説明

圧電振動子モジュール

【課題】周波数調整を容易に行うことができる圧電振動子モジュールを提供する。
【解決手段】一対の励振電極と、当該励振電極のそれぞれに接続された支持電極とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片に対する負荷容量の調整を行うための複数の容量ユニットと前記複数の容量ユニットの中から所望された容量ユニットを外部からの入力信号により前記圧電振動片に付加あるいは前記圧電振動片から切り離すための信号入力経路の切替を行う書込み信号処理部とを有し、前記複数の容量ユニットの一端を前記圧電振動片における一方の支持電極または他方の支持電極に接続した調整回路と、前記圧電振動片と前記調整回路とを収容するパッケージとを備え、前記パッケージには前記調整回路および前記圧電振動片に接続された外部端子を設け、前記調整回路を1チップに集積化したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電振動子に係り、特に周波数の調整を可能とした圧電振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
発振周波数の調整を容易に行うことができる圧電振動子として、特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されている圧電振動子は、圧電振動片と、これを収容するパッケージを備えることを基本構成とし、前記パッケージにコンデンサブロック(負荷容量ブロック)を設けたことを特徴とするものである。具体的には、図7に示すようにパッケージ1の底面、あるいは底面を構成する基板内部に、負荷容量素子であるコンデンサ素子2a〜2hを形成している。前記コンデンサ素子2a〜2hを構成する一方の電極を前記圧電振動片に接続された外部端子3a,3dへ接続し、他方の電極をGND(接地)電極として設けられた外部端子3b,3cへと接続する。そして、コンデンサ素子2a〜2hと各外部端子3a〜3dとを接続する電極パターンのうち、少なくとも前記一方の電極と前記圧電振動片(不図示)に接続された外部端子3a,3dとを接続する電極パターンの一部をパッケージ1の外部に露出させるという特徴を持つものである。
【0003】
このような構成の圧電振動子によれば、周波数調整を行うに際し、パッケージの外部に露出させた電極パターンの一部をカットするだけで良く、発振周波数の調整を容易に行うことができる。また、周波数調整のために、チップコンデンサ等を用意し、圧電振動子における外部端子間に選択的に接続するといった手間や、必要とされるチップコンデンサの在庫を管理する等といった手間、コストを削減することができる。
【特許文献1】特開2007−28271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成の圧電振動子によれば確かに、上記のような効果を奏することができ、小型で高精度な圧電振動子として有用なものであったということができる。
【0005】
しかし、各デバイスの小型化、薄型化、および高精度化が進む現在では、パッケージ表面、あるいは内部にコンデンサ素子を形成するといった特許文献1のような構成では、次のような問題が生ずることとなる。すなわち、小型化のためにパッケージサイズを小さくした場合には、形成可能なコンデンサ素子の数を少なく、あるいはコンデンサ素子単体の容量を小さくする必要が生じ、高精度化の意図に沿うことが困難となる。換言すると、高精度化のためにコンデンサ素子の数を増やした場合には、圧電振動子の小型化ができなくなってしまうといった問題が生ずるのである。また、特許文献1では、電極パターンをカットする手法としてレーザを用いることが開示されているが、レーザによる電極パターンのカットは、当該工程に係る時間が長く、コストも高いため生産性の向上に不向きであるといった問題も生ずる。
【0006】
