説明

基板乾燥方法及び基板乾燥装置

【課題】既存のCMP装置等で広く採用されているスピン乾燥に対応させて、乾燥用溶剤としてHFEを使用した乾燥を実現できるようにする。
【解決手段】液体が付着した基板Wの表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、基板Wを回転させながら、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気22を基板Wの表面に吹付けて基板Wの表面の液体を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハや液晶、プラズマ表示用基板、光ディスク基板などの基板の表面を洗浄して乾燥させる基板乾燥方法及び基板乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HFE(ハイドロフルオロエーテル)は、単独では油脂類を殆ど溶解することができないが、低表面張力、低蒸発潜熱、低毒性、不燃性等の特徴を持ち、蒸気乾燥や水切り乾燥用の溶剤として優れた性能を有することが判っている。
【0003】
このため、乾燥用溶剤としてHFEを使用した基板乾燥法として、チャンバ内に配置して回転させた半導体ウェーハ等の基板の全面に、HFEを窒素と共に吹付けて基板上面の液体をHFEに置換し、HFEを蒸発させて基板を乾燥させるようにしたもの(特許文献1参照)や、チャンバ(処理室)内に配置して回転させた基板の表面に、純水、IPA(イソプロピルアルコール)及びHFEを順に供給し、基板表面を加熱し該基板表面近傍の液体を沸騰させて基板を乾燥させるようにしたもの(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−123218号公報
【特許文献2】特開2008−128567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乾燥用溶剤としてHFEを使用した従来の基板乾燥法は、一般にチャンバ内に配置した基板の表面にHFEを吹付けて基板表面を乾燥させるようにしており、内部に基板を収容するチャンバを備える必要があり、そのため、例えばCMP後の基板を高速で回転させてスピン乾燥させるスピン乾燥法を採用している既存のCMP装置等にレトロフィットすることができない。
【0006】
しかも、スピン乾燥法に対応させて乾燥用溶剤としてHFEを使用した乾燥を実現させるためには、HFEが蒸発する時の蒸発速度が速く蒸発潜熱が大きくいなどから、基板が冷却されて、基板表面から一旦除去された水蒸気も含めた雰囲気中の水蒸気が基板表面に結露してしまうことを防止する必要がある。スピン乾燥法では、基板が回転しており、基板の温度を上げるために熱電体を直接基板に接触させることは一般に困難である。このため、熱風などの(不活性)気体を利用して基板の温度を上げる必要がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、熱風などの(不活性)気体を利用することなく、既存のCMP装置等で広く採用されているスピン乾燥に対応させて、乾燥用溶剤としてHFEを使用した乾燥を実現できるようにした基板乾燥方法及び基板乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、液体が付着した基板表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、基板を回転させながら、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に吹付けて基板表面の液体を除去することを特徴とする基板乾燥方法である。
【0009】
この方法によれば、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテル(HFE)とイソプロピルアルコール(IPA)等の水溶性アルコールとの混合蒸気を回転中の基板表面に吹付けることで、基板表面を乾燥させることができる。このため、例えばスピン乾燥法を採用した場合にあっても、基板を内部に設置するチャンバ等を設置することなく、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテル(HFE)とイソプロピルアルコール(IPA)等の水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に向けて吹付けるための手段を単に付加することによって、乾燥用溶剤としてHFEを使用した乾燥を実現することができる。
