説明

基板を熱処理する装置

本発明は、基板(20)を熱加工するための熱処理内側チャンバ(3)であって、壁(10)を備え、該壁(10)は、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)を包囲し、熱加工の間に基板(20)を支承するための支承装置(8)を備え、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)にエネルギを導入するためのエネルギ源(11)を備え、壁(10)の内側面の少なくとも一部は、エネルギ源(11)により導入される出力を反射するように形成されるものにおいて、壁(10)の内側面の少なくとも一部は、少なくとも赤外線高反射性の材料から成ることを特徴とする。さらに本発明は、基板(20)を熱加工するための熱処理内側チャンバ(3)であって、壁(10)を備え、該壁(10)は、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)を包囲し、熱加工の間に基板(20)を支承するための支承装置(8)を備え、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)にエネルギを導入するためのエネルギ源(11)を備えるものにおいて、壁(10)の少なくとも一部を冷却するための冷却装置(14)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば米国特許第6703589号明細書に記載されているような、請求項1の前提部に記載の、基板を熱加工するための熱処理内側チャンバに関する。さらに本発明は、請求項18の前提部に記載の、外側チャンバの内側に配置され、基板を熱加工するのに適切な、熱処理内側チャンバを備えた加工チャンバに関する。
【0002】
例えば高真空における金属蒸気の凝縮による被覆またはスパッタリングプロセスによる基板の表面処理に際して、多くの場合、基板(および場合によっては基板上に取り付けられた被覆)が熱前処理および/または後処理に曝されるプロセスステップが必要である。そのために基板は、典型的には、熱源を用いて所望の温度に加熱され、所定の時間にわたってその温度で保持される。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許第10304774号明細書において、工作物を温度負荷する方法が公知であり、そこでは、工作物が、閉じた容器に収容され、ガスの対流により基板の温度調節が行われる。ガスは、温度調節体を介してガイドされ、次いで加熱したい工作物の周りに通流される。この方法は、工作物に極めて均等な熱伝達を行うが、温度調節流れの存在が要求される。さらに、大面積で平面状の工作物では、比較的大きな面積比出力(>10W/cm2)による迅速な加熱(>1℃/s)は達成が極めて困難である。
【0004】
欧州特許出願公開第662247号明細書において、薄膜太陽電池を製造する2段階の方法が記載されており、製造中に、熱処理が行われる。基板に銅・インジウム・ジセレニド(CIS)−半導体層を形成するために、先ず半導体を構成する成分Cu、InおよびSeが元素の形でMo電極を備えた基板に取り付けられ、次いでこの層構造がまとめて約400℃のプロセス温度に加熱され、CIS半導体が形成される。その際、層構造の熱処理は、焼き戻しプロセスの間に構成成分の所望の部分圧が維持されるように行われる。これを保証するために、層構造を有する基板が、閉じた容器内例えば黒鉛ボックス内においてシールドガス下で包囲され、その容器内で加熱手段例えばハロゲンランプを用いて加熱される。閉じた容器により、焼き戻しプロセスの間成分が逃げ出さず、したがって成分の所望の化学量論比を有する黄銅鉱が基板上に形成されるよう保証される。黒鉛は、高い放射率と高い熱伝導率とを有し、したがってハロゲンランプから放出される放射を迅速かつ効果的に吸収し、黒鉛ボックス内に収容される層構造に放出することができる。選択的に、層構造を、光学手段を用いて加熱し、その際、透過性の材料例えば石英から成る容器内に収容することが提案される。
【0005】
