地図描画装置及びプログラム
【課題】地図描画を行う際に本来利用すべきデータの一部が取得できていない場合において、取得できていない情報の位置に対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供する。
【解決手段】地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から受信した地図データにおいて、一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、利用者が現在移動中の道路と同一名称の同一道路を保持している地図データから抽出し、地図データ管理装置1301から地図データが受信できていない未取得メッシュが介在し現在移動中の道路と同一道路とが分断された状態の地図が表示される場合に、現在移動中の道路と同一道路とを対応付けることにより、現在移動中の道路と同一名称の道路が他の場所に存在することを利用者に情報提供することができる。
【解決手段】地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から受信した地図データにおいて、一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、利用者が現在移動中の道路と同一名称の同一道路を保持している地図データから抽出し、地図データ管理装置1301から地図データが受信できていない未取得メッシュが介在し現在移動中の道路と同一道路とが分断された状態の地図が表示される場合に、現在移動中の道路と同一道路とを対応付けることにより、現在移動中の道路と同一名称の道路が他の場所に存在することを利用者に情報提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを受信し、受信した地図データを用いて地図を描画する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術・無線通信技術の発展に伴いパーソナルコンピュータ、携帯型個人情報端末(以下PDA(Personal Digital Assistant)(登録商標))、携帯電話、カーナビゲーションシステムなどネットワークに接続可能な情報通信処理装置の普及が進んでいる。
特に近年、GPS(Global Positioning System)や各種センサー技術の発展・普及により、情報通信処理装置が現在存在する位置やその周辺の情報を情報通信処理装置の表示装置上に地図に重畳させて利用者に提供するサービスが増えてきている。
例えば、カーナビゲーションシステムでは、カーナビゲーションシステムの端末装置が実装されている自動車の位置をGPSシステムから取得し、自動車の現在位置等を地図上に重畳させ表示し、目的地までの経路案内や、現在位置周辺のレストランやホテル等の施設検索サービスを提供している。同様に、PDA(登録商標)や携帯電話でも同様のサービスが展開されている。
【0003】
従来では、カーナビゲーションシステムは描画する地図に関するデータ(以下地図データ)は端末装置が保持する例えばHDD(Hard Disk Drive)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)といった大容量記憶装置に全て格納し、必要に応じて必要な地図データを端末装置が大容量記憶装置から取得し、処理を行っていた。
しかし、端末装置の大容量記憶装置に存在する地図データを利用しているため、例えば新設道路が開設された、従来あった道路が廃道となった、コンビニエンスストアが新規開店した等の、少なくともその地図データが作成された日時以降に発生した地図を変更する要因が反映されていない。そのため、そのままの地図データを長く使い続けていると、実際の状況とは異なる地図を表示する、実際には存在しない経路を案内するなどといったシステムとしての問題が発生することになる。
そのため、カーナビゲーションシステムを提供する企業は定期的にカーナビゲーションシステムの端末装置利用者に対して、地図データの更新サービスを提供し、上記問題を解決することが多い。
しかし、従来の更新サービスは、更新サービスを受けるためには一時的に端末装置内のHDDをサービス提供側に預けるといった手間や、更新データを購入し、利用者が更新作業を行う必要があるという課題がある。
また、更新データを提供する間隔が半年に一回、もしくは一年に一回である場合が多く、その間に発生した変更には対応することができないと言う課題がある。
【0004】
そこで、最近ではネットワークに接続可能であるという利点を生かし、端末装置がネットワーク経由で地図データを管理している地図サーバにアクセスし、地図の更新データを取得可能とするための研究が進められており、一部サービス展開も始まっている。
この方法はネットワーク経由で地図データを更新できるため、利用者はHDDをサービス提供側に預けたり、更新データを購入するため店舗の出向いたりといった必要がなくなり、いつでも最新の地図データに更新することが出来るという利点がある。
【0005】
それ以外の解決方法として、端末装置側には地図データを記憶せず、端末装置が処理に必要な地図データのみをネットワーク経由で取得し、カーナビゲーションシステムを実現する方法も研究されている。この方法は端末装置に大容量記憶装置を実装する必要がないため、端末装置を安価に提供可能であり、地図データ側も各端末装置に差分更新データを提供する機能が不要であり、地図サーバ内で管理する地図データが最新であればよい。
しかし、端末装置が地図データを常時保持していないため、ネットワークに接続できない場合には地図データが取得できず、システムとして機能しなくなる課題が残されている。
ネットワークに接続できなくなる要因としては、ネットワークに接続する装置として携帯電話などの電力を電池に頼っている通信装置を利用している場合には電池不足によって接続ができない、ネットワークインフラが基地局を設置していない地域では接続ができない、ネットワークインフラ自体の障害で接続ができないなどが考えられ、決して無視できる程度の問題ではない。
【0006】
ネットワークに接続できなくなった場合、接続できなくなる以前までに取得できた地図データのみで端末装置は処理を行う必要があるが、地図データが取得できなかった領域を処理、特に画面表示装置に地図として描画しなければならない場合が発生すると、処理が出来なくなる問題があり、従来ではその領域にはシステム利用者がその領域の地図データが未取得であることを認識できる様に実取得領域に描画する地図と間違えにくい画像や警告文などを描画する等していた。
【0007】
図28は未取得メッシュデータに対応する領域を表示装置で表示した場合の一例である。
表示装置上にある領域の地図を描画している状況において、描画領域で対応する地図データが取得完了している領域はその情報を元に描画データを生成し、地図801を表示し、線情報を元に道路802を描画する。その他に点情報を元に道路名、交差点名などの属性情報を表示しても構わない。
次に地図データ取得が完了していない領域が描画領域に存在する場合、従来技術ではその領域の地図を描画することができない。その場合には、未取得領域に対応する描画領域803には何も描画処理を行わない、一定色による塗りつぶしを行う、特定パターンの画像を敷き詰める、地図データが取得できていないメッセージ804を描画する等の代替描画処理を行っていた。
【0008】
しかし、このような描画方法では、利用者には未取得領域の地図を全く知ることができなくなってしまい、利便性を損なう課題が残っている。
【0009】
このような課題を解決するために、様々な解決方法が検討されている。
1つは端末装置が保持している地図データ以外のデータを利用して地図データが未取得の領域の地図を表示する技術がある。
例えば特許文献1では、端末装置がある目的地までの経路案内を行っている際に、案内経路が、道路データが存在しない経路を通過する場合、その経路上には道路があるものとして描画が可能となる。
また特許文献2では、端末装置に保存される前記走行軌跡情報を利用し、道路データが存在しない領域で走行軌跡情報がある場合には、その走行軌跡情報を道路データとして利用して、道路描画が可能となる。
【0010】
また、地図データが取得完了していない領域に対応するデータが、一部は取得できている場合にそのデータを利用して取得完了していない領域の地図表示を行う技術がある。
例えば特許文献3では、描画指定された地域の部分拡大地図情報が存在しない場合で、表示指定されている縮尺とは異なる縮尺に対応する地図情報が取得できている場合には、その縮尺の異なる地図情報を利用して地図データが取得できていない領域の地図描画を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2002−350167号公報
【特許文献2】特開平05−274592号公報
【特許文献3】特開平10−293534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしこれらの方法では、本来利用すべきデータが取得できていない領域に対応する代替情報が取得されていない場合においては、問題に対処することができない。
具体的には、特許文献1では案内経路上を道路として表示できたとしても、途中利用者がその経路を外れた場合、もしくは経路案内を行っていない場合には、その先の補間表示を行うことができないという課題がある。
また、特許文献2では、前回走行軌跡情報がない領域の場合には、道路を補間表示することが出来ないという課題がある。
また、特許文献3では、異なる縮尺の地図データがない領域に対しては補間表示ができないという課題がある。
【0012】
本発明は、こうした課題を鑑みなされたものであり、地図描画を行う際に本来利用すべきデータの一部が取得できていない場合において、取得できていない情報の位置に対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供することを主な目的とする。
また、適用するシステムはカーナビゲーションシステムに限定せず、携帯電話やPDA(登録商標)等を代表とするその他の情報処理装置であっても構わなく、また適用分野も自動車に限定せず船舶・歩行者・アスリート・公共交通システム・宇宙設備など他分野であっても構わない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る地図描画装置は、
道路の表示が含まれる地図データをメッシュ単位で管理する地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画する地図描画装置であって、
前記地図データ管理装置から送信されるべき地図データのうちの少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、地図描画装置が保持している保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出する道路抽出部と、
前記特定の道路と前記道路抽出部により抽出された関連道路とを表示する地図を描画する地図描画部と、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に前記地図データ管理装置から地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画部が描画できない場合に、前記特定の道路と前記関連道路とを関連付ける通知情報を生成する通知情報生成部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、特定の道路に関連する関連道路を保持地図データから抽出し、欠落メッシュが介在し特定の道路と関連道路とが分断された状態の地図が表示される場合でも、特定の道路と関連道路とを対応付けることにより、特定の道路に関連する関連道路が他の場所に存在することを利用者に情報提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1〜6では、地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画する地図描画装置について説明する。
より具体的には、一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、地図描画装置が保持する保持地図データ(地図データ管理装置から新たに受信できた地図データ、以前より保持している地図データの双方を含む)を解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路(車両が現在走行中の道路等)に関連する道路(同一名称の道路等)を保持地図データから抽出し、特定の道路と抽出された関連道路とを表示するととともに、地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して、特定の道路と関連道路とを接続した状態を示す地図を描画できない場合に、特定の道路と関連道路とを関連付けてユーザに通知する地図描画装置について説明する。
また、実施の形態7では、地図データの管理方法、地図データの送受信シーケンス、地図の描画方法等の、実施の形態1〜6で説明する地図描画装置の動作の前提となる事項を説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1〜6に示す地図描画装置及び地図データ管理装置が含まれる地図描画システムの概略ブロック図である。
地図描画システムは地図データを元に地図を出力する地図描画装置1201と、地図データを管理する地図データ管理装置1301で構成される。
地図描画装置1201と地図データ管理装置1301の間はネットワークで接続可能であり、そのネットワークはどのような方式であっても構わず、実施の形態1〜6では、携帯電話や無線LAN(Local Area Network)等といった無線方式の通信を実現可能なネットワークを想定している。
しかし、有線方式のみをサポートするネットワークであっても構わない。
【0017】
図1では地図描画装置1201および地図データ管理装置1301は各1台で表記されているが、台数は各1台である必要はなく、それぞれが複数台存在していても構わない。また負荷分散などの目的で地図データ管理装置1301を複数のサーバで構成し、仮想的に一台のサーバとしてネットワーク上には公開する仮想サーバとしても構わない。
【0018】
地図データ管理装置1301は、地図データをメッシュ単位で管理し、メッシュごとの地図データが記憶装置に格納されており、地図描画装置1201からの要求に基づき、メッシュごとに地図データを検索可能であり、メッシュごとに地図データを地図描画装置1201に送信可能である。
【0019】
地図描画装置1201は、例えば、移動体に配置されている。より具体的には、例えば、車両に搭載されていたり、ユーザに所持、装着されている。
地図描画装置1201は、少なくとも中央制御装置1202、地図格納装置1204、通信装置1205、地図出力装置1206を備える。
【0020】
中央制御装置1202は、地図描画処理全体を制御する。
通信装置1205は、地図データ管理装置1301とネットワーク経由で接続し、地図データを取得するための手段である。
地図格納装置1204は、地図データ管理装置1301から取得した地図データおよび処理に必要な情報を管理する。
地図出力装置1206は、地図格納装置1204に格納されている地図データ、地図データ管理装置1301から取得した地図データを利用して中央制御装置1202が作成した地図を出力する。
また、必要に応じて地図描画装置1201の現在位置を取得する位置検出装置1203、地図描画装置1201の利用者が操作するための操作パネル1207、音声メッセージを出力する音声出力装置1208等を備えていても構わない。
なお、地図出力装置1206は表示部の例であり、音声出力装置1208は音声出力部の例である。
【0021】
地図格納装置1204は、地図データ管理装置1301から取得した地図データを一次保存するための領域である。
中央制御装置1202は、現在描画対象となるメッシュデータやそれに付随する情報は内部で管理を行うが、それ以外の取得完了している描画対象になっていないメッシュデータは地図格納装置1204に格納しておき、必要に応じ、中央制御装置1202が取得可能な状態にすることが目的である。
通信装置1205はネットワーク経由で地図データ管理装置1301に地図データを取得する。
地図出力装置1206は、例えば、CRTや液晶ディスプレイなどであり、地図を画像として表示する。
また、中央制御装置1202が地図データを元に生成したテキストデータをCRTや液晶ディスプレイなどに表示しても構わない。
音声出力装置1208は、中央制御装置1202が地図データを元に生成した音声メッセージをスピーカ等で音声として出力する。
また、地図出力装置1206及び音声出力装置1208は、地図画像、音声、テキストのうち複数を組み合わせて出力しても構わない。
【0022】
本実施の形態では、地図描画装置1201が、地図出力を行う際に本来利用すべきメッシュデータの一部が取得できていない場合において、取得できていないメッシュデータに対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供する方法を説明する。
つまり、ネットワークの状況によっては、地図描画装置1201は、要求した地図データが全て取得できずに、一部が取得できない状態に陥る場合がある。
例えば地図データ取得中に、ネットワーク障害が発生し、地図描画装置1201と地図データ管理装置1301間で通信が出来なくなる場合や、ネットワークに携帯電話網を利用している場合、地図描画装置1201が利用している携帯電話が電源不足に陥り、通信不能に陥る場合や、地図データ管理装置1301の通信処理系の不具合によって、地図描画装置1201からの要求を受け付けることができなくなる場合や、地図データ管理装置1301が許容数を超える要求を受け付けたために、地図描画装置1201へ応答を返せなくなる場合や、地図データ管理装置の処理系の不具合でサーバ機能がダウンしてしまう場合等が考えられる。
【0023】
そこで、本実施の形態では、地図描画装置1201が必要な地図データの全てを取得できない場合に、地理的な情報として「現在移動中もしくは静止中の道路は、未取得メッシュが存在する方向でどのような状況になっている可能性があるのか」を利用者に提供する。ここでの「どのような状況」とはその道路がその先、どこまで続いているのか、それはどの方向に続いているのか、曲がっている可能性があるのか、同種同番号の道路が複数存在するか、その他の道路と接続する可能性があるのか、その他の道路とどのような順番で接続する可能性があるのか、といった道路の継続可能性、継続方向、形状、本数、接続可能性などが挙げられる。
また、それらの情報の信頼性に応じた情報表現の変更も含まれる。例えば、この先に同種同番号の道路が存在することが確認できる場合は断定的な情報として提供し、可能性が高い程度であれば、不確実な情報として提供し、可能性が低い程度であれば、情報提供しないといったことが考えられる。
【0024】
図2を用いて、本実施の形態に係る地図描画装置1201の動作の概要を説明する。
【0025】
まず、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301に対して地図の描画に必要な地図データの送信を要求する(S1001)。
そして、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から送信された地図データを受信する(S1002)。
なお、これら地図データの要求ステップ(S1001)及び地図データの受信ステップ(S1002)の手順の詳細は、実施の形態7において、図38を参照して説明する。
【0026】
次に、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から受信した地図データにおいて受信できなかった未取得メッシュ(欠落メッシュ)があるかいなかを判定する(S1003)。
未取得メッシュがない場合(S1004でNO)は、地図描画装置1201は地図データ管理装置1301から受信した地図データ及び地図描画装置1201内部に保持している地図データを用いて地図を描画し(S1005)、描画した地図を出力する(S1006)ことで、ユーザが地図を参照することができる。
【0027】
他方、未取得メッシュがある場合(S1004でYES)は、地図描画装置1201は、保持している保持地図データから特定の道路に関連する関連道路を抽出する(S1007)。
なお、保持地図データには、地図データ管理装置1301から新たに受信した地図データと、以前から地図格納装置1204に格納されている地図データの両者が含まれる。
【0028】
ここで、特定の道路とは、例えば、ユーザが現在位置している道路やユーザが指定した道路である。また、関連道路とは、例えば、特定の道路と同種同一名称の道路(以下、同一道路ともいう)や、特定の道路と名称は異なるが属性が類似する道路(以下、異種道路ともいう)である。
特定の道路と同種同一名称の道路(同一道路)とは、特定の道路が国道○号線である場合に、同一の名称(国道○号線)が付与されている道路である。
また、特定の道路と名称は異なるが属性が類似する道路(異種道路)とは、特定の道路が国道○号線である場合に、国道△号線のように、道路の名称は異なるが、国道という道路の属性が同じである場合や、県道×号線のように、道路の属性が同一ではないが、道路の属性が近似している場合である。また、道路属性の類似範囲は、地図描画装置1201の管理者が決定することができる。例えば、カーナビゲーション用途であれば、幹線道路として捉えられる国道、県道、高速道路、有料道路、自動車専用道路同士を異種道路として分類することが考えられる。
【0029】
また、S1007において、地図描画装置1201は、特定の道路と関連道路とが接続している状態を示す地図を描画できるか否かを判断する。
例えば、関連道路が同一道路である場合に、未取得メッシュが介在することによって、同一名称の道路が途中で分断されてしまう地図になる場合は、特定の道路と関連道路とが接続している状態ではない。
また、例えば、関連道路が異種道路である場合に、例えば、特定の道路である国道○号線が特定の位置から国道△号線に変更するが、道路としては同じ道路であり名称だけが変化する場合、未取得メッシュが介在することによって、国道○号線と国道△号線が途中で分断されてしまう地図になる場合は、特定の道路と関連道路とが接続している状態ではない。
また、例えば、関連道路が異種道路である場合に、特定の道路と関連道路の位置関係及び方向から、特定の道路と関連道路とが交差(交差点による交差、立体交差による交差)する関係にあると推測される場合や、特定の道路が関連道路を含む複数の道路に分岐すると推測される場合や、特定道路が関連道路と合流すると推測される場合に、未取得メッシュが介在することによって、特定の道路と関連道路とが分断される地図となる場合は、特定の道路と関連道路とが接続している状態ではない。
【0030】
次に、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から受信済の地図データ及び地図格納装置1204に保持している地図データを用いて地図を描画する(S1008)。
なお、特定の道路が含まれる特定のメッシュと関連道路が抽出されたメッシュとの間に未取得メッシュが介在して特定の道路と関連道路とが接続している状態を示す地図を描画できない場合は、特定の道路と関連道路とを関連付ける通知情報を生成し(S1009)、地図と通知情報を出力する(S1010)。通知情報は未取得領域状況情報ともいう。
【0031】
例えば、図8に示すように、ユーザの現在位置1704及びユーザが位置している道路1705が示されるメッシュと、道路1704と同一名称の道路1706が示されるメッシュとの間に地図データを取得できなかった未取得メッシュが介在して、道路1705と1706とが接続された状態の地図が描画できない場合に、地図描画装置1201は道路1705と道路1706がともに同一名称(国道○号線)であり、両道路は連続していることを通知する通知情報1707〜1709を生成し、地図とともに通知情報1707〜1709を出力する。
これにより、ユーザは、国道○号線はしばらく続き、また、大きく右方向に曲がっていくとの概略を把握することができる。
【0032】
なお、実施の形態1〜4では、関連道路として、特定の道路の同一道路を抽出し、特定の道路と抽出した同一道路とが同じ道路であることを通知する通知情報を生成、出力する。
なお、関連道路として異種道路を抽出する例は、実施の形態5以降で説明する。
【0033】
図3は、実施の形態1〜6に係る地図描画装置1201の中央制御装置1202が実行する機能ブロックを示す。
なお、図3は、実施の形態1〜6に係る地図描画装置1201の動作を説明するために最低限必要な構成を示しており、図3以外の構成が含まれていてもよい。
【0034】
図3において、入力部1211は、中央制御装置1202の外部の装置からデータを入力する手段である。例えば、操作パネル1207からユーザの指示を示すデータを入力したり、位置検出装置1203から地図描画装置1201の現在位置を示すデータを入力したり、通信装置1205より地図データ管理装置1301から送信された地図データを入力したり、地図格納装置1204より表示対象の地図データを入力する。
【0035】
また、出力部1212は、中央制御装置1202の外部の装置へデータを出力する手段である。例えば、地図出力装置1206に地図の描画データ及び通知情報を出力したり、音声出力装置1208に音声形式の通知情報を出力する。
【0036】
地図データ要求部1213は、地図の描画に必要な地図データの送信を地図データ管理装置1301に要求する。地図データの要求手順の詳細は、図38に示す通りである。
【0037】
道路抽出部1214は、未取得メッシュ(欠落メッシュ)の有無を判定し、未取得メッシュがある場合に、保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する関連道路を抽出する。
なお、道路抽出部1214は、未取得メッシュの介在により特定の道路から分断されてしまい、特定の道路と接続した状態で描画されない関連道路を抽出する。
【0038】
地図描画部1215は、地図データ管理装置1301から受信した地図データ、また必要であれば、地図格納装置1204に予め格納されている地図データを用いて、地図出力装置1206に表示する地図を描画する。
【0039】
通知情報生成部1216は、未取得メッシュが介在して特定の道路と関連道路とが接続している状態を示す地図を描画できない場合に、道路抽出部1214により抽出された関連道路に基づき、特定の道路と関連道路とを関連付ける通知情報を生成する。
具体的には、図8に示したように、地図描画部1215により抽出された同一道路と特定の道路(ユーザの現在位置の道路)とが同じ道路であることを通知する通知情報を生成する。
【0040】
図4は、地図出力を行う際に本来利用すべきメッシュデータの少なくとも一部が取得できていない場合において、取得できていないメッシュデータに対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供する具体的な処理方法のフロー図である。
この処理群は、図2のS1003、S1004、S1007の処理の詳細を示したものである。
図4の処理を実施することによって、必要だが取得が完了していないメッシュデータの有無によって、現在位置が対応する道路が未取得メッシュの方面でどのような状況になっているのかを利用者に情報として提供することが可能となる。
【0041】
先ず、処理S301では、道路抽出部1214は、現在取得対象となっているメッシュデータで取得完了していないものが存在するか判定する。
この判定処理はメッシュ識別子の集合に対応するメッシュデータが基本管理情報の表示対象メッシュリストに存在し、それが取得完了状態になっているかどうかを調査し、1つでも対応するメッシュデータが存在しない、もしくは取得完了状態になっていないメッシュリストが存在する場合には未取得メッシュデータがあると判定する。
なお、基本管理情報とは、図30に示す情報である。なお、基本管理情報を含む図30に示す各情報の詳細は、実施の形態7において説明する。
また、メッシュ識別子、表示対象メッシュリストの詳細についても実施の形態7において説明する。
【0042】
次に、道路抽出部1214は、処理S301による判定結果で未取得メッシュデータがないと判定した場合は、本処理を終了し、速やかにメッシュデータ描画処理へ移行する。メッシュデータ描画処理では、地図描画部1215が地図を描画する。
【0043】
逆に未取得メッシュデータがあると判定した場合には、道路抽出部1214は、処理S303を実行する。
地図格納装置検索処理S303では、道路抽出部1214は、その時点で地図描画装置1201に保存されている全てのメッシュデータを検索する。
次に、道路抽出部1214は、隣接取得完了メッシュ集合A算出処理S304を実行する。
この処理S304では、道路抽出部1214は、基本管理情報に格納されている取得完了メッシュデータと処理S303で検索された取得完了メッシュデータを合わせて、隣接するメッシュデータを1つの集合として、集合を形成する。
【0044】
図5は、ある時点でのメッシュデータ取得が完了したメッシュとそれ以外の位置関係を示した図である。
中身が白いメッシュはメッシュデータ取得が完了していない、もしくは取得対象ではないメッシュを意味し、網掛けのメッシュは取得完了したメッシュであることを意味する。
本処理S304によれば、隣接している取得完了メッシュデータを1つの集合として形成するため、そのような集合は集合1501、1502、1503が形成されることになる。
取得完了したメッシュデータの隣接関係はメッシュデータのメッシュ識別子のX成分、もしくはY成分の差分の絶対値が片方で0となり、他方で1になっているメッシュは隣接しているとして判定可能である。
また、差分の絶対値がX成分、Y成分共に1となる場合を含めて考えても構わない。
よって、ある取得完了メッシュデータの識別子のX成分もしくはY成分を1加算、または1減算して新たに生成したメッシュ識別子に対応するメッシュデータが取得完了メッシュデータに存在するかを検索し、あった場合にはそれらメッシュデータは同じ隣接取得完了メッシュ集合に属する要素として判定される。これを全ての取得完了メッシュデータに対して実行すれば、全ての隣接取得完了メッシュ集合を求めることが出来る。
【0045】
これ以降では説明に利用するため、図5における隣接取得完了メッシュ集合1501を集合A1、隣接取得完了メッシュ集合1502を集合A2、隣接取得完了メッシュ集合1503を集合A3と呼ぶ。
【0046】
次に、道路抽出部1214は、各隣接取得完了メッシュ集合Aの境界メッシュ集合B算出処理S305を実行する。
この処理S305では、道路抽出部1214は、処理304で生成された隣接取得完了メッシュ集合それぞれから、未取得領域と隣接しているメッシュだけで構成される境界メッシュ集合Bを生成する。
図5における集合A1、A2、A3に対して、境界メッシュ集合を求めた結果を図示すると図6の様になる。
集合A1に対応する境界メッシュ集合は集合1601、集合A2に対応する境界メッシュ集合が集合1602、集合A3に対応する境界メッシュ集合が集合1603となる。
【0047】
境界メッシュであるかの判別は、取得完了メッシュ集合の要素であるメッシュデータの隣接するメッシュの中に1つでも未取得メッシュデータが存在する場合には境界メッシュのメッシュデータであると判定できる。
逆に全ての隣接するメッシュに対応するメッシュデータが取得完了である場合には境界メッシュの要素とはならない。この判定処理を全ての隣接取得完了メッシュ集合ごとに、その要素全てに対して実行することでそれぞれの境界メッシュ集合を求めることが出来る。
【0048】
次に、道路抽出部1214は、現在位置で移動中道路Cを導出する処理S306を実行する。
この処理S306は、位置検出装置1203で取得された現在位置を利用して、従来のカーナビゲーションシステムで多く用いられているマップマッチング技術を利用し、現在位置を地図上の道路にマッチングを行う処理である。
【0049】
次に、道路抽出部1214は、道路Cと同一道路である道路Dを各集合Bから検索する処理S307を実行する。
この処理S307では、道路Cと同じ属性を持つ道路を全ての境界メッシュ集合Bから検索する。同じ属性とは、例えば、道路の名称や道路種別、道路番号が一致しているかで判定する。
具体的な例を挙げると道路Cが国道30号線だったとした場合、道路種別が国道で、道路番号が30である道路が検索条件となる。
その他に例えば、道を示す点情報に含まれる属性にこの先で連絡する道路情報を記述してある場合には、その情報と道路Cが合致するかどうかで判定しても構わない。
また、その判定基準は同一道路の判定基準に応じて変更して構わない。例えば、道路の太さが一致した場合には同一道路とする判定基準が含まれている場合には道路の太さ属性を判定基準として利用しても構わない。
具体的な検索方法の一例を図7を用いて説明する。
【0050】
始めに、道路抽出部1214は、処理S401で境界メッシュ集合の集合から1つの境界メッシュ集合を選択し、その中から1つのメッシュデータを選択する。
次に、道路抽出部1214は、処理S402で、処理S401で選択された境界メッシュ集合内に含まれる道路Cと同種同番号の道路(以下、同一道路)を示す点情報を格納する同一道路リストを用意する。
次に、処理S403では、処理S401によって選択された境界メッシュ集合から1つメッシュデータを取得する。
次に、判定処理S404では、処理S403で選択したメッシュデータには本検索処理を行っていない道路を示す未処理点情報が存在するかを判定する。存在する場合には処理S405を行い、存在しない場合には処理S408を行う。
【0051】
次に、処理S405では、処理S403で選択したメッシュデータから道路を示す未処理点情報を1つ取り出す。
次に、判定処理S406では、処理S405で選択した点情報と道路Cが同一道路であるか判定する。
同一道路と判定された場合には処理S407を行い、異なる道路と判定された場合にはS404を行う。
【0052】
処理S407では、処理S406で同一道路と判定された点情報を処理S402で作成した同一道路リストに追加する。この処理を行うことで1つの境界メッシュ集合の中に存在する道路Cに対する同一道路の点情報(当該道路の当該境界メッシュにおける端点の点情報)を同一道路リストに全て格納することが可能となる。
また、処理S407において、ある境界メッシュについて、道路Cの同一道路の点情報が同一道路リストに格納されることは、当該境界メッシュにおいて抽出された同一道路と道路Cは未取得メッシュが間に介在することで連続性のある道路として描画されない(未取得メッシュにより分断された状態の道路しか描画できない)ことを意味する。
【0053】
また、処理S408では、処理S404で処理されていない道路を示す点情報が存在しない場合に、処理S401で選択した境界メッシュ集合には処理を行っていないメッシュデータが存在するか判定する。
処理を行っていないメッシュデータが存在する場合には、処理S403を行い、処理を行っていないメッシュデータに対して同様の同一道路検索処理を実行する。
処理が行われていないメッシュデータが存在しない場合には、現在選択されている境界メッシュ集合の全てのメッシュデータに対する検索処理は完了していることが分かるので処理S409へ移行する。
最後に処理S409は、1つの境界メッシュ集合に対する検索処理が完了した時に実行される処理であり、ここでは境界メッシュ集合の集合に処理を行っていない境界メッシュ集合が存在するかを判定し、存在する場合には残っている未処理状態の境界メッシュ集合に対しても同一道路検索処理を行うため処理S401を実行する。
存在しない場合には、全ての境界メッシュ集合に対しての処理が完了したため、本処理はここで終了となる。
【0054】
図4の処理に関する説明に戻る。
ここで説明した処理S307は道路Dを各境界メッシュ集合Bの中から検索する処理としているが、検索集合を各隣接取得完了メッシュ集合Aとしても構わない。
隣接取得完了メッシュ集合Aを利用することによって境界メッシュ集合Bでは検出できない未取得メッシュに隣接していない取得完了メッシュに対する情報も提供可能となる。
また、処理S402で全ての境界メッシュ集合に対して1つの同一道路リストを作成しているが、境界メッシュ集合によっては1つも同一道路が存在しない場合も考えられる。
そのような場合には処理S402の処理は不要となる。
よって、処理S406でその境界メッシュ集合に対して初めて同一道路であると判定された場合にのみ処理S402を実行する様にしても構わない。
【0055】
最後に、処理S308では、通知情報生成部1216が、処理S307で検索した道路Cとの同一道路に関する情報を元に未取得領域情況情報(通知情報)の生成処理を行う。
従来の地図表示装置では未取得メッシュデータがある場合、図28の様に未取得領域が存在することのみの情報が出力されていた。
しかし、本実施の形態によれば、現在位置する道路と同じ道路が境界メッシュ集合に存在するかどうかの情報が得ることができるため、その情報を提供することが可能となる。
【0056】
具体的な通知情報の生成方法について図6を用いて説明を行う。
前提として、利用者の現在位置が位置1605に位置し、道路1604を移動中とする。
その時に、通知情報生成部1216が図7のS407において生成された同一道路リストを参照することで、境界メッシュ集合1603に道路1604と同一道路1606があることが分かったとする。
通知情報の生成方法の一つとしては画像として生成する方法が考えられる。
地図描画装置1201は地図データを元に地図の画像を出力する機能がある。その機能を利用し、通知情報生成部1216は、現在位置1605及び現在走行中道路1604と、同一道路リストから検出された同一道路1606とを対応付ける画像を通知情報として生成し、出力する。
例えば、現在位置が含まれるメッシュと、同一道路1606が含まれるメッシュが同時に含まれる最小の領域を表示領域1607とする。
この表示領域1607の地図を表示する場合に、通知情報生成部1216が、現在位置1605及び現在走行中道路1604と、同一道路1606とを対応付ける画像を通知情報として生成し、地図描画部1215により描画された地図に重畳して出力すれば、例えば、図8の様な概要地図画像1701を生成することができる。
【0057】
概要地図画像1701には少なくとも、取得完了していないメッシュ領域を示す領域表示1702と現在位置1704、現在走行中の道路1705、道路1705と同一道路と判定された道路1706が描画されている。それ以外の道路やその他地図データに記載されている情報等を選択して表示しても構わない。
そして、通知情報として、現在走行中の道路1705と、同一道路と判定された道路1706とを対応付ける矢印1708、1709が表示され、また、道路1705と道路1706が同じ道路であることを示す「国道○号線」との文字列1707が表示される。
これら通知情報により、道路1705と道路1706とが同じ道路であることを明確に示すことができる。
図7のS407において生成された同一道路リストには、境界メッシュごとに同一道路の点情報が格納されているので、通知情報生成部1216では、同一道路リストに示されている境界メッシュが表示領域1607に含まれる場合には、当該境界メッシュの同一道路と現在走行中の道路とを対応付けることができる。
【0058】
なお、図8の矢印1708、1709は矢印である必要はなく直線や曲線、点線でもよく、視覚的に文字列1707と道路1705、1706が関係していることが読み取れる表示方法であれば何でも構わない。
また、文字列1707も異なる内容であっても構わないし、文字列フォーマットではなく画像等異なるフォーマットのデータを表示してもよく、道路1705、1706に共通する事柄を視覚的に表示できればどのような形式であっても構わない。
【0059】
ここで領域表示1702は、地図描画装置1201が通常の地図表示時に取得完了していないメッシュ領域を表示する際に用いる描画方式と同一の描画方式で描画されることが望ましい。
例えば、通常処理でのみ取得領域を灰色で表現する場合には領域表示も同色で表示すると、利用者もその領域の意味を色から判断できるようになるためである。
しかし、同一である必要はなく、道路1705、1706を描画する領域の背景色と同色で描画することによって、あえて未取得領域が存在することを使用者に伝えない方法を取るなど、異なる描画方式であっても構わない。また、領域表示1702が地図データを取得完了できていないことを明示的に示すため、文字列1703で示しても構わない。文字列1703の内容は異なる内容であっても構わないし、文字列1703を画像等異なるフォーマットのデータ形式で表示しても構わない。
【0060】
次に、生成した概要地図画像の地図出力装置1206への出力方法であるが、例えば概要地図画像を地図出力装置1206の出力可能領域全てを使って表示する方法が考えられる。
この場合、地図出力装置1206には概要地図画像のみが表示され、それ以外のものは表示されないことになる。
また、出力可能領域の一部であっても概要地図画像のみを表示する方法も考えられる。また、出力可能領域の一部に概要地図画像を表示する際、概要地図画像を表示しない領域に別の情報を表示する方法も考えられる。
例えば図9の様に現在位置周辺地図を地図出力装置1206に出力中であった場合には、図10の様に概要地図画像を重畳させる方法や、図11の様に現在位置周辺地図上の現在位置が概要地図画像に隠れないように配置させて重畳される方法、図12の様に画面分割して地図表示と概要地図画像を別領域に表示するなどが考えられる。
【0061】
その他の具体的な情報生成方法として文字列や音声として表示する方法が考えられる。
例えば、通知情報生成部1216が、同一道路リストから同一道路1606を抽出した場合に、「この先、地図データが取得できないエリアに入ります。現在走行中の国道○号線は他のエリアにあることが確認できています」等の言語表現による通知情報を生成し、当該通知情報を音声出力装置1208に出力して、利用者に同一道路1606が存在することを知らせるようにしてもよい。
また画像、文字列、音声だけに限らず他の形式で情報を通知してもよく、それらを単独で使うだけではなく、画像と音声の組合せなど複数の形式で情報を通知しても構わない。
【0062】
このように、本実施の形態によれば、少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、現在走行中の道路の同一道路を抽出し、未取得メッシュが介在し現在走行中の道路と同一道路とが分断された状態の地図が表示される場合でも、現在走行中の道路と同一道路とを対応付けることにより、現在走行中の道路の同一道路が他の場所に存在することを利用者に情報提供することができる。
【0063】
以上、本実施の形態では、地図データが取得できていない領域(以下、未取得領域)に隣接する領域の地図データより現在走行中の道路と同一道路で現在走行中でない道路で未取得領域に進入する道路を検索し、検索された場合に走行中の道路と同種の道路が他の場所にあることを利用者に情報提供することを説明した。
そして、このことによって、現在走行中の道路と同種の道路が、未取得領域に進入する場合、同種の道路が他の場所だとどこに存在しているのかを利用者に情報提供(例えば未取得領域を中心として現在走行中の道路と同種の道路を概略地図として画面表示して情報提供する。その際に他の道路は表示しない)することが出来るようになる。
【0064】
また、未取得領域背景色の決定方法として、地図描画装置が、通常地図表示、もしくは概略地図表示において未取得領域の主要色(その領域を描画するにあたり最も頻度高く利用されている色またはそれに類似する系統色)を隣接する取得完了領域の主要色から決定することを説明した。
これにより、未取得領域と取得完了領域の色を近い色に設定することで境界を分かりにくくする、色彩上逆の色(反転色など)に設定することで、境界を分かりやすくすることが可能となる。
また、未取得領域が複数にわたる場合、場所を移動する毎に近くの色に近い色に変化させて描画することができる様になる。
【0065】
実施の形態2.
