説明

基板処理装置

【課題】処理液の供給形態を工夫することにより、清浄度高く処理することができ、かつ乾燥不良を防止できる基板処理装置を提供する。
【解決手段】左側の噴出管7からは純水の供給が停止され、右側の噴出管7のみから純水が供給される。これにより、ドライエアの供給方向と液面付近における純水の流れとが一致するので、純水の流れに澱みが生じにくく、洗浄時に基板Wから剥離されて純水中に漂うパーティクルが効率的に排出される。その結果、引き上げられる基板Wにパーティクルが付着するのを防止することができ、基板Wを清浄度高く処理することができる。また、液面の中央部が盛り上がることがなく、ドライエアにより液面中央に波立ちが生じるのを防止することができるので、引き上げ中の基板Wに飛沫が付着することを防止でき、基板Wの乾燥不良を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)に対して所定の処理を施す基板処理装置に係り、特に、処理槽に処理液を供給しつつ、処理液面の上方にて水平方向へ乾燥気体を供給するとともに処理液から基板を引き上げて基板に対して乾燥処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、処理液を貯留する処理槽と、処理槽の底部から処理液を供給する噴出管と、基板を支持し、処理槽の内部と処理槽の上方とにわたって昇降可能に構成されたリフタと、処理槽の液面近傍に備えられ、一方側から他方側へドライエアを供給するためのノズルとを備えたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された装置では、噴出管から純水を供給させ、処理槽の底部から上方へ向かうアップフローの液流を形成させることで、純水を処理槽から溢れさせる。そして、基板を支持したリフタを下降させて基板を純水に浸漬させ、所定時間の処理の後にリフタを純水から上昇させる。このとき、ノズルからドライエアを水平方向に供給することにより、純水の液面から順次に露出する基板を乾燥させる。
【特許文献1】特開平11−354488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、アップフローで供給された純水が、処理槽の中央部を上昇して液面近くで左右に分かれ、処理槽の上縁の左右に分かれて溢れる。一方、ノズルから供給されるドライエアは、一方側から他方側へと一方向へのみ供給されている関係上、溢れる純水の流れに逆らう部分が生じる。そのため、ドライエアの流れと純水の流れが反対となる部分において純水の流れに澱みが生じ、純水中のパーティクルの排出効率が低下するので、引き上げてゆく基板がパーティクルで汚染されるという問題がある。
【0005】
また、アップフローにより中央部の液面が盛り上がり、乾燥気体によりその部分に波立ちが発生し、純水の液滴が飛散して引き上げ中の基板に付着するので、ウォータマークが発生して乾燥不良を生じることがあるという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、処理液の供給形態を工夫することにより、清浄度高く処理することができ、かつ乾燥不良を防止できる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、処理液で基板を処理した後、基板を処理液から引き上げつつ乾燥気体で乾燥処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽の上部にて、前記処理槽内に貯留する処理液面に沿って一方側から他方側へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段と、前記処理槽の底部両端側に配設され、前記処理槽の底部中央に向けて処理液を供給する一対の噴出管と、基板を支持し、前記処理槽内部の処理位置と処理槽上方にあたる乾燥位置にわたって昇降自在に構成された支持手段と、前記支持手段を処理位置に位置させた状態で、前記一対の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、前記乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ前記支持手段を上昇させる際には、前記一対の噴出管のうち、前記乾燥気体供給手段における乾燥気体の排出側に位置する一方の噴出管のみから処理液を供給させる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御手段は、支持手段を処理位置に位置させた状態で、一対の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ支持手段を上昇させる際には、一対の噴出管のうち、乾燥気体供給手段における乾燥気体の排出側に位置する一方の噴出管のみから処理液を供給させる。したがって、基板の処理中には、一対の噴出管から供給された処理液が底部中央から液面付近に向かって上昇しつつ処理槽の両側に向かって流れが分かれ、処理槽の両上縁から排出される。