説明

基板処理装置

【課題】大型基板の塗布処理において低コストで適切なダウンフローを形成する技術を提供する。
【解決手段】FFU61の外側周囲に第1板状部材62を設置する。また、ステージ3の周囲に排気容器71を配置するとともに、当該排気容器71の外側周囲に第2板状部材を配置する。また、大型基板90を搬送するハンド901の基板搬送経路と干渉しないように、搬送側(−Y側)に設けられる第1板状部材62の下端の位置を搬送経路よりも上方となるように設定する。このような基板処理装置1において、大型基板90の塗布処理を行う際には、FFU61から供給するエアの気流(ダウンフローDF)の勢いが載置面でほぼ消失するように、エアの供給量を調整する。この勢いが消失したエアは、下方に設置された排気容器71に導かれて排気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型基板に塗布処理を行う基板処理技術に関し、特に大型基板に向けて供給するダウンフローを整流する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して処理液(例えば、レジスト液)を塗布する場合、ステージ上の所定の位置に基板を保持し、ノズルを移動させて、基板に処理液を塗布する(いわゆるスキャンコーティング)塗布装置が知られている(例えば、特許文献1)。特に、処理対象となる基板が大型である場合や、角形の基板である場合には、スピンコーティングによって均一な塗布を行うことが難しいため、スキャンコーティングによる塗布が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−87798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置は、一般にクリーンルーム内の所定位置に配置されており、ステージに向けて清浄な下降気流であるダウンフローを供給することによって、クリーンルーム内の塗布装置周囲に飛散するパーティクルが基板に付着することを防止している。そして、塗布装置が載置される床面に、グレーチング等の適当な吹き抜けを設けることによって、適宜排気が行われている。
【0005】
ところが、上記ダウンフローについて、エア供給量が多い場合には、装置の可動部等からパーティクルを周囲に飛散させてしまうおそれがある。また、大型基板の塗布処理の際の乾燥ムラによって、塗布ムラ(膜厚のばらつき)が発生するおそれもある。一方、エア供給量が少ない場合には、塗布装置の周囲に飛散するパーティクルが塗布装置の上方に進入して基板に付着するおそれがある。そこで、なるべく少量のエア供給によって適切なダウンフローを形成する技術が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、大型基板の塗布処理において低コストで適切なダウンフローを形成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、大型基板に所定の処理液を塗布する基板処理装置であって、クリーンルーム内に設置され、大型基板を略水平姿勢でその載置面上に保持するステージと、前記載置面に保持された大型基板の上方を移動しつつ、前記大型基板に向けて処理液を供給するノズルと、前記載置面に対向する位置に配置され、前記ステージに保持された大型基板に向けてエアを供給するエア供給手段と、前記ステージに保持された大型基板に向けて供給されるエアの気流を整流する第1板状部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置であって、前記第1板状部材は、前記ガス供給手段から供給されるエアが前記載置面と略同一の高さ位置に到達する前に前記ステージの上方の領域から外方へ漏出しないように前記エアの気流を整流することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係る基板処理装置であって、前記第1板状部材は、大型基板の搬出入が行われる側に配置されるとともに、前記エア供給手段のエアの供給口の高さ位置と、前記大型基板を前記ステージに搬出入する搬送手段の基板搬送経路と干渉しない高さ位置との間を覆う高さ幅を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記ステージの側方に配置され、前記載置面よりも下方の位置で開口する吸引口が設けられた吸引容器と、前記吸引容器内の雰囲気を排気する排気手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る基板処理装置であって、前記エア供給手段によって供給されるエアの気流を前記排気手段の吸引口へ導くように整流する第2板状部材、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項4または5の発明に係る基板処理装置であって、前記排気手段