反射型センサ
【課題】 遮光手段を用いずに光源からの発散光がパッケージの外界との境界面で全反射して、受光素子に入射することを防止する。
【解決手段】 光線L0は発光素子23から出射した光線のうち、境界面53で屈折して透過し反射スケール21で反射し、最後に受光領域S2に導かれる光線群であり、この光路がセンサ信号を得るための有効光となる。光線Laは境界面53で全反射してパッケージ内を伝搬する光線であり、この光線Laはセンサ信号光とは無関係なノイズ光であり、受光すべきでない光線である。この光線Laが受光領域S2に入射すると、センサ信号のS/Nが低下してしまうことになる。また、光線Lbは境界面53を挿通し反射スケール21に至ることなく、外方に出射してしまうので、精度等に対する影響は殆どない。不要な光線Laが受光素子24の受光領域S2に入射しないように、発光素子23の発光領域S1を基準として、受光領域S2を決定する。
【解決手段】 光線L0は発光素子23から出射した光線のうち、境界面53で屈折して透過し反射スケール21で反射し、最後に受光領域S2に導かれる光線群であり、この光路がセンサ信号を得るための有効光となる。光線Laは境界面53で全反射してパッケージ内を伝搬する光線であり、この光線Laはセンサ信号光とは無関係なノイズ光であり、受光すべきでない光線である。この光線Laが受光領域S2に入射すると、センサ信号のS/Nが低下してしまうことになる。また、光線Lbは境界面53を挿通し反射スケール21に至ることなく、外方に出射してしまうので、精度等に対する影響は殆どない。不要な光線Laが受光素子24の受光領域S2に入射しないように、発光素子23の発光領域S1を基準として、受光領域S2を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から投光される光を測定対象物に投射し、反射光を受光素子で受光して、その光量変化によって測定対象物の変位を検知する反射型センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図23は従来の反射型エンコーダの斜視図、図24はそのXZ断面図、図25はX軸である変位検出軸と直交するYZ断面図を示している。LEDチップから成る発光素子1からの放射光線のうちの反射スケール2からの反射光線を、信号処理回路を内蔵したフォトICチップから成る受光素子3で受光する。発光素子1及び受光素子3の半導体素子はプリント基板4上にダイボンディングされ、更に透光性の樹脂5と透明ガラス基板6による透明部材で覆われている。これらの発光素子1、受光素子3、基板4、樹脂5、透明ガラス基板6により検出ヘッド7が構成されている。一方、反射スケール2は反射スケール基材8と反射層9と反射層10を含む反射層形成部11から成り、このような反射型エンコーダは例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
図26は特許文献2に開示された従来の他の反射型エンコーダの検出ヘッド部の斜視図、図27は断面図である。基板12上には、所定形状の回路パターン12aが形成され、回路パターン12aには、発光領域13aを有する発光素子13、受光領域14aを有し信号処理回路を内蔵した受光素子14がダイボンディングされている。そして、発光素子13、受光素子14の各端子はワイヤ15により接続されている。
【0004】
発光素子13、受光素子14、ワイヤ15は透明樹脂材で形成した包囲部材16、透明ガラス基板17によって覆われている。包囲部材16は図27に示すように、最低でも発光素子13、受光素子14の部品の高さ以上が必要で、更にワイヤ15のループ高さ、光半導体部品の基板12への接合代を考慮して、包囲部材16の厚みが決定されている。
【0005】
図26、図27に示すように、発光素子13と受光素子14のほぼ中間位置には遮光壁18が形成され、この遮光壁18の直下には回路パターン12aが配置されている。図27に示すように、遮光壁18は幅Wのきり通しの溝に遮光性の樹脂を充填して形成され、遮光樹脂充填前の溝の深さは、包囲部材16と透明ガラス基板17の厚みよりも若干浅くされ、基板12上の回路パターン12aが保護されている。
【0006】
この遮光壁18を設けることにより、発光素子13の発光領域13aから放射された光が、包囲部材16の内部を伝搬して受光素子14の受光領域14aに入射することが防止されている。
【0007】
また、このような発光素子13、受光素子14間の遮光手段については、汎用的に用いられる反射型センサや反射型フォトインタラプタ等において、様々な方法が提案され、例えば特許文献3〜5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−337052号公報
【特許文献2】特開2004−6753号公報
【特許文献3】特開2000−277796号公報
【特許文献4】特許3782489号公報
【特許文献5】特許3261280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の反射型エンコーダや反射型センサにおける光半導体パッケージにおいては、次のような問題がある。例えば、図25において、角度θ1に含まれる光線は、発光素子1の発光領域から反射スケール2を介して受光素子3の受光領域に導かれる有効光線である。この場合に、発光素子1の最大強度を示す主光線軸a1からθ2の角度で大きく傾いていると、傾いた光線を中心とした角度範囲θ1の光線は、発光素子1が放出する全放射光線の内のごく僅かである。従って、殆どの光線は無効な成分となり、光の利用効率が極めて悪いという問題がある。
【0010】
この図25の一部を拡大して示す図28において、パッケージ内の発光素子1と受光素子3間の光線の作用に注目すると、発光素子1から出射し、透明ガラス基板6の表面部6aにおいて反射した光線Lで代表されるような光線パスが存在する。角度θ3が臨界角(=θi)を超えた場合には、光線Lは全反射して受光素子3に入射することになり、大きなバイアス成分の光となって、センサ信号に重畳してしまうという問題が発生する。
【0011】
このような場合には、有効反射光線が僅かで、一方でバイアス成分の光線が大きいという関係から、センサ信号の実質的なS/Nは大きく低下する。有効光線を拡大するためには、レンズを用いて有効光線を得ることができるが、レンズを用いると、レンズの光軸と発光素子1、受光素子3の位置ずれによりセンサとしての特性がばらついてしまうことになる。
【0012】
また、受光素子3の受光面積を拡大する手段が容易に考えられるが、同時に透明ガラス基板6の表面部6aからの全反射光も多く受光してしまうことになり、センサ信号として実質的なS/Nの改善効果は殆どない。また、検出ヘッド7全体が大きくなってしまい、更にコストアップにもつながり経済的な不利がある。
【0013】
受光素子3に届く僅かな光量を補うために、発光素子1の発光量を増大させることも容易に考えられるが、この場合には消費電力の増大と発光素子1に過剰な電流を流すことになり、発光素子1の寿命が短くなるという問題が生ずる。更に、信号処理回路内で信号増幅する手段も考えられるが、この方法も電気ノイズ成分が増大してしまい、実質的に有効な手段とならず、位置検出精度に影響を与え、好ましくない。
【0014】
上述のレンズの採用、受光面積の拡大、発光素子1の光量アップ、そして受光素子3上の信号回路部での信号増幅率の向上等の何れの手段も、大幅な特性改善には至らないか、或いは特性のばらつきが大きくなる。
【0015】
次に、図26、図27の遮光手段を用いる方法は、上述した従来技術における課題の1つであったバイアス成分の光を防止したもので、その改善効果は大きい。しかし、これらの遮光手段を用いた場合において、図29のグラフ図に示すようにアナログ出力の反射型センサの出力電圧Vは、反射型センサと被測定対象となる反射試料との距離Gに対応して、変化する。
【0016】
即ち、個々の反射型センサは、発光素子13、受光素子14の実装位置及びこれらの中間に配設される遮光壁18の位置ばらつき、或いは受光感度のばらつきによって、図27に示す反射試料までの距離dに対する出力電圧Vは等しくならない。つまり、固体差により得られる出力電圧は、図29の縦軸に示すようにv1、v2、v3のようなばらついた値となる。
【0017】
また、距離G1以下の領域で使用した場合には、反射型センサと反射試料との距離感度が高くなるために、このような近接距離領域での使用は実用上避けなければならず、その分だけ余分な空間領域を必要とすることになる。
【0018】
