説明

印刷方法、ヘッドモジュール及び印刷装置

【課題】スペーサ粒子の吐出安定性の高い印刷装置を提供する。
【解決手段】
ヘッド本体20は内部フィルター30によって吐出室21と供給室22に分割されており、噴出口32からスペーサ分散液67を吐出する印刷状態では、供給室22内部でスペーサ分散液を流し、吐出室21内部でスペーサ分散液を流さないようにすれば、噴出口32からの吐出はスペーサ分散液の流れにより生じる圧力の影響を受け難い。逆に、吐出を行わない待機状態では、吐出室21と供給室22の両方でスペーサ分散液を流すようにすれば、スペーサ分散液67中のスペーサ粒子69の沈降が起こらず、内部フィルター30や噴出口32の目詰まりが置き難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷方法に関し、特に液晶ディスプレーのカラーフィルター基板とアレイ基板間等のセルギャップを均一に保つ為のスペーサを基板上の定置に印刷する方法と、その装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スペーサ粒子を基板の所定位置に配置する方法として、スペーサ粒子が溶媒中に分散されたスペーサ分散液を、印刷装置に充填し、その印刷装置のヘッドから基板の所定位置へ向かって吐出させるインクジェット方式が用いられている。
【0003】
インクジェット方式で印刷を行う場合、吐出液にスペーサが均一に分散していないと、吐出が不安定となり、吐出不良を生じたり、吐出速度、吐出方向に異常がでたりまた液滴中の吐出スペーサの個数が安定しないという問題を生じやすい。
【0004】
特開平11−7028の「スペーサ吐出装置および液晶表示素子の製造方法」は、スペーサを含有する溶液を収容する撹拌タンクに冷却手段と圧電素子による超音波発生器とを有し、撹拌タンク内のスペーサを含有する溶液を温度上昇することなく超音波により撹拌分散しスペーサを吐出する事を特徴としているが、インクの否吐出時に撹拌タンクからヘッド間の配管、ヘッドインク室内部等でスペーサの沈降が問題となる。
【0005】
特開2002−72218のスペーサの散布方法および装置では、ヘッドのインク室内のインクを循環できるがインクに混入した異物によるヘッドノズルプレートの目詰まり等で問題となる。
【0006】
装置の大型化に伴いインクボトルからヘッドモジュール迄のインク供給ライン長が長くなりインク供給ライン内部でのスペーサの沈降、凝集が様々の問題を引き起こすこととなる。
【特許文献1】特開平11−7028号公報
【特許文献2】特開2002−72218号公報
【特許文献3】特開2002−277622号公報
【特許文献4】特開2003−275659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、スペーサ粒子の分散状態を常に均一に維持した状態で、印刷可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、内部フィルターによって供給室と吐出室に分割されたヘッド本体の、前記供給室に供給されたスペーサ分散液を前記内部フィルターを通過させて、前記吐出室に供給し、前記吐出室に設けられた噴出孔から印刷対象物に向けて吐出する印刷方法であって、前記印刷対象物に前記スペーサ分散液を吐出する印刷状態では、前記供給室に供給された前記スペーサ分散液の少なくとも一部を前記供給室から排出し、前記印刷対象物に前記スペーサ分散液を吐出しない待機状態では、前記スペーサ分散液を少なくとも前記吐出室に供給し、前記吐出室に供給された前記スペーサ分散液を前記吐出室から排出する印刷方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷方法であって、前記待機状態は、前記スペーサ分散液を前記供給室にも供給し、前記供給室に供給された前記スペーサ分散液を排出する印刷方法である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の印刷方法であって、前記供給室から排出された前記スペーサ分散液を、前記吐出室と前記供給室のいずれか一方又は両方へ戻す印刷方法である。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の印刷方法であって、前記吐出室から排出された前記スペーサ分散液を、前記吐出室と前記供給室のいずれか一方又は両方へ戻す印刷方法である。
