説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】ウォータマークを発生させず,レジストの溶解もなく安全に処理することができる,基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【解決手段】処理槽60の下部から第1の処理液を供給して、処理槽60内において第1の処理液中に基板Wを浸漬させて処理する工程と、処理槽60の下部から第1の処理液よりも比重が重い第2の処理液を供給しつつ、処理槽60の上部から第1の処理液を排液して、処理槽60内の第1の処理液を第2の処理液に置換し、処理槽60内において第2の処理液中に基板Wを浸漬させて処理する工程と、処理槽60内から処理槽60の上方に設けられた乾燥室に基板Wを引き上げる工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では,半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という。)を所定の薬液や純水等の洗浄液によって洗浄し,ウェハの表面に付着したパーティクル,有機汚染物,金属不純物等のコンタミネーションを除去する洗浄装置が使用されている。その中でも洗浄液が充填された洗浄槽内に,ウェハを浸漬させて洗浄処理を行うウェット型の洗浄装置は広く普及している。
【0003】
かかる洗浄装置は,アンモニア成分,塩酸成分,フッ酸成分等が主体となった薬液や純水を用いて洗浄処理を行い,最後に純水による最終リンス処理と,乾燥処理を行うように構成されている。洗浄装置には,前記最終リンス処理が行われる最終リンス洗浄装置と,前記乾燥処理が行われる乾燥装置とが備えられている。
【0004】
乾燥装置には,例えばIPA蒸気乾燥法が採用されている。このIPA蒸気乾燥法によれば,乾燥槽内に収納されたウェハに対して,親水性の高いIPA[イソプロピルアルコール:(CHCHOH]蒸気を供給し,IPAの揮発を利用してウェハの表面に付着している水滴を取り除いて,ウェハを乾燥させることができる。
【0005】
ここで,最終リンス洗浄装置から乾燥装置にウェハを搬送させている間に,ウェハの表面が大気雰囲気中に曝されることになる。そうなると,ウェハの表面に付着している水滴が自然乾燥してしまい,ウォータマーク(水跡)を発生させるおそれがある。また,これら最終リンス洗浄装置と乾燥装置は,洗浄装置内で横一列に並べられているため,フットプリントを要する。
【0006】
そこで,ウォータマークの低減やフットプリント節約等の観点から,最終リンス処理と,乾燥処理の両方を行うように構成されたリンス・乾燥装置が従来から知られている。このようなリンス・乾燥装置として,例えば洗浄槽の純水中に浸漬されたウェハを槽内から引き上げる際にIPA蒸気を供給し,水とIPAの表面張力の違いを利用したマランゴニ効果により,最終リンス処理後にウェハ乾燥を行う装置が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,従来のIPAを利用した乾燥装置やリンス・乾燥装置によれば,IPAには,レジストを溶解させる性質がある。例えばウェハの表面に所定の回路パターンに沿ってレジスト膜が形成されている。このようなウェハに対してIPA蒸気やIPA液を供給すると,レジスト表面が溶けてしまい,パターン崩れが起こる可能性がある。また,メモリ回路等で,リーク電流を抑えるために形成されるデュアルゲートが,レジストを局所的に堆積してパターニングした構造を有する場合,IPA蒸気が供給されると,デュアルゲートの厚さが変わる。このため,回路の動作に悪影響を及ぼすおそれがある。さらにIPAには,アルコール成分が含まれているので,引火する危険性がある。このため,高水準の安全対策,設備が必要となる。
【0008】
また,マランゴニ効果が十分に発揮されるためには,ウェハWを比較的ゆくっりと純水中から引き上げなくてはならず,このため,ウェハWの上昇に時間を要する。さらに,前記ウェハガイドには,ウェハの周縁部が保持される溝が複数形成されている。溝や,溝に保持されたウェハの周縁部のような細部に渡る部分にも,水滴が付着している。露出したウェハの表面と異なり,溝に保持されたウェハの周縁部に対してはIPA蒸気が供給し難く,乾燥に手間がかかる。
【0009】
従って,本発明の目的は,ウォータマークを発生させず,レジスト膜付きの基板をパターン崩れなしで,安全に処理することができる,基板処理装置および基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために,本発明にあっては,処理液が充填される処理槽と、前記処理槽の上方に設けられた乾燥室と、前記処理槽内と前記乾燥室とに基板を昇降させる保持手段と,前記処理槽の下部から処理液を供給する処理液供給手段と,前記処理槽の上部から処理液を排液する処理液排液手段とを備え,前記処理液供給手段により、前記処理槽内に第1の処理液を供給して、前記処理槽内において第1の処理液中に基板を浸漬させた後、前記処理液供給手段により、前記処理槽内に第1の処理液よりも比重が重い第2の処理液を供給しつつ、前記処理液排液手段により、前記処理槽内から第1の処理液を排液して、前記処理槽内の第1の処理液を第2の処理液に置換し、前記処理槽内において第2の処理液中に基板を浸漬させ、その後、前記保持手段により、前記処理槽内から前記乾燥室に基板を引き上げることを特徴とする,基板処理装置を提供する。
【0011】
この基板処理装置において,第1の処理液として例えば純水等が,第2の処理液として例えば疎水性がある溶剤(例えば、ジクロロメタン、ヘキサメチルジシラザン、ハイドロフルオロエーテルのいずれかからなる)がそれぞれ適宜用いられる。従って,この基板処理装置は,保持手段により保持された基板の周縁部に付着している例えば水滴を外部雰囲気に接触させることなく液中で溶剤に置換することができる。
【0012】
