説明

基板に通路孔を形成するために基板を修正する方法および関連する物品

【課題】タービンエンジン構成要素などの高温基板内に冷却孔を組み込むための方法を提供すること。
【解決手段】高温基板64に少なくとも1つの通路孔100を形成するための方法が説明されている。所望の各通路孔または一群の通路孔のために、基板64の外側面62上に節点60がレーザ固結工程によって最初に形成される。節点が、各通路孔100用の事前に選択した入口領域として機能する。次いで、通路孔100が、節点60を貫通して基板64内に形成されることができる。タービンエンジン構成要素など、関連する物品もまた説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の全体的主題は、タービンエンジン構成要素などの高温基板に関し、より具体的にはこれらの構成要素内に冷却孔を組み込むための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、エンジン空気が圧縮される圧縮機を含む。エンジンはまた、圧縮された空気が燃料と混合されて、高温燃焼ガスを生成する燃焼器をも含む。1つの典型的な設計では(例えば、航空機エンジン用)、圧縮機に電力を供給する高圧タービン(HPT)内および低圧タービン(LPT)内のガスからエネルギーが抽出される。低圧タービンは、ターボファン航空機エンジンの用途でのファンに電力を供給する。固定電力供給の用途では、高圧タービン(HPT)および低圧タービン(LPT)は、通常、圧縮機に電力を供給し、発電機を駆動する1つのシャフト上にある。
【0003】
エンジンが通常は極めて高温な環境で作動するので、ガスタービンエンジンの冷却システムに対する必要性は重要である。例えば、エンジン構成要素は、航空機用途向けでは最大約3800°F(2093°C)まで、および固定電力生成の用途向けでは最大約2700°F(1482°C)の温度を有する高温ガスにしばしばさらされる。高温ガスにさらされた構成要素を冷却するために、これらの「高温ガス通路孔」構成要素は、典型的には内部対流および外部膜冷却の両方を有する。
【0004】
膜冷却の場合、多数の通路孔、すなわち本実施例では冷却孔が、相対的に冷たい構成要素の面から「高温な」構成要素の面まで延在することができる。冷却孔は、通常、浅い角度で傾斜し、構成要素の金属壁を貫通する円筒形の穴である。膜冷却は、高温ガスによる構成要素の面に対する起こりやすい熱流束を減少させるので、温度制御のための重要な仕組みである。様々な要因、例えば、孔の必要な深さおよび形状に応じて、多数の技術が冷却孔を形成するために使用されてよい。レーザ穿孔、研磨液(例えば、水)噴流切削、および放電加工(EDM)が膜冷却孔を形成するために頻繁に使用される技術である。膜冷却孔は、典型には、近接して離隔された孔の列に配置され、それらは集合的に外側面全体に亘る広範囲の冷却被覆を提供する。
【0005】
冷却空気は、通常、圧縮機から取り出された圧縮空気であり、次いで圧縮空気はエンジンの燃焼領域の周囲を迂回して、冷却孔を通って高温面に供給される。冷却剤は高温構成要素の面と高温ガス流の間に保護「膜」を形成し、それにより構成要素を熱から保護する役目をする。加えて、高温ガス通路孔構成要素の壁面は、しばしば、熱の遮断を提供する遮熱コーティング(TBC)システムで覆われる。遮熱コーティング(TBC)システムは、通常、少なくとも1つのセラミック保護膜および下方金属結合被覆を含む。遮熱コーティングシステムの利点は既知である。
【0006】
例示的な膜冷却孔が米国特許第7,328,580号(C.P.Lee et al)に記載されている。この特許は、構成要素の外側面で終了する精密に構成された孔のパターンを含む、超合金から作られるタービンエンジン部品を記載している。具体的な山形またはデルタ形状が孔に設けられる。例えば、このような孔の出口領域は、2つの「翼の谷」の間に横方向に位置する中央隆起部を含むことができる。これらの特徴は一体に結合されて、孔の下部流入孔から放出される圧縮冷却空気を最大に拡散することを提供する構造を形成する。いくつかの場合、これにより、構成要素の外側面の重要な部分に沿って、膜冷却被覆をかなり増加させることができる。上述の技術の中で、放電加工(EDM)工程は、しばしば、孔の出口領域用の最適で、精密な構成を保証するものとして好まれる。
【0007】