更に、発光素子13と受光素子14の中間位置に遮光手段としての遮光体を配設することになるので、発光素子13と受光素子14の間隔を必然的に広げなければならず、素子の実装面積が増大し、反射型センサの小型化の妨げとなる。また、遮光手段を用いることでのコストアップも避けられない。
【0019】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、遮光手段を使用せずに光源からの発散光がパッケージの外界との境界面で全反射して、受光素子に入射することを防止する反射型センサを提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、被測定対象からの有効反射光線の光強度を増加することで、センサ信号としてのS/Nの向上を図る反射型センサを提供することにある。
【0021】
本発明の更に他の目的は、被測定物との近接距離領域での信号特性を改善し、特性のばらつきが少ない安定した品質と信頼性を確保する反射型センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係る反射型センサの技術的特徴は、基板上に配設した発光素子と受光素子とを透明部材で覆った反射型センサであって、前記発光素子から出射した光線のうち、前記透明部材の外界との境界面で全反射して前記透明部材内に戻る光線よりも前記発光素子寄りに前記受光素子による受光領域を設けたことにある。
【0023】
また、本発明に係る反射型センサの技術的特徴は、基板上に発光素子と受光素子を並置して透明部材で覆った反射型センサであって、前記基板に平行な外界との境界面を有する前記透明部材の屈折率をNi、外界の媒質の屈折率をNo、前記発光素子の発光領域から前記境界面までの距離をD1、前記受光素子の受光領域から前記境界面までの距離をD2としたとき、
R=D1/tan{sin−1(No/Ni)}+D2/tan{sin−1(No/Ni)}上記式で決定する半径Rの前記発光領域を中心とする円の内側に、前記受光領域を配置したことにある。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る反射型センサによれば、次に列挙するような効果が得られる。
(1)発光素子と受光素子の間の遮光部材が不要となるので、発光素子と受光素子を近接して実装することが可能で、実装面積が削減され小型化され、遮光手段に起因していた特性のばらつきがなくなる。
(2)遮光機能形成工程が減少され、更にパッケージが小型化になることで生産効率が大幅に向上し、製造コストが削減でき、品質及び信頼性が大幅に向上する。
(3)発光素子と受光素子を近接して実装することにより、発光素子からの光線の内、光軸近傍の発光光線を受光することができるので、センサ信号のS/Nが向上する。また、光の利用効率が向上し、発光素子の駆動電流が少なくなり、低消費電力に効果がある。
(4)遮光手段を用いていた従来方式に比べて、ギャップ特性が大幅に向上し、被測定対象物に近接した状態でも有効なセンサ信号が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の反射型エンコーダの概略構成図である。
【図2】反射スケールの接合前の断面図である。
【図3】反射スケールの断面図である。
【図4】検出ヘッドの主要部品の平面図である。
【図5】電流狭窄型発光素子の説明図である。
【図6】反射型エンコーダの信号処理回路図である。
【図7】光線光路の説明図である。
【図8】光線からの距離に対するPL断面での照度分布図と照度グラフ図である。
【図9】シミュレーションモデルの断面図である。
【図10】照度分布図である。
【図11】反射型エンコーダのギャップの違いによる光路の説明図である。
【図12】発光素子のギャップをパラメータとした場合の照度のグラフ図である。
【図13】内部反射光と有効光の関係のグラフ図である。
【図14】実施例の反射型エンコーダのギャップ特性と従来方式のギャップ特性を比較したグラフ図である。
【図15】実施例2のシュミレーションモデルの断面図である。
【図16】照度分布図である。
【図17】実施例3のシュミレーションモデルの断面図である。
【図18】光路の説明図である。
【図19】照度分布図である。
【図20】実施例4のシュミレーションモデルの断面図である。
【図21】照度分布図である。
【図22】実施例5の照度分布図である。
【図23】従来の反射型エンコーダの斜視図である。
【図24】そのXZ断面図である。
【図25】そのYZ断面図である。
【図26】別の従来の反射型エンコーダの斜視図である。
【図27】その断面図である。
【図28】図25の一部を拡大した断面図である。
【図29】別の従来の反射型エンコーダのギャップに対する出力電圧のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を図1〜図22に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は実施例の概略構成図であり、等間隔の格子が形成された反射スケール21は、移動する被測定対象物に固定され、格子配列方向であるX軸方向に移動可能であり、この反射スケール21に対向して、検出ヘッド22が配置されている。
【0028】
検出ヘッド22は、LEDチップから成る発光素子23、受光部分としてフォトダイオードアレイを有する受光素子24、信号処理回路部25を内蔵したフォトICチップ26から成る半導体素子、及びそれらを実装した基板27等により構成されている。
【0029】
反射スケール21は図2に示すように、パターン形成シート31と反射層形成部シート32から構成されている。パターン形成シート31は例えば工業用写真製版フィルム用の透明なPETフィルムであって、0.1〜0.2mm程度の厚みを有し、工業用写真製版フィルムの乳剤層により露光・現像工程を経て必要なパターンが形成されている。パターン形成シート31の基材部31a上には、光吸収部分の非反射部31bと光線透過部31cから成るパターンが交互に設けられている。
【0030】
一方、反射層形成シート32では、基材であるPETフィルムから成る反射層32aの下面に、蒸着膜から成る反射層32bが形成されている。反射スケール21はこれらのパターン形成シート31と反射層形成シート32とを、図3に示すように透明な接着剤から成る接着層33により接合した構造とされている。
【0031】
図4は検出ヘッド22の主要部品である発光素子23と受光素子24の平面図である。発光素子23は電流狭窄構造を有している点発光LEDであり、有効発光領域S1はφ80μm程度の円形発光窓を有し、発光波長は650nmの赤色LEDである。
【0032】
発光素子23からの光が直接受光素子24の受光領域に入射することを防止する1つの対策として、発光素子23としてエピタキシャル成長により形成した通常のLEDチップを使用せずに、電流狭窄型のLEDチップを使用している。図5に示すように、(a)に示す通常のLEDチップTと、(b)に示す電流狭窄型の発光素子23とでは出射する光の強度分布が全く異なり、通常のLEDチップTでは、横方向に出射する光の量が多く、受光領域に直接光が入射する可能性が高い。これに対して、電流狭窄型の発光素子23では、光線を前方の一方向に集中して出射し、受光領域に直接光が入射する可能性は低い。
【0033】
図4に示すように、発光素子23の近傍にはフォトICチップ26が配置されている。フォトICチップ26は発光素子23に近い側に配設された受光素子24による受光領域S2と信号処理回路部25から成る。受光領域S2には水平方向に、受光素子24として16個のフォトダイオード24a、24b、24c、24d、・・・・、24m、24n、24o、24pが等間隔に配列されている。
【0034】
フォトダイオード24a、24e、24i、24mは電気的に接続されていて、この組をa相、フォトダイオード24b、24f、24j、24nの組をb相、以下同様にc相、d相としている。
【0035】
a相、b相、c相、d相の各フォトダイオード群は光を受けると、その光量に応じた光電流を出力する。反射スケール21の移動と共にa相〜d相のフォトダイオード群はa相を基準に、b相は90度、c相は180度、d相は270度の位相関係で変動する電流が出力される。
【0036】
フォトICチップ26上の信号処理回路部25では、この出力電流を電流電圧変換器で電圧値に変換した後に、差動増幅器によりそれぞれa相とc相の差動成分、及びb相とd相の差動成分を求め、90°位相のずれたA、B相変位出力信号を出力する。
【0037】