請求項5記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の印刷方法であって、前記待機状態は、前記吐出室から排出された前記スペーサ分散液と、前記供給室から排出された前記スペーサ分散液を混合した後、前記吐出室と前記供給室の両方へ戻す印刷方法である。
請求項6記載の発明は、内部中空のヘッド本体と、前記ヘッド本体の一壁面を構成するノズルプレートと、前記ノズルプレートに設けられた1又は2以上の噴出孔と、前記ヘッド本体内部にスペーサ分散液を供給する供給部と、前記ヘッド本体内部から前記スペーサ分散液を排出する排出部とを有し、前記供給部から供給された前記スペーサ分散液は、前記噴出孔から吐出されるように構成されたヘッドモジュールであって、前記ヘッド本体の内部空間は、前記スペーサ分散液が通過可能な内部フィルターによって前記ノズルプレート側の吐出室と、前記ノズルプレートとは反対側の供給室とに区分けされ、前記供給部は、前記吐出室に設けられた吐出側流入口と、前記供給室に設けられた供給側流入口とを有し、前記スペーサ分散液は前記吐出側流入口から前記吐出室へ供給され、前記供給側流入口から前記供給室へ供給されるように構成され、前記排出部は、前記吐出室に設けられた吐出側排出口と、前記供給室に設けられた供給側排出口とを有し、前記スペーサ分散液は前記吐出側排出口と、前記供給側排出口を通って、前記吐出室と前記供給室からそれぞれ排出されるように構成されたヘッドモジュールである。
請求項7記載の発明は、請求項6記載のヘッドモジュールであって、循環系を有し、前記循環系は、前記排出部へ排出された前記スペーサ分散液を前記供給部へ戻すように構成されたヘッドモジュールである。
請求項8記載の発明は、請求項7記載のヘッドモジュールであって、前記循環系は、前記吐出側排出口から排出された前記スペーサ分散液と、前記供給側排出口から排出された前記スペーサ分散液を混合し、前記供給部へ戻すように構成されたヘッドモジュールである。
請求項9記載の発明は、請求項7又は請求項8のいずれか1項記載のヘッドモジュールであって、前記循環系は、スペーサ分散液が蓄液されるバッファ室を有し、前記バッファ室に蓄液された前記スペーサ分散液は前記供給部へ供給され、前記排出部から排出された前記スペーサ分散液は、前記バッファ室に戻すように構成されたヘッドモジュールである。
請求項10記載の発明は、スペーサ分散液が蓄液される貯留系と、前記貯留系から前記スペーサ分散液が供給される1又は2以上のヘッドモジュールとを有する印刷装置であって、前記各ヘッドモジュールは、請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載のヘッドモジュールで構成され、前記スペーサ分散液は前記貯留系から前記循環系に供給されるように構成された印刷装置である。
【発明の効果】
【0009】
スペーサ粒子を分散させたスペーサ分散液の液中で、スペーサ粒子の凝集および沈降させることなく、スペーサ分散液をヘッド本体に安定に供給する事が可能となり、複数ヘッドを用いた大型基板対応のスペーサ吐出装置の実用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2の符号2は本発明のヘッドモジュールの一例を示しており、このヘッドモジュール2は、ヘッド本体20と、ノズルプレート31と、供給部25と、排出部26と、循環系10とを有している。
【0011】
ヘッド本体20の内部は中空にされており、ノズルプレート31はヘッド本体20の一壁面で構成されている。ヘッド本体20の内部には、内部フィルター30が、ノズルプレート31と、ヘッド本体20のノズルプレート31とは反対側の壁面の両方から離間して配置されており、ヘッド本体20の内部は内部フィルター30と壁面との間の空間と、内部フィルター30とノズルプレート31との間の空間に分けられた状態になっている。
【0012】
図2の符号21はノズルプレート31と、内部フィルター30と、ヘッド本体20の側壁で取り囲まれた吐出室を示しており、同図の符号22はヘッド本体20のノズルプレート31と反対側の壁面と、内部フィルター30と、ヘッド本体20の側壁で取り囲まれた供給室を示している。
