説明

外用組成物

【課題】開放系の容器に充填した場合でも薬効成分の希釈や濃縮が起こることなく、かつ繰り返し使用する際にも良好な塗布感を与える外用組成物を提供すること。
【解決手段】(A)薬効成分、(B)粉末成分、(C)高分子および(D)溶剤を含有する外用組成物であって、当該組成物を収容する収容部と、前記収容部を外部と連通する開口部と、前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具に充填するための外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)薬効成分、(B)粉末成分、(C)高分子および(D)溶剤を含有する外用組成物であって、当該組成物を収容する収容部と、前記収容部を外部と連通する開口部と、前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具に充填するための外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物や医薬部外品などは、疾病の治療又は予防など様々な用途に用いられるものである。その目的達成のためには、薬効成分は適切な有効性、安全性を奏する濃度に設定して適用する必要がある。特に外用の液状の製剤については、基剤の揮発や流出が生じやすく、この場合、有効成分の濃縮や変性(沈殿など)などが起こることが多い。
【0003】
従来、当該薬効成分を含有する液状組成物においては、これらの危険性を回避すべく閉鎖系の容器を採用している。これら既存の閉鎖系の容器は開封前においてはバージンシールなどの処理がされていたり、使用後においては、必ず密栓するなどの閉鎖系を保持する処理が必要となり(特許文献1〜3)煩雑であった。また、そのような性質上充てん方法は限定され、エアゾール缶に充てんする、塗布面に基布を有する容器に充てんするなどが例示される(特許文献4および5)。しかし、それらは冷却刺激や摩擦による皮膚刺激など患者のQOLを考慮すると、適したものとは言い難かった。
【特許文献1】特開平10−167292号公報
【特許文献2】特開平10−59389号公報
【特許文献3】特開2005−177111号公報
【特許文献4】特開2006−263477号公報
【特許文献5】特開2004−75165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することである。具体的には、本発明は、開放系の塗布具に充填した場合でも薬効成分の希釈や濃縮が起こることなく、かつ繰り返し使用する際にも良好な塗布感を与える外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、薬効成分に粉末成分、高分子を組み合わせた液状の製剤を、組成物を収容する収容部と、前記収容部を外部と連通する開口部と、前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具に充填することにより、従来の閉鎖技術を用いることなく製剤の品質(製剤中の薬効成分濃度など)を維持でき、さらに良好な液状組成物の塗布感を奏する事ができることを発見し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を包含する:
項1.(A)薬効成分、(B)粉末成分、(C)高分子および(D)溶剤を含有する外用組成物であって、
当該組成物を収容する収容部と、
前記収容部を外部と連通する開口部と、
前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具に充填するための外用組成物。
項2.外用組成物の総重量に対して、(B)粉末成分を6〜40重量%の割合で含有する、項1に記載の外用組成物。
項3.(C)高分子が親油性高分子である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4.前記親油性高分子がシリコン系高分子である、項3に記載の外用組成物。
項5.外用組成物の総重量に対して、親油性高分子を3〜60重量%の割合で含有する、項3又は4に記載の外用組成物。
項6.(C)高分子が親水性高分子である、項1又は2に記載の外用組成物。
項7.外用組成物の総重量に対して、親水性高分子を0.1〜10重量%の割合で含有する、項6に記載の外用組成物。
項8.項1〜7のいずれかに記載の外用組成物を収容した収容部と、
前記収容部を外部と連通する開口部と、
前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具。
【発明の効果】
【0007】
開放系の容器に充填すると基剤の揮発や流出を生じることの多かった液状製剤であるが、本発明の外用組成物によれば、有効成分等の減量を防ぎ、組成物の品質を維持でき、さらに良好な流動性および塗布感(使用感)を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の外用組成物は、(A)薬効成分、(B)粉末成分、(C)高分子および(D)溶剤を含有する組成物であって、当該組成物を収容する収容部と、前記収容部を外部と連通する開口部と、前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具に充填することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の外用組成物に用いられる(A)薬効成分としては、医薬品および医薬部外品などに配合される薬効を有する成分であれば特に制限されないが、例えば、美白剤、抗炎症剤、局所麻酔剤、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、収斂剤、組織修復剤、ビタミン剤、鎮痛剤、角質軟化剤、殺菌消毒剤、抗真菌剤、植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0011】