基板を引き上げ乾燥させる際には、一対の噴出管のうち乾燥気体の排出側に位置する一方の噴出管のみから処理液を供給させるので、供給された処理液は、処理槽の底部に沿って他方の噴出管側へ向かった後、処理槽の側壁に沿って上昇し、液面付近を乾燥気体の排出側へ向かって流れた後に処理槽の上縁から溢れて排出される。したがって、乾燥気体の供給方向と液面付近における処理液の流れとが一致するので、処理液の流れに澱みが生じにくく、処理液中のパーティクルが効率的に排出される。その結果、引き上げられる基板にパーティクルが付着するのを防止することができ、清浄度高く処理することができる。また、液面の中央部が盛り上がることがなく、乾燥気体により液面中央に波立ちが生じるのを防止することができるので、引き上げ中の基板に飛沫が付着することを防止でき、乾燥不良を防止することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、処理液で基板を処理した後、基板を処理液から引き上げつつ乾燥気体で乾燥処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽の上部にて、前記処理槽内に貯留する処理液面に沿って一方側から他方側へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段と、前記処理槽の底部両端のうち、前記乾燥気体供給手段における乾燥気体の供給側に配設され、前記処理槽の底部中央へ処理液を供給する第1の方向と、処理槽の上方へ処理液を供給する第2の方向とを切り換え可能な第1の噴出管と、前記第1の噴出管とは前記処理槽の底部における反対側に配設され、前記処理槽の底部中央に向けて処理液を供給する第2の噴出管と、前記支持手段を処理位置に位置させた状態で、前記第1の噴出管から第1の方向へ処理液を供給させるとともに、前記第2の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、前記乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ前記支持手段を上昇させる際には、前記第2の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、前記第1の噴出管から第2の方向へ処理液を供給させる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、制御手段は、支持手段を処理位置に位置させた状態で、第1の噴出管から第1の方向へ処理液を供給させるとともに、第2の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ支持手段を上昇させる際には、第2の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、第1の噴出管から第2の方向へ処理液を供給させる。したがって、基板の処理中は、第1の噴出管から第1の方向へ供給された処理液及び第2の噴出管から供給された処理液が底部中央から液面付近に向かって上昇しつつ処理槽の両側に向かって流れが分かれ、処理槽の両上縁から排出される。基板を引き上げ乾燥させる際には、第1の噴出管の第2の方向のみから処理液を供給させるので、供給された処理液は、処理槽の側壁に沿って上昇し、液面付近を乾燥気体の排出側へ向かって流れた後に処理槽の上縁から溢れて排出される。したがって、乾燥気体の供給方向と液面付近における処理液の流れとが一致するので、処理液の流れに澱みが生じにくく、処理液中のパーティクルが効率的に排出される。その結果、引き上げられる基板にパーティクルが付着するのを防止することができ、清浄度高く処理することができる。また、液面の中央部が盛り上がることがなく、乾燥気体により液面中央に波立ちが生じるのを防止することができるので、引き上げ中の基板に飛沫が付着することを防止でき、乾燥不良を防止することができる。
【0011】
また、本発明は、前記第1の噴出管は、縦断面円形状の筒部材と、筒部材の内部空間を二分する仕切り部材と、仕切り部材で仕切られた一方の内部空間に連通し、前記第1の方向へ処理液を供給する第1の噴出口と、仕切り部材で仕切られた他方の内部空間に連通し、前記第2の方向へ処理液を供給する第2の噴出口と、を備えていることが好ましい(請求項3)。筒部材を仕切り部材で仕切って第1の噴出口と第2の噴出口とを形成し、第1の噴出管への処理液の供給先を切り換えるだけで処理液の供給方向を切り換えることができる。したがって、余分なスペースを必要とせず、省スペース化を図ることができる。
【0012】