【0013】
循環系10は循環路11と、循環路11の途中に設けられたバッファ室17とを有している。バッファ室17には供給路56の一端が接続され、供給路56に設けられた供給元バルブ41をあけると、バッファ室17は後述する大循環路50に接続され、大循環路50を流れるスペーサ分散液がバッファ室17に流れ込むようになっている。
【0014】
バッファ室17に流れ込んだスペーサ分散液はその液量が設定量を超えると、循環路11の一端部側に流れ出す。バッファ室17は後述するメニスカス制御機構8に接続されており、メニスカス制御機構8はメニスカスの微調整のためバッファ室17とスペーサ分散液又は溶剤のやり取りが行われるが、そのスペーサ分散液又は溶剤がバッファ室17に供給されると、大循環路11から供給されたスペーサ分散液とバッファ室17で混合され、一緒に循環路11の一端部側に流れ出す。
【0015】
供給部25は、一端が循環路11の一端部に接続された第一、第二の供給管13、14と、第一、第二の供給管13、14と循環路11の接続位置に設けられた供給側切替バルブ43と、供給室22の壁面に設けられ、第一の供給管13の他端が接続された供給室側流入口23と、吐出室21の壁面に設けられ、第二の供給管14の他端が接続された吐出室側流入口24とを有しており、供給側切替バルブ43の切替によって、バッファ室17が循環路11を介して吐出室21と供給室22のいずれか一方又は両方に接続され、循環路11を流れるスペーサ分散液が吐出室21と供給室22のいずれか一方又は両方に流れ込むようになっている。
【0016】
第一、第二の供給管13、14の途中には、第一、第二の外部フィルター37、38が設けられており、スペーサ分散液は外部フィルター37、38を通過する時に、スペーサ粒子が凝集した粒子塊や、ゴミが除去されるので、吐出室21と供給室22には、スペーサ粒子が分散された状態のスペーサ分散液が供給される。
【0017】
図3を参照し、ノズルプレート31には1又は2以上の噴出孔32が設けられている。ノズルプレート31と、ノズルプレート31上のピエゾ支持板35との間の位置であって、噴出孔32の近傍位置にはそれぞれピエゾ素子36が設けられており、印刷を停止した状態では、ピエゾ素子36の圧力が、吐出室22内部の圧力よりも大きくされているので、噴出孔32からスペーサ分散液67が吐出されないようになっている。
【0018】
排出部26は、供給室22壁面の供給室側流入口23と離間した位置に設けられた供給室側排出口27と、吐出室21壁面の吐出室側供給口24と離間した位置に設けられた吐出室側排出口28と、一端が供給室側排出口27に接続された第一の排出管18と、一端が吐出室側排出口28に接続された第二の排出管19とを有しており、供給室22内部を供給室側流入口23から供給室側排出口27に向かって流れたスペーサ分散液は第一の排出管18へ排出され、吐出室21内部を吐出室側流入口24から吐出室側排出口28に向かって流れたスペーサ分散液は第二の排出管19に排出される。
【0019】
第一の排出管18の他端は、循環路11の第一、第二の供給管13、14が接続された側とは反対側の端部に接続され、第二の排出管19の他端は、一端が後述する大循環路に接続された排出路57の他端に接続されている。
【0020】
第一の排出管18と循環路11の接続位置と、第二の排出管19と排出路57の接続位置は連結管49で接続されており、第一の排出管18と循環路11と連結管49の接続位置に設けられた切替バルブ42と、第二の排出管19と排出路57と連結管49の接続位置に設けられた切替バルブ44の切替によって、吐出室21と供給室22は循環路11と排出路57のいずれかに接続され、供給室22から第一の排出管18に排出されたスペーサ分散液は循環路11か排出路57のいずれかに排出され、吐出室21から第二の排出管19に排出されたスペーサ分散液は循環路11か排出路57のいずれかに排出される。
【0021】
ここでは、循環路11の排出部26とバッファ室17の間の位置に循環ポンプ15が設けられており、排出部26から排出されたスペーサ分散液は、循環ポンプ15の動作によって、バッファ室17へ戻され、再び供給部25へ送られる。
