説明

圧電デバイス及びその製造方法

【課題】発振周波数の変動を防ぐ圧電デバイスを提供することを課題とする。
【解決手段】励振用電極が設けられている圧電振動素子と、一方の主面に前記圧電振動素子を導電性接着剤により搭載するための圧電振動素子搭載パッドが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子が設けられた搭載体と、一方の主面に窪み部が設けられた素子搭載部材と、窪み部内に設けられた搭載体接続パッドと、圧電振動素子を気密封止する蓋部材とを、備え、搭載体が窪み部に収容され、搭載体接続パッドと素子搭載部材接続端子が導電性接着剤により電気的に接続されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の圧電デバイスの一例を示す断面図である。図9は、従来の圧電デバイスの一例を示す断面図である。以下、圧電デバイスの一例として圧電振動子について説明する。
図8に示すように、従来の圧電振動子400は、その例として素子搭載部材410、圧電振動素子420、蓋部材430とから主に構成されている。
素子搭載部材410は、基板部410aと枠部410bで主に構成されている。
この素子搭載部材410は、基板部410aの一方の主面に枠部410bが設けられて凹部空間411が形成される。
また、枠部410bは、基板部410aの一方の主面の外周を囲繞するように設けられた封止用導体膜412上にロウ付けなどにより接続される。
その凹部空間411内に露出する基板部410aの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド413が設けられている。
また、基板部410aは、積層構造となっており、基板部410aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッド413は、素子搭載部材410の基板部410aの他方の主面に設けられている外部接続用電極端子414と接続している。
これら圧電振動素子搭載パッド413上には、導電性接着剤DSを介して電気的に接続される一対の励振用電極422から引き出された引き出し電極を表裏主面に有した圧電振動素子420が搭載されている。この圧電振動素子420を囲繞する素子搭載部材410の枠部410bの頂面には金属製の蓋部材430が被せられ、接合されている。これにより、凹部空間411が気密封止されている。
【0003】
また、このような圧電振動素子420は、圧電素板421の表裏主面にそれぞれ設けられた励振用電極422から一辺に延設された引き出し電極を圧電振動素子搭載パッド413に導電性接着剤DSで固着することで片持ち固定されている。このときの引き出し電極が設けられた一辺とは反対側の端辺を圧電振動素子420の自由端である先端部423とする(例えば、特許文献1参照)。
また、図9に示すように、この先端部423が素子搭載部材410の凹部空間411内底面に接触すると、周波数が変動してしまうため、従来の圧電デバイス400では、前記素子搭載部材410の凹部空間411内底面の水晶振動素子420の先端部423と対向する面に枕部材MBが形成されている構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252782号公報
【特許文献2】特開平08−330886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧電デバイス400においては、小型化が進むと、圧電振動素子420と圧電振動素子搭載パッド413との間の導電性接着剤DSの厚みが薄くなるため、落下の際には、衝撃により、圧電振動素子420が導電性接着剤440から剥がれてしまうといった課題もあった。
また、特許文献1に示すような従来の圧電デバイス400においては、圧電振動素子420を搭載する際に、圧電振動素子420の先端部423が素子搭載部材410の凹部空間411内に露出した基板部411aに接触した場合、振動が阻害されるため、圧電デバイス400の発振周波数が変動してしまうといった課題があった。
【0006】
また、特許文献2に示すような従来の圧電デバイス400においては、圧電振動素子420の先端部423を基板部410aに接触させないために、枕部MBが形成されている。しかしながら、圧電デバイス400の小型化が進むと、圧電振動素子420も小型化することにより、圧電振動素子420の先端部423が枕部MBと接触すると、励振用電極422と圧電振動素子420の先端部423と枕部MBとの接触している箇所とが近接することになるので、振動が阻害されるため、圧電デバイス400の発振周波数が変動してしまうといった課題があった。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、発振周波数の変動を防ぐ圧電デバイスおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧電デバイスは、励振用電極が設けられている圧電振動素子と、一方の主面に前記圧電振動素子を導電性接着剤により搭載するための圧電振動素子搭載パッドが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子が設けられた搭載体と、一方の主面に窪み部が設けられた素子搭載部材と、窪み部内に設けられた搭載体接続パッドと、圧電振動素子を気密封止する蓋部材とを、備え、搭載体が窪み部に収容され、搭載体接続パッドと素子搭載部材接続端子が導電性接着剤により電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、素子搭載部材に少なくとも発振回路を備えた集積回路素子を備え、集積回路素子と圧電振動素子とが電気的に接続された状態となっていