説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】流体混合ノズルを用いて疎水性ウェハの処理を行うことができる基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】処理液を供給する処理液供給手段66と,不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段67と,前記処理液に前記不活性ガスを混合し、不活性ガスによって圧力を加えられた処理液を基板に吐出する二流体混合ノズル65を備え,前記処理液によって基板を処理する基板処理装置であって,前記処理液供給手段66に,前記処理液の表面張力を低下させる流体と前記処理液とを混合する流体混合手段12を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば半導体ウェハやLCD基板用ガラス等の基板を洗浄処理などする基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造工程においては,半導体ウェハ等(以下ウェハ等という)にエッチング処理及び/又はアッシング処理を施す基板処理装置を備えた処理システムが使用される。この処理システムには,アッシング処理後,ウェハの処理面に発生したポリマーやパーティクル等を除去する枚葉式基板洗浄処理装置が備えられる。この装置は,先ずウェハに薬液を供給して薬液洗浄処理を行い,次に純水によりパーティクル除去を含むリンス処理を施し,最後にウェハを回転させて純水を振り切るように除去したり,IPAやN2ガス等の乾燥処理用ガスを供給して乾燥処理を行う一連の洗浄処理工程を行う。純水を供給するためのノズルの一種である流体混合ノズルは,純水にN2ガス等の不活性ガスを混合することにより,純水に高圧を与えて吐出し,ウェハの処理面に吹き付けるように供給するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで,疎水性の強いウェハに純水を供給すると,乾燥処理後にウォーターマークが発生する問題がある。ウォーターマークは表面検査装置によってディフェクトとして検出されるが,特に二流体供給ノズルによって純水を供給すると,多くのディフェクトが検出されるので,流体混合ノズルを疎水性のウェハの洗浄に使用することが困難であった。しかしながら,従来の洗浄処理にあっては,薬液洗浄の際にウェハに供給する薬液の種類によってウェハの処理面が疎水性となることがあり,ディフェクトが発生する原因となっていた。
【0004】
従って,本発明の目的は,流体混合ノズルを用いて疎水性ウェハの処理を行うことができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,本発明によれば,処理液を供給する処理液供給手段と,不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と,前記処理液に前記不活性ガスを混合し、不活性ガスによって圧力を加えられた処理液を基板に吐出する二流体混合ノズルを備え,前記処理液によって基板を処理する基板処理装置であって,前記処理液供給手段に,前記処理液の表面張力を低下させる流体と前記処理液とを混合する流体混合手段を備えたことを特徴とする,基板処理装置が提供される。この基板処理装置にあっては,処理液に前記流体を混合してウェハに供給し,ウェハに付着した処理液の表面張力を低下させるので,ウォーターマークの発生を抑制することができる。
【0006】
前記流体混合手段を制御する制御部を備えることが好ましい。また,薬液を供給する薬液供給ノズルを備えても良い。さらに,前記制御部は,前記薬液の種類に基づき,前記流体混合手段を制御することが好ましい。この場合,薬液の種類から薬液処理後のウェハが有する疎水性の強さを予測することができる。
【0007】
また,前記基板が疎水性か親水性かを検査する検査手段を備えても良い。さらに,前記制御部は,前記検査手段の検査結果に基づき前記流体混合手段を制御することが好ましい。即ち,ウェハの疎水性が強いほど,前記流体の混合量を増加して処理液の表面張力を低下させる必要があるが,疎水性が弱い場合は前記流体の混合量は少なくして,前記流体の使用量を節約することができる。
【0008】
また、本発明によれば,二流体混合ノズルで処理液と不活性ガスを混合して不活性ガスによって圧力を加えられた処理液を供給し,前記不活性ガスによって圧力を加えられた処理液によって基板を処理する基板処理方法であって,前記処理液の表面張力を低下させる流体を混合した処理液と,前記不活性ガスを混合して供給することを特徴とする,基板処理方法が提供される。この基板処理方法にあっては,処理液に前記流体を混合してウェハに供給し,ウェハに付着した処理液の表面張力を低下させるので,ウォーターマークの発生を抑制することができる。
【0009】
前記処理液によって基板を処理する工程の前に,薬液を供給して基板を処理する工程を有するようにしても良い。また,前記薬液の種類に基づき,前記流体の混合を制御するようにしても良い。
【0010】
前記基板の処理面に,基板の疎水性の強さを検査するための検査用薬液の液滴を滴下し,前記基板の処理面における前記液滴の接触角を計測することにより,基板が疎水性か親水性かを検査するようにしても良い。即ち,基板の疎水性が強いと基板の処理面における検査用液の接触角が大きくなるので,基板が疎水性か親水性かを検査することができる。さらに,前記接触角の大きさに基づき,前記流体の混合を制御することが好ましい。この場合,疎水性が弱い場合は前記処理液の表面張力を低下させる流体の混合量を少なくし,前記流体の使用量を節約することができる。
【0011】
さらに,基板をアッシング処理する工程と,前記薬液を供給して基板を処理する工程と,前記基板を乾燥させる工程と,基板をベーキング処理する工程とを有するようにしても良い。
【0012】