第2の処理液に基板を接触させた後,保持手段を上昇させて基板を処理槽内から取り出す。基板を露出させ,基板から溶剤を蒸発させる。さらに保持手段により保持された基板の周縁部からも溶剤を蒸発させるので,細部に渡る部分も容易に乾燥させることができる。
【0013】
前記基板に乾燥促進用のガスを供給するガス供給手段を備えても良い。また,前記第2の処理液にIPAを混合するIPA供給手段を有していても良い。また,前記第2の処理液を加熱する加熱手段を有していても良い。
【0014】
また、本発明にあっては,処理槽内で少なくとも第1の処理液と第2の処理液を用いて基板を処理する方法であって,前記処理槽の下部から第1の処理液を供給して、前記処理槽内において第1の処理液中に基板を浸漬させて処理する工程と、前記処理槽の下部から第1の処理液よりも比重が重い第2の処理液を供給しつつ、前記処理槽の上部から第1の処理液を排液して、前記処理槽内の第1の処理液を第2の処理液に置換し、前記処理槽内において第2の処理液中に基板を浸漬させて処理する工程と、前記処理槽内から前記処理槽の上方に設けられた乾燥室に基板を引き上げる工程を有することを特徴とする,基板処理方法を提供する。
【0015】
この基板処理方法によれば,例えば処理槽内に充填された第1の処理液に基板を処理液に接触させる。次いで,第1の処理液よりも比重の重い第2の処理液を処理槽内に供給する。第1の処理液に基板を接触させた状態から,第2の処理液に基板を接触させた状態に置換する。従って,基板の表面に付着している第1の処理液を外部雰囲気に接触させることなく液中で第2の処理液に置換することができる。
【0016】
例えば第1の処理液に純水が適宜用いられ,第2の処理液に疎水性がある溶剤(例えば、ジクロロメタン、ヘキサメチルジシラザン、ハイドロフルオロエーテルのいずれかからなる)が適宜用いられる。この場合,先ず処理槽内に充填された第1の処理液中に基板を浸漬させて第1の処理液に接触させる。次いで,例えば第1の処理液よりも比重が重い第2の処理液を処理槽内に供給する場合,供給された第2の処理液は,処理槽の底部に沈む。一方,第2の処理液の供給に合わせて例えば処理槽の上部から第1の処理液を徐々に排液し,処理槽内に,第1の処理液層と第2の処理液層を形成する。第2の処理液が溜まって第2の処理液層を厚くする一方で,処理槽内から第1の処理液を追い出して第1の処理液層を薄くしていく。処理槽内に充填される液を第2の処理液に置換する。基板を第2の処理液に浸漬させて第2の処理液に接触させる。従って,例えば基板の表面に付着している水滴を外部雰囲気に接触させることなく液中で溶剤に置換することができる。
【0017】
前記第1の処理液とは比重が異なる前記第2の処理液に前記基板を接触させた状態に置換した後,前記処理槽の上方に基板を上昇させて基板を乾燥させることが好ましい。前述したように第1の処理液が純水であり,第2の処理液が溶剤である場合に,かかる方法によれば,溶剤が付着した基板を処理槽の上方に上昇させて基板の表面を露出させ,基板から溶剤を蒸発させる。従って,例えばウォータマークを発生させることなく,基板を乾燥させることができる。また,液化された溶剤を用いるので,従来のように可燃性のある溶剤(例えばIPA)の蒸気を用いて基板を乾燥させるのと比較して,危険が少なく,高水準の安全対策,設備が不要となる。
【0018】
前記第1の処理液とは比重が異なる前記第2の処理液に前記基板を接触させた状態に置換した後,前記処理槽内を排液して基板を乾燥させても良い。かかる方法によれば,処理槽内を排液して基板を露出させ,処理槽内で基板から溶剤を蒸発させる。これによっても,例えばウォータマークを発生させることなく,基板を乾燥させることができる。
【0019】
前記基板を前記第2の処理液から分離した後,前記基板にガスを供給することが好ましい。即ち,先に述べたように処理槽の上方に基板を上昇させて第2の処理液から分離した後や,処理槽内を排液して第2の処理液から分離した後で,基板に例えばN(窒素)ガス又は加熱されたNガス等を供給する。そうすれば,乾燥を促進することができる。
【0020】
前記処理槽の周囲を不活性雰囲気にすることが好ましい。例えば溶剤の気化熱が大きいと,溶剤が蒸発する際に基板から熱を奪い,基板の表面温度が下がる。そうなると,雰囲気中の例えば蒸気が結露して基板の表面に水滴が付着するおそれがある。しかしながら,例えば処理槽の周囲(処理槽の上方等を含む)を,例えばN雰囲気で満たし,雰囲気中に蒸気が含まれないようにすることで,溶剤蒸発時の水滴付着を防止することができる。
【0021】
前記基板は,例えば表面にレジスト膜が形成されたものであり,前記第2の処理液は,該レジスト膜を溶解させない性質を有することが好ましい。そうすれば,レジスト膜付きの基板を好適に処理することができる。また,前記第2の処理液は,不可燃性であっても良い。そうすれば,例えば溶剤が気化しても安全を図ることができる。このような条件を満たす第2の処理液として,例えばHMDS(ヘキサメチルジシラザン)やジクロロメタン,HFE(ハイドロフルオロエーテル)等の溶剤がある。
【0022】
また,前記第2の処理液に,IPA(イソプロピルアルコール)を混合しても良い。また,前記第2の処理液を,加熱してもよい。このように第2の処理液にIPAを混合したり,第2の処理液を加熱することにより,基板に接触している第1の処理液を円滑に第2の処理液に置換することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば,ウォータマークを発生させず,レジスト膜付きの基板をパターン崩れなしで,安全に処理することができる。その結果,例えば高精度な半導体デバイスの製造技術を実現することができ,歩留まりを向上させることができる。
【0024】
処理槽内において,例えば基板の表面に付着している水滴を外部雰囲気に接触させることなく液中で第2の処理液に置換することができる。また,処理槽の上方で基板に付着した例えば第2の処理液を蒸発させ,あるいは処理槽内で基板に付着した第2の処理液を蒸発させるので,ウォータマークを発生させることなく,基板を乾燥させることができる。また,従来のように可燃性のあるIPA蒸気を用いて基板を乾燥させるのと比較して,危険が少なく,高水準の安全対策,設備が不要となる。