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、一方の主面に圧電振動素子搭載パッドが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子が設けられた搭載体を収容するための収容部を有し、圧電振動素子を搭載する際に先端部を接触させるための枕部を有している搭載用治具に搭載体を収容する搭載体収容工程と、圧電振動素子の先端部が枕部に接触するように、搭載体に圧電振動素子を搭載する圧電振動素子搭載工程と、一方の主面に搭載体が収容される窪み部が設けられ、その窪み部内に搭載体接続パッドが設けられている素子搭載部材と圧電振動素子が搭載された搭載体とを接合する搭載体接合工程と、圧電振動素子を気密封止するように素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電デバイスによれば、圧電振動素子は、搭載体の圧電振動素子搭載パッドに導電性接着剤により搭載され、搭載体は素子搭載部材の窪み部に収容され、搭載体接続パッドと素子搭載部材接続端子が電気的に接続されていることによって、落下の際には、その2箇所の導電性接着剤で衝撃に耐えることができる。よって、圧電振動素子が導電性接着剤から剥がれることを防止することができる。
また、本発明の圧電デバイスによれば、圧電振動素子が搭載されている搭載体を素子搭載部材の窪み部に収容することによって、圧電振動素子の先端部が素子搭載部材の主面に接触することがないため、発振周波数の変動を防止することができる。
また、本発明の圧電デバイスによれば、素子搭載部材に枕部を設けることがないので、圧電振動素子の先端部が枕部と接触することがなく、また、振動が阻害されることがないため、発振周波数の変動を防止することができる。
【0012】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、一方の主面に圧電振動素子搭載パッドが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子が設けられた搭載体を収容し、圧電振動素子の先端部が搭載用治具の枕部に接触するように、搭載体に圧電振動素子を搭載することで、圧電振動素子の先端部が搭載用治具の主面から間隔を空けて設けることができる。圧電振動素子の先端部が搭載用治具の主面から間隔を空けた状態で搭載されている搭載体を素子搭載部材の窪み部に収容することによって、圧電振動素子の先端部が素子搭載部材の主面から間隔を空けた状態で設けることができる。
よって、圧電振動素子の先端部が素子搭載部材の主面に接触しないため、発振周波数の変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】(a)は、本発明の圧電デバイスの製造方法の搭載体収容工程を示す断面図であり、(b)は、本発明の圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子搭載工程を示す断面図であり、(c)は、本発明の圧電デバイスの製造方法の蓋部材接合工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子搭載工程を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す分解斜視図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す断面図である。
【図8】従来における圧電デバイスの一例を示す断面図である。
【図9】従来における圧電デバイスの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた場合について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
【0016】
本実施形態において、圧電デバイスの一例として、圧電振動子について説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る圧電振動子100は、素子搭載部材110と圧電振動素子120と蓋部材130と搭載体TTとで主に構成されている。この圧電振動子100は、前記素子搭載部材110に形成されている凹部空間111内に搭載体TTを介して、圧電振動素子120が搭載され、その凹部空間111が蓋部材130により気密封止された構造となっている。
【0017】
圧電振動素子120は、図1及び図2に示すように、水晶素板121に励振用電極122を被着形成したものであり外部からの交番電圧が励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板121は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
励振用電極122は、前記水晶素板121の表裏両主面に金属を所定のパターンで被着・形成したものである。
このような圧電振動素子120は、その両主面に被着されている励振用電極122から延出する引き出し電極と後述する搭載体の圧電振動素子搭載パッドTPとを、導電性接着剤150を介して電気的且つ機械的に接続することによって凹部空間111に搭載される。 このときの引き出し電極が設けられた一辺とは反対側の端辺を圧電振動素子120の自由端である先端部123とする。
【0018】
図1及び図2に示すように、素子搭載部材110は、基板部110aと、枠部110bとで主に構成されている。
この素子搭載部材110は、基板部110aの一方の主面に枠部110bが設けられて、凹部空間111が形成されている。
尚、この素子搭載部材110を構成する基板部110aは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成されている。また、基板部110aは、セラミック材が積層した構造となっている。
