおよびタングステンからなるビット線216が設けられている。ビット線216は第二の層間絶縁膜219で被覆されている。
【0138】
トランジスタのドレイン208及び212に接続するように、第一の層間絶縁膜213及び第二の層間絶縁膜219の所定の領域にコンタクト孔を設けた後にシリコンで充填されたシリコンプラグ220が形成されている。シリコンプラグ220の上部には金属からなる導体プラグ221が設けられている。
【0139】
導体プラグ221に接続するようにキャパシタが形成される。下部電極を形成するための第三の層間絶縁膜222a、第四の層間絶縁膜222bが第二の層間絶縁膜219上に積層して設けられる。第四の層間絶縁膜222bを周辺回路領域IIに残存させ、メモリセル領域Iに王冠型の下部電極223を形成した後、メモリセル領域Iの第四の層間絶縁膜222bは除去されている。誘電体膜224が下部電極223の内壁、及び第四の層間絶縁膜222bを除去して露出した下部電極223の外壁を覆うように設けられ、キャパシタが構成されている。
【0140】
下部電極223の上端部側面の一部には、支持膜222cが設けられている。支持膜222cは隣接する複数の下部電極の一部を接続するように設けれており、これにより、機械的強度を増加させて下部電極自身の倒壊を回避している。支持膜222cの下方は空間となっているので、その空間内に露出している下部電極表面にも誘電体膜224及び上部電極225が設けられている。
【0141】
図18には301と302の二つのキャパシタが示されている。下部電極223には段差被覆性に優れたCVD法で形成する窒化チタン(TiN)を用いる。キャパシタは、第五の層間絶縁膜226で被覆されている。なお、プラグ材料は、キャパシタの下部電極に合わせて変更可能であり、シリコンに限ることはなく、キャパシタの下部電極と同一材料もしくは異なる材料の金属で構成することもできる。また、誘電体膜224及び上部電極225の詳細な構成については後述する製造工程で説明する。
【0142】
一方、第二のpウエル204には、周辺回路領域IIを構成するトランジスタがソース209、ドレイン212、ゲート絶縁膜210、ゲート電極211からなって設けられている。ドレイン212に接続するように、第一の層間絶縁膜213の所定の領域に設けられたコンタクト孔を金属シリサイド216およびタングステン217で充填している。
【0143】
タングステン217に接続するように、窒化タングステンおよびタングステンからなる第一の配線層218が設けられている。該第一の配線層218の一部は、第二の層間絶縁膜219、第三の層間絶縁膜222a、第四の層間絶縁膜222bおよび第五の層間絶縁膜226を貫通して設けられる金属ビアプラグ227を介してアルミニウムまたは銅からなる第二の配線層230に接続されている。
【0144】
また、メモリセル領域に設けられたキャパシタの上部電極225は、一部の領域で周辺回路領域IIに引き出し配線228として引き出され、第五の層間絶縁膜226の所定の領域に形成された金属プラグ229を介して、アルミニウムまたは銅からなる第二の配線層230に接続されている。以下、層間絶縁膜の形成、コンタクトの形成、配線層の形成を必要に応じて繰り返し、DRAMを構成している。
【0145】
図19は、図18の断面模式図において、X−Xで示した位置の平面図であり、誘電体膜及び上部電極は省略している。また、図19のY−Yで示した線分領域は、図18のX−X線分領域に相当している。個々の下部電極223の外側の全領域を覆う支持膜222cには複数の下部電極に跨るように、メモリセル領域全域にわたり複数の開口231が設けられている。個々の下部電極223は、その外周の一部がいずれかの開口231に接する構成となる。一般的に、従来技術では集積度が高くなり、セルが微細化されると、キャパシタの下部電極の縦/横比が大きくなり、下部電極を支持する手段が備えられていないと、下部電極は製造途中で倒壊してしまうことになる。これに対して、本実施例では、開口以外の支持膜は連続しているので、個々の下部電極は支持膜を介して連結されることになり、縦/横比の横方向の長さを拡大できるので下部電極自身の倒壊を回避することができる。
【0146】
図19ではキャパシタ301と302が対向する間の領域を中心にして6つの下部電極に跨るように開口231が設けられている例を示している。したがって、図18においても、図19に対応してキャパシタ301の上部、302の上部、および301と302の間の上部には支持膜が設けられていない構成となっている。
【0147】
このように、支持膜が設けられることで、支持膜下の下部電極表面に誘電体膜や上部電極を形成するためには、より一層カバレッジの優れた成膜方法が必要となる。
【0148】
以下、上記半導体記憶装置となるDRAMの製造工程の内、キャパシタ製造工程以外の工程は省略し、本実施例に係わるキャパシタの製造工程を抜き出して説明することとする。図20に、図18に示す一つのキャパシタについて工程断面図を示す。なお、説明のため、半導体基板201上のトランジスタや第一の層間絶縁膜等は省略している。
【0149】
