説明

周波数可変回路及び周波数可変増幅器

【課題】信号の周波数特性を適宜切り替え可能であり、かつ簡易な構成で小型化を図ることができる周波数可変回路及びこれを用いた周波数可変増幅器を提供する。
【解決手段】入力端子1に一端が接続した第1の容量3と、入力端子1に一端が接続した第1のインダクタ4と、第1の容量3に一端が接続し、出力端子2に他端が接続した第2のインダクタ6と、第1のインダクタ4に一端が接続し、出力端子2に他端が接続した第2の容量5と、一端が接地された第3の容量7と、第3の容量7と一端が接続するとともに、第1のインダクタ4と第2の容量5の接続点に他端が接続した第3のインダクタ8とを備え、第1の容量3と第2のインダクタ6の接続点と、第1のインダクタ4と第2の容量5の接続点とを、第1のスイッチ10で接続又は非接続を切り替えることにより、信号の周波数帯域の通過又は遮断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主にVHF帯、UHF帯、マイクロ波帯及びミリ波帯で用いられる周波数可変回路及びこれを用いた周波数可変増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図18は、非特許文献1に記載される従来の周波数可変増幅器の構成を示す図である。図18において、従来の周波数可変増幅器は、入力端子100、半導体素子101、第1の伝送線路102、第2の伝送線路103、第1のスイッチ104、第2のスイッチ105、第1のオープンスタブ106及び第2のオープンスタブ107を備える。これらのうち増幅用の半導体素子101を除く要素から従来の周波数可変回路108が構成される。
【0003】
第1の伝送線路102と第2の伝送線路103は、入力端子100とFET等の半導体素子101との間に直列に接続されている。第1のスイッチ104は、その一端が第1の伝送線路102と第2の伝送線路103の間に並列接続し、他端が第1のオープンスタブ106に直列接続している。この第1のスイッチ104によって、第1のオープンスタブ106と、第1の伝送線路102及び第2の伝送線路103の接続点との電気的な接続がオン、オフされる。
【0004】
また、第2のスイッチ105は、その一端が入力端子100と第2の伝送線路103の間に並列接続し、他端が第2のオープンスタブ107に直列接続している。この第2のスイッチ105によって、第2のオープンスタブ107と、入力端子100及び第2の伝送線路103の接続点との電気的な接続がオン、オフされる。なお、図18では、説明を簡単にするため、オープンスタブの本数が2本の場合について示している。
【0005】
次に動作について説明する。
入力端子100を介して入力された信号は、周波数可変回路108を通って半導体素子101に入力され増幅される。整合する周波数の切り替えは、第1のスイッチ104と第2のスイッチ105のオンとオフの切り替えにより行われる。
【0006】
図19は、図18中の第1のスイッチをオフとし、第2のスイッチをオンにした場合の擬似的な等価回路を示す図である。図19において、周波数可変回路は、伝送線路102,103が直列接続した伝送線路109と1本の並列接続したオープンスタブ107とで構成される。
【0007】
また、図20は、図18中の第1のスイッチをオンとし、第2のスイッチをオフにした場合の擬似的な等価回路を示す図である。図20における周波数可変回路も、直列接続した伝送線路102,103と、伝送線路102,103間に並列接続した第1のオープンスタブ106とで構成される。
【0008】
図21は、図18中の半導体素子のある高域の周波数での入力インピーダンスと、ある低域の周波数での入力インピーダンスとを、入力端子のインピーダンスに変成する場合を示すスミスチャートの簡略図である。図21に示すように、低域の周波数では、第2のスイッチ105をオン、第1のスイッチ104をオフにすることにより、入力端子100のインピーダンスへの整合が実現される。また、高域の周波数では、第2のスイッチ105をオフ、第1のスイッチ104をオンにすることにより、入力端子100のインピーダンスへの整合が実現され、周波数可変増幅器として動作する。
【0009】
