説明

変位測定装置、露光装置、及び精密加工機器

【課題】 高精度に物体の変位量を測定可能な変位測定装置を提供することを目的とすること。また、特にそれを具備した露光装置、及び精密加工機器を提供すること。
【解決手段】 変位測定装置200は、格子パターン4が形成されたスケール5と、スケール5に光を照射する光源1と、光源1からの複数の回折光のそれぞれを円偏光に変換する波長板6と、波長板6を透過した複数の回折光を重ね合わせて干渉させる光学素子7と、干渉させた光を受光する受光素子10とを備える。そして、波長板6に入射する複数の回折光が互いに偏光方向の等しい直線偏光になるように、光源1からの光を直線偏光に変換する直線偏光生成手段50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子干渉型の変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置、検査機器、精密加工機器及び、精密測定器においては、物体(変位物体)の位置情報、移動量、回転量等の変位量を測定する目的で、ロータリーエンコーダおよびリニアエンコーダ等の変位測定装置(エンコーダ)が多く使用されている。その中で、高精度に変位量を測定する方式として、光の回折干渉現象を応用した格子干渉型のエンコーダが知られている。格子干渉型エンコーダは、格子パターン(例えば、回折格子)が形成されたスケールに対してコヒーレントな光を入射させ、格子パターンにより回折した回折光を干渉させて、得られた干渉光の位相変化に基づいてスケールの変位量を求める装置である。
【0003】
特許文献1には、所望のパターンを基板に転写する露光装置に、格子干渉型の変位測定装置を適用した場合について記載されている。変位測定装置は、基板を支持するウエハステージの基準フレームに対する変位を測定する。基準フレームには回折格子が取り付けられ、ウエハステージ上の対応する部分に取り付けられたエンコーダにより、ウエハステージの基準フレームに対する変位が測定される。特許文献1においては、第1の回折格子を用いて放射ビームを例えば+1次回折光および−1次回折光に分割した後、それぞれの光路中に配置された直線偏光子により、偏光方向が互いに直角の向きとなる直線偏光に変換させる。そして、±1次回折光を第2の回折格子に入射させ、回折した光を重ね合わせて干渉させて、+1次回折光と−1次回折光の位相差の変化から、第1の回折格子に対する第2の回折格子の変位を測定する。特許文献1では、直線偏光子を介して得られる直線偏光の偏光方向が互いに直角になるように直線偏光子を配置させることで、+1次回折光と−1次回折光を区別できるようにしている。
【0004】
格子干渉型エンコーダにおいては、位相変化をいかに細かく測定出来るかが、高精度な測定を行う上で重要となる。位相変化を高精度に測定するには回折格子の格子ピッチを小さくした微細スケールを用いることが重要である。微細スケールの製造方法としては、レーザビームを用いてスケールに格子パターンを描画するレーザ描画方式(特許文献2)や、エッチングにより層を選択的に除去して凸凹の段差形状を形成するエッチング方式が一般的に知られている。
【0005】
しかし、レーザ描画方式によるスケールの製造においては、半導体レーザの出力変化や描画装置の光学系に起因して加工面におけるビーム径が変化するため、均一な線幅及び段差を有する格子パターンを作製することが難しい。また、エッチング方式においては、格子パターン側壁部のエッチングばらつき及び金属層の膜厚むらの影響により、均一な線幅及び段差の格子パターンを作製することが困難になる。従って、微細スケールの作製においては、格子パターンの線幅ばらつきや段差変動などの製造誤差が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−292735
【特許文献2】特登録03435601
【特許文献3】特開2008−185474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、格子パターンの線幅及び段差が均一でない場合には、スケール回折時の位相変化量が測定位置に応じて変化する。このため、スケール上の測定位置に応じて異なる大きさの計測誤差が発生し、正確に物体の変位測定を行うことが困難になる。また、干渉信号波形の交流成分の変化と直流成分の変化のほかに、重ね合わせる回折光の位相差の変化により、スケール上の測定位置に応じて変化する計測誤差が発生する。このため、特許文献3のように取得した干渉信号を補正する方法では、スケールの製造誤差に伴う計測誤差を十分に補正することができず、高精度な計測を行うことが難しい。
【0008】
このため、本発明は、高精度に物体の変位量を測定可能な変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の変位測定装置は、格子パターンが形成されたスケールと、前記スケールに光を照射する光源と、前記スケールからの複数の回折光のそれぞれを円偏光に変換する波長板と、前記波長板を透過した前記複数の回折光を重ね合わせて干渉させる光学素子と、干渉させた光を受光する受光素子とを備え、前記波長板に入射する前記複数の回折光が互いに偏光方向の等しい直線偏光になるように、前記光源からの光を直線偏光に変換する直線偏光生成手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高精度に物体の変位量を測定可能な変位測定装置を提供することが出来る。本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1としての変位測定装置の構成を示す図である。
【図2】本発明が解決する製造誤差について説明するための図である。
【図3】本発明が解決する従来例の製造誤差に伴う構造複屈折の影響を説明するための図である。