なお,この発明において,処理液として純水を使用すると共に,処理液の表面張力を低下させる流体として例えばIPA(イソプロピルアルコール)を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基板処理装置及び基板処理方法によれば,純水よりも表面張力の小さいIPA混合純水を供給することにより,ウォーターマークの発生を抑制することができる。従って,流体混合ノズルを用いて疎水性ウェハの処理を行うことができる。ウェハが親水性である場合は純水にIPAを混合しないので,IPAの使用量を節約することができる。また,ウェハの疎水性の強さに応じて純水に混合するIPAの量を調節することにより,IPAの使用量を節約することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,本発明の好ましい実施の形態を,基板の一例としてウェハ両面を洗浄するように構成された基板処理装置ユニットに基づいて説明する。図1は,基板処理装置である基板処理ユニット22,23,24,25を組み込んだ処理システム1の概要平面図である。図2は,その概要側面図である。この処理システム1は,洗浄処理部3に対してウェハWを搬入出する搬入出部2と,洗浄処理及び洗浄処理後の熱的処理を施す洗浄処理部3と,ウェハWにエッチング処理及び/又はアッシング処理を施すエッチング処理部4とから構成されている。
【0015】
搬入出部2は,複数枚,例えば25枚のウェハWが所定の間隔で略水平に収容可能な容器(キャリアC)を載置するための載置台10が設けられたイン・アウトポート6と,載置台10に載置されたキャリアCと洗浄処理部3との間でウェハの受け渡しを行うウェハ搬送装置12が備えられたウェハ搬送部7と,エッチング処理部4及び洗浄処理部3における処理を終了したウェハWについて,処理面に施されたパターンの線幅を測定する線幅測定部8から構成されている。
【0016】
キャリアCにおいて,ウェハWはキャリアCの一側面を通して搬入出され,この側面には開閉可能な蓋体が設けられている。また,ウェハWを所定間隔で保持するための棚板が内壁に設けられており,ウェハWを収容する25個のスロットが形成されている。ウェハWは表面(半導体デバイスを形成する処理面)が上面(ウェハWを水平に保持した場合に上側となっている面)となっている状態で各スロットに1枚ずつ収容される。
【0017】
イン・アウトポート6の載置台10上には,例えば,3個のキャリアを水平面のY方向に並べて所定位置に載置することができるようになっている。キャリアCは蓋体が設けられた側面をイン・アウトポート6とウェハ搬送部7との境界壁15側に向けて載置される。境界壁15においてキャリアCの載置場所に対応する位置には窓部16が形成されており,窓部16のウェハ搬送部7側には,窓部16をシャッター等により開閉する窓部開閉機構17が設けられている。
【0018】
この窓部開閉機構17は,キャリアCに設けられた蓋体もまた開閉可能であり,窓部16の開閉と同時にキャリアCの蓋体も開閉する。窓部開閉機構17は,キャリアCが載置台の所定位置に載置されていないときは動作しないように,インターロックを設けることが好ましい。窓部16を開口してキャリアCのウェハ搬入出口とウェハ搬送部7とを連通させると,ウェハ搬送部に配設されたウエハ搬送装置7のキャリアCへのアクセスが可能となり,ウェハWの搬送を行うことが可能な状態となる。窓部16の上部には図示しないウェハ検出装置が設けられており,キャリアC内に収容されたウェハWの枚数と状態をスロット毎に検出することができるようになっている。このようなウェハ検出装置は,窓部開閉機構17に装着させることも可能である。
【0019】
ウェハ搬送部7に配設されたウエハ搬送装置12は,Y方向とZ方向に移動可能であり,かつ,X―Y平面内(θ方向)で回転自在に構成されている。また,ウェハ搬送装置7は,2本のウェハWを把持する取出収納アーム19a,19bを有し,この取出収納アーム19a,19bはX―Y平面内でスライド自在となっており,それぞれ独立して進退移動することが可能である。こうして,ウェハ搬送装置12は,載置台10に載置された全てのキャリアCについて任意の高さのスロットにアクセスし,また,洗浄処理部3に配設された上下2台のウェハ受け渡しユニット(TRS)20a,20bにアクセスして,イン・アウトポート6側から洗浄処理部3側へ,逆に洗浄処理部3側からイン・アウトポート6側へウェハWを搬送することができるようになっている。また,ウェハ搬送装置12は,エッチング処理部4及び洗浄処理部3における処理を終了したウェハWを,ウェハ受け渡しユニット(TRS)20a,20bから線幅測定部8へ搬送し,線幅測定部8での検査を終了したウェハWをイン・アウトポート6側へ搬送することができる。
【0020】
洗浄処理部3は,ウェハ搬送部7との間でウェハWの受け渡しを行うためにウェハWを一時的に載置するウェハ受け渡しユニット(TRS)20a,20bと,エッチング処理部4との間でウェハWの受け渡しを行うためにウェハWを一時的に載置するウェハ受け渡しユニット(TRS)21a,21bと,本実施の形態にかかる4台の基板処理ユニット22,23,24,25と,洗浄処理後のウェハWを加熱処理する例えば5台の積み重ねられたベーキングユニット及び加熱されたウェハWを冷却する冷却ユニットからなる加熱・冷却部26を備えている。さらに,洗浄処理部3は,エッチング処理部4とウェハ受け渡しユニット21a,21bとの間でウェハの受け渡しを行うウェハ搬送装置31が備えられたウェハ搬送部30と,主ウェハ搬送装置32を備えている。主ウェハ搬送装置32は,ウェハ受け渡しユニット20a,20b,21a,21b,基板処理ユニット22,23,24,25,加熱・冷却部26のベーキングユニット及び冷却ユニットにアクセス可能に配設されている。
【0021】
また,洗浄処理部3には,洗浄処理部3のウェハ受け渡しユニット20a,20b,21a,21b,基板処理ユニット22,23,24,25,加熱・冷却部26のベーキングユニット及び冷却ユニットのメンテナンスを行うためのメンテナンスエリア34が設けられおり,メンテナンスを容易に行うことが可能である。洗浄処理部3の天井部には,各ユニット及び主ウェハ搬送装置32に,清浄な空気をダウンフローするためのファンフィルターユニット(FFU)35が配設されている。
【0022】
ウェハ受け渡しユニット20a,20bは上下2段に積み重ねられて配置されており,例えば,下段のウェハ受け渡しユニット20aは,イン・アウトポート6側から洗浄処理部3側へ搬送するウェハWを載置するために用い,上段のウェハ受け渡しユニット20bは,洗浄処理部3側からイン・アウトポート6側へ搬送するウェハWを載置するために用いることができる。
【0023】
ウェハ受け渡しユニット21a,21bは上下2段に積み重ねられて配置されており,例えば,下段のウェハ受け渡しユニット21aは,洗浄処理部3側からエッチング処理部4へ搬送するウェハWを載置するために用い,上段のウェハ受け渡しユニット21bは,エッチング処理部4から洗浄処理部3側へ搬送するウェハWを載置するために用いることができる。上段のウェハ受け渡しユニット21bの上部には,基板が疎水性か親水性かを検査する検査装置36が設置されている。
