説明

基板処理装置の供給異常検知方法及びそれを用いた基板処理装置

【課題】薬液の供給を監視することにより、薬液の濃度測定系に異常が発生したことを精度よく検知することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】薬液の濃度測定系に異常があれば、アラーム値メモリ57に記憶されている、正常な状態で供給された時の一定時間内における供給量(正常値)と、供給量積算部63が算出する一定時間内における実績値との間に差が生じるので、判断部59はその比較に基づき異常の発生を判断できる。供給量積算部63は、濃度測定部53及び濃度制御部55の制御の下で所定時間内に薬液供給管39から供給される薬液の供給量を積算し、供給配管17を通して処理槽1に供給される処理液中の濃度を測定する濃度測定部53とは別系統であるので、濃度測定部53の不具合に関係なく、異常を正確に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)に対して、処理液によって処理を行う基板処理装置の供給異常検知方法及びそれを用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、処理液を貯留し、基板を収容する処理槽と、処理槽に処理液を供給する供給配管と、処理液に薬液を混合する量を調整するための制御弁と、処理液中の薬液濃度を測定する濃度測定部と、濃度測定部からの濃度値を受け取って制御弁を操作して濃度制御を行う濃度制御部と、を備えたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3749422号公報(図1及び「0034」〜「0036」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、例えば、濃度測定部に異常が発生し、かつ、そのことを濃度測定部が濃度制御部に対して通知した場合には、濃度制御部が異常発生を検知することができる。その一方、濃度測定部が通知を行うことができないような異常が発生した場合、濃度制御部はそのことを検知することができず、濃度制御が不適切な状態で基板に対する処理が継続して行われてしまうという問題がある。
【0004】
上記の異常を検知できない例としては、濃度測定部と濃度制御部との間の通信線が断線した場合や、濃度測定部自体が検出できない程度の軽微な異常の場合がある。濃度測定部自体が検出できない程度の異常としては、例えば、吸光度に基づく濃度検出の場合であって、濃度測定セルの光透過部に僅かな曇りが発生した場合などがある。このような場合には、濃度測定部が濃度を正確に検出できていないにもかかわらず、濃度制御部は測定した濃度値が正しいものとして濃度制御部に伝えるので、濃度制御が正しく行われないことになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、薬液の供給を監視することにより、薬液の濃度測定系に異常が発生したことを精度よく検知することができる基板処理装置の供給異常検知方法及びそれを用いた基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置の供給異常検知方法において、薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給する過程と、所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する過程と、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する過程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給し、所定時間内において、薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する。そして、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する。薬液の濃度測定系に異常があれば、正常な状態で供給された時の一定時間内おける供給量(正常値)と、実際の処理時の一定時間内における実績値との間に差が生じるので、これに基づき異常の発生を判断することができる。このように、濃度の測定結果に関わらず、薬液の供給を監視することで異常発生を判断するので、薬液の濃度測定系に異常が発生したか否かを正確に判断することができる。また、一定時間内における供給量に基づき判断するので、その時間を短くすることにより、異常検知を素早く行うことができ、不適切な処理が行われるロット数を少なくすることができる。
【0008】
