説明

回転電動機

【課題】この発明は、動作時の回転子と固定子との接触を回避でき、かつ固定子に発生する鉄損の増大を抑制できる回転電動機を得ることを目的とする。
【解決手段】回転子3は、軸受10に片持ち支持された回転軸2に取り付けられ、固定子4は、磁性鋼板を積層して作製された固定子コア5と、固定子コア5に巻装されて回転子3を回転させるトルクを発生する固定子コイル8と、を備え、回転子3を囲繞するように配設されている。固定子コア5は、内径の異なる第1および第2固定子コア体6,7を、互いに離間させて軸方向に同軸に配列して構成され、回転子3と固定子コア5との間の空隙が、軸受10から離れる方向にステップ状に広がるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、超高速回転が要求される片持ち軸受構造の電動機に適用されるのに好適な回転電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動圧縮機は、シャフトの略中央部が軸受に支持され、タービンがシャフトの一端に取り付けられ、モータロータがシャフトの他端側に取り付けられ、電動モータがモータロータを囲繞するように配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−174491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動圧縮機では、モータロータがシャフトの他端側に取り付けられて片持ち支持されているので、軸受とシャフトとの間の隙間などにより、シャフトが軸受の軸心に対して傾斜することになる。さらに、動作時には、磁気吸引力が電動モータとモータロータとの間に発生し、シャフトの軸受の軸心に対する傾斜が大きくなる。そこで、動作時に、モータロータが電動モータのステータコアに接触し、損傷してしまうという課題があった。
【0005】
このような課題を解決する対策として、モータロータと電動モータのステータコアとの間の軸受と反対側の隙間をモータロータと電動モータのステータコアとの間の軸受側の隙間より広くして、モータロータと電動モータのステータコアとの接触を回避することが考えられる。例えば、電動モータのステータコアを内径の異なる第1および第2ステータコア体により構成し、内径の小さい第1ステータコア体を軸受側に配し、内径の大きな第2ステータコア体を軸受と反対側に配して、モータロータと電動モータのステータコアとの接触を回避してもよい。
【0006】
ここで、従来の電動圧縮機では、電動モータのコイルに交流電流を流して、モータロータを回転駆動するためのトルクを発生させている。そして、コイルに交流電流を流すことにより発生した交流の磁束は、ステータコアとモータロータとの間の空隙の狭い部位を通って、ステータコアからモータロータに流れる。そこで、モータロータとの間の空隙が広い第2ステータコア体を流れている交流の磁束が、モータロータとの間の空隙が狭い第1ステータコア体側に流れるので、渦電流が第1ステータコア体と第2ステータコア体との境界近傍の磁性鋼板に流れ、電動モータに発生する鉄損が増大するという課題が新たに生じる。
【0007】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、動作時の回転子と固定子との接触を回避でき、かつ固定子に発生する鉄損の増大を抑制できる回転電動機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る回転電動機は、フレームと、上記フレームに軸受を介して片持ち支持された回転軸に取り付けられた回転子と、上記回転子を囲繞するように上記フレームに取り付けられた固定子コア、および該固定子コアに巻装されて上記回転子を回転させるトルクを発生する固定子コイルを有する固定子と、を備えている。そして、上記回転子と上記固定子コアとの間の空隙が、上記軸受から離れる方向にステップ状に広がるように構成され、上記固定子コアは、それぞれ、磁性薄板を積層して構成された上記ステップ数と同数の固定子コア体を、上記空隙のステップ間の位置で互いに離間して、軸方向に同軸に配列して構成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、回転子と固定子コアとの間の空隙が軸受から離れる方向にステップ状に広がるように構成されているので、軸受に片持ち支持されている回転軸が軸受の軸心に対して傾斜しても、回転子と固定子コアとの接触が回避される。
