説明

基板処理装置、基板処理方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】処理室内に溜まった処理液の泡を、簡単な設備を用いて効果的に除去する。
【解決手段】吸引口30f及び排出口30gと、圧縮空気導入口30hとを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口30hから排出口30gへ流し、吸引口30fと排出口30gとの間に生じた圧力差により吸引口30fから吸引した物を、圧縮空気と共に排出口30gから排出するエジェクタ30を用い、処理室20内に溜まった処理液の泡を、第1の配管31を介して吸引口30fから吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共に排出口30gから第2の配管32を介して処理室20内へ吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像液、エッチング液、剥離液、洗浄液等の処理液を用いて、基板の現像、エッチング、剥離、洗浄等の処理を行う基板処理装置、基板処理方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に係り、特に、処理室内で基板を移動しながら、処理液をノズルから基板へ吐出し、基板へ吐出した処理液を回収して再利用する基板処理装置、基板処理方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造工程では、基板上に回路パターンやカラーフィルタ等を形成するため、基板の露光、現像、エッチング、剥離、洗浄等の処理が行われる。これらのうち、現像、エッチング、剥離、洗浄の各処理は、処理室内で、ローラコンベア等の移動装置を用いて基板を移動しながら行われることが多く、現像液、エッチング液、剥離液、洗浄液等の処理液は、スプレーノズル、シャワーノズル、またはスリットノズルから基板の表面へ吐出される。ノズルから基板へ吐出された処理液は、基板の処理後、処理室から回収されて処理液タンクへ戻される。この様に処理液を処理室と処理液タンクとの間で循環させて再使用することにより、高価な処理液の消費量が低減され、基板の製造コストが削減される。
【0003】
処理室内で、ノズルから吐出された処理液が基板の表面に衝突する際に、処理液の泡が発生する。また、処理室内で、処理液が基板の表面から落下して処理室の床又は処理液回収チャンバに衝突する際にも、処理液の泡が発生する。処理液中の泡は、ノズルの吐出不良、処理液タンク又は処理室からの泡漏れ、処理室内での泡による基板の搬送不良等の問題を引き起こす。そのため、従来は、処理液に消泡剤を添加する、泡が消えるまで装置を停止する、あるいは処理液を交換するという対策が採られていた。しかしながら、消泡剤の添加は処理液の劣化を、装置の停止は稼働率の低下を、処理液の交換はランニングコストの増大を招くという問題があった。
【0004】
これに対し、特許文献1には、手動バルブやエア抜き配管を用いて、処理液タンク内へ泡が流入するのを防止する技術が記載されている。また、特許文献2には、処理液を処理室から処理液タンクへ回収する回収用配管の途中にバイパス配管を設け、バイパス配管に流れる処理液中の泡を液化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−332528号公報
【特許文献2】特開2005−340322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、手動バルブやエア抜き配管といった簡単な設備で済む反面、泡を積極的に除去することができないため、依然として泡が処理室内に残り、処理室からの泡漏れ、及び処理室内での泡による基板の搬送不良の問題があった。また、特許文献2に記載の技術も、回収用配管内へ流れ込まないで処理室内に残った泡を消すことができなかった。
【0007】
本発明の課題は、処理室内に溜まった処理液の泡を、簡単な設備を用いて効果的に除去することである。また、本発明の課題は、処理むらが少なく品質の高い基板を、効率良く安価に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理装置は、処理液を用いて基板の処理を行う処理室と、処理室内で基板を移動する基板移動手段と、処理室内に設けられ、基板移動手段により移動される基板へ処理液を吐出するノズルと、ノズルへ供給する処理液を貯留する処理液タンクと、ノズルから基板へ吐出された処理液を回収して処理液タンクへ戻す処理液回収手段と、吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出するエジェクタと、エジェクタの吸引口に接続された第1の配管と、エジェクタの排出口に接続された第2の配管と、エジェクタの圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給する空気圧回路とを備え、エジェクタが、処理室内に溜まった処理液の泡を、第1の配管を介して吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共に排出口から第2の配管を介して処理室内へ吐出するものである。