による排気量を調整する排気量調整手段、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記第1板状部材は、上下方向に進退移動する移動板を含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明に係る基板処理装置であって、前記エア供給手段によるエアの供給量を調整するエア供給量調整手段、をさらに備え、前記エア供給量調整手段は、前記エア供給手段から供給される前記エアの気流の勢いが前記載置面の位置でほぼ消失するように前記エアの供給量の調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし8に記載の発明によれば、第1板状部材によってエアの気流を整流することで、大型基板の塗布処理のときに、供給するエアの量を少量にしても、適切に基板へのパーティクルの付着を防止できる。また、供給するエアの量を少量にできるため、乾燥ムラ等による塗布ムラの発生を抑制することができる。これにより、大型基板に形成された処理液の層の膜厚が不均一になることを効果的に抑制することができる。また、板状部材を使用することによって、容易に、かつ低コストでエアの気流を整流することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、載置面までエアの気流の整流を行うように第1板状部材を設けることで、大型基板の塗布処理のときに、供給するエアの量を抑えても、適切に基板へのパーティクルの付着を防止でき、塗布ムラの発生も効果的に抑制することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、搬送手段が第1板状部材と干渉することを防止できるため、大型基板の搬送を効率良く行うことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、 ステージの下方の位置から排気を行うことができるため、エア供給手段から供給されたエアを適切に排気することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、エア供給手段から供給されたエアを吸引容器へ導くように第2板状部材をもうけることで、効率的にエアを排気することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、排気量を必要に応じて調整できるため、エア供給手段によるエアの供給量に適した排気を行うことができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、移動板を上限に移動させることで、第1板状部材の高さ幅を適宜調整することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、塗布処理のときに、エアの供給量を最小限に抑えるようにできるため、塗布ムラの発生を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0024】
<1. 第1の実施の形態>
<1.1 構成および機能>
図1は、第1の実施の形態における基板処理装置1の本体の概略を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す基板処理装置1を(+X)側から見たときの概略を示す側面図である。さらに、図3は、図1に示す基板処理装置1を(−Y)側から見たときの概略を示す側面図である。ここで、図1では説明の都合上、エア供給機構6および排気機構7の図示を省略している。また、図2および図3においては、架橋構造4等の図示を省略している。
【0025】
なお、図1〜図3において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。
【0026】
基板処理装置1は、本体2と、エア供給機構6と、排気機構7と、制御系8とを主として備え、クリーンルーム(図示せず)内の所定位置に設置される。基板処理装置1は、液晶表示装置の画面パネルを製造するための大型(例えば1平方メートル以上のサイズ)の角型ガラス基板を被処理基板(以下、単に「大型基板90」と称する。)としており、大型基板90の表面に形成された電極層等を選択的にエッチングするプロセスにおいて、大型基板90の表面にレジスト液Rを塗布する塗布装置として構成されている。すなわち、本実施の形態では、スリットノズル41からは、レジスト液Rが吐出される。
【0027】
なお、基板処理装置1は、液晶表示装置用のガラス基板だけでなく、一般にフラットパネルディスプレイ用の種々の基板に所定の処理液を塗布する装置として変形利用することもできる。
【0028】
[本体2]