放電加工(EDM)を使用すると、いくつかの制限がある。例えば、工程は、電気的に非導電性のTBCのようなセラミック材料を貫通する通路孔を形成するために使用することができない。したがって、セラミックコーティングは、通路孔が基板を貫通して形成された後に適用されなければならないであろう。しかし、その時点でのコーティング蒸着は、特に比較的大きな部品で他の欠点を含む可能性がある。例えば、熱溶射技術によって蒸着されたコーティングは、時々、重大にも通路孔の開口を「覆い尽くす」ことがあり、孔の通路を遮断さえすることがある。いくつかの場合、この問題は、なんらかのコーティング妨害物を考慮するために、意図的に通路孔を大きくすることにより対処することができる。しかし、この技術によって通路孔用の理想的な形状およびサイズを達成することは、非常に困難であることがある。加えて、TBCコーティングを貫通して孔を開けることにより、時々、好ましくない割れ目または層間剥離によりコーティングを損傷することがある。
【0008】
通路孔形成に使用される他の工程は、金属ワークピースを必要としない。実施例はレーザ技術および水噴流研磨システムを含む。したがって、この型の機器は、セラミックコーティング、金属結合被覆および基板を同時に貫通する通路孔を形成するために使用可能である。これらの技術は、いくつかの場合に役立つことがある。しかし、他の場合には、それらの機器は、特に部品の面に最も近い、孔の出口領域で非常に精密な通路孔を形成する能力に欠ける。
【0009】
これらを考慮に入れると、高温基板で通路孔を形成する目的の新規な方法が当分野で歓迎されることになる。タービンエンジン構成要素の場合、その方法により、エンジンの作動中に冷却効果を最大にすることができる、非常に精密な形状を有する膜冷却孔を形成することが可能になるべきである。より具体的には、新規な方法は、十分に柔軟であるので、EDMのような導電性基板に依拠する技術を含む、広範囲の様々な孔形成技術を使用することができる。通路孔の接近による保護コーティングの欠点の可能性を減少させ、または取り除く方法もまた非常に興味深いであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2009/0255110号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの実施形態が、高温基板に少なくとも1つの通路孔を形成するための方法に向けられ、以下のステップを備える。
【0012】
a)各通路孔または一群の通路孔のために、基板の外側面上の節点をレーザ固結工程によって形成するステップであって、節点が、上方面を備え、通路孔または一群の通路孔用に事前に選択した入口領域として配置されているステップと、
b)基板の外側面一面に保護コーティングシステムを付着するステップであって、コーティングシステムが少なくとも1つの下方金属層および1つの上方セラミック層を備えるステップと、
c)各節点を貫通し、基板内部の通路孔または一群の通路孔を形成するステップであって、節点の上方面に実質的にコーティングシステムがないステップと
を備える方法。
【0013】
別の実施形態が基板に向けられ、その基板は高温にさらされることがある外側面と、外側面と大体反対側にある、より低い温度にさらされることがある内側面とを有し、少なくとも1つの通路孔が外側面から内側面まで基板を貫通して延在し、少なくとも1つの金属節点が基板の外側面上に配置され、通路孔用入口領域として配置される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態で使用されるレーザ固結システムの例示的概略図である。
【図2】基板上に節点を形成するための1つの例示的レーザ固結パターンの図である。
【図3】基板上に蒸着された球形型節点の写真図である。
【図4】表面に付着された節点を有する例示的基板の概略横断面図である。
【図5】保護コーティングが基板面および節点の一面に付着された、例示的基板および蒸着された節点の概略横断面図である。
【図6】保護コーティングが節点の表面から除去された、図5の例示的基板の概略横断面図である。
【図7】基板上に蒸着された、勾配付き節点の概略横断面図である。
【図8】通路孔が節点および基板を貫通して形成された、図6の基板の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に開示される数字の範囲は、包括的であり、結合されうる(例えば、「最大約25重量%」、またはより詳細に「約5重量%から約20重量%まで」の範囲は終点値および範囲内のすべての中間値を含む)。任意の組成範囲に関しては、特定されない限り、重量水準は組成全体の重量に基づいて提供され、比率もまた重量に基づいて提供される。さらに、「合成(combination)」という用語はブレンド(blends)、混合物(mixtures)、合金(alloys)、反応生成物(reaction products)などを包括する。
【0016】
さらに、「第1」、「第2」などの用語は本明細書では任意の順番、量、または重要性を示さず、むしろ1つの要素を他の要素から区別するために使用される。「1つの」(“a”、“an”)という用語は量の制限を示さず、むしろ少なくとも1つの参照事項の存在を示す。量に関して使用される「約」(about)という修飾語は記載した値を含み、文脈によって指示された意味を有する(例えば、具体的な量の測定に付随した誤差の程度を含む)。