欧州特許出願公開第662247号明細書に記載された容器が大面積の多層体を熱処理するために用いられると、特に急速な加熱に際して、多層体の個別層への不均等な熱伝達が生じる恐れがあり、これにより層が亀裂または破損することにもなる。このような問題を回避するために、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19936081号明細書において、加熱するために複数のエネルギ源を設けることが提案されており、エネルギ源により、多層体の個々の層は、個別に加熱可能である。このために、加熱したい層とこの層に対応して配置されたエネルギ源との間に透過性のボディが配置されており、透過性のボディの伝達特性および吸収特性は、各層に適合されている。温度調節ボディは、例えばガラスセラミックスから成ってよく、ガラスセラミックスは、熱放射の大部分を吸収し、伝達する。このようにして熱処理の間に生じる機械荷重は、できるだけ小さく維持されるべきである。特に多層体は、閉じた容器内に配置可能であり、そのエネルギ源に向いた壁は、透過性のボディにより形成される。
【0006】
冒頭で述べた米国特許第6703589号明細書には、毒性かつ/または腐食性のガス雰囲気内で工作物を熱処理するための加工チャンバが記載されている。加工チャンバは、外側チャンバを備えており、外側チャンバ内に、閉じた熱処理内側チャンバが配置されており、熱処理内側チャンバに温度調節したい工作物が導入される。さらに加工チャンバは、加熱手段を備えており、加熱手段により、熱処理内側チャンバおよび熱処理内側チャンバに収容される工作物を加熱することができる。
【0007】
前掲文献において、基板を熱処理する様々な装置および方法が公知である。熱処理内側チャンバの壁は、典型的には、熱放射を吸収して伝達する材料、(例えば黒鉛またはガラスセラミックス)から成っている。その結果、熱処理内側チャンバに導入される出力の大部分は、チャンバの壁を加熱し、これにより短いサイクルタイムで壁の過熱が起こり得る。さらに出力の一部は、熱処理内側チャンバの壁を通って外側へ放出される。熱処理内側チャンバが別のチャンバ、例えば真空チャンバにより包囲されている場合に、別のチャンバが加熱され、真空容器および真空容器内の敏感な成分が破損する恐れがあるので、これは特に問題である。
【0008】
本発明の課題は、特にセレンを使用して基板を熱加工するための熱処理内側チャンバを改良して、熱処理内側チャンバ、特にチャンバ壁の過熱が生じることなく、高い熱エネルギを効果的に極めて短い時間で基板に導入できるものを提供することである。
【0009】
さらに、シールドガス雰囲気下かつ/または真空内で基板を熱加工することができる加工チャンバを提供することが望まれる。
【0010】
この課題は、独立請求項の特徴部に記載された構成により解決される。好適な態様は、従属請求項の対象である。
【0011】
この課題を解決するために、本発明によれば、基板を熱加工するための熱処理内側チャンバであって、壁を備え、壁は、熱処理内側チャンバの内室を包囲し、熱加工の間に基板を支承するための支承装置を備え、熱処理内側チャンバの内室にエネルギを導入するためのエネルギ源を備え、壁の内側面の少なくとも一部は、エネルギ源により導入される出力を反射するように形成されるものにおいて、壁の内側面の少なくとも一部は、少なくとも赤外線高反射性の材料から成る。
【0012】
少なくとも赤外線反射性の材料から壁の内側面を形成することにより、好適には、背景技術に対して簡単で安価な製造が達成される。
【0013】
高反射性とは、以下において、60%、好適には80%、特に好適には90%を上回る反射率を有する材料を表している。このような反射率の値は、好適には250nm〜3000nmの間、特に好適には600nm〜2000nmの間の波長範囲で設定されている。材料は、200℃まで、好適には500℃、特に好適には900℃までの熱安定性を有している。好適には、材料は、熱処理に際して用いられる物質、例えばセレンに対して不活性である。
【0014】
別の態様では、熱処理内側チャンバ(熱処理内側チャンバ内に熱処理の間基板が収容される)は、冷却装置を備えており、冷却装置により、熱処理内側チャンバの壁が冷却される。冷却装置により、熱処理内側チャンバ(熱処理内側チャンバの内側に熱処理の間エネルギ源を用いて高温が形成される)は、周囲に対して熱遮蔽される。さらに冷却装置は、チャンバ壁に導入される加熱エネルギを放出し、そうして熱処理内側チャンバの過熱を防止する。
