説明

単結晶炭化ケイ素成長方法

【課題】結晶の成長速度の速い単結晶SiCの成長方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、種結晶となる単結晶SiC基板5上に、C原子を供給するためのC原子供給基板17を重ね、前記単結晶SiC基板5と前記C原子を供給基板17との間に極薄金属Si融液層18を介在させ、1400℃以上2100℃未満の所定の温度で所定の時間加熱処理を行うことによって前記種結晶となる単結晶SiC基板5上に単結晶SiCを液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の成長方法に関する。前記C原子供給基板17として、カーボン基板又は非晶質SiC基板を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶炭化ケイ素の提供を可能とする単結晶炭化ケイ素成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(以下、SiCという)は、耐熱性及び機械的強度に優れている。更に、放射線にも強く、不純物の添加によって電子や正孔の価電子制御が容易である。加えて、広い禁制帯幅を持つ。因みに、6H型の単結晶SiCで約3.0eVe、4H型の単結晶SiCで3.3eVである。そのため、シリコン(以下、Siという。)やガリウムヒ素(以下、GaAsという。)などの既存の半導体材料では実現することができない高温、高周波、耐電圧・耐環境性を実現することが可能である。それ故、次世代のパワーデバイス、高周波デバイス用半導体材料として注目され、かつ期待されている。また、六方晶SiCは、窒化ガリウム(以下、GaNという。)と格子定数が近く、GaNの基板として期待されている。
【0003】
この種の単結晶SiCを製造する方法として次のようなものがある。
例えば、昇華再結晶法(改良レーリー法)によると、ルツボ内の低温側に単結晶SiC基板を種結晶として固定配置する。高温側に原料となるSiを含む粉末を配置する。ルツボを不活性雰囲気中で1450〜2400℃の高温に加熱する。それによって、Siを含む粉末を昇華させて低温側の種結晶の表面上でSiCを再結晶させる。このようにして、単結晶SiCの育成を行なう。
【0004】
また、例えば、特許文献1によると、単結晶SiC基板とSi原子及びC原子により構成された板材とを微小隙間を隔てて互いに平行に対峙させる。その状態で大気圧以下の不活性ガス雰囲気、且つ、SiC飽和蒸気雰囲気下で単結晶SiC基板側が板材よりも低温となるように温度傾斜を持たせる。そして、熱処理することにより、微小隙間内でSi原子及びC原子を昇華再結晶させる。このようにして、単結晶SiC基板上に単結晶を析出させる。
更にまた、例えば、特許文献2によると、液相エピタキシャル成長法(以下、LPE法という。)によって単結晶SiC上に第1のエピタキシャル層を形成する。その後に、CVD法によって表面に第2のエピタキシャル層を形成して、マイクロパイプ欠陥を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−315000号公報
【特許文献2】特表平10−509943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら単結晶SiCの形成方法のうち、例えば、特許文献1等に記載の昇華再結晶法の場合は、成長速度が数100μm/hrと非常に早い反面、昇華の際にSiC粉末がいったんSi、SiC2、Si2Cに分解されて気化し、さらにルツボの一部と反応する。このために、温度変化によって種結晶の表面に到達するガスの種類が異なり、これらの分圧を化学量論的に正確に制御することが技術的に非常に困難である。また、不純物も混入しやすく、その混入した不純物や熱に起因する歪みの影響で結晶欠陥やマイクロパイプ欠陥等を発生しやすく、また、多くの核生成に起因する結晶粒界の発生など、性能的、品質的に安定した単結晶SiCが得られないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のLPE法の場合は、昇華再結晶法で見られるようなマイクロパイプ欠陥や結晶欠陥などの発生が少なく、昇華再結晶法で製造されるものに比べて品質的に優れた単結晶SiCが得られる。その反面、成長過程が、Si融液中へのCの溶解度によって律速されるために、成長速度が10μm/hr以下と非常に遅くて単結晶SiCの生産性が低く、製造装置内の液相を精密に温度制御しなくてはならない。また、工程が複雑となり、単結晶SiCの製造コストが非常に高価なものになる。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶SiCの提供を目的とする。
