説明

地図情報表示装置及び地図情報表示方法

【課題】ユーザが地図と名称の位置関係を容易に把握することができるようにする。
【解決手段】コントローラ8が各名称の認知度に基づいて地図画面上に名称を重畳表示する。このような表示処理によれば、行政区画の階層に基づいて決定した名称ではなく、ユーザが認知している確率が高い名称が地図画面上に重畳表示される。従って、行政区画の階層に基づいて決定した名称が表示される場合と比較して、地図と名称の位置関係がユーザが認知しているものと一致する可能性が高くなり、ユーザは地図と名称の位置関係を容易に把握することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報表示装置及び地図情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地名や施設名等の名称のデータを地図情報の表示縮尺に対応付けて階層的に記憶しておき、ユーザが設定した表示縮尺に対応する名称を示す文字列を地図画面上に重畳表示する技術が知られている。この技術によれば、ユーザが設定した表示縮尺が大きく、広域の地図情報を表示する場合には、行政区画としての都道府県の名称が地図画面上に重畳表示され、表示縮尺が小さくなるにつれて、行政区画としての市区群,町村大字,大型施設等の名称に表示が切り替わる。
【特許文献1】特開2006−138792号公報(例えば段落[0014]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術によれば、地図画面上に重畳表示される名称は都道府県市町村といった行政区画の階層に基づいて決まっているために、地図画面上に重畳表示された名称とユーザが認知している名称とが一致しない可能性がある。このため従来技術によれば、地図画面を一瞥してもユーザが地図と名称の位置関係を把握できない可能性がある。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地図と名称のの位置関係を容易に把握可能な地図情報表示装置及び地図情報表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、道路情報を含む地図情報に基づいて地図画面を作成し、地図画面に含まれると共に認知度に基づき設定された地物の名称情報を抽出し、地図画面と名称情報とを表示するようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る地図情報表示装置及び地図情報表示方法によれば、認知度に基づき設定された地物の名称情報を抽出し、地図画面と名称情報とを表示するようにしたために、ユーザは地図と名称情報の位置関係を容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る地図情報表示装置は地名,施設名等の名称に対するユーザの“認知度”を考慮して地図画面上に名称を重畳表示する。そこで本発明の実施形態となる地図情報表示装置の構成を具体的に説明する前に本発明における“認知度”の定義及びその導出方法について説明する。
【0008】
〔認知度とは〕
本発明において“認知度”とは、地名,施設名等の名称をユーザが知っている度合いを数値化したものを意味する。この認知度は、数十〜数百人の被験者に対しその名称を知っているか否かを回答させ、全被験者中で知っていると回答した被験者が占める割合をその名称に対するユーザの認知度とするといったアンケート調査を実施することによって直接的に定めることができる。しかしながら、このようなアンケート調査を相当数存在する名称の一つ一つについて実施すると共にデータのメンテナンス時に必要に応じてアンケート調査を再実施することは現実的ではない。
【0009】
そこで本発明では、最小限のサンプル名称について上記のようなアンケート調査を実施し、アンケート調査結果を最もよく説明する認知度のモデルを構築し、構築したモデルを利用して任意の地名に対する認知度を推測することにより、各名称に対するユーザの認知度を定める。認知度のモデルの構築には、ある結果を示す目的変数とその要因となる説明変数との関係を統計的手法により導き出す多変量解析の手法を用いる。具体的には、目的変数を“認知度”、説明変数を“規模”,“結節性”,及び“観光性”として、“認知度”と“規模”,“結節性”,及び“観光性”との関係を導出することにより認知度モデルを構築する。
【0010】
“規模”とは、その名称が示す地物の地域的広がり、その地域に出入りする人や物の移動量(流通量)、又はその地域が社会構造の中で果たす役割や位置づけ等を示す変数を意味する。具体的には、各名称の“規模”はその名称が示す地物が例えば図3(a)に示すような4つのカテゴリのうちのどのカテゴリに属するかを特定することにより定められる。図3(a)に示すカテゴリは、その名称が示す地物が既存の行政区画(都道府県市区郡町村等の階層)のいずれかに相当するか、相当する場合にはどの階層に属しているか、及びその名称が市を示す場合にはその市の人口がどの程度であるかによって4つに細分化されている。但し“規模”の定め方はこのような質的変数により定める方法に限定されることはなく、例えば名称が示す地物の面積や人口をそのまま採用する等して量的変数として定めてもよい。また後述する“規模”以外の説明変数についても同様に量的変数により定めてもよい。
【0011】
“結節性”とは、その名称が道路や鉄道等の交通網の節点としてどれだけ重要であるか、すなわち交通の要所(拠点)として機能しているかどうかを示す変数を意味する。各名称の“結節性”は、交通網として鉄道網と高速道路網を個別に考え、鉄道駅に対する結節性とインターチェンジに対する結節性を特定することにより定められる。すなわち、図3(b)や図3(c)に示すように、同名の駅やインターチェンジ(IC)が存在するか否かでカテゴリを分け、駅の場合にはその駅が乗継駅や終着駅のように主要駅であるか否かでさらにカテゴリを分け、その名称が属するカテゴリを特定することにより、各名称の“結節性”を定めることができる。
【0012】
