説明

基板液処理装置及び基板液処理方法

【課題】回収カップとは別個に気液分離装置を設ける必要をなくして、基板液処理装置の小型化を図ること。
【解決手段】本発明では、基板を保持するとともに保持した基板を回転させるための基板回転機構と、基板に複数種類の処理液を選択的に供給する処理液供給機構と、基板に供給した後の処理液を回収するための回収カップと、処理液を回収するために回収カップに形成した複数の液回収部と、液回収部から回収した処理液を排出するために回収カップの底部に形成した排液口と、回収カップの排液口よりも上方側に形成した排気口と、排気口の上方を所定の間隔をあけて覆うために回収カップに形成した固定カバーと、基板に供給した後の処理液を液回収部へ案内するために固定カバーの上方に設けた昇降カップと、処理液の種類に応じて昇降カップを昇降させるためのカップ昇降機構とを有することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理液で処理するための基板液処理装置及び基板液処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体部品やフラットパネルディスプレイなどを製造する場合には、製造過程において半導体ウエハや液晶基板などの基板を洗浄処理したりエッチング処理するために、洗浄液やエッチング液やリンス液などの複数種類の処理液で液処理する基板液処理装置を用いている。
【0003】
この基板液処理装置は、筺体の内部に基板処理室を形成し、基板処理室に、基板を保持し回転させるための基板回転機構と、基板に処理液を供給する処理液供給機構と、処理液を回収する処理液回収機構とを設けている。
【0004】
処理液回収機構は、基板の周囲に回収カップを配置し、回収カップに排出口を形成し、排出口に気液分離装置を接続している。
【0005】
そして、基板液処理装置は、処理液供給機構から回転する基板に向けて処理液を供給し、基板の回転による遠心力で基板の周囲に飛散した処理液を基板の周囲の雰囲気とともに回収カップで回収し、回収した処理液と雰囲気とを排出口から気液分離装置へ送り、気液分離装置で液体状の処理液と気体状の雰囲気とに分離し、それぞれを外部へ排出する(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−64009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の基板液処理装置では、回収カップの排出口に気液分離装置を接続した構成となっているために、回収カップとは別個に気液分離装置が必要となっており、基板液処理装置が大型化してしまうおそれがある。
【0008】
特に、基板液処理装置では基板に施す液処理に応じて複数種類の処理液で基板を液処理するために、複数種類の処理液を基板に選択的に供給できるようにした場合に、基板液処理装置に使用する処理液の種類ごとに対応する複数個の気液分離装置を設けるとなると、基板液処理装置がより一層大型化してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、基板を処理液で処理する基板液処理装置において、基板を保持するとともに保持した基板を回転させるための基板回転機構と、基板に複数種類の処理液を選択的に供給する処理液供給機構と、基板に供給した後の処理液を回収するための回収カップと、処理液を回収するために回収カップに形成した複数の液回収部と、液回収部から回収した処理液を排出するために回収カップの底部に形成した排液口と、回収カップの排液口よりも上方側に形成した排気口と、排気口の上方を所定の間隔をあけて覆うために回収カップに形成した固定カバーと、基板に供給した後の処理液を液回収部へ案内するために固定カバーの上方に設けた昇降カップと、処理液の種類に応じて昇降カップを昇降させるためのカップ昇降機構とを有することにした。
【0010】
また、前記排液口は、前記処理液供給機構から供給する処理液の種類ごとに複数個形成することにした。
【0011】
また、前記昇降カップは、カップ昇降機構で昇降させることで液回収部と前記いずれかの排液口とを連通させることにした。