【図4】本発明が解決する従来例の製造誤差に伴う構造複屈折の影響を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態2としての変位測定装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態3としての露光装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態4としてのレーザ加工装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1(A)は、本発明の一側面としての変位測定装置200の構成を示す概略図である。図1(A)では、紙面に対して垂直な方向をY方向とし、Y方向に垂直で紙面の左右方向をX方向とし、X方向とY方向に垂直で紙面上下方向をZ方向とする。変位測定装置200は、検出ヘッド100とスケール5で構成される装置であり、検出ヘッド100とスケール5のX方向への相対的な変位量を測定する。検出ヘッド100は、レーザ光源1と、コリメータレンズ2と、ミラー3と、偏光板50と、λ/4板6と、基準回折格子7(光学素子)と、ビームスプリッタ(BS)8と、偏光板9と、受光素子10で構成される。なお、ミラー3、λ/4板6、偏光板9、受光素子10については、それぞれ3a〜3c、6aと6b、9aと9b、10aと10bを含むものとする。また、本実施形態においては、直線偏光生成手段として偏光板50を適用し、波長板としてλ/4板6を適用した場合について説明する。
【0014】
図1(A)において、レーザ光源1より射出されたコヒーレントな光を、コリメータレンズ2を介して平行光束として、ミラー3aで反射させる。その後、偏光板50を介して直線偏光とした後、スケール5に偏光板50を透過した光を垂直に入射させる。スケール5に入射した光は格子パターン4により回折し、+1次回折光R+と−1次回折光R−との複数の回折光に分岐する。スケール5には1次元の格子パターン4が形成されており、X方向を周期方向、Y方向を格子方向とする。格子パターン4はY方向に沿って格子パターン4の多数の溝が形成されている。このため、図1(A)の変位測定装置200では、X方向が計測方向、Y方向が非計測方向となる。
【0015】
ここで、スケールの変位量をΔX、スケールの格子ピッチをPとすると、移動前後でのm次回折光の1回反射における位相変化量Δφは、
Δφ=2πmΔX/P ・・・(式1)
で表される。従って、1次回折光(m=1)の場合には、格子を1ピッチ移動させると、位相が2πだけ変化する。このため、+1次回折光と−1次回折光を重ね合わせる場合には、格子1ピッチの移動に対して相対的に4πの位相変化が生じる。この結果、格子1ピッチの移動に対して、2周期の位相変化が発生する。上記のように、格子干渉型エンコーダによる変位測定においてはスケールを格子パターンの周期方向へ移動させて、位相変化量を測定することにより変位量を求める。このため上記のように位相変化量Δφは(式1)のように表されるから、格子ピッチを小さくすることで、格子1ピッチのスケールの移動に伴う位相変化量Δφが大きくなる。ピッチを小さくすることで、位相変化を細かく測定することが可能となるため、高精度な変位測定を実現することが出来る。従って、高い精度で測定を行うためには、いかに細かい格子ピッチの微細スケールを用いるかが重要なポイントとなる。
【0016】
ここで、格子パターン4により二つに分岐された回折光の回折角θ1は、回折次数をm、レーザ光源1の波長をλ、格子パターン4の格子ピッチをPとすると、
P・sinθ1=mλ ・・・(式2)
で表される。なお、+1次回折光R+の光束が進む方向をI、−1次回折光R−の光束が進む方向をI’と定義する。また、Y方向とIに垂直な方向をI、Y方向とI’に垂直な方向をI’と定義する。
【0017】
次に、+1次回折光R+と−1次回折光R−をミラー3b、3cでそれぞれ反射させた後、λ/4板6a、6bを介して、基準回折格子7に入射角θ2で入射させる。
【0018】
ここで、λ/4板6a、6bの光軸は、+1次回折光R+と−1次回折光R−の偏光方向に対してそれぞれ+45度および−45度の角度となるように配置される。すなわち、λ/4板6a、6bを介した後に、+1次回折光R+と−1次回折光R−がそれぞれ右回り円偏光と左回り円偏光となるように、λ/4板6a、6bが配置される。なお、円偏光の偏光状態は互いに反対周りの偏光であればよく、上記の場合に限定されない。また、+1次回折光R+と−1次回折光R−を基準回折格子7の面と垂直方向に回折させるため、基準回折格子7への入射角θ2は、基準回折格子7の格子ピッチをdとした場合、以下の式で表される。
d・sinθ2=mλ ・・・(式3)
つまり、(式3)を満たす入射角θ2で+1次回折光R+と−1次回折光R−を基準回折格子7に入射させることにより、基準回折格子7の面に垂直な方向に回折させて、重ね合わせて干渉させる。
【0019】
その後、重ね合わせた干渉光をビームスプリッタ8で2光束に分割する。分割した2光束をそれぞれ偏光板9a、9bを介して受光素子10a、10bで受光する。受光素子10a、10bには、例えば、フォトダイオードまたはCCDなどの光電変換素子を用いることができる。受光素子は光電変換された干渉信号から、信号の強度に関する情報を取得する。
【0020】
ここで、偏光板9aと9bは、互いに45度ずれた偏光成分を取り出すように配置される。これにより、受光素子10a、10bでは互いに90度の位相差をもつ2相の正弦波信号が検出され、信号の強度に関する情報を取得する。信号の強度に基づいて、スケール5の変位量を、方向を含めて識別することができる。2相の正弦波信号は、初期位相をφ0、スケール5と検出ヘッド100の相対変位量をΔXとした場合、それぞれ以下の式で表される。