【非特許文献1】A. Fukuda, T. Furuta, H. Okazaki and S. Narahashi:“A 0.9−5−GHz Wide−Range 1W−Class Reconfigurable Power Amplifier Employing RF−MEMS Switches,”IEEE IMS2006, THPD−05, 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来では、伝送線路102,103とオープンスタブ106,107を用いて、インピーダンス変成及び周波数切り替えの機能を兼ねた周波数可変回路108を構成し、スイッチ104,105のオン、オフで増幅すべき信号の周波数を切り替えている。このため、集中定数素子を用いた場合と比較して回路のサイズが大きくなるという課題があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、信号の周波数特性を適宜切り替え可能であり、かつ簡易な構成で小型化を図ることができる周波数可変回路及びこれを用いた周波数可変増幅器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る周波数可変回路は、入力端子に一端が接続した第1の容量と、前記入力端子に一端が接続した第1のインダクタと、前記第1の容量に一端が接続し、出力端子に他端が接続した第2のインダクタと、前記第1のインダクタに一端が接続し、前記出力端子に他端が接続した第2の容量と、一端が接地された第3の容量と、前記第3の容量と一端が接続するとともに、前記第1のインダクタと前記第2の容量の接続点に他端が接続した第3のインダクタと、前記第1の容量と前記第2のインダクタの接続点と、前記第1のインダクタと前記第2の容量の接続点との接続又は非接続を切り替えるスイッチとを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、入力端子に一端が接続した第1の容量と、入力端子に一端が接続した第1のインダクタと、第1の容量に一端が接続し、出力端子に他端が接続した第2のインダクタと、第1のインダクタに一端が接続し、出力端子に他端が接続した第2の容量と、一端が接地された第3の容量と、第3の容量と一端が接続するとともに、第1のインダクタと第2の容量の接続点に他端が接続した第3のインダクタとを備え、第1の容量と第2のインダクタの接続点と、第1のインダクタと第2の容量の接続点とを、スイッチにより接続又は非接続を切り替えることによって、信号の周波数帯域の通過又は遮断を行う。このように構成することで、信号の周波数特性を適宜切り替え可能であり、かつ簡易な構成で小型化を図れる周波数可変回路を実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による周波数可変回路の構成を示す図である。図1において、実施の形態1による周波数可変回路11は、入力端子1と出力端子2の間に構成され、第1の容量3、第1のインダクタ4、第2の容量5、第2のインダクタ6、第3の容量7、第3のインダクタ8、第1のグランド9、及び第1のスイッチ10を備える。
【0015】
周波数可変回路11において、第1の容量3と第2のインダクタ6が、接点12を介して直列に接続しており、第1のインダクタ4と第2の容量5が、第1のスイッチ10の接点13を介して直列に接続している。また、第1の容量3と第2のインダクタ6の接点12と、第1のインダクタ4と第2の容量5の接点13との間に第1のスイッチ10が接続されている。
【0016】
第1の容量3の接点12側でない一端と、第1のインダクタ4の接点13側でない一端は、ともに入力端子1に接続している。また、第2の容量5の接点13側でない一端と、第2のインダクタ6の接点12側でない一端は、ともに出力端子2に接続している。
【0017】
また、第3の容量7と第3のインダクタ8は直列に接続しており、第3のインダクタ8の第3の容量7側でない一端が接点13に接続し、第3の容量7の第3のインダクタ8側でない一端が第1のグランド9に接続している。
【0018】
次に動作について説明する。
入力端子1から入力された信号は、周波数可変回路11を通過して出力端子2に出力される。このとき、第1のスイッチ10がオン、すなわち接点12と接点13が接続される場合と、第1のスイッチ10がオフ、すなわち接点12と接点13が接続されない場合とで、信号の通過特性が変わる。
【0019】
(1)第1のスイッチ10がオンの場合
第1のスイッチ10がオンであると、周波数可変回路11は、図2に示すような回路構成となる。ここで、周波数可変回路11には、第1の容量3と第1のインダクタ4からなる第1の並列共振回路14と、第2の容量5と第2のインダクタ6からなる第2の並列共振回路15と、第3の容量7と第3のインダクタ8からなる直列共振回路16が構成される。このような回路は、帯域遮断回路として知られており、各容量及びインダクタの回路パラメータで決定される周波数の信号の通過を遮断する。