そこで本発明では、周波数調整を容易に行うことができ、小型化、高精度化に適し、かつ調整に要する時間を短くし、コストを下げることのできる圧電振動子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る圧電振動子モジュールは、圧電振動片と、容量素子および接続切替部を備え前記圧電振動片に接続された複数の容量ユニットが形成された調整回路と、前記圧電振動片と前記調整回路とを収容するパッケージと、を備えた圧電振動子モジュールであって、調整信号入力端子と、前記接続切替部の接続状態を短絡又は開放とする電圧を印加するための書込み電圧印加端子とが、前記パッケージに形成され、前記調整信号入力端子から入力された調整信号に基づいて前記複数の接続切替部から所望の前記接続切替部を選択すると共に、選択された前記接続切替部と前記書込み電圧印加端子との間を接続する前記書込み信号処理部を、前記調整回路に形成したことを特徴とする。このような構成の圧電振動子モジュールによれば、信号の入力のみにより負荷容量を増減させることができるため、圧電振動子の周波数調整を短時間で容易に行うことができる。また、レーザ等を照射する機器を必要としないため、製造コストを安価に保つことができる。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明に係る圧電振動子モジュールは、一対の励振電極と、当該励振電極のそれぞれに接続された支持電極とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片に対する負荷容量の調整を行うための複数の容量ユニットと前記複数の容量ユニットの中から所望された容量ユニットを外部からの入力信号により前記圧電振動片に付加あるいは前記圧電振動片から切り離すための信号入力経路の切替を行う書込み信号処理部とを有し、前記複数の容量ユニットの一端を前記圧電振動片における一方の支持電極または他方の支持電極に接続した調整回路と、前記圧電振動片と前記調整回路とを収容するパッケージとを備え、前記パッケージには、前記圧電振動片における一方の支持電極と接続された第1の外部端子と、前記圧電振動片における他方の支持電極と接続された第2の外部端子と、前記複数の容量ユニットの他端が接続された接地用外部端子と、前記調整回路に対して入力信号の入力を行い、前記容量ユニットの選択的付加または切り離しを行うための書込み用外部端子とを設け、前記調整回路を1チップに集積化したことを特徴とするものであっても良い。このような構成の圧電振動子モジュールによれば、信号の入力のみにより負荷容量を増減させることができるため、圧電振動子の周波数調整を短時間で容易に行うことができる。また、レーザ等を照射する機器を必要としないため、製造コストを安価に保つことができる。また、調整回路を1チップに集積化してパッケージに収容する構成としたため、モジュール全体としての小型化を図ることができる。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明に係る圧電振動子モジュールは、一対の励振電極と、当該励振電極のそれぞれに接続された支持電極とを有する圧電振動片と、前記圧電振動片を収容すると共に前記支持電極と電気的に接続された外部端子を設けたパッケージと、前記圧電振動片に対する負荷容量の調整を行うための複数の容量ユニットと前記複数の容量ユニットの中から所望された容量ユニットを外部からの入力信号により前記圧電振動片に付加あるいは前記圧電振動片から切り離すための信号入力経路の切替を行う書込み信号処理部とを有し、前記複数の容量ユニットの一端を前記パッケージに設けられた一方の外部端子または他方の外部端子に接続した調整回路と、少なくとも前記調整回路を封止する樹脂モールド部とを備え、前記樹脂モールド部には、前記パッケージに設けられた一方の外部端子と接続された第1の実装用リードフレームと、前記パッケージに設けられた他方の外部端子と接続された第2の実装用リードフレームと、前記複数の容量ユニットの他端が接続された接地用リードフレームと、前記調整回路に対して入力信号の入力を行い、前記容量素子の選択的付加または切り離しを行うための書込み用リードフレームとを設け、前記書込み用リードフレームの少なくとも一部を前記樹脂モールド部から露出させると共に、前記調整回路を1チップに集積化したことを特徴とするものであっても良い。このような特徴を有する圧電振動子モジュールであっても、上記構成の圧電振動子モジュールと同様な効果を奏することができる。すなわち、信号の入力のみにより負荷容量を増減させることができるため、圧電振動子の周波数調整を短時間で容易に行うことができる。また、レーザ等を照射する機器を必要としないため、製造コストを安価に保つことができる。また、調整回路を1チップに集積化してパッケージに収容する構成としたため、モジュール全体としての小型化を図ることができる。
【0010】
上記のような構成の圧電振動子モジュールでは、前記パッケージを封止する蓋体を前記書込み用外部端子の1つとして設定しても良い。このような構成とすることで、外部端子の数を増やすことができるため、圧電振動子モジュールに対して入力可能な制御信号の数を増やすことができる。よって圧電振動子モジュールの機能性を高めることが可能となる。