【0010】
ここに、120〜160℃に加温されたHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に吹付け、混合蒸気自体で基板を加熱することで、熱風などの(不活性)気体を利用することなく、基板が冷却されて、基板表面から一旦除去された水蒸気も含めた雰囲気中の水蒸気が基板表面に結露してしまうことを防止することができる。しかも、0.5〜1.0MPaに加圧されたHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に吹付けることで、駆動源を別途備えることなく、混合蒸気の飽和蒸気圧で該混合蒸気を基板表面に吹付けることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、液体が付着した基板表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、基板を回転させ、基板表面の中心部から周縁部に液体供給位置を移動させながら基板表面に液体を供給し、前記液体供給位置を追うように蒸気吹付け位置を移動させながら、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に吹付けて基板表面の液体を除去することを特徴とする基板乾燥方法である。
【0012】
これにより、基板表面に供給される液体を該液体に作用する遠心力で基板表面の中心部から外方部に向けて移動させながら、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気で基板の全表面を乾燥させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記混合蒸気中に前記水溶性アルコールが1〜20質量%含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板乾燥方法である。
請求項4に記載の発明は、密閉容器内で前記混合蒸気を発生させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板乾燥方法である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、液体が付着した基板表面を乾燥させる基板乾燥装置であって、基板を水平に保持して回転させる基板ホルダと、基板表面に液体を供給する液体供給部と、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に供給する混合蒸気供給部と、前記混合蒸気を発生させて前記混合蒸気供給部に供給する混合蒸気発生供給装置と、を備えていることを特徴とする基板乾燥装置である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記混合蒸気発生供給装置は、第1の飽和蒸気圧のハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を収容して前記混合蒸気供給部に供給する1次容器と、前記第1の飽和蒸気圧より高い第2の飽和蒸気圧のハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を収容して該混合蒸気を前記1次容器に供給する2次容器と、前記第2の飽和蒸気圧より高い第3の飽和蒸気圧のハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を収容して該混合蒸気を前記2次容器に供給する3次容器とを備えていることを特徴とする請求項5記載の基板乾燥装置である。
【0016】
これにより、この3次容器内で発生させた所定の飽和蒸気圧以上のHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気を3次容器から2次容器、2次容器から1次容器、更には1次容器から混合蒸気供給部に順次供給して、所定の飽和蒸気圧以上のHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気を混合蒸気供給部から基板表面に吹付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えばスピン乾燥法を採用した場合にあっても、120〜160℃に加温されたHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に向けて吹付けるための手段を単に付加することによって、基板が冷却されるのを防止するため熱風などの(不活性)気体を利用することなく、しかも混合蒸気の駆動源を別途備えることなく、乾燥用溶剤としてHFEを使用した乾燥を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の基板乾燥装置の全体概要図である。