【0009】
また、本発明の基板処理方法は、処理室内で基板を移動しながら、処理液を貯留した処理液タンクから処理室内に設けたノズルへ処理液を供給して、ノズルから基板へ処理液を吐出し、ノズルから基板へ吐出した処理液を回収して処理液タンクへ戻し、吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出するエジェクタを用い、エジェクタの吸引口に第1の配管を接続し、エジェクタの排出口に第2の配管を接続し、エジェクタの圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給し、処理室内に溜まった処理液の泡を、第1の配管を介してエジェクタの吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共にエジェクタの排出口から第2の配管を介して処理室内へ吐出するものである。
【0010】
本発明で用いるエジェクタは、吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出する、流体駆動装置の一種である。このエジェクタを用い、処理室内に溜まった処理液の泡を、第1の配管を介してエジェクタの吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共にエジェクタの排出口から第2の配管を介して処理室内へ吐出するので、処理室内に溜まった処理液の泡が、簡単な設備を用いて効果的に除去される。従って、処理室からの泡漏れ、及び処理室内での泡による基板の搬送不良が防止される。処理室内に溜まった処理液の泡を、圧縮空気の圧力でつぶすので、処理液を希釈又は汚染することがなく、処理液の再利用が可能となる。エジェクタ、及びエジェクタの圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給する空気圧回路は、小型に構成できるので、設置場所を選ばず、自由な配置が可能である。
【0011】
さらに、本発明の基板処理装置は、第1の配管の内径よりも広い開口を有し、処理室内で処理室内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置され、第1の配管に接続された吸引フードを備えたものである。また、本発明の基板処理方法は、第1の配管の内径よりも広い開口を有する吸引フードを、処理室内で処理室内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置して、第1の配管に接続するものである。処理液の泡は、空気を内包して処理液自体よりも軽く、処理液の表面に浮いている。第1の配管の内径よりも広い開口を有する吸引フードを、処理室内で処理室内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置して、第1の配管に接続するので、処理液の表面に浮いた泡が、吸引フードの開口から効率良く吸引される。
【0012】
さらに、本発明の基板処理装置は、処理室内で第2の配管の先端付近に設置され、第2の配管から吐出された圧縮空気が衝突するカバーを備えたものである。また、本発明の基板処理方法は、第2の配管から吐出された圧縮空気が衝突するカバーを、処理室内で第2の配管の先端付近に設置するものである。第2の配管から吐出された圧縮空気がカバーに衝突してその勢いが弱まり、第2の配管から吐出された圧縮空気による処理室内の気流の乱れが防止される。また、第2の配管から吐出された圧縮空気が処理室内に溜まった処理液に直接衝突して泡が発生するのが防止される。
【0013】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかの基板処理装置又は基板処理方法を用いて基板の処理を行うものである。処理室内に溜まった処理液の泡が、簡単な設備を用いて効果的に除去されるので、消泡剤の添加による処理液の劣化、装置の停止による稼働率の低下、及び処理液の交換によるランニングコストの増大が抑制され、処理むらが少なく品質の高い表示用パネル基板が、効率良く安価に製造される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の基板処理装置及び基板処理方法によれば、吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出するエジェクタを用い、処理室内に溜まった処理液の泡を、第1の配管を介してエジェクタの吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共にエジェクタの排出口から第2の配管を介して処理室内へ吐出することにより、処理室内に溜まった処理液の泡を、簡単な設備を用いて効果的に除去することができる。従って、処理室からの泡漏れ、及び処理室内での泡による基板の搬送不良を防止することができる。処理室内に溜まった処理液の泡を、圧縮空気の圧力でつぶすので、処理液を希釈又は汚染することがなく、処理液の再利用が可能となる。エジェクタ、及びエジェクタの圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給する空気圧回路は、小型に構成できるので、設置場所を選ばず、自由な配置が可能である。
