説明

基板の処理装置及び処理方法

【課題】この発明は基板の板面をノズル体によって噴射供給される処理液によって処理する際、全面を均一に処理できるようにした基板の処理装置を提供することにある。
【解決手段】基板を所定方向に搬送する搬送ローラ5と、基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部に処理液を隙間が生じることのない密の状態で均一に噴射供給する第1のノズル体23と、基板の第1のノズル体によって処理液が供給された幅方向両端部を除く部分に処理液を基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対して隙間が生じる疎の状態で噴射供給する第2のノズル体24を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は液晶表示装置などに用いられるガラス製の基板を処理液によって処理する基板の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるガラス製の基板には回路パターンが形成される。基板に回路パターンを形成するにはリソグラフィープロセスが採用される。リソグラフィープロセスは周知のように上記基板にレジストを塗布し、このレジストに回路パターンが形成されたマスクを介して光を照射する。
【0003】
つぎに、レジストの光が照射されない部分或いは光が照射された部分を除去し、基板のレジストが除去された部分をエッチングするなどの一連の工程を複数回繰り返すことで、上記基板に回路パターンを形成する。
【0004】
このようなリソグラフィープロセスにおいては、上記基板にエッチング液或いはエッチング後にレジストを除去する剥離液、さらに除去後に基板を洗浄するための洗浄液などの処理液によって基板を処理する工程が必要となる。
【0005】
基板の板面を処理液によって処理する場合、たとえば基板を搬送ローラにより所定方向に搬送するとともに、搬送の途中で基板の上方に位置するノズル体から上記処理液を噴射して基板を処理するということが行われている。
【0006】
上記ノズル体は、基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対してそれぞれ所定間隔で配置されている。そして、上記ノズル体からは、通常、処理液を円形パターンで噴射するとともに、基板の板面に処理液が噴射されない部分が生じないようにするため、処理液の隣り合う円形パターンをラップさせるということが行なわれている。
【0007】
特許文献1には処理液を円形のパターンで噴射して基板上でラップさせることが開示され、特許文献2には処理液を四角形のパターンで噴射して基板上でラップさせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−173784号公報
【特許文献2】特開2004−275989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、処理液のパターンが板の板面でラップするよう処理液をノズル体から噴射させると、パターンがラップしない場合に比べて処理液の使用量が増大するということがあり、コスト的に好ましくないということがある。しかも、パターンがラップする部分と、ラップしない部分とでは処理液の供給量が異なるから、処理液による処理が均一に行われないということもある。
【0010】
そこで、最近では基板の板面に対してパターンがラップしない状態で処理液をノズル体から噴射させるということが考えられている。しかしながら、ノズル体から噴射される処理液のパターンが円形であると、そのパターンをラップさせずに基板の板面に噴射供給すると隣り合うパターン間に隙間が生じる。
【0011】
隣り合う円形のパターン間に隙間が生じると、その隙間によって処理液が基板上で流動し易くなるということがある。処理液が基板上で流動し易くなると、基板の周辺部、とくに基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部から処理液が流れ落ち易いということがある。
【0012】
それによって、基板の幅方向の両端部に流れる処理液の量が他の部分に比べて多くなるから、基板の幅方向両端部の処理が他の部分よりも進行し易くなり、基板の処理が全面にわたって均一に行われなくなるということがある。
【0013】