【0011】
また、上記のような構成の圧電振動子モジュールにおいて、前記容量ユニットは、容量素子と、当該容量素子に直列に接続された接続切替部とから成り、入力信号の入力により前記接続切替部の接続状態を切り替えて、前記圧電振動片と前記接地用外部端子または接地用リードフレームとを前記容量素子を介して電気的に接続する構成とすると良い。このような構成とすることで、初期状態で圧電振動片に付与されている負荷容量を小さなものとすることができる。このため、負荷容量が大きすぎることに起因して圧電振動子に発振不良が生ずるといったことが無い。
【0012】
また、前記書き込み用外部端子または前記書き込み用リードフレームは、前記複数の容量ユニットの中から所望する容量ユニットを選択するための信号を入力するための調整信号入力端子または調整信号入力リードフレームと、選択された容量ユニットに対して前記接続切替部の接続状態を切り替える信号を入力するための書込み電圧印加端子または書込み電圧印加リードフレームとより構成され、前記調整回路は、前記書込み電圧印加端子または前記書込み電圧印加リードフレームと所望された容量ユニットとの間を切り替え接続する切替手段と、前記調整信号入力端子または前記調整信号入力リードフレームから入力された選択信号に基づいて前記切替手段に対して切替信号を出力する調整信号処理手段とを備えるものとすることができる。このような構成とすることで、圧電振動子の外部からの信号入力のみにより、調整回路内部に備えられた容量ユニットを選択し、容量値の増大を図ることができる。
【0013】
また、上記特徴を有する圧電振動子モジュールでは、前記接続切替部をアンチヒューズ素子とすることが望ましい。接続切替部をアンチヒューズ素子とすることにより、構成を簡単化することができる。また、容量素子の接続状態を維持するための電源を不要とすることができる。
【0014】
また、前記接続切替部は電源供給端子を備え、前記容量素子の他端にソースを接続し、ドレインを接地用外部端子または接地用リードフレームに接続したトランジスタと、前記トランジスタを動作させるための電源部と、前記電源部と前記接地用外部端子または前記接地用リードフレームとの間に、前記トランジスタと並列に配置したヒューズ素子を備え、前記電源部と前記ヒューズ素子とを接続するラインを前記トランジスタのゲートに接続する構成としても良い。接続切替部をこのような構成とした場合であっても、調整により容量値を増大させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の圧電振動子モジュールに係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図2を参照して本発明の圧電振動子モジュールに係る第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る圧電振動子モジュール10は、圧電振動片20と、調整回路30、およびこれらを収容するパッケージ50を基本として構成される。
【0016】
前記圧電振動片20は図3に示すように、圧電基板に対して励振電極20a1,20a2、支持電極20b1,20b2、および接続電極20c1,20c2等の励振パターンを形成することで構成される。なお、前記励振電極20a1,20a2とは圧電基板に振動を励起させるために当該基板の両主面に配置される電極であり、前記支持電極20b1,20b2とは圧電基板を支え、実装先の端子と圧電基板との電気的導通を図るための電極であり、前記接続電極20c1,20c2は前記励振電極20a1,20a2と前記支持電極20b1,20b2とをそれぞれ電気的に接続する電極である。
【0017】
前記圧電基板は、圧電現象を奏する素子片であれば良く、例えば水晶(SiO2)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等のような単結晶素子から成るものと、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような他結晶セラミック素子などを挙げることができる。また、素子片の形態も、その振動形態や周波数帯などにより、矩形平板型のものや音叉型のものなど種々選択することができる。このように、圧電振動片は、その用途や特性、コスト等を考慮して、材質や形態、カット角等を選択すると良い。例えば、雰囲気温度に対する周波数特性(周波数温度特性)を重視する場合などには、圧電振動片20としてATカット水晶振動片を採用すると良い。
【0018】
