説明

回路接続材料、これを用いた回路部材の接続構造及びその製造方法

【課題】対向する電極間の導電性と対向する回路部材同士の接着力を良好に維持しつつ、回路部材と回路接続部との界面での剥離を抑制することによって接続信頼性及び接続外観に優れる回路接続材料を提供すること。
【解決手段】本発明の回路接続材料は、第一の回路基板21の主面21a上に複数の第一の回路電極22が形成された第一の回路部材20と、第二の回路基板31の主面31a上に複数の第二の回路電極32が形成された第二の回路部材30とを、第一及び第二の回路電極22,32を対向させた状態で第一の回路電極22と第二の回路電極32とを電気的に接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物40と導電性粒子53とポリアミック酸粒子及びポリイミド粒子の一方又は双方を含む絶縁性粒子51とを含有し、絶縁性粒子51の平均粒径が5〜10μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料、これを用いた回路部材の接続構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤は、互いに対向する回路の電極間を電気的に接続する回路接続材料として広く用いられている。この異方導電性接着剤は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)のパネルとLCD駆動用の半導体が搭載された基板とを接続するTCP(Tape Carrier Package)実装やCOF(Chip On Flex)実装に使用されている。
【0003】
また、最近では半導体をフェイスダウンで直接LCDパネルやプリント配線板に実装する場合でも、従来のワイヤボンディング法ではなく薄型化や狭ピッチ接続に有利なフリップチップ実装が採用されている。このフリップチップ実装でも回路接続材料として異方導電性接着剤が用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
一方で、LCDモジュールのCOF化やファインピッチ化等に伴い、隣り合う電極間の短絡の防止がより一層強く要求されている。かかる要求に対して、回路接続材料の接着剤成分中に絶縁粒子を分散させて短絡を防止する技術が開発されている(例えば、特許文献5〜9参照)。
【0005】
絶縁粒子を分散させる場合、回路接続材料の接着力の低下や基板と回路接続部との界面での剥離が問題となる傾向がある。このため、基板が絶縁性有機物又はガラスである場合、あるいは基板の表面が窒化シリコン、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等である場合に、回路接続材料にシリコーン粒子を含有させて接着力を向上する方法(例えば、特許文献10参照)、または基板接着後の熱膨張率差による内部応力低減のため回路接続材料にゴム粒子を分散させる方法が開発されている(例えば、特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−120436号公報
【特許文献2】特開昭60−191228号公報
【特許文献3】特開平1−251787号公報
【特許文献4】特開平7−90237号公報
【特許文献5】特開昭51−20941号公報
【特許文献6】特開平3−29207号公報
【特許文献7】特開平4−174980号公報
【特許文献8】特許第3048197号公報
【特許文献9】特許第3477367号公報
【特許文献10】国際公開第01/014484号パンフレット
【特許文献11】特開2001−323249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、使用する基板の材質の種類によっては基板と回路接続部との界面での剥離防止は未だ十分ではない。界面剥離の発生は接続信頼性の低下や接続外観の悪化を招くため、界面剥離を十分に抑制できる回路接続部材が求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、対向する電極間の導電性と対向する回路部材同士の接着力を良好に維持しつつ、回路部材と回路接続部との界面での剥離を抑制することによって、接続信頼性及び接続外観に優れる回路接続材料、並びにかかる回路接続材料を用いた回路部材の接続構造、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の回路接続材料は、第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一及び第二の回路電極を対向させた状態で第一の回路電極と第二の回路電極とを電気的に接続するための回路接続材料であって、接着剤組成物と、導電性粒子と、ポリアミック酸粒子及びポリイミド粒子の一方又は双方を含む複数の絶縁性粒子と、を含有することを特徴とする。
【0010】
この回路接続材料を、第一及び第二の回路部材の間に介在させて第一及び第二の回路部材を接続することによって、対向する回路部材同士の接着力を高く維持しつつ回路部材と回路接続部との界面での剥離を抑制することができる。これによって、優れた剥離抑制効果を有し、接続信頼性及び接続外観に優れる回路接続材料を得ることができる。
【0011】
かかる効果が得られる理由は必ずしも定かではないが、回路接続材料にポリイミド粒子及びポリアミック酸粒子の一方又は双方を含む複数の絶縁性粒子を含有させることによって、回路接続部と回路部材との界面において両者の親和性が向上するためと推察する。
【0012】
本発明では、上記の回路接続材料中の接着剤組成物に対する絶縁性粒子の比率が質量比で0.001〜0.5であることが好ましい。これによって、より優れた剥離抑制効果と接着力とを兼ね備えた接続信頼性の高い回路接続材料を得ることができる。
【0013】
本発明では、絶縁性粒子の平均粒径が導電性粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。これによって、回路接続材料は、複数の絶縁性粒子によって形成される空隙に導電性粒子が存在する状態となり、導電性粒子の凝集を十分に抑制することができる。そのため、COF化及びファインピッチ化が進んでも、この回路接続材料を用いて回路電極や接続端子の間を接続した際に、同一回路部材上で隣り合う電極間の短絡を十分に防止することが可能となる。
【0014】
本発明では、上記の回路接続材料に含まれる絶縁性粒子の平均粒径が0.1〜10μmであることが好ましい。これによって、回路接続材料を加熱及び加圧して硬化させる前の回路接続材料の粘着性が向上し、回路部材を回路接続材料に固定する仮固定力が高く、剥離抑制効果に一層優れた回路接続材料を得ることができる。
【0015】
本発明では、絶縁性粒子の10%圧縮弾性率が導電性粒子の10%圧縮弾性率よりも小さいことが好ましい。これによって、絶縁性粒子の柔軟性が向上し、対向配置された回路電極間や接続端子間の導通が絶縁性粒子によって阻害されるのを有効に防止することができる。したがって、一層接続信頼性の高い回路接続材料を得ることができる。
【0016】
本発明では、複数の絶縁性粒子がポリアミック酸粒子を含むことが好ましい。ポリアミック酸粒子は、ポリイミド粒子よりもさらに軟らかいため、絶縁性粒子51が容易に変形し、導通の阻害を有効に防止するとともに、導電性粒子53にかかる圧力を大きくすることができる。したがって、より一層接続信頼性の高い回路接続材料を得ることができる。
【0017】
本発明ではまた、第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成され、第二の回路電極が第一の回路電極と対向配置されるように配置された第二の回路部材と、第一の回路基板と第二の回路基板との間に設けられ、第一及び第二の回路電極が電気的に接続されるように第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する回路接続部と、を備えた回路部材の接続構造であって、回路接続部が上記の回路接続材料によって形成される回路部材の接続構造を提供する。
【0018】
このような回路部材の接続構造、すなわち回路接続構造体は、上記特徴を有する回路接続材料を用いて形成されているため、対向する回路部材同士の接着力が高水準で維持され、優れた剥離抑制効果を有しており、接続信頼性及び接続外観に優れている。
【0019】