また、基板の板面が前工程の処理などのよって疎水面となっている場合、処理液が基板の幅方向の両側部からさらに流れ落ち易くなるから、そのような疎水面の基板の場合にはより一層、処理にむらが生じ易いということがある。
【0014】
一方、ノズル体から噴射される処理液のパターンが四角形であれば、基板の板面にパターン間に隙間が生じることのない状態で処理液を均一に噴射供給することができる。しかしながら、基板の板面の全体に処理液を四角形のパターンで隙間なく均一に供給すると、基板上で各パターンを形成する処理液の流動性が低下するということがある。
【0015】
基板の板面での処理液の流動性が低下すると、基板の上面で処理液に澱みが生じ、新たな処理液への置換が円滑に行われなくなるということがある。それによって、処理液による基板の処理が均一に行われなくなったり、処理速度が低下するなどのことがある。
【0016】
この発明は、基板の幅方向の両端部から処理液が流れ落ち難くし、しかも基板の幅方向両端部の間の部分では処理液の流動性を確保できるようにすることで、基板の処理を板面全体にわたってむらなく均一に行なうことができるようにした基板の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、基板の板面に処理液を供給してこの板面を処理する基板の処理装置であって、
上記基板を所定方向に搬送する搬送手段と、
上記基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部に上記処理液を隙間が生じることのない密の状態で均一に噴射供給する第1のノズル体と、
上記基板の上記第1のノズル体によって処理液が供給された幅方向両端部を除く部分に上記処理液を上記基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対して隙間が生じる疎の状態で噴射供給する第2のノズル体と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置にある。
【0018】
上記第1のノズル体は上記処理液を四角形状の第1のパターンで噴射供給し、上記第2のノズル体は上記処理液を円形若しくは楕円形の第2のパターンで噴射供給することが好ましい。
【0019】
上記基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部には、上記第1のノズル体によって上記第1のパターンが上記基板の搬送方向に沿って一列になるよう上記処理液が噴射供給され、上記基板の上記幅方向の両端部の間の部分には、上記第2のノズル体によって上記第2のパターンが行列状或いは千鳥状になるよう上記処理液が噴射供給されることが好ましい。
【0020】
この発明は、基板の板面に処理液を供給してこの板面を処理する基板の処理方法であって、
上記基板を所定方向に搬送する工程と、
上記基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部に上記処理液を隙間が生じることのない密の状態で均一に噴射供給する工程と、
上記基板の幅方向両端部を除く部分に上記処理液を上記基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対して隙間が生じる疎の状態で噴射供給する工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法にある。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、基板の幅方向の両端部に処理液を隙間が生じることのない密の状態で均一に噴射供給し、幅方向両端部を除く部分には処理液を基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対して隙間が生じる疎の状態で噴射供給するようにした。
【0022】
そのため、基板の幅方向の両端部では処理液の流動性が低下するから、基板の板面が疎水性であっても、その板面の幅方向両端部から処理液が流れ落ち難くなり、幅方向両端部を除く部分では噴射供給された処理液が流動性を有する状態にあるから、板面全体に処理液が行き渡って均一な処理が行われる。つまり、処理液が基板の幅方向両端部から流れ落ちる量を増大させずに、全面を均一に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施の形態に係る処理槽の長手方向に沿う概略的構成を示す断面図。
【図2】処理槽の幅方向に沿う拡大断面図。
【図3】処理槽の幅方向一端部の拡大図。