【0015】
さらに、本発明の基板処理装置及び基板処理方法によれば、第1の配管の内径よりも広い開口を有する吸引フードを、処理室内で処理室内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置して、第1の配管に接続することにより、処理液の表面に浮いた泡を、吸引フードの開口から効率良く吸引することができる。
【0016】
さらに、本発明の基板処理装置及び基板処理方法によれば、第2の配管から吐出された圧縮空気が衝突するカバーを、処理室内で第2の配管の先端付近に設置することにより、第2の配管から吐出された圧縮空気による処理室内の気流の乱れを防止することができる。また、第2の配管から吐出された圧縮空気が処理室内に溜まった処理液に直接衝突して泡が発生するのを防止することができる。
【0017】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、処理室内に溜まった処理液の泡を、簡単な設備を用いて効果的に除去することができるので、消泡剤の添加による処理液の劣化、装置の停止による稼働率の低下、及び処理液の交換によるランニングコストの増大を抑制して、処理むらが少なく品質の高い表示用パネル基板を、効率良く安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態による基板処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2(a)はエジェクタの側面図、図2(b)はエジェクタの内部の断面図である。
【図3】吸引フードの外観図である。
【図4】カバーの動作を説明する図である。
【図5】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図6】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態による基板処理装置の概略構成を示す図である。基板処理装置は、ローラ10、処理室20、ノズル21、処理液回収配管22、処理液タンク23、処理液供給配管24、ポンプ25、フィルタ26、エジェクタ30、吸引配管31、吐出配管32、圧縮空気供給源33、空気圧回路、吸引フード40a、及びカバー50を含んで構成されている。
【0020】
基板1は、複数のローラ10上に搭載され、ローラ10の回転により、矢印で示す基板移動方向へ移動される。なお、本実施の形態では基板1を水平な状態で移動しているが、本発明はこれに限らず、基板1を水平に対して基板移動方向と直交する方向又は基板移動方向に所定の角度傾斜した状態で移動してもよい。
【0021】
基板1は、ローラ10により、処理室20へ搬入される。処理室20内には、ローラ10に搭載された基板1の上方に、複数のノズル21が設置されている。ノズル21は、スプレーノズル、シャワーノズル、又はスリットノズルから成り、現像液、エッチング液、剥離液、洗浄液等の処理液を、ローラ10により移動される基板1の表面へ吐出する。基板1の移動に伴い、ノズル21から吐出された処理液が基板1の表面全体へ供給され、基板1の現像、エッチング、剥離、洗浄等の処理が行われる。
【0022】
なお、本実施の形態では、ノズル21が基板移動方向に3段設けられているが、ノズル21の段数はこれに限らない。
【0023】
処理室20の床は緩やかに傾斜しており、床の最も低い位置に処理液回収配管22が設けられている。処理液回収配管22の下端は、処理液2を貯留する処理液タンク23内へ伸びている。ノズル21から基板1の表面へ吐出された処理液は、基板1の表面から処理室20の床へ流れ落ち、処理液回収配管22から処理液タンク23へ流れ込む。処理液タンク23内に貯留された処理液2は、処理液供給配管24を通ってノズル21へ供給される。処理液供給配管24には、処理液タンク23内の処理液2を処理液供給配管24内へ流すためのポンプ25と、処理液2に混入した異物や不純物を取り除くフィルタ26とが設けられている。
【0024】
なお、本実施の形態では、ノズル21から基板1へ吐出された処理液を、処理室20の床から回収しているが、処理室20内に処理液回収チャンバを設け、処理液回収チャンバ内に溜まった処理液を、処理液タンク23へ流してもよい。
【0025】
以下、本発明の一実施の形態による基板処理方法を説明する。処理室20内で、ノズル21から吐出された処理液が基板1の表面に衝突する際に、処理液の泡が発生する。また、処理室20内で、処理液が基板1の表面から落下して処理室20の床又は処理液回収チャンバに衝突する際にも、処理液の泡が発生する。本発明では、エジェクタ30を用いて、処理室20内に溜まった処理液の泡を除去する。本発明で用いるエジェクタ30は、吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出する、流体駆動装置の一種である。
