説明

回路部材接続用接続部材、回路部材接続構造体の製造方法及び回路部材接続構造体

【課題】回路部材への熱の影響が少ない温度条件で接続信頼性を得ることができる回路部材接続用接続部材、回路部材接続構造体の製造方法及び回路部材接続構造体を提供する。
【解決手段】第1の電極を有する第1の回路部材と、該第1の回路部材に対向する第2の電極及びポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホンのうちの1種以上を含む表面層を有する第2の回路部材と、の間に介在させ、第1の電極及び第2の電極を電気的に接続し回路部材同士を接着するための接続部材であって、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第1の接着剤層10と、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第2の接着剤層30とを備え、第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)よりも大きい回路部材接続用接続部材100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部材接続用接続部材、回路部材接続構造体の製造方法及び回路部材接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
電極を有する回路部材同士を接続するための接続部材として、異方導電性フィルム(ACF)、異方導電性ペースト(ACP)、非導電性フィルム(NCF)等の熱硬化型接着剤が知られている。このような熱硬化型接着剤の多くは熱硬化性樹脂を含有する接着剤成分と、必要により配合される導電性粒子とを含みフィルム状に形成されており、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の支持体に積層した状態で製品化されている。接着剤成分としては、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と、重合開始剤としてカチオン発生剤を含む接着剤組成物(例えば、下記特許文献1を参照)や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と、重合開始剤としてアニオン発生剤とを含む接着剤組成物(例えば、下記特許文献2を参照)などが利用されている。
【0003】
上記の接続部材による回路部材の接続は、例えば、プリント配線板基板、LCDガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板と、IC,LSI等の半導体素子やパッケージなどの実装部品との間に回路部材を介在させて熱圧着することにより、熱硬化性樹脂を硬化させて部材間の機械的固着を得ると共に、対抗する電極間を直接または導電性粒子を介して接触させて電気的接続を得ている。
【0004】
例えば、LCDガラス基板にICチップを実装するChip−On−Glass(COG)実装では、導電性粒子を含む接続部材を用いて液晶駆動用ICチップを直接回路電極が設けられたガラスパネル上に接合することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2008/056773号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2007/123003号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液晶駆動用ICチップが搭載された基板には、回路を保護するための回路保護膜としてポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン等の耐熱性樹脂を貼付した基板が存在する。
【0007】
この保護膜は製造工程で汚染物質を吸着しやすく、上記特許文献1に記載の熱硬化型接着剤で接続を行うとカチオン発生剤の活性を阻害し重合反応が不十分となることにより接続信頼性が低下するという問題が発生した。
【0008】
一方、上記特許文献2に記載のアニオン発生剤を含む熱硬化型接着剤を使用した場合、カチオン発生剤を含むものに比べて実装温度を高温化する必要がある。実装温度を高温化すると液晶ガラスパネル(以下、パネルという)の反りが発生しやすくなる。パネルの反りが発生するとディスプレイの表示品位が低下するという問題が生じる。パネルの反りは、液晶駆動用ICチップ(以下、ICチップ)実装時にパネルとICチップの温度の差により発生する。すなわち、ICチップはパネルよりも大きな熱がかかるため熱による伸縮が大きく、実装時にパネルよりも伸びが大きいICチップが実装終了後常温に戻る際にパネルに応力がかかってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐熱性樹脂を有する回路部材を接続する場合であっても回路部材への熱の影響が十分少ない温度条件で十分な接続信頼性を得ることができる回路部材接続用接続部材、並びにそれを用いた回路部材接続構造体の製造方法及び回路部材接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、第1の電極を有する第1の回路部材と、該第1の回路部材に対向する第2の電極及びポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホンのうちの1種以上を含む表面層を有する第2の回路部材と、の間に介在させ、加熱加圧により第1の電極及び第2の電極を電気的に接続するとともに回路部材同士を接着するための接続部材であって、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第1の接着剤層と、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第2の接着剤層とを備え、第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)よりも大きく、第1の接着剤層が第1の回路部材と接し第2の接着剤層が第2の回路部材と接するように構成されている回路部材接続用接続部材を提供する。
