説明

同期風力タービン発電機

【解決手段】風力タービン発電機等のデバイスに使用される同期発電機1は、少なくとも1つのステータ8と、互いに対向し、回転軸と平行に配置される少なくとも2つの巻線7、12と、構造を単純化し寸法を低減する少なくとも1つの冷却システムとを備え、永久磁石による磁気誘導を有する。
【効果】本発電機は、発電機の外径に近い空間をより有効に利用できるので、発電機の外径を増大させることなく、電力の増加、重量の最小化が可能である。これは、工場から目的地の風力発電所の建物まで輸送する際に有利である。さらに付加的な利点として、風の条件に応じて、一方又は両方の巻線を稼動させること、あるいは両方を同時に稼動させることができるので、効率及び多用途性、信頼性を向上させることができる。また、少なくとも1つの冷却システムを共有することにより、機械のスペース、及び構造の複雑さを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力によるエネルギーの生成に使用される同期風力タービン発電機に関する。より正確には、本発明は、二重の巻線を有する単一の中心ステータを備える同期風力タービン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在知られているように、風力エネルギーは、風力発電機によって電気エネルギーを生成するために主に使用されている。風力発電機は、風力で動作するタービン(風力タービン)により運転される発電機である。永久磁石を用いた従来の同期風力タービン発電機は、リングを形成する溝付のステータプレートが積み重ねられたスチール構造から成るステータを含む。ステータプレートの溝の内部には、互いに関連した、絶縁された銅巻線から成るステータ巻線が設けられ、スター型の3相巻線を形成する。風力タービン発電機の第2の部品はロータである。ロータは、軸と、N極及びS極を形成する磁石が設けられるリングとを有するスチール構造から成り、ステータに対して回転する場合、ステータ巻線によって磁力線が切断され、発電機に確定的な電力を与える起電力及び電流をこれらの巻線に誘起する。
【0003】
従来技術においては、上記の基本コンセプトを多かれ少なかれ最適化した開発が多い。例えば、米国特許第6,974,045号明細書に開示される風力発電機システムでは、軸方向に間隔を空けられた一対のタービンが、それぞれ発電機のアウターロータ及びインナーロータに接続され、インナーロータ及びアウターロータが同じ回転速度で反対方向に回転するように、反対方向に同じピッチ角を有するブレードが備えられる。インナーロータとアウターロータとの間の相対回転速度は、インナーロータ又はアウターロータの回転速度の2倍であるので、風速が小さい場合であっても、発電システムが比較的大きな電力を生成することができる。製造コスト及び維持コストを削減するため、必要に応じて、タービンブレードのピッチ変更機構を排除してもよい。
【0004】
一方、韓国公開特許第2009−0123903号公報に開示される風車発電ユニットは、風車中に捕捉された風との干渉に弱い大容量発電機とは異なり、捕捉された風との干渉が無いために、発電電位が改良されている。永久磁石発電機は回転軸、少なくとも3段のロータ、及びステータを有する。ロータは、多重ディスク構造であり、シャフトの縦方向に一列に並んでシャフトに接続され、自身に取り付けられた永久磁石を有する。ステータは、銅ワイヤのステータ巻線を有するディスク構造であり、回転軸からは絶縁され、それぞれが任意の2つの隣接するロータ間にある少なくとも2つのギャップに設けられる。ロータ及びステータは、5段以上にわたって、シャフトの縦方向において互いに入れ替わるように配置されている。さらに、上記のように構成された永久磁石発電機のロータ軸にプロペラが連結された風車発電機も提供されている。
【0005】
さらに米国特許第7,579,702号明細書に開示される二重供給誘導発電機を制御するための電力変換デバイス及び電力変換方法は、システムに電力が無い環境においても電気を生成できるように、二重供給誘導発電機とは独立に補助電力を生成する同期発電機を提供する。グリッド側コンバータは3相4線コンバータで構成され、不安定な負荷条件においても安定した電圧を生成し、二重供給誘導発電機のステータ電圧とシステム電圧とを互いに自動的に同期させる。