前記調整回路30は、図1に示すように、少なくとも書込み信号処理部40と、前記圧電振動片20に接続される容量素子群を有する。なお、容量素子群は本実施形態の場合、圧電振動片20の一方側に備えられる可変容量部42と、圧電振動片20の他方側に備える容量素子48とに分けることができる。
【0019】
前記書込み信号処理部40には、調整信号処理手段40aと、切替手段40bとが構成されている。前記調整信号処理手段40aは、詳細を後述する調整信号入力パッド34(34a〜34d)から入力される信号の入力パターンに基づき、1の切替信号を出力する回路である。
【0020】
また、前記切替手段40bは、調整信号処理手段から入力された切替信号に対応した容量ユニット44(44A〜44Pのいずれか)と、詳細を後述する書込み用電圧印加パッド36とを接続する回路である。
【0021】
また、前記可変容量部42には、容量素子45(45A〜45P)と接続切替部46(46A〜46P)とを直列に接続した容量ユニット44(44A〜44P)が複数、並列に設けられている。前記容量素子45はコンデンサであれば良く、接続切替部46はアンチヒューズ素子であれば良い。なお、容量素子48についても、コンデンサとすることができる。また、容量ユニット44に設けられる容量素子45A〜45Pは、周波数調整量に応じた種々の容量を持つものであっても良いし、同一容量のものを複数配置するものであっても良い。
【0022】
上記のような構成要素を有する調整回路30には、圧電振動片20の一方側に接続された第1の振動片パッド32a、圧電振動片20の他方側に接続された第2の振動片パッド32b、接地パッド38、書込み電圧印加パッド36、および1つ以上(本実施形態では4つ)の調整信号入力パッド34(34a〜34d)が備えられている。そして、前記可変容量部42の一端は第1の振動片パッド32aへ接続され、他端は接地パッド38へと接続されている。また、前記容量素子48の一端は第2の振動片パッド32bへ接続され、他端は接地パッド38へと接続されている。また、前記調整信号処理手段40aにおける入力側端部は調整信号入力パッド34へ接続され、前記切替手段40bの入力側端部は書込み用電圧印加パッド36へ接続されている。
【0023】
本実施形態では、上記のような構成の調整回路30を集積化し、1チップの半導体素子(IC)で構成している。そして、上述した各入出力パッド(第1の振動片パッド32a、第2の振動片パッド32b、接地パッド38、書込み電圧印加パッド36、および調整信号入力パッド34)は、ICの表面に設けることで、外部から導通を図ることができるようにしている。
【0024】
前記パッケージ50は本実施形態の場合、パッケージベース54とリッド52とより構成される。前記パッケージベース54は、上述した圧電振動片20や調整回路30を収容するキャビティ74を有する箱体であり、構成材料としては、耐湿性の高い絶縁材料であることが望ましい。例えばセラミックスなどである。なお、前記キャビティ74の形状は特に限定するものでは無いが、実施形態の場合、前記圧電振動片20と前記調整回路30を積層配置するために階段状に形成し、それぞれの床部(第1床部56〜第3床部60)に実装領域を確保するようにしている。圧電振動片20と調整回路30を積層配置することにより、両者を1平面に並列的に配置する場合に比べ、パッケージベース54のダイサイズを小さくすることができるからである。
【0025】
また、パッケージベース54には、内部端子62a〜62d,64a〜64d,66a,66bと外部端子68a〜68d,69a〜69dとが設けられている。前記内部端子62a〜62d,64a〜64d,66a,66bは、上述したキャビティ74内部に設けられ、上述した圧電振動片20や調整回路30を実装する際に使用される。また、前記外部端子68a〜68d,69a〜69dは、パッケージベース54の外周、例えば底面や側壁に設けられる端子であり、スルーホールや電極パターン等を介して前記内部端子と電気的に接続されている。内部端子と外部端子との接続関係の具体例としては、内部端子66bと外部端子(第1の振動片端子)68b、内部端子66aと外部端子(第2の振動片端子)68c、内部端子62dと外部端子(接地端子)68d、内部端子64a〜64dと外部端子(調整信号入力端子)69a〜69dといったものを挙げることができる。なお、内部端子62cは、電極パターンおよびスルーホールを介してパッケージベース54におけるリッド52接続面に電気的に引き回されている。また、内部端子62a,62bはそれぞれ、内部端子66a,66bに電気的に接続されている。
【0026】
