説明

含フッ素ジカルボン酸誘導体およびそれを用いた高分子化合物

【課題】本発明は半導体の保護膜として十分に低誘電率であり、かつ250℃以下という比較的低温でフィルム形成可能な重縮合系の高分子化合物を提供する。
【解決手段】一般式(M−1)
【化】


で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物を、これらのカルボニル基部位の反応性に応答する2〜4個の反応性基を有する多官能性化合物と重縮合させて得られる高分子化合物。
[式中、Qは置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基であって、A、A’は有機基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素ジカルボン酸誘導体およびそれを用いた新規な高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の信頼性を有する有機高分子の代表としてポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが開発され、電子デバイス分野、自動車や航空宇宙用途などのエンジニアリングプラスチック分野、太陽光発電や燃料電池等の環境分野、医療材料分野、光学材料分野などにおいて大きな市場を形成している。それらの中心は、ナイロン、ケブラー(登録商標)などに代表されるポリアミド、液晶性高分子に用いられるポリアリレート、カプトン(登録商標)に代表されるポリイミド、ザイロン(登録商標)に代表されるポリベンゾオキサゾールなどの多種多様な高分子が数多く実用化されている。
【0003】
重合における単量体の組み合わせは、ポリエステルの場合は、ジカルボン酸とジオールを縮合剤の存在下で重縮合させる方法、もしくはジカルボン酸を酸クロライドまたはエステルなどに誘導化し、ジオールと重縮合させる方法がとられる。ポリアミドの場合、ジカルボン酸とジアミンを縮合剤の存在下で重縮合させる方法、もしくはジカルボン酸をカルボン酸クロリドまたはエステルなどに誘導化し、ジアミンと重縮合させる方法がとられる。ポリイミドの場合は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を重合後、脱水閉環させる方法がとられる。ポリベンゾオキサゾールの場合は、ジカルボン酸とビスアミノフェノールを縮合剤の存在下で重縮合させる方法、もしくはジカルボン酸を酸クロリドまたはエステルなどに誘導化し、ビスアミノフェノールと重縮合させる方法がとられる。
【0004】
中でも芳香族ポリエステルや芳香族ポリアミドおよびそれらの誘導体は高い信頼性に加え優れた寸法安定性から、プリント基板や半導体分野さらにはディスプレイ分野で注目されている。その一方、これらの用途において高密度化や薄膜化等を達成するためのパターンの微細化に対する要求はとどまるところがなく、より低い吸水性等信頼性に加え、例えば、より低い誘電率などの電気特性について改良が求められている。
【0005】
芳香族高分子化合物の含フッ素化は、フッ素樹脂の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特性をその高い信頼性を犠牲にせずに向上させることから、先端材料分野を中心として幅広い材料分野で開発または実用化されている。縮合系高分子の単量体であるジアミン中にフッ素を導入する試みがなされ、ベンゼン環の水素原子をフッ素原子やトリフルオロメチル基に置換したジアミンやジヒドロキシ単量体、ヘキサフルオロイソプロペニル基を中心原子団とし、その両サイドに芳香族ヒドロキシアミンを有したビスヒドロキシアミン単量体などから誘導された含フッ素芳香族高分子化合物が実用化されている。
【0006】
特許文献1では、剛直な母格の芳香族環に直接トリフルオロメチル基を導入することで、可視光の透明性と寸法安定性の両立を達成した含フッ素芳香族ポリアミドを得ている。これは一般的には硫酸中での反応を必要とする重合工程を、フッ素導入の効果で有機溶媒中での重合を可能としている。しかし母格が剛直であるためフレキシブルなフィルムを得るには280℃以上の高い温度での加熱を必要とし、用途が限定される。
【0007】
また特許文献2では剛直な全芳香族ポリエステルの水素原子を全てフッ素原子またはトリフルオロメチル基へ置換することで850nm帯での光透明性と高耐熱性の両立を実現しているが、これも母格が剛直であるため、重合度を高めるには300℃以上の高い重合温度を必要とする。
一方、非特許文献1では全フッ素化されたベンゼン環のオルト位にフッ素化されたメチレン基を介在して結合したジカルボン酸単量体が開示されているが、高分子化合物への誘導は記載されていない。また、非特許文献2には、ビス(2−エトキシカルボニル−1,1,2,2−テトラフルオロエチル)ベンゼンが開示されているが、やはりそれを用いたポリマーについて記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/039863号
【特許文献2】特開平5−112635号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Fluorine Chemistry,8(1976)11-22
【非特許文献2】Journal of Fluorine Chemistry 125 (2004) 763-765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1と特許文献2に開示された含フッ素芳香族高分子化合物は非常に高い信頼性を有している一方、上述のように硬化温度が高くなる傾向にある。その一方で、非常に高い信頼性を必要とする半導体チップの保護膜においても、チップ自体の耐熱性が250℃以下とされていることが多く、現実には250℃以下で硬化する高信頼性の高分子化合物からなるフィルムが求められている。
【0011】
そこで、本発明は半導体の保護膜として十分に低誘電率であり、かつ250℃以下という比較的低温でフィルム形成可能な重縮合系の高分子化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フッ素化されたメチレン基を介在して芳香環に結合した新規な含フッ素ジカルボン酸または含フッ素ジカルボン酸誘導体、およびそれらを用いて得られる新規高分子化合物の発明に至った。
特許文献1および特許文献2で開示されているフタル酸誘導体から縮重合して得られるポリエステルやポリアミドなどでは二つのカルボキシル基が直接芳香環上に置換していることから硬化(重合)を250℃を超える温度で行うのに対し、本発明に係る含フッ素ジカルボン酸はカルボキシル基がジフルオロメチレン基を介して芳香環に結合していることから250℃以下の加熱で低誘電率とフレキシブル性とに優れるフィルム(被膜)が得られたものである。
【0013】
併せて、本発明のポリエステルやポリアミドの一部の構造を閉環させて得られるヘテロ環を有する高分子化合物も低誘電率とフレキシブル性とに優れるという特性を示すことが見出された。
【0014】
すなわち、本発明は次の通りである。
【0015】
[1]
一般式(M−1)
【0016】
【化1】

【0017】
で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物を、これらのカルボニル基部位の反応性に応答する2〜4個の反応性基を有する多官能性化合物と重縮合させて得られる高分子化合物。
[式中、Qは置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基であって、−CF2COA及び−CF2COA’は芳香環炭素と結合し、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。AおよびA'はそれぞれ独立に、ヒドロキシル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であり、式中のCO基(カルボニル基)と共に活性エステル基を形成していてもよい。]
[2]
二価の有機基Qが、下記一般式(a)で表される二価の有機基であることを特徴とする、[1]の高分子化合物。
【0018】
【化2】

【0019】
[式中、Ar1はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。Y1はそれぞれ独立に単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基であって、pは0〜3の整数を表す。二個の未結合手は、同一または異なる芳香環の異なる炭素原子に結合している。]
[3]
二価の有機基Qが、下記一般式(b)で表される二価の有機基であることを特徴とする、[1]の高分子化合物。
【0020】
【化3】

【0021】
[式中、Ar2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。Y2はそれぞれ独立に単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基である。]
[4]
二価の有機基Qが、下記式で表される二価の有機基のいずれかであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかの高分子化合物。
【0022】
【化4】

【0023】
[5]
多官能性化合物を一般式(3)
【0024】
【化5】

【0025】
で表されるジアミンとして重縮合させて得られる一般式(7)
【0026】
【化6】

【0027】
で表される[1]〜[4]のいずれかの高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R2は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
[6]
多官能性化合物を一般式(4)
【0028】
【化7】

【0029】
で表されるジアミノジオールとして重縮合させて得られる一般式(8)
【0030】
【化8】

【0031】
で表される[1]〜[4]のいずれかの高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R3は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
[7]
[6]の一般式(8)で表される高分子化合物を脱水閉環することで得られる、下記一般式(9)
【0032】
【化9】

【0033】
で表される高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R3は一般式(4)におけるR3と同義である。]
[8]
多官能性化合物を一般式(5)
【0034】
【化10】

【0035】
で表されるヘキサフルオロイソプロパノール部位が置換したジアミノジオールとして重縮合させて得られる一般式(10)
【0036】
【化11】

【0037】
で表される[1]〜[4]のいずれかの高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R4は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
[9]
[8]の一般式(10)で表される高分子化合物を脱水閉環することで得られる、下記一般式(11)
【0038】
【化12】

【0039】
で表される高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R4は一般式(5)におけるR4と同義である。]
[10]
多官能性化合物を一般式(2)
【0040】
【化13】