【図2】図1に示す基板乾燥装置に備えられている基板乾燥ユニットの概要を示す斜視図である。
【図3】図2の基板乾燥ユニットの基板乾燥時における基板及びノズルの関係を示す正面図である。
【図4】図2の基板乾燥ユニットの平面図である。
【図5】HFEと5重量%IPAとの混合溶剤を密閉容器内で昇温させた時における容器内混合蒸気の蒸気温度と蒸気圧の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の基板乾燥装置の全体概要図を示す。この基板乾燥装置は、半導体ウェーハ等の基板Wを水平状態で保持して乾燥させる2台の基板乾燥ユニット10(図2乃至図4参照)と、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたHFE(ハイドロフルオロエーテル)と水溶性アルコールとの混合蒸気、この例では、HFEと5質量%のIPA(イソプロピルアルコール)との混合蒸気を発生させて、各基板乾燥ユニット10に備えられている下記の混合蒸気供給ノズル(混合蒸気供給部)24に順次供給する混合蒸気発生供給装置40とを備えている。
【0020】
なお、図1には、基板乾燥ユニット10は省略され、各基板乾燥ユニット10で乾燥処理される基板Wと、各基板乾燥ユニット10に備えられている混合蒸気供給ノズル24のみが模式的に図示されている。
【0021】
基板乾燥ユニット10は、図2乃至図4に示すように、基板Wを水平状態で着脱自在に保持して回転させる基板ホルダ12とノズル掃引機構14を備えている。ノズル掃引機構14は、上下方向に延びて基板ホルダ12で保持した基板Wの上方に達する伸縮及び回転自在な支持軸16と、この支持軸16の上端に連結されて水平方向に延びる揺動アーム18を有しており、この揺動アーム18の先端の支持部20に、基板ホルダ12で保持した基板Wの一部の領域に、HFEと5質量%のIPAとの混合蒸気22(図3参照)を吹付けて該領域を乾燥させる混合蒸気供給部としての混合蒸気供給ノズル24と、基板ホルダ12で保持した基板Wの一部の領域に超純水等のリンス液26(図3参照)を供給する液体供給部としての移動リンスノズル28が保持されている。
【0022】
これによって、混合蒸気供給ノズル(混合蒸気供給部)24と移動リンスノズル(液体供給部)28は、基板Wの乾燥処理に際し、ノズル掃引機構14の支持軸16の回転に伴う揺動アーム18の揺動に伴って、基板Wの表面との距離(高さ)を一定に保持したまま、かつ混合蒸気供給ノズル24と移動リンスノズル28との相対位置を一定に保持した状態で、一体となって一定方向に、この例では、基板Wの中心部から外周端に向けて掃引される。
【0023】
なお、この例では、混合蒸気供給ノズル24と移動リンスノズル28が基板Wの中心部から外周端に向けて掃引されるようにしているが、これとは逆に、混合蒸気供給ノズル24と移動リンスノズル28が基板Wの外周端から中心部に向けて掃引されるようにしてもよい。
【0024】
このように混合蒸気供給ノズル24と移動リンスノズル28と一定方向に掃引した時、図3及び図4に示すように、移動リンスノズル28から基板Wの表面に供給されたリンス液26が混合蒸気供給ノズル24から吹出される混合蒸気22で基板Wの表面から除去されるように、移動リンスノズル28は、掃引方向に沿って混合蒸気供給ノズル24の上流側に配置されている。つまり、混合蒸気供給ノズル24は、移動リンクノズル28に追随して掃引方向に移動するようになっている。基板ホルダ12で保持した基板Wの表面と混合蒸気供給ノズル24及び移動リンスノズル28の下端との距離(高さ)は、支持軸16を伸縮させることで調節される。
【0025】