【0022】
従って、排出部26から排出路57にスペーサ分散液が排出されないときには、スペーサ分散液はバッファ室17と、供給部25と、排出部26との間で循環することになる。
【0023】
バッファ室17には、不図示の攪拌手段が設けられており、該攪拌手段を動作させると、バッファ室17内部のスペーサ分散液に超音波が断続的又は連続的に照射され、該超音波によってスペーサ分散液は攪拌され、スペーサ粒子が均一に分散された状態になる。
【0024】
従って、大循環系50から新たに供給されるスペーサ分散液も、排出部26かから戻ったスペーサ分散液も、バッファ室17内部で分散状態が均一にされ、ヘッドモジュール2内部を循環する。
【0025】
バッファ室17には不図示の温度制御手段が設けられており、バッファ室17内部のスペーサ分散液の温度が設定温度を超えると、温度制御手段によってバッファ室17が冷却され、熱伝導によってその内部のスペーサ分散液が冷却されるようになっているので、超音波振動によってバッファ室17内のスペーサ分散液が加熱されても、その温度は常に一定温度に維持される。
【0026】
次に、このヘッドモジュール2を用いた印刷装置の一例について説明する。
【0027】
図1の符号1は本発明の印刷装置の一例を示しており、この印刷装置1は貯留系5と、大循環路50と、上述したヘッドモジュール2を1又は2以上有している。ここでは、印刷装置1はヘッドモジュール2を4つ有しており、各ヘッドモジュール2と、その部材にはそれぞれ添え字a〜dを付して区別する。
【0028】
貯留系5は貯留タンク58と、バッファタンク59とを有している。貯留タンク58の内部にはスペーサ分散液が蓄液されており、該スペーサ分散液は供給ポンプ79によって貯留タンク58からバッファタンク59に供給され、バッファタンク59内部に一旦蓄液されると共に、バッファタンク59に過剰に蓄液されたものは貯留タンク58に戻るようになっている。
【0029】
貯留タンク58とバッファタンク59は不図示の攪拌手段をそれぞれ有しており、貯留タンク58内とバッファタンク59内にそれぞれ蓄液されたスペーサ分散液は攪拌手段で攪拌され、スペーサ粒子が均一に分散された分散状態が維持されるようになっている。
【0030】
大循環路50は両端がバッファタンク59に接続されており、大循環路50に設けられた大循環ポンプ55を動作させると、バッファタンク59に蓄液されたスペーサ分散液が、大循環路50に引き込まれ、大循環路50内を一端から他端に向かって流れた後、再びバッファタンク59に戻る。即ち、大循環ポンプ55の動作によって、スペーサ分散液がバッファタンク59と大循環路50との間で循環するようになっている。
【0031】
大循環路50のバッファタンク59からスペーサ分散液が供給される側を上流側、スペーサ分散液がバッファタンク59へ戻る他端側を下流側とすると、各ヘッドモジュール2a〜2dの供給路56a〜56dは、大循環路50に上流側から下流側に向かって順番に接続されており、供給路56a〜56dに設けられた供給元バルブ41を開けて、大循環路50とバッファ室17を接続すると、スペーサ分散液がバッファ室17に流れ込む。
【0032】
大循環路50は、各供給路56a〜56dを流れるスペーサ分散液の合計量よりも多量のスペーサ分散液を流すように構成されているので、各供給元バルブ41を同時に開けると、上流側の供給路56aだけではなく、下流側の供給路56dにもスペーサ分散液が到達し、結局、全てのヘッドモジュール2a〜2dにスペーサ分散液が供給されるようになっている。
【0033】
バッファ室17には不図示の液量制御手段が設けられており、液量制御手段が検出するバッファ室17内部の液量が設定量未満になると、液量制御手段がバッファ室17を大循環路50に接続してスペーサ分散液をバッファ室17に供給し、逆にバッファ室17内部の液量が設定量を超えると、液量制御手段がバッファ室17を大循環路から遮断してスペーサ分散液の供給を停止する。
【0034】
また、メニスカス制御機構8のタンク80内にはスペーサ分散液や溶剤等のバッファ液が蓄液されており、タンク80内のバッファ液の液面高さは、噴出孔32内でスペーサ分散液が大気と接する面(メニスカス)の高さと連動して変化し、メニスカス制御機構80は、その変動量に応じた量のバッファ液を減圧機構によってタンク80からバッファ室17へ供給し、メニスカスを常に一定の状態に維持する。
