説明

合成樹脂製パレットの製造方法及び合成樹脂製パレットの製造装置

【課題】 内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットを、安定かつ確実に製造できる合成樹脂製パレットの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】 内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットの製造方法であって、合成樹脂製パレットの全体あるいは一部と略同形状のキャビティ11を備えた金型10には、開閉可能なバルブゲート21と、バルブゲート21が開口された部分に設けられた樹脂受け部17のキャビティ間隔tを変更する間隔変更手段34と、ガス注入手段とが備えられており、バルブゲート21を介して樹脂原料を供給した後に、バルブゲート21を閉止して金型10内にガスを注入し、前記ガスが樹脂受け部17に到達する前に、間隔変更手段34によって樹脂受け部17のキャビティ間隔tを小さくするようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の物品を運搬および保管する際に使用される合成樹脂製パレットであって、内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷物を運搬および保管する際に使用されるパレットとして、合成樹脂を金型内に射出することにより成形された合成樹脂製パレットが提供されており、フォークリフト等のフォーク部を2方向から差し込める二方差しの合成樹脂製パレットや4方向から差し込める四方差しの合成樹脂製パレットが使用されている。
【0003】
このような合成樹脂製パレットは、荷物を積載するために、例えば1m角の正方形平板状をなして比較的大型であり、その重量が重くなって取り扱いが不便となるといった問題があった。また、金型が大型化するために、樹脂原料を金型内に十分供給できない場合には、樹脂原料が冷却されて硬化する際に樹脂原料の供給が不足した部分において、そりや変形が発生する場合があった。これを防止するために樹脂原料を確実に供給するには、樹脂原料を多量に供給する必要があり、樹脂原料の使用量が過度に多くなってしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、合成樹脂製パレットの内部にガスを注入して、合成樹脂製パレットの内部を中空構造とするガスアシスト法によって成形された合成樹脂製パレットが提供されている(特許文献1参照)。この合成樹脂製パレットでは、内部が中空構造とされているために軽量となり、大型のパレットであっても取り扱いが簡単である。また、樹脂原料を供給した後に金型内にガスを注入しているので、金型内の樹脂が外側に押し広げられるように押圧され、金型内面と樹脂原料との接触が促進され、樹脂原料の冷却時間を短くすることができる。よって、溶融原料の供給量を多くすることなく樹脂圧力を高めることができ、樹脂原料を金型の中に確実に供給でき、そりや変形の発生を防止できるものである。
【0005】
このように金型内にガスを注入するガスアシスト法においては、樹脂原料を供給する樹脂ゲートとしてスプル付ゲートを使用すると、注入されたガスがゲート内の樹脂原料の内部まで侵入してしまい、射出成形後にスプル部分をカットした際に穴が形成されてしまう。この穴は合成樹脂製パレットの中空部分に連結されているので、雨水などが合成樹脂製パレットの内部に溜まってしまうことになる。そこで、ガスアシスト法によるパレットの成形では、ゲート部がパレット表面に露出する場合、ゲートの開口部が開閉可能なバルブゲートを用いる必要がある。このバルブゲートを使用して樹脂原料を金型内に所定量供給してゲートを閉止した後に、金型内にガスを注入することにより、ゲート内へのガスの侵入を防止している。
【0006】
また、近年、容器包装リサイクル法等の施行により、プラスチックのリサイクル化が図られており、廃棄プラスチックから得られた再生樹脂をコア層に配置し、新たに生成したバージン樹脂をスキン層に配置して再生樹脂の使用量増加を図ったサンドイッチ成形法が提案されている。
このサンドイッチ成形法では、1つのゲートから2種類の樹脂原料を、例えば再生樹脂とバージン樹脂とを金型内に射出するものが知られている(特許文献2、特許文献3参照)。この方法では、開口したゲートの中央部分にコア層となる再生樹脂を配置し、この再生樹脂を取り囲むようにスキン層となるバージン樹脂を配置して金型内に射出するものである。バージン樹脂の使用量を低減できるとともに再生樹脂の使用が促進されるため、プラスチックのリサイクル促進の観点から広く使用されている。
【0007】