前記リッド52は、箱体として形成された前記パッケージベース54における上部開口部を封止する蓋体である。その形状は特に限定されるものでは無く、前記上部開口部を封止可能な平板であれば良い。また、本実施形態の場合、当該リッド52を外部端子の1つとして利用することとなるため、導電性を有する材質により構成することとする。詳細には、上述したパッケージベース54と熱膨張率(線膨張率)が近似するものであると良く、パッケージベース54をセラミックスで構成した場合コバールなどの合金により構成すると良い。
【0027】
上記のように構成されたパッケージベース54とリッド52との接合は、低融点金属(例えばコバール)で構成されたシームリング72を介して成されるため、導電性を有するリッド52と内部端子62cとが電気的に接続されることとなる。よって、リッド52はパッケージ50において外部端子(書込み電圧印加端子)としての働きを持つこととなる。
【0028】
上記のような調整回路30及び圧電振動片20は上述したように、それぞれパッケージ50におけるキャビティ74に収容される。具体的には、前記調整回路30は、接着剤等(不図示)を介してパッケージベース54における低床部である第1床部56に搭載される。その後、金属ワイヤ(例えば金線)76により、能動面に配された各パッドとキャビティ74内における第2床部58に配置された内部端子とをそれぞれ接続されることで実装状態を確保する。具体的には、調整回路30における第1の振動片パッド32aと内部端子62a、第2の振動片パッド32bと内部端子62b、接地パッド38と内部端子62d、調整信号入力パッド34a〜34dと内部端子64a〜64d、書込み用電圧印加パッド36と内部端子62cのように接続される。
【0029】
また、前記圧電振動片20は、第3床部60に形成された内部端子66aおよび内部端子66bに実装される。なお、内部端子66a,66bに対する圧電振動片20の実装は、導電性接着剤22により、圧電振動片20に形成された支持電極と、キャビティ74内に形成された内部端子66a,66bとを接続すれば良い。
【0030】
上記のような構成の圧電振動子モジュール10では、まず、第1の振動片端子68bおよび第2の振動片端子68cに検査用プローブ等を接触させて圧電振動片20の周波数測定を行う。測定した周波数と目標とする周波数とを比較し、ズレ量に応じて必要とされる容量値を算出する。
【0031】
調整回路30の内部に形成された可変容量部42に形成した容量ユニット44A〜44Pにおける容量素子45A〜45Pの中から、あるいは当該容量素子45A〜45Pの組合わせから、前記ズレ量を補うのに必要な容量値を満足するもの、あるいは満足する組合わせを選択し、当該容量素子が接続された容量ユニット44A〜44Pのいずれかを選択する。
【0032】
容量ユニット44A〜44Pの選択は、パッケージの側壁に設けた4つの調整信号入力端子69a〜69dに対する信号の入力パターンによって成される。調整信号は、調整信号入力端子69a〜69dのそれぞれに0または1、すなわち信号が入力されているか否かの入力パターンが入力されることにより定まる4ビットのデータである(表1参照)。
【表1】

【0033】
上記のような入力パターンは、調整回路における調整信号入力パッド34a〜34dを介して書込み信号処理部40の調整信号処理手段40aに入力される。調整信号処理手段40aでは、入力パターンに応じた4ビットの信号を切替手段へ出力する。4ビットの信号が入力された切替手段40bは、入力された信号に対応した容量ユニット44に接続されたラインと書込み用電圧印加パッド36に接続されたラインとが接続されるように入力経路の切り替えを行う。
【0034】
切替手段40bによる接続先の容量ユニット44の選択(ラインの切り替え)が成された後、書込み電圧印加端子(実施形態ではリッド52)に対して高電圧(アンチヒューズ素子に対応した書込み電圧相当の電圧)の信号を入力することにより、選択された容量ユニット44における接続切替部(本実施形態ではアンチヒューズ素子)の接続状態が開放から短絡に変化する。
【0035】
これにより、圧電振動片20の一方側に接続された容量が増え、圧電振動子モジュール10としての周波数が低下する。なお、前述した切替手段40bによる容量ユニット44の選択と高電圧信号の印加とを複数回繰返して行うことにより、複数の容量ユニット44の接続切替部の接続状態を切替えることができる。
【0036】