【0026】
図2(a)はエジェクタの側面図、図2(b)はエジェクタの内部の断面図である。図2(a)において、エジェクタ30は、本体30a、吸引部30b、排出部30c、及び圧縮空気導入部30dから構成されている。図2(b)に示す様に、吸引部30b、本体30a及び排出部30cの内部には、図面横方向につながった流体通路30eが形成されており、流体通路30eの一端は吸引部30bにおいて吸引口30fと成り、流体通路30eの他端は排出部30cにおいて排出口30gと成っている。一方、圧縮空気導入部30dには、圧縮空気導入口30hが設けられており、本体30aの内部には、圧縮空気導入口30hから排出口30gの方向へ向かって斜めに伸び、流体通路30eと合流する圧縮空気通路30iが形成されている。
【0027】
圧縮空気を、圧縮空気導入口30hから、圧縮空気通路30i及び流体通路30eを通して、排出口30gへ流すと、吸引口30fと排出口30gとの間に圧力差が生じ、この圧力差により吸引口30fから流体が吸引される。吸引口30fから吸引された流体は、流体通路30eを通り、圧縮空気と共に排出口30gから排出される。
【0028】
図1において、エジェクタ30の吸引口には、吸引配管31が接続されており、吸引配管31の先端は、処理室20内に設置された吸引フード40aに接続されている。一方、エジェクタ30の排出口には、吐出配管32が接続されており、吐出配管32の先端は、処理室20内に設置されている。処理室20内で吐出配管32の先端付近には、カバー50が設けられている。
【0029】
エジェクタ30の圧縮空気導入口には、空気圧回路が接続されている。空気圧回路は、圧力調整弁34、圧力計35、流量計36、流量制御弁37、自動弁38、及びフィルタ39を含んで構成されている。圧力調整弁34は、圧縮空気供給源33からエジェクタ30の圧縮空気導入口へ供給される圧縮空気の圧力を調整する。流量制御弁37は、圧縮空気供給源33からエジェクタ30の圧縮空気導入口へ供給される圧縮空気の流量を制御する。
【0030】
圧縮空気供給源33から、空気圧回路を介して、エジェクタ30の圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給すると、エジェクタ30は、処理室20内に溜まった処理液の泡を、吸引フード40a及び吸引配管31を介して吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共に排出口から吐出配管32を介して処理室20内へ吐出する。処理室20内に溜まった処理液の泡が、簡単な設備を用いて効果的に除去される。従って、処理室20からの泡漏れ、及び処理室20内での泡による基板1の搬送不良が防止される。処理室20内に溜まった処理液の泡を、圧縮空気の圧力でつぶすので、処理液を希釈又は汚染することがなく、処理液の再利用が可能となる。エジェクタ30、及びエジェクタ30の圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給する空気圧回路は、小型に構成できるので、設置場所を選ばず、自由な配置が可能である。また、空気圧回路により、処理室20内で発生する処理液の泡の量に応じて、エジェクタ30の圧縮空気導入口へ供給する圧縮空気の圧力を調整し、また圧縮空気の流量を制御することができる。
【0031】
図3は、吸引フードの外観図である。吸引フード40aは、図3(a)に示す様に、吸引配管31の内径よりも広い開口を有し、処理室20内で処理室20内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置されている。処理液の泡は、空気を内包して処理液自体よりも軽く、処理液の表面に浮いている。吸引配管31の内径よりも広い開口を有する吸引フード40aを、処理室20内で処理室20内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置して、吸引配管31に接続するので、処理液の表面に浮いた泡が、吸引フード40aの開口から効率良く吸引される。
【0032】
図3(b),(c),(d)は、吸引フードの他の例の外観図である。図3(a)に示す吸引フード40a及び図3(b)に示す吸引フード40bは、いずれも開口が丸い形であるが、吸引フード40aは外形が円錐の一部を切り取った形であるのに対し、吸引フード40bは外形が円筒形である。また、図3(c)に示す吸引フード40c及び図3(d)に示す吸引フード40dは、いずれも開口が四角形であり、吸引フード40cは外形が四角錐の一部を切り取った形であり、吸引フード40dは外形が上方からみて扇形である。吸引フードの開口は、圧力損失が少なく、広範囲に処理液の泡を吸引できる形状であれば、設置場所及びスペースに応じて適宜選択することができる。また、吸引フードの配置として、処理液の泡に流れがある場合は、開口が流れの下流側から上流側へ向く様に配置する。処理液の泡に流れがない場合は、処理液の泡が発生する場所の近く、または処理液の泡が集まっている場所に配置する。なお、吸引フードは、現像液、エッチング液、剥離液、洗浄液等の処理液によって変質しない材料で構成されている。