本体2は、大型基板90を載置して保持するための保持台として機能するとともに、付属する各機構の基台としても機能するステージ3を備える。ステージ3は直方体形状の一体の石製であり、その表面(載置面30)のうち上面および側面は平坦面に加工されている。なお、ステージ3は、図2または図3に示すように、コンクリート等からなるフロアFLに備え付けられた架台32上に載置されており、クリーンルーム内において略開放状態(クリーンルーム内の雰囲気に連通している状態)で設置されている。
【0029】
ステージ3の上面中央部に設けられた矩形の領域である基板保持領域300には多数の真空吸着口または真空吸着用の溝(図示せず)が分散して形成されており、基板処理装置1において大型基板90を処理する間、大型基板90を吸着することにより、大型基板90を所定の水平位置に保持する。
【0030】
基板保持領域300(大型基板90が保持される領域)を挟んだ両端部には、略水平方向に平行に伸びる一対の走行レール31aが固設される。走行レール31aは、架橋構造4の両端部に固設される支持ブロック31bとともに、架橋構造4の移動を案内し(移動方向を所定の方向に規定する)、架橋構造4を基板保持領域300の上方に支持するリニアガイドを構成する。
【0031】
ステージ3の上方には、このステージ3の両側部分から略水平に掛け渡された架橋構造4が設けられている。架橋構造4は、カーボンファイバ樹脂を骨材とするノズル支持部40と、その両端を支持する昇降機構43,44とから主に構成される。
【0032】
ノズル支持部40には、スリットノズル41とギャップセンサ42とが取り付けられている。Y軸方向に伸びるスリットノズル41には、スリットノズル41へ処理液(ここではレジスト液R)を供給する配管やレジスト用ポンプを含む吐出機構(図示せず)が接続されている。スリットノズル41は、レジスト用ポンプによりレジスト液Rが送られ、大型基板90の表面を走査することにより、大型基板90の表面の所定の領域(レジスト塗布領域)にレジスト液Rを吐出する。
【0033】
ここで、レジスト塗布領域とは、大型基板90の表面のうちでレジスト液Rを塗布しようとする領域であって、通常、大型基板90の全面積から、端縁に沿った所定幅の領域を除いた領域である。
【0034】
ギャップセンサ42は、スリットノズル41の近傍に配置されるように、ノズル支持部40に取り付けられ、下方の被検出物(例えば、大型基板90の表面や、レジスト膜の表面)とギャップセンサ42との間の高低差(ギャップ)を測定し、当該測定結果を制御系8に伝達する。この測定結果に基づいて、制御系8は、スリットノズル41が理想的な高さに配置されるように昇降機構43,44を制御する。
【0035】
昇降機構43,44はスリットノズル41の両側に分かれて、ノズル支持部40によりスリットノズル41と連結されている。昇降機構43,44はスリットノズル41を並進的に昇降させるとともに、スリットノズル41のYZ平面内での姿勢を調整するためにも用いられる。
【0036】
架橋構造4の両端部には、ステージ3の両側の縁側に沿って別れて配置された一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50,51が、それぞれ固設される。
【0037】
リニアモータ50は、固定子(ステータ)50aと移動子50bとを備え、固定子50aと移動子50bとの電磁的相互作用によって架橋構造4をX軸方向に移動させるための駆動力を生成するモータである。また、リニアモータ50による移動量および移動方向は、制御系8からの制御信号により制御可能となっている。なお、リニアモータ51もほぼ同様の機能、構成を有する。
【0038】
リニアエンコーダ52,53は、それぞれスケール部および検出子を備え(図示せず)、スケール部と検出子との相対的な位置関係を検出して、制御系8に伝達する。各検出子は架橋構造4の両端部にそれぞれ固設されており、リニアエンコーダ52,53は架橋構造4の位置検出を行う。
【0039】
[エア供給機構6]
図2および図3に示すように、エア供給機構6は、ダウンフローDFを供給する複数(例えば、4個)のFFU(Fun Filter Unit)61と、FFU61の外側の側面に固設される第1板状部材62(62a〜62d)とから主に構成される。
【0040】
[FFU61]
FFU61は、ステージ3の載置面30に対して、上方(+Z方向)に所定の距離を隔てて対向配置されており、図示しない支持部材によってステージ3の上方に固設される。なお、本実施の形態における基板処理装置1では、FFU61は、載置面30とほぼ同程度の領域内にエアを供給する。
【0041】
図4は、FFU61を示す部分断面図である。FFU61の筐体611の内部には、回転することにより下方に向けてクリーンエアを導く複数の回転羽根からなるファン612と、中心軸が回転軸Pと一致するように配置されるシャフト613と、所定の回転方向に駆動力を生成する回転モータ614とが備えられる。そして回転モータ614は、制御系8の制御信号に基づいて、その動作が制御される。
【0042】