このような構成の圧電振動子モジュール10によれば、複数の容量素子45A〜45Pを1チップに集積化して可変容量部42内に設けるようにしたことで、容量素子の数を増やして周波数の調整幅を増加させた場合であっても、容量素子を構成する面積が増加することが無い。よって、パッケージサイズ、すなわち圧電振動子モジュール10の小型化が可能となる。また、容量値の付加(周波数の調整)は、外部端子(調整信号入力端子69a〜69d)に対する信号の入力と、書込み電圧印加端子(リッド52)に対する書込み電圧信号の入力のみで行うことができるため、レーザ等による電極パターンの溶断に比べて調整に要する時間を短縮させることができる。また、レーザ照射機等の装置も不要となるため、コストも低減することができる。
【0037】
また、従来では、パッケージ50の一部に容量素子を形成したり、レーザによりカットする電極パターンの一部をパッケージの外周に露出させる必要があったために、専用のパッケージを製造する必要があった。しかしながら本実施形態に係る圧電振動子モジュール10であれば、圧電振動片20と調整回路30を収容可能であれば良いため、汎用のパッケージを流用することも可能となる。
【0038】
また、接続切替部をアンチヒューズ素子としたことにより、高電圧信号の入力により接続状態が確保された場合には、容量素子とGNDとの接続状態を維持するための電力が不要となる。よって、容量値の付加状態を維持するための電源供給が必要無い。
【0039】
また、接続切替部としてアンチヒューズ素子を採用し、調整により負荷容量が増大する構成としたことにより、調整用の容量素子の数を増やした場合であっても、初期状態における負荷容量が大きすぎて発振不良が生ずることが無い。なお、発振不良が生じ無い範囲であれば、接続切替部としてヒューズを用い、高電圧信号の入力によりこれをカットするようにしても良い。この場合、圧電振動片20に接続された負荷容量の容量値を減少させることとなるため、調整後の周波数は調整前よりも高くなる。
【0040】
また、本実施形態では、書込み電圧印加端子をリッド52としていたが、リッド52に変えて外部端子68aを書込み電圧印加端子に設定しても良い。また、本実施形態では、可変容量部42を圧電振動片20の一方側のみに設けるように説明したが、可変容量部は、圧電振動片20の他方側、あるいは一方側、他方側の双方に設けるようにしても良い。
【0041】
次に、本発明の圧電振動子モジュールに係る第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る圧電振動子モジュールの殆どの構成は、上述した第1の実施形態に係る圧電振動子モジュールと同様であり、調整回路における容量ユニットの構成のみを異ならせたものである。
よって、以下には、第1の実施形態に係る圧電振動子モジュールとの相違点であり、本実施形態に係る圧電振動子モジュールの特徴部分である容量ユニット44の構成について説明する。
【0042】
図4に示す本実施形態に係る容量ユニット44(44A〜44P)は、容量素子45(45A〜45P)と、容量素子45の他端側にソース、接地パッド38側にドレインを接続した電界効果型のトランジスタ41、およびトランジスタ41のゲートに接続されたヒューズ素子43とより構成されている。なお、本実施形態における容量ユニット44には、前記トランジスタ41を動作させるための電源パッド49が接続されており、前記ヒューズ素子43の一端は前記トランジスタ41のゲートと並列に前記電源パッド49に接続されており、他端は接地パッド38に接続されている。また、前記電源パッド49と前記ヒューズ素子43との間には抵抗素子47が設けられている。
【0043】
このため、本実施形態に係る圧電振動子モジュールでは、調整回路の表面に電源パッド49が備えられ、当該電源パッド49が外部端子に電気的に接続されることとなる。なお、電源パッド49が電気的に接続される外部端子として、外部端子68aを用いてもよい。これにより、1つの外部端子を、調整時は書込み電圧印加用、ユーザー使用時は電源電圧供給用として使用することができる。
【0044】
このような構成の容量ユニット44を備えた圧電振動子モジュールによれば、選択によりヒューズ素子43が切断された場合に、トランジスタ41がONとなり、圧電振動片20に対する負荷容量が増大し、第1の実施形態に係る圧電振動子モジュールと同様な効果を奏することができる。なお、ヒューズ素子43が接続されている容量ユニット44に関しては、トランジスタ41がOFFの状態であるために、容量素子45と接地パッド38が電気的に接続されず、容量値の増加は無い。
よって、トランジスタ41に対する電力の供給の有無を除けば、第1の実施形態に係る圧電振動子モジュールと同様な効果を奏することができる。