【0011】
このようなカチオン発生剤の濃度が異なる接着剤層を有する本発明の回路部材接続用接続部材によれば、カチオン発生剤の活性を阻害しやすい回路部材にカチオン発生剤の濃度が高い接着剤層を接着することにより、回路部材同士を十分に接着して十分な接続信頼性を得ることができる。
【0012】
特に、本発明の回路部材接続用接続部材によれば、カチオン発生剤の活性を阻害するポリイミドなどの保護膜を有する回路部材に対して実装時に生じる応力を緩和できる接続条件で十分な接続信頼性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の回路部材接続用接続部材は、第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が前記第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)の1.5〜4倍であることが好ましい。
【0014】
更に、第2の接着剤層の厚みが、回路部材接続用接続部材の厚みに対して10〜80%であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第1の接着剤層と、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第2の接着剤層とを備え、第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)よりも大きい回路部材接続用接続部材を、第1の電極を有する第1の回路部材と、該第1の回路部材に対向する第2の電極及びポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホンのうちの1種以上が含まれる表面層を有する第2の回路部材と、の間に第1の接着剤層が第1の回路部材と接し第2の接着剤層が第2の回路部材と接するように配して、加熱加圧することにより、第1の電極及び第2の電極が電気的に接続されているとともに回路部材同士が接着した回路部材接続構造体を得る回路部材接続構造体の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の回路部材接続構造体の製造方法において、第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)の1.5〜4倍であることが好ましい。
【0017】
また、第2の接着剤層の厚みが、回路部材接続用接続部材全体の厚みに対して10〜80%であることが好ましい。
【0018】
本発明はまた、本発明の回路部材接続構造体の製造方法により得られる回路部材接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐熱性樹脂を有する回路部材を接続する場合であっても回路部材への熱の影響が十分少ない温度条件で十分な接続信頼性を得ることができる回路部材接続用接続部材、並びにそれを用いた回路部材接続構造体の製造方法及び回路部材接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る回路部材接続用接続部材の好適な実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る回路部材接続構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明に係る回路部材接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る回路部材接続用接続部材の好適な実施形態を示す模式断面図である。図1の(a)に示される回路部材接続用接続部材100は、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第1の接着剤層10と、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有し、当該カチオン発生剤の濃度(質量%)が第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)よりも大きい第2の接着剤層30と、これらの間に設けられた第3の接着剤層20と、が積層された3層構造を有する。第1の接着剤層10は、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する接着剤組成物12と、接着剤組成物12に分散された導電粒子14とを含んでなる。また、図1の(b)に示される回路部材接続用接続部材110は、回路部材接続用接続部材100とは第1の接着剤層が導電粒子を含んでいない点で異なり、それ以外は同様の構成を有している。
【0022】
図1に示される回路部材接続用接続部材は3層構造を有しているが、第3の接着剤層が設けられていない2層構造としてもよく、或いは、第1の接着剤層と第2の接着剤層との間に2以上の接着剤層が設けられていてもよい。また、各接着剤層は、導電粒子を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0023】
更に、本実施形態の回路部材接続用接続部材は、使用に際して剥離される基材フィルムや保護フィルムを、第1の接着層の第2の接着剤層とは反対側の面上、及び第2の接着層の第1の接着剤層とは反対側の面上に備えるものであってもよい。
【0024】
本発明に係る第1の接着剤層及び第2の接着剤層は、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する接着剤組成物から形成することができる。
【0025】
