説明

圧接回転体装置及び画像形成装置

【課題】 回転体対が当接するときに、圧接解除機構の自転を抑制して、その当接で生じ得る衝撃力及び当接音を低減することができる圧接回転体装置を提供する。
【解決手段】 加圧ローラ101及び定着ベルト100を互いに圧接させる加圧バネ113及び加圧レバー112と、回転することで加圧バネ113及び加圧レバー112による圧接を解除するカム120と、カム120を駆動するモータ92と、モータ92からカム120へと至るるカム駆動部91に設けられ、モータ92を正方向CWに回転させたときにはカム駆動部91の連結をモータ92の駆動力で遮断してカム120を停止させ、モータ92を正方向CWとは逆の逆方向CCWに回転させたときにはカム駆動部91の遮断をモータ92の駆動力で連結してカム120を回転させ、カム120の停止及び回転を切り替える溝145及び平行ピン142と、を備える定着装置40を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧部材及び定着部材を備え、加圧部材及び定着部材を当接離間させる圧接回転体装置、及び、この圧接回転体装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置、静電記録画像形成装置等の画像形成装置は、記録材上にトナー画像を形成し、このトナー画像を加熱及び加圧して記録材に定着させることで、画像を形成する。従来、このような定着装置として、内部にヒータを有する定着ローラと、定着ローラに圧接する加圧ローラとを備え、これらの定着ローラ及び加圧ローラで定着ニップを形成してトナー画像を記録材に定着させるローラ定着方式が採用されている。そして、定着ローラ及び加圧ローラという一対の加圧回転体を離間及び当接させる機構を用いた圧接回転体装置に関する発明として、特許文献1に記載の発明が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の圧接回転体装置は、定着ローラ、加圧ローラ、加圧ローラを支持する揺動部材、揺動部材を揺動させるカムを備えている。そして、カムが回転すると、揺動部材が揺動し、加圧ローラが定着ローラに対して離間及び当接する構成となっている。また、特許文献1に記載の圧接回転体装置では、カムを回転させるモータ及び加圧回転体を回転するモータは1つで兼用され、カム側駆動経路に一方向クラッチが設けられている。そして、モータが回転体対(定着ローラ及び加圧ローラ)を正方向に回転させる場合には、カム側駆動経路に駆動力が伝えられず、モータが回転体対(定着ローラ及び加圧ローラ)を逆方向に回転させる場合には、カム側駆動経路に駆動力が伝えられる。こうして1つのモータでカムの回転及び回転体対の回転が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−122460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の圧接回転体装置では、定着ローラに対して加圧ローラが離間位置から当接位置に移動する場合に、加圧スプリングが揺動部材に加圧力を付加し、揺動部材がカムにカム回転方向の付勢力を与え、カムに回転モーメントが生じる。この「回転モーメントによるトルク」が、「カム及び揺動部材の間の摩擦力によるトルク」並びに「カム駆動手段の回転駆動力によるトルク」の和よりも大きくなる場合がある。
【0006】
この場合に、カム駆動経路に駆動回転と逆回転の方向に空回転自在な一方向クラッチが用いられているために、前述の回転モーメントによって、一方向クラッチの空回転可能方向(カムの回転方向の先送り方向)にカムが自転する。そして、カムの回転速度が駆動手段の回転駆動力による回転速度よりも速くなる。その結果、加圧ローラが定着ローラに当接するときに、当接速度が速くなり、当接時の衝撃力及び当接音が大きくなる虞がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、回転体対が当接するときに、圧接解除機構の自転を抑制して、その当接で生じ得る衝撃力及び当接音を低減することができる圧接回転体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の圧接回転体装置は、1対の回転体である回転体対を互いに圧接させる圧接機構と、回転することで前記圧接機構による圧接を解除する圧接解除機構と、前記圧接解除機構を駆動する駆動器と、前記駆動器から前記圧接解除機構へと至るカム駆動経路に設けられ、前記駆動器を第1回転方向に回転させたときには前記カム駆動経路の連結を前記駆動器の駆動力で遮断して前記圧接解除機構を停止させ、前記駆動器を第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転させたときは前記カム駆動経路の遮断を前記駆動器の駆動力で連結して前記圧接解除機構を回転させ、前記圧接解除機構の停止及び回転を切り替える第1切替手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転体対が当接するときに、圧接解除機構の自転を抑制して、その当接で生じ得る衝撃力及び当接音が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る定着装置を備える画像形成装置の構成を示し、シートの搬送方向に沿った断面図である。
【図2】定着装置の構成を示す斜視図等である。
【図3】定着装置の構成を示す一部拡大断面図等である。
【図4】ジャムセンサ、接離センサ、モータ、コントローラの接続状態を示すブロック図等である。
【図5】定着駆動部及びカム駆動部の構成を示す斜視図等である。
【図6】定着駆動部及びカム駆動部の構成を示す斜視図等である。