【0017】
加えて、本明細書では、接尾語「(s)」は通常、それが修飾する語の単数および複数の両方を含み、それによって、その語の1つまたは複数を含む(例えば、「通路孔」は特定されない限り、1つまたは複数の通路孔を含むことができる)。本明細書全体で、「1つの実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」などへの参照は、実施形態に関連して記載された具体的な要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本明細書に記載された少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態に存在できるまたは存在できないことを意味する。加えて、記載された発明性のある特徴が、任意の適切な様式で様々な実施形態に組み合わされることができることを理解されたい。
【0018】
高温にさらされ、冷却が必要な任意の基板が、本発明のために使用できる。非常にしばしば、上記に指摘したように、基板はガスタービン構成要素の少なくとも1つの壁である。この型の壁およびタービン構成要素自体が、多くの参考文献に記載されている。限定されない実施例は、米国特許第6,234,755号(Bunker et al)および第7,328,580号(Lee et al;本明細書では以後Lee)を含み、両文献を参照として本明細書に組み入れる。Lee参照文献は、長手方向または軸方向の中心線軸に関して軸対象である航空ガスタービンエンジンを分かりやすく記載している。エンジンは、流入連絡の順番に、ファン、多段軸圧縮機、および環状燃焼器を含み、その後に高圧タービン(HTP)および低圧タービン(LPT)が順番に続く。
【0019】
上述のように、通路孔(ほとんどのガスタービンに加えられる膜冷却孔)の列および他のパターンは高温基板の多くの区分で形成される必要がある。当業者は、孔の適切な位置を容易に決定することができるであろう。各通路孔または一群の通路孔の選択された位置に対して、節点が基板の外側面上に形成される。本明細書で使用されるように、「節点」という用語は幅広い様々な密集領域、突起、小山または「島」を説明するように意図されている。それらは様々な形状、例えば、正方形、三角形または円形(例えば、中央突起)であってよい。加えて、節点の形状はいくつかの場合ではかなり不規則であってよい。
【0020】
節点の高さは通常、基板の外側面全体に付着されるコーティングの厚さ(合計の厚さ)より少ない、または等しい寸法である。節点は、通路孔の角度または「ピッチ」にかかわらず、突出した通路孔を取り囲むために十分である側面寸法、すなわち基板の水平平面を横切る「X」および「Y」寸法を有するべきである。下記に述べるように、節点は時々、細長いレールまたは狭道の形状であってよく、多数の通路孔用の個々の入口領域として働く。
【0021】
節点は通常(いつもではないが)、基板の組成に類似した、または金属的に基板に適合する組成から形成される。一般に、基板が超合金材料から形成されるとき、節点は高温の金属材料を備える。具体的な節点材料の選択に影響する他の要因は、節点を形成するために使用される具体的なレーザ蒸着工程、基板と比較的強力な結合を形成する節点材料の能力、および節点材料を貫通する通路孔を効果的に形成する能力を含む。超合金基板の場合、節点はしばしばそれ自体が超合金材料、すなわちニッケル基、コバルト基または鉄基の超合金材料から形成される。
【0022】
ほとんどの実施形態では、節点はレーザ固結工程によって基板の外側面上に形成される。このような工程は、当業者に既知であり、多くの参考文献に記載されている。工程はしばしば、「レーザクラッディング(laser cladding)」、「レーザ溶接(laser welding」、「レーザ設計ネット成形(laser engineered net shaping)」などと言及される。工程の限定されない実施例が、以下の米国特許および公開公報に提供されており、それらは参照として本明細書に組み込まれる。米国特許第6,429,402号(Dixon et al.)、米国特許第6,269,540号(Islam et al)、米国特許第5,043,548号(Whitney et al.)、米国特許第5,038,014号(Pratt et al)、米国特許第4,730,093号(Mehta et al.)、米国特許第4,724,299号(Hammeke)、米国特許第4,323,756号(Brown et al.)、米国公開公報第2007/0003416号(Bewlay et al)、米国公開公報第2008/0135530号(Lee et al)。