この例では、混合蒸気供給ノズル24から基板Wの表面の一部の領域に混合蒸気22を吹付けることで、基板Wの表面の一部の領域を乾燥させるようにしており、この乾燥に、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたHFEと5質量%のIPAとの混合溶剤を使用するようにしている。そして、この処理を、基板Wを回転させ、混合蒸気供給ノズル24及び移動リンスノズル28を一定方向に、つまり基板Wの中心部から外周端に向けて掃引しながら行うことで、基板Wの対象処理全表面を乾燥させるようにしている。つまり、図4に示すように、基板Wの回転に伴って、リング状に広がった乾燥直後領域30の中心側に乾燥領域32が、外側に移動リンスノズル28から供給されたリンス液26で覆われた液膜領域34がそれぞれ形成され、この乾燥領域32が徐々に外方に広がって最終的に基板Wの処理対象表面全域が乾燥される。
【0026】
図2に示すように、基板ホルダ12の側方に位置して、基板ホルダ12で保持して回転させた基板Wの表面のほぼ中央に超純水等のリンス液を供給して基板Wの表面をリンス液でリンスする液体供給部としての固定リンスノズル36が配置されている。
【0027】
なお、この例では、移動リンスノズル28を備え、この移動リンクノズル28から基板Wの表面に供給されるリンス液(純水)26で基板Wの表面のリンスを行うようにしているが、固定リンスノズル(液体供給部)36から供給されるリンス液(純水)のみで基板Wのリンスを行うことができる場合や、基板Wのリンスを行う必要がない場合には、移動リンスノズル28を省略することができる。
【0028】
次に、図2乃至図4に示す基板乾燥ユニット10の操作例について説明する。
例えば、ロールブラシを用いて表面を洗浄した基板Wを基板ホルダ12で保持し、回転速度が10rpm〜1000rpmの範囲、例えば250rpmで基板Wを回転させる。基板Wの直径は、例えば300mmである。基板Wの回転が始まると同時に、固定リンスノズル36からリンス液(純水)を基板Wのほぼ中心に向けて供給して基板Wの表面のリンスを行う。このときのリンス液の流量は、100〜1000mL/min、例えば200mL/minである。リンスを開始してから数秒後に、リンス液は基板Wの全表面に広がり、安定なリンス液の液膜ができる。基板W上での位置や基板Wの回転速度、及びリンス液の流量にもよるが、リンス液の液膜の厚みは、通常、数十μmから数百μmである。例えば、5秒間のリンスを行った後、固定リンスノズル36からのリンス液の供給を止める。
【0029】
次に、移動リンスノズル28から基板Wの表面へのリンス液(純水)26の供給を開始する。リンス液26の流量は、100〜1000mL/min、例えば200mL/minである。移動リンスノズル28からリンス液26を基板Wの表面に供給すると同時に、混合蒸気供給ノズル24から基板Wの表面に混合蒸気22を吹付ける。すると、混合蒸気22が到達した部分の基板表面にあるリンス液が有効に排除されて乾燥される。
【0030】
そして、上記処理を、基板Wを回転させながら、混合蒸気供給ノズル24及び移動リンスノズル28を一定方向に、つまり基板Wの回転中心から外周端に向けて掃引しながら行うことで、基板Wの全表面を乾燥させる。
【0031】
この基板Wの乾燥用溶剤として、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたHFEとIPC等の水溶性アルコールとの混合蒸気22が使用される。この混合蒸気22には、1〜20重量%の水溶性アルコール、この例では、5重量%のIPCが含まれている。
【0032】
このように、120〜160℃に加温されたHFEとIPA等の水溶性アルコールとの混合蒸気22を基板Wの表面に吹付け、この混合蒸気22自体で基板Wを加熱することで、熱風などの(不活性)気体を利用することなく、基板Wが冷却されて、基板Wの表面から一旦除去された水蒸気も含めた雰囲気中の水蒸気が基板Wの表面に結露してしまうことを防止することができる。しかも、0.5〜1.0MPaに加圧されたHFEとIPAとの混合蒸気22を基板Wの表面に吹付けることで、駆動源を別途備えることなく、混合蒸気22の飽和蒸気圧で該混合蒸気22を基板Wの表面に吹付けることができる。
【0033】
