説明

圧電振動デバイス

【課題】 特性が良好でかつ安定化した圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】 水晶振動板11と下ケース13の接合は、封止ガラス材15を水晶振動子の裏面(一方面)外周領域に配置し、下ケースの外周領域と接合する。この接合により気密封止されたキャビティVが形成されるが、当該キャビティVは真空雰囲気としている。水晶振動板11と上ケース12の接合は、封止ガラス材14を水晶振動子の表面(他方面)外周領域に配置し、上ケース12の外周領域と接合する。この接合により気密封止されたキャビティNが形成されるが、当該キャビティNは窒素ガス(不活性ガス)雰囲気としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる水晶振動子等の圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在汎用されている表面実装型水晶振動子等の圧電振動デバイスは、水晶振動素子を収納する領域を有するセラミックパッケージを用い、当該セラミックパッケージに励振電極が形成された水晶振動素子を搭載後、リッドにて真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気で気密封止する構成が多く採用されている。例えば、特開2000−307367号(特許文献1)はその一例を示す先行技術である。
【0003】
特許文献1においては、水晶振動子を構成するパッケージのベースにシリコン接着剤を塗布し、水晶片を固定し、真空中でハンダを用いて気密封止を行う構成や、窒素雰囲気中でシーム溶接を用いて気密封止を行う構成が開示されている。
【0004】
気密封止により真空に気密封止する構成においては水晶振動子の直列共振抵抗が良好になり、特性向上が見込める利点がある。しかしながら、真空状態あるいはパッケージの内部構成によっては、気密封止後周波数ばらつきが大きくなる傾向があり、特に、一般に励振電極形成後に当該励振電極に対して周波数調整を行うが、この調整を行った場合、調整後の周波数ばらつき幅が大きくなる傾向があった。なお、周波数調整は、励振電極を構成する金属膜厚を増加させることにより、周波数を低下させたり、あるいは金属膜厚を減少させることにより、周波数を上昇させることにより行う。
【0005】
また、例えば窒素ガス等の不活性ガスにより気密封止する構成においては、前述のような周波数調整後の周波数ばらつき幅は小さく抑えることができるが、水晶振動子の直列共振抵抗が全体として高い(悪化)傾向にあり、要求仕様を満足できないことがあった。
【0006】
特に圧電振動デバイスの超小型化がより進んだ場合、上述のような特性の向上並びに安定化を阻害する問題は顕在化し、従来構成では対応できなくなる可能性があった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−307367号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、超小型化した場合でも、特性が良好でかつ安定化した圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者は、1つの圧電振動デバイスにおいて複数の雰囲気領域を設けることにより、特性の向上と特性の安定化を目指したものであり、次のような構成により実現したものである。
【0010】
すなわち、請求項1に示すように、圧電振動板の励振領域を気密封止した圧電振動デバイスであって、当該励振領域の一方面に接する雰囲気を真空とし、他方面に接する雰囲気を不活性ガスとしたことを特徴とする圧電振動デバイスである。なお、励振領域とは励振電極から直接または間接的に交流の励振電圧を与えられ、圧電現象に基づく動作を行う領域である。
【0011】
従来においては圧電振動デバイスの気密雰囲気は1種類という考えしかなかったが、本発明においては圧電振動板の一方面と他方面に接する雰囲気を異ならせるという新規な発明により、それぞれの雰囲気による特徴の相乗効果により特性を向上させることができた。すなわち請求項1の構成によれば、表裏面を有する圧電振動板の一方面を真空とすることにより、圧電振動デバイスの直列共振抵抗を向上させ、他方面を不活性ガスとしたことにより、特性が安定し、全体として特性の向上と安定を得ることができ、実用性を向上させることができる。
【0012】
また請求項2に示すように、圧電振動板の励振領域の表裏に金属膜からなる励振電極を形成し、当該励振領域を気密封止した圧電振動デバイスであって、当該励振領域の一方面に接する雰囲気を真空とし、他方面に接する雰囲気を不活性ガスとするとともに、他方面が特性調整面であってもよい。周波数等の特性調整は、例えばパーシャル蒸着法等を用いて励振電極を構成する金属膜厚を増加させることにより行ったり、あるいは金属膜厚をイオンミリング等のエッチング手法を用いて減少させることにより行う。
【0013】
以上の構成により、圧電振動板の表裏に形成された励振電極は、一方が真空雰囲気で気密封止され、他方が不活性ガス雰囲気で気密封止されるとともに、不活性ガス雰囲気で気密封止される励振電極が特性調整面となっている。特性調整を行った領域は非定常状態にあり膜の物質安定性が低下しているが、例えば気密封止時に金属ろう材を用いた際当該金属ろう材からガスが発生し、真空雰囲気であるとこのガスが特性調整を行った膜と結合し、特性が変動することがある。しかし、当該特性調整面を不活性ガス雰囲気下におくことにより、膜の変質を抑制することができる。これにより周波数ばらつき等の発生を抑え、特性を安定化することができ、また特性を調整しない他方面は真空雰囲気とすることにより、特性向上に寄与する。
【0014】
上記構成のパッケージングの具体例として例えば請求項3に示すように、圧電振動板の両主面に対向して各々第1ケースと第2ケースを設置した圧電振動デバイスであって、圧電振動板の一方面の外周領域と第1ケースの外周領域とを接合材により気密接合するとともに、圧電振動板と第1ケース間に真空雰囲気のキャビティを形成し、圧電振動板の他方面の外周領域と第2ケースの外周領域とを接合材により気密接合するとともに、圧電振動板と第2ケース間に不活性ガス雰囲気のキャビティを形成した構成をあげることができる。