【0023】
図1は、レーザ固結システム10の全体的な図を提供する。所望の物品、例えば、節点12の形成が基板16の外側面14上で起こっている。レーザ光線18が、下記に記載の従来のレーザパラメータに従って、基板の選択された領域に焦点を合わせられる。供給材料(蒸着材料)20が、通常は適切な搬送ガス24によって粉体源22から配送される。供給材料は通常は、エネルギー光線が基板面14に交差する地点から非常に近傍にある基板上の領域に向けられる。溶融プール26はこの交差点で形成され、凝固して「クラッドトラック」12を形成し、この場合は「クラッドトラック」は節点の形である。以下にさらに説明するように、多数のクラッドトラックが互いに隣接して蒸着可能であり、および/またはそれぞれの頂部上に所望の形状の節点を完成する。典型的には、蒸着装置が上方に向かって上昇するにつれて、節点は3次元形態で完成に向かって成長する。(他の関連する詳細は、上述の米国公開公報第2007/0003416号および米国公開公報第2008/0135530号に見られる)。
【0024】
幅広い多様なレーザが、本明細書で考察する溶融機能を達成するために十分な出力を有する限り、図1のシステムの中で使用できる。約0.1kwから約30kwの電力範囲で作動する二酸化炭素レーザが典型的には使用されるが、この範囲はかなり変化することがある。本発明に適する他のレーザの型の限定されない実施例は、ネオジムヤグレーザ、ファイバレーザ、ダイオードレーザ、ランプ励起固体レーザ、ダイオード励起固体レーザおよびエキシマレーザである。これらのレーザは市販され入手可能であり、当業者はそれらの作動に非常に精通している。レーザはパルスモードまたは連続モードのいずれかで作動可能である。米国公開公報第2007/0003416号に記載されているように、レーザエネルギーは、一般に基板面の「ビームスポット」に一致する、材料(すなわち本明細書では節点形成材料)のプールを溶解するために十分であるべきである。通常は、レーザエネルギーは、平方センチメートル当たり約103から107ワットの範囲の電力密度で加えられる。
【0025】
節点を形成する供給材料の蒸着は、コンピュータ動作制御の下で実行可能である。下記に言及するように、1つまたは複数のコンピュータプロセッサが、レーザ、供給材料の流れおよび基板の動作を制御するために使用されうる。より具体的には、コンピュータを利用した設計(例えば、CAD−CAM)の当業者は、所望の節点が、図案、または鋳造、機械加工などの従来の方法によって事前に形成された物品による形状を主に特徴とすることができることを理解している。節点の形状が一旦数値的に特徴づけられると、部品(または同等に、蒸着頭部)の動きが、入手できる多くの制御コンピュータプログラムを使用して、レーザ固結装置向けにプログラムされる。これらのプログラムは、蒸着装置の各「パス(pass)」間の部品の動き、およびパスの間の部品の側面移動に応じて指示のパターンを作成する。もたらされた節点は、複雑な形状についてさえも、多くの特徴のある形状をかなり正確に再生産する。
【0026】
レーザ固結装置および工程の他の詳細は、上述の参考文献(例えば、米国公開公報第2007/0003416号)に提供されている。例示的詳細および任意の特徴は、事前に形成された層上に層を構築するための他の技術、蒸着に使用された粉体配送角度、粉体材料向け多数の供給ノズルの使用、および基板またはレーザ装置を移動させるための機械的な詳細を相関的に含む。実施例として、基板は「X、YおよびZ」方向に移動できる移動可能な担体システム上に支持されうる。担体プラットフォームは、複雑な、多軸コンピュータ数値制御(CNC)機械の部品であることがある。これらの機械は当分野で既知であり、市販され入手可能である。基板を操作するそのような機械の使用は、米国特許第7,351,290号(Rutkowski et al)に記載され、本明細書に参照として組み込まれる。米国特許出願番号第10/622,063号に記載されるように、そのような機械の使用により、基板は直線X軸およびY軸に関して、1つまたは複数の回転式軸に沿った基板の動きが可能になる。実施例として、従来の回転スピンドルが回転運動を提供するために使用可能である。当業者はこの情報を使用して、サイズ、形状、および位置に対する非常に精密な要求に従って、節点を高温基板に効果的に付着する。加えて、レーザ固結に精通している者は、いくつかの例では、所望の節点材料の1つまたは複数の供給ワイヤが、材料の粉体形成の代わりに使用できることを理解している。
【0027】
