説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板を搬送しつつ加熱する基板処理装置および基板処理方法において、基板の熱均一性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】基板の前端面が高温加熱プレート10の上流側端部を通過するときに、基板を高速で搬送する。その後、基板を低速で搬送し、基板の後端面が高温加熱プレート10の下流側端部を通過するときに、再び基板を高速で搬送する。基板の前端面および後端面は、高温加熱プレート10の上流側端部および下流側端部を、それぞれ迅速に通過する。このため、高温加熱プレート10から基板の前端面および後端面に与えられる熱量が、抑制される。その結果、基板の熱均一性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送しつつ加熱する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用ガラス基板、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ用基板、半導体ウエハ、PDP用ガラス基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルタ用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板などの精密電子装置用基板の製造工程では、基板に対する加熱処理が適宜に行われる。例えば、基板のフォトリソグラフィ工程では、基板の表面にレジスト液が塗布された後、基板の表面とレジストとの密着性を向上させるために、基板に対して加熱処理が行われる。
【0003】
このような加熱処理に使用される従来の基板処理装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−16543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の段落0066〜0093には、ヒータを有する複数のプレートと、プレートの上面に沿って基板を搬送する搬送機構と、を備えた基板処理装置が、記載されている。当該基板処理装置は、複数のプレートの上面に沿って基板を搬送しつつ、プレートからの熱で基板を加熱している。
【0006】
しかしながら、このように、基板を搬送しつつ加熱する基板処理装置では、基板の前端部(搬送方向下流側の端部)付近および後端部(搬送方向上流側の端部)付近は、基板の他の部位より、加熱されやすい。これは、基板の前端部付近および後端部付近は、基板の下面からだけではなく、前端面または後端面からも熱を受けるためである。したがって、一定温度のプレート上において、基板を一定速度で搬送すると、基板の前端部付近および後端部付近の温度が、他の部分の温度より、高くなる傾向がある。
【0007】
このような温度のムラを抑制するためには、基板の前端部付近及び後端部付近に与えられる熱量を、低減させることが好ましい。しかしながら、基板の前端部付近および後端部付近が通過する時にのみ、一時的にプレートの温度を下げるのは、プレート自体の加熱・冷却に高い応答性が必要となるため、困難である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、基板を搬送しつつ加熱する基板処理装置および基板処理方法において、基板の熱均一性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、上流側から下流側へ基板を搬送しつつ加熱する基板処理装置であって、基板に熱を与える加熱部と、前記加熱部に沿って基板を搬送する搬送手段と、を備え、前記搬送手段は、基板の搬送速度を、第1速度と、前記第1速度より速い第2速度との、少なくとも2段階に切り替え可能であり、少なくとも、基板の前端部が前記加熱部の所定の加熱領域の上流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の基板処理装置であって、前記搬送手段は、基板の前端部が前記加熱領域の上流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の基板処理装置であって、前記搬送手段は、さらに、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する。
【0012】
本願の第4発明は、第3発明の基板処理装置であって、前記搬送手段は、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替える。
【0013】
本願の第5発明は、第3発明または第4発明の基板処理装置であって、前記搬送手段は、基板の前端部が、前記加熱領域の上流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替え、基板の後端部が、前記加熱領域の下流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える。