【0015】
圧電振動板は表裏面の外周領域を接合領域として用い、当該接合領域にそれぞれ第1ケースと第2ケースを接合する。第1ケースと第2ケースは例えば平板状であってもよいが、この場合接合材の厚さにより励振のためのキャビティをつくり出せばよい。また、圧電振動板との対向面に凹部を形成し、励振のためのキャビティをつくり出した構成であってもよい。前記接合に用いる接合材は封止用ガラス材であってもよいし、金属ろう材であってもよく、気密性の保持可能な材料であればよい。
【0016】
請求項3の構成によれば、圧電振動板の一方面と第1ケース間に真空雰囲気のキャビティを形成し、圧電振動板の他方面と第2ケース間に不活性ガス雰囲気のキャビティを形成した構成であるので圧電振動デバイスとしての特性向上と特性安定を得ることができる。すなわち、表裏面を有する圧電振動板の一方面を真空とすることにより、圧電振動デバイスの直列共振抵抗を向上させ、他方面を不活性ガスとしたことにより、特性が安定し、全体として特性の向上と安定を得ることができ、実用性を向上させることができる。
【0017】
本発明はセラミック等からなるパッケージに圧電振動板を格納する構成に対して適用することも可能である。請求項4はこのような構成について開示したものであり、上方が開口し、内部底面と当該内部底面の周囲に堤部を有するパッケージに励振電極が形成された圧電振動板を気密収納した圧電振動デバイスであって、圧電振動板の一方面の外周領域を前記内部底面と気密的に接合することにより、圧電振動板の一方面と内部底面間に真空または不活性ガス雰囲気の第1のキャビティを形成し、圧電振動板の他方面に前記第1のキャビティと異なる真空または不活性ガス雰囲気が接するようパッケージを気密封止したことを特徴とする構成である。
【0018】
圧電振動板の一方面の外周領域(一方面の外周近傍)を前記内部底面に気密的に接合することにより、圧電振動板の一方面と内部底面間に例えば真空雰囲気の第1のキャビティが形成される。当該第1のキャビティは、圧電振動板の外周領域を例えば接合材等で接合することにより気密性を確保している。また圧電振動板の他方面はパッケージを封止した際の雰囲気に接することになり、例えば不活性ガスが接する構成となる。このような構成においては、パッケージの内部底面側と反対の面(第1キャビティ側でない面)に対して、特性調整を行うことが便利であり、従って他方面に不活性ガスが接するようパッケージを不活性ガスで気密封止する構成が好ましい。
【0019】
また上記パッケージを用いた構成において、パッケージ底面に貫通孔を形成してもよい。請求項5はこのような構成を示すもので、上記パッケージに収納する構成において、パッケージの内部底面に前記第1のキャビティとパッケージ裏面をつなぐ貫通孔が形成され、当該貫通孔は封止材により封止されていることを特徴としている。当該貫通孔は例えば前記圧電振動板に形成された励振電極に対応する位置に形成することにより、貫通孔を介して例えばイオンミリングにより特性調整動作を行うことができる。また第1のキャビティ内を真空や不活性ガスの雰囲気に確実に保つため、当該貫通孔を介して所定雰囲気に整えることができる。封止材は当該貫通孔を封止し、第1キャビティ内の雰囲気を維持する。
【0020】
ところで本発明は圧電振動板に対する励振電圧印加方法をエアギャップ方式を採用してもよい。例えば、請求項6に示すように、圧電振動板の両主面に対向して各々第1ケースと第2ケースを設置した圧電振動デバイスであって、圧電振動板の一方面と第1ケース間を真空雰囲気で気密封止するとともに、第1ケースに第1の励振電極を形成し、かつ当該励振電極と圧電振動板の一方面との間に微小ギャップを形成し、また圧電振動板の他方面と第2ケース間を不活性ガス雰囲気で気密封止するとともに、圧電振動板の他方面に第2の励振電極を形成し、かつ当該他方面が特性調整面である構成をあげることができる。
【0021】
請求項6によれば、圧電振動板の一方面と第1ケース間を真空雰囲気で気密封止するとともに、第1ケースに第1の励振電極を形成し、当該励振電極と圧電振動板の一方面との間に微少ギャップを形成する。また圧電振動板の他方面に第2の励振電極を形成する。これら第1の励振電極と第2の励振電極に交流電圧を印加することにより、一方がエアギャップ方式となる状態で圧電振動板に励振電圧を印加することができる。また、この励振電極を特性調整面とし、当該特性調整面を含んで圧電振動板の他方面と第2ケース間を不活性ガス雰囲気で気密封止する。以上の構成により、直列共振抵抗等の特性の向上と、周波数ばらつきを抑制し特性の安定性を向上させることができる。特にエアギャップ方式を圧電振動板の一方面に対して採用しているので、励振電極形成(質量形成)による特性低下を抑制することができる。
【0022】
また請求項7に示すように、上記各構成において、一方面に接する雰囲気の気密封止に用いる接合材と、他方面に接する雰囲気の気密封止に用いる接合材の融点を異ならせた構成としてもよい。例えば、最初に一方面の気密封止を行い、その後他方面の気密封止を行う場合は、後者の他方面の気密封止における熱により最初の接合材が溶融または軟化する可能性がある。従って、最初に行う一方面の気密封止に用いる接合材の融点より、後者の接合材の融点を低くすることにより、上記問題を解決することができる。またこのような構成によりさらに接合材の軟化に伴う気化ガスの発生を抑制することができる。
【0023】
請求項7によれば、気密雰囲気と気密封止に用いる接合材の組み合わせにより、気密の安定性と接合材によるガスの悪影響をなくすことができ、特性を向上させかつ特性の安定した圧電振動デバイスを得ることができる。
【0024】
さらに請求項8に示すように、圧電振動板が薄肉部とその周囲に厚肉部を有する構成であり、薄肉部の表裏に金属膜からなる励振電極を配して励振領域を形成し、少なくとも当該励振領域を気密封止した圧電振動デバイスであって、当該励振領域の一方面に接する雰囲気を真空とし、他方面に接する雰囲気を不活性ガスとした構成としてもよい。
【0025】
