説明

含フッ素重合性単量体を用いた高分子化合物

【課題】 高いフッ素含量を有しながら、幅広い波長領域すなわち真空紫外線から光通信波長域にいたるまで高い透明性を有し、かつ基板への密着性や高い成膜性を併せ持つ新規な重合性単量体およびそれを用いた高分子化合物、さらにはその高分子化合物をコーティングした反射防止材料、光デバイス材料を提供する。
【解決手段】 高いフッ素含量とヒドロキシ基を含有させた特定の化合物として一連の新規な含フッ素アクリレート誘導体およびそれらの単量体を用いた高分子化合物、さらにその高分子化合物を用いた反射防止材料、光デバイス材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造すなわちヒドロキシ基またはそれを保護または修飾した置換基含有の新規な含フッ素単量体、またはそれを用いて重合または共重合した高分子化合物、さらにその高分子化合物を用いた反射防止材料または光デバイス材料に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料分野を中心として幅広い応用分野で使用または開発が続けられている。特に、コーティング用途に関して言えば、低屈折率性と可視光の透明性を応用した反射防止膜、高波長帯(光通信波長帯)での透明性を応用した光デバイス、紫外線領域(特に真空紫外波長域)での透明性を応用したレジスト材料などの分野で活発な研究開発が行われている。これらの応用分野において共通の高分子設計としては、できるだけ多くのフッ素を導入することで各使用波長での透明性を実現しつつ、基板への密着性、高いガラス転移点(硬度)を実現させようとするものである。しかしながら、材料設計としてフッ素含量を高める工夫により各波長での透明性を高めることは種々提案されているが、フッ素含有単量体そのものに同時に親水性、密着性を高める工夫や高Tgを得る工夫をしている例は少ない。最近になって、特に真空紫外線領域の次世代F2レジスト分野においてヒドロキシ基含有のフッ素系スチレンやヒドロキシ基含有のフッ素系ノルボルネン化合物が発表されたことで、フッ素を含有し、かつヒドロキシ基の極性を共存させる考え方が見られるようになってきた。しかしながら、まだまだ反射防止膜に必要とされる十分な低屈折率が得られてなく、または光通信波長での透明性も十分でなく、または紫外線での透明性とエッチング耐性の両立が不十分であったりと改善するべき要因は多く存在している。したがってこれら既存の化合物が発揮しうる機能は必ずしも充分ではなく、更に優れた高分子化合物を与え得る新規な単量体あるいはその原料の創出が望まれていた。
【非特許文献1】JournalofPhotopolymerScienceandTechnology(2001),14(4),613-620
【非特許文献2】Polymer(1996),37(20),4653-4656
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明は、高いフッ素含量を有しながら、同一分子内に極性基を持たせることで、幅広い波長領域すなわち真空紫外線から光通信波長域にいたるまで高い透明性を有し、かつ基板への密着性や高い成膜性を併せ持つ新規な重合性単量体およびそれを用いた高分子化合物、さらにはその高分子化合物をコーティングした反射防止材料または光デバイス材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、工業的にも使いやすいとされるアクリル系の単量体であって、高いフッ素含量とヒドロキシ基を含有させた特定の化合物として一連の新規な含フッ素アクリレート誘導体およびそれらの単量体を用いた高分子化合物を合成し、本発明を完成するに至った。ただしヒドロキシ基は下記のR3で説明する置換基で保護または修飾することが可能である。
すなわち本発明は、一般式(1)
【0005】
【化10】

【0006】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基を表し、R2は直鎖または分岐を有しても良いアルキレン基、環状構造を有するアルキレン基、芳香環、またはそれらを組み合わせた基であって、その一部がフッ素化されていてもよい。R3は水素原子、及び分岐を含んでも良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香環もしくは脂肪環を有する環状基であって、酸素原子、カルボニル基を含んでも良い。また、nは1〜2の整数を表す。)で表される重合性単量体と、それを用いて重合または共重合した高分子化合物である。さらに本発明は、それを用いた反射防止材料または光デバイス材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高分子化合物の溶液を基盤にコートした膜は低屈折率であり、高レベルな反射防止性能が認められ、反射防止膜、光デバイス材料に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明に係る一般式(1)で表される特定のアクリレートは、分子内にフッ素とヒドロキシ基をヘキサフルオロイソプロパノール基として共存させたものである。まず、本発明に使用できる一般式(1)の単量体について説明する。
【0009】
【化11】