【0006】
さらに特開2010−207052号公報に開示される発電機は、水力又は風力を用いて電力を生成するには外部のエネルギーが極端に弱い、あるいは強い場合であっても、予め定められた電圧及び予め定められた電流で電力を生成することができる。その解決手段は次の通りである。発電機は、駆動源から回転力を受けて回転するマグネットロータ24と、マグネットロータの磁極に対向するように配置されるステータコイル25とを有する。マグネットロータ24は、ハウジング21に回転自在に軸受けされた回転軸13と、回転軸周りの同心円に複数の磁極を形成する永久磁石とを有する。ステータコイル25は、ロータ24に形成される磁極と対向するように配置された複数のコアレス巻線及び3相出力端子を有する。コアレス巻線は、有効出力巻線を3個、あるいは3の倍数個有し、総ターン数が大小切換え可能となるようにスイッチング手段を介して出力端子に接続される。駆動源からの回転力が大きい場合には総ターン数は小さくされ、回転力が小さい場合には総ターン数が大きくされる。
【0007】
米国特許出願公開第2010/0270808号明細書に開示される風力エネルギー装置が、複数のモジュール式風力エネルギーデバイス又はユニットで構成されることに注目することは重要である。各ユニットは、ハウジングと、ハウジングに取り付けられた少なくとも2つのタービンを有する。タービンのそれぞれは、ハウジングから上向きに伸張するブレードの組を有する。ブレードの組のそれぞれは、ハウジングに対して上向きに伸張する垂直軸を有する。タービンのそれぞれは、自身に接続される発電機を有する。各発電機はハウジングに設置され、ロータ及びステータを有する。各タービンは、ハウジングに対して回転可能に取り付けられ、ロータに取り付けられて一緒に回転する。各ハウジングは、各ユニットのそれぞれの側に正側コネクタ及び負側コネクタを有する。これらのユニットは、一緒に設置された場合、それぞれの正極及び負極を互いに接続して1つの回路を完成させる。つまり、複数のユニットを一緒に接続することができる。
【0008】
さらに、米国特許第7,154,191号明細書に開示される風力タービン及び船舶推進目的に有用な機械は、両側式発電機、又は2つの同心状のエアギャップを有するモータを含む。1つの実施例における機械は、インナーロータ側及びアウターロータ側の両側ロータと、インナーステータコア及びアウターステータコアを有するステータとを有し、両側ロータは、インナーステータコアとアウターステータコアとの間に同心状に配置される。
【0009】
一方、米国特許第7,709,972号明細書に開示される風力タービンシステムは、風力タービンロータ、ピッチ制御機構、及び、非常電源機構を備える。風力タービンロータは、可変ピッチ角を有するブレードを備える。ピッチ制御機構は、ブレードを駆動してピッチ角を制御する。非常電源機構は、送電網のシステム電圧が偶発的に降下したことに応答して、風力タービンロータの回転から電力を生成し、ピッチ制御機構へと電力を供給する。
【0010】
また米国特許出願公開第2008/0012347号明細書に規定される風力発電システムは、固定フレーム、シャフト、機械軸受、ステータ、及びロータと共に、システム及び風力によって機械軸受に加わる様々な負荷を低減するように、又は実質的に取り除くように構成された磁性部品を備える。特に、シャフトに取り付けられた翼に最も近い軸受にある磁性部品は、重力に抵抗する力をシャフトに与えるように作用する。翼から遠い部分でシャフトに沿った軸受にある磁性部品は、シャフトによってその地点の軸受に加えられる曲げ力に抵抗する力をシャフトに与えるように作用する。付加的な磁性部品は、ステータ及びロータに隣接した重力に対抗するように作用する。磁性部品はさらに、風力に対抗する力をシャフトに与えるように作用する。
【0011】