【0024】
検査装置36は,ウェハWの処理面にウェハWの疎水性の強さを検査するための検査用薬液の液滴を滴下し,ウェハWの処理面における液滴Dの接触角φを計測することができる。図3(a),(b)は液滴Dを滴下した場合のウェハWの処理面を示している。接触角φは,ウェハWの処理面と処理面における液滴Dの接線Lとがなす角度である。ウェハWの疎水性が強い場合は,図3(a)に示すように接触角φが大きくなるが,親水性が強い場合は,図3(b)に示すように接触角φが小さくなる。従って,ウェハWの処理面における液滴Dの接触角φを計測することにより,ウェハWの疎水性の強さを計測することができる。また,検査装置36は,制御部37に信号線38を介して配線接続されており,計測した疎水性の強さは検出信号として制御部37に送信されるようになっている。従って制御部37は,ウェハWが疎水性か親水性かを判断することができる。なお,基板処理ユニット22,23,24,25にウェハWを搬入するときは,搬入前にウェハ受け渡しユニット21aにウェハWを載置し,検査装置36によって処理面の疎水性を検出するようになっている。
【0025】
ファンフィルターユニット(FFU)35からのダウンフローの一部は,ウェハ受け渡しユニット20a,20bと,その上部の空間を通ってウェハ搬送部7に向けて流出する構造となっている。これにより,ウェハ搬送部7から洗浄処理部3へのパーティクル等の侵入が防止され,洗浄処理部2の清浄度が保持されるようになっている。また,ファンフィルターユニット(FFU)35からのダウンフローの一部は,ウェハ受け渡しユニット21a,21bと,その上部の空間を通ってウェハ搬送部31に向けて流出する構造となっている。これにより,ウェハ搬送部31から洗浄処理部3へのパーティクル等の侵入が防止され,洗浄処理部3の清浄度が保持されるようになっている。
【0026】
ウェハ搬送部30に配設されたウエハ搬送装置31は,Y方向とZ方向に移動可能であり,かつ,X―Y平面内(θ方向)で回転自在に構成されている。また,ウェハ搬送装置31は,2本のウェハWを把持する取出収納アーム39a,39bを有し,この取出収納アーム39a,39bはX方向にスライド自在となっており,それぞれ独立して進退移動することが可能である。こうして,ウェハ搬送装置31は,洗浄処理部3に配設された上下2台のウェハ受け渡しユニット(TRS)21a,21bにアクセスして,エッチング処理部4側から洗浄処理部3側へ,逆にエッチング処理部4側から洗浄処理部3側へウェハWを搬送することができるようになっている。
【0027】
主ウェハ搬送装置32は,図示しないモータの回転駆動力によって回転可能な筒状支持体40と,筒状支持体40の内側に沿ってZ方向に昇降自在に設けられたウェハ搬送体41とを有している。ウェハ搬送体41は,筒状支持体40の回転に伴って一体的に回転されるようになっており,それぞれ独立して進退移動することが可能な多段に配置された3本の搬送アーム42a,42b,42cを備えている。
【0028】
基板処理ユニット22,23,24,25は,上下2段で各段に2台ずつ配設されている。図1に示すように,基板処理ユニット22,23と基板処理ユニット24,25とは,その境界をなしている壁面43に対して対称な構造を有しているが,対称であることを除けば,各基板処理ユニット22,23,24,25は概ね同様の構成を備えている。そこで,基板処理ユニット22を例として,その構造について詳細に以下に説明することとする。
【0029】
図4は,基板処理ユニット22の平面図である。基板処理ユニット22のユニットチャンバー45内には,ウェハWを収納する密閉構造のアウターチャンバー46と,薬液系アーム格納部47と,リンス系アーム格納部48とを備えている。ユニットチャンバー45には開口50が形成され,開口50を図示しない開閉機構によって開閉するユニットチャンバー用メカシャッター51が設けられており,搬送アーム42aによって基板処理ユニット22に対して開口50からウェハWが搬入出される際には,このユニットチャンバー用メカシャッター51が開くようになっている。ユニットチャンバー用メカシャッター51はユニットチャンバー45の内部から開口50を開閉するようになっており,ユニットチャンバー45内が陽圧になったような場合でも,ユニットチャンバー45内部の雰囲気が外部に漏れ出ない。
【0030】
アウターチャンバー46には開口52が形成され,開口52を図示しないシリンダ駆動機構によって開閉するアウターチャンバー用メカシャッター53が設けられており,例えば搬送アーム42bによってアウターチャンバー46に対して開口52からウェハWが搬入出される際には,このアウターチャンバー用メカシャッター53が開くようになっている。アウターチャンバー用メカシャッター53はアウターチャンバー46の内部から開口52を開閉するようになっており,アウターチャンバー46内が陽圧になったような場合でも,アウターチャンバー46内部の雰囲気が外部に漏れ出ない。また,薬液系アーム格納部47には開口54が形成され,開口54を図示しない駆動機構によって開閉する薬液系アーム格納部用シャッター55が設けられている。薬液系アーム格納部47をアウターチャンバー46と雰囲気隔離するときは,この薬液系アーム格納部用シャッター55を閉じる。リンス系アーム格納部48には開口56が形成され,開口56を図示しない駆動機構によって開閉するリンス系アーム格納部用シャッター57が設けられている。リンス系アーム格納部48をアウターチャンバー46と雰囲気隔離するときは,このリンス系アーム格納部用シャッター57を閉じる。
【0031】
薬液系アーム格納部47内には,ウェハWを洗浄する薬液を吐出可能な薬液系アーム60が格納されている。薬液系アーム60は,アウターチャンバー46内において後述のスピンチャック71で保持されたウェハWの少なくとも中心から周縁部までをスキャン可能である。薬液系アーム60は,処理時以外は薬液系アーム格納部47にて待避する。また,薬液系アーム格納部47には,図示しないアーム洗浄装置が備えられ,薬液系アーム60が薬液系アーム格納部47内で待機しているときに,薬液系アーム60を洗浄することができる。
【0032】