図2は、レーザ固結を使用する、節点の形成のための1つの技術を示す図である。この図では、節点40は、選択された出発点で開始する、節点材料42の多数の層にレーザ蒸着することにより準備される。レーザ頭部は通常、「ステッチ(stitching)」パターンによって前後に動き、レーザの速度は特定の層の位置に従って調節される(この例示的図面では、ステッチパターンは外側周辺層によって囲まれている)。当業者は、層の厚さ、合金組成およびレーザ出力のような要因および特性が、最も適切なレーザ速度を決定する際に、しばしば合わせて考慮されることを理解している。一般に、基板との冶金的に完了した結合をやはり得る一方で、蒸着を完成するために要求される全体の時間を減少させることが望ましい。理想的には、最小限の間隙、包有物および多孔性が生じ、基板に対する最小の微細構造変化が多くても存在することであろう。
【0028】
以前に説明したように、レーザ光線の各パスで事前に蒸着された材料(すなわち図2の隣接する平行な層42)の一部が溶融すると、層の間が溶融結合される。したがって、すべての層42は、非常に均一な形状および高さを有する、最終的に単一の塊に固結する。この図では、節点40は細長く、下記に考察するように、通路孔向けに意図された領域全体に亘る「レール」として機能することができる。
【0029】
図3は、レーザ固結技術が、「突起(boss)」またはボタンの形状の節点50を形成するために使用される。レーザ光線(図示されないが、しかし、上述のようにコンピュータ制御を介して粉体配送装置に関連付けられる)は、基板面52上の選択された領域で曲がった螺旋に向けられる。光線は、「内側に」中心点に向かって、または外側に向かって、すなわち中心点から出発して、螺旋状をなす螺旋に材料(例えば、ニッケル基超合金)を蒸着するようにプログラムすることができる。図2の節点に類似した様式で、螺旋の各同心円状の輪を形成する層は単一の塊に結合し、所望の形状およびサイズを有する。この例では、形状は部分的な球体である。本明細書に記載のように、各節点50は、通路孔用の選択された入口領域として配置可能である。
【0030】
図4〜6および8は、本明細書に記載した技術を使用して、通路孔を形成するための1つの実例となる図解を示す。節点60は基板64、例えば、タービンエーロフォイル(または他の型の高温基板)の外側面62上に、上記に説明したレーザ固結工程により形成される。図4は横断面図であり、したがって、節点60は、図示された基板の面に垂直方向にかなり延在する3次元形状を有することができることを理解されたい。例えば、節点はタービンエーロフォイルの任意の全長に沿った、それぞれ、分離した通路孔用の、多数の事前に選択された入口位置として働くように形成されることが可能である。節点の上方面66は、比較的平らであるとして図示されるが、しかし他の面の外形が可能である。
【0031】
1つの実施形態によれば、次いで保護コーティングシステム68は、図5に示すように基板の外側面62一面に付着可能である。様々な材料がコーティングシステム68用に使用できる。1つの実施形態では、1つまたは複数の金属コーティングが採用可能である。そのような金属コーティングの限定されない実施例は、ニッケルアルミナイド(NiAl)、またはプラチナアルミナイド(PtAl)などの金属アルミナイドを含む。他の実施例は、化学式MCrAl(X)の組成を含み、「M」は鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびその組み合わせからなるグループから選択された元素であり、「X」はイットリウム、タンタル、シリコン、ハフニウム、チタニウム、ジルコニウム、ホウ素、炭素またはその組み合わせである。他の適切な金属コーティング(他の型の「MCrAl(X)」組成を含む)もまた、引用出願番号第12/953,177号、米国特許第5,626,462号(Jackson et al)および米国特許第6,511,762号(Lee et al)に記載されており、それらは本明細書に参照として組み込まれる。超合金材料(ニッケル基、コバルト基、または鉄基)もまた時々使用可能である。
【0032】
金属コーティング層は様々な技術によって付着されうる。限定されない実施例は、電子ビーム(EB)、イオンプラズマ蒸着またはスパッタリングなどの物理的気相成長法(PVD)工程を含む。空気プラズマ溶射(APS)、低圧プラズマ溶射(LPPS)、高速度酸素燃焼(HVOF)溶射または高速度空燃(HVAF)溶射などの熱溶射工程も使用できる。いくつかの場合、イオンプラズマ蒸着が特に適するが、例えば、2008年6月12日発行、米国公開公報第2008/0138529号、Weaver et alに記載されたカソード電弧イオンプラズマ蒸着であり、本明細書に参照として組み込まれる。
【0033】