また、本発明において、前記実績値を、所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給回数を計数して得られる計数値とし、前記正常値を、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数とすることが好ましい(請求項2)。薬液の供給量に代えて一定時間内における供給回数を実績値とし、これと供給回数の正常値とを比較しても請求項1と同様の作用効果を奏する。この場合、薬液に関する量ではなく回数であるので、測定を比較的容易に行うことができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置の供給異常検知方法において、薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給する過程と、一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する過程と、一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する過程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給し、一定のロット数を処理する際に、薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する。そして、一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する。薬液の濃度測定系に異常があれば、正常な状態で供給された時の一定のロット数を処理するのに要した供給量(正常値)と、一定のロット数を処理するのに要した実績値との間に差が生じるので、これに基づき異常の発生を判断することができる。このように、濃度の測定結果に関わらず、薬液の供給を監視することで異常発生を判断するので、薬液の濃度測定系に異常が発生したか否かを正確に判断することができる。また、一定のロット数を処理する間における供給量に基づき判断するので、判断に時間的な余裕をもたせることが可能であり、異常検知のための負荷を軽くすることができる。
【0011】
また、本発明において、前記実績値を、一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段からの供給回数を計数して得られる計数値とし、前記正常値を、一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数とすることが好ましい(請求項4)。薬液の供給量に代えて供給回数を実績値とし、これと供給回数の正常値とを比較しても請求項3と同様の作用効果を奏する。この場合、薬液に関する量ではなく回数であるので、測定を容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明において、前記異常の有無の判断は、処理液の交換後、一定時間を経過してから行うことが好ましい(請求項5)。処理液交換後の一定時間の間は、処理液の濃度が安定しづらいので、その不安定期間を考慮することで、供給異常の判断の精度を向上させることができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留し、基板を収容する処理槽と、前記処理槽に処理液を供給する供給配管と、前記供給配管に薬液を供給する薬液供給手段と、処理液中の薬液濃度を測定する濃度測定手段と、前記濃度測定手段の測定結果に応じて前記薬液供給手段を操作して、薬液の濃度を制御する濃度制御手段と、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値を予め記憶する記憶手段と、所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する実績値算出手段と、前記正常値と前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する判断手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、薬液の濃度測定系に異常があれば、記憶手段に記憶されている、正常な状態で供給された時の一定時間内における供給量(正常値)と、実績値算出手段が算出する一定時間内における実績値との間に差が生じるので、判断手段はその比較に基づき異常の発生を判断することができる。実績値算出手段は、濃度測定手段及び濃度制御手段の制御の下で所定時間内に薬液供給手段から供給される薬液の供給量を積算し、供給配管を通して処理槽に供給される処理液中の濃度を測定する濃度制御手段とは別系統であるので、濃度制御手段の不具合に関係なく、異常を正確に判断することができる。また、一定時間内における供給量に基づき判断するので、その時間を短くすることにより、異常検知を素早く行うことができ、不適切な処理が行われるロット数を少なくすることができる。
【0015】
また、本発明において、前記実績値算出手段は、所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給回数を計数して実績値とし、前記記憶手段は、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数を予め記憶し、前記判断手段は、前記供給回数を前記実績値として判断することが好ましい(請求項7)。薬液の供給量に代えて一定時間内における供給回数を実績値とし、これと供給回数の正常値とを比較しても請求項6と同様の作用効果を奏する。この場合、薬液に関する量ではなく回数であるので、測定を容易に行うことができる。
【0016】