また、本発明は、前記第1の噴出管は、第1の方向へ処理液を供給する第1の筒部材と、第2の方向へ処理液を供給する第2の筒部材と、を備えて別体で構成されていることが好ましい(請求項4)。別体の第1の筒部材と第2の筒部材とで第1の噴出管を構成しているので、両筒部材の構造を簡易化できる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、処理液で基板を処理した後、基板を処理液から引き上げつつ乾燥気体で乾燥処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽の上部にて、前記処理槽内に貯留する処理液面に沿って一方側から他方側へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段と、前記処理槽の底部両端側に配設され、前記処理槽の底部中央に向けて処理液を供給する一対の噴出管と、前記処理槽の上部両側壁うち、前記乾燥気体供給手段の供給側に配設され、前記処理槽の液面付近にて前記乾燥気体供給手段の排出側に向けて処理液を供給する上部噴出管と、基板を支持し、前記処理槽内部の処理位置と処理槽上方にあたる乾燥位置にわたって昇降自在に構成された支持手段と、前記支持手段を処理位置に位置させた状態で、前記一対の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、前記乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ前記支持手段を上昇させる際には、前記一対の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、前記上部噴出管から処理液を供給させる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、制御手段は、支持手段を処理位置に位置させた状態で、一対の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ支持手段を上昇させる際には、一対の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、上部噴出管から処理液を供給させる。したがって、基板の処理中には、一対の噴出管から供給された処理液が底部中央から液面付近に向かって上昇しつつ処理槽の両側に向かって流れが分かれ、処理槽の両上縁から排出される。基板を引き上げ乾燥させる際には、一対の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、上部噴出管のみから処理液を供給させるので、供給された処理液は、液面付近を乾燥気体の排出側へ向かって流れた後に処理槽の上縁から溢れて排出される。したがって、乾燥気体の供給方向と液面付近における処理液の流れとが一致するので、処理液の流れに澱みが生じにくく、処理液中のパーティクルが効率的に排出される。その結果、引き上げられる基板にパーティクルが付着するのを防止することができ、清浄度高く処理することができる。また、液面の中央部が盛り上がることがなく、乾燥気体により液面中央に波立ちが生じるのを防止することができるので、引き上げ中の基板に飛沫が付着することを防止でき、乾燥不良を防止することができる。
【0015】
また、本発明は、前記制御手段は、前記一対の噴出管からの処理液の供給を停止させることに代えて、前記一対の噴出管のうち、前記乾燥気体供給手段の供給側に位置する噴出管からの処理液の供給だけを停止させることが好ましい(請求項6)。一対の噴出管のうち、乾燥気体供給手段の供給側に位置する噴出管からの処理液の供給だけを停止させても、乾燥気体の供給方向と液面付近における処理液の流れとが一致する。処理槽内部の流れを止めないので、基板の引き上げ時であっても処理槽内部のパーティクルの排出を継続させることができる。
【0016】
また、本発明は、前記処理槽の上部両側壁のうち、前記乾燥気体供給手段の供給側に、上縁から処理槽の中央部側に向かって延出された整流版をさらに備えていることが好ましい(請求項7)。乾燥気体の流速が速く供給側に整流版を設けているので、液面が波立つのを防止して液面から処理液の飛沫が飛散するのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る基板処理装置によれば、基板の処理中には、一対の噴出管から供給された処理液が底部中央から液面付近に向かって上昇しつつ処理槽の両側に向かって流れが分かれ、処理槽の両上縁から排出される。基板を引き上げ乾燥させる際には、一対の噴出管のうち乾燥気体の排出側に位置する一方の噴出管のみから処理液を供給させるので、供給された処理液は、処理槽の底部に沿って他方の噴出管側へ向かった後、処理槽の側壁に沿って上昇し、液面付近を乾燥気体の排出側へ向かって流れた後に処理槽の上縁から溢れて排出される。したがって、乾燥気体の供給方向と液面付近における処理液の流れとが一致するので、処理液の流れに澱みが生じにくく、処理液中のパーティクルが効率的に排出される。その結果、引き上げられる基板にパーティクルが付着するのを防止することができ、清浄度高く処理することができる。また、液面の中央部が盛り上がることがなく、乾燥気体により液面中央に波立ちが生じるのを防止することができるので、引き上げ中の基板に飛沫が付着することを防止でき、乾燥不良を防止することができる。