リンス系アーム格納部48内には,リンス処理を施す処理液としての純水と,不活性ガスであるN2ガスを吐出可能なリンス系アーム63が格納されている。リンス系アーム63は,アウターチャンバー46内に収納されて,後述のスピンチャック71で保持されたウェハWの少なくとも中心から周縁部までをスキャン可能である。リンス系アーム63は,処理時以外はリンス系アーム格納部48にて待避する。リンス系アーム63の先端には,純水(DIW)にN2ガスを混合してウェハWに吐出する2流体混合ノズル65が備えられている。2流体混合ノズル65は,純水にN2ガスを混合することにより,リンス液である純水に高圧を与えて吐出し,ウェハWの処理面に吹き付けるように供給することができる。また,ウェハWが疎水性を有する場合は,2流体混合ノズル65は,純水の代わりに後述するIPA混合純水をリンス液として吐出する。
【0033】
さらに,リンス系アーム63は,2流体混合ノズル65から吐出する純水(DIW)を供給する純水供給手段66と,N2ガスを供給するN2ガス供給手段67を有している。純水供給手段66とN2ガス供給手段67は,リンス系アーム63の内部を貫通して設けられており,2流体混合ノズル65に純水及びN2ガスを供給するようになっている。また,リンス系アーム格納部48には,図示しないアーム洗浄装置が備えられ,リンス系アーム63がリンス系アーム格納部48内で待機しているときに,リンス系アーム63を洗浄することができる。
【0034】
図5に示すように,アウターチャンバー46内には,ウェハWを収納するインナーカップ70と,このインナーカップ70内で,例えばウェハWの表面(処理面)を上面にして,ウェハWを回転自在に支持するスピンチャック71を備えている。アウターチャンバー46には,スピンチャック71により支持されたウェハWが位置する高さに傾斜部が形成され,ウェハWは傾斜部に包囲されるようになっている。また,アウターチャンバー用メカシャッター53の上部は傾斜部の一部となっている。スピンチャック71に対してウェハWを授受させる際には,アウターチャンバー用メカシャッター53を開き,ウェハWを水平に移動させる。
【0035】
スピンチャック71は,ウェハWを保持する保持部材80を支持する支持部材としてのチャック本体75と,このチャック本体75の底部に接続された回転筒体76とを備える。チャック本体75の上部には,ウェハWの裏面の周縁部を支持するための図示しない支持ピンと,ウェハWを周縁部から保持するための保持部材80がそれぞれ複数箇所に装着されている。図示の例では,チャック本体75の周囲において,中心角が120°となるように,3箇所に保持部材80が配置されており,それら3つの保持部材80により,ウェハWを周りから保持できるようになっている。また,ウェハWの周縁部を同様に中心角が120°となる位置で下面側から支持できるように,3つの支持ピンがチャック本体75に設けられている。
【0036】
回転筒体76の外周面には,ベルト81が巻回されており,ベルト81をモータ82によって周動させることにより,スピンチャック71全体が回転するようになっている。各保持部材80は,スピンチャック71が回転したときの遠心力を利用して,図4に示すように,ウェハWの周縁部を外側から保持するように構成されている。スピンチャック71が静止しているときは,ウェハWの裏面を支持ピンで支持し,スピンチャック71が回転しているときは,ウェハWの周縁部を保持部材80によって保持する。
【0037】
インナーカップ70は,図7に示す位置に下降して,スピンチャック71をインナーカップ70の上端よりも上方に突出させてウェハWを授受させる状態と,上昇してスピンチャック71及びウェハWを包囲し,ウェハW両面に供給した洗浄液等が周囲に飛び散ることを防止する状態とに上下に移動自在である。インナーカップ70の底部には,インナーカップ70内の液滴を排液するための,図示しないインナーカップ排出管が接続されている。アウターチャンバー46の底部には,アウターチャンバー46内の液滴を排液するための,図示しないアウターチャンバー排出管が接続されている。
【0038】
インナーカップ70が下降すると,図7に示すように,スピンチャック71及びこれに保持されたウェハWがインナーカップ70の上端よりも上方に突出した状態となる。この場合は,アウターチャンバー46内の液滴は,インナーカップ70の外側を下降し,アウターチャンバー排出管によって排液されるようになる。一方,インナーカップ70が上昇すると,インナーカップ70がスピンチャック71及びウェハWを包囲して,ウェハW両面に供給した洗浄液等が周囲に飛び散ることを防止する状態となる。この場合は,インナーカップ70上部がアウターチャンバー46の内壁に近接し,インナーカップ70内の液滴はインナーカップ排出管によって排液されるようになる。
【0039】
図6は,純水(DIW)とN2ガスの供給回路を示している。2流体混合ノズル65の先端には,純水供給手段66から供給された純水を吐出する吐出口90が設けられている。純水供給手段66は,純水供給源92と開閉弁93を備えている。吐出口90から吐出する純水は,純水供給手段66に設けられている純水供給源92から送液される。純水供給手段66は,2流体混合ノズル65を貫通して設けられており,吐出口90に接続している。また,2流体混合ノズル65の内部において,純水供給手段66の途中に,N2ガス供給手段67が介設されている。開閉弁93は,制御部37に信号線94を介して配線接続されている。制御部37は,開閉弁93に制御信号を送信して開閉を制御する。
【0040】
N2ガス供給手段67は,N2ガス供給源95と,N2ガス供給源95からN2ガスを送出する第1供給回路97aと,N2ガス供給源95から送出したN2ガスとIPA(イソプロピルアルコール)とを混合する第2供給回路97bと,第1供給回路97aと第2供給回路97bを切り替えて供給回路99に接続する切替開閉弁98と,切替開閉弁98を通過したN2ガスを純水供給手段66に送出する供給回路99を備えている。
【0041】