筐体611の上面には、X方向に沿って延びるスリット615が形成されており、スリット615の開口からクリーンルーム内の雰囲気を筐体611の内部に取り入れることができる。
【0043】
ファン612を回転させる回転モータ614は、シャフト613を介してファン612と接続されており、回転軸Pを中心にシャフト613を所定の回転方向に回転させることで、ファン612を回転軸P回りに回転させる。
【0044】
このような構成により、FFU61は、回転モータ614を回転駆動することによってファン612を回転させることで、筐体611の下端部に設けられたHEPA(またはULPA)フィルタ616を介して、清浄なエアを送風する。これにより、FFU61は、ステージ3に保持された大型基板90に向けてエアの気流からなるダウンフローDFを形成させる。このダウンフローDFにより基板処理装置1の内部へのパーティクルの進入を防ぐことができ、大型基板90へのパーティクル付着を防止することができる。
【0045】
また、本実施の形態における基板処理装置1では、回転モータ614の回転速度を制御系8からの制御信号に基づいて調整することによって、ファン612によって導かれるエアの送風量を変化させることができる。すなわち、基板処理装置1では、FFU61から供給するエアの勢いを可変とすることができる。
【0046】
[第1板状部材62]
第1板状部材62は、複数の第1板状部材62a〜62dで構成されており、それぞれの主面が略鉛直方向に沿うようにしてFFU61に備えられる。そして、第1板状部材62a,62bは、FFU61の(−Y)側および(+Y)側のそれぞれに互いの主面が対向するように設置される(図2参照)。また、第1板状部材62c,62dは、FFU61の(−X)側および(+X)側のそれぞれに互いの主面が対向するように設置される(図3参照)。
【0047】
第1板状部材62a〜62dは、複数のFFU61が形成するエアの供給面の各辺の長さに対応する横幅をそれぞれ有する。すなわち、複数のFFU61のエア供給側は、これら第1板状部材62a〜62dによってその周囲が包囲されている。
【0048】
これらの第1板状部材62a〜62dは、ステージ3に保持された大型基板に向けて供給されるエアの気流を整流する。すなわち、図2および図3に示すように、複数の第1板状部材62a〜62dが一体的に組み合わさることで、FFU61の下方に所定の空間を形成し、FFU61から供給されるエアが載置面30と略同一の高さ位置に到達する前に、ステージ3の上方の領域から外方へ漏出しないように当該エアの気流(ダウンフローDF)を整える(整流する)。また、第1板状部材62a〜62dのそれぞれは、FFU61とステージ3との間の空間を外部から仕切ることによって、外部からの雰囲気の進入によりダウンフローDFが乱流することも抑制している。
【0049】
なお、本実施の形態では、図2に示すように、大型基板90は、搬送機構(例えば搬送ロボット)のハンド901によって、(−Y)側からステージ3の上方へ搬入される。そして大型基板90が搬送されると、基板処理装置1は、基板保持領域300からリフトピンを突出させた状態で、ハンド901から大型基板90を当該リフトピンの上端に受取り、さらにリフトピンを下降させることで大型基板90を載置面30に載置する。一方、ステージ3から大型基板90を搬出する場合、大型基板90は、リフトピンによって載置面30から持ち引き上げられた後、ハンド901に受け渡される。そしてハンド901が(−Y)側へ後退することで、基板90が外部へ搬出される。すなわち、この大型基板90を保持したハンド901の移動によって、ステージ3上方の空間に、所定の高さ幅の基板搬送経路が形成される。
【0050】
そこで、本実施の形態では、複数の第1板状部材62a〜62dのうち、FFU61の大型基板90が搬出入される側(−Y側)に設けられる第1板状部材62aは、FFU61のエア供給口(本実施の形態では、図4に示す、HEPAフィルタ616の下面)と、大型基板90の搬送経路に干渉しない高さ位置との間を覆う(カバーする)ように、その高さ幅が設定される。これにより、第1板状部材62aが搬送ロボットによる大型基板90の搬送を妨げることなく、ダウンフローDFの整流を実現することができる。
【0051】
なお、その他の第1板状部材62b〜62dについては、本実施の形態では、大型基板90を搬出入する位置にないので、FFU61のエア供給口の高さ位置と、載置面30の高さ付近までをカバーするように、その高さ幅が設定される。
【0052】
[排気機構7]
図2および図3に示すように、排気機構7は、FFU61から供給されたエアを吸引する吸引容器71(71a〜71d)と、吸引容器71に固設される第2板状部材72(72a〜72d)とから主に構成される。
【0053】
[吸引容器71]
図2または図3に示すように、基板処理装置1では、吸引容器71のそれぞれは、ステージ3の側方部分に配置されており、吸引容器71の上面の位置は、載置面30よりも下方となっている。