請求項8に記載の発明は、処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留し、基板を収容する処理槽と、前記処理槽に処理液を供給する供給配管と、前記供給配管に薬液を供給する薬液供給手段と、処理液中の薬液濃度を測定する濃度測定手段と、前記濃度測定手段の測定結果に応じて前記薬液供給手段を操作して、薬液の濃度を制御する濃度制御手段と、一定のロット数を処理する際に、正常な状態で薬液が供給された場合の供給量にあたる正常値を予め記憶する記憶手段と、一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する実績値算出手段と、前記正常値と前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する判断手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]請求項8に記載の発明によれば、薬液の濃度測定系に異常があれば、記憶手段に記憶されている、正常な状態で供給された時の一定のロット数を処理するのに要した供給量(正常値)と、実績値算出手段が算出した、一定のロット数を処理するのに要した実績値との間に差が生じるので、判断手段はその比較に基づき異常の発生を判断することができる。実績値算出手段は、濃度測定手段及び濃度制御手段の制御の下で、一定のロット数を処理する際に薬液供給手段から供給される薬液の供給量を積算し、供給配管を通して処理槽に供給される処理液中の濃度を測定する濃度制御手段とは別系統であるので、これらの不具合に関係なく、正確に判断することができる。また、一定のロット数を処理する間における供給量に基づき判断するので、判断に時間的な余裕をもたせることが可能であり、異常検知のための負荷を軽くすることができる。
【0018】
また、本発明において、前記実績値算出手段は、一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段から薬液が供給される供給回数を計数して実績値とし、前記記憶手段は、一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数を予め記憶し、前記判断手段は、前記供給回数を前記実績値として判断することが好ましい(請求項9)。薬液の供給量に代えて、一定のロット数を処理するのに要した供給回数を実績値とし、これと供給回数の正常値とを比較しても、請求項8と同様の作用効果を奏する。この場合、薬液に関する量ではなく回数であるので、測定を容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明において、前記判断手段は、処理液の交換後、一定時間を経過してから判断を行うことが好ましい(請求項10)。処理液交換後の一定時間は、処理液の濃度が安定しづらいので、その不安定期間を考慮することで、供給異常の判断の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る基板処理装置の供給異常検知方法によれば、薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給し、所定時間内において、薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する。そして、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する。薬液の濃度測定系に異常があれば、正常な状態で供給された時の一定時間内おける供給量(正常値)と、実際の処理時の一定時間内における実績値との間に差が生じるので、これに基づき異常の発生を判断することができる。このように、濃度の測定結果に関わらず、薬液の供給を監視することで異常発生を判断するので、薬液の濃度測定系に異常が発生したか否かを正確に判断することができる。また、一定時間内における供給量に基づき判断するので、その時間を短くすることにより、異常検知を素早く行うことができ、不適切な処理が行われるロット数を少なくすることができる。
【実施例1】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
この基板処理装置は処理槽1を備え、処理槽1は、内槽3と、内槽3から溢れた処理液を回収する外槽5とを備えている。内槽3には、基板Wを内槽3内の処理位置と、内槽3の上方にあたる待機位置とにわたって昇降可能な保持アーム7が付設されている。この保持アーム7は、複数枚の基板W(1ロット分)を起立姿勢で当接支持する。
【0023】
内槽3は、処理液を供給するための一対の噴出管13を底部に備えている。また、外槽5は、回収した処理液を排出するための排出口15を底部に備えている。噴出管13と排出口15とは、供給配管17で連通接続されている。この供給配管17には、排出口15側から順に、ポンプ19と、インラインヒータ21と、フィルタ23と、濃度検出部25とが配設されている。インラインヒータ21は、流通する処理液を加熱する機能を備え、フィルタ23は、処理液中のパーティクル等を除去する機能を備えている。また、濃度検出部25は、例えば、供給配管17の一部に設けられ、光を透過する材料で構成された透過セル27と、光を照射するための照射ランプ29と、透過光の強度を検出するための光検出器31とを備えている。
【0024】
排出口15とポンプ19との間には、純水を供給するための純水供給源33が連通接続されている。純水供給源33と排出口15との間における供給配管17の一部位には、分岐管35が連通接続されている。分岐管35には、開閉弁37が取り付けられている。開閉弁37は、供給配管17や外槽5に貯留している純水や、純水と薬液の混合液などの処理液を排出する際に開放される。
【0025】