本発明ではまた、第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極及び第二の回路電極が対向配置されるように配置し、これらの間に上記の回路接続材料を介在させた状態で全体を加熱及び加圧して、第一及び第二の回路電極が電気的に接続されるように第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する工程を備える回路部材の接続構造の製造方法を提供する。
【0020】
この製造方法では、上記特徴を有する回路接続材料を用いているので、対向する回路部材同士の接着力が高水準で維持され、優れた剥離抑制効果を有しており、接続信頼性及び接続外観に優れる回路部材の接続構造を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、対向する電極間の導電性と対向する回路部材同士の接着力を高く維持しつつ回路部材と回路接続部との界面での剥離を抑制することによって、接続信頼性及び接続外観に優れる回路接続材料、並びにかかる回路接続材料を用いた回路部材の接続構造、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のフィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る回路部材の接続構造の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。
【図5】本発明の別の実施形態に係る回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。
【図6】従来からある回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。
【図7】従来からある別の回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の回路接続材料、回路部材の接続構造及びその製造方法の好適な実施形態について説明する。なお、全図面中、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。また、各実施形態における(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味する。
【0024】
<回路部材の接続構造>
図1は、本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す断面図である。本実施形態の回路部材の接続構造10は、相互に対向する回路部材20(第一の回路部材)と回路部材30(第二の回路部材)とを備えており、回路部材20と回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部60が設けられている。
【0025】
回路部材20は、回路基板21(第一の回路基板)と、回路基板21の主面21a上に設けられた複数の回路電極22(第一の回路電極)とを備える。一方、回路部材30は、回路基板31(第二の回路基板)と、回路基板31の主面31a上に設けられた複数の回路電極32(第二の回路電極)とを備える。
【0026】
回路接続部60は、回路基板21の主面21aと回路基板31の主面31aとの間に設けられており、回路電極22と32が互いに対向するように回路部材20と30を接続している。回路接続部60は、接着剤組成物40と絶縁性粒子51と導電性粒子53とを含有する回路接続材料によって形成されている。回路接続材料の詳細については後述する。回路部材20と回路部材30とは、導電性粒子53を介して電気的に接続されている。
【0027】
回路部材の接続構造10には回路電極22及び32が通常多数(場合によっては単数でもよい。)設けられている。回路電極22及び32は、導電性を有する各種の金属、金属酸化物又は合金を単独で又はこれらを2種以上組み合わせて構成することができる。金属の例としては、Zn、Al、Sb、Au、Ag、Sn、Fe、Cu、Pb、Ni、Pd、Ptなどがあり、これらを単独で又は複合して用いることが可能である。更に特殊な目的、例えば硬度や表面張力の調整及び密着性の改良などのために、上記の金属にMo、Mn、Cd、Si、Ta、Crなどの他の金属やその化合物などを添加することができる。上記の金属のうち、良好な導電性と耐腐食性の観点からNi、Ag、Au、Sn、Cuなどが好ましく用いられ、これらは単層又は複層として形成することも可能である。
【0028】
回路部材20,30としては、LCDパネル、プリント基板、又は半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品等の部材を用いることができる。
【0029】
回路部材の接続構造10の接続形態の具体例としては、ICチップ、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品とプリント基板等のチップ搭載基板との接続、電気回路相互の接続、COG実装又はCOF実装によるガラス基板とICチップ、LCDパネルとフレキシブルプリント基板との接続等が挙げられる。
【0030】
回路基板21,31としては、フレキシブルテープやガラスなどの絶縁材を用いることができる。
【0031】
回路部材の接続構造10は、例えば回路電極22及び32の少なくとも一部を対向配置し、対向させた状態で対向する回路電極間に回路接続材料(異方導電性接着剤)を介在させ、加熱及び加圧して対向する回路電極同士を直接的に接触、又は回路接続部60の導電性粒子53を介して電気的に接続する工程を備える方法により製造される。この時の加熱により回路接続材料中の接着剤組成物40が硬化する。
【0032】
<フィルム状の回路接続材料>
図2は本発明の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。フィルム状の回路接続材料61は、接着剤組成物41、導電性粒子53、及び複数の絶縁性粒子51を含有している。
【0033】
絶縁性粒子51としては、実質的にポリアミック酸からなるポリアミック酸粒子又はポリアミック酸を加熱して得られるポリイミドからなるポリイミド粒子を用いる。絶縁性粒子51としてポリアミック酸粒子及びポリイミド粒子の両方を任意の割合で用いることができる。ポリアミック酸及びポリイミドは、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の溶媒への分散性及び耐溶剤性の点を考慮して適宜選択することができる。
【0034】
非導電性粒子すなわち絶縁性粒子51であるポリアミック酸粒子又はポリイミド粒子は、例えばポリアミド酸溶液を熱イミド化処理することにより製造することができる。ポリアミック酸は、アミド基及びカルボキシル基を有するものであり、ポリイミドの前駆体である。ポリアミック酸は、加熱によりアミド基とカルボキシル基とが反応してイミド基を生成することによりポリイミドに変換される。ポリアミック酸は、例えば、下記の一般式で表される高分子鎖を有する重合体である。
【0035】
【化1】

【0036】
ポリアミック酸から生成されるポリイミドは、主鎖中にイミド基を有する重合体であり、例えば、下記一般式(2)で表される高分子鎖を有する。
【0037】
【化2】

【0038】
式(1)、(2)において、Rはジアミンからアミノ基を除いた残基、又はジイソシアナートからイソシアナート基を除いた残基を示し、Rは芳香族テトラカルボン酸誘導体のカルボン酸誘導部を除いた残基を示す。nは1以上の整数を示す。
【0039】
ポリアミック酸は、ジアミン又はジイソシアナートの一方又は双方とテトラカルボン酸又はその誘導体とを反応させることによって合成できる。
【0040】