請求項8に示す構成はいわゆる逆メサタイプの圧電振動板を用い、逆メサ領域の一方と他方を異なる雰囲気で気密封止する構成に関するものである。励振領域の気密封止は例えば薄肉部外側にある厚肉部にケースを接合することにより気密封止を行ってもよいし、別途用意したパッケージに収納することにより気密封止を行ってもよい。請求項8によれば、逆メサ構成の圧電振動板を用いた圧電振動デバイスにおいて、特性を向上させかつ安定した圧電振動デバイスを得ることができ、特に高周波に対応した圧電振動デバイスを得ることができる。
【0026】
本発明は圧電振動板の表裏を異なる気体雰囲気に接するようにした製造方法についても提案している。請求項9は、圧電振動板の励振領域の表裏に金属膜からなる励振電極を形成する工程と、前記励振領域の表裏いずれか一方面を真空雰囲気に気密封止する工程と、他方面の励振領域に対して特性調整を行う調整工程と、当該他方面の励振領域を不活性ガス雰囲気に気密封止する工程と、を有する圧電振動デバイスの製造方法に関するものである。
【0027】
請求項9によれば、圧電振動板の励振領域の表裏いずれか一方面を真空雰囲気に気密封止する工程と、他方面の励振領域に対して特性調整を行う調整工程と、当該他方面の励振領域を不活性ガス雰囲気に気密封止する工程と、を有するので、特性を向上させかつ安定した圧電振動デバイスを得ることができる。
【0028】
また請求項10は気密雰囲気と気密接合材について提案した製造方法に関する内容であり、圧電振動板の励振領域の表裏に金属膜からなる励振電極を形成する工程と、前記励振領域の表裏いずれか一方面を、第1接合材を用いて真空雰囲気に気密封止する工程と、他方面の励振領域に対して特性調整を行う調整工程と、当該他方面を前記第1接合材より融点の低い第2接合材を用いた加熱接合、あるいは局所加熱接合を用いて不活性ガス雰囲気に気密封止する工程と、を有する圧電振動デバイスの製造方法について開示している。局所加熱接合は例えばシーム接合やレーザービーム接合等をあげることができるが、局所的な加熱であり、圧電振動デバイス全体が加熱されるものではないため、第1の接合材に対して悪影響を与えない。
【0029】
請求項10によれば、励振領域の表裏いずれか一方面を、第1接合材を用いて真空雰囲気に気密封止する工程と、他方面の励振領域に対して特性調整を行う調整工程と、当該他方面を前記第1接合材より融点の低い第2接合材を用いた加熱接合、あるいは局所加熱接合を用いて不活性ガス雰囲気に気密封止する工程と、を有するので、接合材による悪影響を受けることがなく、特性を向上させかつ安定した圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、超小型化した場合でも、特性が良好でかつ安定化した圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明による第1の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態では、圧電振動板として厚みすべり振動にて動作するATカットの水晶振動板を例にとり説明する。
【0032】
図1は第1の実施形態による圧電振動デバイスの内部断面図である。
【0033】
水晶振動板11はATカット水晶振動素子からなり、全体として長辺(X軸)と短辺(Z軸)と厚み(Y軸)を有する長方形の板体である。なお、長辺をZ軸、短辺をX軸とした長方形の板体であってもよい。当該水晶振動板11にはその表裏面の中央部分に長方形状あるいは円形状の励振電極11a,11aが形成されており、当該励振電極11a,11aは各々細幅の引出電極11b、11bにより長辺両端に引き出されている。当該引出電極11b、11bは水晶振動板11の側面にまで延伸されているが、表裏面までの形成であってもよい。これら励振電極11aおよび引出電極11bは金属多層膜からなり、例えば、水晶振動板に接してクロム層、その上部に金層が形成された構成である。
【0034】
水晶振動板の上下面には上ケース12と下ケース13が各々配置されている。これら上ケースと下ケースはセラミックスあるいはガラスあるいは水晶振動板からなる長方形の板体であり、その外形はほぼ水晶振動板11と同じサイズとなっている。なお、例えば水晶振動板の外形サイズが上下ケースより大きく構成され、前記引出電極部分が露出している構成であってもよい。水晶振動板11と上下ケース12,13の接合は封止ガラス材14,15を用いており、具体的には錫リン酸系ガラスやビスマス系ガラス等の鉛フリーガラス材やホウケイ酸ガラスを用いている。
【0035】
水晶振動板11と下ケース13の接合は、封止ガラス材15を水晶振動子の裏面(一方面)外周領域に配置し、下ケースの外周領域と接合する。この接合により気密封止されたキャビティVが形成されるが、当該キャビティVは真空雰囲気としている。
【0036】
水晶振動板11と上ケース12の接合は、封止ガラス材14を水晶振動子の表面(他方面)外周領域に配置し、上ケース12の外周領域と接合する。この接合により気密封止されたキャビティNが形成されるが、当該キャビティNは窒素ガス(不活性ガス)雰囲気としている。
【0037】
以上、水晶振動板11と上下ケース12,13の重ね合わせた構成体はその長辺両端に外部接続電極16,17が形成されている。当該外部接続電極16,17は例えば金属膜からなり、水晶振動板の上下に形成された引出電極11b、11bと各々独立して導電接合されている。
【0038】
以上の構成の圧電振動デバイスは次のような製造方法にて行う。長方形の板状水晶振動板の表裏面に前記励振電極と引出電極に対応した開口窓を有するパターニングマスク(図示せず)を配し、真空蒸着法あるいはスパッタリング法にて金属多層膜を形成し電極形成を行う。これにより電極形成された水晶振動板11を得る。次に表面外周領域に予め封止ガラス材を周状に形成しグレーズ処理した下ケース13を用意し、真空雰囲気にて前記水晶振動板を重ね合わせ、加熱により封止ガラス材15を溶融させ接合を行う。以上により真空雰囲気のキャビティVが形成される。なお、接合性を向上させるため水晶振動板側にも予め封止ガラス材を形成しておいてもよい。
【0039】
その後、水晶振動板と下ケースの一体構成体に対し周波数等の特性調整を行う。具体的にはこの一体構成体を治工具に設置し、水晶振動板の電極に励振電圧を印加しながら露出した表面側の励振電極11aに対してイオンを照射し、イオンミリングにより周波数調整を行う。目標の周波数に到達した段階で周波数調整動作を停止する。
【0040】