なお、本発明において、第1の接着剤層におけるカチオン発生剤の濃度(質量%)、及び第2の接着剤層におけるカチオン発生剤の濃度(質量%)は、接着剤層を構成するカチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材の合計質量を基準として算出される。ただし、接着剤層が導電粒子を含む場合、導電粒子は上記の合計質量には含まれない。
【0026】
上記接着剤組成物に含まれるカチオン重合性化合物としては、エポキシ樹脂などが挙げられる。カチオン重合性化合物がエポキシ樹脂である場合、カチオン発生剤はエポキシ樹脂の硬化剤として機能するものが用いられる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。また、アクリロイル基又はメタクリロイル基をエポキシ樹脂の側鎖に付加させてもよい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて配合することができる。
【0028】
接着剤組成物におけるカチオン重合性化合物の含有量は、カチオン重合性化合物とフィルム形成材接着剤との合計質量を基準として20〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0029】
カチオン発生剤としては、公知の触媒型硬化剤を用いることができる。カチオン発生剤は、40〜180℃の加熱によりカチオン種を発生する化合物であることが好ましい。
【0030】
更に環境及び安全衛生面の観点から、カチオン発生剤は、アンチモンを含有しない化合物が好ましく、例えば、リン酸塩、ホウ酸塩、芳香族スルフォニウム塩、脂肪族スルフォニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等のオニウム塩や金属アレーン錯体が好適に用いられる。
【0031】
これらの中でも、低温硬化性及び保存安定性がより優れたものとなることから、スルフォニウムヘキサフルオロリン酸塩、スルフォニウムテトラフルオロホウ酸塩、又はスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩が好ましく、特に、塩を形成する際の対アニオンとしてヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を有するものが反応性の点で好適に用いられる。特に、芳香族スルフォニウム塩又は脂肪族スルフォニウム塩等のスルフォニウム塩は、カチオン種発生効率が高いためにより好ましい。実用的な保存安定性を付与する観点から、イオウ原子にアルケニル基、アリル基もしくはその誘導体が結合していることが好ましい。また、同様の観点から、イオウ原子に芳香族置換基が結合していない構造を有する脂肪族スルフォニウムヘキサフルオロリン酸塩を用いるのが特に好ましい。
【0032】
上記のカチオン発生剤としては、例えば、2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、2−ブテニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、4−ヒドロキシフェニルシンナミルメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−ヒドロキシフェニルシンナミルメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、4−ヒドロキシフェニルシンナミルメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、α−ナフチルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、α−ナフチルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、α−ナフチルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、シンナミルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シンナミルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、シンナミルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、シンナミルテトラメチレンフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シンナミルテトラメチレンフォニウムテトラフルオロボレート、シンナミルテトラメチレンフォニウムヘキサフルオロホスフェート、ビフェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビフェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、ビフェニルメチルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、ビフェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビフェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、ビフェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルメチルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、フェニルメチルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、フェニルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フルオレニルメチルジメチルスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フルオレニルメチルジメチルスルフォニウムテトラフルオロボレート、フルオレニルメチルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、フルオレニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フルオレニルメチルテトラメチレンスルフォニウムテトラフルオロボレート、フルオレニルメチルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本実施形態の接着剤組成物には、カチオン発生剤を単独で又は複数種を組み合わせて含有させることができるが、カチオン発生剤のカチオン発生効率及びエポキシ樹脂などのカチオン重合性化合物の反応率を高めるために、連鎖移動剤を適宜含有させることができる。