実施の形態1に説明した方法は、現在走行中の道路と同一道路を検索し、同一道路があった場合にだけ、情報通知する方法であった。
本実施の形態では、現在走行中の道路と同一道路の位置関係を導出する方法を説明する。
この方法を実施することによって、同一道路がどの方向にどの距離にあるのかを利用者に通知できる様になり、より具体的な位置関係を知らせることが可能となる。
なお、全体のシステム構成及び地図描画装置1201の内部構成は、図1及び図3に示したものと同様である。
【0066】
図13は、現在走行中の道路と同一道路の位置関係を導出する具体的な方法に関するフロー図の一例である。図13の動作主体は、通知情報生成部1216である。
また、図13の処理は、例えば、図4のS308の処理中に行われる。
【0067】
処理S501では、通知情報生成部1216は、走行中道路の代表点を決定する。
この代表点は後述する処理S502で求める同一道路の代表点と共に、道路間の位置関係を導出するためのパラメータとして用いる座標である。
道路は点ではなく長さを持った線であるため、道路のどの位置を基準として位置関係を導出するかによって、結果が異なる場合があり、代表点の決定方法は様々考えられる。例えば、道路が未取得メッシュに接する点情報の位置やその近傍の点情報や座標としても構わないし、走行中道路であれば、現在位置としても構わない。
本実施の形態では、走行道路の代表点は走行中道路が、進行方向にある未取得メッシュに接する箇所の点とする。ここで、この条件を満たす点情報が複数ある場合には現在位置に最も近い点とする。
【0068】
次に、処理S502では、通知情報生成部1216は、同一道路の代表点を決定する。
本実施の形態では、同一道路の代表点は同一道路が未取得メッシュに接する箇所の点情報の位置とする。ここで、この条件を満たす点情報が複数ある場合には処理S502で決定した走行中道路の代表点に最も近い点とする。
【0069】
次に、処理S503で、通知情報生成部1216は、走行中道路の代表点から同一道路の代表点に向けたベクトル情報を生成する。
このベクトルのX成分とY成分の比率によって、走行中道路の代表点から見た同一道路の代表点の絶対方向を求めることが可能となる。また、このベクトルは正規化しても構わない。
方向の具体的な決定方法は、例えば方角を東西南北で示す場合、ベクトルのX成分、Y成分の正負およびその比率を用いて一意にマッピングする方法等が考えられる。
【0070】
最後に、処理S504では、通知情報生成部1216は、代表点間の距離を算出し、走行中道路と同一道路の距離を導出する。
【0071】
そして、通知情報生成部1216は、以上の処理を行った結果得られた方向と距離の情報を含めた道路Cとの同一道路に関する情報を元に未取得領域情況情報(通知情報)の生成処理を行う。
例えば、概要地図画像とともに、通知情報として、方向と距離の情報を出力することが考えられる。図14はその具体的な一例であり、図8の概要地図画像の上に方向と距離の情報1801を上書きしている。
また、通知情報生成部1216は、代表点間を結ぶ線1802を出力することによって、具体的にどこの距離を示しているのかが分かるように出力するようにしてもよい。
補助線1802は点線であるが、それ以外の実線、曲線等他の形状であっても構わない。
また、方向と距離の情報1801と同時に出力する場合は、方向と距離の情報1801が補助線1802で隠れてしまうことを防ぐため、補助線1802の上に方向と距離の情報1801を出力しても構わない。
また、図14に示すように、未取得領域では地物を表示しないため、代表点間を結ぶ線1802を明瞭に利用者に示すことができる。
【0072】
また、未取得領域情況情報は画像ではなく、文字や音声といった形式であっても構わなく、それらを複合的に利用して情報出力しても構わない。
例えば、音声にて「まもなく地図データが取得できていないエリアに差し掛かります。現在走行中の道路はおよそ東へ5キロメートル以上先でも続いています」と出力し、概要地図画像としては図14を表示する、もしくは図14から方向と距離の情報1801を削除した状態で表示するなどが考えられる。
【0073】
その他の具体的な方法として、メッシュ識別子を利用する方法が考えられる。
本実施の形態のメッシュ識別子は基準となるメッシュとの位置関係を表した座標を利用しているため、それぞれの道路が属しているメッシュのメッシュ識別子から方向ベクトルを作り出すことによって方向が求められる。また、メッシュの大きさは一定であるため、メッシュ識別子とその大きさを利用することでメッシュ間の距離も求めることが可能である。
【0074】
また、補助線1802に関しては、線情報を元に描画した非推定道路(実際のデータを参照して地図として描画した道路)と異なる描画方法を取ることによって、視覚的に、実際のデータを参照して描画した道路と異なることを通知可能としても構わない。
【0075】
このように、本実施の形態によれば、現在走行中の道路と同一道路とを対応付けることに加えて、現在走行中の道路と同一道路の間の距離、現在走行中の道路に対する同一道路の所在方向を利用者に通知するため、利用者により多くの情報提供を行うことができる。
【0076】
以上、本実施の形態では、地図描画装置が、現在走行中の道路が未取得領域に進入する位置情報と、検索された同一道路が未取得領域に進入する位置情報を元に、現在走行中の道路との地理的な相対関係情報を生成することについて説明した。
そして、このことによって、現在走行中の道路と同種の道路が、他の場所にあることを情報提供する際に、他の道路が現在走行中の道路と、絶対位置を基準とした方向と、2道路間の距離を情報として提供(「現在走行中の道路と同種の道路は北東1.2キロメートルにもあります」と音声出力や、概略地図上に方向と距離も表示する等)できるようになる。
【0077】
実施の形態3.
本実施の形態では、現在走行中道路と、その同一道路の双方の方向ベクトルを利用して、現在走行中道路と同一道路とを接続する道路の形状を推定し、推定した推定道路の形状を利用者に通知する実施の形態を説明する。
実施の形態2で説明してきた手法では、二道路間の道路の代表点もしくはメッシュ識別子を利用して、二道路間の位置関係を導出し、その情報を出力していた。
しかし、二道路がどのような方向に向いているのかを考慮していない。
【0078】
例えば、図15(a)に示す現在走行中道路1901と、その同一道路1902が検出された場合と、図15(b)に示す現在走行中道路1903と、その同一道路1904が検出された場合は、距離や位置関係に多少の違いがあったとしても、実施の形態2による方法では同じ処理を行っている。
しかし、図15(a)に示す道路1901から道路1902に接続するためには少なくとも右に大きく曲がらないと接続できないが、図15(b)に示す道路1903から道路1904に接続するためには、おおよそ直進で接続可能という違いがあり、それを利用者に対し、明示的に情報出力することが望まれる。
例えば、地図描画装置1201がカーナビゲーションシステムに含まれる場合、走行中の画面注視は航路交通法上も禁止行為であり、危険を伴うため、通常走行中に運転手はカーナビゲーションシステムの画面を見ることは出来ない。
そのため、音声出力で「現在走行中の道路はおよそ東へ5キロメートル以上先でも続いています」等と出力しても、絶対方向であるため、現在走行中の道路をこの先まっすぐ行けばいいのか、曲がる可能性があるのかを判断することが困難である。
そこで、本実施の形態では、道路同士の進行方向の差分を利用して、現在の進行方向を基準として、相対的な方向で同一道路が存在するかを示す必要がある。図16はそのフロー図であり、例えば、図4の処理S308で実行される。
【0079】
はじめに、通知情報生成部1216は、処理S601で道路の進行方向を表す方向ベクトルを求める。
道路とは一方通行ではない限り、両方向に進むことが出来るため、方向ベクトルは二つできることになる。
そこで、本実施の形態では、処理対象となる二道路が未取得領域に接続していく道路であることを利用し、以下の方法でベクトルの始点及び終点を求める。
1)ベクトルの始点は道路を現す線情報の構成点のうち、未取得領域に進入する位置の端点となる構成点に隣接する構成点。
2)ベクトルの終点は道路を表す線情報の構成点のうち、未取得領域に進入する位置の端点となる構成点。
例えば、図15(a)では、道路1901の方向ベクトルの始点は構成点1905、終点は構成点1906、道路1902の方向ベクトルの始点は構成点1907、終点は構成点1908、である。また、図15(b)では、道路1903の方向ベクトルの始点は構成点1909、終点は構成点1910、道路1904の方向ベクトルの始点は構成点1911、終点は構成点1912となる。
【0080】
次の処理S602では、通知情報生成部1216は、処理S601で求めたベクトル同士がなす角度を求める。
二つのベクトルで生成される角度は二通りの表現方法があるが、求める角度は図17に示すとおり、二つのベクトルの始点を同じ座標になるように平行移動させ、現在走行中道路の方向ベクトルをベクトル2001、同一道路の方向ベクトルをベクトル2002とした時に、できる角度2003とする。 この角度は、−180度から180度の範囲とする。走行中道路の方向ベクトルの左側に同一道路のベクトルが来る場合、できる角度は負の値とし、右側に同一道路のベクトルが来る場合には正の角度とする。
【0081】
次に、処理S603では、通知情報生成部1216は、ベクトル方向に伸びる半直線を生成する。具体的にはベクトルの端点を端点としたそのベクトルに平行な半直線を生成する。
図18は、道路1901、1902,1903,1904の半直線1913、1914,1915,1916を図示している。
【0082】
処理S604では、通知情報生成部1216は、処理S603で生成した現在走行中道路と同一道路の半直線同士で、交差点が出来るかを判定する。
図18(a)では半直線1913、1914は平行なため交差しないが、図18(b)の半直線1915、1916では交差点1917が存在する。交差点がある場合には処理S606を処理し、交差点がない場合には処理S605を処理する。
【0083】
処理S605は、半直線同士で交差しない場合に、交差点の代替となる情報を生成する処理であり、代替となる情報を生成するために補助線を利用する。
二つの半直線が交差しない原因は図19に示す通り2通りが考えられ、図19(a)に示すように1つは半直線同士が平行である場合と、図19(b)に示すようにもう1つは平行ではないため、直線であれば交差するが、半直線の切れた側で交差する場合がある。だが、本質的には異ならないため、以下の通り同じ処理を行う。
【0084】
通知情報生成部1216は、現在走行中道路の半直線の端点から同一道路の半直線の端点にベクトルを生成し、これを端点間ベクトルと呼ぶ。
端点間ベクトルは、端点間に道路が直線的にあった場合に現在進行方向の道路を基準にどの方向に向いているかを調べるために生成する。
通知情報生成部1216は、この端点間ベクトルの始点を現在走行中道路の方向ベクトルの始点に合致するように平行移動し、出来る角を求める。その角度が−90度以上90度以下の場合には、端点間に道路を引いた場合に、進行方向と逆方向ではないと判断できる。そのため、両道路の未取得領域に接する箇所の点情報の位置を結んで道路が連結するものと判断する。
【0085】
この判断の後に処理S606を実行した時の具体的な未取得領域状況情報の生成方法について説明する。
現在走行中道路と同一道路は接続しているが、端点間ベクトルと現在走行中道路の方向ベクトルのなす角が小さい場合はなだらかに曲がっているが、ある程度大きい角度の場合には現在走行中の道路は急な方向転換がなされている可能性がある。その判断は例えば、図20に示すようなテーブルで判断する方法等が考えられる。
この判断によって例えば文字列や音声で未取得領域の状況情報を生成すると、例えば「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路はこの先、左方向になだらかに曲がって5キロメートル先まで続いている可能性が高いです」などとなることが考えられる。
左右の判断は角度が負の場合には右に曲がり、正の場合には左に曲がると判断できる。
【0086】
次に、画像として生成する場合を説明する。
画像で二道路間の補助線を引く場合も図20に示すような道路状況を反映させる方法の具体例を1つ図21を用いて説明する。
【0087】
まず、通知情報生成部1216は、現在走行中道路の端点1918と同一道路の端点1919を結ぶ線分1920を引き、その中間点1921を求める。
次に、通知情報生成部1216は、方向ベクトルが平行な場合には、中間点1921を通り、道路の方向ベクトルと直行する直線1922を引き、現在走行中道路の半直線1923と同一道路の半直線1924と交差する点1925、1926を求める。
次に、通知情報生成部1216は、点1925と点1921の直線1922上の中間点1927と、点1921と点1926の直線1922上の中間点1928を求める。
方向ベクトルが平行ではない図19(b)の場合には、直線1922を上記条件で引くことができない。この場合には、通知情報生成部1216は、現在走行中道路の方向ベクトルと直行する直線として直線1922を引く。
最後に、通知情報生成部1216は、点1918、1927、1928、1919を滑らかに通過する曲線を補助線として表示する。
この方法を利用すると、生成された角度の大きさに応じて曲線の変化率が大きくなるため、図20に近い状況を画像上に再現することが可能となる。ただし、この方法はあくまでも一例であり、この方法以外で補助曲線の形状を決定しても構わない。
【0088】
次に角度が−180度以上−90度未満もしくは90度より大きく180度以下の場合の処理を示す。
【0089】
この場合には、端点間に道路があったとした場合に、現在走行中道路の方向ベクトルとは逆方向になると判断できる。
そのため、現在走行中道路と同一道路は端点同士で接続するのではなく、現在走行中道路の方向ベクトルとは逆方向で接続しているものとして判断する。
次に行う処理S606では、同種の道路が平行して走っていることを未取得領域状況情報として生成する。
例えば文字列や音声で未取得領域の状況情報を生成する場合には、例えば「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路と同一道路は進行方向に対し斜め左側100メートルの場所にもあります。」などと、接続している表現は使用せずに存在することのみを情報として生成する。
以上の処理では−90度もしくは90度が接続するか否かの判断分岐点となっているが、実際に90度であった場合には端点の箇所で道路が90度に曲がっていなければならないため、あまり現実的ではない。そこで、分岐点となる角度を−90度以上と90度以下に変更しても構わない。
【0090】
このように、本実施の形態では、現在走行中の道路と同一道路とを接続する道路の形状及び同一道路の相対的方向を推定し、推定した道路の形状を提示するとともに、利用者の進行方向を基準として同一道路がどの方向(相対的方向)にあるのかを示す通知情報を生成することとしたので、利用者に未取得メッシュにおける道路の推定形状を通知することができるとともに、利用者が把握しやすい形式で同一道路の方向を通知することができる。
【0091】
以上、本実施の形態では、未取得領域での走行道路の形状推定方法について、現在走行中の道路が未取得領域に進入する方向ベクトルと、検索された同一道路が未取得領域に進入する方向ベクトルとが未取得領域内で交差する場合、地図描画装置が、その交差点と2道路が未取得領域に進入する位置とで曲線を描くことによって、おおよその未取得領域での道路形状を形成し、情報として提供することを説明した。
また、このことにより、未取得領域で走行中の道路がおおよそどの方向に曲がっているのかを視覚的に情報提供することができる様になる。
【0092】
また、未取得領域での走行道路の形状推定方法について、現在走行中の道路が未取得領域に進入する方向ベクトルと、検索された同一道路が未取得領域に進入する方向ベクトルとが未取得領域内で交差しない場合、地図描画装置が、補助線を利用することによって、推定道路の構成点を作り出し、おおよその未取得領域での道路形状を形成し、情報として提供することを説明した。
【0093】
また、推定表示と実際地図表示の区別化について、地図描画装置が、おおよその道路形状を画面に表示する際に地図データを下に描画した道路と、形状や色といった視覚的に異なる特徴を持って表示することを説明した。
これにより、未取得領域中のおおよその道路形状を実際の道路と利用者が明確に区別して認知することを容易にすることができる様になる。
【0094】
実施の形態4.
ここまでで説明してきた実施の形態では必ず同一道路が1つ存在する場合を想定して説明を行ってきた。
ここでは、同一道路が存在しない場合と、同一道路が複数存在する場合について説明を行う。
【0095】
まず、同一道路が存在しない場合の処理方法について説明する。
【0096】
図4の処理S307で同一道路が見つからなかった場合には、通知情報生成部1216は、例えば画面には図22にように現在走行中の道路を表示し、その道路の名称などを表示しながら、音声で「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の国道○号線のこの先の状況は判断できないため、道路案内を参考に運転してください。」等と現在走行中の道路の判別可能な名称を通知すると共に、地図表示装置に頼らないで走行することを提案する通知情報を生成し、音声出力装置1208に出力することが考えられる。
【0097】
また、境界メッシュ集合で、現在走行中道路が含まれるもの以外のものが存在している場合には、道路抽出部1214が、その境界メッシュ集合に含まれるメッシュの内、最も現在位置が含まれるメッシュに近いものを選択し、そのメッシュの中で、関連道路として、現在位置に最も近い主要道路を検索し、通知情報生成部1216がその存在を知らせる方法も考えられる。
主要道の判定方法は道路種別が国道であるかどうか、道路の太さや車線数等道路を表現する点情報の属性に含まれる情報によって判定する。
例えば、図23のように画面には現在走行中の道路と、上記処理で選択された主要道2001とその名称2002を表示し、画像としてどの方向に主要道2001が存在するかを出力すると共に、音声による通知情報で「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。左方向4キロメートル先に国道△号線があります」等と方向とおおよその距離を通知するなどが考えられる。画面上に距離を表示しても構わない。
現在走行中道路(図23の国道○号線)と関連道路(図23の国道△号線)との間の距離、現在走行中道路(図23の国道○号線)に対する関連道路(図23の国道△号線)の所在方向の算出方法は、例えば、実施の形態2に示した方法による。
【0098】
次に、同一道路が複数存在した場合の具体的な処理方法について説明する。
【0099】
同一道路が複数存在した場合、その全てを通知する通知情報を生成した場合に、情報量が多すぎて利用者が判断に困る可能性が高い。
そのような状況を考慮し、同一道路が複数存在した場合の最も簡単な方法としては、複数の同一道路の中から、現在位置に最も近い同一道路を選択し、それ以外を棄却する方法が考えられる。
この方法を実施した場合には、今まで説明した処理がそのまま利用可能となる。
この場合、図7の処理S402をS401の前に実行し、全ての境界メッシュで同じ同一道路リストを用いることとする。また、処理S407では既に同一道路リストに点情報が登録されている場合には、登録済みの点情報と登録しようとしている点情報でどちらが現在位置に近いのかを判定し、近い方を同一道路リストに登録することになる。
【0100】
また、上記変更では処理S402を処理S401の前に移動していたが、移動しないことによって、境界メッシュ集合単位で最も近い同一道路のみを取得することが可能となる。
この場合には、画像として状況情報を生成する場合には、各境界メッシュ集合で最も現在位置に近い同一道路が含まれるメッシュ全てと現在位置が含まれるメッシュが含まれるような最小の長方形の表示領域として設定し、画像を生成する。
【0101】
図24は、それぞれの境界メッシュ集合単位で最も近い同一道路のみを取得した時の状況情報である画像の生成結果の具体例である。
現在走行中道路2101と共にそれぞれの境界メッシュ集合で最も近い同一道路2102、2103が表示されている。これまで説明した画像と同様に現在走行中道路の名称2104を表示し、該当する道路に対して矢印2105、2106、2107を表示する。
また、この例では現在位置から最も近い同一道路を抽出し、これまで説明した方法を利用して、現在位置と最も近い同一道路間の補助線2109とおおよその方向と距離2108を表示している。
この例では、補助線2109とおおよその方向と距離2108はもっとも近い同一道路のみ表示しているが、複数の同一道路に対して表示しても構わない。
その場合には、全ての同一道路から順に1つ取り出し、これまで説明した方法を適用し表示する方法が考えられる。
また、現在位置とよりも、他の同一道路と近い場合には、一方を現在走行中道路として、他方を同一道路としてこれまで説明した方法を適用し表示する方法も考えられる。
また、音声や文字列で通知情報を生成する場合には、例えば「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路と同一道路は2箇所に見つかっています。1つは北に約1キロメートル先にあり、もう1つは東に5キロメートル付近にあります。」などと検出された同一道路数とそれぞれの方向と距離を出力することが考えられる。
【0102】
このように、現在走行中道路の同一道路が抽出できない場合、現在走行中道路の同一道路が複数抽出された場合のいずれにおいても、適切に利用者に情報提供を行うことができる。
【0103】
以上、本実施の形態では、同一道路(同一名称の道路)が複数存在した場合の処理方法について、検索して複数の同一道路が見つかった場合には、地図描画装置が、2道路間の距離や進入方向ベクトルがなす角度や交差点、推定道路形状同士の交差点の有無などから接続される可能性が一番高い組合せを決定し、それを情報として提供することを説明した。
このことによって、複数ある同一道路がある場合であっても、どこが接続する可能性が高いのかを判別可能となる。
【0104】
また、同一道路(同一名称の道路)が存在しない場合の処理方法について、同一道路が検索の結果見つからなかった場合には、地図描画装置が、そのことを情報として提供することを説明した。
これにより、未取得領域中で現在走行中の道路が途切れることを情報として提供することが可能となる。
【0105】
実施の形態5.
これまで説明してきた処理方式では、現在走行中道路と同一道路間の状況を表現する情報を生成する処理の具体的な方法について説明していた。
これは現在走行中の道路がこの先どのような状況になっているのかを利用者に効率よく通知することを目的としている。
しかし、現実の道路では例えば国道A号がある交差点を境に国道B号になる箇所も頻出する。そのため、単純に同一道路との状況を説明しているだけでは、状況を説明する情報が得られない可能性もある。
そこで、本実施の形態では異種道路との接続可能性判定方法について説明を行う。
【0106】
まず同一道路と異種道路の本質的な違いは何かを考えると、システムが設定した同一道路の判定条件を満たしているのが同一道路で、満たしていない道路が異種道路であることが挙げられる。
しかし、判定条件を満たさない道路となると無数に存在することになり、全ての異種道路に対してそれを今まで説明した方法における同一道路として処理をするのでは、処理負荷が非常に高くなり、現実的ではない。
そのため、異種道路に対しては、判定を行うに値するかを判定する、異種道路処理判定基準をシステムで設定し、その条件を満たす異種道路に対してのみ、今まで説明した方法における同一道路として処理を行う方法を取る。
上述したように、道路の属性が類似している道路同士を異種道路とすることが考えられ、例えば、カーナビゲーション用途であれば、幹線道路として捉えられる国道、県道、高速道路、有料道路、自動車専用道路同士を異種道路として分類することが考えられる。
【0107】
図25は、図7に対して異種道路処理判定基準を使って、処理対象となる異種道路の抽出処理を追加した処理フローである。
追加された処理は処理対象となる異種道路を格納するリストを生成する処理S410が処理S401と処理S402の間に追加された。
また、同一道路判定で異なる道路として判定された点情報を、異種道路処理判定基準を満たすか判定する処理S411が追加された。
処理S411でも判定基準を満たさない場合には処理S404に移行し、判定基準を満たす場合には新たに追加された処理S412へ移行する。処理S412では異種道路処理判定基準を満たした点情報を異種道路リストに登録する。
なお、処理S412において、ある境界メッシュについて、道路Cの異種道路の点情報が異種道路リストに格納されることは、当該境界メッシュにおいて抽出された異種道路と道路Cは未取得メッシュが間に介在することで連続性のある道路として描画されない(未取得メッシュにより分断された状態の道路しか描画できない)ことを意味する。
【0108】
図25に示す処理を完了すると、異種道路リストには処理対象となる道路を表現した点情報が格納されることになる。
そこで、異種道路リストに格納されている道路を同一道路として扱って今まで説明した方法で通知情報を生成すると、現在走行中の道路に対して接続する可能性がある異種道路を表示することが可能となる。
【0109】
図26は図25の処理に基づき異種道路リストを生成し、そのリストに格納された異種道路に関しても接続可能性判定を行い、通知情報を画像として生成した時の、画像生成例である。
図26では、現在走行中の道路2201と同一道路2203と異種道路2202が表示されている。
現在走行中の道路2201と同一道路2203は同一道路であることを示すため、道路名2204と関連性を図示する矢印2205、2207を表示する。
また、異種道路2202に関しては異なる道路であることを示すため道路名2210と関連性を示す矢印2206を表示する。
この例では、現在走行中道路2201に対する異種道路2202と同一道路2203の位置関係について解析した結果、異種道路2202の方が同一道路2203よりも現在走行中道路2201に近いため、道路2201と道路2202の間におおよその方向と距離2208と補助線2209を表示している。
【0110】
図26では異種道路2206の方が走行中道路2201に近いため補助線2209とおおよその方向と距離2208を異種道路と結んだが、図27のように距離に関係なく同一道路と補助線2209とおおよその方向と距離2208を結んでも構わない。
また、この場合、補助線2209を現在走行中道路として取扱い、異種道路2202との接続可能性判定処理を行っても構わない。
つまり、通知情報生成部1216は、例えば実施の形態4に示した方法で位置関係を解析して、異種道路2202が補助線2209(推測道路)と接続する可能性があるか否かを判断し、異種道路2202が補助線2209(推測道路)に接続する可能性があれば、異種道路2202が補助線2209(推測道路)を介して現在走行中道路2201に接続する可能性があることを通知する通知情報を生成し、出力してもよい。
その場合には、例えば音声で通知情報を生成する場合は、「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路は東方向におよそ5キロメートル先まで続いています。その途中で国道△号線が接続する可能性があります」と異種道路の接続可能性を情報に追加しても構わない。
画像で出力する場合には、異種道路2202から補助線2209に向けて補助線を新たに引いて情報として追加しても構わない。
また、複数の異種道路が存在する場合も同様に複数から補助線に対して補助線を引いても構わない。
また、音声で通知情報を生成する場合、「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路は東方向におよそ5キロ先まで続いています。その途中で国道△号線、そのあと国道×号線と接続する可能性があります」と接続する順番に情報を追加しても構わない。
【0111】
このように、本実施の形態によれば、同一道路に加えて異種道路との接続可能性を判断するため、異種道路と接続する可能性を利用者に通知することができる。
また、推測道路に接続する可能性のある道路を検索することにより、現在走行中道路の今後の見通しを利用者に通知することができる。
【0112】
以上、本実施の形態では、異種道路の接続可能性判定方法について、現在走行中の道路とは異なる道路のうち、未取得領域に進入する道路の進入ベクトルと現在走行中の道路の未取得領域への進入ベクトルが交差する場合、地図描画装置が、そのことを利用者に情報として提供することを説明した。
これにより、未取得領域で現在走行中の道路は異なる道路と接続する可能性を情報として提供すること(「この先○キロメートル付近で国道△号と接続する可能性があります」と音声で通知するなど)が出来るようになる。
【0113】
また、異種道路の接続可能性判定方法について、現在走行中の道路の未取得領域における推定道路形状と異種道路の未取得領域への進入ベクトルが交差する場合、地図描画装置が、そのことを利用者に情報として提供することを説明した。
これにより、現在走行中道路と、異種道路間の接続可能性を判定するのに推定道路形状を利用するので広範囲の推定が可能となる。
【0114】
また、複数の異種道路との接続可能性がある場合の情報提示方法について、複数の異種道路と現在走行中の道路が接続する可能性があると判定された場合には、地図描画装置が、情報提示は異種道路との交差点が現在走行中道路に近い順に提示することを説明した。
これにより、複数の異種道路接続を時系列順に提示することが可能となる。
【0115】
実施の形態6.