図6はその信号処理回路部25を示し、発光素子23の発光回路41、アナログ信号処理部42により構成されている。アナログ信号処理部42からのA、B相のアナログ信号を基に、反射スケール21の移動量を算出して測定対象物の位置を求める位置演算部43が設けられている。
【0038】
初段増幅器44、45、46、47は、a相、b相、c相、d相の各フォトダイオード群で発生したフォト電流を電流電圧変換するためのI/V増幅器であり、Vf1の電位を基準として、V1、V2、V3、V4の電位を発生する。
【0039】
a相とc相のフォトダイオード群から、出力V1とV3の差動を求める差動出力増幅器48により、Vf2をバイアス電位としたA相信号を得る。同様に、b相とd相のフォトダイオード群から出力V2とV4を差動出力増幅器49により差動増幅してB相信号を得ている。
【0040】
アナログ信号処理部42からの出力信号VA、VBは、交流成分Va、Vbにそれぞれ直流成分Vf2を重畳し、位置演算部43に出力する。位置演算部43はA相(VA=Va+Vf2)又はB相(VB=Vb+Vf2)の出力信号から、信号のピークを計数して、反射スケール21からの反射回折光により受光領域S2上に形成された干渉縞の通過した本数を得る。干渉縞のピッチに計数した本数を乗ずれば、反射スケール21の移動量が算出される。
【0041】
更に、A相及びB相の出力信号の交流成分に基づいて、A相とB相間の位相角を算出することによって、干渉縞ピッチ以下の移動量の算出ができる。
【0042】
図7は図1に示すS平面でカットした状態における光線の光路の説明図である。検出ヘッド22は発光素子23、受光素子24の他に、基板27と発光素子23と受光素子24を覆うように封止した透光性の封止樹脂51と、この封止樹脂51上に配設された透明ガラス52から成っている。封止樹脂51と透明ガラス52は、屈折率がほぼ同じ値であるので、光学的には実質的に一体的な部材と見倣すことができ、これらの間の境界線は無視できる。
【0043】
発光素子23からの発散光線により平板状の反射スケール21は照射され、反射スケール21からの反射回折光により、フォトICチップ26の受光領域S2上に干渉縞が形成される。
【0044】
図7に示すように、検出ヘッド22と反射スケール21はギャップGを隔てて配置されている。反射スケール21のピッチをPsとすると、ピッチPsの2倍の周期(Pf=2×Ps)の干渉縞が受光領域S2上に形成される。反射スケール21の移動に伴う干渉縞の移動を、先に説明した信号処理回路部25により変位信号としてA相、B相のアナログ信号を得る。
【0045】
図7は発光素子23から放射される光線のうち、本実施例に関係する代表的な光線L0、La、Lbを示している。光線L0は発光素子23から出射した光線のうち、境界面53で屈折して透過し反射スケール21で反射し、最後に受光領域S2に導かれる光線群を示していて、この光路がセンサ信号を得るための有効光となる。
【0046】
一方、光線Laは発光素子23から出射して境界面53で全反射してパッケージ内を伝搬する光線を示している。この光線Laは先に示した光線L0のセンサ信号に対応する有効光に対して、センサ信号光とは無関係なノイズ光であり、受光すべきでない光線であり、この光線Laが受光領域S2に入射すると、センサ信号のS/Nが低下してしまうことになる。また、光線Lbは境界面53を通過し反射スケール21に至ることなく、外方に出射してしまうので、測定精度等に対する影響は殆どない。
【0047】
本実施例では、不要な光線Laが受光素子24に入射しないように、発光素子23の発光領域S1を基準位置にして、受光素子24の受光領域S2の位置を決定している。
【0048】
図8は受光領域S2を含む広い平面を図7に示すPL断面において、境界面53からの反射光線の照度分布をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションでは、反射スケール21からの有効光線成分が、観察平面(PL断面)に重畳しないように、反射スケール21を取り除いている。
【0049】
図8(a)において、照度分布中央の白抜きの四角で示した位置に発光領域S1が位置し、その左側の受光領域S2に対応する位置が点線で示されている。この照度分布図において、白色部である輪帯状の明部は境界面53からの反射光線により照度の高い部分を示し、黒色部である暗部は照度が低いことを示している。特に、高い照度を示す領域が、発光素子23の発光領域S1を中心として輪帯状に分布している。
【0050】
図8(b)は発光素子23及び受光素子24のそれぞれの中心を含むXZでの照度プロファイルを示している。この照度プロファイルから発光領域S1を基準とした半径Riの内側領域においては低照度領域が存在し、この領域に受光領域S2を配置することにより、遮光手段を用いることなく、不要な光線の影響を受けないセンサ信号を得ることが可能となる。このように、従来のような遮光手段を用いずに、上記の低照度領域に受光領域S2を設置して、被測定対象物からの有効反射光線を高いS/Nで得ることができる。
【0051】
なお、図8(b)において、境界面53での高強度の全反射光が形成する輪帯領域を避け、その内側(<Ri)だけでなく、高強度の反射光による高照度領域の外側(>Ro)に受光領域S2を配置することも可能である。
【0052】
受光領域S2の配置条件をパッケージ主要寸法から数式化する。図7における封止樹脂51の屈折率をNi、パッケージ外界の屈折率をNo、発光領域S1から境界面53までの距離をD1、受光領域S2から境界面53までの距離をD2、全反射領域の半径をRmaxとする。半径Rmaxは式(1)のように、境界面53において臨界角を超えて反射する全反射光線が、照射する位置を発光領域S1の基準とした半径位置で決定される。
Rmax=D1/tan{sin−1(No/Ni)}+D2tan{sin−1(No/Ni)}・・・(1)
この半径Rmaxで、照度は最大値を示すので,受光領域S2の配置条件としてはその照度ピーク位置よりも内側の位置をとる。反射光の強度レベルが全反射光強度の15%前後を閾値として配置可能は領域を決定すると、受光領域S2の配置可能な円領域の半径Riは式(2)となる。
Ri≒Rmax×0.85 ・・・(2)
一方、有効光線L0に注視すると、この有効光線L0は図7に対する角度θ0で最大強度を示す主光線から傾いているので、その分だけ有効な反射光線強度は低い値となる。反射スケール21からの有効光としてより強度を得ようとすれば、発光素子23の主光線軸により近い光線を使うことが有利である。そのためには、受光領域S2を発光領域S1に近接させることによって、角度θ0の値を小さくすることができるので、センサ信号のS/Nの向上につながる。
【0053】
このように、本実施例において適用した手段は、上記の理由から発光領域S1と受光領域S2を極力近接して配置し、かつ高照度領域を示す輪帯領域を避けて半径Riに収まるように、次のような条件を定めている。(a)発光素子23、受光素子24に対する境界面53の高さD1、D2、(b)受光素子24の実装位置、(c)受光素子24上における受光領域S2の配置、(d)受光領域S2の形状、受光面積、及び(e)境界面53の材質の屈折率を適宜に決定する。
【0054】
なお、本実施例での具体的な数値例としては、D1=D2=0.70mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒1.05mmとなる。また、受光領域S2の形状は矩形形状0.5×1.0mm、発光素子23と受光素子24のチップ間隔は0.2mmである。
【0055】
図9は先に示したシミュレーションモデルの断面図で、図10は反射スケール21からの有効反射光と境界面53からの反射光とを重畳させて、観察平面PLでの照度分布図を示している。高照度領域の輪帯内に反射スケール21のスケールパターンが投影され、センサ信号が高いS/Nで得られることが分かる。
【0056】
図11においては、本実施例での反射スケール21と検出ヘッド22とのギャップGについて、(a)G=1.5mm、(b)1.0mm、(c)0.5mm、(d)0.2mmの値に設置した場合の光路を示している。(a)〜(d)何れの状態においても、境界面53における全反射光線は受光領域S2に入射していないので、良好なS/Nのセンサ信号が得られている。
【0057】
図12は発光領域S1と受光素子24を結ぶライン上の照度分布を示している。横軸は発光素子23の位置を原点として、受光素子24方向の距離を示している。ライン上の照度分布について、(1)反射スケールからの有効光、(2)境界面53からの反射光及び全反射光について2種類をプロットしたものである。それぞれ、反射スケール21と検出ヘッド22とのギャップGをパラメータとした結果を示している。