【0025】
第2の処理液に前記基板を接触させた状態に置換した後,基板を乾燥させることにより,第2の処理液蒸発時の水滴付着を防止することができる。本発明によれば,レジスト膜付きの基板を好適に例えば乾燥させることができ,しかも,安全を図ることができる。
【0026】
また,保持手段により保持された基板の周縁部に付着している例えば水滴を外部雰囲気に接触させることなく液中で第2の処理液に置換することができる。
【0027】
また,第2の処理液としてHFEを使用した場合であっても,微小な水滴などが基板の表面に残る心配がなく,ウォーターマークの発生を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下,添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態を説明する。図1は,第1の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置21を備えた洗浄装置1の斜視図である。この洗浄装置1は,キャリアC単位での基板としてウェハWの搬入,ウェハWの洗浄,ウェハWの乾燥,キャリアC単位でのウェハWの搬出までを一貫して行うように構成されている。
【0029】
この洗浄装置1において,搬入・取出部2は,洗浄前のウェハWを25枚収納したキャリアCを搬入しウェハWを洗浄に移行させるまでの動作を行う。即ち,搬入ステージ5に載置されたキャリアCを移送装置6によってローダ7へ例えば2個ずつ搬送し,このローダ7でキャリアCからウェハWを取り出す構成になっている。
【0030】
洗浄乾燥処理部10には,搬入・取出部2側から順に,ウェハWを搬送する搬送装置30のウェハチャック36を洗浄および乾燥するためのウェハチャック洗浄・乾燥装置11,各種の薬液や純水等の洗浄液を用いてウェハWを洗浄する各ウェハ洗浄装置12〜15,搬送装置32のウェハチャック37を洗浄および乾燥するためのウェハチャック洗浄・乾燥装置16,ウェハ洗浄装置17〜19,搬送装置33のウェハチャック33a,33aを洗浄および乾燥するためのウェハチャック洗浄・乾燥装置20,およびウェハ洗浄装置12〜15,17〜19で洗浄されたウェハWに対して,最終リンス洗浄(リンス処理)と,乾燥処理を行うリンス・乾燥装置21が配列されている。さらに洗浄乾燥処理部10の前面側(図1における手前側)には,前述した搬送装置30,31,32,33が配列されている。
【0031】
一般的な洗浄プロセスに従い,薬液洗浄とリンス洗浄とが交互に行えるようにウェハ洗浄装置12,14,17,19は薬液洗浄(薬液処理)を行うように構成され,ウェハ洗浄装置13,15,18はリンス洗浄を行うように構成されている。一例として,ウェハ洗浄装置12では,硫酸成分を主体とした洗浄液であるSPM(HSO/Hの混合液)を用いたSPM洗浄を行って,ウェハWの表面に付着している有機汚染物等の不純物質を除去する。また,ウェハ洗浄装置14では,例えばアンモニア成分を主体とした洗浄液であるAPM(NHOH/H/HOの混合液)を用いたSC1洗浄を行って,ウェハWの表面に付着している有機汚染物,パーティクル等の不純物質を除去する。また,ウェハ洗浄装置17では,塩酸成分を主体とした洗浄液であるHPM(HCl/H/HOの混合液)を用いたSC2洗浄を行って,ウェハWの表面に付着している金属イオン等を除去する。また,ウェハ洗浄装置19では,フッ酸成分を主体とした洗浄液であるDHF(HF/HOの混合液)を用いたDHF洗浄を行って,ウェハWの表面に形成された酸化膜等を除去する。また,ウェハ洗浄装置13,15,18では,純水を用いてウェハWのリンス洗浄を行う。
【0032】
なお,以上の配列や各ウェハ洗浄装置12〜15,17〜19での組合わせは,ウェハWに対する洗浄処理の種類によって任意に組み合わせることができる。例えば,ある洗浄装置を減じたり,逆にさらに他の種類の薬液を用いてウェハWを薬液洗浄するウェハ洗浄装置を付加してもよい。
【0033】
装填・搬出部50は,洗浄乾燥処理部10で洗浄,乾燥された25枚のウェハWをキャリアCに装填後キャリアC単位で搬出する。即ち,アンローダ51によって,洗浄後のウェハWが収納されたキャリアCを,移送装置(図示せず)によって,搬出部52にまで搬送する構成になっている。
【0034】
次に,第1の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置21の構成について説明する。図2に示すように,リンス・乾燥装置21は,ウェハWのリンス洗浄が行われる処理槽60と,該処理槽60の上方に設けられ,ウェハWの乾燥処理が行われる乾燥室61と,ウェハWを保持する保持手段としてウェハガイド62とを備えている。
【0035】
処理槽60は,ウェハWを収納するのに充分な大きさを有する箱形の内槽63と外槽64から構成されている。処理槽60には,第1の処理液として純水(DIW)を供給する第1の処理液供給手段として純水供給回路65が設けられている。
【0036】
純水供給回路65の入口は,純水供給源(図示せず)が接続されている。純水供給回路65には,開閉弁66,流量コントローラ67が順次介装され,純水供給回路65の出口は,内槽63の下方に対をなして配置されたジェットノズル68,68に接続されている。
【0037】
純水供給回路65には,第2の処理液として溶剤を供給する第2の処理液供給手段として溶剤供給回路70が接続されている。この溶剤供給回路70の入口は,溶剤供給源(図示せず)が接続されている。溶剤供給回路70には,開閉弁71,流量コントローラ72が順次介装されている。
【0038】
溶剤には,純水と比重が異なり,かつ疎水性があるものとして,例えばジクロロメタンやHMDS(ヘキサメチルジシラザン)等が用いられる。これらジクロロメタンやHMDSは揮発性を有するが,アルコール等の可燃性成分が含まれていないため,気化しても安全である。また,こられ溶剤には,レジスト膜を溶解させない性質がある。例えばウェハWの表面に所定の回路パターンに沿ってレジスト膜が形成されている場合,このようなウェハWを,このジクロロメタンやHMDS中に浸漬させても,レジスト表面を溶かすがことなく,パターン崩れ等を起こさない。