【0020】
図3は、図2中の周波数可変回路の具体的な態様及びその周波数特性の計算結果を示す図である。図3(a)は、図2中の周波数可変回路11の具体的な態様を示しており、入力端子1と出力端子2のインピーダンス1a,2aを、ともに同一の50Ωとしている。また、第1の容量3と第2の容量5、第1のインダクタ4と第2のインダクタ6の回路パラメータ(容量値、インダクタンス)をそれぞれ同一としている。
【0021】
図3(b)は、図3(a)中の回路における周波数特性を示すグラフである。図3(b)において、実線で示すSパラメータデータがS21(通過特性)であり、破線で示すSパラメータデータがS11(反射特性)である。図3(b)に示すように、12GHzを中心にして10〜15GHz帯の信号が遮断されていることがわかる。
【0022】
(2)第1のスイッチ10がオフの場合
第1のスイッチ10がオフであると、周波数可変回路11は、図4に示すような回路構成となる。ここで、周波数可変回路11には、第1の容量3と第2のインダクタ6からなる直列共振回路17が構成され、各容量及びインダクタの回路パラメータによって決定される周波数の信号が通過する。
【0023】
図5は、図4中の周波数可変回路の具体的な態様及びその周波数特性の計算結果を示す図である。図5(a)は、図4中の周波数可変回路11の具体的な態様を示しており、入力端子1と出力端子2のインピーダンス1a,2aを、ともに同一の50Ωとしている。また、第1の容量3と第2の容量5、第1のインダクタ4と第2のインダクタ6の回路パラメータ(容量値、インダクタンス)をそれぞれ図3と同一にしている。
【0024】
図5(b)は、図5(a)中の回路における周波数特性を示すグラフである。図5(b)において、実線で示すSパラメータデータがS21(通過特性)であり、破線で示すSパラメータデータがS11(反射特性)である。図5(b)に示すように、12GHzを中心にして10〜15GHz帯の信号が通過していることがわかる。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、入力端子1に一端が接続した第1の容量3と、入力端子1に一端が接続した第1のインダクタ4と、第1の容量3に一端が接続し、出力端子2に他端が接続した第2のインダクタ6と、第1のインダクタ4に一端が接続し、出力端子2に他端が接続した第2の容量5と、一端が接地された第3の容量7と、第3の容量7と一端が接続するとともに、第1のインダクタ4と第2の容量5の接続点に他端が接続した第3のインダクタ8とを備え、第1の容量3と第2のインダクタ6の接続点と、第1のインダクタ4と第2の容量5の接続点とを、第1のスイッチ10のオンオフで接続又は非接続を切り替えることにより、信号の周波数帯域の通過又は遮断を行う。
このように構成することで、入力信号から特定の周波数の信号成分を遮断したり通過させたりすることができ、かつ容量やインダクタ等の集中定数素子を用いた簡易な構成で小型化を図ることが可能である。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、入力端子1と出力端子2のインピーダンスを同一にした場合について示したが、異なるインピーダンスにしてインピーダンス変成機能を持たせてもよい。このように、異なるインピーダンス間に適用してそれぞれのインピーダンス間の変成を行うことにより、インピーダンス不整合による反射損を低減でき、通過損失の低減を図ることができる。
【0027】
例えば、周波数可変回路11を用いた増幅器を構成する場合、入力端子1と増幅用の半導体素子とのインピーダンスが異なり、また複数のデバイス等で構成されるモジュール内(50Ωでない導波管/マイクロストリップ変換器と50Ωで設計した増幅器の間)に、より効果的に適用することができる。
【0028】
また、上記実施の形態1では、各容量及び各インダクタの回路パラメータを同一にした場合について示したが、同一でなくともよい。
【0029】
さらに、上記実施の形態1では、第1のスイッチ10をオフにしたときに、周波数可変回路11が、容量とインダクタからなる並列共振回路が2個と、容量とインダクタからなる直列共振回路が1個とで構成されるT形の帯域遮断回路となる場合について示したが、並列共振回路1個と直列共振回路2個からなるパイ形の帯域遮断回路が形成されるように構成しても原理的に同様の効果が得られる。