【図4】(a)は第1のノズル体のノズルチップの斜視図、(b)は第2のノズル体のノズルチップの斜視図。
【図5】第1、第2のノズル体から基板の幅方向に処理液を噴射する状態を示した斜視図。
【図6】第1、第2のノズル体から基板に噴射される処理液のパターンを示す平面図。
【図7】第1、第2のノズル体から基板に処理液が図6に示すパターンと異なるパターンで噴射される状態を示す平面図。
【図8】図7に示す四角形パターンと円形パターンとでエッチング液を噴射した場合と、円形パターンだけを千鳥状に噴射した場合とのエッチング量を比較したグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながらこの発明の一実施の形態を説明する。
【0025】
図1に示すこの発明の処理装置はチャンバ1を備えている。このチャンバ1は長手方向一端に搬入口2、他端に搬出口3が形成され、内部には長手方向に対して所定間隔で複数の搬送軸4が回転可能に設けられている。搬送軸4には複数の搬送ローラ5が軸方向に所定間隔で設けられている。
【0026】
図2と図3に示すように、各搬送軸4は両端部が軸受6によって回転可能に支持されている。複数の搬送軸の1本の一端部にはウオームホイール7が嵌着されている。この搬送軸4に設けられたウオームホイール7はウオームギヤ8に噛合している。ウオームギヤ8はチャンバ1の長手方向に沿って配置された従動軸9に嵌着されている。
【0027】
上記従動軸9には従動プーリ11が設けられ、この従動プーリ11と駆動源12の回転軸12aに嵌着された駆動プーリ13とにはチェーン14が張設されている。それによって、上記駆動プーリ13が駆動源12によって回転駆動されると、その回転に応じて上記ウオームホイール7が設けられた搬送軸4が従動軸9を介して回転駆動されるようになっている。
【0028】
各搬送軸4の一端部には図示しないスプロケットが設けられている。各スプロケットには図示しないチェーンが張設されている。それによって、ウオームホイール7が設けられた搬送軸4が回転駆動されると、その回転に他の搬送軸4が連動するようになっている。
【0029】
なお、上記駆動源12は図示しない制御装置によって駆動が制御され、上記駆動プーリ13の回転方向を正転方向、逆転方向及び正転方向と逆転方向とを交互に回転させることができるようになっている。
【0030】
上記チャンバ1の搬入口2からは液晶表示装置に用いられるガラス製の矩形状の基板Wが搬入される。チャンバ1内に搬入された基板Wは、下面を搬送軸4に設けられた搬送ローラ5に接触させて搬送される。
【0031】
上記搬送軸4の上方には、両端部が軸受17によって回転可能に支持された押え軸18が配置されている。この押え軸18の両端部には、上記搬送軸4の搬送ローラ5によって搬送される上記基板Wの幅方向の両端縁の上面を押える押えローラ19が設けられている。つまり、基板Wは、幅方向両端縁の下面と上面とが上記搬送ローラ5と押えローラ19とによって保持されて搬送されるようになっている。
【0032】
上記チャンバ1内の搬送ローラ5によって搬送される基板Wの上方には、図1に示すように基板Wの搬送方向に沿って杆状の複数の取付け部材22がピッチPで配置されている。図2に示すように、各取付け部材22の両端部には第1のノズル体23が取り付けられ、中途部には複数の第2のノズル体24が取り付けられている。これらノズル体23,24は上記取付け部材22の長手方向に対して等間隔、この実施の形態ではピッチPの間隔で取付けられている。ここで、P=Pに設定されている。
【0033】
なお、基板Wの搬送方向において、隣り合う取付け部材22に設けられた第1、第2のノズル体23,24は、基板Wの搬送方向と交差する幅方向に対して同じ位置に設けられている。
【0034】
図3と図4(a),(b)に示すように、第1、第2のノズル体23,24はノズルチップ23a,24aを有する。第1のノズル体23のノズルチップ23aには図4(a)に示すように上記ノズルチップ23aの下面に四角形、この実施の形態では正方形に開口した角錐状の噴射孔23bが形成されている。噴射孔23bの頂部には円柱状の供給孔23cが連通し、処理液はこの供給孔23cから噴射孔23bに供給される。
【0035】
上記第2のノズル体24のノズルチップ24aには図4(b)に示すように上記ノズルチップ24aの下面に円形に開口した円錐状の噴射孔24bが形成されている。噴射孔24bの頂部には円柱状の供給孔24cが連通し、処理液はこの供給孔24cから噴射孔24bに供給される。
【0036】