【図7】本発明の実施例2に係る定着装置が備える定着駆動部及びカム駆動部の構成を示す一部拡大斜視図等である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る定着装置40を備える画像形成装置1の構成を示し、シートPの搬送方向に沿った断面図である。画像形成装置1は、電子写真画像形成プロセスを利用した両面印刷機能を有する画像形成装置としてのプリンタである。図1に示されるように、画像形成装置1は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)1Aを有し、この装置本体1Aの内部には、画像を形成する画像形成部が設けられる。画像形成部は、『像担持体』である感光体ドラム11、『1次転写体』である1次転写ブレード17等を含む。実施例1では、接離可能な回転体対にベルトを備えた定着装置40を有する画像形成装置1として説明する。『記録材』であるシートPは、トナー像が形成されるものである。シートPの具体例として、普通紙、普通紙の代用品である樹脂製のシート状のもの、厚紙、オーバーヘッドプロジェクター用などがある。
【0013】
画像形成装置1は、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色の画像形成部10を備えている。画像形成部10は、感光体ドラム11、帯電器12、レーザスキャナ13、現像器14、クリーナ15等を備える。画像形成にあたっては、まず、感光体ドラム11の表面が帯電器12によって予め帯電される。その後、感光体ドラム11の表面には、露光装置であるレーザスキャナ13によって静電像が形成される。静電像は現像器14によって現像されて現像剤像であるトナー像になる。この感光体ドラム11のトナー像は、1次転写ブレード17によって、『像担持体』である例えば中間転写ベルト31に順次転写される。転写後、感光体ドラム11に残ったトナーは、クリーナ15によって除去される。この結果、感光体ドラム11の表面は、清浄になり、次の画像形成に備える。
【0014】
一方、シートPは、給送カセット20又はマルチ給送トレイ25から1枚ずつ送り出されて、レジストローラ対23に送り込まれる。レジストローラ対23は、シートPを一旦受け止めて、シートPが斜行している場合に進行方向を真っ直ぐに直す。そして、レジストローラ対23は、中間転写ベルト31上のトナー像と同期を取って、シートPを中間転写ベルト31と2次転写ローラ35との間に送り込む。2次転写ローラ35が中間転写ベルト31を介して対向する位置には、2次転写対向ローラ34が配置されている。中間転写ベルト31上のカラーのトナー像は、『2次転写体』である2次転写ローラ35によってシートPに転写される。その後、シートPのトナー像は、シートPが『圧接回転体装置』である定着装置40で加熱及び加圧されることでシートPに定着される。
【0015】
シートPの片面だけにトナー像を形成する場合、切替フラッパ61が切り替えられて、シートPを排送ローラ63を介してシートPを装置本体1Aの側面に配置される排送トレイ64に排出するか、装置本体1Aの上面に配置される排送トレイ65に排出される。即ち、切替フラッパ61が上に向いている場合には、シートPはフェイスアップ(トナー像が上側)で排送トレイ64上に排出され、切替フラッパ61が下に向いている場合には、シートPはフェイスダウン(トナー像が下側)で排送トレイ65に排出される。
【0016】
シートPの両面にトナー像を形成する場合、定着装置40でトナー像が定着されたシートPは、下に向いている切替フラッパ61で上方へ案内されて後端が反転ポイントRに達した後に、スイッチバック搬送路73でスイッチバック搬送されて表裏反転される。その後、シートPは、両面搬送路70を搬送されて、片面画像形成と同様の過程をへて他方の面にトナー像を形成されて、排送トレイ64又は排送トレイ65上に排出される。切替フラッパ61、スイッチバック搬送路73等で構成される部分は、反転手段の一例である。
【0017】
図2(a)は、定着装置40の構成を示す斜視図である。図2(a)に示されるように、定着装置40は、幅方向Zに延びている定着ベルト100、加圧ローラ101、カム軸123を備えている。また、定着装置40は、定着ベルト100を駆動する定着駆動部90、カム軸123を駆動するカム駆動部91、定着駆動部90及びカム駆動部91を駆動する駆動装置であるモータ92を備える。さらに、定着装置40は、定着装置40の長手方向の端部側にセンサフラグ121及び接離センサ122を備える。定着ベルト100は薄肉中空無端ベルト状のベルトである。加圧ローラ101は定着ベルト100に対向して配置されている。定着装置40は、定着フレーム40Aを備えている。定着フレーム40Aは、定着ベルト100の幅方向Zの方向に延びる第1板部40a、第1板部40aの一端部側で屈曲して延びる第2板部40b、第1板部40aの他端部側で屈曲して延びる第3板部40cを備える。
【0018】
図2(b)は、定着装置40の構成を示す一部拡大斜視図である。図2(b)に示されるように、第2板部40bの外側では、カム軸123の端部側にカム120が取り付けられている。また、第2板部40bの外側には、第2板部40bに回転中心軸111を中心に回転自在に支持された加圧レバー112が配置されている。さらに、ベルトガイド105には、定着ベルト100の内側に配置されるベルトフレーム104(図3(a)(b)参照)の長手両端部が嵌合される。そして、そのベルトガイド105は、第2板部40bの開口40mに挿入され、第2板部40bの外側には、ベルトガイド105の一部が表れている。このベルトガイド105は、上方に突出する突起部105aを有している。
【0019】
そして、加圧レバー112は、カム120の上方からベルトガイド105の上方に亘って延び、更に回転中心軸111の下方に亘って延びる。加圧レバー112は、突起部105aに当接しており、カム120の回転によってカム120との当接離間が可能となっている。また、この加圧レバー112の下面には図示しない凹部が形成されており、この凹部に前述の突起部105aが嵌合されており、加圧レバー112及びベルトガイド105が一体的に動作可能となっている。
【0020】
図3(a)は、定着装置40の構成を示す一部拡大断面図である。図3(a)に示されるように、定着装置40は、『1対の回転体』である『回転体対』である加圧ローラ101及び定着ベルト100を互いに圧接させる『圧接機構』である加圧バネ113及び加圧レバー112を備える。このために、定着ベルト100は、加圧バネ113と加圧レバー112とで加圧ローラ101に圧接されている。また、定着装置40は、回転することで『圧接機構』である加圧バネ113及び加圧レバー112による圧接を解除する『圧接解除機構』であるカム120を備える。定着ベルト100の内周側には、加圧部材103及び加熱部材102が配置されている。加圧部材103は、加圧ローラ101との間に定着ベルト100を挟持しつつ摺擦している。定着ベルト100及び加圧部材103の摺動面には、摩擦力を低減するために、予め潤滑剤(不図示)が塗布されている。