I1=A・cos(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−1)
I2=A・cos(4π・ΔX/P+φ0+π/2)
=−A・sin(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−2)
ここで、I1/I2より、
I1/I2=−tan(4π・ΔX/P+φ0) ・・・(式4−3)
であるから、
ΔX={arctan(−I1/I2)−φ0}・P/4π ・・・(式4−4)
と表せる。なお、(式4−1)と(式4−2)においては、2相の正弦波信号の振幅をAとし、等しいものとしたが、強度が異なる場合には、事前に振幅を揃えるように倍率をかける必要がある。
【0021】
図1(A)の変位測定装置200において、±1次回折光を使用した場合、受光素子10aまたは10b上における干渉の明暗周期は、スケール5に形成された格子パターン4の1ピッチ分の変位が正弦波信号の2周期に相当する。従って、受光素子10aまたは10bで受光される干渉光の明暗の数に基づいてスケール5の変位量を求めることができる。
【0022】
本発明者が鋭意検討した結果、従来技術を用いた場合の格子パターンの製造誤差に伴う計測誤差が発生することが分かった。発生メカニズムについて図2、図3、図4を用いて説明する。図2は、格子パターン4が形成されたスケール5を示す図である。図2(A)はスケール5をZ方向から見た図、図2(B)はスケール5をY方向から見た図である。説明を簡略化するため、スケール5には一定の長さの格子ピッチPで3つのパターンが形成されている。先述のように、レーザ描画及びエッチングにより、格子パターンの作製時に、その線幅及び段差に製造誤差が生じる。このため、図2に示すように、格子パターン4の線幅(D1〜D3)と段差(H1〜H3)にはそれぞればらつきが生じる。この格子パターン4の製造誤差に伴う構造複屈折の影響で、以下の2つの要因により計測誤差が発生する。
【0023】
第1の要因として、スケール回折時の位相差のずれが挙げられる。ここでは、従来技術として一般的な図3(A)の変位測定装置401を例に、位相差のずれについて説明する。変位測定装置401では、偏光ビームスプリッタ12を用いて分離させた、異なる偏光方向の光束LT、LRをスケール5に斜め入射させて、回折光を干渉させる。これにより、検出ヘッド301とスケール5のX方向への相対的な変位量を測定する。検出ヘッド301においては、偏光ビームスプリッタを透過する光束LTはP偏光、反射された光束LRはS偏光となる。ここで、スケール5の格子パターン4が図2のように製造誤差を有すると、構造複屈折の影響によりスケール回折時の位相変化量にはS偏光成分とP偏光成分で違いが生じる。変位測定装置401では、S偏光とP偏光をスケール5に入射させるため、スケール5で回折された光束LT、LRの偏光特性は、それぞれP偏光とS偏光となる。図3(B)には、検出ヘッド301とスケール5を相対的に変位させた場合に検出される光束LT、LRの信号強度変化を示す。図3(B)のように、構造複屈折の影響により、スケール回折時の位相変化量に違いが生じるため、検出される光束LT、LRには位相差のずれφ1が生じる。前述のように、格子干渉型エンコーダにおいては、干渉させる2つの光の位相変化に基づいて変位量を測定するため、位相差のずれφ1に伴って計測誤差が発生する。従って、スケール5上の格子パターン4に線幅ばらつき及び段差変動が生じる場合には、計測リニアリティが低下する。なお、図3(A)の構成に限らず、異なる偏光特性の2つの回折光を干渉させる構成においては、構造複屈折に伴い位相差にずれが発生する。そのため、スケール5の格子パターン4に線幅ばらつき及び段差変動が生じると測定位置に応じて変化する計測誤差が発生する。
【0024】
続いて、第2の要因として、スケール回折時の偏光特性の変化が挙げられる。ここで、従来技術として一般的な図4(A)の変位測定装置402を例に、偏光特性の変化について説明する。変位測定装置402では、スケール5に右回り円偏光と左回り円偏光を斜めに入射させて、回折光を干渉させることにより、検出ヘッド302とスケール5のX方向への相対的な変位量を測定する装置である。すなわち、レーザ光源1を射出した光を基準回折格子7で回折させ、±1次回折光R+、R−をλ/4板6を介してスケール5に入射させた後、スケール5で回折されて重ね合わせた干渉光を、偏光板9a、9bを介して受光素子10a、10bで受光する。ここで、構造複屈折の影響により、スケール回折時の回折効率と位相変化量にS偏光成分とP偏光成分で違いが生じるため、スケール5で回折された±1次回折光R+、R−の偏光特性は楕円偏光となる。変位測定装置402において、偏光板9a、9bにより取り出される偏光成分と、±1次回折光R+、R−との関係を図4(B)に示す。図4(B)においては、スケール5で回折された±1次回折光R+、R−の偏光特性は楕円偏光となるため、受光素子10a、10bで受光される光の干渉信号の強度変化にはばらつきが生じる。ここで、スケール回折時の偏光特性の変化に伴う干渉信号の強度変化のばらつきについて詳細に説明するために、変位測定装置402において2相で検出される干渉信号波形を図4(C)に示す。図4(C)に示す2つの干渉信号波形(a)と(b)は、検出ヘッド302とスケール5を相対的に変位させた場合に、受光素子10a、10bで受光された光の干渉信号強度を表す。図4(C)より、スケール5で回折された±1次回折光R+、R−の楕円偏光化に伴い、2相検出された干渉信号波形(a)、(b)間では直流成分の違いと交流成分の違いが生じる。このため、干渉信号の強度変化にばらつきが生じて、計測誤差が発生する。この計測誤差は格子パターン4の格子ピッチに起因して周期的に発生する誤差であるため、サイクリック誤差と呼ばれる。ここで、スケール5上の格子パターン4に線幅ばらつき及び段差変動を有する場合には、サイクリック誤差が変化する。このため、スケール5上の測定位置に応じて異なる大きさの計測誤差が発生する。なお、図4(A)の構成に限らず、構造複屈折の影響で、重ね合わせる回折光の偏光特性が楕円偏光となる構成においては、偏光特性の変化により計測誤差が発生する。このため、格子パターンの製造誤差を有すると、測定位置に応じて計測誤差が変化する。