混合蒸気発生供給装置40は、図1に示すように、基板乾燥ユニット10と同数の2個の1次容器42a,42bと、1次容器の2倍の4個の2次容器44a,44b,44c,44dと、2個の3次容器46a,46bを備えている。そして、各1次容器42a,42bは、第1バルブ50a,50bをそれぞれ備えた第1混合蒸気通路52a,52bを介して、各基板乾燥ユニット10の混合蒸気供給ノズル24にそれぞれ連通している。一方の1次容器42aは、第2バルブ54a,54bを備えた第2混合蒸気通路56aを介して、2個の2次容器44a,44bの一方と択一的に連通し、他方の1次容器42bは、第2バルブ54c,54dを備えた第2混合蒸気通路56bを介して、他の2個の2次容器44c,44dの億法と択一的に連通するようになっている。一方の3次容器46aは、第3バルブ58aを備えた第3混合蒸気通路60aを介して、全ての2次容器44a,44b,44c,44dに個別に連通し、他方の3次容器46bは、第3バルブ58bを備えた第3混合蒸気通路60bを介して、全ての2次容器44a,44b,44c,44dに個別に連通している。
【0034】
ここで、1次容器42a,42bの内部に保持したHFPとIPAとの混合蒸気の飽和蒸気圧が常に一定圧力以上となるようにするため、1次容器42a,42bの他に、1次容器よりも飽和蒸気圧の高い(温度が高いことと同義)混合蒸気を保持する2次容器44a,44b,44c,44dと、2次容器よりも飽和蒸気圧の高い混合蒸気を保持する3次容器46a,46bを備えている。
【0035】
つまり、この例にあっては、各1次容器42a,42bとして、1次容器42a,42b内のHFEと5質量%のIPAとの混合蒸気の飽和蒸気圧が0.5〜1.0Mpa、例えば0.5MPaとなるように、ヒータを介して、容器内のHFEとIPAとの混合蒸気を恒温とした容器が使用されている。1次容器42a,42b内の混合蒸気の温度を124.6℃(実測値)に恒温化することで、1次容器42a,42b内の混合蒸気の飽和蒸気圧を0.5MPaにすることができる。
【0036】
各2次容器44a,44b,44c,44dとして、2次容器44a,44b,44c,44d内のHFEと5質量%のIPAとの混合蒸気の飽和蒸気圧が、各1次容器42a,42b内の混合蒸気の飽和蒸気圧よりも0.05MPa以上高い、例えば0.55〜1.0MPaとなるように、ヒータを介して、容器内のHFEとIPAとの混合蒸気を恒温とした容器が使用されている。
【0037】
更に、各3次容器46a,46bとして、3次容器46a,46b内のHFEと5質量%のIPAとの混合蒸気の飽和蒸気圧が、各2次容器44a,44b,44c,44d内の混合蒸気の飽和蒸気圧よりも0.15MPa以上高い、0.7〜1.15Mpaとなるように、ヒータを介して、容器内のHFEとIPAとの混合蒸気を恒温とした容器が使用されている。
【0038】
この例にあっては、基板Wの乾燥処理時間を1枚当たり1分とし、1枚当たりのHFEと5質量%のIPAとの混合溶剤の使用量を常温常圧換算で50mlとして、基板乾燥装置の各基板乾燥ユニット10で基板Wを滞ることなく乾燥させるようにしている。このため、1次容器は最低2個、2次容器は最低4個、3次容器は最低2個用意されている。
【0039】
図5にHFEと5重量%IPAとの混合溶剤を密閉容器内で昇温させた時における容器内混合蒸気の蒸気温度と蒸気圧の経時変化を示す。3次容器48a,48b内の混合蒸気の飽和蒸気圧は、この例では0.7〜1.15MPaであり、図5から、3次容器48a,48b内の混合蒸気の飽和蒸気圧が、例えば1MPaの圧力に到達するのに約12分を要することが判る。このため、例えば一方の3次容器48a内の混合蒸気で、最低12枚の基板の乾燥処理を行い、この一方の3次容器48a内に混合蒸気で12枚の基板の乾燥処理を行っている12分の間に、他方の3次容器48bの内部に、例えば1MPaの飽和蒸気圧の混合蒸気を用意する必要がある。
【0040】
そのため、この例では、各1次容器42a,42bの容器内容積は200ml、各2次容器44a、44b、44c、44dの容器内容積は200ml、各3次容器46a,46bの容器内容積は800mlに設定されている。以下、ウェーハを例にとって、カセット等から順次供給される1枚目ウェーハから12枚目ウェーハを、例えば一方の3次容器46a内の混合蒸気を使用して乾燥させる手順を表1を参照して説明する。この時、各1次容器42a,42b内には、飽和蒸気圧が0.5〜1.0MPa、例えば0.5MPaの混合蒸気200mlが収容され、各2次容器44a,44b,44c,44d内には飽和蒸気圧が0.55〜1.0MPa、例えば0.55MPaの混合蒸気200mlが収容されている。更に、3次容器46a内には、0.7〜1.15MPa、例えば0.7MPaの混合蒸気800mlが収容されている。
【0041】
【表1】

【0042】