“観光性”とは、名称の観光地としての知名度を示す変数を意味する。この観光性を端的に示し、且つ、客観性のある指標を見つけることは難しいが、例えば観光情報として一般に公表されている記事や文書,ホームページ内の記述や書籍,雑誌等の文献中にその名称が出現する度数を計数し、計数された値をその名称の“観光性”としてもよい。また地図データの中には各種POI(Point Of Interest:地図利用者の興味対象としての地点)のデータが登録されているので、遊興施設や名勝旧跡等の観光対象となり得る種類のPOIデータを抽出し、その名称が示す地域の中に抽出したPOIが何点含まれているかを計数し、計数された値が図3(d)に示すどのカテゴリに含まれるかを特定することにより、その名称の“観光性”を定めるようにしてもよい。
【0013】
以上のようにして、説明変数としての“規模”,“結節性”,及び“観光性”が定まると、質的変数の場合はそれぞれのカテゴリに相当するカテゴリ数量を、又は量的変数の場合にはその変数自身の値に偏回帰係数と呼ばれる係数を乗算した値を、説明変数毎にまとめて総和を計算し、計算値に定数項を加算することにより、目的変数である“認知度”の推測値を得ることができる。
【0014】
図4は“藤沢”を名称の例として図3(a)〜(d)に示した4つの説明変数の各カテゴリ数量からその認知度を計算した結果を示す。“藤沢”は人口38万人の“藤沢市”に相当し(カテゴリ数量4.25)、新湘南バイパスには“藤沢インターチェンジ”があり(カテゴリ数量2.78)、“藤沢駅”はJRと私鉄の乗継駅であり(カテゴリ数量8.80)、ある観光ガイドホームページには“藤沢”の見出しで登録されているスポットが13点ある(カテゴリ数量7.98)という基準で判断すれば、それぞれに定まるカテゴリのカテゴリ数量と定数項(この例では32.55)との総和をとり、“藤沢”の認知度の推測値は約56.36%ということになる。
【0015】
カテゴリ数量の値(説明変数が量的変数である場合は偏回帰係数の値)は任意に定めるものではなく、実際の調査によって得られる地名の認知度を反映する値でなければ意味がない。“アンケート調査を最もよく説明する認知度のモデルを構築すること”とは、結局、標本調査によって得られた認知度の実測値との誤差が最小となるような推測値を与える回帰方程式を求めことに他ならない。
【0016】
図5は、神奈川県内の48箇所の地名のそれぞれについて、その地名を知っているか否かを千葉県在中の運転者400人に質問した結果をまとめたものである。回帰方程式は、この実測された認知度とそれぞれの地名に対して定まる説明変数の値に基づいて、多変量解析の手法(説明変数が量的変数である場合は重回帰分析、説明変数が質的変数の場合には数量化I類分析)によって求めることができる。
【0017】
図4に示した各カテゴリの数量は図5に示す標本調査の結果から数量化1分析により求めたものである。図6は図5に示す各地名の認知度の推測値と実測値とを二次元分布の形で示したものである。推測値と実測値の重相関係数は0.833,説明率は69.3%となり、図4に示したモデルは図5の調査結果を比較的よく説明していると言える。また図7には千葉県内の38箇所の地名の認知度を神奈川県在住の運転者400人を対象として調べた結果を、図8にはその実測値を縦軸に、推測値を横軸にプロットした結果を示す。この推測値は図4のモデルをそのまま適用した計算した値であって、図5に示す神奈川県内の地名認知度を説明するために最適化されたものであるが、図8から明らかなように、千葉県内の地名認知度の実測値についても60%弱の説明率で説明できるモデルとなっている。このことから、図4に示すモデルは任意の地名に適用可能な一般性を備えていると言える。
【0018】
以下、上記のようにして求められた認知度に基づいて設定された地物の名称を地図画面上を重畳表示する本発明の第1乃至第3の実施形態となる地図情報表示装置の構成について説明する。なお、各名称の認知度については、上記モデルから導出されたものを予め装置内に記憶しておいてもよいし、各説明変数の値を各名称の属性として装置内に記憶しておき、必要に応じて各名称の認知度を算出するようにしてもよい。
【0019】
〔第1の実施形態〕
始めに、図1,図2を参照して、本発明の第1の実施形態となる地図情報表示装置の構成及びその動作について説明する。
【0020】
〔地図情報表示装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる地図情報表示装置1は、車両に搭載され、図1に示すように、GPS(Global Positioning System)アンテナ2と、車速センサ3と、ジャイロセンサ4と、操作スイッチ5と、ハードディスク装置6と、ディスプレイ装置7と、コントローラ8とを主な構成要素として備える。GPSアンテナ2は、GPS衛星から発信される電波を利用して車両の位置情報(経度,緯度)を取得し、取得した位置情報をコントローラ8に出力する。車速センサ3は、車両の速度情報を取得し、取得した速度情報をコントローラ8に出力する。ジャイロセンサ4は、車両の進行方向に関する情報を取得し、取得した進行方向に関する情報をコントローラ8に出力する。
【0021】
操作スイッチ5は、タッチパネル,ジョイスティック等の汎用の操作入力装置により構成され、入力された操作情報をコントローラ8に出力する。ハードディスク装置6は、地図描画に必要な道路,背景,名称データ,各名称の認知度のデータ等の情報を記憶する。ディスプレイ装置7は、CRTや液晶表示装置等の公知の表示装置により構成され、コントローラ8からの指示に従って地図画面等の各種情報を表示する。コントローラ8は、CPU,ROM,RAM等を備えるマイクロコンピュータ等の汎用又は専用の情報処理装置により構成され、CPUがROMに記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより地図情報表示装置1全体の動作を制御する。
【0022】
なおディスプレイ装置7には、図示しないカメラにより取得した車両周囲の映像,図示しないアンテナで受信したテレビ映像,図示しない通信機器によって情報センタから入手した例えば天気に関する情報等の地図画面以外の情報を表示することができる。これらの情報のうちどの情報をディスプレイ装置7に表示するかは、ユーザが操作スイッチ5を操作することで選択されるようになっている。
【0023】
〔地図情報表示処理〕