このサンドイッチ成形法では、バルブゲートから供給する段階でコア層とスキン層との2層構造としている。一般的な合成樹脂製パレットの射出成形における複数のゲートから樹脂を供給する方法では、樹脂原料の流れが衝突する部分で2層構造ができなかったり、コア層の樹脂が表面に露出し易くなったり、あるいは、複数のゲートを繋ぐための樹脂の湯道(ランナー)内に残存する2層の樹脂をスキン材で置換する必要があるため、コア層の比率を減少させる要因となる。このため、金型内への樹脂原料の供給経路をできるだけ少なく、つまりバルブゲートをできる限り少なく、好ましくは1つのバルブゲートにて樹脂原料を供給する一点ゲートとしたほうがよい。
【0008】
このようなサンドイッチ成形法を合成樹脂製パレットに適用した場合には、樹脂原料を合成樹脂製パレットの金型に十分に供給するためにバルブゲートの口径を大きくする必要があり、特に一点ゲートの場合にはバルブゲートの口径をさらに大きくする必要がある。また、樹脂材料を金型内に十分に供給するために、金型のキャビティ間隔を大きくして、合成樹脂製パレットを厚肉のものとする必要があるが、厚肉の合成樹脂製パレットではさらに重量が増加してしまい、取り扱いがさらに困難となってしまう。また、厚肉の合成樹脂製パレットでは、金型内での樹脂原料の冷却に時間が掛かり変形やそりなどが発生してしまうといった問題があった。
【0009】
そこで、このサンドイッチ成形法に、前述したガスアシスト法を適用することが検討されている。
【特許文献1】特開平10−218179号公報
【特許文献2】特開平06−190860号公報
【特許文献3】特開平06−126769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記のバルブゲートを使用したガスアシスト法には、次のような問題があった。
バルブゲート近傍には、金型内に供給されたばかりの高温の樹脂原料が存在している。さらに、バルブゲートは溶融した高温の樹脂原料を内部に有しているため高温である。よって、このバルブゲート近傍の樹脂原料は高温のまま保持されることになる。
【0011】
この状態でバルブゲートを閉止してガスを注入した場合には、バルブゲート近傍の樹脂が高温に保持された部分にガスが優先的に侵入して、高温で変形し易い部分、つまりバルブゲートに接している部分の樹脂原料が伸ばされてフィルム状になってしまうことがあった。このようにフィルム状になった部分は強度がなく、合成樹脂製パレットの成形加工時や使用時に破損してしまうといった問題があった。
【0012】
とくに、前述した一点ゲートによるサンドイッチ成形では、バルブゲートの口径を大きくする必要があり、高温で保持される樹脂が存在する部分が大きくなるため、ガスアシスト法を適用することは困難であった。
また、バルブゲートの口径を小さくするためにバルブゲートを複数設けた場合には、前述の如く、コア層の構成比率を小さくする必要がある。すると、例えばコア層に再生樹脂を使用している場合には、再生樹脂の使用量が低減されてしまうため、プラスチックのリサイクル化を促進できなくなってしまうといった問題があった。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットを、安定かつ確実に製造できる合成樹脂製パレットの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による合成樹脂製パレットの製造方法は、内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットの製造方法であって、前記合成樹脂製パレットの全体あるいは一部と略同形状のキャビティを備えた金型には、該金型に開口された開閉可能なバルブゲートと、前記バルブゲートが開口された部分に設けられた樹脂受け部と、該樹脂受け部のキャビティ間隔を変更する間隔変更手段と、ガス注入手段とが備えられており、前記バルブゲートを介して樹脂原料を前記金型内に供給した後に、前記バルブゲートを閉止して前記金型内にガスを注入し、前記ガスが前記樹脂受け部に到達する前に、前記間隔変更手段によって前記樹脂受け部のキャビティ間隔を小さくするようにしたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明による合成樹脂製パレットの製造装置は、内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットの製造装置であって、前記合成樹脂製パレットの全体あるいは一部と略同形状のキャビティを備えた金型と、該金型に開口された開閉可能なバルブゲートと、前記バルブゲートが開口された部分に設けられた樹脂受け部と、該樹脂受け部のキャビティ間隔を変更する間隔変更手段と、ガス注入手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る合成樹脂製パレットの製造方法によれば、樹脂原料を供給した後に、バルブゲートを閉止してキャビティ間隔を小さくするとともに金型内にガスを注入することにより、バルブゲートが開口された部分のキャビティ間隔が小さくなって樹脂受け部の樹脂圧力が高くなり、この部分へのガスの侵入が防止される。よって、バルブゲート近傍にフィルム状となる部分が形成されず、軽量で高品質の合成樹脂製パレットを、安定かつ確実に製造することができる。