【0012】
また、前記固定カバーに形成した支持凸部を前記昇降カップに形成した支持凹部によって覆うことにした。
【0013】
また、前記支持凹部の下端は、前記昇降カップが上昇したときに前記固定カバーの上端よりも下方に位置することにした。
【0014】
また、前記固定カバーに前記排気口の上方及び側方に張出した庇部を形成することにした。
【0015】
また、前記排気口を複数設けるとともに、前記回収カップの底部で複数の排気口を連通連結することにした。
【0016】
また、前記複数の液回収部の間に前記排気口を配置することにした。
【0017】
また、本発明では、基板を処理液で処理する基板液処理方法において、回転する基板に複数種類の処理液を選択的に供給し、回収カップを用いて基板に供給した処理液を回収し、回収カップの液回収部から回収した処理液を排液口から排出するとともに、排液口よりも上方に形成した排気口から排気し、排気口の上方に所定の間隔をあけて形成した固定カバーに対して昇降カップを処理液の種類に応じて昇降させることにした。
【0018】
また、前記処理液供給機構から供給する処理液の種類ごとに形成した複数個の排液口から処理液を排出することにした。
【0019】
また、前記昇降カップを昇降させることで回収カップの液回収部を前記いずれかの排液口とを連通させることにした。
【0020】
また、前記昇降カップを上昇させたときに、前記回収カップの下端を前記固定カバーの上端よりも下方に位置させることにした。
【発明の効果】
【0021】
そして、本発明では、回収カップの内部で処理液と雰囲気とを気液分離することができ、回収カップとは別個に気液分離装置を設ける必要がなくなり、基板に施す液処理に応じて複数種類の処理液を選択的に基板に供給する場合であっても、基板液処理装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】基板液処理装置を示す平面図。
【図2】基板処理室を示す模式図。
【図3】回収カップを示す拡大断面側面図。
【図4】固定カバーを示す断面側面図。
【図5】基板処理室の動作を示す説明図(酸性処理液)。
【図6】基板処理室の動作を示す説明図(アルカリ性処理液)。
【図7】基板処理室の動作を示す説明図(有機系処理液)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る基板液処理装置及び同基板液処理装置を用いた基板液処理方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、基板液処理装置1は、前端部に被処理体としての基板2(ここでは、半導体ウエハ。)を複数枚(たとえば、25枚。)まとめてキャリア3で搬入及び搬出するための基板搬入出部4を形成するとともに、基板搬入出部4の後部にキャリア3に収容された基板2を搬送するための基板搬送部5を形成し、基板搬送部5の後部に基板2の洗浄や乾燥などの各種の処理を施すための基板処理部6を形成している。
【0025】
基板搬入出部4は、4個のキャリア3を基板搬送部5の前壁7に密着させた状態で左右に間隔をあけて載置できる。
【0026】
基板搬送部5は、内部に基板搬送装置8と基板受渡台9とを収容している。基板搬送装置8は、基板搬入出部4に載置されたいずれか1個のキャリア3と基板受渡台9との間で基板2を搬送する。
【0027】
基板処理部6は、中央部に基板搬送装置10を収容するとともに、基板搬送装置10の左右両側に基板処理室11〜22を前後に並べて収容している。
【0028】
そして、基板搬送装置10は、基板搬送部5の基板受渡台9と各基板処理室11〜22との間で基板2を1枚ずつ搬送し、各基板処理室11〜22は、基板2を1枚ずつ処理する。
【0029】
各基板処理室11〜22は、同様の構成となっており、代表して基板処理室11の構成について説明する。基板処理室11は、図2に示すように、基板2を水平に保持しながら回転させるための基板回転機構23と、基板回転機構23で回転させた基板2の上面に向けて複数種類の処理液を選択的に供給するための処理液供給機構24と、処理液供給機構24から基板2に供給した処理液を回収するための処理液回収機構25とを有しており、これらの基板回転機構23と処理液供給機構24と処理液回収機構25を制御機構26で制御するように構成している。なお、制御機構26は、基板搬送装置8,10など基板液処理装置1の全体を制御する。
