垂直櫛歯アクチュエータの製造方法
【課題】櫛歯電極構造を高いアライメント精度で製造する方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板151の面151a上に櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成し、これを介してシリコン基板153を貼り合わせる。シリコン基板151,153の面151b,153bに、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを内包する粗櫛歯マスクパターン154,155を形成する。面153bの側からDRIEをおこなって、粗櫛歯マスクパターン155をマスクにしてシリコン基板153を選択的に除去し、さらに櫛歯電極用マスクパターン152aをマスクにしてシリコン基板151を選択的に除去する。面151bの側からDRIEをおこなって、粗櫛歯マスクパターン154をマスクにして残存シリコン基板151cを選択的に除去し、さらに櫛歯電極用マスクパターン152bをマスクにして残存シリコン基板153cを選択的に除去する。
【解決手段】シリコン基板151の面151a上に櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成し、これを介してシリコン基板153を貼り合わせる。シリコン基板151,153の面151b,153bに、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを内包する粗櫛歯マスクパターン154,155を形成する。面153bの側からDRIEをおこなって、粗櫛歯マスクパターン155をマスクにしてシリコン基板153を選択的に除去し、さらに櫛歯電極用マスクパターン152aをマスクにしてシリコン基板151を選択的に除去する。面151bの側からDRIEをおこなって、粗櫛歯マスクパターン154をマスクにして残存シリコン基板151cを選択的に除去し、さらに櫛歯電極用マスクパターン152bをマスクにして残存シリコン基板153cを選択的に除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロマシニング技術によって作製される構造体を静電気によって駆動する垂直櫛歯静電アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシニング技術を用いて作製される静電駆動アクチュエータのひとつに垂直静電櫛歯アクチュエータがある。垂直静電櫛歯アクチュエータは、対向する一対の櫛歯電極が延出方向に対して垂直な方向に段差配置されており、櫛歯電極間への印加電圧に応じて櫛歯電極間に静電引力が発生し、一方の櫛歯電極を垂直方向に移動させるものである。最近ではマイクロミラー等のアクチュエータとして種々提案がなされている。
【0003】
垂直櫛歯アクチュエータにおいて所望の駆動特性を得るためには、対向する垂直櫛歯電極のうち固定された櫛歯電極(以下、固定下櫛歯電極と称す)と可動する櫛歯電極(以下、可動上櫛歯電極と称す)の間には高いアライメント精度が要求される。
【0004】
上述のアライメント精度要求に対して、垂直櫛歯電極を構成する固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極を別基板として作りこんだ2枚の基板を貼り合わせる手法、あるいは1枚の基板両面からフォトリソグラフィと基板エッチング加工により直接的に櫛歯電極を作りこむ手法などが提案されている。しかしながら、いずれの手法においても、貼り合わせ工程やフォトリソグラフィ工程における櫛歯電極間のアライメント精度は、使用する製造装置のアライメント機能および性能におおきく左右され、特に櫛歯電極の微細化においては、より重要な課題として位置づけられている。
【0005】
上記課題に対し、米国特許第6,713,367号には、一部にエッチング加工を施した基板と、もう1枚の基板を貼合わせたのち、貼り合せた基板表面に櫛歯加工用のエッチングマスクを一括パターニングし、エッチングマスクに対して、一方向から、貼り合わせ基板を貫通するように垂直エッチング加工することで、自己整合的に垂直櫛歯電極を形成する手法が提案されている。
【0006】
以下、従来技術について具体的に図6と図7a〜図7eを用いて説明する。
【0007】
図6は、垂直櫛歯アクチュエータの断面概略図である。垂直櫛歯アクチュエータは、支持基板60上に絶縁膜61を介して機械的に結合された固定下櫛歯電極62と、可動上櫛歯電極63から構成されている。固定下櫛歯電極62と可動上櫛歯電極63は、互いに垂直方向に段差配置されている。図7a〜図7eは、図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の工程を示している。まず図7aに示すように、支持層71と埋め込み酸化膜72と活性層73からなるSOI(Silicon On Insulator)基板70に対して、粗櫛歯マスクパターン74をマスクにエッチング加工して粗い固定下櫛歯電極75を形成する。つぎに図7bに示すように、この構造体にシリコン基板76を貼り合わせる。つづいて図7cに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bを1層のフォトマスクにて一括形成する。つづいて図7dに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bに対してシリコン基板76と粗櫛歯マスクパターン74をエッチング加工し、これにより櫛歯電極用マスクパターン74aを形成したのち、さらに櫛歯電極用マスクパターン74aに対して粗い固定下櫛歯電極75を連続的に垂直エッチング加工し、固定下櫛歯電極75aと不要領域78aと可動上櫛歯電極78bを形成する。
【0008】
ここで垂直エッチング加工には、図7d中に示される間隔Gと深さDの比すなわちアスペクト比D/Gで規定されるディメンジョンを高精度に加工することが要求される。
【0009】
つづいて図7eに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77b,74aと不要領域78aをエッチング除去することにより可動上櫛歯電極78bおよび固定下櫛歯電極75aを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,713,367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の製法に従えば、垂直櫛歯電極を構成する固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極の間のアライメントは1層のマスクで決定されるため、マスク形成段階では使用製造装置の能力および性能に関わらず高いアライメント精度を有している。
【0012】
しかしながら、そののちのシリコン垂直加工工程において発生する不具合により、所望の櫛歯構造を製造することが困難となる。
【0013】
以下、不具合について説明する。図7dにおいて、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bに対して加工するシリコン垂直エッチングは、一般的にDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によっておこなう。図7dに示すような微細垂直櫛歯電極構造においては、シリコンエッチング時のアスペクト比D/Gは10程度に達する。たとえば櫛歯の間隔Gが3μm、櫛歯層厚の合計Dが30μmの場合、アスペクト比は10となる。すなわちDRIEシリコン垂直エッチング加工にはアスペクト比10のディメンジョンを高精度に垂直加工することが要求される。つまり高難度の製造技術を要する。
【0014】
アスペクト比10程度のDRIEシリコン垂直エッチング加工をおこなう場合には、垂直エッチングの進行とともに、言い換えればエッチング深さの深化にともない、図8に示す不具合の発生がよく知られている。
【0015】
たとえば図8中に符号81に示すように、形状の垂直性が損なわれ、指標θが理想状態のθ=0度から正(+)負(−)いずれかの方向にずれてしまう不具合、あるいは図8中に符号82に示すように、加工側面に荒れが発生する不具合、あるいは図8中に符号83に示すように、エッチング底面に除去されないシリコンが柱状残渣となって残る不具合である。シリコン柱状残渣については、図7dに示す櫛歯電極用マスクパターン77aに対して、粗い固定下櫛歯電極75までを連続的に垂直エッチング加工する際に、固定下櫛歯電極75aの側底面近傍に発生するものである。
【0016】
とくに、図7dに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bに対して加工するシリコン垂直エッチングは、シリコン基板76をエッチング加工し、露出する粗櫛歯マスクパターン74を続けてエッチング加工し、ここでエッチング転写された櫛歯電極用マスクパターン74aをもとに、さらに連続して粗い固定下櫛歯電極75をエッチング加工する、という複雑な製法で櫛歯電極を形成するため、上述した不具合は、より顕著に現れる。
【0017】
これらの加工形状不具合は、いずれも最終的な垂直櫛歯アクチュエータの機能を阻害するものであり、性能を劣化させるものである。
【0018】
本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、垂直櫛歯アクチュエータを構成する垂直櫛歯電極構造を高いアライメント精度かつ高い加工精度で製造し得る簡単な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による垂直櫛歯電極構造の製造方法は、第一の半導体層の第一の面上に櫛歯電極用マスクパターンを形成する工程と、前記第一の半導体層に前記櫛歯電極用マスクパターンを介して第二の半導体層を貼り合せる工程と、前記第一の半導体層の前記第一の面の反対側の前記第一の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの第一の部分を内包する第一の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、前記第一の半導体層の前記第一の面に向かい合わせ配置された前記第二の半導体層の第一の面の反対側の前記第二の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの前記第一の部分を除いた前記櫛歯電極用マスクパターンの第二の部分を内包する第二の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、第一のエッチング加工をおこなって、前記第一の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を選択的に除去する工程と、第二のエッチング加工をおこなって、前記第二の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を選択的に除去する工程と、前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯マスクパターンを除去する工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、垂直櫛歯アクチュエータの垂直櫛歯電極構造を高いアライメント精度かつ高い加工精度で製造し得る簡単な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態による垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図である。
【図2】垂直櫛歯アクチュエータの駆動説明図である。
【図3a】図1の光偏向器の製造方法の最初の工程を示している。
【図3b】図1の光偏向器の製造方法の図3aにつづく工程を示している。
【図3c】図1の光偏向器の製造方法の図3bにつづく工程を示している。
【図3d】図1の光偏向器の製造方法の図3cにつづく工程を示している。
【図3e】図1の光偏向器の製造方法の図3dにつづく工程を示している。
【図3f】図1の光偏向器の製造方法の図3eにつづく工程を示している。
【図3g】図1の光偏向器の製造方法の図3fにつづく最後の工程を示している。
【図3h】第一実施形態のマスクパターン設計のための説明図である。
【図3i】図3eと図3fの工程に代えて適用可能な変形例による工程を示している。
【図3j】図3cの工程に代えて適用可能な別の工程を示している。
【図3k】付加的に適用可能な可視光アライメントのためのマークと開口の形成工程を示している。
【図4】第二実施形態による垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図である。
【図5a】図4の光偏向器の製造方法の最初の工程を示している。
【図5b】図4の光偏向器の製造方法の図5aにつづく工程を示している。
【図5c】図4の光偏向器の製造方法の図5bにつづく工程を示している。
【図5d】図4の光偏向器の製造方法の図5cにつづく工程を示している。
【図5e】図4の光偏向器の製造方法の図5dにつづく工程を示している。
【図5f】図4の光偏向器の製造方法の図5eにつづく工程を示している。
【図5g】図4の光偏向器の製造方法の図5fにつづく最後の工程を示している。
【図5h】第二実施形態のマスクパターン設計のための説明図である。
【図5i】図5bの工程に代替可能な別の工程を示している。
【図5j】付加的に適用可能な可視光アライメントのためのマークと開口の形成工程を示している。
【図5k】図5aのSOI基板に代えてパターンドSOI基板を適用した場合における図5cの工程に相当する工程を示している。
【図6】垂直櫛歯アクチュエータの断面概略図である。
【図7a】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の最初の工程を示している。
【図7b】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7aにつづく工程を示している。
【図7c】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7bにつづく工程を示している。
【図7d】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7cにつづく工程を示している。
【図7e】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7dにつづく最後の工程を示している。
【図8】DRIEシリコン垂直エッチング加工において発生する不具合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
<第一実施形態>
図1,図2,図3a〜図3iは、本発明における第一実施形態を示すものであり、図1は、垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図、図2は、垂直櫛歯アクチュエータの駆動説明図であり、図3a〜図3iは、図1の光偏向器のA−A’断面に着目した概略工程説明図である。
【0024】
本実施形態によって製造される光偏向器は、図1に示すように、絶縁層130を介して互いに接合された可動基板110と固定基板120を有している。
【0025】
可動基板110は、固定基板120に固定された一対の固定部111と、光学鏡面114を備えた光偏向板113と、固定部111と光偏向板113をつないでいる一対のヒンジ部112と、光偏向板113から延出している可動上櫛歯電極115を有している。ヒンジ部112は、ねじり変形可能であり、光偏向板113を揺動可能に支持している。可動基板110は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0026】