表1のステップ1において、1次容器42a内の、飽和蒸気圧が0.5〜1.0MPa、例えば0.5MPaの混合蒸気50mlを一方の基板乾燥ユニット10の混合蒸気ノズル24に供給して、一方の基板乾燥ユニット10の基板ホルダ12で保持した1枚目ウェーハに対する乾燥処理を行う。この1枚目ウェーハの乾燥処理終了後、2次容器44a内の飽和蒸気圧が0.55〜1.0MPa、例えば0.55MPaの混合蒸気50mlを1次容器42a内に供給し、しかる後、3次容器46a内の飽和蒸気圧力が0.7〜1.15MPa、例えば0.7MPaの混合蒸気50mlを2次容器44aに供給する。同時に、乾燥後の1枚目ウェーハを次工程に搬送し、3枚目ウェーハを一方の基板搬送ユニット10の基板ホルダ12で保持する。
【0043】
表1のステップ2においては、1次容器42b内の、飽和蒸気圧が0.5〜1.0MPa、例えば0.5MPaの混合蒸気50mlを他方の基板乾燥ユニット10の混合蒸気ノズル24に供給して、一方の基板乾燥ユニット10の基板ホルダ12で保持した2枚目ウェーハに対する乾燥処理を行う。この2枚目ウェーハの乾燥処理終了後、2次容器44c内の飽和蒸気圧が0.55〜1.0MPa、例えば0.55MPaの混合蒸気50mlを1次容器42b内に供給し、しかる後、3次容器46a内の飽和蒸気圧力が0.7〜1.15MPa、例えば0.7MPaの混合蒸気50mlを2次容器44cに供給する。同時に、乾燥後の2枚目ウェーハを次工程に搬送し、4枚目ウェーハを他方の基板搬送ユニット10の基板ホルダ12で保持する。
【0044】
表1のステップ3においては、前述のステップ1の2次容器44aの代わりに2次容器bを使用し、他はステップ1と同様な乾燥処理を行って、一方の基板乾燥ユニット10の基板ホルダ12で保持した3枚目ウェーハに対する乾燥処理を行い、しかる後、5枚目ウェーハを一方の基板搬送ユニット10の基板ホルダ12で保持する。
【0045】
表1のステップ4においては、前述のステップ2の2次容器44cの代わりに2次容器dを使用し、他はステップ2と同様な乾燥処理を行って、他方の基板乾燥ユニット10の基板ホルダ12で保持した4枚目ウェーハに対する乾燥処理を行い、しかる後、6枚目ウェーハを他方の基板搬送ユニット10の基板ホルダ12で保持する。
【0046】
前述のステップ1〜ステップ4を1セットとして、このセット(ステップ1〜ステップ4)を合計3セット繰り返して、合計12枚のウェーハに対する乾燥処理を行う。つまり、ステップ1〜ステップ4で1枚目ウェーハ〜4枚目ウェーハに対する乾燥処理を行ったのと同様にして、ステップ5〜ステップ8で5枚目ウェーハ〜8枚目ウェーハに対する乾燥処理を行い、しかる後、ステップ9〜ステップ12で9枚目ウェーハ〜12枚目ウェーハに対する乾燥処理を行う。
【0047】
このように、一方の3次容器46a内の混合蒸気を使用してウェーハ(基板)を乾燥させている時に、他方の3次容器46bは、大気に開放させ、新規のHFEとIPAの混合溶液を他方の3次容器46bに追加して他方の3次容器46bを密封させる。そして、3次容器46b内のHFEと5質量%のIPAとの混合蒸気の飽和蒸気圧が0.7〜1.15Mpa、例えば0.7MPaとなるように、ヒータを介して、3次容器46b内のHFEとIPAとの混合蒸気を恒温に加熱する。
【0048】
そして、前述のようにして、一方の3次容器46a内の混合蒸気を使用して12枚のウェーハを乾燥処理した後、一方の3次容器46aの第3バルブ58aを閉じて、3次容器46aを大気に開放させる。そして、他方の3次容器46b内の混合蒸気を使用したウェーハ(基板)の乾燥処理を行う。この他方の3次容器46b内の混合蒸気を使用したウェーハ(基板)の乾燥処理の間に、一方の3次容器46a内に新規のHFEとIPAの混合溶液を追加して密封させる。そして、3次容器46内のHFEと5質量%のIPAとの混合蒸気の飽和蒸気圧が0.7〜1.15Mpa、例えば0.7MPaとなるように、ヒータを介して、3次容器46a内のHFEとIPAとの混合蒸気を恒温に加熱する。
【0049】
この例は、一定飽和蒸気圧以上の混合蒸気を基板乾燥ユニット10の混合蒸気供給ノズル24に供給する1次容器42a,42bの他に、1次容器よりも飽和蒸気圧の高い(温度が高いことと同義)混合蒸気を保持する2次容器44a,44b,44c,44dと、2次容器よりも飽和蒸気圧の高い混合蒸気を保持する3次容器46a,46bを備えている。そして、一方の3次容器46a内の混合蒸気を使用して基板の乾燥処理を行いながら、他方の3次容器内46b内の混合蒸気の飽和蒸気圧を一定圧力以上に高めて、一方の3次容器46a内の混合蒸気を使用した基板の乾燥処理から、他方の3次容器46b内の混合蒸気を使用した基板の乾燥処理に切り換えることで、常に基板上へ所定の蒸気温度で飽和蒸気圧の混合蒸気を供給しながら、基板の連続した乾燥処理を行うことができる。