【0039】
内槽63の底部には,開閉弁80を介して第1の処理液排液手段として純水ドレイン管81が接続され,開閉弁82を介して第2の処理液排液手段として溶剤ドレイン管83が接続されている。また,外槽64の底部には,純水ドレイン管84が接続され,純水ドレイン管84には,三方弁85を介して溶剤ドレイン管86が接続されている。従って,純水ドレイン管81により内槽63内の純水を排液し,三方弁85を純水ドレイン管84側に切り換えて,純水ドレイン管84により外槽内の純水を排液するようになっている。また,溶剤ドレイン管83により内槽63内の溶剤を排液し,三方弁85を溶剤ドレイン管86側に切り換えて,溶剤ドレイン管86により外槽64内の溶剤を排液するようになっている。
【0040】
乾燥室61には,乾燥ガスとして常温のN(窒素)ガス又はホットNガスを供給するガス供給手段としてNガス供給回路90が設けられている。
【0041】
ガス供給回路90の入口は,例えば常温のNガスを供給するNガス供給源(図示せず)が接続されている。Nガス供給回路90には,開閉弁91,流量コントローラ92,Nガスを加熱するヒータ93が順次介装され,Nガス供給回路90の出口は,乾燥室61の上方に対をなして配置されたガスノズル94,94に接続されている。なお,ヒータ93を迂回させて常温のNガスを乾燥室61に供給できるように,Nガス供給回路90にバイパス回路95が図示の如く接続されている。バイパス回路95には,開閉弁96,流量コントローラ97が順次介装されている。
【0042】
乾燥室61の側壁には,室内雰囲気を排気するための排気管98が接続されている。排気管98には,流量調整弁99が介装されており,排気管98の排気量を自在に調整にする。また,乾燥室61の上面に形成された搬入出口61aを開閉する蓋体100が設けられている。この蓋体100は,図示しない移動機構により昇降及び水平方向に移動自在である。
【0043】
図3に示すように,リンス・乾燥装置21には,ウェハガイド62が設けられている。ウェハガイド62は,図示しない昇降機構により,上下方向(図3中のZ方向)に昇降自在に構成されている。ウェハガイド62は,シャフト部105と,ガイド部106と,ガイド部106に水平姿勢で固着された3本の平行な保持部材107a,107b,107cとを備えている。各保持部材107a〜cに,ウェハWの周縁下部を保持する溝108が等間隔で50箇所形成されている。従って,ウェハガイド62は,50枚のウェハWを等間隔で配列させた状態で保持し,処理槽60内と乾燥室61との間で昇降させるように構成されている。
【0044】
次に,以上のように構成されたリンス・乾燥装置21で行われる本発明の実施の形態にかかる処理について,洗浄装置1で行われる洗浄処理に沿って説明する。まず,図示しない搬送ロボットが未だ洗浄されていないウェハWを例えば25枚ずつ収納したキャリアCを搬入・取出部2の搬入ステージ5に複数載置する。そして,この搬入・取出部2によって,例えばキャリアC2個分の50枚のウェハWをキャリアCから取り出し,搬送装置30が,ウェハWを50枚単位で一括して把持する。そして,それらウェハWを搬送装置31,32,33に引きつきながら,各ウェハ洗浄装置12〜15,17〜19に順次搬送する。こうして,ウェハWの表面に付着しているパーティクル等の不純物質を除去する洗浄を行う。最後に,リンス・乾燥装置21において,最終リンス洗浄,乾燥処理を行い,
装填・搬出部50を介してキャリアC単位で装置外に搬出する。
【0045】
ここで,リンス・乾燥装置21の処理について,図4に示すフローチャート及び図5〜図10に示す第1〜第6の工程説明図に基づいて説明する。なお,溶剤には,例えば純水よりも比重が重く,かつ疎水性があって純水と混合し難いジクロロメタン(液体)を例にとって説明する。
【0046】
先ず蓋体100が開いて搬入出口61aを開放させると共に,ウェハガイド62が乾燥室61に上昇する。搬送装置33が,ウェハ洗浄装置19でDHF洗浄が行われたウェハWをリンス・乾燥装置21内に搬入し,ウェハガイド62に受け渡す。一方,図2に示したように,開閉弁66が開き,純水供給回路65からの純水をジェットノズル68を通して処理槽60内に供給して充填する(図5)。
【0047】
次いで,蓋体100が閉まると共に,ウェハガイド62が下降してウェハWを処理槽60内に収納する。図6に示すように,純水中にウェハWを浸漬させて最終リンス洗浄を行う(図4中のS1)。
【0048】
最終リンス洗浄後,開閉弁66が閉じると共に,開閉弁71が開き,図7に示すように,溶剤供給回路70によりジクロロメタンを内槽63内に供給する(図4中のS2)。ジクロロメタンは,前述したように純水よりも比重が重いため,処理槽60の底部に沈んで溜まっていく。一方,ジクロロメタンの供給に合わせて処理槽60の上部から純水を徐々に排液し,内槽63内に,純水層とジクロロメタン層を形成する。ジクロロメタンが溜まってジクロロメタン層を厚くする一方で,内槽63内から純水を追い出して純水層を薄くしていく。図8に示すように,内槽63内に充填される液をジクロロメタンに全て置換する。このように,純水中にウェハWを浸漬させた状態からジクロロメタン中に浸漬させた状態にする(図4中のS3)。従って,ウェハWの表面に付着している水滴を外部雰囲気(空気等)に接触させることなく液中でジクロロメタンに置換することができる。さらにウェハガイド62の表面や,溝108の内周面及び溝108に保持されたウェハWの周縁下部等の細部に渡る部分に付着している水滴も容易にジクロロメタンに置換することができる。また,Nガス供給回路90により常温のNガス又はホットN(窒素)ガスを供給し,乾燥室61内を不活性雰囲気にする。また,排気管98を通して排気行い,乾燥室61内を常に新鮮な不活性雰囲気に置換しても良い。
【0049】