そして、表面外周領域に予め封止ガラス材14を周状に形成しグレーズ処理した上ケースを用意し、窒素ガス雰囲気にて前記水晶振動板を重ね合わせ、加熱により封止ガラス材14を溶融させ接合を行う。以上により不活性ガス雰囲気のキャビティNが形成され、水晶振動板の表裏に上下ケースが配された一体構成体を得ることができる。下ケース接合時と同様に、接合性を向上させるため水晶振動板側にも予め封止ガラス材を形成しておいてもよい。なお、当該上ケースの接合においては、接合材の融点を下ケース接合時の接合材に較べて低い材料を用いることにより、信頼性の高い気密封止並びに特性の安定をはかることができる。
【0041】
以上により得られた水晶振動板の表裏に上下ケースが配された一体構成体に対し、外部導出電極16,17を形成する。具体的には外部導出電極形成部分に対応する開口窓を有するパターニングマスクを用いて真空蒸着法あるいはスパッタリング法にて金属多層膜を形成し、各々の引出電極11b、11bと導通させた状態に電極形成を行い、これによりチップ型の圧電振動デバイスを得ることができる。
【0042】
本発明による第2の実施形態について図2に基づいて説明する。図2は圧電振動デバイスの内部構造を示す断面図である。本実施の形態では、第1の実施形態に較べて、圧電振動板(水晶振動板)の構成と、チップ型構成が異なっている。
【0043】
水晶振動板21はATカット水晶振動素子からなり、全体として長辺と短辺と厚みを有する長方形の板体である。当該水晶振動板21には中央部分に平面視長方形状の薄肉部211が形成され、その周囲に厚肉部212が形成されており、全体として逆メサ(両凹形)構成を有している。当該薄肉部211は各表裏面から厚さ方向に堀込まれ、水晶振動板21が表裏から薄肉化された構成であり、薄肉部211から厚肉部212にかけては順次厚さが増加する傾斜部を介して厚肉部に至る構造を有している。薄肉部211の表裏には励振電極21a,21aが対向して形成され、これら励振電極21a,21aは各々引出電極21b、21bにより傾斜部を介して厚肉部212に引き出されている。各引出電極21b、21bは厚肉部212において外部接続電極26,27と接続され、当該外部接続電極26,27は水晶振動板の側面を介して反対面まで延出されている。当該外部接続電極は金属膜からなり、後述の気密封止のベース膜としても機能する。
【0044】
厚肉部212は薄肉部211の周囲に枠状に形成された構成であり、その枠状の厚肉部212の表裏面には薄肉部211を取り囲むように周状に外部接続電極26,27が形成されている。本実施の形態においては、当該外部接続電極26,27と励振電極21aと引出電極21bは同じ材料、同じプロセスで形成されている。具体的には水晶振動板の逆メサ構成並びに金属膜からなる電極の形成は、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されており、電極は水晶振動板に接して、クロム層が形成され、当該クロム層上に金層が形成された多層膜構成となっている。なお、外部接続電極26,27を励振電極部分や引出電極部分より厚肉構成とすることにより金属膜強化をし、電極切れ抑制等の外部接続機能を確実にしてもよい。
【0045】
水晶振動板21の薄肉部211は上ケース22と下ケース23により気密封止されている。上ケース22と下ケース23はいずれも長方形状の板状絶縁体からなり、例えばアルミナ等のセラミックスを用いている。本実施の形態において上下各ケース22,23は水晶振動板21の外形サイズより小さく、水晶振動板21に形成された薄肉部211よりも大きな構成となっており、薄肉部211の表裏を被覆可能としている。また上ケース22と下ケース23において、水晶振動板1と接合する面の外周領域には周状に金属ろう材24,25が形成されている。金属ろう材は例えば金錫(AuSn)や金ゲルマニウム(AuGe)を用いており、前記周状に形成された外部接続電極上に対応して周状に形成されている。
【0046】
本実施の形態においては、下ケース23を用いて裏面側の薄肉部211を被覆した状態で厚肉部212に気密的に接合し、その内部のキャビティVは真空雰囲気としている。接合には接合材(金属ろう材)として金錫を用いて下ケース23を接合している。また上ケース22を用いて表面側の薄肉部211を被覆した状態で厚肉部212に気密的に接合し、その内部のキャビティNは窒素ガス雰囲気としている。接合には接合材(金属ろう材)として金錫より融点の低い金ゲルマニウムを用いて上ケース22を接合している。
【0047】
本実施の形態によれば、逆メサ構成の水晶振動板をコアとして、薄肉部を上下ケースで気密封止する構成であるので、特性の向上および安定性を向上させるとともに、構成部材が少なく、コスト安のチップ型圧電振動デバイスを得ることができる。
【0048】
本発明による第3の実施形態について図3に基づいて説明する。図3は圧電振動デバイスの内部構造を示す断面図である。本実施の形態は、基本構成が第2の実施形態と類似しているが、水晶振動板の構成と気密封止構成が異なっている。
【0049】
水晶振動板31はATカット水晶振動素子からなり、全体として長辺と短辺と厚みを有する長方形の板体である。当該水晶振動板31には中央部分に平面視長方形状の薄肉部311が形成され、その周囲に厚肉部313が形成されており、全体として逆メサ(両凹形)構成を有している。当該薄肉部311は各表裏面から厚さ方向に堀込まれ、水晶振動板31が表裏から薄肉化された構成であり、薄肉部の外側には、薄肉部と厚肉部の中間厚さの段部312が形成されている。当該段部312も平面視長方形状である。薄肉部31の表裏には励振電極31a,31aが対向して形成され、これら励振電極は各々引出電極31b、31bにより段部312を介して厚肉部313に引き出されている。各引出電極31b、31bは厚肉部313において外部接続電極36,37と接続され、当該外部接続電極36,37は水晶振動板の側面を介して反対面まで延出されている。
【0050】
