説明

半導体集積回路装置

【課題】出力トランジスタの過電流を簡略な回路構成で抑制する。
【解決手段】半導体集積回路装置70の過電流保護回路30には、過電流検出部1と過電流制御部2が設けられる。過電流検出部1には、電流源11乃至13、NPNトランジスタQ1乃至Q3が設けられる。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ2は第1のカレントミラー回路を構成し、NPNトランジスタQ2のコレクタ側から過電流検出信号Skkを出力する。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ3は、第2のカレントミラー回路を構成し、NPNトランジスタQ3のコレクタ側から過電流制御信号Sksを過電流制御部2に出力する。過電流保護回路30は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソースと抵抗R1の間で検出して、過電流を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置に設けられるオープンドレイン型やオープンコレクタ型の出力トランジスタには、過電流を検出して過電流を抑制する過電流保護回路が設けられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載される過電流保護回路は、回路を形成する素子数が多いという問題点がある。素子数が多いとチップ面積が増大し半導体集積回路装置のコストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−285932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡略な回路構成で出力トランジスタの過電流を抑制する半導体集積回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体集積回路装置は、出力端子に出力電流を第1の端子から出力する出力トランジスタと、第1のトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する第2のトランジスタ側で前記第1の電流のn倍(ただし、n>1)の第2の電流を流す第1のカレントミラー回路と、前記第1のトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する第3のトランジスタ側で前記第1の電流の(n+m)倍(ただし、(n+m)>n)の第3の電流を流す第2のカレントミラー回路とを有し、前記第2のトランジスタの第1の端子から過電流検出信号を検出し、前記第3のトランジスタの第1の端子から過電流制御信号を検出し、前記第2及び第3のトランジスタの第2端子が前記出力トランジスタの第2の端子に接続される過電流検出部と、前記過電流制御信号が入力され、前記過電流制御信号に基づいて前記出力トランジスタの制御端子に供給される制御信号の信号レベルを制御して過電流を抑制する過電流制御部とを具備することを特徴とする。
【0007】
更に、本発明の他態様の半導体集積回路装置は、出力端子に出力電流をドレインから出力するNch MOSトランジスタと、前記Nch MOSトランジスタのソースと低電位側電源の間に設けられる抵抗と、第1のNPNトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する前記第1のNPNトランジスタのn倍(ただし、n>1)のエミッタ面積を有する第2のNPNトランジスタ側で第2の電流を流す第1のカレントミラー回路と、前記第1のNPNトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する前記第1のNPNトランジスタの(n+m)倍(ただし、(n+m)>n)のエミッタ面積を有する第3のNPNトランジスタ側で第3の電流を流す第2のカレントミラー回路と、高電位側電源と前記第1乃至3のNPNトランジスタのコレクタの間にそれぞれ設けられる第1乃至3の電流源とを有し、前記第2のNPNトランジスタのコレクタから過電流検出信号を検出し、前記第3のNPNトランジスタのコレクタから過電流制御信号を検出し、前記第2及び第3のNPNトランジスタのエミッタが前記Nch MOSトランジスタのソースと前記抵抗の間に接続される過電流検出部と、前記過電流制御信号が入力され、前記過電流制御信号に基づいて前記Nch MOSトランジスタのゲートに供給される制御信号の信号レベルを制御して過電流を抑制する過電流制御部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡略な回路構成で出力トランジスタの過電流を抑制する半導体集積回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体集積回路装置を示す回路図。
【図2】本発明の実施例1に比較例の半導体集積回路装置を示す回路図。
【図3】本発明の実施例1に係る過電流保護の動作を説明する図、図3(a)は出力トランジスタに流れる電流と検出電圧の関係を示す図、図3(b)は出力トランジスタに流れる電流と出力電圧の関係を示す図。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体集積回路装置を示す回路図。