【0021】
加圧部材103及び加圧ローラ101の間には、定着ベルト100を挟みつつ所定の加圧力が作用している。加圧ローラ101は、モータ92(図2(a)参照)及び定着駆動部90(図2(a)参照)によって回転駆動される。定着ベルト100は、加圧ローラ101の回転駆動に従動して回転する。
【0022】
加熱部材102は、電力供給により発熱する発熱源である発熱体(抵抗発熱体)を含み、その発熱体の発熱により昇温する。定着ベルト100と加圧ローラ101の間にシートPを通すことで、シートPには、定着ニップ部Nを通過する過程で加熱部材102から定着ベルト100を介して熱エネルギーが付与され、シートP上の未定着トナー像(不図示)は溶融定着される。そして、シートPが定着ニップ部Nを通過したのち、定着ベルト100から分離して排出されるトナー像が加熱及び加圧によってシートPに定着される。
【0023】
定着ベルト100は、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、肉厚を総厚が100μm以下、好ましくは60μm以下で20μm以上としたポリイミドフィルム、PEEKフィルム等の耐熱樹脂からなる。本実施例では、基体として厚み50μmのポリイミドを用い、その上に厚み10μmのPFA層を設け、定着フィルム内径を30mmφとした。PFA層は、離型性の高いシートP又はコート層であることが好ましく、例えばフッ素樹脂層を用いることができる。また、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドアミド等に代表される耐熱性の高いシート状部材を基層とし、その上に導電層、さらにその上に表面離型層を積層したものでもよい。
【0024】
加圧ローラ101は、鉄、アルミ等の金属製の円柱状芯金を芯材とし、この芯金の外周側にスポンジやシリコーンゴムなどの弾性層と、表層には離型層としてのPFA層を備えている。本実施例では、鉄、アルミ等の芯金の表面をブラスト等の表面粗し処理を行った後、洗浄を行い、次いで芯金を筒型に挿入し、液状のシリコーンゴムを型内に注入し加熱硬化させる。この時、加圧ローラ101の表面層に離型層としてPFAチューブ等の樹脂チューブ層を形成するために、型内に予め内面にプライマーを塗布したチューブを挿入しておくことにより、ゴムの加熱硬化と同時にチューブとゴム層の接着を行う。このようにして成型された加圧ローラは脱型処理した後、2次加硫を行う。
【0025】
ここでは、加圧ローラ101の芯金の径は22mmφ、ゴム層の肉厚は4mm、チューブ層の厚みは50μmとし外径約30mmφの加圧ローラ101とした。加熱手段としての加熱部材102は、熱伝導が良好なAlN基板上にAg・Pdペーストを厚膜印刷し焼成することで発熱体を形成する。そして、発熱体の上に摺動部材として50〜60μm程度の厚さのガラスコーティング層が一体となって設けられたセラミックヒータを構成する。一方、AlN基板を挟んで発熱体が設けられている側と反対側の基板上には、チップ状のサーミスタが設けられている。サーミスタは、発熱体が存在する領域の反対側に、予め厚膜印刷で形成された電極パターン上に接着固定され、AlN基板の温度をモニターする。更に、発熱体の端部近傍の位置にもサーミスタが設けられている。サーミスタは、接着剤の耐熱温度を超えるような温度も検知するために不図示のバネ等の加圧手段により基板に所定の圧力で固定されている(不図示)。加熱部材102と定着ベルト100の間には、不図示の潤滑剤であるオイルが塗布されている。オイルとしては、高温環境下において使用可能なシリコーンオイルが好ましい。また、実施例1では加圧力を250N(ニュートン)とし、加圧バネ113の圧力をセットされた状態で100Nとした。
【0026】
図3(b)は、定着装置40の構成を示す一部拡大断面図である。図3(b)に示されるように、カム120が加圧レバー112を上方に押圧することによってベルトガイド105が上方に移動する。これによって、定着ベルト100は、上方へ移動して加圧ローラ101から離間する。この図3(b)及び前述の図3(a)を参照しつつ、以下に、シートPがジャムした場合に、ジャムしたシートPを処理する機構及び動作に関して説明する。
【0027】
図3(a)に示されるように、定着ベルト100は、内部のベルト内周ガイド115で支持されると共に、定着ベルト100の両端部には、ベルトガイド105が配置されている。定着ベルト100は、回転中心軸111を回転中心として揺動自在な状態で加圧レバー112及び加圧バネ113で加圧ローラ101によって加圧されている。
【0028】
図3(b)に示されるように、カム駆動部91(図2(a)参照)が駆動すると、カム120が回転して、加圧レバー112が押し上げられ、定着ベルト100が上昇し、定着ベルト100及び加圧ローラ101が離間する。この離間の動作は、定着ニップ部NをシートPが通過してシートPがジャムした場合に、シートPの除去の操作性を向上させるためのものである。
【0029】
図4(a)は、ジャムセンサ151、接離センサ122及びモータ92、並びに、制御部であるコントローラ150の接続状態を示すブロック図である。図4(a)に示されるように、コントローラ150は、ジャムセンサ151、接離センサ122、モータ92と接続されている。ジャムセンサ151及び接離センサ122の情報はコントローラ150に送信されて、それらの情報に基づいてコントローラ150はモータ92を駆動する。
【0030】