薬液供給管39は、その一端側が外槽5の底部近くにまで延出され、他端側が薬液供給源41に連通接続されている。薬液供給管39は、流量調整のための制御弁43が取り付けられ、その下流側には流量計45が取り付けられている。
【0026】
なお、上記の薬液供給管39が本発明における薬液供給手段に相当する。
【0027】
制御部47は、上述した保持アーム7の昇降、ポンプ19の駆動、インラインヒータ21の温調、開閉弁37の開閉、制御弁43の開度などを制御するとともに、後述する供給異常を検知する機能を備えている。制御部47は、供給異常の発生を検知した場合には、異常発生信号を出力端子49に出力したりする。出力端子49には、アラーム51が接続されている。アラーム51は、例えば、装置のオペレータに対して異常が発生したことを報知するものであり、例えば、ブザーやランプなどが挙げられる。また、制御部47は、異常を検出した場合に本装置による処理を停止させる等の処理を行う。
【0028】
また、制御部47は、濃度制御系にあたる濃度測定部53と濃度制御部55とを備えている。濃度測定部53は濃度検出部25からの試料透過光強度と、図示しない基準セルからの基準透過光強度との比率に基づいて、吸光度式で処理液中の薬液濃度を算出し、それを濃度値として濃度制御部55に出力する。濃度制御部55は、濃度値と、目標値との差分に応じて制御弁43の開度を調整し、薬液を補充する。
【0029】
なお、上記の濃度測定部53が本発明における濃度測定手段に相当し、濃度制御部55が本発明における濃度制御手段に相当する。
【0030】
さらに、制御部47は、アラーム値メモリ57と、判断部59と、カウンタ・タイマ61と、供給量積算部63とを備えている。
【0031】
アラーム値メモリ57は、濃度制御系を含めた薬液供給管39からの薬液の供給が正常に行われる状態で基板Wを処理した場合に、所定時間内で供給された薬液の供給量の積算値を正常値として予め記憶している。また、異常発生の判断基準として、正常値の上限値と下限値についても予め記憶している。
【0032】
判断部59は、カウンタ・タイマ61による所定時間の計時内において供給量積算部63から出力される実績値と、正常値の上限値と下限値とを比較して供給異常発生の有無を判断する。カウンタ・タイマ61は、処理槽1の処理液が交換された時点から自動的に計時を開始し、処理液が交換される時点でリセットされる。供給量積算部63は、処理槽1の処理液が交換された時点からの薬液の供給量を積算して実績値として算出し、判断部59に対して出力する。処理槽1の処理液が交換されると、実績値はリセットされる。判断部59が供給異常と判断した場合には、上述した出力端子49に異常発生信号を出力する。
【0033】
なお、上記のアラーム値メモリ57が本発明の記憶手段に相当し、判断部59が本発明における判断手段に相当し、供給量積算部63が本発明における実績値算出手段に相当する。
【0034】
次に、図2を参照して、上述した基板処理装置における供給異常検知の動作について説明する。なお、図2は、動作説明に供するタイムチャートである。この図2中には、上述した異常発生の判断基準について、正常値IVと、正常値の上限値IV−Hと、下限値IV−Lで表している。正常値IVに対する上限値IV−Hの差と、下限値IV−Lの差のうち、上限値IV−Hの差を下限値IV−Lの差よりも小さくしてあるのは、濃度が高い場合には基板Wに対するダメージが大きく、再処理が不可能になる場合が大きいので、早めに異常を検知する方が得策だからである。
【0035】
ここでは、t1,t6時点において、処理液の要交換時間を表す「ライフタイム」や、処理液の要交換回数を表す「ライフカウント」が経過し、処理槽1内の処理液が全て排出され、純水と薬液が供給されて、目標濃度に調整された新たな処理液が生成されるものとする。
【0036】
制御部47は、処理液の交換完了とともに、カウンタ・タイマ61を始動して計時を開始させる。そして、t2時点からt3時点までのT1時間の期間は、供給異常の判断を行わない。これは、処理液交換後の一定時間の間は、薬液濃度が安定しづらいので、その不安定期間を考慮するためである。この期間を設けているので、後述する供給異常の判断の精度を向上させることができる。このT1時間は、処理液の容量や薬液の濃度、循環流速等によるが、例えば、15分程度である。
【0037】
判断部59は、カウンタ・タイマ61を監視し、T1時間が経過するt3時点からt4時点までの所定時間内T2(例えば、45分程度)において供給異常の判断を行う。ここでは、例えば、この間にロットL1〜L3の3ロット分の基板Wが処理されるものとする。
【0038】
一般的には、基板Wを処理する間に薬液濃度が低下するので、定期的に薬液の補充が行われる。つまり、基板Wの洗浄やエッチング時に、薬液が基板Wや被着されている被膜などと反応を生じるので、薬液濃度が低下してゆく。そのため、濃度検出器25と、濃度測定部53と、濃度制御部55とを備えた濃度制御系によって定期的に薬液が補充される。しかし、その系の一部に不具合があると、補充量が異常に増えたり、あるいは補充量が異常に低下したりするという不具合が生じる恐れがある。そこで、供給量積算部63と、アラーム値メモリ57と、判断部59とにより、その供給に異常があるか否かを判断する。
【0039】