【図5】本発明の実施例3に係る半導体集積回路装置を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、本発明の実施例1に係る半導体集積回路装置について、図面を参照して説明する。図1は半導体集積回路装置を示す回路図、図2は比較例の半導体集積回路装置を示す回路図である。本実施例では、カレントミラー回路を用いて出力トランジスタの過電流を検出して過電流を抑制している。
【0012】
図1に示すように、半導体集積回路装置70には、制御部3、過電流保護回路30、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。半導体集積回路装置70は、オープンドレイン型出力ドライバであり、民生用及び産業用の電子機器などに多用される。
【0013】
出力トランジスタMDT1は、ドレイン(第1の端子)がノードN5及び出力端子Pvoに接続され、ゲート(制御端子)に過電流保護回路30から出力される制御信号が入力され、ソース(第2の端子)がノードN4に接続され、ドレイン(第1の端子)から出力端子Pvoに出力信号Soutを出力する。出力トランジスタMDT1は、オープンドレイン型Nch(Nチャンネル) DMOSトランジスタである。なお、出力トランジスタMDT1には、カソードが出力トランジスタMDT1のドレインに接続され、アノードが出力トランジスタMDT1のソースに接続されるダイオードDN1が内蔵される。
【0014】
高電位側電源VccとノードN5の間には、ダイオードD1が設けられる。ダイオードD1は、カソードが高電位側電源Vccに接続され、アノードがノードN5に接続される保護ダイオードである。抵抗R1は、一端がノードN4に接続され、他端が低電位側電源(接地電位)Vssに接続される。
【0015】
過電流保護回路30には、過電流検出部1と過電流制御部2が設けられる。過電流保護回路30は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を検出して、過電流を抑制する。
【0016】
過電流検出部1には、電流源11乃至13、NPNトランジスタQ1乃至Q3が設けられる。過電流検出部1は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソース側(ノードN4)で検出し、過電流検出信号Skkと過電流制御信号Sksを生成する。
【0017】
電流源11は、高電位側電源VddとノードN1の間に設けられ、ノードN1側に第1の電流を流す。電流源12は、高電位側電源VddとノードN2の間に設けられ、ノードN2側に第2の電流を流す。電流源13は、高電位側電源VddとノードN3の間に設けられ、ノードN3側に第3の電流を流す。
【0018】
NPNトランジスタQ1は、コレクタ(第1の端子)及びベース(制御端子)がノードN1に接続され、エミッタ(第2の端子)が低電位側電源(接地電位)Vssに接続され、低電位側電源(接地電位)Vss側に第1の電流を流す。NPNトランジスタQ2は、コレクタ(第1の端子)がノードN2に接続され、ベース(制御端子)がNPNトランジスタQ1のベース(制御端子)及びノードN1に接続され、エミッタ(第2の端子)がノードN4に接続されエミッタ側に第2の電流を流す。NPNトランジスタQ3は、コレクタ(第1の端子)がノードN3に接続され、ベース(制御端子)がNPNトランジスタQ1のベース(制御端子)及びノードN1に接続され、エミッタ(第2の端子)がノードN4に接続されエミッタ側に第3の電流を流す。
【0019】
NPNトランジスタQ2は、エミッタサイズがNPNトランジスタQ1よりもn倍(ただし、n>1)に設定される。NPNトランジスタQ3は、エミッタサイズがNPNトランジスタQ1よりも(n+m)倍(ただし、(n+m)>n)に設定される。この結果、第2の電流は第1の電流よりもn倍大きい。第3の電流は第1の電流よりも(n+m)倍大きい。
【0020】
NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ2は、第1のカレントミラー回路を構成する。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ3は、第2のカレントミラー回路を構成する。第1のカレントミラー回路は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流をノードN4で検出して、過電流検出信号SkkをノードN2から出力する。第2のカレントミラー回路は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流をノードN4で検出して、過電流制御信号SksをノードN3から出力する。NPNトランジスタQ3に流れる第3の電流がNPNトランジスタQ2に流れる第2の電流よりも大きいので、過電流制御信号Sksの立ち上がりは、過電流検出信号Skkの立ち上がりよりも遅れる。
【0021】