第1供給回路97aは,N2ガス供給源95と切替開閉弁98とを接続しており,第1供給回路97aの途中には配管100が介設されている。第2供給回路97bは,第1供給回路97aの途中から分岐する配管100と,純水(DIW)の表面張力を低下させる流体であるIPA(イソプロピルアルコール)を貯留するIPAタンク105と,IPAタンク105と切替開閉弁98とを接続する配管106から構成されている。配管100はIPAタンク105に接続され,第1供給回路97aからIPAタンク105内にN2ガスを送出する。配管100の下流端はIPAタンク105内に貯留されたIPAに浸漬している。従って,配管100を通過したN2ガスは,IPAタンク105内に貯留されたIPAにバブリングされるようになっている。IPAにバブリングされたN2ガスは,IPA雰囲気を混合する混合気体となる。IPAタンク105は密閉容器であり,下部に貯留したIPAの上部に,IPA雰囲気を混合したN2ガスであるIPA混合N2ガスが貯留される。配管106は,IPAタンク105の上部に接続されており,IPAタンク105の上部に貯留されるIPA混合N2ガスをIPAタンク105から切替開閉弁98へ送出するようになっている。このように,第2供給回路97bは,N2ガスをIPAにバブリングさせることにより,IPA混合N2ガスとして送出するようになっている。即ち,第2供給回路97bはN2ガスに対してIPAを混合するIPA混合手段となっている。
【0042】
切替開閉弁98を通過したN2ガス又はIPA混合N2ガスは,供給回路99を通過して純水供給手段66に送出される。ここでN2ガス又はIPA混合N2ガスと純水とが混合し,純水はN2ガス又はIPA混合N2ガスによって圧力を加えられる。従って,ウェハWに純水を吹き付けるように供給することができる。純水にIPA混合N2ガスが混合された場合は,ウェハWに吐出される純水にIPAが混入し,純水よりも表面張力の小さいIPA混合純水となる。
【0043】
ウェハWの疎水性が強い場合,ウェハWの処理面に純水が付着すると,図3(a)に示すように接触角φが大きくなり,純水の液滴WDが蒸発してウェハWが乾燥した際に,ウォーターマークが発生しやすい状態となる。しかし,ウェハWの疎水性が強い場合であっても,ウェハWの処理面に純水よりも表面張力の小さいIPA混合純水が付着すると,表面張力が小さいために接触角φが小さくなり,IPA混合純水の液滴が蒸発してウェハWが乾燥した際に,ウォーターマークが発生しにくい状態にすることができる。このように,ウェハに付着した純水の表面張力を低下させ,ウォーターマークの発生を抑制することができる。一方,ウェハWの親水性が強い場合は,ウェハWの処理面に純水が付着すると,図3(b)に示すように接触角φが小さくなり,純水の液滴WDが蒸発してウェハWが乾燥した際に,ウォーターマークが発生しにくい状態となる。従って,ウェハWに吐出する純水にIPAを混入させる必要はない。
【0044】
切替開閉弁98は,制御部37に信号線102を介して配線接続されている。制御部37は,切替開閉弁98に制御信号を送信し,第1供給回路97aと供給回路99とを接続する状態と,第2供給回路97bと供給回路99とを接続する状態とに切り替えることができる。また,制御部37は,検査装置36から受信した検査結果に基づいて切替開閉弁98の切り替えを行う。即ち,基板処理ユニット22内に搬入したウェハWが親水性である場合はN2ガスを送出する第1供給回路97aに切り替え,疎水性である場合は,IPA混合N2ガスを送出する第2供給回路97bに切り替えるように,切替開閉弁98に制御信号を送信する。従って,2流体混合ノズル65は,親水性のウェハWに対しては純水とN2ガスの混合流体を吐出し,疎水性のウェハWに対しては純水,N2ガス及びIPAの混合流体を吐出するようになっている。また,親水性のウェハWは純水によってリンス処理され,疎水性のウェハWはIPA混合純水によってリンス処理される。この場合,ウェハWの疎水性が弱い場合はIPAを混合させないので,IPAの使用量を節約することができる。
【0045】
以上が基板処理ユニット22の構成であるが,処理システム1に備えられた他の基板処理ユニット23,24,25も,基板処理ユニット22と同様の構成を有し,薬液と純水によりウェハWを洗浄処理することができる。
【0046】
ウェハWにエッチング処理及び/又はアッシング処理を施すエッチング処理部4は,ウェハ搬送部30からみて左側に設けられた左エッチング処理部110aと,右側に設けられた右エッチング処理部110bを備えている。左エッチング処理部110aは,エッチング処理及び/又はアッシング処理を行うエッチング処理装置120a,エッチング処理装置120aにウェハWを搬入出する搬入出部であるロードロック122aから構成されている。ロードロック122aは,エッチング処理装置120aとウェハ搬送部30との間でウェハの受け渡しを行う。また,ロードロック122aには2本のウェハWを把持するウェハ搬送アーム123a,124aが備えられている。右エッチング処理部110bは,左エッチング処理部110aと同様の構成を有し,ウェハWに対してエッチング処理及び/又はアッシング処理を施すことができる。即ち,エッチング処理装置120b,ロードロック122b,ウェハ搬送アーム123b,124bが備えられている。
【0047】
次に,以上のように構成された処理システム1におけるウェハWの処理工程を説明する。先ず,図示しない搬送ロボットにより未だエッチング処理されていないウェハWを例えば25枚ずつ収納したキャリアCがイン・アウトポート6に載置される。そして,このイン・アウトポート6に載置されたキャリアCから,ウエハ搬送装置12の例えば下段の取出収納アーム19aによって一枚ずつウェハWが取り出される。取出収納アーム19aは,下段のウェハ受け渡しユニット20aにウェハWを載置する。次に,主ウェハ搬送装置32は,ウェハ受け渡しユニット20aに載置されたウェハWを例えば最下段の搬送アーム42aによって受け取り,筒状支持体40がθ方向に回転することにより,受け取ったウェハWをウェハ受け渡しユニット21a,21b側へ搬送する。そして,搬送アーム42aによって下段のウェハ受け渡しユニット21aへウェハWを載置する。続いて,ウエハ搬送装置31は例えば下段の取出収納アーム39aによって,ウェハ受け渡しユニット21aに載置されたウェハWを受け取り,左エッチング処理部110a又は右エッチング処理部110bに搬送する。
【0048】
例えば左エッチング処理部110aに搬送されたウェハWは,ロードロック122aに備えられた例えば下段のウェハ搬送アーム123aによってエッチング処理装置120aに搬入される。エッチング処理装置120aでは,エッチング処理が施された後,アッシング処理が行われる。その後,例えばウェハ搬送アーム124aによってエッチング処理装置120aから搬出され,例えば上段の取出収納アーム39bによって把持されてウエハ搬送装置31によって搬送され,上段のウェハ受け渡しユニット21bへ載置される。
【0049】
