説明

半導体集積回路およびそれを内蔵した高周波モジュール

【課題】RF送信出力信号の高調波成分を低減する。
【解決手段】半導体集積回路110のアンテナスイッチ100の送信スイッチ104は送信端子102と入出力端子101の間にS・D電流経路が接続されゲート端子Gが送信制御端子108に接続された送信電界効果トランジスタを含み、受信スイッチ105は入出力端子101と受信端子103の間にS・D電流経路が接続されゲート端子Gが受信制御端子109に接続された受信電界効果トランジスタを含む。送信と受信とのnチャネル型MOS電界効果トランジスタは、シリコンオンインシュレータ(SOI)構造で形成される。アンテナスイッチの高調波成分を低減する値に設定された電圧発生回路10の基板電圧は、SOI構造の支持シリコン基板に接続された端子108、109に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナスイッチを含む半導体集積回路およびそれを内蔵した高周波モジュールに関し、特にRF送信出力信号の高調波成分を低減するのに有益な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末やWLAN等の送受信機に使用される送受信スイッチのためのアンテナスイッチとしては、PINダイオードを使用したアンテナスイッチが一般的であったが、近年では、FET(Field Effect Transistor)、特に低いオン抵抗を持ったヘテロ接合構造のHEMT(High Electron Mobility Transistor)がアンテナスイッチに使用されている。しかし、ヘテロ接合を実現するためには、比較的高価な化合物半導体製造プロセスが必要とされる。更に最近では、製造コストの低減等の要求に応えるために、スイッチングトランジスタとしてシリコン半導体製造プロセスが適用可能なSOI−MOSFETを使用される傾向にある。尚、SOIは、Silicon On Insulatorの略である。
【0003】
またFETの使用によってアンテナスイッチは、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC:Monolithic Microwave Integrated Circuit)として集積化されることも可能である。アンテナスイッチではnチャンネル型ディプレッション型FETのSOI−MOSFETを使用する場合には、オンとすべきFETのゲート・ソース間にしきい値電圧以上の高電位差を印加する一方、オフとすべきFETのゲート・ソース間にしきい値以下の低電位差を印加する。
【0004】
SOI−MOSFETを使用して構成されたアンテナスイッチでは、支持基板としてシリコン(Si)基板が使用されるが、SOS−MOSFETを使用して構成されたアンテナスイッチでは、支持基板としてサファイアが使用されることにより、ソース−ドレイン拡散層に付随する基板容量が低減され、2次高調波歪が低減されることが可能である。尚、SOSは、Silicon On Sapphireの略である。
【0005】
更に下記特許文献1には、RFスイッチに使用されるSOI(SOS)−MOSFETのゲート酸化膜近傍のチャネル領域にキャリアと逆の極性の蓄積電荷を除去又は制御することによって非線形応答、高調波歪みおよび相互変調歪みの影響を軽減するために、SOI−MOSFETのボディに蓄積電荷シンク(ACS)が電気的に接続されることが記載されている。n型チャネルSOI−MOSFETにおいては、絶縁基板上に形成されたシリコン層へのn型ドーパントの高濃度のイオン注入によってソースとドレインとが形成され、ソースとドレインとの間のシリコン層はp型ドーパントによって低濃度でドープされることでボディが形成される。ボディ上にはゲート酸化膜と金属またはポリシリコンの層からなるゲートとが形成される。ゲート酸化膜直下でソースとドレインとの間のP−領域からなるボディに電気的に接続されたP−領域からなる蓄積電荷シンク(ACS)にはP+領域からなる電気コンタクト領域が接続され、この電気コンタクト領域にはACS端子が電気的に接続される。ACS端子がゲート端子に直接またはダイオードを介して接続されるか又はACS端子に制御回路から生成されるACSバイアス電圧が供給されることによって、上述の蓄積電荷がACS端子によって除去されることが可能となる。
【0006】
また更に下記特許文献1には、SPDT(Single Pole Double Throw)RFスイッチ回路が記載され、共通ノードと第1のRF入力ノードとの間に第1の受信スイッチMOSFETが接続され、共通ノードと第2のRF入力ノードとの間に第2の受信スイッチMOSFETが接続され、第1のRF入力ノードと接地電位との間に第1のシャントスイッチMOSFETが接続され、第2のRF入力ノードと接地電位との間に第2のシャントスイッチMOSFETが接続され、これらのスイッチMOSFETをSOI−MOSFETにより構成することも記載されている。第1の受信スイッチMOSFETのゲート端子と第2のシャントスイッチMOSFETのゲート端子とに第1の制御信号が供給され、第2の受信スイッチMOSFETのゲート端子と第1のシャントスイッチMOSFETのゲート端子とに第2の制御信号が供給される。更に第1の受信スイッチMOSFETのACS端子と第2のシャントスイッチMOSFETのACS端子とに第1のACS制御信号が供給され、また第2の受信スイッチMOSFETのACS端子と第1のシャントスイッチMOSFETのACS端子とに第2のACS制御信号が供給される。
【0007】
また下記特許文献2には、上記特許文献1に記載のSOI−MOSFETではなくバルク型MOSFETと呼ばれる一般的なMOSFETをスイッチとした高周波スイッチ回路が記載されている。スルーFETやシャントFETのゲートにハイレベルの制御信号が入力されてオンする際には、ゲートと制御信号端子との間に接続された抵抗とトランジスタとの並列接続とバックゲートと接地電位との間に接続された抵抗とトランジスタとの並列接続とで、全てのトランジスタはオフ状態とされ、高周波信号はスルーFETやシャントFETのドレイン側からソース側に小さい損失で伝達される。それに対して、スルーFETやシャントFETのゲートにローレベルの制御信号が入力されてオフする際には、ゲートと制御信号端子との間に接続された抵抗とトランジスタとの並列接続とバックゲートと接地電位との間に接続された抵抗とトランジスタとの並列接続とで、全てのトランジスタはオン状態とされ、高周波信号はスルーFETやシャントFETのドレイン側から制御信号端子と接地電位とに伝達されるので、ソース側への伝達量が低減され、オフ時のアイソレーション特性が向上されることが可能となる。
【0008】
また更に下記特許文献3には、上記特許文献1に記載のSOI−MOSFETではなくMOS型やジャンクション型のSi・FETをスイッチとした高周波スイッチ回路が記載されている。高周波スイッチ回路で共通ノードと第1のRF端子との間に第1のトランジスタが接続され、共通ノードと第2のRF端子との間に第2のトランジスタが接続され、第1のRF端子と接地電位との間に第3のトランジスタが接続され、第2のRF端子と接地電位との間に第4のトランジスタが接続されている。第1のトランジスタのゲートと第4のトランジスタのゲートとはローレベル電圧が供給されオフとされ、第2のトランジスタのゲート端子と第3のトランジスタのゲートとはハイレベル電圧が供給されオンとされる。第1乃至第4の全てのトランジスタのバックゲートと接地電位との間に抵抗が接続されているので、オフとされる第1のトランジスタと第4のトランジスタの各バックゲートから接地電位への高周波信号の漏洩を低減することが可能となる。
【0009】
また下記特許文献4には、挿入損失およびアイソレーション特性が向上したスイッチ回路装置が記載され、このスイッチ回路装置は、ゲートが共通接続されドレイン・ソース経路が直列接続された2個のnチャネルMOSFETと、ゲートが2個のnチャネルMOSFETのゲートと接続されドレインが2個のnチャネルMOSFETの共通接続ノードに接続されたpチャネルMOSFETと、ゲート印加制御電圧に応答してpチャネルMOSFETのソース印加電圧を切り替える電圧切替回路とを含んでいる。このスイッチ回路装置では、2個のnチャネルMOSFETのバックゲートは接地され、pチャネルMOSFETのバックゲートには電源電圧Vddが印加されている。
【0010】
また更に、下記特許文献5には、MOSトランジスタスイッチとホールドキャパシタとを含んだトラックホールド回路の高調波歪を減少するために、メモリとデジタルアナログコンバータとからなる定電圧回路で生成したバイアス電圧をMOSトランジスタスイッチのバルク端子(基板端子)に供給することが記載されている。個々のトラックホールド回路のあるいは製造ロット毎のサンプルについて、実際のバルク端子のバイアス電圧と歪の関係を調べ、最適点をメモリに記憶するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2009−500868号 公報
【特許文献2】特開2008−270964号 公報
【特許文献3】特開10−242826号 公報
【特許文献4】特開2007−329646号 公報
【特許文献5】特開2001−126492号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したようにアンテナスイッチにおいて、高価な化合物半導体製造プロセスを不必要するためシリコン半導体製造プロセスが適用可能なSOI−MOSFETを使用することで、製造コストの低減が可能となる。
【0013】
しかし、本発明に先立った本発明者等の検討によって、アンテナスイッチにSOI−MOSFETを使用した場合には、化合物半導体トランジスタと比較して高調波歪みが増大すると言う問題が明らかとされた。
【0014】
すなわち、アンテナスイッチが送信動作を実行する場合には、送信スイッチ回路がオン状態とされる一方、オフ状態とされた受信スイッチ回路のオフ容量Coffの電圧依存性が高調波歪みを発生させる原因となる。送信動作では、送信スイッチ回路がオン状態であるので、送信端子に印加される比較的大振幅の送信信号が送信スイッチ回路を介してアンテナ端子に供給されるので、アンテナ端子と受信端子の間に接続されたオフ状態の受信スイッチ回路にも大振幅の送信信号が印加される。オフ状態の受信スイッチ回路は受信スイッチ回路のスイッチトランジスタ等の寄生容量素子からなるオフ容量Coffを持つので、オフ容量Coffに大振幅の送信信号が印加される。従って、オフ容量Coffの電圧依存性が、アンテナスイッチの高調波歪みを決定することになる。
【0015】
図6は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたアンテナスイッチを構成するSOI−MOSFETのデバイス構造を示す図である。
【0016】
図6に示したSOI−MOSFETでは、上記特許文献1の記載のSOI−MOSFETと同様に、支持基板としてのシリコン基板(Si)Subの表面上には絶縁物(I)としての埋め込み二酸化シリコン膜層Boxが形成され、埋め込み二酸化シリコン膜層Boxの表面上(On)にはシリコン層Si_Lyが形成されている。nチャネルSOI−MOSFETを形成するために、最初からシリコン層Si_Lyはp型ドーパントによって低濃度でドープされている。
【0017】