【0058】
距離の自乗則から、ギャップGの値が大きくなるにつれて、有効反射光による照度は低下する。一方、境界面53からの反射、全反射光は当然のことながら、反射スケール21のギャップパラメータとは無関係で、ギャップGの変化に対して変化することはない。
【0059】
図13は図12の結果から、センサ信号の光学的なS/Nをこれまでと同様に「有効光/ノイズ光」で表し、ギャップ変化をパラメータとしてそのS/Nの変動を示している。ここで注目すべき特性として、従来の遮光手段を用いた反射型センサでは、G=0.2mmにおいては、有効光線が遮光手段によって蹴られてしまうために、実用上は利用可能な領域ではない。本実施例での反射型センサでは、この近接ギャップ領域において、極めて高い光学的なS/Nでセンサ信号が得られることが分かる。また、G=2.0mmにおいても、S/N値として、3以上の値が得られているので、有効信号が得られるギャップ変動の有効範囲が広いことが分かる。
【0060】
図14はこのような従来の遮光手段を用いた反射型センサのギャップ特性と本実施例でのギャップ特性の違いを示している。図14(a)の従来例のグラフ図を見ると、従来では近接ギャップ領域で使用した場合には、反射型センサと反射試料との距離感度が高くなる。従って、このような近接距離領域での使用は実用上避けなければならず、その分だけ余分な空間領域を必要としている。
【0061】
しかし、図14(b)に示す本実施例による反射型センサでは、受発光間の素子間隔が詰められ、発光素子23の光軸近傍の光線が利用されているために、光の利用効率が従来方式よりも改善されている。従来方式での遮光手段に起因して発生する蹴られ特性がないので、近接ギャップ領域での有効信号範囲が広がり、取付公差が緩和される。また、近接ギャップでの利用が可能なため、小型化、省スペース化に有利な特性となっている。
【0062】
本実施例1は、反射型エンコーダにおいて、遮光手段を用いることなく、高いS/Nのセンサ信号を得ることが可能となり、反射スケール21と検出ヘッド22の近接ギャップ領域での特性が大幅に改善される。また、発光素子23と受光素子24とを従来に比べて近接実装することで光の利用効率が改善し、発光素子23の消費電流が削減できる。更に、小型化に寄与し、品質の安定と低価格化も同時に実施できる。
【実施例2】
【0063】
図15は実施例2のシュミレーションモデルの断面図であり、先の実施例1に対して境界面53の高さを大きくして、全反射光による高照度領域を示す輪帯半径Rmaxを大きくしている。具体的には、D1=D2=0.90mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒1.45mmとなる。
【0064】
その結果、図16の照度分布図で示すように、配置可能な許容円が拡大し、先の実施例1の場合よりも受光領域S2の受光部面積については大きくすることが可能となる。例えば、この場合には矩形形状で、0.7×1.4mm程度まで拡大できる。
【実施例3】
【0065】
図17は実施例3のシュミレーションモデルの断面図であり、先の実施例1に対して境界面53の高さについて、発光素子23側の高さD1と受光素子24側の高さD2の値を異なる値にしている。具体的には、D1=0.3mm、D2=0.7mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒0.85mmとなる。
【0066】
この実施例3では、発光素子23の上部0.3mmの高さまで封止樹脂51、透明ガラス52により覆われているが、更にその上部はφ0.6mm、深さ0.4mmの円柱形での肉抜き形状となっている。
【0067】
図18は実施例3の有効反射光と内部全反射光の光路図である。受光領域S2は全反射光が入射しない位置に配置されている。
【0068】
図19の照度分布図で示すように、配置可能な許容円は縮小し、先の実施例1、2のように許容円の内部に受光領域S2を配置することが困難になる。しかし、この場合にはこの円の外側に受光領域S2を配置することで、実施例1、2と同様の効果が得られる。
【0069】
実装面積が大きくなるために、小型化には不利な構成ではあるが、受光素子24上の受光領域S2の配置位置の自由度が上がり、受光部サイズも制約が少ない。このような点では、実施例1、2での許容円の内側に配置する場合には、不可能な配置が可能となる。
【実施例4】
【0070】
図20は実施例4のシュミレーションモデルの断面図であり、先の実施例3と同様に境界面53の高さについて、発光素子23側の高さD1と受光素子24側の高さD2の値を異なる値にしている。具体的には、D1=0.3mm、D2=0.7mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒0.85mmとなる。
【0071】
図21の照度分布図で示すように、この場合は複雑な照度分布となるが、点線で示した位置に受光領域S2を配置することで、実施例1と同等の効果が得られる。
【実施例5】
【0072】
図22は実施例5の照度分布図であり、先の実施例1に対して受光領域S2の受光形状を変更したものである。境界面53の高さについて、発光素子23側の高さD1と、受光素子24側の高さD2の値を同じ値にした場合のモデルによっている。具体的には、D1=0.7mm、D2=0.7mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒1.05mmとなる。
【0073】
この半径Riよりも内側に、光領域を最大限有効に受光領域S2を配置する場合に、許容円に沿うような扇形或いは円弧状に受光領域S2の形状を形成している。これにより、実質的に反射スケール21からの有効な反射光線をより多く受光領域S2に取り込むことができる。その結果として、センサ信号のS/Nを向上することが可能となる。
【0074】
また、本実施例における境界面53の面形状は様々な変形が考えられるが、境界面53の面形状によらず、境界面53での全反射光が受光領域S2に入射しないように、発光素子23に対する受光素子24の位置と境界面53の高さを変更することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
実施例に関する上述の説明では、主に反射型エンコーダの場合について説明したが、反射式フォトインタラプタ等に対しても実質的に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
21 反射スケール
22 検出ヘッド
23 発光素子
24 受光素子
25 信号処理回路部
26 フォトICチップ
27 基板
51 封止樹脂
52 透明ガラス
53 境界面
S1 発光領域
S2 受光領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から投光される光を測定対象物に投射し、反射光を受光素子で受光して、その光量変化によって測定対象物の変位を検知する反射型センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図23は従来の反射型エンコーダの斜視図、図24はそのXZ断面図、図25はX軸である変位検出軸と直交するYZ断面図を示している。LEDチップから成る発光素子1からの放射光線のうちの反射スケール2からの反射光線を、信号処理回路を内蔵したフォトICチップから成る受光素子3で受光する。発光素子1及び受光素子3の半導体素子はプリント基板4上にダイボンディングされ、更に透光性の樹脂5と透明ガラス基板6による透明部材で覆われている。これらの発光素子1、受光素子3、基板4、樹脂5、透明ガラス基板6により検出ヘッド7が構成されている。一方、反射スケール2は反射スケール基材8と反射層9と反射層10を含む反射層形成部11から成り、このような反射型エンコーダは例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
図26は特許文献2に開示された従来の他の反射型エンコーダの検出ヘッド部の斜視図、図27は断面図である。基板12上には、所定形状の回路パターン12aが形成され、回路パターン12aには、発光領域13aを有する発光素子13、受光領域14aを有し信号処理回路を内蔵した受光素子14がダイボンディングされている。そして、発光素子13、受光素子14の各端子はワイヤ15により接続されている。
【0004】