さらに国際公開第2010/099713号に開示される磁気浮上式の非摩擦系二重ロータ発電機は、発電プラットフォームの中心軸(2)、風力タービン(1)、及び水車タービン(10)から構成され、風力タービンは発電機のインナーロータ(7)に連結され、水車タービンは発電機のアウターロータ(8)に連結される。風力及び水力の作用下で、発電プラットフォームの中心軸周りに両方のタービンが互いに逆方向に回転し、発電機のインナーロータとアウターロータとを逆方向に回転するよう駆動して電力を生成する。発電機は、合理的な構造と高い発電効率を有する。
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明の目的は、風力タービン発電機等のデバイスに使用される同期風力タービン発電機を提供することである。同期発電機は、少なくとも1つのステータと、互いに対向し、回転軸と平行に配置される少なくとも2つの巻線とを備え、永久磁石による磁気誘導を有し、機械的部品を大いに単純化し寸法を低減できる両方の巻線を冷却する少なくとも1つの冷却システムを備える。
【0013】
冷却システムは、誘電性の冷却液を使用した閉じた回路を有する。冷却液は、鉱油よりも熱安定性及び酸化耐性が高く、発火点が高く、環境への負担が小さく、耐火性を有する。冷却液は、ラジエータによって室内の空気が消散される別のゾーンへオイルが循環する場合に、ステータ内部のチャネルを通って循環し、動作している両方の巻線から発する熱を捕捉する。オイルは、ポンプシステムによって強制的に循環されている。冷却は、残留ギャップによって循環を維持する巻線ヘッド中の熱を除くための強制的な空気循環によって達成され、ロータを回転させた場合に摩擦によって当該ゾーンの空気が過熱することを回避する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の目的をよりよく理解するために、本発明を多くの図面中において説明する。図面には、例として、好ましい実施例の1つが表されている。
【0015】
【図1】本発明の風力タービン発電機の断面図である。
【0016】
【図2】図1の風力タービン発電機の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の風力タービン発電機は、回転軸に平行な二重の巻線を有する少なくとも1つの中心ステータを備える。本実施例においては、発電機は単一のステータを備え、ステータは両方の巻線に共通であって冷却液を用いた少なくとも1つの冷却システムによって冷却され、永久磁石によってステータの両側に磁気が誘導される。使用される冷却システムは、発明の範囲に対する限定とみなされる必要はないことに注目することが重要である。
【0018】
図面からわかるように、ステータは、リングを形成する溝付きのステータプレートが積み重ねられるスチール構造から構成される。ステータプレートの溝の内部には、ステータの巻線が配置され、一方は構造の外側用、他方は内側用の2つのリングを形成する。ステータ巻線は、ステータプレートの溝の内部に配置され、2つのスター型の3相巻線を形成する。
【0019】
図1を参照すると、同期風力タービン発電機を構成する部品が全体参照番号1で示されている。具体的には、発電機は、ロータのハウジング2、外部3相巻線リングヘッダ3、ラジアル−アキシャル軸受4、ロータの前方蓋5、ラジアル軸受6、ステータの内部巻線7、ステータボディ及びステータプレート8、両方の巻線に対する冷却システム、固定軸10、ロータの後方蓋11、及び、ステータの外部巻線12を備える。
【0020】
図2には、全体参照番号13で示された、二重の巻線を有するステータの断面図が示されており、内部巻線15及び外部巻線16のステータプレートがそれぞれ設けられるステータ(リング)構造14を有する。冷却液の注入/排出ポート17が構造14に見られることは注目されるべきである。
【0021】
本技術分野の当業者であれば、本願明細書の上記記載から本発明の目的を決めることができ、それぞれが独自の特徴を有する以下の異なる種類の発電機を作り出すであろう。
−冷却液、又は冷却液及び冷却空気、又は冷却空気のみと、半径方向の磁気の流れを持つ水平軸ロータの永久磁石と、を有する二重ステータの同期風力タービン発電機。
−冷却液、又は冷却液及び冷却空気、又は冷却空気のみと、半径方向の磁気の流れを持つ永久磁石と、を有する多重同心ステータの同期風力タービン発電機。