連鎖移動剤としては、プロトン性化合物であれば特に制限されるものではなく、公知の化合物を使用することができ、具体的には、シクロヘキセンジオール、2,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類及びこれらの誘導体を用いることができる。
【0034】
接着剤組成物におけるカチオン発生剤の含有量は、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材の合計質量を基準として3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0035】
また、本実施形態の回路部材接続用接続部材において、第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)の1.1〜8倍であることが好ましく、1.5〜6倍であることがより好ましく、1.5〜4倍であることが更により好ましく、2〜4倍であることが特に好ましい。
【0036】
本実施形態の接着剤組成物には、必要に応じて、フィルム形成材を添加してもよい。フィルム形成材とは、例えば、液状物を固形化し、構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いを容易とし、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械的特性等を付与するものであり、通常の状態(常温常圧下)でフィルムとしての取扱いができるものである。このようなフィルム形成材としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着性、相溶性、耐熱性、機械的強度等が優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
【0037】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子化するまで反応させる、或いは、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られる樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0038】
また、フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性や熱的特性の観点からは、特に2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類の配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50質量%以下の条件で50〜200℃に加熱して重付加反応させることにより得られたものが好ましい。
【0039】
上記2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0040】
上記2官能フェノール類としては、2個のフェノール性水酸基を有するものが挙げられ、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類等が挙げられる。これらフェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基や、その他の反応性化合物により変性(例えば、エポキシ変性)されていてもよい。
【0041】
フィルム形成材は、単独で又は2種類以上を組み合わせて配合することができる。
【0042】
本実施形態の接着剤組成物におけるフィルム形成材の配合量は、回路接続時の樹脂流動性の観点から、カチオン重合性化合物とフィルム形成材との合計100質量部に対して、10〜80質量部であることが好ましく、30〜70質量部であることがより好ましい。
【0043】
導電粒子を含有する接着剤層を形成する場合、本実施形態の接着剤組成物に導電粒子を分散させたものを用いることができる。
【0044】
導電粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。導電粒子は、核となる粒子を1又は2以上の層で被覆し、最外層が導電性の層である粒子であってもよい。この場合、十分なポットライフを得るためには、最外層はNi、Cuなどの遷移金属類よりもAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましく、Auがより好ましい。また、導電粒子は、例えば、銅からなる金属粒子に銀を被覆した粒子であってもよい。更に、導電粒子として、特開2005−116291号公報に記載されるような、微細な金属粒子が多数、鎖状に繋がった形状を有する金属粉末を用いることもできる。
【0045】
