吸収性表面に画像を印刷するための方法およびシステム
インク組成物の塗布および画像の形成の前に、湿潤組成物を塗布することによって実施される、繊維または多孔質材料または他のインク吸収材料、またはインク液で高い表面張力を有する材料、特に衣料上に、高品質、高解像の多色画像を印刷する新規な方法が開示される。上記方法を実行するためのプレ印刷および印刷システムがさらに開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の分野に関し、さらに詳しくは、織物のような表面への高解像高精細多色直接印刷のための新規の方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類および布地の新しい刺激的なファッション、つまり最大商業市場の1つへのますます増大する要求は、繊維材料、製織および糸通し、布地製造、染色、ならびに織布の後処理のような領域に最先端技術を導入することを促している。それでもなお、技術が最も貢献できる領域は、織物とデザイナーアートの無限の世界との融合にある。したがって、最も有望であるのは、現在の技術によってまだ充分に満たされていないデザイナアートの織物印刷の領域である。
【0003】
織物印刷に特有の高解像高精細アート印刷の目標を達成する過程で、特に衣類に布地が使用される場合には、幾つかの技術上およびロジスティック上の課題がある。印刷画像は、その鮮明な色を維持しながら、繰り返される洗濯、伸縮、および衣類の他の典型的な使用条件に持ちこたえなければならない。さらに、印刷領域は、元の布地と同様の質感および快適な感触を有することが望まれる。最後に、方法は、印刷画像の品質を維持しながら、再現可能であり、大量生産用に適し、かつ費用効率が良くなければならない。
【0004】
今まで、一般的に幾つかの技術が、織物表面への印刷に使用されている。これらは、例えば、輪転グラビアおよびフレキソ印刷、スクリーン印刷、ならびに染料昇華のようなモールドブロック技術を含む。しかし、以下で詳述するように、これらの技術では、上記の要件は一部分しか満たされない。
【0005】
輪転グラビア印刷はエッチング処理した金属印刷胴を使用する。印刷画像は胴に多数の小さなセルとしてエッチングされる。印刷胴がインク貯留部を通過するときに、セルにインクが充填される。過剰なインクはドクターブレードにより、インク画像を残して、印刷胴の表面から拭き取られる。次いで、印刷胴は圧胴と接触したときに、画像を織物材料に転写する。
【0006】
輪転グラビア印刷は、高速で長期高品質のハーフトーン印刷に適しているが、版胴製作が高コストのため、最も高価な技術の1つである。他の印刷モールドブロック技術として、輪転グラビア印刷は織物上の複雑な多色画像およびデザインにあまり適さない。
【0007】
別の印刷モールドブロック技術として、印刷版胴上の凸状画像を使用して画像を材料に転写するフレキソ印刷がある。フレキソ版は通常ゴムまたはゴム様材料から作られる。凸状画像領域はエッチング処理したアニロックスローラからインクを受け取り、それが圧胴と接触したときに、画像を織物材料に転写する。
【0008】
フレキソ印刷は、その比較的安価な印刷版、高速セットアップ時間、および高い生産速度で長期または短期印刷を行なう能力により、人気のある印刷方法である。フレキソ印刷は、インク分布を制御するドクターブレードおよび微細線アニロックスロールを用いて、中央圧胴プレス機でのハーフトーン印刷が可能である。それの主な不利点は、高精細度の多色画像を織物上に形成できないことである。
【0009】
しばしば「シルクスクリーニング」と呼ばれるスクリーン印刷は、現在、織物印刷の最も一般的な技術の1つであり、平坦または比較的平坦な表面に対して特に好適であり適用可能である。この技術の要点は、産業環境では一般的にステンレス鋼製、より伝統的な環境ではシルク製である、剛性の枠にきつく伸張されたステンシル微細メッシュまたはスクリーンを通して、インクを直接織物材料に押しつけることを伴う。印刷すべきでない領域は、スクリーン上でマスキングされる。印刷物を生成するために、スクリーンが印刷される物品の上に配置され、濃いインクがスクリーン上に載せられる。次いでスキージを用いて、スクリーンを通してインクを押し込み、マスキングされた領域で所望の領域からインクが通過することを防ぐ。織物は次いで、画像を織物材料に永久に定着させるように、インクを硬化させるために加熱および乾燥される。
【0010】
多色画像を希望する場合、各色に異なるスクリーンを用いて該プロセスが繰り返される。スクリーンは通常、異なる色の印刷の適切な位置合せつまり相互の見当合せを可能にする回転プレス上に配置される。一部のスクリーン印刷機は、セットアップおよびローディング/アンローディング以外の手作業を必要としない全自動プレスを有する。
【0011】
スクリーン印刷に使用されるインクは、一般的に非水性溶剤系プラスチゾルまたは水性インクである。プラスチゾルは一般的に、液状可塑剤および着色剤を混合したビニル粉末の懸濁液を含む。液体を(一般的に180℃に)加熱すると、ビニルは融解し、可塑剤中に溶解する。冷却すると、インクは様々な硬度に凝固し、それにより不快な感触を与える印刷画像が形成される。水性インクは布地に吸収されてにじむ傾向があり、したがってしばしば、ぼやけた画像が形成される。
【0012】
スクリーンのマスキングは様々な経路で達成することができる。最も単純な経路は、スクリーン上に直接マスキング流体を適用することを含む。この技術は、単純な1色または2色のグラフィックスに適しているが、より複雑な写真写実的な印刷には効果がない。多色印刷の場合、スクリーン印刷機はしばしば感光性乳剤を使用して、マスキング領域を形成する。デザインは透明なプラスチックフィルム片上に形成される一方、感光性流体コーティングはスクリーンの表面全体に塗布され、次いで乾燥される。フィルムは準備されたスクリーン上に載置され、表面は非常に明るい光に露光される。一定時間後に、露光領域は水でスクリーンから洗い流すことができ、印刷が達成される。
【0013】
スクリーン印刷は一般的に、Tシャツ、衣類、および他の布地に使用されるが、プラスチックから金属に及ぶ他の基材にも使用することができる。小さい入り組んだ細部を捕捉することができるが、スクリーン印刷は、肉太でグラフィックでありながら単純なデザインにより適しており、多色の写真写実的な画像にはあまり適さない。いずれの場合にも、上述のように、この技術は結果的に一般的にぼやけた画像および/または不快な感触のある画像を生じる。
【0014】
多色画像を織物に印刷するための他の方法として、転写技術がある。これらの技術では、画像は、布地から離れて接着剤層を含む専用紙またはデカル上に形成される。布地に当てられたとき、熱および圧力により画像は布地に転写される。結果的に得られる画像は鮮明であり、高精細であるが、使用するとひび割れする傾向があり、不快な感触を持ち、布地を密閉して「呼吸」を妨げる。
【0015】
染料昇華印刷は、高精細の鮮明な多色画像をポリエステル混紡布に形成するために現在使用されている別の方法である。インクは熱駆動昇華によって布地に転写され、柔らかな高解像画像が形成される。この方法は、インクジェットプリンタを通して簡素な紙上に送られる特殊インクを利用し、印刷画像は基材の織物材料上に熱転写される。
【0016】
この技術は、短期または中期の生産運転に実行可能な代替法である。しかし、この方法はポリエステル混紡布のみに限定され、さらに特殊インクの使用および昇華の余分な工程により、この技術は非常に高価になる。
【0017】
したがって、上に詳述した現在使用されている印刷方法は、高解像の写真写実的な多色画像を生産することができないことにより、ファッション業界の最新の要求を満たしていない。これらの方法の不利点は一般的に、関係する多工程プロセス、コスト、および時間のかかる布地の前処理、そして何よりも、それらによって得られる平凡な結果に起因する。さらに、これらの方法の少なくとも幾つかは、特定の種類の織物表面および着色剤に限定される。
【0018】
織物印刷の速度、品質、汎用性、および簡便性を高めるための1つの方法は、インクジェット印刷の使用を含む。1980年代後半におけるそれらの出現以来(例えば米国特許第4312007号および第4380770号参照)、インクジェットプリンタは、主にそれらの信頼性、比較的静かな動作、汎用性、グラフィックス処理能力、印刷品質、および低コストのため、価格を著しく下げながら、有用性、性能、および人気を高めてきた。さらに、インクジェットプリンタは、複雑な装置を必要とせずに「オンデマンド」カラー印刷を可能にした。
【0019】
インクジェットプリンタは、画像を形成するように、インクの液滴を対象面上に配置するプリンタである。液滴によって形成されるドットは非常に小さく、直径が50ないし60ミクロンの範囲である。ドットは、通常デジタル処理によって、一般的な家庭用プリンタで1インチ当たり720ドットから1440ドット(dpi)までの解像度で、正確に配置される。ドットは、プリンタで使用されるインクの個数および画像要件に応じて異なる色を持つことができ、それらがひとつに結合されて写真品質の画像が形成される。インクジェット印刷装置は一般的に、インクの液滴を噴射するために使用される多数のノズルを有するインクジェットプリントヘッドを有し、それによって各プリントヘッドは一般的に異なる色のインクを噴射する役割を果たす。使用される印刷技術に応じて、インクカートリッジは、黒およびカラーの別個のカートリッジ、カラーおよび黒の単一のカートリッジ、または各インクカラー毎のカートリッジのように、様々な組合せで入手可能である。幾つかのプリンタモデルでは、カートリッジおよびプリントヘッドは1つのユニットに結合される。
【0020】
インクジェットプリンタは、多種多様な表面に印刷することができる。例えば、市販のインクジェットプリンタは、ガラス瓶上のラベルのような非平坦湾曲アイテムに直接噴射することができる。消費者向けに、裏面に接着剤が塗布されたラベルつまりステッカーから名刺およびパンフレットまでに及ぶ多数の特殊用紙がある。
【0021】
希望する表面が衣類または別の織布表面である場合、デジタルインクジェット技術は、デザイナーアートおよび画像形成にとっておそらく最も有利な技術である。それは比較的安価でありかつ汎用性が高いが、それにもかかわらず、多くの家庭が低コスト高解像度インクジェット家庭用コンピュータプリンタで経験するように、解像度の高い多色の写真写実的な画像を達成することができる。
【0022】
インクジェット印刷用の現在入手可能なインクには、水性インクおよび非水性溶剤系インクを含む。水性インクは一般的に水および着色剤、通常は染料または顔料分散体から構成され、さらに、特定の特徴(例えば改善された安定性および流動、耐フェザリング性等)をインクに付与するために多数の添加剤を含むことができる。非水性溶剤系インクは一般的に、低アルコール、低アルカン等のような1つ以上の揮発性有機溶剤、および着色剤から構成される。
【0023】
インクジェットプリンタは一般的に、画像をレンダリングしかつ印刷用に処理するコンピュータによって制御される。ソフトウェア駆動ドライバに由来するデジタルデータは、プリントヘッドステッパモータまたはリニアモータ駆動ステージに送られ、それは、望ましい画像を形成するように、インク液滴を表面に塗布しながら、プリントヘッドアレイ(プリントヘッドおよびインクカートリッジ)を対象面上で前後に移動させる。
【0024】
現在、インク液滴を対象面に塗布するための2つの主要なインクジェット印刷技術がある。
【0025】
第1の技術は熱バブルとして知られ、さらに一般的にバブルジェットと呼ばれる(例えば米国特許第4296421号参照)。熱インクジェットプリンタでは、小さい電気抵抗体が熱を発生し、それがインクを蒸発させてバブルを形成させる。バブルが膨張すると、インクの一部はノズルから対象面上に押し出される。バブルが崩壊するときに、生成される真空はさらなるインクをインクカートリッジの貯留部からプリントヘッドに引き込む。典型的なバブルジェットプリントヘッドは300個または600個の小さいノズルを有し、それらの全てが液滴を同時に適用することができる。
【0026】
第2の技術は、圧電結晶を用いた圧電式プリントヘッドを利用する(例えば米国特許第4312007号参照)。圧電結晶は各ノズルのインク貯留部の背後に配置される。結晶は、それを振動させる微小な電荷を受け取る。結晶が内向き振動するとき、少量のインクをノズルから押し出す。外向きに振動するとき、それは、噴出されたインクを補充するように、さらに幾らかのインクを貯留部に押し出す。
【0027】
画像のインクジェット印刷プロセスは一般的に以下の基本的工程を含む。
【0028】
ソフトウェアアプリケーションは画像を画素(コンピュータグラフィック画像の1つの点を表わす情報の単位)に分解し、印刷される各画素の配置および色剛性に関するデジタルデータをプリンタドライバに送る。
【0029】
ドライバはデータを実行可能なフォーマットに変換する。
【0030】
プリンタは次いでデータを受け取り、制御回路を起動させることによって実際の印刷を実行する。制御回路は、プリントヘッドアレイの下で表面を前後に移動させ、かつプリントヘッドアレイを表面上で左右に移動させるため、様々なステッパモータまたはリニアモータ駆動ステージを始動させる。一部の市販の大規模インクジェットプリンタでは、表面は静止したままであり、プリントヘッドアレイだけが可動部である。プリントヘッドステッパモータは一般的にベルトを用いて、表面上を横切るようにプリントヘッドアレイを移動させる。代替的リニアモータ駆動ステージは正確なリニアスプロケットトラックおよびスプロケットホイールを使用して、表面を横切るようにプリントヘッドアレイを移動させる。一般的に、画像は一度に1行づつ印刷される。モータはプリントヘッドがインクの液滴を表面に噴射するたびに、1秒の数分の1の時間休止し、次いで次の画素位置に移動した後、再び停止する。停止毎に、プリントヘッドが様々な色を作るように正確な量で基本色の組合せを噴射したときに、多数のドットが形成される。パスの最後に、ステッパモータまたはリニアモータ駆動ステージはプリントヘッドアレイを次の行(モデルによって行頭または行末)に移動させ、画像の印刷が完了するまでプロセスは繰り返される。
【0031】
高品質インクジェット用紙上でインクジェットプロセスによって得られる画像は、特にプロセスに注がれるコストおよび手間を考慮すると、比較的高い品質を有する。
【0032】
しかし、残念ながら、他の表面、特に織物のような吸収性の高い表面に印刷する場合、インクジェット印刷技術を使用することは、様々な限界を伴う。第一に、織物上のインクジェット印刷画像はしばしば低品質である。例えば、印刷画像はしばしば取扱いにより汚れ、にじみ(1つの色が隣の色に侵入すること)および浸透(布地への画像の拡散)が現われ、湿度に敏感であり、かつ、くすんで見える。つまり、カラーインクが期待された色相を正確に生成することができない。さらに、印刷画像はしばしば耐水堅牢性でも耐洗剤性でもなく、その結果、洗濯後に印刷画像が退色し、さらにしばしば快適な手触り感の要求を満たさなくなる。織物産業は、画像が耐水性であると共に耐洗剤性であり、色および色相ができるだけ鮮明であり、インクの着色剤が頑強に基材に接着し、かつ基材の望ましい手触りが維持されることを要求しているが、現在周知のインクジェット印刷技術はこれらの要件を達成していない。
【0033】
織物および他の吸収性表面におけるデジタルインクジェット印刷に関連する限界を克服することを目指した幾つかの技術が、現在、当業界で周知である。これらは例えば印刷プロセス前の布地の前処理を含む。かくして、例えば米国特許第6291023号、第6698874号、および第6840992号は、印刷前に布地に塗布されるコーティング組成物を教示している。それにもかかわらず、これらの前処理は全ての布地材に適するものではなく、環境に悪い化学物質を使用し、時間がかかり、かつ費用効率が低い。
【0034】
高品質で長持ちする画像を達成することを目指した他の試みには、例えば米国特許第6626530号に教示されているように、表面に塗布された後で画像を保護コーティングによって保護することを含む。しかし、これらの試みはプロセスの簡便性および費用効率を低減する一方、結果的に不快な感触を持つ最終製品を生じる。
【0035】
したがって、先行技術は様々な表面に画像を印刷するための様々な方法を教示しているが、最も有望なインクジェット印刷の技術を含めて、これらの技術は、織物に多色の高解像度の写真写実的な画像を形成する能力に限界がある。最も一般的に使用される技術は、吸収性表面に塗布されたときのインクのフェザリング(にじみ)および深い浸透、ならびに、前処理された布地の不快な手触り(および臭気)、可塑化された着色剤の不快な手触りおよび亀裂に加えて、ぼやけて高精細が欠如した仕上がりに悩むはぐれ繊維によるインクの不正確な配置などの不都合な特徴が欠点である。
【0036】
したがって、上記の限界を持たない、吸収性表面一般および特に織布の高解像高精細多色印刷のための方法の必要性が幅広く認識されており、それを持つことは非常に有利であろう。
【発明の開示】
【0037】
ここで、本発明の発明者らは、驚くべきことに、インクと表面との係合を妨げ、かくして表面の機械的、物理的、および/または化学的特性を一時的に変性させる湿潤組成物で画像が印刷される表面を湿潤させ、その後、一般的な印刷プロセスによって湿潤面に画像を形成することによって、インクのにじみおよび拡散の無い高解像高精細の鮮明な画像が得られることを発見した。
【0038】
したがって、本発明の1つの態様では、表面の湿潤部を設けるように表面の少なくとも一部分に、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を接触させることと、液体インク組成物を表面の湿潤部に塗布して、表面の前記湿潤部に画像を形成することとを含む、表面に画像を印刷する方法を提供する。
【0039】
下述する本発明の好適な実施形態におけるさらなる特徴によると、方法はインク組成物を塗布した後、画像を硬化させることをさらに含む。
【0040】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化は、表面の加熱および表面の乾燥から構成される群から選択された方法によって達成される。
【0041】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、接触は、噴射、噴出、塗付け、展着、はけ塗り、浸し塗り、滴下、含浸、注入、凝縮、分散、拡散、消散、溶解、溶融、またはそれらの組合せから構成される群から選択された方法によって、好ましくは噴射、噴出、または滴下によって達成される。
【0042】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、接触は湿潤組成物を液体アプリケータに通すことを含む。
【0043】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面の湿潤部における湿潤組成物の濃度は、表面の湿潤部1cm2当たり約0.01グラムから約2グラムの範囲、好ましくは表面の湿潤部1cm2当たり約0.1グラムから約0.6グラムの範囲である。
【0044】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面の前記湿潤部は表面の予め定められた部分であり、表面の予め定められた部分に湿潤組成物を接触させることはデジタル処理で達成される。
【0045】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は水性インク組成物および非水性溶剤系インク組成物から構成される群から選択され、好ましくは非水性溶剤系インク組成物である。
【0046】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は、液体インク組成物の表面張力より、好ましくは少なくとも2ダイン/cmだけ低い表面張力を有する。
【0047】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は、50ダイン/cmより低い表面張力を有する。
【0048】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物の表面張力は35ダイン/cmから15ダイン/cmまでの範囲であり、好ましくは25ダイン/cmから10ダイン/cmまでの範囲である。
【0049】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は水を含む。
【0050】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は少なくとも1種の有機溶剤を含む。
【0051】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の有機溶剤は、アルコール、ケトン、エーテル、アルキルポリシロキサン、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン、アリール、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される。
【0052】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の有機溶剤は100℃未満の沸点を有する。
【0053】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物はさらに、接着促進剤、粘度調整剤、増粘剤、表面張力調整剤、表面活性剤、界面活性剤、柔軟剤、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択された少なくとも1種の薬剤を含み、任意選択的に水をさらに含んでもよい。
【0054】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の薬剤の濃度は、湿潤組成物の総重量の0.01重量パーセントから75重量パーセントまでの範囲である。
【0055】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、接着促進剤は、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される。
【0056】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の薬剤は、クレイ、多糖類、ポリオール、シロキサン、ポリアルキルシロキサン、メラミン、過酸化物、エポキシド、イソシアネート、およびフタレートから構成される群から選択される。
【0057】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、方法はさらに、液体インク組成物を塗布した後、表面の前記湿潤部を、少なくとも1種の有機溶剤および少なくとも1種の接着促進剤を含むことが好ましい湿潤組成物に再接触させることを含む。
【0058】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、方法はさらに、接触の前、かつ/または液体インク組成物を塗布した後に、表面の前記湿潤部を、本書で述べる少なくとも1種の接着促進剤に接触させることを含む。
【0059】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面は織布、プラスチック、金属、木材、および石から構成される群から選択される。
【0060】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される。
【0061】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面は上述した織布、および好ましくは木綿から作られた衣類である。
【0062】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、表面と化学的に相互作用することのできる薬剤、および化学的相互作用を促進するための触媒を含む。
【0063】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、湿潤組成物は化学的相互作用を促進するための触媒を含む。
【0064】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および触媒を含み、湿潤組成物は表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、それによって触媒は化学的相互作用を促進する。
【0065】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、化学的相互作用は、表面内に存在する少なくとも1つの官能基との相互作用を含む。
【0066】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つの官能基は、アミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、およびチオールから構成される群から選択される。
【0067】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、基材の表面と化学的に相互作用することのできる薬剤は架橋剤である。
【0068】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、架橋剤は、アルデヒド系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エステル系架橋剤、アミド系架橋剤、およびビニル系架橋剤から構成される群から選択される。
【0069】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、アルデヒド系架橋剤は変性メラミンホルムアルデヒドである。
【0070】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、触媒は酸である。
【0071】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、酸はジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リン酸アルキルおよびリン酸アリールから構成される群から選択される。
【0072】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、ポリオールはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエーテル、ポリエステルアクリレート、アクリルポリオール、ウレタンアクリルポリオール、ポリエステルウレタントリオール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルアクリレート、および酸化ヒマシ油から構成される群から選択される。
【0073】
本発明の別の態様では、本書で上述した方法によって準備された基材の表面に印刷された画像を有する基材を提供する。画像は高い鮮明度、高解像度、および/または色にじみの無いことを特徴とし、かつさらに高い鮮明度、高解像度、色にじみの無いこと、高い耐久性、化学的堅牢性、および/または洗濯堅牢性を特徴とすることができる。
【0074】
本発明の別の態様では、上述したように、画像を印刷するための表面を準備するためのプレ印刷システムであって、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を表面の少なくとも一部分に塗布するための少なくとも1つの液体アプリケータを含むプレ印刷システムを提供する。
【0075】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つの液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える。
【0076】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、プレ印刷システムはさらに、少なくとも1つの液体アプリケータを制御して湿潤組成物を表面の選択された部分に塗布するように動作する少なくとも1つの制御装置を備える。
【0077】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、プレ印刷システムはさらに、湿潤組成物が液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して液体アプリケータを露出させて湿潤組成物を表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴を備える。
【0078】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、薄め液は湿潤組成物を含む。
【0079】
本発明のさらに別の態様では、上述したように表面上に画像を印刷するための印刷システムを提供する。本発明のこの態様に係るシステムは、表面の少なくとも一部分に画像を形成するように動作する少なくとも1つのインクアプリケータを含む少なくとも1つの印刷装置と、画像を形成する前に、本書で上述したように湿潤組成物を表面の前記部分の少なくとも一部に塗布するように動作する少なくとも1つの液体アプリケータを含む少なくとも1つの湿潤装置とを備える。
【0080】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つのインクアプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルから構成される群から選択される。
【0081】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、少なくとも1つの液体アプリケータを制御して湿潤組成物を表面の選択された部分に塗布するように動作する、少なくとも1つの制御装置を備える。
【0082】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える。
【0083】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、湿潤組成物が液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して液体アプリケータを露出させて湿潤組成物を表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴を備える。
【0084】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、画像を硬化させるように構成された硬化ユニットを備える。
【0085】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは赤外線システムを備える。
【0086】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える。
【0087】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、表面の少なくとも一部分にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットを備える。
【0088】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、剛性フレームと、フレームに取り付けられた線形運動X軸と、印刷可能な媒体を支持するように動作し、線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、テーブルアセンブリの上で線形X軸に対し直角にフレームに取り付けられたブリッジと、印刷テーブルアセンブリの上で線形X軸に対し直角にフレームに取り付けられた線形運動Y軸ステージとを備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータはブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータはX軸ステージに対し直角に線形運動をするように線形Y軸ステージに取り付けられている。
【0089】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、剛性フレームと、フレームに取り付けられた第1線形運動X軸ステージと、第1X軸ステージと平行にフレームに取り付けられ、第1X軸ステージとは独立して動作するように構成された第2線形運動X軸ステージと、印刷可能な媒体を支持するように動作し、各線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの上で線形X軸に対し直角にフレームに取り付けられたブリッジと、少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の上で、線形X軸ステージに直角にフレーム上に取り付けられた線形運動Y軸ステージとを備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータは第1および第2X軸の各々の上でブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータは第1および第2X軸ステージに対し直角に線形運動をするように線形Y軸ステージに取り付けられている。
【0090】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々は、媒体保持プレートと、印刷可能な媒体をプレートに確実に当てて保持するために媒体保持プレートに枢着された開閉可能なカバーとを備える。
【0091】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、媒体保持プレートは隆起部分を含み、カバーは隆起部分と同じ形状でそれより少し大きい窓を含む。
【0092】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、線形運動X軸ステージはリニアモータ駆動ステージである。
【0093】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、線形運動Y軸ステージはリニアモータ駆動ステージである。
【0094】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の少なくとも一部分は真空テーブルである。
【0095】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムはさらに、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ印刷テーブルアセンブリ上に装着された印刷可能な媒体の表面に形成された画像を硬化するように構成された、硬化ユニットを備える。
【0096】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは赤外線システムを備える。
【0097】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える。
【0098】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムはさらに、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ印刷テーブルアセンブリ上の印刷可能な媒体にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットを備える。
【0099】
本発明は、生じた画像の解像度の低下およびぼやけを一般的に導く、インクと表面の結合部位との係合のような限界を回避した、高解像高精細の写真写実的な画像を様々な吸収性表面に印刷するための新規かつ効率的な方法を提供することによって、現在周知の構成の欠点に首尾よく対処している。
【0100】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0101】
本発明の方法およびシステムの実現は、選択されたタスクまたはステップを手動的に、自動的に、またはそれらの組合せにより、実行または完遂することを含む。さらに、本発明の方法およびシステムの好適な実施形態の実際の計装および設備によって、幾つかの選択されたステップはハードウェアによって、またはいずれかのファームウェアのいずれかのオペレーティングシステム上のソフトウェアによって、またはそれらの組合せによって、実現することができる。例えば、ハードウェアとしては、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとしては、本発明の選択されたステップは、いずれかの適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実現することができる。いずれの場合も、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームのようなデータプロセッサによって実行されると記述することができる。
【0102】
本明細書中で使用される用語「含む(“comprising”)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(“consisting of”)」および用語「から本質的になる(“consisting essentially of”)」を包含する。
【0103】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0104】
用語「方法またはプロセス(“method”または“process”)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0105】
本明細書中で使用される場合、単数形態(“a”、“an”および“the”)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0106】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0107】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0108】
図面の説明
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略斜視図を提示する。
図2A、2B、および2Cは本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムのそれぞれ簡易側面図、正面図、および平面図を提示する
図3は本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略側面図を提示する。