ノードN2から出力される過電流検出信号Skkは、縦続接続されるn個のバッファ(バッファBF11、・・・、バッファBF1n)で増幅されてから制御部3に入力される。制御部3は、例えばCPU(central processing unit)からなる。ノードN3から出力される過電流制御信号Sksは、過電流制御部2に出力される。
【0022】
過電流制御部2には、電源21、バッファBF1、及び可変抵抗KR1が設けられる。電源21は、マイナス側が低電位側電源(接地電位)Vssに接続される。可変抵抗KR1は、一端が電源21のプラス側に接続され、過電流制御信号Sksに基づいて電源21の電圧Vb1を変更して、変更された電源21の電圧をバッファBF1に供給する。
【0023】
バッファBF1は、変更された電源21の電圧と低電位側電源(接地電位)Vssの間に設けられ、出力トランジスタMDT1のオン・オフを制御する入力信号Sinが入力される。バッファBF1は、変更された電源21の電圧に基づいて入力信号Sinの信号レベルをレベルシフトした制御信号を出力トランジスタMDT1のゲート(制御端子)に出力する。バッファBF1は、レベルシフト回路として機能する。バッファBF1から出力される制御信号により出力トランジスタMDT1に流れる過電流が抑制される。
【0024】
図2に示すように、比較例の半導体集積回路装置80には、制御部3、過電流保護回路40、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。半導体集積回路装置80は、オープンドレイン型出力ドライバである。比較例の半導体集積回路装置80では、本実施例の半導体集積回路装置70と同じ構成部分の説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0025】
過電流保護回路40には、過電流検出部4と過電流制御部2が設けられる。過電流保護回路40は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を検出して、過電流を抑制する。
【0026】
過電流検出部4には、コンパレータ14、コンパレータ15、電源22、及び電源23が設けられる。過電流検出部4は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソース側(ノードN4)で検出し、過電流検出信号Skkと過電流制御信号Sksを生成する。過電流検出部4は、本実施例の半導体集積回路装置70の過電流検出部1と同様な動作をする。
【0027】
電源22は、マイナス側が低電位側電源(接地電位)Vssに接続され、プラス側から電圧Vb2を出力する。電源23は、マイナス側が低電位側電源(接地電位)Vssに接続され、プラス側から電圧Vb2よりも高い電圧の電圧Vb3を出力する。
【0028】
コンパレータ14は、入力側のプラスポートがノードN4に接続され、入力側のマイナスポートに電圧Vb2が印加され、ノードN4の電圧が電圧Vb2よりも大きなときに比較増幅した信号を過電流検出信号SkkとしてバッファBF11に出力する。コンパレータ15は、入力側のプラスポートがノードN4に接続され、入力側のマイナスポートに電圧Vb3が印加され、ノードN4の電圧が電圧Vb3よりも大きなときに比較増幅した信号を過電流制御信号Sksとして過電流制御部2に出力する。
【0029】
つまり、出力トランジスタMDT1に流れる過電流が所定の値以上となり、ノードN4の電圧が電圧Vb2よりも大きくなるとコンパレータ14から比較増幅された過電流検出信号Skkが出力される。その後、更に出力トランジスタMDT1に流れる過電流が増加し、ノードN4の電圧が電圧Vb3よりも大きくなるとコンパレータ15から比較増幅された過電流制御信号Sksが出力される。
【0030】
ここで、例えばコンパレータ14及びコンパレータ15の素子数をそれぞれ8つとし、電源22及び電源23の素子数をそれぞれ2つとした場合、比較例の半導体集積回路装置80の過電流検出部4の素子数が20となり、本実施例の半導体集積回路装置70の過電流検出部2の素子数6と比較して3.3倍多くなる。なお、コンパレータ14及びコンパレータ15の素子数8の内容は、例えば差動対の2つのトランジスタ、高電位側の電流源としての2つの抵抗、低電位側の電流源としてのカレントミラー回路(2つのトランジスタ)、出力側の2つのトランジスタからなるとしている。電源22及び電源23の素子数2の内容は、例えば2の抵抗(抵抗分割)を用いて電圧Vb2及び電圧Vb3を生成としている。電流源11乃至13は抵抗を用いるとしている。
【0031】
次に、出力トランジスタの過電流の抑制について図3を参照して説明する。図3は過電流保護の動作を説明する図、図3(a)は出力トランジスタに流れる電流と検出電圧の関係を示す図、図3(b)は出力トランジスタに流れる電流と出力電圧の関係を示す図である。
【0032】
図3(a)に示すように、本実施例の半導体集積回路装置70では、出力トランジスタMDT1に流れる電流が増加し、例えば過電流検出値(42mA)を超えると過電流検出信号SkkであるノードN2の電圧Vn2が0(ゼロ)から上昇し始める。その後、出力トランジスタMDT1に流れる電流が更に増加し、例えば電流値(44mA)を超えると過電流制御信号SksであるノードN3の電圧Vn3が0(ゼロ)から上昇し始める。