【0035】
即ち、このヘッドモジュール2では、大循環路50からヘッドモジュール2へのスペーサ分散液の供給を制御すると共に、メニスカス制御機構8によってヘッドモジュール2内の液量を微調整することで、常にヘッドモジュール2内の液量が一定に維持され、その結果、スペーサ分散液の吐出が安定して行われる。
【0036】
各ヘッドモジュール2a〜2dの排出路57a〜57dは、最下流に位置する供給路56dよりも更に下流側の位置で、大循環路50に接続されており、各ヘッドモジュール2a〜2dの排出部26から排出されるスペーサ分散液は、大循環路50に排出されると、再びバッファタンク59へ戻るようになっている。
【0037】
尚、この印刷装置1は各ヘッドモジュール2a〜2dを洗浄する洗浄機構70を有している。洗浄機構70は、有機溶媒のような洗浄液が充填された洗浄タンク71と、一端が洗浄タンク71に接続され、他端が供給路56a〜56dの接続位置と排出路57a〜57dの接続位置の間の位置で、大循環路50に接続された洗浄系72とを有している。
【0038】
洗浄タンク71の洗浄液は、洗浄系72と大循環路50とを通り、バッファタンク59へ送られる前に、大循環路50からドレインタンク3に排出されるようになっている。
【0039】
洗浄系72には、各ヘッドモジュール2の洗浄路の一端が接続されており、図2を参照し、1つのヘッドモジュール2について説明すると、洗浄路75の途中に設けられた切替バルブ76を開けると洗浄系72の洗浄液が洗浄路75に供給される。
【0040】
ここでは洗浄路75の他端は第二の供給管14の途中に接続されており、その接続位置に設けられた切替バルブ77と、供給側切替バルブ43の切替によって、洗浄路75が第一、第二の供給管13、14を介して吐出室21と供給室22のいずれか一方又は両方に接続され、洗浄液が供給されると同時に、洗浄路75に接続されたものはバッファ室17から遮断され、スペーサ分散液の供給が停止される。
【0041】
吐出室21や供給室22に洗浄液が供給されると、内部に残留するスペーサ分散液は洗浄液で押し流され、他の不純物と一緒に第一、第二の排出管18、19へ排出される。
【0042】
排出部26の切替バルブ42、44の切替によって、第一、第二の排出管18、19へ排出された洗浄液を、排出路57へ排出させれば、洗浄液は排出路57から大循環路50へ排出され、大循環路50からバッファタンク59に戻らず、ドレインタンク3に排出される。
【0043】
次に、この印刷装置1を用いて、印刷対象物である基板にスペーサ分散液を吐出する方法について説明する。
【0044】
大循環ポンプ55を動作させ、大循環路50とバッファタンク59の間でスペーサ分散液を循環させながら、上述した液量制御手段により、各ヘッドモジュール2a〜2dのバッファ室17内部の液量を一定に維持する。
【0045】
その状態で各ヘッドモジュール2a〜2dの循環ポンプ15を動作させ、第一、第二の供給管13、14と、第一、第二の排出管18、19がバッファ室17に接続されるように、供給側切替バルブ43と、排出部26の切替バルブ42、44を切り替えると、スペーサ分散液は吐出室21内部と供給室22内部の両方を流れ、吐出室21を流れたスペーサ分散液と、供給室22を流れたスペーサ分散液は同じ循環路11で混合され、バッファ室17を通過し、再び供給部25側へ送られる。
【0046】
このとき、吐出室21内部でも供給室22内部でもスペーサ分散液は停滞せず、流れる状態が維持されるので、スペーサ粒子は液中で沈降せず、分散された状態が維持される。
【0047】
その状態を維持しながら、各ヘッドモジュール2a〜2dのノズルプレート31と印刷対象物である基板とを対向させ、噴出孔32が基板の印刷位置と対向するように位置合わせを行う。
【0048】
印刷位置の真上の噴出孔32に対応するピエゾ素子36を振動させると、その噴出孔32から印刷位置に向かってスペーサ分散液67が吐出される。
【0049】