各ノズル体23,24に供給された処理液は、各ノズルチップ23a,24aの噴射孔23b,24bの形状に対応した形状、つまり第1のパターンとしての正方形状の四角形パタ−ンS1と、第2のパターンとしての円形パターンS2になって基板Wの上面に噴射される。
【0037】
上記第1、第2のノズル体23,24が設けられた取付け部材22の高さを後述する高さ調整機構25によって設定することで、図6に示すように上記基板Wの上面の搬送方向と交差する幅方向の両端部には一対の第1のノズル体23から処理液が正方形の四角形パターンS1で噴射供給され、一対の四角形パターンS1の間には複数の第2のノズル体24から処理液が隣接する円形パターンS2で噴射供給される。このとき、四角形パターンS1の一辺の長さと、円形パターンS2の直径は同じ寸法になる。
【0038】
一方、基板Wの搬送方向に対して隣り合う取付け部材22に設けられた第1のノズル体23の噴射孔23bから噴射される処理液の四角形パターンS1は上記基板Wの搬送方向に対して隙間なく隣接した状態、つまり密の状態で噴射される。
【0039】
隣り合う取付け部材22に設けられた上記第2のノズル体24の噴射孔24bから噴射される処理液の円形パターンS2は上記四角形パターンS1が噴射された基板Wの幅方向の両端部間で行列状に隣接して噴射供給されることになる。
【0040】
四角形パターンS1の処理液が基板Wの幅方向両端部に基板の搬送方向に沿って隣接した、隙間のない密の状態で噴射供給されると、基板Wの幅方向両端部では処理液の流動性が低減する。それによって、基板Wの板面が疎水面であっても、基板Wの幅方向両端部に供給された処理液が端部から外方へ流れ落ち難くなる。
【0041】
基板Wの幅方向両端部の四角形パターンS1間には円形パターンS2の処理液が基板Wの幅方向及び搬送方向に対して隣接した状態で行列状に噴射供給される。円形パターンS2が基板Wの幅方向及び搬送方向に対して隣接しても、隣り合う円形パターンS2間には図6にCで示す隙間が生じる。つまり、基板Wには円形パターンS2が隙間Cのある疎の状態で噴射供給される。
【0042】
円形パターンS2間に隙間Cがあると、円形パターンS2を形成する処理液には上記隙間Cに向かう流れが生じる。つまり、基板Wの幅方向両端部の四角形パターンS1の間に供給された円形パターンS2の処理液は上記隙間Cが形成されることで流動性を有する。それによって、基板Wの幅方向両端部の四角形パターンS1の間に供給された円形パターンS2の処理液は上記隙間Cを埋めるよう流動しながら互いのパターンS2が交じり合って均一に分布することになる。
【0043】
上記ノズル体23,24は、上記取付け部材22の両端部に設けられた上記高さ調整機構25によって基板Wの板面に対する高さ調整ができるようになっている。この高さ調整機構25は、図3に示すようマウントロッド27を有する。このマウントロッド27の一端は上記取付け部材22の両端に連結片26を介して取付けられている。マウントロッド27は軸線を上記取付け部材22の軸線と平行にして設けられている。
【0044】
上記チャンバ1内の幅方向両端にはガイド部材28がL字状のブラケット29を介して立設されている。このブラケット29の下端は上記チャンバ1の側壁下部に固定されている。上記ガイド部材28には上下方向に沿って細長いガイド孔31が上記ガイド部材28の厚さ方向に貫通して形成されている。
【0045】
上記ガイド孔31にはガイド部材28の厚さ方向一端から上記マウントロッド27の他端部がガイド孔31の長手方向に沿ってスライド可能に挿入されている。上記ガイド部材28の厚さ方向他端からは、上記マウントロッド27の端面に蝶ねじ32がワッシャ33を介して螺合されている。
【0046】
したがって、上記蝶ねじ32を緩めれば、上記取付け部材22をガイド部材28のガイド孔31に沿って上下方向にスライドさせることができ、上記蝶ねじ32を締め込めば、上記取付け部材22を所定の位置で固定できるようになっている。
【0047】
上記マウントロッド27にはアジャストねじ34が螺合されている。このアジャストねじ34は、上端部が上記ガイド部材28の上端に設けられた支持部材35に回転可能に挿通され、下端が上記ガイド部材28を取付けたブラケット29の上面に回転可能に支持されている。
【0048】
上記アジャストねじ34には、上記支持部材35の上面側と下面側とに位置するナット36が螺合されている。一対のナット36のどちらか一方と上記マウントロッド27に螺合された蝶ねじ32とを緩め、上記アジャストねじ34を回転させれば、上記マウントロッド27を介して上記取付け部材22の高さを上方或いは下方に微調整することができる。つまり、上記取付け部材22に取付けられたノズル体23,24は上記高さ調整機構25によって上記基板Wの板面に対する高さを調整できるようになっている。