厚肉部313は薄肉部311の周囲に枠状に形成された構成であり、その枠状の厚肉部312の表裏面には薄肉部311を取り囲むように周状に外部接続電極36,37が形成されている。本実施の形態においては、当該外部接続電極36,37と励振電極31aと引出電極31bは同じ材料、同じプロセスで形成されている。具体的には水晶振動板の逆メサ構成並びに金属膜からなる電極の形成は、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されており、各電極は水晶振動板に接して、クロム層が形成され、当該クロム層上に金層あるいは銀層が形成された多層膜構成となっている。なお、外部接続電極36,37については外部に露出しているため、例えば励振電極の多層膜の上部に金層を追加的に形成し、厚肉構成とすることにより金属膜強化を行い、電極切れ抑制、酸化防止等の外部接続機能を確実にしてもよい。
【0051】
水晶振動板31の薄肉部311は上ケース32と下ケース33により気密封止されている。上ケース32と下ケース33はいずれも長方形状の板状絶縁体からなり、例えばアルミナ等のセラミックスを用いている。本実施の形態において上下各ケースは前記段部312に対応したサイズを有しており、段部312に接合されることにより、薄肉部を被覆し気密封止している。
【0052】
また上ケース32と下ケース33において、段部312と接合する面の外周領域には周状に封止用ガラス材が形成されている。封止用ガラス材は例えば錫リン酸系ガラスやビスマス系ガラス等の鉛フリーガラス材やホウケイ酸ガラスを用いている。なお、表裏の両段部に周状の金属膜を形成し、当該金属膜を用いて金属ろう材による気密封止を行ってもよい。
【0053】
本実施の形態においては、下ケース33を裏面側の段部に気密接合することにより、薄肉部を気密的に被覆し、その内部は真空雰囲気としている。接合には接合材(封止用ガラス材)としてビスマス系ガラスを用いている。また上ケース32を表面側の段部に気密接合することにより、薄肉部を気密的に被覆し、その内部は窒素ガス雰囲気としている。接合には接合材(封止用ガラス材)として上記ビスマス系ガラスよりも融点が低くなるよう調製されたビスマス系ガラスを用いている。
【0054】
なお、上記構成において、各上下ケースが気密封止された状態において、各上下ケースの上面が厚肉部313の表面より突出しない構成にすることが好ましい。従って、厚肉部の厚さ寸法は上下ケースにより気密封止された段部領域の厚さ寸法より大となる構成であることが必要である。これにより、実装基板に搭載した際、厚肉部の外部接続電極が実装基板の接続パッドに接触することになり、取扱が容易となる。
【0055】
本実施の形態によれば、逆メサ構成の水晶振動板をコアとして、薄肉部を上下ケースで気密封止する構成であるので、特性の向上および安定性を向上させるとともに、構成部材が少なく、コスト安のチップ型圧電振動デバイスを得ることができる。またケースを厚肉部よりも内側に配置できるので、取扱が容易となる。
【0056】
本発明による第4の実施形態について図4および図5に基づいて説明する。図4は圧電振動デバイスの内部構造を示す断面図であり、図5は水晶振動板の斜視図である。本実施の形態は圧電振動板(水晶振動板)41をパッケージ43に格納し、蓋板42により気密封止をした構成例を示している。
【0057】
水晶振動板41はATカット水晶振動素子からなり、全体として長辺と短辺と厚みを有する長方形の板体で、長辺はX軸あるいはZ軸、短辺はZ軸あるいはX軸、厚さはY軸の板体である。当該水晶振動板41には中央部分に平面視長方形状の薄肉部411が形成され、その周囲に厚肉部412が形成されており、全体として逆メサ(両凹形)構成を有している。当該薄肉部411は各表裏面から厚さ方向に堀込まれ、水晶振動板41が表裏から薄肉化された構成であり、薄肉部411から厚肉部412にかけては順次厚さが増加する傾斜部を介して厚肉部に至る構造を有している。薄肉部411の表裏には励振電極41a,41aが対向して形成され、これら励振電極は各々引出電極41b、41bにより前記傾斜部を介して厚肉部412に引き出されている。各引出電極41b、41bは厚肉部412において接続電極46,47と接続され、当該接続電極46,47は水晶振動板の側面を介して反対面まで延出されている。
【0058】
厚肉部412は薄肉部411の周囲に枠状に形成された構成であり、その枠状の厚肉部412の表裏面には薄肉部411を取り囲むように周状に接続電極46,47が形成されている。本実施の形態においては、当該接続電極46,47と励振電極41aと引出電極41bは同じ材料、同じプロセスで形成されている。具体的には水晶振動板の逆メサ構成並びに金属膜からなる電極の形成は、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されており、電極は水晶振動板に接して、クロム層が形成され、当該クロム層上に金層が形成された多層膜構成となっている。なお当該多層膜構成は上記構成に限定されるものではなく、例えばクロム−銀−金の順に形成された多層膜であってもよいし、ニッケル−金の多層膜であってもよい。なお、接続電極46,47を励振電極部分より厚肉構成とすることにより金属膜強化をし、電極切れ抑制等の外部接続機能を確実にしてもよい。
【0059】
パッケージ43はアルミナ等のセラミックとパターニングされた導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形で、電子素子収納部430とその周囲に形成された堤部431を有する構成である。堤部431の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の第1の金属膜層432が形成されている。当該第1の金属膜層432の上面も平坦になるよう形成されており、例えばタングステン、ニッケル、金の順で金属膜層を構成している。タングステンはメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0060】
パッケージ外周の4角には上下方向に伸長するキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている(図示せず)。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成であり、製造上、多連化されたウェハからの小割切断時に必要となる。
【0061】
なお、第1の金属膜層432はパッケージに形成されたビアホール(図示せず)あるいは前記キャスタレーション部分に形成された導電膜(図示せず)により、セラミックパッケージ下面(裏面)に形成された外部接続電極に電気的に接続され、最終的にアース接続される。