このような構成を有する地図情報表示装置1は、以下に示す表示処理を実行することにより、地図と名称の位置関係をユーザが容易に把握することを可能にする。以下図2に示すフローチャートを参照して、この表示処理を実行する際の地図情報表示装置1の動作について詳しく説明する。
【0024】
図2に示すフローチャートは、ユーザが図示しないキースイッチをACC(アクセサリー)位置又はIGN−ON(イグニッション・オン)位置へと操作し、地図情報表示装置1に主電源が入り、地図情報表示装置1が稼働状態になることで、起動し、表示処理はステップS1の処理に進む。
【0025】
ステップS1の処理では、コントローラ8が、操作スイッチ5により入力された表示中心位置の情報とジャイロセンサ4が取得した車両の進行方向に関する情報とを利用して、ディスプレイ装置7に表示する地図情報およびその表示方向を決定する。これにより、ステップS1の処理は完了し、表示処理はステップS2の処理に進む。
【0026】
ステップS2の処理では、コントローラ8が、ステップS1の処理結果と操作スイッチ5により入力された表示縮尺の情報を利用して、ディスプレイ装置7に表示する地図情報の範囲を決定する。これにより、ステップS2の処理は完了し、表示処理はステップS3の処理に進む。
【0027】
ステップS3の処理では、コントローラ8が、ステップS2の処理により決定した地図情報の表示範囲内に描画位置を有する名称のデータを表示候補名称のデータとしてハードディスク装置6から抽出し、内部のRAM内に一時記憶する。これにより、ステップS3の処理は完了し、表示処理はステップ4の処理に進む。
【0028】
ステップS4の処理では、コントローラ8が、ステップS3の処理により抽出された表示候補名称の数(候補名称数)が所定の上限値以上であるか否かを判別する。判別の結果、表示候補名称の数が所定の上限値以上でない場合、コントローラ8は表示処理をステップS6の処理に進める。一方、表示候補名称の数が所定の上限値以上である場合には、コントローラ8は表示処理をステップS5の処理に進める。
【0029】
ステップS5の処理では、コントローラ8が、ハードディスク装置6に記憶されている各名称の認知度データを参照して、認知度の低い名称のデータから順に所定の上限値を超過した数分だけ表示候補名称のデータをRAM内から削除することにより表示候補名称の数を所定の上限値以下にする。これにより、ステップS5の処理は完了し、表示処理はステップS6の処理に進む。
【0030】
ステップS6の処理では、コントローラ8が、ステップS2の処理により決定した範囲内の地図情報を地図画面としてディスプレイ装置7に表示すると共に、RAM内に記憶されている表示候補名称のデータを地図画面上に重畳表示する。これにより、ステップS6の処理は完了し、表示処理はステップS7の処理に進む。
【0031】
ステップS7の処理では、コントローラ8が、操作スイッチ5を操作することによりユーザがカメラ映像画面,テレビ画面,通信により入手した情報の表示画面等の地図画面以外の画面表示を指示したか否かを判別する。判別の結果、ユーザが地図画面以外の画面表示を指示していない場合、コントローラ8は表示処理をステップS1の処理に戻す。一方、ユーザが地図画面以外の画面表示を指示した場合には、コントローラ8は一連の表示処理を終了する。
【0032】
従来技術によれば、ユーザが設定した表示縮尺に対応して地図画面上に重畳表示される名称が図9に示すように行政区画の階層に基づいて決まっているために、地図画面上に重畳表示された名称とユーザが認知している名称とが一致しない可能性があった。このため従来技術によれば、地図画面を一瞥してもユーザが地図と名称の位置関係を把握できない可能性があった。
【0033】
これに対し本発明の第1の実施形態となる地図情報表示装置1では、コントローラ8が各名称の認知度に基づいて地図画面上に名称を重畳表示する。このような表示処理によれば、行政区画の階層に基づいて決定した名称ではなく、図10に示すようにユーザが認知している確率が高い名称が地図画面上に重畳表示される。
【0034】
従って、本発明の第1の実施形態となる地図情報表示装置1によれば、行政区画の階層に基づいて決定した名称が表示される場合と比較して、地図と名称の位置関係がユーザが認知しているものと一致する可能性が高くなり、ユーザは地図と名称の位置関係を容易に把握することができるようになる。
【0035】
また本発明の第1の実施形態となる地図情報表示装置1では、地図画面内に重畳表示される名称の数が所定の上限値以上である場合、コントローラ8が認知度の高い順に所定の上限値以下の数の名称を地図画面に重畳表示する。このような構成によれば、ユーザの認知度が高い名称が優先的に地図画面に重畳表示されるようになるので、ユーザは地図と名称の位置関係をより一層容易に把握することができるようになる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
次に、図11に示すフローチャートを参照して、表示処理を実行する際の本発明の第2の実施形態となる地図情報表示装置の動作について説明する。なお本発明の第2の実施形態となる地図情報表示装置の構成は、上記第1の実施形態となる地図情報表示装置と同じ構成を有するので、その説明は省略する。
【0037】
〔地図情報表示処理〕
図11に示すフローチャートは、ユーザが図示しないキースイッチをACC(アクセサリー)位置又はIGN−ON(イグニッション・オン)位置へと操作し、地図情報表示装置1に主電源が入り、地図情報表示装置1が稼働状態になることで、起動し、表示処理はステップS11の処理に進む。なおステップS11〜ステップS13の処理内容は上記ステップS1〜ステップS3の処理内容と同じであるので、以下ではその説明を省略し、ステップS14の処理から説明を始める。
【0038】
ステップS14の処理では、コントローラ8が、ステップS13により抽出された表示候補名称の中でディスプレイ装置7に表示した際に他の表示候補名称と重なって表示されるものがあるか否かを判別する。判別の結果、他の表示候補名称と重なって表示される表示候補名称がある場合、コントローラ14は表示処理をステップS15の処理に進める。一方、他の表示候補名称と重なって表示される表示候補名称がない場合には、コントローラ14は表示処理をステップS16の処理に進める。なおステップS16以後の処理は上記ステップS6以後の処理と同じであるので以下ではその説明を省略する。