【0041】
で表されるジオールとして重縮合させて得られる一般式(6)
【0042】
【化14】

【0043】
で表される[1]〜[4]のいずれかの高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R1は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
[11]
一般式(M−2)
【0044】
【化15】

【0045】
で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体。
[式中、Qは置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。ただし、式中の2個のジフルオロメチレン基は互いに隣接する芳香環の炭素原子には結合しない。DおよびD'はそれぞれ独立に、ヒドロキシル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であり、または式中のCO基(カルボニル基)と共に活性エステル基を形成することができる。]
【発明の効果】
【0046】
本発明のポリエステル、ポリアミドなどの含フッ素高分子化合物は、半導体チップ自体の耐熱性が下がる中で強く求められている低温硬化性、とりわけ250℃以下の加熱で十分な重合度が得られるという要求を満たし、かつ、得られるフィルムのフレキシブル性が高く、また、電気特性(低誘電率)に優れる保護膜として使用できる。また、本発明のポリエステルやポリアミドを閉環させて得られるヘテロ環を有する高分子化合物も低誘電率とフレキシブル性とに優れるという特性を示し、保護膜として使用できる。さらに、含フッ素ジカルボン酸およびその誘導体はこのような含フッ素高分子化合物の製造に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0048】
[含フッ素ジカルボン酸誘導体]
本明細書において、「含フッ素ジカルボン酸誘導体」には、含フッ素ジカルボン酸を含むものとする。
本発明の含フッ素ジカルボン酸誘導体は下記一般式(M−1)または一般式(M−2)で表される。
【0049】
【化16】

【0050】
【化17】

【0051】
−CF2COA、−CF2COA’、−CF2CODおよび−CF2COD’は同一または異なる芳香環炭素に結合している。ただし、式中の−CF2CODおよび−CF2COD’は互いに同一の芳香環の隣接する炭素原子には結合しない。この様に隣接する場合、重合性に欠け重合体を得ることが困難である。
【0052】
Qは、置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基である。このような二価の有機基は、1個または2個以上の芳香環を有する化合物から2個の水素原子が離脱して得られる有機基である。芳香環は炭素数4〜20の単環または縮合環である。芳香環間の連結基Yは、単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基からなる連結基であって、芳香環間は複数のこれらの連結基により結合していてもよい。
【0053】
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、フェナントレン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ピセン環、ペンタフェン環、ペリレン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環等が挙げられる。これらのうち、ベンゼン環、ナフタレン間、ピリジン環が特に好ましい。
【0054】
該芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基で置換されていてもよい。
【0055】
ここで、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0056】
上記アルキル基上の水素原子がヒドロキシル基と置換したものとしては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、5−ヒドロキシ−n−ペンチル基、6−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、ヒドロキシシクロペンチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
上記アルキル基上の水素原子がフッ素原子と置換したものとしては、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基等が挙げられる。
【0058】
さらに上記アルキル基上の水素原子がヒドロキシル基とフッ素原子で置換したものとしては、ジフルオロヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル基等が挙げられる。
【0059】
炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、 イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、sec−ペントキシ基、tert−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等が挙げられる。
【0060】
炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、 イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、イソペントキシカルボニル基、sec−ペントキシカルボニル基、tert−ペントキシカルボニル基、n−ヘキソキシカルボニル基、イソヘキソキシカルボニル基、シクロペントキシカルボニル基、シクロヘキソキシカルボニル基等が挙げられる。
【0061】
置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基Qとしては、前記芳香環をAr1とし、連結基YをY1として下記一般式(a)で表される二価の有機基で例示できる。
【0062】
【化18】

【0063】
[式中、Ar1はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。Y1はそれぞれ独立に単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基であって、pは0〜3の整数を表す。二個の未結合手は、同一または異なる芳香環の異なる炭素原子に結合している。]
従って、一般式(a)において、pが0である場合の二価の有機基としての芳香環の構造は、より具体的には下記のように例示することができる。本明細書において、点線は−CF2COAもしくは−CF2COA’または−CF2CODもしくは−CF2COD’の置換位置を示す。ただし、一般式(M−2)の場合、式中の2個のジフルオロメチレン基は互いに隣接する芳香環の炭素原子には結合せず、言い換えると、隣接する炭素原子が同時に点線の起点となる構造を除く。
【0064】
【化19】

【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

【0069】
【化24】

【0070】
【化25】

【0071】
【化26】

【0072】
【化27】

【0073】
【化28】

【0074】
【化29】

【0075】
【化30】

【0076】
【化31】

【0077】
【化32】

【0078】
【化33】

【0079】
【化34】

【0080】
【化35】

【0081】
【化36】

【0082】
【化37】

【0083】
【化38】

【0084】
【化39】

【0085】
上記の置換基を有していてもよい芳香環Qの構造でのアミノ基は、保護基によって保護されたアミノ基であってもよい。アミノ基を保護するための保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基 、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基 、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基 、アリルオキシカルボニル基 、フタロイル基、p−トルエンスルホニル基 、2−ニトロベンゼンスルホニル基等が例示できる。
【0086】
次いで、一般式(a)において、pが1である場合の二価の有機基の構造は、より具体的には下記のように例示することができる。
【0087】
【化40】

【0088】
次いで、一般式(a)において、pが2である場合の二価の有機基の構造は、より具体的には下記のように例示することができる。
【0089】
【化41】

【0090】
置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基Qとしては、前記芳香環をAr2とし、連結基YをY2として下記一般式(b)で表される二価の有機基で例示できる。
【0091】
【化42】

【0092】
[式中、Ar2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。Y2はそれぞれ独立に単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基である。]
具体的には下記のように例示することができる。
【0093】
【化43】

【0094】
芳香環を有する二価の有機基Qの構造は、上で例示した構造に限定されない。上で例示した構造の中で、以下に示す構造のものが特に好ましい。
【0095】
【化44】

【0096】
一般式(M−1)及び一般式(M−2)において、AおよびA'はそれぞれ独立に、DおよびD'はそれぞれ独立に、ヒドロキシル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であり、式中のCO基(カルボニル基)と共に活性エステル基を形成していてもよい。
【0097】
ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0098】
ここで、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、sec−ペントキシ基、tert−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、イソヘキソキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基などを挙げることができる。これらのうちメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0099】
炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基、p−ニトロフェノキシ基、ポリクロロフェノキシ基、1−ナフトキシ基、ベンジルオキシ基、ピリジルオキシ基などを挙げることができる。これらのうち、p−ニトロフェノキシ基が好ましい。
【0100】
また、AおよびA’並びにDおよびD’としては、カルボニル基(CO)と共に活性エステル基を形成するスクシンイミドキシ基、o−フタルイミドキシ基などを挙げることができる。
【0101】
これらの中で、AおよびA’ 並びにDおよびD’として特に好ましいものとして、ヒドロキシル基、塩素原子、スクシンイミドキシ基およびエトキシ基が挙げられる。
【0102】
また、一般式(M−1)
【0103】
【化45】

【0104】
で表される含フッ素ジカルボン酸(AとA’が共にヒドロキシル基)の酸無水物としては、AOCF2C−およびAOCF2C−が隣接する環炭素にぞれぞれ結合している場合に、これを酸無水物へ誘導したものが挙げられる。
【0105】
各種の置換基を有するQから得られる重縮合系の高分子化合物のうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ヘキサフルオロイソプロパノール基、アミノ基などは架橋部位として機能し相補する架橋剤で三次元架橋させることができ、樹脂特性を改良を図ることができる。また、ニトロ基および保護基で保護されたアミノ基は変性し、または脱保護して同様に三次元架橋させることができる。、
[含フッ素ジカルボン酸]
本発明にかかる含フッ素ジカルボン酸は、下記一般式(M−3)で表される。
【0106】
【化46】

【0107】
ここでQは一般式(M−1)におけるQと同義であり、具体的な構造は上述した一般式(M−1)と同じものを再び挙げることができる。
【0108】
これらの新規な含フッ素ジカルボン酸誘導体の合成方法については、Journal of Fluorine Chemistry, 2004年,第125巻,509頁〜515頁等を参考にすることができる。すなわち、最初にジハロゲノアリール化合物、好ましくはジヨードアリール化合物を出発原料に用い、銅の存在下、ハロゲノジフルオロ酢酸エステル、好ましくはブロモジフルオロ酢酸エチルと作用させ、ビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を得、次いでこれを加水分解してカルボン酸へと変換し、必要に応じてこれをハロゲン化して酸ハロゲン化物を得るものである。
【0109】
一般的な反応式を以下に示す(反応式[1])。
【0110】
【化47】