【0030】
周波数可変回路11を構成する第1のスイッチ10としては、ダイオードスイッチやMEMS(micro electro mechanical systems)スイッチ等でよい。また、容量やインダクタは、ディスクリート部品でもMMIC(Microwave Monolithic IC)であってもよい。
【0031】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2による周波数可変回路の構成を示す図である。図6において、実施の形態2による周波数可変回路は、第1の周波数可変回路11−1、第2の周波数可変回路11−2、及び第3の周波数可変回路11−3を直列に接続して構成される。
【0032】
周波数可変回路11−1〜11−3において、第1の容量3−1〜3−3と第2のインダクタ6−1〜6−3がそれぞれ直列に接続しており、第1のインダクタ4−1〜4−3と第2の容量5−1〜5−3がそれぞれ直列に接続している。また、第1の容量3−1〜3−3と第2のインダクタ6−1〜6−3の接点と、第1のインダクタ4−1〜4−3と第2の容量5−1〜5−3の接点との間に、スイッチ10−1〜10−3がそれぞれ接続されている。
【0033】
第1の周波数可変回路11−1において、第1の容量3−1の上記接点側でない一端と、第1のインダクタ4−1の上記接点側でない一端は、ともに入力端子1に接続している。また、第2の容量5−1の上記接点側でない一端と、第2のインダクタ6−1の上記接点側でない一端は、ともに端子18に接続している。
【0034】
第2の周波数可変回路11−2において、第1の容量3−2の上記接点側でない一端と、第1のインダクタ4−2の上記接点側でない一端は、ともに端子18に接続している。また、第2の容量5−2の上記接点側でない一端と、第2のインダクタ6−2の上記接点側でない一端は、ともに端子19に接続している。
【0035】
第3の周波数可変回路11−3において、第1の容量3−3の上記接点側でない一端と、第1のインダクタ4−3の上記接点側でない一端は、ともに端子19に接続している。また、第2の容量5−3の上記接点側でない一端と、第2のインダクタ6−3の上記接点側でない一端は、ともに出力端子2に接続している。
【0036】
また、第3の容量7−1〜7−3と第3のインダクタ8−1〜8−3は、それぞれ直列に接続しており、第3のインダクタ8−1〜8−3の第3の容量7−1〜7−3側でない一端が、スイッチ10−1〜10−3の各接点にそれぞれ接続し、第3の容量7−1〜7−3の第3のインダクタ8−1〜8−3側でない一端が、それぞれ第1のグランド9に接続している。
【0037】
第1の周波数可変回路11−1、第2の周波数可変回路11−2及び第3の周波数可変回路11−3は、それぞれ異なる周波数を通過させたり遮断したりする機能を持たせている。
【0038】
次に動作について説明する。
(1)スイッチ10−1がオフでスイッチ10−2,10−3がオンの場合
スイッチ10−1がオフでスイッチ10−2,10−3がオンであると、実施の形態2による周波数可変回路は、図7に示す回路構成となる。図7において、入力端子1と出力端子2のインピーダンス1a,2aはともに同一の50Ωである。
【0039】
また、周波数可変回路11−1において、第1の容量3−1と第2の容量5−1、第1のインダクタ4−1と第2のインダクタ6−1の回路パラメータ(容量値、インダクタンス)はそれぞれ同一である。
【0040】
周波数可変回路11−2において、第1の容量3−2と第2の容量5−2、第1のインダクタ4−2と第2のインダクタ6−2の回路パラメータ(容量値、インダクタンス)はそれぞれ同一である。
【0041】
周波数可変回路11−3において、第1の容量3−3と第2の容量5−3、第1のインダクタ4−3と第2のインダクタ6−3の回路パラメータ(容量値、インダクタンス)はそれぞれ同一である。
【0042】
一方、図7において、第1の容量3−1〜3−3、第1のインダクタ4−1〜4−3の回路パラメータ(容量値、インダクタンス)はそれぞれ異なる。これにより、第1の周波数可変回路11−1、第2の周波数可変回路11−2及び第3の周波数可変回路11−3は、それぞれ異なる周波数を通過させたり遮断したりする。
【0043】
図8は、図7中の回路における周波数特性を示すグラフである。図8において、実線で示すSパラメータデータがS21(通過特性)であり、破線で示すSパラメータデータがS11(反射特性)である。図8に示すように、約8GHzを中心にして5〜10GHz帯の信号が通過していることがわかる。
