説明

塗布型制振材料組成物及び建築用複合板

【課題】
作業性、接着性に優れると同時に、毒性が少なく、同種または異種からなる少なくとも2枚の建築用板を貼り合わせることで優れた制振性能を示す塗布型制振材料組成物、及びそれを用いた制振性能に優れた建築用複合板を提供する。
【解決手段】
(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体、(B)スチレン系(共)重合体、(C)成分(A)に対する硬化触媒、(D)可塑剤、及び(E)充填材を含有する塗布型制振材料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布型制振材料組成物及び建築用複合板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅建築物などにおける高気密化・高断熱化の要求に伴い、建具及び外壁などの防音・遮音性能の向上に関する様々な研究が行われてきた。このため、近年の建築物においては、建具及び外壁などの防音・遮音性能の改善により、建物の外部から室内に伝搬する騒音は大きく低減し、この結果、室内の暗騒音レベルはかなりの低レベルに低下した。反面、このような室内暗騒音の低下は、室内で発生する騒音や、壁、床、天井を介して伝達する他室の騒音などについて、その存在を居住者などに認識または意識させる結果を招いている。たとえば室内ドアの開閉音、壁面衝撃音、歩行音、会話などの生活音や、室内電気製品、室内空調機器、喚起機器、音響機器、楽器などの室内音源から発生する音は、屋内の壁、床、天井を介して他室に騒音伝達し、これまでは暗騒音によりうち消されていたレベルの騒音までもが、居住者などに強く認識されまたは意識される現象が生じている。
【0003】
他方、自動車の車体等に使用される制振性接着剤が知られている。制振材はその振動吸収能力により振動を制振することを意図したものである。このような制振材の制振効果を床材に適用し、固体振動音の発生を防止しようとする技術が、特許文献1などに開示されている。
【特許文献1】特開平9−203153号公報
【特許文献2】特願2003−387493号
【特許文献3】特開2004−115779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から使用されているアクリルエマルジョン系接着剤では、適用は木質ボードなどの多孔質系のボードに限られ、且つその接着力も十分ではない(特許文献1及び2)。
【0005】
本発明は、作業性、接着性に優れると同時に、毒性が少なく、同種または異種からなる少なくとも2枚の建築用板を貼り合わせることで優れた制振性能を示す塗布型制振材料組成物、及びそれを用いた建築用複合板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布型制振材料組成物は、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体、(B)スチレン系(共)重合体、(C)成分(A)に対する硬化触媒、(D)可塑剤、及び(E)充填材を含有することを特徴とする。
【0007】
前記重合体(A)が、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体であることが好ましい。また、前記重合体(A)が、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル酸(共)重合体より成る組成物であることが好適である。なお、本願明細書において、アクリルとメタクリルを併せて(メタ)アクリルと称する。
【0008】
前記硬化触媒(C)が、シラノール縮合触媒であることが好ましい。
【0009】
前記塗布型制振材料組成物の粘度が50〜500Pa・s(23℃)の範囲内にあり、かつ前記スチレン系(共)重合体(B)の成分の配合割合が、前記加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体(A)100重量部に対して50〜200重量部にあり、かつ前記可塑剤(D)及び前記充填材(E)の配合比率が(D)/(E)=0.1〜1.0であることが好適である。
【0010】
前記塗布型制振材料組成物の損失係数が0.1以上1.0以下であることが好ましい。なお、本発明において、損失係数は、2枚の木質合板(日本農林規格(JAS)に規定する普通合板1類(ラワン合板)、厚さ12mm、縦300mm、横300mm)の間に該塗布型制振材料組成物(塗布量500g/m2)を介在させてなる試験体の損失係数(損失係数算出方法:半値幅法、測定温度23℃)を測定したものとする。
【0011】
本発明の建築用複合板は、本発明の塗布型制振材料組成物を、同種又は異種からなる少なくとも2枚の建築用板の間に介在させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の建築用複合板は、塗布型制振材料組成物を、同種または異種からなる少なくとも2枚の建築用板で貼り合わせたものであり、一方の建築用板に伝わった振動を抑制し急速に収束するので、音の伝播を抑えることができ、天井や、床あるいは壁の遮音に好適に使用できる。
【0013】
本発明の塗布型制振材料組成物は作業性、接着性に優れると同時に毒性が少なく、特に石膏ボード、合板、パーティクルボード、繊維板、木毛セメント板、フレキシブル板、ケイ酸カルシウム板、コンクリート、スレート、ALC板、鋼板等を貼り合わせることで、建築用複合板に制振性能を付与する制振材として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0015】
図1は本発明の建築用複合板の一例を示す断面図である。図1に示した如く、本発明の建築用複合板10は、少なくとも2枚の建築用板12(12a,12b)を本発明の塗布型制振材料組成物14で貼り合わせることを特徴とする。
【0016】
前記建築用板12は、同種のものでも異種のものでもよく、この建築用複合板の用途に応じて適宜選択される。例えば、天井あるいは壁に用いられる建築用複合板については、2枚の石膏ボードを積層して構成し、また床用の建築用複合板については、木質合板と石膏ボードを積層して構成する等である。なお、図1では2枚(すなわち2層)の建築用板を用いた例を示したが、3枚以上の建築用板を用いても良く、建築用板の数は特に限定されず、建築用複合板の用途、用いる建築用板の種類及び剛性等によって、所要の厚みあるいは剛性になる枚数(多層)となるように、必要に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
前記建築用板12としては、例えば、石膏ボード、合板、パーティクルボード、繊維板、木毛セメント板、フレキシブル板、ケイ酸カルシウム板、コンクリート、スレート、ALC板、鋼板等が挙げられる。
【0018】
