説明

基板乾燥装置

【課題】暖気を行うラインを別途設けることにより、プロセスの再現性が良好な基板乾燥装置を提供する。
【解決手段】制御部91は、純水などの液滴が付着した基板Wを処理槽9に載置した後、シャワーノズル17から乾燥媒体を供給させる。基板Wに付着している純水などの液摘は、乾燥媒体の液滴の物理力によって除去される。このとき基板Wは乾燥媒体によって完全に覆われた状態である。次に、空気をインラインヒータ59で加熱しつつシャワーノズル17に供給して基板Wを乾燥させる前に、インラインヒータ59を作動させた状態で気体をガス排気管77に排出させる。したがって、加熱された空気はチャンバ1内に供給されずガス排気管77を介して排出されるので、チャンバ1の温度が自然に上昇することがなく、プロセスの再現性を良好にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)等の基板に対して液体の乾燥媒体を供給して乾燥処理を行う基板乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池、化合物半導体、レチクルなどに利用されているシリコン基板や、化合物半導体、ガラス基板、携帯電話のカメラ用のレンズが形成された基板、CCDアレイ基板などを洗浄するとともに乾燥させる第1の装置として、乾燥用の処理液を貯留する処理槽と、処理槽の周囲を密閉するチャンバと、チャンバ内を減圧するポンプと、チャンバ内に気体を供給する気体供給源と、気体供給源から供給される気体を加熱する加熱部とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、第2の装置として、乾燥用の処理液を貯留する処理槽と、処理槽の周囲を密閉するチャンバと、チャンバ内に気体を供給する気体供給源と、気体供給源から供給される気体を加熱する加熱部とを備えたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらの装置では、次のようにして乾燥処理が行われる。
すなわち、純水の液滴が付着した基板は、チャンバ内に搬入され、処理槽内に載置されて乾燥用の処理液に浸漬される。さらに、加熱部の加熱動作を開始させるとともに気体供給源からチャンバ内に気体を供給させて、チャンバ内の気体を加熱空気で置換させる。その後、基板を処理槽から上方に引き上げるとともに、処理槽から乾燥用の処理液を排出させる。その後、ポンプを作動させてチャンバ内を減圧させる。これにより、基板の表面に残った非常に薄い乾燥用の処理液の薄い膜を蒸発させる。その後、ポンプを停止させるとともに加熱部を停止させた状態で気体供給源から気体をチャンバ内に導入して、チャンバ内の減圧を開放してから基板をチャンバ外へ搬出する。
【特許文献1】特開2001−144065号公報
【特許文献2】特開第3557601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、基板をチャンバ内に搬入した後において、チャンバ内の気体を置換する際と、基板の引き上げ時におけるチャンバ内の加熱気体の供給とで、供給ラインを共用している関係上、チャンバの温度が自然に上昇してしまい、管理できないことによるプロセスの再現性が悪くなる恐れがある。
【0006】
また、乾燥媒体の排出時やチャンバ内の大気開放時には、チャンバに供給する気体を加熱する必要はなく室温でよいが、既にその前に加熱気体を供給しているので、余熱により温度が上昇してしまう。したがって、上記同様にプロセスの再現性が悪くなる恐れがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、暖気を行うラインを別途設けることにより、プロセスの再現性が良好な基板乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板の乾燥処理を行う基板乾燥装置において、内部を密閉空間に保持可能なチャンバと、前記チャンバ内に配設され、基板を収容する処理槽と、液体である乾燥媒体を、前記処理槽内に向けて供給する供給ノズルと、気体を前記供給ノズルに供給するガス供給管と、前記ガス供給管に配設され、流通する気体を加熱する加熱手段と、前記チャンバ内の気体を排気する排気ラインと、前記ガス供給管のうち前記加熱手段の下流側に一端側が連通され、他端側が前記排気ラインに連通されたガス排気管と、前記供給ノズルから乾燥媒体を供給させ、前記加熱手段で加熱して前記供給ノズルに供給する前に、前記加熱手段を作動させた状態で気体を前記ガス供給管から前記ガス排気管に排出させる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、純水などの液滴が付着した基板を処理槽に載置した後、供給ノズルから乾燥媒体を供給させる。基板に付着している純水などの液摘は、乾燥媒体の液滴の物理力によって除去される。このとき基板は乾燥媒体によって完全に覆われた状態である。次に、気体を加熱手段で加熱しつつ供給ノズルに供給して基板を乾燥させる前に、加熱手段を作動させた状態で気体をガス排気管に排出させる。したがって、加熱された気体はチャンバ内に供給されずガス供給管からガス排気管を介して排出されるので、チャンバの温度が自然に上昇することがなく、プロセスの再現性を良好にすることができる。