【0015】
冷却装置は、好適には高い比熱を有する液状またはガス状の冷媒、特に油用の冷却回路として構成されており、冷却回路は、熱処理内側チャンバの壁を通って循環している。このために熱処理内側チャンバの壁に少なくとも部分的に冷却通路が設けられており、冷却通路を通って冷媒がガイドされる。好適には、熱処理内側チャンバの全ての壁に冷却通路が設けられているので、外側チャンバへ向かう熱処理内側チャンバの放熱が全面的に制限されるか、または低減される。冷却通路は、熱処理内側チャンバの壁内で蛇行状に延びており、その際、冷却通路は、好適には、低温の冷媒が熱処理の間最も集中的に加熱される壁領域に導入され、続いてそこからあまり強く熱負荷が掛けられない壁領域にガイドされるように配置されている。
【0016】
熱処理内側チャンバの内側に極めて高い温度(500℃〜2000℃あるいはそれ以上)を形成しようとする場合、熱処理内側チャンバならびに熱処理内側チャンバ内に存在する成分は、高い熱負荷および腐食負荷に曝され、したがってそのために選択される材料は、高い耐熱性を有し、特にセレンに対する耐腐食性を有する必要がある。熱処理内側チャンバの壁にとって適切な材料は、特に、通常比較的小さな熱伝導率を有する耐熱鋼である。好適には、オーステナイト系ステンレス鋼AlSl316Lである。熱処理内側チャンバの壁に設けられた冷却通路を通って循環する冷媒が熱を効果的に導出し、大きな温度勾配が生じないよう保証するために、好適には、冷却通路は、矩形の横断面を有している。隣り合う冷却通路は、ウェブにより仕切られており、その幅は、好適には冷却通路の幅の20%〜80%である。比較的小さなウェブ幅により、入射される熱出力は、比較的大きな横断面の短い距離で冷媒にもたらされ、その際、同時に十分に高い機械安定性が達成される。ウェブの高さは、冷媒における温度差が満足できる程度に小さく維持されるような量の冷媒が冷却通路を通って運動するように設定される。好適には、ウェブの高さは、冷却通路の幅の20%〜80%である。
【0017】
熱処理内側チャンバ内で基板を加熱するためのエネルギは、好適には、赤外範囲の電磁放射を放出する加熱手段により供給される。加熱手段は、熱処理内側チャンバ内に配置されている。加熱手段は、例えば1つまたは複数の加熱可能な石英ロッドにより形成してよく、石英ロッドは、熱処理内側チャンバに突入している。好適には、複数の石英ロッドが設けられており、石英ロッドは、相互に平行にかつ基板表面に対して平行に配置されている。基板の下面および上面を均等に加熱するために、石英ロッドは、基板面の上下に配置可能である。選択的に、加熱エネルギは、例えば赤外スペクトル範囲、可視スペクトル範囲または紫外スペクトル範囲のレーザ光線により形成され、レーザ光線は、適切な窓を介して熱処理内側チャンバに導入される。
【0018】
好適には、熱処理内側チャンバは、閉鎖可能な容器であるので、基板を熱加工する間、熱処理内側チャンバの内室は、全面的に壁により包囲されており、加熱手段は、熱エネルギを、熱処理内側チャンバの外側の領域ではなく専ら熱処理内側チャンバに放出する。加熱手段のエネルギ供給のための貫通ガイド(ケーブルなど)は、熱処理内側チャンバからのエネルギ放出の局所的に不均一な広がりをできるだけ小さく維持するために、熱絶縁可能である。
【0019】
熱処理内側チャンバの内室のできるだけ迅速で効果的な加熱を達成するため、また、チャンバ壁に伝達される加熱出力の割合をできるだけ小さく保持するために、熱処理内側チャンバの内室に反射器が配置可能である。
【0020】
好適には、熱処理内側チャンバの、少なくとも内側領域に向いた壁面は、好適には、可視光線から2000nmまたは3000nmの遠赤外線までの波長範囲で高い反射率を有する材料から成っている。赤外放射器(例えば石英ロッド)によりエネルギが供給されると、好適には、少なくとも赤外放射器の波長範囲で高い反射が行われる。表面材料または壁材料として、例えば特殊鋼、モリブデン、金、窒素、例えば窒化チタン、窒化ケイ素または拡散高反射性の熱可塑性樹脂(例えばラブスフェア社(Labsphere)のスペクトラロン(R)として知られた、400℃の温度まで熱的に安定した、250nm〜2500nmの有効スペクトル範囲を有し、400nm〜1500nmの間で99%、250nm〜2500nmの間で95%以上の反射率を有する圧縮されたPTFE)が用いられる。