ここでは、いままで説明してきた処理をどのタイミングで実行するかを説明する。
実施の形態1〜5に示した地図描画装置1201は、利用者の移動に伴って表示対象範囲を移動させながら地図を表示するものであり、実施の形態1〜5に示した処理(関連道路の抽出、通知情報の生成)は基本的に未取得メッシュデータが表示対象範囲に入ってきた場合以外は実行する必要がない。
そのため、1つは表示領域に未取得メッシュデータに対応するメッシュが入ってきた時点で、実施の形態1〜5で説明した処理を開始する方法が考えられる。
また、表示対象範囲の周囲一定範囲に相当するメッシュに未取得メッシュが含まれるようになった時点で、実施の形態1〜5で説明した処理を開始する方法が考えられる。この場合は、具体的には、表示対象領域の周囲一定距離に走査線を設け、その線に未取得メッシュデータに対応するメッシュが接した時点で開始する方法が考えられる。
【0116】
それ以外の方法としては、現在走行中の道路が進行方向に対して進むと未取得メッシュデータに対応するメッシュに接し、かつ現在位置と接する点の間に交差点が存在しない場合に開始する方法が考えられる。この場合はこの道路を今と同じ方向に進んだ場合明らかに未取得メッシュデータに対応する領域を表示しなければならないことを判定している。
それ以外に、ユーザからの明示的な要求があった場合に開始する方法が考えられる。
この方法を有することで、利用者が知りたい時にいつでも未取得領域に接続した場合の状況情報を入手することが可能となる。
また、その時に未取得領域に現在道路が進入しない場合には、情報として未取得領域に進入しないことを生成し、出力する。
また、上述の複数のタイミングのうちの任意のタイミングを組み合わせて、いずれかのタイミングになった場合に、実施の形態1〜5に示した処理を開始させるようにしてもよい。
【0117】
本実施の形態では、起動タイミングについて、現在位置が未取得領域に接した場合、現在の位置に存在する道路を走行中の道路として取得することを説明した。
これにより、未取得領域に現在位置が接した時点で自動的に起動できる様になる。
【0118】
また、起動タイミングについて、現在位置が未取得領域から一定距離内に近づいた場合、現在の位置に存在する道路を走行中の道路とし、その道路が未取得領域に接する箇所を改めて現在走行中の道路として処理することを説明した。
これにより、未取得領域に一定距離近づいた時点で自動的に起動できる様になる。
【0119】
また、起動タイミングについて、現在位置に存在する道路で進行方向に対して進むと未取得領域に接続し、かつ現在位置と未取得領域への進入位置の間に交差点が存在しない場合に、その道路が未取得領域に接する箇所を現在走行中の道路として処理することを説明した。
これにより、距離に関係なく現在の走行を維持した場合に未取得領域に進入することが分かった時点で自動的に起動ができる様になる。
【0120】
また、起動タイミングについて、ユーザからの明示的な要求があった場合に、現在走行中の道路を現在走行中の道路として処理することを説明した。
これにより、ユーザが知りたい時に未取得領域に接続した場合の状況を知ることができる様になる。
なお、ユーザからの明示的な要求があった場合に、現在走行中の道路が未取得領域に進入しない場合、進入しないことを情報として提供することもできる。
これにより、ユーザが知りたい時に、現在走行中の道路が未取得領域に進入しないことを知ることが出来るようになる。
【0121】
実施の形態7.
次に、以上の実施の形態1〜6において説明した地図描画装置1201の動作の前提となる事項を以下にて説明する。
【0122】
*地図と地図データの違い
地図とは地球表面の全体もしくはその一部を一定の縮尺により縮小し、記号や文字を使ってその状況を図示したものである。一般的に地図には道路、線路、建築物、川や山といった地物が記述され、利用目的に応じて道路名や交差点名、標識、施設名などの情報が加えられる。このように地図上に記述されるものを総称して実体と呼ぶことにする。
地図は通常は紙面上に描かれていて、人が見て使うことを想定して作られている。しかし、そのような紙面上に記述された状態ではカーナビゲーションシステムなどの情報処理機器で取り扱うことが難しいため、地図上に表現されている情報や位置をデジタルデータで表現する。このような情報処理機器が取扱いやすい形式で地図を表現したものを地図データと言う。
【0123】
*ラスター形式とベクトル形式
地図では地表面上に存在する実体が何ものであり、どの位置のどの様な形状で存在しているのかを表現することが最大の目的である。その表現方法にはラスター形式とベクトル形式の二種類がある。
ラスター形式の地図データとは、地図を画像データで取り扱う形式であり、地図をデジタル画像化したものや航空撮影したデジタル写真などはラスター形式の地図データの例である。
一方、ベクトル形式の地図データとは、実体の位置や大きさ、配置などを点と線で表現する形式である。例えば、交差点を点で表現し、交差点間を繋ぐ道路は線で表現する等が考えられる。点および線には位置情報が記述されるため、それぞれの情報が表現する実体の存在位置などが数値として保存されている。ベクトル形式のデータは形状を示すデータと実体の属性を表現するデータを独立して管理する特徴もある。
また、ラスター形式・ベクトル形式両方の地図データを持つハイブリッド形式もある。例えば、地図上の道路ネットワークを描画するためにベクトル形式で道路をデータ化し、その背景となる画像はラスター形式のデータとして保持し、描画する場合にはまず背景画像を描画し、その上にベクトル形式のデータをもとに道路描画を行うことが考えられる。
実施の形態1〜6では、少なくともベクトル形式で表現された地図データを持つ地図データを対象にしており、特に道路に関する情報はベクトル形式で情報を保持しているデータを対象にしている。本明細書では地図データは少なくとも道路に関する情報はベクトル形式で表現されていると仮定する。
【0124】
*位置の表現方法
ここでは位置の表現方法について説明する。位置の表現方法は大きく分けて、絶対位置表現方法、相対位置表現方法の二通りがある。
絶対位置表現方法とは、例えば緯度、経度の様な地球上における絶対的な位置を示す座標系を用いて位置を示す方法である。
一方で相対位置表現方法とはある絶対位置表現方法で表現された点を基準点として、表現したい位置がどの程度ずれているかで位置を示す方法である。
実施の形態1〜6では、地図全体が2次元平面座標系で表現されていると仮定し、絶対位置表現方法、相対位置表現方法共に東方向をX軸の正の方向、北方向をY軸の正の方向とし、それぞれの基準点から単位方向に対して何メートルはなれているかをXY平面上の二次元座標で表現するものとする。ただし、この座標系で無ければならないわけではなく、他の座標系を用いたとしても構わない。
【0125】
*メッシュ分割管理
ここまでで説明した位置の表現方法は地図データの管理方式に大きく関わりがある。例えばカーナビゲーションシステム等で日本全土の地図データを取り扱う場合、地図データ中に含まれる全ての情報を同一レベルで一括管理すると、処理負荷が非常に大きくなる。
例えばある位置を中心とした一定半径の円周内に存在する位置情報を検索する場合、検索対象は全ての位置情報となる。現在のカーナビゲーションシステムでは施設情報だけでも1千万件を超える情報を取り扱っている場合もある。また、操作時にユーザの快適性確保のために、検索開始から1秒以内に距離順にソートされた状態でユーザにリスト形式で表示する等の必達要求があり、一般家庭等で使われているパーソナルコンピュータ等と比較しても処理能力に劣る組込み機器であるカーナビゲーションシステムでは1千万件を超えるデータに対して処理を行う周辺検索では要求を達成するには多くの困難がある。
そのため多くの地図データでは、地図データで表現する全領域を幾つかの領域に分割し、出来たそれぞれの領域に含まれている全ての情報を1つの集合として取扱い、情報の分割管理を行う。
分割領域で管理することで、周辺検索を行う場合も、はじめに検索領域と重なる分割領域を抽出し、抽出された領域に含まれる情報のみを検索対象とすることで、処理をしなければならない対象情報を絞り込むことができる。
またその際に、領域ごとに基準点を設け、その領域に含まれている情報に関する位置は、その領域に対して設定された代表点を基準点とした相対位置表現方法によって表現することで、位置に関するデータのデータサイズの削減でき、そして領域が十分に小さく設定されていれば、その領域内での距離を求める際に地球の曲率を無視することができ、平面直交座標系で算出することができるようになり、計算量の削減などにも効果がある。以下、位置を示す場合は特に断らない限り、相対位置表現として考え、異なるメッシュ間の位置を比較する場合等においては、絶対値表現に変換してから、比較することとする。
【0126】
簡単な領域分割方式の1つとして、地図データで表現する全領域に対して一定サイズの領域で隙間無く、かつ重複なく分割する方式が考えられる。
図29はこの方式の具体例である。
この図では一定サイズの長方形領域をX軸方向にN個、Y軸方向にM個敷き詰めることで日本全土をN*M個の領域に分割している。以降、分割されて出来た領域のことをメッシュと呼ぶ。最も左下の分割領域をメッシュ(1,1)、そのX軸に正の方向で隣接する分割領域をメッシュ(2,1)、Y軸に正の方向で隣接する分割領域をメッシュ(1、2)の様に表現していくと、最も左上の分割領域はメッシュ(1、M)、最も右下の分割領域はメッシュ(N、1)、最も右上の分割領域はメッシュ(N、M)と表現できる。
分割領域のサイズを一定にしているため、全てのメッシュにおける代表点を例えばメッシュの左下の頂点とした場合、この方法ではメッシュ(1、1)の左下の頂点の絶対座標が分かれば、他のメッシュの代表点は計算で求めることが可能である。
【0127】
例えばメッシュのX軸方向の辺長をLx、Y軸方向の辺長をLy、メッシュ(1、1)の左下頂点(代表点)の絶対座標を(X1,Y1)とした場合、メッシュ(A、B)の左下頂点(代表点)の絶対座標(Xa、Yb)の値はそれぞれ、
Xa=X1+(Lx*(A−1)) … 式1−1
Yb=Y1+(Ly*(B−1)) … 式1−2
で求めることが可能である。
【0128】
また、任意の位置(X、Y)がどのメッシュに属するかを判定する方法は、
Xa<X<=Xa+1 … 式2−1 Yb<Y<=Yb+1 … 式2−2
を満たすような整数a,b(0<a<=N、0<b<=M)を見つけ出せばよく、重複なく、隙間無く分割領域を設定しているこの方法であれば必ず唯一のメッシュを特定することが出来る。
【0129】
このように地図データを分割して管理することは、カーナビゲーションシステムの車載装置には永続的に地図データを持たす、必要な地図を適時、地図データ管理装置からネットワーク経由で取得するような地図データがサーバに集約されているカーナビゲーションシステムにおいても利点が大きい。分割領域単位で地図データを独立しているため、車載装置がより必要としている領域、例えば自車位置周辺や目的地周辺などの地図データを優先的に車載装置に送信することや、車載装置とサーバ間でのデータ交換時にどの領域のデータが交換されているのかを把握しやすい。
【0130】
ここまでで説明した方法は分割領域が重複なく、かつ隙間なく敷き詰める方式であった。
しかし、この方法では分割領域が位置する都市構造等に依存して情報数に偏りが発生し、また海上に位置する分割領域等では情報が1つもないのに領域管理を行う必要があり、非効率な面がある。そのような問題を解決するために、空間情報検索のインデックス手法の1つであるR−Treeなどを用いた、分割領域サイズも可変で、分割領域の重なりや全領域中に隙間を認める方法で分割領域管理をおこなっても構わない。また、領域分割を多重に行い、階層が上がるごとに整数倍の領域で分割していく、多重領域分割方式を用いてもよい。
ただし、本実施の形態及び実施の形態1〜6では直感的に理解しやすく、表現も簡潔に行える単一階層の重複なく、かつ隙間無く分割領域を設定する方法を用いて説明を行っている。
【0131】
地図データで使われるデータ構造
ここでは地図データで使われるデータ構造の具体的な例を図30に図示したものがあり、それを元に説明を行う。
【0132】
*点情報と線情報
地図データの多くはその位置に存在するものを表現するための点情報と、ある二点間の位置を始点と終点とし、その二点間を結ぶ線を表現する線情報を基本表現方法として利用し、表現される。
【0133】
図31は、地図データにおける点情報と線情報の例を図示したものである。
例えば、コンビニエンスストア101が緯度LAT102,経度LON102の位置102に存在する場合、そのコンビニエンスストア101は点情報として点102で表現され、その座標は(LAT102、LON102)と表現する。
また、ある道路112が位置(LAT103、LON103)の点103と位置(LAT104、LON104)の点104を結んでいる場合、その道路112は線情報で表現され、その始点と終点はそれぞれ点103、点104となる。
線情報に関しては始点と終点を直線で結ぶ場合もあれば、その間に補間点をK個(K>0)を設け、始点、補間点1、補間点2、…、補間点K、終点を順に結んで構成される連結線分で表現される場合もある。
この時、始点、終点および補間点全てを総称して構成点と呼ぶ。道路112は実際には、点122を始点、点123を終点として補間点として点103および点104で構成されている。
そのため、道路112は4点の構成点でデータ化されている。
その他、連結線分で表現される具体例としては、ある二つの交差点間を通る道路が円弧を描く形状をしている場合が挙げられ、その形状を近似表現するために適切な位置に補間点を設置する。
例えば道路113は始点104から終点124を結ぶ道路であるが、形状は曲線であり、補間点として点106から点111および点105を持ち、点104、点106、点107、点108、点109、点110、点111、点105、点124を順に結んで構成される連結線分で表現されている。
【0134】
線情報を複数まとめることにより、ある閉領域を表現することも可能である。
例えば、コンビニエンスストア101の敷地形状を表現する場合には、例えば敷地の頂点にそれぞれ点125、点126、点127、点128を設定し、点125、点126で構成される線情報、点126、点127で構成される線情報、点127、点128で構成される線情報、点128、点125で構成される線情報によって囲まれる閉領域として表現可能である。
開領域も閉領域同様に線情報を複数まとめることで表現可能である。ここでは閉領域と開領域をあわせて領域と呼び、閉領域または開領域の情報を領域情報と呼ぶ。
実施の形態1〜6では、地図データを2次元直行座標平面上で表現することを前提としているため、基本となる情報は点情報、線情報とその応用である領域情報で表現可能である。
しかし、地図データは2次元直交座標平面上で表現しなければならない制約は無く、例えば3次元空間で表現しても構わない。その場合には高さ情報が点情報に加わり、それを組み合わせることで作り出される情報も線情報と領域情報だけではなく、3次元領域を表現するための体情報を取り入れても構わない。
【0135】
図30の点情報は、点情報の具体的なデータ構造を図示したものである。
レコードサイズとは、この点情報全体のデータサイズを格納する領域である。点情報にはその位置に存在するものの情報を記述する役目があり、ものによって記述する情報量が異なるため、点情報は基本的に可変サイズとなっている。
種別とは、その位置に存在するものの分類番号を格納する領域である。例えば、道路、交差点、信号機、道路標識、歩道、中央分離帯などの交通路を形成する実体から、それ以外の店舗、事務所、住宅、空き地などを唯一に特定可能な値が格納される。種別はこの点情報が表現する実体の分類が一意に識別できる値であればよく、番号ではなく、例えば文字列などの形式で表現しても構わない。
代表点とは、この点情報が指し示す位置を示す座標を格納する領域である。点情報はメッシュ単位で管理されるため、代表点はメッシュの基準点を用いた相対位置記述に従う。地図データは二次元直交座標平面で表現されるため、代表点も二次元ベクトルとして表現される。
属性数は、この点情報が表現する実体に関して記述している属性情報数を格納する領域である。
属性リストは、この点情報が表現する実体に関する、属性情報を格納する領域であり、属性数が保持する値と同数の属性が格納されている。例えばある点情報が交差点を表現している場合、その交差点の名前などの情報を格納している。具体的な属性のデータ構造の例は後述する。
拡張データは、上記までで説明したデータ以外に追加でデータを記述する場合に利用する予備領域である。
【0136】
図30の線情報は、線情報の具体的なデータ構造を図示したものである。
レコードサイズとは、この線情報全体のデータサイズを格納する領域である。線情報はある実体の形状を表現する役目があり、その形状や構成点の個数によって記述される情報量が異なるため、線情報は基本的に可変サイズとなっている。
種別とは、この線情報が線を表現しているのか領域を表現しているのかを示す情報分類番号を格納する領域である。本実施の形態では線情報か領域情報かを分類できる情報分類番号するだけでも構わないが、それ以外の形状を特に分類したい場合にはそれに対応する情報分類番号を追加しても構わない。例えば、地図データを3次元で表現したい場合には体情報を線情報で表現する必要があるため、体情報に対応する情報分類番号を追加する。種別はこの線情報が表現する情報を一意に識別できる値であればよく、番号ではなく、例えば文字列などの形式で表現しても構わない。
構成点数とは、線情報に含まれている構成点の個数を格納する領域である。
構成点リストとは、線情報に含まれている構成点の位置を示す座標を格納する領域であり、構成点数に格納されている値と同数の座標が格納されている。本実施の形態では、構成点リストの最初の座標を始点とし、その次の座標を始点と連結する構成点、その次の座標を1つ手前の構成点と連結する構成点の様に座標を格納し、最後の要素は終点の座標を格納するものと仮定する。
属性数とは、この線情報が表現する実体に関して記述している属性情報数を格納する領域である。
リンク・ノード形状属性リストとは、この線情報における構成点であるノードもしくは構成点を連結して作られる線分であるリンクに関する形状を表現する属性情報を格納する領域であり、属性数が保持する値と同数の属性が格納されている。例えば、あるリンクを描画する時に線の太さ、色、接合点における描画形状等の描画する際に必要となる情報を属性として格納する。
拡張データは、上記までで説明したデータ以外に追加でデータを記述する場合に利用する予備領域である。
【0137】
図30の属性は、点情報の属性リストおよび線情報のリンク・ノード形状属性リストに格納する属性情報を表現するデータ構造である。
属性種別とは、この属性がどのような属性を表現するのかを示す属性分類番号を格納する領域である。例えば、点情報が交差点を表現している場合に、その交差点名を格納する属性の属性種別は名称を示す属性分類番号が格納される。また、線情報に含まれるリンクを描画するときに、線の幅を表現する属性の属性種別は幅を示す属性分類番号が格納されている。属性種別には、その属性がどのような属性を表現しているのかを一意に識別可能な情報を格納していればよく、番号に限らず文字列など他の形式であっても構わない。
属性従属フラグとは、その属性が他の属性を修飾する目的を持っている場合、例えば、線情報に含まれるリンクを描画する際の形状を直線と規定する属性に対して、その直線の幅や色などを規定する場合、幅や色を規定する属性は直線を規定する属性に従属することになる。その場合には、属性従属フラグには従属する属性がリンク・ノード形状属性リストの要素の順番が格納される。従属していない属性の場合には属性従属フラグには0が格納される。
属性サイズは、その属性値のデータサイズを示す値が格納される領域である。
属性値は、その属性の値を格納する領域であり、そのサイズは属性サイズに格納されている値と同じである。また、属性値の内部のデータ構造は属性種別毎に規定されており、例えば属性種別が名称である場合には、属性値のデータ構造は文字列となるが、線情報に含まれる特定リンクの描画形状を表現する属性の場合、属性値のデータ構造は描画形状を規定するリンクの開始点となる構成点の構成点リスト中の順番と、形状を示す情報が含まれることが考えられる。
【0138】
図30のメッシュデータは、あるメッシュに含まれる実体を表現する情報を格納するためのデータ構造である。
レコードサイズとは、このメッシュサイズのサイズを示す値を格納する領域である。
メッシュ識別子とは、このメッシュが地図全体におけるどのメッシュであるかを唯一に識別可能とする値を格納する領域である。図29に示すような地図全体を同一形状のメッシュで隙間および重複なく敷き詰める方式であれば、例えば左下のメッシュから数えて、右に何番目、上に何番目にあるメッシュであるかを示す座標情報であっても構わない。メッシュ識別子は、そのメッシュが唯一に識別できればデータ形式は問わず、座標であっても、文字列であっても、数値であっても構わない。
点数とは、このメッシュデータに格納される点情報の個数を格納する領域である。
線数とは、このメッシュデータに格納される線情報の個数を格納する領域である。
点情報リストとは、このメッシュに格納する点情報を格納する領域であり、その点情報の個数は点数の値と同数である。
線情報リストとは、このメッシュに格納する線情報を格納する領域であり、その線情報の個数は線数の値と同数である。
【0139】
図30の基本管理情報とは、ここまでに説明したデータを利用して、表示装置に地図を描画する場合に必要となる情報を保持するためのデータ構造である。
ベースメッシュ代表点とは、基準となるメッシュデータの基準点の座標を格納する領域である。メッシュデータにはメッシュ毎の基準点の座標を格納していないが、前述のとおり、基準となるメッシュデータの基準点が既知であれば、算術によって他のメッシュデータの基準点を導出することができるため、記述不要なためである。
ベースメッシュ識別子は、基準となるメッシュデータのメッシュ識別子を格納する領域である。
表示対象メッシュ数とは、描画する領域との重なりがあるメッシュの個数を格納する領域である。
表示対象メッシュとは、描画する領域との重なりがあるメッシュのメッシュデータをリスト管理する領域であり、その要素数は描画対象メッシュ数に格納されている値と一致する。
縮尺は地図を描画する際に、地図データに記載されている実測値で描画することは現実的ではなく、通常ある縮尺を元にサイズを縮小して描画する。その際の縮尺を格納する領域である。例えば、縮尺が25000分の1であれば、縮尺の領域には25000が格納されている場合が考えられる。また、縮尺の選択肢が限定されている場合、図30のScaleの様に列挙子を定義し、その値で縮尺を表現する方式であっても構わない。
表示領域重心とは、地図上における表示装置に表示する領域の重心座標を格納する領域である。本実施の形態では表示領域は長方形であると仮定するが、長方形に限定する必要はなく、他の形状であっても構わない。
表示領域幅とは、表示領域の横辺の長さを実測値で格納する領域である。
表示領域高さとは、表示領域の縦辺の長さを実測値で格納する領域である。例えば、表示装置において縦10センチ、横20センチの領域に縮尺25000分の1の地図を表示する場合、
表示領域幅 =20*25000センチ=5000メートル
表示領域高さ=10*25000センチ=2500メートル
となり、表示領域幅の領域には5000、表示領域高さの領域には2500が格納されることが考えられる。
表示領域回転角とは、表示領域幅の長さの辺がX軸となす角度のことであり、その角度は0度以上360度未満となる。図32を用いて具体的に説明する、図中の長方形は表示領域であり、表示領域幅がXr、表示領域高さがYrである。この時、表示領域幅に対応する辺はこの長方形の長辺であり、長辺とX軸がなす角度はθである。
【0140】
以上までに説明したデータ構造は実施の形態1〜6の地図描画装置1201及び地図データ管理装置1301で使用されることが想定される情報が漏れること無く格納することを前提に構成された具体例の1つであり、必ずしもここで説明したデータ構造と同じ情報を保持していなければならないわけではない。また、ここで説明したデータ構造には存在しない情報を保持していてはいけないわけではない。
【0141】
図30で示したデータ構造に基づく具体的なメッシュデータ例を図33に示す。
図33は、図30のメッシュデータのフォーマットに従い、レコードサイズ、メッシュ識別子、点数、線数、点情報リスト、線情報リストの例が示される。
図33の例では、点数は10なので、メッシュデータには10個の線についての点情報リスト(レコードサイズ、種別、代表点、属性数、属性リスト、拡張データの項目を含むリスト)が並ぶはずだが、作図上の都合により、図33では一つの点情報リストのみを例示している。
また、同様に、線数は3なので、メッシュデータには3個の線についての線情報リスト(レコードサイズ、種別、構成点数、構成点リスト、属性数、リンク・ノード形状属性リストの項目を含むリスト)が並ぶはずだが、作図上の都合により、図33では一つの線情報リストのみを例示している。
また、図33に示している線情報リストでは、属性数が10個となっているので、リンク・ノード形状属性リストが10個並ぶはずだが、作図上の都合により、図33では2つのリンク・ノード形状属性リストのみを例示している。
【0142】
点情報リストにおいて、一番目の点情報(図33に図示)は種別、代表点より相対位置座標(PX1,PY1)に交差点が存在することを示している。また、属性リストから形状がT字路、名称はABC小学校前、交差点の色はGrayであることが分かる。
また、二番目以降の点情報(図33に不図示)についても、種別、代表点、相対位置座標、属性リストから、道路の種別(国道、県道等)、道路番号、道路の車線数、車線幅、交差点の位置、交差点の形状、交差点の色、信号機の位置、信号機形状等が抽出できるようになっている。
【0143】
また、線情報リストにおいて、一番目の線情報(途中までを図33に図示)は種別、構成点数、構成点リストより始点(PX81,PY81)、終点(PX82,PY82)とする線を表現している。リンク・ノード形状属性リストより、形状は直線で道路の色はGray、道路全体の幅は3で、順方向、逆方向の車線ともに1本、中央分離帯の幅が1で中央分離帯の色はGreen、境界線はDark grayで描画することが示されている(一部の要素は図示を省略)。
また、二番目以降の線情報(図33に不図示)についても、種別、構成点数、構成点リスト、リンク・ノード形状属性リストから、道路の形状、道路の色、道路幅、中央分離帯幅、中央分離帯の色、境界線の色等が抽出できるようになっている。
【0144】
そして、図33のメッシュデータにおける具体的な位置関係を例示した図が図34である。
図34では、図33のメッシュデータの記述に従って、交差点を示しているものとする。
点情報リストの要素は、例えば、順番に位置401、402、403、404、405、406、407、408,409,410に対応する。
また、線情報の要素は、例えば、順番にベクトル411、414、417に対応する。また、例えば、一番目の線情報の始点、終点は点412、413、二番目の線情報の始点、終点は点415、416、三番目の線情報の始点、終点は点418、419に対応する。
【0145】
しかし、メッシュデータには位置と形状の情報しか含まれておらず、それぞれ交差点、交差点進入口、道路の間にある関係性を導出することは出来ない。
このように位相情報を明示的に記述しないデータ表現方式を暗示的位相記述方式と呼ぶ。明示的にデータ内に位相情報を記述する方式と比較するとデータサイズが小さく、地図データに対するデータの追加、削除が容易に実現できる利点があり、高頻度に地図更新処理を実施する場合に適したデータ表現方式と言える。
暗示的位相記述方式で表現された地図データでは通常、位置関係によって情報間の関係を導出する。例えば、ある実体を表現する情報の半径Rメートルの円周内に存在するものは関係があるといった規則を導入し、関係性を導出する方法である。この規則に関しては通常データ構造と共に決定するが、データ処理装置側でその規則とは異なる規則を導入して関係性を導出しても構わない。
【0146】
また、本実施の形態では、関係性を導出するために円を用いたが円形である必要性はなく、他の形状でもよく、形状を決定するパラメータも任意の実体で同じとしても、実体の種別毎に固定で与えても、実体に対する属性で与えても、それ以外の方法で決定しても構わない。また、形状ではなく点の座標が一致するか否かで判定しても構わない。
【0147】
また、本実施の形態では、交差点と交差点進入口、信号機の関係、交差点進入口と道路の関係、線情報と道路属性の関係のみを例示したが、それ以外の関係が無いわけではなく、それ以外の実体、例えば道路と道路の関係、道路と標識の関係、道路や交差点と建物・施設等の関係等地図データで表現される全ての実体同士での関係を通常は規定可能としても構わない。
【0148】
図34では、交差点の位置401を中心とする円420内に入る点は全てこの交差点に関連性があるものとしている。よって、この交差点に接続する交差点進入口および信号機の位置関係が決定されるため、T字路をどのような向きで描画すればいいかも決定できる。この場合、交差点に対して左側と上下から交差点進入口が関連しているため、Tを反時計回りに90度回転した形状でT字路を描画すればいいことが分かる。
また道路属性を示す点408、409、410は円424、425、426内に含まれている点と関連性があるものとし、どの線情報に対する道路属性であるかが決定され、ベクトル411に対応する線情報は国道25号線、ベクトル414に対応する線情報は国道31号線、ベクトル417に対応する線情報は国道56号線と決定する。
同様に交差点進入口402、404,406は円421、422、523それぞれの内側に入る点はそれぞれの交差点進入口に関連性があるものとし、どの交差点進入口はどの道路と連結しているのかが決定される。例えば、図33に例示したメッシュデータから、例えば、右側からの交差点進入口には国道25号線、下からの交差点進入口には国道31号線、上からの交差点進入口には国道56号線が接続するということが導かれる。
【0149】
本実施の形態では、同種同番号の道路は1つの線情報で表現することとする。
例えば、図34のデータでは、国道25号線はベクトル411が表現する線分のみということになる。
もし、ベクトル411の右側にまだ国道25号線が続いている場合には、国道25号線が終るまで構成点を設定する必要がある。構成点は通常は道路を描画する際に実際の道路の形状と大きくかけ離れない程度に道路の変更点として基準を設定する。しかし、1つの線情報で表現するのは実施の形態を簡潔にするためであり、1つの線情報で同種同番号の道路を表現しなければならないわけではなく、複数の線情報や点情報で表現しても構わない。
【0150】
次に、複数のメッシュを通る道路の表現方法について説明する。
道路はメッシュの分割方式とは無関係に存在しているため、道路の多くは複数のメッシュにわたって存在する。メッシュ単位で情報を独立させて管理させる必要があるため、そのような道路はメッシュの切れ目で線情報を分離し、それぞれの線情報に対して道路の属性を示す点情報を設定するものとする。
具体的な例を挙げて説明する。
図35はメッシュ1001、1002、1003、1004を通る道路1005を図示している。この道路1005が国道B号だとしたとき、各メッシュでの国道B号のデータは図36の通りになる。
【0151】
図36は、図35で示した国道B号を各メッシュでどのようにデータ表現しているかを図示している。
国道B号はメッシュ1004からメッシュ1003を通り、メッシュ1001まで続いている。そのため、国道B号はメッシュ1004内に存在する国道B号、メッシュ1003内に存在する国道B号、およびメッシュ1001内に存在する国道B号に分割して管理される。そのため、メッシュ1004に対応するメッシュデータには線情報1101と国道B号の属性を保持する点情報1104が格納されている。同様にメッシュ1003に対応するメッシュデータには線情報1102と国道B号の属性を保持する点情報1105があり、メッシュ1101に対応するメッシュデータには線情報1103と国道B号の属性を保持する点情報1106が格納されている。
【0152】
このようなデータ分割を行った場合、描画する時にメッシュの境界線で分割されている箇所をそのまま連結していないとして処理を行うと、メッシュ毎に非連続に存在する国道B号が存在すると言う、間違った解釈が行われる。
そのため、メッシュの境界線付近で終了している道路を表現する線情報があった場合、その線情報の構成点のうち、一番メッシュの境界線に近い構成点を中心として、メッシュの境界線に隣接する隣接メッシュを含めて一定範囲内に同種同番号の道路が存在する場合、その道路は連結しているものとして描画処理を行う。
例えば、線情報1101はメッシュ1103との境界線に最も近い構成点1109を基準として一定範囲1107を設定し、メッシュ1103からその範囲に構成点が含まれる国道B号の線情報があるか検索すると、線情報1102が該当する。そのため、処理では構成点1109と構成点1110の間には道路があるものとして処理を行う。同様に線情報1102のメッシュ1101との境界線に最も近い構成点1112を基準として一定範囲1108を設定し、メッシュ1101からその範囲に構成点が含まれる国道B号の線情報があるか検索し、線情報1103が該当するため、構成点1112と構成点1111の間には道路があるものとして処理を行う。
【0153】
次に以上までに導出した関連性を利用し、図33のメッシュデータを下に地図を具体的に描画した場合の一例を図37に示す。
この例では、メッシュ(M,N)全体を描画領域として描画している。この時、点情報の代表点や線情報の構成点から各実体の位置と距離が算出される。それぞれの座標はメッシュの左下からの相対座標表現で記述されているため、位置関係は座標からそのまま導出される。また二点間の距離に関しては二次元直交座標平面を前提としているため例えば、2点(X1,Y1)、(X2,Y2)間の距離Dを求める場合、
D^2=(X1−X2)^2 + (Y1−Y2)^2
を利用して算出できる。
しかし位置関係および距離に関しては実測値で求まるため、基本管理情報の縮尺情報を利用し、画面上でのサイズに変換しなければならないが、位置関係、距離共に縮尺の値で割り算して求めた結果が画面上のサイズとして算出できる。
交差点301は点情報リストの一番目の要素に対応する交差点である。その交差点に対して交差点進入口302、304、306が接続されており、それぞれが点情報リストの二、四、六番目の要素に対応する。次に車両用信号機303、305、307が交差点進入口には設置され、それぞれが点情報リストの三、五、七番目の要素に対応する。
最後に道路308、309、310が交差点進入口に接続されており、その道路を示す点情報はそれぞれ点情報リストの八、九、十番目の要素に対応しており、その形状はそれぞれ線情報リストの一、二、三番目の要素に対応する。それぞれの実体間の結合は導出された関連性がある実体間のみで行われる。
【0154】
図37ではメッシュの領域が描画領域となっていた。しかし、一般的には複数のメッシュ利用し、その一部のメッシュでは対応するメッシュデータ全てを利用するが、それ以外のメッシュでは描画領域かはみ出た部分を除いた情報のみを利用し、1つの地図を描画することになる。
【0155】
以上の説明を前提にして、地図描画装置1201が地図データ管理装置1301から地図データを取得する手順を、図38のシーケンス図を元に説明を行う。
なお、図38のシーケンスは、実施の形態1において示した図2の地図データの要求ステップ(S1001)及び地図データの受信ステップ(S1002)の一例を示す。
【0156】
まず、地図描画装置1201の通信装置1205は地図データ管理装置1301に対して地図データ要求を行う。
この地図データ要求と共に、具体的に取得したい領域を指示することが可能であり、その指示方法には、例えば、以下の(1)〜(6)がある。
(1)領域に対応するメッシュ識別子リストで領域を指示する。
(2)点情報によって取得したい地点を指示し、地図データ管理装置1301側でその地点を含む領域を判定する。
(3)点情報によって取得したい地点を指示し、その点を中心にした半径も同時に指示し取得する領域を指示する。
(4)線情報によって必要な経路を指示し、地図データ管理装置1301側でその経路を含む領域を判定する。
(5)面情報を構築し、その面情報で取得したい領域を指示する。
(6)現在位置、経由地点、最終目的地を要求に記述し、地図データ管理装置1301側で現在地、経由地点、最終目的地を通る経路を作成し、その経路を含む領域を判定する。
【0157】
また、具体的に取得したい領域を指示しない場合には地図データ管理装置1301で、全地図データ取得と判断してもよい。