【0030】
基板回転機構23には、中空円筒状の回転軸27の上端部に円環状のテーブル28が水平に取付けられている。テーブル28の周縁部には、基板2の周縁部と接触して基板2を水平に保持する複数個の基板保持体29が円周方向に間隔をあけて取付けられている。回転軸27には、回転駆動機構30を接続しており、回転駆動機構30によって回転軸27及びテーブル28を回転させ、テーブル28に基板保持体29で保持した基板2を回転させる。この回転駆動機構30は、制御機構26に接続しており、制御機構26で回転制御される。
【0031】
また、基板回転機構23には、回転軸27及びテーブル28の中央の中空部に昇降軸31が昇降自在に挿通され、昇降軸31の上端部に円板状の昇降板32が取付けられている。昇降板32の周縁部には、基板2の下面と接触して基板2を昇降させる複数個の昇降ピン33が円周方向に間隔をあけて取付けられている。昇降軸31には、昇降機構34を接続しており、昇降機構34によって昇降軸31及び昇降板32を昇降させ、昇降板32に形成した昇降ピン33で保持した基板2を昇降させる。基板搬送装置10から基板2をテーブル28の基板保持体29に受取り又は基板保持体29から基板搬送装置10へ受渡す。この昇降機構34は、制御機構26に接続しており、制御機構26で昇降制御される。
【0032】
処理液供給機構24は、酸性処理液を供給する第1の処理液吐出機構35とアルカリ性処理液を供給する第2の処理液吐出機構36と有機系処理液を供給する第3の処理液吐出機構37とで構成されており、複数種類の処理液(ここでは、酸性処理液・アルカリ性処理液・有機系処理液の3種類の処理液)を基板2に選択的に供給できる。
【0033】
第1〜第3の処理液吐出機構35,36,37は、同様の構成となっている。テーブル28よりも上方にそれぞれのアーム38,39,40を水平移動可能に配置し、各アーム38,39,40の先端部にノズル41,42,43を取付けるとともに、各アーム38,39,40の基端部に回転軸44,45,46を取付けている。各回転軸44,45,46には、回転駆動機構47,48,49を接続しており、それぞれの回転駆動機構47,48,49によってそれぞれのアーム38,39,40及びノズル41,42,43を基板2の外方の退避位置と基板2の中央部上方の開始位置との間で水平に移動させる。この回転駆動機構47,48,49は、制御機構26にそれぞれ接続しており、制御機構26でそれぞれ独立して移動制御される。
【0034】
また、第1〜第3の処理液吐出機構35,36,37は、各ノズル41,42,43に第1〜第3の処理液供給源50,51,52を流量調整器53,54,55を介して接続しており、それぞれの流量調整器53,54,55によっていずれかのノズル41,42,43から吐出する処理液の流量を調整する。この流量調整器53,54,55は、制御機構26に接続しており、制御機構26でそれぞれ独立して開閉制御及び流量制御され、処理液がいずれかのノズル41,42,43から基板2に選択的に吐出される。
【0035】
処理液回収機構25は、図2及び図3に示すように、基板2(テーブル28)の下方及び外周外方を囲むとともに基板2(テーブル28)の上方を開放させた回収カップ56を基板処理室11に固定している。なお、回収カップ56は、基板処理室11に直接的に固定した場合に限られず、固定部材を介して固定してもよい。
【0036】
回収カップ56は、基板2(テーブル28)の外周外方に回収口57を形成するとともに、下方に回収口57に連通する回収空間58を形成している。
【0037】
また、回収カップ56は、回収空間58の底部に同心二重リング状の第1及び第2の仕切壁59,60を形成して、回収空間58の底部を同心三重リング状の第1〜第3の液回収部61,62,63に区画する。第1〜第3の液回収部61,62,63の底部には、複数の第1〜第3の排液口64,65,66を円周方向に間隔をあけて形成し、第1〜第3の排液口64,65,66には、吸引機構67,68,69を介して排液管(図示省略)を接続している。この吸引機構67,68,69は、制御機構26でそれぞれ独立して吸引制御される。なお、排液管を工場設備の排液ラインに接続して、処理液の自重で排液するようにしてもよい。