【0014】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれかの基板処理装置であって、前記加熱部は、平板状の高温加熱プレートと、前記高温プレートより下流側に配置されて、前記高温加熱プレートより温度の低い平板状の低温加熱プレートと、を含み、前記加熱領域は、前記高温加熱プレートである。
【0015】
本願の第7発明は、基板の搬送速度を、第1速度と、前記第1速度より速い第2速度との、少なくとも2段階に切り替えつつ、加熱部に沿って上流側から下流側へ基板を搬送することにより、基板を加熱する基板処理方法であって、少なくとも、基板の前端部が前記加熱部の所定の加熱領域の上流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する。
【0016】
本願の第8発明は、第7発明の基板処理方法であって、基板の前端部が前記加熱領域の上流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える。
【0017】
本願の第9発明は、第7発明または第8発明の基板処理方法であって、さらに、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する。
【0018】
本願の第10発明は、第9発明の基板処理方法であって、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替える。
【0019】
本願の第11発明は、第9発明または第10発明の基板処理方法であって、基板の前端部が、前記加熱領域の上流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替え、基板の後端部が、前記加熱領域の下流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える。
【0020】
本願の第12発明は、第7発明から第11発明までのいずれかの基板処理方法であって、前記加熱部は、平板状の高温加熱プレートと、前記高温プレートより下流側に配置されて、前記高温加熱プレートより温度の低い平板状の低温加熱プレートと、を含み、前記加熱領域は、前記高温加熱プレートである。
【発明の効果】
【0021】
本願の第1発明〜第12発明によれば、基板の前端部が、加熱領域の上流側端部を迅速に通過する。このため、加熱領域から基板の前端部に与えられる熱量が、抑制される。その結果、基板の熱均一性が向上する。
【0022】
特に、本願の第2発明または第8発明によれば、基板の前端部が、加熱領域の上流側端部に、迅速に接近する。このため、加熱領域から基板の前端部に与えられる熱量が、さらに抑制される。その結果、基板の熱均一性が、さらに向上する。
【0023】
特に、本願の第3発明または第9発明によれば、基板の後端部が、加熱領域の下流側端部を迅速に通過する。このため、加熱領域から基板の後端部に与えられる熱量が、抑制される。その結果、基板の熱均一性がさらに向上する。
【0024】
特に、本願の第4発明または第10発明によれば、基板の後端部が、加熱領域の下流側端部から、迅速に離れる。このため、加熱領域から基板の後端部に与えられる熱量が、さらに抑制される。その結果、基板の熱均一性が、さらに向上する。
【0025】
特に、本願の第5発明または第11発明によれば、基板の前端部が、加熱領域の上流側端部より所定の距離下流側の位置に到達した後、基板の後端部が、加熱領域の下流側端部より所定の距離上流側の位置に到達するまでの間は、第1速度で基板が搬送される。このため、基板の前端部付近および後端部付近以外の部分が、十分に加熱される。その結果、基板の熱均一性が、さらに向上する。
【0026】
特に、本願の第6発明または第12発明によれば、高温加熱プレートで基板を急速に加熱した後、低温加熱プレートで基板を高温に維持する。これにより、基板の熱均一性が、さらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】基板処理装置の斜視図である。
【図2】基板処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】基板の搬送速度の変化を示したグラフである。
【図4】時刻t1における基板処理装置の部分側面図である。
【図5】時刻t2における基板処理装置の部分側面図である。
【図6】時刻t3における基板処理装置の部分側面図である。
【図7】時刻t4における基板処理装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、基板9が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に直交する水平方向を「幅方向」と称する。
【0029】
<1.基板処理装置の構成について>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の斜視図である。この基板処理装置1は、液晶表示装置用の矩形のガラス基板9(以下、単に「基板9」という)の表面を選択的にエッチングするフォトリソグラフィ工程において、レジスト塗布後の基板9に加熱処理を行うための装置である。基板処理装置1は、所定の搬送方向に沿って上流側から下流側へ基板9を搬送しつつ、基板9を加熱する。
【0030】
図1に示すように、基板処理装置1は、1枚の高温加熱プレート10と、3枚の低温加熱プレート20,30,40と、を備えている。高温加熱プレート10および低温加熱プレート20,30,40は、搬送方向に沿って、上流側からこの順に1列に配置されている。