固定基板120は、可動基板110の固定部111が固定される支持層121を有している。支持層121は、光偏向板113と可動上櫛歯電極115が揺動するために必要な空間を与える切り欠き部123を有している。固定基板120はまた、切り欠き部123内に延出している固定下櫛歯電極122を有している。固定基板120は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0027】
可動基板110は固定基板120に重ねて配置されている。つまり、可動基板110と固定基板120は、それらの厚さ方向にずれて配置されている。可動上櫛歯電極115と固定下櫛歯電極122は、たとえば固定基板120の上面124への投影において互いに対向して互い違いに延びており、また可動基板110と固定基板120の厚さ方向にずれており、垂直櫛歯アクチュエータを構成している。
【0028】
光偏向器はまた、可動基板110と固定基板120の間に任意の電圧を印加する電圧印加機構140を有している。電圧印加機構140によって可動基板110と固定基板120の間に電圧が印加されると、可動上櫛歯電極115と固定下櫛歯電極122の間に静電引力が発生する。その結果、図2に示されるように、可動上櫛歯電極115が固定下櫛歯電極122に引き寄せられ、光偏向板113がヒンジ部112の中心軸116の周りに回転される。この回転の角度は、可動基板110と固定基板120の間に印加される電圧の大きさに依存する。この印加電圧の大きさを電圧印加機構140によって制御することにより、光偏向板113の光学鏡面114で反射される光が所望の方向に偏向される。
【0029】
以下、図1に示した光偏向器の製造方法について、とくにA−A’断面に着目した概略工程説明図(図3a〜図3i)を用いて説明する。
【0030】
最初に、図3aに示すように、固定下櫛歯電極形成のための半導体層としてのシリコン基板151を用意する。シリコン基板151は、のちに形成する固定基板に必要な厚さを有している。シリコン基板151は、たとえば単結晶シリコンで構成される。しかし、シリコン基板151は、これに限定されるものではなく、たとえば多結晶シリコンで構成されてもよい。
【0031】
つぎに、図3bに示すように、シリコン基板151の第一の面151a上に、のちに固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極を形成するための櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成する。櫛歯電極用マスクパターン152a,152bは、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、シリコン基板151に対して一般的な熱酸化法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより任意の膜厚のシリコン酸化膜の成膜をおこない、つづくフォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクとして不要部分の酸化膜をエッチング除去することにより、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成する。酸化膜のエッチング除去は、そのパターンルールによってフッ酸等の薬液を使ったウエット手法、またはフッ素系ガスを使ったドライ手法が適宜選択される。櫛歯電極用マスクパターン152a,152bはともに、のちのシリコン垂直エッチング加工のマスクとなり、そのパターン加工形状には高い加工精度が要求される。とくにマスクの断面形状はシリコンエッチングの断面垂直性を決める要因のひとつでもある。したがって、この酸化膜のエッチング除去工程には、高い加工精度を確保できるドライエッチング手法、なかでも断面垂直性が得られるRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。
【0032】
つづいて、図3cに示すように、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bが形成されたシリコン基板151に、可動上櫛歯電極形成のための半導体層としてのシリコン基板153を、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを介して、言い換えれば、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがシリコン基板151,153の接合界面に配置されるように、シリコン直接接合法等により貼り合わせて貼り合わせ基板156を形成する。シリコン基板153は、たとえば単結晶シリコンで構成され、のちに形成する可動上櫛歯電極形成に必要な厚さを有している。
【0033】
なお、ここでは、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがシリコン基板151の第一の面151aに形成される場合について説明したが、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bは必ずしもシリコン基板151の第一の面151aに形成する必要はなく、貼り合わせ基板156の接合界面に配置されていればよく、シリコン基板151の第一の面151aに向かい合わせに配置されるシリコン基板153の第一の面153aに形成されてもよい。
【0034】
さらに、シリコン直接接合は、清浄なシリコンあるいは酸化シリコン面同士を、中間接着剤を介すことなく貼り合せることができる手法であり、一般的には摂氏1000度程度の高温熱処理により強固な接合強度を確保することができる。貼り合せ後の構造体は実質的に1枚の均質なシリコン基板とみなせるため、本実施形態で示す製造工程との整合性に優れている。
【0035】
なお、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bはその膜厚分の段差を界面に有しており、マスクの厚さおよびパターン幅等のルールによっては、貼り合せ界面に発生する空隙(ボイド)がのちの工程に影響を与える場合がある。その場合は、半導体プロセス、特に多層配線プロセスで一般的に行われているダマシンプロセスを適用することにより、図3jに示すように、シリコン基板151に埋め込まれた状態で櫛歯電極用マスクパターン152d、152cを形成することができ、その結果、貼り合せ時に空隙などの発生を防止することができる。
【0036】
つづいて、図3dに示すように、貼り合わせ基板156の両面に、すなわち、シリコン基板151の第一の面151aの反対側の第二の面151bとシリコン基板153の第一の面153aの反対側の第二の面153bに、それぞれ、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを内包する粗櫛歯マスクパターン154,155を形成する。ここで、粗櫛歯マスクパターン154,155がそれぞれ櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを内包するとは、たとえば櫛歯電極用マスクパターン152a,152bと粗櫛歯マスクパターン154,155をともにシリコン基板151の第一の面151aに投影したときに、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがそれぞれ粗櫛歯マスクパターン154,155の領域内に包含される、言い換えれば、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがそれぞれ粗櫛歯マスクパターン154,155の内側に位置することをいう。したがって、当然ながら、粗櫛歯マスクパターン154,155の面積は、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bの面積よりも大きい。
【0037】
粗櫛歯マスクパターン154,155は、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、まず、貼り合わせ基板156に対して熱酸化法あるいはCVD法などにより両面に対して任意の膜厚だけ成膜をおこなう。ここで熱酸化法を選択する場合は、先の貼り合せ工程でおこなう熱処理時に酸化工程を兼ねてもよい。つぎに、酸化膜を成膜した貼り合わせ基板156の両面に対して、フォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクに不要部分の酸化膜をエッチング除去し、粗櫛歯マスクパターン154,155を形成する。ここで、酸化膜のエッチング除去には、ウエット手法またはドライエッチング手法が適宜選択されるが、この酸化膜のエッチング除去工程には高い加工精度を確保できるドライエッチング手法、なかでも断面垂直性が得られるRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。
【0038】
なお、このフォトリソグラフィ工程においては、貼り合わせ基板156界面に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152a,152bとのアライメントを要することから、シリコンに対して透過性を有する赤外光アライメントを標準とするが、別途、工程の追加挿入によって汎用性の高い可視光アライメントも可能になる。
【0039】
たとえば、図3kに示すように、可視光用アライメントマークとしての酸化膜パターン171を、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bの形成時に同時に作りこみ、貼り合わせ後のフォトリソグラフィおよびマスクエッチング工程により酸化膜開口パターン172を形成し、つづくシリコンエッチング工程によりシリコン基板153に開口173を形成して酸化膜パターン171を露出させ、所望の可視光用アライメントマークを形成することができる。
【0040】
ここで、酸化膜開口パターン172のためのフォトリソグラフィは酸化膜パターン171が露出できる程度のアライメント精度があればよく、たとえばシリコン基板のOF(オリエンテーションフラット)などの基板外形の一部を利用するアライメントで十分である。
【0041】
この手法によれば、粗櫛歯マスクパターン155の形成前の酸化膜155’に対するフォトリソグラフィのアライメントに可視光を使うことができ、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対して精度の高いアライメントが可能となる。なお、もう一方の粗櫛歯マスクパターン154を形成する場合においても同様の加工により可視光アライメントが可能となる。
【0042】
つづいて、図3eに示すように、粗櫛歯マスクパターン155に対して、貼り合わせ基板156を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工157aする。より詳しくは、シリコン基板153の第二の面153bの側からシリコン垂直エッチング加工157aをおこなって、粗櫛歯マスクパターン155をマスクにしてシリコン基板153を選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン155に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン152aをマスクにしてシリコン基板151を選択的に除去する。その結果、固定下櫛歯電極158aが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152aは固定下櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン154はシリコン垂直エッチング加工157aのストッパ膜として機能する。シリコン垂直エッチング加工157aは、たとえばDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によっておこなう。
【0043】
つづいて、図3fに示すように、粗櫛歯マスクパターン155に対して、貼り合わせ基板156を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工157bする。より詳しくは、シリコン基板151の第二の面151bの側からシリコン垂直エッチング加工157bをおこなって、粗櫛歯マスクパターン154をマスクにして残存シリコン基板151cを選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン154に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン152bをマスクにして残存シリコン基板153cを選択的に除去する。その結果、可動上櫛歯電極158bが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152bは可動上櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン155はシリコン垂直エッチング加工157bのストッパ膜として機能する。シリコン垂直エッチング加工157bは、たとえばDRIEによっておこなう。
【0044】
なお、ここでは、図3eに示したシリコン垂直エッチング加工157aにつづいて、図3fで示したシリコン垂直エッチング加工157bを実施する場合について説明したが、エッチング加工の順序はこれに限定されるものではなく、シリコン垂直エッチング加工157bを、シリコン垂直エッチング加工157aに先立って実施してもよい。
【0045】
つづいて、図3gに示すように、シリコン垂直エッチング加工157a,157bにおいてマスクおよびストッパとして機能した櫛歯電極用マスクパターン152a,152bと粗櫛歯マスクパターン154,155をエッチング除去して、固定下櫛歯電極158aと可動上櫛歯電極158bが完成する。ここで、酸化膜のエッチング除去には、フッ酸薬液によるウエット法、またはガスによるドライ法が適宜選択される。ウエット法は、可動部を含む構造体の乾燥時にスティッキングを引き起こす可能性があるため、ここではガスによるドライ法の選択が望ましい。
【0046】
つづいて、図には示さないが、電極パッドおよび光偏向板のための金属薄膜パターニングをシャドウマスク等によりおこなう。金属は、金(Au)やアルミ(Al)等が、偏向対象となる光波長域により適宜選択される。
【0047】
以上の工程により、図1に示した光偏向器が完成する。
【0048】
なお、第一実施形態のマスクパターン設計については、図3hに示すように、粗櫛歯マスクパターン154,155の幅R1と櫛歯電極用マスクパターン152bの幅F1との間にR1>F1なる関係を有し、かつ、隣接する粗櫛歯マスクパターン154,155の間隔をΔR1、櫛歯電極用マスクパターン152bに対する粗櫛歯マスクパターン155の左右両側のはみだし量をそれぞれΔFL1,ΔFR1とした場合、ΔR1>0,ΔFL1>0,ΔFR1>0なる関係を有するように設計すればよい。
【0049】
ここでは、垂直櫛歯電極158a,158bのうち一方の櫛歯電極すなわち可動上櫛歯電極158bのマスクパターン152b,155についてのみ述べたが、固定下櫛歯電極158aのマスクパターン152a,154についても同様の設計指針に基づけばよい。
【0050】
また、各櫛歯電極用マスクパターン152a,152bと各粗櫛歯マスクパターン154,155の厚さは、のちのシリコン垂直エッチング加工の耐性およびストッパ耐性を勘案した膜厚であればよく、各櫛歯電極層の厚さおよび製造装置性能に応じて適宜決定すればよい。
【0051】
さらに、本実施形態においては、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bをシリコン酸化膜で形成する例で説明したが、マスク材料としては、パターン加工が容易であり、シリコン垂直エッチング耐性を有し、かつ、貼り合せ工程とのプロセス整合性が得られれば、とくに材料を限定するものではない。たとえば、アルミ膜はパターン加工が容易であり、ドライエッチング耐性を有する材料であり、貼り合せ手法を高温熱処理が必要な直接接合からアルミ膜の耐熱性を勘案した低温接合に変更すれば適用できる。低温接合としては、プラズマ活性化接合、あるいはイオン照射による常温接合などがある。