図4は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤システムの略図を提示する。
図5は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤用の1組のソレノイド弁および噴射ノズルの略斜視図を提示する。
図6は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、ブリッジ上に取り付けられた二つの湿潤バッテリの略斜視図を提示する。
図7は図2A、2B、および2Cに提示された印刷システムの一部であり、図4に提示された湿潤システムを備えた、本発明の好適な実施形態に係るプレ印刷システムの簡易斜視図を提示する。
図8は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を備えた1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
図9Aおよび9Bは本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を装備した1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
図10は本発明の好適な実施形態に従って印刷プロセスが開始する前に衣類が手動で装着される衣類装着アセンブリの好適な実施形態の簡易斜視図を提示する。
図11は装着された衣類が開位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
図12は装着された衣類が閉位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
図13は本発明の好適な実施形態に係るインクジェット印刷ヘッドアセンブリの簡易略図を提示する。
図14A、14B、14C、および14Dは図14A、14B、14C、および14Dを全部まとめて、高解像度画像を達成するために画像の領域全体を網羅するのに必要な、印刷アセンブリの4回の別個のパスを示す、本発明の好適な実施形態に係るインク塗布方法の幾つかの段階の簡易略図である。
図15は印刷前に衣類に対し湿潤組成物を使用する本発明の印刷方法の1つの模範的な段階的使用の簡易フローチャートを提示する。
図16Aおよび16Bはインクジェット印刷機を用いて画像が直接印刷された綿100%の衣類の前面(図16A)および裏面(図16B)を提示する写真である。
図17Aおよび17Bは本発明に従って衣類の表面に湿潤組成物を接触させた後、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面(図17A)および裏面(図17B)を提示する写真である。
図18Aおよび18Bは画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図18B)およびしない場合(図18A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面の写真を提示する。
図19Aおよび19Bは画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図19B)およびしない場合(図19A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の裏面の写真を提示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0109】
本発明は、限定されないが織布および衣類のような吸収性表面に多色画像を印刷するのに特に有利な、表面に画像を印刷するための新規の方法および装置である。
【0110】
本発明に係る方法および装置の原理および動作は、関連説明および実施例を参照することにより、いっそうよく理解することができる。
【0111】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用を以下の説明に記載するかまたは実施例で例示する詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であるか、あるいは様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で使用する語法および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定とみなすべきではないことを理解されたい。
【0112】
上で詳述したように、現代の織物およびデザイナーファッション業界の要求に応えるには、高解像高精細の多色および写真写実的な画像を織布および衣類に生成することのできるプロセスおよびツールが必要である。現在周知であり使用されている織物印刷技術は全て、画像品質、画像の持続性、および手触り感から産業規模の所要コストおよび時間に及ぶ、それらを不利にする1つ以上の限界を伴う。
【0113】
一般的に、織物に印刷する従来の方法は、インクの形の着色剤を繊維性材料の表面に結合させることを含む。しかし、そのような方法を含むプロセスは、(i)プロセスが、各色に対し重ね合わせることが難しい複数回のパスを必要とする型の使用を含むため、(ii)布地の吸収性が布地へのインク液滴の吸収およびにじみを導き、したがって解像度および明度を低減させため、かつ/または(iii)デカルによって布地に転写された画像の不快な手触り感のため、高解像で多色の写真写実的な画像を生成することができない。さらに、これらのプロセスの一部は、使用できる特定の種類の織物表面および着色剤に限定される。織物上の印刷に関連する一般的な限界に対する幾つかのそれでもなお制限された解決策として、時間および費用のかかる布地の前処理、および染料昇華印刷の高価で低速のプロセスの使用が挙げられる。それにもかかわらず、多くの手順は結局、不満足な結果に終わっている。
【0114】
繊維性材料または多孔性材料から作られたもののような吸収性表面に液体インクを塗布するプロセスにおける主要な限界の1つは、インクが塗布された後、インクが完全に硬化して布地に固定される前の、液体インクと材料の相互作用に由来する。当業者には周知の通り、インク液滴は表面と接触するとすぐに吸収性材料に吸収され、カラードットはフェザリングし(にじみ)、不規則に拡散し、したがって意図された領域より大きい領域に及び、したがってくすんだ色および低い精細度のぼやけた画像を生じる。したがって対象表面の材料へのインクの吸収度に依存するが、(例えばインクの布地の表面に噴射することによって得られる)吸収性表面上の高解像度および高精細度の多色画像を達成するために、塗布されたインク液滴は、布地と接触し始めた後、それが完全に硬化するまで、緊密で対称なドットを維持することが非常に望まれることはよく認識されている。
【0115】
現在周知の印刷技術はまた、他の吸収性表面のみならず、高い表面張力および光沢仕上げによって特徴付けられる表面と同様に適用されるときにも制限される。後者の型の表面では、インク液滴は、印刷プロセスに不利な物理的相互作用のため、膨張し過剰拡散し、したがって印刷画像の解像度の低下を導く傾向がある。
【0116】
織布のような吸収性表面および本書で上述したような問題のある表面における印刷に関連する限界に対する包括的かつ効率的な解決策を探し求めて、本発明の発明者らは、表面の物理的、化学的、および/または機械的特性を一時的に変えることによって、印刷画像の品質を向上できると予想した。したがって、本発明を考案しながら、そのような変更は、インクと表面の結合部位との係合が低減されるように、表面のこれらの性質を一時的に変える薬剤を表面に接触させることによって達成することができると仮定した。さらに、そのような薬剤は簡単に入手できる有機組成物から構成することができると仮定し、したがって、さらに、そのような方法は結果的に、改善された画質に加えて、費用効率が良いプロセスおよび不快な感触のような不利な特性を持たない印刷表面をもたらすと予想した。
【0117】
後述する実施例の部分で実証するように、本発明を実施しながら、本発明の発明者らは、驚くべきことに、そのような方法を利用することにより、実際に著しく改善された品質の印刷画像が得られることを発見した。さらに詳しくは、インクを塗布する前に織物表面を種々の湿潤組成物に接触させることにより、織布の表面のインクに対する吸収性が一時的に低下するので、インクのドットが、完全にインクが塗布されて表面上で硬化するまでフェザリングまたはにじみを生じず、それによってくっきりした高精細度の鮮明な画像がもたらされることが明らかになった。
【0118】
したがって、本発明の1態様では、表面に画像を印刷する方法を提供する。この方法は、表面の少なくとも一部分を湿潤組成物で湿潤させ、かつそこに画像を形成するように表面の湿潤部に液体インク組成物を塗布することによって達成される。
【0119】
上述の通り、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物が選択される。そのような妨げは、例えば表面の細孔を充填し、あるいははぐれ繊維のような摂動する物体を平坦化することにより、例えばインク組成物と表面との間の接触面積を低減することによって、例えば表面の機械的特性を一時的に変性させること、例えば表面とインク組成物との間に形成される表面張力を低減することにより、表面の物理的性質を一時的に変性させること、および例えば表面の官能基と相互作用し、マスキングし、または表面の官能基の電荷を反転させることにより、例えば表面の結合部位と係合することによって、表面の化学的性質を一時的に変性させることを含む。本書で使用される語句「結合部位」とは、インク組成物と化学的、機械的、または物理的に相互作用することのできる表面の任意の部位を表わす。これらは例えば、インク組成物中に存在する相溶性官能基と化学的に結合することのできる表面の官能基、インク組成物中に存在する相溶性官能基と疎水性または親水性相互作用を形成することのできる表面の官能基、表面におけるインク組成物の均等な塗布を妨げ得るはぐれ繊維のような摂動物体の平坦化、液体インク組成物の吸収を熱力学的に促進することのできる表面の乾燥領域、および表面張力が高すぎるかあるいは低すぎるため、表面上のインク液滴の表面積の最小化または最大化を促進する表面の領域を含む。
【0120】
液体インク組成物の塗布は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、印刷ブロック(型)技術、染料昇華技術等を含め、それらに限らず、当業界で周知の印刷技術のいずれかによって達成することができる。
【0121】
本書で使用する場合、語句「表面の少なくとも一部分」とは、表面の1つ以上の領域を表わし、また表面全体をも含む。好ましくは、湿潤組成物と接触する表面の部分は、インクが後で塗布される領域、すなわち印刷画像によって覆われる全領域を含む。領域は連続していても、不連続であってもよい。
【0122】
本節の以下の部分で、用語「表面」とは、上述した表面の特定の部分を含め、表面の任意の領域を表わすのに使用される。
【0123】
印刷方法は、画像の形成後に、画像の硬化をさらに含むことができる。硬化は、例えば赤外線コンベアもしくはフィラメントコイルのような熱源、または例えば温風吹付け機のようなドライエア源から生じる熱および/またはドライエアによって達成することができる。
【0124】
本発明の方法による表面の湿潤組成物との接触は、噴射、噴出、塗付け、展着、はけ塗り、浸し塗り、滴下、含浸、注入、凝縮、分散、拡散、消散、溶解、溶融、またはこれらの湿潤方法の幾つかの組合せを含め、それらに限らず、液体を物体に塗布するためのいずれかの方法または技術によって達成することができる。代替的に、表面の湿潤組成物との接触は、例えば気化液を表面上に凝縮させるか、あるいは固化液を表面上に溶解させることにより、組成物を物体上で液体の形に変換することによって達成することができる。特定の湿潤組成物の物理的特性に適合するように、かつ所与の印刷機および印刷技術に適合するように、適切な方法が選択される。
【0125】
本発明の好適な実施形態によると、表面の湿潤組成物との接触は、液体アプリケータによって湿潤組成物を表面の所望の部分に噴射、噴出、または滴下することによって達成される。これらの方法は、制御された自動的インライン湿潤手順に最も適しており、したがって多くの機械化された印刷技術の一部として容易に実現することができる。
【0126】
表面の湿潤組成物との接触はさらに、プロセスのその後の段階で画像が印刷される表面の特定の予め定められた領域だけが湿潤組成物と接触するように、湿潤組成物によって湿潤される表面の領域を予め決定することによって制御することができる。湿潤される領域の事前決定は、材料つまり湿潤組成物およびインク組成物の正確な定量化、および各印刷工程つまり湿潤工程、インク塗布工程、および硬化工程の正確なタイミングに依存する、印刷プロセス全体の最適化を可能にする。表面の領域の事前決定は、コンピュータ化アルゴリズムによって容易に達成することができる。
【0127】
したがって、本発明の好適な実施形態によると、湿潤組成物と接触する表面の部分はデジタル処理で事前に決定される。
【0128】
表面に充分な量の湿潤組成物を塗布することは、湿潤プロセスの実効性および結果的に得られる画像の品質にとって不可欠である。上述した接触中に表面に塗布される湿潤組成物の量は、液体アプリケータ機構によって制御することができる。適切な量は、湿潤組成物による表面の均等かつ適切な被覆を確実にし、かつインクと表面材料の結合部位との係合に関して表面の物理的特性の効率的な変性をさらに確実にする量であろう。それでも、過剰量の湿潤組成物の塗布はその肥厚層を形成することがあり、それはインクと表面の相互作用を最小化し、したがって結果的に得られる画像の耐久性に悪影響を及ぼすことがある。
【0129】
表面の湿潤組成物との接触は、湿潤組成物の濃度が表面1cm2当たり約0.01グラムから表面1cm2当たり約2グラムまでの範囲、さらに好ましくは表面1cm2当たり約0.05グラムから表面1cm2当たり約1グラムまでの範囲、さらに好ましくは表面1cm2当たり約0.1グラムから表面1cm2当たり約1グラムまでの範囲、さらに好ましくは表面1cm2当たり約0.2グラムから表面1cm2当たり約0.6グラムまでの範囲である表面の湿潤部が得られるように、実行されることが好ましい。
【0130】
本書で使用する場合、用語「約」とは±10%を指す。
【0131】
上述の通り、本発明を実施しながら、本発明の発明者らは、様々なインク組成物と様々に組み合わせた様々な湿潤組成物の効果を研究した。得られた結果は、インク組成物の表面張力に対する湿潤組成物の表面張力の影響の可能性を示唆した。したがって、特定の理論に縛られることなく、表面を湿潤組成物と接触させると、結果的に得られる湿潤表面は、その表面張力が低減することにより、インクに対する吸収性が一時的に低下すると推測される。さらに詳しくは、インク組成物と表面の係合の阻害は、表面の表面張力の低下によって少なくとも部分的に影響されると推測される。したがって、一般的に低い表面張力、特に液体インク組成物に対して低い表面張力を特徴とする湿潤組成物は、織布のような吸収性表面へのインクの吸収を阻害することができると推測される。したがって、本発明に係る好適な湿潤組成物は、所与の液体インク組成物と湿潤組成物との間の要求される表面張力の差を示すものであると推測される。
【0132】
本書で使用する場合、語句「表面張力」とは、液体間の界面に顕現する各液体の分子の分子引力の差に由来する、2つの流体が接触したときに表われる現象を指す。表面張力は、液体の表面で分子が経験する不均衡な力の結果である。表面張力の結果、1滴の液体は球を形成しようとする。なぜなら球形は、一定の体積に対して最小限の面積をもたらすからである。表面張力が高ければ高いほど、球は緊密になり、その逆に、表面張力が低ければ低いほど、液体が球形の液滴を形成する傾向は低くなる。表面張力の低い物質は、膜を形成する傾向を持つ。例えば、水性液体と液体炭化水素との間の接着力は、水性液体中の水分子間の凝集力に比較して非常に小さい。その結果、水はワックスには接着せず、最小可能な表面積を持つ球状ビーズまたは液滴を形成する傾向があり、それにより水分子間の凝集力は最大になる。表面張力を測定する1つの方法は、毛細管を用いるものである。密度dの液体が内径rの管内で高さhに隆起する場合、表面張力はrhdg/2に等しい。結果は、rおよびhがセンチメートル単位、dが1立方センチメートル(cm3)当たりのグラム単位、gが1秒2乗(sec2)当たりのセンチメートル単位である場合、1センチメートル当たりのダイン単位となる。
【0133】
したがって、本発明の好適な実施形態によると、湿潤組成物は比較的低い表面張力を特徴とする。
【0134】
湿潤組成物の表面張力は50ダイン/cmより低いことが好ましい。湿潤組成物の表面張力は約35ダイン/cmから約15ダイン/cmまでの範囲であることがさらに好ましい。湿潤組成物の表面張力は約25ダイン/cmから約10ダイン/cmまでの範囲であることがより好ましい。
【0135】
本発明の別の好適な実施形態によると、湿潤組成物および液体インク組成物は、湿潤組成物の表面張力が液体インク組成物の表面張力より低くなるように選択される。湿潤組成物の表面張力は液体インク組成物の表面張力より少なくとも2ダイン/cmだけ低いことが好ましく、少なくとも3ダイン/cmだけ低いことがより好ましく、少なくとも5ダイン/cmだけ低いことがより好ましく、少なくとも10ダイン/cm低いことがよりいっそう好ましい。
【0136】
本発明の好適な実施形態によると、湿潤組成物は1種以上の有機溶剤を含む。
【0137】
上述の通り、湿潤組成物は、表面へのインクの塗布中に、表面の他の特性に影響を及ぼさずに、表面の機械的、物理的、および化学的特性を一時的に変性させることを目的とするので、印刷プロセスが完了した後、湿潤組成物の少なくとも大部分を表面から除去できることが非常に望ましい。これらの条件下で物質を除去する最も簡単な経路の1つは、蒸発によるものである。したがって、好適な有機溶剤は揮発性とみなされる。
【0138】
本書で使用する場合、用語「揮発性」とは、比較的低い沸点および/または高い蒸発速度を特徴とする物質または組成物を指す。
【0139】
当業界でよく受け入れられている通り、100℃未満の沸点は比較的低い沸点とみなされる。したがって、本発明の好適な実施形態によると、有機溶剤は100℃より低い沸点を有する。そのような有機溶剤は、印刷プロセスが完了した後、例えば表面への熱の塗布または送風を含む上述した硬化プロセス中に、容易に除去することができる。
【0140】
本発明のこの実施形態に係る好適な有機溶剤はさらに、0.1より高く、好ましくは0.2より高く、一般的には0.1から5の間の範囲の蒸発速度を特徴とする。当業界で周知の通り、物質の蒸発速度の値は、任意に1と設定された酢酸ブチルの蒸発速度を基準にして決定される。
【0141】
上述の通り、揮発性および低い表面張力のような特性は湿潤組成物の有益な効果を改善すると考えられるので、好適な有機溶剤はそのような特性を示すものである。そのような有機溶剤の代表例として、本書で集合的に炭化水素と呼ばれる、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケンおよびアリール、ならびにアルコール、ケトン、エーテル、アルキルポリシロキサン、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0142】
本明細書で使用する場合、用語「アルコール」は、1つ以上のヒドロキシル基を持つ化学物質を表わす。用語「ヒドロキシル」とは‐OH基を指す。アルコールはR‐OHによって表わすことができ、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール等である。これらの用語は以下で定義する通りである。しかし、この用語はさらに、2つ以上のヒドロキシル基を持つ基を包含する。そのような物質を本書ではポリオールとも呼ぶ。
【0143】
本発明の文脈で使用するのに適したアルコールの非限定的な例として、メタノール、エタノール、プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、およびペンタノールが挙げられる。現在最も好適なアルコールはエタノール、2‐プロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)、および1‐ブタノールである。
【0144】
本発明の文脈で使用するのに適したポリオールの非限定的な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、およびチオグリコールが挙げられる。
【0145】
用語「ケトン」は、1つ以上のカルボニル基を有する化学物質を表わす。本書で使用する場合、用語「カルボニル」は‐C(=O)‐R’を表わし、したがってケトンはR‐(C=O)‐R’で表わすことができ、ここでRは上で定義した通りであり、R’はRに対して定義される通りである。
【0146】
本発明の文脈で使用するのに適したケトンの非限定的な例として、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサナノン、メチルエチルケトン、およびペンタン‐3‐オンが挙げられる。現在最も好適なケトンはシクロヘキサノンである。
【0147】
用語「エーテル」は1つ以上のアルコキシル基を有する化学物質を表わす。用語「アルコキシ」とは‐OR基を指し、ここでRは上述の通りであり、したがってエーテルはR‐O‐R’で表わすことができ、ここでRおよびR’は各々個別に上で定義した通りである。
【0148】
本発明の文脈で使用するのに適したエーテルの非限定的な例として、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピルメチルエーテル、メトキシプロパノール、ジエチルエーテル、1‐メトキシヘキサン、1‐エトキシヘキサン、および1‐プロポキシペンタンが挙げられる。現在最も好適なエーテルは、エチレングリコールブチルエーテルアセテートおよびプロピルメチルエーテルである。
【0149】
語句「アルキルポリシロキサン」は、一般式
を有する高分子化学物質を表わし、ここでnは反復する重合単位の個数を表わす整数であり、RおよびR’は各々個別に上で定義した通りである。nは1から3までの整数であることが好ましい。
【0150】
本発明の文脈で使用するのに適したアルキルポリシロキサンの非限定的な例として、ジメチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、およびニトリロブチルフェニルポリシロキサンが挙げられる。最も好適なアルキルポリシロキサンはジメチルポリシロキサンである。
【0151】
用語「アルカン」または「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を表わす。好ましくは、アルカンは6個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「6個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルカン)が6個の炭素原子、7個の炭素原子、8個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルカンは、6個〜14個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルカンである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルカンは、6個〜10個の炭素原子を有する低紙アルカンである。アルカンは、置換または非置換であり得る。置換されたアルカンは1個またはそれ以上の置換基を有し、それによりそれぞれの置換基は独立して、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。
【0152】
用語「ハリド(ハライド)」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0153】
本発明の文脈で使用するために適したアルカンの非限定的な例は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、tert−ブチルクロリド、イソブチルクロリド、過フルオロヘキサン、過フルオロヘプタンおよび過フルオロオクタンを含む。最も好ましいアルカンは石油エーテル、ヘプタン、オクタンおよび過フルオロヘキサンである。
【0154】
用語「シクロアルカン」または「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルカンは、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。
【0155】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。アリールの代表的な例は、ベンゼン、ナフタレン、ジクロロベンゼン、キシレン、シメンおよび1−クロロ−4−メチルベンゼンである。
【0156】
用語「複素脂環」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環は、置換されているか、またはハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であり得る。複素脂環の代表的な例はピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ及びその類似物である。
【0157】
用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。ヘテロアリールの代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0158】
本発明に係る現在最も好適な湿潤組成物として、上述した1種以上のアルコールおよび炭化水素が挙げられる。
【0159】
湿潤組成物は、有機溶剤に加えて、またはそれに代わって、水を含むことができる。
【0160】
本発明に係る湿潤組成物は任意選択的に、インク組成物と表面の相互作用をさらに変化させることのできる1種以上の薬剤をさらに含むことができる。
【0161】
これらの薬剤は、例えば1種以上の接着促進剤を含む。当業界で周知の通り、接着促進剤は一般的に、熱の働き、酸化、乾燥、および他の化学的および物理的状態によりコポリマーまたは架橋剤と反応することのできる反応性官能基を含む、1つ以上の実質的に飽和した、主にまたは実質的に炭化水素のオリゴマーまたはポリマーから構成される。架橋することによって、接着促進剤は一般的に接着膜を形成する。
【0162】
本発明の湿潤組成物への接着促進剤の添加は、硬化手順後に液体インク組成物の着色剤を安定化することによって、結果的に得られる画像の特性に有利に影響し、かくして印刷画像の洗濯堅牢性を改善する。接着促進剤の添加は任意選択的に、湿潤組成物とインク組成物との間の表面張力関係をも改善することができる。
【0163】
本発明の文脈で使用するのに適した接着促進剤の非限定的な例として、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョンおよび樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの組合せのような様々なポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0164】
本発明の湿潤に有利に組み込むことのできる追加の薬剤は、例えば粘度調整剤、増粘剤、表面張力調整剤、表面活性剤、界面活性剤、柔軟剤、およびそれらの組合せのうちの1つ以上を含む。そのような薬剤を湿潤組成物に添加することにより、湿潤組成物の効果を改善することができ、さらに、選択された湿潤組成物に所望の性質をもたらすことができる。かくして、例えば表面張力調整剤の添加は、添加する薬剤によって改善される中程度の表面張力特性を持つ有機溶剤を含む湿潤組成物を使用することを可能にする。粘度調整剤の添加は、添加される薬剤などによって低減される高い粘性を持つ有機溶剤を含む湿潤組成物を使用することを可能にする。
【0165】
本発明の湿潤組成物に有利に添加することのできる薬剤の代表例として、クレイ、多糖類、プロピレングリコールおよびグリセリンのようなポリオール、変性シロキサンおよびポリアルキルシロキサン、メラミンのようなアルデヒド系液体樹脂、尿素ホルムアルデヒド、フタレート、イソシアネート、ヒドロキシル、カルボキシル、またはアミド官能基および触媒を有するポリマーおよびオリゴマー、ならびに過酸化物、エポキシド、イソシアネート、およびアクリレートのような熱的活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0166】
上述した薬剤は有機溶剤自体を含む湿潤組成物に組み込むことができるので、湿潤組成物の最終形態は例えば、これらの薬剤を含む混合物、溶液、エマルジョン、または懸濁液とすることができるか、あるいは、これらの薬剤は、結果的に得られる湿潤組成物が水を含むように、水溶液、懸濁液、またはエマルジョンとして組み込むことができる。
【0167】
上述した薬剤は、湿潤組成物の一部として(一般的に、上述した1種以上の有機溶剤、これらの薬剤のうちの1種以上、および任意選択的に水を含む混合物、懸濁液、またはエマルジョンとして)、表面を組成物と接触させる中で、表面に塗布することができる。代替的に、これらの薬剤は、表面の湿潤組成物との接触前または後に表面に塗布することができる。さらに代替的に、1種以上の有機溶剤を含む湿潤組成物は、接触手順中に表面に塗布することができ、1種以上の有機溶剤およびこれらの薬剤の1種以上の混合物(例えばエマルジョン)を含む湿潤組成物は、接触手順の前または後に塗布される。
【0168】
代替的に、または上記に加えて、インク組成物を塗布した後に、追加薬剤をそれ自体としてまたは湿潤組成物の一部として画像上に塗布することができる。これらの手順は、上述した通り、画像の磨耗およびその精細度の損失を防止することが目的である。
【0169】
本発明に従って湿潤組成物に添加されるこれらの薬剤の濃度は、好ましくは湿潤組成物の総重量の約0.01重量%から約75重量%の範囲であり、より好ましくは湿潤組成物の総重量の約0.5重量%から約15重量%の範囲であり、より好ましくは湿潤組成物の総重量の約1重量%から約5重量%の範囲である。
【0170】
したがって、好適な実施形態では、本発明による例示的湿潤組成物は95重量%のエタノールおよび5重量%のアクリルエマルジョン(約50%が固体)を含み、方法はインク組成物の塗布前または後にそのような組成物の塗布を含む。インクの塗布前にこの湿潤組成物を塗布することで、インクと表面の係合が妨げられ、その後にこの湿潤組成物を塗布することで、印刷画像の色域、精細度、明度、および洗濯堅牢性が改善される。
【0171】
本発明に係る印刷方法は、当業界で周知の印刷技術に一般的に使用される多種多様な液体インク組成物を用いて適用することができ、したがって水性インク組成物および非水性溶剤系インク組成物を用いて適用することができる。
【0172】
水性インク組成物は一般的に、主要担体または溶媒としての脱イオン蒸留水、ならびに他の担体および例えばcymel323(サイテック・インダストリーズ)のようなコーティング剤を含有する。
【0173】
非水性溶剤系液体インク組成物は一般的に、主要担体または溶媒として有機組成物を含有する。非水性溶剤系液体インク組成物の非限定的な例は、担体または溶媒として、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)、シクロヘキサン、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)、および/またはジエチレングリコールを含む。
【0174】
非水性溶剤系液体インク組成物は、高い揮発性および一般的に中程度の範囲の表面張力のような化学的および物理的特性を示す。これらの物理的特性要件から、非水性溶剤系液体インク組成物は上述した好適な湿潤組成物との相溶性がより高く、したがってそのようなインク組成物を使用すると、全体的により高品質の画像をもたらすことができる。
【0175】
したがって、本発明の好適な実施形態では、液体インク組成物は非水性溶剤系インク組成物である。
【0176】
現在最も好適な液体インク組成物は、担体としてエチレングリコールブチルエーテルアセテートを含む。
【0177】
本書に記載した方法で使用される液体インク組成物は、結果的に得られる画像の耐久性のような特性を改善することを目的とし、かつ/または上で詳述したように湿潤組成物との相互作用に有利に影響する特性(例えば表面張力および/または粘度の向上または低減)をインク組成物にもたらす、例えば上述した接着促進剤のような1種以上の薬剤を含むことができる。
【0178】
本発明のこの実施形態では、液体インク組成物中のそのような薬剤の濃度は、好ましくは液体インク組成物の総重量の約0.01重量%から約75重量%の範囲であり、より好ましくは液体インク組成物の総重量の約0.1重量%から約50重量%の範囲であり、より好ましくは液体インク組成物の総重量の約0.1重量%から約10重量%の範囲である。
【0179】
したがって、上述した薬剤は本発明に従って、湿潤組成物およびインク組成物のいずれか一方または両方に添加することができる。さらに、これらの薬剤は、液体インク組成物の塗布後、硬化工程の前または後のいずれかに、画像の領域に塗布することができる。例えば硬化前の印刷画像への接着促進剤の塗布は、着色剤の洗濯堅牢性を向上し、かつ印刷画像の機械的および化学的保護をもたらすために、実行することができる。
【0180】
本発明の文脈で有利に使用することのできる好適なインク組成物は、本願と同時に出願し、両方とも本願と同一発明者および同一譲受人のイスラエル特許出願第163459号および「an ink composition」と称するPCT国際特許出願に開示されており、それらを、あたかも本書に完全に記載されているかのように、参照によって援用する。これらの出願に教示されているインク組成物は、様々な表面に、特に吸収性表面にカラー画像を印刷するのに適しており、さらにインクジェット印刷方法に適している。様々な印刷方法でこのインク組成物を使用することで、洗濯堅牢性、化学的に頑健、かつ耐物理的磨耗性であり耐久性の高い印刷画像が得られる。イスラエル特許出願第163459号および上記のPCT国際特許出願に教示されたインク組成物は、上述し、本書で相互に置換可能に溶剤、着色剤、ポリオール、基材内に存在する官能基と化学的に相互作用することのできる薬剤、および化学反応を触媒するための触媒とも呼ばれる担体を含み、任意選択的に、仕上げられた印刷画像における様々なインク特性および様々な結果の化学的相互作用および配合を変化させるための様々な添加物をさらに含むことができる。
【0181】
用語「着色剤」は、本明細書で使用する場合、印刷画像に所望の色を与える物質を表わす。着色剤は顔料、レーキ、または染料とすることができる。顔料は一般的にインク組成物の担体中で懸濁する固体着色剤であり、染料はインク組成物の担体中に溶解する液体着色剤である。
【0182】
印刷画像に所望の色を付与する以外に、着色剤は、化学的および物理的特性の点から適切に選択される。したがって、例えば、本発明の好適な実施形態では、着色剤は熱硬化性着色剤である。
【0183】
本発明のこの実施形態に使用するのに適した例示的染料着色剤として、市販されているオラゾールブラックRLI、オラゾールレッドGおよびCUフタロシアニンのようなアゾ‐クロム錯体、ならびに同様のアゾ‐コバルト錯体があるが、それらに限定されない。本発明のこの文脈で使用するのに適した例示的顔料着色剤として、キナクリドン、ベンゾイミダゾロン、カーボンブラック、フタロシアニン、ジアリーリド、アゾ、酸化チタン、および炭酸カルシウムがあるが、それらに限定されない。例示的な市販の顔料としてPermajet、Renol、およびMicrolithなどがある。
【0184】
好ましくは、本発明のこの実施形態に係るインク組成物中の着色剤含有量は、インク組成物の総重量の約0.2%から約40%の範囲である。より好ましくは、着色剤含有量はインク組成物の総重量の1から10重量%の範囲である。
【0185】
上述の通り、形成される画像の耐久性を向上する、この実施形態に係るインク組成物の成分は、基材と化学的に相互作用することのできる薬剤である。好ましくは、そのような薬剤は基材内に存在する官能基と相互作用し、より好ましくは、官能基はその表面に存在する。
【0186】
本明細書で使用する場合、語句「化学的相互作用」とは、2つ以上の物質の間で生じ、一般的に結合の形成を導く化学反応を表わす。本発明の場合、結合は共有結合、イオン結合、水素結合等とすることができ、したがって、化学的相互作用は例えば求核および求電子置換、求核および求電子付加反応、離脱反応、付加環化反応、転位反応、キレート形成、イオン錯体形成、アフィニティペア形成、および他の周知の有機および無機反応とすることができる。
【0187】
本明細書で使用する場合、語句「官能基」とは、一般的に結合形成を導く化学反応を起こすことのできる化学的部分を表わす。結合は、本発明の場合、共有結合、イオン結合、水素結合等とすることができる。本発明のこの実施形態に係る適切な官能基の代表的な例として、アミン、アミド、ハロゲン化物、ヒドロキシル、チオール、シアノ、スルホンアミド、カルボキシル、チオカーバメート、尿素、およびチオ尿素があるが、それらに限定されない。これらの用語については後で定義する通りである。好ましくは、この実施形態に係る官能基は、画像が印刷される基材を構成する物質中に豊富に存在しかつそこでの化学的相互作用に利用可能な官能基である。一般的な基材内に存在するそのような官能基は、一般的にアミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、およびチオールを含むが、それらに限定されない。
【0188】
基材との化学的相互作用によって、この薬剤はインク組成物の付着力を改善し、したがってインク組成物によって形成された画像が洗濯、磨耗、および他の物理的および化学的ストレスに耐えることを確実にする。好ましくは、化学的相互作用は架橋を含み、基材と相互作用することのできる薬剤は架橋剤である。
【0189】
本明細書で使用する場合、用語「架橋」とは、様々な成分間の相互接続リンクの形成を含みかつしたがって相互接続リンクの横方向の形成を導く化学反応を表わす。
【0190】
したがって、本明細書で使用する場合の語句「架橋剤」とは、一般的に結合形成を導く化学的相互作用に利用可能な2つ以上の反応基を有し、これらの反応基が他の化学物質間の架橋を導くような結合に参加する、化学物質を指す。好ましくは、架橋剤は、架橋剤が相互接続リンクの分枝網を形成することを可能にする3つ以上の反応基を有する。
【0191】