ここで、接離センサ122の機能に関して説明する。まず、カム120の回転動作の中で、定着ベルト100及び加圧ローラ101の間の離間位置及び当接位置を検知する手段として、カム120の支持軸であるカム軸123の同軸上にセンサフラグ121が取り付けられている(図3(a)及び図3(b)参照)。また、カム軸123の側方には、カム120の回転と同期回転し、センサフラグ121の回転方向の位置を検出する接離センサ122が配置されている(図3(a)及び図3(b)参照)。接離センサ122は、上方から見た断面がコ字状(U字状)に形成されており、例えば、投光側122a(図3(a)参照)及び受光側122b(図3(b)参照)を有している。投光側122a及び受光側122bとでセンサフラグ121を微小の距離で離れて挟むように配置されている。そして、接離センサ122は、赤外線をセンサの内部で透過させ、センサフラグ121がその赤外線を遮光又は透過することによって信号を発信する。
【0031】
図4(b)は、コントローラ150の制御工程を示すフローチャートである。この図4(b)を参照しつつ、定着ベルト100及び加圧ローラ101が当接状態から離間状態に移行する過程に関して説明する。まず、コントローラ150は、画像形成を開始する(ステップ1、以下、「ステップ」を単に「S」という。S1)。コントローラ150は、モータ92を『第1回転方向』である正方向CWに回転する(S2)。コントローラ150は、ジャムセンサ151の検知結果に基づいて、シートPのジャムを検知したか否かを判断する(S3)。ジャムセンサ151によるシートPのジャムの検知は、シートPの搬送時間の遅延等に基づいて行われる。
【0032】
コントローラ150は、S3の判断の結果、YES(ジャムセンサ151がシートPのジャムを検知と判断した)場合には、モータ92の駆動を停止して定着駆動部90の駆動を停止した後に、モータ92を『第2回転方向』である逆方向CCWに回転する(S4)。そして、後述の駆動切替で駆動経路の駆動伝達でカム120が回転し始めると、カム軸123と同軸上にあるセンサフラグ121が同時に回転する。コントローラ150は、S3の判断の結果、NO(ジャムセンサ151がシートPのジャムを検知しないと判断した)の場合には、制御を終了する(S10)。
【0033】
次に、コントローラ150は、接離センサ122の検知結果に基づいて、定着ベルト100及び加圧ローラ101が離間したか否かを判断する(S5)。すなわち、センサフラグ121の回転動作前に接離センサ122が透過状態であったのが、センサフラグ121の回転中に接離センサ122が遮光状態となる。それから、センサフラグ121の回転で接離センサ122が透過状態になる。この接離センサ122の出力信号によって、コントローラ150は、定着ベルト100及び加圧ローラ101が離間するように、カム120が離間完了位置に配置されていると判断する。また、この接離センサ122の出力信号に基づいて、定着ベルト100及び加圧ローラ101が離間状態にあると判断してモータ92の駆動を停止することで、定着ベルト100及び加圧ローラ101の離間が完了する。
【0034】
S5の判断の結果、YES(離間したと判断)の場合には、ユーザは、ジャムしたシートPを除去する(S6)。NO(離間していないと判断)の場合には、コントローラ150は、S4の工程に戻る。
【0035】
次に、図4(b)を参照しつつ、定着ベルト100及び加圧ローラ101が離間状態から当接状態に移行する過程に関して説明する。まず、ユーザは、ジャムしたシートPを除去する(S6)。そして、コントローラ150は、ジャムセンサ151の検知結果に基づいて、ジャムしたシートPが検知から未検知になったか否かを判断し(S7)、カバー(不図示)の閉状態を判断する。コントローラ150は、S7の判断の結果、YESの場合には、コントローラ150は、定着装置40を画像形成状態に復帰するために、定着ベルト100と加圧ローラ101の当接動作を開始する。すなわち、コントローラ150は、モータ92を逆方向CCWに回転駆動して(S8)、後述の駆動切替による駆動経路の駆動伝達によりカム120が回動し始めると、これ伴ってカム軸123の同軸上にあるセンサフラグ121が同時回転する。コントローラ150は、S7の判断の結果、NOの場合には、S6の工程に戻る。
【0036】
コントローラ150は、S8の工程によって、離間時は接離センサ122が透過状態だったのが回転中は遮光状態となり、離間完了位置まで回転するとセンサフラグ121が接離センサ122の赤外線照射域を抜けて接離センサ122が透過状態となる。コントローラ150は、この時の接離センサ122の出力信号に基づいて、定着ニップ部Nが当接したか否かを判断する(S9)。YESの場合には、コントローラ150は、モータ92の駆動を停止して当接を完了し(S10)、NOの場合には、コントローラ150は、S8の工程に戻る。
【0037】
図5は、図5(a)及び図5(b)からなる。図5(a)は、加圧ローラ101を回転する定着駆動部90、及び、カム120を回転するカム駆動部91の構成を示す斜視図である。図5(b)は、図5(a)の構成の一部を別の角度から見た拡大斜視図である。図5(a)及び図5(b)は、加圧ローラ101が回転中の状態を示しており、特に図5(a)を参照しつつ、以下に、加圧ローラ101が回転中の駆動経路に関して説明する。
【0038】
図5(a)に示されるように、定着装置40は、カム120を駆動する『駆動器』であるモータ92を備える。後述するが、このモータ92は、『圧接解除機構』であるカム120の駆動及び『回転体対』である加圧ローラ101及び定着ベルト100の駆動に兼用される。モータ92が正方向CWに回転すると、各ギアが矢印Vの方向に回転する。『回転体対駆動経路』である定着駆動部90はモータ92から加圧ローラ101へと至るものである。『回転体対駆動経路』である定着駆動部90は、駆動力を伝達する『複数の第2駆動伝達部材』であるギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア130、定着駆動第2ギア133、加圧ローラギア134を備える。このために、モータ92の駆動力は、モータ92に具備されたギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア130、定着駆動第2ギア133を介して、加圧ローラギア134を回転することになる。以下、詳細を述べる。
【0039】