前記塗布型制振材料組成物14は、この建築用複合板10に振動が加わった際、その振動を速やかに収束させて音が伝わりにくくするためのもので、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体、(B)スチレン系(共)重合体、(C)成分(A)に対する硬化触媒、(D)可塑剤、及び(E)充填材を含有する本発明の塗布型制振材料組成物が用いられる。本発明の塗布型制振材料組成物は、23℃における粘度が50Pa・s以上500Pa・s以下であることが好ましい。
【0019】
この塗布型制振材料組成物14の塗布量は、貼り合わせる面全体に満遍なく層を形成する量とされ、特に貼り合わせる面間に空隙を生じない量とするのが好ましい。具体的には、300〜1000g/m2の塗布量が好ましく、更に好ましくは500〜700g/m2ある。
【0020】
本発明の塗布型制振材料組成物において、損失係数(η)がη=0.1〜1.0の範囲内の硬化物性を有することが好ましい。なお、本発明において、損失係数(η)は下記のように測定するものとする。
〈損失係数の測定方法〉
建築用複合板の損失係数の測定方法の模式的説明図を図2に示す。図2(a)は試験時の試験体の上面斜視説明図であり、図2(b)は測定装置の横面説明図である。図2において、20は試験体であり、厚さ12mm、縦300mm、横300mmの木質合板2枚(30a,30b)を本発明の塗布型制振材料組成物14(塗布量:500g/m2)で貼り合わせた複合板(300mm×300mm)である。
【0021】
23℃に保たれた恒温室内に試験体20を1時間以上放置した後、図2に示した如く、厚さ60mmのウレタンフォーム22上に水平に試験体20を設置し、試験体20の対角線上の角から50mmの位置に加速度ピックアップ26を取付ける。試験体20の中心部20aをインパクトハンマー24で加振し、測定器28を用いて応答信号を測定し、その応答関数の1時共振点における損失係数(η)を半値幅法により求める。測定器28としては、高速フーリエ変換アナライザー(FFTアナライザ)が用いられる。
【0022】
本発明において、(A)成分として用いられる加水分解性の硅素含有官能基を有する重合体としては、従来公知のものを広く使用でき、例えば特許文献3に例示されている重合体を用いることができる。前記重合体(A)としては、具体的には、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有し、主鎖がポリオキシアルキレン系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体、ビニル系重合体、ポリエステル重合体、(メタ)アクリル系重合体、またはこれらの共重合体であるもの、並びにこれらの混合物等が挙げられ、特に、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体や、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル酸(共)重合体より成る組成物が好ましい。
【0023】
(B)成分であるスチレン系(共)重合体としては、従来公知のものを広く使用でき、特に限定されないが、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系単量体の1種以上を(共)重合して得られる(共)重合体が挙げられる。スチレン系重合体としては、具体的には、三井化学(株)製の商品名:FTR−8100及びFTR−8120等を用いることができる。また、スチレン系共重合体として、スチレン系単量体の1種以上と、これと共重合可能な他の単量体の1種以上とを共重合させて得られる共重合体を用いることも可能である。共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、例えば、1−ヘプテン、エチル−1−ブテン及びメチル−1−ノネン等の炭素原子数が2〜12のα−オレフィン類;1,4−ペンタジエン及びジシクロペンタジエン等の非共役ジエン類などの不飽和化合物が挙げられる。スチレン系共重合体としては、具体的には、三井化学(株)製の商品名:FTR−6100、FTR−6125及びFTR−7100等を用いることができる。上記スチレン系(共)重合体は、単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0024】
(B)成分の配合割合は、成分(A)100重量部に対して、10〜400重量部用いることが好ましく、より好ましくは50〜200重量部、更に好ましくは70〜200である。
【0025】
上記(C)硬化触媒としては、(A)成分に対し硬化触媒の作用を示すものであれば特に限定されないが、シラノール縮合触媒を用いることが好ましい。シラノール縮合触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の有機錫化合物:オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレ
ンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物またはこれらとカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;r−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤等の公知のシラノール縮合触媒が挙げられる。
【0026】
(C)成分としてシラノール縮合触媒を用いる場合、シラノール縮合触媒の配合割合は、成分(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部用いることが好ましい。これらの硬化触媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(D)成分である可塑剤としては、プロセスオイルまたは他の炭化水素類でポリマーと相溶するものであれば特に限定されるものではなく、公知各種の可塑剤が使用可能である。例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレンジル等のリン酸エステル類;ジオクチルフレート(DOP)、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸一塩基酸エステル類;アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類;ポリプロピレングリコール等のグリコールエステル類;脂肪族エステル類;エポキシ可塑剤類;ポリエステル系可塑剤;ポリエーテル類;ポリスチレン類などが挙げられる。これら可塑剤は単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
(D)成分の配合割合は特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して、20〜300重量部用いることが好ましく、更に好ましくは30〜150重量部である。
【0029】