また、固定子コア体が、空隙のステップ間の位置で互いに離間して、軸方向に同軸に配列されているので、固定子コイルに通電することで発生する交流の磁束が固定子コア体間を空隙の広い方から狭い方に流れることが抑制される。そこで、固定子コアに発生する鉄損を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図2】比較例としての回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る回転電動機の主要構成を示す一部破断斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態4に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の回転電動機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図、図2は比較例としての回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【0013】
図1において、回転電動機1は、一端を軸受10に回転可能に支持された鉄などの塊状磁性体で作製された回転軸2と、回転軸2に固着された回転子3と、回転子3を囲繞するように配設された固定子4と、回転子3および固定子4を収納するフレーム9と、を備えている。
【0014】
回転子3は、詳細には図示していないが、磁性鋼板を積層して作製された円筒状の積層体の外周側に磁石を埋め込んで構成され、回転軸2に同軸に固着されている。
固定子4は、固定子コア5と、固定子コア5に巻装され、回転子3を回転駆動するトルク発生用駆動コイルとしての固定子コイル8と、を備える。
【0015】
固定子コア5は、それぞれ所定形状に成形された多数枚の磁性鋼板を積層一体化して作製された第1および第2固定子コア体6,7を有する。第1および第2固定子コア体6,7は、円筒状のコアバック6a,7aと、それぞれコアバック6a,7aの内周面から径方向内方に突設されて周方向に等角ピッチで配列されたティース6b,7bと、を備える。そして、内周側に開口するスロットが、コアバック6a,7aとティース6b,7bとにより画成される。ここで、第1固定子コア体6は、ティース6bの長さがティース7bの長さより長く形成され、コア内径が小径である点を除いて、第2固定子コア体7と同様に構成されている。
【0016】
第1および第2固定子コア体6,7は、ティース6b,7bの周方向位置を合わせて、軸方向に隙間dだけ離間して同軸に配置され、回転子3を囲繞するようにフレーム9内に収納されている。そこで、第2固定子コア体7と回転子3との間の空隙Gfが第1固定子コア体6と回転子3との間の空隙Gnより広くなっている。
固定子コイル8は、導体線を第1および第2固定子コア体6,7の軸方向に相対して対をなすティース6b,7bに巻回した、いわゆる集中巻き巻線に構成されている。
【0017】
フレーム9は、鉄などの塊状磁性体で作製され、第1固定子コア体6体のコアバック6aの外周面と第2固定子コア体7のコアバック7aの外周面とに密接するように配設され、軸方向磁路形成部材を構成している。なお、フレーム9が非磁性材料で作製される場合には、鉄などの磁性材料で作製された部材を第1固定子コア体6のコアバック6aの外周面と第2固定子コア体7のコアバック7aの外周面とに接するように配設すればよい。
【0018】
つぎに、この実施の形態1による効果について比較例と対比して説明する。
なお、比較例としての回転電動機100は、図2に示されるように、第1および第2固定子コア体6,7が、互いに接するように軸方向に並んで同軸に配置されている点を除いて、回転電動機1と同様に構成されている。
【0019】
まず、比較例としての回転電動機100においては、第2固定子コア体7と回転子3との間の空隙Gfが第1固定子コア体6と回転子3との間の空隙Gnより広くなっている。つまり、固定子コア5と回転子3との間の軸受10と反対側の空隙が固定子コア5と回転子3との間の軸受10側の空隙より広くなっている。そこで、回転軸2が軸受10の軸心に対して傾斜していても、回転電動機100の動作時に、回転子3が固定子コア5に接触することが回避される。