【0062】
パッケージ1の内部底面には1対の電極パッド433,433が長辺両端近傍に形成されており、これら電極パッドは連結電極(図示せず)を介して、パッケージ外部の底面に形成された外部接続電極434,434にそれぞれ入出力端子として引き出されている。これら電極パッド433,433は例えばタングステンメタライズ層の上面にニッケル、金の順でメッキ等の手法により金属層が形成されている。なお、電極パッドはその断面形状を外周部分に小堤部を有する凹形状にし、第1の導電性樹脂接合材の形成を容易にしてもよい。
【0063】
水晶振動板41はパッケージ内部底部の前記電極パッド間に設置され、例えば封止用ガラス材45により気密接合される。具体的には水晶振動板の厚肉部412に対応する周状の封止用ガラスをパッケージ内部底部に形成し、当該封止用ガラスを用いて前記厚肉部を気密的に接合する。これにより裏面側の薄肉部(一方面)とパッケージ内部底部間に第1のキャビティVが形成される。なお、キャビティVは真空雰囲気に保たれている。また接続電極46と47はそれぞれ電極パッド433と近接あるいは接触した状態で配置され、例えば半田や導電樹脂接合材等の接合材Sにより両者を導電接合する。
【0064】
以上により、逆メサ構成の水晶振動板がパッケージに接合され、励振電極を含む薄肉部の他方面が上方に露出した構成体を得ることができる。当該露出した励振電極は特性調整面となる。
【0065】
パッケージを気密封止する蓋板(リッド)42は平面視長方形の平板構成である。当該リッド42は、図示していないがコバールからなるコア材に金属ろう材が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成である。当該蓋板42はシーム溶接による局所加熱法によりパッケージの堤部に接合され、パッケージ内部は不活性ガス雰囲気とされている。
【0066】
次に、以上のような構成の圧電振動デバイスを製造する方法について説明する。水晶振動板41はフォトリソグラフィ技術を用いて、厚肉部と薄肉部を有する逆メサ構成と励振電極と引出電極そして接続電極を形成する。パッケージ43の内部底面には予め封止用ガラス材45を周状に形成しておく。この周状形成は水晶振動板の厚肉部の構成に対応した形状にする。真空雰囲気内で封止用ガラス材45上に前記水晶振動板を搭載し、加熱処理により前記厚肉部とパッケージの内部底面とを気密接合する。これにより水晶振動板の一方面とパッケージ内部底部間にある第1のキャビティVが真空雰囲気に気密封止される。
【0067】
その後厚肉部の側面に形成された接続電極と電極パッド433とを接合材Sにより導電接合する。この状態でアニール処理等の安定化処理を行った後、周波数調整を行う。周波数調整はイオンミリングを用いて行い、具体的には圧電振動デバイスを励振させ、周波数をモニタリングしながら周波数調整を進め、所定の周波数に到達した段階で調整動作を終了させる。そしてパッケージを蓋板にて気密封止する。具体的には窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で蓋板を前記パッケージの堤部に重ね合わせ、パッケージ内部を被覆し、局所加熱法であるシーム溶接により気密封止を行う。このような製造方法により、薄肉部の一方面は真空雰囲気とし、周波数調整を行う他方面は不活性ガス雰囲気とした圧電振動デバイスを得ることができる。
【0068】
本実施の形態によれば、別途パッケージを用いる構成においても圧電振動板の一方面を真空雰囲気に、他方面を不活性ガス雰囲気とすることができ、周波数調整を励振電極に対して行った場合でも、特性が向上しかつ特性を安定化させることのできる圧電振動デバイスを得ることができる。
【0069】
本発明による第5の実施形態について図6に基づいて説明する。図6は圧電振動デバイスの内部構造を示す断面図である。本実施の形態は平板状の圧電振動板(水晶振動板)51をパッケージ53に格納し、蓋板52により気密封止をした構成例を示している。
【0070】
水晶振動板51はATカット水晶振動素子からなり、全体として長辺(X軸)と短辺(Z軸)と厚み(Y軸)を有する長方形の板体である。当該水晶振動板51にはその表裏面の中央部分に長方形状あるいは円形状の励振電極51a,51aが形成されており、当該励振電極51a,51aは各々細幅の引出電極51b、51b(図示せず)により長辺両端に引き出されている。これら励振電極51aおよび引出電極51bは金属多層膜からなり、例えば、水晶振動板に接してクロム層、その上部に金層が形成された構成である。
【0071】
パッケージ53はアルミナ等のセラミックと導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形で、電子素子収納部530とその周囲に形成された堤部531を有する構成である。堤部531の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の第1の金属膜層532が形成されている。当該第1の金属膜層532の上面も平坦になるよう形成されており、例えばタングステン、ニッケル、金の順で金属膜層を構成している。タングステンはメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。またパッケージの堤部には一段下がった段部53aが周状に形成されているとともに、パッケージ1内部の最底面には裏面とつながる貫通孔534が形成されて、当該貫通孔534は封止ガラス535により気密封止されている。
【0072】
パッケージ外周の4角には上下方向に伸長するキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている(図示せず)。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成である。
【0073】
なお、第1の金属膜層532はパッケージに形成されたビアホール(図示せず)あるいは前記キャスタレーション部分に形成された導電膜(図示せず)により、セラミックパッケージ下面(裏面)に形成された外部接続電極に電気的に接続され、最終的にアース接続される。