まず、図20に示すように、単結晶シリコンからなる半導体基板201上に第二の層間絶縁膜219を形成した。その後、所定の位置にコンタクトホールを開口後、バリヤメタル221aおよびメタル221bを全面に形成した。次に、CMP法を用いて第二の層間絶縁膜上に形成されているバリヤメタル221aおよびメタル221bを除去して、導体プラグ221を形成した。続いて、窒化シリコン膜からなる第三の層間絶縁膜222a、酸化シリコン膜からなる第四の層間絶縁膜222bおよび窒化シリコン膜からなる支持膜222cを全面に積層形成した。
【0150】
次に、図21に示すように、リソグラフィ技術とドライエッチング技術を用いて、支持膜222c、第四の層間絶縁膜222bおよび第三の層間絶縁膜222aにシリンダホール232を形成した。シリンダホールは平面視で直径60nmの円となるように形成した。また、隣接するシリンダホールとの最近接間隔も60nmとなるように形成した。これによりシリンダホール底面には導体プラグ221の上面が露出する。
【0151】
次に、図22に示すように、シリンダホール232の内面を含む全面に、キャパシタの下部電極材料となるTiN膜223aを形成した。TiN膜は、TiCl4とNH3を原料ガスとするCVD法により、形成温度380〜650℃の範囲で形成することができる。本実施例では450℃で形成した。膜厚は10nmとした。なお、TiN膜は、上記原料ガスを用いてALD法により形成することもできる。TiN膜223aを形成することにより、新たなシリンダホール232aが形成される。
【0152】
次に、図23に示すように、シリンダホール232aを埋設するように、シリコン酸化膜などの保護膜234を全面に形成した。その後、CMP法により支持膜222cの上面に形成されている保護膜234およびTiN膜223aを除去して下部電極223を形成した。
【0153】
次に、図24に示すように、支持膜222cに開口231を形成した。図19の平面図に示したように、開口231のパターンは、下部電極の内側に残存している保護膜234の一部と、下部電極223の一部と、第四の層間絶縁膜222bの一部とに跨るように形成する。したがって、開口231を形成するドライエッチングでは、第四の層間絶縁膜222b上に形成されている支持膜222cの他、保護膜234および下部電極223も上端の一部が除去される。
【0154】
次に、図25に示すように、開口231内に露出した第四の層間絶縁膜222bを除去した。例えば、フッ化水素酸溶液(HF液)を用いてエッチングすると、支持膜222cは窒化シリコン膜で形成されているので、ほとんどエッチングされないが、酸化シリコン膜で形成されている第四の層間絶縁膜222bおよび保護膜234は全て除去される。溶液エッチングなので開口231の直下のみならず、支持膜222cの下に位置する酸化シリコン膜も除去される。これにより、下部電極223と下部電極223を支持する支持膜222cが中空状態で残存し、下部電極223表面が露出している。
【0155】
このエッチング時、窒化シリコン膜からなる第三の層間絶縁膜222aはエッチングストッパーとして機能し、第二の層間絶縁膜219がエッチングされるのを防止している。
【0156】
次に、図26に示すように、誘電体膜224および第一の上部電極225aとなるTiN膜を形成した。第一の上部電極225aおよび誘電体膜224は、第一実施例に記載したTZ構造、もしくは第二〜四実施例に記載したTZT構造として、ALD法を用いて形成することができる。これらTZ構造及びTZT構造は、各パラメータを所望の特性が得られるように最適化される。ALD法で形成する膜は段差被覆性に優れているので、誘電体膜224および第一の上部電極225aは中空状態で露出している下部電極表面のいずれの部位にも形成される。
【0157】
次に、図27に示すように、第二の上部電極225bとなるTiN膜を形成した。下部電極の場合と同様に、TiCl4とNH3を原料ガスとするCVD法により、温度450℃で形成した。膜厚は10nmとした。CVD法で形成するTiN膜も極めて段差被覆性が良いので、中空状態の空間に入り込んで第一の上部電極225a表面のいずれの部位にも形成することができる。
【0158】
第二の上部電極225bは、450℃で形成しているが、誘電体膜224は第一の上部電極225aとなるTiN膜で保護された状態で熱処理を受けるので、前述の実施例で説明したように、誘電体膜224にクラックが発生してリーク電流が増大する問題を回避することができる。
【0159】
次に、図28に示すように、第三の上部電極225cとなるボロンドープシリコンゲルマニウム膜(B−SiGe膜)を形成した。図27の第二の上部電極225bを形成した段階では、中空状態が解消されておらず、至る所に空間が残存している。この状態でプレートとなるタングステンをPVD法で形成すると、PVD法は段差被覆性が悪いために、空間を埋めきることができず、半導体記憶装置が完成した段階でも、キャパシタの周囲には空間が残存することとなる。このような空間の残存は機械的強度の低下を招き、後工程のパッケージング時に生じるストレスによりキャパシタの特性が変動する問題をもたらす。したがって、B−SiGe膜を形成することの目的は、残存している空間を埋め込んで消滅させ、機械的ストレスに対する耐性を向上させることにある。
【0160】