【0010】
本発明の一般式(1)に使用できるR1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基であれば特に制限なく使用することができる。好ましい置換基を例示するならば、ハロゲン原子としてフッ素、塩素、臭素など、また炭化水素基としてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基など、さらには含フッ素アルキル基として前記アルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたものを例示できる。ただし炭化水素基と含フッ素アルキル基の場合の炭素数は1〜20程度が好ましく、さらに重合性の観点からは炭素数1〜4が好適に採用される。特に含フッ素アルキル基を例示するならば、−CF3のトリフルオロメチル基、−CH2CF3のトリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、−C49のノナフルオロ−n−ブチル基などが例示できる。
【0011】
また、本発明の一般式(1)に使用できるR2は、直鎖または分岐を有しても良いアルキレン基、環状構造を有するアルキレン基、芳香環、またはそれらを組み合わせた基であって、その一部がフッ素化されていてもよいし不飽和結合を含んでも良い。例えば、メチレン、エチレン、イソプロピレン、t−ブチレンなどの直鎖または分岐を有するアルキレン基、シクロブテン、シクロヘキサン、ノルボルネン、アダマンタン基などの構造を含有する環状構造、フェニル基など、その構造は制限なく使用することができる。特に好ましい構造として、下記一般式(3)〜(5)に具体例を示すような単量体が例示できる。
【0012】
【化12】

【0013】
【化13】

【0014】
【化14】

【0015】
ここでR3は、水素原子、分岐を含んでも良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、または芳香環や脂肪環を有する環状基であって、酸素原子、カルボニル基を含んでも良い。その構造には特に制限はないが、最も簡単で高い透明性を有する水素原子が基本となる。それらの基として、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ベンジル基などの環状基を有しても良い炭素数1〜20程度の炭化水素基、また、酸素原子を含むものとして、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基等の鎖状エーテル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテル基、4−メトキシベンジル基、アセチル基、ピバロイル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。その目的としては、有機溶媒やアルカリ水溶液への溶解性、高いガラス転移点、ハンダ耐熱性を目的とした架橋反応性、光酸発生剤によるポジ型感光性やエッチング耐性などの特徴を付与させることであり、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0016】
4の炭素数1〜20の炭化水素基としてメチレン、エチレン等の鎖状炭化水素基が例示できる。
【0017】
また、R5は、炭素数1〜5の炭化水素基としてメチレン、エチレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン等の鎖状炭化水素基、シクロプロピレン、シクロペンチレン、シクロへキシレン、ノルボルニレン、アダマンチレン等の環状炭化水素基などが例示できる。
【0018】
一般式(1)で表される重合性単量体として、次の例が挙げられる。
【0019】
【化15】