【0054】
吸引容器71a〜71dのうち、吸引容器71a,71bは、フロアFL上に設置された本体2の(−X)側および(+X)側の側方それぞれに設置される(図2参照)。また、吸引容器71c,71dは、本体2の(−Y)側および(+Y)側の側方のそれぞれに配置される。
【0055】
図5は、吸引容器71の概略を示す斜視図である。また、図6は、図5に示す切断線(IV−IV線)により吸引容器71を切断した断面側面図である。
【0056】
吸引容器71は、吸引口713が設けられた略直方体形状の筐体711と、開口調整板713および排気管714を備えるカバー開口ダクトである。雰囲気を吸引する吸引口712は、筐体711の上面に形成されている。開口調整板713は、吸引口712を覆うように配置され、それぞれが所定方向に水平移動可能とされる。また、排気管714は、例えば工場内の排気設備に接続されている。
【0057】
本実施の形態における基板処理装置1では、排気機構7は、吸引容器71の下面に接続された排気管714を介して筐体711内部の雰囲気を吸引することによって、吸引口712から吸引容器71上方の雰囲気を吸引する。また、吸引容器71は、開口調整板713の位置を変更することによって、吸引口712の開口面積が変化し、吸引口712からの雰囲気の流量を調整する。これにより、吸引容器71では、少量の排気で効率的な吸引を行うことができる。また、排気量の調整を適宜行えるため、FFU61からのエアの供給に適した排気を行うことができる。
【0058】
なお、各吸引容器71の吸引口712の形状、大きさおよび個数等は本実施の形態に示すものに限られるものではなく、それぞれの形状および大きさ等は異なっていてもよい。また、本実施の形態における基板処理装置1では、吸引容器71により吸引される雰囲気は、工場内に設けられた排気設備により吸引され排出されると説明したが、このような構成に限られるものではない。例えば、基板処理装置1が、独自に本体2内にブロア装置を備え、当該ブロア装置が吸引機能を発揮することにより、各吸引容器71から雰囲気を吸い込むように構成してもよい。
【0059】
[第2板状部材72]
再び図2および図3に戻って、第2板状部材72は、複数の第2板状部材72a〜72dで構成される。第2板状部材72a〜72dのそれぞれは、それらの主面を略鉛直方向に立てた姿勢で、本体2および各吸引容器71a〜71dの外側周りを包囲するように配置される。より詳しくは、本実施の形態では、第2板状部材72a,72b,72c,72dのそれぞれは、吸引容器71a,71b,71c,71dの外側側面にそれぞれ固設される。
【0060】
第2板状部材72のそれぞれは、本体2の各辺に沿った長さに対応した横幅を有しており、上記各位置に配置されることによって、第2板状部材72の外側からの雰囲気の巻き込みを抑えつつ、FFU61から供給されるエアを吸引容器71に導くことができる。
【0061】
なお、第2板状部材72のうちの少なくとも第2板状部材72aについては、少なくとも各吸引容器71の吸引口712の位置から、ステージ3の載置面30までの位置よりも下側をカバーするように、その高さ幅が設定されている(図2参照)。より具体的には、第2板状部材72aの上端は、載置面30よりも低い位置に設定される。これにより、大型基板90の搬出入が行われる際に、搬送機構のハンド901が第2板状部材72aと干渉することを防止することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、その他の第2板状部材72b〜72dの上端の位置についても、第2板状部材72aの上端と同様の位置となるように設定しているが、これに限られるものではなく、適宜設計変更が可能である。
【0063】
[制御系8]
再び図1に戻って、制御系8は、プログラムに従って各種データを処理する演算部80、プログラムや各種データを保存する記憶部81を内部に備える。また、前面には、オペレータが基板処理装置1に対して必要な指示を入力するための操作部82、および各種データを表示する表示部83を備える。
【0064】
制御系8は、図示しないケーブルにより本体2に付属する各機構と接続されており、操作部82および各種センサ等からの信号に基づいて、昇降機構43,44、リニアモータ50,51、および、エア供給機構6、排気機構7の各構成を制御する。
【0065】
なお、記憶部81としては、データを一時的に記憶するRAM、読み取り専用のROM、および磁気ディスク装置等が該当するが、可搬性の光磁気ディスクやメモリーカード等の記憶媒体、およびそれらの読み取り装置等であってもよい。また、操作部82は、ボタンおよびスイッチ類(キーボードやマウス等を含む。)等であるが、タッチパネルディスプレイのように表示部83の機能を兼ね備えたものであってもよい。表示部83は、液晶ディスプレイや各種ランプ等が該当する。
【0066】
<1.2 動作の説明>