【0033】
図4は、カバーの動作を説明する図である。処理室20内で吐出配管32から吐出された圧縮空気は、その勢いにより処理室20内の気流を乱し、また処理室20内に溜まった処理液に衝突して泡を発生させる恐れがある。本実施の形態では、処理室20内で吐出配管32から吐出された圧縮空気は、吐出配管32の先端付近に設置されたカバー50に衝突してその勢いが弱まり、吐出配管32から吐出された圧縮空気による処理室20内の気流の乱れが防止される。また、吐出配管32から吐出された圧縮空気が処理室20内に溜まった処理液に直接衝突して泡が発生するのが防止される。カバー50の形状は、圧縮空気の勢いを逃がす方向に応じて適宜選択でき、図4に示す様に、処理室20の床方向に傾斜した形状のカバー50を、吐出配管32の正面に設けると、カバー50に衝突した空気が、矢印で示す様に処理室20の床方向へ流れる。処理室20内で圧縮空気と共に吐出配管32から吐出された液化された処理液は、カバー50に衝突して処理室20の床へ落下し、処理液回収配管22から処理液タンク23へ回収される。
【0034】
以上説明した実施の形態によれば、吸引口30f及び排出口30gと圧縮空気導入口30hとを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口30hから排出口30gへ流し、吸引口30fと排出口30gとの間に生じた圧力差により吸引口30fから吸引した物を、圧縮空気と共に排出口30gから排出するエジェクタ30を用い、処理室20内に溜まった処理液の泡を、吸引配管31を介してエジェクタ30の吸引口30fから吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共にエジェクタ30の排出口30gから吐出配管32を介して処理室20内へ吐出することにより、処理室20内に溜まった処理液の泡を、簡単な設備を用いて効果的に除去することができる。従って、処理室20からの泡漏れ、及び処理室20内での泡による基板の搬送不良を防止することができる。処理室20内に溜まった処理液の泡を、圧縮空気の圧力でつぶすので、処理液を希釈又は汚染することがなく、処理液の再利用が可能となる。エジェクタ30、及びエジェクタ30の圧縮空気導入口30hへ圧縮空気を供給する空気圧回路は、小型に構成できるので、設置場所を選ばず、自由な配置が可能である。また、空気圧回路により、処理室20内で発生する処理液の泡の量に応じて、エジェクタ30の圧縮空気導入口30hへ供給する圧縮空気の圧力を調整し、また圧縮空気の流量を制御することができる。
【0035】
さらに、吸引配管31の内径よりも広い開口を有する吸引フード40a,40b,40c,40dを、処理室20内で処理室20内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置して、吸引配管31に接続することにより、処理液の表面に浮いた泡を、吸引フード40a,40b,40c,40dの開口から効率良く吸引することができる。
【0036】
さらに、吐出配管32から吐出された圧縮空気が衝突するカバー50を、処理室20内で吐出配管32の先端付近に設置することにより、吐出配管32から吐出された圧縮空気による処理室20内の気流の乱れを防止することができる。また、吐出配管32から吐出された圧縮空気が処理室20内に溜まった処理液に直接衝突して泡が発生するのを防止することができる。
【0037】
本発明の基板処理装置又は基板処理方法を用いて基板の処理を行うことにより、処理室内に溜まった処理液の泡を、簡単な設備を用いて効果的に除去することができるので、消泡剤の添加による処理液の劣化、装置の停止による稼働率の低下、及び処理液の交換によるランニングコストの増大を抑制して、処理むらが少なく品質の高い表示用パネル基板を、効率良く安価に製造することができる。
【0038】
例えば、図5は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等により感光樹脂材料(フォトレジスト)を塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、プロキシミティ露光装置や投影露光装置等を用いて、マスクのパターンをフォトレジスト膜に転写する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄工程及び乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0039】
また、図6は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄工程及び乾燥工程が実施される。
【0040】