【0111】
[式中、X1、X2、X3およびX4はそれぞれ独立にハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリール基である。]
まず、ビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を得る工程について説明する。銅を用いてアルコキシカルボニルジフルオロメチルアリール化合物を得る方法としては、これまで公知となっている方法のいずれも採用することができ、特に制限は無いが、下記の方法が例示できる。
【0112】
ジハロゲノアリール化合物に対して作用させる、ハロゲノジフルオロ酢酸エステルの使用量は、特に制限するものではないが、通常、ジハロゲノアリール化合物1モルに対して、1.8〜3モルであり、好ましくは、1.9〜2.2モルであり、より好ましくは、実質上2モルである。1.8モルより少ないと、反応においてジハロゲノアリール化合物が消費しきらず、また、3モル以上であると、副反応が優先し、目的とするビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物の収量が下がる。
【0113】
ジハロゲノアリール化合物に対して作用させる、銅の使用量は、特に制限するものではないが、通常、ジハロゲノアリール化合物1モルに対して、1〜20モルであり、好ましくは、2〜15モルであり、より好ましくは、3モル〜10モルである。使用される銅の形状としては、粉末状のものが好ましく、粒度の粗いものは好ましくない。また、使用される銅は、公知の方法によって活性化するのが好ましい。具体的には、使用前に、塩酸水溶液等で処理することが好ましい。
【0114】
反応は、溶媒中で行うことが好ましい。かかる溶媒としては、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の極性溶媒を使用することが好ましく、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドもしくはジメチルスルホキシドである。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0115】
反応温度は、通常、室温〜100℃の範囲であり、好ましくは、40〜80℃であり、より好ましくは、50〜60℃である。
【0116】
反応時間は反応温度にも依存するが、通常、数分〜100時間であり、好ましくは、30分〜50時間であり、より好ましくは、1〜20時間であるが、核磁気共鳴装置(NMR)、ガスクロマトグラフィーなどの分析機器を使用し,原料であるジハロゲノアリール化合物が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0117】
反応終了後、抽出、再結晶等の通常の手段により、ビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等により精製することもできる。
【0118】
次いで、得られたビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を加水分解する方法について述べる。加水分解する方法としては、これまで公知となっている方法のいずれも採用することができ、特に制限は無いが、下記の方法が例示できる。
【0119】
一般に加水分解反応は塩基触媒の存在下で実施されるが、塩基としては、1種以上のアルカリ金属の水酸化物、重炭酸塩、炭酸塩やアンモニア、アミンが含まれる。アルカリ金属化合物では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが例示される。アミンでは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、モルホリン、ピロール、ピロリジン、ピリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミンやこれらの四級水酸化アンモニウム塩などが示される。
【0120】
上で例示した塩基のうち、アルカリ金属化合物である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましく、アルカリ金属の水酸化物である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0121】
ビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物に対する塩基のモル比は、通常、0.01〜10、好ましくは1.0〜5であり、さらに好ましくは1〜3である。
【0122】
この反応は、通常、水の存在下で行われる。ビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物に対する水のモル比は、通常、1以上であり、上限は無いが、あまりに多量の水を使用すると効率が悪くなるので、100以下が好ましく、更に好ましくは50以下である。
【0123】
また必要に応じて、水と有機溶媒とを併用することができる。併用する有機溶媒に特に制限は無いが、反応で得られる、ビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を水層から抽出できる有機溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等の、水と混合しない有機溶剤が好ましい。
【0124】
この場合の有機溶媒の使用割合は、水と有機溶媒との合計100質量部に対して、通常、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20〜90質量部である。
【0125】
反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは5〜80℃であり、反応時間は、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間であるが、核磁気共鳴装置(NMR)、ガスクロマトグラフィーなどの分析機器を使用し,原料であるビス(アルコキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0126】
反応終了後、抽出、再結晶等の通常の手段により、ビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等により精製することもできる。
【0127】
次いで、得られたビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物をハロゲン化する方法について述べる。ハロゲン化する方法としては、これまで公知となっている方法のいずれも採用することができ、特に制限は無いが、下記の塩素化方法が例示できる。
【0128】
塩素化は、得られたビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を、無溶媒下もしくは溶媒の存在下で塩素化剤と接触させ、加熱することにより達せられる。
【0129】
用いる塩素化剤として、塩化チオニル、塩化スルフリル、ホスゲン、塩化オキザリル、塩化ホスホリル、三塩化リン、五塩化リン、ジクロロトリフェニルホスホラン、ジブロモトリフェニルホスホラン等の汎用の塩素化剤が挙げられる。塩化チオニル、塩化ホスホリル、塩化オキザリルは特に安価であり、反応性も高いので、これらの試薬を用いて塩素化することが特に好ましい。
【0130】
用いる塩素化剤の量はビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物1モルに対し1.6〜20モルであり、2〜10モル用いることが特に好ましい。
【0131】
溶媒は塩素化の条件下で不活性なものならば特に制限なく用いることができ、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などを使用できる。塩素化剤として塩化チオニルのような液体を用いる場合にはこの塩素化剤が溶媒の役割も兼ねるため、敢えて溶媒を使用しなくてもよい。
【0132】
塩素化の反応温度は25〜200℃であり、より好ましくは30〜120℃であり、反応時間は、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間であるが、核磁気共鳴装置(NMR)、ガスクロマトグラフィーなどの分析機器を使用し,原料であるビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0133】
反応終了後、抽出、再結晶等の通常の手段により、ビス(ヒドロキシカルボニルジフルオロメチル)アリール化合物を得ることができる。また、必要によりカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等により精製することもできる。
【0134】
本発明の含フッ素ジカルボン酸誘導体の具体的な合成例を挙げると以下のようになる(反応式[2]・実施例1参照)。
【0135】
【化48】

【0136】
[含フッ素ジカルボン酸誘導体から得られる高分子化合物]
本発明の高分子化合物は、一般式(M−1)
【0137】
【化49】

【0138】
で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物を、これらのカルボニル基部位の反応性に応答する2〜4個の反応性基を有する多官能性化合物と重縮合させて得られる高分子化合物である。式中のQ、A、A’は前記と同じである。
【0139】
多官能性化合物が有するカルボニル基部位の反応性に応答する反応性基としては、ヒドロキシル基およびその活性化された基、アミノ基とその活性化された基などが挙げられる。多官能性化合物は少なくとも2個の反応性基が必要であり、複数の種類の反応性基を有することもできるが、そのうちの二個が同一の反応性基であるのが好ましい。
【0140】
次に、この含フッ素ジカルボン酸誘導体を重合させ、高分子を製造する方法について説明する。この含フッ素ジカルボン酸誘導体は、−CF2CO−基を二つ有する化合物であり、場合によっては前記Qについて説明したようにこの−CF2CO−基を含めて、3つ以上の官能基を同時に有することができる。高分子化合物を製造する場合、これらの官能基を有効に利用することになるが、−CF2CO−基の反応性を優先的に利用することが好ましい。
【0141】
なお、本発明の高分子化合物[式(6)〜(11)]におけるm(正の整数)は、モノマーユニットの繰り返し数(重合度)を意味し、5〜10000が好ましく、10〜1000がさらに好ましい。また、本発明の重合体は、重合度に一定の幅のある重合体の混合物であるが、重合体重量平均分子量でいうと、概ね1000〜5000000が好ましく、2000〜200000の範囲が特に好ましい。重合度、分子量は、後述の重合方法の条件を適宜調節することによって、所望の値に設定することができる。
【0142】
[ポリエステル]
本発明にかかる一般式(M−1)
【0143】
【化50】

【0144】
(式中、Q、A、A’は前記と同じ。)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物を、下記一般式(2)
【0145】
【化51】