【0031】
これらの加熱プレート10,20,30,40は、いずれも幅方向に長い矩形の平板状に形成されている。各加熱プレート10,20,30,40の内部には、薄板状のヒータ11,21,31,41が、それぞれ埋設されている。ヒータ11,21,31,41に通電すると、ヒータ11,21,31,41の発熱によって、各加熱プレート10,20,30,40の温度が上昇する。各加熱プレート10,20,30,40の上面に沿って搬送される基板9は、各加熱プレート10,20,30,40の上面からの輻射熱および対流熱を受けて、加熱される。
【0032】
高温加熱プレート10は、基板9を加熱して、基板9の温度を、目標とする温度に近い温度まで、急速に上昇させる役割を果たす。高温加熱プレート10の上面の温度は、目標とする基板9の温度より高い温度に、設定されている。例えば、高温加熱プレート10の上面の温度は、目標とする基板9の摂氏温度の1.5〜3倍の摂氏温度に、設定されている。
【0033】
3枚の低温加熱プレート20,30,40は、高温加熱プレート10の搬送方向下流側に、配置されている。低温加熱プレート20,30,40は、基板9を加熱するとともに、基板9の温度を、目標とする温度に維持する役割を果たす。低温加熱プレート20,30,40の上面の温度は、高温加熱プレート10の上面の温度より低い温度に、設定されている。例えば、低温加熱プレート20,30,40の上面の温度は、目標とする基板9の摂氏温度の1〜1.3倍の摂氏温度に、設定されている。
【0034】
すなわち、本実施形態の基板処理装置1は、4枚の加熱プレート10,20,30,40により構成された加熱部を有している。そして、高温加熱プレート10が、基板9を急速に加熱する加熱領域を構成し、低温加熱プレート20,30,40が、基板9の温度を安定的に維持する加熱領域を構成している。
【0035】
高温加熱プレート10および低温加熱プレート20,30,40の上面には、複数の駆動ローラ51が、幅方向および長手方向に間隔をあけて、配置されている。駆動ローラ51は、各加熱プレート10,20,30,40の上面に設けられた凹部または貫通孔の内部に、部分的に収容されている。駆動ローラ51の上端部は、各加熱プレート10,20,30,40の上面より上方に、突出している。また、駆動ローラ51の回転軸(図示省略)は、加熱プレート10,20,30,40の内部または下方において、幅方向に延びている。
【0036】
また、高温加熱プレート10の搬送方向上流側には、複数の搬入ローラ52が、幅方向および長手方向に間隔をあけて、配置されている。本実施形態では、4つの搬入ローラ52が、幅方向に延びる共通の回転軸53に、固定されている。そして、当該搬入ローラ52の列が、搬送方向に複数配列されている。搬入ローラ52の上端部の高さ位置は、駆動ローラ51の上端部の高さ位置と、ほぼ同等に設定されている。
【0037】
駆動ローラ51の回転軸および搬入ローラ52の回転軸53は、ギア等の動力伝達機構を介して、動力源であるモータ54に、接続されている。また、図1に概念的に示したように、モータ54は、制御部55と電気的に接続されている。制御部55は、CPUやメモリを有するコンピュータにより、構成されている。制御部55は、モータ54を電気的に制御することにより、モータ54のオンオフの切り替えや、モータ54の回転数の制御を、行うことができる。
【0038】
制御部55の指令によりモータ54を動作させると、モータ54から発生する動力によって、複数の駆動ローラ51および複数の搬入ローラ52は、同じ方向に回転する。駆動ローラ51または搬入ローラ52上に載置された基板9は、これらのローラ51,52の回転により、搬送方向に沿って上流側から下流側へ、搬送される。
【0039】
すなわち、本実施形態では、駆動ローラ51、搬入ローラ52、各ローラの回転軸、動力伝達機構、モータ54、および制御部55が、高温加熱プレート10および低温加熱プレート20,30,40の上面に沿って基板9を搬送する搬送手段を、構成している。
【0040】
本実施形態の制御部55は、モータ54の駆動時の回転数を、第1回転数と、第1回転数より高い第2回転数との2段階に、切り替えることができる。モータ54を第1回転数で回転させると、基板9は、第1速度v1で搬送される。また、モータ54を第2回転数で回転させると、基板9は、第1速度v1より速い第2速度v2で搬送される。基板9の処理を行うときには、制御部55が、あらかじめ設定されたプログラムやデータに従って、モータ54の回転数を切り替えつつ、モータ54を動作させて、基板9を搬送する。
【0041】
<2.基板処理装置における処理について>
続いて、上記の基板処理装置1における基板処理の流れについて、図2〜図7を参照しつつ、説明する。図2は、基板処理装置1における基板処理の流れを示したフローチャートである。図3は、基板9の搬送速度の変化を示したグラフである。図4〜図7は、それぞれ、時刻t1,t2,t3,t4における基板処理装置1の部分側面図である。
【0042】
前工程の処理を終え、本装置1に搬入された基板9は、まず、搬入ローラ52により搬送される(ステップS1)。具体的には、モータ54を動作させて、複数の搬入ローラ52を回転させる。これにより、搬入ローラ52上の基板9が、搬送方向下流側へ向けて、搬送される。図3に示すように、本実施形態のステップS1では、基板9は、第1速度v1で搬送される。