【実施例1】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施例1に係る基板処理装置は、処理液を貯留する処理槽1を備えている。この処理槽1は、処理液を貯留し、起立姿勢とされた複数枚の基板Wを収容可能に構成されている。処理槽1の底部には、複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理液を処理槽1内に供給するための一対の噴出管7が配設されている。右側の噴出管7には、供給管8の一端側が接続され、供給管8の他端側は、図示しない処理液供給源に連通接続されている。左側の噴出管7には、供給管9の一端側が接続され、供給管9の他端側は、図示しない処理液供給源に連通接続されている。供給管8,9は、フッ化水素酸や、硫酸・過酸化水素水の混合液などの薬液や、純水などを処理液として供給する。供給管8,9には、それぞれ流量制御弁10,11が取り付けられており、これらによって一対の噴出管7から処理槽1に供給される処理液の流量が調整される。
【0020】
処理槽1は、その周囲がチャンバ12で囲われている。チャンバ12は、上部に開閉自在の上部カバー13を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを支持するリフタ15は、チャンバ12の上方にあたる「待機位置」と、処理槽1の内部にあたる「処理位置」と、処理槽1の上方であってチャンバ12の内部にあたる「乾燥位置」とにわたって移動可能に構成されている。リフタ15は、複数枚の基板Wを当接支持する支持部材16を下部に備えている。
【0021】
なお、上述したリフタ15が本発明における支持手段に相当する。
【0022】
処理槽1の底部には、排出口17が形成されている。この排出口17には、QDR弁19が取り付けられている。この排出口17から処理槽1内の処理液を排出すると、処理液がチャンバ12内の底部に一旦排出される。チャンバ12の底部には排液弁21が取り付けられており、排液弁21が開放されると、チャンバ12内に排出された処理液が外部に排出される。また、噴出管7から供給されて処理槽1を溢れ、チャンバ12内に排出された処理液も同様にして排液弁21を介して外部に排出される。
【0023】
チャンバ12のうち、処理槽1の上縁側方には、リフタ15に支持された複数枚の基板Wの側方から乾燥気体であるドライエアを供給するための供給部23が配設されている。また、処理槽1を挟んで供給部23と対向する位置には、ドライエアを排出するための排出部25が配設されている。供給部23は、処理槽1に貯留している処理液の液面近傍に開口するように、ドライエアを噴出する噴射口27を備え、排出部25は、ドライエアをチャンバ12外へ排出するための排出口29を処理槽1側に備えている。
【0024】
上述した供給部23には、一端側がドライエア供給装置31に連通接続された供給配管33の他端側が連通接続されている。ドライエア供給装置31は、エアを取り込んで除湿し、所定湿度に調整したドライエアを供給配管33へ供給する。
【0025】
なお、上述した供給部23が本発明における乾燥気体供給手段に相当する。
【0026】
上述したリフタ15の昇降動作や、QDR弁19及び排液弁21の開閉、流量制御弁10,11などは、本発明における制御手段に相当する制御部47によって統括的に制御される。特に、流量制御弁10,11については、以下に説明するように、特徴的な操作が行われる。
【0027】
次に、上述した構成の基板処理装置の動作について、図2及び図3を参照する。なお、図2は、洗浄処理時を示す模式図であり、図3は、乾燥処理時を示す模式図である。以下の説明においては、リフタ15が既に処理位置に移動されているものとする。
【0028】
<洗浄処理時>
制御部47は、流量制御弁10,11を同じ流量に設定して開放し、一対の噴出管7から同じ流量で処理液として純水を処理総1内へ供給させる。すると、純水は、処理槽1の底部両端部から供給され、底部中央にて上方へ向かい、液面付近で左右に分かれて処理槽1から溢れ出る(図2)。この状態を所定時間だけ維持させることにより、基板Wに対して純水による洗浄処理が行われる。
【0029】
<乾燥処理時>
制御部47は、流量制御弁11の流量をゼロに設定する。これにより、左側の噴出管7からは純水の供給が停止され、右側の噴出管7のみから純水が供給される。したがって、純水は、処理槽1の底部右側から底部に沿って左側の噴出管7側へ向かった後、処理槽1の側壁に沿って上昇し、液面付近を排出部25側へ向かって流れた後に処理槽1の上縁から溢れて排出される(図3)。この状態で、制御部47は、供給部23の噴射口27からドライエアを供給させるとともに、リフタ15を乾燥位置に向けて上昇させる。すると、純水の液面から順次に露出する基板Wにドライエアが供給され、基板Wに対する乾燥処理が行われる。
【0030】