ジアミンとしては芳香族アミンを用いることができる。芳香族アミンの具体例として、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,3’−)ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−(又は3,3’−)ジアミノジフェニルスルフィッド、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、3,3’−ベンゾフェノンジアミン、4,4’−ジ(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ジ(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジ(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス{(4−アミノフェニル)−2−プロピル}1,4−ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ビス(4−アミノフェニル−2−プロピル)−1,4−ベンゼン、ジアミノポリシロキサン化合物、2−ニトロ−1,4−ジアミノベンゼン、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、o−トリジンスルホン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロ)−メチルベンチジン、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン及び9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0041】
ジイソシアナートとしては、上記ジアミンとホスゲン等との反応によって得られるジイソシアナートが挙げられる。ジイソシアナートの具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアナート、トルイレンジイソシアナート等、上記のジアミンのアミノ基をイソシアナート基に置換したものが挙げられる。
【0042】
ジアミンと反応させるテトラカルボン酸としては隣接する2つのカルボキシル基からなる組を2組有するものを用いる。テトラカルボン酸の具体例としては、ピロメリット酸ジ無水物(1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸ジ無水物)、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンジ無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパンジ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテルジ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホンジ無水物、4,4’−{2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン}ビス(1,2−ベンゼンジカルボン酸無水物)、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレンジ無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸ジ無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジ無水物等が挙げられる。
【0043】
絶縁性粒子51の含有量は、100質量部の接着剤組成物41に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部であることがさらに好ましい。絶縁性粒子の含有量が0.1質量部未満であると、回路部材20及び30と回路接続部60との界面において絶縁性粒子の存在割合が低くなり界面剥離抑制効果が低下する傾向がある。一方、絶縁性粒子の含有量が30質量部を超えると、接着剤の凝集力が低くなり回路部材20及び30と回路接続部60との接着力が低下する傾向がある。
【0044】
なお、本実施形態に係る回路接続材料61に含まれる絶縁性粒子51は、ポリアミック酸からなるポリアミック酸粒子を含むことが好ましい。ポリアミック酸粒子は、ポリイミド粒子よりも架橋していないため、ポリイミド粒子よりも軟らかい傾向がある。このため、回路接続材料61を加熱及び加圧して対向する回路部材同士を接続する際に、絶縁性粒子51が容易に変形し、導通の阻害を有効に防止するとともに、導電性粒子53にかかる圧力が大きくなり、対向する回路電極間の接続抵抗を低減することができる。
【0045】
絶縁性粒子51の平均粒径は、0.1〜10μmが好ましく、2〜10μmがより好ましく、3〜5μmがさらに好ましい。絶縁性粒子の平均粒径が0.1μm未満であると、同一濃度下における回路接続材料中の絶縁性粒子数が多くなるため硬化前の回路接続材料の粘着性が低下して回路接続材料で回路部材20及び30を固定する仮固定力が低下する傾向がある。一方、絶縁性粒子の平均粒径が10μmを超えると、接着剤中の絶縁性粒子の数が少なくなるため、回路部材20及び30と回路接続部60との界面において絶縁性粒子の存在割合が低くなり界面剥離抑制効果が不十分となる傾向がある。
【0046】
本発明において、絶縁性粒子51及び導電性粒子53の粒径及び平均粒径は次のように測定することができる。走査型電子顕微鏡(SEM:本発明ではHITACHI製、S800)で3000倍に拡大された絶縁性粒子、導電性粒子それぞれの粒子像から少なくとも30個の粒子をランダムに選択する。拡大された粒子像を用いて、選択した複数の粒子それぞれについて最大粒径と最小粒径とを測定する。そして、それぞれの粒子の最大粒径と最小粒径の積の平方根を算出し、これを粒子1個の粒径とする。また、選択した複数の粒子それぞれについて粒子1個の粒径を求め、それらの粒径の和を測定した粒子個数で除した値を平均粒径とする。
【0047】
本実施形態において、絶縁性粒子51の平均粒径(R1)は導電性粒子53の平均粒径(R2)よりも大きいことが好ましい。R1>R2であれば、回路接続材料は、硬化後において、複数の絶縁性粒子53によって形成される空隙に導電性粒子51が存在する状態になっており、導電性粒子53が凝集するのを十分に抑制することができる。このため、同一回路部材上で隣り合う回路電極間の短絡を十分に防止することができる。また、R1を大きくすれば、回路接続材料に含まれる絶縁粒子の個数が減るため、接着剤組成物がより架橋し易くなることによる凝集力の向上等によって、接着力を向上することができる。一方、R1≦R2の場合、絶縁性粒子51は複数の導電性粒子53間に存在する空隙に充填され、導電性粒子51の凝集を十分に阻止することができない傾向がある。このため、隣り合う回路電極間の短絡を十分に防止することができない傾向がある。また、R1がR2に比べてあまりに小さくなると、絶縁性粒子51が対向する回路電極間のギャップ(通常、導電性粒子径の10〜30%)より小さくなる可能性がある。この場合、回路電極22及び32と回路接続部60との界面に絶縁性粒子51が存在する確率が低くなるため、界面剥離抑制効果が低下する傾向がある。
【0048】
本実施形態において、導電性粒子53の平均粒径(R2)に対する絶縁性粒子51の平均粒径(R1)の比(R1/R2)は、120〜280%であることがさらに好ましい。平均粒径の比(R2/R1)を120%〜280%とすることによって、同一回路部材上で隣り合う回路電極間の短絡を十分に防止しつつ対向する回路電極間の接続抵抗を十分に低くすることができ、また、接着力を一層向上することができる。したがって、接続信頼性に特に優れた回路接続材料を得ることができる。
【0049】
上記の平均粒径の比(R1/R2)が120%未満の場合、同一回路部材上で隣り合う回路電極間の短絡を十分に防止できない傾向があり、平均粒径の比(R2/R1)が280%を超えると、回路接続部60において導電性粒子53にかかる圧力が分散されて接続抵抗が高くなる傾向にある。
【0050】
絶縁性粒子51は、ある程度の柔軟性を有していることが好ましい。絶縁性粒子が柔軟性を有していれば、導電性粒子によって対向する回路電極間の導通が確保される機会を増やすことができる。このため、絶縁性粒子51の10%圧縮弾性率(K値)は、導電性粒子53のK値よりも小さいことがより好ましい。これによって、絶縁性粒子51の柔軟性が向上し、対向配置された回路電極22及び32間の導通が絶縁性粒子51によって阻害されるのを有効に防止することができる。また、対向する回路電極22及び32間の導通を一層確実にする観点から、絶縁性粒子51の10%圧縮弾性率(K値)は1〜1000kgf/mm2であることが好ましい。なお、回路部材の接続構造における導電性粒子53による導通は、接続時の加熱及び加圧の条件等を変更するによって確保することも可能であるが、絶縁性粒子51が上述の柔軟性に関わる特性を有することによって、接続信頼性が特に優れた回路接続材料を得ることができる。