【0038】
また、回収カップ56は、第1及び第2の仕切壁59,60の中途部において第1〜第3の排液口64,65,66よりも上方側で、かつ、隣設した第1〜第3の排液口64,65,66の間に複数個の第1及び第2の排気口70,71を円周方向に間隔をあけて形成している。回収カップ56の底部には、中空状の排気ケーシング92を取付けて、第1及び第2の排気口70,71を連通連結する連結流路93を形成している。第1及び第2の排気口70,71は、連結流路93に吸引機構72を取付け、吸引機構72に排気切換弁73介して排気管(図示省略)に接続している。この吸引機構72及び排気切換弁73は、制御機構26でそれぞれ制御される。なお、排気管を工場設備の排気ラインに接続して、排気ラインの吸引によって排気するようにしてもよい。また、第1及び第2の排気口70,71に吸引機構をそれぞれ接続するようにしていもよい。第1及び第2の排気口70,71は、回収カップ56の全周にわたって開口するようにしてもよい。
【0039】
また、回収カップ56は、第1及び第2の仕切壁59,60の中途部において第1及び第2の排気口70,71の直上方に所定の間隔をあけて固定した第1及び第2の固定カバー74,75を形成している。第1及び第2の固定カバー74,75の左右側部は、外方及び下方に向けて張り出して第1及び第2の排気口70,71の上方及び側方を覆う庇部76,77を形成する。さらに、回収カップ56は、第1及び第2の固定カバー74,75の上部を上側に突出させて円環状の支持凸部78,79を形成している。なお、第1及び第2の固定カバー74,75は、回収カップ56とは別体で回収カップ56に直接又は固定部材を介して固定されている。
【0040】
さらに、回収カップ56には、第1及び第2の仕切壁59,60の上方(第1及び第2の固定カバー74,75の上部)に第1及び第2の昇降カップ80,81が設けられている。第1及び第2の昇降カップ80,81には、第1及び第2の仕切壁59,60に昇降自在に挿通させた第1及び第2の昇降ロッド82,83を接続し、第1及び第2の昇降ロッド82,83に第1及び第2のカップ昇降機構84,85を接続している。第1及び第2の昇降カップ80,81と第1及び第2の昇降ロッド82,83は、例えば磁力によって接続され、一体的に昇降する。この第1及び第2のカップ昇降機構84,85は、制御機構26に接続しており、制御機構26でそれぞれ独立して昇降制御される。
【0041】
第1及び第2の昇降カップ80,81は、下端部に下向き円環凹状の支持凹部86,87を形成している。支持凹部86,87は、回収カップ56の第1及び第2の固定カバー74,75の支持凸部78,79を覆い、上端部に回収カップ56の回収口57まで内側上方に向けて傾斜する傾斜壁部88,89を形成している。支持凹部86,87と支持凸部78,79は、第1及び第2の昇降カップ80,81が上昇した場合であっても、支持凹部86,87の下端が支持凸部78,79の上端よりも下方に位置するように形成されている。第1の昇降カップ80は、傾斜壁部88を回収カップ56の回収口57まで回収空間58の傾斜壁90に沿って平行に伸延させており、傾斜壁部88が回収カップ56の回収空間58の傾斜壁90と近接するようになっている。第2の昇降カップ81は、傾斜壁部89を回収カップ56の回収口57まで上側の第1の昇降カップ80の傾斜壁部88に沿って平行に伸延させており、傾斜壁部89が第1の昇降カップ80の傾斜壁部88と近接するようになっている。
【0042】