【0044】
このように、第1の周波数可変回路11−1のスイッチ10−1をオフにし、第2及び第3の周波数可変回路11−2,11−3のスイッチ10−2,10−3をオンにした場合、第1の周波数可変回路11−1で決定される周波数の信号のみが通過する。
【0045】
(2)スイッチ10−2がオフでスイッチ10−1,10−3がオンの場合
図9は、スイッチ10−2がオフでスイッチ10−1,10−3がオンの場合の回路における周波数特性を示すグラフである。図9において、実線で示すSパラメータデータがS21(通過特性)であり、破線で示すSパラメータデータがS11(反射特性)である。図9に示すように、約12GHzを中心にして10〜15GHz帯の信号が通過していることがわかる。
【0046】
このように、第2の周波数可変回路11−2のスイッチ10−2をオフにし、第1及び第3の周波数可変回路11−1,11−3のスイッチ10−1,10−3をオンにした場合、第2の周波数可変回路11−2で決定される周波数の信号のみが通過する。
【0047】
(3)スイッチ10−3がオフでスイッチ10−1,10−2がオンの場合
図10は、スイッチ10−3がオフでスイッチ10−1,10−2がオンの場合の回路における周波数特性を示すグラフである。図10において、実線で示すSパラメータデータがS21(通過特性)であり、破線で示すSパラメータデータがS11(反射特性)である。図10に示すように、約17GHzを中心にして15〜20GHz帯の信号が通過していることがわかる。
【0048】
このように、第3の周波数可変回路11−3のスイッチ10−3をオフにし、第1及び第2の周波数可変回路11−1,11−2のスイッチ10−1,10−2をオンにした場合、第3の周波数可変回路11−3で決定される周波数の信号のみが通過する。
【0049】
以上のように、この実施の形態2によれば、周波数可変回路11−1〜11−3を直列接続して周波数可変回路を構成したので、各周波数可変回路のスイッチ10−1〜10−3のオンとオフの組み合わせにより、周波数可変回路11−1〜11−3による3つの周波数のうち、特定の周波数の信号を通過させることができる。また、オンとオフの組み合わせによって、帯域遮断回路として急峻な通過特性を得ることができる。
【0050】
なお、上記実施の形態2では、通過する低域、中心、高域の周波数に応じて、それぞれの周波数を決定する周波数可変回路11−1〜11−3順に接続した場合を示したが、周波数はどの回路で決定してもよい。
【0051】
また、上記実施の形態2では、周波数可変回路を3個接続する場合について示したが、2個以上の複数個であってもよい。
【0052】
さらに、上記実施の形態2において、隣り合う周波数の信号を通過させる複数の周波数可変回路のスイッチをまとめてオフにしたり、まとめてオフとする回路数を減らすことで通過信号の帯域幅を変更するようにしてもよい。
【0053】
図11は、上記実施の形態2と同様に、複数の周波数可変回路を直列に接続してなる周波数可変回路の通過特性を示す図であり、スイッチのオン、オフの組み合わせで帯域幅を変化させた場合を示している。図11に示すように、隣り合う周波数の信号を通過させる複数の周波数可変回路のスイッチをまとめてオフにすることで、帯域幅の広い信号を通過させることができる。
【0054】
また、この状態から1つの周波数可変回路11のスイッチをオンにすることで、帯域幅の狭い信号を通過させる場合に切り替えることができる。このように、スイッチのオンとオフの組み合わせで、通過させる信号の帯域幅を変えることができる。
【0055】
一方、上記実施の形態2において、隣り合わない周波数の信号を通過させる複数の周波数可変回路のスイッチをまとめてオフにすることで、複数の周波数の信号を通過させてもよい。図12は、上記実施の形態2と同様に、複数の周波数可変回路を直列に接続してなる周波数可変回路の通過特性を示す図であり、スイッチのオン、オフの組み合わせで複数の周波数の信号を通過させた場合を示している。
【0056】
図12に示す例では、隣り合わない周波数の信号を通過させる周波数可変回路のスイッチをオフすることで、2つの周波数の信号を通過させている。このように、上記実施の形態2では、隣り合わない複数の周波数の信号を通過させることができる。なお、図12では、2つの周波数の信号を通過させる場合について示したが、隣り合わない2個以上の複数個の周波数の信号を通過させるように構成してもよい。
【0057】
実施の形態3.