【0052】
さらに、本実施形態のシリコン垂直エッチング加工157a,157bについては、DRIEを利用する例に説明したが、加工法としてはDRIEに限定するものでなく、シリコンの垂直加工が可能な技術であれば適用可能である。たとえば、シリコン結晶方位によるエッチング速度の差を利用したシリコン結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)を選択することもできる。具体的には、(110)シリコン基板に対して結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)をおこなえばよい。また、光励起電解研磨法、フェムト秒レーザーなどによる加工なども適宜選択することができる。
【0053】
以上の説明から明らかなように、本第一実施形態によれば、貼り合わせ基板の接合界面に埋込まれた櫛歯電極用マスクパターン152a,152bにて櫛歯同士のアライメントが決定するため櫛歯電極間のアライメント精度は高く、かつ、シリコン垂直エッチング加工157a,157b時のアスペクト比(d/g:開口幅gとエッチング深さdとの比、図3f参照)は従来製法に比べて半分となり、断面の垂直性不良、あるいは加工側面の荒れ、あるいはエッチング底面のシリコン柱状残渣、などの不具合を発生させることなく、垂直櫛歯電極を形成することができ、図1に示す垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器を、精度良く、簡単な製法にて実現することができる。
【0054】
本第一実施形態については、変形形態をとることも可能である。以下、その変形形態とその利点について主に図3iを用いて説明する。
【0055】
<第一実施形態の変形形態>
まず、上述の図3a〜図3fで示す工程に従い、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成し、そののち櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対してシリコンをエッチング加工する点については第一実施形態で示したとおりである。
【0056】
変形形態としては、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対しておこなうシリコンエッチング加工を、図3e,3fに示すように略垂直ではなく、図3iに示すように、アンダーカットAC(A)、AC(B)を有し、それぞれ任意の傾斜角θ(A)、θ(B)となる条件にてエッチング加工する点にある。
【0057】
具体的にはDRIEエッチング条件を、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対して選択性を有し、かつ、アンダーカットAC(A)、AC(B)を有し、かつ、それぞれが任意の傾斜角θ(A)、θ(B)となるように調整する。
【0058】
一般的なDRIEシリコンエッチングは、保護膜形成成分とシリコン等方性エッチング成分を時分割等で交互に繰り返しおこない、時間、ガス、電力、圧力などのパラメータを調整することで略垂直形状となるようにエッチング条件を設定している。
【0059】
本変形形態では、DRIEエッチング条件を、等方性エッチング成分および保護膜形成成分を、エッチング深さの深化とともに段階的に変化するように調整設定し、エッチング加工157A、157Bをおこなう点にある。
【0060】
その結果、櫛歯電極158A,158Bは、AC(A)=AC(B)、θ(A)=θ(B)にて略台形あるいは略三角形に形成することができる。
【0061】
以上の工程で得られた形状、すなわち櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対して上下対称な略台形または略三角形状は、第一実施形態の効果に加えて、垂直櫛歯電極として、そのアクチュエータ駆動特性向上に寄与するという利点を有する。
【0062】
<第二実施形態>
図4,図5a〜図5hは、本発明における第二実施形態を示すものであり、図4は、垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図、図5は、図4に示す光偏向器のとくにA−A’断面に着目した概略工程説明図である。
【0063】
本実施形態によって製造される光偏向器は、図4に示すように、絶縁層230を介して互いに接合された可動基板210と固定基板220とサポート基板232を有している。可動基板210と固定基板220は絶縁層230を介して互いに接合されており、固定基板220とサポート基板232は絶縁層234を介して互いに接合されている。
【0064】
可動基板210は、固定基板220に固定された一対の固定部211と、光学鏡面214を備えた光偏向板213と、固定部211と光偏向板213をつないでいる一対のヒンジ部212と、光偏向板213から延出している可動上櫛歯電極215を有している。ヒンジ部212は、ねじり変形可能であり、光偏向板213を揺動可能に支持している。可動基板210は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0065】
固定基板220は、可動基板210の固定部211が固定される支持層221を有している。支持層221は、光偏向板213と可動上櫛歯電極215が揺動するために必要な空間を与える切り欠き部223を有している。固定基板220はまた、切り欠き部223内に延出している固定下櫛歯電極222を有している。固定基板220は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0066】
可動基板210は固定基板220に重ねて配置されている。つまり、可動基板210と固定基板220は、それらの厚さ方向にずれて配置されている。可動上櫛歯電極215と固定下櫛歯電極222は、たとえば固定基板220の上面224への投影において互いに対向して互い違いに延びており、また可動基板210と固定基板220の厚さ方向にずれており、垂直櫛歯アクチュエータを構成している。
【0067】
光偏向器はまた、可動基板210と固定基板220の間に任意の電圧を印加する電圧印加機構240を有している。電圧印加機構240によって可動基板210と固定基板220の間に電圧が印加されると、可動上櫛歯電極215と固定下櫛歯電極222の間に静電引力が発生する。その結果、可動上櫛歯電極215が固定下櫛歯電極222に引き寄せられ、光偏向板213がヒンジ部212の中心軸の周りに回転される。この回転の角度は、可動基板210と固定基板220の間に印加される電圧の大きさに依存する。この印加電圧の大きさを電圧印加機構240によって制御することにより、光偏向板213の光学鏡面214で反射される光が所望の方向に偏向される。
【0068】
第二実施形態の特徴は、サポート基板232により、可動上櫛歯電極215および固定下櫛歯電極222の各層厚の如何によらずウエハレベルの製造工程を容易にする点である。上記光偏向器の製造方法について図5a〜図5hを用いて説明する。
【0069】
最初に、図5aに示すように、振り出し基板としてSOI(Silicon On Insulator)基板250を用意する。ここで、SOI基板250は、支持層251と活性層253が埋め込み酸化膜252を介して接合された構造体である。たとえば、支持層251と活性層253は単結晶シリコンで構成され、埋め込み酸化膜252はシリコン酸化膜で構成される。活性層253は、固定下櫛歯電極形成のための半導体層であり、固定下櫛歯電極に必要な厚さを有している。支持層251は、製造工程に必要となるサポート基板として主に機能する。
【0070】
つぎに、図5bに示すように、活性層253の第一の面253a上に、のちに固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極を形成するための櫛歯電極用マスクパターン254a,254bと、支持層を形成するための支持層用マスクパターン254cを形成し、つづいて、マスクパターン254a,254b,254cが形成された活性層253に、のちに形成する可動基板よりも厚いシリコン基板255を、マスクパターン254a,254b,254cを介して、言い換えれば、マスクパターン254a,254b,254cが活性層253とシリコン基板255の間に埋め込まれるように貼り合せる。シリコン基板255は、たとえば単結晶シリコンで構成される。
【0071】
マスクパターン254a,254b,254cは、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、SOI基板250を一般的な熱酸化法またはCVD法などにより任意の膜厚だけ成膜し、つづくフォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクとして不要部分の酸化膜をエッチング除去して、マスクパターン254a,254b,254cを形成する。酸化膜のエッチング除去には、そのパターンルールによってウエット手法またはドライ手法が適宜選択される。櫛歯電極用マスクパターン254a,254bはともにのちのシリコン垂直エッチングのマスクであり、そのパターン加工には高い加工精度が要求される。とくにマスクの断面形状はシリコンエッチング断面垂直性を決める要因のひとつでもある。したがって、この酸化膜のエッチング除去工程には、高い加工精度を確保できるドライエッチング手法、なかでも断面垂直性が得られるRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。つづいて、シリコン基板255をシリコン直接接合等の手法により貼り合せ、そののち、可動上櫛歯電極に必要な厚さとなるようにシリコン基板255に対して薄化加工をおこない、可動上櫛歯電極形成のための半導体層としてのシリコン層256を含む貼り合わせ基板257を形成する。ここで薄化加工は機械研削(Back Grind)または化学機械研磨(Chemical Mechanical Polish)などの手法から適宜選択する。
【0072】
なお、マスクパターン254a,254b,254cはその膜厚分の段差を界面に有しており、マスクの厚さおよびパターン幅等のルールによっては、貼り合せ界面に発生する空隙(ボイド)がのちの工程に影響を与える場合がある。その場合は、半導体プロセス、特に多層配線プロセスで一般的に用いられるダマシンプロセスを適用することにより、図5iに示すように、SOI基板250の活性層表面に段差のない状態にてマスクパターン254d,254e,254fを形成することができ、その結果、貼り合せ時の空隙発生の問題が解消される。
【0073】
なお、ここでは、マスクパターン254a,254b,254cがSOI基板250の活性層253の第一の面253aに形成される場合について説明したが、マスクパターン254a,254b,254cは必ずしもSOI基板250に形成する必要はなく、貼り合わせ基板257の接合界面に配置されていればよい。したがって、SOI基板250の活性層253の第一の面253aに向かい合わせに配置されるシリコン基板255の第一の面255aに形成されてもよい。
【0074】
つづいて、図5cに示すように、薄化加工されたシリコン層256の表面に、すなわち、シリコン基板255の第一の面255aに一致するシリコン層256の第一の面256aの反対側のシリコン層256の第二の面256bに、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254aを内包する粗櫛歯マスクパターン258を形成する。
【0075】
粗櫛歯マスクパターン258は、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、シリコン層256を含む貼り合わせ基板257に対して熱酸化法あるいはCVD法などによりシリコン層256表面に対して任意の膜厚だけ成膜をおこなう。ここで熱酸化法を選択する場合は、先の貼り合せ工程でおこなう熱処理時に酸化工程を兼ねてもよい。つづいて、酸化膜が成膜されたシリコン層256表面にフォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクに不要部分の酸化膜をエッチング除去し、粗櫛歯マスクパターン258を形成する。酸化膜のエッチング除去には上述同様の理由からドライエッチング手法、なかでもRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。
【0076】
なお、本フォトリソグラフィ工程においては、貼り合わせ基板257の接合界面に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254a,254bとのアライメントを要することから、シリコンに対して透過性を有する赤外光アライメントを標準とするが、別途、工程の追加挿入によって汎用性の高い可視光アライメントも可能になる。
【0077】
たとえば、図5jに示すように、可視光用アライメントマークとしての酸化膜パターン271を、櫛歯電極用マスクパターン254a,254bの形成時に同時に作りこみ、貼り合わせ後のフォトリソグラフィおよびマスクエッチング工程により酸化膜開口パターン272を形成し、つづくシリコンエッチング工程によりシリコン層256に開口273を形成して酸化膜パターン271を露出させ、所望の可視光用アライメントマークを形成することができる。
【0078】
ここで、酸化膜開口パターン272のためのフォトリソグラフィは酸化膜パターン271が露出できる程度のアライメント精度があればよく、たとえばシリコン基板のOF(オリエンテーションフラット)などの基板外形の一部を利用するアライメントで十分である。
【0079】
この手法によれば、粗櫛歯マスクパターン258の形成前の酸化膜258’に対するフォトリソグラフィのアライメントに可視光を使うことができ、櫛歯電極用マスクパターン254a,254bに対して精度の高いアライメントが可能となる。
【0080】
つづいて、図5dに示すように、支持層251の表面に開口マスクパターン259をフォトリソグラフィ工程により形成し、開口マスクパターン259をマスクにして支持層251に対してDRIEシリコンエッチングを酸化膜252が露出するまでおこなう。このエッチングによって、サポート基板260が形成される。露出した埋め込み酸化膜252に対してフォトリソグラフィおよび酸化膜エッチングをおこない、埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254bを内包する粗櫛歯マスクパターン261を形成する。
【0081】
ここで、粗櫛歯マスクパターン261の形成のためのフォトリソグラフィ工程は、支持層251を開口し、露出した酸化膜252へのパターニングが必要である。しかしながら、ここでフォトリソグラフィに必要なレジスト塗布には、回転塗布等の一般的な半導体プロセスが適用できない。したがって、霧状レジストを噴霧して基板に成膜するスプレー塗布法、または無電解めっき技術による電着レジスト法などを適宜選択する。また、つづくパターン露光では、段差含むエッチング底面に対しておこなう必要があるため、長焦点深度を有する投影露光機などが適宜選択される。
【0082】
なお、支持層251のエッチング開口についてはDRIEで説明したが、アルカリ薬液によるウエットエッチングを選択してもかまわない。アルカリ薬液の場合はTMAH(テトラメチルアンモニウム水溶液)、あるいはKOH(水酸化カリウム)などを使うことができ、ウエットエッチングを選択する場合は、開口マスクパターン259をレジストから、耐アルカリ性を有する熱酸化法やCVD法による酸化膜に変更すればよい。
【0083】