発光素子13、受光素子14、ワイヤ15は透明樹脂材で形成した包囲部材16、透明ガラス基板17によって覆われている。包囲部材16は図27に示すように、最低でも発光素子13、受光素子14の部品の高さ以上が必要で、更にワイヤ15のループ高さ、光半導体部品の基板12への接合代を考慮して、包囲部材16の厚みが決定されている。
【0005】
図26、図27に示すように、発光素子13と受光素子14のほぼ中間位置には遮光壁18が形成され、この遮光壁18の直下には回路パターン12aが配置されている。図27に示すように、遮光壁18は幅Wのきり通しの溝に遮光性の樹脂を充填して形成され、遮光樹脂充填前の溝の深さは、包囲部材16と透明ガラス基板17の厚みよりも若干浅くされ、基板12上の回路パターン12aが保護されている。
【0006】
この遮光壁18を設けることにより、発光素子13の発光領域13aから放射された光が、包囲部材16の内部を伝搬して受光素子14の受光領域14aに入射することが防止されている。
【0007】
また、このような発光素子13、受光素子14間の遮光手段については、汎用的に用いられる反射型センサや反射型フォトインタラプタ等において、様々な方法が提案され、例えば特許文献3〜5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−337052号公報
【特許文献2】特開2004−6753号公報
【特許文献3】特開2000−277796号公報
【特許文献4】特許3782489号公報
【特許文献5】特許3261280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の反射型エンコーダや反射型センサにおける光半導体パッケージにおいては、次のような問題がある。例えば、図25において、角度θ1に含まれる光線は、発光素子1の発光領域から反射スケール2を介して受光素子3の受光領域に導かれる有効光線である。この場合に、発光素子1の最大強度を示す主光線軸a1からθ2の角度で大きく傾いていると、傾いた光線を中心とした角度範囲θ1の光線は、発光素子1が放出する全放射光線の内のごく僅かである。従って、殆どの光線は無効な成分となり、光の利用効率が極めて悪いという問題がある。
【0010】
この図25の一部を拡大して示す図28において、パッケージ内の発光素子1と受光素子3間の光線の作用に注目すると、発光素子1から出射し、透明ガラス基板6の表面部6aにおいて反射した光線Lで代表されるような光線パスが存在する。角度θ3が臨界角(=θi)を超えた場合には、光線Lは全反射して受光素子3に入射することになり、大きなバイアス成分の光となって、センサ信号に重畳してしまうという問題が発生する。
【0011】
このような場合には、有効反射光線が僅かで、一方でバイアス成分の光線が大きいという関係から、センサ信号の実質的なS/Nは大きく低下する。有効光線を拡大するためには、レンズを用いて有効光線を得ることができるが、レンズを用いると、レンズの光軸と発光素子1、受光素子3の位置ずれによりセンサとしての特性がばらついてしまうことになる。
【0012】
また、受光素子3の受光面積を拡大する手段が容易に考えられるが、同時に透明ガラス基板6の表面部6aからの全反射光も多く受光してしまうことになり、センサ信号として実質的なS/Nの改善効果は殆どない。また、検出ヘッド7全体が大きくなってしまい、更にコストアップにもつながり経済的な不利がある。
【0013】
受光素子3に届く僅かな光量を補うために、発光素子1の発光量を増大させることも容易に考えられるが、この場合には消費電力の増大と発光素子1に過剰な電流を流すことになり、発光素子1の寿命が短くなるという問題が生ずる。更に、信号処理回路内で信号増幅する手段も考えられるが、この方法も電気ノイズ成分が増大してしまい、実質的に有効な手段とならず、位置検出精度に影響を与え、好ましくない。
【0014】
上述のレンズの採用、受光面積の拡大、発光素子1の光量アップ、そして受光素子3上の信号回路部での信号増幅率の向上等の何れの手段も、大幅な特性改善には至らないか、或いは特性のばらつきが大きくなる。
【0015】
次に、図26、図27の遮光手段を用いる方法は、上述した従来技術における課題の1つであったバイアス成分の光を防止したもので、その改善効果は大きい。しかし、これらの遮光手段を用いた場合において、図29のグラフ図に示すようにアナログ出力の反射型センサの出力電圧Vは、反射型センサと被測定対象となる反射試料との距離Gに対応して、変化する。
【0016】
即ち、個々の反射型センサは、発光素子13、受光素子14の実装位置及びこれらの中間に配設される遮光壁18の位置ばらつき、或いは受光感度のばらつきによって、図27に示す反射試料までの距離dに対する出力電圧Vは等しくならない。つまり、固体差により得られる出力電圧は、図29の縦軸に示すようにv1、v2、v3のようなばらついた値となる。
【0017】
また、距離G1以下の領域で使用した場合には、反射型センサと反射試料との距離感度が高くなるために、このような近接距離領域での使用は実用上避けなければならず、その分だけ余分な空間領域を必要とすることになる。
【0018】
更に、発光素子13と受光素子14の中間位置に遮光手段としての遮光体を配設することになるので、発光素子13と受光素子14の間隔を必然的に広げなければならず、素子の実装面積が増大し、反射型センサの小型化の妨げとなる。また、遮光手段を用いることでのコストアップも避けられない。
【0019】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、遮光手段を使用せずに光源からの発散光がパッケージの外界との境界面で全反射して、受光素子に入射することを防止する反射型センサを提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、被測定対象からの有効反射光線の光強度を増加することで、センサ信号としてのS/Nの向上を図る反射型センサを提供することにある。
【0021】
本発明の更に他の目的は、被測定物との近接距離領域での信号特性を改善し、特性のばらつきが少ない安定した品質と信頼性を確保する反射型センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係る反射型センサの技術的特徴は、基板上に配設した発光素子と受光素子とを透明部材で覆った反射型センサであって、前記発光素子から出射した光線のうち、前記透明部材の外界との境界面で全反射して前記透明部材内に戻る光線よりも前記発光素子寄りに前記受光素子による受光領域を設けたことにある。
【0023】
また、本発明に係る反射型センサの技術的特徴は、基板上に発光素子と受光素子を並置して透明部材で覆った反射型センサであって、前記基板に平行な外界との境界面を有する前記透明部材の屈折率をNi、外界の媒質の屈折率をNo、前記発光素子の発光領域から前記境界面までの距離をD1、前記受光素子の受光領域から前記境界面までの距離をD2としたとき、
R=D1/tan{sin−1(No/Ni)}+D2/tan{sin−1(No/Ni)}上記式で決定する半径Rの前記発光領域を中心とする円の内側に、前記受光領域を配置したことにある。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る反射型センサによれば、次に列挙するような効果が得られる。
(1)発光素子と受光素子の間の遮光部材が不要となるので、発光素子と受光素子を近接して実装することが可能で、実装面積が削減され小型化され、遮光手段に起因していた特性のばらつきがなくなる。
(2)遮光機能形成工程が減少され、更にパッケージが小型化になることで生産効率が大幅に向上し、製造コストが削減でき、品質及び信頼性が大幅に向上する。
(3)発光素子と受光素子を近接して実装することにより、発光素子からの光線の内、光軸近傍の発光光線を受光することができるので、センサ信号のS/Nが向上する。また、光の利用効率が向上し、発光素子の駆動電流が少なくなり、低消費電力に効果がある。
(4)遮光手段を用いていた従来方式に比べて、ギャップ特性が大幅に向上し、被測定対象物に近接した状態でも有効なセンサ信号が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の反射型エンコーダの概略構成図である。
【図2】反射スケールの接合前の断面図である。
【図3】反射スケールの断面図である。
【図4】検出ヘッドの主要部品の平面図である。
【図5】電流狭窄型発光素子の説明図である。
【図6】反射型エンコーダの信号処理回路図である。
【図7】光線光路の説明図である。