【0020】
しかし、回転電動機100においては、第1および第2固定子コア体6,7が、互いに接するように軸方向に並んで配置されている。そこで、固定子コイル8に通電して発生した交流の磁束が、図2中矢印Aで示されるように、第2固定子コア体7から第1固定子コア体6に流れ、第1固定子コア体6から狭い空隙Gnを通って回転子3に流れるようとする。このとき、渦電流が第1固定子コア体6と第2固定子コア体7との境界近傍に位置する磁性鋼板に流れ、固定子コア5に発生する鉄損が増大してしまう。
【0021】
実施の形態1による回転電動機1においても、第2固定子コア体7と回転子3との間の空隙Gfが第1固定子コア体6と回転子3との間の空隙Gnより広くなっているので、比較例としての回転電動機100と同様に、回転電動機1の動作時に、回転子3が固定子コア5に接触することが回避される。
【0022】
回転電動機1においては、第1および第2固定子コア体6,7が隙間dを確保して軸方向に並んで配置されているので、第1および第2固定子コア体6,7間の磁気抵抗が増大し、固定子コイル8に通電することに起因して第2固定子コア体7から第1固定子コア体6に流れる交流の磁束を少なくできる。そこで、第1固定子コア体6と第2固定子コア体7との境界近傍に位置する磁性鋼板に流れる渦電流が少なくなり、固定子コア5に発生する鉄損を低減することができる。
【0023】
また、第2固定子コア体7の内径を第1固定子コア体6の内径より大きくして、回転子3と固定子コア5との間の空隙を軸受10から離れる方向にステップ状に広くなるように構成されているので、回転子3と固定子コア5との間の空隙の調整を後工程で調整でき、組立工数が少なくなる。
【0024】
ここで、第2固定子コア体7から第1固定子コア体6に流れる交流の磁束を低減するという観点から、第1および第2固定子コア体6,7の間の隙間dを、第2固定子コア体7と回転子3との間の空隙Gfより広くすることが好ましい。
【0025】
なお、上記実施の形態1では、固定子コアが内径の異なる2つの固定子コア体に分割構成されているが、固定子コアの分割数は3つ以上でもよい。この場合、分割された固定子コア体は、互いに内径が異なるように構成され、内径が軸受側から離れる方向に漸次大きくなるように、かつ互いに離間して軸方向に配列させればよい。
【0026】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【0027】
図3において、回転子11は、大径の第1回転子コア体12と、小径の第2回転子コア体13と、を備えている。第1および第2回転子コア体12,13は、それぞれ、磁性鋼板を積層して作製された円筒状積層体の外周側に磁石を埋め込んで構成され、第1回転子コア体12を軸受10側に位置させて、互いに接するように軸方向に配列して、回転軸2に同軸に固着されている。
【0028】
固定子14は、固定子コア15と、固定子コア15に巻装され、回転子3を回転駆動するトルク発生用駆動コイルとしての固定子コイル8と、を備える。
固定子コア15は、それぞれ所定形状に成形された多数枚の磁性鋼板を積層一体化して作製された第1および第2固定子コア体16,17を有する。第1および第2固定子コア体16,17は、同形状に作製されており、円筒状のコアバック16a,17aと、それぞれコアバック16a,17aの内周面から径方向内方に突設されて周方向に等角ピッチで配列されたティース16b,17bと、を備える。そして、内周側に開口するスロットが、コアバック16a,17aとティース16b,17bとにより画成される。
【0029】
第1および第2固定子コア体16,17は、ティース16b,17bの周方向位置を合わせて、軸方向に隙間dだけ離間して同軸に配置され、回転子11を囲繞するようにフレーム9内に収納されている。そこで、第2固定子コア体17と第2回転子コア体13との間の空隙Gfが第1固定子コア体16と第1回転子コア体12との間の空隙Gnより広くなっている。そして、第1回転子コア体12と第2回転子コア体13との当接部が、軸方向に関して、第1固定子コア体16と第2固定子コア体17との間の隙間に位置している。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0030】