そして、第1及び第2のカップ昇降機構84,85を用いて第1及び第2の昇降カップ80,81を降下させると、回収空間58の内部において回収カップ56の傾斜壁90と第1の昇降カップ80の傾斜壁部88との間に回収口57から第1の回収部61の第1の排液口64へと通じる流路が形成される(図5参照。)。また、第1及び第2のカップ昇降機構84,85を用いて第1の昇降カップ80を上昇させるとともに第2の昇降カップ81を降下させると、回収空間58の内部において第1の昇降カップ80の傾斜壁部88と第2の昇降カップ81の傾斜壁部89との間に回収口57から第2の回収部62の第2の排液口65へと通じる流路が形成される(図6参照。)。さらに、第1及び第2のカップ昇降機構84,85を用いて第1及び第2の昇降カップ80,81を上昇させると、回収空間58の内部において第2の昇降カップ81の傾斜壁部89の内側に回収口57から第3の回収部63の第3の排液口66へと通じる流路が形成される(図7参照。)。
【0043】
なお、図4(a)に示すように、回収カップ56に形成した固定カバー94は、排気口95の左右いずれか一方側に下方に向けて折り返した形状の庇部96を形成し、庇部96の上部に支持凸部97を形成し、支持凸部97を昇降カップ98の下端に形成した支持凹部99で覆ってもよい。
【0044】
また、図4(b)に示すように、固定カバー100の上部全体を昇降カップ101の下端に形成した支持凹部102で覆ってもよい。
【0045】
また、図4(c)に示すように、第1の排気口103と第2の排気口104のそれぞれの上方に設けられる第1の固定カバー105と第2の固定カバー106の形状が異なっていてもよい。第1及び第2の排気口103,104は、回収カップ56の全周にわたって開口している。第1の固定カバー105は、第1の排気口103の内周側(回転軸27側)に固定され、外周側に下方へ向けて折り返した形状の庇部107を形成している。第1の固定カバー105は、第1の排気口103の内周側に隙間を形成することなく固定されており、第1の排気口103に直接又は固定部材を介して固定されている。第1の固定カバー105の上方には、下端に凹部108が形成された第1の昇降カップ109が設けられている。第1の昇降カップ109に形成された凹部108は、内周側のみが下方に向けて伸延しており、第1の昇降カップ109が上昇した場合であっても、凹部108の下端は、第1の固定カバー105の上端よりも下方に位置して、第1の昇降カップ109と第1の固定カバー105との間を遮蔽する。
【0046】
一方、第2の固定カバー106は、第2の排気口104の内周側に固定され、外周側に下方へ向けて折り返した形状の庇部110を形成している。庇部110は、上部を第2の固定カバー106の上方に向けて伸延させている。第2の固定カバー106は、第2の排気口104の内周側に隙間を形成することなく固定されており、第2の排気口104に直接又は固定部材を介して固定されている。第2の固定カバー106の上方には、第2の昇降カップ111が設けられている。第2の昇降カップ111には、下方に向けて伸延する遮蔽部材112が設けられている。第2の昇降カップ111が上昇した場合であっても、遮蔽部材112の下端が第2の固定カバー106の上方に向けて伸延した庇部110の上端よりも下方に位置して、第2の昇降カップ110と第2の固定カバー106との間を遮蔽する。
【0047】
基板液処理装置1は、以上に説明したように構成しており、制御機構26(コンピュータ)で読み取り可能な記憶媒体91に記憶した基板液処理プログラムにしたがって各基板処理室11〜22で基板2を処理液で液処理する。なお、記憶媒体91は、基板液処理プログラム等の各種プログラムを記憶できる媒体であればよく、ROMやRAMなどの半導体メモリ型の記憶媒体であってもハードディスクやCD−ROMなどのディスク型の記憶媒体であってもよい。
【0048】
そして、基板液処理装置1は、基板2を処理液で処理する際に、処理液供給機構24によって基板2に供給する処理液の種類を選択的に切換えるとともに、処理液の種類に応じて処理液回収機構25の第1及び第2の昇降カップ80,81を昇降させて第1〜第3の排液口64,65,66のいずれかから排液し、同時に、回収カップ56の内部で気液分離を行って第1及び第2の排気口70,71から排気する。
【0049】