図5(b)に示されるように、モータ92に具備されたギア92aは、左捩れの斜歯ギアであり、このギア92aには、アイドラギア93の第1ギア93aが噛み合わせられている。アイドラギア93は、この第1ギア93a、及び、第1ギア93aとは段違いの第2ギア93bを有しており、第1ギア93aは右捩れの斜歯ギアであり、第2ギア93bは左捩れの斜歯ギアである。この第2ギア93bには、定着駆動切替ギア130が噛み合わせられている。定着駆動切替ギア130は右捩れの斜歯ギアである。なお、第1ギア93aには、カム駆動切替ギア140が噛み合わせられている。カム駆動切替ギア140は左捩れの斜歯ギアである。
【0040】
前述の定着駆動切替ギア130には、『第2切替手段』の一部である溝135が形成されている。また、加圧ローラ101の定着駆動切替ギア軸131には『第2切替手段』の一部である平行ピン132が取り付けられている。溝135の形状は平行ピン132と略同じ形状で形成され、溝135の寸法は、平行ピン132が挿入及び離脱可能となるように、平行ピン132よりも若干大き目に取られている。モータ92が正方向CWに回転すると、『第2切替手段』である溝135及び平行ピン132は、定着駆動部90の『複数の第2駆動伝達部材』の遮断をモータ92の駆動力で連結して加圧ローラ101を回転させる。モータ92を正方向CWと逆の逆方向CCWに回転すると、『第2切替手段』である溝135及び平行ピン132は、『複数の第2駆動伝達部材』の連結をモータ92の駆動力で遮断して加圧ローラ101を停止させる(図6参照)。こうして、加圧ローラ101の回転及び停止は切り替えられる。
【0041】
『複数の第2駆動伝達部材』は、ギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア130、定着駆動第2ギア133、加圧ローラギア134が相当する。なお、前述の通り、『複数の第2駆動伝達部材の一部のギア』であるギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア130は、斜歯ギアである。『カム駆動経路』であるカム駆動部91及び『回転体対回転駆動経路』である定着駆動部90を分岐する『分岐部』であるアイドラギア93は、『カム駆動経路』及び『回転体対回転駆動経路』毎に捩れ角が異なる2種類のギアが一体となった斜歯ギアである。
【0042】
図5(a)に示されるように、モータ92が正方向CWに回転するとアイドラギア93に斜歯ギアの捩れ角に基づいた軸方向推力が働く。しかし、アイドラギア93は、止め輪94(図5(b)参照)及び段部95(図5(a)参照)により挟持されているために軸方向に移動しない。また、アイドラギア93が有する段違いの2つのギアである第1ギア93a及び第2ギア93bは、互いに異なる捩れ方向であり、互いに異なる方向の推力により推力を相殺しあうために、推力は少ない。
【0043】
次経路の定着駆動切替ギア130には捩れ方向から矢印X1の方向に推力が働き、定着駆動切替ギア130が矢印X1の方向に回転しつつ移動する。そして、定着駆動切替ギア130に具備された溝135が、定着駆動第2ギア133の定着駆動切替ギア軸131に圧入された平行ピン132に係合する。この係合によって、定着駆動切替ギア130と定着駆動切替ギア軸131が一体化して、駆動力が次経路に伝達される。次経路の定着駆動第2ギア133は定着駆動切替ギア軸131とDカット形状の軸及び穴で嵌合しており、一体に回転し、次の加圧ローラギア134に駆動力を伝達する。
【0044】
次に、図5(a)及び図5(b)を参照しつつ、加圧ローラ101が回転中のカム駆動部91の駆動経路について説明する。前述のアイドラギア93には次経路のカム駆動切替ギア140が噛み合わせられており、このカム駆動切替ギア140は、左捩れの斜歯ギアである。モータ92が正方向CWに回転すると、アイドラギア93がV方向に回転して、次経路のカム駆動切替ギア140に駆動力を伝達する。カム駆動切替ギア140は、捩れ方向から矢印X1の方向に推力が働き、カム駆動切替ギア140が矢印X1の方向に回転しつつ移動し、カム駆動切替ギア軸141の軸端段部146で矢印X1の方向の移動が規制されつつ空回転する。
【0045】
ここで、カム駆動切替ギア140に形成された溝145が、カム駆動切替ギア軸141に圧入された平行ピン142から離間するために係合されず駆動力伝達が遮断されるために、カム軸ギア144まで駆動力が伝達されず、カム120が動作しない。
【0046】
図6は、図6(a)及び図6(b)からなる。図6(a)は、加圧ローラ101を回転する定着駆動部90、及び、カム120を回転するカム駆動部91の構成を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)の構成の一部を別の角度から見た拡大斜視図である。図6(a)及び図6(b)は、加圧ローラ101と定着ベルト100が当接離間動作中の状態を示しており、特に図6(a)を参照しつつ、以下に、加圧ローラ101と定着ベルト100が当接離間動作を行うためのカム120の回転中の駆動経路に関して説明する。図6(a)に示されるように、モータ92が逆方向CCWに回転すると、各ギアが矢印Wの方向に回転する。『カム駆動経路』であるカム駆動部91は、モータ92からカム120へと至る。『カム駆動経路』であるカム駆動部91は、駆動力を伝達する『複数の第1駆動伝達部材』であるギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア140、カム駆動第2ギア143、カム軸ギア144を備える。このために、モータ92の駆動力は、モータ92に具備されたギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア140、カム駆動第2ギア143を介して、カム軸ギア144を回転することになる。以下、詳細に関して述べる。
【0047】
また、前述の定着駆動切替ギア130には、『第1切替手段』である溝145が形成されている。また、カム120のカム駆動切替ギア軸141には『第1切替手段』の一部である平行ピン142が取り付けられている。モータ92が『第1回転方向』である正方向CWに回転すると、『第1切替手段』である溝145及び平行ピン142は、カム駆動部91の『複数の第1駆動伝達部材』の連結をモータ92の駆動力で遮断してカム120を停止させる(図5参照)。モータ92が正方向CWとは逆の『第2回転方向』である逆方向CCWに回転すると、『第1切替手段』である溝145及び平行ピン142は、『複数の第1駆動伝達部材』の遮断をモータ92の駆動力で連結してカム120を回転させる。こうして、カム120の停止及び回転は切り替えられる。