B−SiGe膜は、ゲルマン(GeH4)とモノシラン(SiH4)と三塩化ホウ素(BCl3)を原料ガスとするCVD法により形成することができる。この方法により形成するB−SiGe膜は段差被覆性に優れており、中空空間を埋設することができる。ただし、このCVD法では形成温度として420〜500℃を必要とし、生産性を考慮してバッチ方式で形成する場合には6時間程度の熱処理がキャパシタに加えられることとなる。第四実施例で説明したPAは、この工程における熱処理を想定したものである。第三の上部電極225cとなるB−SiGe膜を形成する工程において、最大500℃の熱処理が加わったとしても、第三実施例で述べた方法を採用することにより、EOTを確保しつつ低リーク電流のキャパシタを提供することができる。
【0161】
第三の上部電極225cとなるB−SiGe膜を形成した後、メモリセル領域全体を覆う給電プレートとして用いるため、第四の上部電極225dとなるタングステン膜(W膜)を形成した。W膜は、温度が25〜300℃のPVD法で形成するので、誘電体膜のリーク電流が増大するような熱的影響は及ぼさない。以下、図18に示したように、第五の層間絶縁膜226の形成工程およびその後の工程を実施してDRAMからなる半導体記憶装置を製造する。
【0162】
上記のように、全体構成となる図18に示した上部電極225は、詳細構成となる図28に示したように、第一の上部電極225aとなるTiN膜と、第二の上部電極225bとなるTiN膜と、第三の上部電極となるB−SiGe膜と、第四の上部電極225dとなるW膜で構成される。
【0163】
なお、本実施例で説明したDRAMは、超高密度の最先端DRAMを形成する場合の構成とその製造方法であって、平坦キャパシタや立体構造であっても倒壊防止用の支持膜222cを必要としないキャパシタを用いる場合には、上記のB−SiGeの形成工程は不要となり500℃のPAの影響は軽減される。
【0164】
以上、説明したように、本実施例によれば、誘電体膜となるZrO膜の表面を第一の上部電極となるTiN膜で保護した状態で、450℃の熱処理を伴う第二の上部電極を形成することにより、ZrO膜にクラックが発生することを回避して、EOTを確保しつつ低リーク電流のキャパシタを提供できる効果がある。
【符号の説明】
【0165】
101 シリコン単結晶半導体基板
102 下部電極
103 誘電体膜
104 上部電極
105a、105b、105c 結晶粒
105d 粒界
107 下部電極
109 上部電極
110a 微結晶ZrO膜
110b 多結晶ZrO膜
111 クラック
112 上部電極
115a TiO膜
115、115b、115c ZrO膜
116a 第一の上部電極
116b 第二の上部電極
201 p型シリコン基板
202 nウエル
203、204 pウエル
205 素子分離領域
206、207 スイッチングトランジスタ
208、212 ドレイン
209 ソース
210 ゲート絶縁膜
211 ゲート電極
213、219、222a、222b、226 層間絶縁膜
214 多結晶シリコン
215 金属シリサイド
216 ビット線
217 タングステン
218、230 配線層
220 シリコンプラグ
221 導体プラグ
221a バリヤメタル
221b メタル
222c 支持膜
223 下部電極
223a TiN膜
224 誘電体膜
225 支持膜
225a 第一の上部電極
225b 第二の上部電極
225c 第三の上部電極
225d 第四の上部電極
227 金属ビアプラグ
228 引き出し配線
229 金属プラグ
231 開口
232、232a シリンダホール
234 保護膜
301、302 キャパシタ
I メモリセル領域
II 周辺回路領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、
窒化チタン膜からなる下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜上に窒化チタン膜を含む上部電極を形成する工程と、
を含むキャパシタの形成工程を備えた半導体記憶装置の製造方法であって、
前記誘電体膜の少なくとも上部電極と接する膜を、原子層堆積(ALD)法で成膜し、
該成膜された膜上に、該膜の前記ALD法の成膜温度を70℃以上超える温度を付加することなく、第一の窒化チタン膜を成膜し、
前記上部電極の形成工程が、前記第一の窒化チタン膜を熱処理によって第一の多結晶窒化チタンを含む第一の上部電極にする工程と、
前記第一の上部電極表面に多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極を形成する工程と、
を含む半導体記憶装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板上に、
窒化チタン膜からなる下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に誘電体膜を形成する工程と、
前記誘電体膜上に窒化チタン膜を含む上部電極を形成する工程と、
を含むキャパシタの形成工程を備えた半導体記憶装置の製造方法であって、
前記誘電体膜の少なくとも上部電極と接する膜を、原子層堆積(ALD)法で成膜し、
該成膜された膜上に、熱処理を経ることなく、第一の窒化チタン膜をALD法で成膜し、