【0074】
水晶振動板51は裏面の外周近傍が前記段部に気密的に接合され、水晶振動板の裏面(一方面)とパッケージ最低面間は真空雰囲気のキャビティVになっている。この接合には封止用ガラス材や金属ろう材を用いて行う。また、窒素ガス雰囲気中で蓋板を気密封止することにより、水晶振動板の表面(他方面)は不活性ガスに接する構成となっている。
【0075】
本実施の形態によれば、段部53aに水晶振動板を搭載し、かつ気密接合を行う構成であるので、キャビティVの形成が容易となる。また、貫通孔534を介して励振電極に対して特性調整を行ったり、あるいは貫通孔534を介して真空引きすることによりキャビティVの真空度を向上させることができ、特性向上および安定化に有用である。
【0076】
以下、本発明による第6の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態では、圧電振動板として厚みすべり振動にて動作するATカットの水晶振動板を例にとり、一部エアギャップ方式により励振エネルギーを与える構成について開示している。
【0077】
図7は第6の実施形態による圧電振動デバイスの内部断面図である。
【0078】
水晶振動板61はATカット水晶振動素子からなり、全体として長辺(X軸)と短辺(Z軸)と厚み(Y軸)を有する長方形の板体である。当該水晶振動板61にはその表面の中央部分に長方形状あるいは円形状の励振電極61aが形成されており、当該励振電極61aは細幅の引出電極61bにより長辺一端に引き出されている。当該引出電極61bは水晶振動板61の側面にまで延伸されている。これら励振電極61aおよび引出電極61bは金属多層膜からなり、例えば、水晶振動板に接してクロム層、その上部に金層が形成された構成である。
【0079】
水晶振動板の上下面には上ケース62と下ケース63が各々配置されている。これら上ケースと下ケースはセラミックスあるいはガラスあるいは水晶振動板からなる長方形の板体であり、その外形はほぼ水晶振動板と同じサイズとなっている。なお、例えば水晶振動板の外形サイズが上下ケースより大きく構成され、前記引出電極部分が露出している構成であってもよい。水晶振動板と上下ケースの接合は封止ガラス材64,65を用いており、具体的には錫リン酸系ガラスやビスマス系ガラス等の鉛フリーガラス材やホウケイ酸ガラスを用いている。
【0080】
また下ケースには励振電極63aおよびこれを長辺の他端へ導出する引出電極63bが形成されされている。当該励振電極63aは水晶振動板と下ケースを重ね合わせた際、前記水晶振動板に形成された励振電極61aと対向する位置に設けられ、かつ水晶振動板の下面と励振電極63aとの間には微小ギャップが形成されている。これにより水晶振動板に対しエアギャップ方式による電圧印加を行う構成である。従って、エアギャップ方式による励振を良好な特性で行うため、水晶振動板61と下ケースの励振電極63aのギャップ(間隙)は微小に設定する必要がある。
【0081】
水晶振動板61と下ケース63の接合は、封止ガラス材65を水晶振動子の裏面(一方面)外周領域に配置し、下ケースの外周領域と接合する。この接合により気密封止されたキャビティVが形成されるが、当該キャビティVは真空雰囲気としている。
【0082】
水晶振動板61と上ケース62の接合は、封止ガラス材64を水晶振動子の表面(他方面)外周領域に配置し、上ケース62の外周領域と接合する。この接合により気密封止されたキャビティNが形成されるが、当該キャビティNは窒素ガス(不活性ガス)雰囲気としている。
【0083】
以上、水晶振動板と上下ケースの重ね合わせた構成体はその長辺両端に外部接続電極66,67が形成されている。当該外部接続電極66,67は例えば金属膜からなり、水晶振動板に形成された引出電極61bおよび下ケースに形成された引出電極63bとは各々独立して導電接合されている。
【0084】
以上の構成の圧電振動デバイスは次のような製造方法にて行う。長方形の板状水晶振動板の表面に前記励振電極61aと引出電極61bに対応した開口窓を有するパターニングマスクを配し、真空蒸着法あるいはスパッタリング法にて金属多層膜を形成し電極形成を行う。これにより電極形成された水晶振動板61を得る。また下ケースの表面に前記励振電極63aと引出電極63bに対応した開口窓を有するパターニングマスクを配し、真空蒸着法あるいはスパッタリング法にて金属多層膜を形成し電極形成を行う。これにより電極形成された下ケース63を得る。
【0085】
次に表面外周領域に予め封止ガラス材を周状に形成しグレーズ処理した下ケース63を用意し、真空雰囲気にて前記水晶振動板61を重ね合わせ、加熱により封止ガラス材65を溶融させ接合を行う。以上により真空雰囲気の微小ギャップを有するキャビティVが形成される。なお、接合性を向上させるため水晶振動板側にも予め封止ガラス材を形成しておいてもよい。
【0086】
その後、水晶振動板と下ケースを一体構成体に対し周波数等の特性調整を行う。具体的にはこの一体構成体を治工具に設置し、水晶振動板の電極に励振電圧を印加しながら露出した表面側の励振電極61aに対してイオンを照射し、イオンミリングにより周波数調整を行う。目標の周波数に到達した段階で周波数調整動作を停止する。当該周波数調整はパーシャル蒸着を行ってもよい。
【0087】
そして、表面外周領域に予め封止ガラス材を周状に形成しグレーズ処理した上ケースを用意し、窒素ガス雰囲気にて前記水晶振動板を重ね合わせ、加熱により封止ガラス材14を溶融させ接合を行う。以上により不活性ガス雰囲気のキャビティNが形成され、水晶振動板の表裏に上下ケースが配された一体構成体を得ることができる。下ケース接合時と同様に、接合性を向上させるため水晶振動板側にも予め封止ガラス材を形成しておいてもよい。なお、当該上ケースの接合においては、接合材の融点を下ケース接合時の接合材に較べて低い材料を用いることにより、信頼性の高い気密封止並びに特性の安定をはかることができる。
【0088】
以上により得られた水晶振動板の表裏に上下ケースが配された一体構成体に対し、外部導出電極66,67を形成する。具体的には外部導出電極形成部分に対応する開口窓を有するパターニングマスクを用いて真空蒸着法あるいはスパッタリング法にて金属多層膜を形成し電極形成を行い、圧電振動デバイスを得ることができる。