【0051】
ここで、10%圧縮弾性率(K値)とは、絶縁性粒子51又は導電性粒子53を10%圧縮変形させた際の弾性率をいい、株式会社フィッシャーインストルメンツ製H−100微小硬度計により測定することができる。
【0052】
導電性粒子53としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等を用いることができる。導電性粒子53は、例えば中心部分を構成する核体を1又は2以上の層で被覆する被覆層を形成することによって作製することができる。この場合、導電性粒子53の被覆層の最外層は導電性の層とする。
【0053】
例えば、導電性粒子53は、Niなどの遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆して作製することができる。また、導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等の絶縁粒子に金属等の導電性物質を被覆したものであってもよい。十分なポットライフを得る観点から、導電性粒子の最外層はNi、Cuなどの遷移金属類よりもAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましく、このうちAuが最も好ましい。
【0054】
導電性粒子53が加熱及び加圧により変形すれば、回路部材の接続構造を形成する際に対向する回路電極の接触面積が増加されて接続信頼性を向上することができる。このため、例えば導電性粒子として熱溶融金属粒子を用いること又は導電性粒子の核体にプラスチック製の粒子を用いることが好ましい。
【0055】
導電性粒子53の最外層に貴金属層を設ける場合、良好な抵抗を得る観点から、通常は該貴金属層の厚みが100Å以上であることが好ましい。しかし、該厚みが100Å以上であっても、Niなどの遷移金属の外側に貴金属類の被覆層を設けた場合、貴金属類の被覆層の欠損や導電性粒子の混合分散時に生じる貴金属類の被覆層の欠損等により、Niなどの遷移金属が露出することがある。その結果、Niなどの遷移金属が有する酸化還元作用によって遊離ラジカルが発生しポットライフ低下を引き起こす可能性がある。このため、接着剤組成物としてラジカル重合系の成分を使用する場合には貴金属類の被覆層の厚みが300Å以上であることが好ましい。
【0056】
導電性粒子53の含有量は、100体積部の接着剤組成物41に対して0.1〜30体積部とすることが好ましい。導電性粒子による隣接回路の短絡等を確実に防止する観点から、導電性粒子53の含有量は0.1〜10体積部とすることがより好ましい。
【0057】
導電性粒子53の10%圧縮弾性率(K値)は、接続抵抗の安定化及び接続信頼性保持の観点から、100〜1000kgf/mmであることが好ましい。
【0058】
接着剤組成物41としては、熱硬化性成分を含有するものが好適に用いられる。接着剤組成物41は、(a)エポキシ樹脂と(b)潜在性硬化剤とを、又は(c)ラジカル重合性物質と(d)遊離ラジカル発生剤とを熱硬化性成分として含有することができる。接着剤組成物41は、(a)エポキシ樹脂、(b)潜在性硬化剤、(c)ラジカル重合性物質、及び(d)遊離ラジカル発生剤を含有することもできる。
【0059】
(a)エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、ビスフェノールF及び/又はビスフェノールAD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物を用いることができる。
【0060】
(a)エポキシ樹脂として上述の化合物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。エポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止をするうえで好ましい。
【0061】
(b)潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0062】
可使時間の延長の観点から、上述の潜在性硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化することが好ましい。
【0063】
(c)ラジカル重合性物質とは、ラジカルにより重合する官能基を有する物質である。ラジカル重合性物質としては、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等を例示できる。
【0064】
アクリレート又はメタクリレートとしては、例えば、ウレタンアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。上記各種の化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を用いる場合、その配合量は金属等の無機物表面での接着強度を向上する観点から、100質量部の接着剤組成物41に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜5質量部とすることがより好ましい。
【0066】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシル(メタ)アクリレートとの反応物として得られる。具体的には、2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート、2−アクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート等があげられる。これらの化合物を単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するものが好ましく、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−P−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシル]ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが例示できる。これらの化合物を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、アリルフェノール、アリルフェニルエーテル、安息香酸アリル等のアリル化合物と併用して用いてもよい。
【0068】
上述の(c)ラジカル重合性物質の粘度は、接着剤組成物硬化前の回路部材の仮固定を容易にする観点から、100000〜1000000mPa・s(25℃)であることが好ましく、100000〜500000mPa・sの粘度(25℃)であることがより好ましい。ラジカル重合性物質の粘度は、市販のE型粘度計を用いて測定することができる。
【0069】
(c)ラジカル重合性物質の中でもウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートが接着性の観点から好ましい。また、耐熱性を向上させるために、後述する有機過酸化物による橋かけ後の重合物のTgが単独で100℃以上となるようなラジカル重合性物質を併用することが特に好ましい。このようなラジカル重合性物質としては、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基、トリアジン環のうち少なくとも一種を有するものを用いることができる。特に、トリシクロデカニル基やトリアジン環を有するラジカル重合性物質を好適に用いることができる。
【0070】
(d)遊離ラジカル発生剤とは、加熱又は光により遊離ラジカルを発生する硬化剤である。遊離ラジカル発生剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものを例示できる。遊離ラジカル発生剤は目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等に応じて適宜選定されるが、高反応性とポットライフの観点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましい。この場合の遊離ラジカル発生剤の配合量は、100質量部の接着剤組成物41に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0071】