【0039】
ステップS15の処理では、コントローラ8が、ハードディスク装置6に記憶されている各表示候補名称の認知度を参照して、重なって表示される表示候補名称の組み合わせの中から認知度が低い表示候補名称を特定し、特定した表示候補名称のデータをRAM内から削除する。これにより、ステップS15の処理は完了し、表示処理はステップS14の処理に戻る。
【0040】
本発明に係る地図情報表示装置では、名称データは従来技術のような行政区画に基づいて決定された階層構造を形成していない。従って名称データを表示した際には、図12に示すように市レベルと町レベルの名称が同一地点に描画される可能性がある。例えば、“横須賀”の描画位置が“横須賀市”の中心位置であり、“追浜”の描画位置が“追浜”の中心位置である場合において、“追浜”が“横須賀市”の中心位置である場合には“追浜”と“横須賀”が重なって描画されることになる。また都市部等、多くの名称が近接している場合においても、隣接している町の名称を描画しようとして重なってしまうことがある。さらには、地図画面が2次元表示ではなく鳥瞰図表示の場合にも名称が重なって表示されることがある。
【0041】
これに対して、本発明の第2の実施形態となる地図情報表示装置では、他の表示候補名称と重なって表示される表示候補名称がある場合、ハードディスクコントローラ8が、スク装置6に記憶されている各表示候補名称の認知度を参照して、重なって表示される表示候補名称の組み合わせの中から認知度が低い表示候補名称を特定し、特定した表示候補名称のデータをRAM内から削除する。
【0042】
従って、本発明の第2の実施形態となる地図情報表示装置によれば、第1の実施形態が有する効果に加え、名称が同一地点に描画され、名称が読みづらくなることを防止できるという効果が得られる。
【0043】
〔第3の実施形態〕
次に、図14に示すフローチャートを参照して、表示処理を実行する際の本発明の第3の実施形態となる地図情報表示装置の動作について説明する。なお本発明の第3の実施形態となる地図情報表示装置の構成は、上記第1の実施形態となる地図情報表示装置と同じ構成を有するので、その説明は省略する。
【0044】
〔地図情報表示処理〕
図14に示すフローチャートは、ユーザが図示しないキースイッチをACC(アクセサリー)位置又はIGN−ON(イグニッション・オン)位置へと操作し、地図情報表示装置1に主電源が入り、地図情報表示装置1が稼働状態になることで、起動し、表示処理はステップS21の処理に進む。
【0045】
ステップS21の処理では、コントローラ8が、操作スイッチ5により入力された表示中心位置の情報とジャイロセンサ4が取得した車両の進行方向に関する情報とを利用して、ディスプレイ装置7に表示する地図情報及びその表示方向を決定する。これにより、ステップS21の処理は完了し、表示処理はステップS22の処理に進む。
【0046】
ステップS22の処理では、コントローラ8が、操作スイッチ5により入力された表示縮尺の情報に従ってディスプレイ装置7に表示する地図情報の表示縮尺を決定する。これにより、ステップS22の処理は完了し、表示処理はステップS23の処理に進む。
【0047】
ステップS23の処理では、コントローラ8が、ステップS21及びステップS22の処理により決定した内容に従ってディスプレイ装置7に表示する地図情報の範囲を決定する。これにより、ステップS23の処理は完了し、表示処理はステップS24の処理に進む。
【0048】
ステップS24の処理では、コントローラ8が、ステップS23の処理により決定した地図情報の表示範囲内に描画位置を有する名称のデータをハードディスク装置6内から読み出し、読み出された名称のデータの内部のRAM内に記憶する。これにより、ステップS24の処理は完了し、表示処理はステップS25の処理に進む。
【0049】
ステップS25の処理では、コントローラ8が、ステップS24の処理により読み出された名称が示す地域の広さがステップS22の処理により決定した表示縮尺に応じて予め設定された広さの適正値(縮尺別適正値)より狭いか否かを判別する。判別の結果、名称が示す地域の広さが縮尺別適性値より狭い場合、コントローラ25は、ステップS26の処理としてその名称のデータを表示候補名称としてRAM内に記憶した後、表示処理をステップS27の処理に進める。一方、名称が示す地域の広さが縮尺別適正値より広い場合には、コントローラ25はステップS26の処理を経由せずに表示処理を直接ステップS27の処理に進める。
【0050】
ステップS27の処理では、コントローラ8が、RAM内にステップ25の処理を行っていない名称のデータがあるか否かを判別する。判別の結果、ステップS25の処理を行っていない名称のデータがある場合、コントローラ8は表示処理をステップS25の処理に進める。一方、ステップS25の処理を行っていない名称のデータがない場合には、コントローラ8は表示処理をステップS28の処理に進める。なおステップS28以後の処理は上記ステップS4以後の処理と同じであるので以下ではその説明を省略する。
【0051】
図15は、表示縮尺に応じて広い範囲を示す地名が表示対象から外れる様子を模式的に示す図である。この図では、各地名のおおよその広さを円で近似し、その円の直径の大きさで換算した値を縦軸にとっているが、各地名の広さの決め方はこれに限るものではない。また縮尺毎の広さの適正値としては、ここでは一画面に表示された地図の範囲よりも少し小さめの値を設定している。
【0052】
すなわち、表示縮尺が1kmの場合、表示される地図が横10km縦6km位の範囲だとすれば、その範囲内に完全に収まる広さとして直径5kmの円を想定し、それを超える広さの地名は表示しない。画面範囲よりも広い範囲の地名を例えば“相模原”というふうに地図上に表示しても画面全体がその“相模原”の範囲内であれば、文字の表示位置に意味はなく、画面内での地物の位置関係を把握する上ではかえって不要な情報となるからである。
【0053】