上記のようにして基板Wの乾燥処理が行われるが、ドライエアの供給方向と液面付近における純水の流れとが一致するので、純水の流れに澱みが生じにくく、洗浄時に基板Wから剥離されて純水中に漂うパーティクルや処理槽1内の純水中に元々存在するパーティクルが効率的に排出される。その結果、引き上げられる基板Wにパーティクルが付着するのを防止することができ、基板Wを清浄度高く処理することができる。また、液面の中央部が盛り上がることがなく、ドライエアにより液面中央に波立ちが生じるのを防止することができるので、引き上げ中の基板Wに飛沫が付着することを防止でき、基板Wの乾燥不良を防止することができる。
【実施例2】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施例2を説明する。
図4は、実施例2に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図であり、図5は、第2の噴出管の縦断面図である。なお、上述した実施例1と同様の構成については、同符号を付すことで詳細な説明については省略する。
【0032】
本実施例2に係る基板処理装置は、処理槽1の底部左側に第1の噴出管51を備え、処理槽1の底部右側に第2の噴出管53を備えている。第2の噴出管53には、図示しない処理液供給源に一端側が連通接続された供給管55の他端側が連通接続されている。供給管55には、流量を調整する流量制御弁57が取り付けられている。
【0033】
第1の噴出管51は、図5に示すように、縦断面が円形状を呈する筒部材59と、この筒部材59の内部空間を二分する仕切り部材61と、筒部材59に形成され、内部空間の一方に連通し、処理槽1の底部中央に向かう第1の方向へ処理液を供給可能な第1の噴出口63と、筒部材59に形成され、内部空間の他方に連通し、処理槽1の側壁に沿う上方へ向かう第2の方向へ処理液を供給可能な第2の噴出口65と、第1の噴出口63に連通した第1供給口67と、第2の噴出口65に連通した第2供給口69とを備えている。
【0034】
第1供給口67と第2供給口69には、一端側が図示しない処理液供給源に連通接続された供給管71の他端側が三方弁73を介して連通接続されている。つまり、第1供給口67と第2供給口69は、三方弁73の操作により、いずれか一方のみから処理液が供給される。供給管71には、流量を調整する流量制御弁75が取り付けられている。
【0035】
本実施例2における制御部47は、リフタ15などの制御の他、三方弁73の切り換えも制御する。
【0036】
次に、上述した構成の基板処理装置の動作について、図6及び図7を参照する。なお、図6は、洗浄処理時を示す模式図であり、図7は、乾燥処理時を示す模式図である。
【0037】
<洗浄処理時>
制御部47は、三方弁73を第1供給口67側に切り換えるとともに、流量制御弁57,75を同じ流量に設定して開放し、第1の噴出管51と第2の噴射管53とから同じ流量で処理液として純水を処理槽1内へ供給させる。第1の噴射管51からは、第1の方向へ純水が供給される。すると、純水は、処理槽1の底部両端部から供給され、底部中央にて上方へ向かい、液面付近で左右に分かれて処理槽1から溢れ出る(図6)。この状態を所定時間だけ維持させることにより、基板Wに対して純水による洗浄処理が行われる。
【0038】
<乾燥処理時>
制御部47は、流量制御弁57の流量をゼロに設定する。これにより、第2の噴出管53からは純水の供給が停止される。さらに、流量制御弁75を開いた状態で三方弁73を第2供給口69側に切り換える。これにより、第1の噴出管51からは、純水が第2の方向だけに供給される。したがって、純水は、処理槽1の側壁に沿って上昇し、液面付近をドライエアの排出側へ向かって流れた後に処理槽1の上縁から溢れて排出される(図7)。この状態で、制御部47は、噴射口27からドライエアを供給させるとともに、リフタ15を乾燥位置に向けて上昇させる。すると、純水の液面から順次に露出する基板Wにドライエアが供給され、基板Wに対する乾燥処理が行われる。
【0039】
上述した本実施例2に係る基板処理装置であっても、上述した実施例1に係る基板処理装置と同等の効果を奏する。また、筒部材59を仕切り部材61で仕切って第1の噴出口63と第2の噴出口65とを形成し、第1の噴出管51への処理液の供給先を切り換えるだけで処理液の供給方向を切り換えることができる。したがって、処理槽1に余分なスペースを必要とせず、省スペース化を図ることができる。
【0040】
なお、上述した実施例2に係る基板処理装置は、図8に示すように構成してもよい。図8は、実施例2に係る基板処理装置の変形例を示すブロック図である。
【0041】
すなわち、第1の噴出管51が、第1の方向へ処理液を供給する第1の筒部材77と、第2の方向へ処理液を供給する第2の筒部材79との別体で構成されている点において上記実施例2とは構成が相違する。このような構成であっても、三方弁73を上述したタイミングで切り換えることにより、同様の効果を奏する。また、同じ構成の二つの筒部材で第1の噴出管51を構成するので、実施例2の第1の噴射管51に比較して構造を簡易化できる。