【0025】
以上説明したように、従来の変位測定装置ではスケール上の格子パターンに製造誤差を有する場合には、スケール回折時の(1)位相差のずれと(2)偏光特性の変化とが測定位置に応じて変化することにより、計測誤差が発生することが分かった。
【0026】
次に、スケール5上の格子パターン4の製造誤差に伴う線幅ばらつきや段差変動による、計測位置に応じて変化する計測誤差を低減させる本発明の構成について説明する。スケール回折時の(1)位相差のずれによる影響を回避するためには、重ね合わせて干渉させる2つの光束の偏光特性が等しい構成にしなければならない。また、スケール回折時の(2)偏光特性の変化による影響を抑制するためには、楕円偏光化を回避する必要があり、そのためには円偏光に変換する波長板(λ/4板)に入射する光の偏光特性が直線偏光でなければならない。すなわち、(1)と(2)の影響を回避し、製造誤差に伴う計測誤差を低減させるためには、2つの回折光の光路中に配置されたλ/4板に入射するそれぞれの光が(I)等しい偏光特性であることと(II)直線偏光であることを同時に満たす必要がある。なお、(I)等しい偏光特性とは、図1(B)に示すように、スケール5で回折された±1次回折光R+、R−の偏光特性が、IY平面およびI’Y平面において直線偏光の偏光方向がそれぞれY軸に対して等しい角度であることを意味する。
【0027】
本実施形態においては、偏光板50を用いて、偏光方向が格子パターン4の格子方向又は周期方向のいずれか一方と一致する直線偏光の光をスケール5に入射させる。これにより、製造誤差に伴う計測誤差を低減させることができる。図1(A)に示す本実施形態においては、偏光板50を用いて、スケール5に入射する光の偏光特性をS偏光とP偏光のいずれか一方に変換する。なお、図1(A)においては、偏光方向が格子パターンの格子方向(Y方向)と一致する直線偏光をS偏光、光の直進方向とS偏光に直交する直線偏光をP偏光と呼ぶことにする。図1(A)の場合、偏光板50によりスケール5に入射する光はS偏光成分とP偏光成分のどちらか一方となるため、スケール5で回折される±1次回折光R+、R−はS偏光とP偏光のいずれか一方の直線偏光となる。すなわち、スケール5に入射する光の偏光特性がS偏光の場合には±1次回折光R+、R−はS偏光、スケール5に入射する光の偏光特性がP偏光の場合には±1次回折光R+、R−はP偏光となる。よって、本実施形態は、2つの回折光の光路中に配置されたλ/4板6a、6bに入射するそれぞれの光が(I)等しい偏光特性であることと(II)直線偏光であることを満たす構成となっている。従って、S偏光とP偏光のいずれか一方の光を入射させる本実施形態においては、構造複屈折によるスケール回折時の(2)偏光特性の変化は生じない。また、±1次回折光R+、R−はS偏光とP偏光のいずれか一方の直線偏光であるため、スケール回折時の位相変化量は等しく、(1)位相差のずれは生じない。以上より、偏光板50を用いて、偏光方向が格子パターン4の格子方向又は周期方向のいずれか一方と一致する直線偏光の光をスケール5に入射させることにより、製造誤差に伴う計測誤差を低減させることができる。本実施形態においては、偏光板50を介した直線偏光の偏光方向が格子パターン4の格子方向と周期方向のどちらとも一致しない場合には、スケール回折時の(2)偏光特性の変化により、計測誤差が発生する。このため、本実施形態の変位測定装置200においては、偏光板50を介した直線偏光の偏光方向を、格子パターン4の格子方向又は周期方向にいかに精度良く一致させるかが重要なポイントとなる。
【0028】
上述のように、本実施形態において偏光板50にZ軸に対する回転ずれが生じ、偏光板50を介した直線偏光の偏光方向が格子パターン4の格子方向と周期方向のどちらとも一致しない場合には、スケール回折時に偏光特性が変化する。このときスケール回折時の偏光特性は、格子パターン4の製造誤差に応じて変化する。このため、検出される2相の干渉信号波形の間では、スケール5上の測定位置に応じて、直流成分の違いと交流成分の違いがそれぞれ生じる。従って、偏光板50のZ軸に対する回転ずれの有無は、検出ヘッド100とスケール5を格子パターン4の周期方向(X方向)に相対的に変位させた時の、検出された2相の干渉信号の強度変化のばらつきの大きさで判断することが出来る。以上より、検出ヘッド100とスケール5をX方向に相対的に変位させた際に、検出される2相の干渉信号の強度変化のばらつきが最小となるように、偏光板50のZ軸に対する回転方向に位置調整を行う。これにより、偏光板50を介して得られる直線偏光の偏光方向と格子パターン4のZ軸に対する回転方向の位置を精度良く調整することができる。また、偏光板50の位置調整に際しては、不図示のピエゾ素子やモータ等による駆動部を設けて、Z軸に対する回転方向に位置調整を行っても良い。なお、偏光板50のZ軸に対する回転ずれの調整においては、回転ずれによって発生する計測誤差を許容値の範囲内に抑えるように位置調整を行うことが好ましい。本実施形態においては、偏光板50を介して得られる直線偏光の偏光方向と、格子パターン4の格子方向がXY平面上で45度ずれた場合に、楕円偏光化の影響により計測誤差が最大となる。
【0029】