【0089】
なお、上ケースと下ケースにそれぞれ励振電極を形成し、両ケースを電極の形成されない水晶振動板に近接させた状態で一体化することによりキャビティを形成し、各キャビティの一方を真空雰囲気、他方を不活性ガス雰囲気としてもよい。
【0090】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば水晶振動素子や励振電極が円形や長円形等であってもよく、様々な変形例を適用することができる。本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
水晶振動子の量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す内部断面図である。
【図2】本発明による第2の実施形態を示す内部断面図である。
【図3】本発明による第3の実施形態を示す内部断面図である。
【図4】本発明による第4の実施形態を示す内部断面図である。
【図5】本発明による第4の実施形態を示す水晶振動板の斜視図である。
【図6】本発明による第5の実施形態を示す内部断面図である。
【図7】本発明による第6の実施形態を示す内部断面図である。
【符号の説明】
【0093】
11,21,31,41,51,61 水晶振動板(圧電振動板)
12,22,32,62 上ケース
13、23,33,63 上ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板の励振領域を気密封止した圧電振動デバイスであって、当該励振領域の一方面に接する雰囲気を真空とし、他方面に接する雰囲気を不活性ガスとしたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
圧電振動板の励振領域の表裏に金属膜からなる励振電極を形成し、当該励振領域を気密封止した圧電振動デバイスであって、当該励振領域の一方面に接する雰囲気を真空とし、他方面に接する雰囲気を不活性ガスとするとともに、前記他方面が特性調整面であることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
圧電振動板の両主面に対向して各々第1ケースと第2ケースを設置した圧電振動デバイスであって、圧電振動板の一方面の外周領域と第1ケースの外周領域とを接合材により気密接合するとともに、圧電振動板と第1ケース間に真空雰囲気のキャビティを形成し、圧電振動板の他方面の外周領域と第2ケースの外周領域とを接合材により気密接合するとともに、圧電振動板と第2ケース間に不活性ガス雰囲気のキャビティを形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
上方が開口し、内部底面と当該内部底面の周囲に堤部を有するパッケージに励振電極が形成された圧電振動板を気密収納した圧電振動デバイスであって、圧電振動板の一方面の外周領域を前記内部底面と気密的に接合することにより、圧電振動板の一方面と内部底面間に真空または不活性ガス雰囲気の第1のキャビティを形成し、圧電振動板の他方面に前記第1のキャビティと異なる真空または不活性ガス雰囲気が接するようパッケージを気密封止したことを特徴とする請求項1または2記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
パッケージの内部底面に前記第1のキャビティとパッケージ裏面をつなぐ貫通孔が形成され、当該貫通孔は封止材により封止されていることを特徴とする請求項4記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
圧電振動板の両主面に対向して各々第1ケースと第2ケースを設置した圧電振動デバイスであって、圧電振動板の一方面と第1ケース間を真空雰囲気で気密封止するとともに、第1ケースに第1の励振電極を形成し、かつ当該励振電極と圧電振動板の一方面との間に微小ギャップを形成し、また圧電振動板の他方面と第2ケース間を不活性ガス雰囲気で気密封止するとともに、圧電振動板の他方面に第2の励振電極を形成し、かつ当該他方面が特性調整面であることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項7】
一方面に接する雰囲気の気密封止に用いる接合材と、他方面に接する雰囲気の気密封止に用いる接合材の融点を異ならせたことを特徴とする請求項1乃至6記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
圧電振動板が薄肉部とその周囲に厚肉部を有する構成であり、薄肉部の表裏に金属膜からなる励振電極を配して励振領域を形成し、少なくとも当該励振領域を気密封止した圧電振動デバイスであって、当該励振領域の一方面に接する雰囲気を真空とし、他方面に接する雰囲気を不活性ガスとしたことを特徴とする請求項1乃至7記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
圧電振動板の励振領域の表裏に金属膜からなる励振電極を形成する工程と、前記励振領域の表裏いずれか一方面を真空雰囲気に気密封止する工程と、他方面の励振領域に対して特性調整を行う調整工程と、当該他方面の励振領域を不活性ガス雰囲気に気密封止する工程と、を有する圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項10】
圧電振動板の励振領域の表裏に金属膜からなる励振電極を形成する工程と、前記励振領域の表裏いずれか一方面を、第1接合材を用いて真空雰囲気に気密封止する工程と、他方面の励振領域に対して特性調整を行う調整工程と、当該他方面を前記第1接合材より融点の低い第2接合材を用いた加熱接合、あるいは局所加熱接合を用いて不活性ガス雰囲気に気密封止する工程と、を有する圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−205761(P2008−205761A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38834(P2007−38834)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】