【0010】
また、本発明において、前記制御手段は、前記供給ノズルから供給されて前記処理槽に滞留している乾燥媒体を排出している間、前記加熱手段を作動させた状態で前記気体供給手段からの気体を前記ガス供給管から前記ガス排気管に排出させることを特徴とすることが好ましい(請求項2)。供給ノズルから供給されて処理槽に滞留している乾燥媒体を排出させた後に、加熱した気体で基板を乾燥させるので、このタイミングで暖気を行うと、暖気を短くすることができ、エネルギーロスを最小限にすることができる。
【0011】
また、本発明において、前記乾燥媒体は、揮発性の液体と界面活性剤とを混合してなることが好ましい(請求項3)。基板に付着している液滴を効率的に置換することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る基板乾燥装置によれば、制御手段は、純水などの液滴が付着した基板を処理槽に載置した後、供給ノズルから乾燥媒体を供給させる。基板に付着している純水などの液摘は、乾燥媒体の液滴の物理力によって除去される。このとき基板は乾燥媒体によって完全に覆われた状態である。次に、気体を加熱手段で加熱しつつ供給ノズルに供給して基板を乾燥させる前に、加熱手段を作動させた状態で気体をガス排気管に排出させる。したがって、加熱された気体はチャンバ内に供給されずガス排気管を介して排出されるので、チャンバの温度が自然に上昇することがなく、プロセスの再現性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は、実施例に係る基板乾燥装置の概略構成を示すブロック図である。
【0014】
この基板乾燥装置は、内部空間を密閉可能なチャンバ1を備えている。チャンバ1は、上部に搬送口を有する容器本体3と、容器本体3の上部に配設された一対のカバーからなり、容器本体3の搬送口を開閉するオートカバー5を備えている。容器本体3の底部には、排液口7が形成されている。
【0015】
チャンバ1の内部には、液体である乾燥媒体などの処理液を貯留する処理槽9が配置されている。この処理槽9は、オーバフロー式の槽であり、複数枚の基板Wを起立姿勢で収容するカセット11を収容可能に構成されている。処理槽9の後部(紙面方向の奥側)には、QDR弁13が配設されている。このQDR弁13から排出された処理液は、排液口7を介して急速排出される。処理槽1の底部には、液体である乾燥媒体などの処理液を基板Wの下方から供給するための1本の噴出管15が配設されている。なお、カセット11には、他の処理部にて純水洗浄を終えた基板Wが収容されている。
【0016】
チャンバ1の内部上方には、一対のシャワーノズル17が配設されている。これらのシャワーノズル17は、処理槽9内のカセット11に収容された基板Wに向けて、液体の乾燥媒体をシャワー状にして供給する。また、チャンバ1の一側面には、内部の気体を排出するための排気口19が形成されている。
【0017】
なお、上記の一対のシャワーノズル17が本発明における「供給ノズル」に相当する。
【0018】
乾燥媒体タンク21は、液体である乾燥媒体を貯留する。液体である乾燥媒体としては、例えば、液滴の置換効率の観点から、揮発性の液体と界面活性剤との混合液が好ましい。具体的には、ハイドロフルオロエーテル(HFE)とイソプロピルアルコール(IPA)との混合液が挙げられる。その混合比は、例えば、ハイドロフルオロエーテルが95重量%に対して、イソプロピルアルコールが5重量%である。
【0019】