【0043】
時刻t1になると、図4のように、基板9の前端面(搬送方向下流側の端面)9aが、高温加熱プレート10の上流側端部10aより所定の距離d1だけ搬送方向上流側の位置P1に、到達する。基板9の前端面9aと高温加熱プレート10の上流側端部10aとの距離が、距離d1より小さくなると、基板9の前端面9aは、高温加熱プレート10から無視できない程度の熱的影響を受ける。この距離d1は、実験やシミュレーションにより、予め設定される。
【0044】
時刻t1において、制御部55は、モータ54の回転数を、第1回転数から第2回転数に上昇させる。これにより、基板9の搬送速度が、第1速度v1から第2速度v2に変更される(ステップS2)。
【0045】
続いて、時刻t1から時刻t2にかけて、基板9の前端面9aは、高温加熱プレート10の上流側端部10aの近傍を、第2速度v2で通過する(ステップS3)。このように、本実施形態では、基板9の前端面9aが高温加熱プレート10の上流側端部10aの付近を通過するときに、第2速度v2で基板9を搬送する。基板9の前端面9aは、高温加熱プレート10の上流側端部10aに迅速に接近するとともに、上流側端部10aを迅速に通過する。このため、高温加熱プレート10から基板9の前端面9a付近に与えられる熱量が、抑制される。その結果、基板9の熱均一性を向上させることができる。
【0046】
時刻t2になると、図5のように、基板9の前端面9aは、高温加熱プレート10の上流側端部10aより所定の距離d2だけ搬送方向下流側の位置P2に、到達する。基板9の前端面9aが位置P2を通過すると、基板9の前端面9a付近の加熱を抑えたい部分91aの全体が、高温加熱プレート10上に配置される。このため、基板9の前端面9aを介して基板9に与えられる熱量の影響が、相対的に小さくなる。この所定の距離d2は、実験やシミュレーションにより、予め設定される。
【0047】
時刻t2において、制御部55は、モータ54の回転数を、第2回転数から第1回転数に低下させる。これにより、基板9の搬送速度が、第2速度v2から第1速度v1に変更される(ステップS4)。
【0048】
続いて、時刻t2から時刻t3までの間、基板9は、高温加熱プレート10の上部において、第1速度v1で搬送される(ステップS5)。具体的には、複数の駆動ローラ51および搬入ローラ52の回転によって、基板9は、搬送方向下流側へ向けて、搬送される。基板9の前端面9a付近および後端面(搬送方向上流側の端面)9b付近以外の部分は、このステップS5において、十分に時間をかけて加熱される。その結果、基板9の熱均一性が、さらに向上する。
【0049】
時刻t3になると、図6のように、基板9の後端面9bは、高温加熱プレート10の下流側端部10bより所定の距離d3だけ搬送方向上流側の位置P3に、到達する。基板9の後端面9bが位置P3を通過すると、基板9の後端面9b付近の加熱を抑えたい部分91bが、高温加熱プレート10から部分的にはみ出した状態となる。このため、基板9の後端面9bを介して基板9に与えられる熱量の影響が、相対的に大きくなる。この所定の距離d3は、実験やシミュレーションにより、予め設定される。
【0050】
時刻t3において、制御部55は、モータ54の回転数を、第1回転数から第2回転数に上昇させる。これにより、基板9の搬送速度が、第1速度v1から第2速度v2に変更される(ステップS6)。
【0051】
続いて、時刻t3から時刻t4にかけて、基板9の後端面9bは、高温加熱プレート10の下流側端部10bの近傍を、第2速度v2で通過する(ステップS7)。このように、本実施形態では、基板9の後端面9bが高温加熱プレート10の下流側端部10bの付近を通過するときに、第2速度v2で基板9を搬送する。基板9の後端面9bは、高温加熱プレート10の下流側端部10bを迅速に通過する。このため、高温加熱プレート10から基板9の後端面9b付近に与えられる熱量が、抑制される。その結果、基板9の熱均一性がさらに向上する。
【0052】
時刻t4になると、図7のように、基板9の後端面9bは、高温加熱プレート10の下流側端部10bより所定の距離d4だけ搬送方向下流側の位置P4に、到達する。基板9の後端面9bと高温加熱プレート10の下流側端部10bとの距離が、距離d4より大きくなると、高温加熱プレート10から基板9の後端面9bへの熱的影響が、無視できる程度となる。この距離d4は、実験やシミュレーションにより、予め設定される。
【0053】
本実施形態では、基板9の後端面9bが位置P4に到達するまで、基板9を第2速度v2で搬送する。したがって、基板9の後端面9bは、基板9の下流側端部10bから、迅速に離れることとなる。このため、高温加熱プレート10から基板9の後端面9bに与えられる熱量が、さらに抑制される。その結果、基板9の熱均一性が、さらに向上する。
【0054】
時刻t4において、制御部55は、モータ54の回転数を、第2回転数から第1回転数に低下させる。これにより、基板9の搬送速度が、第2速度v2から第1速度v1に変更される(ステップS8)。
【0055】