置換後,図9に示すように,ウェハガイド62を上昇させる(図4中のS4)。ジクロロメタン中からウェハWを引き上げN雰囲気に曝しながら乾燥室61内に導入する。ウェハWの表面に付着したジクロロメタンを自然蒸発させてウェハWを乾燥させる。さらに図10に示すように,常温のNガス又はホットNガスをウェハWの表面に吐出すると良い(図4中のS5)。これにより,ジクロロメタンの蒸発が進み,乾燥を促進させることができる。乾燥後,常温のNガス又はホットNガスの吐出が停止する。そして,蓋体100が開き,装填・搬出部50の移送装置が,リンス・乾燥装置21内からウェハWを搬出する。
【0050】
かかるリンス・乾燥装置21によれば,空気に触れることなく,液中でウェハWの表面に付着している水滴をジクロロメタンに置換し,その後にジクロロメタンが付着したウェハWを乾燥室61内に収納するので,ウォータマークを発生させることなく,ウェハWを乾燥させることができる。従って,ウォータマークによる自然酸化膜の形成を防ぎ,ウェハWの表面に製造された半導体デバイスの不具合を低減することができる。
【0051】
ジクロロメタンは,レジスト膜を溶解させないので,レジスト膜付きのウェハWを好適に乾燥することができる。その結果,パターン崩れを防止し,半導体デバイスの不具合を低減することができる。また,ジクロロメタンには,アルコールのような可燃性成分が含まれておらず,さらに例えば常温の液化された状態で処理槽60内に供給されるので,従来のように可燃性のあるIPA蒸気を用いてウェハWを乾燥させるのと比較して,危険が少なく,高水準の安全対策,設備が不要となる。
【0052】
ジクロロメタンの気化熱が大きいと,ジクロロメタンが蒸発する際にウェハWから熱を奪い,ウェハWの表面温度が下がる。そうなると,雰囲気中の蒸気が結露してウェハWの表面に水滴が付着するおそれがある。しかしながら,このリンス・乾燥装置21によれば,乾燥室61(処理槽60の上方)をN雰囲気で満たし,雰囲気中に蒸気が含まれないようにすることで,ジクロロメタン蒸発時の水滴付着を防止することができる。
【0053】
通常では乾燥が難しい,溝108の内周面や溝108に保持されたウェハWの周縁下部のような細部に渡る部分の表面も,水滴からジクロロメタンに置換している。このため,ウェハWを乾燥室61内に上昇させた際には,ジクロロメタンを蒸発させ,ウェハWの周縁下部等を容易に乾燥させることができる。また,単にウェハWをジクロロメタン中から引き上げているだけで済むので,従来のように純水中からIPA雰囲気中にゆくっりとウェハWを引き上げてマランゴニ効果により水滴を除去する場合に比べて,ウェハWの上昇時間を短縮することができる。
【0054】
次に,第2の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置110について説明する。前記リンス・乾燥装置21は,乾燥室61内でウェハWにホットNガスを供給するように構成されている。このリンス・乾燥装置110は,処理槽60内でウェハWにホットNガスを供給するように構成されている。即ち,図11に示すように,前記ガスノズル94,94が,処理槽60の上方に対をなして配置されている。なお,ガスノズル94,94の配置以外は,先に説明したリンス・乾燥装置21と同一の構成であるので,図2及び図11において,同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0055】
かかるリンス・乾燥装置110の処理について,図12に示すフローチャート及び図13〜図15に示す第1〜第3の工程説明図に基づいて説明する。なお,溶剤には,先と同様にジクロロメタンを使用する。
【0056】
先ず,ウェハWを搬入してから図13に示すようにウェハWをジクロロメタンに浸漬させるまでは,先のリンス・乾燥装置21と同様の工程が行われる(図12中のS1〜3)。また,ガスノズル94,94からホットNガスを吐出させて,処理槽60の周囲をN雰囲気にする。次いで,図14に示すように,内槽63内からジクロロメタンを排液する(図12中のS4)。ジクロロメタンの液面が下がるにつれて,ウェハWが露出していく。露出したウェハWの表面に付着しているジクロロメタンは,自然蒸発する。図15に示すように,内槽63内からジクロロメタンを殆ど排液する。また,ウェハWにホットNガスを供給して乾燥を促進させても良い(図12中のS5)。その後,ウェハガイド62を上昇させてウェハWの搬出を行う。
【0057】
かかるリンス・乾燥装置110によれば,前記リンス・乾燥装置21と同様に,ウォータマークを発生させず,レジスト膜付きの基板をパターン崩れなしで,安全に乾燥処理することができる。また,ウェハWの周縁下部等を容易に乾燥させることができる。
【0058】
次に,第3の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置120について説明する。前記リンス・乾燥装置21,110は,何れも純水よりも比重が重い溶剤を供給するように構成されていたが,このリンス・乾燥装置120は,純水よりも比重が軽い溶剤を供給するように構成されている。この溶剤は,純水よりも比重が軽い以外は,前記ジクロロメタンと同様に不可燃性であると共に,レジスト膜を溶解させない性質を有する。
【0059】
即ち,図16に示すように,処理槽121は,内槽122と,外槽123とを備えている。処理槽121の上部には,溶剤ノズル124,124が対をなして配置されている。これら溶剤ノズル124,124に,溶剤供給回路125が接続されている。溶剤供給回路125の入口は,溶剤供給源(図示せず)が接続され,溶剤供給回路125には,開閉弁126,流量コントローラ127が順次介装されている。なお,処理槽121の上部に溶剤ノズル124,124を設けた点を除けば,先に説明したリンス・乾燥装置21と同一の構成であるので,図2及び図16において,同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0060】