図15の横軸には、認知度の推定値をとっている。縮尺によって広さの上限値で絞り込まれた地名は、さらに認知度の高いものから(図15では右に位置するものから)優先して表示される。例えば表示候補が多すぎるために、“厚木”と“座間”のどちらかを削らなければならない時、4kmスケールでは“厚木”を優先して“座間”は表示されない。しかし、1kmスケールであれば“厚木”はそもそも表示対象外になってしまうため、“座間”が表示されることになる。このようにして単に認知度の観点から名称の表示/非表示を定めるだけではなく、限られた画面内で地理を把握するために必要な情報を考慮した表示制御がなされることになる。またここでは特に“地点”を示す名称について述べていないが、地点名称についても地域名称と同様に認知度を定め、但し広さについてはほぼ0に近いものとして扱うことによって、広域縮尺では地域表示優先で地点はごく認知度が高いものだけが表示されるのに留まり、詳細縮尺になる毎に地域の表示が抑えられ地点表示が増えてくるといった表示制御も実現することができる。
【0054】
従って、本発明の第3の実施形態となる地図情報表示装置によれば、第1の実施形態が有する効果に加え、表示縮尺と表示される地図の範囲に応じた適切な名称を過不足なく表示することができ、ユーザは地図と名称の位置関係をより一層容易に把握することができるという効果が得られる。
【0055】
〔第4及び第5の実施形態〕
以下、“距離”を説明変数として加えた認知度に基づいて設定された名称を地図画面に重畳表示する本発明の第4及び第5の実施形態を説明する。
【0056】
〔距離〕
まず最初に第4及び第5の実施形態で扱う“距離”について説明する。
【0057】
上記実施形態では、認知度モデルは、広く一般ユーザに対する認知度モデルとして定めたが、個々のユーザにとっての各地名に対する認知度は各ユーザの様々な要因によって異なる。そこでよりユーザ個人に適用した認知度を再現するために、先に述べた“規模”,“結節性”,及び“観光性”といった個々の名称が有する属性を表す説明変数だけでなく、ユーザと各名称が示す地物との関係性を表す説明変数をさらに加えて認知度モデルを構築する。個々のユーザと各名称が示す地物との関係を表す説明変数としては“距離”が挙げられる。本発明では“距離”とは、ユーザの居住地やよく訪れる場所等の個々のユーザが基点とする地点から、その名称が示す地物の位置までの直線距離、又は経路距離,移動費用,到達所要時間や、住所や学区等の地名が階層化された分類に属する時の階層上の距離といった、ユーザにとっての各名称に対する“身近さ”を示す変数を意味する。
【0058】
図16(a),(b)に“距離”を表す質的変数の2つの例を示す。図16(a)に示す例は基点と地名との直線距離を4つのカテゴリによって表現したものであり、図16(b)に示す例は住所階層上の階層距離を“同一市区町村内である”,“同一都道府県内である”,及び“同一都道府県外である”の3つのカテゴリで表現したものである。距離の説明変数の定め方はこれに限定されることはなく、例えばユーザが基点とする地点から地名が示す地域までの直線ではなく経路に沿った距離や、移動に要する費用、到達所要時間をそのまま説明変数として採用する等して、量的変数により定めるようにしても良い。またそれぞれの説明変数を単独、又は組み合わせて利用するようにしてもよい。
【0059】
“距離”を定めるためには、各ユーザの基点となる地点の情報が必要となる。基点とは、ユーザにとって身近な地点のことを意味し、具体的にはユーザの居住地又はユーザがよく訪れる場所として意図的に登録した地点を意味する。ユーザが登録した地点が複数ある場合、各名称は登録されている地点の数だけ説明変数を有することになる。しかしながら、“距離”という説明変数の考え方はその地名の身近さを表すものであり、身近な地点である基点からの距離がその数量を表すので、説明変数が複数存在する場合には、その中で名称が示す地物から最も近い地点の説明変数をその名称の“距離”の説明変数として定義する。
【0060】
図17は“藤沢”を名称の例として図3(a)〜(d)に示した4つの説明変数と図16(a),(b)に示した説明変数の各カテゴリ数量からその認知度を計算した結果を示す。“藤沢”は人口38万人の“藤沢市”に相当し(カテゴリ数量3.4)、新湘南バイパスには“藤沢インターチェンジ”があり(カテゴリ数量2.2)、“藤沢駅”はJRと私鉄の乗継駅であり(カテゴリ数量7.1)、ある観光ガイドホームページには“藤沢”の見出しで登録されているスポットが13点あり(カテゴリ数量6.3)、ユーザの基点である“追浜”と“藤沢”間の直線距離は10〜15kmの範囲内にあり(カテゴリ数量−5.4)、ユーザの基点である“追浜”と“藤沢”の階層上の距離が同一都道府県内である(カテゴリ数量2.1)という基準で判断すれば、それぞれに定まるカテゴリのカテゴリ数量と定数項(この例では45.4)との総和をとり、“藤沢”の認知度の推測値は約61.1%ということになる。
【0061】
以下、“距離”を説明変数として加えた認知度に基づいて設定された名称を地図画面上に重畳表示する本発明の第4の実施形態について説明する。
【0062】
〔第4の実施形態〕
始めに、図18に示すフローチャートを参照して、地図情報表示処理を実行する際の本発明の第4の実施形態となる地図情報表示装置の動作について説明する。なお本発明の第4の実施形態となる地図情報表示装置の構成は、説明変数としての“距離”を算出できるようにユーザの基点の情報としてユーザの自宅位置,及びユーザがよく訪れる地点の情報がハードディスク装置6に記憶されている点以外は上記第1の実施形態となる地図情報表示装置と同じ構成を有するので、その説明は省略する。
【0063】
〔地図情報表示処理〕
図18に示すフローチャートは、ユーザが図示しないキースイッチをACC(アクセサリー)位置又はIGN−ON(イグニッション・オン)位置へと操作し、地図情報表示装置1に主電源が入り、地図情報表示装置1が稼働状態になることで、起動し、表示処理はステップS41の処理に進む。なおステップS41〜ステップS44の処理内容は上記ステップS1〜ステップS4の処理内容と同じであるので、以下ではその説明を省略し、ステップS45の処理から説明を始める。ステップS45の処理は、ステップS43の処理において抽出された表示候補名称の数が所定の上限値以上である場合に開始される。
【0064】