なお、乾燥媒体のうち揮発性の液体としては、純水より粘度が低く、基板Wとの直接的な反応がなく(比較的活性ではない)、純水より比重が大きい、または軽い液体であれば、上記の乾燥媒体以外のもので代用可能である。また、装置の防爆構造を不要にするために、可燃性が低いほど好ましい。上記の条件を満たすものとして、フッ素系のフロロエタノール、フロロオクタン、グリコールエーテル、ハイロドフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、炭化水素系のパラフィン系炭化水素、塩素系の塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン(PCE、テトラクロロエチレンとも呼ばれる)、臭素系溶剤の1−ブロモプロパン、エーテル類、グリコール類、グリコールエーテル類、有機溶剤類、アルコール類、炭酸エチレン類、グリセリン類などが挙げられる。また、乾燥媒体のうち界面活性剤としては、汚染の問題がない全ての界面活性剤、アルコール類、有機溶剤などが挙げられる。
【0020】
乾燥媒体タンク21の供給口23と一対のシャワーノズル17とは、供給配管25によって連通接続されている。供給配管25には、上流側から順に、循環ポンプ27と、フィルタ29と、開閉弁31と、流量制御弁33とが配設されている。また、供給配管25は、供給分岐管35を介して噴出管15にも接続されている。この供給分岐管35には、流量制御弁37が配設されている。フィルタ29は、流通する乾燥媒体中のパーティクル等を除去し、循環ポンプ27は、乾燥媒体タンク21内の乾燥媒体を送り出す。
【0021】
供給配管25の一部位には、分岐部39が設けられている。この分岐部39には、延長管41が配設されている。延長管41には、戻り管43と第1廃液管45とが配設されている。戻り管43は、乾燥媒体タンク21に連通接続されている。第1廃液管45は、排液処理部(図示省略)に連通接続されている。また、戻り管43には開閉弁47が取り付けられ、第1廃液管5には開閉弁49が取り付けられている。
【0022】
分岐部39には、さらにガス供給管51の一端側が連通接続されている。その他端側は、空気または窒素ガスの供給源に連通接続されている。このガス供給管51には、上流側から順に、流量制御弁53と、流量計55と、フィルタ57と、インラインヒータ59と、開閉弁61,63とが取り付けられている。フィルタ57は、エアまたは窒素ガス中に含まれているパーティクル等を除去し、インラインヒータ59は、流通するエアまたは窒素ガスを所定の温度に加熱する。流量制御弁53は、後述する加熱した乾燥空気を供給したり、加熱した窒素ガスを供給したりする際に開放されるが、そのときの流量はチャンバ1の容積等を考慮して予め設定されている。その流量は、例えば、毎分100リットル以上である。また、インラインヒータ59による加熱温度も乾燥に要する時間等を考慮して予め決められており、その温度は、例えば、30〜50℃程度である。なお、後述する制御部91は、流量計55の計測値に基づき目標流量値からのずれを補正するように流量制御弁53の開度を微調整する。
【0023】
排気口19は、一端側が排気系設備(図示省略)に連通接続された排気管65の他端側が連通接続されている。この排気管65には、上流側から開閉弁67と冷却器69とが配設されている。冷却器69については詳細後述するが、排気された気体を冷却する機能を備えている。
【0024】
なお、インラインヒータ59が本発明における「加熱手段」に相当し、排気管65が本発明における「排気ライン」に相当し、制御部91が本発明における「制御手段」に相当する。
【0025】
排気管65には、タンク排気管71の一端側が連通接続され、他端側が乾燥媒体タンク21に連通接続されている。また、冷却器69の回収口73と乾燥媒体タンク21とは回収配管75で連通接続されている。
【0026】
排気管65のうち、冷却器69の下流側と、ガス供給管51の開閉弁61,63の間とには、ガス排気管77が連通接続されている。このガス排気管77には、開閉弁79が配設されている。
【0027】
排液口7には、排液管81が接続されている。この排液管81は、第2廃液管83と、回収排液管85とに分岐されている。第2廃液管83は、排液処理部(図示省略)に連通接続されている。回収排液管85は、乾燥媒体タンク21に連通接続されている。回収排液管85には開閉弁87が取り付けられ、回収排液管85には開閉弁89が取り付けられている。
【0028】
上述したオートカバー5の開閉動作、QDR弁13の開閉動作、循環ポンプ27の動作、開閉弁31の開閉動作、流量制御弁33,37の流量調整、開閉弁47,49の開閉動作、流量制御弁53の流量制御、インラインヒータ59の温度調整、開閉弁61,63,67の開閉動作、冷却器69の冷却動作、開閉弁79,87,89の開閉動作は、制御部91によって統括的に制御されている。なお、図1中においては、ブロック図を見やすくするために、全ての制御対象と制御部91との接続は一部省略してある。
【0029】
次に、図2を参照して、上述した冷却器69について説明する。なお、図2は、冷却器の概略構成を示す縦断面図である。
【0030】