具体的には、(d)遊離ラジカル発生剤としてジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類等の化合物を用いることができる。このうち、回路部材の回路電極の腐食を抑える観点からパーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類が好ましく、さらに高反応性が得られる観点からパーオキシエステル類がより好ましい。
【0072】
ジアシルパーオキサイド類としては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等を用いることができる。
【0073】
パーオキシジカーボネート類としては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等を用いることができる。
【0074】
パーオキシエステル類としては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等を用いることができる。
【0075】
パーオキシケタール類としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等を用いることができる。
【0076】
ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等を用いることができる。
【0077】
ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等を用いることができる。
【0078】
(d)遊離ラジカル発生剤は上述の化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
接着剤組成物41は、上述した成分に加えて分解促進剤、抑制剤等を含んでもよい。また、必要に応じて、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。
【0080】
上述した成分で構成されるフィルム状の回路接続材料61は、回路部材の接続時に接着剤組成物41が溶融して回路接続材料の各成分が流動し、対向する回路部材を接続した後、硬化して接続を保持するものである。このためフィルム状の回路接続材料61の流動性は重要な因子である。
【0081】
フィルム状の回路接続材料61の流動性は、例えば、以下の手順で定量化して評価することができる。厚み0.7mm、15mm×15mmのガラス板に、厚み35μm、5mm×5mmの回路接続材料を挟み、170℃、2MPaの条件で10秒間加熱及び加圧する。そして、初期の面積(A)と加熱及び加圧後の面積(B)とから、流動性(B)/(A)を計算することができる。この流動性(B)/(A)の値が、1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。(B)/(A)の値が1.3未満の場合は、流動性が悪く良好な回路部材の接続が得られない傾向がある。一方、(B)/(A)の値が3.0を超える場合は気泡が発生しやすく接続信頼性に劣る傾向がある。
【0082】
回路接続材料の硬化後の40℃での弾性率は、高温高湿時における接続抵抗の安定化及び接続信頼性保持の観点から100〜3000MPaであることが好ましく、500〜2000MPaであることがより好ましく、1100〜1900MPaであることがさらに好ましい。なお、当該弾性率は、株式会社フィッシャーインストルメンツ製H−100微小硬度計により測定することができる。
【0083】
本実施形態にかかるフィルム状の回路接続材料61は、接着剤組成物41、絶縁性粒子51及び導電性粒子53の他に、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂及びイソシアネート類等を含有することができる。
【0084】
フィルム状の回路接続材料61は、接続信頼性等の向上の観点から充填材を含有することが好ましい。充填材は、その最大径が導電性粒子53の平均粒径未満であれば使用することができる。充填材の含有量は、接着剤組成物100体積部に対して5〜60体積部であることが好ましい。充填材の含有量が60体積部を越えると、回路部材接続構造の接続信頼性向上の効果が得られない傾向がある。
【0085】
フィルム状の回路接続材料61に用いるカップリング剤としては、接着性の向上の観点からビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種以上の基を含有する化合物を用いることが好ましい。
【0086】
本発明にかかる回路接続材料は、フィルム状とすることによって取り扱いを容易にすることができる。この場合、フィルム形成性を付与するための高分子成分を回路接続材料中に含有することが好ましい。この高分子成分としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルウレタン樹脂などを用いることができる。これらの中でも、ポリエステルウレタン樹脂が好ましい。
【0087】
ポリエステルウレタン樹脂としては、芳香族環状構造あるいは脂肪族環状構造を有する化合物等を用いることができる。
【0088】
上述したフィルム形成性高分子のうち、接着性を向上する観点から水酸基などの官能基を有する樹脂が好ましい。また、上述したフィルム形成性高分子をラジカル重合性の官能基で変性したものを用いることができる。フィルム形成性高分子の重量平均分子量は10000〜1000000が好ましい。フィルム形成性高分子の重量平均分子量が1000000を超えると回路接続材料調製時における混合性が低下する傾向がある。
【0089】
フィルム状の回路接続材料61は、ICチップと基板との接着や電気回路相互を接着するための接着剤として有用である。第一の回路電極(接続端子)を有する第一の回路部材と第二の回路電極(接続端子)を有する第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極とが互いに対向するように配置し、対向配置された第一の回路電極と第二の回路電極との間にフィルム状の回路接続材料61を介在させた状態で加熱及び加圧することによって、互いに対向する第一の回路電極及び第二の回路電極を電気的に接続させて、回路部材の接続構造すなわち回路接続構造体を構成することができる。
【0090】
<回路部材の接続構造の製造方法>
次に本発明に係る回路部材の接続構造の製造方法の一実施形態を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る回路部材の接続構造の製造方法を模式的に示す工程断面図である。図3(a)は回路部材同士を接続する前の回路部材の断面図であり、図3(b)は回路部材同士を接続する際の回路部材の接続構造の断面図であり、図3(c)は回路部材同士を接続した回路部材の接続構造の断面図である。
【0091】
まず、図3(a)に示すように、LCDパネル73上に設けられた回路電極72の上に、回路接続材料をフィルム状に成形してなるフィルム状の回路接続材料61を載置する。
【0092】
次に、図3(b)に示すように、位置あわせをしながら回路電極76が設けられた回路基板75を回路電極72と回路電極76とが互いに対向するようにフィルム状の回路接続材料61の上に載置して、フィルム状の回路接続材料61を回路電極72と回路電極76との間に介在させる。なお、回路電極72及び76は奥行き方向に複数の電極が並んだ構造を有する(図示しない)。
【0093】
フィルム状の回路接続材料61はフィルム状であるため取扱いが容易である。このため、このフィルム状の回路接続材料61を回路電極72と回路電極76との間に容易に介在させることができ、LCDパネル73と回路基板75との接続作業を容易にすることができる。
【0094】
次に、加熱しながらLCDパネル73と回路基板75とを介して、フィルム状の回路接続材料61を図3(b)の矢印Aの方向に加圧して硬化処理を行う。これによって図3(c)に示すような回路部材同士を接続した回路部材の接続構造70が得られる。硬化処理の方法は、使用する接着剤組成物に応じて、加熱及び光照射の一方又は双方を採用することができる。
【0095】