美白剤の具体例としては、アスコルビン酸、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸ナトリウムおよびL-アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウムなどのアスコルビン酸誘導体;プラセンタエキス;アルブチン;エラグ酸;油溶性アスコルビン酸;コウジ酸;ならびにハイドロキルなどが挙げられる。
【0012】
抗炎症剤としては、グリチルレチン酸およびグリチルレチン酸ステアリルなどのグリチルレチン酸誘導体;グリチルリチン酸ジカリウムなどのグリチルリチン酸誘導体;ブフェキサマク;ウフェナマート;ヒドロコルチゾン、デキサメタゾンおよびプレトニゾロンなどのステロイド剤;ならびにイブプロフェンピコノールなどが挙げられる。
【0013】
局所麻酔剤としては、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン、塩酸ジブカインおよびリドカインなどが挙げられる。
【0014】
鎮痒剤としては、クロタミトンなどが挙げられる。
【0015】
抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミンおよびサリチル酸ジフェンヒドラミンなどが挙げられる。
【0016】
収斂剤としては、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0017】
組織修復剤としては、ヘパリン類似物質、ヘパリン様物質およびアラントインなどが挙げられる。
【0018】
ビタミン剤としては、レチノール及びその誘導体、チアミン及びその誘導体、フラビン及びその誘導体、ピリドキシン及びその誘導体、コバラミン及びその誘導体、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、トコフェロール及びその誘導体、ビタミンK、ニコチン酸及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン及びその誘導体、葉酸及びその誘導体などが挙げられる。
【0019】
鎮痛剤としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、ピロキシカム、フルルビプロフェンおよびジクロフェナクナトリウムなどが挙げられる。
【0020】
角質軟化剤としては、イオウ、レゾルシンおよびサリチル酸などが挙げられる。
【0021】
殺菌消毒剤としては、エタノール、イソプロピルメチルフェノール、アクリノール、オキシドール、イソプロパノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ヨウ素およびポピドンヨードなどが挙げられる。
【0022】
抗真菌剤としては、クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、ラノコナゾール、塩酸ブテナフィン、塩酸アモロルフィンおよび塩酸テルビナフィンなどが挙げられる。
【0023】
その他の薬効成分としては、メントール、カンフル、尿素、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル、塩酸ナファゾリン、ビオチンおよびトラネキサム酸などが挙げられる。
【0024】
本発明の外用組成物において、上記薬効成分の配合割合は、使用する薬効成分の種類、該組成物の形態、患者の年齢や性別、期待される効果等に応じて異なる。例えば、美白剤であれば0.01〜20重量%程度、抗炎症剤であれば0.01〜30重量%程度配合するのが好ましい。
【0025】
また、本発明の外用組成物は(B)粉末成分を含有する。
【0026】
本発明の外用組成物に含まれる粉末成分としては、とくに制限されないが、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、カオリン、ベントナイト、カーボンブラック、軽質無水ケイ酸および薬用炭などが挙げられる。これらの粉末成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明に使用される粉末成分として、好ましくは、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、デンプン、カオリンおよびベントナイトからなる群から選ばれる1種以上である。
【0027】
本発明の外用組成物に含まれる(B)粉末成分の割合については、使用する粉末成分の組成、組成物の形態等に応じて適宜設定される。(B)粉末成分の配合割合の一例として、外用組成物の総重量に対して、該粉末成分が総重量で、通常6〜40重量%、好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは10〜20重量%となる割合が挙げられる。上記範囲内で(B)粉末成分を含有すれば、良好な使用感の流動性組成物が得られるとともに、塗布部外表面においてブラシ毛間の隙間を埋め、開口部付近の気密性を高めるうえでとくに優れた効果が得られる。
【0028】
また、本発明の外用組成物に含まれる(B)粉末成分の平均粒子径は、好ましくは0.001〜100μmであり、より好ましくは0.01〜50μmである。
【0029】
さらに、本発明の外用組成物は、(C)高分子を含有する。
【0030】
本発明において高分子とは、外用組成物中に配合することで配合前に比べて粘性を高めることができる高分子であればよく、好ましくはその粘性により粉末成分とともにブラシ毛表面に付着し、少なくとも塗布部外表面においてブラシ毛間の隙間を橋渡しする高分子のことをいう。塗布部外表面においてブラシ毛間の隙間が橋渡しされることによって、粉末成分が橋上に保持され当該隙間を埋めることができる。その結果、開口部付近の気密性を高めて開口部に外気が触れないようになる。