このように構成された回転電動機1Aにおいても、第2固定子コア体17と第2回転子コア体13との間の空隙Gfが第1固定子コア体16と第1回転子コア体12との間の空隙Gnより広くなっているので、回転電動機1Aの動作時に、回転子11が固定子コア5に接触することが回避される。
【0031】
また、第1および第2固定子コア体16,17が隙間dを確保して軸方向に並んで配置されているので、第1および第2固定子コア体16,17間の磁気抵抗が増大し、固定子コイル8に通電することに起因して第2固定子コア体17から第1固定子コア体16に流れる交流の磁束を少なくできる。そこで、第1固定子コア体16と第2固定子コア体17との境界近傍に位置する磁性鋼板に流れる渦電流が少なくなり、固定子コア15に発生する鉄損を低減することができる。
【0032】
また、第2回転子コア体17の外径を第1回転子コア体16の外径より小さくして、回転子11と固定子コア15との間の空隙を軸受10から離れる方向にステップ状に広くなるように構成されているので、軸受10から離れた箇所のアンバランス量が小さくなる。
【0033】
なお、上記実施の形態2では、回転子が外径の異なる2つの回転子コア体に分割構成されているが、回転子の分割数は3つ以上でもよい。そして、分割された回転子コア体は、互いに外径が異なるように構成され、外径が軸受側から離れる方向に漸次小さくなるように軸方向に配列させればよい。この場合、固定子コアも同様に回転子と同数の固定子コア体に分割し、互いに離間して軸方向に配列させればよい。なお、分割された固定子コア体の内径は同じであり、回転子コア体の当接部が、軸方向に関して、固定子コア体間の隙間に位置している。
【0034】
また、上記実施の形態1,2では、内径の異なる固定子コア体、又は外径の異なる回転子コア体を用いて、固定子コアと回転子との間の空隙を軸受から離れる方向にステップ状に広くするものとしているが、固定子コア体の内径と回転子コア体の外径とを変えて、固定子コアと回転子との間の空隙を軸受から離れる方向にステップ状に広くしてもよい。
また、上記実施の形態1,2では、回転子が磁性鋼板を積層して作製された円筒状の積層体の外周側に磁石を埋め込んで構成されているものとしているが、円筒状の圧粉鉄心に磁石を埋め込んで回転子を構成してもよいし、磁性鋼板からなる円筒状の積層体や円筒状の圧粉鉄心の外周面に磁石を配設して回転子を構成してもよい。
【0035】
また、上記実施の形態1,2では、固定子コイルが集中巻き巻線で構成されているものとしているが、固定子コイルは集中巻き巻線に限定されるものではなく、例えば分布巻き巻線で構成されてもよい。
また、上記実施の形態1,2では、回転電動機における回転子の極数と固定子のスロット数について説明していないが、極数とスロット数との比は、一般的な回転電動機と同様であり、例えば4:3、2:3などである。
【0036】
ここで、上記実施の形態1,2では、磁極となる磁石が配設された回転子を用いる回転電動機について説明しているが、本発明は、回転子に磁極を形成する界磁手段が固定子に配設されている回転電動機、例えば誘導機、スイッチドリラクタンスモータ、磁気誘導子型回転機などの回転電動機に適用しても同様の効果を奏する。
以下、本発明を適用した磁気誘導子型回転機について説明する。
【0037】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3に係る回転電動機の主要構成を示す一部破断斜視図、図5はこの発明の実施の形態3に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【0038】
図4および図5において、回転電動機20は、磁気誘導子型回転機であり、鉄などの塊状磁性体で作製され、軸受10に片持ち支持された回転軸21、回転軸21に同軸に固着された回転子22と、回転子22を囲繞するように配設された固定子コア27にトルク発生用駆動コイルとしての固定子コイル30を巻装してなる固定子26と、界磁起磁力発生用コイルとしての界磁コイル31と、回転子22、固定子26および界磁コイル31を収納するフレーム32と、を備えている。
【0039】