かかるリンス・乾燥装置120の処理について,図17〜図20に示す第1〜第4の工程説明図に基づいて説明する。処理の流れは基本的には先のリンス・乾燥装置21と同様なので,先の図4に示すフローチャートを使用する。
【0061】
先ず,ウェハWを搬入してから図17に示すようにウェハWを純水中に浸漬させるまでは,先のリンス・乾燥装置21と同様の工程が行われる。最終リンス洗浄後,開閉弁126が開き,図18に示すように,溶剤供給回路125により溶剤を内槽122内に供給する(図4中のS2)。溶剤は,前述したように純水よりも比重が軽いため,処理槽121の上部に浮かぶ。一方,溶剤の供給に合わせて内槽122内から純水を処理槽121下部の純水ドレイン管81より徐々に排液し,内槽122内に純水層と溶剤層を形成する。この場合,単位時間当たりの溶剤の供給量と純水の排液量は同一とすることが好ましい。溶剤が溜まって溶剤層を厚くする一方で,内槽122内から純水を追い出して純水層を薄くしていく。図19に示すように,内槽122内に充填される液を溶剤に全て置換し,ウェハWを溶剤中に浸漬させる(図4中のS3)。このように,溶剤が純水の比重よりも軽い場合でも,ウェハWの表面に付着している水滴を外部雰囲気に接触させることなく液中で溶剤に置換することができる。置換後,図20に示すように,ウェハガイド62を上昇させ(図4中のS4),ウェハWの表面に付着した溶剤を自然蒸発させ,常温のNガス又はホットNガスをウェハWの表面に吐出する(図4中のS5)。
【0062】
かかるリンス・乾燥装置120によれば,前記リンス・乾燥装置21,110と同様の作用・効果を得ることができる。
【0063】
また,リンス・乾燥装置120では,処理槽121内から純水を全て排液しなくても,溶剤中にウェハWを浸漬させることが可能である。即ち,図19の工程を図21の工程に代える。図21に示すように,溶剤を処理槽121内に供給すると共に,純水を排液し,ウェハW及びウェハガイド62を十分に浸漬できる程度に溶剤層を形成する。ウェハガイド62を上昇させてウェハWを溶剤層中に浸漬させる。これによっても,ウェハWの表面に付着している水滴を外部雰囲気に接触させることなく液中で溶剤に置換することができる。また,ウェハWを静止させて溶剤中に浸漬させなくても良い。即ち,溶剤層を形成すると共に,ウェハWを処理槽60内から引き上げて,このときに溶剤層中に通すことでも,純水にウェハWを接触させた状態から溶剤にウェハWを接触させた状態に置換することができる。
【0064】
次に,第4の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置140について説明する。このリンス・乾燥装置140は,純水よりも比重が軽い溶剤を供給すると共に,処理槽121内でウェハWに常温のNガス又はホットNガスを供給するように構成されている。即ち,図22に示すように,前記ガスノズル94,94が,処理槽121の上方に対をなして配置されている。
【0065】
かかるリンス・乾燥装置140の処理については,先のリンス・乾燥装置110で図13〜図15に基づいて説明した工程と基本的に同様である。即ち,先ず,ウェハWを溶剤中に浸漬させた後,内槽122内から溶剤を排液し,処理槽121内でウェハWに常温のNガス又はホットNガスを供給する。かかるリンス・乾燥装置140によれば,前記リンス・乾燥装置21,110,120と同様の作用・効果を得ることができる。
【0066】
なお,純水よりも比重が重く,かつ疎水性があり,レジスト膜を溶解させない処理液として先に例示したジクロロメタンやHMDSの他の例として,HFE(ハイドロフルオロエーテル)がある。市販のHFEとしては,例えば住友スリーエム(株)製のHFE−7100が知られている。この市販のHFE(住友スリーエム(株)製のHFE−7100等)を,例えば先に説明した本発明の第1の実施の形態と同様に,内槽63内に供給して,内槽63内に純水層とHFE層を形成した場合,ウェハWの表面では,HFEと純水の界面の状態は図23に示すようになる。即ち,ウェハWの表面では,HFEと純水の界面が下がり,HFE側に純水が入り込むような接触状態となる。
【0067】
仮にこのままの状態でHFEを内槽63内にさらに供給して,HFEと純水の界面を上昇させていくと,内槽63内に充填された液をHFEに全て置換した状態においても,微少な純水がウェハWの表面上に残るおそれがある,即ち,図23に示すように,ウェハWの表面においてHFE側に純水が入り込むような界面の状態となるので,ウェハWの表面に付着していた純水が引き込まれ,HFEに置換されずに微小な純水が残り,ウェハWを乾燥させた際に,純水が残った部分にウォーターマークなどが残る可能性がある。
【0068】
この問題を解決するためには,図24に示すように,ウェハWの表面において純水側にHFEが入り込むような界面の状態として,純水がHFE側に引き込まれ難くすることが有効であると考えられる。そこで,純水側にHFEが入り込むような界面を形成させるものとして,次に,本発明の第5,6の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置150,160について説明する。
【0069】
図25は,本発明の第5の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置150の配管系統図である。このリンス・乾燥装置150では,溶剤供給回路70に,IPA(イソプロピルアルコール)を供給するためのIPA供給回路151が接続されている。このIPA供給回路151の入口には,IPA溶剤供給源(図示せず)が接続されている。IPA供給回路151には,開閉弁152,流量コントローラ153が順次介装されている。なお,IPA供給回路151を設けた点を除けば,先に説明したリンス・乾燥装置21と同一の構成であるので,図2及び図25において,同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0070】
かかるリンス・乾燥装置150の処理については,先のリンス・乾燥装置21について図4及び図5〜図10に基づいて説明した工程と基本的に同様である。但し,溶剤には,先の場合と異なり,HFE(例えば住友スリーエム(株)製のHFE−7100)を使用する。