本発明のこの実施形態に係る架橋剤の反応基は、基材の表面にある官能基と化学的に適合可能であり、かつ印刷および/または硬化が行なわれる穏やかな条件下で反応性のものでなければならない。例えば表面にアミン基を有する基材の場合、カルボキシル基を持つ架橋剤は、基材とアミド結合を形成することができる。同様に、基材の表面のヒドロキシル基および/またはチオール基は、以下で定義するアミン基、カルボキシル基、ハロゲン化アシル基、アルデヒド基、イソシアネート基、ならびに穏やかな状態および/または穏やかな加熱状態で容易に相互作用する他の多くの官能基を有する架橋剤と結合を形成する。
【0192】
したがって、架橋剤は例えばアルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボキシル系架橋剤、シラン系架橋剤、ハロゲン化アシル架橋剤、過酸化物系架橋剤、エステル系架橋剤、アミド系架橋剤、およびビニル系架橋剤とすることができる。これらの架橋剤は各々、示した官能基の1つ以上を含む。
【0193】
アルデヒド系架橋剤は、穏やかな条件下でのそれらの高い反応プロファイル、および工業規模のそれらの比較的安全な使用のため、多くの業界で最も一般的に使用される架橋剤である。織布に印刷する場合、織布の表面にヒドロキシル基が豊富に存在するため、アルデヒド系架橋剤は特に有利である。
【0194】
しかし、アルデヒド系架橋剤の高い反応性は、それを含有するインク組成物が不安定になることがあり、したがって調製、貯蔵、移送、および利用が難しく、あるいは保存寿命期間が短いので、しばしばそれらの使用を制限する。
【0195】
本明細書中で使用される用語「アミン」は、以下に定義されるように、−NR′R′′基(式中、R′およびR′′はそれぞれ水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、(環の炭素を通して結合された)ヘテロアリール、または(環の炭素を通して結合された)複素脂環である)を示す。
【0196】
用語「アルケニル」および「アルケン」は、少なくとも二つの炭素原子と少なくとも一つの炭素−炭素二重結合からなるアルキル基を示す。
【0197】
本明細書中で使用される用語「アクリルハリド」はR′(C=O)X基(式中、Xは本明細書中に定義されるようなハリドであり、R′は本明細書中に定義される通りである)を示す。
【0198】
本明細書中で使用される用語「アルデヒド」は−C(=O)−H基を示す。
【0199】
本明細書中で使用される用語「アミド」は「C−アミド」と「N−アミド」の両方を示し、ここで「C−アミド」は−C(=O)−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は本明細書中で定義される通りである)を示し、「N−アミド」は−NR′C(=O)−R′′基(式中、R′およびR′′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0200】
本明細書中で使用される用語「カルボキシル」は−C(=O)OR′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0201】
用語「シアノ」は−C=N基を表わす。
【0202】
用語「ヒドロキシル」は−OH基を示す。
【0203】
用語「イソシアネート」は−N=C=O基を表わす。
【0204】
用語「過酸化水素」は−O−O−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0205】
用語「シラン」は−O−Si−(OR′)(OR′′)(OR′′′)基(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0206】
用語「スルホンアミド」は−N−S(=O)2−OR′基(式中、R′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0207】
用語「チオカルバメート」は−O−(C=S)−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0208】
用語「チオール」は−SH基を示す。
【0209】
用語「チオ尿素」は−NR′−C(=S)−NR′′R′′′(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0210】
用語「尿素」は−NR′C(=O)−NR′′R′′′(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0211】
例示的種類のアルデヒド系架橋剤として、変性メラミンホルムアルデヒド系架橋剤、尿素ホルムアルデヒド系架橋剤、グリコールウリルホルムアルデヒド系架橋剤、およびベンゾグアナミンホルムアルデヒド系架橋剤があるが、それらに限定されない。
【0212】
例示的変性メラミンホルムアルデヒド系薬剤として、メチル化メラミンホルムアルデヒド、N‐ブチル化メラミンホルムアルデヒド、およびイソブチル化メラミンホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。好ましくは、好適な変性メラミンホルムアルデヒド系薬剤はメチル化メラミンホルムアルデヒドである。
【0213】
例示的尿素ホルムアルデヒド系薬剤として、メチル化尿素ホルムアルデヒド、N‐ブチル化尿素ホルムアルデヒド、およびイソブチル化尿素ホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。例示的グリコールウリルホルムアルデヒド系薬剤として、Nブチル化グリコールウリルホルムアルデヒド、およびメチル化/エチル化グリコールウリルホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。例示的ベンゾグアナミンホルムアルデヒド系薬剤として、N‐ブチル化ベンゾグアナミンホルムアルデヒドおよびメチル化/エチル化ベンゾグアナミンホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。
【0214】
好ましくは、本発明のこの実施形態に係るインク組成物中の架橋剤含有量は、インク組成物の総重量の約0.4重量%から約55重量%の範囲である。より好ましくは、架橋剤含有量は、インク組成物の総重量の約5重量%から約25重量%の範囲である。
【0215】
インク組成物との係合を低減するように湿潤組成物が相互作用する結合部位の幾つかもまた、基材表面に存在する官能基を含むことができることに注目されたい。しかし、本明細書に記載する湿潤組成物および本発明のこの実施形態に提示するインク組成物の化学特性は完全に異なり、湿潤組成物およびインク組成物と形成される相互作用もそうである。
【0216】
本発明のこの実施形態に係るインク組成物は触媒をさらに含む。
【0217】
本明細書で使用する場合の用語「触媒」とは、基材と化学的に相互作用することのできる薬剤と、基材の官能基との間の化学反応を促進、開始、かつ/または触媒することのできる化学物質を表わす。触媒は、任意選択的に画像の硬化中に与えられる外部の熱と組み合わせて、インク組成物が基材と接触することにより反応を促進、開始、および/または触媒するように選択される。
【0218】
本発明の好適な実施形態に係る好適な触媒は酸触媒であり、より好適な触媒は強酸触媒である。酸触媒は、基材の様々な官能基と例えば上述した様々な架橋剤内の反応基との間の上述した反応の大部分を触媒することができるので、好適である。
【0219】
酸触媒は、インク組成物中に遊離状態でまたはブロック触媒として、すなわち、揮発性塩基性対イオンとの塩形態として、またはインク組成物中に存在する約3重量%の低アミンまたは約15重量%の低アルコールとの錯体として存在することができ、それによってアミンまたはアルコールは揮発性の酸希釈添加剤として働く。上述した塩または錯体は、組成物を基材上に塗布した後に分解し、したがって反応型の触媒が生成される。
【0220】
好ましくは、本実施形態のインク組成物中の触媒含有量は、インク組成物の総重量の約0.01重量%から約15重量%までの範囲である。より好ましくは、触媒含有量は、インク組成物の総重量の約0.1から約10重量%までの範囲である。
【0221】
用語「ポリオール」とは、この用語を以下で定義する通り、2つ以上の遊離ヒドロキシル基を有する化学物質を表わし、例えばジオール、トリオール、テトラオール等を含む。典型的なポリオールは、約50個から約400個のヒドロキシル基を含む物質である。ポリオールの代表的な例として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエステルアクリレート、アクリルポリオール、ウレタンアクリルポリオール、ポリエステルウレタントリオール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルアクリレート、および酸化ヒマシ油があるが、それらに限定されない。
【0222】
本実施形態の文脈で使用するのに適したポリオールの非限定的な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン(グリセロール)、ヘキサントリオール、およびチオグリコールがある。
【0223】
本実施形態のインク組成物中のポリオール含有量は、インク組成物の総重量の約0.1重量%から約50重量%までの範囲である。好ましくは、インク組成物中のポリオール含有量は、インク組成物の総重量の約0.5重量%から約30重量%までの範囲であり、より好ましくは、インク組成物中のポリオール含有量は、インク組成物の総重量の約11重量%から約20重量%までの範囲である。
【0224】
本明細書に記載したインク組成物の各々はさらに、インク組成物の化学的および物理的特性をさらに変えかつ形成される画像の性能を改善することのできる、1つ以上の追加成分を含むことができる。そのような成分の例として、非反応性薬剤、柔軟剤/可塑剤、分散剤、表面活性剤、および導電剤(イオン化可能な材料)があるが、それらに限定されない。
【0225】
上述したインク組成物は、湿潤組成物の塗布後に塗布することによって、本発明の方法で利用することができる。本発明の方法でそのようなインク組成物を利用することで、有益にも、本発明の湿潤組成物の使用に由来する優れた品質、およびそのようなインク組成物の使用に由来する物理的及び化学的耐久性の両方を特徴とする画像が生成される。
【0226】
しかし、本発明の文脈で利用できるインク組成物は、上述の通り、着色剤、担体、ポリオール、および基材と化学的に相互作用することのできる薬剤を含む組成物であり、湿潤組成物は上述の通り化学的相互作用を促進する触媒を含む。
【0227】
代替的に、本発明の文脈で利用できる好適なインク組成物は、上述の通り着色剤、担体、ポリオール、触媒を含む組成物であり、湿潤組成物は上述の通り基材と化学的に相互作用することのできる薬剤を含む。
【0228】
反応成分の1つ(例えば触媒または基材と化学的に相互作用することのできる薬剤)を欠くインク組成物、およびこの成分を含む湿潤組成物を利用することにより、インク組成物中の反応成分間の有害な反応が回避され、インク組成物をより効率的に利用することができる。
【0229】
したがって、本発明の印刷方法は、現在周知の印刷技術と比較して改善された解像度、精細度、および明度を持つ画像を生成し、吸収性表面および他の表面上に多色画像を印刷するのに特に有用である。以下の実施例の部分で実証する通り、画像を形成する前に表面を適切な湿潤組成物に接触させることにより、インクドット相互のフェザリングおよびにじみはかなり低減され、インク液滴は、湿潤表面上に塗布されたときに、くっきりした対称的な液滴の形状を提示し、表面におけるインクのより高い光学濃度が達成され(より高い解像度の画像の印刷が可能)、インクドットは表面の裏側まで浸透しない。湿潤組成物中に揮発性溶剤を使用することで、画像が硬化した後に湿潤組成物の目立つ痕跡が無いことによって示されるとおり、その完全またはほぼ完全な除去が可能である。
【0230】
要約すると、本発明の方法によって生成される画像は、表面への最小化されたインク吸収(例えば厚層化表面の裏側への最小化されたインクの拡散)、高くかつ長持ちする色の鮮明度、高解像度、および高い耐久性によって特徴付けられる。
【0231】
上述した方法は、適切な印刷機を用いて任意の所望の表面上で実行することができる。したがって、表面は平坦面、および曲面または任意の凹凸面のような非平坦面とすることができる。
【0232】
さらに、表面は例えばフィルム、箔、シート、または任意の三次元物体のいずれかの他の面の形とすることができる。
【0233】
上で詳述したように、本発明に係る方法は、画像が印刷される表面が画像品質を低下させる望ましくない特性を持つ場合に、特に有益である。これらの特性として、例えば吸収性およびインクと比較して高い表面張力があり、それはインク組成物のしみ、およびしたがって明度および解像度の低減を導く。
【0234】
したがって、本発明に係る方法は、表面が繊維性材料および多孔性材料のような吸収性材料または高い表面張力を特徴とする材料から作られる場合に、特に有益である。そのような表面の例として、織布、プラスチック、金属、ガラス、木材、および石があるが、それらに限定されない。
【0235】
上述した表面は、同じ材料から作られた対象物の一部を形成するか、あるいは代替的に、例えば紙層、発泡層、織布層、天然または合成ゴム層、セラミックまたはガラス層、樹脂層等、およびそれらの任意の組合せのような1つ以上の追加層を含むことができる。
【0236】
上でさらに詳述したように、本発明に係る方法は、表面が1つ以上の繊維性材料、例えば織布を含む場合に、特に有用である。
【0237】
本発明の文脈で使用するのに適した織物は、例えば織布、編布、およびフェルトのような不織布を含む。
【0238】
本発明に係る織布は、例えばウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せのような、動物、植物、および/または合成源からの布地を含むことができる。
【0239】
本発明の印刷方法は、1つ以上の織布から作られた衣類に非常に適しており、したがって本発明の好適な実施形態の1つは、1着の衣類におけるこの新規の印刷方法の使用である。例示的な衣類は木綿のTシャツである。
【0240】
上で説明しかつ論じたように、本発明の印刷方法およびその新規の原理は、吸収性および光沢のある表面に液体インクを用いて印刷する様々な技術に適している。本発明に対して非常に適合性の高い印刷技術の1例は、対象表面に対して直接印刷するデジタルインクジェット印刷である。
【0241】
したがって、本発明はさらに、比較的単純なシステムで直接基材への正確で高品質高解像度の多色印刷を可能にする、様々な基材用のデジタル印刷システムにも関係する。
【0242】
本発明の好適な実施形態は、繊維性材料、多孔性材料、および他のインク吸収材料、ならびにインク液に対し高い表面張力を有する材料のように、通常は表面の材料にインクのフェザリングを引き起こす材料に印刷するのに有用である。したがって、本発明の好適な実施形態は、衣類業界一般に、かつ特にTシャツ印刷業界向けに提供される。
【0243】
本発明の好適な実施形態は、本発明の湿潤組成物を塗布するための1つ以上のコントローラ操作型液体アプリケータをはじめとする、画像を印刷するための表面を準備するためのプレ印刷システムを備える。この液体アプリケータは一般的に、湿潤組成物を対象表面に塗布するように動作する噴射ノズルの配列を備える。他の型の液体アプリケータとして、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルを挙げることができる。コントローラは、上述の通り湿潤組成物を表面の選択部分に塗布するように、液体アプリケータを操作する。
【0244】
本発明のプレ印刷システムは、スタンドアロン装置とするか、または完全な印刷システムの一部とすることができる。本発明に係るプレ印刷システムの細部については、以下および図(例えば図4参照)で詳述する。
【0245】
したがって、本発明の態様では、印刷可能な媒体にインクを塗布するように動作する少なくとも1つのプリントヘッドを備えた印刷アセンブリを含む上述したプレ印刷システムと、好ましくはマイクロコントローラもしくはプログラム可能論理コントローラ(PLC)を含むコンピュータ、またはパーソナルコンピュータ(PC)またはそれらの任意の組合せを一般的に備えた上記アセンブリの動作を制御するためのコントローラユニットと、を備えた印刷システムを提供する。
【0246】
印刷システムは任意選択的に衣類取扱いアセンブリをさらに含むことができ、かつさらに任意選択的に、インク組成物および/または湿潤組成物を硬化させ、かつ/または湿潤組成物の乾燥を促進するように動作する少なくとも1つの硬化アセンブリとを含むことができる。
【0247】
さらに任意選択的に、印刷システムは、印刷前または湿潤前に衣類にアイロンをかけるように動作する少なくとも1つのアイロンアセンブリを含む。
【0248】
上述した湿潤アセンブリおよび印刷アセンブリは、印刷される表面の選択された領域に液体を塗布することのできる1つ以上のユニットを備えることが好ましい。そのようなユニットは、例えば噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシル等とすることができる。
【0249】
上述した衣類取扱いアセンブリは、正確なX、Y、Z運動システムおよび印刷テーブルを備えることが好ましい。該印刷システムは特に衣類に印刷するのに適しているので、本書では単なる例として衣類印刷に関して記述した。しかし、いずれかの他の適切な基材を代替的に使用することもできることは理解されるであろう。
【0250】
本発明に係るデジタル印刷システムの好適な実施形態は一般的に、制御可能に画像画素を形成することのできる、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル等のような電子制御式湿潤および印刷ユニットを含む。
【0251】
図示しかつ下述する本発明の好適な実施形態は、噴射技術による湿潤およびインクジェット技術による印刷の組合せを含む。本発明は湿潤技術及び印刷技術の全ての可能な組合せに関係することを理解されたい。
【0252】
今、図1を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作する衣類印刷システム10の簡易斜視図である。衣類印刷システム10は、正確な直線運動X軸ステージ12が取り付けられる剛性フレーム11を含む。一実施形態では、X軸ステージ12はリニアモータ駆動ステージであり、従来のリニア(線形)ステージとすることができる。代替的に、X軸ステージ12は、ベルト駆動ステージまたはボールねじ駆動ステージのような、いずれかの他の型のリニアステージとすることができる。印刷テーブルアセンブリ13は、好ましくは高い加速度および走査速度を達成するX軸ステージ12に接続される。
【0253】
X軸方向と直角に、正確な直線運動Y軸ステージ14は印刷テーブルアセンブリ13より上に、好ましくはブリッジ15上に取り付けられる。X軸ステージ12およびY軸ステージ14は当業界では、日本国東京都のTHK株式会社によって市販されているレールのような直線レール、オーストリア国タルスドルフのRSFエレクトロニクGes.m.b.H.によって販売されている直線符号器、およびレールに支持された可動板のようなリニアステージとして知られる。本発明の好適な実施形態では、X軸ステージ12は、高い加速レートおよびスチフネスが可能なリニアモータ駆動ステージ、例えば米国ニューヨーク州シャーリーのロックウェル・オートメーションのAnoradブランドモデルLW10である。高精度および動きの滑らかさは閉ループ制御のおかげである。X軸ステージ12のレールに沿った印刷テーブル13の位置は、直線符号器によって測定され、インクジェットノズルおよび湿潤化ノズルの発射タイミングを決定するためにも使用される。Y軸ステージ14は、X軸ステージ12と同様のリニアモータステージであることが好ましい。
【0254】
好ましくは多数のインクジェットノズルを含むプリントヘッド16は、好ましくはボールねじ駆動ステージである垂直Z軸システム17に接続される。Z軸ステージ17はY軸可動板18に支持され、印刷テーブル13の運動方向と直角の運動が可能である。プリントヘッド配列16と印刷テーブルアセンブリ13上の印刷面との間の間隙は、高品質印刷のための重要なパラメータである。Z軸ステージ17は、様々な媒体の高さの校正のためにプリントヘッド配列16の垂直方向の運動を可能にする。
【0255】
滴下ノズル、液滴噴射器、ドロップオンデマンド型圧電インクジェットノズル、連続圧電インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルのような、いずれかの他のインク塗布装置をプリントヘッド16に使用することができることは理解される。
【0256】
また、該システムは完成した衣類に印刷するのに特に適しているが、代替的に他の印刷可能な媒体を使用することができることも理解される。説明を容易にするために、単なる実施例として、完成した衣類に関連して本発明を説明する。
【0257】
印刷システム10は任意選択的にアイロンユニット19を含み、かつ同じく任意選択的に硬化ユニット20をも含む。印刷テーブルアセンブリ13が下を移動することができるように、アイロンユニット19は、好ましくはX軸ステージ12より上でフレーム11に、好ましくはブリッジに支持される。アイロンユニット19は、下でさらに詳述するように、印刷のために媒体を準備する。硬化ユニット20は、剛性フレーム11上のブリッジ15に支持されることが好ましい。代替的に、硬化ユニット20は、アイロンユニット19と同様に、別個のブリッジ上に装着することができる。本発明の一実施形態では、硬化ユニット20は、印刷が達成されるとき、または印刷パス中にインク担体及び/又は湿潤組成物の少なくとも一部を蒸発させる赤外線加熱コンベヤユニットである。本発明の別の実施形態では、硬化ユニット20は温風送風器である。代替的に、衣類に印刷されるインクの種類に適した、いずれかの他の硬化ユニットを利用することができる。
【0258】
主コンピュータ21、好ましくはマイクロプロセッサが、事前にプログラムされた印刷工程に従って、システム全体を制御し、調整、同期化、および起動のために様々なユニットの各々に結合される。主コンピュータ21は、多数の機能を調整する。それは画像ファイルから画像を受け取り、印刷すべき画像を処理し、硬化ユニットを起動させ、運動システム、アイロンユニット等を制御する。好ましくは、X軸およびY軸ステージの動きは、所望の対象物またはシンボルの正確な印刷を実行することができるように、マイクロプロセッサによって、プリントヘッドコントローラによるノズル発射コマンドと調整される。本発明の好適な実施形態では、コンピュータ21は、後で図4に関連して示し説明するプログラマブル論理制御装置(PLC)により補強される。
【0259】
今、図2A、2B、および2Cを参照すると、それらは、本発明の別の実施形態に従って構成され動作する衣類印刷システム22のそれぞれ略側面図、略正面図、および略平面図である。印刷システム22は図1に示したフレーム11より幅の広いフレーム23を含み、図1に記載した実施形態のように一つのX軸ステージの代わりに、二つの独立した直線X軸ステージ13が取り付けられる。図2A、2B、および2Cに記載されたY軸ステージ14は、図1のY軸ステージ14と実質的に同一である。印刷システム22はまた、二つの硬化ユニット20、二つのアイロンユニット19、および二つの印刷テーブルアセンブリ13をも含む。二つのX軸ステージ12が相互に独立して動作することは本実施形態の特有の特徴である。したがって、一つの印刷アセンブリにおけるローディングおよびアンローディングの工程を、第二の印刷アセンブリで印刷が実行されているときに同時に実行することができる。その結果、プリントヘッド配列は実質的に連続的に作動し、システムのスループットを劇的に改善する。各テーブルにシステムの同一縁部からアクセスすることができ、それによって一人の作業員が二つの印刷アセンブリを操作することが可能になる。主コンピュータ21は、両方のX軸ステージを独立して動作するように制御する。
【0260】
今、図3を参照すると、それは、本発明のさらに別の実施形態に係る印刷システム24の側面図である。印刷システム24は、図1に示したフレーム11と同一であるフレーム11と、同一X軸ステージ12に装着された二つの独立して運動可能な印刷テーブルアセンブリ13とを含む。印刷テーブルアセンブリ13は相互に独立して前後に移動することができる。一つの印刷テーブル13で印刷が実行される間、同時に第二印刷テーブルで衣類のアンローディングおよびローディングが行なわれる。各印刷テーブル13はシステムの両側の縁部からアクセスされ、異なる作業員がローディングおよびアンローディングを行なうことができる。主コンピュータ21は両方の印刷テーブルを制御する。
【0261】
今、図4を参照すると、それは湿潤組成物を印刷可能な媒体の表面の部分に適用するための本発明の一実施形態に従って構成され動作する湿潤化システム25の略図である。湿潤化システム25は、上述した印刷システム10、22、および24のような印刷システムに追加することができる。本発明の好適な実施形態では、湿潤化システム25は、湿潤組成物27を含むタンク26と、パイプ29を介してタンク26に接続され、パイプ30を介して噴射ノズル19に湿潤組成物27をタンク26から汲み出すように動作するポンプ28と、圧力調整器31と、パイプ32と、マニホルド33と、パイプ34と、ソレノイド弁35とを含む。オーバーフローニードル弁36は、過剰な湿潤組成物を、パイプ37および38を介してタンク26に戻すように動作する。パイプ39もまた、溢れた湿潤組成物をソレノイド弁35からタンク26へ運ぶように動作する。好ましくは、複数のソレノイド弁35および噴射ノズル19が、下述するように一列の噴射ノズルを形成するように構成される。湿潤化が開始されると、下述の通り、コンピュータ21が、好ましくはプログラマブル論理制御装置(PLC)40の助けを借りて、ポンプ29、および次いでソレノイド弁35を起動させ、湿潤組成物27の流れを噴射する。図4および図15に従って図示しかつ説明する本発明の好適な実施形態では、PLCの役割は、コンピュータ21によって出されるコマンドを関連構成部品への電気起動に変換することである。湿潤化システム25を作動させるコンピュータ21の手順の詳細な説明は、図15に関連してさらに示し説明する。
【0262】
上述したように、印刷前の衣類の本発明の湿潤組成物による湿潤化はインク小滴の衣類内への浸透を制限するので、より大量のインクが繊維の外部の可視的な層に残ってにじまず、したがってプリントヘッドはその後、より小さいインクドットを形成することができることが理解される。したがって、印刷される画像は、より高い解像度およびより強くより鮮やかな色により、高品質を持つことができる。
【0263】
また、衣類を本発明の湿潤組成物で湿潤化するための方法および装置は代替的に、表面を通過するまたは表面上のインクのにじみを制限するために、インクを吸収することのできる、またはインク液に対して比較的高い表面張力又は光沢のある仕上がりを持つ、任意の他の表面をコーティングするために使用することができることも理解される。
【0264】
さらに、噴射ノズル19は、液体を表面に塗布するための他の手段、例えば滴下ノズル、液滴噴射器、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルに置き換えることができることも理解される。
【0265】
加えて、プリントヘッド16は、湿潤化技術と印刷技術の任意の可能な組合せで、表面にインクを塗布するための他の手段、例えば滴下ノズル、液滴噴射器、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルに置き換えることができることが理解される。かかる組み合わせの非限定的な例は以下のものを含む:
滴下を使用する湿潤化およびドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズルを使用する印刷;
ローラパッドを使用する湿潤化および連続圧電式インクジェットノズルを使用する印刷;
噴射を使用する湿潤化およびスクリーン印刷ステンシルを使用する印刷;
液滴噴射器を使用する湿潤化およびインクジェットノズルを使用する印刷。
今、図5を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作する、ソレノイド弁35および噴射ノズル19のバッテリ41の斜視図である。ソレノイド弁35は各々、パイプ34、マニホルド33、およびパイプ32を介して圧力調整器31(この図には図示せず)に接続される。
【0266】
今、図6を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作するブリッジ42の上に装着された二つのバッテリ41の斜視図である。代替的に、バッテリ41は図1、2A、2B、および2Cのブリッジ15に、好ましくはプリントヘッド16の両側に装着することができることが理解される。
【0267】
今、図7を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作する印刷システム43の簡易斜視図である。印刷システム43は、印刷前湿潤化アセンブリ25を追加することによって、図1、2A、2B、2C、および3に従って示しかつ記載した印刷システム10、22、および24を改善したものである。簡単にするために、印刷システム43は、図2A、2B、2Cに従って示しかつ記載した二軸印刷システム22の改善として示されかつ記載される。図7は、ブリッジ15上に装着された二つのバッテリ41を示し、各バッテリはそのそれぞれのX軸12上にある。各バッテリ41は、下述の通り、印刷前及び所望により印刷後に湿潤組成物を衣類に噴射するように、個別にかつ独立して動作する。
【0268】
さらに詳しく下述する通り、衣類を印刷テーブル13に装着した後、作業員はコンピュータ21に印刷工程を開始するように命令する。コンピュータ21はPCL40の助けを借りて、印刷される領域の一縁がバッテリ41の真下に配置されるまで、バッテリ41の下で印刷テーブル13を動かす。次いで、コンピュータ21およびPLC40は、印刷テーブル13を下で動かしながら、印刷される領域の少なくとも一部分が湿潤化されるまで、適切な噴射ノズル19を作動させる。印刷される領域全部がそこだけ湿潤化されることが好ましい。この段階で、衣類は印刷の準備が整い、下述の通り、印刷テーブル13はプリントヘッド16の下に移動して印刷を開始する。
【0269】
衣類を下で移動しながら、選択された噴射ノズル19を動作することにより、他の領域はそのまま残しながら、衣類の選択された、所望により予め決められた領域だけ、特に印刷される領域を湿潤化することが可能になることが理解される。
【0270】
任意選択的に、コンピュータ21はPLC40の助けを借りて、印刷テーブルを下で移動しながら硬化アセンブリ20を操作して、印刷前に湿潤組成物を少なくとも部分的に、所望により追加の薬剤を含ませて硬化させる。
【0271】
湿潤化アセンブリ25は、印刷システム43と同様に、衣類以外の物に印刷するように容易に変更することができることが理解される。
【0272】
今、図8、9A、および9Bを参照すると、それらは全て、本発明の一実施形態に従って構成され動作する、槽44を装備したバッテリ41の好適な実施形態の簡易斜視図である。槽44は薄め液を含み、図8から分かるように噴射ノズルが噴射を行なわないときに、噴射ノズル19の先端をこの薄め液中に浸漬するように動作する。噴射を開始する前に、コンピュータ21は、ソレノイド45を起動させて、槽44を移動させ、図9Aおよび9Bから分かるように噴射ノズル19の先端を露出させる。
【0273】
今、図10を参照すると、それは、印刷テーブル13の一部であって、本発明の一実施形態に従って構成され動作する、衣類搭載アセンブリ46の好適な実施形態の簡易斜視図である。衣類搭載アセンブリ46は媒体保持板(媒体保持プレート)47および開閉蓋(開閉可能なカバー)48を含む。好ましくは、媒体保持板47は印刷される画像と同一サイズの隆起部49を含み、蓋48は隆起部49と同一形状の窓50を含む。好ましくは、窓50は、隆起部49よりわずかに、好ましくは数ミリメートル大きいサイズである。蓋48は、当業界で公知の通り、二つのガスシリンダ51によって開位置に保持される。好ましくは、印刷テーブルアセンブリの少なくとも一部分、例えば隆起部49は、紙、板、プラスチック等のような非多孔性媒体の保持を可能にする真空テーブルである。
【0274】
今、図11および12を参照すると、それらは、本発明の一実施形態に従って構成されかつ動作する、搭載された衣類が開位置および閉位置にある状態の衣類搭載アセンブリ46の簡易斜視図である。図11は、衣類搭載アセンブリ46にロードされた衣類52を示す。板の面取り部53が衣類を板上で中心に位置合せするので、衣類52は手動で媒体保持板上にロードされる。図12から分かるように、衣類52が媒体保持板上にロードされた後、ガスシリンダ51が蓋を閉鎖方向に押しやりながら、蓋48が媒体保持板に対して閉じられる。衣類の縁部は、隆起部の周囲でテーブルの下面に触れる蓋の表面によって少し伸ばされる。その結果、衣類は所定の位置に確実に保持され、高解像度の印刷が可能になる(つまり、印刷またはしわ寄せ工程(wrinkling)中に媒体の移動が事実上発生しない)。
【0275】
本発明の別の実施形態では、衣類搭載アセンブリは、アルミニウムまたは木材から作られた単純な平坦な板であり、その上に織物片または衣類が配置される。平坦な板は、衣類印刷業界に精通した者には周知である。
【0276】
今、図13を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作するインクジェットプリントヘッドアセンブリ54の簡易模式図である。プリントヘッドアセンブリ54は、完成した衣類、織物片、または他の可撓性もしくは剛性媒体に直接印刷するように構成された、プリントヘッド55の配列を含む。各プリントヘッド55は少なくとも一つのインクジェットノズル56を含む。プリントヘッド55は、米国ニューハンプシャー州のスペクトラ・インコーポレーテッドまたは当業界で公知の他社から市販されているような、任意の従来のプリントヘッドとすることができる。
【0277】
本発明の一つの好適な実施形態では、プリントヘッドアセンブリ54は、高速印刷を実行する、従来の圧電式ドロップオンデマンド型または連続型インクジェットヘッドの大量の配列である。少なくとも500個、および好ましくは数千個(例えば2000個)のノズルを同時印刷のために設け、結果的に非常に高速かつ正確な工程をもたらすことが本発明の特有の特徴である。各プリントヘッド55は、任意選択的にPLC40を介して、主コンピュータ21によって独立に制御される数十個のノズル56から構成される。
【0278】
今、図14A、14B、14C、および14Dを参照すると、それらは総合して、本発明の好適な実施形態に係る印刷工程の幾つかの段階の簡易模式図である。。図14A、14B、14C、および14Dは、図13のプリントヘッド56のような単一プリントヘッドの下の、図12に示した衣類52のような衣類の一部の四つの連続パスを示す。
【0279】
好適な実施形態では、ノズル間の距離およびプリントヘッド間の距離は、印刷解像度より大きいので、画像を完成するためには数回の印刷パスが必要である。媒体52を載せた印刷テーブルアセンブリの動きによって形成されるX軸の各パス後に、プリントヘッド55はY軸方向に少しずつ移動して、次のパスを準備する。コンピュータ21が、この正確かつ完全なカバレージ(coverage)を得るためにプリントヘッドおよび印刷テーブルアセンブリの相対運動を制御するようにプログラムされることは理解されるであろう。
【0280】
プリントヘッド配列55および印刷テーブルアセンブリの間の相対運動を発生しながら、印刷工程は実行される。この多色印刷のためには少なくとも二軸運動、つまり印刷方向のX軸運動および印刷方向と直角のY軸運動が必要である。上述の通り、ノズル間の距離およびプリントヘッド間の距離は印刷解像度より大きいので、画像を完成させるためには、数回の印刷パスが必要である。これは、ヘッド配列を印刷ラインと直角に動かしながら、印刷テーブルアセンブリをX軸に沿って前後に移動させることによって達成される。X軸は印刷ラインであり、Y軸は、各パス後に次のパス中の印刷ライン間の間隙を埋めるためにプリントヘッド配列が移動するラインである。多色印刷は、テーブル表面がドロップオンデマンド型インクジェットノズル配列の下を通過するときに実行される。
【0281】
本発明の代替実施形態では、Y軸は高速移動軸であり、X軸は、印刷されたライン間の間隙を埋めることができるように徐々に移動する。
【0282】
印刷コマンドは、プリントヘッドドライバ(図示せず)によって、インク発射のための正確な時間および場所で、各ノズルに送られる。印刷コマンドは実際には、正確な幅、電圧レベル、立上り時間、および減衰時間を持つ電子パルスである。プリントヘッドドライバは、英国ケンブリッジのインカデジタル・プリンターズのインカドライバのような、当業界で公知の市販のシステムである。印刷が完了すると、印刷テーブルはローディング位置に移動する。次いで、印刷された衣類はアンロードされ、新しい衣類が印刷テーブル上にロードされる。
【0283】
今、図15を参照すると、それは、好ましくはコンピュータ21によって実行される、印刷前及び所望により印刷後に衣類を湿潤させる工程の簡易フローチャートである。衣類を上述した本発明の湿潤組成物で湿潤させる工程は、コンピュータの記憶装置から画像ファイルをロードすることによって、要素57から開始される。該工程は要素58に進み、湿潤させる領域の縁でもある衣類上の画像の縁を決定する。該工程は要素59に続き、印刷テーブル13を動かすX軸12を起動させる。工程は要素60に進み、印刷テーブル13の位置データを符号器から受け取る。工程は、どのノズルを開くか(要素61)、あるいは閉じるか(要素62)を決定する要素に進み、好ましくはPLC40を介して、適切なコマンドをノズルソレノイド35に送る(要素63および64)。画像の他方の縁に達すると(要素65)、工程は停止する(要素66)。
【0284】
上述した実施形態の印刷システムは、以下の連続する工程を組み合わせたものである:
所望により少なくとも画像が印刷される領域をアイロン加工しながらの、衣類のローディングおよびアンローディング;
衣類の印刷される領域の少なくとも一部分を上記の湿潤組成物と接触することによる湿潤化;
装着された衣料の湿潤領域上へのインク組成物の適用による画像の形成;
所望により画像が印刷される領域の再湿潤化;
所望により画像の硬化。
【0285】
システムのスループットを高めるために、これらの工程は、本発明の上記実施形態に見られるように、並行して実行することができる。
【0286】
本発明は、単なる実施例として本明細書で上述したものに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付する請求の範囲によってのみ限定される。
【0287】