従来では、LCDパネル73上の互いに隣り合う回路電極72間において、LCDパネル73と回路接続部60との界面にて剥離が発生し、接続信頼性及び接続外観が悪化する問題があった。しかし、本実施形態に係るフィルム状の回路接続材料61を用いることによって、LCDパネル73上で互いに隣り合う回路電極72間において、LCDパネル73と回路接続部60との界面、詳しくはLCDパネル73の最外層に形成されるSiN、SiO2などのパッシベーション膜と回路接続部60との界面での剥離の発生を抑制することができる。したがって、接続信頼性及び接続外観に優れる回路部材の接続構造を提供することが可能となる。
【0096】
本発明に係る回路部材の接続材料で形成された回路部材の接続構造が接続外観に優れることは、例えば、LCDパネルとLCD駆動用半導体が搭載された基板とを接続した回路接続構造体の外観を光学顕微鏡(例えば、オリンパス社製、商品名:BH2−MJL)で観察することによって評価することができる。
【0097】
図4は、本発明の一実施形態に係る回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。該回路接続構造体は、接着剤組成物100質量部に対して、粒径3μmのポリイミド粒子を10質量部及びポリスチレンを有する粒径4μmの導電性粒子を6質量部含有する回路接続材料によって形成されている。
【0098】
図5は、本発明の別の実施形態に係る回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。該回路接続構造体は、接着剤組成物100質量部に対して、粒径2μmのポリアミック酸粒子を10質量部及びポリスチレンを有する粒径4μmの導電性粒子を6質量部含有する回路接続材料によって形成されている。
【0099】
図6は、従来からある回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。該回路接続構造体は、接着剤組成物100質量部に対して、粒径6μmのポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる粒子を10質量部及びポリスチレンを有する粒径4μmの導電性粒子を6質量部含有する回路接続材料によって形成されている。
【0100】
図7は、従来からある別の回路接続構造体の外観をLCDパネル側から撮影した写真である。該回路接続構造体は、接着剤組成物100質量部に対して、粒径2μmのシリコーンからなる粒子を10質量部及びポリスチレンを有する粒径4μmの導電性粒子を6質量部含有する回路接続材料によって形成されている。
【0101】
従来の回路接続材料で形成された回路接続構造体(図6及び図7)には、LCDパネル上の隣り合う電極間において、虹色の着色(写真で白くかすれている部分)が生じる。かかる着色現象は、回路基板と回路接続部との界面で剥離が発生していることを示唆している。
【0102】
一方、本発明に係る回路部材の接続材料で形成された回路接続構造体(図4及び図5)には、LCDパネル上の隣り合う電極間において、回路基板と回路接続部との界面に虹色の着色(写真で白くかすれている部分)は生じない。したがって、本発明の回路接続材料を用いることにより、回路部材と回路接続部との界面で剥離を抑制することができることが確認できる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0104】
例えば、回路接続材料を2層以上に分割すること、すなわち、エポキシ樹脂のような反応性樹脂を含有する層と潜在性硬化剤を含有する層とに分割したり、遊離ラジカルを発生する硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層とに分割したりすることも可能である。かかる構成をとった場合、高精細化とポットライフ向上との効果が得られる。この場合、絶縁性粒子は各層に存在しても、一層にのみ存在しても適用可能であるが、接続信頼性向上の観点から回路部材と接する層に導電性粒子が存在していることが好ましい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の内容を、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡績社製、商品名:UR8240)50質量部をトルエン/メチルエチルケトン=50/50の混合溶剤に溶解してポリエステルウレタン樹脂濃度が40質量%の溶液を作製した。該溶液にラジカル重合性物質と遊離ラジカルを発生する硬化剤とを混合し攪拌して、接着剤組成物(バインダ樹脂)の溶液を得た。
【0107】
ラジカル重合性物質としては、ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:UA−5500T)20質量部と、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製、商品名:M−215)20質量部と、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製、商品名:DCP−A)10質量部と、2−メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート(共栄社化学社製、商品名:P−2M)3質量部とを用いた。
【0108】
硬化剤としては、ジアシルパーオキサイド(日本油脂製、商品名:パーロイルL)2質量部と、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂製、商品名:ナイパーBMT)3質量部とを用いた。
【0109】
次に、平均粒径3.8μmのポリスチレン粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、さらにこのニッケル層の外側に厚み0.04μmの金層を設けることによってポリスチレン粒子を核とする平均粒径4μmの導電性粒子〔10%圧縮弾性率(K値):410Kgf/mm〕を作製した。
【0110】
次に、絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子〔荒川化学株式会社製,10%圧縮弾性率(K値):390Kgf/mm〕を準備した。
【0111】
上述の通り調製したバインダ樹脂の溶液に、ポリウレタン樹脂50質量部に対して7.5質量部の該絶縁性粒子と、バインダ樹脂に対して3体積%の該導電性粒子とを配合して分散させ、分散液を得た。
【0112】
片面がシリコーンで表面処理された厚み50μmのPETフィルム上に、該分散液を塗工装置コンマコータで塗布した後、70℃で10分間熱風乾燥することによって接着剤層の厚みが18μmの回路接続材料(幅15cm及び長さ60m)を得た。
【0113】
得られた回路接続材料を1.2mm幅に裁断して接着剤面を内側(PETフィルム側を外側)にして内径40mm及び外径48mmのプラスチック製リールの円周面(厚み1.5mm)に50m巻きつけることによってテープ状の回路接続材料を作製した。
【0114】
(実施例2)
硬化剤として、ベンゾイルパーオキサイドを用いずにジアシルパーオキサイド(日本油脂製、商品名:パーロイルL)4質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0115】
(実施例3)
硬化剤として、ジアシルパーオキサイドを用いずにベンゾイルパーオキサイド(日本油脂製、商品名:ナイパーBMT)5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0116】
(実施例4)
硬化剤として、ジアシルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドとの代わりにパーオキシエステル(日本油脂製、商品名:パーヘキサ25O)4質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0117】
(実施例5)
硬化剤として、ジアシルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドとの代わりにアルキルパーエステル(日化テクノサービス製、商品名:HTP−40)5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0118】
(実施例6)
ポリスチレン粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、さらにこのニッケル層の外側に厚み0.04μmの金層を設けることによって、ポリスチレン粒子を核とする平均粒径3μmの導電性粒子〔10%圧縮弾性率(K値):410Kgf/mm〕を作製した。