また、導電粒子は、Niなどの遷移金属類の表面をAuの貴金属類で被覆したものでもよい。また、導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等の絶縁粒子に金属等の導電性物質を被覆したものであってもよい。導電粒子が絶縁粒子に導電性物質を被覆したものであって、最外層を貴金属類、核となる絶縁粒子をプラスチックとした場合、又は導電粒子が熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有し、接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。更に、導電粒子としては、上記導電粒子の表面を絶縁性粒子により被覆したものや、ハイブリダイゼーション等の方法により上記導電粒子の表面に絶縁性物質からなる絶縁層が設けられたものを用いることもできる。このような導電粒子を用いることで、隣接する導電性粒子同士の接触による短絡が生じにくくなる。
【0046】
本実施形態において第1の接着剤層が導電粒子を含有する場合、導電粒子の配合量は、第1の接着剤層の体積を基準として0.1〜30体積%が好ましい。
【0047】
本実施形態において第2の接着剤層が導電粒子を含有する場合、導電粒子の配合量は、第2の接着剤層の体積を基準として0.1〜30体積%が好ましい。
【0048】
第1の接着剤層及び第2の接着剤層は、例えば、上記の接着剤組成物に溶剤等を加えた塗工液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、溶剤等を除去することによってフィルム状接着剤を作成し、これらを貼り合せることにより形成することができる。
【0049】
塗布方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法など公知の方法が挙げられる。
【0050】
フィルム状接着剤を貼り合せる方法としては、例えば、ラミネーター等を用いて行うことができる。
【0051】
第1の接着剤層の厚みは、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。第2の接着剤層の厚みは、3〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
【0052】
第3の接着剤層20は、例えば、上述した接着剤組成物から形成されるフィルム状接着剤を用いて形成することができる。なお、この場合、第3の接着剤層におけるカチオン発生剤の濃度(質量%)は、第1の接着剤層におけるカチオン発生剤の濃度(質量%)以上、第2の接着剤層におけるカチオン発生剤の濃度(質量%)未満であることが好ましい。
【0053】
本発明の回路部材接続用接続部材は、本実施形態のように第1の接着剤層10,12、第3の接着剤層20、及び第2の接着剤層30の3層構成であることが好ましい。
【0054】
本実施形態において、第1の接着剤層10,12、第3の接着剤層20及び第2の接着剤層30の厚みはそれぞれ、接着剤層全体の厚みに対して20〜60%、30〜75%及び10〜30%の範囲であることが好ましく、25〜55%、35〜70%及び5〜25%の範囲であることがより好ましく、30〜45%、40〜60%及び2.5〜20%の範囲であることが特に好ましい。
【0055】
本実施形態の回路部材接続用接続部材は、第1の電極を有する第1の回路部材と、該第1の回路部材に対向する第2の電極及び表面層を有する第2の回路部材との間に介在させ、加熱加圧により第1の電極及び第2の電極を電気的に接続するとともに回路部材同士を接着するために用いることができる。第2の回路部材の表面層は、ポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホンのうちの1種以上を含むことができる。
【0056】
本実施形態の回路部材接続用接続部材は、第1の接着剤層が第1の回路部材と接し第2の接着剤層が第2の回路部材と接するように構成されている。すなわち、回路部材接続用接続部材100は、第1の接着剤層10が第1の回路部材と接し、第2の接着剤層30が第2の回路部材と接するように用いられる。回路部材接続用接続部材110は、第1の接着剤層12が第1の回路部材と接し、第2の接着剤層30が第2の回路部材と接するように用いられる。
【0057】
次に、本発明に係る回路部材接続用接続部材を用いた回路部材接続構造体の製造方法及び回路部材接続構造体について説明する。
【0058】
図2は、本発明に係る回路部材接続構造体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態では、回路部材接続用接続部材100により、相互に対向する第1の回路部材50と第2の回路部材60とを接続して回路部材接続構造体を製造している。
【0059】
第1の回路部材50は、回路基板52(第1の回路基板)と、回路基板52の主面上に形成された複数の回路電極54(第1の回路電極)とを備える。複数の回路電極54は、例えばストライプ状に配置される。
【0060】
第2の回路部材60は、回路基板62(第2の回路基板)と、回路基板62の主面上に形成された複数の回路電極64(第2の回路電極)及び表面層66とを備える。複数の回路電極64も、例えばストライプ状に配置される。
【0061】
表面層66は、ポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホンのうちの1種以上を含む。
【0062】
図2では、回路部材接続用接続部材100を、第1の回路電極54を有する第1の回路部材50と、該第1の回路部材50に対向する第2の回路電極66及び表面層66を有する第2の回路部材60と、の間に第1の接着剤層10が第1の回路部材50と接し第2の接着剤層30が第2の回路部材60と接するように配して、加熱加圧することにより、第1の回路電極54及び第2の回路電極64が電気的に接続されているとともに回路部材同士が接着した回路部材接続構造体を得ることができる。
【0063】
本発明に係る回路部材接続用接続部材によれば、回路部材の一方がカチオン発生剤の活性を阻害する表面層を有する回路部材であっても、実装時に生じる応力を緩和できる接続条件で十分な接続信頼性を得ることができる。
【0064】