本発明の存続期間中に、多数の関連液体アプリケータ装置およびインクアプリケータ装置ならびにシステムが開発されることが予想され、本明細書における用語、特に用語「噴射ノズル」および「インクジェットノズル」の範囲は、先験的に、そのような新しい技術を全て含むつもりである。
【0288】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0289】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0290】
下の全ての実施例で、上述したように湿潤組成物を塗布するために湿潤システムを装備した、「Kornit930」または「Kornit931」デジタル印刷機(イスラエル国コーニット・デジタル・リミテッド社製)を使用した。
【0291】
印刷は一般的に、100%綿織物のTシャツの表面で実行した。同様の試験を綿50%およびポリエステル50%の表面でも実行し、同じ結果が得られた。
【0292】
実施例1
シアン、マゼンタ、イエロー、および黒色(CMYK)の4つの基本配合液を有する非水性溶剤系インク組成物を使用した。
【0293】
上述の通り、綿100%のシャツを機械上に装着し、インクジェットプリントヘッドを用いて、布地表面に多色画像を直接印刷した。
【0294】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷画像を硬化させた。
【0295】
図16Aおよび16Bは、印刷されたシャツの前面(図16A)および裏面(図16B)の写真を提示し、得られた画像のぼやけおよび前面に得られた色のにじみ(特にシアンのにじみ)、ならびに布地を通してシャツの裏面へのインクの著しい浸透によって示される、布地におけるインクの高い吸収性を実証している。
【0296】
実施例2
綿シャツを本発明に係る例示的湿潤組成物で湿潤させた後、実施例1と同じ画像を印刷するために同じインク組成物を使用した。
【0297】
こうして、綿100%のシャツを上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを用いて綿布の領域に100%イソプロパノールを、綿布の面積1cm2当たり0.25グラムの密度で、均等に塗布した。
【0298】
その直後に、綿布がイソプロパノールでまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、シャツ表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0299】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷画像を硬化させた。
【0300】
図17Aおよび17Bは、印刷されたシャツの前面(図17A)および裏面(図17B)の写真を提示し、湿潤組成物を塗布せずに得られた画像(図16A参照)と比較して、得られた画像の優れた明度および目に見える色の不都合なにじみが無いこと(図17A)および湿潤組成物を塗布せずに得られたもの(図16B参照)と比較して、布地を通してシャツの裏面へのインクの浸透の著しい低減をも明瞭に実証し、したがって、本発明の印刷方法によって得られる画像の優れた品質を明瞭に実証する。
【0301】
実施例3
シアン、マゼンタ、イエロー、および黒色(CMYK)の4つの基本配合液を有する非水性溶剤系インク組成物を使用した。
【0302】
上述の通り、綿100%のシャツを機械上に装着し、インクジェットプリントヘッドを用いて、布地表面に各色配合液の正方形の多色画像を直接印刷した。
【0303】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷画像を硬化させた。
【0304】
並行試験で、実施例2で上述したようにインク配合液を塗布する前に、100%イソプロパノールを綿布の領域に均等に塗布しながら、同じ方法を繰り返した。
【0305】
印刷されたシャツ(本発明に従って湿潤組成物で前処理したもの、およびしないもの)の各々において、着色された正方形の各々の光学濃度を、Shamrock Color Print415を用いて測定した。下の表1は記録された光学濃度値を提示するものであり、本発明に従って湿潤組成物で布地を前処理した後で、より高い値が得られたことを明瞭に示している。
【0306】
図18Aおよび18Bは、湿潤組成物を塗布せずに印刷したシャツの前面(図18A)および湿潤組成物を塗布した後で印刷したシャツの前面(図18B)の写真を並べて提示するものであり、本発明の方法に従って湿潤組成物で前処理した布地で得られた画像の改善された明度、精細度、および鮮明度をさらに実証する。
【0307】
図19Aおよび19Bは、湿潤組成物を塗布せずに印刷したシャツの裏面(図19A)および湿潤組成物を塗布した後で印刷したシャツの裏面(図19B)の写真を並べて提示するものであり、シャツを湿潤組成物で前処理した場合、著しく低減した布地の裏面へのインクの浸透をさらに実証し、したがって、本発明の方法に従って湿潤組成物を塗布することによって達成される、印刷対象物の表面特性の有利な変性をさらに実証する。
【0308】
実施例4
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0309】
印刷機に取り付けられた噴射ノズルを使用して、湿潤組成物を対象表面上に均等に塗布した。
【0310】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%ブタノールを綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0311】
その直後に、綿布がブタノールでまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0312】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0313】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0314】
実施例5
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0315】
印刷機に取り付けられた噴射ノズルを使用して、湿潤組成物を対象表面上に均等に塗布した。
【0316】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、97%イソプロパノールおよび3%SCX8383アクリルエマルジョン(Johnson Polymers)の混合物を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0317】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0318】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜170℃に60秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0319】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0320】
実施例6
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0321】
ピペットを使用して、湿潤組成物を対象表面上に均等に塗布した。
【0322】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。ピペットを使用して、100%石油エーテル(80−100)を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0323】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0324】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜170℃に150秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0325】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0326】
実施例7
以下の水性インク組成物を使用した:
Cymel323(Cytec Industries)30.0グラム
ポリエチレングリコール35000(Sigma−Aldrich)4.0グラム
Nacure2501(King Industries)2.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(Dow Chemicals)15.0グラム
イソプロパノール5.0グラム
蒸留水40.0グラム
Spectra fix red 195(Spectra Colors Group)4.0グラム
【0327】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.60グラムの密度で均等に塗布した。
【0328】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0329】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0330】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0331】
実施例8
以下の水性インク組成物を使用した:
Cymel323(Cytec Industries)30.0グラム
ポリエチレングリコール35000(Sigma−Aldrich)4.0グラム
Nacure2501(King Industries)2.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(Dow Chemicals)15.0グラム
イソプロパノール5.0グラム
蒸留水40.0グラム
Spectra fix red 195(Spectra Colors Group)4.0グラム
【0332】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%シクロヘキサノンを綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.60グラムの密度で均等に塗布した。
【0333】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0334】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0335】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0336】
実施例9
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0337】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%エタノールを綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0338】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0339】
次いで、上記のように、印刷した布地を硬化させた。
【0340】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0341】
実施例10
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
担体としてエチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)60%
担体としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15%
着色剤としてオラゾル染料3%
変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(例えばCymel325)11%
ポリエステルポリオール(例えばKing IndustriesによるK−Flex XM−A307)11%
【0342】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、90%イソプロピルアルコール及び10%ブロックトp−トルエンスルホン酸から構成される湿潤組成物を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0343】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0344】
次いで、上記のように、印刷した布地を硬化させた。
【0345】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0346】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0347】
【図1】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略斜視図を提示する。
【図2】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易側面図、正面図、および平面図を提示する
【図3】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略側面図を提示する。
【図4】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤システムの略図を提示する。
【図5】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤用の1組のソレノイド弁および噴射ノズルの略斜視図を提示する。
【図6】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、ブリッジ上に取り付けられた二つの湿潤バッテリの略斜視図を提示する。
【図7】図2A、2B、および2Cに提示された印刷システムの一部であり、図4に提示された湿潤システムを備えた、本発明の好適な実施形態に係るプレ印刷システムの簡易斜視図を提示する。
【図8】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を備えた1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
【図9】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を装備した1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
【図10】本発明の好適な実施形態に従って印刷プロセスが開始する前に衣類が手動で装着される衣類装着アセンブリの好適な実施形態の簡易斜視図を提示する。
【図11】装着された衣類が開位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
【図12】装着された衣類が閉位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
【図13】本発明の好適な実施形態に係るインクジェット印刷ヘッドアセンブリの簡易略図を提示する。
【図14】高解像度画像を達成するために画像の領域全体を網羅するのに必要な、印刷アセンブリの4回の別個のパスを示す、本発明の好適な実施形態に係るインク塗布方法の幾つかの段階の簡易略図である。
【図15】印刷前に衣類に対し湿潤組成物を使用する本発明の印刷方法の1つの模範的な段階的使用の簡易フローチャートを提示する。
【図16】インクジェット印刷機を用いて画像が直接印刷された綿100%の衣類の前面(図16A)および裏面(図16B)を提示する写真である。
【図17】本発明に従って衣類の表面に湿潤組成物を接触させた後、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面(図17A)および裏面(図17B)を提示する写真である。
【図18】画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図18B)およびしない場合(図18A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面の写真を提示する。
【図19】画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図19B)およびしない場合(図19A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の裏面の写真を提示する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の分野に関し、さらに詳しくは、織物のような表面への高解像高精細多色直接印刷のための新規の方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類および布地の新しい刺激的なファッション、つまり最大商業市場の1つへのますます増大する要求は、繊維材料、製織および糸通し、布地製造、染色、ならびに織布の後処理のような領域に最先端技術を導入することを促している。それでもなお、技術が最も貢献できる領域は、織物とデザイナーアートの無限の世界との融合にある。したがって、最も有望であるのは、現在の技術によってまだ充分に満たされていないデザイナアートの織物印刷の領域である。
【0003】
織物印刷に特有の高解像高精細アート印刷の目標を達成する過程で、特に衣類に布地が使用される場合には、幾つかの技術上およびロジスティック上の課題がある。印刷画像は、その鮮明な色を維持しながら、繰り返される洗濯、伸縮、および衣類の他の典型的な使用条件に持ちこたえなければならない。さらに、印刷領域は、元の布地と同様の質感および快適な感触を有することが望まれる。最後に、方法は、印刷画像の品質を維持しながら、再現可能であり、大量生産用に適し、かつ費用効率が良くなければならない。
【0004】
今まで、一般的に幾つかの技術が、織物表面への印刷に使用されている。これらは、例えば、輪転グラビアおよびフレキソ印刷、スクリーン印刷、ならびに染料昇華のようなモールドブロック技術を含む。しかし、以下で詳述するように、これらの技術では、上記の要件は一部分しか満たされない。
【0005】
輪転グラビア印刷はエッチング処理した金属印刷胴を使用する。印刷画像は胴に多数の小さなセルとしてエッチングされる。印刷胴がインク貯留部を通過するときに、セルにインクが充填される。過剰なインクはドクターブレードにより、インク画像を残して、印刷胴の表面から拭き取られる。次いで、印刷胴は圧胴と接触したときに、画像を織物材料に転写する。
【0006】
輪転グラビア印刷は、高速で長期高品質のハーフトーン印刷に適しているが、版胴製作が高コストのため、最も高価な技術の1つである。他の印刷モールドブロック技術として、輪転グラビア印刷は織物上の複雑な多色画像およびデザインにあまり適さない。
【0007】
別の印刷モールドブロック技術として、印刷版胴上の凸状画像を使用して画像を材料に転写するフレキソ印刷がある。フレキソ版は通常ゴムまたはゴム様材料から作られる。凸状画像領域はエッチング処理したアニロックスローラからインクを受け取り、それが圧胴と接触したときに、画像を織物材料に転写する。
【0008】
フレキソ印刷は、その比較的安価な印刷版、高速セットアップ時間、および高い生産速度で長期または短期印刷を行なう能力により、人気のある印刷方法である。フレキソ印刷は、インク分布を制御するドクターブレードおよび微細線アニロックスロールを用いて、中央圧胴プレス機でのハーフトーン印刷が可能である。それの主な不利点は、高精細度の多色画像を織物上に形成できないことである。
【0009】
しばしば「シルクスクリーニング」と呼ばれるスクリーン印刷は、現在、織物印刷の最も一般的な技術の1つであり、平坦または比較的平坦な表面に対して特に好適であり適用可能である。この技術の要点は、産業環境では一般的にステンレス鋼製、より伝統的な環境ではシルク製である、剛性の枠にきつく伸張されたステンシル微細メッシュまたはスクリーンを通して、インクを直接織物材料に押しつけることを伴う。印刷すべきでない領域は、スクリーン上でマスキングされる。印刷物を生成するために、スクリーンが印刷される物品の上に配置され、濃いインクがスクリーン上に載せられる。次いでスキージを用いて、スクリーンを通してインクを押し込み、マスキングされた領域で所望の領域からインクが通過することを防ぐ。織物は次いで、画像を織物材料に永久に定着させるように、インクを硬化させるために加熱および乾燥される。
【0010】
多色画像を希望する場合、各色に異なるスクリーンを用いて該プロセスが繰り返される。スクリーンは通常、異なる色の印刷の適切な位置合せつまり相互の見当合せを可能にする回転プレス上に配置される。一部のスクリーン印刷機は、セットアップおよびローディング/アンローディング以外の手作業を必要としない全自動プレスを有する。
【0011】
スクリーン印刷に使用されるインクは、一般的に非水性溶剤系プラスチゾルまたは水性インクである。プラスチゾルは一般的に、液状可塑剤および着色剤を混合したビニル粉末の懸濁液を含む。液体を(一般的に180℃に)加熱すると、ビニルは融解し、可塑剤中に溶解する。冷却すると、インクは様々な硬度に凝固し、それにより不快な感触を与える印刷画像が形成される。水性インクは布地に吸収されてにじむ傾向があり、したがってしばしば、ぼやけた画像が形成される。
【0012】
スクリーンのマスキングは様々な経路で達成することができる。最も単純な経路は、スクリーン上に直接マスキング流体を適用することを含む。この技術は、単純な1色または2色のグラフィックスに適しているが、より複雑な写真写実的な印刷には効果がない。多色印刷の場合、スクリーン印刷機はしばしば感光性乳剤を使用して、マスキング領域を形成する。デザインは透明なプラスチックフィルム片上に形成される一方、感光性流体コーティングはスクリーンの表面全体に塗布され、次いで乾燥される。フィルムは準備されたスクリーン上に載置され、表面は非常に明るい光に露光される。一定時間後に、露光領域は水でスクリーンから洗い流すことができ、印刷が達成される。
【0013】
スクリーン印刷は一般的に、Tシャツ、衣類、および他の布地に使用されるが、プラスチックから金属に及ぶ他の基材にも使用することができる。小さい入り組んだ細部を捕捉することができるが、スクリーン印刷は、肉太でグラフィックでありながら単純なデザインにより適しており、多色の写真写実的な画像にはあまり適さない。いずれの場合にも、上述のように、この技術は結果的に一般的にぼやけた画像および/または不快な感触のある画像を生じる。
【0014】
多色画像を織物に印刷するための他の方法として、転写技術がある。これらの技術では、画像は、布地から離れて接着剤層を含む専用紙またはデカル上に形成される。布地に当てられたとき、熱および圧力により画像は布地に転写される。結果的に得られる画像は鮮明であり、高精細であるが、使用するとひび割れする傾向があり、不快な感触を持ち、布地を密閉して「呼吸」を妨げる。
【0015】
染料昇華印刷は、高精細の鮮明な多色画像をポリエステル混紡布に形成するために現在使用されている別の方法である。インクは熱駆動昇華によって布地に転写され、柔らかな高解像画像が形成される。この方法は、インクジェットプリンタを通して簡素な紙上に送られる特殊インクを利用し、印刷画像は基材の織物材料上に熱転写される。
【0016】
この技術は、短期または中期の生産運転に実行可能な代替法である。しかし、この方法はポリエステル混紡布のみに限定され、さらに特殊インクの使用および昇華の余分な工程により、この技術は非常に高価になる。
【0017】
したがって、上に詳述した現在使用されている印刷方法は、高解像の写真写実的な多色画像を生産することができないことにより、ファッション業界の最新の要求を満たしていない。これらの方法の不利点は一般的に、関係する多工程プロセス、コスト、および時間のかかる布地の前処理、そして何よりも、それらによって得られる平凡な結果に起因する。さらに、これらの方法の少なくとも幾つかは、特定の種類の織物表面および着色剤に限定される。
【0018】
織物印刷の速度、品質、汎用性、および簡便性を高めるための1つの方法は、インクジェット印刷の使用を含む。1980年代後半におけるそれらの出現以来(例えば米国特許第4312007号および第4380770号参照)、インクジェットプリンタは、主にそれらの信頼性、比較的静かな動作、汎用性、グラフィックス処理能力、印刷品質、および低コストのため、価格を著しく下げながら、有用性、性能、および人気を高めてきた。さらに、インクジェットプリンタは、複雑な装置を必要とせずに「オンデマンド」カラー印刷を可能にした。
【0019】
インクジェットプリンタは、画像を形成するように、インクの液滴を対象面上に配置するプリンタである。液滴によって形成されるドットは非常に小さく、直径が50ないし60ミクロンの範囲である。ドットは、通常デジタル処理によって、一般的な家庭用プリンタで1インチ当たり720ドットから1440ドット(dpi)までの解像度で、正確に配置される。ドットは、プリンタで使用されるインクの個数および画像要件に応じて異なる色を持つことができ、それらがひとつに結合されて写真品質の画像が形成される。インクジェット印刷装置は一般的に、インクの液滴を噴射するために使用される多数のノズルを有するインクジェットプリントヘッドを有し、それによって各プリントヘッドは一般的に異なる色のインクを噴射する役割を果たす。使用される印刷技術に応じて、インクカートリッジは、黒およびカラーの別個のカートリッジ、カラーおよび黒の単一のカートリッジ、または各インクカラー毎のカートリッジのように、様々な組合せで入手可能である。幾つかのプリンタモデルでは、カートリッジおよびプリントヘッドは1つのユニットに結合される。
【0020】
インクジェットプリンタは、多種多様な表面に印刷することができる。例えば、市販のインクジェットプリンタは、ガラス瓶上のラベルのような非平坦湾曲アイテムに直接噴射することができる。消費者向けに、裏面に接着剤が塗布されたラベルつまりステッカーから名刺およびパンフレットまでに及ぶ多数の特殊用紙がある。
【0021】
希望する表面が衣類または別の織布表面である場合、デジタルインクジェット技術は、デザイナーアートおよび画像形成にとっておそらく最も有利な技術である。それは比較的安価でありかつ汎用性が高いが、それにもかかわらず、多くの家庭が低コスト高解像度インクジェット家庭用コンピュータプリンタで経験するように、解像度の高い多色の写真写実的な画像を達成することができる。
【0022】
インクジェット印刷用の現在入手可能なインクには、水性インクおよび非水性溶剤系インクを含む。水性インクは一般的に水および着色剤、通常は染料または顔料分散体から構成され、さらに、特定の特徴(例えば改善された安定性および流動、耐フェザリング性等)をインクに付与するために多数の添加剤を含むことができる。非水性溶剤系インクは一般的に、低アルコール、低アルカン等のような1つ以上の揮発性有機溶剤、および着色剤から構成される。
【0023】
インクジェットプリンタは一般的に、画像をレンダリングしかつ印刷用に処理するコンピュータによって制御される。ソフトウェア駆動ドライバに由来するデジタルデータは、プリントヘッドステッパモータまたはリニアモータ駆動ステージに送られ、それは、望ましい画像を形成するように、インク液滴を表面に塗布しながら、プリントヘッドアレイ(プリントヘッドおよびインクカートリッジ)を対象面上で前後に移動させる。
【0024】
現在、インク液滴を対象面に塗布するための2つの主要なインクジェット印刷技術がある。
【0025】
第1の技術は熱バブルとして知られ、さらに一般的にバブルジェットと呼ばれる(例えば米国特許第4296421号参照)。熱インクジェットプリンタでは、小さい電気抵抗体が熱を発生し、それがインクを蒸発させてバブルを形成させる。バブルが膨張すると、インクの一部はノズルから対象面上に押し出される。バブルが崩壊するときに、生成される真空はさらなるインクをインクカートリッジの貯留部からプリントヘッドに引き込む。典型的なバブルジェットプリントヘッドは300個または600個の小さいノズルを有し、それらの全てが液滴を同時に適用することができる。
【0026】
第2の技術は、圧電結晶を用いた圧電式プリントヘッドを利用する(例えば米国特許第4312007号参照)。圧電結晶は各ノズルのインク貯留部の背後に配置される。結晶は、それを振動させる微小な電荷を受け取る。結晶が内向き振動するとき、少量のインクをノズルから押し出す。外向きに振動するとき、それは、噴出されたインクを補充するように、さらに幾らかのインクを貯留部に押し出す。
【0027】
画像のインクジェット印刷プロセスは一般的に以下の基本的工程を含む。
【0028】
ソフトウェアアプリケーションは画像を画素(コンピュータグラフィック画像の1つの点を表わす情報の単位)に分解し、印刷される各画素の配置および色剛性に関するデジタルデータをプリンタドライバに送る。
【0029】
ドライバはデータを実行可能なフォーマットに変換する。
【0030】
プリンタは次いでデータを受け取り、制御回路を起動させることによって実際の印刷を実行する。制御回路は、プリントヘッドアレイの下で表面を前後に移動させ、かつプリントヘッドアレイを表面上で左右に移動させるため、様々なステッパモータまたはリニアモータ駆動ステージを始動させる。一部の市販の大規模インクジェットプリンタでは、表面は静止したままであり、プリントヘッドアレイだけが可動部である。プリントヘッドステッパモータは一般的にベルトを用いて、表面上を横切るようにプリントヘッドアレイを移動させる。代替的リニアモータ駆動ステージは正確なリニアスプロケットトラックおよびスプロケットホイールを使用して、表面を横切るようにプリントヘッドアレイを移動させる。一般的に、画像は一度に1行づつ印刷される。モータはプリントヘッドがインクの液滴を表面に噴射するたびに、1秒の数分の1の時間休止し、次いで次の画素位置に移動した後、再び停止する。停止毎に、プリントヘッドが様々な色を作るように正確な量で基本色の組合せを噴射したときに、多数のドットが形成される。パスの最後に、ステッパモータまたはリニアモータ駆動ステージはプリントヘッドアレイを次の行(モデルによって行頭または行末)に移動させ、画像の印刷が完了するまでプロセスは繰り返される。
【0031】
高品質インクジェット用紙上でインクジェットプロセスによって得られる画像は、特にプロセスに注がれるコストおよび手間を考慮すると、比較的高い品質を有する。
【0032】
しかし、残念ながら、他の表面、特に織物のような吸収性の高い表面に印刷する場合、インクジェット印刷技術を使用することは、様々な限界を伴う。第一に、織物上のインクジェット印刷画像はしばしば低品質である。例えば、印刷画像はしばしば取扱いにより汚れ、にじみ(1つの色が隣の色に侵入すること)および浸透(布地への画像の拡散)が現われ、湿度に敏感であり、かつ、くすんで見える。つまり、カラーインクが期待された色相を正確に生成することができない。さらに、印刷画像はしばしば耐水堅牢性でも耐洗剤性でもなく、その結果、洗濯後に印刷画像が退色し、さらにしばしば快適な手触り感の要求を満たさなくなる。織物産業は、画像が耐水性であると共に耐洗剤性であり、色および色相ができるだけ鮮明であり、インクの着色剤が頑強に基材に接着し、かつ基材の望ましい手触りが維持されることを要求しているが、現在周知のインクジェット印刷技術はこれらの要件を達成していない。
【0033】
織物および他の吸収性表面におけるデジタルインクジェット印刷に関連する限界を克服することを目指した幾つかの技術が、現在、当業界で周知である。これらは例えば印刷プロセス前の布地の前処理を含む。かくして、例えば米国特許第6291023号、第6698874号、および第6840992号は、印刷前に布地に塗布されるコーティング組成物を教示している。それにもかかわらず、これらの前処理は全ての布地材に適するものではなく、環境に悪い化学物質を使用し、時間がかかり、かつ費用効率が低い。
【0034】
高品質で長持ちする画像を達成することを目指した他の試みには、例えば米国特許第6626530号に教示されているように、表面に塗布された後で画像を保護コーティングによって保護することを含む。しかし、これらの試みはプロセスの簡便性および費用効率を低減する一方、結果的に不快な感触を持つ最終製品を生じる。
【0035】
したがって、先行技術は様々な表面に画像を印刷するための様々な方法を教示しているが、最も有望なインクジェット印刷の技術を含めて、これらの技術は、織物に多色の高解像度の写真写実的な画像を形成する能力に限界がある。最も一般的に使用される技術は、吸収性表面に塗布されたときのインクのフェザリング(にじみ)および深い浸透、ならびに、前処理された布地の不快な手触り(および臭気)、可塑化された着色剤の不快な手触りおよび亀裂に加えて、ぼやけて高精細が欠如した仕上がりに悩むはぐれ繊維によるインクの不正確な配置などの不都合な特徴が欠点である。
【0036】
したがって、上記の限界を持たない、吸収性表面一般および特に織布の高解像高精細多色印刷のための方法の必要性が幅広く認識されており、それを持つことは非常に有利であろう。
【発明の開示】
【0037】
ここで、本発明の発明者らは、驚くべきことに、インクと表面との係合を妨げ、かくして表面の機械的、物理的、および/または化学的特性を一時的に変性させる湿潤組成物で画像が印刷される表面を湿潤させ、その後、一般的な印刷プロセスによって湿潤面に画像を形成することによって、インクのにじみおよび拡散の無い高解像高精細の鮮明な画像が得られることを発見した。
【0038】
したがって、本発明の1つの態様では、表面の湿潤部を設けるように表面の少なくとも一部分に、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を接触させることと、液体インク組成物を表面の湿潤部に塗布して、表面の前記湿潤部に画像を形成することとを含む、表面に画像を印刷する方法を提供する。
【0039】
下述する本発明の好適な実施形態におけるさらなる特徴によると、方法はインク組成物を塗布した後、画像を硬化させることをさらに含む。
【0040】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化は、表面の加熱および表面の乾燥から構成される群から選択された方法によって達成される。
【0041】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、接触は、噴射、噴出、塗付け、展着、はけ塗り、浸し塗り、滴下、含浸、注入、凝縮、分散、拡散、消散、溶解、溶融、またはそれらの組合せから構成される群から選択された方法によって、好ましくは噴射、噴出、または滴下によって達成される。
【0042】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、接触は湿潤組成物を液体アプリケータに通すことを含む。
【0043】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面の湿潤部における湿潤組成物の濃度は、表面の湿潤部1cm2当たり約0.01グラムから約2グラムの範囲、好ましくは表面の湿潤部1cm2当たり約0.1グラムから約0.6グラムの範囲である。
【0044】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面の前記湿潤部は表面の予め定められた部分であり、表面の予め定められた部分に湿潤組成物を接触させることはデジタル処理で達成される。
【0045】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は水性インク組成物および非水性溶剤系インク組成物から構成される群から選択され、好ましくは非水性溶剤系インク組成物である。
【0046】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は、液体インク組成物の表面張力より、好ましくは少なくとも2ダイン/cmだけ低い表面張力を有する。
【0047】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は、50ダイン/cmより低い表面張力を有する。
【0048】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物の表面張力は35ダイン/cmから15ダイン/cmまでの範囲であり、好ましくは25ダイン/cmから10ダイン/cmまでの範囲である。
【0049】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は水を含む。
【0050】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物は少なくとも1種の有機溶剤を含む。
【0051】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の有機溶剤は、アルコール、ケトン、エーテル、アルキルポリシロキサン、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン、アリール、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される。
【0052】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の有機溶剤は100℃未満の沸点を有する。
【0053】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、湿潤組成物はさらに、接着促進剤、粘度調整剤、増粘剤、表面張力調整剤、表面活性剤、界面活性剤、柔軟剤、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択された少なくとも1種の薬剤を含み、任意選択的に水をさらに含んでもよい。
【0054】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の薬剤の濃度は、湿潤組成物の総重量の0.01重量パーセントから75重量パーセントまでの範囲である。
【0055】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、接着促進剤は、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される。
【0056】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1種の薬剤は、クレイ、多糖類、ポリオール、シロキサン、ポリアルキルシロキサン、メラミン、過酸化物、エポキシド、イソシアネート、およびフタレートから構成される群から選択される。