次に、基板処理装置1の動作について説明する。基板処理装置1では、オペレータまたは図示しない搬送機構により、大型基板90が搬送されることによって、レジスト塗布処理が開始される。この処理を開始するための指示は、大型基板90の搬送が完了した時点で、オペレータが操作部82を操作することにより入力されてもよい。
【0067】
また、FFU61は、予めエアの供給を行っており、吸引容器71は、予め雰囲気の吸引を行っている。また、吸引容器71に設けられている開口調整板713の位置は、予めオペレータにより手動調整されているものとする。なお、このときのFFU61から供給されるエアの送風量は、基板処理装置1の周囲に飛散するパーティクルが基板処理装置1の内部に進入を抑制するダウンフローDFが形成されるように、制御系8により調整される。
【0068】
ここで、本実施の形態における基板処理装置1では、第1板状部材72a〜72dによってダウンフローDFが整流されるため、エアの気流の勢いがステージ3の載置面30の位置でほぼ消失する程度の少量のエア供給量であっても、周囲に飛散するパーティクルの進入を効果的に抑制することができる。また、エア供給量を比較的少量とすることで、フロアFL上に堆積したパーティクルの巻上げ等も防止できる。なお、このFFU61からのエア供給量は、FFU61とステージ3との間の距離等に応じて適宜設定される。
【0069】
エアの供給が行われている状態で、搬送機構は、大型基板90を保持したハンド901を、第1板状部材62aと第2板状部材72aとの間に進入させることによって、ステージ3の上方へ大型基板90を搬入する。このようにして、大型基板90がステージ3へ搬入されると、基板処理装置1は、大型基板90をステージ3の載置面30にて吸着保持を行う。
【0070】
大型基板90が吸着保持されると、ギャップセンサ42が所定の測定高度を保ちながら、大型基板90表面のレジスト塗布領域における大型基板90表面とスリットノズル41とのギャップを測定する。
【0071】
このとき、リニアエンコーダ52,53の検出結果に基づいてリニアモータ50,51が架橋構造4を(+X)方向に移動させる。これにより、ギャップセンサ42が塗布領域を走査し、走査中の測定結果は制御系8に伝達される。そして、制御系8は、伝達されたギャップセンサ42の測定結果を、リニアエンコーダ52,53によって検出される水平位置(X軸方向の位置)と関連づけて記憶部81に保存する。なお、ギャップの測定を開始するための指示は、大型基板90の搬入が完了した時点で、オペレータが操作部82を操作することにより入力されてもよい。
【0072】
ギャップセンサ42による検査が終了すると、制御系8は、架橋構造4をその位置で停止させる。また、ギャップセンサ42からの測定結果に基づいて、スリットノズル41のYZ平面における姿勢が、適切な姿勢(スリットノズル41とレジスト塗布領域との間隔がレジスト液Rを塗布するために適切な間隔となる姿勢。以下、「適正姿勢」と称する。)となるノズル支持部40の位置を算出する。さらに、当該算出結果に基づいて、それぞれの昇降機構43,44を制御して、スリットノズル41を適正姿勢に調整する。
【0073】
スリットノズル41の姿勢制御が終了すると、リニアモータ50,51が架橋構造4をX軸方向に移動させ、スリットノズル41を吐出開始位置に移動させる。ここで、吐出開始位置とは、レジスト塗布領域の(−X)側の辺にスリットノズル41がほぼ沿う位置である。
【0074】
スリットノズル41が吐出開始位置に移動すると、基板処理装置1は、塗布処理を実行する。具体的には、まず、リニアモータ50,51の駆動により架橋構造4が(−X)方向に移動しつつ、レジスト用ポンプ(図示せず)によりスリットノズル41にレジスト液Rが送られ、スリットノズル41が塗布領域にレジスト液Rを吐出する。これにより、大型基板90のレジスト塗布領域にレジスト液Rの層(膜)が形成される。そして、スリットノズル41がレジスト塗布領域の塗布終了端まで移動すると、架橋構造4の移動およびレジスト液Rの供給が停止され、塗布処理が終了する。
【0075】
レジスト塗布処理が終了すると、昇降機構43,44がギャップセンサ42を測定高度に移動させ、さらに、リニアモータ50,51が架橋構造4を(−X)方向に移動させることでギャップセンサ42がレジスト塗布領域を走査し、大型基板90上に形成されたレジスト膜とのギャップを測定して制御系8に伝達する。制御系8は、レジスト塗布前に測定したギャップの値(大型基板90の表面との距離)と、レジスト塗布後に測定したギャップの値(レジスト膜の表面との距離)とを比較することにより、大型基板90上のレジスト膜の厚さを算出し、算出結果を表示部83に表示する。
【0076】
なお、スリットノズル41による塗布処理が行われている間のFFU61からのエア供給量は、前述のように載置面30の位置でエアの勢いがほぼ消失する程度の量に調整されている。したがって、レジスト液Rの膜が最も液状に近い状態であって、最も送風による乾燥ムラなどの悪影響を受けやすい状態のときに、塗布されたレジスト液Rが不均一となることを効果的に抑制することができる。