【0020】
式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基を表し、R3は水素原子、直鎖もしくは分岐を有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香環もしくは脂肪環を有する環状基のいずれか、または、鎖状エーテル基、環状エーテル基、4−メトキシベンジル基、アセチル基、ピバロイル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基のいずれかを表す。
【0021】
以下、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)で表されるα,β-不飽和エステルの合成法について説明する。本発明によればその合成法は特に制限されず、最終的に一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の単量体が生成できれば良いが、代表的な合成方法を例示するならば次に示す方法が挙げられる。
すなわち、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)で表されるα,β-不飽和エステルは、ヘキサフルオロアセトンを出発物質として誘導されるアルコール体とアクリル酸、メタクリル酸、2−トリフルオロメチルアクリル酸、2−ノナフルオロ−n−ブチルアクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸、或いはアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、2−トリフルオロメチルアクリル酸クロリド、2−ノナフルオロ−n−ブチルアクリル酸クロリド等のα,β-不飽和カルボン酸ハライドとの縮合反応から合成でき、また同様にヘキサフルオロアセトンから誘導した二重結合を有する化合物からも、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及び種々ルイス酸存在下、アクリル酸、メタクリル酸、2−トリフルオロメチルアクリル酸、2−ノナフルオロ−n−ブチルアクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸との付加反応からも合成できる。
各反応後の生成物の分離精製は慣用の方法で行えばよく、例えば濃縮、蒸留、抽出、再結晶、濾過、カラムクロマトグラフィー等を用いることができ、また二種類以上の方法を組み合わせて用いても良い。
【0022】
次に、本発明による高分子化合物について説明する。本発明によれば、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)に示す重合性単量体の単独重合または、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の複数の組み合わせからなる共重合体、さらに共重合可能な他種の単量体との共重合体が使用可能である。
本発明の一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)に示す単量体と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも、オレフィン、含フッ素オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテルから選ばれた1種以上の単量体が好適である。
【0023】
オレフィンとしては、エチレン、プロピレンなど、フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0024】
また、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしてはエステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレートート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n‐プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n‐ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、n‐ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n‐オクチルアクリレート又はメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸またはメタクリル酸エステル、t−ブチルアクリレート又はメタクリレート、3‐オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにαシアノ基含有の上記アクリレート類化合物や類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0025】
また、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子を有する基がアクリルのα位またはエステル部位に有したアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって、α位にシアノ基が導入されていても良い。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体は、上述した非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって、α位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が好適に採用される。
【0026】
一方、そのエステル部位がパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素やトリフルオロメチル基で置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸またはメタクリル酸のエステルなども使用可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0027】
ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は、一核または複数の核構造を有するノルボルネン単量体であって、これらは特に制限なく一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の単量体と共重合することが可能である。この際、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、アクリル酸、αフルオロアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとを用いてディールス アルダー(Diels Alder)付加反応を行ったノルボルネン化合物が好ましく採用される。
【0028】
さらにスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルシランなども使用することができる。ここでスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としてはスチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどの他、ヘキサフルオロアセトンを付加したスチレン系化合物、トリフルオロメチル基で水素を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレンまたは含フッ素スチレン系化合物などが使用可能である。一方、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステルなどは、一般的に本発明による一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の単量体との重合反応性が乏しいとされているが、その共重合比により導入することが可能であり、例えば、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基を含有しても良いアルキルビニルエーテルであって、その水素の一部または全部がフッ素で置換されていても良い。またシクロヘキシルビニルエーテルやその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニルエーテル、またそれらの環状型ビニルエーテルの水素の一部または全部がフッ素で置換された単量体も使用できる。なお、アリルエーテル、ビニルエステル、ビニルシランについても公知の化合物であれば特に制限なく使用することが可能である。