具体的には、判断部59が、タイマ・カウンタ61からの計時時間を参照し、その時間がt3時点からt4時点のT2時間になった時点において、アラーム値メモリ57を参照し、正常値の上限値IV−Hと正常値の下限値IV−Lと、そのときの供給量積算部63からの実績値とを比較して、実績値が正常値の上限値IV−H及び正常値の下限値IV−Lの範囲内にあるか否かで供給異常があるか否かを判断する。その結果、正常値の上限値IV−H及び下限値IV−Lの範囲外である場合には、出力端子49に異常発生信号を出力するとともに、処理を停止させる動作を行わせる。その際、薬液の供給を停止するとともに、純水供給源33から純水のみを供給して、基板Wを所定時間だけ純水にてリンスを行ってから、図示しない昇降機構を作動させて保持アーム7を上昇させることにより、処理中の基板Wを退避させるようにするのが好ましい。
【0040】
本実施例装置によると、薬液の濃度測定系に異常があれば、アラーム値メモリ57に記憶されている、正常な状態で供給された時の一定時間内における供給量(正常値)と、供給量積算部63が算出する一定時間内における実績値との間に差が生じるので、判断部59はその比較に基づき異常の発生を判断することができる。供給量積算部63は、濃度測定部53及び濃度制御部55の制御の下で所定時間内に薬液供給管39から供給される薬液の供給量を積算し、供給配管17を通して処理槽1に供給される処理液中の濃度を測定する濃度測定系とは別系統であるので、濃度検出部25、濃度測定部53、濃度制御部55、制御弁43等の不具合に関係なく、異常を正確に判断することができる。また、一定時間内における供給量に基づき判断するので、その時間を短くすることにより、異常検知を素早く行うことができ、不適切な処理が行われるロット数を少なくすることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
図3は、実施例2に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。なお、上述した実施例1と共通する構成については同符号を付すことにより、詳細な説明については省略する。
【0042】
この実施例2の基板処理装置は、流量計45からの流量値の積算値を求める供給量積算部63に代えて、濃度制御部55が制御弁43を駆動した回数を計数し、各駆動時に回数を逐次加算して得られる積算値を出力する供給回数積算部65を備えている。供給回数積算部65は、処理液の交換時点でその積算値がリセットされる。
【0043】
アラーム値メモリ57は、濃度制御系を含めた薬液供給管39からの薬液の供給が正常に行われる状態で基板Wを処理した場合に、所定時間内で供給された薬液の供給回数の積算値を正常値として予め記憶している。また、異常発生の判断基準として、正常値の上限値と下限値についても予め記憶している。
【0044】
判断部59Aは、カウンタ・タイマ61が所定時間を計時した時点において、供給回数積算部63からの実績値と、アラーム値メモリ57の正常値の上限値及び下限値とを比較し、供給に異常があったか否かを判断する。
【0045】
なお、上記のアラーム値メモリ57Aが本発明の記憶手段に相当し、判断部59Aが本発明における判断手段に相当し、供給量積算部63が本発明における実績値算出手段に相当する。
【0046】
次に、図4を参照して、上述した基板処理装置における供給異常検知の動作について説明する。なお、図4は、動作説明に供するタイムチャートである。この図4中には、上述した異常発生の判断基準について、供給回数の積算値である正常値ICと、正常値の上限値IC−Hと、下限値IC−Lで表している。正常値ICと上限値IC−Hの差が、正常値ICの下限値IC−Lの差よりも小さくされているのは、実施例1において述べた理由と同じである。
【0047】
ここでは、t1時点においてライフタイムが経過し、処理槽1内の処理液が全て排出され、純水と薬液が供給されて新たな処理液が生成されたものとする。上述したように、制御部47は、カウンタ・タイマ61を始動して計時を開始させるものの、上述した理由によりt2時点からt3時点までのT1時間の期間については供給異常の判断を行わない。
【0048】
判断部59Aは、カウンタ・タイマ61を監視し、例えば、ロットL1〜L3の3ロット分の基板Wが処理されるt3時点からt4時点までの所定時間内T2において供給異常の判断を行う。
【0049】
一般的に、基板Wを処理する間に薬液濃度が低下するので、濃度検出器25と、濃度測定部53と、濃度制御部55とを備えた濃度制御系によって定期的に薬液が補充される。しかし、その系の一部に不具合があると、補充回数が異常に増えたり、あるいは補充回数が異常に低下したりするという不具合が生じる恐れがある。そこで、供給回数積算部65と、アラーム値メモリ57Aと、判断部59Aとにより、その供給に異常があるか否かを判断する。
【0050】
具体的には、判断部59Aが、タイマ・カウンタ61からの計時時間を参照し、その時間がt3時点からt4時点のT2時間になった時点において、アラーム値メモリ57Aを参照し、正常値の上限値IC−Hと正常値の下限値IC−Lと、そのときの供給回数積算部65からの実績値とを比較して、実績値が正常値の上限値IC−H及び正常値の下限値IC−Lの範囲内にあるか否かで供給異常があるか否かを判断する。その結果、正常値の上限値IC−H及び下限値IC−Lの範囲外である場合には、出力端子49に異常発生信号を出力するとともに、処理を停止させる動作を行わせる。その際、薬液の供給を停止するとともに、リンスを行ってから処理液中の基板Wを退避させるのが好ましいのは、実施例1と同様である。