【0077】
塗布処理が終了すると、ステージ3は、大型基板90の吸着を停止し、リフトピンを上昇させて大型基板90を載置面30から引き上げる。そして搬送機構が、ハンド901を図1中(−Y)側から進入させて、リフトピンから大型基板90を受取り、次の処理装置(加熱処理装置等)に向けて搬出する。
【0078】
次に、基板処理装置1は、連続して処理すべき他の大型基板90が存在するか否かを判定し、処理すべき大型基板90がある場合には、上記説明した処理を繰り返し実行する。一方、処理すべき他の大型基板90が存在しない場合には、基板処理装置1は、各動作を終了する。
【0079】
以上、説明してきたように、本実施の形態における基板処理装置1では、第1板状部材72a〜72dがFFU61を包囲するように設置されているため、FFU61から供給されたエアがステージ3の上方の領域よりも外方へ漏出することが抑制されるとともに、外部からの雰囲気の流入についても抑制できる。
【0080】
すなわち、本実施の形態における基板処理装置1では、大型基板90にレジスト液Rを塗布する間、ステージ3に保持した大型基板90へのパーティクルの付着を防止できるダウンフローDFの形成を、比較的少量のエアの供給により実現できるため、大型基板90に形成されるレジスト液Rの膜の厚みが乾燥ムラ等によって不均一になることを効果的に抑制することができる。
【0081】
また、基板処理装置1は、ステージ3の側方に配置され、載置面30よりも下方の位置で開口する吸引容器71と、本体2の周りを包囲するように配置される第2板状部材72とを備えることによって、載置面30にて勢いがほぼ消失したエアを効果的に排気することができる。
【0082】
また、基板処理装置1では、排気機構7がエアを適宜排出することによって、ダウンフローDFによるフロアFLのパーティクルの巻上げをより確実に抑制できる。また、当該排気機構7による排気量を調整することで、ダウンフローDFの勢いを調整することも可能である。例えば、FFU61のエア供給能力が低い場合には、排気機構7によってダウンフローDFの勢いを増大させることも可能である。
【0083】
<2. 第2の実施の形態>
上記実施の形態では、それぞれが一枚の板状部材により構成される第1板状部材62によって、FFU61から供給されるエアの気流を整流するものとして説明したが、もちろんこれに限られるものではない。
【0084】
図7は、第2の実施の形態におけるエア供給機構6aの概略を示す部分側面図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、適宜同符合を付し、詳細な説明は省略する。
【0085】
図7に示す第1板状部材62eは、FFU61に固設される支持板621と、当該支持板621において、スライド機構(図示せず)により上下方向に進退移動する移動板622とから主に構成される。
【0086】
本実施の形態におけるエア供給機構6aでは、第1の実施の形態におけるエア供給機構6が備える第1板状部材62a(すなわち、大型基板90が搬出入される側(−Y側)に配置される第1板状部材62)の代わりに、高さ幅が調節可能な第1板状部材62eを備える。
【0087】
本実施の形態では、搬送機構によって大型基板90を搬出入するときに、ハンド901と干渉しない高さ位置まで移動板622を退避させておき、搬送機構がステージ3上方から完全に退避した後に、移動板622を基板搬送経路よりもさらに下方へ移動させるといった制御を行うことが可能となっている。したがって、本実施の形態では、大型基板90の塗布処理の際に、FFU61とステージ3との間の第1板状部材62で形成される空間の遮蔽度を高めることができるため、塗布処理時のFFU61からのエア供給量をさらに抑えることができる。したがって、塗布されたレジスト液Rが不均一になることを、より効果的に抑制することができる。
【0088】
<3. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0089】
例えば、上記実施の形態では、FFU61の周りを包囲するように複数の第1板状部材62をFFU61に設置すると説明したが、設置する第1板状部材の数は、これに限られるものではない。特に、外部から基板処理装置1に対してエア流入がほとんどおこらないような位置(例えば、エア供給がほとんど行われない領域の側)については、第1板状部材62を設けなくともよい。
【0090】
また、上記実施の形態では、本体2の周囲を取り囲むようにして吸引容器71を配置すると説明したが、配置する数はこれに限られるものではなく、例えば本体2の両サイドに吸引容器71を配置する構成としてもよい。この点については、第2板状部材についても同様である。
【0091】