【0045】
上記実施形態に係る圧電振動子モジュールは、1つのパッケージ内に圧電振動片と調整回路を搭載する旨記載した。しかしながら、本発明に係る圧電振動子モジュールはそのパッケージ形態を特に限定するものでは無く、例えば図5(A),(B)に示すような形態のものであっても、本発明に係る圧電振動子モジュールとみなすことができる。
【0046】
すなわち、圧電振動片20を実装したパッケージ150と、調整回路30を封止した樹脂モールド部178とより成る形態の圧電振動子モジュール110である。ここで、前記パッケージ150には、少なくとも圧電振動片20における支持電極と電気的に接続された外部端子180が備えられている。また、前記樹脂モールド部178には少なくとも、上記実施形態における外部端子(第1の振動片端子68b、第2の振動片端子68c、接地端子68d、書込み電圧印加端子(リッド52)、調整信号入力端子69a〜69d)の役割を担うリードフレーム168a〜168d,169a〜169d、および前記調整回路30を支持するリードフレーム176が備えられている。
【0047】
具体的には、リードフレーム168bは第1の振動片端子、リードフレーム168cは第2の振動片端子、リードフレーム168dは接地端子、リードフレーム168aは書込み電圧印加端子、リードフレーム169a〜169dは調整信号入力端子の役割を担うようにすれば良い。
【0048】
上記のような構成の圧電振動子モジュールは、その周波数を高精度に調整することができる。このため、出荷先において発振器等として使用される場合には、図6に示すように、インバータ90と帰還抵抗92とから成る増幅部94を、第1の振動片端子68b(第1の振動片リードフレーム168b)と第2の振動片端子68c(第2の振動片リードフレーム168c)とに接続すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る圧電振動子モジュールの回路構成を示した図である。
【図2】第1の実施形態に係る圧電振動子モジュールの形態を示す図である。
【図3】圧電振動子モジュールに搭載される圧電振動片の構成の一例を示す図である。
【図4】第2の実施形態にかかる圧電振動子モジュールにおける容量ユニットの構成を示す図である。
【図5】他の形態を有する圧電振動子モジュールの例を示す図である。
【図6】実施形態に係る圧電振動子モジュールを発振器として使用する場合の構成を示す図である。
【図7】従来の圧電振動子モジュールにおける特徴部分を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10………圧電振動子モジュール、20圧電振動片、30………調整回路、32a………第1の振動片パッド、32b………第2の振動片パッド、34(34a〜34d)………調整信号入力パッド、36………書込み用電圧印加パッド、38………接地パッド、40………書込み信号処理部、42………可変容量部、50………パッケージ、52………リッド、68(68a〜68d)………外部端子、69(69a〜69d)………外部端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片と、
容量素子および接続切替部を備え前記圧電振動片に接続された複数の容量ユニットが形成された調整回路と、
前記圧電振動片と前記調整回路とを収容するパッケージと、を備えた圧電振動子モジュールであって、
調整信号入力端子と、前記接続切替部の接続状態を短絡又は開放とする電圧を印加するための書込み電圧印加端子とが、前記パッケージに形成され、
前記調整信号入力端子から入力された調整信号に基づいて前記複数の接続切替部から所望の前記接続切替部を選択すると共に、選択された前記接続切替部と前記書込み電圧印加端子との間を接続する前記書込み信号処理部を、前記調整回路に形成したことを特徴とする圧電振動子モジュール。
【請求項2】
一対の励振電極と、当該励振電極のそれぞれに接続された支持電極とを有する圧電振動片と、
前記圧電振動片に対する負荷容量の調整を行うための複数の容量ユニットと前記複数の容量ユニットの中から所望された容量ユニットを外部からの入力信号により前記圧電振動片に付加あるいは前記圧電振動片から切り離すための信号入力経路の切替を行う書込み信号処理部とを有し、前記複数の容量ユニットの一端を前記圧電振動片における一方の支持電極または他方の支持電極に接続した調整回路と、
前記圧電振動片と前記調整回路とを収容するパッケージとを備え、