シリコン層Si_Lyの表面でゲート酸化膜G_Oxとポリシリコン層のゲート電極G_Elとがパターニングされた後に、パターニングされたゲート酸化膜G_Oxとゲート電極G_Elとをマスクとしたn型ドーパントによるイオン打ち込みによってシリコン層Si_Lyにn型不純物領域のソース領域SCとドレイン領域DRとが形成される。ゲート酸化膜G_Ox直下でソース領域SCとドレイン領域DRとによって挟まれたp型にドープされたシリコン層Si_Lyはバックゲートとも呼ばれるボディ(B)として機能する。このボディ(B)で白の部分DPは空乏層であり、この空乏層DPの内部ではキャリアのホールは存在せずにイオン化されたp型ドーパントの原子核が存在している。従って、ゲート酸化膜G_Ox直下でソース領域SCとドレイン領域DRとによって挟まれたp型にドープされたシリコン層Si_Lyで、空乏層DP以外の部分が電気的に中性なボディ(B)として機能するものである。すなわち、電気的に中性なボディ(B)の内部では、キャリアとしてのホールによる正電荷量とイオン化されたp型ドーパントの原子核による負電荷量はバランスされている。
【0018】
図6に示したデバイス構造のSOI−MOSFETにおいては、下記のような寄生容量が存在することになる。
【0019】
最初に、ソース電極602(S)とドレイン電極603(D)との間には、n型不純物領域のソース領域SCとゲート酸化膜G_Oxとゲート電極G_Elからなるソース・ゲート間MOS寄生容量Cgsとゲート電極G_Elとゲート酸化膜G_Oxとn型不純物領域のドレイン領域DRからなるゲート・ドレイン間MOS寄生容量Cgdとの直列接続が存在する。
【0020】
次に、ソース電極602(S)とドレイン電極603(D)との間には、n型不純物領域のソース領域SCと空乏層DPとn型不純物領域のドレイン領域DRからなるソース・ドレイン間寄生容量Cdsが存在する。
【0021】
次に、ソース電極602(S)とドレイン電極603(D)との間には、n型不純物領域のソース領域SCと空乏層DPとボディ(B)からなるソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ(B)と空乏層DPとn型不純物領域のドレイン領域DRからなるボディ・ドレイン間寄生容量Cbdとの直列接続が存在する。
【0022】
更に、ソース電極602(S)とシリコン基板(Si)Subとの間には、n型不純物領域のソース領域SCと埋め込み二酸化シリコン膜層Boxとシリコン基板(Si)Subからなるソース・基板間寄生容量Cssubが存在する。また、ボディ(B)とシリコン基板(Si)Subとの間には、ボディ(B)と埋め込み二酸化シリコン膜層Boxとシリコン基板(Si)Subとからなるボディ(B)・基板間寄生容量Cbsubが存在する。また更に、ドレイン電極603(D)とシリコン基板(Si)Subとの間には、n型不純物領域のドレイン領域DRと埋め込み二酸化シリコン膜層Boxとシリコン基板(Si)Subからなるドレイン・基板間寄生容量Cdsubが存在する。
【0023】
最後に、シリコン基板(Si)Subの主表面と裏面のシリコン基板電極604との間には、基板容量31(Csub)と基板抵抗32(Rsub)との並列接続が存在する。
【0024】
ここで、埋め込み二酸化シリコン膜層Boxの膜厚が極めて大きく形成されているので、ソース・基板間寄生容量Cssubとボディ(B)・基板間寄生容量Cbsubとドレイン・基板間寄生容量Cdsubの各寄生容量の値は小さいものとして無視されることができる。また、ソース・ゲート間MOS寄生容量Cgsとゲート・ドレイン間MOS寄生容量Cgdは等しい容量値と近似することができ、ソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ・ドレイン間寄生容量Cbdは等しい容量値と近似することができる。
【0025】
従って、図6に示したデバイス構造のSOI−MOSFETのオフ状態でのソース電極602(S)とドレイン電極603(D)との間のオフ容量Coffは、次式で与えられる。
【0026】
【数1】

【0027】
上記(1)式の第3項の1Cbs/2は、電気的に中性のボディ(B)とソースおよびドレインの間の寄生容量である。一方、ヘテロ接合によるスイッチングトランジスタを使用する場合は、このトランジスタは極めて高抵抗率の化合物半導体基板に形成される。従って、この場合の化合物半導体を使用するアンテナスイッチには、SOI−MOSFETを使用するアンテナスイッチの電気的に中性のボディに対応する半導体領域が存在しない。その結果、アンテナスイッチにSOI−MOSFETを使用する場合は、化合物半導体を使用するアンテナスイッチと比較して、オフ容量Coffに上記(1)式の第3項が追加されるので、高調波歪みが増大するものである。
【0028】
上記(1)式と比較して上記特許文献1には、下記のように説明されている。
【0029】
すなわち、上記特許文献1の記載によれば、オフ状態のSOI−MOSFETでは、ゲートバイアス電圧によってゲート酸化膜近傍のチャネル領域に発生する蓄積電荷による低いボディインピーダンス(p型の導電性)が存在する。従って、ドレインとソースとの間に電圧が印加される場合、ソース・ボディ間接合キャパシタと低いボディインピーダンス(p型の導電性)とドレイン・ボディ間接合キャパシタを介して高周波電流がSOI−MOSFETを貫いて流れる。これを解消するために、ボディに蓄積電荷シンク(ACS)が接続され、蓄積電荷がACSによって除去される。
【0030】
上記特許文献1には、上記(1)式の第3項のCbsに対応するソース・ボディ間接合キャパシタとドレイン・ボディ間接合キャパシタの各PN接合の空乏層幅の変化による容量の電圧依存性とオフ容量Coffへの影響が議論されている。しかし、この影響の相対的な寄与は複雑であり、蓄積電荷の削除、除去等によりオフ容量Coffの非線形な挙動の全体的な改善をもたらすとしている。
【0031】
また、上記特許文献1には、上記(1)式の第1項のCgsに対応するゲート・ソース間キャパシタとゲート・ドレイン間キャパシタとは電圧に僅かしか依存せず高調波発生および相互変調歪み特性に悪影響を及ぼす非線形特性に有意に寄与しないと記載される一方、これらの容量の相対的な寄与は複雑であり、蓄積電荷の削除、除去等によりオフ容量Coffの非線形な挙動の全体的な改善をもたらすとしている。
【0032】
一方、本発明者等は本発明に先立って図6に示すデバイス構造のSOI−MOSFETにおいて上記特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンク(ACS)の接続による蓄積電荷の除去技術を適用した場合の上記(1)式によって与えられるオフ容量Coffの電圧依存性を、詳細に検討した。
【0033】
図8は、本発明者等は本発明に先立って図6に示したデバイス構造のSOI−MOSFETにおいて上記特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンク(ACS)の接続による蓄積電荷の除去技術を適用した場合の上記(1)式によって与えられるオフ容量Coffの電圧依存性を示す図である。
【0034】
図8の左には、上記(1)式の第1項の1Cgs/2と上記(1)式の第2項のCdsの和の容量のドレイン・ソース間電圧Vdsの依存性が示されている。ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近で和の容量は最小値となる一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルトまたは−2.4ボルトの付近で和の容量は増大した後、飽和状態となる。このメカニズムの原因は、以下のように推測される。
【0035】
すなわち、ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近では、ソース電極602(S)とドレイン電極603(D)の間に直列接続されたソース・ゲート間MOS寄生容量Cgsとゲート・ドレイン間MOS寄生容量Cgdとの各MOS構造はデプリート(枯渇)状態となり、各MOS容量値が最小となる。またドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルトまたは−2.4ボルトの付近では、ソース電極602(S)とドレイン電極603(D)の間に直列接続されたソース・ゲート間MOS寄生容量Cgsとゲート・ドレイン間MOS寄生容量Cgdとの一方と他方とはそれぞれアキュムレーション(蓄積)状態とインバージョン(反転)状態となり、各MOS容量値は最小値よりも増大する。その後、アキュムレーション状態では酸化膜容量と同等となることで、またインバージョン状態ではストロングインバージョン(強反転)状態になることで各MOS容量値は増加しなくなり、飽和状態となる。
【0036】
次に、ソース電極602(S)とドレイン電極603(D)との間のn型不純物領域のソース領域SCと空乏層DPとn型不純物領域のドレイン領域DRとのSIS構造からなるソース・ドレイン間寄生容量Cdsは、ドレイン・ソース間電圧Vdsの変化に対して略一定の容量値を維持する。
【0037】
図8の中央には、上記(1)式の第3項の1Cbs/2に対応するn型不純物領域のソース領域SCと空乏層DPとボディ(B)からなるソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ(B)と空乏層DPとn型不純物領域のドレイン領域DRからなるボディ・ドレイン間寄生容量Cbdの直列接続の容量のドレイン・ソース間電圧Vdsの依存性が示されている。上記特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンク(ACS)の接続による蓄積電荷の除去技術の適用による蓄積電荷の除去によって、ソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ・ドレイン間寄生容量Cbdの直列接続の容量の非線型性は改善されるとされているので、図8の中央に示したソース・ボディ間寄生容量Cbsはドレイン・ソース間電圧Vdsの変化に対して略一定の容量値を維持している。
【0038】
その結果、図8の左に示した上記(1)式の第1項の1Cgs/2と上記(1)式の第2項のCdsの和の容量と図8の中央に示した上記(1)式の第3項の1Cbs/2との総和によって上記(1)式のオフ容量Coffが決定されるので、図8の右に上記(1)式のオフ容量Coffの電圧依存性が示されている。
【0039】
図8の右に示した上記(1)式のオフ容量Coffも、ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近で和の容量は最小値となる一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルト又は−2.4ボルトの付近で和の容量は増大する。従って、送信動作でオフ状態の受信スイッチ回路に大振幅の送信信号が印加され、ドレイン・ソース間電圧Vdsの増大に従いオフ容量Coffが増大するので、高調波歪み特性が劣化するものである。
【0040】
更に上記特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンク(ACS)の接続による蓄積電荷の除去技術では、各SOI−FETの平面構造は、通常必要とされるソース領域とドレイン領域とゲート領域とゲートコンタクト以外にボディにバイアス電圧を供給するためのP+領域の電気的コンタクト領域とP−の領域の蓄積電荷シンク(ACS)とを必要とする。P+領域の電気的コンタクト領域はシリコン半導体製造プロセスに追加製造ステップを必要とする一方、P−の領域の蓄積電荷シンクは各SOI−FETの平面構造でチップ占有面積が増加すると言う問題を有する。アンテナスイッチは多数のSOI−FETによって構成されるので、P−の領域の蓄積電荷シンク(ACS)によるチップ占有面積の増加は相当大きな問題となる。
【0041】