特に、結晶の成長速度の速い単結晶SiC成長方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明は、種結晶となる単結晶SiC基板上に、C原子を供給するためのC原子供給基板を重ね、前記単結晶SiC基板と前記C原子供給基板との間に極薄金属Si融液層を介在させ、1400℃以上2100℃未満の所定の温度で所定の時間加熱処理を行うことによって前記種結晶となる単結晶SiC基板上に単結晶SiCを液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の成長方法に関する。
本発明は、上記目的を達成するために以下のような特徴を有している。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、前記C原子供給基板として多結晶SiC素基板を除くC原子供給基板を用いることである。
例えば、前記C原子供給基板として、カーボン基板又は非晶質SiC基板を用いることが好ましい。
多結晶SiC基板を除く前記C原子供給基板は、多結晶SiC基板に比べて表面エネルギーが大きく、中でもカーボンはC原子供給量も増やせるため成長速度を速くできる。更に、多結晶SiC基板を除く前記C原子供給基板は、多結晶SiC基板に比べて加工性に極めて優れており、また安価であるため製造コストを抑制できる。
【0011】
また、前記単結晶SiC基板と前記C原子供給基板の間に介在する前記金属Si融液層の厚さが全面に亘って均一になるように前記C原子供給基板の上面に加圧を行なう事が好ましい。これにより、成長する単結晶SiCの全面に亘り均一な厚みに出来る。
【0012】
上記構成によれば、成長速度に影響を与える金属Si融液層の厚さを成長過程で一定に保つ事ができ、単結晶SiC基板と前記C原子供給基板との間に介在する金属Si融液層の厚みを適切に制御できる。それによって、成長する単結晶SiC基板の膜厚が制御される。
前記C原子供給基板から金属Si融液層へ溶け出すC原子は金属Si融液層の厚みが厚いほど水平方向に拡散できる。
【0013】
従って、前記金属Si融液層の厚みを適切に制御できると、前記種結晶となる単結晶SiC基板表面上に、単結晶SiCが液相エピタキシャル成長する均一性が飛躍的に向上する。
そのため、上記方法によって、成長した単結晶SiCの表面のステツプバンチのテラス巾を100μmオーダーに、ステップ高さを結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする高さに、マイクロパイプ欠陥の密度を1/cm2以下に制御することができる。その結果、平坦で欠陥の少ない高品質の単結晶炭化ケイ素が製作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態を実施するための熱処理装置の一例を示す断面概略図
【図2】図1の熱処理装置における密閉容器の構成を示す図
【図3】図2の密閉容器内の単結晶SiC基板上のスペーサの配置の例を示す平面図
【図4】図2の密閉容器内の単結晶SiC基板上のスペーサやSiC基板等の配置の例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態を実施するための熱処理装置の一例を説明する。
図1は、本実施形態の単結晶SiC成長方法を実施するための熱処理装置の一例を示す断面概略図である。
図1において、熱処理装置1は、本加熱室2と、予備加熱室3と、予備加熱室3から本加熱室2に続く前室4とで構成されている。そして、単結晶SiC基板5等が収納された密閉容器16が予備加熱室3から前室4、本加熱室2へと順次移動することで、単結晶SiC基板5等を短時間で約1400℃以上の所定の温度で加熱することができる。
【0016】
図1に示すように、熱処理装置1において、本加熱室2、予備加熱室3、前室4は連通部を有して仕切られていている。このため、各室を予め所定の圧力下に制御することが可能となる。また、各室毎にゲートバルブ7等を設けることによって、各室毎に圧力調整をすることも可能である。これによって単結晶SiC基板5等を収納した密閉容器16の移動時においても、外気に触れることなく、所定圧力下の炉内を図示しない移動手段によって移動させることができるため、不純物の混入等を抑制することができる。
【0017】
予備加熱室3には、ランプ又はロッドヒータ等の加熱手段6が設けられている。本実施形態においては、ハロゲンランプ6が設けられている。約10-5Pa以下の減圧下で急速に約800℃以上にまで加熱が可能である。また、予備加熱室3と前室4との接続部分には、ゲートバルブ7が設けられており、予備加熱室3及び前室4の圧力制御を容易なものとしている。
単結晶SiC基板5等が収納された密閉容器16は、この予備加熱室3で、テーブル8に載置された状態で約800℃以上に予め加熱される。その後、予備加熱室3と前室4との圧力調整が済み次第、前室4に設けられている昇降式のサセプタ9に設置するように移動させられる。
【0018】