【0021】
好適には、熱処理内側チャンバの内壁に反射器が設けられており、反射器は、内室に供給される熱出力に対して壁を遮蔽する。
【0022】
好適には、中間反射壁は、少なくとも赤外線高反射性の材料から成るか、またはこのような材料から成り、内側領域に向いた中間反射壁面を備えており、中間反射壁は、好適には、その背面で、熱処理内側チャンバの、内側領域に向いた壁面から間隔を置いて配置されている。中間反射壁が用いられる場合、熱処理内側チャンバの、その後側に配置された壁は、例えば40%〜60%の小さな反射率を有してよい。
【0023】
別の反射器は、基板を加熱する電磁放射(例えば赤外線)を基板に集束するように成形しかつ熱処理内側チャンバに配置することができる。さらに(追加的な)可動(例えば旋回可能)の反射板を設けてよく、反射板は、基板に入射する出力に局所的な影響を及ぼす。そのような反射板により、特に基板の縁領域における温度分布の均一化が達成される。
【0024】
好適には、基板に入射されるエネルギの更なる均一化を達成するために、基板と熱処理内側チャンバの冷却される壁との間に、部分透過性の中間反射器(例えばガラスセラミックスから成る)を配置してよい。
【0025】
熱処理内側チャンバに対する基板の導入および取出しのために、好適には閉鎖可能な開口が設けられており、開口の横断面は、基板形状に適合されており、平らな基板を加工するための設備に、スリット状に開口が形成されている。さらに熱処理内側チャンバの内側に、熱処理内側チャンバ内で基板を保持しかつ搬送するための搬送装置を設けてもよい。好適には、支承装置(熱加工の間に基板が熱処理内側チャンバ内で支承装置に支承される)は、搬送装置として構成されている。
【0026】
熱処理が、真空または様々なプロセスガスの使用を要求する別の2つの加工ステップの間の中間ステップを成す場合、プロセス技術的に多くの場合好適には、熱処理が、真空容器の内側で行われるので、熱処理の前後に排気に起因する追加的な手間は生じない。そのようなプロセスに適切な加工チャンバは、冷却される壁を有する熱処理内側チャンバを備えており、熱処理内側チャンバは、外側チャンバ、特に真空チャンバの内室に配置されている。冷却される壁により、熱処理内側チャンバの高温の内室は、真空チャンバに対して熱絶縁される。このようにして、通常温度に対して極めて敏感である真空チャンバの構成部材が高温熱処理(特に500℃を上回る)を実施する際にも破損しないよう保証される。
【0027】
外側チャンバの内室に配置された熱処理内側チャンバは、スペーサにより、外側チャンバの壁に支持される。スペーサは、比較的小さな熱伝導性を有する材料から成っている。熱処理内側チャンバを冷却するために、前述のように、冷媒回路が用いられ、したがって好適には、熱処理内側チャンバの壁に対して冷媒を供給しかつ排出するために、スペーサの内側に延びるラインが用いられる。
【0028】
本発明による加工チャンバの構造により、基板を効果的に熱処理することができ、その際、短時間の間に基板に高いエネルギ伝達を行うことができ、熱チャンバを包囲する外側チャンバ(真空チャンバ)の過熱が生じることはない。基板に15Wcm2を上回る大きな面積比出力を入射する場合でも、熱処理内側チャンバの内室は、効果的に外側チャンバに対して熱遮蔽される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】基板を熱加工するための熱処理内側チャンバと外側チャンバとを備えた加工チャンバを横方向からみた断面斜視図である。
【図2】図1に対応する、熱処理内側チャンバの壁を示す詳細図である。
【0030】
以下に、図示の実施の態様に基づいて本発明を詳説する。
【0031】
図面において、それぞれ対応する構成要素には同じ符号を用いて図示している。図面は、概略的な態様を示すものであり、本発明固有のパラメータを表すものではない。さらに図面は、単に本発明の好適な態様を説明するためのものでしかなく、本発明の権利保護範囲を狭く解釈するものではない。
【0032】