また更に上記特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンク(ACS)の接続による蓄積電荷の除去技術では、支持基板としてのシリコン基板はフローティング状態とされる可能性がある。従って、シリコン基板の電位は不安定となり、アンテナスイッチの高周波特性に種々の悪影響が発生する可能性も存在することが、本発明に先立った本発明者による検討によって明らかとされた。
【0042】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等の検討の結果、なされたものである。
【0043】
従って本発明の目的とするところは、アンテナスイッチにおいて、RF送信出力信号の高調波成分を低減することにある。
【0044】
また他の本発明の目的は、シリコン半導体製造プロセスに製造ステップの追加を不必要とし、チップ占有面積の増加を軽減することにある。
【0045】
また更に他の本発明の目的は、アンテナスイッチの高周波特性の悪影響が発生する可能性を軽減することにある。
【0046】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0048】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態は、送信スイッチ(104)と受信スイッチ(105)と送信端子(102)と入出力端子(101)と受信端子(103)と送信制御端子(106)と受信制御端子(107)とを有するアンテナスイッチ(100)を具備する半導体集積回路(110)である。
【0049】
前記送信スイッチ(104)は、前記送信端子(102)と前記入出力端子(101)の間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子(106)に接続された送信電界効果トランジスタを含む。
【0050】
前記受信スイッチ(105)は、前記入出力端子(101)と前記受信端子(103)の間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子(107)に接続された受信電界効果トランジスタを含む。
【0051】
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの各トランジスタは、支持基板としてのシリコン基板の表面上に形成された絶縁物の表面上に形成されたシリコンからなるシリコンオンインシュレータ構造で形成される。
【0052】
前記半導体集積回路(110)は、前記シリコン基板に供給される基板電圧を生成する電圧発生回路(10)を更に具備する。
【0053】
前記電圧発生回路(10)から生成される前記基板電圧は、前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされる。
【0054】
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧の電圧レベルは、前記アンテナスイッチ(100)の高調波成分を低減する値に設定されたことを特徴とする(図1参照)。
【発明の効果】
【0055】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0056】
すなわち、本発明によれば、アンテナスイッチにおいて、RF送信出力信号の高調波成分を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110の構成を示す図である。
【図2】図2は、アンテナスイッチANT_SWを搭載した本発明の実施の形態4による携帯電話端末の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110の構成を示す図である。
【図4】図4は、図1に示すアンテナスイッチ100の送信スイッチ104と受信スイッチ105とが、それぞれnチャネル型SOI−FETによって構成される様子を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態3によるアンテナスイッチ501を含む半導体集積回路500の構成を示す図である。
【図6】図6は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたアンテナスイッチを構成するSOI−MOSFETのデバイス構造を示す図であり、また図1に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100の送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETのデバイス構造を示す図である。
【図7】図7は、図1に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110で、図6に示したnチャネル型SOI−FETのデバイス構造の支持基板としてのシリコン基板に電圧発生回路10の基板電圧を抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介して供給する際の等価回路を示す図である。
【図8】図8は、本発明者等は本発明に先立って図6に示したデバイス構造のSOI−MOSFETにおいて特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンクの接続による蓄積電荷の除去技術を適用した場合のオフ容量Coffの電圧依存性を示す図である。
【図9】図9は、図6に示す本発明の実施の形態1によるデバイス構造のSOI−MOSFETの支持基板としてのシリコン基板への電圧発生回路10の基板電圧の供給技術を適用した場合のオフ容量Coffの電圧依存性を示す図である。
【図10】図10は、図1に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100と図3に示した本発明の実施の形態2によるアンテナスイッチ100の電圧発生回路10の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号は、それが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0059】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、送信スイッチ(104)と受信スイッチ(105)と送信端子(102)と入出力端子(101)と受信端子(103)と送信制御端子(106)と受信制御端子(107)とを有するアンテナスイッチ(100)を具備する半導体集積回路(110)である。
【0060】
前記送信スイッチ(104)は、前記送信端子(102)と前記入出力端子(101)との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子(106)に接続された送信電界効果トランジスタを含む。
【0061】
前記受信スイッチ(105)は、前記入出力端子(101)と前記受信端子(103)との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子(107)に接続された受信電界効果トランジスタを含む。
【0062】
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの各トランジスタは、支持基板としてのシリコン基板の表面上に形成された絶縁物の表面上に形成されたシリコンからなるシリコンオンインシュレータ構造で形成されたものである。
【0063】
前記半導体集積回路(110)は、前記シリコン基板に供給される基板電圧を生成する電圧発生回路(10)を更に具備する。
【0064】
前記電圧発生回路(10)から生成される前記基板電圧は、前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされたものである。
【0065】
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧の電圧レベルは、前記アンテナスイッチ(100)の高調波成分を低減する値に設定されたことを特徴とするものである(図1参照)。
【0066】
前記実施の形態によれば、アンテナスイッチにおいて、RF送信出力信号の高調波成分を低減することができる。
【0067】
好適な実施の形態では、前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの前記各トランジスタは、nチャネル型MOSトランジスタである。
【0068】
他の好適な実施の形態による半導体集積回路(110)は、抵抗(11)と容量(12)とを有するローパスフィルタを更に具備する。
【0069】
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧は、前記ローパスフィルタ(11、12)を介して前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされたことを特徴とするものである(図1参照)。
【0070】
より好適な実施の形態では、前記アンテナスイッチ(100)と前記電圧発生回路(10)と前記ローパスフィルタ(11、12)とは、前記シリコンオンインシュレータ構造の単一の前記シリコン基板上にモノリシック集積化されたことを特徴とするものである(図1、図3参照)。
【0071】
他のより好適な実施の形態では、前記アンテナスイッチ(501)と前記電圧発生回路(507)と前記ローパスフィルタ(505、506)とは、混成半導体集積回路として構成された前記半導体集積回路(500)の絶縁基板(508)の主表面に搭載されたことを特徴とするものである(図5参照)。
【0072】
具体的な実施の形態では、前記アンテナスイッチ(100)は、送信シャントスイッチ(306)と受信シャントスイッチ(307)とを更に有する。
【0073】
前記送信シャントスイッチ(306)は、前記送信端子(302)と接地電位との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子(309)に接続された送信シャント電界効果トランジスタ(314a〜314h)を含む。
【0074】
前記受信シャントスイッチ(307)は、前記受信端子(303)と接地電位との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子(308)に接続された受信シャント電界効果トランジスタ(315)を含む。
【0075】
前記送信シャント電界効果トランジスタと前記受信シャント電界効果トランジスタとは、前記シリコンオンインシュレータ構造で形成されたことを特徴とするものである(図3参照)。
【0076】
より具体的な実施の形態では、前記送信スイッチ(304)と前記受信スイッチ(305)と前記送信シャントスイッチ(306)の各スイッチは、ソース・ドレイン電流経路が直列接続された複数の電界効果トランジスタを含むことを特徴とするものである(図3参照)。
【0077】
他のより具体的な実施の形態では、前記送信スイッチ(304)と前記受信スイッチ(305)と前記送信シャントスイッチ(306)の前記各スイッチでは、前記ソース・ドレイン電流経路が直列接続された前記複数の電界効果トランジスタの各トランジスタのソースとドレインとの間には抵抗が接続されたことを特徴とするものである(図3参照)。
【0078】
更に他のより具体的な実施の形態では、前記電圧発生回路(10)は、クロック信号(CLK)に応答した容量(82)の充放電によって前記基板電圧を生成することを特徴とするものである(図10参照)。
【0079】