回転子22は、例えば所定形状に成形された多数枚の磁性鋼板を積層一体化して作製された第1および第2回転子コア体23,24と、所定枚の磁性鋼板を積層一体化して作製され、軸心位置に回転軸挿入孔25aが穿設された円盤状の隔壁25と、を備える。第1および第2回転子コア体23,24は、同一形状に作製され、軸心位置に回転軸挿入孔23c,24cが穿設された円筒状の基部23a,24aと、基部23a,24aの外周面から径方向外方に突設され、かつ軸方向に延設されて、周方向に等角ピッチで4つ設けられた突極23b,24bと、から構成されている。第1および第2回転子コア体23,24は、周方向に半突極ピッチずらして、隔壁25を介して相対して互いに密接して配置され、それらの回転軸挿入孔23c,24c,25aに挿通された回転軸21に固着されて構成されている。そして、回転子22は、回転軸21の一端を軸受10に支持されてフレーム32内に回転自在に配設されている。
【0040】
固定子コア27は、所定形状に成形された多数枚の磁性鋼板を積層一体化して作製された第1および第2固定子コア体28,29を備える。第1固定子コア体28は、円筒状のコアバック28aと、コアバック28aの内周面から径方向内方に突設されて周方向に等角ピッチで6つ設けられたティース28bと、を備える。そして、内周側に開口するスロット28cが、コアバック28aと隣り合うティース28bとにより画成されている。第2固定子コア体29は、円筒状のコアバック29aと、コアバック29aの内周面から径方向内方に突設されて周方向に等角ピッチで6つ設けられたティース29bと、を備える。そして、内周側に開口するスロット29cが、コアバック29aと隣り合うティース29bとにより画成されている。第2固定子コア体29は、ティース29bの長さがティース28bの長さより短くなっている点を除いて、第1固定子コア体28と同じ形状に形成されている。第1および第2固定子コア体28,29は、ティース28b,29bの周方向位置を一致させて、かつ隔壁25の軸方向厚みdだけ離間して、それぞれ第1および第2回転子コア体23,24を囲繞するように、フレーム32内に配設されている。
【0041】
固定子コイル30は、導体線をスロット28c,29cを跨がないで軸方向に相対して対をなすティース28b,29bに巻回した、いわゆる集中巻き方式に巻回された3相の相コイルを有する。つまり、固定子コイル30は、軸方向に相対する6対のティース28b、29bに対して順次U,V,Wの3相を2回繰り返して集中巻きに巻回して構成されている。なお、図4では、便宜上、1相のコイルのみを示している。
【0042】
界磁コイル31は、導体線を円筒状に巻回した円筒状コイルであり、第1および第2固定子コア体28,29のコアバック28a,29a間に介装されている。
フレーム32は、鉄などの塊状磁性体で作製され、第1固定子コア体28のコアバック28aの外周面と第2固定子コア体29のコアバック29aの外周面とに密接するように配設され、軸方向磁路形成部材を構成している。なお、フレーム32が非磁性材料で作製される場合には、鉄などの磁性材料で作製された部材を第1固定子コア体28のコアバック28aの外周面と第2固定子コア体29のコアバック29aの外周面とに接するように配設すればよい。
【0043】
つぎに、このように構成された回転電動機20の動作について説明する。
【0044】
界磁コイル31に通電されることにより発生した磁束は、図4に矢印Bで示されるように、第1固定子コア体28内を軸方向外側に徐々にシフトしつつ径方向内方に流れ、ティース28bから空隙部を介して第1回転子コア体23の突極23bに入る。第1回転子コア体23に入った磁束は、第1回転子コア体23内を、軸方向に隔壁25側に徐々にシフトしつつ径方向内方に流れ、回転軸21に流れ込む。回転軸21に流れ込んだ磁束は、回転軸21内を軸方向に流れ、第2回転子コア体24に入る。第2回転子コア体24に入った磁束は、第2回転子コア体24内を、軸方向外側に徐々にシフトしつつ径方向外方に流れ、突極24bから空隙部を介して第2固定子コア体29のティース29bに入る。第2固定子コア体29に入った磁束は、第2固定子コア体29内を、軸方向に界磁コイル31側に徐々にシフトしつつ径方向外方に流れ、フレーム32に流れ込む。フレーム32に流れ込んだ磁束は、フレーム32を軸方向に流れ、第1固定子コア体28に戻る。
【0045】