既に言及したように、セラミックコーティングはしばしば金属コーティング一面にまたは多数の金属コーティング一面に付着される。これは特に、様々なタービンエンジン部品向けの場合である。(これらの例では、下方金属コーティングがしばしば一部分において結合層として機能する)。セラミックコーティングは通常は、遮熱コーティング(TBC)の形であり、ジルコニア(ZrO2)、イットリア(Y23)およびマグネシア(MgO)などの様々なセラミック酸化物を備えることができる。好ましい実施形態では、TBCはイットリアで安定化されたジルコニア(YSZ)を備える。そのような組成物は、下方金属層と強力な結合を形成し、比較的高度の熱保護を基板に提供する(米国特許第6,511,762号はいくつかのTBCコーティングシステムの態様の記載を提供している)。
【0034】
TBCは多くの技術によって付着されうる。特定の技術の選択は、コーティング組成、コーティングの所望の厚さ、下方金属層の組成、コーティングが付着される領域および構成要素の形状などの様々な要因に依存する。適切なコーティング技術の限定されない実施例は、PVDおよびプラズマ溶射技術を含む。いくつかの例では、TBCがある程度の多孔性を有することが望ましい。実施例として、多孔質のYSZ構造が、PVDまたはプラズマ溶射技術を使用して、形成可能である。
【0035】
TBCの厚さは様々な要因、例えば、その組成および構成要素が作動する熱環境などに依存する。通常(いつもではないが)、陸上タービンエンジン用に採用されたTBCは、約0.2mmから約1mmの範囲の全体的な厚さを有する。通常(いつもではないが)航空応用、例えば、ジェットエンジン用に採用されたTBCは、約0.1mmから約0.5mmの範囲の全体的な厚さを有する。
【0036】
既に記載したように、節点はしばしば細長いレールまたは狭道の形態であり、多数の通路孔の今後の位置を覆う。いくつかの場合、もし孔が十分に互いに接近しているならば、レールの長さに沿って、または孔の大体の入口位置の間にTBC材料は全く必要がないことがある。例えば、近接して離隔された孔の累積効果により、保護コーティングは全くなしに、十分な程度の冷却空気による保護をもたらすことができる。非常に一般的な指針が、平均直径「D」をそれぞれ有する計画された孔の設定のために提供されることが可能である。この例では、もし直線の全長に沿った孔間の中心から中心までの間隔が約(3×D)よりも小さいならば、TBC材料はその全長に沿って必要とされないであろう。反対に、もし間隔が約(3×D)よりも大きいならば、個々の節点(すなわち「アイランド区域」)がおそらく好ましく、同時にTBC材料を計画された通路孔間に保有する。熱暴露または膜冷却特性の定期的な評価またはモデリングが、どの型の節点形成およびTBC蒸着が所与の状況に最も適切かを決定するために着手されてよい。
【0037】
節点の上方面(図4の面66)には、下記に考察するように、節点を貫通する通路孔の形成より前に、実質的にコーティング材料が全くないことが通常は重要である。したがって、1つの実施形態では、任意のコーティング工程の前にマスク(図示せず)が面66上一面に配置される。一般に、マスクは、実質的にまたは完全に節点の面を覆い、任意の次に続くコーティング工程の状態に耐えうる任意の型の材料を備えることができる。
【0038】
多数の従来のマスクおよびマスク技術が採用されることが可能であり、いくつかが、米国特許第7,422,771号(Pietraszkiewicz et al)に記載されている。(いくつかのマスクは、「シャドウマスク」として既知である)。限定されない実施例として、マスクは金属薄膜、例えば、アルミニウム薄膜、アルミニウムテープ、アルミニウムホイル、ニッケル合金薄膜または前述の少なくとも1つを含む組合せを備えることができる。アルミニウムホイルは、その低価格、弾性および有効性により、時々理想的である。
【0039】
マスクは節点の面上に直接付着可能であり、または面上方に配置されることが可能であり(例えば、吊るされる)、すなわちコーティング材料源と節点面の間の「道筋(path)」を遮断する。加えて、コーティング蒸着が完成した後、いくつかの型のマスクが除去可能である一方で、通路孔の形成中、他のマスクは節点面上に残ることがある。いくつかの例では、マスクの残余物が、通路孔が完成した後、節点面から除去されるであろう。図5では、節点の頂部に蒸着されたコーティング部分70が、もしマスクが使用されていたならば存在しないであろうことが明確であるべきである。
【0040】
他の実施形態ではマスクは不要である。したがって、図5に関連して、コーティング部分70(通常は下方金属コーティングおよび上方セラミック層を含む)が節点面66上、並びに基板面62の残りの部分上に蒸着される。この例では、孔を形成するより前に、様々な技術によってコーティング部分70、少なくともそのセラミック部分は除去される(図6)。実施例は、研削、研磨、エッチング、グリットブラスト、研磨噴射水処理、レーザ除去およびそのような技術の組合せを含む。当業者は、周囲のコーティングシステム68の任意の他の部分を損傷させずに、コーティング部分70のすべてを実質的に除去する最も適切な技術を選択することができるであろう。図6に示すように、節点60は頂部にコーティングシステムが全くなく、他の場所にはコーティング68によって囲まれている。節点は、下記に考察するように、通路孔のための入口領域として機能する。