前記上部電極の形成工程が、前記第一の窒化チタン膜を熱処理によって第一の多結晶窒化チタン膜を含む第一の上部電極にする工程と、
前記第一の上部電極表面に多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極を形成する工程と、
を含む半導体記憶装置の製造方法。
【請求項3】
前記誘電体膜は、酸化ジルコニウムの単層膜であり、
前記ALD法での成膜段階で微結晶状態であり、
前記第一の窒化チタン膜を第一の多結晶窒化チタン膜を含む第一の上部電極とする熱処理により2次的な結晶粒成長した多結晶状態となる請求項1又は2に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項4】
前記誘電体膜は、下部電極上に形成される酸化チタン膜からなる第一の誘電体膜と、多結晶酸化ジルコニウム膜からなる第二の誘電体膜の積層構造であり、
前記第二の誘電体膜は、前記ALD法での成膜段階で微結晶状態であり、
前記第一の窒化チタン膜を第一の多結晶窒化チタン膜を含む第一の上部電極とする熱処理により2次的な結晶粒成長した多結晶状態となる請求項1又は2に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項5】
前記第一の誘電体膜となる酸化チタン膜の膜厚が、0.4nm以上2nm以下である請求項4に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項6】
前記第一の誘電体膜となる酸化チタン膜は、膜厚が0.4nm以上0.8nm以下であり、非晶質状態で成膜され、前記熱処理後も非晶質である請求項5に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項7】
前記第一の誘電体膜となる酸化チタン膜は、膜厚が1nm以上2nm以下であり、非晶質状態で成膜され、前記熱処理後は多結晶質である請求項5に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項8】
前記多結晶酸化ジルコニウム膜の膜厚は、5nm〜7nmであることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記第一の上部電極となる第一の多結晶窒化チタン膜の膜厚が、1〜2nmの範囲である請求項1乃至8のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項10】
前記下部電極上に誘電体膜を形成する工程から、前記誘電体膜上に第一の窒化チタン膜を成膜する工程まで、プロセス温度が300℃以下に保持される請求項1乃至9のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項11】
前記誘電体膜は、下部電極上に形成される酸化チタン膜からなる第一の誘電体膜と、多結晶酸化ジルコニウム膜からなる第二の誘電体膜と、第二の誘電体膜上に形成された第三の誘電体膜の積層膜からなり、
前記第二の誘電体膜は、前記第三の誘電体膜を形成する前に熱処理により緻密化されている請求項1又は2に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項12】
前記第一の誘電体膜となる酸化チタン膜は、膜厚が0.4nm以上2nm以下である請求項11に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項13】
前記第一の誘電体膜となる酸化チタン膜は、膜厚が0.4nm以上0.8nm以下であり、非晶質状態で成膜され、前記第二の誘電体膜の緻密化のための熱処理後にも非晶質である請求項12に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項14】
前記第一の誘電体膜となる酸化チタン膜は、膜厚が1nm以上2nm以下であり、非晶質状態で成膜され、前記第二の誘電体膜の緻密化のための熱処理後は多結晶である請求項12に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項15】
前記第三の誘電体膜の膜厚は1nm〜1.5nmの範囲であり、前記第三の誘電体膜と前記第二の誘電体膜との合計膜厚が5〜7nmの範囲であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項16】
前記第一の上部電極となる第一の多結晶窒化チタン膜が、1〜2nmの範囲である請求項11乃至15のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項17】
前記第三の誘電体膜は、前記第二の誘電体膜と同一、若しくは異種の誘電体膜であることを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項18】
前記第二の誘電体膜の緻密化のための熱処理工程は、350〜380℃の酸化性雰囲気での熱処理を含む請求項11乃至17のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項19】