地図データ管理装置1301は受け取った地図データ要求とそこに与えられたパラメータの有無とそのパラメータの内容によって、要求元の車載装置に提供するメッシュを決定する。そして車載装置に提供すると決定したメッシュのメッシュ識別子をリスト形式で車載装置に返す。その際に、メッシュ識別子リストに対して、どの順番でメッシュを取得すべきか指示する情報を付加しても構わない。また、リストの格納順に取得するなどシステムで取り決めを作っておく方法でも構わない。
メッシュ識別子リストを受け取った車載装置は、そのリストに格納されている識別子をパラメータとしてそのメッシュに関する情報が格納されているメッシュファイルを地図データ管理装置1301に順次要求する。
その際に、取得順番がメッシュ識別子リストに記載されている場合や、取得順序についてシステムとして取り決めがある場合にはその決められた順序に従って取得しても構わない。また、メッシュ識別子リストに格納されている識別子の内容と車載装置に格納されている情報や、車両から取得される各種情報等を用いて、メッシュファイルの取得順序を車載装置側で決めても構わない。また、要求完了後、メッシュ情報を格納するためのメッシュデータ領域を車両装置はメモリ領域に確保する。
【0158】
次にメッシュファイル要求を受けた地図データ管理装置1301はその要求に格納されているメッシュ識別子に対応するメッシュファイルを車載装置に返す。
メッシュファイルには、そのメッシュ内に存在する点情報を格納した点情報ファイルに関する情報をまとめた点情報ファイルリスト、そのメッシュ内に存在する線情報を格納した線情報ファイルに関する情報をまとめた線情報ファイルリストが格納されている。
メッシュ識別子リストと同様に、点情報ファイルリスト、線情報ファイルリストそれぞれ、もしくは統合してどの順番で取得すべきか指示する情報を付加しても構わなく、同様にリストの格納順に取得するなどのシステムで取り決めを作っておく方法でも構わない。
【0159】
次にメッシュファイルを受け取った車載装置は、そのファイルに格納されている点情報ファイルリスト、線情報ファイルリストに格納されているファイル情報を取得し、その情報を元に各点情報ファイル、線情報ファイルの取得要求を行う。その際に、メッシュ識別子リストの場合と同様に、取得順序が予めメッシュファイルに記載されている場合や取得順序についてシステムとして取り決めがある場合にはその決められた順序に従って取得しても構わなく、同様にメッシュファイルに格納されている情報と、車載装置に格納されている情報や、車両から取得される各種情報等を用いて、点情報ファイル、線情報ファイルの取得順序を車載装置側で決めても構わない。
【0160】
次に点情報ファイル取得要求もしくは線情報ファイル取得要求を受けた地図データ管理装置は、その要求に基づいて、対応する点情報ファイル、もしくは線情報ファイルを車載装置に返す。ここで点情報ファイルには、点情報が1つ以上記録されているファイルで、線情報ファイルには、線情報が1つ以上記録されているファイルのことである。
【0161】
最後に点情報ファイルもしくは線情報ファイルを取得した車載装置は、そのファイルを解析し、そのファイルに格納されている情報を全て、もしくは一部を格納するために必要なメモリ領域を確保し、その領域にデータを格納する。そして、その情報を対応するメッシュデータに関連付けを行う。
【0162】
以上の様にネットワーク経由で地図データを車載装置が取得した場合、利用するネットワークの状況によっては要求した地図データが全て取得できずに、一部が取得できない状態に陥る場合が考えられる。
例えば地図データ取得中に、ネットワーク障害が発生し、車載装置と地図データ管理装置間で通信が出来なくなる場合や、ネットワークに携帯電話網を利用している場合、車載装置が利用している携帯電話が電源不足に陥り、通信不能に陥る場合や、地図データ管理装置の通信処理系の不具合によって、車載装置からの要求を受け付けることができなくなる場合や、地図データ管理装置が許容数を超える車載装置からの要求を受け付けたために、車載装置へ地図データ管理装置からの応答を返せなくなる場合や、地図データ管理装置の処理系の不具合でサーバ機能がダウンしてしまう場合等が考えられる。
【0163】
以上の実施の形態1〜6では現在位置と呼ぶ位置情報を利用して処理が行われるが、この現在位置を、通常は位置検出装置1203を利用して取得した、実際に地図描画装置1201が存在する位置情報を現在位置としても構わないが、例えば中央制御装置1202が決定した位置を現在位置としても構わない。
また、操作パネル1207を利用して利用者等システムの外部から入力された位置を現在位置としても構わない。
【0164】
また、実施の形態1〜6では現在進行方向と呼ぶ移動方向情報を利用して処理が行われるが、この現在進行方向とは、通常は現在位置を終点、その前に現在位置となっていた座標を始点としたベクトルとしても構わないが、例えば中央制御装置1202が決定したベクトルを現在進行方向としても構わない。
また、操作パネル1207を利用して利用者等システムの外部から入力されたベクトルを現在進行方向としても構わない。
【0165】
以上の様に、位置検出装置1203から取得した位置情報を元に現在位置と現在進行方向を決定する具体的な例としては、地図描画装置1201を保持した利用者が移動中に現在周辺の地図を表示可能とするアプリケーションが考えられる。
地図描画装置1201が現在位置と現在進行方向を決定する具体的な例としては地図描画装置の動作をデモンストレーションするためのアプリケーションが考えられる。
また、利用者等のシステム外部からの入力を現在位置と現在進行方向とする具体的な例としては、利用者が現在位置とは異なる領域の地図を表示できる様にするアプリケーションが考えられる。
【0166】
*全体処理工程
次に、地図描画装置1201における全体処理工程について説明する。
図39は地図描画装置1201における全体処理フローを示すフローチャート図である。
【0167】
地図描画装置1201は電源が投入されると起動処理S101が実行される。
ここでは、地図描画装置1201の初期化や次の処理S102の前処理等を行う。
起動処理S101が完了すると地図描画処理S102が実行される。
地図描画処理S102が実行中に電源断ボタンが押下された、描画処理終了要求が通知された、終了時間となった等地図描画処理を終了するトリガーがかかった場合、次の終了処理S103を行い、地図描画装置1201の全体処理は完了する。
また、終了処理S103では直前の処理S102の状態を保存しておき、次回起動時に前回終了時の状態に復帰する形で処理S102を開始できる様にしてもかまわない。
【0168】
次に、図39に示した地図描画処理S102に関する全体処理工程について説明する。
図40は地図描画処理S102に関する全体処理のフロー図である。
この処理は起動直後に地図出力装置1206に初回の地図出力を行う処理と、現在位置の変化に応じて地図出力を更新する処理が行われる。
【0169】
地図描画処理S102が開始されると、まず基本情報処理取得S201が実行される。
この処理では基本管理情報におけるベースメッシュ代表点、ベースメッシュ識別子、縮尺に関する情報を取得し基本管理情報を更新する。
ベースメッシュ代表点およびベースメッシュ識別子は通信装置1205から地図データ管理装置1301に接続し取得する方法が考えられる。
それ以外に、地図格納装置1204に格納されている場合は地図格納装置1204から取得しても構わない。
縮尺に関しては中央制御装置1202がデフォルト値を無条件に設定する方法や操作パネル1207による利用者からの入力を利用する方法が考えられる。それ以外に、縮尺情報が地図格納装置1204に保存されている場合にはその情報を取得しても構わない。
【0170】
次に現在位置取得処理S202が実行される。
実施の形態1〜6では、現在位置と呼ぶ位置情報を利用して処理が行われる。
現在位置取得処理S202は、この現在位置を決定する処理であり、前述のとおり、通常は位置検出装置1203を利用して取得した、実際に地図描画装置1201が存在する位置情報を現在位置としても構わないが、例えば中央制御装置1202が決定した位置を現在位置としても構わない。また、操作パネル1207を利用して利用者等システムの外部から入力された位置を現在位置としても構わない。
【0171】
次に描画領域決定処理S203が実行される。
この処理では基本管理情報の表示領域重心、表示領域幅、表示領域高さおよび、表示領域回転角を決定する。
なお、表示領域重心は処理S202で決定した現在位置と同じ値とする。
また、表示領域幅および表示領域高さは、地図出力装置1206から出力を行いたい地図サイズの幅と高さとする。
地図サイズは様々な決定方法があるが、例えば縦Dhセンチ、横Dwセンチの表示領域を持つディスプレイに全画面で縮尺がSの地図を表示したい場合、以下の式で求められる。
表示領域幅 =Dh*S/100メートル
表示領域高さ=Dw*S/100メートル
【0172】
例えばDh=15、Dw=20、S=25000の場合には、
表示領域幅 =15*25000/100=3750メートル
表示領域高さ=20*25000/100=5000メートル
と求められる。
【0173】
次に、表示領域回転角の決定方法であるが、地図格納装置1204に前回算出結果が格納されている場合には、その値を利用しても構わない。
それ以外に、中央制御装置1202でデフォルト値を設定しても構わないし、利用者が操作パネル1207で入力した値に設定しても構わない。
【0174】
次に、描画対象メッシュ算出処理S204が実行される。
この処理では、処理S203で求められた描画領域に重なるメッシュの識別情報を算出する。
具体的なアルゴリズムは図41を用いて説明する。
【0175】
図41において、長方形1301は表示領域であり、それを取り巻く正方形はそれぞれがメッシュである。一番左下のメッシュをメッシュ(1,1)とし、上に隣接するメッシュをメッシュ(1,2)、右に隣接するメッシュをメッシュ(2,1)の様に識別する。点1305は表示領域重心であり、処理S203で決定された座標である。点1302、1303、1304、1305は表示領域の頂点でである。
【0176】
頂点1302、1303、1304、1305の座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)は表示領域回転角が0度の場合には表示領域幅Aw、表示領域高さAhと表示領域重心(Xc、Yc)を利用して、
X1=X2=Xc+Aw/2(≡Xupper)
X3=X4=Xc−Aw/2(≡Xlower)
Y1=Y4=Yc−Ah/2(≡Yupper)
Y2=Y3=Yc+Ah/2(≡Ylower)
として求められる。
よって表示領域回転角がθの場合には、2次元回転行列を利用して、
X1=Xupper * cosθ − Yupper * sinθ
Y1=Xupper * sinθ + Yupper * cosθ
X2=Xupper * cosθ − Ylower * sinθ
Y2=Xupper * sinθ + Ylower * cosθ
X3=Xlower * cosθ − Ylower * sinθ
Y3=Xlower * sinθ + Ylower * cosθ
X4=Xlower * cosθ − Yupper * sinθ
Y4=Xlower * sinθ + Yupper * cosθ
として求めることが可能となる。
【0177】
ここで、説明を簡単にするため、θが90度以上の場合には、表示領域頂点を時計方向に隣接する頂点と名前を入れ替える。
つまり、頂点1302を頂点1305、頂点1303を頂点1302、頂点1304を頂点1303、頂点1305を頂点1304と書き換える。この操作により、頂点1302をX座標値が最も大きい頂点とする。
【0178】
θが0度または90度の場合、表示領域の各辺は軸と平行である。そのため、表示領域と重なるメッシュを求める方法は以下の通りとなる。
まず表示領域の各頂点が所属するメッシュのメッシュ識別子をそれぞれ求める。ある点がどのメッシュに属するかは、式1−1、1−2、2−1、2−2を利用して求めることが可能である。各辺が軸と平行であるため、頂点1302、1303、1304、1305が属するメッシュのメッシュの識別子を(MX1,MY1),(MX2,MY2),(MX3,MY3),(MX4,MY4)とした場合、
MX1=MX2≧MX3=MX4
MY2=MY3≧MY1=MY4
が成立する。
よって、表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子の集合Dは、
D={(x,y)|MX1≦x≦MX4 かつ MY2≦y≦MY4}
として求めることが可能である。
【0179】
次にθが0度および90度以外の場合に表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子の集合Dを求める方法を説明する。
ここでθが0度および90度ではないということは、表示領域の各辺は軸と平行ではないことを意味する。そのため、以下の方法で求める。
表示領域で最も右に存在する頂点1302から、頂点1303へ進む線分と頂点1305へ進む線分の一次式を求める。一次式はパラメータの傾きと切片が決まれば一意に決定できるので、それらを求める。
傾きは各頂点の差分で求められるため、それぞれの傾きGrad23、Grad25は、
Grad23=(Y1−Y2)/(X1−X2)
Grad25=(Y1−Y4)/(X1−X4)
として求められる。
次にそれぞれの切片Inter23、Inter25は、
Inter23=Y1−Grad23*X1=Y2−Grad23*X2
Inter25=Y1−Grad25*X1=Y4−Grad25*X4
と求められる。
【0180】
同様の方法を利用して頂点1303から頂点1304、頂点1305から頂点1304へ進む線分の一次式を求めることができ、それらの傾きと切片をGrad34、Grad54、Inter34、Inter54とすると、
Grad34=(Y2−Y3)/(X2−X3)
Grad54=(Y4−Y3)/(X4−X3)
Inter34=Y2−Grad34*X2=Y3−Grad34*X3
Inter54=Y4−Grad54*X4=Y3−Grad54*X3
で求めることが可能である。
【0181】
次に、表示領域の境界線がメッシュのY軸と平行な境界線と交差する座標を求める。
まずメッシュの境界線のX座標を求める。表示領域の境界線と交差する可能性のあるメッシュの頂点1302と頂点1304を結ぶ対角線が交差するメッシュの境界線のみである。
頂点1302が存在するメッシュのメッシュ識別子は(MX1,MY1)、頂点1304が存在するメッシュのメッシュ識別子は(MX3,MY3)であることより、交差する可能性のあるメッシュのメッシュ識別子のX成分Xcは、
MX3≦Xc≦MX1の範囲となる。
この範囲でのメッシュのY軸と平行な境界線のX成分は式1−1で求めることができる。
【0182】
次にメッシュのY軸と平行な境界線のX成分が求めることができたので、その値を利用してまず、頂点1302から頂点1303に続く境界線の交差座標を求め、その次に頂点1303から頂点1304に続く境界線の交差座標を求め、X成分の大きい順に並べ、その整列した座標列を、
Cupper={(CX1,UY1),(CX2,UY2),...,(CXk,UYk)
但し、CX1>CX2>...>CXk}
とする。
同様に頂点1302から頂点1305の境界線の交差座標、頂点1305から頂点1304の境界線の交差座標を求め、X成分の大きい順に並べた座標列を、
Clower={(CX1, LY1),(CX2,LY2),...,(CXk,LYk)
但し、CX1>CX2>...>CXk}
とする。
【0183】
次にCupperとClowerの同一順位座標間の線分左側から接するメッシュのメッシュ識別子を求め、それらの集合をDとする。
最後に頂点1303、頂点1304、頂点1305が属するメッシュの識別番号がDに含まれていない場合にはそのメッシュ識別子をDに追加すると、Dが表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子の集合となる。
【0184】
以上の方法を用いることによって、表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子集合を求めることが可能である。
ここで説明した方法はあくまでも求める方法の一例であり、この方法以外で求めても構わない。
また、本明細書で前提としているメッシュ構成方法とは異なる構成方法でメッシュを生成している場合にはそれに適した方法があるため、その場合にはその方法を用いることで構わない。
【0185】
処理S204が終了すると、次にメッシュデータ取得処理205を実行する。この処理では処理S204で求めたメッシュ識別子の集合Dに対応するメッシュデータを地図データ管理装置1301から取得する。
ここで実行する処理は図38で説明した方法で構わない。
しかし、この方法では表示領域に重なるメッシュデータのみしか取得できない。
しかし、例えば図42の様に移動開始地点1401から目的地1402までの経路案内を行う場合等であれば、既にこの先表示しなければならない領域1404(灰色のメッシュ領域)が案内経路1403から既知となっている。その場合には経路案内でこの先表示対象となることが分かっているメッシュデータに関しても同時に取得する処理を行って構わない。
また、それ以外の理由によって表示対象となるメッシュデータ以外のメッシュデータを取得する際にメッシュデータ毎に優先度を付けて、優先度の高い順にメッシュデータを取得する処理を実施しても構わない。
例えば、経路案内を行う場合であれば、事前に目的周辺の情報を参照したいといった要求が考えられる。
また、経路案内に従って走行することが容易に予想できるため、案内経路を表示する際に同時に表示しなければならない領域と重なるメッシュデータは確実に欲しいが、その領域の周辺は案内経路からそれて移動した場合等、例外状況にのみ必要となるため、そのような情報は案内経路を表示する際に同時に表示しなければならない領域より後で取得しても構わない。
そのような場合には、現在表示領域と重なっているメッシュデータの優先度を一番高くし、案内経路を表示する際に同時に表示する必要がある領域と重なるメッシュデータを二番目の優先度、目的地周辺のメッシュデータ群1405を三番目の優先度、案内経路の周辺メッシュデータ群1406を三番目の優先度に設定して、メッシュデータ取得処理を実行しても構わない。
また案内経路メッシュデータ1404も移動開始地点1401に近い経路と重なっているメッシュデータは目的地1402に近い経路と重なっているメッシュデータよりも早く必要であるため、案内経路1403の通過順にメッシュデータの取得優先度を設定しても構わない。
【0186】
次にメッシュデータ描画処理S206が実行されるが、通常であれば処理S205が完了してから処理S206を開始することで、出力される結果には必要な地図表示に抜けは無い状態にすることが出来る。
しかし、処理S205で行った取得処理で何かしらの表示できるデータが取得した時点で処理S206を並列動作させても構わない。その時に地図を画像として表示する際に図28の様に地図が表示できる領域と表示できない領域で異なる表示を行う等を行ってもよい。その場合には、最初に出力される結果は多くの抜けが存在する地図表示になるが、処理S205に対するデータ応答がある毎に処理S206を並列動作させることで徐々に抜けがすくなくなるような地図出力を行うことができるので、そのような方法であっても構わない。
【0187】
最後に地図更新描画処理S207であるが、この処理は通常は現在位置が変更されたことをトリガーとして実行される処理である。
現在位置が変更されると表示領域の重心が変更になるため、描画対象となるメッシュも変わる可能性がある。そのため、再度、処理S203、S204を実行し、前回のメッシュ識別子の集合Dとは異なるメッシュ識別子の集合D‘が生成された場合には、D’に含まれていてDには含まれないメッシュ識別子に対応するメッシュデータを取得するためS205を実行し、処理S206で地図の再出力を行う。
逆に集合Dに含まれて、集合D‘に含まれていないメッシュデータがある場合にはその情報は地図格納装置1204に保存する。地図格納装置1204に保存されたメッシュデータは通常は地図描画装置1201の電源断となるまで保存されたままとなる。
保存期間は電源断以降も保存されたままで、地図データ管理装置1301で地図データを更新予定となっている日時まで保存する方法もある。
この方法を取ることによって、地図データが更新されるまでの間は取得されたメッシュデータが最新であることは保証されているため、その間利用することが可能となる。また、地図データ更新予定日に地図格納装置1204に保存されたメッシュデータが更新されているか地図データ管理装置1301に確認を行い、更新されていない場合には次回の地図データ更新予定日まで保存したままとしてもよい。この方法を取ることによって、一旦保存されたメッシュデータは更新されるまでは地図格納装置1204に保存されることになり、そのメッシュデータを使用する際に地図データ管理装置1301と通信する必要がなくなるため、通信負荷を削減することも可能となる。
【0188】
処理S207は地図描画処理を終了するトリガーがあるまで、現在位置変更をトリガーとして繰返し実行される。
【0189】
最後に、実施の形態1〜7に示した地図描画装置1201のハードウェア構成例について説明する。
図43は、実施の形態1〜7に示す地図描画装置1201のハードウェア資源の一例を示す図である。
なお、図43の構成は、あくまでも地図描画装置1201のハードウェア構成の一例を示すものであり、地図描画装置1201のハードウェア構成は図43に記載の構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0190】
図43において、地図描画装置1201は、プログラムを実行するCPU911(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。
CPU911は、バス912を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)913、RAM(Random Access Memory)914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、スピーカ908、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
更に、CPU911は、FDD904(Flexible Disk Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907と接続していてもよい。また、磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード(登録商標)読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置の一例である。
通信ボード915、キーボード902、マウス903、スキャナ装置907、FDD904などは、入力装置の一例である。
また、通信ボード915、表示装置901、スピーカ908、プリンタ装置906などは、出力装置の一例である。
【0191】
表示装置901には、描画された地図及び通知情報が表示される。
また、スピーカ908からは、音声による通知情報が出力される。
【0192】
通信ボード915は、図1に示すように、地図データ管理装置1301とネットワークに接続されている。
通信ボード915は、地図データ管理装置1301から地図データを受信する。
【0193】
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
プログラム群923のプログラムは、CPU911がオペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922を利用しながら実行する。
【0194】
また、RAM914には、CPU911に実行させるオペレーティングシステム921のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。
また、RAM914には、CPU911による処理に必要な各種データが格納される。
【0195】
また、ROM913には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが格納され、磁気ディスク装置920にはブートプログラムが格納されている。
地図描画装置1201の起動時には、ROM913のBIOSプログラム及び磁気ディスク装置920のブートプログラムが実行され、BIOSプログラム及びブートプログラムによりオペレーティングシステム921が起動される。
【0196】
上記プログラム群923には、実施の形態1〜7の説明において「〜部」として説明している機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0197】
ファイル群924には、地図データ管理装置1301から受信した地図データが含まれる。
また、ファイル群924には、実施の形態1〜7の説明において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の算出」、「〜の比較」、「〜の抽出」、「〜の解析」、「〜の描画」、「〜の生成」、「〜の更新」、「〜の設定」、「〜の登録」、「〜の選択」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、実施の形態1〜7で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0198】
また、実施の形態1〜7の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、実施の形態1〜7の「〜部」、としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、実施の形態1〜7の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0199】
このように、実施の形態1〜7に示す地図描画装置1201は、処理装置たるCPU、記憶装置たるメモリ、磁気ディスク等、入力装置たるキーボード、マウス、通信ボード等、出力装置たる表示装置、通信ボード等を備えるコンピュータであり、上記したように「〜部」として示された機能をこれら処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を用いて実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】実施の形態1に係るシステム構成例を示す図。
【図2】実施の形態1に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図3】実施の形態1に係る地図描画装置の構成例を示す図。
【図4】実施の形態1に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図5】実施の形態1に係る未取得メッシュの例を示す図。
【図6】実施の形態1に係る未取得メッシュの例を示す図。
【図7】実施の形態1に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図8】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図9】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図10】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図11】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図12】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図13】実施の形態2に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図14】実施の形態2に係る画面表示例を示す図。
【図15】実施の形態2に係る画面表示例を示す図。
【図16】実施の形態3に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図17】実施の形態3に係るベクトル操作の例を示す図。
【図18】実施の形態3に係る道路に対する半直線の設定例を示す図。
【図19】実施の形態3に係るベクトルが平行な例及びベクトルが平行でない例を示す図。
【図20】実施の形態3に係るベクトルの角度と推定道路状況の関係を記述したテーブルの例を示す図。
【図21】実施の形態3に係る道路に対する補助曲線の設定例を示す図。
【図22】実施の形態4に係る画面表示例を示す図。
【図23】実施の形態4に係る画面表示例を示す図。
【図24】実施の形態4に係る画面表示例を示す図。
【図25】実施の形態5に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図26】実施の形態5に係る画面表示例を示す図。
【図27】実施の形態5に係る画面表示例を示す図。
【図28】未取得メッシュがある場合の従来の地図表示例を示す図。
【図29】実施の形態7に係る日本全土の領域分割例を示す図。
【図30】実施の形態7に係る地図データに用いられる具体的なデータ構造の一例を示す図。
【図31】実施の形態7に係る地図データにおける点情報と線情報の具体例を示す図。
【図32】実施の形態7に係る表示領域回転角の具体例を示す図。
【図33】実施の形態7に係る具体的なメッシュデータの一例を示す図。
【図34】実施の形態7に係る点情報と線情報の具体的位置関係の例を示す図。
【図35】実施の形態7に係る複数メッシュを通る道路の具体例を示す図。
【図36】実施の形態7に係る複数メッシュを通る道路の具体的なデータ表現例を示す図。
【図37】実施の形態7に係る具体的な地図描画例を示す図。
【図38】実施の形態7に係る地図データ管理装置からの地図データ取得方法の例を示す図。
【図39】実施の形態7に係る地図描画装置における全体処理フローを示すフローチャート図。
【図40】実施の形態7に係る地図描画処理の全体処理フローを示すフローチャート図。
【図41】実施の形態7に係る描画領域に重なるメッシュ識別子の集合を導出する手順を説明する図。
【図42】実施の形態7に係る経路案内時に取得するメッシュデータの例を説明する図。
【図43】実施の形態1〜7に係る地図描画装置のハードウェア構成例を示す図。
【符号の説明】
【0201】
1201 地図描画装置、1202 中央制御装置、1203 位置検出装置、1204 地図格納装置、1205 通信装置、1206 地図出力装置、1207 操作パネル、1208 音声出力装置、1211 入力部、1212 出力部、1213 地図データ要求部、1214 道路抽出部、1215 地図描画部、1216 通知情報生成部、1301 地図データ管理装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データを受信し、受信した地図データを用いて地図を描画する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術・無線通信技術の発展に伴いパーソナルコンピュータ、携帯型個人情報端末(以下PDA(Personal Digital Assistant)(登録商標))、携帯電話、カーナビゲーションシステムなどネットワークに接続可能な情報通信処理装置の普及が進んでいる。
特に近年、GPS(Global Positioning System)や各種センサー技術の発展・普及により、情報通信処理装置が現在存在する位置やその周辺の情報を情報通信処理装置の表示装置上に地図に重畳させて利用者に提供するサービスが増えてきている。
例えば、カーナビゲーションシステムでは、カーナビゲーションシステムの端末装置が実装されている自動車の位置をGPSシステムから取得し、自動車の現在位置等を地図上に重畳させ表示し、目的地までの経路案内や、現在位置周辺のレストランやホテル等の施設検索サービスを提供している。同様に、PDA(登録商標)や携帯電話でも同様のサービスが展開されている。
【0003】
従来では、カーナビゲーションシステムは描画する地図に関するデータ(以下地図データ)は端末装置が保持する例えばHDD(Hard Disk Drive)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)といった大容量記憶装置に全て格納し、必要に応じて必要な地図データを端末装置が大容量記憶装置から取得し、処理を行っていた。
しかし、端末装置の大容量記憶装置に存在する地図データを利用しているため、例えば新設道路が開設された、従来あった道路が廃道となった、コンビニエンスストアが新規開店した等の、少なくともその地図データが作成された日時以降に発生した地図を変更する要因が反映されていない。そのため、そのままの地図データを長く使い続けていると、実際の状況とは異なる地図を表示する、実際には存在しない経路を案内するなどといったシステムとしての問題が発生することになる。
そのため、カーナビゲーションシステムを提供する企業は定期的にカーナビゲーションシステムの端末装置利用者に対して、地図データの更新サービスを提供し、上記問題を解決することが多い。
しかし、従来の更新サービスは、更新サービスを受けるためには一時的に端末装置内のHDDをサービス提供側に預けるといった手間や、更新データを購入し、利用者が更新作業を行う必要があるという課題がある。
また、更新データを提供する間隔が半年に一回、もしくは一年に一回である場合が多く、その間に発生した変更には対応することができないと言う課題がある。
【0004】
そこで、最近ではネットワークに接続可能であるという利点を生かし、端末装置がネットワーク経由で地図データを管理している地図サーバにアクセスし、地図の更新データを取得可能とするための研究が進められており、一部サービス展開も始まっている。
この方法はネットワーク経由で地図データを更新できるため、利用者はHDDをサービス提供側に預けたり、更新データを購入するため店舗の出向いたりといった必要がなくなり、いつでも最新の地図データに更新することが出来るという利点がある。
【0005】
それ以外の解決方法として、端末装置側には地図データを記憶せず、端末装置が処理に必要な地図データのみをネットワーク経由で取得し、カーナビゲーションシステムを実現する方法も研究されている。この方法は端末装置に大容量記憶装置を実装する必要がないため、端末装置を安価に提供可能であり、地図データ側も各端末装置に差分更新データを提供する機能が不要であり、地図サーバ内で管理する地図データが最新であればよい。
しかし、端末装置が地図データを常時保持していないため、ネットワークに接続できない場合には地図データが取得できず、システムとして機能しなくなる課題が残されている。
ネットワークに接続できなくなる要因としては、ネットワークに接続する装置として携帯電話などの電力を電池に頼っている通信装置を利用している場合には電池不足によって接続ができない、ネットワークインフラが基地局を設置していない地域では接続ができない、ネットワークインフラ自体の障害で接続ができないなどが考えられ、決して無視できる程度の問題ではない。
【0006】
ネットワークに接続できなくなった場合、接続できなくなる以前までに取得できた地図データのみで端末装置は処理を行う必要があるが、地図データが取得できなかった領域を処理、特に画面表示装置に地図として描画しなければならない場合が発生すると、処理が出来なくなる問題があり、従来ではその領域にはシステム利用者がその領域の地図データが未取得であることを認識できる様に実取得領域に描画する地図と間違えにくい画像や警告文などを描画する等していた。
【0007】
図28は未取得メッシュデータに対応する領域を表示装置で表示した場合の一例である。
表示装置上にある領域の地図を描画している状況において、描画領域で対応する地図データが取得完了している領域はその情報を元に描画データを生成し、地図801を表示し、線情報を元に道路802を描画する。その他に点情報を元に道路名、交差点名などの属性情報を表示しても構わない。
次に地図データ取得が完了していない領域が描画領域に存在する場合、従来技術ではその領域の地図を描画することができない。その場合には、未取得領域に対応する描画領域803には何も描画処理を行わない、一定色による塗りつぶしを行う、特定パターンの画像を敷き詰める、地図データが取得できていないメッセージ804を描画する等の代替描画処理を行っていた。
【0008】
しかし、このような描画方法では、利用者には未取得領域の地図を全く知ることができなくなってしまい、利便性を損なう課題が残っている。