冷却器69は、容器93と、板状部材95と、冷媒流通チューブ97とを備えている。容器93は、排気口19側の排気管65とタンク排気管71が連通接続された流入口99と、この流入口99に対向する側に、排気系設備(図示省略)側の排気管65が連通接続された流出口101とが形成されている。また、容器93には、回収口73が形成されている。板状部材95は、複数個の貫通孔(図示省略)が形成されており、熱伝導率が高い材料で構成されている。これらの板状部材95は、その周囲に冷媒流通チューブ97が巻かれている。
【0031】
冷媒流通チューブ97は、冷却用の媒体が流通され、板状部材95を冷却する。冷媒としては、冷却水や、冷却したブライン(brine)を用いる。その温度は、冷却媒体の気相を凝縮させることができる温度であればよく、例えば、2〜3℃程度である。冷却器69に流入する排出気体の温度は、30〜50℃程度であり、冷却器69を通過すると5〜6℃程度にまで冷却される。冷却されて凝縮された排出気体中の乾燥媒体は、回収口73から回収配管75を通って乾燥媒体タンク21に戻される。表面積が大きくされた板状部材95を冷媒流通チューブ97により冷却するので、乾燥媒体の気相を効率的に凝縮させて回収口73に流下させることができる。
【0032】
次に、図3を参照して、上述した乾燥媒体タンク21について説明する。なお、図3は、乾燥媒体貯留タンクの概略構成を示す縦断面図である。
【0033】
乾燥媒体タンク21は、図3の右側から順に、第1の貯留部103と、第2の貯留部105と、第3の貯留部107とを備えている。乾燥媒体タンク21は、内部に二つの仕切り109,111を備えている。仕切り109は、底面から立設され、第1の貯留部103と第2の貯留部105との上部空間を連通させたままで下部空間だけを仕切る。但し、基板Wの破片等の通過を許容しない大きさの多数の貫通穴113が形成されている。この第1の貯留部103は、乾燥媒体の新液が供給されるとともに、循環ポンプ27によって供給配管25を通して乾燥媒体を送り出すための空間である。
【0034】
第2の空間105と第3の空間107とは、天井面から垂下された仕切り111により、下部空間を連通させたままで上部空間だけを仕切られている。仕切り109,111により挟まれた空間が第2の貯留部105である。第3の貯留部107には、戻り管43と、回収排液管85と、回収配管75とが連通接続されており、乾燥媒体を回収するようになっている。また、タンク排気管71が連通接続されており、揮発した乾燥媒体を気体ごと冷却器69に排気する。さらに、第3の貯留部107における液面よりやや下方には、第3廃液管115の一端側が連通接続されている。その他端側は、排液処理部(図示省略)に連通接続されている。
【0035】
乾燥媒体タンク21は、上述したように構成されており、乾燥媒体の新液は、第1の貯留部103から直接的に循環ポンプ27で供給配管25に送られる。一方、各部から回収された乾燥媒体は、第3の貯留部107にて、液体の比重に応じて重力分離され、重いもの、つまり乾燥媒体だけが第2の貯留部105に流通することになり、その中に含まれている恐れがある基板Wの破片などが仕切り109で除去されて第1の貯留部103に流通することになる。なお、第3の貯留部107にて重力分離された軽い液体、例えば、回収された乾燥媒体に混入していた純水やイソプロピルアルコール混じりの純水は、乾燥媒体に比較して軽いので、上澄みとなって第3の貯留部107に滞留する。その上澄みは、第3廃液管115を通して廃液される。したがって、純水などの液滴が流入したとしても、重力分離にて分離されるので、乾燥媒体タンク21における第1の貯留部103に液滴が混入することを防止できる。
【0036】
次に、図4及び図5を参照しつつ上述した基板乾燥装置の動作について説明する。なお、図4は動作を示すフローチャートであり、図5は処理過程における基板の表面状態の変化を示す模式図であり、(a)は親水性のものであり、(b)は疎水性のものである。
【0037】
処理対象の基板Wは、既に他の装置により純水洗浄処理を終えており、純水の液滴が付着した状態でカセット9に収容されているものとする。なお、開閉弁31,37,47,49,61,63,67,79,87,89は閉止されているものとする。また、噴出管15については、以下の処理例においては使用しない。
【0038】
ステップS1
制御部91は、オートカバー5を開放するとともに、図示しない搬入機構により基板Wをカセット9ごとチャンバ1内に搬入させて、カセット9を処理槽9内に載置させる。そして、オートカバー5を閉止して、チャンバ1内を密閉させる。
【0039】