この時、第1および第2回転子コア体23,24の突極23b,24bが周方向に半突極ピッチずれているので、磁束は、軸方向から見ると、N極とS極とが周方向に交互に配置されたように作用する。そして、回転子22の位置に応じて固定子コイル30に交流電流を流すことにより、トルクを発生させる。これにより、回転電動機20は、無整流子モータであり、磁気的には、8極6スロットの集中巻き方式の永久磁石式回転機と同様に動作する。
【0046】
この実施の形態3によれば、回転子22が片持ち支持されている回転軸21の端部に取り付けられているので、回転軸21は軸受10の軸心に対して傾斜して回転駆動される。しかし、第2固定子コア体29のティース29bの長さが第1固定子コア体28のティース28bの長さより短く形成されているので、軸受10と反対側の回転子22と固定子コア27との隙間Gfが軸受10側の回転子22と固定子コア27との隙間Gnより広くなっており、駆動時の回転子22と固定子コア27との接触が回避される。
【0047】
また、第1固定子コア体28と第2固定子コア体29との間に隙間dが確保されている。そこで、第1固定子コア体28と第2固定子コア体29との間の磁気抵抗が増大し、第2固定子コア体29から第1固定子コア体28に流れる磁束が低減され、鉄損が低減される。また、界磁コイル31を第1固定子コア体28と第2固定子コア体29との間の隙間に配置することができるので、界磁コイル31を固定子コア27の径方向外側に配置する必要がなく、装置の小型化が図られる。
【0048】
実施の形態4.
図6はこの発明の実施の形態4に係る回転電動機の主要構成を模式的に示す断面図である。
【0049】
図6において、界磁起磁力発生用磁石としての永久磁石33は、例えば平板リング状に作製された異方性焼結希土類磁石であり、第1固定子コア体28と第2固定子コア体29との間に同軸に介装されている。そして、永久磁石33は、着磁方向34が第2固定子コア体29から第1固定子コア体28に向うように着磁配向されている。フレーム35は、アルミニウムなどの非磁性材料で作製され、固定子26を内包するように配設されている。
なお、この実施の形態4は、界磁手段として、界磁コイル31に替えて永久磁石33を用い、非磁性材料で作製されたフレーム35を用いている点を除いて、上記実施の形態3と同様に構成されている。
【0050】
このように構成された回転電動機20Aでは、永久磁石33による磁束が、第1固定子コア体28内を軸方向外側に徐々にシフトしつつ径方向内方に流れ、ティース28bから空隙部を介して第1回転子コア体23の突極23bに入る。第1回転子コア体23に入った磁束は、第1回転子コア体23内を、軸方向に隔壁25側に徐々にシフトしつつ径方向内方に流れ、回転軸21に流れ込む。回転軸21に流れ込んだ磁束は、回転軸21内を軸方向に流れ、第2回転子コア体24に入る。第2回転子コア体24に入った磁束は、第2回転子コア体24内を、軸方向外側に徐々にシフトしつつ径方向外方に流れ、突極24bから空隙部を介して第2固定子コア体29のティース29bに入る。第2固定子コア体29に入った磁束は、第2固定子コア体29内を永久磁石33側に徐々にシフトしつつ径方向外方に流れ、永久磁石33に戻る。
【0051】
そして、回転子22の位置に応じて固定子コイル30に交流電流を流すことにより、トルクを発生させ、回転子22が回転駆動される。
【0052】
この実施の形態4においても、第2固定子コア体29のティース29bの長さが第1固定子コア体28のティース28bの長さより短く形成されているので、軸受10と反対側の回転子22と固定子コア27との隙間Gfが軸受10側の回転子22と固定子コア27との隙間Gnより広くなっており、駆動時の回転子22と固定子コア27との接触が回避される。
【0053】
また、第1固定子コア体28と第2固定子コア体29との間に隙間dが確保されているので、第2固定子コア体29から第1固定子コア体28に流れる磁束が低減され、鉄損が低減される。さらに、永久磁石33を第1固定子コア体28と第2固定子コア体29との間の隙間に配置することができるので、装置の小型化が図られる。さらにまた、フレーム35が非磁性材料で作製されているので、永久磁石33から第1固定子コア体28、フレーム35および第2固定子コア体29を介して永久磁石33に戻る磁路が形成されず、有効磁束量が確保され、出力を向上することができる。