【0017】
また、本発明に係る合成樹脂製パレットの製造装置は、開閉可能なバルブゲートと、該樹脂受け部のキャビティ間隔を変更する間隔変更手段と、ガス注入手段とを備えているので、樹脂原料を金型内に供給した後に、バルブゲートを閉止してガスを注入し、このガスが樹脂受け部に到達する前に、間隔変更手段によって樹脂受け部のキャビティ間隔を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態である合成樹脂製パレットの製造方法は、前記バルブゲートから、コア層を構成する樹脂原料とスキン層を構成する樹脂原料とを前記金型内に供給して、コア層とスキン層とを有する合成樹脂製パレットを製造するものである。この製造方法では、ゲートバルブの口径が大きくしても樹脂受け部へのガスの侵入を防止できるので、コア層とスキン層とを有する合成樹脂製パレットを一点ゲートからの樹脂供給によって成形することができる。ここで、コア層を構成する樹脂原料として再生樹脂を使用する場合には、再生樹脂の使用量を確保することができ、プラスチックのリサイクル化を促進することができる。
【0019】
また、前記樹脂受け部のキャビティ間隔を小さくした後に、前記金型内にガスを注入する製造方法では、キャビティ間隔が小さくされた後にガスを注入するので、樹脂受け部へのガスの侵入を確実に防止できる。なお、ガス注入前にキャビティ間隔が小さくなったことを確認するために、合成樹脂製パレットの製造装置に位置センサ等を配備することが好ましい。
【0020】
また、前記樹脂受け部のキャビティ間隔を前記樹脂受け部周辺部分のキャビティ間隔よりも大きくした状態で、前記樹脂原料を前記金型内に供給する製造方法では、樹脂受け部が大きくされて樹脂原料の供給が促進されるので、一点ゲートでも樹脂原料を金型内に確実に供給することができる。
【0021】
また、前記間隔変更手段を、前記バルブゲートに対向する側に配置された進退可能な可動ピンとすることにより、樹脂受け部のキャビティ間隔を可動ピンの進退を制御することで変更でき、さらに確実に高品質の合成樹脂製パレットを製造することができる。
さらに、前記バルブゲートの口径を、10mmから20mmの範囲内とすることにより、樹脂原料の金型内への供給を促進することができるとともに、バルブゲートによって樹脂原料が高温に保持される部分を小さくでき、ガスの侵入をさらに確実に防止することができる。
このような効果をさらに確実に奏効せしめるには、前記バルブゲートの口径を12mmから20mmの範囲内とすることがより好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例による合成樹脂製パレットの製造方法について添付した図面を参照して説明する。図1から図4に本実施例に係る合成樹脂製パレットの製造方法に用いられる製造装置の一部を示す。
本実施例で成形する合成樹脂製パレットは、全体として例えば一辺が1.1mの正方形の箱形に形成され、合成樹脂製パレットの上面(荷物の載置面)を形成する上面板状部と、下面を形成する下面板状部と、上面板状部及び下面板状部とを連結する桁部とを有するものであり、上面板状部と桁部とが一体成形されてなる上面型部材と、下面板状部と桁部とが一体成形されてなる下面型部材とを、これら上面型部材の桁部と下面型部材の桁部とを互いに当接させた状態で熱溶着することにより成形されるものである。
【0023】
合成樹脂製パレットの製造装置1は、図1及び図2に示すように、合成樹脂製パレットの一部と略同形状のキャビティ11を有する金型10と、この金型10のキャビティ11の一部に開口されたバルブゲート21と、バルブゲート21に対向するとともにバルブゲート21に向けて進退可能に配置された可動ピン30と、金型10のキャビティ11内へガスを注入するガスバルブ40とを備えている。
【0024】
前記の金型10には、合成樹脂製パレットの上面板状部とこの上面板状部から延びる桁部とを有する上面型部材と略同形状のキャビティ11が形成されている。図3に示すように、金型10の上面板状部の上面(荷物の載置面)を形成する部分には、荷物を安定して載置するために概略平面状となるようにキャビティ11が形成されている。そして、この上面の中心部に樹脂原料を供給する樹脂バルブ20の開口部、つまりバルブゲート21が一点設けられており、いわゆる一点ゲートの金型10とされている。