【0009】
このような課題を解決するために、様々な解決方法が検討されている。
1つは端末装置が保持している地図データ以外のデータを利用して地図データが未取得の領域の地図を表示する技術がある。
例えば特許文献1では、端末装置がある目的地までの経路案内を行っている際に、案内経路が、道路データが存在しない経路を通過する場合、その経路上には道路があるものとして描画が可能となる。
また特許文献2では、端末装置に保存される前記走行軌跡情報を利用し、道路データが存在しない領域で走行軌跡情報がある場合には、その走行軌跡情報を道路データとして利用して、道路描画が可能となる。
【0010】
また、地図データが取得完了していない領域に対応するデータが、一部は取得できている場合にそのデータを利用して取得完了していない領域の地図表示を行う技術がある。
例えば特許文献3では、描画指定された地域の部分拡大地図情報が存在しない場合で、表示指定されている縮尺とは異なる縮尺に対応する地図情報が取得できている場合には、その縮尺の異なる地図情報を利用して地図データが取得できていない領域の地図描画を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2002−350167号公報
【特許文献2】特開平05−274592号公報
【特許文献3】特開平10−293534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしこれらの方法では、本来利用すべきデータが取得できていない領域に対応する代替情報が取得されていない場合においては、問題に対処することができない。
具体的には、特許文献1では案内経路上を道路として表示できたとしても、途中利用者がその経路を外れた場合、もしくは経路案内を行っていない場合には、その先の補間表示を行うことができないという課題がある。
また、特許文献2では、前回走行軌跡情報がない領域の場合には、道路を補間表示することが出来ないという課題がある。
また、特許文献3では、異なる縮尺の地図データがない領域に対しては補間表示ができないという課題がある。
【0012】
本発明は、こうした課題を鑑みなされたものであり、地図描画を行う際に本来利用すべきデータの一部が取得できていない場合において、取得できていない情報の位置に対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供することを主な目的とする。
また、適用するシステムはカーナビゲーションシステムに限定せず、携帯電話やPDA(登録商標)等を代表とするその他の情報処理装置であっても構わなく、また適用分野も自動車に限定せず船舶・歩行者・アスリート・公共交通システム・宇宙設備など他分野であっても構わない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る地図描画装置は、
道路の表示が含まれる地図データをメッシュ単位で管理する地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画する地図描画装置であって、
前記地図データ管理装置から送信されるべき地図データのうちの少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、地図描画装置が保持している保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出する道路抽出部と、
前記特定の道路と前記道路抽出部により抽出された関連道路とを表示する地図を描画する地図描画部と、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に前記地図データ管理装置から地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画部が描画できない場合に、前記特定の道路と前記関連道路とを関連付ける通知情報を生成する通知情報生成部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、特定の道路に関連する関連道路を保持地図データから抽出し、欠落メッシュが介在し特定の道路と関連道路とが分断された状態の地図が表示される場合でも、特定の道路と関連道路とを対応付けることにより、特定の道路に関連する関連道路が他の場所に存在することを利用者に情報提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1〜6では、地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画する地図描画装置について説明する。
より具体的には、一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、地図描画装置が保持する保持地図データ(地図データ管理装置から新たに受信できた地図データ、以前より保持している地図データの双方を含む)を解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路(車両が現在走行中の道路等)に関連する道路(同一名称の道路等)を保持地図データから抽出し、特定の道路と抽出された関連道路とを表示するととともに、地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して、特定の道路と関連道路とを接続した状態を示す地図を描画できない場合に、特定の道路と関連道路とを関連付けてユーザに通知する地図描画装置について説明する。
また、実施の形態7では、地図データの管理方法、地図データの送受信シーケンス、地図の描画方法等の、実施の形態1〜6で説明する地図描画装置の動作の前提となる事項を説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1〜6に示す地図描画装置及び地図データ管理装置が含まれる地図描画システムの概略ブロック図である。
地図描画システムは地図データを元に地図を出力する地図描画装置1201と、地図データを管理する地図データ管理装置1301で構成される。
地図描画装置1201と地図データ管理装置1301の間はネットワークで接続可能であり、そのネットワークはどのような方式であっても構わず、実施の形態1〜6では、携帯電話や無線LAN(Local Area Network)等といった無線方式の通信を実現可能なネットワークを想定している。
しかし、有線方式のみをサポートするネットワークであっても構わない。
【0017】
図1では地図描画装置1201および地図データ管理装置1301は各1台で表記されているが、台数は各1台である必要はなく、それぞれが複数台存在していても構わない。また負荷分散などの目的で地図データ管理装置1301を複数のサーバで構成し、仮想的に一台のサーバとしてネットワーク上には公開する仮想サーバとしても構わない。
【0018】
地図データ管理装置1301は、地図データをメッシュ単位で管理し、メッシュごとの地図データが記憶装置に格納されており、地図描画装置1201からの要求に基づき、メッシュごとに地図データを検索可能であり、メッシュごとに地図データを地図描画装置1201に送信可能である。
【0019】
地図描画装置1201は、例えば、移動体に配置されている。より具体的には、例えば、車両に搭載されていたり、ユーザに所持、装着されている。
地図描画装置1201は、少なくとも中央制御装置1202、地図格納装置1204、通信装置1205、地図出力装置1206を備える。
【0020】
中央制御装置1202は、地図描画処理全体を制御する。
通信装置1205は、地図データ管理装置1301とネットワーク経由で接続し、地図データを取得するための手段である。
地図格納装置1204は、地図データ管理装置1301から取得した地図データおよび処理に必要な情報を管理する。
地図出力装置1206は、地図格納装置1204に格納されている地図データ、地図データ管理装置1301から取得した地図データを利用して中央制御装置1202が作成した地図を出力する。
また、必要に応じて地図描画装置1201の現在位置を取得する位置検出装置1203、地図描画装置1201の利用者が操作するための操作パネル1207、音声メッセージを出力する音声出力装置1208等を備えていても構わない。
なお、地図出力装置1206は表示部の例であり、音声出力装置1208は音声出力部の例である。
【0021】
地図格納装置1204は、地図データ管理装置1301から取得した地図データを一次保存するための領域である。
中央制御装置1202は、現在描画対象となるメッシュデータやそれに付随する情報は内部で管理を行うが、それ以外の取得完了している描画対象になっていないメッシュデータは地図格納装置1204に格納しておき、必要に応じ、中央制御装置1202が取得可能な状態にすることが目的である。
通信装置1205はネットワーク経由で地図データ管理装置1301に地図データを取得する。
地図出力装置1206は、例えば、CRTや液晶ディスプレイなどであり、地図を画像として表示する。
また、中央制御装置1202が地図データを元に生成したテキストデータをCRTや液晶ディスプレイなどに表示しても構わない。
音声出力装置1208は、中央制御装置1202が地図データを元に生成した音声メッセージをスピーカ等で音声として出力する。
また、地図出力装置1206及び音声出力装置1208は、地図画像、音声、テキストのうち複数を組み合わせて出力しても構わない。
【0022】
本実施の形態では、地図描画装置1201が、地図出力を行う際に本来利用すべきメッシュデータの一部が取得できていない場合において、取得できていないメッシュデータに対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供する方法を説明する。
つまり、ネットワークの状況によっては、地図描画装置1201は、要求した地図データが全て取得できずに、一部が取得できない状態に陥る場合がある。
例えば地図データ取得中に、ネットワーク障害が発生し、地図描画装置1201と地図データ管理装置1301間で通信が出来なくなる場合や、ネットワークに携帯電話網を利用している場合、地図描画装置1201が利用している携帯電話が電源不足に陥り、通信不能に陥る場合や、地図データ管理装置1301の通信処理系の不具合によって、地図描画装置1201からの要求を受け付けることができなくなる場合や、地図データ管理装置1301が許容数を超える要求を受け付けたために、地図描画装置1201へ応答を返せなくなる場合や、地図データ管理装置の処理系の不具合でサーバ機能がダウンしてしまう場合等が考えられる。
【0023】
そこで、本実施の形態では、地図描画装置1201が必要な地図データの全てを取得できない場合に、地理的な情報として「現在移動中もしくは静止中の道路は、未取得メッシュが存在する方向でどのような状況になっている可能性があるのか」を利用者に提供する。ここでの「どのような状況」とはその道路がその先、どこまで続いているのか、それはどの方向に続いているのか、曲がっている可能性があるのか、同種同番号の道路が複数存在するか、その他の道路と接続する可能性があるのか、その他の道路とどのような順番で接続する可能性があるのか、といった道路の継続可能性、継続方向、形状、本数、接続可能性などが挙げられる。
また、それらの情報の信頼性に応じた情報表現の変更も含まれる。例えば、この先に同種同番号の道路が存在することが確認できる場合は断定的な情報として提供し、可能性が高い程度であれば、不確実な情報として提供し、可能性が低い程度であれば、情報提供しないといったことが考えられる。
【0024】
図2を用いて、本実施の形態に係る地図描画装置1201の動作の概要を説明する。
【0025】
まず、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301に対して地図の描画に必要な地図データの送信を要求する(S1001)。
そして、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から送信された地図データを受信する(S1002)。
なお、これら地図データの要求ステップ(S1001)及び地図データの受信ステップ(S1002)の手順の詳細は、実施の形態7において、図38を参照して説明する。
【0026】
次に、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から受信した地図データにおいて受信できなかった未取得メッシュ(欠落メッシュ)があるかいなかを判定する(S1003)。
未取得メッシュがない場合(S1004でNO)は、地図描画装置1201は地図データ管理装置1301から受信した地図データ及び地図描画装置1201内部に保持している地図データを用いて地図を描画し(S1005)、描画した地図を出力する(S1006)ことで、ユーザが地図を参照することができる。
【0027】
他方、未取得メッシュがある場合(S1004でYES)は、地図描画装置1201は、保持している保持地図データから特定の道路に関連する関連道路を抽出する(S1007)。
なお、保持地図データには、地図データ管理装置1301から新たに受信した地図データと、以前から地図格納装置1204に格納されている地図データの両者が含まれる。
【0028】
ここで、特定の道路とは、例えば、ユーザが現在位置している道路やユーザが指定した道路である。また、関連道路とは、例えば、特定の道路と同種同一名称の道路(以下、同一道路ともいう)や、特定の道路と名称は異なるが属性が類似する道路(以下、異種道路ともいう)である。
特定の道路と同種同一名称の道路(同一道路)とは、特定の道路が国道○号線である場合に、同一の名称(国道○号線)が付与されている道路である。
また、特定の道路と名称は異なるが属性が類似する道路(異種道路)とは、特定の道路が国道○号線である場合に、国道△号線のように、道路の名称は異なるが、国道という道路の属性が同じである場合や、県道×号線のように、道路の属性が同一ではないが、道路の属性が近似している場合である。また、道路属性の類似範囲は、地図描画装置1201の管理者が決定することができる。例えば、カーナビゲーション用途であれば、幹線道路として捉えられる国道、県道、高速道路、有料道路、自動車専用道路同士を異種道路として分類することが考えられる。
【0029】
また、S1007において、地図描画装置1201は、特定の道路と関連道路とが接続している状態を示す地図を描画できるか否かを判断する。
例えば、関連道路が同一道路である場合に、未取得メッシュが介在することによって、同一名称の道路が途中で分断されてしまう地図になる場合は、特定の道路と関連道路とが接続している状態ではない。
また、例えば、関連道路が異種道路である場合に、例えば、特定の道路である国道○号線が特定の位置から国道△号線に変更するが、道路としては同じ道路であり名称だけが変化する場合、未取得メッシュが介在することによって、国道○号線と国道△号線が途中で分断されてしまう地図になる場合は、特定の道路と関連道路とが接続している状態ではない。
また、例えば、関連道路が異種道路である場合に、特定の道路と関連道路の位置関係及び方向から、特定の道路と関連道路とが交差(交差点による交差、立体交差による交差)する関係にあると推測される場合や、特定の道路が関連道路を含む複数の道路に分岐すると推測される場合や、特定道路が関連道路と合流すると推測される場合に、未取得メッシュが介在することによって、特定の道路と関連道路とが分断される地図となる場合は、特定の道路と関連道路とが接続している状態ではない。
【0030】
次に、地図描画装置1201は、地図データ管理装置1301から受信済の地図データ及び地図格納装置1204に保持している地図データを用いて地図を描画する(S1008)。
なお、特定の道路が含まれる特定のメッシュと関連道路が抽出されたメッシュとの間に未取得メッシュが介在して特定の道路と関連道路とが接続している状態を示す地図を描画できない場合は、特定の道路と関連道路とを関連付ける通知情報を生成し(S1009)、地図と通知情報を出力する(S1010)。通知情報は未取得領域状況情報ともいう。
【0031】
例えば、図8に示すように、ユーザの現在位置1704及びユーザが位置している道路1705が示されるメッシュと、道路1704と同一名称の道路1706が示されるメッシュとの間に地図データを取得できなかった未取得メッシュが介在して、道路1705と1706とが接続された状態の地図が描画できない場合に、地図描画装置1201は道路1705と道路1706がともに同一名称(国道○号線)であり、両道路は連続していることを通知する通知情報1707〜1709を生成し、地図とともに通知情報1707〜1709を出力する。
これにより、ユーザは、国道○号線はしばらく続き、また、大きく右方向に曲がっていくとの概略を把握することができる。
【0032】
なお、実施の形態1〜4では、関連道路として、特定の道路の同一道路を抽出し、特定の道路と抽出した同一道路とが同じ道路であることを通知する通知情報を生成、出力する。
なお、関連道路として異種道路を抽出する例は、実施の形態5以降で説明する。
【0033】
図3は、実施の形態1〜6に係る地図描画装置1201の中央制御装置1202が実行する機能ブロックを示す。
なお、図3は、実施の形態1〜6に係る地図描画装置1201の動作を説明するために最低限必要な構成を示しており、図3以外の構成が含まれていてもよい。
【0034】
図3において、入力部1211は、中央制御装置1202の外部の装置からデータを入力する手段である。例えば、操作パネル1207からユーザの指示を示すデータを入力したり、位置検出装置1203から地図描画装置1201の現在位置を示すデータを入力したり、通信装置1205より地図データ管理装置1301から送信された地図データを入力したり、地図格納装置1204より表示対象の地図データを入力する。
【0035】
また、出力部1212は、中央制御装置1202の外部の装置へデータを出力する手段である。例えば、地図出力装置1206に地図の描画データ及び通知情報を出力したり、音声出力装置1208に音声形式の通知情報を出力する。
【0036】
地図データ要求部1213は、地図の描画に必要な地図データの送信を地図データ管理装置1301に要求する。地図データの要求手順の詳細は、図38に示す通りである。
【0037】
道路抽出部1214は、未取得メッシュ(欠落メッシュ)の有無を判定し、未取得メッシュがある場合に、保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する関連道路を抽出する。
なお、道路抽出部1214は、未取得メッシュの介在により特定の道路から分断されてしまい、特定の道路と接続した状態で描画されない関連道路を抽出する。
【0038】
地図描画部1215は、地図データ管理装置1301から受信した地図データ、また必要であれば、地図格納装置1204に予め格納されている地図データを用いて、地図出力装置1206に表示する地図を描画する。
【0039】
通知情報生成部1216は、未取得メッシュが介在して特定の道路と関連道路とが接続している状態を示す地図を描画できない場合に、道路抽出部1214により抽出された関連道路に基づき、特定の道路と関連道路とを関連付ける通知情報を生成する。
具体的には、図8に示したように、地図描画部1215により抽出された同一道路と特定の道路(ユーザの現在位置の道路)とが同じ道路であることを通知する通知情報を生成する。
【0040】
図4は、地図出力を行う際に本来利用すべきメッシュデータの少なくとも一部が取得できていない場合において、取得できていないメッシュデータに対応する代替情報が存在しない場合であっても、利用者に対して、その領域に関する地理的な情報を提供する具体的な処理方法のフロー図である。
この処理群は、図2のS1003、S1004、S1007の処理の詳細を示したものである。
図4の処理を実施することによって、必要だが取得が完了していないメッシュデータの有無によって、現在位置が対応する道路が未取得メッシュの方面でどのような状況になっているのかを利用者に情報として提供することが可能となる。
【0041】
先ず、処理S301では、道路抽出部1214は、現在取得対象となっているメッシュデータで取得完了していないものが存在するか判定する。
この判定処理はメッシュ識別子の集合に対応するメッシュデータが基本管理情報の表示対象メッシュリストに存在し、それが取得完了状態になっているかどうかを調査し、1つでも対応するメッシュデータが存在しない、もしくは取得完了状態になっていないメッシュリストが存在する場合には未取得メッシュデータがあると判定する。
なお、基本管理情報とは、図30に示す情報である。なお、基本管理情報を含む図30に示す各情報の詳細は、実施の形態7において説明する。
また、メッシュ識別子、表示対象メッシュリストの詳細についても実施の形態7において説明する。
【0042】
次に、道路抽出部1214は、処理S301による判定結果で未取得メッシュデータがないと判定した場合は、本処理を終了し、速やかにメッシュデータ描画処理へ移行する。メッシュデータ描画処理では、地図描画部1215が地図を描画する。
【0043】
逆に未取得メッシュデータがあると判定した場合には、道路抽出部1214は、処理S303を実行する。
地図格納装置検索処理S303では、道路抽出部1214は、その時点で地図描画装置1201に保存されている全てのメッシュデータを検索する。
次に、道路抽出部1214は、隣接取得完了メッシュ集合A算出処理S304を実行する。
この処理S304では、道路抽出部1214は、基本管理情報に格納されている取得完了メッシュデータと処理S303で検索された取得完了メッシュデータを合わせて、隣接するメッシュデータを1つの集合として、集合を形成する。
【0044】
図5は、ある時点でのメッシュデータ取得が完了したメッシュとそれ以外の位置関係を示した図である。
中身が白いメッシュはメッシュデータ取得が完了していない、もしくは取得対象ではないメッシュを意味し、網掛けのメッシュは取得完了したメッシュであることを意味する。
本処理S304によれば、隣接している取得完了メッシュデータを1つの集合として形成するため、そのような集合は集合1501、1502、1503が形成されることになる。
取得完了したメッシュデータの隣接関係はメッシュデータのメッシュ識別子のX成分、もしくはY成分の差分の絶対値が片方で0となり、他方で1になっているメッシュは隣接しているとして判定可能である。
また、差分の絶対値がX成分、Y成分共に1となる場合を含めて考えても構わない。
よって、ある取得完了メッシュデータの識別子のX成分もしくはY成分を1加算、または1減算して新たに生成したメッシュ識別子に対応するメッシュデータが取得完了メッシュデータに存在するかを検索し、あった場合にはそれらメッシュデータは同じ隣接取得完了メッシュ集合に属する要素として判定される。これを全ての取得完了メッシュデータに対して実行すれば、全ての隣接取得完了メッシュ集合を求めることが出来る。
【0045】
これ以降では説明に利用するため、図5における隣接取得完了メッシュ集合1501を集合A1、隣接取得完了メッシュ集合1502を集合A2、隣接取得完了メッシュ集合1503を集合A3と呼ぶ。
【0046】
次に、道路抽出部1214は、各隣接取得完了メッシュ集合Aの境界メッシュ集合B算出処理S305を実行する。
この処理S305では、道路抽出部1214は、処理304で生成された隣接取得完了メッシュ集合それぞれから、未取得領域と隣接しているメッシュだけで構成される境界メッシュ集合Bを生成する。
図5における集合A1、A2、A3に対して、境界メッシュ集合を求めた結果を図示すると図6の様になる。
集合A1に対応する境界メッシュ集合は集合1601、集合A2に対応する境界メッシュ集合が集合1602、集合A3に対応する境界メッシュ集合が集合1603となる。
【0047】
境界メッシュであるかの判別は、取得完了メッシュ集合の要素であるメッシュデータの隣接するメッシュの中に1つでも未取得メッシュデータが存在する場合には境界メッシュのメッシュデータであると判定できる。
逆に全ての隣接するメッシュに対応するメッシュデータが取得完了である場合には境界メッシュの要素とはならない。この判定処理を全ての隣接取得完了メッシュ集合ごとに、その要素全てに対して実行することでそれぞれの境界メッシュ集合を求めることが出来る。
【0048】
次に、道路抽出部1214は、現在位置で移動中道路Cを導出する処理S306を実行する。
この処理S306は、位置検出装置1203で取得された現在位置を利用して、従来のカーナビゲーションシステムで多く用いられているマップマッチング技術を利用し、現在位置を地図上の道路にマッチングを行う処理である。
【0049】
次に、道路抽出部1214は、道路Cと同一道路である道路Dを各集合Bから検索する処理S307を実行する。
この処理S307では、道路Cと同じ属性を持つ道路を全ての境界メッシュ集合Bから検索する。同じ属性とは、例えば、道路の名称や道路種別、道路番号が一致しているかで判定する。
具体的な例を挙げると道路Cが国道30号線だったとした場合、道路種別が国道で、道路番号が30である道路が検索条件となる。
その他に例えば、道を示す点情報に含まれる属性にこの先で連絡する道路情報を記述してある場合には、その情報と道路Cが合致するかどうかで判定しても構わない。
また、その判定基準は同一道路の判定基準に応じて変更して構わない。例えば、道路の太さが一致した場合には同一道路とする判定基準が含まれている場合には道路の太さ属性を判定基準として利用しても構わない。
具体的な検索方法の一例を図7を用いて説明する。
【0050】
始めに、道路抽出部1214は、処理S401で境界メッシュ集合の集合から1つの境界メッシュ集合を選択し、その中から1つのメッシュデータを選択する。
次に、道路抽出部1214は、処理S402で、処理S401で選択された境界メッシュ集合内に含まれる道路Cと同種同番号の道路(以下、同一道路)を示す点情報を格納する同一道路リストを用意する。
次に、処理S403では、処理S401によって選択された境界メッシュ集合から1つメッシュデータを取得する。
次に、判定処理S404では、処理S403で選択したメッシュデータには本検索処理を行っていない道路を示す未処理点情報が存在するかを判定する。存在する場合には処理S405を行い、存在しない場合には処理S408を行う。
【0051】
次に、処理S405では、処理S403で選択したメッシュデータから道路を示す未処理点情報を1つ取り出す。
次に、判定処理S406では、処理S405で選択した点情報と道路Cが同一道路であるか判定する。
同一道路と判定された場合には処理S407を行い、異なる道路と判定された場合にはS404を行う。
【0052】
処理S407では、処理S406で同一道路と判定された点情報を処理S402で作成した同一道路リストに追加する。この処理を行うことで1つの境界メッシュ集合の中に存在する道路Cに対する同一道路の点情報(当該道路の当該境界メッシュにおける端点の点情報)を同一道路リストに全て格納することが可能となる。
また、処理S407において、ある境界メッシュについて、道路Cの同一道路の点情報が同一道路リストに格納されることは、当該境界メッシュにおいて抽出された同一道路と道路Cは未取得メッシュが間に介在することで連続性のある道路として描画されない(未取得メッシュにより分断された状態の道路しか描画できない)ことを意味する。
【0053】
また、処理S408では、処理S404で処理されていない道路を示す点情報が存在しない場合に、処理S401で選択した境界メッシュ集合には処理を行っていないメッシュデータが存在するか判定する。
処理を行っていないメッシュデータが存在する場合には、処理S403を行い、処理を行っていないメッシュデータに対して同様の同一道路検索処理を実行する。
処理が行われていないメッシュデータが存在しない場合には、現在選択されている境界メッシュ集合の全てのメッシュデータに対する検索処理は完了していることが分かるので処理S409へ移行する。
最後に処理S409は、1つの境界メッシュ集合に対する検索処理が完了した時に実行される処理であり、ここでは境界メッシュ集合の集合に処理を行っていない境界メッシュ集合が存在するかを判定し、存在する場合には残っている未処理状態の境界メッシュ集合に対しても同一道路検索処理を行うため処理S401を実行する。
存在しない場合には、全ての境界メッシュ集合に対しての処理が完了したため、本処理はここで終了となる。
【0054】
図4の処理に関する説明に戻る。
ここで説明した処理S307は道路Dを各境界メッシュ集合Bの中から検索する処理としているが、検索集合を各隣接取得完了メッシュ集合Aとしても構わない。
隣接取得完了メッシュ集合Aを利用することによって境界メッシュ集合Bでは検出できない未取得メッシュに隣接していない取得完了メッシュに対する情報も提供可能となる。
また、処理S402で全ての境界メッシュ集合に対して1つの同一道路リストを作成しているが、境界メッシュ集合によっては1つも同一道路が存在しない場合も考えられる。
そのような場合には処理S402の処理は不要となる。
よって、処理S406でその境界メッシュ集合に対して初めて同一道路であると判定された場合にのみ処理S402を実行する様にしても構わない。
【0055】
最後に、処理S308では、通知情報生成部1216が、処理S307で検索した道路Cとの同一道路に関する情報を元に未取得領域情況情報(通知情報)の生成処理を行う。
従来の地図表示装置では未取得メッシュデータがある場合、図28の様に未取得領域が存在することのみの情報が出力されていた。
しかし、本実施の形態によれば、現在位置する道路と同じ道路が境界メッシュ集合に存在するかどうかの情報が得ることができるため、その情報を提供することが可能となる。
【0056】
具体的な通知情報の生成方法について図6を用いて説明を行う。
前提として、利用者の現在位置が位置1605に位置し、道路1604を移動中とする。
その時に、通知情報生成部1216が図7のS407において生成された同一道路リストを参照することで、境界メッシュ集合1603に道路1604と同一道路1606があることが分かったとする。
通知情報の生成方法の一つとしては画像として生成する方法が考えられる。
地図描画装置1201は地図データを元に地図の画像を出力する機能がある。その機能を利用し、通知情報生成部1216は、現在位置1605及び現在走行中道路1604と、同一道路リストから検出された同一道路1606とを対応付ける画像を通知情報として生成し、出力する。
例えば、現在位置が含まれるメッシュと、同一道路1606が含まれるメッシュが同時に含まれる最小の領域を表示領域1607とする。
この表示領域1607の地図を表示する場合に、通知情報生成部1216が、現在位置1605及び現在走行中道路1604と、同一道路1606とを対応付ける画像を通知情報として生成し、地図描画部1215により描画された地図に重畳して出力すれば、例えば、図8の様な概要地図画像1701を生成することができる。
【0057】
概要地図画像1701には少なくとも、取得完了していないメッシュ領域を示す領域表示1702と現在位置1704、現在走行中の道路1705、道路1705と同一道路と判定された道路1706が描画されている。それ以外の道路やその他地図データに記載されている情報等を選択して表示しても構わない。
そして、通知情報として、現在走行中の道路1705と、同一道路と判定された道路1706とを対応付ける矢印1708、1709が表示され、また、道路1705と道路1706が同じ道路であることを示す「国道○号線」との文字列1707が表示される。
これら通知情報により、道路1705と道路1706とが同じ道路であることを明確に示すことができる。
図7のS407において生成された同一道路リストには、境界メッシュごとに同一道路の点情報が格納されているので、通知情報生成部1216では、同一道路リストに示されている境界メッシュが表示領域1607に含まれる場合には、当該境界メッシュの同一道路と現在走行中の道路とを対応付けることができる。
【0058】
なお、図8の矢印1708、1709は矢印である必要はなく直線や曲線、点線でもよく、視覚的に文字列1707と道路1705、1706が関係していることが読み取れる表示方法であれば何でも構わない。
また、文字列1707も異なる内容であっても構わないし、文字列フォーマットではなく画像等異なるフォーマットのデータを表示してもよく、道路1705、1706に共通する事柄を視覚的に表示できればどのような形式であっても構わない。
【0059】
ここで領域表示1702は、地図描画装置1201が通常の地図表示時に取得完了していないメッシュ領域を表示する際に用いる描画方式と同一の描画方式で描画されることが望ましい。
例えば、通常処理でのみ取得領域を灰色で表現する場合には領域表示も同色で表示すると、利用者もその領域の意味を色から判断できるようになるためである。
しかし、同一である必要はなく、道路1705、1706を描画する領域の背景色と同色で描画することによって、あえて未取得領域が存在することを使用者に伝えない方法を取るなど、異なる描画方式であっても構わない。また、領域表示1702が地図データを取得完了できていないことを明示的に示すため、文字列1703で示しても構わない。文字列1703の内容は異なる内容であっても構わないし、文字列1703を画像等異なるフォーマットのデータ形式で表示しても構わない。
【0060】
次に、生成した概要地図画像の地図出力装置1206への出力方法であるが、例えば概要地図画像を地図出力装置1206の出力可能領域全てを使って表示する方法が考えられる。
この場合、地図出力装置1206には概要地図画像のみが表示され、それ以外のものは表示されないことになる。
また、出力可能領域の一部であっても概要地図画像のみを表示する方法も考えられる。また、出力可能領域の一部に概要地図画像を表示する際、概要地図画像を表示しない領域に別の情報を表示する方法も考えられる。
例えば図9の様に現在位置周辺地図を地図出力装置1206に出力中であった場合には、図10の様に概要地図画像を重畳させる方法や、図11の様に現在位置周辺地図上の現在位置が概要地図画像に隠れないように配置させて重畳される方法、図12の様に画面分割して地図表示と概要地図画像を別領域に表示するなどが考えられる。
【0061】
その他の具体的な情報生成方法として文字列や音声として表示する方法が考えられる。
例えば、通知情報生成部1216が、同一道路リストから同一道路1606を抽出した場合に、「この先、地図データが取得できないエリアに入ります。現在走行中の国道○号線は他のエリアにあることが確認できています」等の言語表現による通知情報を生成し、当該通知情報を音声出力装置1208に出力して、利用者に同一道路1606が存在することを知らせるようにしてもよい。
また画像、文字列、音声だけに限らず他の形式で情報を通知してもよく、それらを単独で使うだけではなく、画像と音声の組合せなど複数の形式で情報を通知しても構わない。
【0062】
このように、本実施の形態によれば、少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、現在走行中の道路の同一道路を抽出し、未取得メッシュが介在し現在走行中の道路と同一道路とが分断された状態の地図が表示される場合でも、現在走行中の道路と同一道路とを対応付けることにより、現在走行中の道路の同一道路が他の場所に存在することを利用者に情報提供することができる。
【0063】
以上、本実施の形態では、地図データが取得できていない領域(以下、未取得領域)に隣接する領域の地図データより現在走行中の道路と同一道路で現在走行中でない道路で未取得領域に進入する道路を検索し、検索された場合に走行中の道路と同種の道路が他の場所にあることを利用者に情報提供することを説明した。
そして、このことによって、現在走行中の道路と同種の道路が、未取得領域に進入する場合、同種の道路が他の場所だとどこに存在しているのかを利用者に情報提供(例えば未取得領域を中心として現在走行中の道路と同種の道路を概略地図として画面表示して情報提供する。その際に他の道路は表示しない)することが出来るようになる。
【0064】
また、未取得領域背景色の決定方法として、地図描画装置が、通常地図表示、もしくは概略地図表示において未取得領域の主要色(その領域を描画するにあたり最も頻度高く利用されている色またはそれに類似する系統色)を隣接する取得完了領域の主要色から決定することを説明した。
これにより、未取得領域と取得完了領域の色を近い色に設定することで境界を分かりにくくする、色彩上逆の色(反転色など)に設定することで、境界を分かりやすくすることが可能となる。
また、未取得領域が複数にわたる場合、場所を移動する毎に近くの色に近い色に変化させて描画することができる様になる。
【0065】
実施の形態2.