【0049】
ノズル体23,24の高さを変えることで、各ノズル体23,24から噴射されて基板Wの上面に到達する処理液の四角形パターンS1及び円形パターンS2の面積を変えることができる。それによって、基板Wの幅方向及びこの幅方向と交差する搬送方向において、上記第1、第2のパターンS1、S2を図6に示すように基板Wの上面に噴射供給することができる。
なお、図6に示すように、基板Wの搬送方向に所定間隔で配置された複数の取付け部材22に設けられた上記第1、第2のノズル体23,24から噴射される処理液の基板Wの搬送方向に対する噴射領域Rは、基板Wの搬送方向に沿う長さ寸法よりも大きく設定されている。
【0050】
つぎに、上記構成の処理装置によって基板Wを処理する手順を説明する。まず、駆動源12を作動させて基板Wをチャンバ1の搬入口2から内部に搬入し、チャンバ1内に設けられた第1、第2のノズル体23,24から処理液を基板Wの板面に向けて噴射する。
【0051】
基板Wの板面の搬送方向と交差する幅方向の両端部には、図6に示すように第1のノズル体23から噴射された処理液が基板Wの搬送方向に対して隣接する四角形パターンS1によって密な状態で供給され、基板Wの幅方向の両端部間、つまり四角形パターンS1の間の部分には行列状に隣接し、かつ隣り合うパターン間に隙間Cが生じる疎の状態となる円形パターンS2によって処理液が噴射供給される。
【0052】
基板Wの幅方向の両端部に処理液が四角形パターンS1によって基板Wの搬送方向に対して隙間のない密な状態で供給されると、処理液は基板Wの搬送方向にだけではなく、基板Wの幅方向に対しても流動性が制限される。それによって、基板Wの幅方向両端部に供給された処理液は、幅方向の端部から外方へ流れ落ち難くなる。
【0053】
基板Wの幅方向両端部に密な状態で供給された四角形パターンS1の間に、隙間Cのある疎の状態で行列状に噴射供給された円形パターンS2の処理液は、各円形パターンS2を形成する処理液が上記隙間Cを埋めるよう流動する。
【0054】
それによって、基板Wの幅方向両端部の間の部分では、上記隙間Cに向かって処理液が流れることで、分布状態が均一になるとともに、その流れによって基板W上での澱みが生じ難くなるから、処理液による処理がむらなく均一に行われ易くなる。
【0055】
すなわち、基板Wの幅方向の両端部から処理液が流れ落ち難く、しかも他の部分では処理液が流動して均一に分布するため、結果的に基板Wの板面全体が均一に処理されることになる。
【0056】
通常、上記チャンバ1の搬入口2から内部に搬入された基板Wは、搬出口3に向かって所定の速度で搬送される。そして、基板Wは上記チャンバ1を通過する間に、第1、第2のノズル体23,24から上述したように供給される処理液によって処理される。
【0057】
一方、基板Wに対するエッチングや洗浄などの処理を確実に行いたいような場合、基板Wを処理液が第1、第2のノズル体23,24から噴射される領域R(図6に示す)から外れることのない範囲で往復動を繰り返すようにしてもよい。
【0058】
上記一実施の形態では、上記基板Wの板面の処理液が四角形パターンS1で噴射供給される両端部の間の部分に、処理液を円形パターンS2で行列状に噴射供給するようにしたが、上記円形パターンS2を図7に示すように千鳥状になるよう噴射供給してもよい。
【0059】
円形パターンS2の処理液を千鳥状で噴射供給すると、円形パターンS2の数が一列毎に1つずつ少なくなる。それによって、円形パターンS2を行列状で噴射供給する場合に比べ、数の少ない列では両端に位置する円形パターンS2と、幅方向両端部に噴射供給された矩形パターンS1との間に生じる隙間C2が他の部分の隙間C1に比べて大きくなるから、上記隙間C2によって流動性の少ない幅方向両端部での処理液の流動性を大きくすることができる。
【0060】
なお、円形パターンS2を千鳥状にすると、基板Wの搬送方向に対して円形パターンS2のピッチは小さくなるから、その分、隣り合う矩形パターンS1がラップすることになる。
【0061】