【0146】
で表されるジオールと所定の温度範囲で接触させることで下記一般式(6)で表されるポリエステル
【0147】
【化52】

【0148】
へと、重合することができる。
【0149】
一般式(2)で表されるジオールについて説明する。ジオールは反応性を高めるためカルボキシル基との反応に対して活性化された基を有する活性体として使用することもできる。活性体としては、ジオールのアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム)塩(ジアルコキシド)などが挙げられる。
【0150】
式中、R1は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。
【0151】
具体的に例示するならば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、カテコール、1,3−ベンゼンジオール、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−メチレンジフェノール、4,4’−メチレンジフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの化合を好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0152】
本発明のポリエステルの製造の方法は、特に限定することなく公知の方法を使用できる。すなわち一般式(M−3)で表される含フッ素ジカルボン酸を、縮合剤の存在下、一般式(2)で表されるジオールと直接脱水縮合させることで、一般式(6)で表される高分子化合物が製造できる。
【0153】
また、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体のうち、AおよびA'がそれぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であるもの、含フッ素ジカルボン酸誘導体の酸無水物を、一般式(2)で表されるジオールと反応させることで一般式(6)に示す重合体が製造できる。この場合、高分子溶解促進剤即ちリチウムブロマイドやリチウムクロライドの如き金属塩類や、硫酸、リン酸、五酸化リンなどの脱水剤、またはアミンなどの受酸剤を使用することも可能である。
【0154】
前記含フッ素ジカルボン酸またはその誘導体などと前記ジオールを150〜350℃、好ましくは200〜300℃で相互に溶解(溶融)させて無溶媒で反応させる方法、また有機溶媒中高温(150〜350℃、好ましくは200〜300℃)で反応させる方法、さらに、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体(AおよびA'がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であるもの。)を前記ジオールである場合に−20〜80℃の温度で有機溶媒中にて反応する方法が挙げられる。高分子溶解促進剤を使用する場合には、含フッ素ジカルボン酸誘導体のAおよびA'がヒドロキシル基やアルコキシ基である場合には−20〜80℃の温度で有機溶媒中にて反応する方法をとり得る。
【0155】
有機溶媒中、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体(AおよびA'がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であるもの。)もしくは該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物と、一般式(2)で表されるジオールを混合し、重縮合反応させる方法が最も簡単である。重合に用いる一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物の総モル数と、該ジオールの総モル数の比は、0.5〜1.5の範囲にあることが一般的であり、更に0.8〜1.2の範囲にあることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、この比が1に近いほど、得られる重合体の分子量は大きくすることができる。
【0156】
使用できる有機溶媒としては原料の両成分が溶解すれば特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類などを例示することができる。このような有機溶媒とともに、酸受容体、例えば、ピリジン、トリエチルアミンなどを共存させて反応を行うことが効果的である。特に上記のアミド系溶媒を用いるとこれらの溶媒自身が酸受容体となり高重合度のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0157】
[ポリアミド]
本明細書において、「ポリアミド」は後述する「ポリアミドジオール型高分子化合物」、「高度にフッ素化されたポリアミド」、これらから閉環して得られる「ポリベンゾオキサゾール」、「ヘテロ環型高分子化合物」を包含することがある。
【0158】
本発明にかかる一般式(M−1)
【0159】
【化53】

【0160】
(式中、Q、A、A’は前記と同じ。)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物は、一般式(3)で表されるジアミン
【0161】
【化54】

【0162】
と所定の温度範囲で接触させ一般式(7)で表されるポリアミド
【0163】
【化55】

【0164】
へと、重合することができる。
【0165】
ここで、Qがアミノ基を有する場合、重縮合に供する際、そのまま使用することも可能であるが、アミノ基を前記の保護基により保護してから使用することが好ましい。
【0166】
一般式(3)で表されるジアミンについて説明する。ジアミンは反応性を高めるためカルボキシル基との反応に対して活性化された基を有する活性体として使用することもできる。活性体としては、ジアミンの両アミノ基がトリアルキルシリルアミノ基(アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基から選ばれ、3個が同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。)である化合物などが挙げられる。
【0167】
一般式(3)および一般式(7)におけるR2は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。
【0168】
ここで、一般式(3)で表されるジアミンを具体的に例示するならば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、2,5−ジアミノベンゾトリフルオリド、3,3’−ビストリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビストリフルオロメチル−5,5’−ジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルキル)−4,4’−ジアミノジフェニル、ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジブロモ−4,4’−ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルコキシ)−4,4’−ジアミノジフェニル、ジフェニル−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノテトラフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビナフチルアミン、o−、m−、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノジュレン、ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニル、ジアルキル−4,4’−ジアミノジフェニル、ジメトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2,6−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジンなどの化合物を好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0169】
この場合、本発明のポリアミドの製造方法は公知の方法を特に限定することなく使用できる。すなわち一般式(M−3)で表される含フッ素ジカルボン酸を、縮合剤の存在下、一般式(3)で表されるジアミンと直接脱水縮合させることで、一般式(7)に示す重合体が製造できる。
【0170】
また、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体のうち、AおよびA'がそれぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であるもの、含フッ素ジカルボン酸誘導体の酸無水物を、一般式(3)で表されるジアミンと反応させることで一般式(7)に示す重合体が製造できる。この場合、高分子溶解促進剤即ちリチウムブロマイドやリチウムクロライドの如き金属塩類や、硫酸、リン酸、五酸化リンなどの脱水剤、またはアミンなどの受酸剤を使用することも可能である。
前記含フッ素ジカルボン酸またはその誘導体などと前記ジアミンを150〜400℃、好ましくは200〜350℃で相互に溶解(溶融)させて無溶媒で反応させる方法、また有機溶媒中高温(150〜400℃、好ましくは200〜350℃)で反応させる方法、さらに、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体(AおよびA’がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であるもの。)が前記ジアミンである場合に−20〜80℃の温度で有機溶媒中にて反応する方法が挙げられる。高分子溶解促進剤を使用する場合には、含フッ素ジカルボン酸誘導体のAおよびA’がヒドロキシル基やアルコキシ基である場合にも重合できる。
【0171】
有機溶媒中、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体(AおよびA’がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であるもの。)もしくは該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物と、一般式(3)で表されるジアミンを混合し、重縮合反応させる方法が最も簡単である。重合に用いる一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物の総モル数と、該ジアミンの総モル数の比は、0.5〜1.5の範囲にあることが一般的であり、更に0.8〜1.2の範囲にあることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、この比が1に近いほど、得られる重合体の分子量を大きくすることができる。
【0172】
使用できる有機溶媒としては原料の両成分が溶解すれば特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ベンゼン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等の芳香族系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類などを例示することができる。このような有機溶媒とともに、酸受容体、例えば、ピリジン、トリエチルアミンなどを共存させて反応を行うことが効果的である。特に上記のアミド系溶媒を用いるとこれらの溶媒自身が酸受容体となり高重合度のポリアミド樹脂を得ることができる。
【0173】
[ポリアミドジオール型高分子化合物]
一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体は、一般式(4)で表されるジアミノジオール
【0174】
【化56】

【0175】
と所定の温度範囲で接触させ一般式(8)で表される「ポリアミドジオール型高分子化合物」
【0176】
【化57】

【0177】
へと、重合することができる。
【0178】
ここで、Qがアミノ基を有しているものに関しては、重縮合に供する際、そのまま使用することも可能であるが、アミノ基を前記の保護基により保護してから使用することが好ましい。
一般式(4)および一般式(8)におけるR3は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。
【0179】
ここで、一般式(4)で表されるジアミノジオールを具体的に例示するならば、2,4−ジアミノ−1,5−シクロヘキサンジオール、2,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)メタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、2,6−ジアミノ−1,5−ナフタレンジオール、1,5−ジアミノ−2,6−ナフタレンジオール、2,6−ジアミノ−3,5−ピリジンジオールなどの化合物を好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0180】
この場合、本発明のポリアミドジオール型高分子化合物の製造方法は公知の方法を特に限定することなく使用できる。すなわち一般式(M−3)で表される含フッ素ジカルボン酸を、縮合剤の存在下、一般式(4)で表されるジアミノジオールと直接脱水縮合させることで、一般式(8)に示す重合体が製造できる。
【0181】
また、一般式(M−1)で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体のうち、AおよびA'がそれぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であるもの、含フッ素ジカルボン酸誘導体の酸無水物を、一般式(4)で表されるジアミノジオールと反応させることで一般式(8)に示す重合体が製造できる。この場合、高分子溶解促進剤即ちリチウムブロマイドやリチウムクロライドの如き金属塩類や、リン酸、五酸化リンなどの脱水剤、またはアミンなどの受酸剤を使用することも可能である。
【0182】
この重合反応の方法、条件については特に制限されない。重合の素反応がアミド形成反応であることから、前述した一般式(7)で表されるポリアミド生成と同様の方法、および溶媒種を用いることができる。
【0183】
上記方法により得られたポリアミドフェノール樹脂(ポリアミドジオール型高分子化合物)は、さらに脱水閉環させることにより、一般式(9)で表されるポリベンゾオキサゾール樹脂
【0184】
【化58】