実施の形態1に説明した方法は、現在走行中の道路と同一道路を検索し、同一道路があった場合にだけ、情報通知する方法であった。
本実施の形態では、現在走行中の道路と同一道路の位置関係を導出する方法を説明する。
この方法を実施することによって、同一道路がどの方向にどの距離にあるのかを利用者に通知できる様になり、より具体的な位置関係を知らせることが可能となる。
なお、全体のシステム構成及び地図描画装置1201の内部構成は、図1及び図3に示したものと同様である。
【0066】
図13は、現在走行中の道路と同一道路の位置関係を導出する具体的な方法に関するフロー図の一例である。図13の動作主体は、通知情報生成部1216である。
また、図13の処理は、例えば、図4のS308の処理中に行われる。
【0067】
処理S501では、通知情報生成部1216は、走行中道路の代表点を決定する。
この代表点は後述する処理S502で求める同一道路の代表点と共に、道路間の位置関係を導出するためのパラメータとして用いる座標である。
道路は点ではなく長さを持った線であるため、道路のどの位置を基準として位置関係を導出するかによって、結果が異なる場合があり、代表点の決定方法は様々考えられる。例えば、道路が未取得メッシュに接する点情報の位置やその近傍の点情報や座標としても構わないし、走行中道路であれば、現在位置としても構わない。
本実施の形態では、走行道路の代表点は走行中道路が、進行方向にある未取得メッシュに接する箇所の点とする。ここで、この条件を満たす点情報が複数ある場合には現在位置に最も近い点とする。
【0068】
次に、処理S502では、通知情報生成部1216は、同一道路の代表点を決定する。
本実施の形態では、同一道路の代表点は同一道路が未取得メッシュに接する箇所の点情報の位置とする。ここで、この条件を満たす点情報が複数ある場合には処理S502で決定した走行中道路の代表点に最も近い点とする。
【0069】
次に、処理S503で、通知情報生成部1216は、走行中道路の代表点から同一道路の代表点に向けたベクトル情報を生成する。
このベクトルのX成分とY成分の比率によって、走行中道路の代表点から見た同一道路の代表点の絶対方向を求めることが可能となる。また、このベクトルは正規化しても構わない。
方向の具体的な決定方法は、例えば方角を東西南北で示す場合、ベクトルのX成分、Y成分の正負およびその比率を用いて一意にマッピングする方法等が考えられる。
【0070】
最後に、処理S504では、通知情報生成部1216は、代表点間の距離を算出し、走行中道路と同一道路の距離を導出する。
【0071】
そして、通知情報生成部1216は、以上の処理を行った結果得られた方向と距離の情報を含めた道路Cとの同一道路に関する情報を元に未取得領域情況情報(通知情報)の生成処理を行う。
例えば、概要地図画像とともに、通知情報として、方向と距離の情報を出力することが考えられる。図14はその具体的な一例であり、図8の概要地図画像の上に方向と距離の情報1801を上書きしている。
また、通知情報生成部1216は、代表点間を結ぶ線1802を出力することによって、具体的にどこの距離を示しているのかが分かるように出力するようにしてもよい。
補助線1802は点線であるが、それ以外の実線、曲線等他の形状であっても構わない。
また、方向と距離の情報1801と同時に出力する場合は、方向と距離の情報1801が補助線1802で隠れてしまうことを防ぐため、補助線1802の上に方向と距離の情報1801を出力しても構わない。
また、図14に示すように、未取得領域では地物を表示しないため、代表点間を結ぶ線1802を明瞭に利用者に示すことができる。
【0072】
また、未取得領域情況情報は画像ではなく、文字や音声といった形式であっても構わなく、それらを複合的に利用して情報出力しても構わない。
例えば、音声にて「まもなく地図データが取得できていないエリアに差し掛かります。現在走行中の道路はおよそ東へ5キロメートル以上先でも続いています」と出力し、概要地図画像としては図14を表示する、もしくは図14から方向と距離の情報1801を削除した状態で表示するなどが考えられる。
【0073】
その他の具体的な方法として、メッシュ識別子を利用する方法が考えられる。
本実施の形態のメッシュ識別子は基準となるメッシュとの位置関係を表した座標を利用しているため、それぞれの道路が属しているメッシュのメッシュ識別子から方向ベクトルを作り出すことによって方向が求められる。また、メッシュの大きさは一定であるため、メッシュ識別子とその大きさを利用することでメッシュ間の距離も求めることが可能である。
【0074】
また、補助線1802に関しては、線情報を元に描画した非推定道路(実際のデータを参照して地図として描画した道路)と異なる描画方法を取ることによって、視覚的に、実際のデータを参照して描画した道路と異なることを通知可能としても構わない。
【0075】
このように、本実施の形態によれば、現在走行中の道路と同一道路とを対応付けることに加えて、現在走行中の道路と同一道路の間の距離、現在走行中の道路に対する同一道路の所在方向を利用者に通知するため、利用者により多くの情報提供を行うことができる。
【0076】
以上、本実施の形態では、地図描画装置が、現在走行中の道路が未取得領域に進入する位置情報と、検索された同一道路が未取得領域に進入する位置情報を元に、現在走行中の道路との地理的な相対関係情報を生成することについて説明した。
そして、このことによって、現在走行中の道路と同種の道路が、他の場所にあることを情報提供する際に、他の道路が現在走行中の道路と、絶対位置を基準とした方向と、2道路間の距離を情報として提供(「現在走行中の道路と同種の道路は北東1.2キロメートルにもあります」と音声出力や、概略地図上に方向と距離も表示する等)できるようになる。
【0077】
実施の形態3.
本実施の形態では、現在走行中道路と、その同一道路の双方の方向ベクトルを利用して、現在走行中道路と同一道路とを接続する道路の形状を推定し、推定した推定道路の形状を利用者に通知する実施の形態を説明する。
実施の形態2で説明してきた手法では、二道路間の道路の代表点もしくはメッシュ識別子を利用して、二道路間の位置関係を導出し、その情報を出力していた。
しかし、二道路がどのような方向に向いているのかを考慮していない。
【0078】
例えば、図15(a)に示す現在走行中道路1901と、その同一道路1902が検出された場合と、図15(b)に示す現在走行中道路1903と、その同一道路1904が検出された場合は、距離や位置関係に多少の違いがあったとしても、実施の形態2による方法では同じ処理を行っている。
しかし、図15(a)に示す道路1901から道路1902に接続するためには少なくとも右に大きく曲がらないと接続できないが、図15(b)に示す道路1903から道路1904に接続するためには、おおよそ直進で接続可能という違いがあり、それを利用者に対し、明示的に情報出力することが望まれる。
例えば、地図描画装置1201がカーナビゲーションシステムに含まれる場合、走行中の画面注視は航路交通法上も禁止行為であり、危険を伴うため、通常走行中に運転手はカーナビゲーションシステムの画面を見ることは出来ない。
そのため、音声出力で「現在走行中の道路はおよそ東へ5キロメートル以上先でも続いています」等と出力しても、絶対方向であるため、現在走行中の道路をこの先まっすぐ行けばいいのか、曲がる可能性があるのかを判断することが困難である。
そこで、本実施の形態では、道路同士の進行方向の差分を利用して、現在の進行方向を基準として、相対的な方向で同一道路が存在するかを示す必要がある。図16はそのフロー図であり、例えば、図4の処理S308で実行される。
【0079】
はじめに、通知情報生成部1216は、処理S601で道路の進行方向を表す方向ベクトルを求める。
道路とは一方通行ではない限り、両方向に進むことが出来るため、方向ベクトルは二つできることになる。
そこで、本実施の形態では、処理対象となる二道路が未取得領域に接続していく道路であることを利用し、以下の方法でベクトルの始点及び終点を求める。
1)ベクトルの始点は道路を現す線情報の構成点のうち、未取得領域に進入する位置の端点となる構成点に隣接する構成点。
2)ベクトルの終点は道路を表す線情報の構成点のうち、未取得領域に進入する位置の端点となる構成点。
例えば、図15(a)では、道路1901の方向ベクトルの始点は構成点1905、終点は構成点1906、道路1902の方向ベクトルの始点は構成点1907、終点は構成点1908、である。また、図15(b)では、道路1903の方向ベクトルの始点は構成点1909、終点は構成点1910、道路1904の方向ベクトルの始点は構成点1911、終点は構成点1912となる。
【0080】
次の処理S602では、通知情報生成部1216は、処理S601で求めたベクトル同士がなす角度を求める。
二つのベクトルで生成される角度は二通りの表現方法があるが、求める角度は図17に示すとおり、二つのベクトルの始点を同じ座標になるように平行移動させ、現在走行中道路の方向ベクトルをベクトル2001、同一道路の方向ベクトルをベクトル2002とした時に、できる角度2003とする。 この角度は、−180度から180度の範囲とする。走行中道路の方向ベクトルの左側に同一道路のベクトルが来る場合、できる角度は負の値とし、右側に同一道路のベクトルが来る場合には正の角度とする。
【0081】
次に、処理S603では、通知情報生成部1216は、ベクトル方向に伸びる半直線を生成する。具体的にはベクトルの端点を端点としたそのベクトルに平行な半直線を生成する。
図18は、道路1901、1902,1903,1904の半直線1913、1914,1915,1916を図示している。
【0082】
処理S604では、通知情報生成部1216は、処理S603で生成した現在走行中道路と同一道路の半直線同士で、交差点が出来るかを判定する。
図18(a)では半直線1913、1914は平行なため交差しないが、図18(b)の半直線1915、1916では交差点1917が存在する。交差点がある場合には処理S606を処理し、交差点がない場合には処理S605を処理する。
【0083】
処理S605は、半直線同士で交差しない場合に、交差点の代替となる情報を生成する処理であり、代替となる情報を生成するために補助線を利用する。
二つの半直線が交差しない原因は図19に示す通り2通りが考えられ、図19(a)に示すように1つは半直線同士が平行である場合と、図19(b)に示すようにもう1つは平行ではないため、直線であれば交差するが、半直線の切れた側で交差する場合がある。だが、本質的には異ならないため、以下の通り同じ処理を行う。
【0084】
通知情報生成部1216は、現在走行中道路の半直線の端点から同一道路の半直線の端点にベクトルを生成し、これを端点間ベクトルと呼ぶ。
端点間ベクトルは、端点間に道路が直線的にあった場合に現在進行方向の道路を基準にどの方向に向いているかを調べるために生成する。
通知情報生成部1216は、この端点間ベクトルの始点を現在走行中道路の方向ベクトルの始点に合致するように平行移動し、出来る角を求める。その角度が−90度以上90度以下の場合には、端点間に道路を引いた場合に、進行方向と逆方向ではないと判断できる。そのため、両道路の未取得領域に接する箇所の点情報の位置を結んで道路が連結するものと判断する。
【0085】
この判断の後に処理S606を実行した時の具体的な未取得領域状況情報の生成方法について説明する。
現在走行中道路と同一道路は接続しているが、端点間ベクトルと現在走行中道路の方向ベクトルのなす角が小さい場合はなだらかに曲がっているが、ある程度大きい角度の場合には現在走行中の道路は急な方向転換がなされている可能性がある。その判断は例えば、図20に示すようなテーブルで判断する方法等が考えられる。
この判断によって例えば文字列や音声で未取得領域の状況情報を生成すると、例えば「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路はこの先、左方向になだらかに曲がって5キロメートル先まで続いている可能性が高いです」などとなることが考えられる。
左右の判断は角度が負の場合には右に曲がり、正の場合には左に曲がると判断できる。
【0086】
次に、画像として生成する場合を説明する。
画像で二道路間の補助線を引く場合も図20に示すような道路状況を反映させる方法の具体例を1つ図21を用いて説明する。
【0087】
まず、通知情報生成部1216は、現在走行中道路の端点1918と同一道路の端点1919を結ぶ線分1920を引き、その中間点1921を求める。
次に、通知情報生成部1216は、方向ベクトルが平行な場合には、中間点1921を通り、道路の方向ベクトルと直行する直線1922を引き、現在走行中道路の半直線1923と同一道路の半直線1924と交差する点1925、1926を求める。
次に、通知情報生成部1216は、点1925と点1921の直線1922上の中間点1927と、点1921と点1926の直線1922上の中間点1928を求める。
方向ベクトルが平行ではない図19(b)の場合には、直線1922を上記条件で引くことができない。この場合には、通知情報生成部1216は、現在走行中道路の方向ベクトルと直行する直線として直線1922を引く。
最後に、通知情報生成部1216は、点1918、1927、1928、1919を滑らかに通過する曲線を補助線として表示する。
この方法を利用すると、生成された角度の大きさに応じて曲線の変化率が大きくなるため、図20に近い状況を画像上に再現することが可能となる。ただし、この方法はあくまでも一例であり、この方法以外で補助曲線の形状を決定しても構わない。
【0088】
次に角度が−180度以上−90度未満もしくは90度より大きく180度以下の場合の処理を示す。
【0089】
この場合には、端点間に道路があったとした場合に、現在走行中道路の方向ベクトルとは逆方向になると判断できる。
そのため、現在走行中道路と同一道路は端点同士で接続するのではなく、現在走行中道路の方向ベクトルとは逆方向で接続しているものとして判断する。
次に行う処理S606では、同種の道路が平行して走っていることを未取得領域状況情報として生成する。
例えば文字列や音声で未取得領域の状況情報を生成する場合には、例えば「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路と同一道路は進行方向に対し斜め左側100メートルの場所にもあります。」などと、接続している表現は使用せずに存在することのみを情報として生成する。
以上の処理では−90度もしくは90度が接続するか否かの判断分岐点となっているが、実際に90度であった場合には端点の箇所で道路が90度に曲がっていなければならないため、あまり現実的ではない。そこで、分岐点となる角度を−90度以上と90度以下に変更しても構わない。
【0090】
このように、本実施の形態では、現在走行中の道路と同一道路とを接続する道路の形状及び同一道路の相対的方向を推定し、推定した道路の形状を提示するとともに、利用者の進行方向を基準として同一道路がどの方向(相対的方向)にあるのかを示す通知情報を生成することとしたので、利用者に未取得メッシュにおける道路の推定形状を通知することができるとともに、利用者が把握しやすい形式で同一道路の方向を通知することができる。
【0091】
以上、本実施の形態では、未取得領域での走行道路の形状推定方法について、現在走行中の道路が未取得領域に進入する方向ベクトルと、検索された同一道路が未取得領域に進入する方向ベクトルとが未取得領域内で交差する場合、地図描画装置が、その交差点と2道路が未取得領域に進入する位置とで曲線を描くことによって、おおよその未取得領域での道路形状を形成し、情報として提供することを説明した。
また、このことにより、未取得領域で走行中の道路がおおよそどの方向に曲がっているのかを視覚的に情報提供することができる様になる。
【0092】
また、未取得領域での走行道路の形状推定方法について、現在走行中の道路が未取得領域に進入する方向ベクトルと、検索された同一道路が未取得領域に進入する方向ベクトルとが未取得領域内で交差しない場合、地図描画装置が、補助線を利用することによって、推定道路の構成点を作り出し、おおよその未取得領域での道路形状を形成し、情報として提供することを説明した。
【0093】
また、推定表示と実際地図表示の区別化について、地図描画装置が、おおよその道路形状を画面に表示する際に地図データを下に描画した道路と、形状や色といった視覚的に異なる特徴を持って表示することを説明した。
これにより、未取得領域中のおおよその道路形状を実際の道路と利用者が明確に区別して認知することを容易にすることができる様になる。
【0094】
実施の形態4.
ここまでで説明してきた実施の形態では必ず同一道路が1つ存在する場合を想定して説明を行ってきた。
ここでは、同一道路が存在しない場合と、同一道路が複数存在する場合について説明を行う。
【0095】
まず、同一道路が存在しない場合の処理方法について説明する。
【0096】
図4の処理S307で同一道路が見つからなかった場合には、通知情報生成部1216は、例えば画面には図22にように現在走行中の道路を表示し、その道路の名称などを表示しながら、音声で「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の国道○号線のこの先の状況は判断できないため、道路案内を参考に運転してください。」等と現在走行中の道路の判別可能な名称を通知すると共に、地図表示装置に頼らないで走行することを提案する通知情報を生成し、音声出力装置1208に出力することが考えられる。
【0097】
また、境界メッシュ集合で、現在走行中道路が含まれるもの以外のものが存在している場合には、道路抽出部1214が、その境界メッシュ集合に含まれるメッシュの内、最も現在位置が含まれるメッシュに近いものを選択し、そのメッシュの中で、関連道路として、現在位置に最も近い主要道路を検索し、通知情報生成部1216がその存在を知らせる方法も考えられる。
主要道の判定方法は道路種別が国道であるかどうか、道路の太さや車線数等道路を表現する点情報の属性に含まれる情報によって判定する。
例えば、図23のように画面には現在走行中の道路と、上記処理で選択された主要道2001とその名称2002を表示し、画像としてどの方向に主要道2001が存在するかを出力すると共に、音声による通知情報で「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。左方向4キロメートル先に国道△号線があります」等と方向とおおよその距離を通知するなどが考えられる。画面上に距離を表示しても構わない。
現在走行中道路(図23の国道○号線)と関連道路(図23の国道△号線)との間の距離、現在走行中道路(図23の国道○号線)に対する関連道路(図23の国道△号線)の所在方向の算出方法は、例えば、実施の形態2に示した方法による。
【0098】
次に、同一道路が複数存在した場合の具体的な処理方法について説明する。
【0099】
同一道路が複数存在した場合、その全てを通知する通知情報を生成した場合に、情報量が多すぎて利用者が判断に困る可能性が高い。
そのような状況を考慮し、同一道路が複数存在した場合の最も簡単な方法としては、複数の同一道路の中から、現在位置に最も近い同一道路を選択し、それ以外を棄却する方法が考えられる。
この方法を実施した場合には、今まで説明した処理がそのまま利用可能となる。
この場合、図7の処理S402をS401の前に実行し、全ての境界メッシュで同じ同一道路リストを用いることとする。また、処理S407では既に同一道路リストに点情報が登録されている場合には、登録済みの点情報と登録しようとしている点情報でどちらが現在位置に近いのかを判定し、近い方を同一道路リストに登録することになる。
【0100】
また、上記変更では処理S402を処理S401の前に移動していたが、移動しないことによって、境界メッシュ集合単位で最も近い同一道路のみを取得することが可能となる。
この場合には、画像として状況情報を生成する場合には、各境界メッシュ集合で最も現在位置に近い同一道路が含まれるメッシュ全てと現在位置が含まれるメッシュが含まれるような最小の長方形の表示領域として設定し、画像を生成する。
【0101】
図24は、それぞれの境界メッシュ集合単位で最も近い同一道路のみを取得した時の状況情報である画像の生成結果の具体例である。
現在走行中道路2101と共にそれぞれの境界メッシュ集合で最も近い同一道路2102、2103が表示されている。これまで説明した画像と同様に現在走行中道路の名称2104を表示し、該当する道路に対して矢印2105、2106、2107を表示する。
また、この例では現在位置から最も近い同一道路を抽出し、これまで説明した方法を利用して、現在位置と最も近い同一道路間の補助線2109とおおよその方向と距離2108を表示している。
この例では、補助線2109とおおよその方向と距離2108はもっとも近い同一道路のみ表示しているが、複数の同一道路に対して表示しても構わない。
その場合には、全ての同一道路から順に1つ取り出し、これまで説明した方法を適用し表示する方法が考えられる。
また、現在位置とよりも、他の同一道路と近い場合には、一方を現在走行中道路として、他方を同一道路としてこれまで説明した方法を適用し表示する方法も考えられる。
また、音声や文字列で通知情報を生成する場合には、例えば「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路と同一道路は2箇所に見つかっています。1つは北に約1キロメートル先にあり、もう1つは東に5キロメートル付近にあります。」などと検出された同一道路数とそれぞれの方向と距離を出力することが考えられる。
【0102】
このように、現在走行中道路の同一道路が抽出できない場合、現在走行中道路の同一道路が複数抽出された場合のいずれにおいても、適切に利用者に情報提供を行うことができる。
【0103】
以上、本実施の形態では、同一道路(同一名称の道路)が複数存在した場合の処理方法について、検索して複数の同一道路が見つかった場合には、地図描画装置が、2道路間の距離や進入方向ベクトルがなす角度や交差点、推定道路形状同士の交差点の有無などから接続される可能性が一番高い組合せを決定し、それを情報として提供することを説明した。
このことによって、複数ある同一道路がある場合であっても、どこが接続する可能性が高いのかを判別可能となる。
【0104】
また、同一道路(同一名称の道路)が存在しない場合の処理方法について、同一道路が検索の結果見つからなかった場合には、地図描画装置が、そのことを情報として提供することを説明した。
これにより、未取得領域中で現在走行中の道路が途切れることを情報として提供することが可能となる。
【0105】
実施の形態5.
これまで説明してきた処理方式では、現在走行中道路と同一道路間の状況を表現する情報を生成する処理の具体的な方法について説明していた。
これは現在走行中の道路がこの先どのような状況になっているのかを利用者に効率よく通知することを目的としている。
しかし、現実の道路では例えば国道A号がある交差点を境に国道B号になる箇所も頻出する。そのため、単純に同一道路との状況を説明しているだけでは、状況を説明する情報が得られない可能性もある。
そこで、本実施の形態では異種道路との接続可能性判定方法について説明を行う。
【0106】
まず同一道路と異種道路の本質的な違いは何かを考えると、システムが設定した同一道路の判定条件を満たしているのが同一道路で、満たしていない道路が異種道路であることが挙げられる。
しかし、判定条件を満たさない道路となると無数に存在することになり、全ての異種道路に対してそれを今まで説明した方法における同一道路として処理をするのでは、処理負荷が非常に高くなり、現実的ではない。
そのため、異種道路に対しては、判定を行うに値するかを判定する、異種道路処理判定基準をシステムで設定し、その条件を満たす異種道路に対してのみ、今まで説明した方法における同一道路として処理を行う方法を取る。
上述したように、道路の属性が類似している道路同士を異種道路とすることが考えられ、例えば、カーナビゲーション用途であれば、幹線道路として捉えられる国道、県道、高速道路、有料道路、自動車専用道路同士を異種道路として分類することが考えられる。
【0107】
図25は、図7に対して異種道路処理判定基準を使って、処理対象となる異種道路の抽出処理を追加した処理フローである。
追加された処理は処理対象となる異種道路を格納するリストを生成する処理S410が処理S401と処理S402の間に追加された。
また、同一道路判定で異なる道路として判定された点情報を、異種道路処理判定基準を満たすか判定する処理S411が追加された。
処理S411でも判定基準を満たさない場合には処理S404に移行し、判定基準を満たす場合には新たに追加された処理S412へ移行する。処理S412では異種道路処理判定基準を満たした点情報を異種道路リストに登録する。
なお、処理S412において、ある境界メッシュについて、道路Cの異種道路の点情報が異種道路リストに格納されることは、当該境界メッシュにおいて抽出された異種道路と道路Cは未取得メッシュが間に介在することで連続性のある道路として描画されない(未取得メッシュにより分断された状態の道路しか描画できない)ことを意味する。
【0108】
図25に示す処理を完了すると、異種道路リストには処理対象となる道路を表現した点情報が格納されることになる。
そこで、異種道路リストに格納されている道路を同一道路として扱って今まで説明した方法で通知情報を生成すると、現在走行中の道路に対して接続する可能性がある異種道路を表示することが可能となる。
【0109】
図26は図25の処理に基づき異種道路リストを生成し、そのリストに格納された異種道路に関しても接続可能性判定を行い、通知情報を画像として生成した時の、画像生成例である。
図26では、現在走行中の道路2201と同一道路2203と異種道路2202が表示されている。
現在走行中の道路2201と同一道路2203は同一道路であることを示すため、道路名2204と関連性を図示する矢印2205、2207を表示する。
また、異種道路2202に関しては異なる道路であることを示すため道路名2210と関連性を示す矢印2206を表示する。
この例では、現在走行中道路2201に対する異種道路2202と同一道路2203の位置関係について解析した結果、異種道路2202の方が同一道路2203よりも現在走行中道路2201に近いため、道路2201と道路2202の間におおよその方向と距離2208と補助線2209を表示している。
【0110】
図26では異種道路2206の方が走行中道路2201に近いため補助線2209とおおよその方向と距離2208を異種道路と結んだが、図27のように距離に関係なく同一道路と補助線2209とおおよその方向と距離2208を結んでも構わない。
また、この場合、補助線2209を現在走行中道路として取扱い、異種道路2202との接続可能性判定処理を行っても構わない。
つまり、通知情報生成部1216は、例えば実施の形態4に示した方法で位置関係を解析して、異種道路2202が補助線2209(推測道路)と接続する可能性があるか否かを判断し、異種道路2202が補助線2209(推測道路)に接続する可能性があれば、異種道路2202が補助線2209(推測道路)を介して現在走行中道路2201に接続する可能性があることを通知する通知情報を生成し、出力してもよい。
その場合には、例えば音声で通知情報を生成する場合は、「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路は東方向におよそ5キロメートル先まで続いています。その途中で国道△号線が接続する可能性があります」と異種道路の接続可能性を情報に追加しても構わない。
画像で出力する場合には、異種道路2202から補助線2209に向けて補助線を新たに引いて情報として追加しても構わない。
また、複数の異種道路が存在する場合も同様に複数から補助線に対して補助線を引いても構わない。
また、音声で通知情報を生成する場合、「まもなく地図データの取得できなかったエリアに入ります。現在走行中の道路は東方向におよそ5キロ先まで続いています。その途中で国道△号線、そのあと国道×号線と接続する可能性があります」と接続する順番に情報を追加しても構わない。
【0111】
このように、本実施の形態によれば、同一道路に加えて異種道路との接続可能性を判断するため、異種道路と接続する可能性を利用者に通知することができる。
また、推測道路に接続する可能性のある道路を検索することにより、現在走行中道路の今後の見通しを利用者に通知することができる。
【0112】
以上、本実施の形態では、異種道路の接続可能性判定方法について、現在走行中の道路とは異なる道路のうち、未取得領域に進入する道路の進入ベクトルと現在走行中の道路の未取得領域への進入ベクトルが交差する場合、地図描画装置が、そのことを利用者に情報として提供することを説明した。
これにより、未取得領域で現在走行中の道路は異なる道路と接続する可能性を情報として提供すること(「この先○キロメートル付近で国道△号と接続する可能性があります」と音声で通知するなど)が出来るようになる。
【0113】
また、異種道路の接続可能性判定方法について、現在走行中の道路の未取得領域における推定道路形状と異種道路の未取得領域への進入ベクトルが交差する場合、地図描画装置が、そのことを利用者に情報として提供することを説明した。
これにより、現在走行中道路と、異種道路間の接続可能性を判定するのに推定道路形状を利用するので広範囲の推定が可能となる。
【0114】
また、複数の異種道路との接続可能性がある場合の情報提示方法について、複数の異種道路と現在走行中の道路が接続する可能性があると判定された場合には、地図描画装置が、情報提示は異種道路との交差点が現在走行中道路に近い順に提示することを説明した。
これにより、複数の異種道路接続を時系列順に提示することが可能となる。
【0115】
実施の形態6.
ここでは、いままで説明してきた処理をどのタイミングで実行するかを説明する。
実施の形態1〜5に示した地図描画装置1201は、利用者の移動に伴って表示対象範囲を移動させながら地図を表示するものであり、実施の形態1〜5に示した処理(関連道路の抽出、通知情報の生成)は基本的に未取得メッシュデータが表示対象範囲に入ってきた場合以外は実行する必要がない。
そのため、1つは表示領域に未取得メッシュデータに対応するメッシュが入ってきた時点で、実施の形態1〜5で説明した処理を開始する方法が考えられる。
また、表示対象範囲の周囲一定範囲に相当するメッシュに未取得メッシュが含まれるようになった時点で、実施の形態1〜5で説明した処理を開始する方法が考えられる。この場合は、具体的には、表示対象領域の周囲一定距離に走査線を設け、その線に未取得メッシュデータに対応するメッシュが接した時点で開始する方法が考えられる。
【0116】
それ以外の方法としては、現在走行中の道路が進行方向に対して進むと未取得メッシュデータに対応するメッシュに接し、かつ現在位置と接する点の間に交差点が存在しない場合に開始する方法が考えられる。この場合はこの道路を今と同じ方向に進んだ場合明らかに未取得メッシュデータに対応する領域を表示しなければならないことを判定している。
それ以外に、ユーザからの明示的な要求があった場合に開始する方法が考えられる。
この方法を有することで、利用者が知りたい時にいつでも未取得領域に接続した場合の状況情報を入手することが可能となる。
また、その時に未取得領域に現在道路が進入しない場合には、情報として未取得領域に進入しないことを生成し、出力する。
また、上述の複数のタイミングのうちの任意のタイミングを組み合わせて、いずれかのタイミングになった場合に、実施の形態1〜5に示した処理を開始させるようにしてもよい。
【0117】
本実施の形態では、起動タイミングについて、現在位置が未取得領域に接した場合、現在の位置に存在する道路を走行中の道路として取得することを説明した。
これにより、未取得領域に現在位置が接した時点で自動的に起動できる様になる。
【0118】
また、起動タイミングについて、現在位置が未取得領域から一定距離内に近づいた場合、現在の位置に存在する道路を走行中の道路とし、その道路が未取得領域に接する箇所を改めて現在走行中の道路として処理することを説明した。
これにより、未取得領域に一定距離近づいた時点で自動的に起動できる様になる。
【0119】
また、起動タイミングについて、現在位置に存在する道路で進行方向に対して進むと未取得領域に接続し、かつ現在位置と未取得領域への進入位置の間に交差点が存在しない場合に、その道路が未取得領域に接する箇所を現在走行中の道路として処理することを説明した。
これにより、距離に関係なく現在の走行を維持した場合に未取得領域に進入することが分かった時点で自動的に起動ができる様になる。
【0120】
また、起動タイミングについて、ユーザからの明示的な要求があった場合に、現在走行中の道路を現在走行中の道路として処理することを説明した。
これにより、ユーザが知りたい時に未取得領域に接続した場合の状況を知ることができる様になる。
なお、ユーザからの明示的な要求があった場合に、現在走行中の道路が未取得領域に進入しない場合、進入しないことを情報として提供することもできる。
これにより、ユーザが知りたい時に、現在走行中の道路が未取得領域に進入しないことを知ることが出来るようになる。
【0121】
実施の形態7.