【0031】
そのような高分子としては、例えば、親油性高分子および親水性高分子が挙げられる。
【0032】
親油性高分子としては、具体的には、シリコン系高分子、ワックス、マイクロクリスタリンワックス、サラシミツロウ、ミツロウ、ポリソルベートが挙げられる。
【0033】
シリコン系高分子の具体例としては、揮発性シリコン(デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンおよびメチルシクロポリシロキサンなどの環状シリコンオイル;メチルポリシロキサンの低粘度ジメチルシリコン;ならびにトリメチルシロキシケイ酸など)が挙げられ、さらに、その他のシリコン(オクタメチルトリシロキサン;デカメチルテトラシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン;ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体およびポリオキシプロピレンメチルポリシロキサン共重合体などのポリエーテル変性シリコン;メチルハイドロジェンポリシロキサン;メチルシロキサン網状重合体ならびにシリコーン樹脂など)を使用することもできる。
【0034】
親水性高分子の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カルメロースナトリウム、キサンタンガムおよびカラギーナンなどが挙げられる。
【0035】
これらの高分子は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本発明に使用される高分子として、塗布部外表面においてブラシ毛間の隙間を橋渡させ、その橋上に粉末成分を保持させる能力(すなわち、開口部付近の気密性を高める能力)に優れるうえに、ブラシ毛間の結合が緩く、余分な力をかけることなく再使用できることことから、好ましくは親油性高分子であり、より好ましくはシリコン系高分子であり、さらに好ましくは揮発性シリコンである。
【0036】
本発明の外用組成物に含まれる(C)高分子の割合については、使用する高分子の組成、組成物の形態等に応じて適宜設定される。
【0037】
(C)高分子の配合割合の一例として、高分子がシリコン系高分子である場合、外用組成物の総重量に対して、該シリコン系高分子が総重量で、通常3〜60重量%、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは5〜20重量%となる割合が挙げられる。
【0038】
また、(C)高分子が水溶性高分子である場合、外用組成物の総重量に対して、該水溶性高分子が総重量で、通常0.1〜10重量%、好ましくは1〜10重量%、更に好ましくは3〜10重量%となる割合が挙げられる。
【0039】
上記範囲内で(C)高分子を含有すれば、良好な使用感の流動性組成物が得られるとともに、塗布部外表面においてブラシ毛間の隙間を橋渡させ、その橋上に粉末成分を保持させる(すなわち、開口部付近の気密性を高める)うえでとくに優れた効果が得られる。
【0040】
また、粉末成分と高分子の配合割合は、好ましくは、粉末成分1重量部に対して高分子0.001〜10重量部、より好ましくは0.025〜2.0重量部、更に好ましくは0.025〜1.0重量部である。とくに高分子が親油性高分子のみで構成される場合は、粉末成分1重量部に対して高分子0.075〜10重量部配合することが好ましく、0.1〜10重量部配合することがより好ましい。また、親水性高分子のみで構成される場合は、粉末成分1重量部に対して高分子0.0025〜1.7重量部配合することが好ましく、0.0025〜1.5重量部配合することがより好ましい。
【0041】
本発明の外用組成物には、上記配合成分の混和性及び溶解性や患部への浸透性を高める等の観点から、さらに(D)溶剤(基剤)が配合される。
【0042】
(D)溶剤としては、液状の外用組成物を調製するために用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびイソブタノールなどの低級アルコール;ワセリン、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、白ロウ、プラスチベース、ポリエチレングリコール、マクロゴール等の油系基剤;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;1.3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン類等の多価アルコール;モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0043】
上記(D)溶剤の配合割合は、使用する薬効成分の種類、組成物の形態、使用する溶剤の種類等に応じて適宜設定され、例えば、外用組成物の総重量に対して、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
【0044】
本発明の外用組成物には、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述の配合成分の他に、必要に応じて、保湿剤、香料、着色剤、他の粉末成分、清涼化剤、精油成分、温感、温熱成分、エキス類、界面活性剤、溶解剤、pH調整剤、緩衝剤、発泡剤、消泡剤、乳化剤、懸濁剤、軟化剤、粘ちょう剤、分散剤、賦形剤、滑沢剤、酸化防止剤、防腐剤、保存剤、可塑剤、安定化剤、吸着剤、皮膚保護剤等の任意成分を適当量配合してもよい。
<塗布具>