図13は、この発明の実施の形態3による周波数可変回路を用いた周波数可変増幅器の構成を示す図である。図13において、実施の形態3による周波数可変増幅器は、入力端子1と出力端子21の間に設けられ、上記実施の形態1の図1に示す周波数可変回路11及び増幅回路20を備える。増幅回路20は、入力が周波数可変回路11の出力端子2に接続し、出力が出力端子21に接続しており、周波数可変回路11から入力した信号の電力を増幅する。
【0058】
次に動作について説明する。
入力端子1から入力された信号は、周波数可変回路11で選択された周波数の信号成分のみが通過して増幅回路20に入力される。増幅回路20では、周波数可変回路11から入力した信号を増幅して出力端子21から出力する。出力端子21を介して出力される信号の周波数は、上記実施の形態で説明したように、周波数可変回路11のスイッチのオンとオフの切り替えにより選択する。
【0059】
以上のように、この実施の形態3によれば、周波数可変増幅器が、周波数可変回路11と、入力が周波数可変回路11の出力端子2に接続し、周波数可変回路11からの信号を入力して増幅する増幅回路20とを備えたので、周波数可変回路11のスイッチ10のオンとオフの切り替えで選択した周波数の信号を増幅したり遮断したりすることができる。
【0060】
また、上記実施の形態3において、周波数可変回路11の出力端子2のインピーダンスを増幅回路20の入力端子2のインピーダンスと同一にすることで、設計の自由度が大きくなり、通過損失の小さい回路を形成することができる。
【0061】
なお、上記実施の形態3では、1個の周波数可変回路11を増幅回路20に接続して増幅器を構成する場合を示したが、周波数可変回路と増幅回路は複数個でもよく、それぞれで通過する信号の周波数は同一でなくてもよい。
【0062】
実施の形態4.
図14は、この発明の実施の形態4による周波数可変回路を用いた周波数可変増幅器の構成を示す図である。図14において、上記実施の形態1の図1に示す周波数可変回路11の出力端子2を低雑音用増幅回路22の入力に接続することで、実施の形態4による周波数可変増幅器を低雑音増幅器23として構成している。低雑音用増幅回路22は、例えば微弱な信号を低雑音で増幅する半導体素子からなる増幅回路である。
【0063】
このように、周波数可変回路11を低雑音用増幅回路22の入力側に配置することで、周波数可変回路11で選択した周波数ごとに雑音整合を実現できる。また、低雑音用増幅器22は不要な周波数の信号が入力すると、内部の半導体素子が飽和して特性が劣化することがある。そこで、図15に示すように、増幅回路22の入力側に配置した周波数可変回路11で不要な周波数の信号を遮断することにより、特性劣化を低減できる。
【0064】
実施の形態5.
図16は、この発明の実施の形態5による周波数可変回路を用いた周波数可変増幅器の構成を示す図である。図16において、高出力用増幅回路25の出力端子24を、上記実施の形態1の図1に示す周波数可変回路11の入力に接続することで、実施の形態5による周波数可変増幅器を高出力増幅器26として構成している。
【0065】
このように、周波数可変回路11を高出力用増幅回路25の出力側に配置することで、周波数可変回路11で選択した周波数ごとに出力整合を実現できる。また、高出力増幅器は、高出力用増幅回路から出力される2倍波や3倍波等の高調波の終端条件により、効率や歪みの特性が劣化することがある。そこで、図17に示すように、増幅回路25の入力側に配置した周波数可変回路11で不要な2倍波や3倍波を遮断することにより、特性劣化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態1による周波数可変回路の構成を示す図である。
【図2】第1のスイッチがオンの場合における周波数可変回路の構成を示す図である。
【図3】図2中の周波数可変回路の具体的な態様及びその周波数特性の計算結果を示す図である。
【図4】第1のスイッチがオフの場合における周波数可変回路の構成を示す図である。
【図5】図4中の周波数可変回路の具体的な態様及びその周波数特性の計算結果を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2による周波数可変回路の構成を示す図である。
【図7】第1のスイッチ10−1がオフ、第1のスイッチ10−2,10−3がオンの場合における周波数可変回路の構成を示す図である。
【図8】図7中の周波数可変回路における周波数特性の計算結果を示す図である。
【図9】スイッチ10−2がオフでスイッチ10−1,10−3がオンの場合の回路における周波数特性を示すグラフである。
【図10】スイッチ10−3がオフでスイッチ10−1,10−2がオンの場合の回路における周波数特性を示すグラフである。