また、上記実施の形態では、搬送機構が、ステージ3に対して大型基板90を1方向からのみ搬出入するものとして説明したが、これに限られるものではなく、複数方向から大型基板90を搬出入するように構成してもよい。ただし、この場合には、大型基板90の搬入あるいは搬出を行う側に配置される第1板状部材62が、搬送機構の基板搬送経路と干渉しないように、その下端の位置が適宜設定されることが望ましい。
【0092】
さらに、上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1の実施の形態における基板処理装置の本体の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す基板処理装置を(+X)側から見たときの概略を示す側面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置を(−Y)側から見たときの概略を示す側面図である。
【図4】FFUを示す部分断面図である。
【図5】吸引容器の概略を示す斜視図である。
【図6】図5に示す切断線(IV−IV線)により吸引容器を切断した断面側面図である。
【図7】第2の実施の形態におけるエア供給機構の概略を示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 基板処理装置
2 本体
3 ステージ
30 載置面
300 基板保持領域
31a 走行レール
31b 支持ブロック
32 架台
4 架橋構造
6,6a エア供給機構
61 FFU
612 ファン
614 回転モータ
62(62a,62b,62c,62d,62e) 第1板状部材
622 移動板
7 排気機構
71(71a,71b,71c,71d) 吸引容器
712 吸引口
713 開口調整板
714 排気管
72(72a,72b,72c,72d) 第2板状部材
8 制御系
90 大型基板
901 ハンド(搬送機構)
DF ダウンフロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型基板に所定の処理液を塗布する基板処理装置であって、
クリーンルーム内に設置され、大型基板を略水平姿勢でその載置面上に保持するステージと、
前記載置面に保持された大型基板の上方を移動しつつ、前記大型基板に向けて処理液を供給するノズルと、
前記載置面に対向する位置に配置され、前記ステージに保持された大型基板に向けてエアを供給するエア供給手段と、
前記ステージに保持された大型基板に向けて供給されるエアの気流を整流する第1板状部材と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記第1板状部材は、
前記ガス供給手段から供給されるエアが前記載置面と略同一の高さ位置に到達する前に前記ステージの上方の領域から外方へ漏出しないように前記エアの気流を整流することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記第1板状部材は、
大型基板の搬出入が行われる側に配置されるとともに、前記エア供給手段のエアの供給口の高さ位置と、前記大型基板を前記ステージに搬出入する搬送手段の基板搬送経路と干渉しない高さ位置との間を覆う高さ幅を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記ステージの側方に配置され、前記載置面よりも下方の位置で開口する吸引口が設けられた吸引容器と、
前記吸引容器内の雰囲気を排気する排気手段と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記エア供給手段によって供給されるエアの気流を前記排気手段の吸引口へ導くように整流する第2板状部材、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の基板処理装置であって、
前記排気手段による排気量を調整する排気量調整手段、
をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記第1板状部材は、
上下方向に進退移動する移動板を含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置であって、
前記エア供給手段によるエアの供給量を調整するエア供給量調整手段、
をさらに備え、
前記エア供給量調整手段は、
前記エア供給手段から供給される前記エアの気流の勢いが前記載置面の位置でほぼ消失するように前記エアの供給量の調整することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−272401(P2009−272401A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120356(P2008−120356)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】