【実施例3】
【0042】
次に、図9〜図11を参照して本発明の実施例3を説明する。
図9は、実施例3に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図であり、図10は、洗浄処理時を示す模式図であり、図11は、乾燥処理時を示す模式図である。なお、上述した実施例1と同等の構成については、同符号を付すことで詳細な説明については省略する。
【0043】
本実施例3に係る基板処理装置は、一対の噴出管7を備え、これらの噴出管7には供給管8から処理液が供給される。また、処理槽1の上部両側壁のうち、ドライエアの供給部23側には、上部噴出管81が配設されている。この上部噴出管81には、図示しない処理液供給源に一端側が連通接続された供給管83の他端側が連通接続されており、上部噴出管81は、処理槽1の液面付近において排出部25側に向けて処理液を供給する。供給管83には、流量を調整する流量制御弁85が取り付けられている。
【0044】
洗浄処理時(図10)においては、流量制御弁85の流量をゼロにして上部噴出管81からの純水の供給を遮断させた状態で、一対の噴出管7から純水を供給させて基板Wに対して処理を行う。一方、乾燥処理時(図11)においては、流量制御弁10の流量をゼロにして純水の供給を停止させるとともに、流量制御弁85の流量を所定値にして上部噴出管81から純水を供給させる。
【0045】
上述した本実施例3に係る基板処理装置であっても、上述した実施例1,2に係る基板処理装置と同等の効果を奏する。
【0046】
なお、上記の実施例3において、実施例1のように制御部47が、一対の噴出管7のうち、供給部23側に位置する左側の噴出管7からの純水の供給だけを停止させるようにしてもよい。このようにしても、上記同様の効果を奏するとともに、処理槽1の内部の流れを止めないので、基板Wの引き上げ時であっても処理槽1内部のパーティクルの排出を継続させることができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0048】
(1)上述した各実施例1〜3では、処理槽1が単槽で構成されているが、内槽と、内槽から溢れた処理液を回収する外槽とを備えた複槽式の処理槽であってもよい。
【0049】
(2)上述した各実施例1〜3では、供給部23からドライエアを供給しているが、これに代えてドライ窒素や他の乾燥気体を供給する構成としてもよい。
【0050】
(3)上述した各実施例1〜3において、図12に示す変形例のように構成を追加してもよい。
すなわち、処理槽1の上部両側壁のうち、供給部23側に、処理槽1の側壁上縁から排出部25側に向かって延出され、リフタ15及び支持されている基板Wに干渉しない長さの整流板87をさらに備えるようにしてもよい。この整流板87を設けることにより、供給部23側の液面が波立つのを防止して、液面から純水の飛沫が飛散するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】洗浄処理時を示す模式図である。
【図3】乾燥処理時を示す模式図である。
【図4】実施例2に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第2の噴出管の縦断面図である。
【図6】洗浄処理時を示す模式図である。
【図7】乾燥処理時を示す模式図である。
【図8】実施例2の変形例に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】実施例3に係る基板処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】洗浄処理時を示す模式図である。
【図11】乾燥処理時を示す模式図である。
【図12】変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
W … 基板
1 … 処理槽
7 … 噴出管
8,9 … 供給管
10,11 … 流量制御弁
12 … チャンバ
15 … リフタ
23 … 供給部
25 … 排出部
33 … 供給配管
47 … 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液で基板を処理した後、基板を処理液から引き上げつつ乾燥気体で乾燥処理を行う基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽の上部にて、前記処理槽内に貯留する処理液面に沿って一方側から他方側へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段と、
前記処理槽の底部両端側に配設され、前記処理槽の底部中央に向けて処理液を供給する一対の噴出管と、
基板を支持し、前記処理槽内部の処理位置と処理槽上方にあたる乾燥位置にわたって昇降自在に構成された支持手段と、