【0025】
また、金型10の上面型部材の裏側を形成する部分には、図4に示すように、上面板状部がなす正方形のうち対向する2辺に沿って延びる一対の縁桁部12と、この縁桁部12と平行に延びて縁桁部12の間に位置する中央桁部13とが形成されている。つまり、この合成樹脂製パレットの製造装置1は、いわゆる二方差しパレットの上面型部材を成形するものである。
【0026】
上面板状部の裏側や縁桁部12及び中央桁部13の内部には、格子状のリブ14が複数形成され、これらのリブ14によって矩形室部15が形成されるようにキャビティ11が設けられている。そして、金型10の上面型部材の裏側を形成する部分の中心部分、つまり、前記バルブゲート21と対向する部分には、図4に示すように可動ピン30が配置されている。この可動ピン30の近傍には、金型10のキャビティ11内にガスを注入するためのガスバルブ40が開口されている。また、このガスバルブ40からキャビティ11内へ向けて延びてガスの通過経路となるガスチャンネル16が形成されている。
【0027】
樹脂バルブ20は、図1及び図2に示すように筒状体をなしており、一端が金型10のキャビティ11に開口したバルブゲート21とされ、他端側には、図示しない樹脂原料供給手段から延びる原料供給経路22が設けられている。
この樹脂バルブ20の内部には、樹脂バルブ20のなす筒状体の軸線方向に進退可能に配置されたバルブピン23が配置されており、このバルブピン23の進退動作によってバルブゲート21を開閉できる構成とされている。ここで、本実施例では、バルブゲート21の口径は、例えば10mmから20mmの範囲内に設定され、バルブピン23の外径は、例えば13mmから27mmの範囲内となるように設定されている。
【0028】
また、バルブゲート21に対向するように設けられた可動ピン30は概略円柱状に形成され、その外径は、図1及び図2に示すようにバルブゲート21の口径よりも一段大きくされており、本実施例では、例えば40mmに設定されている。そして、この可動ピン30の一端側が金型10のキャビティ11内に突出可能に配置されており、可動ピン30の他端面は、可動ピン30の軸線に対して傾斜した傾斜面とされている。
可動ピン30の他端側には、この可動ピン30を進退可能に移動させる移動手段31が設けられており、移動手段31は、可動ピン30の他端面(傾斜面)と連動する傾斜ブロック32とこの傾斜ブロック32を可動ピン30の移動方向に対して垂直な方向に進退可能に移動するシリンダ33とから構成されている。
【0029】
図1に示すように、傾斜ブロック32をX方向に移動することにより、傾斜ブロック32の傾斜面と可動ピン30の他端面とが連動し、傾斜ブロック32の傾斜面に沿って可動ピン30がバルブゲート21から離れるように後退する。
一方、図2に示すように、傾斜ブロック32をY方向に移動することにより、傾斜ブロック32によって可動ピン30の他端面(傾斜面)が押圧され、可動ピン30がバルブゲート21に近づくように進出する。
このように移動手段31によって、可動ピン30を進退可能に移動することができる構成とされているのである。
【0030】
この可動ピン30とバルブゲート21との間のキャビティ部分が樹脂受け部17とされている。可動ピン30をバルブゲート21から後退するように移動することで樹脂受け部17のキャビティ間隔tが大きくなり、可動ピン30をバルブゲート21に近接するように進出させることで樹脂受け部17のキャビティ間隔tを小さくすることができる。つまり、この可動ピン30と移動手段31とが、樹脂受け部17のキャビティ間隔tを変更する間隔変更手段34を構成しているのである。
【0031】
この可動ピン30の近傍に設けられたガスバルブ40からは、本実施例では、例えば不活性ガスの一種である窒素ガスが金型10のキャビティ11内に注入される。
【0032】
次に、この構成の合成樹脂製パレットの製造装置1を用いた合成樹脂製パレットの製造方法について説明する。図5に、バルブゲート21の開閉動作と、可動ピン30の進退動作と、ガス注入タイミングとの関係を示す。
まず、図1に示すように、傾斜ブロック32をX方向に移動させて、可動ピン30をバルブゲート21から離間するように後退させ、樹脂受け部17のキャビティ間隔tを大きくしておく。ここで、本実施例では、上面板状部を形成する部分のキャビティ間隔sは3mmとされ、樹脂受け部17のキャビティ間隔tは5mmとされている。
【0033】