【0033】
図3(b)に示すように、本実施例の半導体集積回路装置70では、出力トランジスタMDT1に流れる電流が0(ゼロ)から過電流制御信号SksであるノードN3の電圧Vn3が立ち上がるまでの電流領域では、バッファBF1に供給される可変抵抗KR1から出力される電圧が一定なので、出力電圧が徐々に増加する。
【0034】
次に、過電流制御信号SksであるノードN3の電圧Vn3が立ち上がると、バッファBF1に供給される可変抵抗KR1から出力される電圧が増加し、バッファBF1から出力される制御信号レベルが増加し、出力電圧が上昇する。
【0035】
続いて、出力トランジスタMDT1に流れる電流が、例えば出力制限電流値(45mA)以上になると、過電流制御信号SksであるノードN3の電圧Vn3に基づいて可変抵抗KR1の値を変更し、バッファBF1から出力される制御信号レベルの増加を抑制し、出力トランジスタMDT1の電流を制限(過電流抑制)する。このため、出力電圧の増加が抑制される。
【0036】
ここでは、過電流検出を42mA、出力制限電流を45mAとなるように、NPNトランジスタQ1乃至Q3の面積比を設定している。このため、例えばNPNトランジスタQ1乃至Q3の素子バラツキ(ΔVbe(ベース・エミッタ間の電圧バラツキ)など)が発生しても過電流検出値と出力制限電流値とが逆転することはない。
【0037】
一方、比較例の半導体集積回路装置80では、コンパレータ14及びコンパレータ15を用いているので、素子バラツキが発生すると過電流検出値と出力制限電流値とが逆転する可能性がある。
【0038】
上述したように、本実施例の半導体集積回路装置では、制御部3、過電流保護回路30、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。過電流保護回路30には、過電流検出部1と過電流制御部2が設けられる。過電流検出部1には、電流源11乃至13、NPNトランジスタQ1乃至Q3が設けられる。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ2は第1のカレントミラー回路を構成し、NPNトランジスタQ2のコレクタ側から過電流検出信号Skkを出力する。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ3は、第2のカレントミラー回路を構成し、NPNトランジスタQ3のコレクタ側から過電流制御信号Sksを過電流制御部2に出力する。過電流保護回路30は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソースと抵抗R1の間で検出して、過電流を抑制する。
【0039】
このため、半導体集積回路装置70の過電流保護回路30を構成する素子数を従来よりも削減することができる。したがって半導体集積回路装置70のチップ面積を縮小することができ、コストを低減できる。また、素子のバラツキが発生しても過電流検出値と出力制限電流値とが逆転することがない。
【0040】
なお、本実施例では、カレントミラー回路にNPNトランジスタを使用しているが、代わりにNch MOSトランジスタなどを使用してもよい。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の実施例2に係る半導体集積回路装置について、図面を参照して説明する。図4は半導体集積回路装置を示す回路図である。本実施例では、実施例1よりも出力電流を高め、出力電流を流す出力トランジスタとは別な箇所で過電流を検出し、出力トランジスタの過電流を抑制している。
【0042】
以下、実施例1と同一構成部分には、同一符号を付してその部分の説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0043】
図4に示すように、半導体集積回路装置71には、制御部3、過電流保護回路30、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力トランジスタMDT11、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。半導体集積回路装置71は、出力電流容量が実施例1よりも大きくなオープンドレイン型出力ドライバであり、民生用及び産業用の電子機器などに多用される。
【0044】
出力トランジスタMDT11は、ドレイン(第1の端子)がノードN5及び出力端子Pvoに接続され、ゲート(制御端子)に過電流保護回路30から出力される制御信号が入力され、ソース(第2の端子)が低電位側電源(接地電位)Vssに接続され、ドレイン(第1の端子)から出力端子Pvoに出力信号Soutを出力する。出力トランジスタMDT11は、オープンドレイン型Nch(Nチャンネル) DMOSトランジスタである。なお、出力トランジスタMDT11には、カソードが出力トランジスタMDT11のドレインに接続され、アノードが出力トランジスタMDT11のソースに接続されるダイオードDN11が内蔵される。
【0045】