【0051】
本実施例2によると、薬液の供給量に代えて一定時間内における供給回数を実績値とし、これと供給回数の正常値とを比較するが、この構成であっても上述した実施例1と同様の作用効果を奏する。この場合、薬液に関する量ではなく回数であるので、測定を容易に行うことができるという利点を有する。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0053】
(1)上述した実施例1では、「所定時間内」における供給量に基づいて供給異常を判断したが、これに代えて、「一定のロット数」を処理する期間を基準にして供給量に基づく供給異常を判断するようにしてもよい。
【0054】
その場合、図1中のアラーム値メモリ57には、正常な状態で供給された時の一定のロット数を処理するのに要した供給量の正常値と、その上限値と下限値とを予め記憶しておけばよい。カウンタ・タイマ61は、保持アーム7によって、新たなロットが搬入されるごとにてカウンタを「1」だけインクリメントしてゆき、所定ロット数を越えるとリセットされる。所定のロット数となった時点で、判断部59はカウンタ・タイマ61を参照し、正常値の上限値と下限値と、供給量積算部63から出力される実績値とを比較して供給異常発生の有無を判断する。
【0055】
具体的には、例えば、図2におけるt3時点からt4時点のT2時間内にロットL1〜L3の3ロットを処理する場合に、3ロット分の処理を行う時間で上記の供給異常の判断を行えばよい。
【0056】
(2)上述した実施例2では、「所定時間内」における供給回数に基づいて供給異常を判断したが、これに代えて、「一定のロット数」を処理する期間を基準にして供給量または供給回数に基づく供給異常を判断するようにしてもよい。
【0057】
その場合、図3中のアラーム値メモリ57Aには、正常な状態で供給された時の一定のロット数を処理するのに要した供給回数の正常値と、その上限値と下限値とを予め記憶しておけばよい。カウンタ・タイマ61は、新たなロットが搬入されるごとにてカウンタを「1」だけインクリメントしてゆき、所定ロット数を越えるとリセットされる。所定のロット数となった時点で、判断部59はカウンタ・タイマ61を参照し、正常値の上限値と下限値と、供給回数積算部65から出力される実績値とを比較して供給異常発生の有無を判断する。
【0058】
具体的には、例えば、図4におけるt3時点からt4時点のT2時間内にロットL1〜L3の3ロットを処理する場合に、3ロットの処理を行う時間で上記の供給異常の判断を行えばよい。
【0059】
上述した一定のロット数を処理する間における判断は、図2または図4において、判断するロット数を多め(例えば、5ロット分)にしておくと、上述した実施例1,2のような所定時間における判断に比較して、判断に時間的な余裕をもたせることが可能であり、異常検知のための負荷を軽くすることができる。
【0060】
(3)上述した各実施例1,2では、内槽3と外槽5とを供給配管17で連通接続し、処理液を循環させる「循環式」の構成を例に採って説明したが、本発明は、外槽5から溢れた処理液を排出させる「非循環方式」の構成であっても適用することができる。
【0061】
(4)上述した各実施例1,2では、処理槽1が内槽3及び外槽5を備えている構成を例に採って説明したが、外槽5を備えてないタイプの基板処理装置であっても本発明を適用することができる。
【0062】
(5)上述した各実施例1,2では、処理槽1に複数枚の基板Wを一括して収容して処理する、いわゆるバッチ式を例に採ったが、例えば、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式であっても本発明方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】動作説明に供するタイムチャートである。
【図3】実施例2に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】動作説明に供するタイムチャートである。
【符号の説明】
【0064】
W … 基板
1 … 処理槽
3 … 内槽
5 … 外槽
7 … 保持アーム
17 … 供給配管
25 … 濃度検出器
39 … 薬液供給管
43 … 制御弁
45 … 流量計
47 … 制御部
53 … 濃度測定部
55 … 濃度制御部
57 … アラーム値メモリ
59 … 判断部
61 … 供給量積算部
IV … 正常値
IV−H … 正常値の上限値
IV−L … 正常値の下限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置の供給異常検知方法において、
薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給する過程と、
所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する過程と、
所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する過程と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置の供給異常検知方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置の供給異常検知方法において、