【0029】
また、これらの共重合性化合物は単独使用でも2種以上の併用でもよい。本発明によれば、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の単量体の共重合組成比としては特に制限はなく採用されるが、10〜100%の間で選択することが好ましい。さらに好ましくは30〜100%であり、30%未満では応用分野の波長域によっては十分な透明性や成膜性が発現しない。
【0030】
そして、本発明にかかる高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合やリビングアニオン重合などを使用することも可能である。ここではより一般的なラジカル重合法を説明する。
すなわち、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作でおこなえばよい。
【0031】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化ベンゾイル等が好ましい。
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0032】
このようにして得られる本発明にかかる高分子化合物の溶液または分散液から、媒質である有機溶媒または水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過または減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0033】
本発明にかかる高分子化合物の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。
【0034】
次に本発明による応用分野について記述する。本発明はコーティング用途を基本としており、通常は本発明の高分子化合物を有機溶媒に溶解させて成膜させることで応用に供する。したがって、使用する有機溶媒としては高分子化合物が可溶であれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどのフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0035】
本発明に係る反射防止材料としては、本発明による高分子化合物をガラス、プラスチック、液晶オパネル、プラズマディスプレーパネル、エレクトロルミネッセンスパネルなどの表面に極薄膜でコーティングしたものであり、単層または他の屈折率を有する薄膜と組み合わせて使用することもできる。反射防止性能を高めるためには高分子化合物の可視光線における屈折率を1.42以下にする必要があり、好ましくは1.4以下である。通常、フッ素含量が高いほど屈折率が低下するが、一方でフッ素含量が高まった場合、基材との密着性が低下する欠点がある。その場合、本発明による一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の単量体でR3が水素のアルコール側鎖の単量体を重合することで基材への密着性を高めることが可能である。本発明による反射防止膜の膜厚としては被コート物の屈折率によって異なるが、一般的に500から2000オングストロームの範囲である。
【0036】
本発明に係る光デバイスとしては、波長650nmから1550nmでの光導波路であり、好ましくは850nmから1550nmの半導体レーザーや通信用光ファイバーで用いられる光源において比較的透明な高分子化合物からなるものである。本発明によれば、コアとクラッドの2種類の屈折率を有した高分子化合物を本発明のコーティング材料から組み合わせて使用し、スラブ型などの形状に成膜してデバイス化する。すなわち、本発明による高分子化合物を光導波路のコア及びクラッドのいずれかあるいは両方に用いることで光導波路を作成できる。例えば、本発明による高分子化合物をコーティングすることでまずクラッドを形成し、その上にクラッドより屈折率が高くなる本発明の高分子化合物をコーティングし、これにマスクを通してあるいは直接光を照射してパタン上に潜像を形成し、その後未照射部を溶媒にて除去することによりパタンを形成しこの部分を光が通るコア部分とし、さらにその上部にコア部より屈折率が低くなる本発明による高分子化合物を塗布して熱や紫外線照射により上部クラッドを形成する方法により光導波路を作製することが可能である。
【0037】
さらに別の導波路形成方法としては、最初に下部クラッド層、コア層の平坦膜を積み重ねた後、コア層をフォトレジスト工程によりパタ−ン化した後、反応性イオンエッチングによりコアリッジを形成し、その後上部クラッドをかぶせて導波路構造とすることも可能である。その際には反応性イオンエッチングによりコアリッジを形成し、その後上部クラッドをかぶせて導波路構造とする方法も好ましく採用される。
【0038】
光デバイスは、通常電気系デバイスや配線基板に実装する必要からハンダ耐熱性が必要とされているが、本発明によれば、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)の単量体でR3が水素のアルコール側鎖を使用し、かかるヒドロキシ基を架橋反応させることで必要な耐熱性を付与させることが可能である。使用できる硬化剤としては、ポリイソシアネート、エポキシ化合物、同一分子内に複数のカルボン酸を有する化合物などが使用できるが、これらの硬化剤は制限なく使用できる。また側鎖のヒドロキシ基に対して、アクリル酸、メタクリル酸あるいはこれらの酸クロライドをエステル化させることでネガ型光官能性高分子化合物とすることも可能である。その場合、光デバイス用途だけでなく、反射防止膜やレジスト用途など幅広い分野で使用することが可能となる。
【0039】
本発明に係るレジストとしては、酸の作用によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する高分子化合物および酸発生剤を基本組成に含有するポジ型レジスト組成物が最も好ましい。特に最近の半導体の微細化に対応した193nmのArFエキシマレーザーや157nmに代表される真空紫外領域のF2レーザー用ポジ型レジストとして好適である。すなわち、酸の作用によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する高分子化合物は、一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)のR2、R3、R5が酸不安定基になるようにしたものであるが、その構造は特に制限なく使用可能である。一般的な酸不安定基としては、本発明の一般式(1)、(3)、(4)、(5)、(22)のR2がtert−ブチル構造などを有し酸によってそのエステル部位が切断される単量体、またR3にtert−ブチル基、tert−ブトキシカルボニル基、鎖状または環状エーテル基、環状構造を有するラクトン基などである。こういった単量体を用いた高分子化合物は活性エネルギー線が照射される前にはアルカリ性水溶液に不溶もしくは難溶であって、活性エネルギー線を照射したことにより酸発生剤から発生した酸により加水分解されアルカリ性水溶液に対して溶解性を示すようになる。
【0040】
本発明組成物に用いられる光酸発生剤については特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、含フッ素のスルホン酸誘導体や含フッ素スルホニルイミド誘導体などが好ましい。実際に使用する好ましい塩としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、高分子化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0041】
本発明のレジストの使用方法としては、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法が用いられるが、好適に行うには、まずシリコンウエーハのような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、これに露光装置などにより、エキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。 次いでこれを現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。
【0042】
本発明の応用分野は、さらに所望により混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【実施例】
【0043】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下、合成例2で本発明に用いる重合性単量体を合成した。
【0044】
[参考合成例1] 下記式(6)で示されるα−C49アクリレートの合成
【0045】
【化16】