【0054】
なお、上記実施の形態3,4では、界磁極数とスロット数との比が8:6、即ち極スロット比が4:3であるが、極スロット比は4:3に限定されるものではなく、例えば2:3でもよい。
また、実施の形態3,4では、第1および第2固定子コア体、および第1および第2回転子コアが磁性薄板としての磁性鋼板を積層して作製されているものとしているが、磁性薄板は磁性鋼板に限定されるものではなく、例えば電磁鋼板を用いてもよい。
また、上記実施の形態3,4では、第1および第2回転子コア体および隔壁が磁性鋼板を積層して作製されているものとしているが、第1および第2回転子コア体および隔壁を圧粉鉄心や鉄などの塊状磁性材料で作製してもよい。
【0055】
また、実施の形態3,4では、固定子コイルが集中巻き巻線で構成されているものとしているが、固定子コイルは集中巻き巻線に限定されるものではなく、例えば分布巻き巻線で構成されてもよい。
また、実施の形態3,4では、隔壁が第1および第2回転子コア体の間に介装されているものとしているが、第1および第2回転子コア体が回転軸に十分に固定されていれば、隔壁を省略してもよい。
【0056】
また、上記実施の形態3,4では、内径の異なる固定子コア体を用いて、固定子コアと回転子との間の空隙を軸受から離れる方向にステップ状に広くするものとしているが、固定子コア体の内径と回転子コア体の外径との両方を変えて、あるいは回転子コアの外径のみを変えて、固定子コアと回転子との間の空隙を軸受から離れる方向にステップ状に広くしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,1A,20,20A 回転電動機、2,22 回転軸、3,11,22 回転子、4,14,26 固定子、5,15,27 固定子コア、6,16,28 第1固定子コア体、7,17,29 第2固定子コア体、8,30 固定子コイル、9,32,35 フレーム、10 軸受、31 界磁コイル(界磁起磁力発生用コイル)、33 永久磁石(界磁起磁力発生用磁石)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
上記フレームに軸受を介して片持ち支持された回転軸に取り付けられた回転子と、
上記回転子を囲繞するように上記フレームに取り付けられた固定子コア、および該固定子コアに巻装されて上記回転子を回転させるトルクを発生する固定子コイルを有する固定子と、を備え、
上記回転子と上記固定子コアとの間の空隙が、上記軸受から離れる方向にステップ状に広がるように構成され、
上記固定子コアは、それぞれ、磁性薄板を積層して構成された上記ステップ数と同数の固定子コア体を、上記空隙のステップ間の位置で互いに離間して、軸方向に同軸に配列して構成されていることを特徴とする回転電動機。
【請求項2】
上記回転子と上記固定子コアとの間の空隙が、上記ステップ数と同数の上記固定子コア体の内径を変えて、上記軸受から離れる方向にステップ状に広がるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電動機。
【請求項3】
上記回転子と上記固定子コアとの間の空隙が、上記回転子の外径を変えて、上記軸受から離れる方向にステップ状に広がるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の回転電動機。
【請求項4】
上記固定子コアは、2つの上記固定子コア体から構成され、
界磁起磁力発生用コイルが軸方向に配列された上記固定子コア体間に介装されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転電動機。
【請求項5】
上記固定子コアは、2つの上記固定子コア体から構成され、
界磁起磁力発生用磁石が、軸方向に着磁配向されて、軸方向に配列された上記固定子コア体間に介装されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100502(P2012−100502A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248462(P2010−248462)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】