【0057】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、方法はさらに、液体インク組成物を塗布した後、表面の前記湿潤部を、少なくとも1種の有機溶剤および少なくとも1種の接着促進剤を含むことが好ましい湿潤組成物に再接触させることを含む。
【0058】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、方法はさらに、接触の前、かつ/または液体インク組成物を塗布した後に、表面の前記湿潤部を、本書で述べる少なくとも1種の接着促進剤に接触させることを含む。
【0059】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面は織布、プラスチック、金属、木材、および石から構成される群から選択される。
【0060】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される。
【0061】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、表面は上述した織布、および好ましくは木綿から作られた衣類である。
【0062】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、表面と化学的に相互作用することのできる薬剤、および化学的相互作用を促進するための触媒を含む。
【0063】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、湿潤組成物は化学的相互作用を促進するための触媒を含む。
【0064】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および触媒を含み、湿潤組成物は表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、それによって触媒は化学的相互作用を促進する。
【0065】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、化学的相互作用は、表面内に存在する少なくとも1つの官能基との相互作用を含む。
【0066】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つの官能基は、アミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、およびチオールから構成される群から選択される。
【0067】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、基材の表面と化学的に相互作用することのできる薬剤は架橋剤である。
【0068】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、架橋剤は、アルデヒド系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エステル系架橋剤、アミド系架橋剤、およびビニル系架橋剤から構成される群から選択される。
【0069】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、アルデヒド系架橋剤は変性メラミンホルムアルデヒドである。
【0070】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、触媒は酸である。
【0071】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、酸はジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リン酸アルキルおよびリン酸アリールから構成される群から選択される。
【0072】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、ポリオールはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエーテル、ポリエステルアクリレート、アクリルポリオール、ウレタンアクリルポリオール、ポリエステルウレタントリオール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルアクリレート、および酸化ヒマシ油から構成される群から選択される。
【0073】
本発明の別の態様では、本書で上述した方法によって準備された基材の表面に印刷された画像を有する基材を提供する。画像は高い鮮明度、高解像度、および/または色にじみの無いことを特徴とし、かつさらに高い鮮明度、高解像度、色にじみの無いこと、高い耐久性、化学的堅牢性、および/または洗濯堅牢性を特徴とすることができる。
【0074】
本発明の別の態様では、上述したように、画像を印刷するための表面を準備するためのプレ印刷システムであって、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を表面の少なくとも一部分に塗布するための少なくとも1つの液体アプリケータを含むプレ印刷システムを提供する。
【0075】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つの液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える。
【0076】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、プレ印刷システムはさらに、少なくとも1つの液体アプリケータを制御して湿潤組成物を表面の選択された部分に塗布するように動作する少なくとも1つの制御装置を備える。
【0077】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、プレ印刷システムはさらに、湿潤組成物が液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して液体アプリケータを露出させて湿潤組成物を表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴を備える。
【0078】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、薄め液は湿潤組成物を含む。
【0079】
本発明のさらに別の態様では、上述したように表面上に画像を印刷するための印刷システムを提供する。本発明のこの態様に係るシステムは、表面の少なくとも一部分に画像を形成するように動作する少なくとも1つのインクアプリケータを含む少なくとも1つの印刷装置と、画像を形成する前に、本書で上述したように湿潤組成物を表面の前記部分の少なくとも一部に塗布するように動作する少なくとも1つの液体アプリケータを含む少なくとも1つの湿潤装置とを備える。
【0080】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つのインクアプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルから構成される群から選択される。
【0081】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、少なくとも1つの液体アプリケータを制御して湿潤組成物を表面の選択された部分に塗布するように動作する、少なくとも1つの制御装置を備える。
【0082】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える。
【0083】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、湿潤組成物が液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して液体アプリケータを露出させて湿潤組成物を表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴を備える。
【0084】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、画像を硬化させるように構成された硬化ユニットを備える。
【0085】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは赤外線システムを備える。
【0086】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える。
【0087】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、表面の少なくとも一部分にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットを備える。
【0088】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、剛性フレームと、フレームに取り付けられた線形運動X軸と、印刷可能な媒体を支持するように動作し、線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、テーブルアセンブリの上で線形X軸に対し直角にフレームに取り付けられたブリッジと、印刷テーブルアセンブリの上で線形X軸に対し直角にフレームに取り付けられた線形運動Y軸ステージとを備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータはブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータはX軸ステージに対し直角に線形運動をするように線形Y軸ステージに取り付けられている。
【0089】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、印刷システムはさらに、剛性フレームと、フレームに取り付けられた第1線形運動X軸ステージと、第1X軸ステージと平行にフレームに取り付けられ、第1X軸ステージとは独立して動作するように構成された第2線形運動X軸ステージと、印刷可能な媒体を支持するように動作し、各線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの上で線形X軸に対し直角にフレームに取り付けられたブリッジと、少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の上で、線形X軸ステージに直角にフレーム上に取り付けられた線形運動Y軸ステージとを備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータは第1および第2X軸の各々の上でブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータは第1および第2X軸ステージに対し直角に線形運動をするように線形Y軸ステージに取り付けられている。
【0090】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々は、媒体保持プレートと、印刷可能な媒体をプレートに確実に当てて保持するために媒体保持プレートに枢着された開閉可能なカバーとを備える。
【0091】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、媒体保持プレートは隆起部分を含み、カバーは隆起部分と同じ形状でそれより少し大きい窓を含む。
【0092】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、線形運動X軸ステージはリニアモータ駆動ステージである。
【0093】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、線形運動Y軸ステージはリニアモータ駆動ステージである。
【0094】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の少なくとも一部分は真空テーブルである。
【0095】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムはさらに、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ印刷テーブルアセンブリ上に装着された印刷可能な媒体の表面に形成された画像を硬化するように構成された、硬化ユニットを備える。
【0096】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは赤外線システムを備える。
【0097】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える。
【0098】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴によると、システムはさらに、少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ印刷テーブルアセンブリ上の印刷可能な媒体にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットを備える。
【0099】
本発明は、生じた画像の解像度の低下およびぼやけを一般的に導く、インクと表面の結合部位との係合のような限界を回避した、高解像高精細の写真写実的な画像を様々な吸収性表面に印刷するための新規かつ効率的な方法を提供することによって、現在周知の構成の欠点に首尾よく対処している。
【0100】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0101】
本発明の方法およびシステムの実現は、選択されたタスクまたはステップを手動的に、自動的に、またはそれらの組合せにより、実行または完遂することを含む。さらに、本発明の方法およびシステムの好適な実施形態の実際の計装および設備によって、幾つかの選択されたステップはハードウェアによって、またはいずれかのファームウェアのいずれかのオペレーティングシステム上のソフトウェアによって、またはそれらの組合せによって、実現することができる。例えば、ハードウェアとしては、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとしては、本発明の選択されたステップは、いずれかの適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実現することができる。いずれの場合も、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームのようなデータプロセッサによって実行されると記述することができる。
【0102】
本明細書中で使用される用語「含む(“comprising”)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(“consisting of”)」および用語「から本質的になる(“consisting essentially of”)」を包含する。
【0103】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0104】
用語「方法またはプロセス(“method”または“process”)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0105】
本明細書中で使用される場合、単数形態(“a”、“an”および“the”)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0106】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0107】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0108】
図面の説明
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略斜視図を提示する。
図2A、2B、および2Cは本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムのそれぞれ簡易側面図、正面図、および平面図を提示する
図3は本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略側面図を提示する。
図4は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤システムの略図を提示する。
図5は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤用の1組のソレノイド弁および噴射ノズルの略斜視図を提示する。
図6は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、ブリッジ上に取り付けられた二つの湿潤バッテリの略斜視図を提示する。
図7は図2A、2B、および2Cに提示された印刷システムの一部であり、図4に提示された湿潤システムを備えた、本発明の好適な実施形態に係るプレ印刷システムの簡易斜視図を提示する。
図8は本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を備えた1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
図9Aおよび9Bは本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を装備した1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
図10は本発明の好適な実施形態に従って印刷プロセスが開始する前に衣類が手動で装着される衣類装着アセンブリの好適な実施形態の簡易斜視図を提示する。
図11は装着された衣類が開位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
図12は装着された衣類が閉位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
図13は本発明の好適な実施形態に係るインクジェット印刷ヘッドアセンブリの簡易略図を提示する。
図14A、14B、14C、および14Dは図14A、14B、14C、および14Dを全部まとめて、高解像度画像を達成するために画像の領域全体を網羅するのに必要な、印刷アセンブリの4回の別個のパスを示す、本発明の好適な実施形態に係るインク塗布方法の幾つかの段階の簡易略図である。
図15は印刷前に衣類に対し湿潤組成物を使用する本発明の印刷方法の1つの模範的な段階的使用の簡易フローチャートを提示する。
図16Aおよび16Bはインクジェット印刷機を用いて画像が直接印刷された綿100%の衣類の前面(図16A)および裏面(図16B)を提示する写真である。
図17Aおよび17Bは本発明に従って衣類の表面に湿潤組成物を接触させた後、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面(図17A)および裏面(図17B)を提示する写真である。
図18Aおよび18Bは画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図18B)およびしない場合(図18A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面の写真を提示する。
図19Aおよび19Bは画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図19B)およびしない場合(図19A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の裏面の写真を提示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0109】
本発明は、限定されないが織布および衣類のような吸収性表面に多色画像を印刷するのに特に有利な、表面に画像を印刷するための新規の方法および装置である。
【0110】
本発明に係る方法および装置の原理および動作は、関連説明および実施例を参照することにより、いっそうよく理解することができる。
【0111】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用を以下の説明に記載するかまたは実施例で例示する詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であるか、あるいは様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で使用する語法および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定とみなすべきではないことを理解されたい。
【0112】
上で詳述したように、現代の織物およびデザイナーファッション業界の要求に応えるには、高解像高精細の多色および写真写実的な画像を織布および衣類に生成することのできるプロセスおよびツールが必要である。現在周知であり使用されている織物印刷技術は全て、画像品質、画像の持続性、および手触り感から産業規模の所要コストおよび時間に及ぶ、それらを不利にする1つ以上の限界を伴う。
【0113】
一般的に、織物に印刷する従来の方法は、インクの形の着色剤を繊維性材料の表面に結合させることを含む。しかし、そのような方法を含むプロセスは、(i)プロセスが、各色に対し重ね合わせることが難しい複数回のパスを必要とする型の使用を含むため、(ii)布地の吸収性が布地へのインク液滴の吸収およびにじみを導き、したがって解像度および明度を低減させため、かつ/または(iii)デカルによって布地に転写された画像の不快な手触り感のため、高解像で多色の写真写実的な画像を生成することができない。さらに、これらのプロセスの一部は、使用できる特定の種類の織物表面および着色剤に限定される。織物上の印刷に関連する一般的な限界に対する幾つかのそれでもなお制限された解決策として、時間および費用のかかる布地の前処理、および染料昇華印刷の高価で低速のプロセスの使用が挙げられる。それにもかかわらず、多くの手順は結局、不満足な結果に終わっている。
【0114】
繊維性材料または多孔性材料から作られたもののような吸収性表面に液体インクを塗布するプロセスにおける主要な限界の1つは、インクが塗布された後、インクが完全に硬化して布地に固定される前の、液体インクと材料の相互作用に由来する。当業者には周知の通り、インク液滴は表面と接触するとすぐに吸収性材料に吸収され、カラードットはフェザリングし(にじみ)、不規則に拡散し、したがって意図された領域より大きい領域に及び、したがってくすんだ色および低い精細度のぼやけた画像を生じる。したがって対象表面の材料へのインクの吸収度に依存するが、(例えばインクの布地の表面に噴射することによって得られる)吸収性表面上の高解像度および高精細度の多色画像を達成するために、塗布されたインク液滴は、布地と接触し始めた後、それが完全に硬化するまで、緊密で対称なドットを維持することが非常に望まれることはよく認識されている。
【0115】
現在周知の印刷技術はまた、他の吸収性表面のみならず、高い表面張力および光沢仕上げによって特徴付けられる表面と同様に適用されるときにも制限される。後者の型の表面では、インク液滴は、印刷プロセスに不利な物理的相互作用のため、膨張し過剰拡散し、したがって印刷画像の解像度の低下を導く傾向がある。
【0116】
織布のような吸収性表面および本書で上述したような問題のある表面における印刷に関連する限界に対する包括的かつ効率的な解決策を探し求めて、本発明の発明者らは、表面の物理的、化学的、および/または機械的特性を一時的に変えることによって、印刷画像の品質を向上できると予想した。したがって、本発明を考案しながら、そのような変更は、インクと表面の結合部位との係合が低減されるように、表面のこれらの性質を一時的に変える薬剤を表面に接触させることによって達成することができると仮定した。さらに、そのような薬剤は簡単に入手できる有機組成物から構成することができると仮定し、したがって、さらに、そのような方法は結果的に、改善された画質に加えて、費用効率が良いプロセスおよび不快な感触のような不利な特性を持たない印刷表面をもたらすと予想した。
【0117】
後述する実施例の部分で実証するように、本発明を実施しながら、本発明の発明者らは、驚くべきことに、そのような方法を利用することにより、実際に著しく改善された品質の印刷画像が得られることを発見した。さらに詳しくは、インクを塗布する前に織物表面を種々の湿潤組成物に接触させることにより、織布の表面のインクに対する吸収性が一時的に低下するので、インクのドットが、完全にインクが塗布されて表面上で硬化するまでフェザリングまたはにじみを生じず、それによってくっきりした高精細度の鮮明な画像がもたらされることが明らかになった。
【0118】
したがって、本発明の1態様では、表面に画像を印刷する方法を提供する。この方法は、表面の少なくとも一部分を湿潤組成物で湿潤させ、かつそこに画像を形成するように表面の湿潤部に液体インク組成物を塗布することによって達成される。
【0119】
上述の通り、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物が選択される。そのような妨げは、例えば表面の細孔を充填し、あるいははぐれ繊維のような摂動する物体を平坦化することにより、例えばインク組成物と表面との間の接触面積を低減することによって、例えば表面の機械的特性を一時的に変性させること、例えば表面とインク組成物との間に形成される表面張力を低減することにより、表面の物理的性質を一時的に変性させること、および例えば表面の官能基と相互作用し、マスキングし、または表面の官能基の電荷を反転させることにより、例えば表面の結合部位と係合することによって、表面の化学的性質を一時的に変性させることを含む。本書で使用される語句「結合部位」とは、インク組成物と化学的、機械的、または物理的に相互作用することのできる表面の任意の部位を表わす。これらは例えば、インク組成物中に存在する相溶性官能基と化学的に結合することのできる表面の官能基、インク組成物中に存在する相溶性官能基と疎水性または親水性相互作用を形成することのできる表面の官能基、表面におけるインク組成物の均等な塗布を妨げ得るはぐれ繊維のような摂動物体の平坦化、液体インク組成物の吸収を熱力学的に促進することのできる表面の乾燥領域、および表面張力が高すぎるかあるいは低すぎるため、表面上のインク液滴の表面積の最小化または最大化を促進する表面の領域を含む。
【0120】
液体インク組成物の塗布は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、印刷ブロック(型)技術、染料昇華技術等を含め、それらに限らず、当業界で周知の印刷技術のいずれかによって達成することができる。
【0121】
本書で使用する場合、語句「表面の少なくとも一部分」とは、表面の1つ以上の領域を表わし、また表面全体をも含む。好ましくは、湿潤組成物と接触する表面の部分は、インクが後で塗布される領域、すなわち印刷画像によって覆われる全領域を含む。領域は連続していても、不連続であってもよい。
【0122】
本節の以下の部分で、用語「表面」とは、上述した表面の特定の部分を含め、表面の任意の領域を表わすのに使用される。
【0123】
印刷方法は、画像の形成後に、画像の硬化をさらに含むことができる。硬化は、例えば赤外線コンベアもしくはフィラメントコイルのような熱源、または例えば温風吹付け機のようなドライエア源から生じる熱および/またはドライエアによって達成することができる。
【0124】
本発明の方法による表面の湿潤組成物との接触は、噴射、噴出、塗付け、展着、はけ塗り、浸し塗り、滴下、含浸、注入、凝縮、分散、拡散、消散、溶解、溶融、またはこれらの湿潤方法の幾つかの組合せを含め、それらに限らず、液体を物体に塗布するためのいずれかの方法または技術によって達成することができる。代替的に、表面の湿潤組成物との接触は、例えば気化液を表面上に凝縮させるか、あるいは固化液を表面上に溶解させることにより、組成物を物体上で液体の形に変換することによって達成することができる。特定の湿潤組成物の物理的特性に適合するように、かつ所与の印刷機および印刷技術に適合するように、適切な方法が選択される。
【0125】
本発明の好適な実施形態によると、表面の湿潤組成物との接触は、液体アプリケータによって湿潤組成物を表面の所望の部分に噴射、噴出、または滴下することによって達成される。これらの方法は、制御された自動的インライン湿潤手順に最も適しており、したがって多くの機械化された印刷技術の一部として容易に実現することができる。
【0126】
表面の湿潤組成物との接触はさらに、プロセスのその後の段階で画像が印刷される表面の特定の予め定められた領域だけが湿潤組成物と接触するように、湿潤組成物によって湿潤される表面の領域を予め決定することによって制御することができる。湿潤される領域の事前決定は、材料つまり湿潤組成物およびインク組成物の正確な定量化、および各印刷工程つまり湿潤工程、インク塗布工程、および硬化工程の正確なタイミングに依存する、印刷プロセス全体の最適化を可能にする。表面の領域の事前決定は、コンピュータ化アルゴリズムによって容易に達成することができる。
【0127】
したがって、本発明の好適な実施形態によると、湿潤組成物と接触する表面の部分はデジタル処理で事前に決定される。
【0128】
表面に充分な量の湿潤組成物を塗布することは、湿潤プロセスの実効性および結果的に得られる画像の品質にとって不可欠である。上述した接触中に表面に塗布される湿潤組成物の量は、液体アプリケータ機構によって制御することができる。適切な量は、湿潤組成物による表面の均等かつ適切な被覆を確実にし、かつインクと表面材料の結合部位との係合に関して表面の物理的特性の効率的な変性をさらに確実にする量であろう。それでも、過剰量の湿潤組成物の塗布はその肥厚層を形成することがあり、それはインクと表面の相互作用を最小化し、したがって結果的に得られる画像の耐久性に悪影響を及ぼすことがある。
【0129】
表面の湿潤組成物との接触は、湿潤組成物の濃度が表面1cm2当たり約0.01グラムから表面1cm2当たり約2グラムまでの範囲、さらに好ましくは表面1cm2当たり約0.05グラムから表面1cm2当たり約1グラムまでの範囲、さらに好ましくは表面1cm2当たり約0.1グラムから表面1cm2当たり約1グラムまでの範囲、さらに好ましくは表面1cm2当たり約0.2グラムから表面1cm2当たり約0.6グラムまでの範囲である表面の湿潤部が得られるように、実行されることが好ましい。
【0130】
本書で使用する場合、用語「約」とは±10%を指す。
【0131】
上述の通り、本発明を実施しながら、本発明の発明者らは、様々なインク組成物と様々に組み合わせた様々な湿潤組成物の効果を研究した。得られた結果は、インク組成物の表面張力に対する湿潤組成物の表面張力の影響の可能性を示唆した。したがって、特定の理論に縛られることなく、表面を湿潤組成物と接触させると、結果的に得られる湿潤表面は、その表面張力が低減することにより、インクに対する吸収性が一時的に低下すると推測される。さらに詳しくは、インク組成物と表面の係合の阻害は、表面の表面張力の低下によって少なくとも部分的に影響されると推測される。したがって、一般的に低い表面張力、特に液体インク組成物に対して低い表面張力を特徴とする湿潤組成物は、織布のような吸収性表面へのインクの吸収を阻害することができると推測される。したがって、本発明に係る好適な湿潤組成物は、所与の液体インク組成物と湿潤組成物との間の要求される表面張力の差を示すものであると推測される。
【0132】
本書で使用する場合、語句「表面張力」とは、液体間の界面に顕現する各液体の分子の分子引力の差に由来する、2つの流体が接触したときに表われる現象を指す。表面張力は、液体の表面で分子が経験する不均衡な力の結果である。表面張力の結果、1滴の液体は球を形成しようとする。なぜなら球形は、一定の体積に対して最小限の面積をもたらすからである。表面張力が高ければ高いほど、球は緊密になり、その逆に、表面張力が低ければ低いほど、液体が球形の液滴を形成する傾向は低くなる。表面張力の低い物質は、膜を形成する傾向を持つ。例えば、水性液体と液体炭化水素との間の接着力は、水性液体中の水分子間の凝集力に比較して非常に小さい。その結果、水はワックスには接着せず、最小可能な表面積を持つ球状ビーズまたは液滴を形成する傾向があり、それにより水分子間の凝集力は最大になる。表面張力を測定する1つの方法は、毛細管を用いるものである。密度dの液体が内径rの管内で高さhに隆起する場合、表面張力はrhdg/2に等しい。結果は、rおよびhがセンチメートル単位、dが1立方センチメートル(cm3)当たりのグラム単位、gが1秒2乗(sec2)当たりのセンチメートル単位である場合、1センチメートル当たりのダイン単位となる。
【0133】
したがって、本発明の好適な実施形態によると、湿潤組成物は比較的低い表面張力を特徴とする。
【0134】
湿潤組成物の表面張力は50ダイン/cmより低いことが好ましい。湿潤組成物の表面張力は約35ダイン/cmから約15ダイン/cmまでの範囲であることがさらに好ましい。湿潤組成物の表面張力は約25ダイン/cmから約10ダイン/cmまでの範囲であることがより好ましい。
【0135】
本発明の別の好適な実施形態によると、湿潤組成物および液体インク組成物は、湿潤組成物の表面張力が液体インク組成物の表面張力より低くなるように選択される。湿潤組成物の表面張力は液体インク組成物の表面張力より少なくとも2ダイン/cmだけ低いことが好ましく、少なくとも3ダイン/cmだけ低いことがより好ましく、少なくとも5ダイン/cmだけ低いことがより好ましく、少なくとも10ダイン/cm低いことがよりいっそう好ましい。
【0136】
本発明の好適な実施形態によると、湿潤組成物は1種以上の有機溶剤を含む。
【0137】
上述の通り、湿潤組成物は、表面へのインクの塗布中に、表面の他の特性に影響を及ぼさずに、表面の機械的、物理的、および化学的特性を一時的に変性させることを目的とするので、印刷プロセスが完了した後、湿潤組成物の少なくとも大部分を表面から除去できることが非常に望ましい。これらの条件下で物質を除去する最も簡単な経路の1つは、蒸発によるものである。したがって、好適な有機溶剤は揮発性とみなされる。
【0138】
本書で使用する場合、用語「揮発性」とは、比較的低い沸点および/または高い蒸発速度を特徴とする物質または組成物を指す。
【0139】
当業界でよく受け入れられている通り、100℃未満の沸点は比較的低い沸点とみなされる。したがって、本発明の好適な実施形態によると、有機溶剤は100℃より低い沸点を有する。そのような有機溶剤は、印刷プロセスが完了した後、例えば表面への熱の塗布または送風を含む上述した硬化プロセス中に、容易に除去することができる。
【0140】
本発明のこの実施形態に係る好適な有機溶剤はさらに、0.1より高く、好ましくは0.2より高く、一般的には0.1から5の間の範囲の蒸発速度を特徴とする。当業界で周知の通り、物質の蒸発速度の値は、任意に1と設定された酢酸ブチルの蒸発速度を基準にして決定される。
【0141】
上述の通り、揮発性および低い表面張力のような特性は湿潤組成物の有益な効果を改善すると考えられるので、好適な有機溶剤はそのような特性を示すものである。そのような有機溶剤の代表例として、本書で集合的に炭化水素と呼ばれる、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケンおよびアリール、ならびにアルコール、ケトン、エーテル、アルキルポリシロキサン、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0142】
本明細書で使用する場合、用語「アルコール」は、1つ以上のヒドロキシル基を持つ化学物質を表わす。用語「ヒドロキシル」とは‐OH基を指す。アルコールはR‐OHによって表わすことができ、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール等である。これらの用語は以下で定義する通りである。しかし、この用語はさらに、2つ以上のヒドロキシル基を持つ基を包含する。そのような物質を本書ではポリオールとも呼ぶ。
【0143】
本発明の文脈で使用するのに適したアルコールの非限定的な例として、メタノール、エタノール、プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、およびペンタノールが挙げられる。現在最も好適なアルコールはエタノール、2‐プロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)、および1‐ブタノールである。
【0144】
本発明の文脈で使用するのに適したポリオールの非限定的な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、およびチオグリコールが挙げられる。
【0145】
用語「ケトン」は、1つ以上のカルボニル基を有する化学物質を表わす。本書で使用する場合、用語「カルボニル」は‐C(=O)‐R’を表わし、したがってケトンはR‐(C=O)‐R’で表わすことができ、ここでRは上で定義した通りであり、R’はRに対して定義される通りである。
【0146】
本発明の文脈で使用するのに適したケトンの非限定的な例として、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサナノン、メチルエチルケトン、およびペンタン‐3‐オンが挙げられる。現在最も好適なケトンはシクロヘキサノンである。
【0147】
用語「エーテル」は1つ以上のアルコキシル基を有する化学物質を表わす。用語「アルコキシ」とは‐OR基を指し、ここでRは上述の通りであり、したがってエーテルはR‐O‐R’で表わすことができ、ここでRおよびR’は各々個別に上で定義した通りである。
【0148】
本発明の文脈で使用するのに適したエーテルの非限定的な例として、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピルメチルエーテル、メトキシプロパノール、ジエチルエーテル、1‐メトキシヘキサン、1‐エトキシヘキサン、および1‐プロポキシペンタンが挙げられる。現在最も好適なエーテルは、エチレングリコールブチルエーテルアセテートおよびプロピルメチルエーテルである。
【0149】
語句「アルキルポリシロキサン」は、一般式
を有する高分子化学物質を表わし、ここでnは反復する重合単位の個数を表わす整数であり、RおよびR’は各々個別に上で定義した通りである。nは1から3までの整数であることが好ましい。
【0150】
本発明の文脈で使用するのに適したアルキルポリシロキサンの非限定的な例として、ジメチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、およびニトリロブチルフェニルポリシロキサンが挙げられる。最も好適なアルキルポリシロキサンはジメチルポリシロキサンである。