図1および図2には、基板20を熱加工するための加工チャンバ1を断面斜視図で示している。本発明において「基板」の概念は、加工したい、被覆したい、かつ/または既に被覆された任意の対象と解されるべきものであり、つまり(場合によって前処理された)支持体材料等や単層または多層の被覆を備えた支持体材料である。図1および図2に示す態様では、基板は、数平方センチメートル〜数平方メートルの間であってよい面積を有する平面状の工作物である。基板20は、好適にはガラスセラミックスから成る壁と壁を保持するための黒鉛フレームとを備えた、好適には熱放射に関して半透過性の基板ボックスに収容してもよい。
【0033】
「熱加工」とは、基板の加熱を伴うあらゆるプロセスもしくはプロセスステップと解されるべきものである。
【0034】
加工チャンバ1は、排気可能な真空チャンバ(外側チャンバ2)を備えており、外側チャンバ2の内室22に、熱処理内側チャンバ3が配置されている。熱処理内側チャンバ3は、閉鎖可能な容器23として壁10を備えて構成されており、壁10は、熱処理内側チャンバ3の内室24を好適には全面的に包囲する。もちろん熱処理内側チャンバ3は、ガス密に閉鎖可能でなくてよく、むしろ熱処理内側チャンバ3の内室24は、例えば外側チャンバ2を介して通流もしくは排気可能である。壁10の内側面は、好適には少なくとも赤外放射線高反射性の金属材料から成っている。さらに好適には、壁10、特に壁の内側面は、高度に耐熱性の材料から成っていて、特にセレンに対して耐腐食性である。熱処理内側チャンバ3の壁10に適切な材料は、特に耐熱鋼、例えばオーステナイト系ステンレス鋼AlSl316Lである。
【0035】
加工チャンバ1は、多段の製造ステップの間に基板20を熱加工するために用いられる。相応に外側チャンバ2は、入口・出口ゲート4を備えており、入口・出口ゲート4を介して、基板20は、前置の図示していないプロセス段から加工チャンバ1に導入され、加工チャンバ1から別の後置の図示していないプロセス段に引き続き搬送可能である。熱処理内側チャンバ3に対して基板20を導入しかつ取り出すために、熱処理内側チャンバ3の、それぞれ反対側に位置する2つの端部に閉鎖可能なスリット状の図示していない開口が設けられている。基板20を支承しかつ搬送するために、熱処理内側チャンバ3に、閉ループ制御または開ループ制御される回動可能なローラ8が設けられており、ローラ8は、熱処理内側チャンバ3の壁10に設けられた円形の開口9に支承されている。
【0036】
基板20を加熱するために、熱処理内側チャンバ3は、加熱手段11’を有するエネルギ源11を備えており、加熱手段11’は、図1および図2の態様では、加熱可能な石英ロッド12により形成されており、石英ロッド12は、熱処理内側チャンバ3の壁10に設けられた孔13を通って内室24に導入されている。図面を判りやすくするために、図1、図2には、それぞれ1つの石英ロッド12しか図示していないが、図面において、基板平面の上側および下側に設けられた多数の孔13は、基板平面に対して平行に多数の石英ロッド12が設けられており、多数の石英ロッド12により基板20が上下から加熱可能であることを表している。択一的もしくは追加的に、熱エネルギは、例えば(パルス制御された)電磁放射として、窓を介して熱処理内側チャンバ3内に導入可能である。
【0037】
外側チャンバ2の熱負荷を最小に維持するために、熱処理内側チャンバ3に冷却装置14が設けられており、冷却装置14により、エネルギ源11からチャンバ壁10に放出される熱エネルギが(少なくともその大部分で)導出可能である。したがって、冷却装置14は、熱処理内側チャンバ3の高温の内室を、外側チャンバ2に対して熱的に遮蔽する。冷却装置14は、液状の冷媒(例えば油)用の冷却回路15を備えており、冷媒は、熱処理内側チャンバ3の壁10に設けられた冷却通路16を通って循環する。さらに冷却装置14は、図示していないポンプならびに熱交換器を備えており、熱交換器により、冷却通路16から還流する加熱された冷媒が、再び熱処理内側チャンバ3の冷却通路16に供給されるまえに冷却可能である。
【0038】
冷却通路16は、壁10の内側で蛇行して延びている。500℃を上回る温度を維持するために、熱処理内側チャンバ3の壁10は、耐熱鋼から製造されている。そのような鋼は、低い熱伝導率を有しており、したがって壁の均等な熱分布を得るために、特別な構成手段を講じる必要がある。冷却通路16は、略矩形の横断面形状を有している。隣り合う冷却通路16は、ウェブ(支柱)18により仕切られており、ウェブ18の幅19は、冷却通路16の幅17よりも小さく、ウェブ幅19は、典型的には通路幅17の20%〜80%である。小さなウェブ幅19により、冷却通路16の間に位置するウェブ領域18における壁の局所的な加熱が効果的に中断される。さらにウェブ高さ18aは、通路幅17の20%〜80%の範囲に選択されている。