【0071】
先ず純水中にウェハWを浸漬させて最終リンス洗浄を行い,リンス洗浄後,溶剤供給回路70によりHFEを内槽63内に供給する。その際,溶剤供給回路70に設けたIPA供給回路151からIPAを適当量供給し,HFE中にIPAを混ぜる。HFEが処理槽60の底部に沈んで溜まっていく一方で,処理槽60の上部から純水が徐々に排液され,内槽63内に,純水層とHFE層が形成される。
【0072】
この場合,HFE中にIPAが少量混ぜられていることにより,純水とHFEとの界面において薄いIPA膜ができて,ウェハWに対する接触角(界面の接触角)が変化し,先に図24で説明したように,ウェハWの表面において純水側にHFEが入り込むような界面を形成できる。つまり,純水の界面が図24のように上側(内槽63内の純水をHFEに置換していく過程において純水とHFEとの界面が移動していく方向)に傾斜した状態となる。これにより,純水がHFE側に引き込まれ難い状態を作ることができる。そして,内槽63内をHFEに置換した後,ウェハWを引き上げて乾燥させる。
【0073】
このリンス・乾燥装置150によれば,溶剤としてHFEを使用した場合であっても,ウェハWに接触している純水を円滑にHFEに置換でき,微小な水滴がウェハWの表面に残る心配がなく,ウォーターマークの発生を効果的に防止できる。
【0074】
次に図26は,本発明の第6の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置160の配管系統図である。このリンス・乾燥装置160では,溶剤供給回路70に,溶剤を加熱するためのヒータ161が設けてある。なお,ヒータ161を設けた点を除けば,先に説明したリンス・乾燥装置21と同一の構成であるので,図2及び図26において,同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0075】
かかるリンス・乾燥装置160の処理についても,先のリンス・乾燥装置21について図4及び図5〜図10に基づいて説明した工程と基本的に同様である。なお,溶剤には,HFE(例えば住友スリーエム(株)製のHFE−7100)を使用する。
【0076】
先ず純水中にウェハWを浸漬させて最終リンス洗浄を行い,リンス洗浄後,溶剤供給回路70によりHFEを内槽63内に供給する。その際,溶剤供給回路70に設けたヒータ161によりHFEを加熱する。HFEが処理槽60の底部に沈んで溜まっていく一方で,処理槽60の上部から純水が徐々に排液され,内槽63内に,純水層とHFE層が形成される。
【0077】
HFEが昇温されていることにより,この場合も,ウェハWに対する接触角(純水とHFEとの界面の接触角)が変化し,先に図24で説明したように,ウェハWの表面において純水側にHFEが入り込むような界面が形成され,つまり,純水の界面が図24のように上側(内槽63内の純水をHFEに置換していく過程において純水とHFEとの界面が移動していく方向)に傾斜した状態となり,純水がHFE側に引き込まれ難い状態を作ることができる。そして,内槽63内をHFEに置換した後,ウェハWを引き上げて乾燥させる。
【0078】
このリンス・乾燥装置160によっても,ウェハWに接触している純水を円滑にHFEに置換でき,溶剤としてHFEを使用しても,微小な水滴がウェハWの表面に残る心配がなく,ウォーターマークの発生を効果的に防止できる。
【0079】
なお,本発明の実施の形態をいくつか説明したが,本発明は以上に説明した例に限らず種々の形態を取りうるものである。例えば前記リンス・乾燥装置21,110,150,160では,処理槽60の下部からジクロロメタン(純水より比重が重い溶剤)を供給していたが,処理槽60の上部から供給するようにしても良い。さらに前記リンス・乾燥装置120,140では,処理槽121の上部から純水より比重が軽い溶剤を供給していたが,処理槽121の下部から比重が軽い溶剤を供給しても良い。また,リンス・乾燥装置21,110,120,140,150,160は,純水によるリンス洗浄だけでなく,フッ酸等の薬液を用いた薬液洗浄も行える,いわゆるワンバス方式の装置として構成しても良い。そうすれば,処理槽60内で薬液洗浄とリンス洗浄を連続して行うことが可能となり,フットプリントの節約やスループットの向上等を図ることができる。
【0080】
本発明は,複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の処理だけでなく,一枚ずつ基板を処理する枚葉式の処理の場合にも適用することができる。また,基板が,上記ウェハWに限定されずにLCD基板,CD基板,プリント基板,セラミック基板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置を備えた洗浄装置の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置の配管系統図である。
【図3】ウェハガイドの斜視図である。
【図4】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理のフローチャートである。
【図5】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第1の工程説明図である。
【図6】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第2の工程説明図である。
【図7】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第3の工程説明図である。
【図8】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第4の工程説明図である。
【図9】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第5の工程説明図である。