【0151】
用語「アルカン」または「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を表わす。好ましくは、アルカンは6個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「6個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルカン)が6個の炭素原子、7個の炭素原子、8個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルカンは、6個〜14個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルカンである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルカンは、6個〜10個の炭素原子を有する低紙アルカンである。アルカンは、置換または非置換であり得る。置換されたアルカンは1個またはそれ以上の置換基を有し、それによりそれぞれの置換基は独立して、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。
【0152】
用語「ハリド(ハライド)」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0153】
本発明の文脈で使用するために適したアルカンの非限定的な例は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、tert−ブチルクロリド、イソブチルクロリド、過フルオロヘキサン、過フルオロヘプタンおよび過フルオロオクタンを含む。最も好ましいアルカンは石油エーテル、ヘプタン、オクタンおよび過フルオロヘキサンである。
【0154】
用語「シクロアルカン」または「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルカンは、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。
【0155】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。アリールの代表的な例は、ベンゼン、ナフタレン、ジクロロベンゼン、キシレン、シメンおよび1−クロロ−4−メチルベンゼンである。
【0156】
用語「複素脂環」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環は、置換されているか、またはハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であり得る。複素脂環の代表的な例はピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ及びその類似物である。
【0157】
用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハリド、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびその類似物であることができる。ヘテロアリールの代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0158】
本発明に係る現在最も好適な湿潤組成物として、上述した1種以上のアルコールおよび炭化水素が挙げられる。
【0159】
湿潤組成物は、有機溶剤に加えて、またはそれに代わって、水を含むことができる。
【0160】
本発明に係る湿潤組成物は任意選択的に、インク組成物と表面の相互作用をさらに変化させることのできる1種以上の薬剤をさらに含むことができる。
【0161】
これらの薬剤は、例えば1種以上の接着促進剤を含む。当業界で周知の通り、接着促進剤は一般的に、熱の働き、酸化、乾燥、および他の化学的および物理的状態によりコポリマーまたは架橋剤と反応することのできる反応性官能基を含む、1つ以上の実質的に飽和した、主にまたは実質的に炭化水素のオリゴマーまたはポリマーから構成される。架橋することによって、接着促進剤は一般的に接着膜を形成する。
【0162】
本発明の湿潤組成物への接着促進剤の添加は、硬化手順後に液体インク組成物の着色剤を安定化することによって、結果的に得られる画像の特性に有利に影響し、かくして印刷画像の洗濯堅牢性を改善する。接着促進剤の添加は任意選択的に、湿潤組成物とインク組成物との間の表面張力関係をも改善することができる。
【0163】
本発明の文脈で使用するのに適した接着促進剤の非限定的な例として、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョンおよび樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの組合せのような様々なポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0164】
本発明の湿潤に有利に組み込むことのできる追加の薬剤は、例えば粘度調整剤、増粘剤、表面張力調整剤、表面活性剤、界面活性剤、柔軟剤、およびそれらの組合せのうちの1つ以上を含む。そのような薬剤を湿潤組成物に添加することにより、湿潤組成物の効果を改善することができ、さらに、選択された湿潤組成物に所望の性質をもたらすことができる。かくして、例えば表面張力調整剤の添加は、添加する薬剤によって改善される中程度の表面張力特性を持つ有機溶剤を含む湿潤組成物を使用することを可能にする。粘度調整剤の添加は、添加される薬剤などによって低減される高い粘性を持つ有機溶剤を含む湿潤組成物を使用することを可能にする。
【0165】
本発明の湿潤組成物に有利に添加することのできる薬剤の代表例として、クレイ、多糖類、プロピレングリコールおよびグリセリンのようなポリオール、変性シロキサンおよびポリアルキルシロキサン、メラミンのようなアルデヒド系液体樹脂、尿素ホルムアルデヒド、フタレート、イソシアネート、ヒドロキシル、カルボキシル、またはアミド官能基および触媒を有するポリマーおよびオリゴマー、ならびに過酸化物、エポキシド、イソシアネート、およびアクリレートのような熱的活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0166】
上述した薬剤は有機溶剤自体を含む湿潤組成物に組み込むことができるので、湿潤組成物の最終形態は例えば、これらの薬剤を含む混合物、溶液、エマルジョン、または懸濁液とすることができるか、あるいは、これらの薬剤は、結果的に得られる湿潤組成物が水を含むように、水溶液、懸濁液、またはエマルジョンとして組み込むことができる。
【0167】
上述した薬剤は、湿潤組成物の一部として(一般的に、上述した1種以上の有機溶剤、これらの薬剤のうちの1種以上、および任意選択的に水を含む混合物、懸濁液、またはエマルジョンとして)、表面を組成物と接触させる中で、表面に塗布することができる。代替的に、これらの薬剤は、表面の湿潤組成物との接触前または後に表面に塗布することができる。さらに代替的に、1種以上の有機溶剤を含む湿潤組成物は、接触手順中に表面に塗布することができ、1種以上の有機溶剤およびこれらの薬剤の1種以上の混合物(例えばエマルジョン)を含む湿潤組成物は、接触手順の前または後に塗布される。
【0168】
代替的に、または上記に加えて、インク組成物を塗布した後に、追加薬剤をそれ自体としてまたは湿潤組成物の一部として画像上に塗布することができる。これらの手順は、上述した通り、画像の磨耗およびその精細度の損失を防止することが目的である。
【0169】
本発明に従って湿潤組成物に添加されるこれらの薬剤の濃度は、好ましくは湿潤組成物の総重量の約0.01重量%から約75重量%の範囲であり、より好ましくは湿潤組成物の総重量の約0.5重量%から約15重量%の範囲であり、より好ましくは湿潤組成物の総重量の約1重量%から約5重量%の範囲である。
【0170】
したがって、好適な実施形態では、本発明による例示的湿潤組成物は95重量%のエタノールおよび5重量%のアクリルエマルジョン(約50%が固体)を含み、方法はインク組成物の塗布前または後にそのような組成物の塗布を含む。インクの塗布前にこの湿潤組成物を塗布することで、インクと表面の係合が妨げられ、その後にこの湿潤組成物を塗布することで、印刷画像の色域、精細度、明度、および洗濯堅牢性が改善される。
【0171】
本発明に係る印刷方法は、当業界で周知の印刷技術に一般的に使用される多種多様な液体インク組成物を用いて適用することができ、したがって水性インク組成物および非水性溶剤系インク組成物を用いて適用することができる。
【0172】
水性インク組成物は一般的に、主要担体または溶媒としての脱イオン蒸留水、ならびに他の担体および例えばcymel323(サイテック・インダストリーズ)のようなコーティング剤を含有する。
【0173】
非水性溶剤系液体インク組成物は一般的に、主要担体または溶媒として有機組成物を含有する。非水性溶剤系液体インク組成物の非限定的な例は、担体または溶媒として、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)、シクロヘキサン、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)、および/またはジエチレングリコールを含む。
【0174】
非水性溶剤系液体インク組成物は、高い揮発性および一般的に中程度の範囲の表面張力のような化学的および物理的特性を示す。これらの物理的特性要件から、非水性溶剤系液体インク組成物は上述した好適な湿潤組成物との相溶性がより高く、したがってそのようなインク組成物を使用すると、全体的により高品質の画像をもたらすことができる。
【0175】
したがって、本発明の好適な実施形態では、液体インク組成物は非水性溶剤系インク組成物である。
【0176】
現在最も好適な液体インク組成物は、担体としてエチレングリコールブチルエーテルアセテートを含む。
【0177】
本書に記載した方法で使用される液体インク組成物は、結果的に得られる画像の耐久性のような特性を改善することを目的とし、かつ/または上で詳述したように湿潤組成物との相互作用に有利に影響する特性(例えば表面張力および/または粘度の向上または低減)をインク組成物にもたらす、例えば上述した接着促進剤のような1種以上の薬剤を含むことができる。
【0178】
本発明のこの実施形態では、液体インク組成物中のそのような薬剤の濃度は、好ましくは液体インク組成物の総重量の約0.01重量%から約75重量%の範囲であり、より好ましくは液体インク組成物の総重量の約0.1重量%から約50重量%の範囲であり、より好ましくは液体インク組成物の総重量の約0.1重量%から約10重量%の範囲である。
【0179】
したがって、上述した薬剤は本発明に従って、湿潤組成物およびインク組成物のいずれか一方または両方に添加することができる。さらに、これらの薬剤は、液体インク組成物の塗布後、硬化工程の前または後のいずれかに、画像の領域に塗布することができる。例えば硬化前の印刷画像への接着促進剤の塗布は、着色剤の洗濯堅牢性を向上し、かつ印刷画像の機械的および化学的保護をもたらすために、実行することができる。
【0180】
本発明の文脈で有利に使用することのできる好適なインク組成物は、本願と同時に出願し、両方とも本願と同一発明者および同一譲受人のイスラエル特許出願第163459号および「an ink composition」と称するPCT国際特許出願に開示されており、それらを、あたかも本書に完全に記載されているかのように、参照によって援用する。これらの出願に教示されているインク組成物は、様々な表面に、特に吸収性表面にカラー画像を印刷するのに適しており、さらにインクジェット印刷方法に適している。様々な印刷方法でこのインク組成物を使用することで、洗濯堅牢性、化学的に頑健、かつ耐物理的磨耗性であり耐久性の高い印刷画像が得られる。イスラエル特許出願第163459号および上記のPCT国際特許出願に教示されたインク組成物は、上述し、本書で相互に置換可能に溶剤、着色剤、ポリオール、基材内に存在する官能基と化学的に相互作用することのできる薬剤、および化学反応を触媒するための触媒とも呼ばれる担体を含み、任意選択的に、仕上げられた印刷画像における様々なインク特性および様々な結果の化学的相互作用および配合を変化させるための様々な添加物をさらに含むことができる。
【0181】
用語「着色剤」は、本明細書で使用する場合、印刷画像に所望の色を与える物質を表わす。着色剤は顔料、レーキ、または染料とすることができる。顔料は一般的にインク組成物の担体中で懸濁する固体着色剤であり、染料はインク組成物の担体中に溶解する液体着色剤である。
【0182】
印刷画像に所望の色を付与する以外に、着色剤は、化学的および物理的特性の点から適切に選択される。したがって、例えば、本発明の好適な実施形態では、着色剤は熱硬化性着色剤である。
【0183】
本発明のこの実施形態に使用するのに適した例示的染料着色剤として、市販されているオラゾールブラックRLI、オラゾールレッドGおよびCUフタロシアニンのようなアゾ‐クロム錯体、ならびに同様のアゾ‐コバルト錯体があるが、それらに限定されない。本発明のこの文脈で使用するのに適した例示的顔料着色剤として、キナクリドン、ベンゾイミダゾロン、カーボンブラック、フタロシアニン、ジアリーリド、アゾ、酸化チタン、および炭酸カルシウムがあるが、それらに限定されない。例示的な市販の顔料としてPermajet、Renol、およびMicrolithなどがある。
【0184】
好ましくは、本発明のこの実施形態に係るインク組成物中の着色剤含有量は、インク組成物の総重量の約0.2%から約40%の範囲である。より好ましくは、着色剤含有量はインク組成物の総重量の1から10重量%の範囲である。
【0185】
上述の通り、形成される画像の耐久性を向上する、この実施形態に係るインク組成物の成分は、基材と化学的に相互作用することのできる薬剤である。好ましくは、そのような薬剤は基材内に存在する官能基と相互作用し、より好ましくは、官能基はその表面に存在する。
【0186】
本明細書で使用する場合、語句「化学的相互作用」とは、2つ以上の物質の間で生じ、一般的に結合の形成を導く化学反応を表わす。本発明の場合、結合は共有結合、イオン結合、水素結合等とすることができ、したがって、化学的相互作用は例えば求核および求電子置換、求核および求電子付加反応、離脱反応、付加環化反応、転位反応、キレート形成、イオン錯体形成、アフィニティペア形成、および他の周知の有機および無機反応とすることができる。
【0187】
本明細書で使用する場合、語句「官能基」とは、一般的に結合形成を導く化学反応を起こすことのできる化学的部分を表わす。結合は、本発明の場合、共有結合、イオン結合、水素結合等とすることができる。本発明のこの実施形態に係る適切な官能基の代表的な例として、アミン、アミド、ハロゲン化物、ヒドロキシル、チオール、シアノ、スルホンアミド、カルボキシル、チオカーバメート、尿素、およびチオ尿素があるが、それらに限定されない。これらの用語については後で定義する通りである。好ましくは、この実施形態に係る官能基は、画像が印刷される基材を構成する物質中に豊富に存在しかつそこでの化学的相互作用に利用可能な官能基である。一般的な基材内に存在するそのような官能基は、一般的にアミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、およびチオールを含むが、それらに限定されない。
【0188】
基材との化学的相互作用によって、この薬剤はインク組成物の付着力を改善し、したがってインク組成物によって形成された画像が洗濯、磨耗、および他の物理的および化学的ストレスに耐えることを確実にする。好ましくは、化学的相互作用は架橋を含み、基材と相互作用することのできる薬剤は架橋剤である。
【0189】
本明細書で使用する場合、用語「架橋」とは、様々な成分間の相互接続リンクの形成を含みかつしたがって相互接続リンクの横方向の形成を導く化学反応を表わす。
【0190】
したがって、本明細書で使用する場合の語句「架橋剤」とは、一般的に結合形成を導く化学的相互作用に利用可能な2つ以上の反応基を有し、これらの反応基が他の化学物質間の架橋を導くような結合に参加する、化学物質を指す。好ましくは、架橋剤は、架橋剤が相互接続リンクの分枝網を形成することを可能にする3つ以上の反応基を有する。
【0191】
本発明のこの実施形態に係る架橋剤の反応基は、基材の表面にある官能基と化学的に適合可能であり、かつ印刷および/または硬化が行なわれる穏やかな条件下で反応性のものでなければならない。例えば表面にアミン基を有する基材の場合、カルボキシル基を持つ架橋剤は、基材とアミド結合を形成することができる。同様に、基材の表面のヒドロキシル基および/またはチオール基は、以下で定義するアミン基、カルボキシル基、ハロゲン化アシル基、アルデヒド基、イソシアネート基、ならびに穏やかな状態および/または穏やかな加熱状態で容易に相互作用する他の多くの官能基を有する架橋剤と結合を形成する。
【0192】
したがって、架橋剤は例えばアルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボキシル系架橋剤、シラン系架橋剤、ハロゲン化アシル架橋剤、過酸化物系架橋剤、エステル系架橋剤、アミド系架橋剤、およびビニル系架橋剤とすることができる。これらの架橋剤は各々、示した官能基の1つ以上を含む。
【0193】
アルデヒド系架橋剤は、穏やかな条件下でのそれらの高い反応プロファイル、および工業規模のそれらの比較的安全な使用のため、多くの業界で最も一般的に使用される架橋剤である。織布に印刷する場合、織布の表面にヒドロキシル基が豊富に存在するため、アルデヒド系架橋剤は特に有利である。
【0194】
しかし、アルデヒド系架橋剤の高い反応性は、それを含有するインク組成物が不安定になることがあり、したがって調製、貯蔵、移送、および利用が難しく、あるいは保存寿命期間が短いので、しばしばそれらの使用を制限する。
【0195】
本明細書中で使用される用語「アミン」は、以下に定義されるように、−NR′R′′基(式中、R′およびR′′はそれぞれ水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、(環の炭素を通して結合された)ヘテロアリール、または(環の炭素を通して結合された)複素脂環である)を示す。
【0196】
用語「アルケニル」および「アルケン」は、少なくとも二つの炭素原子と少なくとも一つの炭素−炭素二重結合からなるアルキル基を示す。
【0197】
本明細書中で使用される用語「アクリルハリド」はR′(C=O)X基(式中、Xは本明細書中に定義されるようなハリドであり、R′は本明細書中に定義される通りである)を示す。
【0198】
本明細書中で使用される用語「アルデヒド」は−C(=O)−H基を示す。
【0199】
本明細書中で使用される用語「アミド」は「C−アミド」と「N−アミド」の両方を示し、ここで「C−アミド」は−C(=O)−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は本明細書中で定義される通りである)を示し、「N−アミド」は−NR′C(=O)−R′′基(式中、R′およびR′′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0200】
本明細書中で使用される用語「カルボキシル」は−C(=O)OR′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0201】
用語「シアノ」は−C=N基を表わす。
【0202】
用語「ヒドロキシル」は−OH基を示す。
【0203】
用語「イソシアネート」は−N=C=O基を表わす。
【0204】
用語「過酸化水素」は−O−O−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0205】
用語「シラン」は−O−Si−(OR′)(OR′′)(OR′′′)基(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0206】
用語「スルホンアミド」は−N−S(=O)2−OR′基(式中、R′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0207】
用語「チオカルバメート」は−O−(C=S)−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0208】
用語「チオール」は−SH基を示す。
【0209】
用語「チオ尿素」は−NR′−C(=S)−NR′′R′′′(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0210】
用語「尿素」は−NR′C(=O)−NR′′R′′′(式中、R′,R′′およびR′′′は本明細書中に定義される通りである)を表わす。
【0211】
例示的種類のアルデヒド系架橋剤として、変性メラミンホルムアルデヒド系架橋剤、尿素ホルムアルデヒド系架橋剤、グリコールウリルホルムアルデヒド系架橋剤、およびベンゾグアナミンホルムアルデヒド系架橋剤があるが、それらに限定されない。
【0212】
例示的変性メラミンホルムアルデヒド系薬剤として、メチル化メラミンホルムアルデヒド、N‐ブチル化メラミンホルムアルデヒド、およびイソブチル化メラミンホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。好ましくは、好適な変性メラミンホルムアルデヒド系薬剤はメチル化メラミンホルムアルデヒドである。
【0213】
例示的尿素ホルムアルデヒド系薬剤として、メチル化尿素ホルムアルデヒド、N‐ブチル化尿素ホルムアルデヒド、およびイソブチル化尿素ホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。例示的グリコールウリルホルムアルデヒド系薬剤として、Nブチル化グリコールウリルホルムアルデヒド、およびメチル化/エチル化グリコールウリルホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。例示的ベンゾグアナミンホルムアルデヒド系薬剤として、N‐ブチル化ベンゾグアナミンホルムアルデヒドおよびメチル化/エチル化ベンゾグアナミンホルムアルデヒドがあるが、それらに限定されない。
【0214】
好ましくは、本発明のこの実施形態に係るインク組成物中の架橋剤含有量は、インク組成物の総重量の約0.4重量%から約55重量%の範囲である。より好ましくは、架橋剤含有量は、インク組成物の総重量の約5重量%から約25重量%の範囲である。
【0215】
インク組成物との係合を低減するように湿潤組成物が相互作用する結合部位の幾つかもまた、基材表面に存在する官能基を含むことができることに注目されたい。しかし、本明細書に記載する湿潤組成物および本発明のこの実施形態に提示するインク組成物の化学特性は完全に異なり、湿潤組成物およびインク組成物と形成される相互作用もそうである。
【0216】
本発明のこの実施形態に係るインク組成物は触媒をさらに含む。
【0217】
本明細書で使用する場合の用語「触媒」とは、基材と化学的に相互作用することのできる薬剤と、基材の官能基との間の化学反応を促進、開始、かつ/または触媒することのできる化学物質を表わす。触媒は、任意選択的に画像の硬化中に与えられる外部の熱と組み合わせて、インク組成物が基材と接触することにより反応を促進、開始、および/または触媒するように選択される。
【0218】
本発明の好適な実施形態に係る好適な触媒は酸触媒であり、より好適な触媒は強酸触媒である。酸触媒は、基材の様々な官能基と例えば上述した様々な架橋剤内の反応基との間の上述した反応の大部分を触媒することができるので、好適である。
【0219】
酸触媒は、インク組成物中に遊離状態でまたはブロック触媒として、すなわち、揮発性塩基性対イオンとの塩形態として、またはインク組成物中に存在する約3重量%の低アミンまたは約15重量%の低アルコールとの錯体として存在することができ、それによってアミンまたはアルコールは揮発性の酸希釈添加剤として働く。上述した塩または錯体は、組成物を基材上に塗布した後に分解し、したがって反応型の触媒が生成される。
【0220】
好ましくは、本実施形態のインク組成物中の触媒含有量は、インク組成物の総重量の約0.01重量%から約15重量%までの範囲である。より好ましくは、触媒含有量は、インク組成物の総重量の約0.1から約10重量%までの範囲である。
【0221】
用語「ポリオール」とは、この用語を以下で定義する通り、2つ以上の遊離ヒドロキシル基を有する化学物質を表わし、例えばジオール、トリオール、テトラオール等を含む。典型的なポリオールは、約50個から約400個のヒドロキシル基を含む物質である。ポリオールの代表的な例として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエステルアクリレート、アクリルポリオール、ウレタンアクリルポリオール、ポリエステルウレタントリオール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルアクリレート、および酸化ヒマシ油があるが、それらに限定されない。
【0222】
本実施形態の文脈で使用するのに適したポリオールの非限定的な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン(グリセロール)、ヘキサントリオール、およびチオグリコールがある。
【0223】
本実施形態のインク組成物中のポリオール含有量は、インク組成物の総重量の約0.1重量%から約50重量%までの範囲である。好ましくは、インク組成物中のポリオール含有量は、インク組成物の総重量の約0.5重量%から約30重量%までの範囲であり、より好ましくは、インク組成物中のポリオール含有量は、インク組成物の総重量の約11重量%から約20重量%までの範囲である。
【0224】
本明細書に記載したインク組成物の各々はさらに、インク組成物の化学的および物理的特性をさらに変えかつ形成される画像の性能を改善することのできる、1つ以上の追加成分を含むことができる。そのような成分の例として、非反応性薬剤、柔軟剤/可塑剤、分散剤、表面活性剤、および導電剤(イオン化可能な材料)があるが、それらに限定されない。
【0225】
上述したインク組成物は、湿潤組成物の塗布後に塗布することによって、本発明の方法で利用することができる。本発明の方法でそのようなインク組成物を利用することで、有益にも、本発明の湿潤組成物の使用に由来する優れた品質、およびそのようなインク組成物の使用に由来する物理的及び化学的耐久性の両方を特徴とする画像が生成される。
【0226】
しかし、本発明の文脈で利用できるインク組成物は、上述の通り、着色剤、担体、ポリオール、および基材と化学的に相互作用することのできる薬剤を含む組成物であり、湿潤組成物は上述の通り化学的相互作用を促進する触媒を含む。
【0227】
代替的に、本発明の文脈で利用できる好適なインク組成物は、上述の通り着色剤、担体、ポリオール、触媒を含む組成物であり、湿潤組成物は上述の通り基材と化学的に相互作用することのできる薬剤を含む。
【0228】
反応成分の1つ(例えば触媒または基材と化学的に相互作用することのできる薬剤)を欠くインク組成物、およびこの成分を含む湿潤組成物を利用することにより、インク組成物中の反応成分間の有害な反応が回避され、インク組成物をより効率的に利用することができる。
【0229】
したがって、本発明の印刷方法は、現在周知の印刷技術と比較して改善された解像度、精細度、および明度を持つ画像を生成し、吸収性表面および他の表面上に多色画像を印刷するのに特に有用である。以下の実施例の部分で実証する通り、画像を形成する前に表面を適切な湿潤組成物に接触させることにより、インクドット相互のフェザリングおよびにじみはかなり低減され、インク液滴は、湿潤表面上に塗布されたときに、くっきりした対称的な液滴の形状を提示し、表面におけるインクのより高い光学濃度が達成され(より高い解像度の画像の印刷が可能)、インクドットは表面の裏側まで浸透しない。湿潤組成物中に揮発性溶剤を使用することで、画像が硬化した後に湿潤組成物の目立つ痕跡が無いことによって示されるとおり、その完全またはほぼ完全な除去が可能である。
【0230】
要約すると、本発明の方法によって生成される画像は、表面への最小化されたインク吸収(例えば厚層化表面の裏側への最小化されたインクの拡散)、高くかつ長持ちする色の鮮明度、高解像度、および高い耐久性によって特徴付けられる。
【0231】
上述した方法は、適切な印刷機を用いて任意の所望の表面上で実行することができる。したがって、表面は平坦面、および曲面または任意の凹凸面のような非平坦面とすることができる。
【0232】
さらに、表面は例えばフィルム、箔、シート、または任意の三次元物体のいずれかの他の面の形とすることができる。
【0233】
上で詳述したように、本発明に係る方法は、画像が印刷される表面が画像品質を低下させる望ましくない特性を持つ場合に、特に有益である。これらの特性として、例えば吸収性およびインクと比較して高い表面張力があり、それはインク組成物のしみ、およびしたがって明度および解像度の低減を導く。
【0234】
したがって、本発明に係る方法は、表面が繊維性材料および多孔性材料のような吸収性材料または高い表面張力を特徴とする材料から作られる場合に、特に有益である。そのような表面の例として、織布、プラスチック、金属、ガラス、木材、および石があるが、それらに限定されない。
【0235】
上述した表面は、同じ材料から作られた対象物の一部を形成するか、あるいは代替的に、例えば紙層、発泡層、織布層、天然または合成ゴム層、セラミックまたはガラス層、樹脂層等、およびそれらの任意の組合せのような1つ以上の追加層を含むことができる。
【0236】
上でさらに詳述したように、本発明に係る方法は、表面が1つ以上の繊維性材料、例えば織布を含む場合に、特に有用である。
【0237】
本発明の文脈で使用するのに適した織物は、例えば織布、編布、およびフェルトのような不織布を含む。
【0238】
本発明に係る織布は、例えばウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せのような、動物、植物、および/または合成源からの布地を含むことができる。
【0239】
本発明の印刷方法は、1つ以上の織布から作られた衣類に非常に適しており、したがって本発明の好適な実施形態の1つは、1着の衣類におけるこの新規の印刷方法の使用である。例示的な衣類は木綿のTシャツである。
【0240】
上で説明しかつ論じたように、本発明の印刷方法およびその新規の原理は、吸収性および光沢のある表面に液体インクを用いて印刷する様々な技術に適している。本発明に対して非常に適合性の高い印刷技術の1例は、対象表面に対して直接印刷するデジタルインクジェット印刷である。
【0241】
したがって、本発明はさらに、比較的単純なシステムで直接基材への正確で高品質高解像度の多色印刷を可能にする、様々な基材用のデジタル印刷システムにも関係する。
【0242】
本発明の好適な実施形態は、繊維性材料、多孔性材料、および他のインク吸収材料、ならびにインク液に対し高い表面張力を有する材料のように、通常は表面の材料にインクのフェザリングを引き起こす材料に印刷するのに有用である。したがって、本発明の好適な実施形態は、衣類業界一般に、かつ特にTシャツ印刷業界向けに提供される。
【0243】
本発明の好適な実施形態は、本発明の湿潤組成物を塗布するための1つ以上のコントローラ操作型液体アプリケータをはじめとする、画像を印刷するための表面を準備するためのプレ印刷システムを備える。この液体アプリケータは一般的に、湿潤組成物を対象表面に塗布するように動作する噴射ノズルの配列を備える。他の型の液体アプリケータとして、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルを挙げることができる。コントローラは、上述の通り湿潤組成物を表面の選択部分に塗布するように、液体アプリケータを操作する。
【0244】
本発明のプレ印刷システムは、スタンドアロン装置とするか、または完全な印刷システムの一部とすることができる。本発明に係るプレ印刷システムの細部については、以下および図(例えば図4参照)で詳述する。
【0245】
したがって、本発明の態様では、印刷可能な媒体にインクを塗布するように動作する少なくとも1つのプリントヘッドを備えた印刷アセンブリを含む上述したプレ印刷システムと、好ましくはマイクロコントローラもしくはプログラム可能論理コントローラ(PLC)を含むコンピュータ、またはパーソナルコンピュータ(PC)またはそれらの任意の組合せを一般的に備えた上記アセンブリの動作を制御するためのコントローラユニットと、を備えた印刷システムを提供する。
【0246】
印刷システムは任意選択的に衣類取扱いアセンブリをさらに含むことができ、かつさらに任意選択的に、インク組成物および/または湿潤組成物を硬化させ、かつ/または湿潤組成物の乾燥を促進するように動作する少なくとも1つの硬化アセンブリとを含むことができる。
【0247】
さらに任意選択的に、印刷システムは、印刷前または湿潤前に衣類にアイロンをかけるように動作する少なくとも1つのアイロンアセンブリを含む。
【0248】
上述した湿潤アセンブリおよび印刷アセンブリは、印刷される表面の選択された領域に液体を塗布することのできる1つ以上のユニットを備えることが好ましい。そのようなユニットは、例えば噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシル等とすることができる。
【0249】
上述した衣類取扱いアセンブリは、正確なX、Y、Z運動システムおよび印刷テーブルを備えることが好ましい。該印刷システムは特に衣類に印刷するのに適しているので、本書では単なる例として衣類印刷に関して記述した。しかし、いずれかの他の適切な基材を代替的に使用することもできることは理解されるであろう。
【0250】
本発明に係るデジタル印刷システムの好適な実施形態は一般的に、制御可能に画像画素を形成することのできる、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル等のような電子制御式湿潤および印刷ユニットを含む。
【0251】
図示しかつ下述する本発明の好適な実施形態は、噴射技術による湿潤およびインクジェット技術による印刷の組合せを含む。本発明は湿潤技術及び印刷技術の全ての可能な組合せに関係することを理解されたい。
【0252】
今、図1を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作する衣類印刷システム10の簡易斜視図である。衣類印刷システム10は、正確な直線運動X軸ステージ12が取り付けられる剛性フレーム11を含む。一実施形態では、X軸ステージ12はリニアモータ駆動ステージであり、従来のリニア(線形)ステージとすることができる。代替的に、X軸ステージ12は、ベルト駆動ステージまたはボールねじ駆動ステージのような、いずれかの他の型のリニアステージとすることができる。印刷テーブルアセンブリ13は、好ましくは高い加速度および走査速度を達成するX軸ステージ12に接続される。
【0253】
X軸方向と直角に、正確な直線運動Y軸ステージ14は印刷テーブルアセンブリ13より上に、好ましくはブリッジ15上に取り付けられる。X軸ステージ12およびY軸ステージ14は当業界では、日本国東京都のTHK株式会社によって市販されているレールのような直線レール、オーストリア国タルスドルフのRSFエレクトロニクGes.m.b.H.によって販売されている直線符号器、およびレールに支持された可動板のようなリニアステージとして知られる。本発明の好適な実施形態では、X軸ステージ12は、高い加速レートおよびスチフネスが可能なリニアモータ駆動ステージ、例えば米国ニューヨーク州シャーリーのロックウェル・オートメーションのAnoradブランドモデルLW10である。高精度および動きの滑らかさは閉ループ制御のおかげである。X軸ステージ12のレールに沿った印刷テーブル13の位置は、直線符号器によって測定され、インクジェットノズルおよび湿潤化ノズルの発射タイミングを決定するためにも使用される。Y軸ステージ14は、X軸ステージ12と同様のリニアモータステージであることが好ましい。
【0254】
好ましくは多数のインクジェットノズルを含むプリントヘッド16は、好ましくはボールねじ駆動ステージである垂直Z軸システム17に接続される。Z軸ステージ17はY軸可動板18に支持され、印刷テーブル13の運動方向と直角の運動が可能である。プリントヘッド配列16と印刷テーブルアセンブリ13上の印刷面との間の間隙は、高品質印刷のための重要なパラメータである。Z軸ステージ17は、様々な媒体の高さの校正のためにプリントヘッド配列16の垂直方向の運動を可能にする。
【0255】
滴下ノズル、液滴噴射器、ドロップオンデマンド型圧電インクジェットノズル、連続圧電インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルのような、いずれかの他のインク塗布装置をプリントヘッド16に使用することができることは理解される。
【0256】
また、該システムは完成した衣類に印刷するのに特に適しているが、代替的に他の印刷可能な媒体を使用することができることも理解される。説明を容易にするために、単なる実施例として、完成した衣類に関連して本発明を説明する。
【0257】
印刷システム10は任意選択的にアイロンユニット19を含み、かつ同じく任意選択的に硬化ユニット20をも含む。印刷テーブルアセンブリ13が下を移動することができるように、アイロンユニット19は、好ましくはX軸ステージ12より上でフレーム11に、好ましくはブリッジに支持される。アイロンユニット19は、下でさらに詳述するように、印刷のために媒体を準備する。硬化ユニット20は、剛性フレーム11上のブリッジ15に支持されることが好ましい。代替的に、硬化ユニット20は、アイロンユニット19と同様に、別個のブリッジ上に装着することができる。本発明の一実施形態では、硬化ユニット20は、印刷が達成されるとき、または印刷パス中にインク担体及び/又は湿潤組成物の少なくとも一部を蒸発させる赤外線加熱コンベヤユニットである。本発明の別の実施形態では、硬化ユニット20は温風送風器である。代替的に、衣類に印刷されるインクの種類に適した、いずれかの他の硬化ユニットを利用することができる。
【0258】
主コンピュータ21、好ましくはマイクロプロセッサが、事前にプログラムされた印刷工程に従って、システム全体を制御し、調整、同期化、および起動のために様々なユニットの各々に結合される。主コンピュータ21は、多数の機能を調整する。それは画像ファイルから画像を受け取り、印刷すべき画像を処理し、硬化ユニットを起動させ、運動システム、アイロンユニット等を制御する。好ましくは、X軸およびY軸ステージの動きは、所望の対象物またはシンボルの正確な印刷を実行することができるように、マイクロプロセッサによって、プリントヘッドコントローラによるノズル発射コマンドと調整される。本発明の好適な実施形態では、コンピュータ21は、後で図4に関連して示し説明するプログラマブル論理制御装置(PLC)により補強される。