【0039】
熱処理内側チャンバ3の壁10は、スペーサ26により、外側チャンバ2に固定されていて、好適には、各壁10が少なくとも1つのスペーサ26を介して外側チャンバ2に固定されている。好適には、少なくとも1つの壁10は、単に1つのスペーサ26により個別に固定されている。スペーサ26は、割合低い熱伝導率を有する材料から成り、内側で中空であり、スペーサの内側部分には、冷却液を冷却通路16に供給するための図示していない供給ガイドおよび排出ガイドが設けられている。
【0040】
熱処理内側チャンバ3の内室24をできるだけ迅速に効果的に加熱するため、およびチャンバ壁10に伝達される加熱出力の割合をできるだけ小さく維持するために、熱処理内側チャンバ3の内室24に、中間反射壁28が設けられており、好適には中間反射壁28は、壁10から間隔を置いて位置する。
【0041】
図1および図2の態様では、壁10の内側面29が、加熱手段11’の波長範囲(ここでは石英ロッド12が放射する赤外範囲)で高い反射性(反射率)を有し、したがって同様に反射器(リフレクタ)として作用する材料で被覆されている。被覆は、例えばスペクトラロン(R)、拡散高反射性の熱可塑性樹脂から成っている。追加的に、図1に例示するように、内室24の選択された領域、例えば縁に、別の反射器30を設けてよく、別の反射器30は、加熱手段11’の放射に対するこの領域の遮蔽および/または基板20に対する加熱された赤外放射の集束をもたらす。熱処理内側チャンバ3の壁10と基板20との間に、さらに部分透過性の中間反射器(例えば石英セラミックスから成る)を設けてよく、中間反射器は、高い耐熱性を有し、加熱の空間的な均等化をもたらす。
【0042】
図1および図2に示す態様では、加熱手段11(石英ロッド12)から基板20への熱伝達は、主に熱放射を介して行われる。選択的に、図示していない供給ガイドおよび排出ガイドを介して、シールドガス、特に不活性ガスが、熱処理内側チャンバ3に導入可能であり、その際、対流により高い熱伝達が達成される。
【0043】
熱処理内側チャンバ3には、図示していない温度測定のための手段、例えば基板20に向けられた高温計を設けることができ、高温計は、基板20から出射される熱放射を検出する。さらに冷媒回路15の供給路および戻し路における温度測定により、冷媒を介して壁10から導出されるエネルギを求めて、入射されるエネルギと比較することができ、これにより、過熱を検出するかもしくは防止するために、熱処理内側チャンバ3の熱配分の継続的な監視が行われる。
【0044】
この装置は、ガラスもしくは石英から成る支持層を備えた薄膜ソーラモジュールもしくは薄膜太陽電池を製造するために適切であり、支持層に、電極としてのMo層および銅・インジウム・ジセレニド(CIS)−半導体または銅・インジウム・ガリウム・スルホ・セレン化物(CIGSSe)−半導体から成る機能層が取り付けられる。
【符号の説明】
【0045】
1 加工チャンバ、 2 外側チャンバ(真空チャンバ)、 3 熱処理内側チャンバ、 8 ローラ、 9 熱処理内側チャンバの壁に設けられた開口、 10 熱処理内側チャンバの壁、 11 エネルギ源、 12 加熱可能な石英ロッド、 13 壁に設けられた孔(石英ロッド用)、 14 冷却装置、 15 冷却回路、 16 冷却通路、 17 冷却通路幅、 18 ウェブ、 18a ウェブ高さ、 19 ウェブ幅、 20 基板、 22 外側チャンバの内室、 23 容器=熱処理内側チャンバ、 24 熱処理内側チャンバの内室、 26 スペーサ、 28 中間反射器、 29 壁の内側面、 30 縁領域反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(20)を熱加工するための熱処理内側チャンバ(3)であって、
壁(10)を備え、該壁(10)は、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)を包囲し、