このような本発明の液状外用組成物は、例えば、図1に示すような塗布具1に充填して使用することができる。本発明における塗布具1は、本発明の外用組成物を収容する収容部2と、収容部2を外部と連通する開口部3と、開口部3を覆うように設けられた多数のブラシ毛4aからなる塗布部4とを備える。このような塗布具としては、液状化粧品の塗布用として公知のものを使用してもよい。
【0045】
収容部2は、塗布部4への薬液の供給を促すことができるように、ノック機構(図示せず)を備えることが好ましい。すなわち、外部に露出する操作部を押圧して収容部内に設けられたピストンを開口部3に向けて摺動させ、一定量の薬液を塗布部4に強制的に押し出し可能に構成することにより、使用後においてブラシ毛間に薬液を保持させることが容易となり、収容部内の薬液の減量を確実に防止することができる。
【0046】
開口部3は、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは0.5〜1.5mmの孔(a)を有し、収容部から外部までの距離(b)は10〜30mmが好ましく、10〜20mmがさらに好ましい。上記範囲内であれば、外用組成物の減量を防ぎ、薬効成分の希釈や濃縮を防ぐことができる。開口部は、例えば、図1に示すように円筒状のパイプなどにより形成される。
【0047】
塗布部を構成するブラシ毛4aの材質は、上述した組成の薬液を、使用後に固化した後も保持可能であると共に、再使用時には指先で容易に擦り落とせるものが好ましく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・ガラス樹脂入り、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミドなどの合成樹脂や、各種動物の天然毛、各種植物繊維からなる毛などを挙げることができる。なかでも、開口部周辺の気密性を保持しつつ、余分な力を加えることなく再使用できる点から凹凸の少ない繊維表面を有する合成樹脂であるポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。また、高分子として親油性高分子を使用する際には、高分子の付着性の点から繊維表面が疎水性の合成樹脂であるポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0048】
ブラシ毛4aは開口部周辺を被っていればよいが、開口部周辺に略均一に配列されていることが好ましく、ブラシ毛の幅および厚みは開口部の内径よりも0.5mm以上長いことが好ましく、1〜20mmであることがより好ましく、2〜10mmであることがさらに好ましい。また、開口部の孔(例えば、パイプの先端部)から毛先までの長さ(c)は、3〜20mmが好ましく、5〜15mmがさらに好ましい。ブラシ毛4aの形態を上記範囲内とすることで、高分子および粉末成分がブラシ毛に付着した際に、ブラシ毛間の隙間を埋めることができるので、開口部付近の気密性を高めることができる。
【0049】
本発明における塗布具は、長期保管する場合には、さらにキャップ状の部材を加えることが好適である。
【0050】
本発明の外用組成物は、医薬品および医薬部外品等として、皮膚、歯、舌、口腔内、粘膜、髪の毛、爪等に塗布して用いることができる。
【0051】
本発明の外用組成物は、配合薬効成分の種類や量、その形態に応じて、1日当たりの適用量及び適用回数を適宜設定できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例、試験例及び処方例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の表中に示す%は、特段示さない限り、重量%を示す。
実施例1
以下の手順で外用組成物を調製した。
(1)油溶性成分:
グリチルレチン酸ステアリル(薬効成分)
油溶性高分子(シリコン系高分子)
流動パラフィン(溶剤)
スクワラン(溶剤)
モノオレイン酸ソルビタン(溶剤(界面活性剤))
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(溶剤(界面活性剤))
を混合し、溶解させる。
(2)(1)で調製した溶液に、粉末成分(平均粒子径:0.01〜50μm)を混合、分散させる。
(3)別に、水溶性成分:
リン酸L−アルコルビルマグネシウム(薬効成分)
水(溶剤)
濃グリセリン(溶剤)
パラオキシ安息香酸メチル(防腐剤)
水酸化ナトリウムおよびクエン酸(pH調整剤)
水溶性高分子
を混合し、溶解させる。
(4)(2)に(3)を投入し、乳化させて外用組成物を調製した。
【0053】
実施例2〜49および比較例1〜7
表1〜4に示す処方にしたがって、実施例1と同様の方法を用いて外用組成物を調製した。
【0054】
<試験例>
試験例1 特性確認試験
調製した各外用組成物(実施例1〜49及び比較例1〜7)に対して、下記試験を行い、(1)減量、(2)流動性、(3)使用感について評価した。
(1)減量
調製した各外用組成物をそれぞれ塗布具に充てんした。塗布具は、図1に示すように、収容部と、収容部を外部と連通する開口部と、開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備えたノック機構を備えたもの(収容部は円柱状(直径:1.0cm、高さ:2.5cm)であり、開口部のパイプは内径:0.1cm、長さ:1.5cmであり;塗布部のブラシ毛は材質:ポリアミド樹脂(30デニール)、幅:0.5cm、厚み:0.4cm、パイプ先端から毛先までの長さ:1.0cmであるものを使用した。
外用組成物を塗布具に充填し、外用組成物25mgを塗布部のブラシ毛全体に馴染ませた後、全体の重量を測定した(放置前の重量)。その後、塗布部が上方に、ノック機構が下方になるように立て、40℃、10%(湿度)で10日間放置した後、重量を測定した(放置後の重量)。測定後、放置前の重量に対する放置後の重量変化を以下の計算式にしたがって算出した。各試験についてN=3で行い、その平均値から下記基準にしたがい評価した。