ここで、(2)偏光特性の変化に起因した計測誤差をΔX1とすると、偏光板50を介して得られる直線偏光の偏光方向と格子パターン4の格子方向との角度ずれをΔθとすると、ΔX1はsinΔθに依存して変化する。すなわち、例えばΔθを15度以下に調整することにより、Δθが45度の場合に比べてΔX1を1/5以下に低減できる効果がある。また、例えばΔθを10度以下に調整すれば、Δθが45度の場合に比べてΔX1を1/10以下に低減できるので、より高精度な計測精度を有する変位測定装置には有効である。更に、例えばΔθを4度以下に調整すれば、Δθが45度の場合に比べてΔX1を1/100以下に低減させることができるので、超高精度な計測精度を有する変位測定装置には特に有効である。このように、偏光板50を介して得られる直線偏光の偏光方向と格子パターン4の格子方向の角度ずれΔθが小さくなるように調整を行うことで、計測誤差ΔX1を低減させることができる。また、スケール5に対してP偏光の直線偏光を回折させる場合には直線偏光の偏光方向と格子パターン4の周期方向との角度ずれをΔθとして調整を行う。
【0030】
次に、検出ヘッド100における基準回折格子7について述べる。図1(A)に示した検出ヘッド100における基準回折格子7にも、スケール5上の格子パターン4と同様に、製造誤差が生じる。基準回折格子7の格子パターンの線幅及び段差が設計値と異なる場合には、回折時に(1)位相差のずれが生じる。また、(2)偏光特性の変化の影響で、楕円偏光化する恐れがある。
【0031】
以下では、基準回折格子7の製造誤差の影響を低減させる二つの方法について述べる。第1の方法としては、干渉信号の補正処理がある。この方法では、従来技術の補正処理方法と同様に、検出された2相の干渉信号波形の間での交流成分の違いと直流成分の違いをそれぞれ求め、信号処理を行って干渉信号波形の間での違いを補正する。これにより、基準回折格子7の製造誤差に伴う(2)偏光特性の変化よる影響を低減させることができる。
【0032】
基準回折格子7の製造誤差の影響を低減させる第2の方法としては、λ/4板の位置調整による補正がある。この方法では、光線に対するλ/4板6の傾き及びλ/4板6の光軸の向きを調整することで、検出された2相の干渉信号波形間での交流成分の違いと直流成分の違いが低減されるように補正する。これにより、基準回折格子7の製造誤差に伴う(2)偏光特性の変化による影響を低減させることができる。なお、(1)位相差のずれに関しては、本実施形態の変位測定装置においては基準回折格子7が検出ヘッド100に固定されるため、オフセット値(一定値)として取り扱うことができる。このため、検出ヘッド100とスケール5の相対変位を求める変位測定装置においては、位相差のずれによる影響を無視することができる。これに対して、従来の変位測定装置においては、(1)位相差のずれがスケール上の測定位置に応じて変化して、スケール上の測定位置に依存した計測誤差が発生するため、高精度な計測を行うことが難しい。
【0033】
本実施形態によれば、ミラー3aとスケール5の間に偏光板50を配置して、偏光方向が格子パターン4の格子方向又は周期方向のいずれか一方と一致する直線偏光の光をスケール5に入射させる。これにより、格子パターン4の製造誤差に伴う計測誤差をスケール回折時の(1)位相差のずれと(2)偏光特性の変化による影響を低減して、製造誤差に伴う計測誤差を低減させることができる。これにより、検出ヘッド100とスケール5の相対的な変位量を高い精度で測定することが可能な変位測定装置を提供することができる。
【0034】
また本実施形態においては、直線偏光生成手段を配置せずに、直線偏光の光を射出する直線偏光レーザを光源に用いても良い。この場合、レーザ光源1からスケール5に照射される直線偏光の偏光方向を、格子パターン4の格子方向又は周期方向と一致させることで、偏光板50を用いる場合と同様に製造誤差に伴う計測誤差を低減させることができる。
【0035】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態として、実施形態1と異なる構成の変位測定装置について説明を行う。
【0036】
図5(A)は、本発明の第2の実施形態の構成を示す変位測定装置201の概略図である。変位測定装置201は、検出ヘッド101とスケール5で構成されている。実施形態1と異なる点は、偏光板50の配置である。本実施形態での変位測定装置には図1の偏光板50の替わりに偏光板50aと50bを備える。
【0037】
本実施形態においては、2つの偏光板50a、50bを用いて、±1次回折光R+、R−を等しい偏光方向の直線偏光に変換する。このとき、直線偏光の偏光方向は、実施形態1とは異なり、格子パターン4の格子方向や周期方向と一致させなくても良い。実施形態1で説明したように、格子パターンに製造誤差が生じる場合には、スケール回折時の(1)位相差のずれと(2)偏光特性の変化の影響より、計測位置に応じて変化する計測誤差が発生する。そして、(1)と(2)の影響を低減するためには、スケール5を反射した2つの回折光の光路中にそれぞれ配置されたλ/4板に入射するそれぞれの光が(I)等しい偏光特性であることと(II)直線偏光であることを満たさなければならない。
【0038】