(E)成分である充填材としては、従来公知の充填材を広く使用できるが、例えば、通常の炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、珪藻土、塩化ビニルペーストレンジ、ガラスバルーン、塩化ビニリデン樹脂バルーン、アクリロニトリル・メタクリロニトリル樹脂バルーン等が挙げられ、単独または混合して使用できる。
【0030】
(E)成分の配合割合は特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して、50〜1000重量部用いることが好ましく、更に好ましくは100〜500重量部である。また、成分(D)と成分(E)の配合比率を(D)/(E)=0.1〜1.0とすることが好ましい。
【0031】
本発明の塗布型制振材料組成物には、上記した成分に加えて粘度、物性を調整するために必要に応じて、接着付与剤、粘着付与剤、安定剤、ワックス、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、揺変剤、着色剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0032】
接着付与剤として、シランカップリング剤等、安定剤としてヒンダードフェノール系化合物、トリアゾール系化合物等を使用する。着色剤としては、チタンホワイト、カーボンブラック、ベンガラ等が挙げられる。
【0033】
粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂(脂肪族系、芳香族系、脂環族系、共重合系、クマロンインデン樹脂系)、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0034】
本発明の塗布型制振材料組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0036】
(実施例1)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)を100重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−8100(三井化学工業(株)製):100重量部、(D)可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):100重量部、(E)充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1における各配合物質の配合量は重量部で示され、*1〜*10は次の通りである。
*1:商品名;サイリルMA−470(加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体:鐘淵化学工業(株)製)
*2:商品名;サイリルSAT−200(加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体:鐘淵化学工業(株)製)
*3:商品名;FTR−8100(スチレン系重合体:三井化学工業(株)製)
*4:商品名;FTR−7100(スチレン系共重合体:三井化学工業(株)製)
*5:商品名;FTR−6100(スチレン系共重合体:三井化学工業(株)製)
*6:商品名;SCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製)
*7:商品名;エクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製)
*8:商品名;カルファイン200M(表面処理軽質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)
*9:商品名;KBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)
*10:商品名;KBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)
【0039】
(実験方法)
1)制振性能試験
図2で示した方法により損失係数を測定し、建築用複合板の制振効果を評価した。試験体は、厚み12mm、縦300mm、横300mmの木質合板2枚を上記得られた塗布型制振材料組成物で貼り合わせたものを用いた。塗布型制振材料組成物の塗布量は500g/m2とした。
【0040】
得られた試験体を23℃に保たれた恒温室内にて1時間以上放置した後、厚み60mm、縦300mm、横300mmのウレタンフォームの上に試験体を水平に乗せ、その中央部をインパクトハンマーで衝撃加振し、FFTアナライザで応答信号を測定し、その応答関数から損失係数を測定した。加振回数は8回、FFTアナライザは小野測器製CF5220を使用した。結果を表2に示す。表2中、損失係数ηが0.1以上の場合を○、0.1未満を×と評価した。
【0041】
2)接着性能
上記塗布型制振材料組成物に対して、JIS K5538 壁ボード用接着剤の引張り強さ試験に準じて接着強さ試験をおこなった。被着体として、下地材料は木材(ひのき)、仕上材料として合板(5プライ)を使用した。試験の環境条件はJIS K5538に規定される標準条件による。結果を表2に示した。引張り接着強さ5kg/m2以上の場合を○、5kg/m2未満を×と評価した。
【0042】
3)粘度
JIS K6833−1994 接着剤の一般試験方法に準じ、BS型粘度計(回転数:毎分10回)を用いて粘度測定を行った。測定温度は23℃である。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
(実施例2)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を100重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−7100(三井化学工業(株)製):100重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):100重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0045】
(実施例3)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−6100(三井化学工業(株)製):100重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):100重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0046】
(実施例4)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−6100(三井化学工業(株)製):70重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):100重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例5)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−6100(三井化学工業(株)製):200重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):100重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0048】