つづいて、図5eに示すように、シリコン層256の第二の面256bに形成された粗櫛歯マスクパターン258に対して、貼り合せシリコン層263を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工264aをおこなう。より詳しくは、シリコン層256の第二の面256bの側からシリコン垂直エッチング加工264aをおこなって、粗櫛歯マスクパターン258をマスクにしてシリコン層256を選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン258に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン254aをマスクにして活性層253を選択的に除去する。その結果、固定下櫛歯電極265aが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254aは固定下櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン261はシリコン垂直エッチング加工264aのストッパ膜として機能する。また、支持層用マスクパターン254cは必要な支持層を残すためのマスクとして機能する。シリコン垂直エッチング加工264aは、たとえばDRIEによっておこなう。
【0084】
つづいて、図5fに示すように、開口マスクパターン259でエッチング開口された支持層251の底部に形成された粗櫛歯マスクパターン261に対して、貼り合せシリコン層263を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工264bをおこなう。より詳しくは、活性層253の第二の面253bの側からシリコン垂直エッチング加工264bをおこなって、粗櫛歯マスクパターン261をマスクにして露出残存活性層253cを選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン261に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン254bをマスクにして露出残存シリコン層256cを選択的に除去する。その結果、可動上櫛歯電極265bが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254bは可動上櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン258はシリコン垂直エッチング加工264bのストッパ膜として機能する。シリコン垂直エッチング加工264aは、たとえばDRIEによっておこなう。
【0085】
ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254bが可動上櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン258がシリコン垂直エッチング加工264bのストッパ膜として機能する。
【0086】
なお、ここでは、図5eに示したシリコン垂直エッチング加工264aにつづいて、図5fで示したシリコン垂直エッチング加工264bを実施する場合について説明したが、エッチング加工の順序はこれに限定されるものではなく、シリコン垂直エッチング加工264bを、シリコン垂直エッチング加工264aに先立って実施してもよい。
【0087】
つづいて、図5gに示すように、シリコン垂直エッチング加工264a,264bにおいてマスクおよびストッパとして機能したマスクパターン254a,254b,254c,258,261,259をエッチング除去し、垂直櫛歯電極265b,265aとサポート基板260が完成する。ここで、酸化膜のエッチング除去には、フッ酸薬液によるウエット法、またはガスによるドライ法が適宜選択される。ウエット法は、可動部を含む構造体の乾燥時にスティッキングを引き起こす可能性があるため、ここではガスによるドライ法を適用することが望ましい。
【0088】
つづいて、図には示さないが、電極パッドおよび光偏向板のための金属薄膜パターニングをシャドウマスク等によりおこなう。金属は、金(Au)やアルミ(Al)等が、偏向対象となる光波長域により適宜選択される。
【0089】
以上の工程により、図4に示した光偏向器が完成する。
【0090】
本第二実施形態においては、図5kに示すように、SOI基板250に代えて、パターンドSOI基板280を振り出し基板としてもよい。ここで、パターンドSOI基板280は、すでにマスクパターン282a,282bにパターニングされた埋込み酸化膜282を介して支持層281と活性層283が接合された構造体である。パターンドSOI基板280を用いることにより、図5dで説明した専用製造装置、すなわちスプレー塗布機、電着レジスト成膜機、あるいは長焦点深度露光機、などの専用製造装置を使う必要がなくなり、汎用的な製造装置で加工製造できるなど、加工精度の向上に加えて安価な素子提供に貢献できる利点を有する。
【0091】
さらに、本第二実施形態のマスクパターン設計については、図5hに示すように、開口マスクパターン259の開口幅Kと、粗櫛歯マスクパターン258の幅R2と、櫛歯電極用マスクパターン254bの幅F2との間に、K>R2>F2なる関係を有し、かつ、隣接する粗櫛歯マスクパターン258,261の間隔をΔR2、櫛歯電極用マスクパターン254bに対する粗櫛歯マスクパターン258の左右両側のはみだし量をそれぞれΔFL2,ΔFR2とした場合、ΔR2>0,ΔFL2>0,ΔFR2>0なる関係を有するようにマスクパターンを設計すればよい。
【0092】
ここでは、垂直櫛歯電極265a,265bのうち一方の櫛歯電極すなわち可動上櫛歯電極265bのマスクパターン254b,258についてのみ述べたが、固定下櫛歯電極265aのマスクパターン254a,261についても同様の設計指針に基づけばよい。
【0093】
また、各櫛歯電極用マスクパターン254a,254bと各粗櫛歯マスクパターン258,261の厚さは、のちのシリコン垂直エッチング加工の耐性およびストッパ耐性を勘案した膜厚であればよく、各櫛歯電極層の厚さおよび製造装置性能に応じて適宜決定すればよい。
【0094】
さらに、本実施形態においては、櫛歯電極用マスクパターン254a,254bをシリコン酸化膜で形成する例で説明したが、マスク材料としては、パターン加工が容易であり、シリコン垂直エッチング耐性を有し、かつ、貼り合せ手法とのプロセス整合性が得られれば特に材料を限定するものではない。たとえば、アルミ膜は、パターン加工が容易であり、ドライエッチング耐性を有する材料であり、貼り合せ手法を高温熱処理が必要な直接接合からアルミ膜の耐熱性を勘案した低温接合に変更すれば適用できる。低温接合としては、プラズマ活性化接合、あるいはイオン照射による常温接合、などがある。
【0095】
さらに、本実施形態のシリコン垂直エッチング加工264a,264bについては、DRIEを利用する例に説明したが、加工法としてDRIEに限定するものでなく、シリコンの垂直加工が可能な技術であれば適用可能である。たとえば、シリコン結晶方位によるエッチング速度の差を利用したシリコン結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)を選択することもできる。具体的には、(110)シリコン基板に対して結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)をおこなえばよい。また、光励起電解研磨法、フェムト秒レーザーなどによる加工なども適宜選択することができる。
【0096】
さらに、本実施形態では、活性層253がのちの固定櫛歯電極となるSOI基板250を振り出しとして説明しているが、のちの可動櫛歯電極側をSOI基板として振り出してもかまわない。
【0097】
櫛歯シリコン層の厚さは2層を合計しても高々百ミクロン程度の厚さであり、かつ、工程内で脆弱構造が作りこまれることから、櫛歯シリコン層の厚さのみでは、ウエハレベルの剛性を保つことは困難である。かかる困難を回避する方策としては、薄化ウエハの工程ハンドリング法として、専用サポート基板を接着剤等で薄化基板に貼りつけ、その状態で各製造工程を通過させ、最終工程で専用サポート基板を剥離する方法がよく知られている。
【0098】
しかしながら、第一実施形態で説明した光偏向器のような脆弱構造体に対しては、最終剥離工程における構造体ダメージの問題により適用が困難である。
【0099】
その点、本第二実施形態で示すようなSOI基板によるサポート層付加により、光偏向器などに代表される脆弱構造体に対しても製造工程最終段階に至るまで、ウエハレベルの剛性を保つことがでる。したがって、構造体に対するダメージの心配なく、汎用的な製造装置で処理可能となり、高精度加工の実現に加えて、素子の低コスト製造が可能となる。
【0100】
以上の説明から明らかなように、本第二実施形態によれば、貼り合わせ基板の接合界面に埋込まれた櫛歯電極用マスクパターン254a,254bで櫛歯同士のアライメントが決定するため櫛歯電極間のアライメント精度は高く、かつ、シリコン垂直エッチング加工264a,264bのアスペクト比が従来製法に比べて半分となり、断面の垂直性不良、あるいは加工側面の荒れ、あるいはエッチング底面のシリコン柱状残渣、などの不具合を発生させることなく、ウエハレベルにて垂直櫛歯電極を容易に形成することができるという第一実施形態の効果と併せた結果、図4に示す垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器を簡単な製法で実現することができる。
【0101】
なお、第一実施形態の変形形態(図3i)については、本第二実施形態においても適用可能である。
【0102】
以上、実施の第一形態および第二形態では光偏向器について説明したが、本発明は光偏向器に限定されるものでなく、マイクロマシニング技術によって作製される垂直櫛歯アクチュエータを有する加速度センサあるいはジャイロセンサなど、マイクロ素子全般に適用できる。
【0103】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0104】
60…支持基板、61…絶縁膜、62…固定下櫛歯電極、63…可動上櫛歯電極、70…SOI基板、71…支持層、72…埋め込み酸化膜、73…活性層、74…粗櫛歯マスクパターン、74a…櫛歯電極用マスクパターン、75…固定下櫛歯電極、75a…固定下櫛歯電極、76…シリコン基板、77a…櫛歯電極用マスクパターン、77b…櫛歯電極用マスクパターン、78a…不要領域、78b…可動上櫛歯電極、110…可動基板、111…固定部、112…ヒンジ部、113…光偏向板、114…光学鏡面、115…可動上櫛歯電極、116…中心軸、120…固定基板、121…支持層、122…固定下櫛歯電極、123…切り欠き部、124…上面、130…絶縁層、140…電圧印加機構、151…シリコン基板、151a…第一の面、151b…第二の面、151c…残存シリコン基板、152a…櫛歯電極用マスクパターン、152b…櫛歯電極用マスクパターン、152c…櫛歯電極用マスクパターン、152d…櫛歯電極用マスクパターン、153…シリコン基板、153a…第一の面、153b…第二の面、153c…残存シリコン基板、154…マスクパターン、154…粗櫛歯マスクパターン、155…マスクパターン、155…粗櫛歯マスクパターン、155’…酸化膜、156…貼り合わせ基板、157A…エッチング加工、157B…エッチング加工、157a…シリコン垂直エッチング加工、157b…シリコン垂直エッチング加工、158A…櫛歯電極、158B…櫛歯電極、158a…固定下櫛歯電極、158a…垂直櫛歯電極、158b…可動上櫛歯電極、158b…垂直櫛歯電極、171…酸化膜パターン、172…酸化膜開口パターン、173…開口、210…可動基板、211…固定部、212…ヒンジ部、213…光偏向板、214…光学鏡面、215…可動上櫛歯電極、220…固定基板、221…支持層、222…固定下櫛歯電極、223…切り欠き部、224…上面、230…絶縁層、232…サポート基板、234…絶縁層、240…電圧印加機構、250…SOI基板、251…支持層、252…酸化膜、252…埋め込み酸化膜、253…活性層、253a…第一の面、253b…第二の面、253c…露出残存活性層、254a…櫛歯電極用マスクパターン、254b…櫛歯電極用マスクパターン、254c…支持層用マスクパターン、254d…マスクパターン、254e…マスクパターン、254f…マスクパターン、255…シリコン基板、255a…第一の面、256…シリコン層、256a…第一の面、256b…第二の面、256c…露出残存シリコン層、257…貼り合わせ基板、258…粗櫛歯マスクパターン、258’…酸化膜、259…開口マスクパターン、260…サポート基板、261…粗櫛歯マスクパターン、263…貼り合せシリコン層、264a…シリコン垂直エッチング加工、264b…シリコン垂直エッチング加工、265a…固定下櫛歯電極、265b…可動上櫛歯電極、271…酸化膜パターン、272…酸化膜開口パターン、273…開口、280…パターンドSOI基板、281…支持層、282…埋込み酸化膜、282a…マスクパターン、282b…マスクパターン、283…活性層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロマシニング技術によって作製される構造体を静電気によって駆動する垂直櫛歯静電アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシニング技術を用いて作製される静電駆動アクチュエータのひとつに垂直静電櫛歯アクチュエータがある。垂直静電櫛歯アクチュエータは、対向する一対の櫛歯電極が延出方向に対して垂直な方向に段差配置されており、櫛歯電極間への印加電圧に応じて櫛歯電極間に静電引力が発生し、一方の櫛歯電極を垂直方向に移動させるものである。最近ではマイクロミラー等のアクチュエータとして種々提案がなされている。
【0003】
垂直櫛歯アクチュエータにおいて所望の駆動特性を得るためには、対向する垂直櫛歯電極のうち固定された櫛歯電極(以下、固定下櫛歯電極と称す)と可動する櫛歯電極(以下、可動上櫛歯電極と称す)の間には高いアライメント精度が要求される。
【0004】
上述のアライメント精度要求に対して、垂直櫛歯電極を構成する固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極を別基板として作りこんだ2枚の基板を貼り合わせる手法、あるいは1枚の基板両面からフォトリソグラフィと基板エッチング加工により直接的に櫛歯電極を作りこむ手法などが提案されている。しかしながら、いずれの手法においても、貼り合わせ工程やフォトリソグラフィ工程における櫛歯電極間のアライメント精度は、使用する製造装置のアライメント機能および性能におおきく左右され、特に櫛歯電極の微細化においては、より重要な課題として位置づけられている。
【0005】
上記課題に対し、米国特許第6,713,367号には、一部にエッチング加工を施した基板と、もう1枚の基板を貼合わせたのち、貼り合せた基板表面に櫛歯加工用のエッチングマスクを一括パターニングし、エッチングマスクに対して、一方向から、貼り合わせ基板を貫通するように垂直エッチング加工することで、自己整合的に垂直櫛歯電極を形成する手法が提案されている。
【0006】
以下、従来技術について具体的に図6と図7a〜図7eを用いて説明する。
【0007】