本実施形態では、スケール5を回折した回折光を偏光板50a、50bを用いて、λ/4板6a、6bに導く±1次回折光R+、R−を等しい偏光方向の直線偏光に変換することで、上記の(I)と(II)を満たす構成としている。図5(B)には、偏光板を介して得られる直線偏光の、IY平面およびI’Y平面における±1次回折光R+、R−の偏光特性を表す。等しい偏光方向とするために図5(B)に示すように、直線偏光の偏光方向がそれぞれY軸に対して等しい角度ψとなるように、偏光板50a、50bを配置させる。ここで偏光板50a、50bを介した直線偏光の偏光方向が一致しない場合には、スケール回折時の±1次回折光R+、R−の位相変化量に違いが生じるため、(1)位相差のずれが生じて計測誤差が発生する。また、偏光板50を配置せず、直線偏光への変換を行わない場合には、スケール回折時の(2)偏光特性の変化の影響により、±1次回折光R+、R−の偏光特性が楕円偏光となり、計測誤差が発生する。本実施形態においては、偏光板50を介した後の±1次回折光の偏光特性は等しいため、(1)位相差のずれが生じない。また、偏光板50を介した光は直線偏光であり、λ/4板6a、6bを介して円偏光に変換されるため、(2)偏光特性の変化による影響も受けない。従って、偏光板50a、50bを配置して、λ/4板6a、6bに導かれる±1次回折光R+、R−を等しい偏光方向の直線偏光に変換することにより、スケール回折時の(1)位相差のずれと(2)偏光特性の変化による影響を低減することが出来る。
【0039】
なお、+1次回折光R+の光束が進む方向Iに対する偏光板50aの回転ずれ、及び−1次回折光R−の光束が進む方向をI’に対する偏光板50bの回転ずれの調整については、計測誤差を許容値の範囲内に抑えるように調整を行うことが好ましい。本実施形態においては、偏光板50a、50bを介して得られる直線偏光の偏光方向が互いに90度異なる場合に、(1)位相差のずれに起因して計測誤差が最大となる。なお、特許文献1に記載の変位測定装置の構成においては、直線偏光子を用いて回折光を互いに直角の方向の直線偏光に変換するため、(1)位相差のずれに起因した計測誤差が発生する。ここで、(1)位相差のずれに起因した計測誤差をΔX2、偏光板50a、50bを介して得られるそれぞれの直線偏光の偏光方向における角度ずれをΔψとすると、ΔX2はsinΔψに比例して変化する。すなわち、例えばΔψを10度以下に調整すれば、従来の特許文献1に記載の変位測定装置で発生する誤差を1/5以下に低減できる効果がある。また、例えばΔψを5度以下に調整すれば、誤差を1/10以下に低減できるので、より高精度な計測精度を有する変位測定装置には有効である。更に、例えばΔψを0.5度以下に調整すれば、誤差を1/100以下に低減できるので、超高精度な計測精度を有する変位測定装置には特に有効である。このように、計測誤差がsinΔψに比例することを考慮し、偏光板50の角度ずれΔψがより小さくなるように調整を行うことで、計測誤差ΔX2を低減させることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、偏光板50aをミラー3bとλ/4板6a、偏光板50bをミラー3cとλ/4板6bの間に配置する構成でも良い。
【0041】
以上より、偏光板50a、50bを配置して、λ/4板6a、6bに導かれる±1次回折光R+、R−を等しい偏光方向の直線偏光に変換することで、スケール5上の格子パターン4の製造誤差に伴う、計測誤差を低減させることができる。このため、本実施形態によれば、検出ヘッド100とスケール5の相対的な変位量を高精度に測定可能な変位測定装置を提供することができる。
【0042】
第1及び第2実施形態において、回折された2つの光の次数が±1次の場合についてのみ説明したが、回折光の次数は必ずしも±1次に限定されるものではなく、異なる次数の回折光の場合であっても本発明を適用できる。
【0043】
また、検出ヘッド100のレーザ光源1としては、コヒーレントな光を射出するHe−Neレーザや固体レーザ、半導体レーザを用いることが望ましい。さらに、光ファイバを用いて光源からの光を導光する構成とすることも出来る。
【0044】
なお、いずれの実施形態においても変位測定装置201を実際に構成する際には、スケール5からの0次回折光がレーザ光源1に直接戻らないように、格子方向と周期方向の角度を90度からわずかにずらすことが好ましい。また、不要光である0次回折光やその他の次数の回折光を遮断するようにしても良い。さらに、ビームスプリッタ8と偏光板9の別の構成として、偏光ビームスプリッタ(PBS)を使用する構成としても良い。
【0045】
なお、いずれの実施形態においても直線偏光生成手段として偏光板50を用いてレーザ光源1から射出された光から直線偏光の光を取り出す構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、グラントムソンプリズム等の偏光素子を使用しても良い。
【0046】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態として、本発明の変位測定装置を露光装置のステージ位置計測装置として適用した場合について説明する。
【0047】
図6は、本発明の変位測定装置を具備した露光装置の構成を示す図である。図6(A)に示すように、露光装置は光源部800と、レチクル14を保持するレチクルステージRSと、投影光学系15と、スケール5と、ウエハ36を保持するウエハステージWSと、ウエハステージWS上に搭載された検出ヘッド102が配置される。変位測定装置は、第1、または第2の実施形態で説明した変位測定装置を適用することができる。なお、ウエハステージWSは、微動ステージと粗動ステージで構成され、検出ヘッド102は、微動ステージ上に搭載される。ウエハ36上には、フォトレジストが塗布されている。
【0048】
ステージ制御部1000は、ウエハステージWS、演算処理部81、検出ヘッド102と電気的に接続され、変位測定装置の測定結果に基づいてウエハステージWSの位置制御を行う。また、中央制御部1100は、ステージ制御部1000、光源部800、レチクルステージRSと電気的に接続され、露光装置の動作を制御する。
【0049】