【0185】
に誘導することができる。
一般式(9)におけるR3は一般式(4)におけるR3と同義である。
【0186】
脱水閉環反応は特に限定することなく公知の方法を使用できる。環化反応は、熱、酸触媒、塩基触媒など脱水条件を促進する種々の方法で行うことができる。加熱閉環を行う場合、80〜400℃の温度で処理可能であるが、特に150〜350℃の温度範囲が好ましい。加熱時間は、10分〜10時間程度であるが、通常30分〜2時間程度で行う。閉環温度が150℃以下の場合は閉環率が低いためポリベンゾオキサゾールのフィルム強度が損なわれるため好ましくなく、350℃以上の場合はフィルムが着色したり脆くなったりするので問題がある。酸触媒としてp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などを、塩基触媒としてトリエチルアミン、ピリジンなどを用いることができる。また、閉環後のポリベンゾオキサゾールが有機溶媒に可溶であれば、無水酢酸などの脱水試薬とピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基を用いて有機溶液中で化学的に閉環することも可能である。
【0187】
一般式(10)で表される高度にフッ素化したポリアミド樹脂を各種物品へ塗布後、閉環することができる。環化(脱水閉環)させた場合、耐熱性の向上、溶解性変化、屈折率や誘電率の低下、撥水撥油性の発現など、大きな物性面の変化を伴う樹脂変性を行うことができる。
【0188】
[高度にフッ素化されたポリアミド]
一般式(M−1)で表される、本発明の含フッ素ジカルボン酸は、一般式(5)で表されるヘキサフルオロイソプロパノール部位が置換したジアミノジオール
【0189】
【化59】

【0190】
と所定の温度範囲で接触させ一般式(10)で表される「高度にフッ素化されたポリアミド」
【0191】
【化60】

【0192】
へと、重合することができる。
【0193】
一般式(5)および一般式(10)におけるR4は脂環、芳香環、縮合多環式芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。
【0194】
ここで、一般式(5)で表されるヘキサフルオロイソプロパノール部位が置換したジアミノジオールを具体的に例示するならば、
【0195】
【化61】

【0196】
【化62】

【0197】
などの化合物を好適に挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0198】
本発明の「高度にフッ素化されたポリアミド」の重合反応の方法、条件については特に制限されない。重合の素反応がアミド形成反応であることから、前述した一般式(7)で表されるポリアミド樹脂生成と同様の方法、条件および溶媒種を用いることが出来る。
【0199】
上記方法により得られた一般式(10)で表される高度にフッ素化したポリアミド樹脂は、さらに脱水閉環させることにより、一般式(11)で表される「ヘテロ環型高分子化合物」
【0200】
【化63】

【0201】
に誘導することができる。
一般式(11)におけるR4は一般式(5)におけるR4と同義である。
【0202】
脱水閉環反応の条件には、特に制限はないが、環化は、熱、酸触媒、塩基触媒など脱水条件を促進する種々の方法で行うことができる。
【0203】
脱水閉環反応は特に限定することなく公知の方法を使用できる。環化反応は、熱、酸触媒、塩基触媒など脱水条件を促進する種々の方法で行うことができる。加熱閉環を行う場合、80〜400℃の温度で処理可能であるが、特に150〜350℃の温度範囲が好ましく、約250℃で実質的に閉環することができる。閉環温度が150℃以下の場合は閉環率が低いため得られたフィルム強度が損なわれるため好ましくなく、350℃以上の場合はフィルムが着色したり脆くなったりするので問題がある。酸触媒としてp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などを、塩基触媒としてトリエチルアミン、ピリジンなどを用いることができる。また、閉環後の「ヘテロ環型高分子化合物」が有機溶媒に可溶であれば、無水酢酸などの脱水試薬とピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基を用いて有機溶液中で化学的に閉環することも可能である。一般式(11)で表される「ヘテロ環型高分子化合物」のヘテロ環は、一般式(9)で表されるオキサゾール環よりもさらに温和な条件で脱水閉環により形成することができる。
【0204】
一般式(10)で表される高度にフッ素化したポリアミド樹脂を各種溶媒に溶解した溶液を各種物品へ塗布後、80〜400℃の温度で処理可能であるが、特に150〜350℃の温度範囲が好ましく、約250℃で実質的に閉環して一般式(11)で表される「ヘテロ環型高分子化合物」とすることができる。環化(脱水閉環)させた場合、耐熱性の向上、溶解性変化、屈折率や誘電率の低下、撥水撥油性の発現など、大きな物性面の変化を伴う樹脂変性を行うことができる。
【0205】
一般式(11)で表される「ヘテロ環型高分子化合物」は、トリフルオロメチル基を含有するヘテロ環を含有しているために、一般式(9)で表されるポリベンゾオキサゾールよりも、さらに、低誘電率、低吸水性、高透明性を示す。
【0206】
本発明の高分子化合物である含フッ素重合体の使用方法の例を挙げる。本発明のポリエステル、ポリアミドは有機溶媒に溶解したワニス状態、または粉末状態、フィルム状態、固体状態で使用に供することが可能である。その際、得られた含フッ素重合体中には必要に応じて酸化安定剤、フィラー、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤および増感剤等の添加物が混合されていても差し支えない。ワニスで使用する場合は、ガラス、シリコンウエーハ、金属、金属酸化物、セラミックス、樹脂などの基材上にスピンコート、スプレーコート、フローコート、含浸コート、ハケ塗りなど通常用いられる方法で塗布することができる。塗布した後、通常過熱して重合度を上げ所望の特性を有するフィルム(被膜)とする。この場合、150〜350℃程度の温度で行うことができるが、300℃以下、さらには250℃以下で行うのが好ましい。一般式(8)または一般式(10)で表されるポリアミドは、この加熱によりそれぞれ閉環して一般式(9)で表されるポリベンゾオキサゾールまたは一般式(11)で表される「ヘテロ環型高分子化合物」に変換することができる。
【0207】
この際使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類、濃硫酸などを例示することができる。
【実施例】
【0208】
以下に、実施例をもって本発明を説明するが、これにより実施態様は限られない。
【0209】
[実施例1]1,4−ベンゼンジ酢酸 α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ジエチルエステルの合成
【0210】
【化64】

【0211】
コンデンサーを備えた1Lのガラスフラスコに、1,4−ジヨードベンゼン50g(152mmol/1.0当量)、金属銅粉末44g(692mmol/4.6当量)とジメチルスルホキシド(DMSO)(脱水)250mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸エチル83g(408mmol/2.6当量)を滴下し、55℃で8時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、水、クロロホルムを加え、析出した不溶物を濾別した。得られた濾液を分液し、有機層を希塩酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、乾燥後減圧濃縮を行い、黄色油状物として1,4−ベンゼンジ酢酸 α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ジエチルエステル54g(収率82%、純度74%)を得た。
[1,4−ベンゼンジ酢酸 α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ジエチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.69(s,4H),4.29(q,J=7.1 Hz,4H;C−CH2CH3のCH2),1.29(t,J=7.1 Hz,6H;C−CH2CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−104.68(s,4F)。
【0212】
[実施例2]α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジ酢酸の合成
【0213】
【化65】

【0214】
250MLのガラスフラスコに、実施例1で得られたジエステル15g(純度74%、34mmol)、水40mL、48%水酸化ナトリウム水溶液9.6g(115mmol/3.3当量)を加え、室温で18時間撹拌した後、19F NMRにて反応終了を確認した。その後、ジイソプロピルエーテル40mLにて2回洗浄を行い、1mol/L塩酸60mL(60mmol/1.8当量)を滴下した。pH1を確認後、室温にて1時間撹拌し、ジイソプロピルエーテル100mLを加え、分液した。水層をジイソプロピルエーテル100mLにて2回抽出を行った後、有機層を合わせ、減圧濃縮し、淡黄色固体としてα,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジ酢酸8.2g(収率70%、純度90%)を得た。
[α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジ酢酸の物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.75(s,4H).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−102.54(s,4F)。
【0215】
[実施例3]1,3−ベンゼンジ酢酸 α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ジエチルエステルの合成
【0216】
【化66】

【0217】
コンデンサーを備えた1Lのガラスフラスコに、1,3‐ジヨードベンゼン50g(152mmol/1.0当量)、金属銅粉末43g(677mmol/4.5当量)とジメチルスルホキシド(DMSO)(脱水)250mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸エチル70g(345mmol/2.3当量)を滴下し、55℃で8時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、水、クロロホルムを加え、析出した不溶物を濾別した。得られた濾液を分液し、有機層を希塩酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、乾燥後減圧濃縮を行い、黄色油状物として1,3−ベンゼンジ酢酸 α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ジエチルエステル49g(収率51%、純度52%)を得た。
[1,3−ベンゼンジ酢酸 α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ジエチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.85(s,1H),7.73(d,J=7.8 Hz,2H),7.55(t,J=7.1 Hz,1H),4.29(q,J=7.1 Hz,4H;C−CH2CH3のCH2),1.30(t,J=7.1 Hz,6H;C−CH2CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−104.35(s,4F)。
【0218】
[実施例4] α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジ酢酸の合成
【0219】
【化67】