<減量の計算式>
[(放置前の重量―放置後の重量)/放置前の重量]×100=減量(%)
<減量の評価基準>
★:5%未満
◎:5%以上8%未満
○:8%以上10%未満
×:10%以上
得られた結果を表1−4に併せて示す。比較例1−7の結果から、それぞれ、粉末成分及び高分子のみの使用では、外用組成物の重量がかなり減量してしまうことが確認された。これに対し、実施例1−49の結果から、粉末成分及び高分子を組み合わせて使用すると減量を防ぐことができることが明らかとなった。
【0055】
(2)流動性
ガラス板上に実施例1−49の各組成物を10g置き、ガラス板を45度傾けた際に組成物が傾けた方向に流れ動くかどうかで流動性を評価した。
その結果、実施例31を除いて、いずれも流れ動くという結果を得た。よって、実施例4、7および16と、実施例31とを比較することにより、粉末の配合量が40%以下であると、製剤の流動性がとくに良くなることがわかった。
【0056】
(3)使用感の評価
N=10にて、実施例1−49の各組成物を肌に塗布した際の使用感(ベタツキ)・塗りやすさを以下の5段階で評価してもらい、その平均値から下記基準にしたがい評価した。
<評価基準>
5点:良い
4点:やや良い
3点:どちらでもない
2点:やや悪い
1点:悪い
<○×判断基準>
○:平均4点以上
×:平均4点未満
その結果、実施例31および32を除いてはすべて○という結果を得た。実施例2と32とを比較することにより、シリコンの配合量が60%以下であると、製剤にべたつきが出ず、使用感がとくに優れることがわかった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
実施例9と12の比較、実施例8と14の比較から、それぞれ、親水性高分子に比べて親油性高分子とすることで減量をとくに効果的に防ぐことができることが分かる。さらに、親油性高分子を用いた実施例8や9は、親水性高分子を用いた実施例12や14に比べて、ブラシ毛同士の結合が緩く、余計な力を加えることなく再使用することができた(データ示さず)。
【0062】
また、高分子として親油性高分子、とりわけシリコン系高分子を用いた場合、高分子量を組成物中5〜40重量%とすると(実施例3、4、8および9)、また、高分子として親水性高分子を用いた場合、高分子量を組成物中3〜10%とすると(実施例11〜15)、より効果的にブラシ毛間の隙間を橋渡し、その橋上に粉末成分を保持させることができ、開口部周辺の気密性を向上させるので、減量をより効果的に防ぐことができることが分かる。さらに、シリコン系高分子を5〜20重量%とすると(実施例5、6および8)、再使用においてとくに優れた使用感となった(データ示さず)。
【0063】
また、粉末成分を組成物中に4%を超えて配合すると、ブラシ毛間の隙間をより効果的に埋めることができ、気密性を向上させるので、減量をより効果的に防ぐことができることが分かる(実施例29および30)。
【0064】
さらに、ブラシ毛を天然毛(イタチ毛)とした以外は実施例1と同様の塗布具に充填して減量について評価したところ同程度であったが、ポリアミド樹脂を使用した方が余分な力を加えることなく再使用できた(データ示さず)。
【0065】
処方例1〜38
表5および6に記載の処方にしたがって、実施例と同様に外用組成物を調製した。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液塗布具の要部断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 薬液塗布具
2 収容部
3 開口部(パイプ)
4 塗布部
4a ブラシ毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)薬効成分、(B)粉末成分、(C)高分子および(D)溶剤を含有する外用組成物であって、
当該組成物を収容する収容部と、
前記収容部を外部と連通する開口部と、
前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具に充填するための外用組成物。
【請求項2】
外用組成物の総重量に対して、(B)粉末成分を6〜40重量%の割合で含有する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
(C)高分子が親油性高分子である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記親油性高分子がシリコン系高分子である、請求項3に記載の外用組成物。
【請求項5】
外用組成物の総重量に対して、親油性高分子を3〜60重量%の割合で含有する、請求項3又は4に記載の外用組成物。
【請求項6】
(C)高分子が親水性高分子である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項7】
外用組成物の総重量に対して、親水性高分子を0.1〜10重量%の割合で含有する、請求項6に記載の外用組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の外用組成物を収容した収容部と、
前記収容部を外部と連通する開口部と、
前記開口部を覆うように設けられた多数のブラシ毛からなる塗布部とを備える薬液用塗布具。

【図1】
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【公開番号】特開2008−169163(P2008−169163A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5181(P2007−5181)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】