続いて、ウエハ36を保持するウエハステージWSの位置測定について説明する。ウエハステージWSは、レチクルステージRSと同様に、リニアモーターを利用して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にウエハ36を移動させる。本実施形態においては、ウエハステージWS上に変位測定装置の検出ヘッド102が搭載される。変位測定装置は、測定基準となるスケール5に対するウエハステージWSの相対位置関係を検出ヘッド102で測定することにより、ウエハステージWSの位置測定を行う。
【0050】
図6(B)に、測定基準であるスケール5とウエハステージWSをZ軸方向から見た位置関係を示す。スケール5には一次元の格子パターンが形成されており、4つのスケール5a〜5dが投影光学系15を取り囲むように配置される。図6(B)のように、4つのスケール5a〜5dの格子方向がX軸方向またはY軸方向に対して45度傾いた方向となるように配置され、WSに搭載された4つの検出ヘッド102a〜dで各方向における変位を測定する。例えば、スケール5aに対して検出ヘッド102aを用いて測定することで、X軸に対して+45度傾いた方向における変位測定が可能である。また、スケール5bに対して検出ヘッド102bを用いて測定することで、Y軸に対して+45度傾いた方向における変位測定が可能となる。同様にして、スケール5cに対して検出ヘッド102cを、スケール5dに対して検出ヘッド102dを用いることで、Y軸に対して+45度傾いた方向及び、X軸に対して+45度傾いた方向の変位をそれぞれ測定することができる。従って、適当な3つのスケールにおける変位測定を行うことで、X軸とY軸およびZ軸まわりの回転Rz軸の変位を求めることができる。また、ウエハステージWSは基準マーク60(60a〜60d)の少なくとも1つを備えており、ウエハ36とレチクル14との位置合わせを行う。位置合わせに際しては、アライメントスコープ(不図示)で基準マーク60及びウエハ36上のアライメントマークの位置を検出する。この検出結果と変位測定装置の計測値とに基づいてウエハステージWSを制御しながら駆動させて、ウエハ36を所望の位置に移動させる。
【0051】
ここまでは本発明の変位測定装置をウエハステージに搭載する場合について説明したが、ウエハステージに限定されず、レチクルステージRSに搭載しても良い。レチクルステージRSに搭載した場合は、高精度にステージの変位を測定し、所望の位置に正確にレチクルステージRSを移動させることができる。
【0052】
半導体デバイスの微細化に伴い、半導体露光装置のレチクルとウエハの位置合わせにおいては、ナノメートルオーダーの精度が求められている。本発明の変位測定装置を露光装置に用いることにより、ステージの変位を高精度に測定できるようになり、ウエハとレチクルの位置合わせ精度が向上することになる。そのため半導体素子の性能向上や、製造歩留まりの向上にも繋がるという効果がある。
【0053】
ここでは、レチクルを用いる露光装置について説明したが、レチクルを用いない露光装置(例えば、EB露光装置)に本発明を適用することもできる。
【0054】
(第4実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態として、本発明の変位測定装置を精密加工機器の中でレーザを用いて加工を行うレーザ加工装置のステージ位置計測装置として適用した場合について説明する。
【0055】
図7は、本発明の変位測定装置を具備したレーザ加工装置500の概略図を示す図である。図7に示すように、レーザ加工装置500は、加工ヘッド71と、基板72と、基板72を保持するステージ73と、ベース部材74と、スケール75と、ステージ73上に搭載された検出ヘッド100で構成される。なお、検出ヘッド100を用いてスケール75の変位量を測定する変位測定装置には、第1、及び第2の実施形態をそのまま適用することが出来る。
【0056】
加工ヘッド71は、不図示のレーザ発振器と、レーザ発振器から射出されたレーザビームLBを基板72に導く照明光学系(不図示)により構成される。ここで、レーザ発振器は、射出されたレーザビームLBが基板72を最適に加工できる様に波長、パルス幅等が選択できるものが好ましい。レーザ発振器には、例えば、エキシマレーザやYAGレーザを用いることができる。
【0057】
加工ヘッド71より射出されたレーザビームLBは、ステージ73上に載置された基板72上に所望のビーム形状で集光される。ステージ73は、不図示の移動機構に接続されている。移動機構は、リニアモーターなどで構成され、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にステージ73を駆動することで基板72を移動させることができる。本実施形態のレーザ加工装置500においては、ステージ73をZ軸方向に駆動させて、基板72の表面を加工ヘッド71の最適像面位置に合わせた後、ステージ73をXY平面において動作させて、基板72とレーザビームLBの相対位置を変化させる。これにより、レーザビームLBにより基板72を加工して、例えば、基板72上に所望のパターンを形成することができる。
【0058】
スケール75には一次元の格子パターンが形成されており、スケール75は加工ヘッド71を取り囲むように配置される。本実施形態においては、ステージ73上に変位測定装置の検出ヘッド100が搭載される。変位測定装置においては、スケール75に対する検出ヘッド100の相対的な変位量を測定することで、ステージ73の位置計測を行う。このため、基板72とレーザビームLBの相対位置を変化させる際には、スケール75に対する検出ヘッド100の変位測定を行うことが可能となる。例えば、変位測定装置の計測値に基づいて、ステージ73を制御しながら駆動させることで、基板72上のレーザビームLBの位置を所望の位置に移動させることができる。
【0059】