その後、基板9は、低温加熱プレート20,30,40の上部において、第1速度v1で搬送される(ステップS9)。具体的には、複数の駆動ローラ51の回転によって、基板9は、搬送方向下流側へ向けて、搬送される。このステップS9において、基板9は、目標とする温度に十分な時間維持される。このように、本実施形態の基板処理装置1は、高温加熱プレート10で基板9を急速に加熱した後、低温加熱プレート20,30,40で基板9を高温に維持する。これにより、基板9の熱均一性が、さらに向上する。
【0056】
なお、基板9に与えられる熱量を局所的に抑制するためには、基板9の位置に応じて、加熱プレートの温度を変更することも、考えられる。しかしながら、一般に、加熱プレートの温度を応答性よく変更することは、困難である。これに対し、基板9の搬送速度は、比較的精度よく制御できる。したがって、上記の実施形態のように、基板9の搬送速度を変更すれば、基板9の前端面9a付近および後端面9b付近に与えられる熱量を、より精度よく抑制できる。
【0057】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
上記の実施形態では、基板9の前端面9aが高温加熱プレート10上に配置されているとき(図5のとき)に、基板9の搬送速度を、第2速度v2から第1速度v1に低下させていた。しかしながら、基板9の前端面9aが高温加熱プレート10上を通過する間は、基板9の搬送速度を、常に第2速度v2に維持するようにしてもよい。そのようにすれば、高温加熱プレート10から基板9の前端面9a付近に与えられる熱量を、さらに抑制できる。
【0059】
また、上記の実施形態では、基板9の後端面9bが高温加熱プレート10上に配置されるまで(図6の状態になるまで)、基板9を第1速度v1で搬送していた。しかしながら、基板9の後端面9bが高温加熱プレート10上を通過する間は、基板9の搬送速度を常に第2速度v2に維持するようにしてもよい。そのようにすれば、高温加熱プレート10から基板9の後端面9b付近に与えられる熱量を、さらに抑制できる。
【0060】
特に、高温加熱プレート10が搬送方向に短い場合には、位置P2や位置P3が、高温加熱プレート10の外側に設定されることもあり得る。そのような場合には、基板9の前端面9aが高温加熱プレート10上を通過する間、および、基板9の後端面9bが高温加熱プレート10上を通過する間は、基板9の搬送速度を、常に第2速度v2に維持すればよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、基板9の前端面9aが高温加熱プレート10の上流側端部10a付近を通過するとき(ステップS3)、および、基板9の後端面9bが高温加熱プレート10の下流側端部10b付近を通過するとき(ステップS7)の双方において、基板9を第2速度v2で搬送していた。これにより、基板9の前端面9a付近および後端面9b付近の双方の加熱を、抑制していた。
【0062】
しかしながら、必ずしも基板9の前端面9a付近および後端面9b付近の双方の加熱を、抑制しなくてもよい。例えば、基板9の後端面9bが高温加熱プレート10の下流側端部10b付近を通過するときには、基板9を第1速度v1で搬送してもよい。
【0063】
また、上記実施形態のステップS1では、搬入ローラ52上において、基板9を第1速度v1で搬送していた。しかしながら、ステップS1において、基板9を第2速度v2で搬送し、そのまま、基板9の前端面9aが位置P2に到達するまで、搬送速度を変更することなく、基板9を搬送してもよい。
【0064】
また、上記の実施形態では、基板9の搬送速度は、第1速度v1と第2速度v2との間で、急峻に切り替えられていた。しかしながら、基板9の搬送速度は、第1速度v1と第2速度v2との間で、多段階または緩やかに連続的に切り替えられるようになっていてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、基板9に熱を与える加熱部が、物理的に分離した複数の加熱プレート10,20,30,40により、構成されていた。しかしながら、本発明の加熱部は、単一の加熱プレートにより、構成されていてもよい。例えば、1枚の加熱プレート内に、高温加熱領域と、低温加熱領域とが、設けられていてもよい。また、本発明の加熱部は、1枚の高温加熱プレートのみで構成されていてもよい。また、本発明の加熱部は、ランプヒータのような棒状または球状の加熱要素を、複数配列したものであってもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、複数の駆動ローラ51および搬入ローラ52によって、基板9を搬送していた。しかしながら、本発明の搬送手段は、他の方法で基板9を搬送するものであってもよい。例えば、所定の保持部材で基板9の両側縁部を保持し、当該保持部材を搬送方向下流側へ移動させることにより、基板9を搬送するものであってもよい。
【0067】
また、上記の基板処理装置1は、液晶表示装置用の矩形のガラス基板を加熱する装置であったが、本発明の基板処理装置は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ用基板、半導体ウエハ、PDP用ガラス基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルタ用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板などの他の基板を、加熱するものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 基板処理装置