スペーサ分散液67が噴出孔32から吐出される直前に、スペーサ分散液がバッファ室17と供給室22との間で循環する状態を維持しながら、吐出室21を排出路57とバッファ室11の両方から遮断されるように供給側切替バルブ43と、排出部26の切替バルブ42、44が切替えると、供給室22内部ではスペーサ分散液が流れるが、吐出室21内部はスペーサ分散液が流れない。
【0050】
噴出孔32からスペーサ分散液67を吐出する間(印刷状態)、その状態を維持すると、噴出孔32にスペーサ分散液67の流れによる圧力変化の影響が出ないので、噴出孔32から吐出されるスペーサ分散液67の吐出量は一定になる。
【0051】
噴出孔32からスペーサ分散液67が吐出されると、その液量が減少するが、内部フィルター30にはスペーサ分散液中のスペーサ粒子69と、溶媒68とを通過可能な不図示の通路が形成されており、スペーサ分散液67は内部フィルター30の通路を通って吐出室21に補充される。
【0052】
印刷状態では、供給室22にはバッファタンク17からのスペーサ分散液68が常に供給されており、バッファタンク17内のスペーサ分散液は、上述したように液量制御手段とメニスカス制御機構8によってその液量が常に一定に維持されるので、吐出室21内部には常に一定量のスペーサ分散液67が配置され、噴出孔32内のメニスカスは常に一定の状態に維持され、その結果スペーサ分散液の吐出が安定して行われる。
【0053】
印刷位置に設定量のスペーサ分散液の吐出を終了したところで、噴出孔32からの吐出を停止して印刷状態を終了し、供給室22と吐出室21の両方をバッファ室17に接続するように供給側切替バルブ43と、排出部26の切替バルブ42、44を切替え、スペーサ分散液が供給室22と吐出室21の両方を供給された後、同じバッファタンク17に戻るように循環させれば、スペーサ分散液が供給室22内部と吐出室21内部の両方で流れる。
【0054】
例えば、印刷が終了した基板と新たな基板を交換する間や、上述した基板の位置合わせを行う場合のように、比較的短時間の間印刷を停止する待機状態で、スペーサ分散液が供給室22と吐出室21内部で流れるようにすれば、吐出室21や供給室22内部でスペーサ粒子の沈降が起こらず、内部フィルター30や噴出孔32の目詰まりが起こらない。
【0055】
尚、数時間以上印刷を停止する場合には、上述した洗浄機構70によって吐出室21内部と供給室22内部のスペーサ分散液を排出すれば、大循環ポンプ50や循環ポンプ15を停止しても、内部フィルター30や噴出孔32がスペーサ粒子で目詰まりすることがない。
【0056】
印刷装置1が複数ヘッドモジュール2a〜2dを有する場合には、全部のヘッドモジュール2a〜2dを用いて同時に印刷を行えば、大型基板の広い印刷位置にスペーサ分散液を印刷することができる。また、複数のヘッドモジュール2a〜2dのうち1又は2以上のヘッドモジュール2a〜2dを選択して印刷を行う場合には、印刷を行わないヘッドモジュール2a〜2dを上述した待機状態におけば、ヘッドモジュール2a〜2dにスペーサ粒子の目詰まりが起こらない。
【0057】
以上は、バッファ室17だけに温度制御手段を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第一、第二の外部フィルター37、38のいずれか一方又は両方に温度制御手段を設け、測定されるスペーサ分散液の温度に基づき、第一、第二の外部フィルター37、38のいずれか一方又は両方を加熱又は冷却することで、第一、第二の外部フィルター37、38を通過した後のスペーサ分散液を設定温度にすることができる。スペーサ分散液の温度制御は、バッファ室17と第一、第二の外部フィルター37、38のいずれか一方で行ってもよいし、両方で行ってもよい。
【0058】
本発明に用いるスペーサ粒子の種類は特に限定されるものではないが、例えば直径4μm以上6μm以下のものを用いることができる。
【0059】
内部フィルター30の種類も特に限定されず、不織布、金属製フィルター等種々のものを用いることができるが、スペーサ粒子を通過させる通路の直径は、スペーサ粒子の直径の2倍以上が好ましい。
【0060】
噴出孔32の形状や大きさも特に限定されるものではないが、安定した吐出性を考慮すると、内部フィルター30の通路の直径の2倍以上の直径を有するものが好ましい。また、ノズルプレート26の噴出孔32の大きさは、目的とする吐出液滴サイズにより選定する事ができるが、その直径は20μm以上40μm以下が望ましい。