熱加工の間に基板(20)を支承するための支承装置(8)を備え、
熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)にエネルギを導入するためのエネルギ源(11)を備え、
壁(10)の内側面の少なくとも一部は、エネルギ源(11)により導入される出力を反射するように形成されるものにおいて、
壁(10)の内側面の少なくとも一部は、少なくとも赤外線高反射性の材料から成ることを特徴とする、基板を熱処理する熱処理内側チャンバ。
【請求項2】
特に請求項1に記載の、基板(20)を熱加工するための熱処理内側チャンバ(3)であって、
壁(10)を備え、該壁(10)は、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)を包囲し、
熱加工の間に基板(20)を支承するための支承装置(8)を備え、
熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)にエネルギを導入するためのエネルギ源(11)を備えるものにおいて、
壁(10)の少なくとも一部を冷却するための冷却装置(14)を設けることを特徴とする、基板を熱処理する熱処理内側チャンバ。
【請求項3】
壁(10)は、熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)を、複数面で、好適には全面的に包囲する、請求項1または2記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項4】
冷却装置(14)は、液状の冷媒、特に油用の回路(15)を備える、請求項2または3記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項5】
熱処理内側チャンバ(3)の少なくとも1つの壁(10)に冷却通路(16)を設ける、請求項4記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項6】
熱処理内側チャンバ(3)の壁面の少なくとも80%および/または全ての壁(10)に冷却通路(16)を設ける、請求項5記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項7】
冷却通路(16)は、熱処理内側チャンバ(3)の壁(10)内で蛇行状に延びる、請求項5または6記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項8】
冷却通路(16)は、略矩形の横断面を有する、請求項5から7までのいずれか1項記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項9】
隣り合う冷却通路(16)は、ウェブ(18)によって仕切られ、該ウェブ(18)の幅(19)および/または高さ(18a)は、冷却通路(16)の幅(17)の20%〜80%である、請求項5から8までのいずれか1項記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項10】
熱エネルギ源(11)は、熱エネルギを放出するための加熱手段(11’)を備え、該加熱手段(11’)は、熱処理内側チャンバ(3)内に配置される、請求項2から9までのいずれか1項記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項11】
加熱手段(11’)は、好適には基板面(20)に対して平行に延びる複数の石英ロッド(12)により形成される、請求項10記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項12】
石英ロッド(12)は、基板面(20)の両側に配置される、請求項11記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項13】
熱処理内側チャンバ(3)に、エネルギ源(11)から入射される出力を反射するための中間反射壁(28)および/または縁反射器(30)が設けられている、請求項2から12までのいずれか1項記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項14】