ステップS45の処理では、コントローラ8が、ユーザの自宅位置,及びユーザがよく訪れる地点のデータが登録地点データとしてハードディスク装置6に記憶されているか否かを判別する。判別の結果、登録地点データが記憶されていない場合、コントローラ8は表示処理をステップS46の処理に進める。一方、登録地点データが記憶されている場合には、コントローラ8は表示処理をステップS47の処理に進める。
【0065】
ステップS46の処理では、コントローラ8が、説明変数としての“距離”を算出できないと判断し、“規模”,“結節性”,及び“観光性”を説明変数としてRAM内に記憶されている各表示候補名称の認知度を算出する。これにより、ステップS46の処理は完了し、表示処理はステップS49の処理に進む。
【0066】
ステップS47の処理では、コントローラ8が、登録地点データをユーザの基点データとして利用して説明変数である“距離”を算出する。これにより、ステップS47の処理は完了し、表示処理はステップS48の処理に進む。
【0067】
ステップS48の処理では、コントローラ8が、“規模”,“結節性”,“観光性”,及びステップS47の処理により算出された“距離”を説明変数としてRAM内に記憶されている各表示候補名称の認知度を算出する。これにより、ステップS48の処理は完了し、表示処理はステップS49の処理に進む。
【0068】
ステップS49の処理では、コントローラ8が、ステップS46又はステップS48の処理により算出された認知度のデータを参照して、認知度の低い名称のデータから順に所定の上限値を超過した数分だけ表示候補名称のデータをRAM内から削除することにより表示候補名称の数を所定の上限値以下にする。これにより、ステップS49の処理は完了し、表示処理はステップS50の処理に進む。なおステップS50,S51の処理内容は、上記ステップS6,7の処理内容と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0069】
以上の説明から明らかなように、本発明の第4の実施形態となる地図情報表示装置によれば、各名称の認知度は、名称が示す地物の規模,結節性,及び観光性と、名称が示す地物とユーザの関係性を示す属性によって定められる名称が示す地物の距離要因により定義されるので、第1の実施形態の有する効果に加えて、各ユーザの状況に考慮して名称を地図画面上に重畳表示することができる。
【0070】
〔第5の実施形態〕
次に、図19に示すフローチャートを参照して、地図情報表示処理を実行する際の本発明の第5の実施形態となる地図情報表示装置の動作について説明する。上述した第4の実施形態では、ユーザにとって身近な基点の情報として、ユーザの自宅位置やユーザがよく訪れる地点等、ユーザが自発的に登録操作を行った地点を用いたが、この第5の実施形態においては、車両の停止時に、停止された地点や時間等が停車履歴として記憶されるものとし、この記憶された停車地点を用いて“距離”を算出するものとする。なお本発明の第5の実施形態となる地図情報表示装置の構成は、停車地点の位置データ,停車回数,及び最終停車日時等の走行履歴情報がハードディスク装置6に記憶されている点以外は上記第1の実施形態となる地図情報表示装置と同じ構成を有するので、その説明は省略する。
【0071】
〔地図情報表示処理〕
図19に示すフローチャートは、ユーザが図示しないキースイッチをACC(アクセサリー)位置又はIGN−ON(イグニッション・オン)位置へと操作し、地図情報表示装置1に主電源が入り、地図情報表示装置1が稼働状態になることで、起動し、表示処理はステップS61の処理に進む。
【0072】
ステップS61の処理では、コントローラ8が、ハードディスク装置6に記憶されている走行履歴情報を参照して、ユーザが以前に停車した地点の中で最終停車日時からの経過時間が所定時間以上の地点があるか否かを判別する。判別の結果、最終停車日時からの経過時間が所定時間以上の地点がある場合、コントローラ8は表示処理をステップS62の処理に進める。一方、最終停車日時からの経過時間が所定時間以上の地点がない場合には、コントローラ8は表示処理をステップS63の処理に進める。
【0073】
ステップS62の処理では、コントローラ8が、ハードディスク装置6に記憶されている最終停車日時からの経過時間が所定時間以上の地点の停車回数をその地点をユーザの基点と判定する判定用閾値から1減数した値に設定する。このような処理によれば、最後に停車してから長い時間が経過したためにユーザが忘れている、又は停車した記憶が薄れている地点が以後の処理において説明変数としての“距離”を算出する基点のデータとして用いられることを防止できる。これにより、ステップS62の処理は完了し、表示処理はステップS63の処理に進む。
【0074】
ステップS63の処理では、コントローラ8が、車両が現在の位置に所定時間以上停車していたか否かを判別する。判別の結果、所定時間以上停車している場合、コントローラ8は表示処理をステップS64の処理に進める。一方、所定時間以上停車していない場合には、コントローラ8は表示処理をステップS65の処理に進める。
【0075】
ステップS64の処理では、コントローラ8が、ハードディスク装置6に記憶されている車両の現在位置の停車回数の値を1増数する。このような処理によれば、停車時間が短く、停車した地点とその周囲に対するユーザの身近さが高くない地点が以後の処理において説明変数としての“距離”を算出する基点のデータとして用いられることを防止できる。これにより、ステップS64の処理は完了し、表示処理はステップS65の処理に進む。
【0076】
ステップS65の処理では、コントローラ8が、操作スイッチ5により入力された表示中心位置の情報とジャイロセンサ4が取得した車両の進行方向に関する情報とを利用して、ディスプレイ装置7に表示する地図情報およびその表示方向を決定する。これにより、ステップS65の処理は完了し、表示処理はステップS66の処理に進む。
【0077】
ステップS66の処理では、コントローラ8が、ステップS65の処理結果と操作スイッチ5により入力された表示縮尺の情報を利用して、ディスプレイ装置7に表示する地図情報の範囲を決定する。これにより、ステップS66の処理は完了し、表示処理はステップS67の処理に進む。
【0078】