【0050】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
10 基板乾燥ユニット
12 基板ホルダ
14 ノズル掃引機構
16 支持軸
18 揺動アーム
20 支持部
22 混合蒸気
24 混合蒸気供給ノズル(混合蒸気供給部)
26 リンス液
28 移動リンスノズル(液体供給部)
30 乾燥直後領域
32 乾燥領域
34 液膜領域
36 固定リンスノズル(液体供給部)
40 混合蒸気発生供給装置、
42a,42b 1次容器
44a,44b,44c,44d 2次容器
46a,46b 3次容器
50a,50b 第1バルブ
52a,52b 第1混合蒸気通路、
54a,54b,54c,54d 第2バルブ
56a,56b 第2混合蒸気通路
58a,58b 第3バルブ
60a,60b 第3混合蒸気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が付着した基板表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、
基板を回転させながら、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に吹付けて基板表面の液体を除去することを特徴とする基板乾燥方法。
【請求項2】
液体が付着した基板表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、
基板を回転させ、基板表面の中心部から周縁部に液体供給位置を移動させながら基板表面に液体を供給し、
前記液体供給位置を追うように蒸気吹付け位置を移動させながら、120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に吹付けて基板表面の液体を除去することを特徴とする基板乾燥方法。
【請求項3】
前記混合蒸気中に前記水溶性アルコールが1〜20質量%含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板乾燥方法。
【請求項4】
密閉容器内で前記混合蒸気を発生させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板乾燥方法。
【請求項5】
液体が付着した基板表面を乾燥させる基板乾燥装置であって、
基板を水平に保持して回転させる基板ホルダと、
前記基板ホルダで保持した基板の表面に液体を供給する液体供給部と、
120〜160℃に加温され、かつ0.5〜1.0MPaに加圧されたハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を基板表面に供給する混合蒸気供給部と、
前記混合蒸気を発生させて前記混合蒸気供給部に供給する混合蒸気発生供給装置と、
を備えていることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項6】
前記混合蒸気発生供給装置は、第1の飽和蒸気圧力のハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を収容して前記混合蒸気供給部に供給する1次容器と、前記第1の飽和蒸気圧力より高い第2の飽和蒸気圧力のハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を収容して該混合蒸気を前記1次容器に供給する2次容器と、前記第2の飽和蒸気圧力より高い第3の飽和蒸気圧力のハイドロフルオロエーテルと水溶性アルコールとの混合蒸気を収容して該混合蒸気を前記2次容器に供給する3次容器とを備えていることを特徴とする請求項5記載の基板乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−9601(P2011−9601A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153291(P2009−153291)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】