【0259】
今、図2A、2B、および2Cを参照すると、それらは、本発明の別の実施形態に従って構成され動作する衣類印刷システム22のそれぞれ略側面図、略正面図、および略平面図である。印刷システム22は図1に示したフレーム11より幅の広いフレーム23を含み、図1に記載した実施形態のように一つのX軸ステージの代わりに、二つの独立した直線X軸ステージ13が取り付けられる。図2A、2B、および2Cに記載されたY軸ステージ14は、図1のY軸ステージ14と実質的に同一である。印刷システム22はまた、二つの硬化ユニット20、二つのアイロンユニット19、および二つの印刷テーブルアセンブリ13をも含む。二つのX軸ステージ12が相互に独立して動作することは本実施形態の特有の特徴である。したがって、一つの印刷アセンブリにおけるローディングおよびアンローディングの工程を、第二の印刷アセンブリで印刷が実行されているときに同時に実行することができる。その結果、プリントヘッド配列は実質的に連続的に作動し、システムのスループットを劇的に改善する。各テーブルにシステムの同一縁部からアクセスすることができ、それによって一人の作業員が二つの印刷アセンブリを操作することが可能になる。主コンピュータ21は、両方のX軸ステージを独立して動作するように制御する。
【0260】
今、図3を参照すると、それは、本発明のさらに別の実施形態に係る印刷システム24の側面図である。印刷システム24は、図1に示したフレーム11と同一であるフレーム11と、同一X軸ステージ12に装着された二つの独立して運動可能な印刷テーブルアセンブリ13とを含む。印刷テーブルアセンブリ13は相互に独立して前後に移動することができる。一つの印刷テーブル13で印刷が実行される間、同時に第二印刷テーブルで衣類のアンローディングおよびローディングが行なわれる。各印刷テーブル13はシステムの両側の縁部からアクセスされ、異なる作業員がローディングおよびアンローディングを行なうことができる。主コンピュータ21は両方の印刷テーブルを制御する。
【0261】
今、図4を参照すると、それは湿潤組成物を印刷可能な媒体の表面の部分に適用するための本発明の一実施形態に従って構成され動作する湿潤化システム25の略図である。湿潤化システム25は、上述した印刷システム10、22、および24のような印刷システムに追加することができる。本発明の好適な実施形態では、湿潤化システム25は、湿潤組成物27を含むタンク26と、パイプ29を介してタンク26に接続され、パイプ30を介して噴射ノズル19に湿潤組成物27をタンク26から汲み出すように動作するポンプ28と、圧力調整器31と、パイプ32と、マニホルド33と、パイプ34と、ソレノイド弁35とを含む。オーバーフローニードル弁36は、過剰な湿潤組成物を、パイプ37および38を介してタンク26に戻すように動作する。パイプ39もまた、溢れた湿潤組成物をソレノイド弁35からタンク26へ運ぶように動作する。好ましくは、複数のソレノイド弁35および噴射ノズル19が、下述するように一列の噴射ノズルを形成するように構成される。湿潤化が開始されると、下述の通り、コンピュータ21が、好ましくはプログラマブル論理制御装置(PLC)40の助けを借りて、ポンプ29、および次いでソレノイド弁35を起動させ、湿潤組成物27の流れを噴射する。図4および図15に従って図示しかつ説明する本発明の好適な実施形態では、PLCの役割は、コンピュータ21によって出されるコマンドを関連構成部品への電気起動に変換することである。湿潤化システム25を作動させるコンピュータ21の手順の詳細な説明は、図15に関連してさらに示し説明する。
【0262】
上述したように、印刷前の衣類の本発明の湿潤組成物による湿潤化はインク小滴の衣類内への浸透を制限するので、より大量のインクが繊維の外部の可視的な層に残ってにじまず、したがってプリントヘッドはその後、より小さいインクドットを形成することができることが理解される。したがって、印刷される画像は、より高い解像度およびより強くより鮮やかな色により、高品質を持つことができる。
【0263】
また、衣類を本発明の湿潤組成物で湿潤化するための方法および装置は代替的に、表面を通過するまたは表面上のインクのにじみを制限するために、インクを吸収することのできる、またはインク液に対して比較的高い表面張力又は光沢のある仕上がりを持つ、任意の他の表面をコーティングするために使用することができることも理解される。
【0264】
さらに、噴射ノズル19は、液体を表面に塗布するための他の手段、例えば滴下ノズル、液滴噴射器、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルに置き換えることができることも理解される。
【0265】
加えて、プリントヘッド16は、湿潤化技術と印刷技術の任意の可能な組合せで、表面にインクを塗布するための他の手段、例えば滴下ノズル、液滴噴射器、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルに置き換えることができることが理解される。かかる組み合わせの非限定的な例は以下のものを含む:
滴下を使用する湿潤化およびドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズルを使用する印刷;
ローラパッドを使用する湿潤化および連続圧電式インクジェットノズルを使用する印刷;
噴射を使用する湿潤化およびスクリーン印刷ステンシルを使用する印刷;
液滴噴射器を使用する湿潤化およびインクジェットノズルを使用する印刷。
今、図5を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作する、ソレノイド弁35および噴射ノズル19のバッテリ41の斜視図である。ソレノイド弁35は各々、パイプ34、マニホルド33、およびパイプ32を介して圧力調整器31(この図には図示せず)に接続される。
【0266】
今、図6を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作するブリッジ42の上に装着された二つのバッテリ41の斜視図である。代替的に、バッテリ41は図1、2A、2B、および2Cのブリッジ15に、好ましくはプリントヘッド16の両側に装着することができることが理解される。
【0267】
今、図7を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作する印刷システム43の簡易斜視図である。印刷システム43は、印刷前湿潤化アセンブリ25を追加することによって、図1、2A、2B、2C、および3に従って示しかつ記載した印刷システム10、22、および24を改善したものである。簡単にするために、印刷システム43は、図2A、2B、2Cに従って示しかつ記載した二軸印刷システム22の改善として示されかつ記載される。図7は、ブリッジ15上に装着された二つのバッテリ41を示し、各バッテリはそのそれぞれのX軸12上にある。各バッテリ41は、下述の通り、印刷前及び所望により印刷後に湿潤組成物を衣類に噴射するように、個別にかつ独立して動作する。
【0268】
さらに詳しく下述する通り、衣類を印刷テーブル13に装着した後、作業員はコンピュータ21に印刷工程を開始するように命令する。コンピュータ21はPCL40の助けを借りて、印刷される領域の一縁がバッテリ41の真下に配置されるまで、バッテリ41の下で印刷テーブル13を動かす。次いで、コンピュータ21およびPLC40は、印刷テーブル13を下で動かしながら、印刷される領域の少なくとも一部分が湿潤化されるまで、適切な噴射ノズル19を作動させる。印刷される領域全部がそこだけ湿潤化されることが好ましい。この段階で、衣類は印刷の準備が整い、下述の通り、印刷テーブル13はプリントヘッド16の下に移動して印刷を開始する。
【0269】
衣類を下で移動しながら、選択された噴射ノズル19を動作することにより、他の領域はそのまま残しながら、衣類の選択された、所望により予め決められた領域だけ、特に印刷される領域を湿潤化することが可能になることが理解される。
【0270】
任意選択的に、コンピュータ21はPLC40の助けを借りて、印刷テーブルを下で移動しながら硬化アセンブリ20を操作して、印刷前に湿潤組成物を少なくとも部分的に、所望により追加の薬剤を含ませて硬化させる。
【0271】
湿潤化アセンブリ25は、印刷システム43と同様に、衣類以外の物に印刷するように容易に変更することができることが理解される。
【0272】
今、図8、9A、および9Bを参照すると、それらは全て、本発明の一実施形態に従って構成され動作する、槽44を装備したバッテリ41の好適な実施形態の簡易斜視図である。槽44は薄め液を含み、図8から分かるように噴射ノズルが噴射を行なわないときに、噴射ノズル19の先端をこの薄め液中に浸漬するように動作する。噴射を開始する前に、コンピュータ21は、ソレノイド45を起動させて、槽44を移動させ、図9Aおよび9Bから分かるように噴射ノズル19の先端を露出させる。
【0273】
今、図10を参照すると、それは、印刷テーブル13の一部であって、本発明の一実施形態に従って構成され動作する、衣類搭載アセンブリ46の好適な実施形態の簡易斜視図である。衣類搭載アセンブリ46は媒体保持板(媒体保持プレート)47および開閉蓋(開閉可能なカバー)48を含む。好ましくは、媒体保持板47は印刷される画像と同一サイズの隆起部49を含み、蓋48は隆起部49と同一形状の窓50を含む。好ましくは、窓50は、隆起部49よりわずかに、好ましくは数ミリメートル大きいサイズである。蓋48は、当業界で公知の通り、二つのガスシリンダ51によって開位置に保持される。好ましくは、印刷テーブルアセンブリの少なくとも一部分、例えば隆起部49は、紙、板、プラスチック等のような非多孔性媒体の保持を可能にする真空テーブルである。
【0274】
今、図11および12を参照すると、それらは、本発明の一実施形態に従って構成されかつ動作する、搭載された衣類が開位置および閉位置にある状態の衣類搭載アセンブリ46の簡易斜視図である。図11は、衣類搭載アセンブリ46にロードされた衣類52を示す。板の面取り部53が衣類を板上で中心に位置合せするので、衣類52は手動で媒体保持板上にロードされる。図12から分かるように、衣類52が媒体保持板上にロードされた後、ガスシリンダ51が蓋を閉鎖方向に押しやりながら、蓋48が媒体保持板に対して閉じられる。衣類の縁部は、隆起部の周囲でテーブルの下面に触れる蓋の表面によって少し伸ばされる。その結果、衣類は所定の位置に確実に保持され、高解像度の印刷が可能になる(つまり、印刷またはしわ寄せ工程(wrinkling)中に媒体の移動が事実上発生しない)。
【0275】
本発明の別の実施形態では、衣類搭載アセンブリは、アルミニウムまたは木材から作られた単純な平坦な板であり、その上に織物片または衣類が配置される。平坦な板は、衣類印刷業界に精通した者には周知である。
【0276】
今、図13を参照すると、それは、本発明の一実施形態に従って構成され動作するインクジェットプリントヘッドアセンブリ54の簡易模式図である。プリントヘッドアセンブリ54は、完成した衣類、織物片、または他の可撓性もしくは剛性媒体に直接印刷するように構成された、プリントヘッド55の配列を含む。各プリントヘッド55は少なくとも一つのインクジェットノズル56を含む。プリントヘッド55は、米国ニューハンプシャー州のスペクトラ・インコーポレーテッドまたは当業界で公知の他社から市販されているような、任意の従来のプリントヘッドとすることができる。
【0277】
本発明の一つの好適な実施形態では、プリントヘッドアセンブリ54は、高速印刷を実行する、従来の圧電式ドロップオンデマンド型または連続型インクジェットヘッドの大量の配列である。少なくとも500個、および好ましくは数千個(例えば2000個)のノズルを同時印刷のために設け、結果的に非常に高速かつ正確な工程をもたらすことが本発明の特有の特徴である。各プリントヘッド55は、任意選択的にPLC40を介して、主コンピュータ21によって独立に制御される数十個のノズル56から構成される。
【0278】
今、図14A、14B、14C、および14Dを参照すると、それらは総合して、本発明の好適な実施形態に係る印刷工程の幾つかの段階の簡易模式図である。。図14A、14B、14C、および14Dは、図13のプリントヘッド56のような単一プリントヘッドの下の、図12に示した衣類52のような衣類の一部の四つの連続パスを示す。
【0279】
好適な実施形態では、ノズル間の距離およびプリントヘッド間の距離は、印刷解像度より大きいので、画像を完成するためには数回の印刷パスが必要である。媒体52を載せた印刷テーブルアセンブリの動きによって形成されるX軸の各パス後に、プリントヘッド55はY軸方向に少しずつ移動して、次のパスを準備する。コンピュータ21が、この正確かつ完全なカバレージ(coverage)を得るためにプリントヘッドおよび印刷テーブルアセンブリの相対運動を制御するようにプログラムされることは理解されるであろう。
【0280】
プリントヘッド配列55および印刷テーブルアセンブリの間の相対運動を発生しながら、印刷工程は実行される。この多色印刷のためには少なくとも二軸運動、つまり印刷方向のX軸運動および印刷方向と直角のY軸運動が必要である。上述の通り、ノズル間の距離およびプリントヘッド間の距離は印刷解像度より大きいので、画像を完成させるためには、数回の印刷パスが必要である。これは、ヘッド配列を印刷ラインと直角に動かしながら、印刷テーブルアセンブリをX軸に沿って前後に移動させることによって達成される。X軸は印刷ラインであり、Y軸は、各パス後に次のパス中の印刷ライン間の間隙を埋めるためにプリントヘッド配列が移動するラインである。多色印刷は、テーブル表面がドロップオンデマンド型インクジェットノズル配列の下を通過するときに実行される。
【0281】
本発明の代替実施形態では、Y軸は高速移動軸であり、X軸は、印刷されたライン間の間隙を埋めることができるように徐々に移動する。
【0282】
印刷コマンドは、プリントヘッドドライバ(図示せず)によって、インク発射のための正確な時間および場所で、各ノズルに送られる。印刷コマンドは実際には、正確な幅、電圧レベル、立上り時間、および減衰時間を持つ電子パルスである。プリントヘッドドライバは、英国ケンブリッジのインカデジタル・プリンターズのインカドライバのような、当業界で公知の市販のシステムである。印刷が完了すると、印刷テーブルはローディング位置に移動する。次いで、印刷された衣類はアンロードされ、新しい衣類が印刷テーブル上にロードされる。
【0283】
今、図15を参照すると、それは、好ましくはコンピュータ21によって実行される、印刷前及び所望により印刷後に衣類を湿潤させる工程の簡易フローチャートである。衣類を上述した本発明の湿潤組成物で湿潤させる工程は、コンピュータの記憶装置から画像ファイルをロードすることによって、要素57から開始される。該工程は要素58に進み、湿潤させる領域の縁でもある衣類上の画像の縁を決定する。該工程は要素59に続き、印刷テーブル13を動かすX軸12を起動させる。工程は要素60に進み、印刷テーブル13の位置データを符号器から受け取る。工程は、どのノズルを開くか(要素61)、あるいは閉じるか(要素62)を決定する要素に進み、好ましくはPLC40を介して、適切なコマンドをノズルソレノイド35に送る(要素63および64)。画像の他方の縁に達すると(要素65)、工程は停止する(要素66)。
【0284】
上述した実施形態の印刷システムは、以下の連続する工程を組み合わせたものである:
所望により少なくとも画像が印刷される領域をアイロン加工しながらの、衣類のローディングおよびアンローディング;
衣類の印刷される領域の少なくとも一部分を上記の湿潤組成物と接触することによる湿潤化;
装着された衣料の湿潤領域上へのインク組成物の適用による画像の形成;
所望により画像が印刷される領域の再湿潤化;
所望により画像の硬化。
【0285】
システムのスループットを高めるために、これらの工程は、本発明の上記実施形態に見られるように、並行して実行することができる。
【0286】
本発明は、単なる実施例として本明細書で上述したものに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付する請求の範囲によってのみ限定される。
【0287】
本発明の存続期間中に、多数の関連液体アプリケータ装置およびインクアプリケータ装置ならびにシステムが開発されることが予想され、本明細書における用語、特に用語「噴射ノズル」および「インクジェットノズル」の範囲は、先験的に、そのような新しい技術を全て含むつもりである。
【0288】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになる。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0289】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0290】
下の全ての実施例で、上述したように湿潤組成物を塗布するために湿潤システムを装備した、「Kornit930」または「Kornit931」デジタル印刷機(イスラエル国コーニット・デジタル・リミテッド社製)を使用した。
【0291】
印刷は一般的に、100%綿織物のTシャツの表面で実行した。同様の試験を綿50%およびポリエステル50%の表面でも実行し、同じ結果が得られた。
【0292】
実施例1
シアン、マゼンタ、イエロー、および黒色(CMYK)の4つの基本配合液を有する非水性溶剤系インク組成物を使用した。
【0293】
上述の通り、綿100%のシャツを機械上に装着し、インクジェットプリントヘッドを用いて、布地表面に多色画像を直接印刷した。
【0294】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷画像を硬化させた。
【0295】
図16Aおよび16Bは、印刷されたシャツの前面(図16A)および裏面(図16B)の写真を提示し、得られた画像のぼやけおよび前面に得られた色のにじみ(特にシアンのにじみ)、ならびに布地を通してシャツの裏面へのインクの著しい浸透によって示される、布地におけるインクの高い吸収性を実証している。
【0296】
実施例2
綿シャツを本発明に係る例示的湿潤組成物で湿潤させた後、実施例1と同じ画像を印刷するために同じインク組成物を使用した。
【0297】
こうして、綿100%のシャツを上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを用いて綿布の領域に100%イソプロパノールを、綿布の面積1cm2当たり0.25グラムの密度で、均等に塗布した。
【0298】
その直後に、綿布がイソプロパノールでまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、シャツ表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0299】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷画像を硬化させた。
【0300】
図17Aおよび17Bは、印刷されたシャツの前面(図17A)および裏面(図17B)の写真を提示し、湿潤組成物を塗布せずに得られた画像(図16A参照)と比較して、得られた画像の優れた明度および目に見える色の不都合なにじみが無いこと(図17A)および湿潤組成物を塗布せずに得られたもの(図16B参照)と比較して、布地を通してシャツの裏面へのインクの浸透の著しい低減をも明瞭に実証し、したがって、本発明の印刷方法によって得られる画像の優れた品質を明瞭に実証する。
【0301】
実施例3
シアン、マゼンタ、イエロー、および黒色(CMYK)の4つの基本配合液を有する非水性溶剤系インク組成物を使用した。
【0302】
上述の通り、綿100%のシャツを機械上に装着し、インクジェットプリントヘッドを用いて、布地表面に各色配合液の正方形の多色画像を直接印刷した。
【0303】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷画像を硬化させた。
【0304】
並行試験で、実施例2で上述したようにインク配合液を塗布する前に、100%イソプロパノールを綿布の領域に均等に塗布しながら、同じ方法を繰り返した。
【0305】
印刷されたシャツ(本発明に従って湿潤組成物で前処理したもの、およびしないもの)の各々において、着色された正方形の各々の光学濃度を、Shamrock Color Print415を用いて測定した。下の表1は記録された光学濃度値を提示するものであり、本発明に従って湿潤組成物で布地を前処理した後で、より高い値が得られたことを明瞭に示している。
【0306】
図18Aおよび18Bは、湿潤組成物を塗布せずに印刷したシャツの前面(図18A)および湿潤組成物を塗布した後で印刷したシャツの前面(図18B)の写真を並べて提示するものであり、本発明の方法に従って湿潤組成物で前処理した布地で得られた画像の改善された明度、精細度、および鮮明度をさらに実証する。
【0307】
図19Aおよび19Bは、湿潤組成物を塗布せずに印刷したシャツの裏面(図19A)および湿潤組成物を塗布した後で印刷したシャツの裏面(図19B)の写真を並べて提示するものであり、シャツを湿潤組成物で前処理した場合、著しく低減した布地の裏面へのインクの浸透をさらに実証し、したがって、本発明の方法に従って湿潤組成物を塗布することによって達成される、印刷対象物の表面特性の有利な変性をさらに実証する。
【0308】
実施例4
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0309】
印刷機に取り付けられた噴射ノズルを使用して、湿潤組成物を対象表面上に均等に塗布した。
【0310】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%ブタノールを綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0311】
その直後に、綿布がブタノールでまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0312】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0313】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0314】
実施例5
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0315】
印刷機に取り付けられた噴射ノズルを使用して、湿潤組成物を対象表面上に均等に塗布した。
【0316】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、97%イソプロパノールおよび3%SCX8383アクリルエマルジョン(Johnson Polymers)の混合物を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0317】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0318】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜170℃に60秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0319】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0320】
実施例6
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0321】
ピペットを使用して、湿潤組成物を対象表面上に均等に塗布した。
【0322】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。ピペットを使用して、100%石油エーテル(80−100)を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0323】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0324】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜170℃に150秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0325】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0326】
実施例7
以下の水性インク組成物を使用した:
Cymel323(Cytec Industries)30.0グラム
ポリエチレングリコール35000(Sigma−Aldrich)4.0グラム
Nacure2501(King Industries)2.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(Dow Chemicals)15.0グラム
イソプロパノール5.0グラム
蒸留水40.0グラム
Spectra fix red 195(Spectra Colors Group)4.0グラム
【0327】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.60グラムの密度で均等に塗布した。
【0328】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0329】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0330】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0331】
実施例8
以下の水性インク組成物を使用した:
Cymel323(Cytec Industries)30.0グラム
ポリエチレングリコール35000(Sigma−Aldrich)4.0グラム
Nacure2501(King Industries)2.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(Dow Chemicals)15.0グラム
イソプロパノール5.0グラム
蒸留水40.0グラム
Spectra fix red 195(Spectra Colors Group)4.0グラム
【0332】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%シクロヘキサノンを綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.60グラムの密度で均等に塗布した。
【0333】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0334】
次いで、赤外線硬化ユニットを用いて150〜180℃に180秒間加熱することによって、印刷した布地を硬化させた。
【0335】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0336】
実施例9
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)80.0グラム
シクロヘキサノン4.0グラム
ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)10.0グラム
マイクロリシスブラック調製液6.0グラム
【0337】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、100%エタノールを綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0338】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0339】
次いで、上記のように、印刷した布地を硬化させた。
【0340】
予備湿潤工程無しで、同じプリントヘッドおよびインク組成物を使用して同様の布地に印刷された同様の画像に比較して、上記湿潤組成物を塗布した後に生じた画像は、目に見えるフェザリングの徴候を示さなかった。画像の光学濃度は高く、布地の裏面まで運ばれるインクは少なかった。
【0341】
実施例10
以下の非水性溶剤系インク組成物を使用した:
担体としてエチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)60%
担体としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15%
着色剤としてオラゾル染料3%
変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(例えばCymel325)11%
ポリエステルポリオール(例えばKing IndustriesによるK−Flex XM−A307)11%
【0342】
綿100%の布地を上述のような機械上に装着した。噴射ノズルを使用して、90%イソプロピルアルコール及び10%ブロックトp−トルエンスルホン酸から構成される湿潤組成物を綿布の領域上に、綿布の面積1cm2当たり0.40グラムの密度で均等に塗布した。
【0343】
その直後に、綿布が湿潤組成物でまだ湿潤している間に、インクジェットプリントヘッドおよび上述したインク組成物を用いて、布地表面の湿潤領域に画像を印刷した。
【0344】
次いで、上記のように、印刷した布地を硬化させた。
【0345】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0346】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0347】
【図1】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略斜視図を提示する。
【図2】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易側面図、正面図、および平面図を提示する
【図3】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する衣類印刷システムの簡易略側面図を提示する。
【図4】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤システムの略図を提示する。
【図5】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する湿潤用の1組のソレノイド弁および噴射ノズルの略斜視図を提示する。
【図6】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、ブリッジ上に取り付けられた二つの湿潤バッテリの略斜視図を提示する。
【図7】図2A、2B、および2Cに提示された印刷システムの一部であり、図4に提示された湿潤システムを備えた、本発明の好適な実施形態に係るプレ印刷システムの簡易斜視図を提示する。
【図8】本発明の1実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を備えた1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
【図9】本発明の実施形態に従って構成されかつ動作する、薄め液の浴を装備した1組のソレノイド弁および噴射ノズルの簡易略斜視図を提示する。
【図10】本発明の好適な実施形態に従って印刷プロセスが開始する前に衣類が手動で装着される衣類装着アセンブリの好適な実施形態の簡易斜視図を提示する。
【図11】装着された衣類が開位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
【図12】装着された衣類が閉位置にある状態の図10に提示された衣類装着アセンブリの簡易斜視図を提示する。
【図13】本発明の好適な実施形態に係るインクジェット印刷ヘッドアセンブリの簡易略図を提示する。
【図14】高解像度画像を達成するために画像の領域全体を網羅するのに必要な、印刷アセンブリの4回の別個のパスを示す、本発明の好適な実施形態に係るインク塗布方法の幾つかの段階の簡易略図である。
【図15】印刷前に衣類に対し湿潤組成物を使用する本発明の印刷方法の1つの模範的な段階的使用の簡易フローチャートを提示する。
【図16】インクジェット印刷機を用いて画像が直接印刷された綿100%の衣類の前面(図16A)および裏面(図16B)を提示する写真である。
【図17】本発明に従って衣類の表面に湿潤組成物を接触させた後、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面(図17A)および裏面(図17B)を提示する写真である。
【図18】画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図18B)およびしない場合(図18A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の前面の写真を提示する。
【図19】画像を形成する前に衣類の表面に湿潤組成物を塗布した場合(図19B)およびしない場合(図19A)について、インクジェット印刷機を用いて画像が印刷された綿100%の衣類の裏面の写真を提示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の湿潤部を設けるように表面の少なくとも一部分に、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を接触させることと、前記液体インク組成物を前記表面の湿潤部に塗布して、表面の前記湿潤部に画像を形成することとを含む、表面に画像を印刷する方法。
【請求項2】
インク組成物を塗布した後、画像を硬化させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触は、噴射、噴出、塗付け、展着、はけ塗り、浸し塗り、滴下、含浸、注入、凝縮、分散、拡散、消散、溶解、溶融、またはそれらの組合せから構成される群から選択された方法によって実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触は噴射によって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触は噴出によって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触は滴下によって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触は前記湿潤組成物を液体アプリケータに通すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
表面の前記湿潤部における前記湿潤組成物の濃度は、表面の前記湿潤部1cm2当たり約0.01グラムから約2グラムの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
表面の前記湿潤部における前記湿潤組成物の濃度は、表面の湿潤部1cm2当たり約0.1グラムから約0.6グラムの範囲である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
表面の前記湿潤部は表面の予め定められた部分である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