【0119】
導電性粒子として、平均粒径4μmの導電性粒子の代わりに、上記の通り作製した平均粒径3μmの導電性粒子をバインダ樹脂に対して3体積%配合したこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0120】
(実施例7)
ポリスチレン粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、さらにこのニッケル層の外側に厚み0.04μmの金層を設けることによって、ポリスチレン粒子を核とする平均粒径5μmの導電性粒子〔10%圧縮弾性率(K値):410Kgf/mm〕を作製した。
【0121】
導電性粒子として、平均粒径4μmの導電性粒子の代わりに、上記の通り作製した平均粒径5μmの導電性粒子をバインダ樹脂に対して3体積%配合したこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0122】
(実施例8)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径0.5μmのポリイミド粒子〔荒川化学株式会社製,10%圧縮弾性率(K値):480Kgf/mm〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0123】
(実施例9)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径2μmのポリイミド粒子〔荒川化学株式会社製,10%圧縮弾性率(K値):450Kgf/mm〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0124】
(実施例10)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径5μmのポリイミド粒子〔荒川化学株式会社製,10%圧縮弾性率(K値):390Kgf/mm〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0125】
(実施例11)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径10μmのポリイミド粒子〔荒川化学株式会社製,10%圧縮弾性率(K値):390Kgf/mm〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0126】
(実施例12)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径2μmのポリアミック酸粒子〔荒川化学株式会社製,10%圧縮弾性率(K値):430Kgf/mm〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0127】
(実施例13〜15、17〜20)
絶縁性粒子である粒径3μmのポリイミド粒子(荒川化学株式会社製)の使用量を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0128】
(実施例16)
絶縁性粒子である粒径3μmのポリイミド粒子(荒川化学株式会社製)の使用量を10質量部に変更し、実施例6で作製した平均粒径3μmの導電性粒子〔10%圧縮弾性率(K値):410Kgf/mm〕をバインダ樹脂に対してさらに3体積%配合したこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0129】
(比較例1)
絶縁性粒子を用いないこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0130】
(比較例2)
絶縁性粒子を用いないこと以外は、実施例3と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0131】
(比較例3)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径6μmのポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる粒子〔松浦株式会社製、商品名:PB3006、10%圧縮弾性率(K値):320Kgf/mm〕を10質量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0132】
(比較例4)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径10μmのポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる粒子〔松浦株式会社製、商品名:PB3011D、10%圧縮弾性率(K値):250Kgf/mm、〕を10質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0133】
(比較例5)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径2μmのシリコーンからなる粒子〔東レダウコーニングシリコーン製、商品名:E−605、10%圧縮弾性率(K値):30Kgf/mm〕を10質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0134】
(比較例6)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径2μmのシリコーンからなる粒子〔信越化学工業株式会社製、商品名:KMP605、10%圧縮弾性率(K値):35Kgf/mm〕を10質量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0135】
(比較例7)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径1.5μmのメタクリル酸エステル共重合物からなる粒子〔綜研化学株式会社製、商品名:MX150、10%圧縮弾性率(K値):400Kgf/mm、〕を10質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0136】
(比較例8)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径3μmのメタクリル酸エステル共重合物からなる粒子〔綜研化学株式会社製、商品名:MX300、10%圧縮弾性率(K値):350Kgf/mm〕を10質量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0137】
(比較例9)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径5μmのメタクリル酸エステル共重合物からなる粒子〔綜研化学株式会社製、商品名:MX500、10%圧縮弾性率(K値):330Kgf/mm〕を10質量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0138】
(比較例10)
絶縁性粒子として、粒径3μmのポリイミド粒子の代わりに、粒径0.1μmのアクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合体からなる粒子〔ガンツ化成株式会社製、商品名:AC3364P、10%圧縮弾性率(K値):100Kgf/mm、〕を10質量部用いたこと以外は実施例1と同様にしてテープ状の回路接続材料を作製した。
【0139】
<界面剥離評価用の回路接続構造体の作製>
まず、各実施例及び各比較例で作製した回路接続材料を所定の大きさ(幅1.2mm、長さ3cm)にカットした。厚み1.1mmのソーダライムガラス上に、SiO膜と表面抵抗が10〜15Ω/□のITO膜とが形成され、さらにその表面上にCrが形成されたピッチ50μmのガラス基板を準備した。該ガラス基板と所定の大きさにカットされた回路接続材料の接着剤面とを向かい合わせて接触させ、70℃、1MPaの条件で2秒間加熱及び加圧して、該ガラス基板上に回路接続材料を転写した。その後、転写した回路接続材料上のPETフィルムを剥離した。
【0140】