上段のウェハ受け渡しユニット21bでは,検査装置36によるウェハWの疎水性の検査が行われる。先ず,ウェハ受け渡しユニット21bに載置されたエッチング処理及び/又はアッシング処理を施された後のウェハWの処理面に,疎水性の強さを検査するための検査用薬液の液滴Dを滴下する。そして,液滴Dが形成する接触角φを計測し,計測した接触角φから疎水性の強さを検出し,制御部37に検出信号が送信される。
【0050】
一方,処理面において接触角φが計測されたウェハWは,主ウェハ搬送装置32の例えば搬送アーム42bによって把持されて,ウェハ受け渡しユニット21bから各基板処理ユニット22,23,24,25に適宜搬入される。そして,薬液洗浄,2流体混合ノズル65を用いたパーティクル除去洗浄を含むリンス処理,及び乾燥処理からなる所定の洗浄処理を施すことにより,ウェハWに付着しているポリマーやパーティクル等の汚染物質が除去される。ここで,ウェハ受け渡しユニット21bにおいて検出された疎水性の強さに基づき,制御部37が切替開閉弁98に制御信号を送信し,2流体混合ノズル65から吐出する混合流体の切り替えが行われる。所定の洗浄処理工程が終了したウェハWは,主ウェハ搬送装置32の例えば搬送アーム42cによって各基板処理ユニット22,23,24,25から適宜搬出される。
【0051】
各基板処理ユニット22,23,24,25から搬出されたウェハWは,主ウェハ搬送装置32の筒状支持体40の回転によりウェハ受け渡しユニット21a,21b側へ搬送され,搬送アーム42cによって加熱・冷却部26内に設置された5台のベーキングユニットのいずれかに適宜搬入される。各ベーキングユニットにおけるベーキング処理が終了したウェハWは,主ウェハ搬送装置32の例えば搬送アーム42cによって各ベーキングユニットから適宜搬出され,筒状支持体40の回転によりウェハ受け渡しユニット21a,21b側へ搬送され,上段の搬送アーム42cによって上段のウェハ受け渡しユニット21bへ載置される。
【0052】
以上のように,エッチング処理部4においてウェハWのエッチング処理工程の後,アッシング処理工程が行われ,次に洗浄処理部3の各基板処理ユニット22,23,24,25において薬液処理,リンス処理の順に行われた後,ウェハWを乾燥させる乾燥処理工程が行われ,さらに,各ベーキングユニットにおいてベーキング処理工程が行われる。
【0053】
続いてウエハ搬送装置12は,例えば上段の取出収納アーム19bによって,上段のウェハ受け渡しユニット21bからウェハWを受け取り,線幅測定部8へ搬送する。線幅測定部8では,エッチング処理部4及び洗浄処理部3における処理を終了したウェハの処理面に施されたパターンの線幅を測定する。その後,ウエハ搬送装置12によってウェハWを線幅測定部8から搬出してイン・アウトポート6側へ搬送し,再びキャリアCに収納する。
【0054】
ここで,代表して基板処理ユニット22での洗浄について説明する。図5に示すように,先ず基板処理ユニット22のユニットチャンバー用メカシャッター51が開き,また,アウターチャンバー46のアウターチャンバー用メカシャッター53が開く。そして,ウェハWを保持した搬送アーム42bを基板処理ユニット22内に進入させる。インナーカップ70は予め下降してチャック本体75を上方に相対的に突出させている。また,薬液系アーム格納部用シャッター55とリンス系アーム格納部用シャッター57は閉じている。
【0055】
主ウェハ搬送装置32は,搬送アーム42bを水平移動させてスピンチャック71にウェハWを渡し,スピンチャック71は,図示しない支持ピンによって,半導体デバイスが形成されるウェハWの表面(処理面)を上面にしてウェハWを支持する。ウェハWをスピンチャック71に受け渡した後,搬送アーム42bはアウターチャンバー46及びユニットチャンバー用メカシャッター51の内部から退出し,退出後,基板処理ユニット22のユニットチャンバー用メカシャッター51とアウターチャンバー46のアウターチャンバー用メカシャッター53が閉じられる。また,インナーカップ70は上昇し,チャック本体75とウェハWを囲んだ状態となる。
【0056】
次に,スピンチャック71が回転を開始して,ウェハWを回転保持する。また,薬液系アーム格納部用シャッター55が開き,薬液系アーム60がウェハWの上方に回動する。薬液系アーム60は,スピンチャック71で回転保持されたウェハWの少なくとも中心から周縁部までをスキャンし,薬液を供給する。このようにして薬液をウェハW表面全体に拡散させることができる。供給される薬液はヒータなどの温度調整器により所定温度に温調されている。ウェハWの周囲へ流れた薬液はインナーカップ70内へ流れ,さらに図示しないインナーカップ排出管によってアウターチャンバー46内から排液される。薬液による洗浄が終了すると,薬液系アーム60は薬液系アーム格納部47内に移動し,薬液系アーム格納部用シャッター55が閉じる。薬液系アーム格納部用シャッター55は閉じたまま薬液系アーム格納部47の密閉状態を保ち,薬液系アーム60から発生する薬液雰囲気がウェハWとリンス系アーム63を汚染することを防止する。その後,インナーカップ70は図7に示すように下降し,チャック本体75とウェハWはアウターチャンバー46に囲まれた状態となる。
【0057】
次に,リンス系アーム格納部用シャッター57が開き,リンス系アーム63がリンス系アーム格納部48からアウターチャンバー46内に移動し,ウェハWの上方に回動する。制御部37は制御信号を送信して,図6に示す純水供給手段66の開閉弁93を開き,2流体混合ノズル65に純水が送液される。一方,制御部37は,ウェハWを基板処理ユニット22内に搬入する前に検査装置36によって検査した結果から,ウェハWが疎水性であるか親水性であるかを判断する。そして,この判断に基づいた制御信号を,信号線102を介して切替開閉弁98に対して送信する。即ち,切替開閉弁98の切り替えが制御されることにより,2流体混合ノズル65は,ウェハWが親水性である場合は,純水とN2ガスを混合した混合流体を吐出し,ウェハWが疎水性である場合は,純水,N2ガス及びIPAを混合した混合流体を吐出する。
【0058】
ウェハWが親水性である場合は,切替開閉弁98を第1供給回路97aに切り替え,N2ガス供給源95からN2ガスを送出し,2流体混合ノズル65に供給する。N2ガスは供給回路99を通過し,供給回路99と純水供給手段66との介設部において純水供給手段66内に流入する。ここで純水はN2ガスにより加圧される。そして,吐出口90からN2ガスと加圧された純水とを吐出し,親水性のウェハWに純水を供給してリンス処理する。
【0059】