前室4に移動させられた密閉容器16は、一部図示している昇降式の移動手段10によって前室4から本加熱室2に移動させられる。本加熱室2は、図示しない真空ポンプによって予め約10-1Pa以下の減圧下に調整することができ、加熱ヒータ11によって約1400℃以上に加熱することが可能である。本実施形態では、予め、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Pa以下の減圧下で、約1400℃以上の所定温度に設定されている。尚、前記本加熱室2内の圧力環境は、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Pa以下にした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
本加熱室2内の状態をこのように設定しておき、密閉容器16を前室4から本加熱室2内に移動すると、密閉容器16を約1400℃以上に急速に短時間で加熱することができる。
【0019】
また、本加熱室2には、加熱ヒータ11が配置されている。
移動手段10と本加熱室2との嵌合部25は、移動手段10に設けられている凸状の段付き部21と、本加熱室2に形成されている凹状の段付き部22とで構成されている。そして、移動手段10の段付き部21の各段部に設けられている図示しないOリング等のシール部材によって、本加熱室2は密閉された状態となる。
【0020】
加熱ヒータ11は、ベースヒータ11aと、上部ヒータ11bとで構成されている。前記ベースヒータ11aは、サセプタ9に設置されている。上部ヒータ11bは、筒状側面及びその上端を塞ぐ上面とで一体的に形成されている。このように、密閉容器16を覆うように加熱ヒータ11が配置されているため、密閉容器16を均等に加熱することが可能となる。なお、本加熱室2の加熱方式は、本実施形態に示す抵抗加熱ヒータに限定されるものではなく、例えば、高周波誘導加熱式であっても構わない。
【0021】
図2乃至図4を参照しつつ、密閉容器16及びその内部に配置される基板等について説明する。図2は、密閉容器16の斜視図を示しており、前記密閉容器16の上容器16aと下容器16bが離れた状態である。図3は、上面側からみた単結晶SiC基板5上のスペーサ19の配置を示す図であり、下容器16bの上面側に設けられた開口から内部をみた図である。図4は、前記密閉容器16の上容器16aと下容器16bが嵌合した状態の断面図であり、単結晶SiCを成長させるための単結晶SiC基板5やC原子供給基板17等の基板とスペーサ19の配置を示している。
【0022】
図4に示された密閉容器16の内部では、支持基板24、単結晶SiC基板5、少なくとも1つのスペーサ19、C原子供給基板17、少なくとも1つのSi基板14、少なくとも1つの重石23の順に下から上へと積層されている。前記支持基板24は前記C原子供給基板17と同様の基板によって形成されている。
図4は密閉容器16に納められた単結晶SiC基板5と前記C原子供給基板17との間に、熱処理時、スペーサ19の厚みに極薄金属Si融液層18が形成される状態を示す。
この極薄金属Si融液層18のSi材料供給源として、Si粉末等が挙げられる。
前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17との間にスペーサ19を介在させる事で金属SiC融液層18の厚みを制御することができる。
【0023】
前記C原子供給基板17や支持基板24として、多結晶SiC基板を用いることができる。しかしながら、カーボン基板又は非晶質SiC基板を前記C原子供給基板17や支持基板24として用いることが好ましい。
前記カーボン基板及び非晶質SiC基板は、多結晶SiC基板に比べて表面エネルギーが大きく、中でもカーボン基板はC原子供給量も増やせるため成長速度を速くできる。更に、カーボン基板及び非晶質SiC基板は、多結晶SiC基板に比べて加工性に極めて優れており、また安価であるため製造コストを抑制できる。
ここで、最下部側に位置する支持基板24は単結晶SiC基板5の密閉容器16からの侵食を防止するもので、単結晶SiC基板5上に液相エピタキシャル成長する単結晶SiCの品質向上に寄与する。
【0024】
多結晶SiC基板を前記C原子供給基板17及び支持基板24として用いる場合、CVD法で作製されたSi半導体製造工程でダミーウェハーとして使用されるSiCから所望の大きさに切り出されたものを使用することができる。多結晶SiC基板17,24は表面が鏡面に研磨加工され、表面に付着した油類、酸化膜、金属等が洗浄等によって除去されている。多結晶SiC基板17,24には、平均粒子径が5μm以上10μmで、粒子径が略均一なものが好ましい。このため、多結晶SiCの結晶構造には特に限定はなく、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiCのいずれをも使用することができる。
【0025】