前記パッケージには、前記圧電振動片における一方の支持電極と接続された第1の外部端子と、前記圧電振動片における他方の支持電極と接続された第2の外部端子と、前記複数の容量ユニットの他端が接続された接地用外部端子と、前記調整回路に対して入力信号の入力を行い、前記容量ユニットの選択的付加または切り離しを行うための書込み用外部端子とを設け、
前記調整回路を1チップに集積化したことを特徴とする圧電振動子モジュール。
【請求項3】
一対の励振電極と、当該励振電極のそれぞれに接続された支持電極とを有する圧電振動片と、
前記圧電振動片を収容すると共に前記支持電極と電気的に接続された外部端子を設けたパッケージと、
前記圧電振動片に対する負荷容量の調整を行うための複数の容量ユニットと前記複数の容量ユニットの中から所望された容量ユニットを外部からの入力信号により前記圧電振動片に付加あるいは前記圧電振動片から切り離すための信号入力経路の切替を行う書込み信号処理部とを有し、前記複数の容量ユニットの一端を前記パッケージに設けられた一方の外部端子または他方の外部端子に接続した調整回路と、
少なくとも前記調整回路を封止する樹脂モールド部とを備え、
前記樹脂モールド部には、前記パッケージに設けられた一方の外部端子と接続された第1の実装用リードフレームと、前記パッケージに設けられた他方の外部端子と接続された第2の実装用リードフレームと、前記複数の容量ユニットの他端が接続された接地用リードフレームと、前記調整回路に対して入力信号の入力を行い、前記容量素子の選択的付加または切り離しを行うための書込み用リードフレームとを設け、
前記書込み用リードフレームの少なくとも一部を前記樹脂モールド部から露出させると共に、前記調整回路を1チップに集積化したことを特徴とする圧電振動子モジュール。
【請求項4】
前記パッケージを封止する蓋体を前記書込み用外部端子の1つとして設定したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の圧電振動子モジュール。
【請求項5】
前記容量ユニットは、容量素子と、当該容量素子に直列に接続された接続切替部とから成り、
入力信号の入力により前記接続切替部の接続状態を切り替えて、前記圧電振動片と前記接地用外部端子または接地用リードフレームとを前記容量素子を介して電気的に接続する構成としたことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の圧電振動子モジュール。
【請求項6】
前記書き込み用外部端子または前記書き込み用リードフレームは、前記複数の容量ユニットの中から所望する容量ユニットを選択するための信号を入力するための調整信号入力端子または調整信号入力リードフレームと、
選択された容量ユニットに対して前記接続切替部の接続状態を切り替える信号を入力するための書込み電圧印加端子または書込み電圧印加リードフレームとより構成され、
前記調整回路は、前記書込み電圧印加端子または前記書込み電圧印加リードフレームと所望された容量ユニットとの間を切り替え接続する切替手段と、
前記調整信号入力端子または前記調整信号入力リードフレームから入力された選択信号に基づいて前記切替手段に対して切替信号を出力する調整信号処理手段とを備えることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動子モジュール。
【請求項7】
前記接続切替部をアンチヒューズ素子としたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の圧電振動子モジュール。
【請求項8】
前記接続切替部は電源供給端子を備え、
前記容量素子の他端にソースを接続し、ドレインを接地用外部端子または接地用リードフレームに接続したトランジスタと、
前記トランジスタを動作させるための電源部と、
前記電源部と前記接地用外部端子または前記接地用リードフレームとの間に、前記トランジスタと並列に配置したヒューズ素子を備え、
前記電源部と前記ヒューズ素子とを接続するラインを前記トランジスタのゲートに接続する構成としたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の圧電振動子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−283351(P2008−283351A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124334(P2007−124334)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】