前記第三の誘電体膜の形成から、該第三の誘電体膜表面に第一の窒化チタン膜を成膜する工程まで、プロセス温度が300℃以下に保持される請求項11乃至18のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項20】
前記下部電極上に誘電体膜を形成する工程から、前記誘電体膜上に第一の窒化チタン膜を成膜する工程まで、同一の装置内で連続して行う請求項1乃至19のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項21】
前記誘電体膜の全て及び第一の上部電極となる第一の窒化チタン膜の成膜を、成膜温度210℃〜280℃のALD法で実施する請求項1乃至20のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項22】
前記第二の上部電極を形成する工程における前記多結晶窒化チタン膜の成膜は、温度が380℃〜600℃のCVD法で行われることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項23】
前記第二の上部電極を形成する工程が、前記第一の上部電極となる第一の窒化チタン膜を多結晶状態に変換する工程の熱処理を兼ねることを特徴とする請求項22に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項24】
前記誘電体膜のSiO2等価換算膜厚(EOT)が0.9nm以下である請求項1乃至23のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項25】
前記下部電極は立体構造である請求項1乃至24のいずれか一に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項26】
前記第二の上部電極を形成する工程の後、ボロンを含有するシリコンゲルマニウム膜からなる第三の上部電極を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項25に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項27】
前記ボロンを含有するシリコンゲルマニウム膜は、成膜温度が400℃〜500℃のCVD法で形成されることを特徴とする請求項26に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項28】
半導体基板上に、
前記半導体基板に接続される下部電極と、
前記下部電極に接して前記下部電極を覆う誘電体膜と、
前記誘電体膜に接して前記誘電体膜を覆う上部電極と
を有するキャパシタを含む半導体記憶装置であって、
前記上部電極は、前記誘電体膜に接する多結晶窒化チタン膜を含む第一の上部電極と、前記第一の上部電極上に積層される多結晶窒化チタン膜を含む第二の上部電極とを含んで構成される半導体記憶装置。
【請求項29】
前記誘電体膜は、多結晶酸化ジルコニウム膜からなることを特徴とする請求項28に記載の半導体記憶装置。
【請求項30】
前記多結晶酸化ジルコニウム膜の膜厚は、5nm以上7nm以下であることを特徴とする請求項29に記載の半導体記憶装置。
【請求項31】
前記誘電体膜は、前記下部電極に接する酸化チタン膜からなる第一の誘電体膜と、前記第一の誘電体膜上に設けられ多結晶酸化ジルコニウム膜からなる第二の誘電体膜を含むことを特徴とする請求項28に記載の半導体記憶装置。
【請求項32】
前記酸化チタン膜からなる第一の誘電体膜の膜厚が、0.4nm以上2nm以下である請求項31に記載の半導体記憶装置。
【請求項33】
前記第一の誘電体膜の膜厚が0.4nm〜0.8nmであり、非晶質酸化チタン膜であることを特徴とする請求項32に記載の半導体記憶装置。
【請求項34】
前記第一の誘電体膜の膜厚が1nm〜2nmであり、多結晶酸化チタン膜であることを特徴とする請求項32に記載の半導体記憶装置。
【請求項35】
前記誘電体膜のSiO2等価換算膜厚(EOT)が0.9nm以下である請求項28乃至34のいずれか一に記載の半導体記憶装置。
【請求項36】
前記第一の上部電極となる多結晶窒化チタン膜の膜厚は、1nm〜2nmであることを特徴とする請求項28乃至35のいずれか一に記載の半導体記憶装置。
【請求項37】
前記下部電極は立体構造である請求項28乃至36のいずれか一に記載の半導体記憶装置。
【請求項38】
前記第二の上部電極の上に、ボロンを含有するシリコンゲルマニウム膜からなる第三の上部電極が設けられていることを特徴とする請求項37に記載の半導体記憶装置。
【請求項39】
前記キャパシタに±1Vの範囲の電圧を印加したときのリーク電流が、1E−7(A/cm2)以下である請求項28乃至38のいずれか一に記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−104551(P2012−104551A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249791(P2010−249791)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】