たとえば、基板液処理装置1は、処理液供給機構24の第1の処理液吐出機構35から酸性処理液を基板2に吐出して基板2を液処理する場合、図5に示すように、制御機構26によって回転駆動機構30を制御して基板回転機構23のテーブル28及びテーブル28の基板保持体29で保持する基板2を所定回転速度で回転させたまま、制御機構26によって流量調整器53を開放及び流量制御して第1の処理液供給源50から供給される酸性処理液をノズル41から基板2の上面に向けて吐出させる。
【0050】
その際に、基板液処理装置1は、制御機構26によって第1及び第2のカップ昇降機構84,85を制御して第1及び第2の昇降カップ80,81を降下させて、回収口57から第1の回収部61の第1の排液口64へと通じる流路を形成しておく。また、基板液処理装置1は、制御機構26によって第1の排液口64に接続した吸引機構67と第1及び第2の排気口70,71に接続した吸引機構72を駆動するとともに排気切換弁73を酸性の排気流路に切換える。
【0051】
すると、基板2に供給された酸性処理液は、基板2の回転による遠心力の作用で基板2の外周外方へ向けて振り切られ、吸引機構67,72の吸引力によって基板2の周囲の雰囲気とともに回収カップ56の回収口57から回収空間58の第1の回収部61に回収される。この回収された酸性処理液及び雰囲気は、第1の回収部61で気液分離されて、液体状の酸性処理液が第1の排液口64から吸引機構67を介して外部に排出されるとともに、気体状の雰囲気が第1及び第2の排気口70,71から吸引機構72及び排気切換弁73を介して外部に排出される。
【0052】
また、基板液処理装置1は、処理液供給機構24の第2の処理液吐出機構36からアルカリ性処理液を基板2に吐出して基板2を液処理する場合、図6に示すように、流量調整器54を開放及び流量制御して第2の処理液供給源51から供給されるアルカリ性処理液をノズル42から基板2の上面に向けて吐出させる。その際に、基板液処理装置1は、第1のカップ昇降機構84を制御して第1の昇降カップ80だけを上昇させて、回収口57から第2の回収部62の第2の排液口65へと通じる流路を形成するとともに、第2の排液口65に接続した吸引機構68と第1及び/又は第2の排気口70,71に接続した吸引機構72を駆動するとともに排気切換弁73をアルカリ性の排気流路に切換える。基板2に供給されたアルカリ性処理液は、基板2の周囲の雰囲気とともに回収カップ56の回収口57から回収空間58の第2の回収部62に回収され、第2の回収部62で気液分離されて、液体状のアルカリ性処理液が第2の排液口65から吸引機構68を介して外部に排出されるとともに、気体状の雰囲気が第1及び/又は第2の排気口70,71から吸引機構72及び排気切換弁73を介して外部に排出される。
【0053】
さらに、基板液処理装置1は、処理液供給機構24の第3の処理液吐出機構37から有機系処理液を基板2に吐出して基板2を液処理する場合、図7に示すように、流量調整器55を開放及び流量制御して第3の処理液供給源52から供給される有機系処理液をノズル43から基板2の上面に向けて吐出させる。その際に、基板液処理装置1は、第1及び第2のカップ昇降機構84,85を制御して第1及び第2の昇降カップ80,81を上昇させて、回収口57から第3の回収部63の第3の排液口66へと通じる流路を形成するとともに、第3の排液口66に接続した吸引機構69と第1及び/又は第2の排気口70,71に接続した吸引機構72を駆動するとともに排気切換弁73を有機系の排気流路に切換える。基板2に供給された有機系処理液は、基板2の周囲の雰囲気とともに回収カップ56の回収口57から回収空間58の第3の回収部63に回収され、第3の回収部63で気液分離されて、液体状の有機系処理液が第3の排液口66から吸引機構69を介して外部に排出されるとともに、気体状の雰囲気が第1及び/又は第2の排気口70,71から吸引機構72及び排気切換弁73を介して外部に排出される。
【0054】
以上に説明したように、基板液処理装置1は、基板2を保持するとともに保持した基板2を回転させるための基板回転機構23と、基板2に複数種類の処理液を選択的に供給する処理液供給機構24と、基板2に供給した処理液を回収する処理液回収機構25とを有する構成となっている。
【0055】