少なくとも1つの壁(10)および/または少なくとも熱処理内側チャンバ(3)の内側面(29)は、少なくとも部分的に、耐熱性のかつ/またはセレンに対する耐性を有するかつ/または少なくとも赤外線高反射性の材料、好適には特殊鋼、モリブデン、金、窒化物、窒化チタン、窒化ケイ素または拡散高反射性の熱可塑性樹脂から成るか、またはそのような材料を含む、請求項13記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項15】
中間反射壁(28)および/または縁反射器(30)は、エネルギ源(11)から放射される出力を基板(20)に集束するように成形されている、請求項13記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項16】
熱処理内側チャンバ(3)の冷却される壁(10)と基板(20)との間に、温度均一化のための少なくとも1つの中間反射器(20’’)が配置されている、請求項13記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項17】
熱処理内側チャンバ(3)は、基板(20)を導入しかつ取り出すための閉鎖可能な開口(6)を備える、請求項2から16までのいずれか1項記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項18】
熱処理内側チャンバ(3)は、基板(20)を搬送するための搬送装置(8)と結合され、かつ/または基板(20)は、基板ボックスに収容される、請求項2から17までのいずれか1項記載の熱処理内側チャンバ。
【請求項19】
基板(20)を熱加工するための加工チャンバ(1)であって、
周囲に対して基板(20)を遮蔽するための外側チャンバ(2)を備え、
該外側チャンバ(2)内に配置された、熱加工の間に基板(20)を収容するための熱処理内側チャンバ(3)を備え、
熱処理内側チャンバ(3)の内室(24)にエネルギを導入するためのエネルギ源(11)を備えるものにおいて、
加工チャンバ(1)は、熱処理内側チャンバ(3)の壁(10)の少なくとも一部を冷却するための冷却装置(14)を備え、かつ/または熱処理内側チャンバ(3)は、壁(10)を備え、エネルギ源(11)により導入される出力を反射するための壁(10)の内側面の少なくとも一部が、少なくとも赤外線高反射性の材料から成ることを特徴とする、基板を熱処理する加工チャンバ。
【請求項20】
熱処理内側チャンバ(3)は、スペーサ(26)により、外側チャンバ(2)に固定される、請求項19記載の加工チャンバ。
【請求項21】
冷却装置(14)は、液状の冷媒、特に油用の回路(15)を備え、
スペーサ(26)は、冷媒を供給しかつ排出するための中空室(27)を備える、請求項20記載の加工チャンバ。
【請求項22】
外側チャンバ(2)は、真空チャンバである、請求項19から21までのいずれか1項記載の加工チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519863(P2013−519863A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553212(P2012−553212)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000680
【国際公開番号】WO2011/098295
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(502239900)ライボルト オプティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】Leybold Optics GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 88, D−63755 Alzenau, Germany
【出願人】(512212885)サン−ゴバン グラス フランス ソシエテ アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France S.A.
【住所又は居所原語表記】18, avenue d’Alsace, F−92400 Courbevoie, France
【Fターム(参考)】