前記支持手段を処理位置に位置させた状態で、前記一対の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、前記乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ前記支持手段を上昇させる際には、前記一対の噴出管のうち、前記乾燥気体供給手段における乾燥気体の排出側に位置する一方の噴出管のみから処理液を供給させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
処理液で基板を処理した後、基板を処理液から引き上げつつ乾燥気体で乾燥処理を行う基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽の上部にて、前記処理槽内に貯留する処理液面に沿って一方側から他方側へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段と、
前記処理槽の底部両端のうち、前記乾燥気体供給手段における乾燥気体の供給側に配設され、前記処理槽の底部中央へ処理液を供給する第1の方向と、処理槽の上方へ処理液を供給する第2の方向とを切り換え可能な第1の噴出管と、
前記第1の噴出管とは前記処理槽の底部における反対側に配設され、前記処理槽の底部中央に向けて処理液を供給する第2の噴出管と、
前記支持手段を処理位置に位置させた状態で、前記第1の噴出管から第1の方向へ処理液を供給させるとともに、前記第2の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、前記乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ前記支持手段を上昇させる際には、前記第2の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、前記第1の噴出管から第2の方向へ処理液を供給させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記第1の噴出管は、縦断面円形状の筒部材と、筒部材の内部空間を二分する仕切り部材と、仕切り部材で仕切られた一方の内部空間に連通し、前記第1の方向へ処理液を供給する第1の噴出口と、仕切り部材で仕切られた他方の内部空間に連通し、前記第2の方向へ処理液を供給する第2の噴出口と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記第1の噴出管は、第1の方向へ処理液を供給する第1の筒部材と、第2の方向へ処理液を供給する第2の筒部材と、を備えて別体で構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
処理液で基板を処理した後、基板を処理液から引き上げつつ乾燥気体で乾燥処理を行う基板処理装置において、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽の上部にて、前記処理槽内に貯留する処理液面に沿って一方側から他方側へ乾燥気体を供給する乾燥気体供給手段と、
前記処理槽の底部両端側に配設され、前記処理槽の底部中央に向けて処理液を供給する一対の噴出管と、
前記処理槽の上部両側壁うち、前記乾燥気体供給手段の供給側に配設され、前記処理槽の液面付近にて前記乾燥気体供給手段の排出側に向けて処理液を供給する上部噴出管と、
基板を支持し、前記処理槽内部の処理位置と処理槽上方にあたる乾燥位置にわたって昇降自在に構成された支持手段と、
前記支持手段を処理位置に位置させた状態で、前記一対の噴出管から処理液を供給させて基板に処理を行わせた後、前記乾燥気体供給手段から乾燥気体を供給させつつ前記支持手段を上昇させる際には、前記一対の噴出管からの処理液の供給を停止させるとともに、前記上部噴出管から処理液を供給させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求5に記載の基板処理装置において、
前記制御手段は、前記一対の噴出管からの処理液の供給を停止させることに代えて、前記一対の噴出管のうち、前記乾燥気体供給手段の供給側に位置する噴出管からの処理液の供給だけを停止させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理槽の上部両側壁のうち、前記乾燥気体供給手段の供給側に、上縁から前記処理槽の中央部側に向かって延出された整流板をさらに備えていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−205360(P2008−205360A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42106(P2007−42106)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】