次いで、厚み8μmのすずめっき銅回路を600本(ピッチ50μm)有するフレキシブル回路板(FPC)と転写した回路接続材料とを、ガラス基板とFPCの電極同士が向かい合うようにして接触させて、24℃、0.5MPaの条件で1秒間加圧して仮固定した。これによって、回路接続材料がガラス基板とFPCとの間に挟まれるように積層された積層体を作製した。
【0141】
該積層体をガラス基板、回路接続材料及びFPCの積層方向に加圧できるように本圧着装置に設置した。200μmの厚みのシリコーンゴムをクッション材とし、積層体をヒートツールによって160℃、3MPaの条件で7秒間加熱及び加圧することによって界面剥離評価用の回路接続構造体を得た。
【0142】
(界面剥離の評価)
得られた回路接続構造体の界面剥離の有無を次の通り評価した。回路接続構造体を光学顕微鏡(オリンパス社製、商品名:BH2−MJL)でガラス基板側から観察した。ガラス基板上の隣り合うITO電極間において、ガラス基板と回路接続部との界面に虹色の着色が観察された回路接続構造体を界面剥離有り、ガラス基板と回路接続部の界面に虹色の着色が観察されない回路接続構造体を界面剥離無し、と評価した。
【0143】
<接続抵抗及び接着力評価用回路接続構造体の作製>
まず、各実施例及び各比較例で作製した回路接続材料を所定の大きさ(幅1.2mm及び長さ3cm)にカットした。ITOコートガラス基板(表面抵抗:15Ω/□)の電極が設けられた面と所定の大きさにカットした回路接続材料の接着剤面とを向かい合わせて接触させ、70℃、1MPaの条件で2秒間加熱及び加圧して、ITOコートガラス基板上に回路接続材料を転写した。その後、転写した回路接続材料上のPETフィルムを剥離した。
【0144】
次に、厚み8μmのすずめっき銅回路を600本(ピッチ50μm)有するフレキシブル回路板(FPC)と転写した回路接続材料とを、ITOコートガラス基板とFPCとの電極同士が向かい合うにして接触させて、24℃、0.5MPaの条件で1秒間加圧して仮固定した。これによって、回路接続材料がITOコートガラス基板とFPCとの間に挟まれるように積層された積層体を作製した。
【0145】
ITOコートガラス基板、回路接続材料及びFPCの積層方向に加圧できるように、得られた該積層体を本圧着装置に設置した。200μmの厚みのシリコーンゴムをクッション材とし、該積層体をヒートツールによって160℃、3MPaの条件で7秒間加熱及び加圧することによって接続抵抗及び接着力評価用の回路接続構造体を作製した。
【0146】
(接着力の測定)
作製した接着力評価用の回路接続構造体からFPCを剥離するために必要な力を接着力として測定した。測定は、JIS Z−0237に準拠し、90度剥離、剥離速度50mm/分として、接着力測定装置(オリエンテック社製、商品名:テンシロン RTM−50)を用いて接着力測定を行った。得られた結果は表1及び表2の通りであった。
【0147】
(接続抵抗の測定)
作製した接続抵抗評価用の回路接続構造体を用いて回路接続部を含む回路間の抵抗値を測定するため、FPC上で互いに隣り合う回路間の抵抗値をマルチメータ(装置名:TR6845、アドバンテスト社製)で測定した。異なる隣接回路間で40点測定を行い、それらの平均値を接続抵抗とした。接続抵抗は表1及び表2の通りであった。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【符号の説明】
【0150】
10…回路部材の接続構造、20…回路部材(第一の回路部材)、21…回路基板(第一の回路基板)、21a…主面、22…回路電極(第一の回路電極)、30…回路部材(第二の回路部材)、31…回路基板(第二の回路基板)、31a…主面、32…回路電極(第二の回路電極)、40,41…接着剤組成物、51…絶縁性粒子、53…導電性粒子、60…回路接続部、61…フィルム状の回路接続材料、70…回路部材の接続構造、72,76…回路電極、73…LCDパネル、74…液晶表示部、75…回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一及び前記第二の回路電極を対向させた状態で前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを電気的に接続するための回路接続材料であって、
接着剤組成物と、導電性粒子と、ポリアミック酸粒子及びポリイミド粒子の一方又は双方を含む絶縁性粒子と、を含有し、前記絶縁性粒子の平均粒径が5〜10μmであることを特徴とする回路接続材料。
【請求項2】
第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一及び前記第二の回路電極を対向させた状態で前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを電気的に接続するための回路接続材料であって、
接着剤組成物と、導電性粒子と、ポリイミド粒子を含む絶縁性粒子と、を含有し、前記ポリイミド粒子の含有量が接着剤組成物100質量部に対して0.5〜10質量部であることを特徴とする回路接続材料。
【請求項3】
前記導電性粒子は、遷移金属類の表面を貴金属類で被覆したもの又は絶縁粒子に金属を被覆したものである請求項1又は2に記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記接着剤組成物に対する前記絶縁性粒子の比率が質量比で0.001〜0.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記絶縁性粒子の平均粒径が前記導電性粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
前記導電性粒子の平均粒径に対する前記絶縁性粒子の平均粒径の比が120〜280%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項7】
前記絶縁性粒子の平均粒径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項2に記載の回路接続材料。
【請求項8】
前記絶縁性粒子の10%圧縮弾性率が前記導電性粒子の10%圧縮弾性率よりも小さいことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項9】
前記絶縁性粒子がポリアミック酸粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項10】
第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成され、前記第二の回路電極が前記第一の回路電極と対向配置されるように配置された第二の回路部材と、前記第一の回路基板と前記第二の回路基板との間に設けられ、前記第一及び第二の回路電極が電気的に接続されるように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接続する回路接続部と、を備えた回路部材の接続構造であって、
前記回路接続部が、請求項1〜9のいずれか一項に記載の回路接続材料によって形成されていることを特徴とする回路部材の接続構造。
【請求項11】
第一の回路基板の主面上に複数の第一の回路電極が形成された第一の回路部材と第二の回路基板の主面上に複数の第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極及び第二の回路電極が対向配置されるように配置し、これらの間に請求項1〜9のいずれか一項に記載の回路接続材料を介在させた状態で全体を加熱及び加圧して、前記第一及び第二の回路電極が電気的に接続されるように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接続する工程を備えることを特徴とする回路部材の接続構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−3924(P2011−3924A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202171(P2010−202171)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【分割の表示】特願2007−160577(P2007−160577)の分割
【原出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】