【図8】光線からの距離に対するPL断面での照度分布図と照度グラフ図である。
【図9】シミュレーションモデルの断面図である。
【図10】照度分布図である。
【図11】反射型エンコーダのギャップの違いによる光路の説明図である。
【図12】発光素子のギャップをパラメータとした場合の照度のグラフ図である。
【図13】内部反射光と有効光の関係のグラフ図である。
【図14】実施例の反射型エンコーダのギャップ特性と従来方式のギャップ特性を比較したグラフ図である。
【図15】実施例2のシュミレーションモデルの断面図である。
【図16】照度分布図である。
【図17】実施例3のシュミレーションモデルの断面図である。
【図18】光路の説明図である。
【図19】照度分布図である。
【図20】実施例4のシュミレーションモデルの断面図である。
【図21】照度分布図である。
【図22】実施例5の照度分布図である。
【図23】従来の反射型エンコーダの斜視図である。
【図24】そのXZ断面図である。
【図25】そのYZ断面図である。
【図26】別の従来の反射型エンコーダの斜視図である。
【図27】その断面図である。
【図28】図25の一部を拡大した断面図である。
【図29】別の従来の反射型エンコーダのギャップに対する出力電圧のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を図1〜図22に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は実施例の概略構成図であり、等間隔の格子が形成された反射スケール21は、移動する被測定対象物に固定され、格子配列方向であるX軸方向に移動可能であり、この反射スケール21に対向して、検出ヘッド22が配置されている。
【0028】
検出ヘッド22は、LEDチップから成る発光素子23、受光部分としてフォトダイオードアレイを有する受光素子24、信号処理回路部25を内蔵したフォトICチップ26から成る半導体素子、及びそれらを実装した基板27等により構成されている。
【0029】
反射スケール21は図2に示すように、パターン形成シート31と反射層形成部シート32から構成されている。パターン形成シート31は例えば工業用写真製版フィルム用の透明なPETフィルムであって、0.1〜0.2mm程度の厚みを有し、工業用写真製版フィルムの乳剤層により露光・現像工程を経て必要なパターンが形成されている。パターン形成シート31の基材部31a上には、光吸収部分の非反射部31bと光線透過部31cから成るパターンが交互に設けられている。
【0030】
一方、反射層形成シート32では、基材であるPETフィルムから成る反射層32aの下面に、蒸着膜から成る反射層32bが形成されている。反射スケール21はこれらのパターン形成シート31と反射層形成シート32とを、図3に示すように透明な接着剤から成る接着層33により接合した構造とされている。
【0031】
図4は検出ヘッド22の主要部品である発光素子23と受光素子24の平面図である。発光素子23は電流狭窄構造を有している点発光LEDであり、有効発光領域S1はφ80μm程度の円形発光窓を有し、発光波長は650nmの赤色LEDである。
【0032】
発光素子23からの光が直接受光素子24の受光領域に入射することを防止する1つの対策として、発光素子23としてエピタキシャル成長により形成した通常のLEDチップを使用せずに、電流狭窄型のLEDチップを使用している。図5に示すように、(a)に示す通常のLEDチップTと、(b)に示す電流狭窄型の発光素子23とでは出射する光の強度分布が全く異なり、通常のLEDチップTでは、横方向に出射する光の量が多く、受光領域に直接光が入射する可能性が高い。これに対して、電流狭窄型の発光素子23では、光線を前方の一方向に集中して出射し、受光領域に直接光が入射する可能性は低い。
【0033】
図4に示すように、発光素子23の近傍にはフォトICチップ26が配置されている。フォトICチップ26は発光素子23に近い側に配設された受光素子24による受光領域S2と信号処理回路部25から成る。受光領域S2には水平方向に、受光素子24として16個のフォトダイオード24a、24b、24c、24d、・・・・、24m、24n、24o、24pが等間隔に配列されている。
【0034】
フォトダイオード24a、24e、24i、24mは電気的に接続されていて、この組をa相、フォトダイオード24b、24f、24j、24nの組をb相、以下同様にc相、d相としている。
【0035】
a相、b相、c相、d相の各フォトダイオード群は光を受けると、その光量に応じた光電流を出力する。反射スケール21の移動と共にa相〜d相のフォトダイオード群はa相を基準に、b相は90度、c相は180度、d相は270度の位相関係で変動する電流が出力される。
【0036】
フォトICチップ26上の信号処理回路部25では、この出力電流を電流電圧変換器で電圧値に変換した後に、差動増幅器によりそれぞれa相とc相の差動成分、及びb相とd相の差動成分を求め、90°位相のずれたA、B相変位出力信号を出力する。
【0037】
図6はその信号処理回路部25を示し、発光素子23の発光回路41、アナログ信号処理部42により構成されている。アナログ信号処理部42からのA、B相のアナログ信号を基に、反射スケール21の移動量を算出して測定対象物の位置を求める位置演算部43が設けられている。
【0038】
初段増幅器44、45、46、47は、a相、b相、c相、d相の各フォトダイオード群で発生したフォト電流を電流電圧変換するためのI/V増幅器であり、Vf1の電位を基準として、V1、V2、V3、V4の電位を発生する。
【0039】
a相とc相のフォトダイオード群から、出力V1とV3の差動を求める差動出力増幅器48により、Vf2をバイアス電位としたA相信号を得る。同様に、b相とd相のフォトダイオード群から出力V2とV4を差動出力増幅器49により差動増幅してB相信号を得ている。
【0040】
アナログ信号処理部42からの出力信号VA、VBは、交流成分Va、Vbにそれぞれ直流成分Vf2を重畳し、位置演算部43に出力する。位置演算部43はA相(VA=Va+Vf2)又はB相(VB=Vb+Vf2)の出力信号から、信号のピークを計数して、反射スケール21からの反射回折光により受光領域S2上に形成された干渉縞の通過した本数を得る。干渉縞のピッチに計数した本数を乗ずれば、反射スケール21の移動量が算出される。
【0041】
更に、A相及びB相の出力信号の交流成分に基づいて、A相とB相間の位相角を算出することによって、干渉縞ピッチ以下の移動量の算出ができる。
【0042】
図7は図1に示すS平面でカットした状態における光線の光路の説明図である。検出ヘッド22は発光素子23、受光素子24の他に、基板27と発光素子23と受光素子24を覆うように封止した透光性の封止樹脂51と、この封止樹脂51上に配設された透明ガラス52から成っている。封止樹脂51と透明ガラス52は、屈折率がほぼ同じ値であるので、光学的には実質的に一体的な部材と見倣すことができ、これらの間の境界線は無視できる。
【0043】
発光素子23からの発散光線により平板状の反射スケール21は照射され、反射スケール21からの反射回折光により、フォトICチップ26の受光領域S2上に干渉縞が形成される。
【0044】
図7に示すように、検出ヘッド22と反射スケール21はギャップGを隔てて配置されている。反射スケール21のピッチをPsとすると、ピッチPsの2倍の周期(Pf=2×Ps)の干渉縞が受光領域S2上に形成される。反射スケール21の移動に伴う干渉縞の移動を、先に説明した信号処理回路部25により変位信号としてA相、B相のアナログ信号を得る。
【0045】
図7は発光素子23から放射される光線のうち、本実施例に関係する代表的な光線L0、La、Lbを示している。光線L0は発光素子23から出射した光線のうち、境界面53で屈折して透過し反射スケール21で反射し、最後に受光領域S2に導かれる光線群を示していて、この光路がセンサ信号を得るための有効光となる。
【0046】
一方、光線Laは発光素子23から出射して境界面53で全反射してパッケージ内を伝搬する光線を示している。この光線Laは先に示した光線L0のセンサ信号に対応する有効光に対して、センサ信号光とは無関係なノイズ光であり、受光すべきでない光線であり、この光線Laが受光領域S2に入射すると、センサ信号のS/Nが低下してしまうことになる。また、光線Lbは境界面53を通過し反射スケール21に至ることなく、外方に出射してしまうので、測定精度等に対する影響は殆どない。
【0047】