【0046】
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに室温で1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−(メトキシメチルエーテル)ペンタン−4−オール(1.00g、 3.70mmol)にトルエン(18.5ml)を加え溶解させた。続いて0℃で水素化ナトリウム(97.7mg、 4.07mmol)を加え、50℃で2時間撹拌した。次に2−ノナフルオロ−n−ブチルアクリル酸クロリド(1.26g、 4.07mmol)のトルエン(1.5ml)溶液を0℃で滴下し、室温で7時間攪拌した。この反応溶液に、0℃で適量の飽和塩化アンモニウム水溶液を加え過剰の試薬を分解した後、大過剰のエーテルで希釈した。続いて有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、イオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。
この混合物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=0/1〜1/10)にて分離精製し、α−C49アクリレート(1.46g、2.69mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0047】
[合成例2] 下記式(7)で示されるメタクリレートの合成
【0048】
【化17】

【0049】
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに室温で3−(5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール(5.00g、 17.11mmol)、メタクリル酸(1.91g、 22.24mmol)、ヒドロキノン(18.8mg、 0.17mmol)を混合した。続いて0℃で濃硫酸(2.52g、 25.67mmol)を滴下し、70℃で6時間撹拌した。次に0℃で多量のイオン交換水を加え希釈後、適量のジエチルエーテルで抽出し、有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。
この混合物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10〜1/3)にて分離精製し、式(7)で示されるメタクリレート(4.13g、11.46mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0050】
[参考合成例3] 下記式(8)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレートの合成
【0051】
【化18】

【0052】
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに室温で1,1,1,7,7,7−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)6−(トリフルオロメチル)ヘプタン−1,6−ジオール(3.00g、 7.97mmol)、α−トリフルオロメチルアクリル酸(1.45g、 10.37mmol)、ヒドロキノン(8.7mg、 0.08mmol)を混合した。続いて0℃で濃硫酸(1.17g、11.96mmol)を滴下し、70℃で15時間撹拌した。次に0℃で多量のイオン交換水を加え希釈後、適量のジエチルエーテルで抽出し、有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。
この混合物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/15〜1/5〜1/2)にて分離精製し、式(8)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレート(1.63g、3.26mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0053】
[参考合成例4] 下記式(9)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレートの合成
【0054】
【化19】

【0055】
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに室温で4−(ヘキサフルオロイソプロピル−tert−ブトキシカルボニルエステル)フェネチルアルコール(1.00g、 2.57mmol)を塩化メチレン(25.7ml)に溶解させた。続いて0℃でトリエチルアミン(1.10ml、 7.73mmol)を加えた後、0℃でα−トリフルオロメチルアクリル酸クロリド(0.61g、 3.86mmol)を滴下した。次に0℃で4−ジメチルアミノピリジン(31.5mg、0.26mmol)を加え、0℃で20分間撹拌した。続いて反応液に適量のイオン交換水を加え、適量のジエチルエーテルで抽出した。次に有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄し、得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。
この混合物を活性アルミナ(中性)カラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)にて分離精製し、式(9)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレート(1.19g、 2.34mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0056】
[参考合成例5] 下記式(10)で示されるアクリレートの合成
【0057】
【化20】

【0058】
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに室温で2,4−ジヘキサフルオロイソプロパノールフェネチルアルコール(1.00g、 2.20mmol)、アクリル酸(0.24g、 3.30mmol)、ヒドロキノン(2.4mg、 0.02mmol)を混合した。続いて0℃で濃硫酸(0.39g、 3.96mmol)を滴下し、70℃で6時間撹拌した。次に0℃で多量のイオン交換水を加え希釈後、適量のジエチルエーテルで抽出し、有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。
この混合物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10〜1/1〜3/1)にて分離精製し、式(10)で示されるアクリレート(0.91g、 1.80mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0059】
[参考合成例6] 下記式(11)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレートの合成
【0060】
【化21】

【0061】
窒素雰囲気下、50ml三口フラスコに室温で4−(ヘキサフルオロイソプロパノール)シクロヘキサンエタノール(5.00g、16.99mmol)、α−トリフルオロメチルアクリル酸(1.85g、 22.09mmol)、ヒドロキノン(18.7mg、 0.17mmol)を混合した。続いて0℃で発煙硫酸(30%SO3)(6.80g、 25.48mmol)を滴下し、70℃で5時間撹拌した。次に0℃で多量の氷水を少量ずつ加え希釈後、適量のジエチルエーテルで抽出し、有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。この混合物をシリカ ゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10〜1/2)にて分離精製し、式(11)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレート(6.15g、 14.78mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0062】
[参考合成例7] 下記式(12)で示されるα−C49アクリレートのホモポリマーの合成
【0063】
【化22】