ステップS67の処理では、コントローラ8が、ステップS66の処理により決定した地図情報の表示範囲内において文字列として描画すべき名称のデータを表示候補名称のデータとしてハードディスク装置6から抽出し、内部のRAM内に一時記憶する。これにより、ステップS67の処理は完了し、表示処理はステップ68の処理に進む。
【0079】
ステップS68の処理では、コントローラ8が、ステップS67の処理により抽出された表示候補名称の数(候補名称数)が所定の上限値以上であるか否かを判別する。判別の結果、表示候補名称の数が所定の上限値以上でない場合、コントローラ8は表示処理をステップS73の処理に進める。一方、表示候補名称の数が所定の上限値以上である場合には、コントローラ8は表示処理をステップS69の処理に進める。
【0080】
ステップS69の処理では、コントローラ8が、ハードディスク装置6内に記憶されている走行履歴情報を参照して、停車回数が判定用閾値以上である地点のデータを説明変数としての“距離”を算出する基点のデータとして抽出する。これにより、ステップS69の処理は完了し、表示処理はステップS70の処理に進む。
【0081】
ステップS70の処理では、コントローラ8が、各基点の停車回数と最終停車日時を参照して、ステップS69の処理により抽出された各基点の優先度を決定する。具体的には、コントローラ70は、停車回数が多く、最終停車日時からの経過時間が短い基点から順に高い優先度を付与する。次にコントローラ8は、基点と名称が示す地物との間の距離のカテゴリ数量に決定した優先度に応じて重み付けを行い、重み付けをした後のカテゴリ数量に従って各基点の評価値を算出する。そしてコントローラ8は評価値が最も高い基点のデータを利用して説明変数としての“距離”を算出する。
【0082】
また認知度を求めようとする地名の位置から最も近くにある地点を基点として決定し、この基点に基づいて説明変数としての“距離”(例えば図16(a)に示すカテゴリ)を決定するようにしてもよい。先に説明したように“距離”という説明変数は、個々のユーザにとっての身近さを示すものであり、特に身近な代表地点として基点が定められた場合に、そこからの距離を目安としようという考え方に従っている。従って、近くに一つでも基点が存在するようであれば、その場所もユーザにとって身近なものであると考えられ、複数の基点の中で最も近くにある基点を距離の算出根拠とすることにしてもよい。ステップS70の処理は完了し、表示処理はステップS71の処理に進む。
【0083】
ステップS71の処理では、コントローラ8が、“規模”,“結節性”,“観光性”,及び“距離”を説明変数としてRAM内に記憶されている各表示候補名称の認知度を算出する。これにより、ステップS71の処理は完了し、表示処理はステップS72の処理に進む。なおステップS72乃至ステップS74の処理内容は上記ステップS49乃至ステップS51の処理内容と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0084】
以上の説明から明らかなように、本発明の第5の実施形態となる地図情報表示処理によれば、コントローラ8は車両の停車履歴に基づいて自動的に登録された地点のデータを説明変数である“距離”を算出する際の基点のデータとして用いるので、第1の実施形態の有する効果に加えて、ユーザが基点のデータを登録しなくても、認知度の高く、且つ、各ユーザの感覚にあった名称が表示されるようになる効果が得られる。
【0085】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態となる地図情報表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となる地図情報表示処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】本発明における“認知度”を定義する説明変数の一例を示す図である。
【図4】“藤沢”を名称の例として図3に示す説明変数の各カテゴリ数量からその認知度を計算した結果を示す。
【図5】神奈川県内の48箇所の地名のそれぞれについてその地名を知っているか否かを千葉県在中の運転者400人に質問した結果を示す図である。
【図6】図5に示す各地名の認知度の推測値と実測値とを二次元分布の形で示した図である
【図7】千葉県内の38箇所の地名の認知度を神奈川県在住の運転者400人を対象として調べた結果を示す図である。
【図8】図7の実測値を縦軸に推測値を横軸にプロットした結果を示す図である。
【図9】従来技術により地図画面表示例を示す図である。
【図10】図2に示す地図情報表示処理による地図画面表示例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態となる地図情報表示処理の流れを示すフローチャート図である。
【図12】図2に示す地図情報表示処理による地図画面表示例を示す図である。
【図13】図11に示す地図情報表示処理による地図画面表示例を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施形態となる地図情報表示処理の流れを示すフローチャート図である。
【図15】表示縮尺に応じて広い範囲を示す地名が表示対象から外れる様子を模式的に示した図である。
【図16】“距離”を表す質的変数の一例を示す図である。
【図17】“藤沢”を名称の例として図3と図16に示す説明変数の各カテゴリ数量からその認知度を計算した結果を示す。
【図18】本発明の第4の実施形態となる地図情報表示処理の流れを示すフローチャート図である。
【図19】本発明の第5の実施形態となる地図情報表示処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0087】
1:地図情報表示装置
2:GPSアンテナ
3:車速センサ
4:ジャイロセンサ
5:操作スイッチ
6:ハードディスク装置
7:ディスプレイ装置
8:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
認知度に基づき設定された地物の名称情報を記憶する名称情報記憶手段と、
前記地図情報記憶手段に記憶された地図情報に基づいて、地図画面を作成する地図画面作成手段と、
前記名称情報記憶手段に記憶された名称情報の中から、前記地図画面に含まれる地物の名称情報を抽出する名称情報抽出手段と、