図6は、垂直櫛歯アクチュエータの断面概略図である。垂直櫛歯アクチュエータは、支持基板60上に絶縁膜61を介して機械的に結合された固定下櫛歯電極62と、可動上櫛歯電極63から構成されている。固定下櫛歯電極62と可動上櫛歯電極63は、互いに垂直方向に段差配置されている。図7a〜図7eは、図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の工程を示している。まず図7aに示すように、支持層71と埋め込み酸化膜72と活性層73からなるSOI(Silicon On Insulator)基板70に対して、粗櫛歯マスクパターン74をマスクにエッチング加工して粗い固定下櫛歯電極75を形成する。つぎに図7bに示すように、この構造体にシリコン基板76を貼り合わせる。つづいて図7cに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bを1層のフォトマスクにて一括形成する。つづいて図7dに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bに対してシリコン基板76と粗櫛歯マスクパターン74をエッチング加工し、これにより櫛歯電極用マスクパターン74aを形成したのち、さらに櫛歯電極用マスクパターン74aに対して粗い固定下櫛歯電極75を連続的に垂直エッチング加工し、固定下櫛歯電極75aと不要領域78aと可動上櫛歯電極78bを形成する。
【0008】
ここで垂直エッチング加工には、図7d中に示される間隔Gと深さDの比すなわちアスペクト比D/Gで規定されるディメンジョンを高精度に加工することが要求される。
【0009】
つづいて図7eに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77b,74aと不要領域78aをエッチング除去することにより可動上櫛歯電極78bおよび固定下櫛歯電極75aを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,713,367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の製法に従えば、垂直櫛歯電極を構成する固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極の間のアライメントは1層のマスクで決定されるため、マスク形成段階では使用製造装置の能力および性能に関わらず高いアライメント精度を有している。
【0012】
しかしながら、そののちのシリコン垂直加工工程において発生する不具合により、所望の櫛歯構造を製造することが困難となる。
【0013】
以下、不具合について説明する。図7dにおいて、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bに対して加工するシリコン垂直エッチングは、一般的にDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によっておこなう。図7dに示すような微細垂直櫛歯電極構造においては、シリコンエッチング時のアスペクト比D/Gは10程度に達する。たとえば櫛歯の間隔Gが3μm、櫛歯層厚の合計Dが30μmの場合、アスペクト比は10となる。すなわちDRIEシリコン垂直エッチング加工にはアスペクト比10のディメンジョンを高精度に垂直加工することが要求される。つまり高難度の製造技術を要する。
【0014】
アスペクト比10程度のDRIEシリコン垂直エッチング加工をおこなう場合には、垂直エッチングの進行とともに、言い換えればエッチング深さの深化にともない、図8に示す不具合の発生がよく知られている。
【0015】
たとえば図8中に符号81に示すように、形状の垂直性が損なわれ、指標θが理想状態のθ=0度から正(+)負(−)いずれかの方向にずれてしまう不具合、あるいは図8中に符号82に示すように、加工側面に荒れが発生する不具合、あるいは図8中に符号83に示すように、エッチング底面に除去されないシリコンが柱状残渣となって残る不具合である。シリコン柱状残渣については、図7dに示す櫛歯電極用マスクパターン77aに対して、粗い固定下櫛歯電極75までを連続的に垂直エッチング加工する際に、固定下櫛歯電極75aの側底面近傍に発生するものである。
【0016】
とくに、図7dに示すように、櫛歯電極用マスクパターン77a,77bに対して加工するシリコン垂直エッチングは、シリコン基板76をエッチング加工し、露出する粗櫛歯マスクパターン74を続けてエッチング加工し、ここでエッチング転写された櫛歯電極用マスクパターン74aをもとに、さらに連続して粗い固定下櫛歯電極75をエッチング加工する、という複雑な製法で櫛歯電極を形成するため、上述した不具合は、より顕著に現れる。
【0017】
これらの加工形状不具合は、いずれも最終的な垂直櫛歯アクチュエータの機能を阻害するものであり、性能を劣化させるものである。
【0018】
本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、垂直櫛歯アクチュエータを構成する垂直櫛歯電極構造を高いアライメント精度かつ高い加工精度で製造し得る簡単な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による垂直櫛歯電極構造の製造方法は、第一の半導体層の第一の面上に櫛歯電極用マスクパターンを形成する工程と、前記第一の半導体層に前記櫛歯電極用マスクパターンを介して第二の半導体層を貼り合せる工程と、前記第一の半導体層の前記第一の面の反対側の前記第一の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの第一の部分を内包する第一の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、前記第一の半導体層の前記第一の面に向かい合わせ配置された前記第二の半導体層の第一の面の反対側の前記第二の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの前記第一の部分を除いた前記櫛歯電極用マスクパターンの第二の部分を内包する第二の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、第一のエッチング加工をおこなって、前記第一の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を選択的に除去する工程と、第二のエッチング加工をおこなって、前記第二の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を選択的に除去する工程と、前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯マスクパターンを除去する工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、垂直櫛歯アクチュエータの垂直櫛歯電極構造を高いアライメント精度かつ高い加工精度で製造し得る簡単な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態による垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図である。
【図2】垂直櫛歯アクチュエータの駆動説明図である。
【図3a】図1の光偏向器の製造方法の最初の工程を示している。
【図3b】図1の光偏向器の製造方法の図3aにつづく工程を示している。
【図3c】図1の光偏向器の製造方法の図3bにつづく工程を示している。
【図3d】図1の光偏向器の製造方法の図3cにつづく工程を示している。
【図3e】図1の光偏向器の製造方法の図3dにつづく工程を示している。
【図3f】図1の光偏向器の製造方法の図3eにつづく工程を示している。
【図3g】図1の光偏向器の製造方法の図3fにつづく最後の工程を示している。
【図3h】第一実施形態のマスクパターン設計のための説明図である。
【図3i】図3eと図3fの工程に代えて適用可能な変形例による工程を示している。
【図3j】図3cの工程に代えて適用可能な別の工程を示している。
【図3k】付加的に適用可能な可視光アライメントのためのマークと開口の形成工程を示している。
【図4】第二実施形態による垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図である。
【図5a】図4の光偏向器の製造方法の最初の工程を示している。
【図5b】図4の光偏向器の製造方法の図5aにつづく工程を示している。
【図5c】図4の光偏向器の製造方法の図5bにつづく工程を示している。
【図5d】図4の光偏向器の製造方法の図5cにつづく工程を示している。
【図5e】図4の光偏向器の製造方法の図5dにつづく工程を示している。
【図5f】図4の光偏向器の製造方法の図5eにつづく工程を示している。
【図5g】図4の光偏向器の製造方法の図5fにつづく最後の工程を示している。
【図5h】第二実施形態のマスクパターン設計のための説明図である。
【図5i】図5bの工程に代替可能な別の工程を示している。
【図5j】付加的に適用可能な可視光アライメントのためのマークと開口の形成工程を示している。
【図5k】図5aのSOI基板に代えてパターンドSOI基板を適用した場合における図5cの工程に相当する工程を示している。
【図6】垂直櫛歯アクチュエータの断面概略図である。
【図7a】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の最初の工程を示している。
【図7b】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7aにつづく工程を示している。
【図7c】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7bにつづく工程を示している。
【図7d】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7cにつづく工程を示している。
【図7e】図6の垂直櫛歯アクチュエータの従来製造方法の図7dにつづく最後の工程を示している。
【図8】DRIEシリコン垂直エッチング加工において発生する不具合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
<第一実施形態>
図1,図2,図3a〜図3iは、本発明における第一実施形態を示すものであり、図1は、垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図、図2は、垂直櫛歯アクチュエータの駆動説明図であり、図3a〜図3iは、図1の光偏向器のA−A’断面に着目した概略工程説明図である。
【0024】
本実施形態によって製造される光偏向器は、図1に示すように、絶縁層130を介して互いに接合された可動基板110と固定基板120を有している。
【0025】
可動基板110は、固定基板120に固定された一対の固定部111と、光学鏡面114を備えた光偏向板113と、固定部111と光偏向板113をつないでいる一対のヒンジ部112と、光偏向板113から延出している可動上櫛歯電極115を有している。ヒンジ部112は、ねじり変形可能であり、光偏向板113を揺動可能に支持している。可動基板110は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0026】
固定基板120は、可動基板110の固定部111が固定される支持層121を有している。支持層121は、光偏向板113と可動上櫛歯電極115が揺動するために必要な空間を与える切り欠き部123を有している。固定基板120はまた、切り欠き部123内に延出している固定下櫛歯電極122を有している。固定基板120は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0027】
可動基板110は固定基板120に重ねて配置されている。つまり、可動基板110と固定基板120は、それらの厚さ方向にずれて配置されている。可動上櫛歯電極115と固定下櫛歯電極122は、たとえば固定基板120の上面124への投影において互いに対向して互い違いに延びており、また可動基板110と固定基板120の厚さ方向にずれており、垂直櫛歯アクチュエータを構成している。
【0028】
光偏向器はまた、可動基板110と固定基板120の間に任意の電圧を印加する電圧印加機構140を有している。電圧印加機構140によって可動基板110と固定基板120の間に電圧が印加されると、可動上櫛歯電極115と固定下櫛歯電極122の間に静電引力が発生する。その結果、図2に示されるように、可動上櫛歯電極115が固定下櫛歯電極122に引き寄せられ、光偏向板113がヒンジ部112の中心軸116の周りに回転される。この回転の角度は、可動基板110と固定基板120の間に印加される電圧の大きさに依存する。この印加電圧の大きさを電圧印加機構140によって制御することにより、光偏向板113の光学鏡面114で反射される光が所望の方向に偏向される。
【0029】
以下、図1に示した光偏向器の製造方法について、とくにA−A’断面に着目した概略工程説明図(図3a〜図3i)を用いて説明する。
【0030】
最初に、図3aに示すように、固定下櫛歯電極形成のための半導体層としてのシリコン基板151を用意する。シリコン基板151は、のちに形成する固定基板に必要な厚さを有している。シリコン基板151は、たとえば単結晶シリコンで構成される。しかし、シリコン基板151は、これに限定されるものではなく、たとえば多結晶シリコンで構成されてもよい。
【0031】
つぎに、図3bに示すように、シリコン基板151の第一の面151a上に、のちに固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極を形成するための櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成する。櫛歯電極用マスクパターン152a,152bは、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、シリコン基板151に対して一般的な熱酸化法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより任意の膜厚のシリコン酸化膜の成膜をおこない、つづくフォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクとして不要部分の酸化膜をエッチング除去することにより、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成する。酸化膜のエッチング除去は、そのパターンルールによってフッ酸等の薬液を使ったウエット手法、またはフッ素系ガスを使ったドライ手法が適宜選択される。櫛歯電極用マスクパターン152a,152bはともに、のちのシリコン垂直エッチング加工のマスクとなり、そのパターン加工形状には高い加工精度が要求される。とくにマスクの断面形状はシリコンエッチングの断面垂直性を決める要因のひとつでもある。したがって、この酸化膜のエッチング除去工程には、高い加工精度を確保できるドライエッチング手法、なかでも断面垂直性が得られるRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。
【0032】
つづいて、図3cに示すように、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bが形成されたシリコン基板151に、可動上櫛歯電極形成のための半導体層としてのシリコン基板153を、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを介して、言い換えれば、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがシリコン基板151,153の接合界面に配置されるように、シリコン直接接合法等により貼り合わせて貼り合わせ基板156を形成する。シリコン基板153は、たとえば単結晶シリコンで構成され、のちに形成する可動上櫛歯電極形成に必要な厚さを有している。
【0033】
なお、ここでは、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがシリコン基板151の第一の面151aに形成される場合について説明したが、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bは必ずしもシリコン基板151の第一の面151aに形成する必要はなく、貼り合わせ基板156の接合界面に配置されていればよく、シリコン基板151の第一の面151aに向かい合わせに配置されるシリコン基板153の第一の面153aに形成されてもよい。