最も具体的な実施の形態では、前記電圧発生回路から生成される前記前記基板電圧の前記電圧レベルによって、前記各トランジスタのソース・ゲート間MOS寄生容量(Cgs)とゲート・ドレイン間MOS寄生容量(Cgd)との第1直列接続容量(1Cgs/2)とソース・ドレイン間寄生容量(Cds)との和の容量(1Cgs/2+Cds)のドレイン・ソース間電圧(Vds)の変化による第1容量電圧依存性が、前記各トランジスタのソース・ボディ間寄生容量(Cbs)とゲート・ボディ間寄生容量(Cbd)との第2直列接続容量(1Cbs/2)のドレイン・ソース間電圧(Vds)の変化による第2容量電圧依存性によって略相殺されることを特徴とするものである(図9参照)。
【0080】
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態は、高周波電力増幅器(AMP1、2)と、アンテナスイッチ(100)を有する半導体集積回路(110)とを具備する高周波モジュール(RF_ML)である。
【0081】
前記アンテナスイッチ(100)は、送信スイッチ(104)と受信スイッチ(105)と送信端子(102)と入出力端子(101)と受信端子(103)と送信制御端子(106)と受信制御端子(107)とを有する。
【0082】
前記高周波電力増幅器(AMP1、2)のRF送信信号は、前記アンテナスイッチ(100)の前記送信端子(102)から前記入出力端子(101)に伝達可能とされる。
【0083】
前記送信スイッチは、前記送信端子と前記入出力端子との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子に接続された送信電界効果トランジスタを含む。
【0084】
前記受信スイッチは、前記入出力端子と前記受信端子との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子に接続された受信電界効果トランジスタを含む。
【0085】
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの各トランジスタは、支持基板としてのシリコン基板の表面上に形成された絶縁物の表面上に形成されたシリコンからなるシリコンオンインシュレータ構造で形成されたものである。
【0086】
前記半導体集積回路は、前記シリコン基板に供給される基板電圧を生成する電圧発生回路を更に有する。
【0087】
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧は、前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされたものである。
【0088】
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧の電圧レベルは、前記アンテナスイッチの高調波成分を低減する値に設定されたことを特徴とするものである(図1参照)。
【0089】
前記実施の形態によれば、アンテナスイッチにおいて、RF送信出力信号の高調波成分を低減することができる。
【0090】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0091】
[実施の形態1]
《アンテナスイッチを含む半導体集積回路の構成》
図1は、本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110の構成を示す図である。
【0092】
図1に示したアンテナスイッチ100は、シングルポールダブルスロー(SPDT)型のアンテナスイッチを構成する。アンテナスイッチの分野では、アンテナが接続される共通の入出力端子はシングルポール(Single Pole)と呼ばれ、受信回路に接続される受信端子と送信回路に接続される送信端子とはスロー(Throw)と呼ばれる。従って図1のアンテナスイッチでは、携帯電話端末に搭載されるアンテナに接続可能とされた入出力端子101はシングルポール(Single Pole)であり、受信端子103と送信端子102との2個の端子はダブルスロー(Double Throw)となる。
【0093】
図1に示す半導体集積回路110は、アンテナスイッチ100と電圧発生回路10と抵抗11と容量12とを含んでいる。図1に示すアンテナスイッチ100は、入出力端子101と送信端子102と受信端子103と送信スイッチ104と受信スイッチ105と送信制御端子106と受信制御端子107と基板電圧供給端子108、109とを含んでいる。
【0094】
図1に示す半導体集積回路110は、SOI構造を有する半導体集積回路であり、支持基板としてのシリコン基板の表面上には絶縁物としての埋め込み二酸化シリコン膜層が形成され、埋め込み二酸化シリコン膜層の表面上に形成されたシリコン層には多数のnチャネル型SOI−FETを含んでいる。更にシリコン層には、電圧発生回路10と抵抗11と容量12とが集積化されている。
【0095】
従って、図1に示すアンテナスイッチ100の送信スイッチ104と受信スイッチ105とは、それぞれnチャネル型SOI−FETによって構成されている。送信端子102と入出力端子101との間には送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETのソース・ドレイン電流経路が接続され、入出力端子101と受信端子103との間に受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETのソース・ドレイン電流経路が接続されている。送信制御端子106に送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETのゲート電極が接続され、受信制御端子107に受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETのゲート電極が接続されている。また送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETが集積化されたSOI構造を有する半導体集積回路110の支持基板としてのシリコン基板の基板電圧供給端子108、109には、電圧発生回路10の出力端子13から生成される基板電圧が抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介して供給可能とされている。
【0096】
《アンテナスイッチによる送受信動作》
アンテナスイッチ100による送信動作で、送信制御端子106にハイレベルの送信制御電圧信号が供給され受信制御端子107にローレベルの受信制御電圧信号が供給されるので、送信端子102と入出力端子101との間の送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETはオン状態となる一方、入出力端子101と受信端子103との間の受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETはオフ状態となる。
【0097】
アンテナスイッチ100による受信動作で、送信制御端子106にローレベルの送信制御電圧信号が供給され受信制御端子107にハイレベルの受信制御電圧信号が供給されるので、送信端子102と入出力端子101との間の送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETはオフ状態となる一方、入出力端子101と受信端子103との間の受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETはオン状態となる。
【0098】
《送信スイッチと受信スイッチの構成》
図4は、図1に示すアンテナスイッチ100の送信スイッチ104と受信スイッチ105とが、それぞれnチャネル型SOI−FETによって構成される様子を示す図である。
【0099】
図4では、送信スイッチ104と受信スイッチ105とのいずれにも動作可能なスイッチ400はnチャネル型SOI−FETを含み、ゲート電極401は送信制御端子106又は受信制御端子107に接続可能とされ、ソース端子402は送信端子102又は受信端子103に接続可能とされ、ドレイン端子403は入出力端子101に接続可能とされる。更にソース端子402とドレイン端子403とは、それぞれソース・基板間寄生容量41(Cssub)とドレイン・基板間寄生容量42(Cdsub)を介して基板容量31(Csub)と基板抵抗32(Rsub)との並列接続の一端に接続され、この並列接続の他端は基板電圧供給端子404に接続される。基板電圧供給端子404には、電圧発生回路10から生成される基板電圧が抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介して供給可能とされている。
【0100】
《SOI−FETのデバイス構造》
図6は、図1に示す本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100の送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETのデバイス構造を示す図である。
【0101】
図6に示すSOI−MOSFETでは、支持基板としてのシリコン基板(Si)Subの表面上には絶縁物(I)としての埋め込み二酸化シリコン膜層Boxが形成され、埋め込み二酸化シリコン膜層Boxの表面上(On)にはシリコン層Si_Lyが形成されている。nチャネルSOI−MOSFETを形成するために、最初からシリコン層Si_Lyはp型ドーパントによって低濃度でドープされている。
【0102】
シリコン層Si_Lyの表面でゲート酸化膜G_Oxとポリシリコン層のゲート電極G_Elとがパターニングされた後に、パターニングされたゲート酸化膜G_Oxとゲート電極G_Elとをマスクとしたn型ドーパントによるイオン打ち込みによってシリコン層Si_Lyにn型不純物領域のソース領域SCとドレイン領域DRとが形成される。ゲート酸化膜G_Ox直下でソース領域SCとドレイン領域DRとによって挟まれたp型にドープされたシリコン層Si_Lyはバックゲートとも呼ばれるボディ(B)として機能する。このボディ(B)で白の部分DPは空乏層であり、この空乏層DPの内部ではキャリアのホールは存在せずにイオン化されたp型ドーパントの原子核が存在している。従って、ゲート酸化膜G_Ox直下でソース領域SCとドレイン領域DRとによって挟まれたp型にドープされたシリコン層Si_Lyで、空乏層DP以外の部分が電気的に中性なボディ(B)として機能するものである。すなわち、電気的に中性なボディ(B)の内部では、キャリアとしてのホールによる正電荷量とイオン化されたp型ドーパントの原子核による負電荷量はバランスされている。
【0103】
従って、図6に示したnチャネル型SOI−FETのデバイス構造を有する送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETの各FETは、上述したようにソース・ゲート間MOS寄生容量Cgsとゲート・ドレイン間MOS寄生容量Cgdとソース・ドレイン間寄生容量Cdsとソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ・ドレイン間寄生容量Cbdとソース・基板間寄生容量Cssubとボディ(B)・基板間寄生容量Cbsubとドレイン・基板間寄生容量Cdsubと基板容量Csubと基板抵抗Rsubとを寄生素子として含んでいる。
【0104】