前記地図画面作成手段により作成された地図画面と、前記名称情報抽出手段により抽出された名称情報とを表示する表示手段と
を備えることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図情報表示装置において、
前記名称情報抽出手段は、
前記名称情報記憶手段に記憶された名称情報の中から、前記地図画面に含まれる地物の名称情報を名称情報候補として抽出する名称情報候補抽出手段と、
前記名称情報候補抽出手段により抽出された名称情報候補の中から、所定の条件に基づいて、前記名称情報を選択する名称情報選択手段と
を備えることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の地図情報表示装置において、前記名称情報選択手段は、前記名称情報記憶手段に記憶されている認知度の高い順に所定数の名称情報を前記名称情報候補の中から選択することを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地図情報表示装置において、前記名称情報選択手段は、前記名称情報抽出手段により抽出された名称情報候補の数が所定数以上である場合、認知度の高い順に所定数の名称情報を前記名称情報候補の中から選択することを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の地図情報表示装置において、前記名称情報選択手段は、前記名称情報候補抽出手段により抽出された名称情報候補の表示手段上における表示位置が重なる場合には、前記認知度が高い名称情報を選択することを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のうち、いずれか1項に記載の地図情報表示装置において、前記名称情報記憶手段は前記名称が示す地物の広さ情報を記憶し、前記名称情報選択手段は、前記地図画面の表示縮尺に応じて予め設定された広さの適正値未満の広さを有する地物の名称情報候補がある場合、当該名称情報候補を名称情報として選択することを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1項に記載の地図情報表示装置において、
各名称の認知度は、
名称情報が示す地物の階層レベル,人口,面積,物資の流通量,又はこれらの組み合わせによって定められる名称情報が示す地物の規模と、
名称情報に対応する交通網上の拠点の有無、当該交通網上の拠点が存在する場合はその拠点の属性によって定められる名称が示す地物の結節性と、
名称情報が文献内に記載、又は引用,参照される度数によって定められる名称が示す地物の観光性と
の少なくともいずれか1つ以上により定義されていることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の地図情報表示装置において、各名称情報の認知度は、全ての名称情報の中から選択された名称情報が示す地物の規模,結節性,及び観光性を説明変数、標本調査によって得られた名称情報の認知度を目的変数として定義し、多変量解析手法により説明変数と目的変数の間の関係式を導出し、導出された関係式に各名称情報が示す地物の規模,結節性,及び観光性を説明変数として代入することにより得られた推測値であることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の地図情報表示装置において、各名称情報の認知度は、名称情報が示す地物の規模,結節性,及び観光性と、名称が示す地物とユーザの関係性を示す属性によって定められる名称情報が示す地物の距離により定義されることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の地図情報表示装置において、前記距離は、前記ユーザが登録した地点と名称情報が示す地域の代表点との間の距離により定められることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項11】
請求項9に記載の地図情報表示装置において、前記距離は、前記ユーザが登録した地点と前記名称情報が示す地域の代表点との間の直線距離,経路に沿った距離,移動費用,到達所要時間,及び前記ユーザが登録した地点と前記名称が示す地域の代表点をそれぞれ含む地名の階層上の距離のうちのいずれか一つ又はこれらの組み合わせによって定められることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の地図情報表示装置において、前記ユーザが登録した地点が複数存在する場合、前記距離は、所定の方法により複数の登録地点の中から抽出された1つの登録地点に基づいて定められることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12のうち、いずれか1項に記載の地図情報表示装置において、前記地点は車両の停車履歴に基づいて自動的に登録されることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の地図情報表示装置において、前記地点は車両が最後に停車した時刻からの経過時間に基づき自動的に登録されることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項15】
請求項13に記載の地図情報表示装置において、前記地点は車両が停止した時間に基づき自動的に登録されることを特徴とする地図情報表示装置。
【請求項16】
道路情報を含む地図情報に基づいて地図画面を作成するステップと、
前記地図画面内に含まれると共に、認知度に基づき設定された地物の名称情報を抽出するステップと、
前記地図画面と前記名称情報とを表示するステップと
を有することを特徴とする地図情報表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−25650(P2009−25650A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189911(P2007−189911)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】