本実施例では、不要な光線Laが受光素子24に入射しないように、発光素子23の発光領域S1を基準位置にして、受光素子24の受光領域S2の位置を決定している。
【0048】
図8は受光領域S2を含む広い平面を図7に示すPL断面において、境界面53からの反射光線の照度分布をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションでは、反射スケール21からの有効光線成分が、観察平面(PL断面)に重畳しないように、反射スケール21を取り除いている。
【0049】
図8(a)において、照度分布中央の白抜きの四角で示した位置に発光領域S1が位置し、その左側の受光領域S2に対応する位置が点線で示されている。この照度分布図において、白色部である輪帯状の明部は境界面53からの反射光線により照度の高い部分を示し、黒色部である暗部は照度が低いことを示している。特に、高い照度を示す領域が、発光素子23の発光領域S1を中心として輪帯状に分布している。
【0050】
図8(b)は発光素子23及び受光素子24のそれぞれの中心を含むXZでの照度プロファイルを示している。この照度プロファイルから発光領域S1を基準とした半径Riの内側領域においては低照度領域が存在し、この領域に受光領域S2を配置することにより、遮光手段を用いることなく、不要な光線の影響を受けないセンサ信号を得ることが可能となる。このように、従来のような遮光手段を用いずに、上記の低照度領域に受光領域S2を設置して、被測定対象物からの有効反射光線を高いS/Nで得ることができる。
【0051】
なお、図8(b)において、境界面53での高強度の全反射光が形成する輪帯領域を避け、その内側(<Ri)だけでなく、高強度の反射光による高照度領域の外側(>Ro)に受光領域S2を配置することも可能である。
【0052】
受光領域S2の配置条件をパッケージ主要寸法から数式化する。図7における封止樹脂51の屈折率をNi、パッケージ外界の屈折率をNo、発光領域S1から境界面53までの距離をD1、受光領域S2から境界面53までの距離をD2、全反射領域の半径をRmaxとする。半径Rmaxは式(1)のように、境界面53において臨界角を超えて反射する全反射光線が、照射する位置を発光領域S1の基準とした半径位置で決定される。
Rmax=D1/tan{sin−1(No/Ni)}+D2tan{sin−1(No/Ni)}・・・(1)
この半径Rmaxで、照度は最大値を示すので,受光領域S2の配置条件としてはその照度ピーク位置よりも内側の位置をとる。反射光の強度レベルが全反射光強度の15%前後を閾値として配置可能は領域を決定すると、受光領域S2の配置可能な円領域の半径Riは式(2)となる。
Ri≒Rmax×0.85 ・・・(2)
一方、有効光線L0に注視すると、この有効光線L0は図7に対する角度θ0で最大強度を示す主光線から傾いているので、その分だけ有効な反射光線強度は低い値となる。反射スケール21からの有効光としてより強度を得ようとすれば、発光素子23の主光線軸により近い光線を使うことが有利である。そのためには、受光領域S2を発光領域S1に近接させることによって、角度θ0の値を小さくすることができるので、センサ信号のS/Nの向上につながる。
【0053】
このように、本実施例において適用した手段は、上記の理由から発光領域S1と受光領域S2を極力近接して配置し、かつ高照度領域を示す輪帯領域を避けて半径Riに収まるように、次のような条件を定めている。(a)発光素子23、受光素子24に対する境界面53の高さD1、D2、(b)受光素子24の実装位置、(c)受光素子24上における受光領域S2の配置、(d)受光領域S2の形状、受光面積、及び(e)境界面53の材質の屈折率を適宜に決定する。
【0054】
なお、本実施例での具体的な数値例としては、D1=D2=0.70mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒1.05mmとなる。また、受光領域S2の形状は矩形形状0.5×1.0mm、発光素子23と受光素子24のチップ間隔は0.2mmである。
【0055】
図9は先に示したシミュレーションモデルの断面図で、図10は反射スケール21からの有効反射光と境界面53からの反射光とを重畳させて、観察平面PLでの照度分布図を示している。高照度領域の輪帯内に反射スケール21のスケールパターンが投影され、センサ信号が高いS/Nで得られることが分かる。
【0056】
図11においては、本実施例での反射スケール21と検出ヘッド22とのギャップGについて、(a)G=1.5mm、(b)1.0mm、(c)0.5mm、(d)0.2mmの値に設置した場合の光路を示している。(a)〜(d)何れの状態においても、境界面53における全反射光線は受光領域S2に入射していないので、良好なS/Nのセンサ信号が得られている。
【0057】
図12は発光領域S1と受光素子24を結ぶライン上の照度分布を示している。横軸は発光素子23の位置を原点として、受光素子24方向の距離を示している。ライン上の照度分布について、(1)反射スケールからの有効光、(2)境界面53からの反射光及び全反射光について2種類をプロットしたものである。それぞれ、反射スケール21と検出ヘッド22とのギャップGをパラメータとした結果を示している。
【0058】
距離の自乗則から、ギャップGの値が大きくなるにつれて、有効反射光による照度は低下する。一方、境界面53からの反射、全反射光は当然のことながら、反射スケール21のギャップパラメータとは無関係で、ギャップGの変化に対して変化することはない。
【0059】
図13は図12の結果から、センサ信号の光学的なS/Nをこれまでと同様に「有効光/ノイズ光」で表し、ギャップ変化をパラメータとしてそのS/Nの変動を示している。ここで注目すべき特性として、従来の遮光手段を用いた反射型センサでは、G=0.2mmにおいては、有効光線が遮光手段によって蹴られてしまうために、実用上は利用可能な領域ではない。本実施例での反射型センサでは、この近接ギャップ領域において、極めて高い光学的なS/Nでセンサ信号が得られることが分かる。また、G=2.0mmにおいても、S/N値として、3以上の値が得られているので、有効信号が得られるギャップ変動の有効範囲が広いことが分かる。
【0060】
図14はこのような従来の遮光手段を用いた反射型センサのギャップ特性と本実施例でのギャップ特性の違いを示している。図14(a)の従来例のグラフ図を見ると、従来では近接ギャップ領域で使用した場合には、反射型センサと反射試料との距離感度が高くなる。従って、このような近接距離領域での使用は実用上避けなければならず、その分だけ余分な空間領域を必要としている。
【0061】
しかし、図14(b)に示す本実施例による反射型センサでは、受発光間の素子間隔が詰められ、発光素子23の光軸近傍の光線が利用されているために、光の利用効率が従来方式よりも改善されている。従来方式での遮光手段に起因して発生する蹴られ特性がないので、近接ギャップ領域での有効信号範囲が広がり、取付公差が緩和される。また、近接ギャップでの利用が可能なため、小型化、省スペース化に有利な特性となっている。
【0062】
本実施例1は、反射型エンコーダにおいて、遮光手段を用いることなく、高いS/Nのセンサ信号を得ることが可能となり、反射スケール21と検出ヘッド22の近接ギャップ領域での特性が大幅に改善される。また、発光素子23と受光素子24とを従来に比べて近接実装することで光の利用効率が改善し、発光素子23の消費電流が削減できる。更に、小型化に寄与し、品質の安定と低価格化も同時に実施できる。
【実施例2】
【0063】
図15は実施例2のシュミレーションモデルの断面図であり、先の実施例1に対して境界面53の高さを大きくして、全反射光による高照度領域を示す輪帯半径Rmaxを大きくしている。具体的には、D1=D2=0.90mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒1.45mmとなる。
【0064】
その結果、図16の照度分布図で示すように、配置可能な許容円が拡大し、先の実施例1の場合よりも受光領域S2の受光部面積については大きくすることが可能となる。例えば、この場合には矩形形状で、0.7×1.4mm程度まで拡大できる。
【実施例3】
【0065】
図17は実施例3のシュミレーションモデルの断面図であり、先の実施例1に対して境界面53の高さについて、発光素子23側の高さD1と受光素子24側の高さD2の値を異なる値にしている。具体的には、D1=0.3mm、D2=0.7mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒0.85mmとなる。