【0048】
『複数の第1駆動伝達部材』は、ギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア140、カム駆動第2ギア143、カム軸ギア144が相当する。なお、前述の通り、『複数の第1駆動伝達部材の一部のギア』であるギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア140は、斜歯ギアである。
【0049】
図6(a)に示されるように、モータ92が逆方向CCWに回転するとアイドラギア93からカム駆動切替ギア140に駆動力が伝達される。カム駆動切替ギア140は、捩れ方向から矢印Y1の方向に推力が働き、カム駆動切替ギア140が矢印Y1の方向に回転しつつ移動する。そして、カム駆動切替ギア140に具備された溝145が、カム駆動第2ギア143のカム駆動切替ギア軸141に圧入された平行ピン142に係合する。そして、カム駆動切替ギア140とカム駆動切替ギア軸141が一体化して、駆動が次経路に伝達される。次経路のカム駆動第2ギア143はカム駆動切替ギア軸141とDカット形状の軸及び穴で嵌合しており、一体に回転し、次のカム軸ギア144に駆動力を伝達する。
【0050】
カム軸ギア144が回転することで、一体となっているカム軸123とカム120が回転して加圧レバー112を動作させると、加圧ローラ101と定着ベルト100が当接離間する。
【0051】
次に、図6(a)及び図6(b)を参照しつつ、カム120が回転中の定着駆動部90の駆動経路について説明する。前述のアイドラギア93には次経路の定着駆動切替ギア130が噛み合わせられており、この定着駆動切替ギア130は、右捩れの斜歯ギアである。モータ92が逆方向CCWに回転すると、アイドラギア93が矢印Wの方向に回転して、次経路の定着駆動切替ギア130に駆動力を伝達する。定着駆動切替ギア130は、捩れ方向から矢印Y2の方向に推力が働き、定着駆動切替ギア130が矢印Y2の方向に回転しつつ移動し、アイドラギア93の側面で矢印Y2の方向の移動が規制されつつ空回転する。ここで、定着駆動切替ギア130に形成された溝135が、定着駆動切替ギア軸131に圧入された平行ピン132から離間して係合されず、駆動力伝達を遮断する為、加圧ローラギア134まで駆動が伝達されず、加圧ローラ101が回転しない。
【0052】
以上説明したように、当接動作中におけるカム駆動部91の駆動経路を全て連結させた状態で加圧ローラ101と定着ベルト100の当接動作を行う。このことで、加圧レバー112から、カム120の回転方向に付勢力を受ける回転モーメントが発生しても、駆動経路をすべて連結しているために駆動経路のギアが先送りされることがない。また、カム120の自転を抑止することで、一つのモータ92で加圧ローラ101及び定着ベルト100の圧接離間動作と回転動作をさせても、当接時の衝撃力及び当接音の低減が可能となる。
【実施例2】
【0053】
図7は、図7(a)及び図7(b)からなる。図7(a)及び図7(b)は、実施例2に係る定着装置が備える定着駆動部190及びカム駆動部191の構成を示す一部拡大斜視図である。実施例2の定着装置の構成のうち実施例1の定着装置40と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例2においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。実施例2の定着装置が実施例1の定着装置40と異なる点は以下の点である。
【0054】
すなわち、実施例1では、定着駆動切替ギア130、定着駆動切替ギア軸131、定着駆動第2ギア133、平行ピン132、カム駆動切替ギア140、カム駆動切替ギア軸141、カム駆動第2ギア143、平行ピン142が用いられていた。これが、実施例2の定着装置では、定着駆動切替ギア160、定着駆動第2ギア163、突起161、164、カム駆動切替ギア170、カム駆動第2ギア173、突起171、174で代替される点である。なお、以下の説明において、『第1切替手段』には突起161、164が相当し、『第2切替手段』には突起171、174が相当する。『カム駆動経路』にはカム駆動部191が相当し、『回転体対駆動経路』には定着駆動部190が相当する。さらに、『複数の第1駆動伝達部材』には、ギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア170、カム駆動第2ギア173、カム軸ギア144が相当する。『複数の第2駆動伝達部材』には、ギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア160、定着駆動第2ギア163、加圧ローラギア134が相当する。
【0055】
これより、加圧ローラ101及びカム120を回転するために駆動経路における切替手段に関する機構及び動作について、図5(a)及び図6(a)を参照しつつ説明する。なお、図5(a)及び図7(a)は加圧ローラ101が回転中の状態を表し、図6(a)及び図7(b)は、加圧ローラ101と定着ベルト100が当接離間動作中の状態を表している。
【0056】
図5(a)及び図7(a)を参照しつつ、加圧ローラ101が回転する場合に、加圧ローラ101を回転させる定着駆動経路について説明する。アイドラギア93の第2ギア93bには、定着駆動切替ギア160が噛み合わせられており、この定着駆動切替ギア160は、右捩れの斜歯ギアである。モータ92が正方向CWに回転すると(図5(a)参照)、図7(a)に示されるように、各ギアが矢印Vの方向に回転する。モータ92の駆動伝達力は、モータ92に具備されたギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア160、定着駆動第2ギア163を介して伝達され、加圧ローラギア134を回転する。以下、このことに関して、詳細に説明する。