また、前記C原子供給基板17の上に積層された少なくとも1つのSi基板14は、熱処理時における密閉容器16内のSiCの昇華、Siの蒸発を制御するために設けられている。Si基板14を設置することによって、熱処理時に溶融昇華して密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、単結晶SiC基板5及びC原子供給基板17及び支持基板24、極薄金属Si融液18の昇華の防止に寄与するようになる。また、密閉容器16内の圧力を予備加熱室3や本加熱室2内の圧力よりも高くなるように調整でき、これによって、上容器16aと下容器16bとの嵌合部から常にSi蒸気を放出でき、不純物の密閉容器16内への侵入を防止できる。
このように、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制すると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
尚、Si基板14の数や量は、昇華の防止及び圧力調整の程度によって適宜定められる。
【0026】
前記単結晶SiC基板5と前記C原子供給基板17との間に、約50μm以下の範囲の所定の厚みのスペーサ19を設置する。それによって、前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17との間に介在する金属SiC融液層18の厚みを制御することができる。前記スペーサ19によって、単結晶SiCの成長過程で金属SiC融液層18の厚みを一定に保つ事ができる。
少なくとも1箇所、好ましくは3箇所に略同じ厚みのスペーサ19を設置する。それによって、前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17との間に介在する金属シリコン融液層18の厚みを略均一にすることができる。それによって、得られた成長膜の厚さを成長面全面に亘って均一にする事ができる。
【0027】
前記スペーサ19の数は、前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17等の大きさに合わせて適宜定められる。前記スペーサ19の形状に関して、前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17との距離を単結晶SiCの成長過程で一定に保つ事ができるものであれば、円柱形のもの、直方体等種々の形状が適用され得る。円柱形の場合、前記スペーサ19の直径は前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17等の大きさに合わせて適宜定められる。本実施形態においては約3mmΦ程度である。
【0028】
前記スペーサ19は、C原子供給基板17等を単結晶SiC基板5から持ち上げる為にC原子供給基板17等の下に挟み込まれている。
また、前記スペーサ19は、前記金属Si融液層18側に突出するように、前記C原子供給基板17及び前記単結晶SiC基板5のうち少なくとも一方に、機械加工により設けられた凸部であてもよい。
更にまた、前記スペーサ19は、前記金属Si融液層18側に突出するように、前記C原子供給基板17及び前記単結晶SiC基板5のうち少なくとも一方に、固相反応によって接着された凸部であってもよい。
【0029】
前記Si基板14の上に積層された少なくとも1つの重石23は必要に応じて設けられる。前記重石23は前記C原子供給基板17の上面全体に亘り等しく重力による適当な加圧を行なうために設けられている。重石23の数及び重量は加圧の程度によって、適宜定められる。前記加圧によって、前記単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17との間に介在する金属SiC融液層18の厚みをスペーサの厚みで制御することができる。尚、前記C原子供給基板17の上面への適当な加圧方法はこれに限られない。
【0030】
上記前記Si材料供給源の厚み、スペーサ19の厚み、前記C原子供給基板17の上面への適当な加圧等を調整することにより、単結晶炭化ケイ素基板5と前記C原子供給基板17との間に介在する金属シリコン融液層18の厚みをスペーサの厚みで制御することができる。
さらに、前記Si材料供給源の厚み、スペーサ19の厚み、前記C原子供給基板17の上面への適当な加圧等を調整して、液相エピタキシャル成長で得られる単結晶SiCの所望の厚みより厚い金属Si融液層18により液相エピタキシャル成長を行うようにすることが好ましい。
【0031】
前記C原子供給基板17から金属Si融液層18へ溶け出すC原子は金属Si融液層18の厚みが厚いほど水平方向に拡散できる。