(実施例6)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−6100(三井化学工業(株)製):50重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):250重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
(実施例7)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、(B)スチレン系(共)重合体としてFTR−6100(三井化学工業(株)製):100重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):25重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)を250重量部それぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。表2に示す。
【0050】
(比較例1)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):100重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)をそれぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
(比較例2)
表1に示したように、(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体としてサイリルMA−470(鐘淵化学工業(株)製)及びサイリルSAT−200(鐘淵化学工業(株)製)を各々50重量部、可塑剤としてエクセノール3020(ポリプロピレングリコール:旭硝子(株)製):300重量部、充填材としてカルファイン200M(表面処理膠質炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製)をそれぞれ配合し加熱溶融させた後、(C)硬化触媒としてSCAT−25(ジブチル錫ジアセチルアセテート:三共有機合成(株)製):2重量部、シランカップリング剤であるKBM−603(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製):4重量部、及び水分吸収剤としてKBM−1003(ビニルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製)を1重量部それぞれ添加して塗布型制振材料組成物を調製した。得られた塗布型制振材料組成物について、実施例1と同様、実験を行った。結果を表2に示す。
【0052】
(比較例3)
塗布型制振材料組成物として、アクリルエマルジョン系接着剤(EM850、セメダイン株式会社製)を用いて実施例1と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
【0053】
表2に示した如く、実施例1〜7で得られた塗布型制振材料組成物は損失係数が0.1を大きく超え、制振性の高いことがわかる。それに対して比較例1のものは、損失係数が0.1未満であり、振動が実施例のものに比べ長い時間続いていることがわかる。また、比較例2及び3は接着性能が悪かった。
【0054】
本発明の建築用複合板を床、壁、天井に用いることで、固体伝搬音を効率よく遮断し、その結果、床、壁、天井から伝わる他室からの音の伝わりをおさえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の建築用複合板の一例を示す断面図である。
【図2】建築用複合板の損失係数の測定方法を示す模式的説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10:建築用複合板、12,12a,12b:建築用板、14:塗布型制振材料組成物、20:試験体、20a:試験体中心部、22:ウレタンフォーム、24:インパクトハンマー、26:加速度ピックアップ、28:測定器、30a,30b:木質合板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体、(B)スチレン系(共)重合体、(C)成分(A)に対する硬化触媒、(D)可塑剤、及び(E)充填材、を含有することを特徴とする塗布型制振材料組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)が、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体であることを特徴とする請求項1記載の塗布型制振材料組成物。
【請求項3】
前記重合体(A)が、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル酸(共)重合体より成る組成物であることを特徴とする請求項1又は2記載の塗布型制振材料組成物。
【請求項4】
前記硬化触媒(C)が、シラノール縮合触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の塗布型制振材料組成物。
【請求項5】
前記塗布型制振材料組成物の粘度が50〜500Pa・s(23℃)の範囲内にあり、かつ前記スチレン系(共)重合体(B)の配合割合が、前記加水分解性の珪素含有官能基を有する重合体(A)100重量部に対して50〜200重量部にあり、かつ前記可塑剤(D)及び前記充填材(E)の配合比率が(D)/(E)=0.1〜1.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の塗布型制振材料組成物。
【請求項6】
損失係数が0.1以上1.0以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の塗布型制振材料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の塗布型制振材料組成物を、同種又は異種からなる少なくとも2枚の建築用板の間に介在させてなることを特徴とする建築用複合板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−63190(P2006−63190A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247124(P2004−247124)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】