表面の前記予め定められた部分に前記湿潤組成物を接触させることはデジタル処理で達成される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体インク組成物は水性インク組成物および非水性溶剤系インク組成物から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記液体インク組成物は非水性溶剤系インク組成物である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記湿潤組成物は、前記液体インク組成物の表面張力より低い表面張力を有する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記湿潤組成物の前記表面張力は、前記液体インク組成物の前記表面張力より少なくとも2ダイン/cmだけ低い請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記湿潤組成物は、50ダイン/cmより低い表面張力を有する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記湿潤組成物の前記表面張力は35ダイン/cmから15ダイン/cmまでの範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記湿潤組成物の前記表面張力は25ダイン/cmから10ダイン/cmまでの範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記湿潤組成物は水を含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記湿潤組成物は少なくとも1種の有機溶剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の有機溶剤は、アルコール、ケトン、エーテル、アルキルポリシロキサン、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン、アリール、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びペンタノールから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ケトンは、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びペンタン−3−オンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記エーテルは、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピルメチルエーテル、メトキシプロパノール、ジエチルエーテル、1−メトキシへキサン、1−エトキシへキサン、及び1−プロポキシペンタンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アルキルポリシロキサンは、ジメチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、及びニトリロブチルフェニルポリシロキサンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記アルカンは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ターシャリブチルクロライド、イソブチルクロライド、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、及びパーフルオロオクタンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の有機溶剤は100℃未満の沸点を有する請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記湿潤組成物はさらに、接着促進剤、粘度調整剤、増粘剤、表面張力調整剤、表面活性剤、界面活性剤、柔軟剤、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択された少なくとも1種の薬剤を含む請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記湿潤組成物はさらに、水を含む請求項3に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1種の薬剤の濃度は、前記湿潤組成物の総重量の0.01重量パーセントから75重量パーセントまでの範囲である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記接着促進剤は、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種の薬剤は、クレイ、多糖類、ポリオール、シロキサン、ポリアルキルシロキサン、メラミン、過酸化物、エポキシド、イソシアネート、およびフタレートから構成される群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記液体インク組成物を塗布した後、表面の前記湿潤部を、前記湿潤組成物に再接触させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記湿潤組成物は、少なくとも1種の有機溶剤及び少なくとも1種の接着促進剤を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記接触の前、かつ/または前記液体インク組成物を塗布した後に、表面の前記湿潤部を少なくとも1種の接着促進剤に接触させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1種の接着促進剤は、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記硬化は、前記表面の加熱および前記表面の乾燥から構成される群から選択された方法によって達成される請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記表面は織布、プラスチック、金属、木材、および石から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記表面は織布から作られた衣類である請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記織布は木綿を含む請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、表面と化学的に相互作用することのできる薬剤、および前記化学的相互作用を促進するための触媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、さらに前記湿潤組成物は前記化学的相互作用を促進するための触媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および触媒を含み、さらに前記湿潤組成物は表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、前記触媒は前記化学的相互作用を促進するためのものである請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記化学的相互作用は、前記表面内に存在する少なくとも1つの官能基との相互作用を含む請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの官能基は、アミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、およびチオールから構成される群から選択される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
基材の表面と化学的に相互作用することのできる前記薬剤は架橋剤である請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記架橋剤は、アルデヒド系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エステル系架橋剤、アミド系架橋剤、およびビニル系架橋剤から構成される群から選択される請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記アルデヒド系架橋剤は変性メラミンホルムアルデヒドである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記触媒は酸である請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記酸はジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リン酸アルキルおよびリン酸アリールから構成される群から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリオールはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエーテル、ポリエステルアクリレート、アクリルポリオール、ウレタンアクリルポリオール、ポリエステルウレタントリオール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルアクリレート、および酸化ヒマシ油から構成される群から選択される請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
画像を印刷するための表面を準備するためのプレ印刷システムであって、液体インク組成物と前記表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を前記表面の少なくとも一部分に塗布するための少なくとも1つの液体アプリケータを含むプレ印刷システム。
【請求項55】
前記少なくとも1つの液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項56】
前記少なくとも1つの液体アプリケータを制御して前記湿潤組成物を前記表面の選択された部分に塗布するように動作する少なくとも1つの制御装置をさらに備える請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項57】
前記湿潤組成物が前記液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、かつ前記液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して前記液体アプリケータを露出させて前記湿潤組成物を前記表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴をさらに備える請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項58】
前記薄め液は前記湿潤組成物を含む請求項57に記載のプレ印刷システム。
【請求項59】
前記表面は織布、プラスチック、金属、木材、および石から構成される群から選択される請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項60】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項59に記載のプレ印刷システム。
【請求項61】
前記表面は織布から作られた衣類である請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項62】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項61に記載のプレ印刷システム。
【請求項63】
前記織布は木綿を含む請求項61に記載のプレ印刷システム。
【請求項64】
表面上に画像を印刷するための印刷システムであって、前記表面の少なくとも一部分に画像を形成するように動作する少なくとも1つのインクアプリケータを含む少なくとも1つの印刷装置と、画像を形成する前に、液体インク組成物と前記表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を表面の前記部分の少なくとも一部に塗布するように動作する少なくとも1つの液体アプリケータを含む少なくとも1つの湿潤装置とを備える印刷システム。
【請求項65】
前記少なくとも1つのインクアプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルから構成される群から選択される請求項64に記載の印刷システム。
【請求項66】
前記少なくとも1つの液体アプリケータを制御して前記湿潤組成物を前記表面の選択された部分に塗布するように動作する少なくとも1つの制御装置をさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項67】
前記液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項68】
前記湿潤組成物が前記液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、かつ前記液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して前記液体アプリケータを露出させて前記湿潤組成物を前記表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴をさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項69】
画像を硬化させるように構成された硬化ユニットをさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項70】
前記硬化ユニットは赤外線システムを備える請求項69に記載の印刷システム。
【請求項71】
前記硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える請求項69に記載の印刷システム。
【請求項72】
表面の前記少なくとも一部分にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットをさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項73】
剛性フレームと、前記フレームに取り付けられた線形運動X軸と、印刷可能な媒体を支持するように動作し、前記線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、前記テーブルアセンブリの上で前記線形X軸に対し直角に前記フレームに取り付けられたブリッジと、前記印刷テーブルアセンブリの上で前記線形X軸ステージに対し直角に前記フレームに取り付けられた線形運動Y軸ステージとをさらに備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータは前記ブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータは前記X軸ステージに対し直角に線形運動をするように前記線形Y軸ステージに取り付けられている請求項64に記載の印刷システム。
【請求項74】
剛性フレームと、前記フレームに取り付けられた第1線形運動X軸ステージと、前記第1X軸ステージと平行に前記フレームに取り付けられ、前記第1X軸ステージとは独立して動作するように構成された第2線形運動X軸ステージと、印刷可能な媒体を支持するように動作し、各前記線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、前記少なくとも1つのテーブルアセンブリの上で前記線形X軸に対し直角に前記フレームに取り付けられたブリッジと、前記少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の上で、前記線形X軸ステージに直角に前記フレーム上に取り付けられた線形運動Y軸ステージとをさらに備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータは前記第1および第2X軸の各々の上で前記ブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータは前記第1および第2X軸ステージに対し直角に線形運動をするように前記線形Y軸ステージに取り付けられている請求項64に記載の印刷システム。
【請求項75】
前記少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々は、媒体保持プレートと、前記印刷可能な媒体を前記プレートに確実に当てて保持するために前記媒体保持プレートに枢着された開閉可能なカバーとを備える請求項74に記載の印刷システム。
【請求項76】
前記媒体保持プレートは隆起部分を含み、前記カバーは前記隆起部分と同じ形状でそれより少し大きい窓を含む請求項75に記載の印刷システム。
【請求項77】
前記線形運動X軸ステージはリニアモータ駆動ステージである請求項74に記載の印刷システム。
【請求項78】
前記線形運動Y軸ステージはリニアモータ駆動ステージである請求項74に記載の印刷システム。
【請求項79】
前記少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の少なくとも一部分は真空テーブルである請求項74に記載の印刷システム。
【請求項80】
前記少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ前記印刷テーブルアセンブリ上に装着された前記印刷可能な媒体の表面に形成された画像を硬化するように構成された硬化ユニットをさらに備える請求項74に記載の印刷システム。
【請求項81】
前記硬化ユニットは赤外線システムを備える請求項80に記載の印刷システム。
【請求項82】
前記硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える請求項80に記載の印刷システム。
【請求項83】
前記少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ前記印刷テーブルアセンブリ上の前記印刷可能な媒体にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットをさらに備える請求項80に記載の印刷システム。
【請求項84】
請求項1に記載の方法によって作られた、表面上に印刷された画像を有する基材。
【請求項85】
前記画像が、高い鮮明度、高い解像度、及び/又は色にじみのないことを特徴とする請求項84に記載の基材。
【請求項86】
請求項43,44又は45に記載の方法によって作られた、表面上に印刷された画像を有する基材。
【請求項87】
前記画像が、高い鮮明度、高い解像度、色にじみのないこと、高い耐久性、化学的堅牢性、及び/又は洗濯堅牢性を特徴とする請求項86に記載の基材。
【請求項1】
表面の湿潤部を設けるように表面の少なくとも一部分に、液体インク組成物と表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を接触させることと、前記液体インク組成物を前記表面の湿潤部に塗布して、表面の前記湿潤部に画像を形成することとを含む、表面に画像を印刷する方法。
【請求項2】
インク組成物を塗布した後、画像を硬化させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触は、噴射、噴出、塗付け、展着、はけ塗り、浸し塗り、滴下、含浸、注入、凝縮、分散、拡散、消散、溶解、溶融、またはそれらの組合せから構成される群から選択された方法によって実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接触は噴射によって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触は噴出によって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触は滴下によって達成される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触は前記湿潤組成物を液体アプリケータに通すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
表面の前記湿潤部における前記湿潤組成物の濃度は、表面の前記湿潤部1cm2当たり約0.01グラムから約2グラムの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
表面の前記湿潤部における前記湿潤組成物の濃度は、表面の湿潤部1cm2当たり約0.1グラムから約0.6グラムの範囲である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
表面の前記湿潤部は表面の予め定められた部分である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
表面の前記予め定められた部分に前記湿潤組成物を接触させることはデジタル処理で達成される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液体インク組成物は水性インク組成物および非水性溶剤系インク組成物から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記液体インク組成物は非水性溶剤系インク組成物である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記湿潤組成物は、前記液体インク組成物の表面張力より低い表面張力を有する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記湿潤組成物の前記表面張力は、前記液体インク組成物の前記表面張力より少なくとも2ダイン/cmだけ低い請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記湿潤組成物は、50ダイン/cmより低い表面張力を有する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記湿潤組成物の前記表面張力は35ダイン/cmから15ダイン/cmまでの範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記湿潤組成物の前記表面張力は25ダイン/cmから10ダイン/cmまでの範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記湿潤組成物は水を含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記湿潤組成物は少なくとも1種の有機溶剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の有機溶剤は、アルコール、ケトン、エーテル、アルキルポリシロキサン、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン、アリール、ヘテロ脂環、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びペンタノールから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ケトンは、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びペンタン−3−オンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記エーテルは、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピルメチルエーテル、メトキシプロパノール、ジエチルエーテル、1−メトキシへキサン、1−エトキシへキサン、及び1−プロポキシペンタンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記アルキルポリシロキサンは、ジメチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、及びニトリロブチルフェニルポリシロキサンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記アルカンは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、ターシャリブチルクロライド、イソブチルクロライド、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、及びパーフルオロオクタンから構成される群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の有機溶剤は100℃未満の沸点を有する請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記湿潤組成物はさらに、接着促進剤、粘度調整剤、増粘剤、表面張力調整剤、表面活性剤、界面活性剤、柔軟剤、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択された少なくとも1種の薬剤を含む請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記湿潤組成物はさらに、水を含む請求項3に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1種の薬剤の濃度は、前記湿潤組成物の総重量の0.01重量パーセントから75重量パーセントまでの範囲である請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記接着促進剤は、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種の薬剤は、クレイ、多糖類、ポリオール、シロキサン、ポリアルキルシロキサン、メラミン、過酸化物、エポキシド、イソシアネート、およびフタレートから構成される群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記液体インク組成物を塗布した後、表面の前記湿潤部を、前記湿潤組成物に再接触させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記湿潤組成物は、少なくとも1種の有機溶剤及び少なくとも1種の接着促進剤を含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記接触の前、かつ/または前記液体インク組成物を塗布した後に、表面の前記湿潤部を少なくとも1種の接着促進剤に接触させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1種の接着促進剤は、アクリル樹脂、ポリウレタンエマルジョン、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミノシリコン樹脂、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記硬化は、前記表面の加熱および前記表面の乾燥から構成される群から選択された方法によって達成される請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記表面は織布、プラスチック、金属、木材、および石から構成される群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記表面は織布から作られた衣類である請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記織布は木綿を含む請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、表面と化学的に相互作用することのできる薬剤、および前記化学的相互作用を促進するための触媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、さらに前記湿潤組成物は前記化学的相互作用を促進するための触媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記液体インク組成物は担体、着色剤、ポリオール、および触媒を含み、さらに前記湿潤組成物は表面と化学的に相互作用することのできる薬剤を含み、前記触媒は前記化学的相互作用を促進するためのものである請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記化学的相互作用は、前記表面内に存在する少なくとも1つの官能基との相互作用を含む請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの官能基は、アミン、アミド、カルボキシル、ヒドロキシル、およびチオールから構成される群から選択される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
基材の表面と化学的に相互作用することのできる前記薬剤は架橋剤である請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記架橋剤は、アルデヒド系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エステル系架橋剤、アミド系架橋剤、およびビニル系架橋剤から構成される群から選択される請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記アルデヒド系架橋剤は変性メラミンホルムアルデヒドである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記触媒は酸である請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記酸はジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リン酸アルキルおよびリン酸アリールから構成される群から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリオールはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエーテル、ポリエステルアクリレート、アクリルポリオール、ウレタンアクリルポリオール、ポリエステルウレタントリオール樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルアクリレート、および酸化ヒマシ油から構成される群から選択される請求項43,44または45のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
画像を印刷するための表面を準備するためのプレ印刷システムであって、液体インク組成物と前記表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を前記表面の少なくとも一部分に塗布するための少なくとも1つの液体アプリケータを含むプレ印刷システム。
【請求項55】
前記少なくとも1つの液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、スタンプパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項56】
前記少なくとも1つの液体アプリケータを制御して前記湿潤組成物を前記表面の選択された部分に塗布するように動作する少なくとも1つの制御装置をさらに備える請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項57】
前記湿潤組成物が前記液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、かつ前記液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して前記液体アプリケータを露出させて前記湿潤組成物を前記表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴をさらに備える請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項58】
前記薄め液は前記湿潤組成物を含む請求項57に記載のプレ印刷システム。
【請求項59】
前記表面は織布、プラスチック、金属、木材、および石から構成される群から選択される請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項60】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項59に記載のプレ印刷システム。
【請求項61】
前記表面は織布から作られた衣類である請求項54に記載のプレ印刷システム。
【請求項62】
前記織布はウール、絹、木綿、亜麻、大麻、苧麻、ジュート、アセテート布、アクリル布、ラステックス、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、ビスコース、スパンデックス、金属複合物、炭素または炭化複合物、およびそれらの任意の組合せから構成される群から選択される請求項61に記載のプレ印刷システム。
【請求項63】
前記織布は木綿を含む請求項61に記載のプレ印刷システム。
【請求項64】
表面上に画像を印刷するための印刷システムであって、前記表面の少なくとも一部分に画像を形成するように動作する少なくとも1つのインクアプリケータを含む少なくとも1つの印刷装置と、画像を形成する前に、液体インク組成物と前記表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を表面の前記部分の少なくとも一部に塗布するように動作する少なくとも1つの液体アプリケータを含む少なくとも1つの湿潤装置とを備える印刷システム。
【請求項65】
前記少なくとも1つのインクアプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルから構成される群から選択される請求項64に記載の印刷システム。
【請求項66】
前記少なくとも1つの液体アプリケータを制御して前記湿潤組成物を前記表面の選択された部分に塗布するように動作する少なくとも1つの制御装置をさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項67】
前記液体アプリケータは、噴射ノズル、滴下ノズル、液滴インジェクタ、ドロップオンデマンド型圧電式インクジェットノズル、連続型圧電式インクジェットノズル、ローラパッド、オフセット印刷ステンシル、およびスクリーン印刷ステンシルの少なくとも1つを備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項68】
前記湿潤組成物が前記液体アプリケータ内で乾燥するのを防止するように働く薄め液を担持し、かつ前記液体アプリケータの下に配置され、要求あり次第格納して前記液体アプリケータを露出させて前記湿潤組成物を前記表面上に塗布するように動作する、少なくとも1つの格納可能な浴をさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項69】
画像を硬化させるように構成された硬化ユニットをさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項70】
前記硬化ユニットは赤外線システムを備える請求項69に記載の印刷システム。
【請求項71】
前記硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える請求項69に記載の印刷システム。
【請求項72】
表面の前記少なくとも一部分にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットをさらに備える請求項64に記載の印刷システム。
【請求項73】
剛性フレームと、前記フレームに取り付けられた線形運動X軸と、印刷可能な媒体を支持するように動作し、前記線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、前記テーブルアセンブリの上で前記線形X軸に対し直角に前記フレームに取り付けられたブリッジと、前記印刷テーブルアセンブリの上で前記線形X軸ステージに対し直角に前記フレームに取り付けられた線形運動Y軸ステージとをさらに備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータは前記ブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータは前記X軸ステージに対し直角に線形運動をするように前記線形Y軸ステージに取り付けられている請求項64に記載の印刷システム。
【請求項74】
剛性フレームと、前記フレームに取り付けられた第1線形運動X軸ステージと、前記第1X軸ステージと平行に前記フレームに取り付けられ、前記第1X軸ステージとは独立して動作するように構成された第2線形運動X軸ステージと、印刷可能な媒体を支持するように動作し、各前記線形X軸上を移動可能な少なくとも1つのテーブルアセンブリと、前記少なくとも1つのテーブルアセンブリの上で前記線形X軸に対し直角に前記フレームに取り付けられたブリッジと、前記少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の上で、前記線形X軸ステージに直角に前記フレーム上に取り付けられた線形運動Y軸ステージとをさらに備え、前記少なくとも1つの液体アプリケータは前記第1および第2X軸の各々の上で前記ブリッジに取り付けられており、液体インク組成物と前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも1つの結合部位との係合を妨げることのできる湿潤組成物を前記印刷可能な媒体の表面の少なくとも一部分に塗布するように動作し、前記少なくとも1つのインクアプリケータは前記第1および第2X軸ステージに対し直角に線形運動をするように前記線形Y軸ステージに取り付けられている請求項64に記載の印刷システム。
【請求項75】
前記少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々は、媒体保持プレートと、前記印刷可能な媒体を前記プレートに確実に当てて保持するために前記媒体保持プレートに枢着された開閉可能なカバーとを備える請求項74に記載の印刷システム。
【請求項76】
前記媒体保持プレートは隆起部分を含み、前記カバーは前記隆起部分と同じ形状でそれより少し大きい窓を含む請求項75に記載の印刷システム。
【請求項77】
前記線形運動X軸ステージはリニアモータ駆動ステージである請求項74に記載の印刷システム。
【請求項78】
前記線形運動Y軸ステージはリニアモータ駆動ステージである請求項74に記載の印刷システム。
【請求項79】
前記少なくとも1つのテーブルアセンブリの各々の少なくとも一部分は真空テーブルである請求項74に記載の印刷システム。
【請求項80】
前記少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ前記印刷テーブルアセンブリ上に装着された前記印刷可能な媒体の表面に形成された画像を硬化するように構成された硬化ユニットをさらに備える請求項74に記載の印刷システム。
【請求項81】
前記硬化ユニットは赤外線システムを備える請求項80に記載の印刷システム。
【請求項82】
前記硬化ユニットは温風吹付けユニットを備える請求項80に記載の印刷システム。
【請求項83】
前記少なくとも1つの印刷テーブルアセンブリの各々の上に配置されかつ前記印刷テーブルアセンブリ上の前記印刷可能な媒体にアイロンをかけるように構成されたアイロンユニットをさらに備える請求項80に記載の印刷システム。
【請求項84】
請求項1に記載の方法によって作られた、表面上に印刷された画像を有する基材。
【請求項85】
前記画像が、高い鮮明度、高い解像度、及び/又は色にじみのないことを特徴とする請求項84に記載の基材。
【請求項86】
請求項43,44又は45に記載の方法によって作られた、表面上に印刷された画像を有する基材。
【請求項87】
前記画像が、高い鮮明度、高い解像度、色にじみのないこと、高い耐久性、化学的堅牢性、及び/又は洗濯堅牢性を特徴とする請求項86に記載の基材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−505774(P2008−505774A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514324(P2007−514324)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000558
【国際公開番号】WO2005/115089
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(506277351)コルニット ディジタル リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000558
【国際公開番号】WO2005/115089
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(506277351)コルニット ディジタル リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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