【0064】
アルゴン雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(6)のα−C49アクリレート(1.00g)をテトラヒドロフラン(7.00ml)に溶解させた。次に−78℃で、1,1−ジフェニルへキシルリチウムテトラヒドロフラン溶液(0.5mol%)を滴下し、−78℃で12時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(12)で示されるホモポリマー(0.91g)を得た。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=6000/11000であった。
【0065】
[合成例8] 下記式(13)で示されるメタクリレートのホモポリマーの合成
【0066】
【化23】

【0067】
窒素雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(7)のメタクリレート(1.00g)をテトラヒドロフラン(1.00g)に溶解させた。次に室温で、α,α'−アゾビスイソブチロニトリル(2.2mg、0.5mol%)を加え66℃で24時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(13)で示されるホモポリマー(0.88g)を得た。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=30000/80000であった。
【0068】
[参考合成例9] 下記式(14)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレートのホモポリマーの合成
【0069】
【化24】

【0070】
式(8)で表されるα−トリフルオロメチルアクリレートの単独重合体を得るに当たり、末端の酸性アルコールの保護を行った。
窒素雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(8)のα−トリフルオロメチルアクリレート(1.60g、 3.21mmol)を塩化メチレン(16.0ml)に溶解させた。次に0℃で2,6−ルチジン(0.75ml、 6.42mmol)を加え、0℃でジ−tert−ブトキシジカルボネート(0.84g、 3.85mmol)を加え0℃で3時間攪拌した。この反応液に適量のイオン交換水加えた後、適量のジエチルエーテルで抽出し、有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。
この混合物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)にて分離精製し、式(8)のtert−ブトキシカルボニルエステル体(1.79g、 2.99mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0071】
続いて重合反応を行った。
アルゴン雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(8)のtert−ブトキシカルボニルエステル体(1.00g)をテトラヒドロフラン(7.00ml)に溶解させた。次に−78℃で、1,1−ジフェニルへキシルリチウムテトラヒドロフラン溶液(0.5mol%)を滴下し、−78℃で12時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(12)で示されるホモポリマー(0.83g)を得た。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=12000/21000であった。
【0072】
[参考合成例10] 下記式(15)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレートのホモポリマーの合成
【0073】
【化25】

【0074】
アルゴン雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(9)のα−トリフルオロメチルアクリレート(1.00g)をテトラヒドロフラン(7.00ml)に溶解させた。次に−78℃で、1,1−ジフェニルへキシルリチウムテトラヒドロフラン溶液(0.5mol%)を滴下し、−78℃で12時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(15)で示されるホモポリマー(0.90g)を得た。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=14000/19000であった。
【0075】
[参考合成例11] 下記式(16)で示されるアクリレートのホモポリマーの合成
【0076】
【化26】

【0077】
窒素雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(10)のアクリレート(1.00g)をテトラヒドロフラン(1.00g)に溶解させた。次に室温で、α,α'−アゾビスイソブチロニトリル(0.2mg、0.5mol%)を加え66℃で24時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(16)で示されるホモポリマー(0.78g)を得た。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=90000/150000であった。
【0078】
[参考合成例12] 下記式(17)で示されるα−トリフルオロメチルアクリレートのホモポリマーの合成
【0079】
【化27】

【0080】
式(11)で表されるα−トリフルオロメチルアクリレートの単独重合体を得るに当たり、末端の酸性アルコールの保護を行った。窒素雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(11)のα−トリフルオロメチルアクリレート(2.00g、 4.80mmol)を塩化メチレン(24.0ml)に溶解させた。次に0℃で2,6−ルチジン(1.23ml、 10.57mmol)を加え、0℃でジ−tert−ブトキシジカルボネート(1.57g、 7.2mmol)を加え0℃で4時間攪拌した。この反応液に適量のイオン交換水加えた後、適量のジエチルエーテルで抽出し、有機層をイオン交換水、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を適量の硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレーターにて減圧濃縮した。この混合物をシリカゲルカラムクロマト(酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)にて分離精製し、式(11)のtert−ブトキシカルボニルエステル体(2.01g、 3.88mmol)を得た。得られた化合物について核磁気共鳴法より上記構造を有することを確認した。
【0081】
続いて重合反応を行った。
アルゴン雰囲気下、20ml丸底フラスコに室温で式(11)のtert−ブトキシカルボニルエステル体(1.00g)をテトラヒドロフラン(7.00ml)に溶解させた。次に−78℃で、1,1−ジフェニルへキシルリチウムテトラヒドロフラン溶液(0.5mol%)を滴下し、−78℃で12時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(17)で示されるホモポリマー(0.92g)を得た。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=140000/180000であった。
以下、表1に合成例または参考合成例7〜12のホモポリマーの合成結果をまとめた。
【0082】
【表1】