前記単結晶SiC基板5と前記C原子供給基板17との間に介在する金属Si融液層18の厚みが、成長させる単結晶SiCの所望の厚みより厚いと、好ましくは、1400℃以上に加熱する所定の温度と雰囲気の条件の範囲内において可能な限り厚いと、前記種結晶となる単結晶SiC基板5表面上に、単結晶SiCが液相エピタキシャル成長する均一性が飛躍的に向上し、更に、液相エピタキシャル成長で得られる単結晶SiCの厚みが加熱室の温度・時間・雰囲気圧力で制御できる。
そのため、上記金属Si融液層18の厚みの制御方法によって、成長した単結晶炭化ケイ素の表面のステツプバンチのテラス巾を100μmオーダーに、ステップ高さを結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする高さに、マイクロパイプ欠陥の密度を1/cm2以下に制御することができる。その結果、平坦で欠陥の少ない高品質の単結晶炭化ケイ素が製作可能となる。
尚、前記テラスとは複数のステップの中で広い幅を有するステップを指している。
【0032】
また、このような本実施形態に係る単結晶SiC成長方法によって得た単結晶SiCは、結晶欠陥等が少ないために、発光ダイオードや、各種半導体ダイオード、電子デバイスとして使用することが可能となる。加えて、結晶の成長が種結晶及びCの供給源の結晶の温度差に依存せず、種結晶及びCの供給源の結晶の表面エネルギーに依存することから、処理炉内の厳密な温度制御の必要性がなくなり、製造コストの大幅な低減化が可能となる。さらに、種結晶となる単結晶SiC及びC原子供給基板との間隔が非常に小さことから、熱処理時の熱対流を抑制することができる。また種結晶となる単結晶SiC及びC原子供給基板との間に温度差が形成されにくいことから、熱平衡状態で熱処理することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、種結晶として、4H-SiCを用いたが、6H-SiCを使用することも可能である。更に、本実施形態では、種結晶として、(0001)Si面を用いたが、(0001)C面、(11-20)などのその他の面方位のものを使用することも可能である。
また、本発明に係る単結晶SiCは、種結晶となる単結晶SiC及びC原子供給基板の大きさを適宜選択することによって形成される単結晶SiCの大きさを制御することができる。また、形成される単結晶SiCと種結晶との間に歪みが形成されることもないため、非常に平滑な表面の単結晶SiCとできる。そのため、表面の改質膜として適用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 熱処理装置
2 本加熱室
3 予備加熱室
4 前室
5 単結晶SiC基板
6 ハロゲンランプ
7 ゲートバルブ
8 テーブル
9 サセプタ
10 移動手段
11 加熱ヒータ
14 高温時は溶融Si(低温時は金属 Si基板)
16 密閉容器
17 C原子供給基板
18 高温時は金属Si融液層(低温時はSi粉末)
19 スペーサ
23 重石
24 支持基板
25 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板上に、炭素原子を供給するための炭素原子供給基板を重ね、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記炭素原子供給基板との間に極薄金属シリコン融液層を介在させ、1400℃以上2100℃未満の所定の温度で所定の時間加熱処理を行うことによって前記種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の成長方法であって、
前記炭素原子供給基板として多結晶炭化ケイ素基板を除く炭素原子供給基板を用いる単結晶炭化ケイ素成長方法。
【請求項2】
前記炭素原子供給基板として、カーボン基板又は非晶質炭化ケイ素基板を用いる請求項1に記載の単結晶炭化ケイ素成長方法。
【請求項3】
前記単結晶炭化ケイ素基板と前記炭素原子供給基板の間に介在する前記金属シリコン融液層の厚さが全面に亘って均一になるように前記炭素原子供給基板の上面に加圧を行なって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記炭素原子供給基板との間に成長される単結晶炭化ケイ素の厚みを制御する請求項1又は2に記載の単結晶炭化ケイ素の成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155201(P2009−155201A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67377(P2009−67377)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2003−360477(P2003−360477)の分割
【原出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【出願人】(503386207)株式会社エコトロン (8)
【Fターム(参考)】