枠部110bは、例えば、シールリングを用いている。この場合、枠部110bは、42アロイやコバール等の金属から成り、中心が打ち抜かれた枠状になっている。
また、枠部110bは、基板部110aの一方の主面の外周を囲繞するように設けられた封止用導体膜112上にロウ付けなどにより接続される。
凹部空間111内で露出した基板部110aの一方の主面には、窪み部115が設けられている。その窪み部115内には、後述する搭載体TTを接続するための搭載体接続パッド113が設けられている。
素子搭載部材110の基板部110aの他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子114が設けられている。
基板部110aの内層には、配線パターン(図示せず)等が設けられている。この配線パターンにより搭載体接続パッド113は、素子搭載部材110の基板部110aの他方の主面に設けられている外部接続用電極端子114と接続している。
【0019】
図1及び図2に示すように、搭載体TTは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成され、前記窪み部115に収容できる形状となっている。
搭載体TTの一方の主面には2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP(TP1、TP2)が設けられ、他方の主面には、素子搭載部材接続端子ST(ST1、ST2)が設けられている。
2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2は、ビア導体VDを介して素子搭載部材接続端子ST1、ST2と接続されている。
また、素子搭載部材接続端子ST1、ST2とその窪み部115内に設けられている搭載体接続パッド113とが導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって、窪み部115内に搭載体TTが収容されることになる。よって、圧電振動素子搭載パッドTPは、外部接続用端子114とも電気的に接続されることになる。
【0020】
蓋部材130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような蓋部材130は、凹部空間111を、窒素ガスや真空などで気密的に封止される。具体的には、蓋部材130は、窒素雰囲気中や真空雰囲気中で、素子搭載部材110の枠部110b上に載置され、枠部110bの表面の金属と蓋部材130の金属の一部とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、枠部110bに接合される。
【0021】
前記導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、例えばアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、のうちのいずれかまたはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0022】
尚、前記素子搭載部材110は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に、封止用導体膜112、搭載体接続パッド113、外部接続用電極端子114等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0023】
このように本発明の実施形態に係る圧電デバイス100によれば、圧電振動素子120は、搭載体TTの圧電振動素子搭載パッドTPに導電性接着剤DSにより搭載され、搭載体TTは、窪み部115に収容され、搭載体接続パッド113と素子搭載部材接続端子STが電気的に接続されていることによって、圧電デバイスが構成される。これにより、落下の際には、その2箇所の導電性接着剤DSで衝撃に耐えることができる。よって、圧電振動素子120が導電性接着剤DSから剥がれることを防止することができる。
また、本発明の圧電デバイス100によれば、圧電振動素子120が搭載されている搭載体TTを素子搭載部材110の窪み部115に収容することによって、圧電振動素子120の先端部123が素子搭載部材110の主面である露出する基板部110aに接触することがないため、発振周波数の変動を防止することができる。
【0024】
次に前記圧電デバイスの製造方法について図3〜図4を用いて説明する。
図3(a)は、本発明の圧電デバイスの製造方法の搭載体収容工程を示す断面図であり、図3(b)は、本発明の圧電デバイスの製造方法の圧電振動素子搭載工程を示す断面図であり、図3(c)は、本発明の圧電デバイスの製造方法の蓋部材接合工程を示す断面図である。また、図4は、本発明の圧電デバイスの製造方法の搭載体収容工程を示す斜視図である。
【0025】
(搭載体収容工程)
図3(a)及び図4に示すように、搭載体収容工程は、一方の主面に圧電振動素子搭載パッドTPが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子STが設けられた搭載体TTを収容するための収容部KBを有し、圧電振動素子120を搭載する際に先端部123を接触させるための枕部MBを有している搭載用治具TJに前記搭載体TTを収容する工程である。
【0026】
搭載用治具TJは、例えば、SUS等の金属材料が用いられ、図3(a)及び図4に示すように、後述する搭載体TTを収容し、その搭載体TTに圧電振動素子120を搭載することに使用される。
前記搭載用治具TJは、前記搭載体TTの厚みよりも厚く、前記搭載体TTを収容する大きさの収容部KBが複数形成されている。