一方、図6に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100の送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETのデバイス構造では、上記特許文献1に記載のボディへの蓄積電荷シンク(ACS)の接続による蓄積電荷の除去技術と異なり、ボディ(B)には蓄積電荷シンク(ACS)の接続によるバイアス電圧が供給不可能とされ、ボディ(B)はフローティングとされる。その結果、シリコン半導体製造プロセスに製造ステップの追加を不必要として、チップ占有面積の増加を軽減することが可能となる。
【0105】
更に、図6に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100の送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETのデバイス構造では、上記特許文献1に記載のSOI−FETのデバイスの支持基板としてのシリコン基板のフローティング状態と異なり、送信スイッチ104のnチャネル型SOI−FETと受信スイッチ105のnチャネル型SOI−FETが集積化されたSOI構造を有する半導体集積回路110の支持基板としてのシリコン基板の基板電圧供給端子108、109には電圧発生回路10から生成される安定な基板電圧が抵抗11と容量12で構成されたローパスフィルタを介して供給可能とされている。従って、アンテナスイッチの高周波特性の悪影響が発生する可能性を軽減することが可能となる。
【0106】
図7は、図1に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110で、図6に示したnチャネル型SOI−FETのデバイス構造の支持基板としてのシリコン基板に電圧発生回路10の基板電圧を抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介して供給する際の等価回路を示す図である。
【0107】
一方、図1に示したアンテナスイッチ110の高周波信号入力端子としての入出力端子101にアンテナから供給された高周波入力信号は、受信スイッチ105を介して受信端子103に伝達される。その際に、基板電圧供給端子108、109に漏洩する高周波信号成分は、バイパスコンデンサとして機能する容量12を介して、接地電位にバイパスされる。また図6に示したnチャネル型SOI−FETのデバイス構造の支持基板としてのシリコン基板は、高抵抗率の化合物半導体基板と比較して、比較的低いインピーダンスとなる。従って、バイパスコンデンサとして機能する容量12が基板電圧供給端子108、109に接続されなければ、基板電圧供給端子108、109に漏洩する高周波信号成分はシリコン基板にも漏洩して高周波信号の損失が増大する。
【0108】
一方、抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタでは、抵抗素子11の値は高周波信号の損失を低減するようにアンテナのインピーダンス50Ωに比較して十分に大きな抵抗値に設定されている。すなわち、電圧発生回路10は、後で図10を参照して説明するように、出力端子13と接地電位との間に接続された大きな容量を含んでいる。従って、比較的大きな抵抗に設定された抵抗素子11が基板電圧供給端子108、109と電圧発生回路10の出力端子13とに接続されなければ、基板電圧供給端子108、109に漏洩する高周波信号成分は電圧発生回路10の出力端子13に接続された大きな容量にも漏洩して高周波信号の損失が増大する。
【0109】
《オフ容量の電圧依存性》
図9は、図6に示す本発明の実施の形態1によるデバイス構造のSOI−MOSFETの支持基板としてのシリコン基板への電圧発生回路10の基板電圧の供給技術を適用した場合の上記(1)式により与えられるオフ容量Coffの電圧依存性を示す図である。
【0110】
図9の左には、上記(1)式の第1項の1Cgs/2と上記(1)式の第2項のCdsの和の容量のドレイン・ソース間電圧Vdsの依存性が示されている。ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近で和の容量は最小値となる一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルトまたは−2.4ボルトの付近で和の容量は増大する。このメカニズムの原因は、上記で既に説明済みであるので、省略する。
【0111】
図9の中央には、上記(1)式の第3項の1Cbs/2に対応するn型不純物領域のソース領域SCと空乏層DPとボディ(B)からなるソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ(B)と空乏層DPとn型不純物領域のドレイン領域DRからなるボディ・ドレイン間寄生容量Cbdの直列接続の容量のドレイン・ソース間電圧Vdsの依存性が示されている。
【0112】
最初に上記特許文献1の記載のオフ状態のSOI−MOSFETでのゲートバイアス電圧によるゲート酸化膜近傍のチャネル領域には蓄積電荷が発生していない状態で、図6の本発明の実施の形態1のデバイス構造のSOI−MOSFETの支持基板としてのシリコン基板へ電圧発生回路10の基板電圧を供給しない状態を想定する。この状態で、ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近ではソース・ボディ間寄生容量Cbsとボディ・ドレイン間寄生容量Cbdの直列接続の容量は最小値となる一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルトまたは−2.4ボルトの付近で直列接続の容量は増大し、その後飽和状態となる。このメカニズムの原因は、ソース・ゲート間MOS寄生容量Cgsとゲート・ドレイン間MOS寄生容量Cgdと同様であると考えられる。
【0113】
シリコン基板へ電圧発生回路10の基板電圧を供給しない状態では、図9の左に示した上記(1)式の第1項の1Cgs/2と上記(1)式の第2項のCdsの和の容量と図9の中央に示した上記(1)式の第3項の1Cbs/2(Vsub=0V)の総和によって上記(1)式のオフ容量Coffが決定されるので、図9の右に上記(1)式のオフ容量Coff(Vsub=0V)の電圧依存性が示されている。
【0114】
図9の右に示す上記(1)式のオフ容量Coff(Vsub=0V)は、ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近で和の容量は最小値となる一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルトの付近で和の容量は若干増大してドレイン・ソース間電圧Vdsが−2.4ボルトの付近で和の容量は急激に増大する。従って、送信動作でオフ状態の受信スイッチ回路に大振幅の送信信号が印加され、ドレイン・ソース間電圧Vdsの増大に従いオフ容量Coffが増大するので、高調波歪み特性が劣化するものである。
【0115】
そこで、図1と図6と図7に示す本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110では、nチャネル型SOI−FETのデバイス構造の支持基板としてのシリコン基板に抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介して供給される電圧発生回路10の基板電圧の電圧レベルを調整可能とするものである。例えば、電圧発生回路10から生成される基板電圧を、−1ボルトの電圧レベルに設定する。
【0116】
すなわち、図9の左に示した上記(1)式の第1項の1Cgs/2と上記(1)式の第2項のCdsの和の容量の電圧依存性を相殺できるような基板電圧を選択する。その結果、図9の中央で容量の電圧依存性が、正電圧方向にシフトする(図9の中央のVsub=−1Vを参照)。
【0117】
結果的に、図9の左に示した上記(1)式の第1項の1Cgs/2と上記(1)式の第2項のCdsの和の容量と図9の中央に示した上記(1)式の第3項の1Cbs/2(Vsub=−1V)との総和によって上記(1)式のオフ容量Coffが決定されるので、図9の右には上記(1)式のオフ容量Coff(Vsub=−1V)の電圧依存性が示されている。
【0118】
図9の右に示した上記(1)式のオフ容量Coff(Vsub=−1V)は、ドレイン・ソース間電圧Vdsがゼロボルト付近で和の容量は最小値となる一方、ドレイン・ソース間電圧Vdsが+2.4ボルトまたは−2.4ボルトの付近でもオフ容量Coffの増大は無視可能なレベルに低減されたので、高調波歪み特性の劣化を軽減することが可能となったものである。
【0119】
[実施の形態2]
《他のアンテナスイッチを含む半導体集積回路の構成》
図3は、本発明の実施の形態2によるアンテナスイッチ100を含む半導体集積回路110の構成を示す図である。
【0120】
図3に示したアンテナスイッチ100は、図1に示したアンテナスイッチ100と同様にシングルポールダブルスロー型のアンテナスイッチを構成する。図3のアンテナスイッチでは、携帯電話端末に搭載されるアンテナに接続可能とされた入出力端子301はシングルポールであり、受信端子303と送信端子302との2個の端子はダブルスローとなる。
【0121】
図3に示す半導体集積回路110は、アンテナスイッチ100と電圧発生回路10と抵抗11と容量12とを含んでいる。図3に示すアンテナスイッチ100は、入出力端子301と送信端子302と受信端子303と送信スイッチ304と受信スイッチ305と送信シャントスイッチ306と受信シャントスイッチ307と送信制御端子308と受信制御端子309と基板電圧供給端子310とを含んでいる。
【0122】
図3に示す半導体集積回路110は、SOI構造を有する半導体集積回路であり、支持基板としてのシリコン基板の表面上には絶縁物としての埋め込み二酸化シリコン膜層が形成され、埋め込み二酸化シリコン膜層の表面上に形成されたシリコン層には多数のnチャネル型SOI−FETを含んでいる。更にシリコン層には、電圧発生回路10と抵抗11、32と容量12、31とが集積化されている。
【0123】
従って、図3に示すアンテナスイッチ100の送信スイッチ304と受信スイッチ305と送信シャントスイッチ306と受信シャントスイッチ307は、それぞれnチャネル型SOI−FETによって構成されている。
【0124】
送信端子302と入出力端子301との間には送信スイッチ304の3個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET312a〜312cのソース・ドレイン電流経路が接続され、入出力端子301と受信端子303との間に受信スイッチ305の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET313a〜313hのソース・ドレイン電流経路が接続されている。
【0125】
送信端子302と接地電位との間には送信シャントスイッチ306の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET314a〜314hのソース・ドレイン電流経路が接続され、受信端子303と接地電位との間には受信シャントスイッチ307の1個のnチャネル型SOI−FET315のソース・ドレイン電流経路が接続されている。
【0126】
送信制御端子308には送信スイッチ304の3個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET312a〜312cのゲート電極がゲート抵抗332a〜332c、342を介して接続されてまた受信シャントスイッチ307の1個のnチャネル型SOI−FET315のゲート電極がゲート抵抗335を介して接続され、受信制御端子309に受信スイッチ305の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET313a〜313hのゲート電極がゲート抵抗333a〜333h、343を介して接続されてまた送信シャントスイッチ306の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET314a〜314hのゲート電極がゲート抵抗334a〜334h、344を介して接続されている。