前記実績値を、所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給回数を計数して得られる計数値とし、
前記正常値を、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数とすることを特徴とする基板処理装置の供給異常検知方法。
【請求項3】
処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置の供給異常検知方法において、
薬液供給手段により薬液が供給される供給配管の薬液濃度を濃度測定手段により測定しつつ処理液を供給する過程と、
一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する過程と、
一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値と、前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する過程と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置の供給異常検知方法。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置の供給異常検知方法において、
前記実績値を、一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段からの供給回数を計数して得られる計数値とし、
前記正常値を、一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数とすることを特徴とする基板処理装置の供給異常検知方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の基板処理装置の供給異常検知方法において、
前記異常の有無の判断は、処理液の交換後、一定時間を経過してから行うことを特徴とする基板処理装置の供給異常検知方法。
【請求項6】
処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置において、
処理液を貯留し、基板を収容する処理槽と、
前記処理槽に処理液を供給する供給配管と、
前記供給配管に薬液を供給する薬液供給手段と、
処理液中の薬液濃度を測定する濃度測定手段と、
前記濃度測定手段の測定結果に応じて前記薬液供給手段を操作して、薬液の濃度を制御する濃度制御手段と、
所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給量にあたる正常値を予め記憶する記憶手段と、
所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する実績値算出手段と、
前記正常値と前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置において、
前記実績値算出手段は、所定時間内において、前記薬液供給手段からの供給回数を計数して実績値とし、
前記記憶手段は、所定時間内において、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数を予め記憶し、
前記判断手段は、前記供給回数を前記実績値として判断することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
処理液を基板に供給して処理を行う基板処理装置において、
処理液を貯留し、基板を収容する処理槽と、
前記処理槽に処理液を供給する供給配管と、
前記供給配管に薬液を供給する薬液供給手段と、
処理液中の薬液濃度を測定する濃度測定手段と、
前記濃度測定手段の測定結果に応じて前記薬液供給手段を操作して、薬液の濃度を制御する濃度制御手段と、
一定のロット数を処理する際に、正常な状態で薬液が供給された場合の供給量にあたる正常値を予め記憶する記憶手段と、
一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段からの供給量を積算して実績値として算出する実績値算出手段と、
前記正常値と前記実績値との比較に基づいて異常の有無を判断する判断手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置において、
前記実績値算出手段は、一定のロット数を処理する際に、前記薬液供給手段から薬液が供給される供給回数を計数して実績値とし、
前記記憶手段は、一定のロット数を処理する際に、薬液の供給が正常な状態で供給された場合の供給回数を予め記憶し、
前記判断手段は、前記供給回数を前記実績値として判断することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記判断手段は、処理液の交換後、一定時間を経過してから判断を行うことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−235812(P2008−235812A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77169(P2007−77169)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】