前記搭載用治具TJは、後述する圧電振動素子120を搭載する際に、その先端部123が接触する箇所に凸形状の枕部MBが設けられている
【0027】
搭載体TTは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成され、図3(a)及び図4に示すように、前記収容体KB及び素子搭載部材110の窪み部115に収容できる形状となっている。
搭載体TTの一方の主面には2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2が設けられ、他方の主面には、素子搭載部材接続端子ST1、ST2が設けられている。
2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2は、ビア導体VDを介して素子搭載部材接続端子ST1、ST2と接続されている。
【0028】
(圧電振動素子搭載工程)
図3(a)及び図4に示すように、圧電振動素子搭載工程は、圧電振動素子120の先端部123が前記枕部MBに接触するように、前記搭載体TTに圧電振動素子120を搭載する工程である。
前記搭載体TTの主面に一対の圧電振動素子搭載パッドTPが設けられており、前記圧電振動素子搭載パッドTP上に導電性接着剤DSを塗布し、この圧電振動素子搭載パッドTPに塗布された導電性接着剤DSに圧電振動素子120の表面に形成した励振用電極122から引き出された引き出し電極を付着させる形態で圧電振動素子120を搭載する。
この際に、前記搭載用治具TJに設けられている凸形状の枕部MBに前記圧電振動素子120の先端部123が接触するように搭載する。
このようにして導電性接着剤DSを硬化させるので、圧電振動素子120の先端部123が搭載用治具TJの主面から間隔を空けて設けることができる。つまり、圧電振動素子120の先端部123が搭載用治具TJの主面から離れる方向に向くように搭載することができる。
【0029】
(搭載体接合工程)
図3(b)に示すように、搭載体接合工程は、一方の主面に前記搭載体TTが収容される窪み部115が設けられ、その窪み部115内に搭載体接続パッド113が設けられている素子搭載部材110と前記圧電振動素子120が搭載された前記搭載体TTとを接合する工程である。
搭載体TTの素子搭載部材接続端子ST1、ST2と素子搭載部材110の窪み部115内に設けられている搭載体接続パッド113とが導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって、素子搭載部材110と搭載体TTとを接合する。
圧電振動素子搭載パッドTPは、外部接続用端子114とも電気的に接続されることになる。
【0030】
このように圧電振動素子120の先端部123が搭載用治具TJの主面から間隔を空けた状態で搭載されている搭載体TTを素子搭載部材110の窪み部115に収容することによって、圧電振動素子120の先端部123が素子搭載部材110の主面から間隔を空けた状態で設けることができる。つまり、圧電振動素子120の先端部123が素子搭載用部材110の主面から離れる方向に向くように設けることができる。よって、圧電振動素子120の先端部123が素子搭載部材110の主面に接触しないため、発振周波数の変動を防止することができる。
【0031】
(蓋部材接合工程)
図3(c)に示すように、蓋部材接合工程は、前記圧電振動素子120を気密封止するように素子搭載部材110に蓋部材130を接合する工程である。
蓋部材130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)が用いられ、圧電振動素子120を窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止する際に用いられる。
具体的には、蓋部材130は、所定雰囲気中で、前記素子搭載部材110の枠部110b上に載置され、枠部110bの表面の金属と蓋部材130の金属の一部とが溶接されるように、シーム溶接機(図示せず)のローラ電極を蓋部材130に接触させ、前記ローラ電極に電源を供給しながら、蓋部材130の外側縁部に沿って動かすことで、枠部110bに接合される。
【0032】
発明の圧電デバイスの製造方法によれば、一方の主面に圧電振動素子搭載パッドTPが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子STが設けられた搭載体TTを収容し、圧電振動素子120の先端部123が搭載用治具TJの枕部MBに接触するように、搭載体TTに圧電振動素子120を搭載することで、圧電振動素子120の先端部123が搭載用治具TJの主面から間隔を空けて設けることができる。圧電振動素子120の先端部123が搭載用治具TJの主面から間隔を空けた状態で搭載されている搭載体TTを素子搭載部材110の窪み部115に収容することによって、圧電振動素子120の先端部123が素子搭載部材110の主面から間隔を空けた状態で設けることができる。
よって、圧電振動素子120の先端部123が素子搭載部材110の主面に接触しないため、発振周波数の変動を防止することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に本実施形態において、圧電デバイスの一例として、圧電発振器について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。図6は、図5のB−B断面図である。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイス200は、素子搭載部材210の基板部210aと第2の枠部210cによって設けられた第2の凹部空間216内に搭載されている集積回路素子240とを備えている点で第1の実施形態と異なる。