【0034】
さらに、シリコン直接接合は、清浄なシリコンあるいは酸化シリコン面同士を、中間接着剤を介すことなく貼り合せることができる手法であり、一般的には摂氏1000度程度の高温熱処理により強固な接合強度を確保することができる。貼り合せ後の構造体は実質的に1枚の均質なシリコン基板とみなせるため、本実施形態で示す製造工程との整合性に優れている。
【0035】
なお、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bはその膜厚分の段差を界面に有しており、マスクの厚さおよびパターン幅等のルールによっては、貼り合せ界面に発生する空隙(ボイド)がのちの工程に影響を与える場合がある。その場合は、半導体プロセス、特に多層配線プロセスで一般的に行われているダマシンプロセスを適用することにより、図3jに示すように、シリコン基板151に埋め込まれた状態で櫛歯電極用マスクパターン152d、152cを形成することができ、その結果、貼り合せ時に空隙などの発生を防止することができる。
【0036】
つづいて、図3dに示すように、貼り合わせ基板156の両面に、すなわち、シリコン基板151の第一の面151aの反対側の第二の面151bとシリコン基板153の第一の面153aの反対側の第二の面153bに、それぞれ、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを内包する粗櫛歯マスクパターン154,155を形成する。ここで、粗櫛歯マスクパターン154,155がそれぞれ櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを内包するとは、たとえば櫛歯電極用マスクパターン152a,152bと粗櫛歯マスクパターン154,155をともにシリコン基板151の第一の面151aに投影したときに、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがそれぞれ粗櫛歯マスクパターン154,155の領域内に包含される、言い換えれば、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bがそれぞれ粗櫛歯マスクパターン154,155の内側に位置することをいう。したがって、当然ながら、粗櫛歯マスクパターン154,155の面積は、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bの面積よりも大きい。
【0037】
粗櫛歯マスクパターン154,155は、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、まず、貼り合わせ基板156に対して熱酸化法あるいはCVD法などにより両面に対して任意の膜厚だけ成膜をおこなう。ここで熱酸化法を選択する場合は、先の貼り合せ工程でおこなう熱処理時に酸化工程を兼ねてもよい。つぎに、酸化膜を成膜した貼り合わせ基板156の両面に対して、フォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクに不要部分の酸化膜をエッチング除去し、粗櫛歯マスクパターン154,155を形成する。ここで、酸化膜のエッチング除去には、ウエット手法またはドライエッチング手法が適宜選択されるが、この酸化膜のエッチング除去工程には高い加工精度を確保できるドライエッチング手法、なかでも断面垂直性が得られるRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。
【0038】
なお、このフォトリソグラフィ工程においては、貼り合わせ基板156界面に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152a,152bとのアライメントを要することから、シリコンに対して透過性を有する赤外光アライメントを標準とするが、別途、工程の追加挿入によって汎用性の高い可視光アライメントも可能になる。
【0039】
たとえば、図3kに示すように、可視光用アライメントマークとしての酸化膜パターン171を、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bの形成時に同時に作りこみ、貼り合わせ後のフォトリソグラフィおよびマスクエッチング工程により酸化膜開口パターン172を形成し、つづくシリコンエッチング工程によりシリコン基板153に開口173を形成して酸化膜パターン171を露出させ、所望の可視光用アライメントマークを形成することができる。
【0040】
ここで、酸化膜開口パターン172のためのフォトリソグラフィは酸化膜パターン171が露出できる程度のアライメント精度があればよく、たとえばシリコン基板のOF(オリエンテーションフラット)などの基板外形の一部を利用するアライメントで十分である。
【0041】
この手法によれば、粗櫛歯マスクパターン155の形成前の酸化膜155’に対するフォトリソグラフィのアライメントに可視光を使うことができ、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対して精度の高いアライメントが可能となる。なお、もう一方の粗櫛歯マスクパターン154を形成する場合においても同様の加工により可視光アライメントが可能となる。
【0042】
つづいて、図3eに示すように、粗櫛歯マスクパターン155に対して、貼り合わせ基板156を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工157aする。より詳しくは、シリコン基板153の第二の面153bの側からシリコン垂直エッチング加工157aをおこなって、粗櫛歯マスクパターン155をマスクにしてシリコン基板153を選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン155に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン152aをマスクにしてシリコン基板151を選択的に除去する。その結果、固定下櫛歯電極158aが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152aは固定下櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン154はシリコン垂直エッチング加工157aのストッパ膜として機能する。シリコン垂直エッチング加工157aは、たとえばDRIE(Deep Reactive Ion Etching)によっておこなう。
【0043】
つづいて、図3fに示すように、粗櫛歯マスクパターン155に対して、貼り合わせ基板156を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工157bする。より詳しくは、シリコン基板151の第二の面151bの側からシリコン垂直エッチング加工157bをおこなって、粗櫛歯マスクパターン154をマスクにして残存シリコン基板151cを選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン154に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン152bをマスクにして残存シリコン基板153cを選択的に除去する。その結果、可動上櫛歯電極158bが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン152bは可動上櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン155はシリコン垂直エッチング加工157bのストッパ膜として機能する。シリコン垂直エッチング加工157bは、たとえばDRIEによっておこなう。
【0044】
なお、ここでは、図3eに示したシリコン垂直エッチング加工157aにつづいて、図3fで示したシリコン垂直エッチング加工157bを実施する場合について説明したが、エッチング加工の順序はこれに限定されるものではなく、シリコン垂直エッチング加工157bを、シリコン垂直エッチング加工157aに先立って実施してもよい。
【0045】
つづいて、図3gに示すように、シリコン垂直エッチング加工157a,157bにおいてマスクおよびストッパとして機能した櫛歯電極用マスクパターン152a,152bと粗櫛歯マスクパターン154,155をエッチング除去して、固定下櫛歯電極158aと可動上櫛歯電極158bが完成する。ここで、酸化膜のエッチング除去には、フッ酸薬液によるウエット法、またはガスによるドライ法が適宜選択される。ウエット法は、可動部を含む構造体の乾燥時にスティッキングを引き起こす可能性があるため、ここではガスによるドライ法の選択が望ましい。
【0046】
つづいて、図には示さないが、電極パッドおよび光偏向板のための金属薄膜パターニングをシャドウマスク等によりおこなう。金属は、金(Au)やアルミ(Al)等が、偏向対象となる光波長域により適宜選択される。
【0047】
以上の工程により、図1に示した光偏向器が完成する。
【0048】
なお、第一実施形態のマスクパターン設計については、図3hに示すように、粗櫛歯マスクパターン154,155の幅R1と櫛歯電極用マスクパターン152bの幅F1との間にR1>F1なる関係を有し、かつ、隣接する粗櫛歯マスクパターン154,155の間隔をΔR1、櫛歯電極用マスクパターン152bに対する粗櫛歯マスクパターン155の左右両側のはみだし量をそれぞれΔFL1,ΔFR1とした場合、ΔR1>0,ΔFL1>0,ΔFR1>0なる関係を有するように設計すればよい。
【0049】
ここでは、垂直櫛歯電極158a,158bのうち一方の櫛歯電極すなわち可動上櫛歯電極158bのマスクパターン152b,155についてのみ述べたが、固定下櫛歯電極158aのマスクパターン152a,154についても同様の設計指針に基づけばよい。
【0050】
また、各櫛歯電極用マスクパターン152a,152bと各粗櫛歯マスクパターン154,155の厚さは、のちのシリコン垂直エッチング加工の耐性およびストッパ耐性を勘案した膜厚であればよく、各櫛歯電極層の厚さおよび製造装置性能に応じて適宜決定すればよい。
【0051】
さらに、本実施形態においては、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bをシリコン酸化膜で形成する例で説明したが、マスク材料としては、パターン加工が容易であり、シリコン垂直エッチング耐性を有し、かつ、貼り合せ工程とのプロセス整合性が得られれば、とくに材料を限定するものではない。たとえば、アルミ膜はパターン加工が容易であり、ドライエッチング耐性を有する材料であり、貼り合せ手法を高温熱処理が必要な直接接合からアルミ膜の耐熱性を勘案した低温接合に変更すれば適用できる。低温接合としては、プラズマ活性化接合、あるいはイオン照射による常温接合などがある。
【0052】
さらに、本実施形態のシリコン垂直エッチング加工157a,157bについては、DRIEを利用する例に説明したが、加工法としてはDRIEに限定するものでなく、シリコンの垂直加工が可能な技術であれば適用可能である。たとえば、シリコン結晶方位によるエッチング速度の差を利用したシリコン結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)を選択することもできる。具体的には、(110)シリコン基板に対して結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)をおこなえばよい。また、光励起電解研磨法、フェムト秒レーザーなどによる加工なども適宜選択することができる。
【0053】
以上の説明から明らかなように、本第一実施形態によれば、貼り合わせ基板の接合界面に埋込まれた櫛歯電極用マスクパターン152a,152bにて櫛歯同士のアライメントが決定するため櫛歯電極間のアライメント精度は高く、かつ、シリコン垂直エッチング加工157a,157b時のアスペクト比(d/g:開口幅gとエッチング深さdとの比、図3f参照)は従来製法に比べて半分となり、断面の垂直性不良、あるいは加工側面の荒れ、あるいはエッチング底面のシリコン柱状残渣、などの不具合を発生させることなく、垂直櫛歯電極を形成することができ、図1に示す垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器を、精度良く、簡単な製法にて実現することができる。
【0054】
本第一実施形態については、変形形態をとることも可能である。以下、その変形形態とその利点について主に図3iを用いて説明する。
【0055】
<第一実施形態の変形形態>
まず、上述の図3a〜図3fで示す工程に従い、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bを形成し、そののち櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対してシリコンをエッチング加工する点については第一実施形態で示したとおりである。
【0056】
変形形態としては、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対しておこなうシリコンエッチング加工を、図3e,3fに示すように略垂直ではなく、図3iに示すように、アンダーカットAC(A)、AC(B)を有し、それぞれ任意の傾斜角θ(A)、θ(B)となる条件にてエッチング加工する点にある。
【0057】
具体的にはDRIEエッチング条件を、櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対して選択性を有し、かつ、アンダーカットAC(A)、AC(B)を有し、かつ、それぞれが任意の傾斜角θ(A)、θ(B)となるように調整する。
【0058】
一般的なDRIEシリコンエッチングは、保護膜形成成分とシリコン等方性エッチング成分を時分割等で交互に繰り返しおこない、時間、ガス、電力、圧力などのパラメータを調整することで略垂直形状となるようにエッチング条件を設定している。
【0059】
本変形形態では、DRIEエッチング条件を、等方性エッチング成分および保護膜形成成分を、エッチング深さの深化とともに段階的に変化するように調整設定し、エッチング加工157A、157Bをおこなう点にある。
【0060】
その結果、櫛歯電極158A,158Bは、AC(A)=AC(B)、θ(A)=θ(B)にて略台形あるいは略三角形に形成することができる。
【0061】
以上の工程で得られた形状、すなわち櫛歯電極用マスクパターン152a,152bに対して上下対称な略台形または略三角形状は、第一実施形態の効果に加えて、垂直櫛歯電極として、そのアクチュエータ駆動特性向上に寄与するという利点を有する。
【0062】
<第二実施形態>
図4,図5a〜図5hは、本発明における第二実施形態を示すものであり、図4は、垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器の概略斜視図、図5は、図4に示す光偏向器のとくにA−A’断面に着目した概略工程説明図である。
【0063】
本実施形態によって製造される光偏向器は、図4に示すように、絶縁層230を介して互いに接合された可動基板210と固定基板220とサポート基板232を有している。可動基板210と固定基板220は絶縁層230を介して互いに接合されており、固定基板220とサポート基板232は絶縁層234を介して互いに接合されている。
【0064】
可動基板210は、固定基板220に固定された一対の固定部211と、光学鏡面214を備えた光偏向板213と、固定部211と光偏向板213をつないでいる一対のヒンジ部212と、光偏向板213から延出している可動上櫛歯電極215を有している。ヒンジ部212は、ねじり変形可能であり、光偏向板213を揺動可能に支持している。可動基板210は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0065】