図8は処理液としてエッチング液を用い、図7に示すように四角形パターンS1と千鳥状に配置される円形パターンS2とでエッチング液を基板Wに噴射供給した場合と、円形パターンS2だけを千鳥状にして噴射供給した場合とのエッチング量を複数のポイントで測定した実験結果を示す。図8にAで示す折れ線が前者の場合で、Bで示す折れ線が後者の場合である。なお、折れ線Aと折れ線Bにおける測定ポイントは、各処理に用いられたそれぞれの基板Wの同じ位置(場所)を測定している。
【0062】
折れ線Aと折れ線Bを比較すると、処理液を基板Wの幅方向両端部に四角形パターンS1で供給し、その間の部分に円形パターンS2を千鳥状にして供給した曲線Aの方が、全面に円形パターンS2で千鳥状に供給した場合よりも、エッチング量のばらつきが少ない、つまりエッチングを均一に行えることが確認できた。
【0063】
なお、上記各実施の形態では四角形パターンとして処理液が正方形のパターンで噴射供給される場合について説明したが、四角形パターンとしては正方形でなく、矩形であってもよく、要は基板の幅方向の両端部に処理液を密な状態で噴射供給することができる形状であればよい。
【0064】
また、基板の幅方向の両端部に処理液を噴射する四角形パターンは、基板の幅方向の端縁から一部が外方へ外れた状態であってもよい。
【0065】
また、基板の幅方向両端部を除く部分に処理液を供給するパターンは、円形パターンに代えて楕円形パターンであってもよく、要は処理液を隙間が生じる疎の状態で供給することができる形状であればよい。
【0066】
さらに、第1、第2のノズル体の支持高さを変え、隣り合う四角形パターンS1及び円形パターンS2を所定のラップ代でラップさせて処理液を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
4…搬送軸(搬送手段)、5…搬送ローラ(搬送手段)、12…駆動源(搬送手段)、23…第1のノズル体、24…第2のノズル体、23a,24a…ノズルチップ、23b,24b…噴射孔、S1…四角形パターン、S2…円形パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の板面に処理液を供給してこの板面を処理する基板の処理装置であって、
上記基板を所定方向に搬送する搬送手段と、
上記基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部に上記処理液を隙間が生じることのない密の状態で均一に噴射供給する第1のノズル体と、
上記基板の上記第1のノズル体によって処理液が供給された幅方向両端部を除く部分に上記処理液を上記基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対して隙間が生じる疎の状態で噴射供給する第2のノズル体と
を具備したことを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記第1のノスル体は上記処理液を四角形状の第1のパターンで噴射供給し、上記第2のノズル体は上記処理液を円形若しくは楕円形の第2のパターンで噴射供給することを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
上記基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部には、上記第1のノズル体によって上記第1のパターンが上記基板の搬送方向に沿って一列になるよう上記処理液が噴射供給され、上記基板の上記幅方向の両端部の間の部分には、上記第2のノズル体によって上記第2のパターンが行列状或いは千鳥状になるよう上記処理液が噴射供給されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板の処理装置。
【請求項4】
基板の板面に処理液を供給してこの板面を処理する基板の処理方法であって、
上記基板を所定方向に搬送する工程と、
上記基板の搬送方向と交差する幅方向の両端部に上記処理液を隙間が生じることのない密の状態で均一に噴射供給する工程と、
上記基板の幅方向両端部を除く部分に上記処理液を上記基板の搬送方向及び搬送方向と交差する方向に対して隙間が生じる疎の状態で噴射供給する工程と
を具備したことを特徴とする基板の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54790(P2011−54790A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202843(P2009−202843)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】