−冷却液、又は冷却液及び冷却空気、又は冷却空気のみと、半径方向の磁気の流れを持つ突極のロータと、を有する多重同心ステータの同期風力タービン発電機。
−超伝導物質の巻線と、突極のロータと、半径方向の磁気の流れを持つ超電導物質の巻線と、を有する多重同心ステータの同期風力タービン発電機。
−超電導物質の巻線と、半径方向の磁気の流れを持つ永久磁石のロータと、を有する多重同心ステータの同期風力タービン発電機。
【0022】
本発電機の構造は、発電機の外径に近い空間をより有効に利用できるので、発電機の外径を増大させることなく、電力の増加、重量の最小化が可能であり、長さ、流量密度、及び回転速度を維持することができる。つまり、これは、工場から目的地の風力発電所の建物まで輸送する際に有利なことを示唆している。一方、さらに付加的な利点として、風の条件に応じて、一方又は両方の巻線を稼動させること、あるいは両方を同時に稼動させることができるので、効率及び多用途性を最適化することができる。また、コンバータが個別に又は並行して各巻線のエネルギーをネットワークに適合させるので、信頼性を向上させることができる。
【0023】
その他の重要な利点は、少なくとも1つの冷却システムを共有することにより、完成された機械のスペース、及び構造の複雑さを低減できることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのステータと、
互いに対向し、回転軸と平行に配置される少なくとも2つの巻線と、
を備え、
永久磁石による磁気誘導を有する、
風力タービン発電機等のデバイスに使用される同期発電機。
【請求項2】
多重同心ステータ及び突極のロータを備える請求項1に記載の発電機。
【請求項3】
前記ステータはスチール構造を有し、
前記スチール構造には、前記スチール構造の内側及び外側に設けられるリングを規定する溝付きのステータプレートが設けられる請求項1に記載の発電機。
【請求項4】
前記ステータ巻線は前記ステータプレートの溝に配置される請求項3に記載の発電機。
【請求項5】
前記ステータの前記巻線は、少なくとも2つのスター型の3相巻線を規定する請求項4に記載の発電機。
【請求項6】
多重同心ステータ、超電導物質の巻線、及び半径方向の磁気の流れを持つ永久磁石のロータを有する請求項1に記載の発電機。
【請求項7】
液体冷却剤、又は気体冷却剤、又は両者の組み合わせからなる少なくとも1つの冷却システムを有する少なくとも1つのステータを備える請求項1に記載の発電機。
【請求項8】
液体冷却剤、又は気体冷却剤、又は両者の組み合わせからなる少なくとも1つの冷却システムと、半径方向の磁気の流れを持つ水平軸永久磁石のロータとを有する、二重ステータを備える同期風力タービン発電機。
【請求項9】
液体冷却剤、又は気体冷却剤、又は両者の組み合わせからなる少なくとも1つの冷却システムと、半径方向の磁気の流れを持つ永久磁石とを有する、多重同心ステータを備える同期風力タービン発電機。
【請求項10】
液体冷却剤、又は気体冷却剤、又は両者の組み合わせからなる少なくとも1つの冷却システムと、半径方向の磁気の流れを持つ突極のロータとを有する、多重同心ステータを備える同期風力タービン発電機。
【請求項11】
超電導物質の巻線と、突極のロータと、半径方向の磁気の流れを持つ超伝導物質の巻線とを有する、多重同心ステータを備える同期風力タービン発電機。
【請求項12】
超電導物質の巻線と、半径方向の磁気の流れを持つ永久磁石のロータとを有する、多重同心ステータを備える同期風力タービン発電機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−13303(P2013−13303A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−276010(P2011−276010)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(511307498)インドゥストリア メタルルヒカ ぺスカルモナ エス.エー.アイ.シー. ワイ エフ. (1)
【Fターム(参考)】