出力トランジスタMDT11は、出力トランジスタMDT1よりもトランジスタ形状が大きく、且つソース側に抵抗が設けられていないので電圧低下が発生しにくく、出力電流容量を高めることができる。例えば出力トランジスタMDT1の出力電流容量が100mAであるのに対して、出力トランジスタMDT11の出力電流容量を10Aに設定できる。出力トランジスタMDT11は過電流が発生すると、出力トランジスタMDT1の過電流を検出し、過電流を抑制する過電流保護回路30から出力される制御信号がゲート(制御端子)に入力され、この制御信号に基づいて過電流が抑制される。
【0046】
上述したように、本実施例の半導体集積回路装置では、制御部3、過電流保護回路30、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力トランジスタMDT11、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。過電流検出部1には、電流源11乃至13、NPNトランジスタQ1乃至Q3が設けられる。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ2は第1のカレントミラー回路を構成し、NPNトランジスタQ2のコレクタ側から過電流検出信号Skkを出力する。NPNトランジスタQ1及びNPNトランジスタQ3は、第2のカレントミラー回路を構成し、NPNトランジスタQ3のコレクタ側から過電流制御信号Sksを過電流制御部2に出力する。過電流保護回路30は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソースと抵抗R1の間で検出して、出力トランジスタMDT11に流れる過電流を抑制する。
【0047】
このため、半導体集積回路装置71の過電流保護回路30を構成する素子数を従来よりも削減することができる。したがって半導体集積回路装置71のチップ面積を縮小することができ、コストを低減できる。また、素子のバラツキが発生しても過電流検出値と出力制限電流値とが逆転することがない。
【実施例3】
【0048】
次に、本発明の実施例3に係る半導体集積回路装置について、図面を参照して説明する。図5は半導体集積回路装置を示す回路図である。本実施例では、過電流検出部の構成を変更している。
【0049】
以下、実施例1と同一構成部分には、同一符号を付してその部分の説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0050】
図5に示すように、半導体集積回路装置72には、制御部3、過電流保護回路31、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。半導体集積回路装置72は、オープンドレイン型出力ドライバであり、民生用及び産業用の電子機器などに多用される。
【0051】
過電流保護回路31には、過電流検出部5と過電流制御部2が設けられる。過電流保護回路31は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を検出して、過電流を抑制する。
【0052】
過電流検出部5には、電流源11乃至13、Nch(Nチャネル) MOSトランジスタMNT1乃至4が設けられる。過電流検出部5は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソース側(ノードN4)で検出し、過電流検出信号Skkと過電流制御信号Sksを生成する。過電流検出部5は、実施例1の過電流検出部1と同様な動作をする。
【0053】
Nch MOSトランジスタMNT1は、ドレイン(第1の端子)が電流源11の他端に接続され、ゲート(制御端子)がノードN12及びノードN13に接続され、ソース(第2の端子)がノードN11に接続される。Nch MOSトランジスタMNT2は、ドレイン(第1の端子)がゲート(制御端子)及びノードN11に接続され、ソース(第2の端子)が低電位側電源(接地電位)Vssに接続される。Nch MOSトランジスタMNT1とNch MOSトランジスタMNT2には、低電位側電源(接地電位)Vss側に第1の電流が流れる。
【0054】
Nch MOSトランジスタMNT3は、ドレイン(第1の端子)が電流源12の他端及びノードN12に接続され、ゲート(制御端子)がNch MOSトランジスタMNT2のゲート(制御端子)に接続され、ソース(第2の端子)がノードN4に接続される。Nch MOSトランジスタMNT3には、低電位側電源(接地電位)Vss側に第2の電流が流れる。
【0055】
Nch MOSトランジスタMNT4は、ドレイン(第1の端子)が電流源13の他端及びノードN13に接続され、ゲート(制御端子)がNch MOSトランジスタMNT2のゲート(制御端子)に接続され、ソース(第2の端子)がノードN4に接続される。Nch MOSトランジスタMNT4には、低電位側電源(接地電位)Vss側に第3の電流が流れる。
【0056】
Nch MOSトランジスタMNT1乃至3は、第1のウィルソン型カレントミラー回路を構成する。Nch MOSトランジスタMNT3は、Nch MOSトランジスタMNT1及びNch MOSトランジスタMNT2よりもβ(ゲート幅Wg/ゲート長Lg)がn倍大きい(ミラー比n)。Nch MOSトランジスタMNT3のドレイン側(ノードN12)から過電流検出信号SkkがバッファBF11に出力される。