そして、処理液回収機構25は、基板2に供給した処理液を回収するための回収カップ56と、処理液を回収するために回収カップ56に形成した回収口57と、回収口57から回収した処理液を排出するために回収カップ56に形成した排液口(第1〜第3の排液口64,65,66)と、回収カップ56の排液口(第1〜第3の排液口64,65,66)よりも上方側に形成した排気口(第1及び第2の排気口70,71)と、排気口(第1及び第2の排気口70,71)の上方を所定の間隔をあけて覆うために回収カップ56に固定した固定カバー(第1及び第2の固定カバー74,75)と、回収カップ56に昇降自在に設けた昇降カップ(第1及び第2の昇降カップ80,81)と、処理液の種類に応じて昇降カップ(第1及び第2の昇降カップ80,81)を昇降させるためのカップ昇降機構(第1及び第2のカップ昇降機構84,85)とを有する構成となっている。なお、排液口、排気口、固定カバー、昇降カップ、カップ昇降機構は、複数個設けた場合に限られず、1個だけ設けた場合でもよい。
【0056】
本発明によれば、上記構成の基板液処理装置1は、回収カップ56に形成した排液口と排気口とによって回収カップ56の内部で処理液と雰囲気とを気液分離することができ、回収カップ56とは別個に気液分離装置を設ける必要がなくなり、基板2に施す液処理に応じて複数種類の処理液を選択的に基板2に供給する場合であっても、基板液処理装置1を小型化することができる。
【0057】
しかも、回収カップ56の内部で気液分離可能とした場合に、処理液の種類に応じて昇降カップを排気口の直上方で昇降させると、排気口に通じる流路の実効断面積が変化して排気圧力が変動したり、昇降カップに付着した処理液が排気口に流れ込んでしまうおそれがあるが、上記構成の基板液処理装置1では、排気口(第1及び第2の排気口70,71)の上方に固定カバー(第1及び第2の固定カバー74,75)を設けることで、昇降カップ(第1及び第2の昇降カップ80,81)を昇降させても排気圧力の変動や処理液の流れ込みを防止することができ、処理液と雰囲気とを良好に分離して排出することができる。
【0058】
また、上記基板液処理装置1では、基板2に供給する処理液の種類ごとに異なる複数個の排液口(第1〜第3の排液口64,65,66)を形成し、カップ昇降機構(第1及び第2のカップ昇降機構84,85)で昇降カップ(第1及び第2の昇降カップ80,81)を昇降させることでいずれかの排液口(第1〜第3の排液口64,65,66)と回収口57とを連通させるようにしているために、処理液の種類ごとに昇降カップ(第1及び第2の昇降カップ80,81)を昇降させることによって処理液の種類ごとに分別して処理液を回収することができ、異なる種類の処理液が混合して反応してしまうのを防止することができる。
【0059】
また、上記基板液処理装置1では、第1及び第2の昇降カップ80,81が上昇した場合でも、支持凹部86,87の下端が支持凸部78,79の上端よりも下方に位置する。これにより、回収部61,62,63に回収される処理液が流れる流路をより確実に分けることができ、処理液を種類ごとに分別して回収することができる。
【0060】
また、上記基板液処理装置1では、固定カバー105,106を排気口103,104の一方側(たとえば、内周側(回転軸側))に隙間を形成することなく固定し、他方側(たとえば、外周側)に下方に向けて折り返した形状の庇部107,110を形成している(図4(c)参照。)。これにより、各回収部それぞれに排気口103,104を形成することができ、処理液だけでなく雰囲気も処理液の種類ごとに分別して排気することができる。また、上記基板液処理装置1では、固定カバー105,106と排気口103,104の一方側を隙間を形成することなく固定するとともに、昇降カップ109,111が上昇した場合にも凹部108や遮蔽部材112の下端が固定カバー105,106の上端よりも下方に位置して昇降カップ109,111と固定カバー105,106との間を遮蔽していることから、処理液や雰囲気が隣の回収部や排気口に流れ込むことを防止することができ、より確実に処理液や雰囲気を種類ごとに分別して排出することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 基板液処理装置