図3は、上記の方法により得られる回路部材接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示される回路部材接続構造体200は、第1の回路電極54及び第2の回路電極64が導電粒子14を介して電気的に接続されており、回路部材同士が回路部材接続用接続部材100の各接着剤層が硬化してなる硬化層40によって接着されている。回路部材接続構造体200は、対向する回路電極54,64間の接続抵抗が十分に低減されると共に、硬化層40によって十分な絶縁と接着強度が得られており、高い接続信頼性を有する。
【0065】
第1の回路部材50及び第2の回路部材60の具体例としては、半導体チップ、抵抗体チップ若しくはコンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板が挙げられる。
【0066】
本実施形態における第1の回路部材50及び第2の回路部材60の組合せとして、ガラス基板及びICチップが挙げられる。この場合、良好なCOG実装が可能となる。
【0067】
本実施形態の回路部材接続構造体においては、対向する回路電極54,64間の接続抵抗が1Ω以下となることが好ましい。
【0068】
また本発明に係る回路部材接続構造体の製造方法によれば、第1の回路部材がガラスパネルであり、第2の回路部材がICチップである場合、ガラスパネルの反りの発生を十分抑制しつつ、温度サイクル試験後にも十分小さい接続抵抗を維持できる接続構造体を得ることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
<フィルム状接着剤の作成>
(フィルム状接着剤A−1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(インケムコーポレーション社製、PKHC)と、9、9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとを反応させて、ガラス転移温度が80℃のフェノキシ樹脂を合成した。得られたフェノキシ樹脂50gを、重量比トルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶媒に溶解して固形分40質量%の溶液を得た。
【0071】
フェノキシ樹脂が55質量部となる量の上記溶液、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(インケムコーポレーション社製)40質量部及びカチオン発生剤(SI−60、三新化学工業(株)製)5質量部を混合した接着剤組成物に、導電粒子を形成される接着剤層に対して12体積%となる割合で分散させて塗工液を調製した。この塗工液を、厚み50μmの片面表面処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布し、80℃、5分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが10μmのフィルム状接着剤A−1を得た。フィルム状接着剤A−1におけるカチオン発生剤の濃度は5質量%である。
【0072】
(フィルム状接着剤A−2)
フェノキシ樹脂の配合量を52.5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を37.5質量部、カチオン発生剤の配合量を10質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤A−1と同様にして、接着剤層の厚みが10μmのフィルム状接着剤A−2を得た。フィルム状接着剤A−2におけるカチオン発生剤の濃度は10質量%である。
【0073】
(フィルム状接着剤B−1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(インケムコーポレーション社製)と、9、9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとを反応させて、ガラス転移温度が80℃のフェノキシ樹脂を合成した。得られたフェノキシ樹脂50gを、重量比トルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶媒に溶解して固形分40質量%の溶液を得た。
【0074】
フェノキシ樹脂が52.5質量部となる量の上記溶液、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(インケムコーポレーション社製)37.5質量部及びカチオン発生剤(SI−60、三新化学工業(株)製)10質量部を混合して塗工液を調製した。この塗工液を、厚み50μの片面表面処理を施したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、80℃、5分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤B−1を得た。フィルム状接着剤B−1におけるカチオン発生剤の濃度は10質量%である。
【0075】
(フィルム状接着剤B−2)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を35質量部、カチオン発生剤の割合量を15質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤B−1と同様にして、接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤B−2を得た。フィルム状接着剤B−2におけるカチオン発生剤の濃度は15質量%である。
【0076】
(フィルム状接着剤B−3)
フェノキシ樹脂の配合量を47.5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を32.5質量部、カチオン発生剤の割合量を20質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤B−1と同様にして、接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤B−3を得た。フィルム状接着剤B−3におけるカチオン発生剤の濃度は20質量%である。