この状態で、樹脂バルブ20のバルブピン23を移動させてバルブゲート21を開口し、樹脂原料を金型10のキャビティ11内に供給する。ここで、本実施例では、合成樹脂製パレットを構成する樹脂原料としてポリプロピレン(PP)を使用しており、このバルブゲート21からは2種類の樹脂原料が供給される。
【0034】
バルブゲート21の中心部分には、廃棄プラスチックを再生して得られた再生樹脂が配置され、この再生樹脂を取り囲むように、新規に生成されたバージン樹脂が配置されて金型10のキャビティ11内に供給されるのである。ここで、本実施例では、スキン層を構成するバージン樹脂の温度は250℃とされ、コア層を構成する再生樹脂の温度は230℃とされており、これらのバージン樹脂及び再生樹脂の金型への射出圧は、例えば8.8MPaとされている。
【0035】
所定量の樹脂原料を供給した後に、バルブゲート21をバルブピン23にて閉止するとともに、図2に示すように、傾斜ブロック32をY方向に移動させて、可動ピン30をバルブゲート21に近づくように進出させ、樹脂受け部17のキャビティ間隔tを小さくする。ここで、本実施例では、樹脂受け部17のキャビティ間隔tは2mmとされ、上面板状部を形成する部分のキャビティ間隔sよりも小さくされている。
そして、図5に示すように、バルブゲート21及び可動ピン30は射出圧力により動作完了までに若干のタイムラグがあるが、バルブゲート21の閉止(TV1)及び可動ピン30の進出が完全に終了(TP1)した後に、ガスバルブ40から窒素ガスを金型10のキャビティ11内に注入(TG1)するのである。
【0036】
このようにして、スキン層にバージン樹脂が配置され、コア層に再生樹脂が配置されたサンドイッチ構造で、かつ、内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットが成形されることになる。
この製造方法によれば、金型10に開口された一点のバルブゲート21から再生樹脂とバージン樹脂とが供給されるので、樹脂原料の流れが衝突する部分がなく、コア層を構成する再生樹脂とスキン層を構成するバージン樹脂との混合が防止される。
【0037】
また、樹脂原料の供給後にガスを供給しており、金型10内の樹脂原料が金型10に押し付けられて樹脂原料の冷却が促進されるとともに、樹脂供給量を過度に増加することなく樹脂圧力を高めることができ、合成樹脂製パレット成形時のそりや変形の発生が防止される。また、リブの内部が中空構造とされ、比較的大型で厚肉の合成樹脂製パレットであっても軽量であり、取り扱いが容易となる。
【0038】
ここで、本実施例に係る合成樹脂製パレットの製造方法では、樹脂原料を金型10内に所定量供給してバルブゲート21を閉止するとともに可動ピン30を進出させて樹脂受け部17のキャビティ間隔tを2mmと小さくした後に金型10内にガスを注入しているので、樹脂受け部17の樹脂圧力が高くなり樹脂受け部17の中にガスが侵入することを防止できる。したがって、バルブゲート21近傍の高温で変形し易い樹脂にガスが侵入せず、合成樹脂製パレットの一部がフィルム状になってしまうことを防止できる。
【0039】
さらに、樹脂受け部17のキャビティ間隔tを樹脂受け部17周辺部分のキャビティ間隔sである3mmよりも大きく5mmとした状態で、樹脂原料を金型10のキャビティ11内に供給しているので、樹脂原料の供給が促進されて樹脂原料を金型10のキャビティ11内に確実に供給することができる。よって、バルブゲート21の口径を小さくすることができ、樹脂原料が高温で保持される部分を小さくして、樹脂受け部17へのガスの侵入を確実に防止できる。
【0040】
ここで、バルブゲート21の口径を本実施例のように10mmから20mmの範囲内とすることにより、樹脂原料の供給を促進しつつ、ガスの侵入を確実に防止できるので好ましい。この効果をさらに確実にするためには、バルブゲート21の口径を12mmから20mmの範囲内とすることがより好ましい。
また、本実施例では、バルブピン23の外径を13mmから27mmの範囲内としているが、バルブゲート21の口径を12mmから20mmの範囲内とした場合には、これに併せてバルブピン23の外径を16mmから27mmの範囲内とすることが好ましい。
【0041】
このように本実施例に係る合成樹脂製パレットの製造方法によれば、再生樹脂で構成されたコア層とバージン樹脂で構成されたスキン層とを有するサンドイッチ構造であり、内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットを、高品質で安定かつ確実に製造することができるとともに、再生樹脂の使用量を確保してプラスチックのリサイクル化を促進することができる。
【0042】