【0057】
Nch MOSトランジスタMNT1、Nch MOSトランジスタMNT2、及びNch MOSトランジスタMNT4は、第2のウィルソン型カレントミラー回路を構成する。Nch MOSトランジスタMNT4は、Nch MOSトランジスタMNT1及びNch MOSトランジスタMNT2よりもβ(ゲート幅Wg/ゲート長Lg)が(n+m)倍大きい(ミラー比(n+m))。Nch MOSトランジスタMNT4のドレイン側(ノードN13)から過電流制御信号Sksが過電流制御部2に出力される。この結果、第2の電流は第1の電流よりもn倍大きい。第3の電流は第1の電流よりも(n+m)倍大きい。
【0058】
ウィルソン型カレントミラー回路は、Nch MOSトランジスタMNT1乃至4のアーリー効果の影響を受けにくいので、通常のカレントミラー回路と比較し、低閾値電圧(Low Vth)であっても特性劣化しにくい。
【0059】
上述したように、本実施例の半導体集積回路装置では、制御部3、過電流保護回路31、バッファBF11、バッファBF1n、ダイオードD1、出力トランジスタMDT1、出力端子PVo、及び抵抗R1が設けられる。過電流保護回路31には、過電流検出部5と過電流制御部2が設けられる。過電流検出部5には、電流源11乃至13、Nch MOSトランジスタMNT1乃至4が設けられる。Nch MOSトランジスタMNT1乃至3は第1のウィルソン型カレントミラー回路を構成し、Nch MOSトランジスタNMT3のドレイン側から過電流検出信号Skkを出力する。Nch MOSトランジスタMNT1、Nch MOSトランジスタMNT2、及びNch MOSトランジスタMNT4は第2のウィルソン型カレントミラー回路を構成し、Nch MOSトランジスタMNT4のドレイン側から過電流制御信号Sksを過電流制御部2に出力する。過電流保護回路31は、出力トランジスタMDT1に流れる過電流を出力トランジスタMDT1のソースと抵抗R1の間で検出して、過電流を抑制する。
【0060】
このため、半導体集積回路装置72の過電流保護回路31を構成する素子数を従来よりも削減することができる。したがって半導体集積回路装置72のチップ面積を縮小することができ、コストを低減できる。また、素子のバラツキが発生しても過電流検出値と出力制限電流値とが逆転することがない。
【0061】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々、変更してもよい。
【0062】
実施例では、出力トランジスタにNch DMOSトランジスタを用いているが、代わりにNch DMOSトランジスタよりも低電圧動作のNch MOSトランジスタ、Nch トレンチパワーMOSトランジスタ、IGBT(insulated gate bipolar transistor)、或いはNPNトランジスタなどを用いてもよい。実施例2ではウィルソン型カレントミラー回路を用いているが、代わりにカスコード型カレントミラー回路などを用いてもよい。
【0063】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 出力端子に出力電流を第1の端子から出力する第1の出力トランジスタと、前記出力トランジスタの第2の端子と低電位側電源の間に設けられる抵抗と、前記出力端子に出力電流を第1の端子から出力し、第2の端子が前記低電位側電源に接続される第2の出力トランジスタと、第1のトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する第2のトランジスタ側で前記第1の電流のn倍(ただし、n>1)の第2の電流を流す第1のカレントミラー回路と、前記第1のトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する第3のトランジスタ側で前記第1の電流の(n+m)倍(ただし、(n+m)>n)の第3の電流を流す第2のカレントミラー回路と、高電位側電源と前記第1乃至3のトランジスタの第1の端子の間にそれぞれ設けられる第1乃至3の電流源とを有し、前記第2のトランジスタの第1の端子から過電流検出信号を検出し、前記第3のトランジスタの第1の端子から過電流制御信号を検出し、前記第2及び第3のトランジスタの第2端子が前記出力トランジスタの第2の端子と前記抵抗の間に接続される過電流検出部と、前記過電流制御信号が入力され、前記過電流制御信号に基づいて前記第1及び第2の出力トランジスタの制御端子に供給される制御信号の信号レベルを制御して過電流を抑制する過電流制御部とを具備することを特徴とする半導体集積回路装置。
【0064】
(付記2) 前記第1及び第2の出力トランジスタは、Nch MOSトランジスタ、Nch DMOSトランジスタ、Nch トレンチゲートMOSトランジスタ、IGBT、或いはNPNトランジスタである付記1に記載の半導体集積回路装置。
【0065】
(付記3) 前記第1乃至3のトランジスタは、Nch MOSトランジスタ或いはNPNトランジスタである付記1又は2に記載の半導体集積回路装置。
【0066】