【0061】
また、バッファ室17内の超音波照射は、そのヘッドモジュール2で印刷が行われる時だけ照射してもよいし、ヘッドモジュール2で印刷が行われないときも照射を続けてもよい。超音波照射を行うときは、超音波照射を連続して行ってもいし、断続的に行ってもよい。
【0062】
以上は、噴出孔32の近傍にピエゾ素子を設けるピエゾ素子方式で噴出孔32での吐出を制御する場合について説明したが、吐出の制御法はこれに限定されず、バブルジェット(登録商標である)方式、サーマルジェット方式等種々の方式を採用することができる。
【実施例】
【0063】
〔スペーサ粒子吐出個数〕
上記図1、2に示した印刷装置1で、市販のスペーサ分散溶液の印刷を行い、吐出される液滴中のスペーサ固数の評価を行なった。
【0064】
尚、スペーサ分散溶液は、市販のスペーサ散布用に製造されているスペーサ粒子をアルコール系混合溶媒に分散させ、凝集体を事前にフィルターで除去し調整したものであって、スペーサ粒子の粒子系が4.1μm、スペーサ粒子の濃度を0.1wt%に調整したものを用いた。
【0065】
ノズル(噴出孔32)径が28μmの場合は、吐出液滴サイズは20plであり、1液滴中のスペーサ個数は3.2±0.2であった。
【0066】
更に、ノズル径が23μmの場合は、吐出液滴サイズが8plであり、1液滴中のスペーサ個数は2.0±0.9であった。
【0067】
これらの結果から、ノズル径を変えることで、吐出液滴サイズと、液滴中のスペーサ個数を容易に制御可能なことがわかる。
【0068】
〔吐出安定性評価試験〕
図1、2に示した印刷装置1を用い、大循環路50でスペーサ分散液を循環させながら、供給室22内部でスペーサ分散液を流す場合(実施例1)と、大循環路50だけでスペーサ分散液の循環を行い、供給室22内部でスペーサ分散液を流さない場合(比較例1)と、大循環路50でスペーサ分散液を循環させ、供給室22内部でスペーサ分散液を流すと同時に、バッファ室17内に蓄液されたスペーサ分散液に超音波照射を行った場合(実施例2)の3つの条件で、噴出孔32からスペーサ分散液の連続吐出を60分間行い、連続吐出時の液滴中のスペーサ数の評価を行なった。
【0069】
その結果を下記表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
上記表1から明らかなように、印刷状態において供給室22でスペーサ分散液を流さない比較例1は、60分後に初期の2.0±0.9個から1.5±1.0個までスペーサ数の減少が観察された。一方、供給室22内でスペーサ分散液を流した実施例1は60分で1.9±0.9個とスペーサ数の減少に対する改善が見られた。更に供給室22内部でスペーサ分散液を流しながら、超音波照射を行なった実施例2では、60分後でも変化無く、吐出安定性の効果が確認された。
【0072】
60分の連続吐出後、ヘッドモジュール2内の超音波照射、スペーサ分散液の循環、ヘッドモジュール2のフラッシイング操作後のスペーサ数の評価を行なった所、ヘッドモジュール2内循環無しの場合でもメインテナンス操作により初期の2.0±0.9個に復帰した。
【0073】
このように、供給室22にスペーサ分散液を流し、より好ましくはヘッドモジュール2内のスペーサ分散液に超音波照射を行うことで、印刷状態での吐出安定性が向上することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の印刷装置の一例を説明する図
【図2】本発明のヘッドモジュールを説明する図
【図3】本発明に用いるヘッド本体の一例を説明する拡大断面図
【符号の説明】
【0075】
1……印刷装置 2……ヘッドモジュール 5……貯留系 10……循環系 17……バッファ室 20……ヘッド本体 21……吐出室 22……供給室 25……供給部 26……排出部 30……内部フィルター 31……ノズルプレート 32……噴出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部フィルターによって供給室と吐出室に分割されたヘッド本体の、前記供給室に供給されたスペーサ分散液を前記内部フィルターを通過させて、前記吐出室に供給し、前記吐出室に設けられた噴出孔から印刷対象物に向けて吐出する印刷方法であって、