【0127】
また送信スイッチ304と受信スイッチ305と送信シャントスイッチ306と受信シャントスイッチ307の各スイッチのnチャネル型SOI−FETの直列接続のトランジスタ数は、送受信動作の間に各スイッチのnチャネル型SOI−FETが素子破壊を生じないように設定されている。更に、送信スイッチ304と受信スイッチ305と送信シャントスイッチ306と受信シャントスイッチ307では、各nチャネル型SOI−FETの各ドレインと各ソースとの間に抵抗が接続されることによって、各ドレインの直流電位と各ソースの直流電位とが略等しい電位に設定されることが可能となる。
【0128】
《アンテナスイッチによる送受信動作》
図3のアンテナスイッチ100による送信動作で、送信制御端子308にハイレベルの送信制御電圧信号が供給され受信制御端子309にローレベルの受信制御電圧信号が供給されるので、送信端子302と入出力端子301との間の送信スイッチ304の3個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET312a〜312cはオン状態となる一方、入出力端子301と受信端子303との間の受信スイッチ305の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET313a〜313hはオフ状態となる。この時に、送信端子302と接地電位との間には送信シャントスイッチ306の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET314a〜314hはオフ状態となる一方、受信端子303と接地電位との間には受信シャントスイッチ307の1個のnチャネル型SOI−FET315はオン状態となる。
【0129】
図3のアンテナスイッチ100による受信動作で、送信制御端子308にローレベルの送信制御電圧信号が供給され受信制御端子309にハイレベルの受信制御電圧信号が供給されるので、送信端子302と入出力端子301との間の送信スイッチ304の3個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET312a〜312cはオフ状態となる一方、入出力端子301と受信端子303との間の受信スイッチ305の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET313a〜313hはオン状態となる。この時に、送信端子302と接地電位との間には送信シャントスイッチ306の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET314a〜314hはオン状態となる一方、受信端子303と接地電位との間には受信シャントスイッチ307の1個のnチャネル型SOI−FET315はオフ状態となる。
【0130】
《シリコン基板への基板電圧の供給》
また送信スイッチ304と受信スイッチ305と送信シャントスイッチ306と受信シャントスイッチ307を構成する全てのnチャネル型SOI−FETが集積化されたSOI構造を有する半導体集積回路110の支持基板としてのシリコン基板の基板電圧供給端子310には、電圧発生回路10から生成される基板電圧が抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介して供給可能とされている。基板電圧供給端子310に供給された基板電圧は、容量31と抵抗32との並列接続を介して、基板Subに供給されている。
【0131】
図3に示した本発明の実施の形態2によるアンテナスイッチ100では、送信スイッチ304の3個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET312a〜312cの基板Subは基板電圧供給配線352a〜352cによって示されており、受信スイッチ305の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET313a〜313hの基板Subは基板電圧供給配線353a〜353hによって示されており、送信シャントスイッチ306の8個の直列接続されたnチャネル型SOI−FET314a〜314hの基板Subは基板電圧供給配線354a〜354hによって示されており、受信シャントスイッチ307の1個のnチャネル型SOI−FET315の基板Subは基板電圧供給配線355によって示されている。
【0132】
図3に示した本発明の実施の形態2によるアンテナスイッチ100によれば、図1と図6と図7に示す本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100と同様に図9で説明したメカニズムによって、高周波歪み特性の劣化を軽減することが可能となる。
【0133】
《電圧発生回路の構成》
図10は、図1に示した本発明の実施の形態1によるアンテナスイッチ100と図3に示した本発明の実施の形態2によるアンテナスイッチ100の電圧発生回路10の構成を示す図である。
【0134】
図10に示す電圧生成回路10は、電源電圧入力端子801、制御信号入力端子802、電圧出力端子803、駆動出力端子804、スイッチング回路81、第1容量82、第2容量84、第1ダイオード83、第2ダイオード85を含んでいる。
【0135】
スイッチング回路81の電源電圧入力端子801には電源電圧Vddが供給され、スイッチング回路81の制御信号入力端子802には所定の周波数を有するクロック信号CLKが供給される。スイッチング回路81の接地端子は接地電位に接続され、スイッチング回路81の駆動出力端子804は第1容量82の一端に接続され、第1容量82の他端は第1ダイオード83のアノードと第2ダイオード85のカソードに接続されている。第1ダイオード83のカソードは接地電位に接続され、第2ダイオード85のアノードは電圧出力端子803と第2容量84の一端に接続され、第2容量84の他端は接地電位に接続されている。尚、スイッチング回路81の制御信号入力端子802に供給されるクロック信号CLKは、アンテナスイッチ100の送信端子102、302に供給されるRF送信信号のRFキャリア成分を増幅した後、波形整形すること等で生成されることが可能である。
【0136】
《電圧発生回路の動作》
図10に示す電圧生成回路10による負電圧発生動作は、下記のようになる。
【0137】
例えば、ハイレベルのクロック信号CLKに応答してスイッチング回路81は駆動出力端子804に電源電圧Vddのハイレベル駆動出力信号を生成するので、充電電流が駆動出力端子804から第1容量82と第1ダイオード83とを介して接地電位に流れる。第1ダイオード83の順方向電圧をVfとすると、第1容量82の両端の間にはVdd−Vfの電圧が充電される。
【0138】
その後、ローレベルのクロック信号CLKに応答してスイッチング回路81は駆動出力端子804に接地電位のローレベル駆動出力信号を生成するので、放電電流が接地電位から第2容量84と電圧出力端子803と第2ダイオード85と第1容量82と駆動出力端子804とを介して接地電位に流れる。すると、第1容量82の他端と第2ダイオード85のカソードの接続ノードは、−Vdd+Vfの電位に変化する。第2ダイオード85の順方向電圧もVfとすると、電圧出力端子803と第2容量84の一端とは−Vdd+2Vfの電位に充電される。
【0139】
このようにして、図10に示した電圧生成回路10の電圧出力端子803(13)から負電圧が生成され、抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介してnチャネル型SOI−FETが集積化されたSOI構造を有する半導体集積回路110の支持基板としてのシリコン基板Subにこの負電圧が供給可能とされている。
【0140】
[実施の形態3]
《他のアンテナスイッチを含む半導体集積回路の構成》
図5は、本発明の実施の形態3によるアンテナスイッチ501を含む半導体集積回路500の構成を示す図である。
【0141】
図5に示す半導体集積回路500は、上述の実施の形態1乃至実施の形態2で説明した単一シリコン基板を使用するモノリシックSOI構造を有する半導体集積回路110と異なったもので、複数のシリコン基板を絶縁基板上に搭載するマルチチップモジュールとも呼ばれる混成半導体集積回路によって構成されている。
【0142】
図5の上には混成半導体集積回路500の平面構造が示され、図5の下には混成半導体集積回路500の断面構造が示されている。すなわち、混成半導体集積回路500の絶縁基板508の主表面上に、アンテナスイッチの第1半導体チップ501と、電圧生成回路10の第2半導体チップ507と、ローパスフィルタを構成する容量チップ505と抵抗チップ506とが搭載されている。
【0143】
図5に示した半導体集積回路500のアンテナスイッチの第1半導体チップ501は、上述の実施の形態1乃至実施の形態2で説明したアンテナスイッチ100に対応するものである。従って、このアンテナスイッチの第1半導体チップ501は、例えば図3に示したアンテナスイッチ100と同様に入出力端子301と送信端子302と受信端子303と送信スイッチ304と受信スイッチ305と送信シャントスイッチ306と受信シャントスイッチ307と送信制御端子308と受信制御端子309と基板電圧供給端子310とを含んでいる。更に、このアンテナスイッチの第1半導体チップ501は、例えば図3に示したアンテナスイッチ100と同様に、SOI構造を有する半導体集積回路であり、支持基板としてのシリコン基板の表面上には絶縁物としての埋め込み二酸化シリコン膜層が形成され、埋め込み二酸化シリコン膜層の表面上に形成されたシリコン層にはアンテナスイッチを構成するための多数のnチャネル型SOI−FETを含んでいる。
【0144】
図5に示した半導体集積回路500の電圧生成回路10の第2半導体チップ507は、例えば図10に示した電圧生成回路10と同様な回路構成をSOI構造の半導体チップもしくはバルクシリコン基板の半導体チップに集積化したものである。特に、電圧生成回路10の第2半導体チップ507から生成される電圧は、ボンディングワイヤー515の一端に供給される。
【0145】
図5に示した半導体集積回路500の容量チップ505と抵抗チップ506は、上述の実施の形態1乃至実施の形態2で説明したローパスフィルタを構成するための容量12と抵抗11とに対応するものである。従って、ボンディングワイヤー515の他端の電圧は導電性ランド503bを介して抵抗チップ506の一端に供給され、抵抗チップ506の他端は導電性ランド503aに接続される。導電性ランド503aはボンディングワイヤー513と導電性ランド503cとを介して容量チップ505の一端に接続され、容量チップ505の他端は導電性ランド503dと導電性ビアホール510とを介して裏面接地導電層509に接続される。更に導電性ランド503aは、ボンディングワイヤー514と導電性ダイパッド502とを介してアンテナスイッチのSOI構造を有する第1半導体チップ501の下面の支持基板であるシリコン基板に接続される。またアンテナスイッチの第1半導体チップ501の内部接地配線は、ボンディングワイヤー512と導電性ビアホール511とを介して裏面接地導電層509に接続される。また混成半導体集積回路500の絶縁基板508の裏面の裏面接地導電層509は、送信用RF電力増幅器を内蔵する高周波モジュールの配線基板の接地電極にハンダや導電性ペースト等を使用して接続可能とされている。