図5に示したTFT基板の製造工程では、現像工程(ステップ104)、エッチング工程(ステップ105)、剥離工程(ステップ106)、及び洗浄工程において、図6に示したカラーフィルタ基板の製造工程では、ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)及び着色パターン形成工程(ステップ202)の現像処理、エッチング処理、剥離処理、及び洗浄処理において、本発明の基板処理装置又は基板処理方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 基板
2 処理液
10 ローラ
20 処理室
21 ノズル
22 処理液回収配管
23 処理液タンク
24 処理液供給配管
25 ポンプ
26 フィルタ
30 エジェクタ
30a 本体
30b 吸引部
30c 排出部
30d 圧縮空気導入部
30e 流体通路
30f 吸引口
30g 排出口
30h 圧縮空気導入口
30i 圧縮空気通路
31 吸引配管
32 吐出配管
33 圧縮空気供給源
34 圧力調整弁
35 圧力計
36 流量計
37 流量制御弁
38 自動弁
39 フィルタ
40a,40b,40c,40d 吸引フード
50 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を用いて基板の処理を行う処理室と、
前記処理室内で基板を移動する基板移動手段と、
前記処理室内に設けられ、前記基板移動手段により移動される基板へ処理液を吐出するノズルと、
前記ノズルへ供給する処理液を貯留する処理液タンクと、
前記ノズルから基板へ吐出された処理液を回収して前記処理液タンクへ戻す処理液回収手段と、
吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出するエジェクタと、
前記エジェクタの吸引口に接続された第1の配管と、
前記エジェクタの排出口に接続された第2の配管と、
前記エジェクタの圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給する空気圧回路とを備え、
前記エジェクタは、前記処理室内に溜まった処理液の泡を、前記第1の配管を介して吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共に排出口から前記第2の配管を介して前記処理室内へ吐出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の配管の内径よりも広い開口を有し、前記処理室内で前記処理室内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置され、前記第1の配管に接続された吸引フードを備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理室内で前記第2の配管の先端付近に設置され、前記第2の配管から吐出された圧縮空気が衝突するカバーを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
処理室内で基板を移動しながら、
処理液を貯留した処理液タンクから処理室内に設けたノズルへ処理液を供給して、ノズルから基板へ処理液を吐出し、
ノズルから基板へ吐出した処理液を回収して処理液タンクへ戻し、
吸引口及び排出口と圧縮空気導入口とを有し、圧縮空気を圧縮空気導入口から排出口へ流し、吸引口と排出口との間に生じた圧力差により吸引口から吸引した物を、圧縮空気と共に排出口から排出するエジェクタを用い、
エジェクタの吸引口に第1の配管を接続し、
エジェクタの排出口に第2の配管を接続し、
エジェクタの圧縮空気導入口へ圧縮空気を供給し、
処理室内に溜まった処理液の泡を、第1の配管を介してエジェクタの吸引口から吸引し、吸引した処理液の泡を圧縮空気の圧力でつぶして液化し、液化した処理液を圧縮空気と共にエジェクタの排出口から第2の配管を介して処理室内へ吐出することを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
第1の配管の内径よりも広い開口を有する吸引フードを、処理室内で処理室内に溜まった処理液の液面よりも高い位置に設置して、第1の配管に接続することを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
第2の配管から吐出された圧縮空気が衝突するカバーを、処理室内で第2の配管の先端付近に設置することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置を用いて基板の処理を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の基板処理方法を用いて基板の処理を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−190908(P2012−190908A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51591(P2011−51591)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】