【0057】
モータ92に具備されたギア92aは、左捩れの斜歯ギアであり、このギア92aには、アイドラギア93の第1ギア93aが噛み合わせられている。アイドラギア93は、この第1ギア93a、及び、第1ギア93aとは段違いの第2ギア93bを有しており、第1ギア93aは右捩れの斜歯ギアであり、第2ギア93bは左捩れの斜歯ギアである。この第2ギア93bには、定着駆動切替ギア160が噛み合わせられている。定着駆動切替ギア160は右捩れの斜歯ギアである。また、定着駆動切替ギア160は、右捩れの斜歯ギアであり、カム駆動切替ギア170は、左捩れの斜歯ギアである。
【0058】
モータ92が正方向CWに回転すると(図5(a)参照)、図7(a)に示されるように、アイドラギア93が矢印Vの方向に回転し、アイドラギア93には第1ギア93a及び第2ギア93bの斜歯の捩れ角に基づいた軸方向推力が働く。しかし、アイドラギア93は、止め輪94(図7(a)参照)及びの段部95(図5(a)参照)により挟持されているために軸方向に移動しない。また、アイドラギア93が有する段違いの2つのギアである第1ギア93a及び第2ギア93bは、互いに異なる捩れ方向のギアであり、互いに異なる方向の推力により推力を相殺しあうために、推力は少ない。
【0059】
図7(a)に示されるように、アイドラギア93が矢印Vの方向に回転すると、アイドラギア93の第2ギア93bから定着駆動切替ギア160に駆動力が伝達する。定着駆動切替ギア160には捩れ方向から矢印X2の方向に推力が働き、定着駆動切替ギア160が矢印X2の方向に回転しつつ移動する。このときに、定着駆動切替ギア160に具備された突起161が、定着駆動第2ギア163に具備された突起164に係合する。そして、定着駆動切替ギア160と定着駆動第2ギア163が一体化して、駆動力が次の加圧ローラギア134に伝達される。なお、突起161は、定着駆動切替ギア160の面に円周方向で所定間隔毎に複数形成されており、突起164は、定着駆動第2ギア163の面に円周方向で所定間隔毎に複数形成されている。
【0060】
次に、図5(a)及び図7(a)を参照しつつ、加圧ローラ101が回転する場合に、カム120を回転させるカム駆動経路について説明する。アイドラギア93の第1ギア93aには、カム駆動切替ギア170が噛み合わせられており、このカム駆動切替ギア170は、左捩れの斜歯ギアである。モータ92が正方向CWに回転すると(図5(a)参照)、図7(a)に示されるように、各ギアが矢印Vの方向に回転する。今度は、モータ92の駆動伝達力は、モータ92に具備されたギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア170、カム駆動第2ギア173を介して、カム軸ギア144を回転することはない。以下、このことに関して、詳細に説明する。
【0061】
モータ92が正方向CWに回転すると(図5(a)参照)、図7(a)に示されるように、アイドラギア93が矢印Vの方向に回転し、第1ギア93aからカム駆動切替ギア170に駆動力が伝達する。カム駆動切替ギア170には、捩れ方向から矢印X1の方向に推力が働き、カム駆動切替ギア170が矢印X1の方向に回転しつつ移動する。このときに、カム駆動切替ギア軸172の軸端段部(不図示)で矢印X1の方向の移動が規制されつつ空回転する。ここで、カム駆動切替ギア170に具備された突起171が、カム駆動第2ギア173に具備された突起174から離間して係合せず、駆動力の伝達が遮断されるために、カム軸ギア144(図5(a)参照)まで駆動力が伝達されず、カム120が回転しない。
【0062】
次に、図6(a)及び図7(b)を参照しつつ、加圧ローラ101と定着ベルト100が当接離間動作する場合に、カム120を回転させるカム駆動経路について説明する。アイドラギア93の第1ギア93aには、カム駆動切替ギア170が噛み合わせられており、このカム駆動切替ギア170は、左捩れの斜歯ギアである。モータ92が逆方向CCWに回転すると(図6(a)参照)、図7(b)に示されるように、各ギアが矢印Wの方向に回転する。モータ92の駆動伝達力は、モータ92に具備されたギア92a、アイドラギア93、カム駆動切替ギア170、カム駆動第2ギア173を介して伝達され、カム軸ギア144を回転する。以下、このことに関して、詳細に説明する。
【0063】
図7(b)に示されるように、アイドラギア93が第1ギア93aからカム駆動切替ギア170に駆動力が伝達する。カム駆動切替ギア170には、捩れ方向から矢印Y1の方向に推力が働き、カム駆動切替ギア170が矢印Y1の方向に回転しつつ移動する。このときに、カム駆動切替ギア170に具備された突起171が、カム駆動第2ギア173に具備された突起174に係合する。そして、カム駆動切替ギア170とカム駆動第2ギア173が一体化して、駆動力が次のカム軸ギア144に伝達される。カム軸ギア144が回転することで、一体となっているカム軸123とカム120が回転して加圧レバー112を動作させると、加圧ローラ101と定着ベルト100が当接離間する。なお突起171は、カム駆動切替ギア170の面に円周方向で所定間隔毎に複数形成されており、突起174は、カム駆動第2ギア173の面に円周方向で所定間隔毎に複数形成されている。
【0064】
次に、図6(a)及び図7(b)を参照しつつ、加圧ローラ101及び定着ベルト100が当接離間動作する場合に、カム120を回転させる定着駆動経路について説明する。アイドラギア93の第2ギア93bには、定着駆動切替ギア160が噛み合わせられており、この定着駆動切替ギア160は、右捩れの斜歯ギアである。モータ92が逆方向CCWに回転すると(図6(a)参照)、図7(b)に示されるように、各ギアが矢印Wの方向に回転する。モータ92の駆動伝達力は、モータ92に具備されたギア92a、アイドラギア93、定着駆動切替ギア160、定着駆動第2ギア163を介して、加圧ローラギア134を回転する。以下、このことに関して、詳細に説明する。
【0065】