前記印刷対象物に前記スペーサ分散液を吐出する印刷状態では、前記供給室に供給された前記スペーサ分散液の少なくとも一部を前記供給室から排出し、
前記印刷対象物に前記スペーサ分散液を吐出しない待機状態では、前記スペーサ分散液を少なくとも前記吐出室に供給し、前記吐出室に供給された前記スペーサ分散液を前記吐出室から排出する印刷方法。
【請求項2】
前記待機状態は、前記スペーサ分散液を前記供給室にも供給し、前記供給室に供給された前記スペーサ分散液を排出する請求項1記載の印刷方法。
【請求項3】
前記供給室から排出された前記スペーサ分散液を、前記吐出室と前記供給室のいずれか一方又は両方へ戻す請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の印刷方法。
【請求項4】
前記吐出室から排出された前記スペーサ分散液を、前記吐出室と前記供給室のいずれか一方又は両方へ戻す請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の印刷方法。
【請求項5】
前記待機状態は、前記吐出室から排出された前記スペーサ分散液と、前記供給室から排出された前記スペーサ分散液を混合した後、前記吐出室と前記供給室の両方へ戻す請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の印刷方法。
【請求項6】
内部中空のヘッド本体と、
前記ヘッド本体の一壁面を構成するノズルプレートと、
前記ノズルプレートに設けられた1又は2以上の噴出孔と、
前記ヘッド本体内部にスペーサ分散液を供給する供給部と、
前記ヘッド本体内部から前記スペーサ分散液を排出する排出部とを有し、
前記供給部から供給された前記スペーサ分散液は、前記噴出孔から吐出されるように構成されたヘッドモジュールであって、
前記ヘッド本体の内部空間は、前記スペーサ分散液が通過可能な内部フィルターによって前記ノズルプレート側の吐出室と、前記ノズルプレートとは反対側の供給室とに区分けされ、
前記供給部は、前記吐出室に設けられた吐出側流入口と、前記供給室に設けられた供給側流入口とを有し、前記スペーサ分散液は前記吐出側流入口から前記吐出室へ供給され、前記供給側流入口から前記供給室へ供給されるように構成され、
前記排出部は、前記吐出室に設けられた吐出側排出口と、前記供給室に設けられた供給側排出口とを有し、前記スペーサ分散液は前記吐出側排出口と、前記供給側排出口を通って、前記吐出室と前記供給室からそれぞれ排出されるように構成されたヘッドモジュール。
【請求項7】
循環系を有し、前記循環系は、前記排出部へ排出された前記スペーサ分散液を前記供給部へ戻すように構成された請求項6記載のヘッドモジュール。
【請求項8】
前記循環系は、前記吐出側排出口から排出された前記スペーサ分散液と、前記供給側排出口から排出された前記スペーサ分散液を混合し、前記供給部へ戻すように構成された請求項7記載のヘッドモジュール。
【請求項9】
前記循環系は、スペーサ分散液が蓄液されるバッファ室を有し、
前記バッファ室に蓄液された前記スペーサ分散液は前記供給部へ供給され、
前記排出部から排出された前記スペーサ分散液は、前記バッファ室に戻すように構成された請求項7又は請求項8のいずれか1項記載のヘッドモジュール。
【請求項10】
スペーサ分散液が蓄液される貯留系と、
前記貯留系から前記スペーサ分散液が供給される1又は2以上のヘッドモジュールとを有する印刷装置であって、
前記各ヘッドモジュールは、請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載のヘッドモジュールで構成され、
前記スペーサ分散液は前記貯留系から前記循環系に供給されるように構成された印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−122814(P2006−122814A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314499(P2004−314499)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】