(付記4) 前記第1及び第2のカレントミラー回路は、ウィルソン型カレントミラー回路或いはカスコード型カレントミラー回路である付記1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路装置。
【符号の説明】
【0067】
1、4、5 過電流検出部
2 過電流制御部
3 制御部
11〜13 電流源
14、15 コンパレータ
21〜23 電源
30、31、40 過電流保護回路
70〜72、80 半導体集積回路装置
BF1、BF11、BF1n バッファ
D1、DN1、DN11 ダイオード
KR1 可変抵抗
MDT1、MDT11 出力トランジスタ
MNT1〜MNT4 Nch MOSトランジスタ
N1〜N5、N11〜N13 ノード
PVo 出力端子
Q1〜Q3 NPNトランジスタ
R1 抵抗
Sin 入力信号
Skk 過電流検出信号
Ssk 過電流制御信号
Sout 出力信号
Vb1〜Vb3 電圧
Vcc、Vdd 高電位側電源
Vss 低電位側電源(接地電位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子に出力電流を第1の端子から出力する出力トランジスタと、
第1のトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する第2のトランジスタ側で前記第1の電流のn倍(ただし、n>1)の第2の電流を流す第1のカレントミラー回路と、前記第1のトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する第3のトランジスタ側で前記第1の電流の(n+m)倍(ただし、(n+m)>n)の第3の電流を流す第2のカレントミラー回路とを有し、前記第2のトランジスタの第1の端子から過電流検出信号を検出し、前記第3のトランジスタの第1の端子から過電流制御信号を検出し、前記第2及び第3のトランジスタの第2端子が前記出力トランジスタの第2の端子に接続される過電流検出部と、
前記過電流制御信号が入力され、前記過電流制御信号に基づいて前記出力トランジスタの制御端子に供給される制御信号の信号レベルを制御して過電流を抑制する過電流制御部と、
を具備することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記過電流制御部は、マイナス側が低電位側電源に接続される電源と、一端が前記電源のプラス側に接続され、前記過電流制御信号に基づいて前記電源の電圧を変更した電圧を他端側から出力する可変抵抗と、変更された前記電源電圧が供給され、変更された前記電源電圧に応じて入力信号レベルを変更し、変更された入力信号を前記出力トランジスタの制御端子に出力するバッファとを具備することを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
高電位側電源と前記第1乃至3のトランジスタの第1の端子の間に、それぞれ電流源が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記出力トランジスタの第2の端子と低電位側電源の間に抵抗が設けられ、前記第2及び第3のトランジスタの第2端子が前記出力トランジスタの第2の端子と前記抵抗の間に接続される請求項1又は3に記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
出力端子に出力電流をドレインから出力するNch MOSトランジスタと、
前記Nch MOSトランジスタのソースと低電位側電源の間に設けられる抵抗と、
第1のNPNトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する前記第1のNPNトランジスタのn倍(ただし、n>1)のエミッタ面積を有する第2のNPNトランジスタ側で第2の電流を流す第1のカレントミラー回路と、前記第1のNPNトランジスタ側で第1の電流を流し、相対向する前記第1のNPNトランジスタの(n+m)倍(ただし、(n+m)>n)のエミッタ面積を有する第3のNPNトランジスタ側で第3の電流を流す第2のカレントミラー回路と、高電位側電源と前記第1乃至3のNPNトランジスタのコレクタの間にそれぞれ設けられる第1乃至3の電流源とを有し、前記第2のNPNトランジスタのコレクタから過電流検出信号を検出し、前記第3のNPNトランジスタのコレクタから過電流制御信号を検出し、前記第2及び第3のNPNトランジスタのエミッタが前記Nch MOSトランジスタのソースと前記抵抗の間に接続される過電流検出部と、
前記過電流制御信号が入力され、前記過電流制御信号に基づいて前記Nch MOSトランジスタのゲートに供給される制御信号の信号レベルを制御して過電流を抑制する過電流制御部と、
を具備することを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249983(P2011−249983A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119256(P2010−119256)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】