【0220】
250MLのガラスフラスコに、実施例3で得られたジエステル21g(純度52%、34mmol)、水40mL、48%水酸化ナトリウム水溶液9.6g(115mmol/3.3当量)を加え、室温で18時間撹拌した後、19F NMRにて反応終了を確認した。その後、ジイソプロピルエーテル40mLにて2回洗浄を行い、1mol/L塩酸60mL(60mmol/1.8当量)を滴下した。pH1を確認後、室温にて1時間撹拌し、ジイソプロピルエーテル100mLを加え、分液した。水層をジイソプロピルエーテル10mLにて2回抽出を行った後、有機層を合わせ、減圧濃縮し、淡黄色固体としてα,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジ酢酸4.5g(収率47%、純度95%)を得た。
[α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジ酢酸の物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.85‐7.65(m,4H).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−102.30(s,4F)。
【0221】
[実施例5]α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジアセチルクロリドの合成
【0222】
【化68】

【0223】
コンデンサーを備えた250MLのガラスフラスコに、実施例1および2と同様にして得られたジカルボン酸49g(純度90%、167mmol/1.0当量)とアセトニトリル50mLを加え、そこに塩化チオニル50g(420mmol/2.5当量)を滴下し、室温で18時間攪拌した。19F NMRにて反応終了を確認した後、減圧濃縮を行い、黄色油状物としてα,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジアセチルクロリド47g(収率85%、純度90%)を得た。
[α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジアセチルクロリドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.76(s,4H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−101.32(s,4F)。
【0224】
[実施例6] α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリドの合成
【0225】
【化69】

【0226】
コンデンサーを備えた250MLのガラスフラスコに、実施例3および4と同様にして得られたジカルボン酸32g(純度93%、113mmol/1.0当量)とアセトニトリル50mLを加え、そこに塩化チオニル30g(252mmol/2.2当量)を滴下し、室温で18時間拌した。19F NMRにて反応終了を確認した後、減圧濃縮を行い、黄色油状物としてα,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリド34g(収率81%、純度73%)を得た。
[α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.86(s,1H),7.81(d,J=7.8 Hz,2H),7.67(t,J=7.1 Hz,1H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−101.10(s,4F)。
【0227】
[実施例7]5−メトキシ−1,3−ベンゼンジ酢酸 α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,3−ジエチルエステルの合成
【0228】
【化70】

【0229】
コンデンサーを備えた1Lのガラスフラスコに、1,3−ジヨード−5−メトキシベンゼン50g(139mmol/1.0当量)、金属銅粉末44g(692mmol/5.0当量)とジメチルスルホキシド(DMSO)(脱水)250mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸エチル71g(350mmol/2.5当量)を滴下し、55℃で7時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、水、クロロホルムを加え、析出した不溶物を濾別した。得られた濾液を分液し、有機層を希塩酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、乾燥後減圧濃縮を行い、黄色油状物として5−メトキシ−1,3−ベンゼンジ酢酸 α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ジエチルエステル52g(収率80%、純度75%)を得た。
[5−メトキシ−1,3−ベンゼンジ酢酸 α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ジエチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.37(s,2H),6.44(s,1H),4.13(q,J=7.0 Hz,4H;C−CH2CH3のCH2),3.73(s,3H;O−CH3のCH3),1.30(t,J=7.0 Hz,6H;C−CH2CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−104.30(s,4F)。
【0230】
[実施例8]5−メトキシ−α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジ酢酸の合成
【0231】
【化71】

【0232】
250MLのガラスフラスコに、実施例7で得られたジエステル15g(純度75%、32mmol)、水40mL、48%水酸化ナトリウム水溶液10.0g(120mmol/3.8当量)を加え、室温で18時間撹拌した後、19F NMRにて反応終了を確認した。その後、ジイソプロピルエーテル40mLにて2回洗浄を行い、1mol/L塩酸60mL(60mmol/1.9当量)を滴下した。pH1を確認後、室温にて1時間撹拌し、ジイソプロピルエーテル100mLを加え、分液した。水層をジイソプロピルエーテル100mLにて2回抽出を行った後、有機層を合わせ、減圧濃縮し、淡黄色固体として5−メトキシ−α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジ酢酸8.1g(収率75%、純度88%)を得た。
[5−メトキシ−α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジ酢酸の物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン);δ=12.30(s,1H;OH),6.42(s,2H),6.46(s,1H),3.77(s,3H;O−CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−103.50(s,4F)。
【0233】
[実施例9]5−メトキシ−α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリドの合成
【0234】
【化72】

【0235】
コンデンサーを備えた250MLのガラスフラスコに、実施例7および8と同様にしてジカルボン酸30g(89.1mmol/1.0当量)とアセトニトリル50mLを加え、そこに塩化チオニル30g(純度89%、252mmol/2.8当量)を滴下し、室温で18時間拌した。19F NMRにて反応終了を確認した後、減圧濃縮を行い、黄色油状物として5−メトキシ−α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリド31g(収率78%、純度75%)を得た。
[5−メトキシ−α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.41(s,2H),6.45(s,1H),3.76(s,3H;O−CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−102.30(s,4F)。
【0236】
[実施例10]2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロ酢酸)ジエチルエステルの合成
【0237】
【化73】

【0238】
コンデンサーを備えた100mLのガラスフラスコに、4,4’−ジヨードビフェニル5.0g(12.3mmol/1.0当量)、金属銅粉末3.5g(55.1mmol/4.5当量)とジメチルスルホキシド(DMSO)(脱水)50mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸エチル5.5g(27.1mmol/2.2当量)を滴下し、55℃で7時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにより反応終了を確認した後、水、クロロホルムを加え、析出した不溶物を濾別した。得られた濾液を分液し、有機層を希塩酸、水、飽和食塩水で順次洗浄し、乾燥後減圧濃縮を行い、黄色固体として2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロ酢酸)ジエチルエステル3.1g(収率43%、純度68%)を得た。
[2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロ酢酸)ジエチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.60(d,J=8.5 Hz,4H),7.56(d,J=8.5 Hz,4H),4.22(q,J=7.1 Hz,4H;C−CH2CH3のCH2),1.22(t,J=7.1 Hz,6H;C−CH2CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−104.15(s,4F)。
【0239】
[実施例11]2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロ酢酸)の合成
【0240】
【化74】

【0241】
50mLのガラスフラスコに、実施例1で得られたジエステル2.3g(純度68%、3.9mmol)、水5mL、48%水酸化ナトリウム水溶液0.65g(11.7mmol/3.0当量)を加え、室温で4.5時間撹拌した後、19F NMRにて反応終了を確認した。その後、ジイソプロピルエーテル40mLにて2回洗浄を行い、1mol/L塩酸10mL(50mmol/2.6当量)を滴下した。pH1を確認後、室温にて1時間撹拌し、ジイソプロピルエーテル50mLを加え、有機層を分液した。水層をジイソプロピルエーテル50mLにて2回抽出を行った後、有機層を合わせ、減圧濃縮し、淡黄色固体として2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロ酢酸)1.5g(収率86%、純度80%)を得た。
[2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロ酢酸)の物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.89(d,J=8.5 Hz,4H),7.69(d,J=8.5 Hz,4H).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−102.12(s,4F)。
【0242】
[実施例12]2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)の合成
【0243】
【化75】

【0244】
コンデンサーを備えた250mLのガラスフラスコに、実施例11および12と同様に調製したジカルボン酸43g(純度80%、100mmol/1.0当量)とアセトニトリル80mLを加え、そこに塩化チオニル30g(250mmol/2.5当量)を滴下し、室温で24時間攪拌した。19F NMRにて反応終了を確認した後、減圧濃縮を行い、黄色油状物として2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)33g(収率79%、純度91%)を得た。
[2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)の物性]
1H NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.75(d,J=8.5 Hz,4H),7.57(d,J=8.5 Hz,4H).
19F NMR(測定溶媒:重ジメチルスルホキシド,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−100.92(s,4F)。
【0245】
[参考例1]1,2−ベンゼンジ酢酸 α,α2,β,β2テトラフルオロ−1,2−ジエチルエステルの合成
【0246】
【化76】

【0247】
1,2−ジヨードベンゼン25g(76mmol/1.0当量)、金属銅粉末23g(362mmol/4.8当量)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(脱水)250mL、そしてブロモ−ジフルオロ酢酸エチル42g(204mmol/2.7当量)を使用し、実施例1と同様にして1,2−ベンゼンジ酢酸 α,α2,β,β2テトラフルオロ−1,2−ジエチルエステルを、黄色油状物として26g(収率80%、純度75%)得た。
【0248】
[参考例2]α,α2,β,β2テトラフルオロ−1,2−ベンゼンジ酢酸の合成
【0249】
【化77】