【0034】
図5及び図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器200は、素子搭載部材210と圧電振動素子120と蓋部材130と集積回路素子240と搭載体TTとで主に構成されている。この圧電発振器200は、前記素子搭載部材210に形成されている第1の凹部空間211内に圧電振動素子120が搭載され、第2の凹部空間216内には、集積回路素子240が搭載されている。その第1の凹部空間211が蓋部材130により気密封止された構造となっている。
【0035】
集積回路素子240は、図5及び図6に示すように、回路形成面に前記圧電振動素子120からの発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子214を介して圧電発振器200の外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
また、集積回路素子240には、可変容量素子に周囲温度に応じた制御電圧を印加して温度変化による発振回路の発振周波数の変動を補償するため、3次関数発生回路及び記憶素子部により温度補償回路部が設けられており、3次関数発生回路には、温度センサが接続されている。
この温度センサは、検出した温度と、温度センサに印加させる電圧値とに基づいて生成される温度データ信号(電圧値)が3次関数発生回路に出力される構成となっている。
集積回路素子240は、素子搭載部材210の第2の凹部空間216内に露出した基板部210aに形成された集積回路素子搭載パッド215に半田等の導電性接合材を介して搭載されている。
【0036】
図5及び図6示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、枠部210b、210cとで主に構成されている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に枠部210bが設けられて、第1の凹部空間211が形成されている。また、素子搭載部材210の他方の主面に枠部210cが設けられて、第2の凹部空間216が形成されている。
第1の凹部空間211内で露出した基板部210aの一方の主面には、窪み部215が設けられ、その窪み部215内には、後述する搭載体TTを接続するための搭載体接続パッド213が設けられている。
素子搭載部材210の枠部210cの他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子214が設けられている。
図5及び図6に示すように、第2の凹部空間216内で露出した基板部210aの他方の主面には、複数の集積回路素子搭載パッド215と2個一対の圧電振動素子測定用パッド(図示せず)が形成されている。
【0037】
図5及び図6に示すように、搭載体TTは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成され、前記窪み部215に収容できる形状となっている。
搭載体TTの一方の主面には2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2が設けられ、他方の主面には、素子搭載部材接続端子ST1、ST2が設けられている。
2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2は、ビア導体VDを介して素子搭載部材接続端子ST1、ST2と接続されている。
また、素子搭載部材接続端子ST1、ST2とその窪み部215内に設けられている搭載体接続パッド213が導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって、窪み部215内に搭載体TTが収容されることになる。よって、圧電振動素子搭載パッドTPは、外部接続用端子214とも電気的に接続されることになる。
【0038】
このように本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスを構成しても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0039】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスを示す断面図である。また、図示した寸法も一部誇張して示している。
本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイス300は、素子搭載部材310に枠部を設けずに、蓋部材330に凹部空間331を設けた点で第1の実施形態と異なる。
【0040】
図7に示すように、本発明の第3の実施形態に係る圧電振動子100は、素子搭載部材310と圧電振動素子120と蓋部材330と搭載体TTとで主に構成されている。この圧電振動子300は、前記素子搭載部材310に圧電振動素子120が搭載され、凹部空間331が設けられた蓋部材330により気密封止された構造となっている。
【0041】
図7に示すように、素子搭載部材310は、基板部310aで主に構成されている。
この素子搭載部材310は、基板部310aの一方の主面には、窪み部315が設けられ、その窪み部315内には、後述する搭載体TTを接続するための搭載体接続パッド313が設けられている。
基板部310aの一方の主面の外周を囲繞するように設けられた封止用導体パターン312上に後述する蓋部材330を封止材332によって接合される。
素子搭載部材310の他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子314が設けられている。
【0042】