次に、以上の実施の形態1〜6において説明した地図描画装置1201の動作の前提となる事項を以下にて説明する。
【0122】
*地図と地図データの違い
地図とは地球表面の全体もしくはその一部を一定の縮尺により縮小し、記号や文字を使ってその状況を図示したものである。一般的に地図には道路、線路、建築物、川や山といった地物が記述され、利用目的に応じて道路名や交差点名、標識、施設名などの情報が加えられる。このように地図上に記述されるものを総称して実体と呼ぶことにする。
地図は通常は紙面上に描かれていて、人が見て使うことを想定して作られている。しかし、そのような紙面上に記述された状態ではカーナビゲーションシステムなどの情報処理機器で取り扱うことが難しいため、地図上に表現されている情報や位置をデジタルデータで表現する。このような情報処理機器が取扱いやすい形式で地図を表現したものを地図データと言う。
【0123】
*ラスター形式とベクトル形式
地図では地表面上に存在する実体が何ものであり、どの位置のどの様な形状で存在しているのかを表現することが最大の目的である。その表現方法にはラスター形式とベクトル形式の二種類がある。
ラスター形式の地図データとは、地図を画像データで取り扱う形式であり、地図をデジタル画像化したものや航空撮影したデジタル写真などはラスター形式の地図データの例である。
一方、ベクトル形式の地図データとは、実体の位置や大きさ、配置などを点と線で表現する形式である。例えば、交差点を点で表現し、交差点間を繋ぐ道路は線で表現する等が考えられる。点および線には位置情報が記述されるため、それぞれの情報が表現する実体の存在位置などが数値として保存されている。ベクトル形式のデータは形状を示すデータと実体の属性を表現するデータを独立して管理する特徴もある。
また、ラスター形式・ベクトル形式両方の地図データを持つハイブリッド形式もある。例えば、地図上の道路ネットワークを描画するためにベクトル形式で道路をデータ化し、その背景となる画像はラスター形式のデータとして保持し、描画する場合にはまず背景画像を描画し、その上にベクトル形式のデータをもとに道路描画を行うことが考えられる。
実施の形態1〜6では、少なくともベクトル形式で表現された地図データを持つ地図データを対象にしており、特に道路に関する情報はベクトル形式で情報を保持しているデータを対象にしている。本明細書では地図データは少なくとも道路に関する情報はベクトル形式で表現されていると仮定する。
【0124】
*位置の表現方法
ここでは位置の表現方法について説明する。位置の表現方法は大きく分けて、絶対位置表現方法、相対位置表現方法の二通りがある。
絶対位置表現方法とは、例えば緯度、経度の様な地球上における絶対的な位置を示す座標系を用いて位置を示す方法である。
一方で相対位置表現方法とはある絶対位置表現方法で表現された点を基準点として、表現したい位置がどの程度ずれているかで位置を示す方法である。
実施の形態1〜6では、地図全体が2次元平面座標系で表現されていると仮定し、絶対位置表現方法、相対位置表現方法共に東方向をX軸の正の方向、北方向をY軸の正の方向とし、それぞれの基準点から単位方向に対して何メートルはなれているかをXY平面上の二次元座標で表現するものとする。ただし、この座標系で無ければならないわけではなく、他の座標系を用いたとしても構わない。
【0125】
*メッシュ分割管理
ここまでで説明した位置の表現方法は地図データの管理方式に大きく関わりがある。例えばカーナビゲーションシステム等で日本全土の地図データを取り扱う場合、地図データ中に含まれる全ての情報を同一レベルで一括管理すると、処理負荷が非常に大きくなる。
例えばある位置を中心とした一定半径の円周内に存在する位置情報を検索する場合、検索対象は全ての位置情報となる。現在のカーナビゲーションシステムでは施設情報だけでも1千万件を超える情報を取り扱っている場合もある。また、操作時にユーザの快適性確保のために、検索開始から1秒以内に距離順にソートされた状態でユーザにリスト形式で表示する等の必達要求があり、一般家庭等で使われているパーソナルコンピュータ等と比較しても処理能力に劣る組込み機器であるカーナビゲーションシステムでは1千万件を超えるデータに対して処理を行う周辺検索では要求を達成するには多くの困難がある。
そのため多くの地図データでは、地図データで表現する全領域を幾つかの領域に分割し、出来たそれぞれの領域に含まれている全ての情報を1つの集合として取扱い、情報の分割管理を行う。
分割領域で管理することで、周辺検索を行う場合も、はじめに検索領域と重なる分割領域を抽出し、抽出された領域に含まれる情報のみを検索対象とすることで、処理をしなければならない対象情報を絞り込むことができる。
またその際に、領域ごとに基準点を設け、その領域に含まれている情報に関する位置は、その領域に対して設定された代表点を基準点とした相対位置表現方法によって表現することで、位置に関するデータのデータサイズの削減でき、そして領域が十分に小さく設定されていれば、その領域内での距離を求める際に地球の曲率を無視することができ、平面直交座標系で算出することができるようになり、計算量の削減などにも効果がある。以下、位置を示す場合は特に断らない限り、相対位置表現として考え、異なるメッシュ間の位置を比較する場合等においては、絶対値表現に変換してから、比較することとする。
【0126】
簡単な領域分割方式の1つとして、地図データで表現する全領域に対して一定サイズの領域で隙間無く、かつ重複なく分割する方式が考えられる。
図29はこの方式の具体例である。
この図では一定サイズの長方形領域をX軸方向にN個、Y軸方向にM個敷き詰めることで日本全土をN*M個の領域に分割している。以降、分割されて出来た領域のことをメッシュと呼ぶ。最も左下の分割領域をメッシュ(1,1)、そのX軸に正の方向で隣接する分割領域をメッシュ(2,1)、Y軸に正の方向で隣接する分割領域をメッシュ(1、2)の様に表現していくと、最も左上の分割領域はメッシュ(1、M)、最も右下の分割領域はメッシュ(N、1)、最も右上の分割領域はメッシュ(N、M)と表現できる。
分割領域のサイズを一定にしているため、全てのメッシュにおける代表点を例えばメッシュの左下の頂点とした場合、この方法ではメッシュ(1、1)の左下の頂点の絶対座標が分かれば、他のメッシュの代表点は計算で求めることが可能である。
【0127】
例えばメッシュのX軸方向の辺長をLx、Y軸方向の辺長をLy、メッシュ(1、1)の左下頂点(代表点)の絶対座標を(X1,Y1)とした場合、メッシュ(A、B)の左下頂点(代表点)の絶対座標(Xa、Yb)の値はそれぞれ、
Xa=X1+(Lx*(A−1)) … 式1−1
Yb=Y1+(Ly*(B−1)) … 式1−2
で求めることが可能である。
【0128】
また、任意の位置(X、Y)がどのメッシュに属するかを判定する方法は、
Xa<X<=Xa+1 … 式2−1 Yb<Y<=Yb+1 … 式2−2
を満たすような整数a,b(0<a<=N、0<b<=M)を見つけ出せばよく、重複なく、隙間無く分割領域を設定しているこの方法であれば必ず唯一のメッシュを特定することが出来る。
【0129】
このように地図データを分割して管理することは、カーナビゲーションシステムの車載装置には永続的に地図データを持たす、必要な地図を適時、地図データ管理装置からネットワーク経由で取得するような地図データがサーバに集約されているカーナビゲーションシステムにおいても利点が大きい。分割領域単位で地図データを独立しているため、車載装置がより必要としている領域、例えば自車位置周辺や目的地周辺などの地図データを優先的に車載装置に送信することや、車載装置とサーバ間でのデータ交換時にどの領域のデータが交換されているのかを把握しやすい。
【0130】
ここまでで説明した方法は分割領域が重複なく、かつ隙間なく敷き詰める方式であった。
しかし、この方法では分割領域が位置する都市構造等に依存して情報数に偏りが発生し、また海上に位置する分割領域等では情報が1つもないのに領域管理を行う必要があり、非効率な面がある。そのような問題を解決するために、空間情報検索のインデックス手法の1つであるR−Treeなどを用いた、分割領域サイズも可変で、分割領域の重なりや全領域中に隙間を認める方法で分割領域管理をおこなっても構わない。また、領域分割を多重に行い、階層が上がるごとに整数倍の領域で分割していく、多重領域分割方式を用いてもよい。
ただし、本実施の形態及び実施の形態1〜6では直感的に理解しやすく、表現も簡潔に行える単一階層の重複なく、かつ隙間無く分割領域を設定する方法を用いて説明を行っている。
【0131】
地図データで使われるデータ構造
ここでは地図データで使われるデータ構造の具体的な例を図30に図示したものがあり、それを元に説明を行う。
【0132】
*点情報と線情報
地図データの多くはその位置に存在するものを表現するための点情報と、ある二点間の位置を始点と終点とし、その二点間を結ぶ線を表現する線情報を基本表現方法として利用し、表現される。
【0133】
図31は、地図データにおける点情報と線情報の例を図示したものである。
例えば、コンビニエンスストア101が緯度LAT102,経度LON102の位置102に存在する場合、そのコンビニエンスストア101は点情報として点102で表現され、その座標は(LAT102、LON102)と表現する。
また、ある道路112が位置(LAT103、LON103)の点103と位置(LAT104、LON104)の点104を結んでいる場合、その道路112は線情報で表現され、その始点と終点はそれぞれ点103、点104となる。
線情報に関しては始点と終点を直線で結ぶ場合もあれば、その間に補間点をK個(K>0)を設け、始点、補間点1、補間点2、…、補間点K、終点を順に結んで構成される連結線分で表現される場合もある。
この時、始点、終点および補間点全てを総称して構成点と呼ぶ。道路112は実際には、点122を始点、点123を終点として補間点として点103および点104で構成されている。
そのため、道路112は4点の構成点でデータ化されている。
その他、連結線分で表現される具体例としては、ある二つの交差点間を通る道路が円弧を描く形状をしている場合が挙げられ、その形状を近似表現するために適切な位置に補間点を設置する。
例えば道路113は始点104から終点124を結ぶ道路であるが、形状は曲線であり、補間点として点106から点111および点105を持ち、点104、点106、点107、点108、点109、点110、点111、点105、点124を順に結んで構成される連結線分で表現されている。
【0134】
線情報を複数まとめることにより、ある閉領域を表現することも可能である。
例えば、コンビニエンスストア101の敷地形状を表現する場合には、例えば敷地の頂点にそれぞれ点125、点126、点127、点128を設定し、点125、点126で構成される線情報、点126、点127で構成される線情報、点127、点128で構成される線情報、点128、点125で構成される線情報によって囲まれる閉領域として表現可能である。
開領域も閉領域同様に線情報を複数まとめることで表現可能である。ここでは閉領域と開領域をあわせて領域と呼び、閉領域または開領域の情報を領域情報と呼ぶ。
実施の形態1〜6では、地図データを2次元直行座標平面上で表現することを前提としているため、基本となる情報は点情報、線情報とその応用である領域情報で表現可能である。
しかし、地図データは2次元直交座標平面上で表現しなければならない制約は無く、例えば3次元空間で表現しても構わない。その場合には高さ情報が点情報に加わり、それを組み合わせることで作り出される情報も線情報と領域情報だけではなく、3次元領域を表現するための体情報を取り入れても構わない。
【0135】
図30の点情報は、点情報の具体的なデータ構造を図示したものである。
レコードサイズとは、この点情報全体のデータサイズを格納する領域である。点情報にはその位置に存在するものの情報を記述する役目があり、ものによって記述する情報量が異なるため、点情報は基本的に可変サイズとなっている。
種別とは、その位置に存在するものの分類番号を格納する領域である。例えば、道路、交差点、信号機、道路標識、歩道、中央分離帯などの交通路を形成する実体から、それ以外の店舗、事務所、住宅、空き地などを唯一に特定可能な値が格納される。種別はこの点情報が表現する実体の分類が一意に識別できる値であればよく、番号ではなく、例えば文字列などの形式で表現しても構わない。
代表点とは、この点情報が指し示す位置を示す座標を格納する領域である。点情報はメッシュ単位で管理されるため、代表点はメッシュの基準点を用いた相対位置記述に従う。地図データは二次元直交座標平面で表現されるため、代表点も二次元ベクトルとして表現される。
属性数は、この点情報が表現する実体に関して記述している属性情報数を格納する領域である。
属性リストは、この点情報が表現する実体に関する、属性情報を格納する領域であり、属性数が保持する値と同数の属性が格納されている。例えばある点情報が交差点を表現している場合、その交差点の名前などの情報を格納している。具体的な属性のデータ構造の例は後述する。
拡張データは、上記までで説明したデータ以外に追加でデータを記述する場合に利用する予備領域である。
【0136】
図30の線情報は、線情報の具体的なデータ構造を図示したものである。
レコードサイズとは、この線情報全体のデータサイズを格納する領域である。線情報はある実体の形状を表現する役目があり、その形状や構成点の個数によって記述される情報量が異なるため、線情報は基本的に可変サイズとなっている。
種別とは、この線情報が線を表現しているのか領域を表現しているのかを示す情報分類番号を格納する領域である。本実施の形態では線情報か領域情報かを分類できる情報分類番号するだけでも構わないが、それ以外の形状を特に分類したい場合にはそれに対応する情報分類番号を追加しても構わない。例えば、地図データを3次元で表現したい場合には体情報を線情報で表現する必要があるため、体情報に対応する情報分類番号を追加する。種別はこの線情報が表現する情報を一意に識別できる値であればよく、番号ではなく、例えば文字列などの形式で表現しても構わない。
構成点数とは、線情報に含まれている構成点の個数を格納する領域である。
構成点リストとは、線情報に含まれている構成点の位置を示す座標を格納する領域であり、構成点数に格納されている値と同数の座標が格納されている。本実施の形態では、構成点リストの最初の座標を始点とし、その次の座標を始点と連結する構成点、その次の座標を1つ手前の構成点と連結する構成点の様に座標を格納し、最後の要素は終点の座標を格納するものと仮定する。
属性数とは、この線情報が表現する実体に関して記述している属性情報数を格納する領域である。
リンク・ノード形状属性リストとは、この線情報における構成点であるノードもしくは構成点を連結して作られる線分であるリンクに関する形状を表現する属性情報を格納する領域であり、属性数が保持する値と同数の属性が格納されている。例えば、あるリンクを描画する時に線の太さ、色、接合点における描画形状等の描画する際に必要となる情報を属性として格納する。
拡張データは、上記までで説明したデータ以外に追加でデータを記述する場合に利用する予備領域である。
【0137】
図30の属性は、点情報の属性リストおよび線情報のリンク・ノード形状属性リストに格納する属性情報を表現するデータ構造である。
属性種別とは、この属性がどのような属性を表現するのかを示す属性分類番号を格納する領域である。例えば、点情報が交差点を表現している場合に、その交差点名を格納する属性の属性種別は名称を示す属性分類番号が格納される。また、線情報に含まれるリンクを描画するときに、線の幅を表現する属性の属性種別は幅を示す属性分類番号が格納されている。属性種別には、その属性がどのような属性を表現しているのかを一意に識別可能な情報を格納していればよく、番号に限らず文字列など他の形式であっても構わない。
属性従属フラグとは、その属性が他の属性を修飾する目的を持っている場合、例えば、線情報に含まれるリンクを描画する際の形状を直線と規定する属性に対して、その直線の幅や色などを規定する場合、幅や色を規定する属性は直線を規定する属性に従属することになる。その場合には、属性従属フラグには従属する属性がリンク・ノード形状属性リストの要素の順番が格納される。従属していない属性の場合には属性従属フラグには0が格納される。
属性サイズは、その属性値のデータサイズを示す値が格納される領域である。
属性値は、その属性の値を格納する領域であり、そのサイズは属性サイズに格納されている値と同じである。また、属性値の内部のデータ構造は属性種別毎に規定されており、例えば属性種別が名称である場合には、属性値のデータ構造は文字列となるが、線情報に含まれる特定リンクの描画形状を表現する属性の場合、属性値のデータ構造は描画形状を規定するリンクの開始点となる構成点の構成点リスト中の順番と、形状を示す情報が含まれることが考えられる。
【0138】
図30のメッシュデータは、あるメッシュに含まれる実体を表現する情報を格納するためのデータ構造である。
レコードサイズとは、このメッシュサイズのサイズを示す値を格納する領域である。
メッシュ識別子とは、このメッシュが地図全体におけるどのメッシュであるかを唯一に識別可能とする値を格納する領域である。図29に示すような地図全体を同一形状のメッシュで隙間および重複なく敷き詰める方式であれば、例えば左下のメッシュから数えて、右に何番目、上に何番目にあるメッシュであるかを示す座標情報であっても構わない。メッシュ識別子は、そのメッシュが唯一に識別できればデータ形式は問わず、座標であっても、文字列であっても、数値であっても構わない。
点数とは、このメッシュデータに格納される点情報の個数を格納する領域である。
線数とは、このメッシュデータに格納される線情報の個数を格納する領域である。
点情報リストとは、このメッシュに格納する点情報を格納する領域であり、その点情報の個数は点数の値と同数である。
線情報リストとは、このメッシュに格納する線情報を格納する領域であり、その線情報の個数は線数の値と同数である。
【0139】
図30の基本管理情報とは、ここまでに説明したデータを利用して、表示装置に地図を描画する場合に必要となる情報を保持するためのデータ構造である。
ベースメッシュ代表点とは、基準となるメッシュデータの基準点の座標を格納する領域である。メッシュデータにはメッシュ毎の基準点の座標を格納していないが、前述のとおり、基準となるメッシュデータの基準点が既知であれば、算術によって他のメッシュデータの基準点を導出することができるため、記述不要なためである。
ベースメッシュ識別子は、基準となるメッシュデータのメッシュ識別子を格納する領域である。
表示対象メッシュ数とは、描画する領域との重なりがあるメッシュの個数を格納する領域である。
表示対象メッシュとは、描画する領域との重なりがあるメッシュのメッシュデータをリスト管理する領域であり、その要素数は描画対象メッシュ数に格納されている値と一致する。
縮尺は地図を描画する際に、地図データに記載されている実測値で描画することは現実的ではなく、通常ある縮尺を元にサイズを縮小して描画する。その際の縮尺を格納する領域である。例えば、縮尺が25000分の1であれば、縮尺の領域には25000が格納されている場合が考えられる。また、縮尺の選択肢が限定されている場合、図30のScaleの様に列挙子を定義し、その値で縮尺を表現する方式であっても構わない。
表示領域重心とは、地図上における表示装置に表示する領域の重心座標を格納する領域である。本実施の形態では表示領域は長方形であると仮定するが、長方形に限定する必要はなく、他の形状であっても構わない。
表示領域幅とは、表示領域の横辺の長さを実測値で格納する領域である。
表示領域高さとは、表示領域の縦辺の長さを実測値で格納する領域である。例えば、表示装置において縦10センチ、横20センチの領域に縮尺25000分の1の地図を表示する場合、
表示領域幅 =20*25000センチ=5000メートル
表示領域高さ=10*25000センチ=2500メートル
となり、表示領域幅の領域には5000、表示領域高さの領域には2500が格納されることが考えられる。
表示領域回転角とは、表示領域幅の長さの辺がX軸となす角度のことであり、その角度は0度以上360度未満となる。図32を用いて具体的に説明する、図中の長方形は表示領域であり、表示領域幅がXr、表示領域高さがYrである。この時、表示領域幅に対応する辺はこの長方形の長辺であり、長辺とX軸がなす角度はθである。
【0140】
以上までに説明したデータ構造は実施の形態1〜6の地図描画装置1201及び地図データ管理装置1301で使用されることが想定される情報が漏れること無く格納することを前提に構成された具体例の1つであり、必ずしもここで説明したデータ構造と同じ情報を保持していなければならないわけではない。また、ここで説明したデータ構造には存在しない情報を保持していてはいけないわけではない。
【0141】
図30で示したデータ構造に基づく具体的なメッシュデータ例を図33に示す。
図33は、図30のメッシュデータのフォーマットに従い、レコードサイズ、メッシュ識別子、点数、線数、点情報リスト、線情報リストの例が示される。
図33の例では、点数は10なので、メッシュデータには10個の線についての点情報リスト(レコードサイズ、種別、代表点、属性数、属性リスト、拡張データの項目を含むリスト)が並ぶはずだが、作図上の都合により、図33では一つの点情報リストのみを例示している。
また、同様に、線数は3なので、メッシュデータには3個の線についての線情報リスト(レコードサイズ、種別、構成点数、構成点リスト、属性数、リンク・ノード形状属性リストの項目を含むリスト)が並ぶはずだが、作図上の都合により、図33では一つの線情報リストのみを例示している。
また、図33に示している線情報リストでは、属性数が10個となっているので、リンク・ノード形状属性リストが10個並ぶはずだが、作図上の都合により、図33では2つのリンク・ノード形状属性リストのみを例示している。
【0142】
点情報リストにおいて、一番目の点情報(図33に図示)は種別、代表点より相対位置座標(PX1,PY1)に交差点が存在することを示している。また、属性リストから形状がT字路、名称はABC小学校前、交差点の色はGrayであることが分かる。
また、二番目以降の点情報(図33に不図示)についても、種別、代表点、相対位置座標、属性リストから、道路の種別(国道、県道等)、道路番号、道路の車線数、車線幅、交差点の位置、交差点の形状、交差点の色、信号機の位置、信号機形状等が抽出できるようになっている。
【0143】
また、線情報リストにおいて、一番目の線情報(途中までを図33に図示)は種別、構成点数、構成点リストより始点(PX81,PY81)、終点(PX82,PY82)とする線を表現している。リンク・ノード形状属性リストより、形状は直線で道路の色はGray、道路全体の幅は3で、順方向、逆方向の車線ともに1本、中央分離帯の幅が1で中央分離帯の色はGreen、境界線はDark grayで描画することが示されている(一部の要素は図示を省略)。
また、二番目以降の線情報(図33に不図示)についても、種別、構成点数、構成点リスト、リンク・ノード形状属性リストから、道路の形状、道路の色、道路幅、中央分離帯幅、中央分離帯の色、境界線の色等が抽出できるようになっている。
【0144】
そして、図33のメッシュデータにおける具体的な位置関係を例示した図が図34である。
図34では、図33のメッシュデータの記述に従って、交差点を示しているものとする。
点情報リストの要素は、例えば、順番に位置401、402、403、404、405、406、407、408,409,410に対応する。
また、線情報の要素は、例えば、順番にベクトル411、414、417に対応する。また、例えば、一番目の線情報の始点、終点は点412、413、二番目の線情報の始点、終点は点415、416、三番目の線情報の始点、終点は点418、419に対応する。
【0145】
しかし、メッシュデータには位置と形状の情報しか含まれておらず、それぞれ交差点、交差点進入口、道路の間にある関係性を導出することは出来ない。
このように位相情報を明示的に記述しないデータ表現方式を暗示的位相記述方式と呼ぶ。明示的にデータ内に位相情報を記述する方式と比較するとデータサイズが小さく、地図データに対するデータの追加、削除が容易に実現できる利点があり、高頻度に地図更新処理を実施する場合に適したデータ表現方式と言える。
暗示的位相記述方式で表現された地図データでは通常、位置関係によって情報間の関係を導出する。例えば、ある実体を表現する情報の半径Rメートルの円周内に存在するものは関係があるといった規則を導入し、関係性を導出する方法である。この規則に関しては通常データ構造と共に決定するが、データ処理装置側でその規則とは異なる規則を導入して関係性を導出しても構わない。
【0146】
また、本実施の形態では、関係性を導出するために円を用いたが円形である必要性はなく、他の形状でもよく、形状を決定するパラメータも任意の実体で同じとしても、実体の種別毎に固定で与えても、実体に対する属性で与えても、それ以外の方法で決定しても構わない。また、形状ではなく点の座標が一致するか否かで判定しても構わない。
【0147】
また、本実施の形態では、交差点と交差点進入口、信号機の関係、交差点進入口と道路の関係、線情報と道路属性の関係のみを例示したが、それ以外の関係が無いわけではなく、それ以外の実体、例えば道路と道路の関係、道路と標識の関係、道路や交差点と建物・施設等の関係等地図データで表現される全ての実体同士での関係を通常は規定可能としても構わない。
【0148】
図34では、交差点の位置401を中心とする円420内に入る点は全てこの交差点に関連性があるものとしている。よって、この交差点に接続する交差点進入口および信号機の位置関係が決定されるため、T字路をどのような向きで描画すればいいかも決定できる。この場合、交差点に対して左側と上下から交差点進入口が関連しているため、Tを反時計回りに90度回転した形状でT字路を描画すればいいことが分かる。
また道路属性を示す点408、409、410は円424、425、426内に含まれている点と関連性があるものとし、どの線情報に対する道路属性であるかが決定され、ベクトル411に対応する線情報は国道25号線、ベクトル414に対応する線情報は国道31号線、ベクトル417に対応する線情報は国道56号線と決定する。
同様に交差点進入口402、404,406は円421、422、523それぞれの内側に入る点はそれぞれの交差点進入口に関連性があるものとし、どの交差点進入口はどの道路と連結しているのかが決定される。例えば、図33に例示したメッシュデータから、例えば、右側からの交差点進入口には国道25号線、下からの交差点進入口には国道31号線、上からの交差点進入口には国道56号線が接続するということが導かれる。
【0149】
本実施の形態では、同種同番号の道路は1つの線情報で表現することとする。
例えば、図34のデータでは、国道25号線はベクトル411が表現する線分のみということになる。
もし、ベクトル411の右側にまだ国道25号線が続いている場合には、国道25号線が終るまで構成点を設定する必要がある。構成点は通常は道路を描画する際に実際の道路の形状と大きくかけ離れない程度に道路の変更点として基準を設定する。しかし、1つの線情報で表現するのは実施の形態を簡潔にするためであり、1つの線情報で同種同番号の道路を表現しなければならないわけではなく、複数の線情報や点情報で表現しても構わない。
【0150】
次に、複数のメッシュを通る道路の表現方法について説明する。
道路はメッシュの分割方式とは無関係に存在しているため、道路の多くは複数のメッシュにわたって存在する。メッシュ単位で情報を独立させて管理させる必要があるため、そのような道路はメッシュの切れ目で線情報を分離し、それぞれの線情報に対して道路の属性を示す点情報を設定するものとする。
具体的な例を挙げて説明する。
図35はメッシュ1001、1002、1003、1004を通る道路1005を図示している。この道路1005が国道B号だとしたとき、各メッシュでの国道B号のデータは図36の通りになる。
【0151】
図36は、図35で示した国道B号を各メッシュでどのようにデータ表現しているかを図示している。
国道B号はメッシュ1004からメッシュ1003を通り、メッシュ1001まで続いている。そのため、国道B号はメッシュ1004内に存在する国道B号、メッシュ1003内に存在する国道B号、およびメッシュ1001内に存在する国道B号に分割して管理される。そのため、メッシュ1004に対応するメッシュデータには線情報1101と国道B号の属性を保持する点情報1104が格納されている。同様にメッシュ1003に対応するメッシュデータには線情報1102と国道B号の属性を保持する点情報1105があり、メッシュ1101に対応するメッシュデータには線情報1103と国道B号の属性を保持する点情報1106が格納されている。
【0152】
このようなデータ分割を行った場合、描画する時にメッシュの境界線で分割されている箇所をそのまま連結していないとして処理を行うと、メッシュ毎に非連続に存在する国道B号が存在すると言う、間違った解釈が行われる。
そのため、メッシュの境界線付近で終了している道路を表現する線情報があった場合、その線情報の構成点のうち、一番メッシュの境界線に近い構成点を中心として、メッシュの境界線に隣接する隣接メッシュを含めて一定範囲内に同種同番号の道路が存在する場合、その道路は連結しているものとして描画処理を行う。
例えば、線情報1101はメッシュ1103との境界線に最も近い構成点1109を基準として一定範囲1107を設定し、メッシュ1103からその範囲に構成点が含まれる国道B号の線情報があるか検索すると、線情報1102が該当する。そのため、処理では構成点1109と構成点1110の間には道路があるものとして処理を行う。同様に線情報1102のメッシュ1101との境界線に最も近い構成点1112を基準として一定範囲1108を設定し、メッシュ1101からその範囲に構成点が含まれる国道B号の線情報があるか検索し、線情報1103が該当するため、構成点1112と構成点1111の間には道路があるものとして処理を行う。
【0153】
次に以上までに導出した関連性を利用し、図33のメッシュデータを下に地図を具体的に描画した場合の一例を図37に示す。
この例では、メッシュ(M,N)全体を描画領域として描画している。この時、点情報の代表点や線情報の構成点から各実体の位置と距離が算出される。それぞれの座標はメッシュの左下からの相対座標表現で記述されているため、位置関係は座標からそのまま導出される。また二点間の距離に関しては二次元直交座標平面を前提としているため例えば、2点(X1,Y1)、(X2,Y2)間の距離Dを求める場合、
D^2=(X1−X2)^2 + (Y1−Y2)^2
を利用して算出できる。
しかし位置関係および距離に関しては実測値で求まるため、基本管理情報の縮尺情報を利用し、画面上でのサイズに変換しなければならないが、位置関係、距離共に縮尺の値で割り算して求めた結果が画面上のサイズとして算出できる。
交差点301は点情報リストの一番目の要素に対応する交差点である。その交差点に対して交差点進入口302、304、306が接続されており、それぞれが点情報リストの二、四、六番目の要素に対応する。次に車両用信号機303、305、307が交差点進入口には設置され、それぞれが点情報リストの三、五、七番目の要素に対応する。
最後に道路308、309、310が交差点進入口に接続されており、その道路を示す点情報はそれぞれ点情報リストの八、九、十番目の要素に対応しており、その形状はそれぞれ線情報リストの一、二、三番目の要素に対応する。それぞれの実体間の結合は導出された関連性がある実体間のみで行われる。
【0154】
図37ではメッシュの領域が描画領域となっていた。しかし、一般的には複数のメッシュ利用し、その一部のメッシュでは対応するメッシュデータ全てを利用するが、それ以外のメッシュでは描画領域かはみ出た部分を除いた情報のみを利用し、1つの地図を描画することになる。
【0155】
以上の説明を前提にして、地図描画装置1201が地図データ管理装置1301から地図データを取得する手順を、図38のシーケンス図を元に説明を行う。
なお、図38のシーケンスは、実施の形態1において示した図2の地図データの要求ステップ(S1001)及び地図データの受信ステップ(S1002)の一例を示す。
【0156】
まず、地図描画装置1201の通信装置1205は地図データ管理装置1301に対して地図データ要求を行う。
この地図データ要求と共に、具体的に取得したい領域を指示することが可能であり、その指示方法には、例えば、以下の(1)〜(6)がある。
(1)領域に対応するメッシュ識別子リストで領域を指示する。
(2)点情報によって取得したい地点を指示し、地図データ管理装置1301側でその地点を含む領域を判定する。
(3)点情報によって取得したい地点を指示し、その点を中心にした半径も同時に指示し取得する領域を指示する。
(4)線情報によって必要な経路を指示し、地図データ管理装置1301側でその経路を含む領域を判定する。
(5)面情報を構築し、その面情報で取得したい領域を指示する。
(6)現在位置、経由地点、最終目的地を要求に記述し、地図データ管理装置1301側で現在地、経由地点、最終目的地を通る経路を作成し、その経路を含む領域を判定する。
【0157】
また、具体的に取得したい領域を指示しない場合には地図データ管理装置1301で、全地図データ取得と判断してもよい。
地図データ管理装置1301は受け取った地図データ要求とそこに与えられたパラメータの有無とそのパラメータの内容によって、要求元の車載装置に提供するメッシュを決定する。そして車載装置に提供すると決定したメッシュのメッシュ識別子をリスト形式で車載装置に返す。その際に、メッシュ識別子リストに対して、どの順番でメッシュを取得すべきか指示する情報を付加しても構わない。また、リストの格納順に取得するなどシステムで取り決めを作っておく方法でも構わない。
メッシュ識別子リストを受け取った車載装置は、そのリストに格納されている識別子をパラメータとしてそのメッシュに関する情報が格納されているメッシュファイルを地図データ管理装置1301に順次要求する。
その際に、取得順番がメッシュ識別子リストに記載されている場合や、取得順序についてシステムとして取り決めがある場合にはその決められた順序に従って取得しても構わない。また、メッシュ識別子リストに格納されている識別子の内容と車載装置に格納されている情報や、車両から取得される各種情報等を用いて、メッシュファイルの取得順序を車載装置側で決めても構わない。また、要求完了後、メッシュ情報を格納するためのメッシュデータ領域を車両装置はメモリ領域に確保する。
【0158】
次にメッシュファイル要求を受けた地図データ管理装置1301はその要求に格納されているメッシュ識別子に対応するメッシュファイルを車載装置に返す。
メッシュファイルには、そのメッシュ内に存在する点情報を格納した点情報ファイルに関する情報をまとめた点情報ファイルリスト、そのメッシュ内に存在する線情報を格納した線情報ファイルに関する情報をまとめた線情報ファイルリストが格納されている。
メッシュ識別子リストと同様に、点情報ファイルリスト、線情報ファイルリストそれぞれ、もしくは統合してどの順番で取得すべきか指示する情報を付加しても構わなく、同様にリストの格納順に取得するなどのシステムで取り決めを作っておく方法でも構わない。
【0159】
次にメッシュファイルを受け取った車載装置は、そのファイルに格納されている点情報ファイルリスト、線情報ファイルリストに格納されているファイル情報を取得し、その情報を元に各点情報ファイル、線情報ファイルの取得要求を行う。その際に、メッシュ識別子リストの場合と同様に、取得順序が予めメッシュファイルに記載されている場合や取得順序についてシステムとして取り決めがある場合にはその決められた順序に従って取得しても構わなく、同様にメッシュファイルに格納されている情報と、車載装置に格納されている情報や、車両から取得される各種情報等を用いて、点情報ファイル、線情報ファイルの取得順序を車載装置側で決めても構わない。
【0160】
次に点情報ファイル取得要求もしくは線情報ファイル取得要求を受けた地図データ管理装置は、その要求に基づいて、対応する点情報ファイル、もしくは線情報ファイルを車載装置に返す。ここで点情報ファイルには、点情報が1つ以上記録されているファイルで、線情報ファイルには、線情報が1つ以上記録されているファイルのことである。
【0161】
最後に点情報ファイルもしくは線情報ファイルを取得した車載装置は、そのファイルを解析し、そのファイルに格納されている情報を全て、もしくは一部を格納するために必要なメモリ領域を確保し、その領域にデータを格納する。そして、その情報を対応するメッシュデータに関連付けを行う。
【0162】
以上の様にネットワーク経由で地図データを車載装置が取得した場合、利用するネットワークの状況によっては要求した地図データが全て取得できずに、一部が取得できない状態に陥る場合が考えられる。
例えば地図データ取得中に、ネットワーク障害が発生し、車載装置と地図データ管理装置間で通信が出来なくなる場合や、ネットワークに携帯電話網を利用している場合、車載装置が利用している携帯電話が電源不足に陥り、通信不能に陥る場合や、地図データ管理装置の通信処理系の不具合によって、車載装置からの要求を受け付けることができなくなる場合や、地図データ管理装置が許容数を超える車載装置からの要求を受け付けたために、車載装置へ地図データ管理装置からの応答を返せなくなる場合や、地図データ管理装置の処理系の不具合でサーバ機能がダウンしてしまう場合等が考えられる。
【0163】
以上の実施の形態1〜6では現在位置と呼ぶ位置情報を利用して処理が行われるが、この現在位置を、通常は位置検出装置1203を利用して取得した、実際に地図描画装置1201が存在する位置情報を現在位置としても構わないが、例えば中央制御装置1202が決定した位置を現在位置としても構わない。
また、操作パネル1207を利用して利用者等システムの外部から入力された位置を現在位置としても構わない。
【0164】
また、実施の形態1〜6では現在進行方向と呼ぶ移動方向情報を利用して処理が行われるが、この現在進行方向とは、通常は現在位置を終点、その前に現在位置となっていた座標を始点としたベクトルとしても構わないが、例えば中央制御装置1202が決定したベクトルを現在進行方向としても構わない。
また、操作パネル1207を利用して利用者等システムの外部から入力されたベクトルを現在進行方向としても構わない。
【0165】
以上の様に、位置検出装置1203から取得した位置情報を元に現在位置と現在進行方向を決定する具体的な例としては、地図描画装置1201を保持した利用者が移動中に現在周辺の地図を表示可能とするアプリケーションが考えられる。
地図描画装置1201が現在位置と現在進行方向を決定する具体的な例としては地図描画装置の動作をデモンストレーションするためのアプリケーションが考えられる。
また、利用者等のシステム外部からの入力を現在位置と現在進行方向とする具体的な例としては、利用者が現在位置とは異なる領域の地図を表示できる様にするアプリケーションが考えられる。
【0166】
*全体処理工程
次に、地図描画装置1201における全体処理工程について説明する。
図39は地図描画装置1201における全体処理フローを示すフローチャート図である。
【0167】
地図描画装置1201は電源が投入されると起動処理S101が実行される。
ここでは、地図描画装置1201の初期化や次の処理S102の前処理等を行う。
起動処理S101が完了すると地図描画処理S102が実行される。
地図描画処理S102が実行中に電源断ボタンが押下された、描画処理終了要求が通知された、終了時間となった等地図描画処理を終了するトリガーがかかった場合、次の終了処理S103を行い、地図描画装置1201の全体処理は完了する。
また、終了処理S103では直前の処理S102の状態を保存しておき、次回起動時に前回終了時の状態に復帰する形で処理S102を開始できる様にしてもかまわない。
【0168】
次に、図39に示した地図描画処理S102に関する全体処理工程について説明する。
図40は地図描画処理S102に関する全体処理のフロー図である。
この処理は起動直後に地図出力装置1206に初回の地図出力を行う処理と、現在位置の変化に応じて地図出力を更新する処理が行われる。
【0169】
地図描画処理S102が開始されると、まず基本情報処理取得S201が実行される。
この処理では基本管理情報におけるベースメッシュ代表点、ベースメッシュ識別子、縮尺に関する情報を取得し基本管理情報を更新する。
ベースメッシュ代表点およびベースメッシュ識別子は通信装置1205から地図データ管理装置1301に接続し取得する方法が考えられる。
それ以外に、地図格納装置1204に格納されている場合は地図格納装置1204から取得しても構わない。
縮尺に関しては中央制御装置1202がデフォルト値を無条件に設定する方法や操作パネル1207による利用者からの入力を利用する方法が考えられる。それ以外に、縮尺情報が地図格納装置1204に保存されている場合にはその情報を取得しても構わない。
【0170】
次に現在位置取得処理S202が実行される。
実施の形態1〜6では、現在位置と呼ぶ位置情報を利用して処理が行われる。
現在位置取得処理S202は、この現在位置を決定する処理であり、前述のとおり、通常は位置検出装置1203を利用して取得した、実際に地図描画装置1201が存在する位置情報を現在位置としても構わないが、例えば中央制御装置1202が決定した位置を現在位置としても構わない。また、操作パネル1207を利用して利用者等システムの外部から入力された位置を現在位置としても構わない。
【0171】
次に描画領域決定処理S203が実行される。
この処理では基本管理情報の表示領域重心、表示領域幅、表示領域高さおよび、表示領域回転角を決定する。
なお、表示領域重心は処理S202で決定した現在位置と同じ値とする。
また、表示領域幅および表示領域高さは、地図出力装置1206から出力を行いたい地図サイズの幅と高さとする。
地図サイズは様々な決定方法があるが、例えば縦Dhセンチ、横Dwセンチの表示領域を持つディスプレイに全画面で縮尺がSの地図を表示したい場合、以下の式で求められる。
表示領域幅 =Dh*S/100メートル
表示領域高さ=Dw*S/100メートル
【0172】
例えばDh=15、Dw=20、S=25000の場合には、
表示領域幅 =15*25000/100=3750メートル
表示領域高さ=20*25000/100=5000メートル
と求められる。
【0173】
次に、表示領域回転角の決定方法であるが、地図格納装置1204に前回算出結果が格納されている場合には、その値を利用しても構わない。
それ以外に、中央制御装置1202でデフォルト値を設定しても構わないし、利用者が操作パネル1207で入力した値に設定しても構わない。
【0174】
次に、描画対象メッシュ算出処理S204が実行される。
この処理では、処理S203で求められた描画領域に重なるメッシュの識別情報を算出する。
具体的なアルゴリズムは図41を用いて説明する。
【0175】