固定基板220は、可動基板210の固定部211が固定される支持層221を有している。支持層221は、光偏向板213と可動上櫛歯電極215が揺動するために必要な空間を与える切り欠き部223を有している。固定基板220はまた、切り欠き部223内に延出している固定下櫛歯電極222を有している。固定基板220は、たとえば、ひとつのシリコン層から形成されている。
【0066】
可動基板210は固定基板220に重ねて配置されている。つまり、可動基板210と固定基板220は、それらの厚さ方向にずれて配置されている。可動上櫛歯電極215と固定下櫛歯電極222は、たとえば固定基板220の上面224への投影において互いに対向して互い違いに延びており、また可動基板210と固定基板220の厚さ方向にずれており、垂直櫛歯アクチュエータを構成している。
【0067】
光偏向器はまた、可動基板210と固定基板220の間に任意の電圧を印加する電圧印加機構240を有している。電圧印加機構240によって可動基板210と固定基板220の間に電圧が印加されると、可動上櫛歯電極215と固定下櫛歯電極222の間に静電引力が発生する。その結果、可動上櫛歯電極215が固定下櫛歯電極222に引き寄せられ、光偏向板213がヒンジ部212の中心軸の周りに回転される。この回転の角度は、可動基板210と固定基板220の間に印加される電圧の大きさに依存する。この印加電圧の大きさを電圧印加機構240によって制御することにより、光偏向板213の光学鏡面214で反射される光が所望の方向に偏向される。
【0068】
第二実施形態の特徴は、サポート基板232により、可動上櫛歯電極215および固定下櫛歯電極222の各層厚の如何によらずウエハレベルの製造工程を容易にする点である。上記光偏向器の製造方法について図5a〜図5hを用いて説明する。
【0069】
最初に、図5aに示すように、振り出し基板としてSOI(Silicon On Insulator)基板250を用意する。ここで、SOI基板250は、支持層251と活性層253が埋め込み酸化膜252を介して接合された構造体である。たとえば、支持層251と活性層253は単結晶シリコンで構成され、埋め込み酸化膜252はシリコン酸化膜で構成される。活性層253は、固定下櫛歯電極形成のための半導体層であり、固定下櫛歯電極に必要な厚さを有している。支持層251は、製造工程に必要となるサポート基板として主に機能する。
【0070】
つぎに、図5bに示すように、活性層253の第一の面253a上に、のちに固定下櫛歯電極と可動上櫛歯電極を形成するための櫛歯電極用マスクパターン254a,254bと、支持層を形成するための支持層用マスクパターン254cを形成し、つづいて、マスクパターン254a,254b,254cが形成された活性層253に、のちに形成する可動基板よりも厚いシリコン基板255を、マスクパターン254a,254b,254cを介して、言い換えれば、マスクパターン254a,254b,254cが活性層253とシリコン基板255の間に埋め込まれるように貼り合せる。シリコン基板255は、たとえば単結晶シリコンで構成される。
【0071】
マスクパターン254a,254b,254cは、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、SOI基板250を一般的な熱酸化法またはCVD法などにより任意の膜厚だけ成膜し、つづくフォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクとして不要部分の酸化膜をエッチング除去して、マスクパターン254a,254b,254cを形成する。酸化膜のエッチング除去には、そのパターンルールによってウエット手法またはドライ手法が適宜選択される。櫛歯電極用マスクパターン254a,254bはともにのちのシリコン垂直エッチングのマスクであり、そのパターン加工には高い加工精度が要求される。とくにマスクの断面形状はシリコンエッチング断面垂直性を決める要因のひとつでもある。したがって、この酸化膜のエッチング除去工程には、高い加工精度を確保できるドライエッチング手法、なかでも断面垂直性が得られるRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。つづいて、シリコン基板255をシリコン直接接合等の手法により貼り合せ、そののち、可動上櫛歯電極に必要な厚さとなるようにシリコン基板255に対して薄化加工をおこない、可動上櫛歯電極形成のための半導体層としてのシリコン層256を含む貼り合わせ基板257を形成する。ここで薄化加工は機械研削(Back Grind)または化学機械研磨(Chemical Mechanical Polish)などの手法から適宜選択する。
【0072】
なお、マスクパターン254a,254b,254cはその膜厚分の段差を界面に有しており、マスクの厚さおよびパターン幅等のルールによっては、貼り合せ界面に発生する空隙(ボイド)がのちの工程に影響を与える場合がある。その場合は、半導体プロセス、特に多層配線プロセスで一般的に用いられるダマシンプロセスを適用することにより、図5iに示すように、SOI基板250の活性層表面に段差のない状態にてマスクパターン254d,254e,254fを形成することができ、その結果、貼り合せ時の空隙発生の問題が解消される。
【0073】
なお、ここでは、マスクパターン254a,254b,254cがSOI基板250の活性層253の第一の面253aに形成される場合について説明したが、マスクパターン254a,254b,254cは必ずしもSOI基板250に形成する必要はなく、貼り合わせ基板257の接合界面に配置されていればよい。したがって、SOI基板250の活性層253の第一の面253aに向かい合わせに配置されるシリコン基板255の第一の面255aに形成されてもよい。
【0074】
つづいて、図5cに示すように、薄化加工されたシリコン層256の表面に、すなわち、シリコン基板255の第一の面255aに一致するシリコン層256の第一の面256aの反対側のシリコン層256の第二の面256bに、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254aを内包する粗櫛歯マスクパターン258を形成する。
【0075】
粗櫛歯マスクパターン258は、これに限定されないが、たとえばシリコン酸化膜から形成される。具体的には、シリコン層256を含む貼り合わせ基板257に対して熱酸化法あるいはCVD法などによりシリコン層256表面に対して任意の膜厚だけ成膜をおこなう。ここで熱酸化法を選択する場合は、先の貼り合せ工程でおこなう熱処理時に酸化工程を兼ねてもよい。つづいて、酸化膜が成膜されたシリコン層256表面にフォトリソグラフィ工程により所望のレジストパターニングをおこない、パターニングされたレジストをマスクに不要部分の酸化膜をエッチング除去し、粗櫛歯マスクパターン258を形成する。酸化膜のエッチング除去には上述同様の理由からドライエッチング手法、なかでもRIE(Reactive Ion Etching)手法を適用することが望ましい。
【0076】
なお、本フォトリソグラフィ工程においては、貼り合わせ基板257の接合界面に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254a,254bとのアライメントを要することから、シリコンに対して透過性を有する赤外光アライメントを標準とするが、別途、工程の追加挿入によって汎用性の高い可視光アライメントも可能になる。
【0077】
たとえば、図5jに示すように、可視光用アライメントマークとしての酸化膜パターン271を、櫛歯電極用マスクパターン254a,254bの形成時に同時に作りこみ、貼り合わせ後のフォトリソグラフィおよびマスクエッチング工程により酸化膜開口パターン272を形成し、つづくシリコンエッチング工程によりシリコン層256に開口273を形成して酸化膜パターン271を露出させ、所望の可視光用アライメントマークを形成することができる。
【0078】
ここで、酸化膜開口パターン272のためのフォトリソグラフィは酸化膜パターン271が露出できる程度のアライメント精度があればよく、たとえばシリコン基板のOF(オリエンテーションフラット)などの基板外形の一部を利用するアライメントで十分である。
【0079】
この手法によれば、粗櫛歯マスクパターン258の形成前の酸化膜258’に対するフォトリソグラフィのアライメントに可視光を使うことができ、櫛歯電極用マスクパターン254a,254bに対して精度の高いアライメントが可能となる。
【0080】
つづいて、図5dに示すように、支持層251の表面に開口マスクパターン259をフォトリソグラフィ工程により形成し、開口マスクパターン259をマスクにして支持層251に対してDRIEシリコンエッチングを酸化膜252が露出するまでおこなう。このエッチングによって、サポート基板260が形成される。露出した埋め込み酸化膜252に対してフォトリソグラフィおよび酸化膜エッチングをおこない、埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254bを内包する粗櫛歯マスクパターン261を形成する。
【0081】
ここで、粗櫛歯マスクパターン261の形成のためのフォトリソグラフィ工程は、支持層251を開口し、露出した酸化膜252へのパターニングが必要である。しかしながら、ここでフォトリソグラフィに必要なレジスト塗布には、回転塗布等の一般的な半導体プロセスが適用できない。したがって、霧状レジストを噴霧して基板に成膜するスプレー塗布法、または無電解めっき技術による電着レジスト法などを適宜選択する。また、つづくパターン露光では、段差含むエッチング底面に対しておこなう必要があるため、長焦点深度を有する投影露光機などが適宜選択される。
【0082】
なお、支持層251のエッチング開口についてはDRIEで説明したが、アルカリ薬液によるウエットエッチングを選択してもかまわない。アルカリ薬液の場合はTMAH(テトラメチルアンモニウム水溶液)、あるいはKOH(水酸化カリウム)などを使うことができ、ウエットエッチングを選択する場合は、開口マスクパターン259をレジストから、耐アルカリ性を有する熱酸化法やCVD法による酸化膜に変更すればよい。
【0083】
つづいて、図5eに示すように、シリコン層256の第二の面256bに形成された粗櫛歯マスクパターン258に対して、貼り合せシリコン層263を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工264aをおこなう。より詳しくは、シリコン層256の第二の面256bの側からシリコン垂直エッチング加工264aをおこなって、粗櫛歯マスクパターン258をマスクにしてシリコン層256を選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン258に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン254aをマスクにして活性層253を選択的に除去する。その結果、固定下櫛歯電極265aが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254aは固定下櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン261はシリコン垂直エッチング加工264aのストッパ膜として機能する。また、支持層用マスクパターン254cは必要な支持層を残すためのマスクとして機能する。シリコン垂直エッチング加工264aは、たとえばDRIEによっておこなう。
【0084】
つづいて、図5fに示すように、開口マスクパターン259でエッチング開口された支持層251の底部に形成された粗櫛歯マスクパターン261に対して、貼り合せシリコン層263を貫通するまでシリコン垂直エッチング加工264bをおこなう。より詳しくは、活性層253の第二の面253bの側からシリコン垂直エッチング加工264bをおこなって、粗櫛歯マスクパターン261をマスクにして露出残存活性層253cを選択的に除去し、引きつづき、粗櫛歯マスクパターン261に加えて露出した櫛歯電極用マスクパターン254bをマスクにして露出残存シリコン層256cを選択的に除去する。その結果、可動上櫛歯電極265bが形成される。ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254bは可動上櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン258はシリコン垂直エッチング加工264bのストッパ膜として機能する。シリコン垂直エッチング加工264aは、たとえばDRIEによっておこなう。
【0085】
ここで、先に埋め込まれた櫛歯電極用マスクパターン254bが可動上櫛歯電極形状を決定するマスクとして機能し、粗櫛歯マスクパターン258がシリコン垂直エッチング加工264bのストッパ膜として機能する。
【0086】
なお、ここでは、図5eに示したシリコン垂直エッチング加工264aにつづいて、図5fで示したシリコン垂直エッチング加工264bを実施する場合について説明したが、エッチング加工の順序はこれに限定されるものではなく、シリコン垂直エッチング加工264bを、シリコン垂直エッチング加工264aに先立って実施してもよい。
【0087】
つづいて、図5gに示すように、シリコン垂直エッチング加工264a,264bにおいてマスクおよびストッパとして機能したマスクパターン254a,254b,254c,258,261,259をエッチング除去し、垂直櫛歯電極265b,265aとサポート基板260が完成する。ここで、酸化膜のエッチング除去には、フッ酸薬液によるウエット法、またはガスによるドライ法が適宜選択される。ウエット法は、可動部を含む構造体の乾燥時にスティッキングを引き起こす可能性があるため、ここではガスによるドライ法を適用することが望ましい。
【0088】
つづいて、図には示さないが、電極パッドおよび光偏向板のための金属薄膜パターニングをシャドウマスク等によりおこなう。金属は、金(Au)やアルミ(Al)等が、偏向対象となる光波長域により適宜選択される。
【0089】
以上の工程により、図4に示した光偏向器が完成する。
【0090】
本第二実施形態においては、図5kに示すように、SOI基板250に代えて、パターンドSOI基板280を振り出し基板としてもよい。ここで、パターンドSOI基板280は、すでにマスクパターン282a,282bにパターニングされた埋込み酸化膜282を介して支持層281と活性層283が接合された構造体である。パターンドSOI基板280を用いることにより、図5dで説明した専用製造装置、すなわちスプレー塗布機、電着レジスト成膜機、あるいは長焦点深度露光機、などの専用製造装置を使う必要がなくなり、汎用的な製造装置で加工製造できるなど、加工精度の向上に加えて安価な素子提供に貢献できる利点を有する。
【0091】
さらに、本第二実施形態のマスクパターン設計については、図5hに示すように、開口マスクパターン259の開口幅Kと、粗櫛歯マスクパターン258の幅R2と、櫛歯電極用マスクパターン254bの幅F2との間に、K>R2>F2なる関係を有し、かつ、隣接する粗櫛歯マスクパターン258,261の間隔をΔR2、櫛歯電極用マスクパターン254bに対する粗櫛歯マスクパターン258の左右両側のはみだし量をそれぞれΔFL2,ΔFR2とした場合、ΔR2>0,ΔFL2>0,ΔFR2>0なる関係を有するようにマスクパターンを設計すればよい。
【0092】
ここでは、垂直櫛歯電極265a,265bのうち一方の櫛歯電極すなわち可動上櫛歯電極265bのマスクパターン254b,258についてのみ述べたが、固定下櫛歯電極265aのマスクパターン254a,261についても同様の設計指針に基づけばよい。