図7に示すように搭載体TTは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成され、前記窪み部215に収容できる形状となっている。
搭載体TTの一方の主面には2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2が設けられ、他方の主面には、素子搭載部材接続端子ST1、ST2が設けられている。
2個一対の圧電振動素子搭載パッドTP1、TP2は、ビア導体VDを介して素子搭載部材接続端子ST1、ST2と接続されている。
また、素子搭載部材接続端子ST1、ST2とその窪み部315内に設けられている搭載体接続パッド313が導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続することによって、窪み部315内に搭載体TTが収容されることになる。よって、圧電振動素子搭載パッドTPは、外部接続用端子314とも電気的に接続されることになる。
【0043】
蓋部材330は、前記圧電振動素子120を内包できるように、凹部空間331が形成され、その凹部空間331を囲繞し且つ延設した鍔部332を有している。
また、その鍔部332の基板部310aに設けられた封止用導体パターン312と対応する位置には、例えば、Niメッキ、AgCu、AuSn等の封止材333が設けられている。
前記蓋部材330は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。
具体的には、蓋部材330は、所定雰囲気で、素子搭載部材310の封止用導体パターン312上に載置され、蓋部材330の鍔部332に設けられた封止材333が溶融されるように、例えば、レーザやシーム溶接機を用いることにより、封止用導体パターン312に接合される。
【0044】
このように本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスを構成しても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0046】
また、前記した本実施形態では、枠部にシールリングを用いた場合を説明したが、基板部と同様にセラミック材で形成しても構わない。
この場合、枠部の開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターンが形成され、蓋部材は、この封止用導体パターン上に配置接合される。
この際の蓋部材は、前記素子搭載部材の凹部空間を囲繞するように設けられた封止用導体パターンに相対する箇所に封止部材が設けられている。
【符号の説明】
【0047】
110、210、310・・・素子搭載部材
110a、210a、310a・・・基板部
110b、210b、210c・・・枠部
111、211、331・・・凹部空間(第1の凹部空間)
112、212・・・封止用導体膜
312・・・封止用導体パターン
113、213、313・・・搭載体接続パッド
114、214、314・・・外部接続用電極端子
115、215、315・・・窪み部
216・・・第2の凹部空間
217・・・集積回路素子搭載パッド
120・・・圧電振動素子
121・・・水晶素板
122・・・励振用電極
123・・・先端部
130、330・・・蓋部材
332・・・鍔部
333・・・封止材
240・・・集積回路素子
100、200、330・・・圧電デバイス
TT・・・搭載体
TP1、TP2・・・圧電振動素子搭載パッド
ST1、ST2・・・素子搭載部材接続端子
DS・・・導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振用電極が設けられている圧電振動素子と、
一方の主面に前記圧電振動素子を導電性接着剤により搭載するための圧電振動素子搭載パッドが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子が設けられた搭載体と、
一方の主面に窪み部が設けられた素子搭載部材と、
前記窪み部内に設けられた搭載体接続パッドと、
前記圧電振動素子を気密封止する蓋部材とを、備え、
前記搭載体が前記窪み部に収容され、前記搭載体接続パッドと前記素子搭載部材接続端子が導電性接着剤により電気的に接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記素子搭載部材に少なくとも発振回路を備えた集積回路素子を備え、前記集積回路素子と前記圧電振動素子とが電気的に接続された状態となっていることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
一方の主面に圧電振動素子搭載パッドが設けられ、他方の主面に素子搭載部材接続端子が設けられた搭載体を収容するための収容部を有し、圧電振動素子を搭載する際に先端部を接触させるための枕部を有している搭載用治具に前記搭載体を収容する搭載体収容工程と、
圧電振動素子の先端部が前記枕部に接触するように、前記搭載体に圧電振動素子を
搭載する圧電振動素子搭載工程と、
一方の主面に前記搭載体が収容される窪み部が設けられ、その窪み部内に搭載体接続パッドが設けられている素子搭載部材と前記圧電振動素子が搭載された前記搭載体とを接合する搭載体接合工程と、
前記圧電振動素子を気密封止するように素子搭載部材に蓋部材を接合する蓋部材接合工程と、
を具備することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239341(P2010−239341A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84151(P2009−84151)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】