モータ92が逆方向CCWに回転すると(図6(a)参照)、図7(b)に示されるように、アイドラギア93が矢印Wの方向に回転して、第2ギア93bから定着駆動切替ギア160に駆動力を伝達する。定着駆動切替ギア160には、捩れ方向から矢印Y2の方向に推力が働き、定着駆動切替ギア160が矢印Y2の方向に回転しつつ移動する。このときに、アイドラギア93の側面で矢印Y2の方向の移動が規制されつつ空回転する。ここで、定着駆動切替ギア160に具備された突起161が、定着駆動第2ギア163に具備された突起164から離間して係合せず、駆動力の伝達が遮断されるために、加圧ローラギア134まで駆動が伝達されず、加圧ローラ101が回転しない。上記構成にすることで、実施例1と同様の効果が得られる。
【0066】
実施例1及び2の定着装置によれば、加圧ローラ101及び定着ベルト100が当接するときに、カム120の自転を抑制して、その当接で生じ得る衝撃力及び当接音が低減される。また、一つのモータ92で加圧ローラ101及び定着ベルト100の当接離間動作を行うことができる。
【0067】
なお、前述の定着装置40の機構は、前述の定着装置40の他に、転写装置にも適用可能である。一例として、例えば、『1対の回転体対』として、2次転写ローラ35及び2次転写対向ローラ34が相当するといったことも考えられる。また、1次転写ブレード17の代わりに1次転写ローラが用いられた場合には、『1対の回転体対』として、感光体ドラム11及び1次転写ローラが相当することも考えられる。
【符号の説明】
【0068】
40 定着装置(圧接回転体装置)
92 モータ(駆動器)
100 定着ベルト(回転体対)
101 加圧ローラ(回転体対)
112 加圧レバー(圧接機構)
113 加圧バネ(圧接機構)
120 カム(圧接解除機構)
142 平行ピン(第1切替手段)
145 溝(第1切替手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の回転体である回転体対を互いに圧接させる圧接機構と、
回転することで前記圧接機構による圧接を解除する圧接解除機構と、
前記圧接解除機構を駆動する駆動器と、
前記駆動器から前記圧接解除機構へと至るカム駆動経路に設けられ、前記駆動器を第1回転方向に回転させたときには前記カム駆動経路の連結を前記駆動器の駆動力で遮断して前記圧接解除機構を停止させ、前記駆動器を第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転させたときは前記カム駆動経路の遮断を前記駆動器の駆動力で連結して前記圧接解除機構を回転させ、前記圧接解除機構の停止及び回転を切り替える第1切替手段と、
を備えることを特徴とする圧接回転体装置。
【請求項2】
前記カム駆動経路は、駆動力を伝達する複数の第1駆動伝達部材で構成され、
前記第1切替手段は、前記駆動器が第2回転方向に回転したときに前記第1駆動伝達部材を連結することを特徴とする請求項1に記載の圧接回転体装置。
【請求項3】
前記カム駆動経路は、駆動力を伝達する複数の第1駆動伝達部材で構成され、
前記第1切替手段は、前記駆動器が第1回転方向に回転したときに前記第1駆動伝達部材の連結を遮断することを特徴とする請求項1に記載の圧接回転体装置。
【請求項4】
前記駆動器から前記回転体対へと至る回転体対駆動経路に設けられ、前記駆動器を第1回転方向に回転させたときには前記回転体対駆動経路の遮断を前記駆動器の駆動力で連結して前記回転体対を回転させ、前記駆動器を第1回転方向と逆の第2回転方向に回転させたときには前記回転体対駆動経路の連結を前記駆動器の駆動力で遮断して前記回転体対を停止させ、前記回転体対の回転及び停止を切り替える第2切替手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧接回転体装置。
【請求項5】
前記回転体対駆動経路は、駆動力を伝達する複数の第2駆動伝達部材で構成され、
前記第2切替手段は、前記駆動器が第1回転方向に回転したときに前記第2駆動伝達部材を連結することを特徴とする請求項4に記載の圧接回転体装置。
【請求項6】
前記回転体対駆動経路は、駆動力を伝達する複数の第2駆動伝達部材で構成され、
前記第2切替手段は、前記駆動器が第2回転方向に回転したときに前記第2駆動伝達部材の連結を遮断することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の圧接回転体装置。
【請求項7】
前記駆動器は、前記圧接解除機構の駆動及び前記回転体対の駆動に兼用されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧接回転体装置。
【請求項8】
前記複数の第1駆動伝達部材の一部のギアは、斜歯ギアであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の圧接回転体装置。
【請求項9】
前記複数の第2駆動伝達部材の一部のギアは、斜歯ギアであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の圧接回転体装置。
【請求項10】
前記カム駆動経路及び前記回転体対駆動経路を分岐する分岐部は、前記カム駆動経路及び前記回転体対駆動経路ごとに捩れ角が異なる2種類のギアが一体となった斜歯ギアであることを特徴とする請求項6に記載の圧接回転体装置。
【請求項11】
前記圧接回転体装置は定着装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の圧接回転体装置。
【請求項12】
前記圧接回転体装置は転写装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の圧接回転体装置。
【請求項13】
画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の圧接回転体装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169947(P2011−169947A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31112(P2010−31112)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】