【0077】
(フィルム状接着剤B−4)
フェノキシ樹脂の配合量を55質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を40質量部、カチオン発生剤の割合量を5質量部に変更し、厚みを12μmとしたこと以外はフィルム状接着剤B−1と同様にして、接着剤層の厚みが12μmのフィルム状接着剤B−4を得た。フィルム状接着剤B−4におけるカチオン発生剤の濃度は5質量%である。
【0078】
(フィルム状接着剤B−5)
フェノキシ樹脂の配合量を52.5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を37.5質量部、カチオン発生剤の割合量を10質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤B−4と同様にして、接着剤層の厚みが12μmのフィルム状接着剤B−5を得た。フィルム状接着剤B−5におけるカチオン発生剤の濃度は10質量%である。
【0079】
(フィルム状接着剤B−6)
フェノキシ樹脂の配合量を55質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を40質量部、カチオン発生剤の割合量を5質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤B−1と同様にして、接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤B−6を得た。フィルム状接着剤B−6におけるカチオン発生剤の濃度は5質量%である。
【0080】
(フィルム状接着剤B−7)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を35質量部、カチオン発生剤の割合量を15質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤B−4と同様にして、接着剤層の厚みが12μmのフィルム状接着剤B−7を得た。フィルム状接着剤B−7におけるカチオン発生剤の濃度は15質量%である。
【0081】
(フィルム状接着剤C−1)
厚みを3μmとしたこと以外はフィルム状接着剤B−1と同様にして、接着剤層の厚みが3μmのフィルム状接着剤C−1を得た。フィルム状接着剤C−1におけるカチオン発生剤の濃度10質量%である。
【0082】
(フィルム状接着剤C−2)
フェノキシ樹脂の配合量を50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を35質量部、カチオン発生剤の割合量を15質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤C−1と同様にして、接着剤層の厚みが3μmのフィルム状接着剤C−2を得た。フィルム状接着剤C−2におけるカチオン発生剤の濃度は15質量%である。
【0083】
(フィルム状接着剤C−3)
フェノキシ樹脂の配合量を47.5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を32.5質量部、カチオン発生剤の割合量を20質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤C−1と同様にして、接着剤層の厚みが3μmのフィルム状接着剤C−3を得た。フィルム状接着剤C−3におけるカチオン発生剤の濃度は20質量%である。
【0084】
(フィルム状接着剤C−4)
フェノキシ樹脂の配合量を55質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量を40質量部、カチオン発生剤の割合量を5質量部に変更したこと以外はフィルム状接着剤C−1と同様にして、接着剤層の厚みが3μmのフィルム状接着剤C−4を得た。フィルム状接着剤C−4におけるカチオン発生剤の濃度は5質量%である。
【0085】
<回路部材接続用接続部材の作成>
(実施例1)
フィルム状接着剤A−1と、フィルム状接着剤B−1とを、ラミネーターを用いて貼り合わせて、A層(A−1)及びB層(B−1)の2層構成の回路部材接続用接続部材を得た。
【0086】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
表1に示されるフィルム状接着剤を、表1に示される積層構成となるように、ラミネーターを用いて貼り合わせて、2層(A層及びB層)或いは3層(A層、B層及びC層)構成の回路部材接続用接続部材をそれぞれ得た。
【0087】
<回路部材接続構造体の製造>
上記で得られた回路部材接続用接続部材を用い、下記の手順で回路部材接続構造体を製造した。
【0088】
厚み0.5mmのガラス上にインジウム−錫酸化物(ITO)の回路を蒸着により形成したITO基板(表面抵抗<20Ω/□)上に、回路部材接続用接続部材のA層面を75℃、1.0MPaで2秒間加熱加圧して貼り付けた。次に、B層或いはC層上のPETフィルムを剥離し、2層構成の場合はB層上に、3層構成の場合はC層上に、バンプ面積50μm×50μm、ピッチ100μm、高さ20μmの金バンプと中央に1mm×14mm×2μmのポリイミド膜を貼りあわせ、1.7mm×18mm×0.5mmのサイズのICチップを、金バンプがITO基板の電極に対向するように配置し、これらを石英ガラスと加圧ヘッドで挟み、210℃、80MPaで5秒間加熱加圧して接続した。こうして、ITO基板上にICチップが実装された回路部材接続構造体を得た。
【0089】
[温度サイクル試験後の接続抵抗の測定]