図41において、長方形1301は表示領域であり、それを取り巻く正方形はそれぞれがメッシュである。一番左下のメッシュをメッシュ(1,1)とし、上に隣接するメッシュをメッシュ(1,2)、右に隣接するメッシュをメッシュ(2,1)の様に識別する。点1305は表示領域重心であり、処理S203で決定された座標である。点1302、1303、1304、1305は表示領域の頂点でである。
【0176】
頂点1302、1303、1304、1305の座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)は表示領域回転角が0度の場合には表示領域幅Aw、表示領域高さAhと表示領域重心(Xc、Yc)を利用して、
X1=X2=Xc+Aw/2(≡Xupper)
X3=X4=Xc−Aw/2(≡Xlower)
Y1=Y4=Yc−Ah/2(≡Yupper)
Y2=Y3=Yc+Ah/2(≡Ylower)
として求められる。
よって表示領域回転角がθの場合には、2次元回転行列を利用して、
X1=Xupper * cosθ − Yupper * sinθ
Y1=Xupper * sinθ + Yupper * cosθ
X2=Xupper * cosθ − Ylower * sinθ
Y2=Xupper * sinθ + Ylower * cosθ
X3=Xlower * cosθ − Ylower * sinθ
Y3=Xlower * sinθ + Ylower * cosθ
X4=Xlower * cosθ − Yupper * sinθ
Y4=Xlower * sinθ + Yupper * cosθ
として求めることが可能となる。
【0177】
ここで、説明を簡単にするため、θが90度以上の場合には、表示領域頂点を時計方向に隣接する頂点と名前を入れ替える。
つまり、頂点1302を頂点1305、頂点1303を頂点1302、頂点1304を頂点1303、頂点1305を頂点1304と書き換える。この操作により、頂点1302をX座標値が最も大きい頂点とする。
【0178】
θが0度または90度の場合、表示領域の各辺は軸と平行である。そのため、表示領域と重なるメッシュを求める方法は以下の通りとなる。
まず表示領域の各頂点が所属するメッシュのメッシュ識別子をそれぞれ求める。ある点がどのメッシュに属するかは、式1−1、1−2、2−1、2−2を利用して求めることが可能である。各辺が軸と平行であるため、頂点1302、1303、1304、1305が属するメッシュのメッシュの識別子を(MX1,MY1),(MX2,MY2),(MX3,MY3),(MX4,MY4)とした場合、
MX1=MX2≧MX3=MX4
MY2=MY3≧MY1=MY4
が成立する。
よって、表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子の集合Dは、
D={(x,y)|MX1≦x≦MX4 かつ MY2≦y≦MY4}
として求めることが可能である。
【0179】
次にθが0度および90度以外の場合に表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子の集合Dを求める方法を説明する。
ここでθが0度および90度ではないということは、表示領域の各辺は軸と平行ではないことを意味する。そのため、以下の方法で求める。
表示領域で最も右に存在する頂点1302から、頂点1303へ進む線分と頂点1305へ進む線分の一次式を求める。一次式はパラメータの傾きと切片が決まれば一意に決定できるので、それらを求める。
傾きは各頂点の差分で求められるため、それぞれの傾きGrad23、Grad25は、
Grad23=(Y1−Y2)/(X1−X2)
Grad25=(Y1−Y4)/(X1−X4)
として求められる。
次にそれぞれの切片Inter23、Inter25は、
Inter23=Y1−Grad23*X1=Y2−Grad23*X2
Inter25=Y1−Grad25*X1=Y4−Grad25*X4
と求められる。
【0180】
同様の方法を利用して頂点1303から頂点1304、頂点1305から頂点1304へ進む線分の一次式を求めることができ、それらの傾きと切片をGrad34、Grad54、Inter34、Inter54とすると、
Grad34=(Y2−Y3)/(X2−X3)
Grad54=(Y4−Y3)/(X4−X3)
Inter34=Y2−Grad34*X2=Y3−Grad34*X3
Inter54=Y4−Grad54*X4=Y3−Grad54*X3
で求めることが可能である。
【0181】
次に、表示領域の境界線がメッシュのY軸と平行な境界線と交差する座標を求める。
まずメッシュの境界線のX座標を求める。表示領域の境界線と交差する可能性のあるメッシュの頂点1302と頂点1304を結ぶ対角線が交差するメッシュの境界線のみである。
頂点1302が存在するメッシュのメッシュ識別子は(MX1,MY1)、頂点1304が存在するメッシュのメッシュ識別子は(MX3,MY3)であることより、交差する可能性のあるメッシュのメッシュ識別子のX成分Xcは、
MX3≦Xc≦MX1の範囲となる。
この範囲でのメッシュのY軸と平行な境界線のX成分は式1−1で求めることができる。
【0182】
次にメッシュのY軸と平行な境界線のX成分が求めることができたので、その値を利用してまず、頂点1302から頂点1303に続く境界線の交差座標を求め、その次に頂点1303から頂点1304に続く境界線の交差座標を求め、X成分の大きい順に並べ、その整列した座標列を、
Cupper={(CX1,UY1),(CX2,UY2),...,(CXk,UYk)
但し、CX1>CX2>...>CXk}
とする。
同様に頂点1302から頂点1305の境界線の交差座標、頂点1305から頂点1304の境界線の交差座標を求め、X成分の大きい順に並べた座標列を、
Clower={(CX1, LY1),(CX2,LY2),...,(CXk,LYk)
但し、CX1>CX2>...>CXk}
とする。
【0183】
次にCupperとClowerの同一順位座標間の線分左側から接するメッシュのメッシュ識別子を求め、それらの集合をDとする。
最後に頂点1303、頂点1304、頂点1305が属するメッシュの識別番号がDに含まれていない場合にはそのメッシュ識別子をDに追加すると、Dが表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子の集合となる。
【0184】
以上の方法を用いることによって、表示領域と重なるメッシュのメッシュ識別子集合を求めることが可能である。
ここで説明した方法はあくまでも求める方法の一例であり、この方法以外で求めても構わない。
また、本明細書で前提としているメッシュ構成方法とは異なる構成方法でメッシュを生成している場合にはそれに適した方法があるため、その場合にはその方法を用いることで構わない。
【0185】
処理S204が終了すると、次にメッシュデータ取得処理205を実行する。この処理では処理S204で求めたメッシュ識別子の集合Dに対応するメッシュデータを地図データ管理装置1301から取得する。
ここで実行する処理は図38で説明した方法で構わない。
しかし、この方法では表示領域に重なるメッシュデータのみしか取得できない。
しかし、例えば図42の様に移動開始地点1401から目的地1402までの経路案内を行う場合等であれば、既にこの先表示しなければならない領域1404(灰色のメッシュ領域)が案内経路1403から既知となっている。その場合には経路案内でこの先表示対象となることが分かっているメッシュデータに関しても同時に取得する処理を行って構わない。
また、それ以外の理由によって表示対象となるメッシュデータ以外のメッシュデータを取得する際にメッシュデータ毎に優先度を付けて、優先度の高い順にメッシュデータを取得する処理を実施しても構わない。
例えば、経路案内を行う場合であれば、事前に目的周辺の情報を参照したいといった要求が考えられる。
また、経路案内に従って走行することが容易に予想できるため、案内経路を表示する際に同時に表示しなければならない領域と重なるメッシュデータは確実に欲しいが、その領域の周辺は案内経路からそれて移動した場合等、例外状況にのみ必要となるため、そのような情報は案内経路を表示する際に同時に表示しなければならない領域より後で取得しても構わない。
そのような場合には、現在表示領域と重なっているメッシュデータの優先度を一番高くし、案内経路を表示する際に同時に表示する必要がある領域と重なるメッシュデータを二番目の優先度、目的地周辺のメッシュデータ群1405を三番目の優先度、案内経路の周辺メッシュデータ群1406を三番目の優先度に設定して、メッシュデータ取得処理を実行しても構わない。
また案内経路メッシュデータ1404も移動開始地点1401に近い経路と重なっているメッシュデータは目的地1402に近い経路と重なっているメッシュデータよりも早く必要であるため、案内経路1403の通過順にメッシュデータの取得優先度を設定しても構わない。
【0186】
次にメッシュデータ描画処理S206が実行されるが、通常であれば処理S205が完了してから処理S206を開始することで、出力される結果には必要な地図表示に抜けは無い状態にすることが出来る。
しかし、処理S205で行った取得処理で何かしらの表示できるデータが取得した時点で処理S206を並列動作させても構わない。その時に地図を画像として表示する際に図28の様に地図が表示できる領域と表示できない領域で異なる表示を行う等を行ってもよい。その場合には、最初に出力される結果は多くの抜けが存在する地図表示になるが、処理S205に対するデータ応答がある毎に処理S206を並列動作させることで徐々に抜けがすくなくなるような地図出力を行うことができるので、そのような方法であっても構わない。
【0187】
最後に地図更新描画処理S207であるが、この処理は通常は現在位置が変更されたことをトリガーとして実行される処理である。
現在位置が変更されると表示領域の重心が変更になるため、描画対象となるメッシュも変わる可能性がある。そのため、再度、処理S203、S204を実行し、前回のメッシュ識別子の集合Dとは異なるメッシュ識別子の集合D‘が生成された場合には、D’に含まれていてDには含まれないメッシュ識別子に対応するメッシュデータを取得するためS205を実行し、処理S206で地図の再出力を行う。
逆に集合Dに含まれて、集合D‘に含まれていないメッシュデータがある場合にはその情報は地図格納装置1204に保存する。地図格納装置1204に保存されたメッシュデータは通常は地図描画装置1201の電源断となるまで保存されたままとなる。
保存期間は電源断以降も保存されたままで、地図データ管理装置1301で地図データを更新予定となっている日時まで保存する方法もある。
この方法を取ることによって、地図データが更新されるまでの間は取得されたメッシュデータが最新であることは保証されているため、その間利用することが可能となる。また、地図データ更新予定日に地図格納装置1204に保存されたメッシュデータが更新されているか地図データ管理装置1301に確認を行い、更新されていない場合には次回の地図データ更新予定日まで保存したままとしてもよい。この方法を取ることによって、一旦保存されたメッシュデータは更新されるまでは地図格納装置1204に保存されることになり、そのメッシュデータを使用する際に地図データ管理装置1301と通信する必要がなくなるため、通信負荷を削減することも可能となる。
【0188】
処理S207は地図描画処理を終了するトリガーがあるまで、現在位置変更をトリガーとして繰返し実行される。
【0189】
最後に、実施の形態1〜7に示した地図描画装置1201のハードウェア構成例について説明する。
図43は、実施の形態1〜7に示す地図描画装置1201のハードウェア資源の一例を示す図である。
なお、図43の構成は、あくまでも地図描画装置1201のハードウェア構成の一例を示すものであり、地図描画装置1201のハードウェア構成は図43に記載の構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0190】
図43において、地図描画装置1201は、プログラムを実行するCPU911(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。
CPU911は、バス912を介して、例えば、ROM(Read Only Memory)913、RAM(Random Access Memory)914、通信ボード915、表示装置901、キーボード902、マウス903、スピーカ908、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
更に、CPU911は、FDD904(Flexible Disk Drive)、コンパクトディスク装置905(CDD)、プリンタ装置906、スキャナ装置907と接続していてもよい。また、磁気ディスク装置920の代わりに、光ディスク装置、メモリカード(登録商標)読み書き装置などの記憶装置でもよい。
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、磁気ディスク装置920の記憶媒体は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置の一例である。
通信ボード915、キーボード902、マウス903、スキャナ装置907、FDD904などは、入力装置の一例である。
また、通信ボード915、表示装置901、スピーカ908、プリンタ装置906などは、出力装置の一例である。
【0191】
表示装置901には、描画された地図及び通知情報が表示される。
また、スピーカ908からは、音声による通知情報が出力される。
【0192】
通信ボード915は、図1に示すように、地図データ管理装置1301とネットワークに接続されている。
通信ボード915は、地図データ管理装置1301から地図データを受信する。
【0193】
磁気ディスク装置920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。
プログラム群923のプログラムは、CPU911がオペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922を利用しながら実行する。
【0194】
また、RAM914には、CPU911に実行させるオペレーティングシステム921のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。
また、RAM914には、CPU911による処理に必要な各種データが格納される。
【0195】
また、ROM913には、BIOS(Basic Input Output System)プログラムが格納され、磁気ディスク装置920にはブートプログラムが格納されている。
地図描画装置1201の起動時には、ROM913のBIOSプログラム及び磁気ディスク装置920のブートプログラムが実行され、BIOSプログラム及びブートプログラムによりオペレーティングシステム921が起動される。
【0196】
上記プログラム群923には、実施の形態1〜7の説明において「〜部」として説明している機能を実行するプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
【0197】
ファイル群924には、地図データ管理装置1301から受信した地図データが含まれる。
また、ファイル群924には、実施の形態1〜7の説明において、「〜の判断」、「〜の計算」、「〜の算出」、「〜の比較」、「〜の抽出」、「〜の解析」、「〜の描画」、「〜の生成」、「〜の更新」、「〜の設定」、「〜の登録」、「〜の選択」等として説明している処理の結果を示す情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」の各項目として記憶されている。
「〜ファイル」や「〜データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示などのCPUの動作に用いられる。
抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・編集・出力・印刷・表示のCPUの動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリ、レジスタ、キャッシュメモリ、バッファメモリ等に一時的に記憶される。
また、実施の形態1〜7で説明しているフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク、CDD905のコンパクトディスク、磁気ディスク装置920の磁気ディスク、その他光ディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0198】
また、実施の形態1〜7の説明において「〜部」として説明しているものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。すなわち、「〜部」として説明しているものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、実施の形態1〜7の「〜部」、としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、実施の形態1〜7の「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0199】
このように、実施の形態1〜7に示す地図描画装置1201は、処理装置たるCPU、記憶装置たるメモリ、磁気ディスク等、入力装置たるキーボード、マウス、通信ボード等、出力装置たる表示装置、通信ボード等を備えるコンピュータであり、上記したように「〜部」として示された機能をこれら処理装置、記憶装置、入力装置、出力装置を用いて実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】実施の形態1に係るシステム構成例を示す図。
【図2】実施の形態1に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図3】実施の形態1に係る地図描画装置の構成例を示す図。
【図4】実施の形態1に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図5】実施の形態1に係る未取得メッシュの例を示す図。
【図6】実施の形態1に係る未取得メッシュの例を示す図。
【図7】実施の形態1に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図8】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図9】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図10】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図11】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図12】実施の形態1に係る画面表示例を示す図。
【図13】実施の形態2に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図14】実施の形態2に係る画面表示例を示す図。
【図15】実施の形態2に係る画面表示例を示す図。
【図16】実施の形態3に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図17】実施の形態3に係るベクトル操作の例を示す図。
【図18】実施の形態3に係る道路に対する半直線の設定例を示す図。
【図19】実施の形態3に係るベクトルが平行な例及びベクトルが平行でない例を示す図。
【図20】実施の形態3に係るベクトルの角度と推定道路状況の関係を記述したテーブルの例を示す図。
【図21】実施の形態3に係る道路に対する補助曲線の設定例を示す図。
【図22】実施の形態4に係る画面表示例を示す図。
【図23】実施の形態4に係る画面表示例を示す図。
【図24】実施の形態4に係る画面表示例を示す図。
【図25】実施の形態5に係る地図描画装置の動作例を示すフローチャート図。
【図26】実施の形態5に係る画面表示例を示す図。
【図27】実施の形態5に係る画面表示例を示す図。
【図28】未取得メッシュがある場合の従来の地図表示例を示す図。
【図29】実施の形態7に係る日本全土の領域分割例を示す図。
【図30】実施の形態7に係る地図データに用いられる具体的なデータ構造の一例を示す図。
【図31】実施の形態7に係る地図データにおける点情報と線情報の具体例を示す図。
【図32】実施の形態7に係る表示領域回転角の具体例を示す図。
【図33】実施の形態7に係る具体的なメッシュデータの一例を示す図。
【図34】実施の形態7に係る点情報と線情報の具体的位置関係の例を示す図。
【図35】実施の形態7に係る複数メッシュを通る道路の具体例を示す図。
【図36】実施の形態7に係る複数メッシュを通る道路の具体的なデータ表現例を示す図。
【図37】実施の形態7に係る具体的な地図描画例を示す図。
【図38】実施の形態7に係る地図データ管理装置からの地図データ取得方法の例を示す図。
【図39】実施の形態7に係る地図描画装置における全体処理フローを示すフローチャート図。
【図40】実施の形態7に係る地図描画処理の全体処理フローを示すフローチャート図。
【図41】実施の形態7に係る描画領域に重なるメッシュ識別子の集合を導出する手順を説明する図。
【図42】実施の形態7に係る経路案内時に取得するメッシュデータの例を説明する図。
【図43】実施の形態1〜7に係る地図描画装置のハードウェア構成例を示す図。
【符号の説明】
【0201】
1201 地図描画装置、1202 中央制御装置、1203 位置検出装置、1204 地図格納装置、1205 通信装置、1206 地図出力装置、1207 操作パネル、1208 音声出力装置、1211 入力部、1212 出力部、1213 地図データ要求部、1214 道路抽出部、1215 地図描画部、1216 通知情報生成部、1301 地図データ管理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の表示が含まれる地図データをメッシュ単位で管理する地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画する地図描画装置であって、
前記地図データ管理装置から送信されるべき地図データのうちの少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、地図描画装置が保持している保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出する道路抽出部と、
前記特定の道路と前記道路抽出部により抽出された関連道路とを表示する地図を描画する地図描画部と、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に前記地図データ管理装置から地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画部が描画できない場合に、前記特定の道路と前記関連道路とを関連付ける通知情報を生成する通知情報生成部とを有することを特徴とする地図描画装置。
【請求項2】
前記道路抽出部は、
前記保持地図データを解析して、前記特定の道路と同一名称の道路を前記関連道路として抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路が同一名称の道路であることを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の地図描画装置。
【請求項3】
前記道路抽出部は、
前記保持地図データを解析して、前記特定の道路と名称が異なるが属性が類似する道路を前記関連道路として抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路とは名称が異なるが属性が類似する道路であることを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の地図描画装置。
【請求項4】
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との位置関係を導出し、前記特定の道路と前記関連道路との位置関係を通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項5】
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との間の距離、及び前記特定の道路に対する前記関連道路の所在方向の少なくともいずれかを導出し、導出した距離及び所在方向の少なくともいずれかを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項4に記載の地図描画装置。
【請求項6】
前記通知情報生成部は、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に介在する欠落メッシュにおいて前記特定の道路と前記関連道路とを接続する道路の形状を推測し、推測した推測道路の形状を示す通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項7】
前記地図描画部は、
前記欠落メッシュに対応する領域には地物が表示されない地図を描画し、
前記通知情報生成部は、
推測道路の形状を前記地図描画部が描画した地図の前記欠落メッシュの領域に重畳して描画することを特徴とする請求項6に記載の地図描画装置。
【請求項8】
前記地図描画装置は、
移動体に搭載され、
前記道路抽出部は、
前記移動体の現在位置に対応するメッシュを前記特定のメッシュとし、前記移動体が移動している道路を前記特定の道路とし、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路から前記欠落メッシュに向かう方向ベクトルと、前記関連道路から前記欠落メッシュに向かう方向ベクトルとを設定し、設定した方向ベクトルを解析して、前記特定の道路における前記移動体の進行方向を基準とする前記関連道路の相対的な方向を導出し、前記関連道路の相対的な方向を通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項9】
前記通知情報生成部は、
前記道路抽出部により複数の関連道路が抽出された場合に、前記複数の関連道路のうちの特定の関連道路を選択し、選択した関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に介在する欠落メッシュにおいて前記特定の道路と選択した関連道路とを接続する道路の形状を推測し、推測した推測道路の形状を示す通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項10】
前記通知情報生成部は、
推測した推測道路の形状に基づき、選択した関連道路以外の他の関連道路のうち推測道路と接続する可能性のある関連道路を抽出し、抽出した関連道路が推測道路を介して前記特定の道路と接続する可能性があることを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の地図描画装置。
【請求項11】
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との関連付けを表示する情報を前記通知情報として生成し、生成した前記通知情報を前記地図描画部が描画した地図に付加することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項12】
前記地図描画装置は、更に、
前記地図描画部により描画された地図を表示する表示部と、
音声情報を出力する音声出力部とを有し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との関連付けを通知する音声情報を前記通知情報として生成し、前記表示部による地図の表示に合わせて、生成した前記通知情報を前記音声出力部に出力することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項13】
前記地図描画装置は、
移動体に搭載され、
前記道路抽出部は、
前記移動体の現在位置に対応する現在位置メッシュを前記特定のメッシュとし、前記現在位置メッシュにおいて表示される特定の道路に関連する関連道路を前記保持地図データから抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記現在位置メッシュとの間に前記欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画部が描画できない場合に、前記通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項14】
前記道路抽出部は、
前記移動体が現在所在している道路を前記特定の道路とし、前記移動体が現在所在している道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出することを特徴とする請求項13に記載の地図描画装置。
【請求項15】
前記道路抽出部により複数の関連道路が抽出された場合に、
前記地図描画部は、
前記特定の道路と前記道路抽出部により抽出された複数の関連道路の各々を表示する地図を描画し、
前記通知情報生成部は、
関連道路ごとに、前記特定の道路との位置関係について解析を行って、前記特定の道路との関連付けにおいて優先する関連道路を選択し、選択した関連道路と前記特定の道路とを優先して関連付ける通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項16】
前記道路抽出部は、
前記関連道路として、前記特定の道路と同一名称の道路と、前記特定の道路と名称が異なるが属性が類似する道路を抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路との関連付けにおいて優先する関連道路の選択において、位置関係についての解析結果にかかわらず、前記特定の道路と同一名称の道路を選択することを特徴とする請求項15に記載の地図描画装置。
【請求項17】
前記地図描画部は、
前記道路抽出部により抽出された関連道路を強調して表示する地図を描画することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項18】
前記道路抽出部は、
前記保持地図データのメッシュのうち前記欠落メッシュと隣接しているメッシュから前記関連道路を抽出することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項19】
前記地図描画装置は、
表示対象範囲を移動させながら地図を表示し、
表示対象範囲に相当するメッシュに前記欠落メッシュが含まれるようになったとき、及び表示対象範囲の周囲一定範囲に相当するメッシュに前記欠落メッシュが含まれるようになったときの少なくともいずれかにおいて、前記道路抽出部が、前記保持地図データから前記関連道路を抽出し、前記通知情報生成部が前記通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項20】
道路の表示が含まれる地図データをメッシュ単位で管理する地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画するコンピュータに、
前記地図データ管理装置から送信されるべき地図データのうちの少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、コンピュータが保持している保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出する道路抽出処理と、
前記特定の道路と前記道路抽出処理により抽出された関連道路とを表示する地図を描画する地図描画処理と、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に前記地図データ管理装置から地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画処理において描画できない場合に、前記特定の道路と前記関連道路とを関連付ける通知情報を生成する通知情報生成処理とを実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
道路の表示が含まれる地図データをメッシュ単位で管理する地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画する地図描画装置であって、
前記地図データ管理装置から送信されるべき地図データのうちの少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、地図描画装置が保持している保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出する道路抽出部と、
前記特定の道路と前記道路抽出部により抽出された関連道路とを表示する地図を描画する地図描画部と、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に前記地図データ管理装置から地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画部が描画できない場合に、前記特定の道路と前記関連道路とを関連付ける通知情報を生成する通知情報生成部とを有することを特徴とする地図描画装置。
【請求項2】
前記道路抽出部は、
前記保持地図データを解析して、前記特定の道路と同一名称の道路を前記関連道路として抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路が同一名称の道路であることを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の地図描画装置。
【請求項3】
前記道路抽出部は、
前記保持地図データを解析して、前記特定の道路と名称が異なるが属性が類似する道路を前記関連道路として抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路とは名称が異なるが属性が類似する道路であることを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の地図描画装置。
【請求項4】
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との位置関係を導出し、前記特定の道路と前記関連道路との位置関係を通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項5】
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との間の距離、及び前記特定の道路に対する前記関連道路の所在方向の少なくともいずれかを導出し、導出した距離及び所在方向の少なくともいずれかを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項4に記載の地図描画装置。
【請求項6】
前記通知情報生成部は、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に介在する欠落メッシュにおいて前記特定の道路と前記関連道路とを接続する道路の形状を推測し、推測した推測道路の形状を示す通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項7】
前記地図描画部は、
前記欠落メッシュに対応する領域には地物が表示されない地図を描画し、
前記通知情報生成部は、
推測道路の形状を前記地図描画部が描画した地図の前記欠落メッシュの領域に重畳して描画することを特徴とする請求項6に記載の地図描画装置。
【請求項8】
前記地図描画装置は、
移動体に搭載され、
前記道路抽出部は、
前記移動体の現在位置に対応するメッシュを前記特定のメッシュとし、前記移動体が移動している道路を前記特定の道路とし、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路から前記欠落メッシュに向かう方向ベクトルと、前記関連道路から前記欠落メッシュに向かう方向ベクトルとを設定し、設定した方向ベクトルを解析して、前記特定の道路における前記移動体の進行方向を基準とする前記関連道路の相対的な方向を導出し、前記関連道路の相対的な方向を通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項9】
前記通知情報生成部は、
前記道路抽出部により複数の関連道路が抽出された場合に、前記複数の関連道路のうちの特定の関連道路を選択し、選択した関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に介在する欠落メッシュにおいて前記特定の道路と選択した関連道路とを接続する道路の形状を推測し、推測した推測道路の形状を示す通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項10】
前記通知情報生成部は、
推測した推測道路の形状に基づき、選択した関連道路以外の他の関連道路のうち推測道路と接続する可能性のある関連道路を抽出し、抽出した関連道路が推測道路を介して前記特定の道路と接続する可能性があることを通知する通知情報を生成することを特徴とする請求項9に記載の地図描画装置。
【請求項11】
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との関連付けを表示する情報を前記通知情報として生成し、生成した前記通知情報を前記地図描画部が描画した地図に付加することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項12】
前記地図描画装置は、更に、
前記地図描画部により描画された地図を表示する表示部と、
音声情報を出力する音声出力部とを有し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路と前記関連道路との関連付けを通知する音声情報を前記通知情報として生成し、前記表示部による地図の表示に合わせて、生成した前記通知情報を前記音声出力部に出力することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項13】
前記地図描画装置は、
移動体に搭載され、
前記道路抽出部は、
前記移動体の現在位置に対応する現在位置メッシュを前記特定のメッシュとし、前記現在位置メッシュにおいて表示される特定の道路に関連する関連道路を前記保持地図データから抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記現在位置メッシュとの間に前記欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画部が描画できない場合に、前記通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項14】
前記道路抽出部は、
前記移動体が現在所在している道路を前記特定の道路とし、前記移動体が現在所在している道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出することを特徴とする請求項13に記載の地図描画装置。
【請求項15】
前記道路抽出部により複数の関連道路が抽出された場合に、
前記地図描画部は、
前記特定の道路と前記道路抽出部により抽出された複数の関連道路の各々を表示する地図を描画し、
前記通知情報生成部は、
関連道路ごとに、前記特定の道路との位置関係について解析を行って、前記特定の道路との関連付けにおいて優先する関連道路を選択し、選択した関連道路と前記特定の道路とを優先して関連付ける通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項16】
前記道路抽出部は、
前記関連道路として、前記特定の道路と同一名称の道路と、前記特定の道路と名称が異なるが属性が類似する道路を抽出し、
前記通知情報生成部は、
前記特定の道路との関連付けにおいて優先する関連道路の選択において、位置関係についての解析結果にかかわらず、前記特定の道路と同一名称の道路を選択することを特徴とする請求項15に記載の地図描画装置。
【請求項17】
前記地図描画部は、
前記道路抽出部により抽出された関連道路を強調して表示する地図を描画することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項18】
前記道路抽出部は、
前記保持地図データのメッシュのうち前記欠落メッシュと隣接しているメッシュから前記関連道路を抽出することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項19】
前記地図描画装置は、
表示対象範囲を移動させながら地図を表示し、
表示対象範囲に相当するメッシュに前記欠落メッシュが含まれるようになったとき、及び表示対象範囲の周囲一定範囲に相当するメッシュに前記欠落メッシュが含まれるようになったときの少なくともいずれかにおいて、前記道路抽出部が、前記保持地図データから前記関連道路を抽出し、前記通知情報生成部が前記通知情報を生成することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の地図描画装置。
【請求項20】
道路の表示が含まれる地図データをメッシュ単位で管理する地図データ管理装置からメッシュ単位で地図データを受信し、受信した地図データに基づいて地図を描画するコンピュータに、
前記地図データ管理装置から送信されるべき地図データのうちの少なくとも一部のメッシュの地図データが受信できなかった場合に、コンピュータが保持している保持地図データを解析して、特定のメッシュにおいて表示される特定の道路に関連する道路を前記保持地図データから抽出する道路抽出処理と、
前記特定の道路と前記道路抽出処理により抽出された関連道路とを表示する地図を描画する地図描画処理と、
前記関連道路が抽出されたメッシュと前記特定のメッシュとの間に前記地図データ管理装置から地図データが受信できなかった欠落メッシュが介在して前記特定の道路と前記関連道路とが接続している状態を示す地図を前記地図描画処理において描画できない場合に、前記特定の道路と前記関連道路とを関連付ける通知情報を生成する通知情報生成処理とを実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2009−294479(P2009−294479A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148692(P2008−148692)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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