【0083】
[合成例または参考合成例13〜19]
参考合成例1で得られた重合性単量体(1.00g、40モル%)、4−(ヘキサフルオロイソプロパノール)スチレン(0.62g、50モル%)、ヒドロキシスチレン(0.0055g、10モル%)、酢酸ブチル(16.3g)を窒素雰囲気下、150mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、室温で、α,α'−アゾビスイソブチロニトリル(0.2mg、0.2mol%)を加え66℃で24時間攪拌した。この重合液を室温で大過剰のn−ヘキサンに再沈澱した後、ポリマーを濾過回収した。得られたポリマーを80℃オーブンで12時間減圧乾燥し、式(18)で示される共重合体(1.11g)を得た。ここで得られた高分子化合物を参考合成例13とする。尚、分子量はポリスチレン換算でMn/Mw=8000/14000であった。
【0084】
【化28】

【0085】
以後、同様な方法により、表2に示す組成で合成例または参考合成例14〜19を行った。
【0086】
【表2】

【0087】
[実施例1、実施例2、参考例3]合成例8、合成例14、参考合成例15で得られた高分子化合物100重量部(以下、部という)をメチルイソブチルケトンに溶解させ約30%の固形分濃度になるように調製した。次に前記の高分子化合物溶液中の高分子100部に対し10重量部の割合でサイメル303(フルメトキシ化メラミン樹脂、三井サイアナミド社製)を加え、良く混合し、合成例8、合成例14、参考合成例15の高分子化合物に対し、実施例1、実施例2、参考例3のコーティング液を調製した。
これらをガラス板上に展開させ、50ミクロンのフィルムを作製した。自然乾燥1時間後、100℃の熱風乾燥機で30分、強制乾燥し、架橋反応を促進させた。これらの屈折率をアッベ屈折計で測定したところ、実施例1、実施例2、参考例3に対し、それぞれ、1.38、1.36、1.36であった。なお、キシレンによるラビング試験30往復を行ったところ、表面性に大きな変化は確認できなかった。次いで、上記の約30%の溶液に対し、さらに希釈を行いし約2%の濃度になるようにしてからスピンコート法にて膜厚が950〜1200オングストロームになるようにガラス基板上にコーティングした。どの溶液もはじくことなく、均一にスピンコートできた。10分の自然乾燥後100℃で1時間熱処理を行い、ガラス板の反射率を測定したところ、650nmの波長域に対し、実施例1、実施例2、参考例3に対し1.5%、0.9%、3.1%と高レベルな反射防止性能が見られた。
【0088】
[参考例4、5]参考合成例12で得られた高分子化合物100重量部(以下、部という)をメチルイソブチルケトンに溶解させ約30%の固形分濃度になるように調整した。次に前記の高分子化合物溶液中の高分子100部に対し15重量部の割合でサイメル303を添加し、参考例4のコーティング液を調製した。また参考例5では、参考合成例12の30%溶液を硬化剤を添加せずにそのまま使用した。
これらを100ミクロンの厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)上に展開し、自然乾燥1時間後、100℃の熱風乾燥機で30分、強制乾燥した。これらの屈折率をアッベ屈折計で測定したところ、参考例4,5に対し、それぞれ、1.37、1.36であった。なお、キシレンによるラビング試験30往復を行ったところ、参考例4は表面性に大きな変化は確認できなかった。参考例5に関しては、表面が白化したが、耐溶剤性が不要の応用に関しては使用できるものと判断した。
次いで、上記の約30%の溶液に対し、さらに希釈を行いし約2%の濃度になるようにしてからフローコート法にて膜厚が950〜1200オングストロームになるようにPET上にコーティングした。どの溶液もはじくことなく、均一にコートできた。10分の自然乾燥後130℃で30分間熱処理を行い、反射率を測定したところ、650nmの波長域に対し、参考例4、5に対し1.1%、0.8%と高レベルな反射防止性能が見られた。
【0089】
[参考例6]参考合成例19で得られた高分子化合物100g、サイメル303を12gをメチルイソブチルケトン250gに溶解させた後、6インチのシリコンウエハー上にスピンコート法で25ミクロンの厚みになるようにコーティングし、自然乾燥後150℃で30分間熱処理を行うことで下部クラッド層を作製した。この硬化物の屈折率は波長1.55μmで1.40であった。次いで、参考合成例11で得られた高分子化合物100g、サイメル303を12gをメチルイソブチルケトン250gに溶解させた後、下部クラッドの上にスピンコート法で約10ミクロンの厚みになるようにコーティングし、自然乾燥後150℃で30分間熱処理を行うことでコア層を作製した。この硬化物の屈折率は波長1.55μmで1.44であった。次にフォトレジストを塗布後マスク越しに露光してパタ−ン化し、そのレジストをマスクにしてドライエッチング加工してY分岐導波路パタ−ンを有するコアリッジを得た。その後、このリッジパタ−ンに下部クラッドに用いた高分子化合物を塗布して同様条件で熱硬化し、光導波路を作製した。この光導波路をダイシングソ−によって5cmの長さに切り出し、挿入損失を測定したところ、波長1.3μmで0.5dB以下、1.55μmで1.5dB以下であった。また、挿入損失の偏波依存性は波長1.3μmでも0.1dB以下であった。また180℃の高温下でも顕著な損失増加はなく、十分な耐熱性があった。
この他、光回路の基本回路である方向性結合器、スタ−カップラ−、光導波路型グレ−ティングリング共振器、M×N合分岐等が作製可能であった。またPOF用の各種導波路素子、スターカップラ、Y分岐などの作製も可能であった。
【0090】
[参考例7、参考例8、参考例9、参考例10、参考例11]参考合成例1、参考合成例10、参考合成例13、参考合成例16、参考合成例17の高分子化合物をプロピレングリコールモノメチルアセテートに溶解させ、固形分10%になるように調整した。さらに高分子化合物100重量部に対して、みどり化学製トリフェニルスルホニウムトリフレートを2重量部になるように溶解し、参考例7、参考例8、参考例9、参考例10、参考例11のレジスト溶液を調製した。これらをスピンコートし、膜厚100ナノメータの光透過率を波長157nmにて測定したところ、参考合成例1、参考合成例10、参考合成例13、参考合成例16、参考合成例17に対し、それぞれ68%、56%、52%、60%、49%であり、真空紫外域の波長で高い透明性を発現した。
次いで、全レジスト溶液を孔径0.2マイクロメーターのメンブランフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし膜厚250ナノメータのレジスト膜を得た。110℃で60秒プリベークを行った後、KrFエキシマレーザーマイクロスキャナーを用い、248nmでの露光を行ったのち、120℃でポストエクスポーザーベークを60秒間行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像したのち、純水で水洗し、乾燥して、レジストパターンを形成した。
その結果、参考例7、参考例8、参考例9、参考例10、参考例11に対し、それぞれ、感度23、14、17、12、21mJ/cmであった。またどの場合も解像度220ナノメータのライン&スペースが解像され、パターン形状も良好で現像欠陥もほとんど見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(22)
【化1】