【0146】
[実施の形態4]
《他のアンテナスイッチを搭載した携帯電話端末》
図2は、アンテナスイッチANT_SWを搭載した本発明の実施の形態4による携帯電話端末の構成を示す図である。
【0147】
図2に示した携帯電話端末は、RFモジュールRF_MLを含み、またこのRFモジュールRF_MLは、ベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIと、無線周波数半導体集積回路RF_ICと、高出力増幅器モジュールHPA_MLとを含んでいる。更に高出力増幅器モジュールHPA_MLは、送信用RF電力増幅器モジュールPA_MDと、パワーカプラーCPL1、2と、ローパスフィルタLPF1、2と、アンテナスイッチANT_SWとを含んでいる。
【0148】
ベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIは無線周波数半導体集積回路RF_ICに送信ベースバンド信号Tx_BBSと制御信号B.B_Cntとを供給する一方、無線周波数半導体集積回路RF_ICはベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIに受信ベースバンド信号Rx_BBSを供給する。
【0149】
無線周波数半導体集積回路RF_ICの内部の送信信号処理ユニットTx_SPUは、送信ベースバンド信号Tx_BBSの周波数アップコンバージョンを実行する。周波数アップコンバージョンによって、低いRF送信周波数帯域(ローバンド)の第1のRF送信信号GSM_Txもしくは高いRF送信周波数帯域(ハイバンド)の第2のRF送信信号PCS_Txが生成されて、ローバンドの第1のRF送信信号GSM_Txは送信用RF電力増幅器モジュールPA_MDの第1RF電力増幅器Amp1によって増幅され、ハイバンドの第2のRF送信信号PCS_Txは送信用RF電力増幅器モジュールPA_MDの第2RF電力増幅器Amp2によって増幅される。
【0150】
第1RF電力増幅器Amp1の出力端子のローバンドの第1のRF送信電力増幅信号は第1のパワーカプラーCPL1と第1のローパスフィルタLPF1を介してアンテナスイッチANT_SWの第1送信端子Tx1に供給され、第2RF電力増幅器Amp2の出力端子のハイバンドの第2のRF送信電力増幅信号と第2のパワーカプラーCPL2と第2のローパスフィルタLPF2とを介してアンテナスイッチANT_SWの第2送信端子Tx2に供給される。第1のパワーカプラーCPL1で検出された第1のRF検出信号と第2のパワーカプラーCPL2で検出された第2のRF検出信号とは検波器DETで検波されて、検波器DETの検波出力信号に応答して制御回路Cntは第1RF電力増幅器Amp1の第1増幅利得と第2RF電力増幅器Amp2の第2増幅利得とを制御可能とされている。
【0151】
アンテナスイッチANT_SWは、2個のSPDT型アンテナスイッチを含むもので、各SPDT型アンテナスイッチは上述の図1の本発明の実施の形態1のアンテナスイッチ100または図3の本発明の実施の形態2のアンテナスイッチ100または図5の本発明の実施の形態3によるアンテナスイッチ501を使用することが可能である。従って、アンテナスイッチANT_SWはSOI構造の半導体チップによって構成されて、電圧生成回路10から生成された電圧が抵抗11と容量12とで構成されたローパスフィルタを介してSOI構造を有するアンテナスイッチANT_SWの支持基板としてのシリコン基板に供給される。尚、電圧生成回路10と抵抗11と容量12は、実際はRFモジュールRF_MLの内部に形成されるではなく、高出力増幅器モジュールHPA_MLの内部に形成されることも可能である。
【0152】
携帯電話端末のローバンド送信モードでは、アンテナスイッチANT_SWの第1送信端子Tx1に供給されるローバンドの第1のRF送信電力増幅信号は第1入出力端子I/O_GSMとデュプレクサDplxとを介して携帯電話端末のアンテナANTに供給される。
【0153】
携帯電話端末のハイバンド送信モードでは、アンテナスイッチANT_SWの第2送信端子Tx2に供給されるハイバンドの第2のRF送信電力増幅信号は第2入出力端子I/O_PCSとデュプレクサDplxとを介して携帯電話端末のアンテナANTに供給される。
【0154】
携帯電話端末のローバンド受信モードでは、携帯電話端末のアンテナANTにより受信された第1のRF受信信号GSM_Rxは、デュプレクサDplxとアンテナスイッチANT_SWの第1入出力端子I/O_GSMと第1受信端子Rx1と第1表面弾性波フィルタSAW1を介して無線周波数半導体集積回路RF_ICの内部の第1低雑音増幅器LNA1によって増幅される。従って、第1低雑音増幅器LNA1の出力のローバンドRF受信信号は、無線周波数半導体集積回路RF_ICの内部の受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUはローバンドRF受信信号の周波数ダウンコンバージョンを実行して、ベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIに受信ベースバンド信号Rx_BBSを供給する。
【0155】
携帯電話端末のハイバンド受信モードでは、携帯電話端末のアンテナANTにより受信された第2のRF受信信号PCS_Rxは、デュプレクサDplxとアンテナスイッチANT_SWの第2入出力端子I/O_PCSと第2受信端子Rx2と第2表面弾性波フィルタSAW2を介して無線周波数半導体集積回路RF_ICの内部の第2低雑音増幅器LNA2によって増幅される。従って、第2低雑音増幅器LNA2の出力のハイバンドRF受信信号は、無線周波数半導体集積回路RF_ICの内部の受信信号処理ユニットRx_SPUに供給される。受信信号処理ユニットRx_SPUはハイバンドRF受信信号の周波数ダウンコンバージョンを実行して、ベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIに受信ベースバンド信号Rx_BBSを供給する。
【0156】
また、図2に示す本発明の実施の形態4によるアンテナスイッチANT_SWの送受信動作の切換動作は、無線周波数半導体集積回路RF_ICと高出力増幅器モジュールHPA_MLとを介してベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIから供給される制御信号B.B_Cntによって制御可能とされている。
【0157】
以上、本発明者によってなされた発明を、種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは言うまでもない。
【0158】
例えば、図2に示した本発明の実施の形態4によるRFモジュールRF_MLにおいて、送信用RF電力増幅器モジュールPA_MDの第1RF電力増幅器Amp1と第2RF電力増幅器Amp2のRF電力増幅MOSトランジスタは、アンテナスイッチANT_SWを構成するSOI構造の半導体チップに集積化することが可能である。
【0159】
その際に、更に電圧生成回路10と抵抗11と容量12とは、アンテナスイッチANT_SWを構成するSOI構造の半導体チップに集積化することが可能である。
【0160】
更に、図10に示した電圧生成回路10のスイッチング回路81の制御信号入力端子802に供給されるクロック信号CLKは、ベースバンド信号処理ユニットB.B_LSIから無線周波数半導体集積回路RF_ICのデジタルインターフェースに供給されるシステムクロック信号を利用することも可能である。
【0161】
また、本発明のアンテナスイッチを含む半導体集積回路およびそれを内蔵した高周波モジュールは、携帯電話端末に限定されるものではなく、無線LAN端末にも適用されることが可能である。
【符号の説明】
【0162】
100…アンテナスイッチ
101…入出力端子
102…送信端子
103…受信端子
104…送信スイッチ
105…受信スイッチ
106…送信制御端子
107…受信制御端子
108…基板電圧制御端子
109…基板電圧制御端子
10…電圧発生回路
11…抵抗
12…容量
13…出力端子
RF_ML…RFモジュール
B.B_LSI…ベースバンド信号処理ユニット
RF_IC…無線周波数半導体集積回路
HPA_ML…高出力増幅器モジュール
PA_MD…送信用RF電力増幅器モジュール
CPL1、2…パワーカプラー
LPF1、2…ローパスフィルタ
ANT_SW…アンテナスイッチ
Tx_BBS…送信ベースバンド信号
B.B_Cnt…制御信号
Rx_BBS…受信ベースバンド信号
Rx_SPU…受信信号処理ユニット
Tx_SPU…送信信号処理ユニット
LNA1…第1低雑音増幅器
LNA2…第2低雑音増幅器
GSM_Rx…第1のRF受信信号
PCS_Rx…第2のRF受信信号
GSM_Tx…第1のRF送信信号
PCS_Tx…第2のRF送信信号
Amp1…第1RF電力増幅器
Amp2…第2RF電力増幅器
Cnt…制御回路
DET…検波器
Rx1…第1受信端子
Rx2…第2受信端子
Tx1…第1送信端子
Tx2…第2送信端子
I/O_GSM…第1入出力端子
I/O_PCS…第2入出力端子
Dplx…デュプレクサ
ANT…アンテナ
SAW1…第1表面弾性波フィルタ
SAW2…第2表面弾性波フィルタ
301…入出力端子
302…送信端子
303…受信端子
304…送信スイッチ
305…受信スイッチ
306…送信シャントスイッチ
307…受信シャントスイッチ
308…送信制御端子
309…受信制御端子
310…基板電圧供給端子
32…抵抗
31…容量
312a〜312c…nチャネル型SOI−FET
313a〜313h…nチャネル型SOI−FET
314a〜314h…nチャネル型SOI−FET
315…nチャネル型SOI−FET
332a〜332c、342…ゲート抵抗
333a〜333h、343…ゲート抵抗
334a〜334h、344…ゲート抵抗
335…ゲート抵抗
Sub…基板
352a〜352c…基板電圧供給配線
353a〜353h…基板電圧供給配線
354a〜354h…基板電圧供給配線
355…基板電圧供給配線
SOI−FET…nチャネル型SOI−FET
400…スイッチ
401…ゲート電極
402…ソース端子
403…ドレイン端子
404…基板電圧供給端子
41…ソース・基板間寄生容量(Cssub)
42…ドレイン・基板間寄生容量(Cdsub)
31…基板容量(Csub)
32…基板抵抗(Rsub)
500…混成半導体集積回路
501…アンテナスイッチの第1半導体チップ
502…導電性ダイパッド
503a〜503d…導電性ランド
505…容量チップ
506…抵抗チップ
507…電圧生成回路10の第2半導体チップ
508…絶縁基板
509…裏面接地導電層
510…導電性ビアホール
511…導電性ビアホール
512〜515…ボンディングワイヤー
Sub…シリコン基板(Si)
Box…埋め込み二酸化シリコン膜層
Si_Ly…シリコン層
G_Ox…ゲート酸化膜
G_El…ゲート電極
SC…ソース領域
DR…ドレイン領域
B…ボディ
DP…空乏層
601…ゲート電極(G)
602…ソース電極(S)
603…ドレイン電極(D)
604…シリコン基板電極
Cgs…ソース・ゲート間MOS寄生容量(64)
Cgd…ゲート・ドレイン間MOS寄生容量(65)
Cds…ソース・ドレイン間寄生容量(66)
Cbs…ソース・ボディ間寄生容量(61)
Cbd…ボディ・ドレイン間寄生容量(62)
Cssub…ソース・基板間寄生容量(68)
Cbsub…ボディ(B)・基板間寄生容量(67)
Cdsub…ドレイン・基板間寄生容量(69)
801…電源電圧入力端子
802…制御信号入力端子
803…電圧出力端子
804…駆動出力端子