【0093】
また、各櫛歯電極用マスクパターン254a,254bと各粗櫛歯マスクパターン258,261の厚さは、のちのシリコン垂直エッチング加工の耐性およびストッパ耐性を勘案した膜厚であればよく、各櫛歯電極層の厚さおよび製造装置性能に応じて適宜決定すればよい。
【0094】
さらに、本実施形態においては、櫛歯電極用マスクパターン254a,254bをシリコン酸化膜で形成する例で説明したが、マスク材料としては、パターン加工が容易であり、シリコン垂直エッチング耐性を有し、かつ、貼り合せ手法とのプロセス整合性が得られれば特に材料を限定するものではない。たとえば、アルミ膜は、パターン加工が容易であり、ドライエッチング耐性を有する材料であり、貼り合せ手法を高温熱処理が必要な直接接合からアルミ膜の耐熱性を勘案した低温接合に変更すれば適用できる。低温接合としては、プラズマ活性化接合、あるいはイオン照射による常温接合、などがある。
【0095】
さらに、本実施形態のシリコン垂直エッチング加工264a,264bについては、DRIEを利用する例に説明したが、加工法としてDRIEに限定するものでなく、シリコンの垂直加工が可能な技術であれば適用可能である。たとえば、シリコン結晶方位によるエッチング速度の差を利用したシリコン結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)を選択することもできる。具体的には、(110)シリコン基板に対して結晶異方性エッチング(ウエットエッチング)をおこなえばよい。また、光励起電解研磨法、フェムト秒レーザーなどによる加工なども適宜選択することができる。
【0096】
さらに、本実施形態では、活性層253がのちの固定櫛歯電極となるSOI基板250を振り出しとして説明しているが、のちの可動櫛歯電極側をSOI基板として振り出してもかまわない。
【0097】
櫛歯シリコン層の厚さは2層を合計しても高々百ミクロン程度の厚さであり、かつ、工程内で脆弱構造が作りこまれることから、櫛歯シリコン層の厚さのみでは、ウエハレベルの剛性を保つことは困難である。かかる困難を回避する方策としては、薄化ウエハの工程ハンドリング法として、専用サポート基板を接着剤等で薄化基板に貼りつけ、その状態で各製造工程を通過させ、最終工程で専用サポート基板を剥離する方法がよく知られている。
【0098】
しかしながら、第一実施形態で説明した光偏向器のような脆弱構造体に対しては、最終剥離工程における構造体ダメージの問題により適用が困難である。
【0099】
その点、本第二実施形態で示すようなSOI基板によるサポート層付加により、光偏向器などに代表される脆弱構造体に対しても製造工程最終段階に至るまで、ウエハレベルの剛性を保つことがでる。したがって、構造体に対するダメージの心配なく、汎用的な製造装置で処理可能となり、高精度加工の実現に加えて、素子の低コスト製造が可能となる。
【0100】
以上の説明から明らかなように、本第二実施形態によれば、貼り合わせ基板の接合界面に埋込まれた櫛歯電極用マスクパターン254a,254bで櫛歯同士のアライメントが決定するため櫛歯電極間のアライメント精度は高く、かつ、シリコン垂直エッチング加工264a,264bのアスペクト比が従来製法に比べて半分となり、断面の垂直性不良、あるいは加工側面の荒れ、あるいはエッチング底面のシリコン柱状残渣、などの不具合を発生させることなく、ウエハレベルにて垂直櫛歯電極を容易に形成することができるという第一実施形態の効果と併せた結果、図4に示す垂直櫛歯アクチュエータを用いた光偏向器を簡単な製法で実現することができる。
【0101】
なお、第一実施形態の変形形態(図3i)については、本第二実施形態においても適用可能である。
【0102】
以上、実施の第一形態および第二形態では光偏向器について説明したが、本発明は光偏向器に限定されるものでなく、マイクロマシニング技術によって作製される垂直櫛歯アクチュエータを有する加速度センサあるいはジャイロセンサなど、マイクロ素子全般に適用できる。
【0103】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0104】
60…支持基板、61…絶縁膜、62…固定下櫛歯電極、63…可動上櫛歯電極、70…SOI基板、71…支持層、72…埋め込み酸化膜、73…活性層、74…粗櫛歯マスクパターン、74a…櫛歯電極用マスクパターン、75…固定下櫛歯電極、75a…固定下櫛歯電極、76…シリコン基板、77a…櫛歯電極用マスクパターン、77b…櫛歯電極用マスクパターン、78a…不要領域、78b…可動上櫛歯電極、110…可動基板、111…固定部、112…ヒンジ部、113…光偏向板、114…光学鏡面、115…可動上櫛歯電極、116…中心軸、120…固定基板、121…支持層、122…固定下櫛歯電極、123…切り欠き部、124…上面、130…絶縁層、140…電圧印加機構、151…シリコン基板、151a…第一の面、151b…第二の面、151c…残存シリコン基板、152a…櫛歯電極用マスクパターン、152b…櫛歯電極用マスクパターン、152c…櫛歯電極用マスクパターン、152d…櫛歯電極用マスクパターン、153…シリコン基板、153a…第一の面、153b…第二の面、153c…残存シリコン基板、154…マスクパターン、154…粗櫛歯マスクパターン、155…マスクパターン、155…粗櫛歯マスクパターン、155’…酸化膜、156…貼り合わせ基板、157A…エッチング加工、157B…エッチング加工、157a…シリコン垂直エッチング加工、157b…シリコン垂直エッチング加工、158A…櫛歯電極、158B…櫛歯電極、158a…固定下櫛歯電極、158a…垂直櫛歯電極、158b…可動上櫛歯電極、158b…垂直櫛歯電極、171…酸化膜パターン、172…酸化膜開口パターン、173…開口、210…可動基板、211…固定部、212…ヒンジ部、213…光偏向板、214…光学鏡面、215…可動上櫛歯電極、220…固定基板、221…支持層、222…固定下櫛歯電極、223…切り欠き部、224…上面、230…絶縁層、232…サポート基板、234…絶縁層、240…電圧印加機構、250…SOI基板、251…支持層、252…酸化膜、252…埋め込み酸化膜、253…活性層、253a…第一の面、253b…第二の面、253c…露出残存活性層、254a…櫛歯電極用マスクパターン、254b…櫛歯電極用マスクパターン、254c…支持層用マスクパターン、254d…マスクパターン、254e…マスクパターン、254f…マスクパターン、255…シリコン基板、255a…第一の面、256…シリコン層、256a…第一の面、256b…第二の面、256c…露出残存シリコン層、257…貼り合わせ基板、258…粗櫛歯マスクパターン、258’…酸化膜、259…開口マスクパターン、260…サポート基板、261…粗櫛歯マスクパターン、263…貼り合せシリコン層、264a…シリコン垂直エッチング加工、264b…シリコン垂直エッチング加工、265a…固定下櫛歯電極、265b…可動上櫛歯電極、271…酸化膜パターン、272…酸化膜開口パターン、273…開口、280…パターンドSOI基板、281…支持層、282…埋込み酸化膜、282a…マスクパターン、282b…マスクパターン、283…活性層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直櫛歯電極構造の製造方法であって、
第一の半導体層の第一の面上に櫛歯電極用マスクパターンを形成する工程と、
前記第一の半導体層に前記櫛歯電極用マスクパターンを介して第二の半導体層を貼り合せる工程と、
前記第一の半導体層の前記第一の面の反対側の前記第一の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの第一の部分を内包する第一の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、
前記第一の半導体層の前記第一の面に向かい合わせ配置された前記第二の半導体層の第一の面の反対側の前記第二の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの前記第一の部分を除いた前記櫛歯電極用マスクパターンの第二の部分を内包する第二の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、
第一のエッチング加工をおこなって、前記第一の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を選択的に除去する工程と、
第二のエッチング加工をおこなって、前記第二の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を選択的に除去する工程と、
前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯マスクパターンを除去する工程とを含むことを特徴とする垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項2】
前記第一および第二の半導体層はいずれも単結晶シリコンで構成されることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項3】
前記第一および第二の半導体層の少なくとも一方はSOI基板の活性層で構成され、前記第一および第二の粗櫛歯マスクパターンの一方は前記SOI基板の埋め込み酸化膜に形成されることを特徴とする請求項1記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項4】
前記第一および第二の半導体層の貼り合せはシリコン直接接合によっておこなわれることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項5】
前記第一および第二のエッチング加工はDRIEによっておこなわれることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項6】
前記第一および第二のエッチング加工は結晶異方性エッチングよっておこなわれることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項7】
前記第一および第二の半導体層が(110)シリコン基板で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項8】
前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯電極用マスクパターンがシリコン酸化膜から形成されることを特徴とする請求項1記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項9】
前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯電極用マスクパターンがアルミ膜から形成されることを特徴とする請求項1記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項1】
垂直櫛歯電極構造の製造方法であって、
第一の半導体層の第一の面上に櫛歯電極用マスクパターンを形成する工程と、
前記第一の半導体層に前記櫛歯電極用マスクパターンを介して第二の半導体層を貼り合せる工程と、
前記第一の半導体層の前記第一の面の反対側の前記第一の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの第一の部分を内包する第一の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、
前記第一の半導体層の前記第一の面に向かい合わせ配置された前記第二の半導体層の第一の面の反対側の前記第二の半導体層の第二の面上に、前記櫛歯電極用マスクパターンの前記第一の部分を除いた前記櫛歯電極用マスクパターンの第二の部分を内包する第二の粗櫛歯マスクパターンを形成する工程と、
第一のエッチング加工をおこなって、前記第一の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を選択的に除去する工程と、
第二のエッチング加工をおこなって、前記第二の粗櫛歯マスクパターンをマスクにして前記第二の半導体層を、さらに前記櫛歯電極用マスクパターンをマスクにして前記第一の半導体層を選択的に除去する工程と、
前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯マスクパターンを除去する工程とを含むことを特徴とする垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項2】
前記第一および第二の半導体層はいずれも単結晶シリコンで構成されることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項3】
前記第一および第二の半導体層の少なくとも一方はSOI基板の活性層で構成され、前記第一および第二の粗櫛歯マスクパターンの一方は前記SOI基板の埋め込み酸化膜に形成されることを特徴とする請求項1記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項4】
前記第一および第二の半導体層の貼り合せはシリコン直接接合によっておこなわれることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項5】
前記第一および第二のエッチング加工はDRIEによっておこなわれることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項6】
前記第一および第二のエッチング加工は結晶異方性エッチングよっておこなわれることを特徴とする請求項1に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項7】
前記第一および第二の半導体層が(110)シリコン基板で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項8】
前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯電極用マスクパターンがシリコン酸化膜から形成されることを特徴とする請求項1記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【請求項9】
前記櫛歯電極用マスクパターンと前記第一および第二の粗櫛歯電極用マスクパターンがアルミ膜から形成されることを特徴とする請求項1記載の垂直櫛歯電極構造の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図3g】
【図3h】
【図3i】
【図3j】
【図3k】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図5i】
【図5j】
【図5k】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図8】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図3g】
【図3h】
【図3i】
【図3j】
【図3k】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図5i】
【図5j】
【図5k】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図8】
【公開番号】特開2012−166313(P2012−166313A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29840(P2011−29840)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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