一方,ウェハWが疎水性である場合は,切替開閉弁98を第2供給回路97bに切り替え,IPAタンク105の上部に貯留されているIPA混合N2ガスを送出し,2流体混合ノズル65に供給する。IPA混合N2ガスは供給回路99を通過し,供給回路99と純水供給手段66との介設部において純水供給手段66内に流入する。ここで純水はIPA混合N2ガスにより加圧されるとともに,IPA混合N2ガスのIPAが混入することによりIPA混合純水となる。このようにして,吐出口90からIPA混合N2ガスと加圧されたIPA混合純水とを吐出し,疎水性のウェハWにIPA混合純水を供給してリンス処理する。
【0060】
リンス系アーム63は,ウェハWの少なくとも中心から周縁までをスキャンし,2流体混合ノズル65から純水,N2ガス及びIPAの混合流体,又は純水とN2ガスの混合流体を吐出する。図7に示すように,ウェハWの周囲へ流れた混合流体はアウターチャンバー46内へ流れ,さらに図示しないアウターチャンバー排出管によってアウターチャンバー46内から排出される。純水又はIPA混合純水によるリンス処理が終了すると,開閉弁93及び切替開閉弁98を閉じ,混合流体の供給を停止させ,リンス系アーム63はリンス系アーム格納部48内に移動し,リンス系アーム格納部用シャッター57が閉じる。
【0061】
リンス処理後,ウェハWをリンス処理するときよりも高速(例えば1500rpm程度)に回転させてウェハWをスピン乾燥させる。この場合,リンス系アーム63により,ウェハW上面にN2を供給してもよい。ウェハWに付着していた純水又はIPA混合純水の液滴は,遠心力によりウェハWから振り切られてアウターチャンバー46内へ排出され,さらに図示しないアウターチャンバー排出管によってアウターチャンバー46内から排出される。
【0062】
乾燥処理後,基板処理ユニット22内からウェハWを搬出する。ユニットチャンバー用メカシャッター53とアウターチャンバー用メカシャッター51が開き,ウェハ搬送装置32が例えば搬送アーム42bを装置内に進入させてウェハW下面を支持する。次いで,搬送アーム42bがスピンチャック71の支持ピンからウェハWを離して受け取り,基板処理ユニット22内から退出する。
【0063】
かかる基板処理ユニット22によれば,純水の表面張力を低下させるIPAを純水に混入させることにより,純水よりも表面張力の小さいIPA混合純水をウェハWに供給するので,ウォーターマークの発生を抑制することができる。ウェハWが親水性である場合は純水にIPAを混合しないので,IPAの使用量を節約することができる。
【0064】
以上,本発明は以上に限られないことは勿論であり,適宜変更実施することが可能である。例えば,本発明の基板は半導体ウェハに限らず,その他のLCD基板用ガラスやCD基板,プリント基板,セラミック基板などであっても良い。
【0065】
また,本発明は薬液が供給される基板処理装置に限定されず,その他の種々の処理液などを用いて洗浄以外の他の処理を基板に対して施し,その後に,純水によりリンス処理やパーティクルを除去するリンス処理を施すものであっても良い。例えば,エッチング処理部4においてエッチング処理のみを施す場合は,基板処理ユニット22においてレジスト除去処理用の薬液によりレジスト除去処理を行い,その後,実施の形態に説明した薬液とリンス液による洗浄処理を行うようにしても良い。また,基板処理装置は,ブラシやスポンジなどのスクラバーによりウェハWをスクラブ洗浄するものであっても良い。さらに,基板の処理は,2流体混合ノズル65によるウェハWの洗浄,例えばウェハWに付着したパーティクルを除去する洗浄のみであっても良い。
【0066】
検査装置36は,基板処理ユニット22内のアウターチャンバー46の上部に設置しても良い。この場合,薬液処理工程の終了後,リンス処理工程を行う前に,ウェハWの疎水性を検査する検査工程を行うことができる。即ち,薬液の種類によってウェハWの疎水性が変化する場合であっても,基板処理ユニット22からウェハWを搬出することなく,ウェハWの疎水性を検査することができる。例えば,ウェハWをHF(希フッ酸)によって薬液処理すると疎水性になり,APM(アンモニアと過酸化水素水の混合溶液)やSPM(濃硫酸と過酸化水素水の混合溶液)によって薬液処理すると親水性を示す。このような場合も,検査結果に応じて,ウェハWに供給するリンス液を純水とIPA混合純水のいずれかに切り替えることができる。
【0067】
ウェハWの疎水性を判断する手段は,接触角φを計測する検査装置36によるものに限定されず,その他の種々の方法を用いることができる。例えば,ウェハWの処理面に形成された膜の種類が予め確認されている場合は,膜の種類によってリンス液を切り替えるようにしても良い。例えば,ポリシリコン膜は疎水性であるため,IPA混合純水により処理するようにする。一方,シリコン酸化膜は親水性であるため,純水により処理しても良い。また,リンス処理工程前の薬液処理工程において使用する薬液の種類に基づき,IPAの混合を制御するようにしても良い。例えば,前述のHFによってウェハWを薬液処理した場合は,ウェハWの処理面は疎水性となるので,IPA混合純水によりリンス処理する。前述のAPMやSPMによって薬液処理した場合は,ウェハWの処理面は親水性となるので,純水によりリンス処理するように切り替える。
【0068】
図6において,切替開閉弁98を混合弁(ミキシングバルブ)とし,第1供給回路97aから送出されるN2ガスと,第2供給回路97bから送出されるIPA混合N2ガスとを混合できるようにしても良い。この場合,検査装置36の検査結果に基づき,混合弁によってIPAの混合を制御することができる。即ち,計測した接触角φが大きく疎水性が強いほど,第2供給回路97bから送出されるIPA混合N2ガスの混合を増量させる制御をすることにより,純水に混合するIPAを増量してIPA混合純水の表面張力を小さくすることができる。逆に,接触角φが小さく疎水性が弱い場合は,IPAの混合量を少なくし,IPAの使用量を節約することができる。また,例えばN2ガスをIPAにバブリングさせる際に,配管100からIPAタンク105へ送出するN2ガスの速度を制御することにより,N2ガスに混合するIPAの量を制御しても良い。さらに,N2ガスの温度を調節する温調機能を備えて,純水とN2ガスの混合流体を供給する場合は,N2ガスの温度を例えば50〜200℃にして供給しても良い。この場合,ウェハWに付着した純水の乾燥速度を向上させることができるので,ウォーターマークの発生をより効果的に抑制する。
【0069】