【0066】
この実施例3では、発光素子23の上部0.3mmの高さまで封止樹脂51、透明ガラス52により覆われているが、更にその上部はφ0.6mm、深さ0.4mmの円柱形での肉抜き形状となっている。
【0067】
図18は実施例3の有効反射光と内部全反射光の光路図である。受光領域S2は全反射光が入射しない位置に配置されている。
【0068】
図19の照度分布図で示すように、配置可能な許容円は縮小し、先の実施例1、2のように許容円の内部に受光領域S2を配置することが困難になる。しかし、この場合にはこの円の外側に受光領域S2を配置することで、実施例1、2と同様の効果が得られる。
【0069】
実装面積が大きくなるために、小型化には不利な構成ではあるが、受光素子24上の受光領域S2の配置位置の自由度が上がり、受光部サイズも制約が少ない。このような点では、実施例1、2での許容円の内側に配置する場合には、不可能な配置が可能となる。
【実施例4】
【0070】
図20は実施例4のシュミレーションモデルの断面図であり、先の実施例3と同様に境界面53の高さについて、発光素子23側の高さD1と受光素子24側の高さD2の値を異なる値にしている。具体的には、D1=0.3mm、D2=0.7mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒0.85mmとなる。
【0071】
図21の照度分布図で示すように、この場合は複雑な照度分布となるが、点線で示した位置に受光領域S2を配置することで、実施例1と同等の効果が得られる。
【実施例5】
【0072】
図22は実施例5の照度分布図であり、先の実施例1に対して受光領域S2の受光形状を変更したものである。境界面53の高さについて、発光素子23側の高さD1と、受光素子24側の高さD2の値を同じ値にした場合のモデルによっている。具体的には、D1=0.7mm、D2=0.7mm、Ni=1.54(エポキシ樹脂)、No=1.00(空気)であり、これらの値からRi≒1.05mmとなる。
【0073】
この半径Riよりも内側に、光領域を最大限有効に受光領域S2を配置する場合に、許容円に沿うような扇形或いは円弧状に受光領域S2の形状を形成している。これにより、実質的に反射スケール21からの有効な反射光線をより多く受光領域S2に取り込むことができる。その結果として、センサ信号のS/Nを向上することが可能となる。
【0074】
また、本実施例における境界面53の面形状は様々な変形が考えられるが、境界面53の面形状によらず、境界面53での全反射光が受光領域S2に入射しないように、発光素子23に対する受光素子24の位置と境界面53の高さを変更することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
実施例に関する上述の説明では、主に反射型エンコーダの場合について説明したが、反射式フォトインタラプタ等に対しても実質的に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
21 反射スケール
22 検出ヘッド
23 発光素子
24 受光素子
25 信号処理回路部
26 フォトICチップ
27 基板
51 封止樹脂
52 透明ガラス
53 境界面
S1 発光領域
S2 受光領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配設した発光素子と受光素子とを透明部材で覆った反射型センサであって、前記発光素子から出射した光線のうち、前記透明部材の外界との境界面で全反射して前記透明部材内に戻る光線よりも前記発光素子側に前記受光素子による受光領域を設けたことを特徴とする反射型センサ。
【請求項2】
前記発光素子は電流狭窄構造のLEDとしたことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項3】
前記透明部材は透明樹脂と透明ガラスとを併設したことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項4】
前記境界面の前記発光素子と前記受光素子の中間位置に段差を設けたことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項5】
前記受光領域の形状を扇形又は円弧形状としたことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項6】
基板上に発光素子と受光素子を並置して透明部材で覆った反射型センサであって、前記基板に平行な外界との境界面を有する前記透明部材の屈折率をNi、外界の媒質の屈折率をNo、前記発光素子の発光領域から前記境界面までの距離をD1、前記受光素子の受光領域から前記境界面までの距離をD2としたとき、
R=D1/tan{sin−1(No/Ni)}+D2/tan{sin−1(No/Ni)}上記式で決定する半径Rの前記発光領域を中心とする円の内側に、前記受光領域を配置したことを特徴とする反射型センサ。
【請求項7】
前記受光素子は受光部分をフォトダイオードアレイとし、複数の初段増幅器と差動増幅器から成る信号処理部と共にフォトICにより構成したことを特徴とする請求項6に記載の反射型センサ。
【請求項1】
基板上に配設した発光素子と受光素子とを透明部材で覆った反射型センサであって、前記発光素子から出射した光線のうち、前記透明部材の外界との境界面で全反射して前記透明部材内に戻る光線よりも前記発光素子側に前記受光素子による受光領域を設けたことを特徴とする反射型センサ。
【請求項2】
前記発光素子は電流狭窄構造のLEDとしたことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項3】
前記透明部材は透明樹脂と透明ガラスとを併設したことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項4】
前記境界面の前記発光素子と前記受光素子の中間位置に段差を設けたことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項5】
前記受光領域の形状を扇形又は円弧形状としたことを特徴とする請求項1に記載の反射型センサ。
【請求項6】
基板上に発光素子と受光素子を並置して透明部材で覆った反射型センサであって、前記基板に平行な外界との境界面を有する前記透明部材の屈折率をNi、外界の媒質の屈折率をNo、前記発光素子の発光領域から前記境界面までの距離をD1、前記受光素子の受光領域から前記境界面までの距離をD2としたとき、
R=D1/tan{sin−1(No/Ni)}+D2/tan{sin−1(No/Ni)}上記式で決定する半径Rの前記発光領域を中心とする円の内側に、前記受光領域を配置したことを特徴とする反射型センサ。
【請求項7】
前記受光素子は受光部分をフォトダイオードアレイとし、複数の初段増幅器と差動増幅器から成る信号処理部と共にフォトICにより構成したことを特徴とする請求項6に記載の反射型センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図20】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図8】
【図10】
【図16】
【図19】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図20】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図8】
【図10】
【図16】
【図19】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−70078(P2013−70078A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255406(P2012−255406)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2006−197041(P2006−197041)の分割
【原出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2006−197041(P2006−197041)の分割
【原出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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