【図11】複数の周波数可変回路を直列に接続してなる周波数可変回路の通過特性を示す図である。
【図12】複数の周波数可変回路を直列に接続してなる周波数可変回路の通過特性を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態3による周波数可変回路を用いた周波数可変増幅器の構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態4による周波数可変回路を用いた周波数可変増幅器の構成を示す図である。
【図15】図14中の周波数可変回路の通過特性を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態5による周波数可変回路を用いた周波数可変増幅器の構成を示す図である。
【図17】図16中の周波数可変回路の通過特性を示す図である。
【図18】従来の周波数可変増幅器の構成を示す図である。
【図19】図18中の第1のスイッチをオフとし、第2のスイッチをオンにした場合の擬似的な等価回路を示す図である。
【図20】図18中の第1のスイッチをオンとし、第2のスイッチをオフにした場合の擬似的な等価回路を示す図である。
【図21】従来の周波数可変回路におけるインピーダンス整合を説明するためのスミスチャートの簡略図である。
【符号の説明】
【0067】
1 入力端子、2,21,24 出力端子、1a,2a インピーダンス、3,3−1〜3−3 第1の容量、4,4−1〜4−3 第1のインダクタ、5,5−1〜5−3 第2の容量、6,6−1〜6−3 第2のインダクタ、7,7−1〜7−3 第3の容量、8,8−1〜8−3 第3のインダクタ、9 第1のグランド、10,10−1〜10−3 スイッチ、11,11−1〜11−3 周波数可変回路、12,13 接点、14,15 並列共振回路、16,17 直列共振回路、18,19 端子、20 増幅回路、22 低雑音用増幅回路、23,25 低雑音増幅器、26 高出力増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に一端が接続した第1の容量と、
前記入力端子に一端が接続した第1のインダクタと、
前記第1の容量に一端が接続し、出力端子に他端が接続した第2のインダクタと、
前記第1のインダクタに一端が接続し、前記出力端子に他端が接続した第2の容量と、
一端が接地された第3の容量と、
前記第3の容量と一端が接続するとともに、前記第1のインダクタと前記第2の容量の接続点に他端が接続した第3のインダクタと、
前記第1の容量と前記第2のインダクタの接続点と、前記第1のインダクタと前記第2の容量の接続点との接続又は非接続を切り替えるスイッチとを備えた周波数可変回路。
【請求項2】
複数個の請求項1記載の周波数可変回路を直列に接続してなる周波数可変回路。
【請求項3】
複数個の周波数可変回路の各スイッチのオンオフ切り替えによって、通過信号の周波数帯域幅を制御することを特徴とする請求項2記載の周波数可変回路。
【請求項4】
複数個の周波数可変回路の各スイッチのオンオフ切り替えによって、通過信号の周波数帯域の個数を制御することを特徴とする請求項2記載の周波数可変回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の周波数可変回路と、
入力が前記周波数可変回路の出力端子に接続し、前記周波数可変回路からの信号を入力して増幅する増幅回路とを備えた周波数可変増幅器。
【請求項6】
周波数可変回路は、スイッチのオンオフ切り替えによって、増幅回路へ入力される信号のうち、所定の周波数の信号を遮断することを特徴とする請求項5記載の周波数可変増幅器。
【請求項7】
入力した信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力に入力端子が接続し、前記増幅器で増幅された信号を入力する請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の周波数可変回路とを備えた周波数可変増幅器。
【請求項8】
周波数可変回路は、スイッチのオンオフ切り替えによって、増幅回路から出力される信号のうち、所定の周波数の信号を遮断することを特徴とする請求項7記載の周波数可変増幅器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2009−239682(P2009−239682A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83942(P2008−83942)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】