【0041】
いくつかの実施形態では、節点の側部(側面)は勾配を付けられ、または傾斜している。図7に示すように、節点80は、基板面84および節点面83に対して傾斜した側縁82を含む。図示された勾配の角度は約45°であるが、大幅に変更可能である。それは採用された具体的なレーザ固結システムにある程度依存する。勾配付きの縁部がいくつかの場合に有利であることがある。例えば、マスク工程がコーティング蒸着の前に使用されるとき、傾斜の逆の形状、すなわち基板から上方に向かう勾配が、マスクの縁部で形成されるコーティングパターンを補足することができる。
【0042】
図8に関連して、通路孔100が節点/入口領域60で始まり、基板64を貫通して形成される。この横断面構成で示すように、寸法「X」は節点を貫通して通る通路孔100の長さを収容できるように十分に幅広でなければならない。当業者が理解するように、通路孔の角度は基板面62に対して、大きく変化することがある。タービンエンジンエーロフォイルの場合、具体的な角度は、エーロフォイル上の通路孔の詳細な位置、エーロフォイルの予想される熱環境およびエーロフォイル内の冷却機器構成に大部分依存する。参照した米国特許第7,328,580号(Lee et al)は、専用の通路孔、すなわち山形膜冷却孔に関するある一般的情報および詳細を提供している。これらの膜冷却孔は、通常は構成要素の内部領域102まで延在する(下方に)円筒形入口穴101を含む。以前に言及したように、穴の対向端部、すなわち面62に最も近い端部は、時々、共通の隆起部を翼の谷部の間に有する1対の翼の谷で終了する(これらの図面では具体的に図示せず)。
【0043】
通路孔は様々な技術によって形成されてよい。限定されない実施例は、研磨液噴流切削、レーザ加工、放電加工(EDM)、電子ビーム穿孔、プランジ電気化学加工、CNC加工およびその組合せを含む。当業者は、各技術の型に関する詳細に精通している。いくつかの実施形態では、EDM技術は、上述のように、それらが通路孔の区分に提供できる精密な構成のためにかなり興味深い。EDM工程に関して様々な詳細、例えば、複雑な山形穴形状を形成するために具体的に設計されたEDM電極の限定されない図面が、上述のLee氏による参考文献に提供されている。
【0044】
以前に言及したように、節点の使用により、通路孔を形成するときにいくつかの重要な有利な点がもたらされる。例えば、通路孔用入口領域内の遮熱コーティング(TBC)の必要性は、一般に削除されてきた。(高温エーロフォイルの場合、その入口領域は周囲の冷却空気流並びに通路孔内部の対流冷却によって、十分に保護されているように思われる。)加えて、金属製節点の存在により、すぐれた加工の可撓性がもたらされる。実施例として、上記に記載の標準的技術、レーザ加工および液体噴流切削などが、金属製節点を貫通する穴を形成することができ、一方、EDMのような特別な技術がいくつかの高精度な通路孔用に別法として使用されうる。
【0045】
上述のように、通路孔の上方に節点が蒸着される高温の基板は、本発明の別の実施形態を代表する。保護コーティングシステムによって保護された基板は、典型的には、例えばガスタービン向けエーロフォイルなどのタービンエンジン構成要素である。通路孔は通常、膜冷却孔であり、極めて高温の環境に必要な冷却システム中の導管として働く。
【0046】
前述の説明では、特許請求の範囲の主題の様々な態様を説明してきた。説明の目的のために、具体的な番号、システムおよび/または構成が特許請求された主題の完全な理解をもたらすために説明された。しかし、特許請求された主題が具体的な詳細なしに実施されうることは、この開示の恩恵を有する当業者にとって明らかであるべきである。他の例では、特許請求された主題を不明確にしないように、既知の特徴が時々省略され、および/または簡略化された。本明細書で一定の特徴が図示され、および/または説明されてきたが、多くの修正形態、代替形態、変形形態および/または等価の形態がこれから当業者に生じることであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求された主題の真の精神の範囲に入るものとして、そのような修正形態および/または変形形態すべてを網羅することを意図するものであると理解されたい。すべての参照された物品、刊行物および特許文献は本明細書に参照として組み込まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 レーザ固結システム