81…スイッチング回路
82…第1容量
83…第1ダイオード
84…第2容量
85…第2ダイオード
Vdd…電源電圧
CLK…クロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信スイッチと受信スイッチと送信端子と入出力端子と受信端子と送信制御端子と受信制御端子とを有するアンテナスイッチを具備する半導体集積回路であって、
前記送信スイッチは、前記送信端子と前記入出力端子との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子に接続された送信電界効果トランジスタを含み、
前記受信スイッチは、前記入出力端子と前記受信端子との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子に接続された受信電界効果トランジスタを含み、
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの各トランジスタは、支持基板としてのシリコン基板の表面上に形成された絶縁物の表面上に形成されたシリコンからなるシリコンオンインシュレータ構造で形成されたものであり、
前記半導体集積回路は、前記シリコン基板に供給される基板電圧を生成する電圧発生回路を更に具備して、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧は、前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされたものであり、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧の電圧レベルは、前記アンテナスイッチの高調波成分を低減する値に設定される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの前記各トランジスタは、nチャネル型MOSトランジスタである
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項2において、
抵抗と容量とを有するローパスフィルタを更に具備して、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧は、前記ローパスフィルタを介して前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされる
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記アンテナスイッチと前記電圧発生回路と前記ローパスフィルタとは、前記シリコンオンインシュレータ構造の単一の前記シリコン基板上にモノリシック集積化される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項5】
請求項3において、
前記アンテナスイッチと前記電圧発生回路と前記ローパスフィルタとは、混成半導体集積回路として構成された前記半導体集積回路の絶縁基板の主表面に搭載される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
請求項3において、
前記アンテナスイッチは、送信シャントスイッチと受信シャントスイッチとを更に有して、
前記送信シャントスイッチは、前記送信端子と接地電位との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子に接続された送信シャント電界効果トランジスタを含み、
前記受信シャントスイッチは、前記受信端子と接地電位との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子に接続された受信シャント電界効果トランジスタを含み、
前記送信シャント電界効果トランジスタと前記受信シャント電界効果トランジスタとは、前記シリコンオンインシュレータ構造で形成される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記送信スイッチと前記受信スイッチと前記送信シャントスイッチの各スイッチは、ソース・ドレイン電流経路が直列接続された複数の電界効果トランジスタを含む
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項8】
請求項7において、
前記送信スイッチと前記受信スイッチと前記送信シャントスイッチの前記各スイッチでは、前記ソース・ドレイン電流経路が直列接続された前記複数の電界効果トランジスタの各トランジスタのソースとドレインとの間には抵抗が接続される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項9】
請求項7において、
前記電圧発生回路は、クロック信号に応答した容量の充放電によって前記基板電圧を生成する
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項10】
請求項7において、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧の前記電圧レベルによって、前記各トランジスタのソース・ゲート間MOS寄生容量とゲート・ドレイン間MOS寄生容量との第1直列接続容量とソース・ドレイン間寄生容量との和の容量のドレイン・ソース間電圧の変化による第1容量電圧依存性が、前記各トランジスタのソース・ボディ間寄生容量とゲート・ボディ間寄生容量との第2直列接続容量のドレイン・ソース間電圧の変化による第2容量電圧依存性によって略相殺される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項11】
高周波電力増幅器と、アンテナスイッチを有する半導体集積回路とを具備する高周波モジュールであって、
前記アンテナスイッチは、送信スイッチと受信スイッチと送信端子と入出力端子と受信端子と送信制御端子と受信制御端子とを有して、
前記高周波電力増幅器のRF送信信号は、前記アンテナスイッチの前記送信端子から前記入出力端子に伝達可能とされ、
前記送信スイッチは、前記送信端子と前記入出力端子との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子に接続された送信電界効果トランジスタを含み、
前記受信スイッチは、前記入出力端子と前記受信端子との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子に接続された受信電界効果トランジスタを含み、
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの各トランジスタは、支持基板としてのシリコン基板の表面上に形成された絶縁物の表面上に形成されたシリコンからなるシリコンオンインシュレータ構造で形成され、
前記半導体集積回路は、前記シリコン基板に供給される基板電圧を生成する電圧発生回路を更に有し、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧は、前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされたものであり、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧の電圧レベルは、前記アンテナスイッチの高調波成分を低減する値に設定される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項12】
請求項11において、
前記送信電界効果トランジスタと前記受信電界効果トランジスタの前記各トランジスタは、nチャネル型MOSトランジスタである
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項13】
請求項12において、
抵抗と容量とを有するローパスフィルタを更に具備して、
前記電圧発生回路から生成される前記基板電圧は、前記ローパスフィルタを介して前記支持基板としての前記シリコン基板に供給可能とされる
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項14】
請求項13において、
前記アンテナスイッチと前記電圧発生回路と前記ローパスフィルタとは、前記シリコンオンインシュレータ構造の単一の前記シリコン基板上にモノリシック集積化される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項15】
請求項13において、
前記アンテナスイッチと前記電圧発生回路と前記ローパスフィルタとは、混成半導体集積回路として構成された前記半導体集積回路の絶縁基板の主表面に搭載される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項16】
請求項13において、
前記アンテナスイッチは、送信シャントスイッチと受信シャントスイッチとを更に有して、
前記送信シャントスイッチは、前記送信端子と接地電位との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記受信制御端子に接続された送信シャント電界効果トランジスタを含み、
前記受信シャントスイッチは、前記受信端子と接地電位との間にソース・ドレイン電流経路が接続され、ゲート端子が前記送信制御端子に接続された受信シャント電界効果トランジスタを含み、
前記送信シャント電界効果トランジスタと前記受信シャント電界効果トランジスタとは、前記シリコンオンインシュレータ構造で形成される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項17】
請求項16において、
前記送信スイッチと前記受信スイッチと前記送信シャントスイッチの各スイッチは、ソース・ドレイン電流経路が直列接続された複数の電界効果トランジスタを含む
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項18】
請求項17において、
前記送信スイッチと前記受信スイッチと前記送信シャントスイッチの前記各スイッチでは、前記ソース・ドレイン電流経路が直列接続された前記複数の電界効果トランジスタの各トランジスタのソースとドレインとの間には抵抗が接続される
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項19】
請求項17において、
前記電圧発生回路は、クロック信号に応答した容量の充放電によって前記基板電圧を生成する
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項20】
請求項17において、
前記電圧発生回路から生成される前記前記基板電圧の前記電圧レベルによって、前記各トランジスタのソース・ゲート間MOS寄生容量とゲート・ドレイン間MOS寄生容量との第1直列接続容量とソース・ドレイン間寄生容量との和の容量のドレイン・ソース間電圧の変化による第1容量電圧依存性が、前記各トランジスタのソース・ボディ間寄生容量とゲート・ボディ間寄生容量との第2直列接続容量のドレイン・ソース間電圧の変化による第2容量電圧依存性によって略相殺される
ことを特徴とする高周波モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−193191(P2011−193191A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57033(P2010−57033)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】