なお、本実施例では、ガスバルブ40を可動ピン30の近傍に配備したもので説明したが、これに限定されることはなく、ガスバルブ40を可動ピン30から離れた位置に設けてもよい。この場合には、図6に示すように、バルブゲート21の閉止(TV2)及び可動ピン30の進出終了(TP2)よりも若干早いタイミング(TG2)でガス注入を行っても良い。要するに、注入したガスが樹脂受け部17に到達する前に、可動ピン30の進出が完了して樹脂受け部17のキャビティ間隔tが小さくされていれば良いのである。
【0043】
また、上面型部材と下面型部材とをそれぞれ成形し、これら上面型部材と下面型部材とを熱溶着する合成樹脂製パレットの製造方法として説明したが、これに限定されることはなく、上面板状部と下面板状部とこれらを連結する桁部とを一体に成形する合成樹脂製パレットの製造方法に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例である合成樹脂製パレットの製造装置において、樹脂受け部のキャビティ間隔を大きくした状態を示す部分拡大図である。
【図2】本発明の実施例である合成樹脂製パレットの製造装置において、樹脂受け部のキャビティ間隔を小さくした状態を示す部分拡大図である。
【図3】上面型部材の上面を成形する部分を示す図である。
【図4】上面型部材の裏面を成形する部分を示す図である。
【図5】バルブゲート開閉と可動ピンの動作とガス注入タイミングとを示す図である。
【図6】本発明に係る合成樹脂製パレットの製造方法の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10 金型
11 キャビティ
17 樹脂受け部
21 バルブゲート
30 可動ピン
34 間隔変更手段
40 ガスバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットの製造方法であって、
前記合成樹脂製パレットの全体あるいは一部と略同形状のキャビティを備えた金型には、該金型に開口された開閉可能なバルブゲートと、前記バルブゲートが開口された部分に設けられた樹脂受け部と、該樹脂受け部のキャビティ間隔を変更する間隔変更手段と、ガス注入手段とが備えられており、
前記バルブゲートを介して樹脂原料を前記金型内に供給した後に、
前記バルブゲートを閉止して前記金型内にガスを注入し、前記ガスが前記樹脂受け部に到達する前に、前記間隔変更手段によって前記樹脂受け部のキャビティ間隔を小さくするようにしたことを特徴とする合成樹脂製パレットの製造方法。
【請求項2】
前記バルブゲートから、コア層を構成する樹脂原料とスキン層を構成する樹脂原料とを前記金型内に供給して、コア層とスキン層とを有する合成樹脂製パレットを製造する請求項1に記載の合成樹脂製パレットの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂受け部のキャビティ間隔を小さくした後に、前記金型内にガスを注入する請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製パレットの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂受け部のキャビティ間隔を、前記樹脂受け部周辺部分のキャビティ間隔よりも大きくした状態で、前記樹脂原料を前記金型内に供給する請求項1から請求項3のいずれかに記載の合成樹脂製パレットの製造方法。
【請求項5】
前記間隔変更手段が、前記バルブゲートに対向する側に配置された進退可能な可動ピンである請求項1から請求項4のいずれかに記載の合成樹脂製パレットの製造方法。
【請求項6】
前記バルブゲートの前記金型への開口部の口径が、10mmから20mmの範囲内とされた請求項1から請求項5のいずれかに記載の合成樹脂製パレットの製造方法。
【請求項7】
内部が中空構造とされた合成樹脂製パレットの製造装置であって、
前記合成樹脂製パレットの全体あるいは一部と略同形状のキャビティを備えた金型と、該金型に開口された開閉可能なバルブゲートと、前記バルブゲートが開口された部分に設けられた樹脂受け部と、該樹脂受け部のキャビティ間隔を変更する間隔変更手段と、ガス注入手段とを備えたことを特徴とする合成樹脂製パレットの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−8003(P2007−8003A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191756(P2005−191756)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(590000477)日本プラパレット株式会社 (24)
【Fターム(参考)】