9 基板
9a 前端面
9b 後端面
10 高温加熱プレート
10a 上流側端部
10b 下流側端部
11,21,31,41 ヒータ
20,30,40 低温加熱プレート
51 駆動ローラ
52 搬入ローラ
53 回転軸
54 モータ
55 制御部
91a 前端面付近の加熱を抑えたい部分
91b 後端面付近の加熱を抑えたい部分
P1,P2,P3,P4 位置
d1,d2,d3,d4 距離
t1,t2,t3,t4 時刻
v1 第1速度
v2 第2速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側へ基板を搬送しつつ加熱する基板処理装置であって、
基板に熱を与える加熱部と、
前記加熱部に沿って基板を搬送する搬送手段と、
を備え、
前記搬送手段は、基板の搬送速度を、第1速度と、前記第1速度より速い第2速度との、少なくとも2段階に切り替え可能であり、
少なくとも、基板の前端部が前記加熱部の所定の加熱領域の上流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記搬送手段は、基板の前端部が前記加熱領域の上流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記搬送手段は、さらに、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記搬送手段は、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替える基板処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記搬送手段は、
基板の前端部が、前記加熱領域の上流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替え、
基板の後端部が、前記加熱領域の下流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記加熱部は、
平板状の高温加熱プレートと、
前記高温プレートより下流側に配置されて、前記高温加熱プレートより温度の低い平板状の低温加熱プレートと、
を含み、
前記加熱領域は、前記高温加熱プレートである基板処理装置。
【請求項7】
基板の搬送速度を、第1速度と、前記第1速度より速い第2速度との、少なくとも2段階に切り替えつつ、加熱部に沿って上流側から下流側へ基板を搬送することにより、基板を加熱する基板処理方法であって、
少なくとも、基板の前端部が前記加熱部の所定の加熱領域の上流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する基板処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理方法であって、
基板の前端部が前記加熱領域の上流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える基板処理方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の基板処理方法であって、
さらに、基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部を通過するときに、前記第2速度で基板を搬送する基板処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理方法であって、
基板の後端部が前記加熱領域の下流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替える基板処理方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の基板処理方法であって、
基板の前端部が、前記加熱領域の上流側端部より所定の距離下流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第2速度から第1速度に切り替え、
基板の後端部が、前記加熱領域の下流側端部より所定の距離上流側の位置に到達したときに、基板の搬送速度を、第1速度から第2速度に切り替える基板処理方法。
【請求項12】
請求項7から請求項11までのいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記加熱部は、
平板状の高温加熱プレートと、
前記高温プレートより下流側に配置されて、前記高温加熱プレートより温度の低い平板状の低温加熱プレートと、
を含み、
前記加熱領域は、前記高温加熱プレートである基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−74454(P2012−74454A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216778(P2010−216778)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】