(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基(トリフルオロメチル基及びノナフルオロ-n-ブチル(C49−)基を除く。)を表し、R3は水素原子、分岐を含んでも良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香環もしくは脂肪環を有する環状基のいずれか、または、鎖状エーテル基、環状エーテル基、4−メトキシベンジル基、アセチル基、ピバロイル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンゾイル基のいずれかを表す。)で表される重合性単量体を用いて重合または共重合された高分子化合物を用いた反射防止材料、光デバイス材料。
【請求項2】
一般式(23)
【化2】

(式中、R1は一般式(22)における意味と同じ。)で表される請求項1に記載の重合性単量体を用いて重合または共重合された高分子化合物を用いた反射防止材料、光デバイス材料。
【請求項3】
下式(24)で表される重合性単量体を用いて重合または共重合された高分子化合物を用いた反射防止材料、光デバイス材料。
【化3】

【請求項4】
共重合成分として、少なくとも、オレフィン、含フッ素オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテルから選ばれた一種以上の単量体を用いた請求項1〜3のいずれかに記載の高分子化合物を用いた反射防止材料、光デバイス材料。

【公開番号】特開2008−115393(P2008−115393A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300291(P2007−300291)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【分割の表示】特願2001−222530(P2001−222530)の分割
【原出願日】平成13年7月24日(2001.7.24)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】