【0250】
参考例1で得られたジエステル20g(純度75%、47mmol)、水50mL、そして48%水酸化ナトリウム水溶液13g(155mmol/3.3当量)を使用し、実施例2と同様にしてα,α2,β,β2テトラフルオロ−1,2−ベンゼンジ酢酸を、淡黄色固体として11g(収率75%、純度87%)得た。
【0251】
[参考例3]α,α2,β,β2テトラフルオロ−1,2−ベンゼンジアセチルクロリドの合成
【0252】
【化78】

【0253】
参考例2で得られたジカルボン酸10g(純度87%、33mmol/1.0当量)、アセトニトリル20mL、そして塩化チオニル12g(100mmol/3.0当量)を使用し、実施例5と同様にしてα,α2,β,β2テトラフルオロ−1,2−ベンゼンジアセチルクロリドを、淡黄色固体として9g(収率84%、純度93%)得た。
【0254】
[参考例4][1−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−3,5−ジブロモベンゼンの製造]
【0255】
【化79】

【0256】
窒素雰囲気下、500mLのガラスフラスコに1,3,5−トリブロモベンゼン 30.0g(95.0mmol)、ジエチルエーテル 400mLを投入した後、−78℃に冷却した。−78℃にて1.6Mノルマルブチルリチウムヘキサン溶液 60ml(96.0mmol)を1時間かけて滴下し、続いて、−78℃にて熟成を1時間行なった。ガスクロマトグラフィーにてリチオ化を確認した後、ヘキサフルオロアセトン16.6g(100.0mmol)を−78℃にて吹込み、1時間攪拌した。攪拌終了後、2N塩酸 400mLに反応液を添加し有機層と水層を分離した。水層をイソプロピルエーテル 100mLで抽出して有機層に合わせ、これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターにて濃縮した後、蒸留にて23.0g、収率60%で1−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−3,5−ジブロモベンゼンを得た。
[1−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−3,5−ジブロモベンゼンの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.79(s,3H)。
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−76.0(s,6F,CF3)。
【0257】
[参考例5][5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸の製造]
【0258】
【化80】

【0259】
100mlオートクレーブに参考例4で得られた1−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−3,5−ジブロモベンゼン 10.0g(26mmol)、酢酸パラジウム 0.56g(2.5mmol)、トリフェニルホスフィン 2.63g(10mmol)、トリエチルアミン 10.1g(100mmol)、水 5.0g、テトラヒドロフラン 20gを投入した。その後、一酸化炭素圧2MPaにて100℃で17時間反応させた。反応終了後、反応液に2N塩酸 50mLを加えた。続いて、イソプロピルエーテル 50mLにて抽出し有機層を分離した。この有機層に7%水酸化ナトリウム水溶液 60mL加え水層を分離した。水層を ヘプタン 30mLで洗浄後、6N 塩酸 60mLを加えた。析出した固体をろ過にて単離しヘプタン 50mLで洗浄したところ、3.5g、収率41%で5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸を得た。
[5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸の物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=9.27(s,1H),8.58(m,1H),8.46(s,2H)。
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−73.5(s,6F,CF3)。
【0260】
[参考例6] [カルボン酸クロリド1 [5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸クロリドの製造]
50mLのガラスフラスコに、参考例5で得られた5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸3.5g(10.5mmol)と塩化チオニル 20mlを投入した。その後、攪拌しながら70℃で5時間反応させた。反応後、塩化チオニルを留去し、目的とするカルボン酸クロリド1 [5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸クロリド を3.8g、収率98%で得た。
[[5−[2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−1,3−ベンゼンジカルボン酸クロリドの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=8.52(m,1H),8.41(s,2H)。
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−72.7(s,6F,CF3)。
【0261】
[実施例13]
ポリマー1の合成
【0262】
【化81】

【0263】
攪拌機を備えた100mlの三口フラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA) 2.28g(10.0mmol)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)20.0gを入れ、窒素雰囲気下、氷冷下で攪拌した。その中へ、実施例5で得られた酸塩化物(α,α4,β,β4テトラフルオロ−1,4−ベンゼンジアセチルクロリド)を純分換算で3.03g(10.0mmol)を約10分かけてゆっくりと添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を中和するために炭酸リチウム0.70g(9.5mmol)を添加し、次いで得られた粘ちょう溶液を500mLのメタノールに投入し、得られた沈殿をろ別回収後、80℃で真空乾燥した。その結果、4.13g (収率90%)のポリマー1を得た。得られたポリマーは、97%濃硫酸を溶媒とし、キャピラリー粘度計を用いて30℃での比粘度を測定した(以下において同じ。)。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0264】
得られたポリマー1(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0265】
フィルム厚さは約10μmとして、比誘電率は次の方法で測定した(すべての実施例および比較例において同じ。)。
【0266】
JIS−K6911に準拠し、周波数100kHzで、ヒューレットパッカード社製HP−4284A Precision LCRメーターを用いてフィルムの容量測定を行い下記計算式により比誘電率を算出した。
【0267】
比誘電率=(容量測定値×フィルムの厚み)/(真空の誘電率×測定面積)
[実施例14]
ポリマー2の合成
【0268】
【化82】

【0269】
実施例6で得られた酸塩化物(α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリド)を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ビスフェノールAを2.28g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同一の方法にて、3.99g (収率87%)のポリマー2を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0270】
得られたポリマー2(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0271】
[実施例15]
ポリマー3の合成
【0272】
【化83】

【0273】
実施例9で得られた酸塩化物(5−メトキシ−α,α3,β,β3テトラフルオロ−1,3−ベンゼンジアセチルクロリド)を純分換算で3.33g(10.0mmol)、ビスフェノールAを2.28g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.21g (収率86%)のポリマー3を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0274】
得られたポリマー3(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0275】
[実施例16]
ポリマー4の合成
【0276】
【化84】

【0277】
【化85】

【0278】
実施例5で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジオール1を3.36g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.64g (収率82%)のポリマー4を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0279】
得られたポリマー3(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0280】
[実施例17]
ポリマー5の合成
【0281】
【化86】

【0282】
【化87】

【0283】
実施例6で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジオール1を3.36g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.81g (収率85%)のポリマー5を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0284】
得られたポリマー5(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0285】
[実施例18]
ポリマー6の合成
【0286】
【化88】

【0287】
【化89】

【0288】
実施例5で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミン1を2.26g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.24g (収率93%)のポリマー6を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0289】
得られたポリマー6(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1示した。
【0290】
[実施例19]
ポリマー7の合成
【0291】
【化90】

【0292】
【化91】

【0293】
実施例6で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミン1を2.26g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.154g (収率91%)のポリマー7を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0294】
得られたポリマー7(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0295】
[実施例20]
ポリマー8の合成
【0296】
【化92】

【0297】
【化93】

【0298】
実施例5で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミン2を3.34g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.81g (収率85%)のポリマー8を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0299】
得られたポリマー8(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0300】
[実施例21]
ポリマー9の合成
【0301】
【化94】

【0302】
【化95】

【0303】
実施例6で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミン2を3.34g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.47g (収率79%)のポリマー9を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0304】
得られたポリマー9(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフ
レキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0305】
[実施例22]
ポリマー10の合成
【0306】
【化96】

【0307】
【化97】

【0308】
実施例5で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミン3を3.20g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、4.52g (収率82%)のポリマー10を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0309】
得られたポリマー10(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持された
フレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0310】
[実施例23]
ポリマー11の合成
【0311】
【化98】

【0312】
【化99】

【0313】
実施例6で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミノジフェノール1を3.66g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にてポリマー11を5.07g (収率85%)得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0314】
[実施例24]
ポリマー12の合成
【0315】
【化100】

【0316】
実施例20で得られたポリマー11(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。赤外吸収スペクトル(IR)分析から、得られたフィルムの構造はポリマー12であることがわかった。得られたフィルムの物性(比誘電率)を表2に示した。同様にして、さらに300℃で1時間の加熱処理を行い、同様の観察と測定を行ったところ、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムが得られ、比誘電率は追加の加熱処理をしない場合と変わらなかった。
【0317】
[実施例25]
ポリマー13の合成
【0318】
【化101】

【0319】
【化102】

【0320】
実施例5で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、特開2007−119503号に記載の方法に従って合成したジアミノジオール1を5.30g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にてポリマー13を6.01g (収率79%)得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0321】
[実施例26]
ポリマー14の合成
【0322】
【化103】

【0323】
実施例22で得られたポリマー13(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。IR分析から、得られたフィルムの構造はポリマー14であることがわかった。得られたフィルムの物性(比誘電率)を表1に示した。同様にして、さらに300℃で1時間の加熱処理を行い、同様の観察と測定を行ったところ、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムが得られ、比誘電率は追加の加熱処理をしない場合と変わらなかった。
【0324】
[実施例27]
ポリマー15の合成
【0325】
【化104】