2 基板
23 基板回転機構
24 処理液供給機構
56 回収カップ
61,62,63 第1〜第3の液回収部
64,65,66 第1〜第3の排液口
70,71 第1及び第2の排気口
74,75 第1及び第2の固定カバー
80,81 第1及び第2の昇降カップ
84,85 第1及び第2のカップ昇降機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液で処理する基板液処理装置において、
基板を保持するとともに保持した基板を回転させるための基板回転機構と、
基板に複数種類の処理液を選択的に供給する処理液供給機構と、
基板に供給した後の処理液を回収するための回収カップと、
処理液を回収するために回収カップに形成した複数の液回収部と、
液回収部から回収した処理液を排出するために回収カップの底部に形成した排液口と、
回収カップの排液口よりも上方側に形成した排気口と、
排気口の上方を所定の間隔をあけて覆うために回収カップに形成した固定カバーと、
基板に供給した後の処理液を液回収部へ案内するために固定カバーの上方に設けた昇降カップと、
処理液の種類に応じて昇降カップを昇降させるためのカップ昇降機構と、
を有することを特徴とする基板液処理装置。
【請求項2】
前記排液口は、前記処理液供給機構から供給する処理液の種類ごとに複数個形成したことを特徴とする請求項1に記載の基板液処理装置。
【請求項3】
前記昇降カップは、カップ昇降機構で昇降させることで液回収部と前記いずれかの排液口とを連通させることを特徴とする請求項2に記載の基板液処理装置。
【請求項4】
前記固定カバーに形成した支持凸部を前記昇降カップに形成した支持凹部によって覆うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項5】
前記支持凹部の下端は、前記昇降カップが上昇したときに前記固定カバーの上端よりも下方に位置することを特徴とする請求項4に記載の基板液処理装置。
【請求項6】
前記固定カバーに前記排気口の上方及び側方に張出した庇部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項7】
前記排気口を複数設けるとともに、前記回収カップの底部で複数の排気口を連通連結したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項8】
前記複数の液回収部の間に前記排気口を配置したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の基板液処理装置。
【請求項9】
基板を処理液で処理する基板液処理方法において、
回転する基板に複数種類の処理液を選択的に供給し、
回収カップを用いて基板に供給した処理液を回収し、
回収カップの液回収部から回収した処理液を排液口から排出するとともに、排液口よりも上方に形成した排気口から排気し、
排気口の上方に所定の間隔をあけて形成した固定カバーに対して昇降カップを処理液の種類に応じて昇降させることを特徴とする基板液処理方法。
【請求項10】
前記処理液供給機構から供給する処理液の種類ごとに形成した複数個の排液口から処理液を排出することを特徴とする請求項9に記載の基板液処理方法。
【請求項11】
前記昇降カップを昇降させることで回収カップの液回収部を前記いずれかの排液口とを連通させることを特徴とする請求項10に記載の基板液処理方法。
【請求項12】
前記昇降カップを上昇させたときに、前記回収カップの下端を前記固定カバーの上端よりも下方に位置させることを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれかに記載の基板液処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−33922(P2013−33922A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99434(P2012−99434)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】