図8に示すように,純水にIPAを混合するIPA混合手段120を純水供給手段66に設けても良い。図8においては,純水供給手段66の途中に,IPA混合手段120が切替混合弁121を介して介設されている。IPA供給手段120は,IPAの供給源であるIPA供給タンク122を備えている。切替混合弁121は制御部37に図示しない信号線を介して配線接続されている。即ち,IPA供給手段120及び切替混合弁121は,純水に対してIPAを混合するIPA混合手段となっている。N2ガス供給源95を備えるN2ガス供給手段67の途中には,制御部37に信号線を介して配線接続される開閉弁125が介設されている。この場合も,2流体混合ノズル65の内部において純水,IPA及びN2ガスを混合することができる。
【0070】
また,図8において,純水にIPAを混合する切替混合弁121は,IPA混合純水のIPAの濃度を調節可能な調節装置としても良い。この場合,検査装置36の検査結果に基づき,IPAの混合を制御することができる。即ち,計測した接触角φが大きく疎水性が強いほど,IPAの混合量を増量し,IPA混合純水の表面張力を小さくするようにする。そして,ウェハWの疎水性が非常に強い場合は,純水を混合せずにIPAをそのまま2流体混合ノズル65に供給し,IPA及びN2ガスを混合して吐出し,ウェハWのリンス処理をIPAにより行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】処理システムの概略平面図である。
【図2】処理システムの概略側断面図である。
【図3】ウェハの処理面における液滴の接触角について説明する説明図である。
【図4】基板処理ユニットの平面図である。
【図5】基板処理ユニットの側断面図である。
【図6】純水及びN2ガスを供給する供給回路の説明図である。
【図7】リンス処理工程におけるアウターチャンバー内の側断面図である。
【図8】本発明の実施例にかかる純水及びN2ガスを供給する供給回路の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
C キャリア
W ウェハ
WD 液滴
φ 接触角
1 処理システム
2 搬入出部
3 洗浄処理部
4 エッチング処理部
20a,20b ウェハ受け渡しユニット
21a,21b ウェハ受け渡しユニット
22 基板処理ユニット
32 主ウェハ搬送装置
36 検査装置
37 制御部
45 ユニットチャンバー
46 アウターチャンバー
60 薬液系アーム
63 リンス系アーム
65 2流体混合ノズル
66 純水供給手段
67 N2ガス供給手段
70 インナーカップ
90 吐出口
95 N2ガス供給源
97a 第1供給回路
97b 第2供給回路
99 供給回路
105 IPAタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を供給する処理液供給手段と,不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と,前記処理液に前記不活性ガスを混合し、不活性ガスによって圧力を加えられた処理液を基板に吐出する二流体混合ノズルを備え,前記処理液によって基板を処理する基板処理装置であって,
前記処理液供給手段に,前記処理液の表面張力を低下させる流体と前記処理液とを混合する流体混合手段を備えたことを特徴とする,基板処理装置。
【請求項2】
前記流体混合手段を制御する制御部を備えたことを特徴とする,請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板に薬液を供給する薬液供給ノズルを備えたことを特徴とする,請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は,前記薬液の種類に基づき,前記流体混合手段を制御することを特徴とする,請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板が疎水性か親水性かを検査する検査手段を備えたことを特徴とする,請求項2,3又は4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は,前記検査手段の検査結果に基づき前記流体混合手段を制御することを特徴とする,請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
二流体混合ノズルで処理液と不活性ガスを混合して不活性ガスによって圧力を加えられた処理液を供給し,前記不活性ガスによって圧力を加えられた処理液によって基板を処理する基板処理方法であって,
前記処理液の表面張力を低下させる流体を混合した処理液と,前記不活性ガスを混合して供給することを特徴とする,基板処理方法。
【請求項8】
前記処理液によって基板を処理する工程の前に,薬液を供給して基板を処理する工程を有することを特徴とする,請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記薬液の種類に基づき,前記流体の混合を制御することを特徴とする,請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板の処理面に,基板の疎水性の強さを検査するための検査用液の液滴を滴下し,前記基板の処理面における前記液滴の接触角を計測することにより,基板が疎水性か親水性かを検査すること特徴とする,請求項7〜9のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記接触角の大きさに基づき,前記流体の混合を制御することを特徴とする,請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
基板をアッシング処理する工程と,
前記処理液を供給して基板を処理する工程と,
前記基板を乾燥させる工程と,
基板をベーキング処理する工程を有することを特徴とする,請求項7〜11のいずれかに記載の基板処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−324610(P2007−324610A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179377(P2007−179377)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【分割の表示】特願2001−369627(P2001−369627)の分割
【原出願日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】