【図10】図2のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第6の工程説明図である。
【図11】第2の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置の配管系統図である。
【図12】図11のリンス・乾燥装置で行われる処理のフローチャートである。
【図13】図11のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第1の工程説明図である。
【図14】図11のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第2の工程説明図である。
【図15】図11のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第3の工程説明図である。
【図16】第3の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置の配管系統図である。
【図17】図16のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第1の工程説明図である。
【図18】図16のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第2の工程説明図である。
【図19】図16のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第3の工程説明図である。
【図20】図16のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する第4の工程説明図である。
【図21】図16のリンス・乾燥装置で行われる処理を説明する他の第3の工程説明図である。
【図22】第4の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置の配管系統図である。
【図23】第2の処理液としてHFEを使用した場合の解決課題の説明図である。
【図24】第2の処理液としてHFEを使用した場合の解決課題を解決した場合の説明図である。
【図25】第5の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置の配管系統図である。
【図26】第6の実施の形態にかかるリンス・乾燥装置の配管系統図である。
【符号の説明】
【0082】
1 洗浄装置
21 リンス・乾燥装置
60 処理槽
61 乾燥室
62 ウェハガイド
65 純水供給回路
70 溶剤供給回路
90 Nガス供給回路
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が充填される処理槽と、
前記処理槽の上方に設けられた乾燥室と、
前記処理槽内と前記乾燥室とに基板を昇降させる保持手段と,
前記処理槽の下部から処理液を供給する処理液供給手段と,
前記処理槽の上部から処理液を排液する処理液排液手段とを備え,
前記処理液供給手段により、前記処理槽内に第1の処理液を供給して、前記処理槽内において第1の処理液中に基板を浸漬させた後、
前記処理液供給手段により、前記処理槽内に第1の処理液よりも比重が重い第2の処理液を供給しつつ、前記処理液排液手段により、前記処理槽内から第1の処理液を排液して、前記処理槽内の第1の処理液を第2の処理液に置換し、前記処理槽内において第2の処理液中に基板を浸漬させ、
その後、前記保持手段により、前記処理槽内から前記乾燥室に基板を引き上げることを特徴とする,基板処理装置。
【請求項2】
第1の処理液は、純水からなることを特徴とする,請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
第2の処理液は、ジクロロメタン、ヘキサメチルジシラザン、ハイドロフルオロエーテルのいずれかからなることを特徴とする,請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
処理槽内で少なくとも第1の処理液と第2の処理液を用いて基板を処理する方法であって,
前記処理槽の下部から第1の処理液を供給して、前記処理槽内において第1の処理液中に基板を浸漬させて処理する工程と、
前記処理槽の下部から第1の処理液よりも比重が重い第2の処理液を供給しつつ、前記処理槽の上部から第1の処理液を排液して、前記処理槽内の第1の処理液を第2の処理液に置換し、前記処理槽内において第2の処理液中に基板を浸漬させて処理する工程と、
前記処理槽内から前記処理槽の上方に設けられた乾燥室に基板を引き上げる工程を有することを特徴とする,基板処理方法。
【請求項5】
前記処理槽内の第1の処理液を第2の処理液に置換するに際し、前記処理槽内に第1の処理液層と第2の処理液層を形成させることを特徴とする,請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
第1処理液は、純水からなることを特徴とする,請求項4または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
第2処理液は、ジクロロメタン、ヘキサメチルジシラザン、ハイドロフルオロエーテルのいずれかからなることを特徴とする,請求項4〜6のいずれかに記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−103769(P2008−103769A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6140(P2008−6140)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2001−142929(P2001−142929)の分割
【原出願日】平成13年5月14日(2001.5.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】