このときの基板Wの表面状態は、基板Wの表面状態が親水性である場合には、図5(a)に示すように基板Wの表面全体が純水の液滴DDで覆われた状態である。一方、基板Wの表面状態が疎水性である場合には、図5(b)に示すように基板Wの表面の所々が露出し、基板Wの表面の一部が純水の液滴DDで覆われた状態である。
【0040】
ステップS2
制御部91は、流量制御弁33を所定の流量で開放するとともに、開閉弁31を開放し、さらに循環ポンプ27を作動させる。これにより、乾燥媒体が一対のシャワーノズル17からシャワー状になって基板Wの表面全体にわたって供給される。この乾燥媒体のシャワーの供給時間は、10〜60秒程度である。供給時間は、基板Wの表面に付着している純水の液滴DDが物理的に流されるとともに、基板Wの表面全体を充分に覆うことができる時間であればよい。
【0041】
この直後の基板Wの表面状態は、乾燥媒体に界面活性剤が含まれているので、基板Wの表面状態が親水性または疎水性であっても、図5(a)、(b)の乾燥媒体のシャワー後に示すように、純水の液滴DDが完全に乾燥媒体DLで置換されて、基板Wの表面全体が乾燥媒体DLの薄い膜で覆われた状態となる。
【0042】
ステップS3
上述した供給時間が経過した後、制御部91は、循環ポンプ27を停止させるとともに、流量制御弁33を閉止させ、開閉弁31を閉止させる。上述した供給により処理槽9の底部に流れ落ちた乾燥媒体は、処理槽9の下部に滞留している。そこで、乾燥媒体の供給を終えるとともに、QDR弁13及び開閉弁89を開放して、滞留している乾燥媒体を回収排液管85から乾燥媒体タンク21に回収させる。また、開閉弁47を開放して、供給配管25に残っている乾燥媒体を戻り管43を通して乾燥媒体タンク21に回収する。この回収に要する時間は、例えば、50〜60秒程度である。回収を終えると、制御部91は、QDR弁13及び開閉弁47,89を閉止する。このように処理槽9に供給された乾燥媒体を回収排液管85から乾燥媒体タンク21に回収することができるので、さらに乾燥媒体の消費を抑制できる。
【0043】
制御部91は、上述した乾燥媒体の排出回収とともに、次の処理を並行して行わせる。
つまり、開閉弁61,79を開放するとともに、流量制御弁53を所定の流量となるように開放する。さらに、インラインヒータ59を操作して、空気の加熱温度を所定値になるようにする。所定の流量とされた空気は、インラインヒータ59によって所定温度に加熱され、さらにガス排気管77を通して排気管65から排気系設備(図示省略)に排出される。これにより、ガス供給管51を予め所定温度に昇温しておく暖気を行うことができる。
【0044】
ステップS4
制御部91は、流量制御弁33及び開閉弁63,67を開放し、開閉弁79を閉止する。これにより、排気管77を通して排出されていた加熱空気が供給配管25を通して一対のシャワーノズル17から基板Wに向けて供給される。乾燥媒体DLの薄い膜は、基板Wの表面全体を覆っているだけでなく、チャンバ1の内部にある各部の表面をも覆った状態で残留している。さらに、チャンバ1の内部には、乾燥媒体が飽和蒸気(気相)として滞留している状態である。加熱空気は、乾燥媒体の飽和蒸気を蒸発させて置換させるとともに、基板Wの表面を薄く覆っていた乾燥媒体DLの薄い膜を蒸発・置換させる。この蒸発・置換に要する時間は、カセット11の隅部など液滴が滞留しやすい箇所の処理も含めて50〜180秒程度である。但し、基板Wだけについて言えば、10秒程度である。なお、この処理の後の状態を示したのが図5(a),(b)の最も下の図である。
【0045】
上述した加熱空気の供給とともに、次の処理が行われている。
排気管65を通してチャンバ1内の気体が冷却器69を通して排出されるが、冷却器69では、2〜3℃の冷媒により板状部材95が冷却されているので、排出気体が冷却され、飽和蒸気まで蒸気圧が低減される。したがって、乾燥媒体の気相を含む排出気体から乾燥媒体が凝縮されて回収され、回収配管75を通して乾燥媒体タンク21に回収される。同時に、乾燥媒体タンク21の内部で揮発した乾燥媒体も同様にして回収される。
【0046】
なお、回収した乾燥媒体は、乾燥媒体タンク21における第3の貯留部107において重力分離され乾燥媒体以外が廃液されるので、乾燥媒体の純度を下げることがない。
【0047】
ステップS5
上述した処理の後、制御部91は、オートカバー5を開放するとともに、図示しない搬入機構により基板Wをカセット9ごとチャンバ1外に搬出させる。
【0048】
上述した一連の処理により、純水の液滴が付着した基板Wには乾燥処理が行われる。この乾燥処理は、約2〜6分で完了する。従来装置では8〜16分程度を要しているので、飛躍的に乾燥処理を短縮することができる。