【0326】
攪拌機を備えた100mlの三口フラスコに、ビスフェノールA 2.28g(10.0mmol)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)20.0gを入れ、窒素雰囲気下、氷冷下で攪拌した。その中へ、テレフタル酸クロリド0.20g(1.0mmol)と実施例5で得られた酸塩化物を純分換算で2.73g(9.0mmol)を10分以上かけてゆっくりと添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を中和するために炭酸リチウム0.70g(9.5mmol)を添加し、次いで得られた粘ちょう溶液を500mLのメタノールに投入し、得られた沈殿をろ別回収後、80℃で真空乾燥した。その結果、4.08g (収率91%)のポリマー15を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0327】
得られたポリマー1(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
[実施例28]
ポリマー22の合成
【0328】
【化105】

【0329】
実施例12で得られた2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)を純分換算で3.79g(10.0mmol)、ジオール1を3.36g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例13と同一の方法にて、5.78g (収率90%)のポリマー22を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0330】
得られたポリマー22(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
[実施例29]
ポリマー23の合成
【0331】
【化106】

【0332】
実施例12で得られた2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)を純分換算で3.79g(10.0mmol)、ジアミン2を3.34g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同一の方法にて、5.64g (収率88%)のポリマー23を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0333】
得られたポリマー23(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示した。
[実施例30]
ポリマー24の合成
【0334】
【化107】

【0335】
実施例12で得られた2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)を純分換算で3.79g(10.0mmol)、ジオールジフェノール1を3.66g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同一の方法にて、5.72g (収率85%)のポリマー24を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
[実施例31]
ポリマー25の合成
【0336】
【化108】

【0337】
得られたポリマー24(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。赤外吸収スペクトル(IR)分析から、得られたフィルムの構造はポリマー25であることがわかった。得られたフィルムの物性を表1に示した。
[実施例32]
ポリマー26の合成
【0338】
【化109】

【0339】
実施例12で得られた2,2’−(ジフェニル−4,4’−ジイル)ビス(2,2−ジフルオロアセチルクロリド)を純分換算で3.79g(10.0mmol)、ジオールジオール1を5.30g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を30.0g使用して、実施例10と同一の方法にて、6.85g (収率82%)のポリマー26を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
[実施例33]
ポリマー27の合成
【0340】
【化110】

【0341】
得られたポリマー26(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。赤外吸収スペクトル(IR)分析から、得られたフィルムの構造はポリマー27であることがわかった。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0342】
[比較例1]
ポリマー16の合成
【0343】
【化111】

【0344】
実施例10において、実施例5で得られた酸塩化物の代わりにテレフタル酸クロリド2.0g(10.0mmol)を用いて、実施例10と同様の手法にてポリマー16を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0345】
得られたポリマー16(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。重合度が低く、クラックが多く発生した。
【0346】
[比較例2]
ポリマー17の合成
【0347】
【化112】

【0348】
実施例15において、実施例5で得られた酸塩化物の代わりにテレフタル酸クロリド2.0g(10.0mmol)を用いて、実施例15と同様の手法にてポリマー17を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0349】
得られたポリマー17(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。重合度が低く、クラックが多く発生した。
【0350】
[比較例3]
ポリマー18
【0351】
【化113】

【0352】
【化114】

【0353】
【化115】

【0354】
実施例20において、実施例6で得られた酸塩化物の代わりにカルボン酸クロリド1の3.69g(10.0mmol)を用いて、実施例20と同様の手法にて構造18−1を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0355】
得られた構造18−1(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離し、形状の保持されたフレキシブルな透明フィルムを得た。IR分析から、得られたフィルムは構造18−1と構造18−2との混合したポリマー(ポリマー18)であることがわかった。また、クラックが多く発生し、フィルムとして得られなかった。
【0356】
[比較例4]
ポリマー19およびポリマー20の合成
【0357】
【化116】

【0358】
【化117】

【0359】
実施例22において、実施例5で得られた酸塩化物の代わりにテレフタル酸クロリドを用いて、実施例22と同一の手法にてポリマー19を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0360】
得られたポリマー19(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片を剥離したが、フレキシビリティの乏しい透明フィルムを得た。IR分析から、得られたフィルムの構造はポリマー20であることがわかった。得られたフィルムの物性を表1に示した。
【0361】
[参考例7]
ポリマー21の合成
【0362】
【化118】

【0363】
参考例3で得られた酸塩化物を純分換算で3.03g(10.0mmol)、ジアミン1を2.26g(10.0mmol)、そしてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を20.0g使用して、実施例10と同様の方法にて、2.08g (収率46%)のポリマー21を得た。比粘度測定の結果を表1に示した。
【0364】
得られたポリマー21(1.00g)と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(4.00g)を混合し、均一溶液を作成した。得られた溶液を濾過後、濾液をガラス基板上にスピンコート塗布し、窒素雰囲気下、80℃で30分、150℃で30分、250℃で1時間加熱処理した。ガラス基板上に作成したフィルム片は重合度が低いためかクラックが多く発生していた。
【0365】
【表1】

【0366】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の含フッ素ジカルボン酸誘導体から誘導した新規な高分子化合物は比較的低温で良好な強度と優れた電気特性を与えることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(M−1)
【化1】

で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体または該含フッ素ジカルボン酸の酸無水物を、これらのカルボニル基部位の反応性に応答する2〜4個の反応性基を有する多官能性化合物と重縮合させて得られる高分子化合物。
[式中、Qは置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基であって、−CF2COA及び−CF2COA’は芳香環炭素と結合し、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。AおよびA'はそれぞれ独立に、ヒドロキシル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であり、式中のCO基(カルボニル基)と共に活性エステル基を形成していてもよい。]
【請求項2】
二価の有機基Qが、下記一般式(a)で表される二価の有機基であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子化合物。
【化2】


[式中、Ar1はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。Y1はそれぞれ独立に単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基であって、pは0〜3の整数を表す。二個の未結合手は、同一または異なる芳香環の異なる炭素原子に結合している。]
【請求項3】
二価の有機基Qが、下記一般式(b)で表される二価の有機基であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子化合物。
【化3】

[式中、Ar2はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい芳香環であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。Y2はそれぞれ独立に単結合、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、O、S、C(CH32、C(CF32、SO2、CO、NH、COO(エステル)、CONH基から選ばれた1種またはこれらの基から選ばれた同一または異なる2種以上の基が結合した二価の基である。]
【請求項4】
二価の有機基Qが、下記式で表される二価の有機基のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【化4】

【請求項5】
多官能性化合物を一般式(3)
【化5】

で表されるジアミンとして重縮合させて得られる一般式(7)
【化6】

で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R2は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
【請求項6】
多官能性化合物を一般式(4)
【化7】

で表されるジアミノジオールとして重縮合させて得られる一般式(8)
【化8】

で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R3は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
【請求項7】
請求項6に記載の一般式(8)で表される高分子化合物を脱水閉環することで得られる、下記一般式(9)
【化9】

で表される高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R3は一般式(4)におけるR3と同義である。]
【請求項8】
多官能性化合物を一般式(5)
【化10】

で表されるヘキサフルオロイソプロパノール部位が置換したジアミノジオールとして重縮合させて得られる一般式(10)
【化11】

で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R4は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した4価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
【請求項9】
請求項8に記載の一般式(10)で表される高分子化合物を脱水閉環することで得られる、下記一般式(11)
【化12】

で表される高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R4は一般式(5)におけるR4と同義である。]
【請求項10】
多官能性化合物を一般式(2)
【化13】

で表されるジオールとして重縮合させて得られる一般式(6)
【化14】

で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子化合物。
[式中、Qは一般式(M−1)におけるQと同義である。R1は脂環、芳香環、複素環から選ばれた一種以上を含有した2価の有機基であり、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含有してもよく、水素原子の一部がフッ素原子、塩素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、カルボニル基、スルホニル基で置換されていてもよい。mは正の整数である。]
【請求項11】
一般式(M−2)
【化15】

で表される含フッ素ジカルボン酸誘導体。
[式中、Qは置換基を有していてもよい芳香環を有する二価の有機基であって、芳香環上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで該アルキル基上の水素原子はヒドロキシル基もしくはフッ素原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい芳香環からなる一価の基で置換されていてもよい。ただし、式中の2個のジフルオロメチレン基は互いに隣接する芳香環の炭素原子には結合しない。DおよびD'はそれぞ
れ独立に、ヒドロキシル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜10の置換基を有することもあるアリールオキシ基であり、または式中のCO基(カルボニル基)と共に活性エステル基を形成することができる。]

【公開番号】特開2010−215904(P2010−215904A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33260(P2010−33260)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】