12 節点
14 基板面
16 基板
18 レーザ光線
20 供給材料
22 粉体源
24 搬送ガス
26 溶融プール
40 節点
42 節点材料の層
44 レーザ蒸着開始点
50 節点
52 基板面
60 節点
62 基板の外側面
64 基板
66 節点の上方面
68 コーティングシステム
70 コーティング部分
80 節点
82 節点の側縁
83 節点面
100 通路孔
101 流入穴
102 内部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの通路孔(100)を高温基板(64)に形成する方法であって、
a)各通路孔または一群の通路孔のために、前期基板(64)の外側面(84)上の節点(80)をレーザ固結工程によって形成するステップであって、前期節点が、上方面(83)を備え、前期通路孔(100)または前期一群の通路孔用に事前に選択した入口領域として配置されているステップと、
b)前期基板(84)の前期外側面一面に保護コーティングシステム(68)を付着するステップであって、前期コーティングシステムが少なくとも1つの下方金属層および1つの上方セラミック層を備えるステップと、
c)各節点(80)を貫通し、前期基板(64)内部の前期通路孔(100)または一群の通路孔を形成するステップであって、前期節点(80)の前期上方面(83)に実質的にコーティングシステム(68)がないステップと
を備える方法。
【請求項2】
前期基板(84)が超合金材料を備え、前期節点(80)が金属材料を備える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前期節点(12)を形成するために前期レーザ固結工程が、金属材料をレーザ光線(18)で溶融するステップと、溶融した材料を所望のパターンで前期第1の層(42)を形成するように蒸着するステップと、次いで、追加の金属材料を溶融して前期第1の層(42)の直後の次の層を形成するステップとを備え、その結果、前期層の合計が所望の形状の節点(12)を構成するために十分である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前期節点(12)の前期金属材料が粉体の形態である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前期金属節点材料を溶融するステップ、および前期溶融した材料を事前に蒸着された材料の層の直後に蒸着するステップの各期間に、前期事前に蒸着された材料の一部が溶融し、層の間に溶接結合を形成する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのマスクが各節点(60)/(80)の上方面(66)上または上方に、ステップ(b)より前に配置され、その結果、前期節点(60)に実質的に前期コーティングシステム材料がないままである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前期保護コーティングシステム(68)が基板面(62)および前期節点(60)の上方面(70)上に付着され、前期保護コーティングシステム(68)が、ステップ(c)より前に前期節点面(66)から除去される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)の各通路孔が、研磨液噴流切削、レーザ加工、放電加工(EDM)、電子ビーム穿孔、プランジ電子化学加工、CNC加工およびその組み合わせからなるグループから選択された技術によって形成される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
高温基板(16)がタービンエンジン構成要素の一部である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
高温にさらされることがある外側面(62)と、前期外側面と大体反対側にある、より低い温度にさらされることがある内側面とを有し、少なくとも1つの通路孔(100)が前期外側面から前期内側面まで基板(64)を貫通して延在し、少なくとも1つの金属節点(60)が基板(64)の前期外側面(62)上に配置され、通路孔(100)用入口領域として配置される、基板(64)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132451(P2012−132451A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278136(P2011−278136)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】