【0049】
上述した実施例装置によると、制御部91は、純水などの液滴DDが付着した基板Wを処理槽9に載置した後、シャワーノズル17から乾燥媒体を供給させる。基板Wに付着している純水などの液摘DDは、乾燥媒体DLの液滴の物理力によって除去される。このとき基板Wは乾燥媒体DLによって完全に覆われた状態である。次に、空気をインラインヒータ59で加熱しつつシャワーノズル17に供給して基板Wを乾燥させる前に、インラインヒータ59を作動させた状態で気体をガス排気管77に排出させる。したがって、加熱された空気はチャンバ1内に供給されずガス排気管77を介して排出されるので、チャンバ1の温度が自然に上昇することがなく、プロセスの再現性を良好にすることができる。
【0050】
なお、シャワーノズル17から供給されて処理槽9に滞留している乾燥媒体を排出させた後に、加熱した空気で基板Wを乾燥させるので、暖気を短くすることができ、エネルギーロスを最小限にすることができる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0052】
(1)上述した実施例では、空気供給ラインの暖気を乾燥媒体の排出時に行っているが、これよりも前に暖気を行うようにしてもよい。このようにしても同様の効果を奏する。
【0053】
(2)上述した実施例では、チャンバ1内に加熱空気を供給しているが、加熱した窒素ガスを供給するようにしてもよい。
【0054】
(3)上述した実施例では、基板Wをカセット11ごと処理槽9に収容しているが、カセット11に代えて搬送アームに基板Wを載置したまま処理槽9に収容するようにしてもよい。
【0055】
(4)上述した実施例では、シャワー状に乾燥媒体を供給しているが、オーバーフロー状になるように供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例に係る基板乾燥装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】冷却器の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】乾燥媒体タンクの概略構成を示す縦断面図である。
【図4】動作を示すフローチャートである。
【図5】処理過程における基板の表面状態の変化を示す模式図であり、(a)は親水性のものであり、(b)は疎水性のものである。
【符号の説明】
【0057】
W … 基板
1 … チャンバ
3 … 容器本体
5 … オートカバー
9 … 処理槽
11 … カセット
13 … QDR弁
17 … シャワーノズル
21 … 乾燥媒体タンク
27 … 循環ポンプ
65 … 排気管
75 … 回収配管
85 … 回収排液管
71 … タンク排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の乾燥処理を行う基板乾燥装置において、
内部を密閉空間に保持可能なチャンバと、
前記チャンバ内に配設され、基板を収容する処理槽と、
液体である乾燥媒体を、前記処理槽内に向けて供給する供給ノズルと、
気体を前記供給ノズルに供給するガス供給管と、
前記ガス供給管に配設され、流通する気体を加熱する加熱手段と、
前記チャンバ内の気体を排気する排気ラインと、
前記ガス供給管のうち前記加熱手段の下流側に一端側が連通され、他端側が前記排気ラインに連通されたガス排気管と、
前記供給ノズルから乾燥媒体を供給させ、気体を前記加熱手段で加熱して前記供給ノズルに供給する前に、前記加熱手段を作動させた状態で気体を前記ガス供給管から前記ガス排気管に排出させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板乾燥装置において、
前記制御手段は、前記供給ノズルから供給されて前記処理槽に滞留している乾燥媒体を排出している間、前記加熱手段を作動させた状態で気体を前記ガス供給管から前記ガス排気管に排出させることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板乾燥装置において、
前記乾燥媒体は、揮発性の液体と界面活性剤とを混合してなることを特徴とする基板乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−239233(P2009−239233A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86985(P2008−86985)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】