上記で得られた回路部材接続構造体を温度サイクル槽中に配置し、「−40℃で30分間保持し、その後100℃で30分間保持」することを1サイクルとしこれを500サイクル繰り返す温度サイクル試験を実施した。温度サイクル試験後の回路部材接続構造体の接続部(対向する電極間)の電気抵抗値(Ω)を、4端子測定法にしたがってマルチメータで測定した。得られた結果を表1に示す。
【0090】
[ガラス反り量の測定]
回路部材接続構造体が有するガラス基板の反り量を、接触式表面粗さ計を用いて測定した。なお、測定場所は、回路部材接続構造体のIC実装部の裏側(ITO基板の回路が設けられた側とは反対側)のガラス反り量(μm)を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
【表1】



【0092】
ポリイミド膜を有するICチップ側にカチオン発生剤濃度が高い接着剤層が接し、ITO基板側にカチオン発生剤濃度が低い接着剤層が接するような構成を有する実施例1〜7の回路部材接続用接続部材によれば、ガラス反り量を十分抑制できる条件で加熱加圧しても、回路部材同士を良好に接続することができ、温度サイクル試験後であっても接続構造体の接続抵抗を十分低い値に維持することができる。
【0093】
一方、ICチップ側とITO基板側とでカチオン発生剤濃度が変わらない、或いは、ICチップ側にカチオン発生剤濃度が低い接着剤層が接するような構成を有する比較例1〜3の回路部材接続用接続部材では、ガラス反り量が小さい条件で接続した場合、温度サイクル実施後の接続抵抗が著しく上昇し、十分な接続信頼性が得られない。
【符号の説明】
【0094】
10…第1の接着剤層、12…接着剤組成物、14…導電粒子、20…第3の接着剤層、30…第2の接着剤層、40…硬化層、50…第1の回路部材、52…第1の回路基板、54…第1の回路電極、60…第2の回路部材、62…第2の回路基板、64…第2の回路電極、66…表面層、100,110…回路部材接続用接続部材、200…回路部材接続構造体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極を有する第1の回路部材と、該第1の回路部材に対向する第2の電極及びポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホン、のうちの1種以上を含む表面層を有する第2の回路部材と、の間に介在させ、加熱加圧により前記第1の電極及び前記第2の電極を電気的に接続するとともに前記回路部材同士を接着するための接続部材であって、
カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第1の接着剤層と、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第2の接着剤層と、を備え、
前記第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が前記第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)よりも大きく、
前記第1の接着剤層が前記第1の回路部材と接し前記第2の接着剤層が前記第2の回路部材と接するように構成されている、回路部材接続用接続部材。
【請求項2】
前記第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が前記第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)の1.5〜4倍である、請求項1に記載の回路部材接続用接続部材。
【請求項3】
前記第2の接着剤層の厚みが、回路部材接続用接続部材の厚みに対して10〜80%である、請求項1又は2に記載の回路部材接続用接続部材。
【請求項4】
カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第1の接着剤層と、カチオン重合性化合物、カチオン発生剤及びフィルム形成材を含有する第2の接着剤層と、を備え、前記第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が前記第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)よりも大きい回路部材接続用接続部材を、
第1の電極を有する第1の回路部材と、該第1の回路部材に対向する第2の電極及びポリイミド、ポリウレタンエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリエーテルサルホンのうちの1種以上が含まれる表面層を有する第2の回路部材と、の間に前記第1の接着剤層が前記第1の回路部材と接し前記第2の接着剤層が前記第2の回路部材と接するように配して、加熱加圧することにより、前記第1の電極及び前記第2の電極が電気的に接続されているとともに前記回路部材同士が接着した回路部材接続構造体を得る、回路部材接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)が前記第1の接着剤層のカチオン発生剤の濃度(質量%)の1.5〜4倍である、請求項4に記載の回路部材接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の接着剤層の厚みが、回路部材接続用接続部材全体の厚みに対して10〜80%である、請求項4又は5に記載の回路部材接続構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法により得られる、回路部材接続構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18833(P2013−18833A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151879(P2011−151879)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】