なお、ここまで本実施形態においては、変位検出装置の検出ヘッドをステージ上に配置する構成について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、スケールをステージ表面上に配置し、加工ヘッドの周辺に検出ヘッドを固定する構成でも良い。この構成においても同様に、検出ヘッドに対するスケールの変位測定を行うことにより、ステージの位置計測を行うことが出来る。
【0060】
ここでは、レーザ加工装置について説明したが、加工ヘッドとしてモールドヘッドを使用するナノインプリント装置に本発明を適用することもできる。
【0061】
以上より、本発明の変位測定装置をレーザ加工装置のステージ位置計測装置として適用した場合には、加工ヘッドとスケールの相対的な変位量を高精度に測定し、所定の位置に正確にステージを移動させることが出来る。なお、本実施形態においては、変位測定装置を精密加工機器であるレーザ加工装置のステージ位置計測装置として適用した場合について説明したが、本発明の変位測定装置の適用範囲はこれに限定されない。例えば、レチクルやウエハの位置座標を測定する座標測定装置や顕微鏡などの精密測定器や検査機器に広く適用することが出来る。この場合も同様に、測定ヘッド又は検査ヘッドとステージの相対的な変位量を高精度に測定し、所定の位置に正確にステージを移動させることが出来る。
【0062】
また、いずれの実施形態においても、格子パターンが形成されたスケールに光を照射し、反射した回折光を用いた変位測定装置について説明した。しかし、本発明はスケールに光を照射してその透過した回折光を用いても良い。
【0063】
(第5実施形態)
続いて、本発明の第5の実施形態として、デバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。ここでは、半導体デバイスの製造方法を例に説明する。
【0064】
半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。なお、液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。
【0065】
本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 レーザ光源
4 格子パターン
5 スケール
6(6a、6b) λ/4板(波長板)
7 基準回折格子(光学素子)
50(50a、50b) 偏光板(直線偏光生成手段)
100 検出ヘッド
200 変位測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子パターンが形成されたスケールと、
前記スケールに光を照射する光源と、
前記スケールからの複数の回折光のそれぞれを円偏光に変換する波長板と、
前記波長板を透過した前記複数の回折光を重ね合わせて干渉させる光学素子と、
干渉させた光を受光する受光素子と、を備える変位測定装置において、
前記波長板に入射する前記複数の回折光が互いに偏光方向の等しい直線偏光になるように、前記光源からの光を直線偏光に変換する直線偏光生成手段を備える
ことを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記直線偏光生成手段は、前記光源と前記スケールとの間の光路中に配置され、前記光源からの光を偏光方向が前記スケールの前記格子パターンの格子方向または周期方向と一致する直線偏光に変換することを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記直線偏光生成手段は、前記スケールと前記波長板との間の光路中に配置され、前記複数の回折光のそれぞれを直線偏光に変換することを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記直線偏光生成手段は偏光板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項5】
格子パターンが形成されたスケールと、
前記スケールに光を照射する光源と、
前記スケールからの複数の回折光のそれぞれを円偏光に変換する波長板と、
前記波長板を透過した前記複数の回折光を重ね合わせて干渉させる光学素子と、
干渉させた光を受光する受光素子と、を備える変位測定装置において、
前記光源は、直線偏光を射出し、該直線偏光の偏光方向が前記スケールの前記格子パターンに対して格子方向または周期方向と一致するように前記スケールを照明する
ことを特徴とする変位測定装置。
【請求項6】
基板を保持するステージと、
前記ステージの変位を測定する変位測定装置と、を備える露光装置において
前記ステージは前記変位測定装置の計測値に基づいて制御され、
前記変位測定装置は請求項1〜5のいずれか1項に記載の変位測定装置であることを特徴とする露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと
該露光した基板を現像するステップとを有することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項8】
基板を保持し移動するステージと、
前記基板を加工する加工ヘッドと、
前記ステージの変位を測定する変位測定装置と、を備える精密加工機器において
前記ステージは前記変位測定装置の計測値に基づいて制御され、
前記変位測定装置は請求項1〜5のいずれか1項に記載の変位測定装置であることを特徴とする精密加工機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−122946(P2011−122946A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280999(P2009−280999)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】